(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ロータに永久磁石を備える電動機が一般的に使用されている。このような電動機においては、電動機の回転速度が小さい回転速度のときには、巻線の温度が当該巻線の許容上限温度以下に維持されているのであれば、一般に、永久磁石の温度が、当該永久磁石の減磁を生じることを防止し得る許容上限温度以下に収まる。
【0005】
一方、本願発明者らの各種検討及び実験によれば、電動機の回転速度が大きい場合には、巻線の温度が当該巻線の許容上限温度以下に維持されていても、永久磁石のエネルギー損失の増加等に起因して、該永久磁石の温度が、該永久磁石の減磁を生じることを防止し得る許容上限温度を超えるような高温に昇温して、該永久磁石の減磁が発生してしまう可能性があることが判明した。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の電動機制御装置では、この点が考慮されていないので、電動機の回転速度が大きい場合に、永久磁石の減磁を生じてしまう虞がある。そして、これを防止するために、例えば、電動機の回転速度が大きいときであっても永久磁石の減磁が生じないようにすることが可能な巻線の温度を、閾値温度として常に設定することが考えられる。しかしながら、この場合には、電動機の回転速度が小さいときにおいて、当該電動機の運転が必要以上に制限されてしまう。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、電動機の運転を必要以上に制限させずに、巻線及び永久磁石が過剰に昇温することを防止できる電動機制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、永久磁石を有する電動機の運転中に、前記電動機の巻線の温度が所定の閾値温度を超えた場合には、前記電動機の運転制限を行う運転制御部と、
前記電動機の回転速度が所定の閾値回転速度よりも小さいときに、前記閾値温度を所定の第1閾値に設定し、前記電動機の回転速度が所定の閾値回転速度よりも大きいときに、前記閾値温度を前記第1閾値よりも低い第2閾値に設定する閾値設定部と
を備え
、
前記巻線の温度を、予め定められた当該巻線の許容上限温度以下に維持するための、前記電動機の回転速度と前記電動機の上限出力トルクとの関係を表す特性線を第1巻線特性線と定義し、前記永久磁石の温度を、予め定められた当該永久磁石の許容上限温度以下に維持するための、前記電動機の回転速度と前記電動機の上限出力トルクとの関係を表す特性線を磁石特性線と定義したとき、
前記閾値回転速度は、前記第1巻線特性線と前記磁石特性線との交点における回転速度に一致させるように設定され、
前記巻線の温度を、前記第2閾値以下に維持するための、前記電動機の回転速度と前記電動機の上限出力トルクとの関係を表す特性線を第2巻線特性線と定義したとき、
前記第1閾値は、予め定められた前記巻線の許容上限温度に基づいて設定され、
前記第2閾値は、前記第2巻線特性線における前記電動機の上限出力トルクが、前記閾値回転速度よりも大きい任意の回転速度において、前記磁石特性線における前記電動機の上限出力トルクよりも小さくなるという条件を満たすように設定されていることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、閾値設定部が、電動機の回転速度が閾値回転速度よりも大きいときには、閾値回転速度よりも小さいときに設定される第1閾値に比べて低い第2閾値となるように、閾値温度を低く設定している。
【0010】
これにより、運転制御部は、電動機の回転速度が閾値回転速度よりも大きい場合には、電動機の巻線の温度が、第1閾値よりも低い第2閾値を超えたときに、電動機の運転を制限する。これにより、巻線及び永久磁石が過剰に昇温することを防止できる。
【0011】
更に、運転制御部は、電動機の回転速度が閾値回転速度よりも小さい場合には、電動機の巻線の温度が、第2閾値よりも高い第1閾値を超えるまで、当該電動機の運転を必要以上に制限させることなく、当該電動機の性能をより有効に活用できる。
【0013】
巻線及び永久磁石が過剰に昇温することを防止するためには(巻線の温度を巻線の許容上限温度以下に維持することと永久磁石の温度を永久磁石の許容上限温度以下に維持することとを両立させるためには)、電動機の出力トルクが、電動機の回転速度に対する巻線特性線における上限出力トルク(以下、「巻線上限トルク」という)と、電動機の回転速度に対する磁石特性線における上限出力トルク(以下、「磁石上限トルク」という)とのうち小さい方の上限出力トルク以下となる必要がある。
【0014】
電動機の回転速度が巻線特性線と磁石特性線との交点における回転速度よりも小さいときは、磁石上限トルクよりも巻線上限トルクの方が小さく、電動機の回転速度が巻線特性線と磁石特性線との交点における回転速度よりも大きいときは、巻線上限トルクよりも磁石上限トルクの方が小さい。
【0015】
従って、上記構成のように、閾値回転速度が、巻線特性線と磁石特性線との交点における回転速度に一致させるように設定されることで、運転制御部は、電動機の回転速度が当該交点における回転速度よりも小さいときにおいて、閾値温度として設定される第1閾値を電動機の巻線の温度が超えた場合に電動機の運転制限を行うことで、巻線が過剰に昇温することを防止できる。このとき、巻線の許容上限温度よりも永久磁石の許容上限温度の方が高いので永久磁石が過剰に昇温することも防止できる。
【0016】
また、運転制御部は、電動機の回転速度が当該交点における回転速度よりも大きいときにおいて、閾値温度として設定される第2閾値を電動機の巻線の温度が超えた場合に電動機の運転制限を行うことで、永久磁石が過剰に昇温することを防止できる。このとき、永久磁石の許容上限温度よりも巻線の許容上限温度の方が高いので巻線が過剰に昇温することも防止できる。
【0018】
さらに、電動機の回転速度が閾値回転速度よりも小さいときのように巻線の許容上限温度の方が永久磁石の許容上限温度よりも低いときには、閾値温度として設定されている第1閾値が、巻線の許容上限温度に基づいて設定されているので、巻線及び永久磁石が過剰に昇温することを防止できる。
【0019】
一方、電動機の回転速度が閾値回転速度よりも大きいときのように永久磁石の許容上限温度の方が巻線の許容上限温度よりも低いときには、閾値温度として設定されている第2閾値が、第2巻線特性線における電動機の上限出力トルクが、磁石特性線における電動機の上限出力トルクよりも小さくなるという条件を満たすように設定されているので、巻線が過剰に昇温することを防止できれば、永久磁石が過剰に昇温することも防止できる。
【0020】
本発明において、前記閾値設定部は、前記閾値温度を前記第2閾値に設定する場合において、前記電動機の回転速度が
大きくなるほど、前記閾値温度を段階的又は連続的に小さくするように設定することが好ましい。
【0021】
この構成によれば、閾値温度が第2閾値に設定される場合(すなわち、電動機の回転速度が閾値回転速度よりも大きい場合)において、電動機の回転速度が相対的に小さいときには、相対的に大きいときに比べて、電動機の巻線の温度が相対的に高い温度になるまで電動機の運転制限が行われないので、電動機の運転が必要以上に制限されることを効果的に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(1.電動機制御装置及び車両の構成)
本発明の実施形態の電動機制御装置1(以下、単に「制御装置1」という)及びそれを含む車両Cについて、
図1を参照して説明する。
【0024】
車両Cは、電動機2を駆動源とする電気自動車である。また、制御装置1は、電動機2を制御する制御装置である。制御装置1は、図示しないCPU,メモリ等を有する電子制御ユニットにより構成されている。また、制御装置1は、運転制御部101、及び閾値設定部102としての機能を有する。
【0025】
電動機2は、そのロータ(図示省略)に永久磁石(図示省略)が備えられ、ステータ(図示省略)に回転磁界を発生する巻線(図示省略)が備えられている。電動機2の出力軸2aは、当該電動機2のロータと一体に回転するように構成されている。
【0026】
電動機2は、力行運転と回生運転が可能である。電動機2の力行運転時には、当該電動機2にはインバータ7から交流電力が供給される。インバータ7には、燃料電池スタック5から出力された直流電力を第2コンバータ6でDC−DC変換された電力が供給される。このときの電動機2の出力軸2aの回転は、変速機8(ディファレンシャルギア等を含む)を介して、左右の駆動輪9L,9Rに伝達される。
【0027】
また、電動機2の回生運転時には、左右の駆動輪9L,9Rの回転が、変速機8を介して出力軸2aに伝達される。このとき、制御装置1は、電動機2を発電機として作動させることで、当該電動機2の発電電力がインバータ7及び第1コンバータ4で変換されて二次電池3を充電できる。
【0028】
制御装置1には、温度センサ21、回転速度センサ22及びアクセルセンサ23の出力信号が入力される。
【0029】
温度センサ21は、電動機2のステータに近接して配置されている。温度センサ21は、電動機2の巻線の温度(以下、「電動機温度」という)Tmを検知し、当該検知した電動機温度Tmを表す信号を出力する。回転速度センサ22は、電動機2の出力軸2aの回転速度(以下、「電動機回転速度」という)Nmを検知するセンサである。回転速度センサ22は、検知した電動機回転速度Nmを表す信号を出力する。アクセルセンサ23は、車両Cのアクセルペダル(図示省略)の操作量を検知するセンサである。アクセルセンサ23は、検知した操作量を表す信号を出力する。
【0030】
制御装置1は、アクセルセンサ23の検知結果に応じて決定した目標トルクτcmdを電動機2から出力するように、インバータ7を制御する(以下、このように制御することを、単に「電動機2を制御する」という)。
【0031】
また、制御装置1は、電動機2の運転中(力行運転中又は回生運転中のとき)に、電動機温度Tmが所定の閾値温度Tt(閾値温度Ttの設定については後述する)を超えた場合には、電動機2の運転制限を行う(当該処理は、運転制御部101によって実行される制御処理に相当する)。これにより、電動機2の巻線及び永久磁石が過剰に昇温することを防止している。
【0032】
(2.電動機の特性)
図2を参照して、電動機2の特性について説明する(なお、
図2中のLact2,Lact3,Nt1,Nt2,Nt3は、後述する別の形態の説明で使用するので、本実施形態の説明では触れない)。
図2では、横軸が電動機回転速度Nmを表し、縦軸が電動機トルクτmを表す。また、
図2では、破線で表された特性線Lwが第1巻線特性線であり、実線で表された特性線Lmgが磁石特性線である。
【0033】
ここで、第1巻線特性線Lwとは、電動機2の巻線の温度を、予め定められた当該巻線の許容上限温度(以下、「巻線許容上限温度」という)Tw
_lim以下に維持するための、電動機回転速度Nmと電動機2の上限出力トルクとの関係を表す特性線である。より詳細には、特性線Lwは、当該特性線Lw上の任意の点の電動機回転速度Nmと電動機トルクτmとの組で電動機2を連続的に運転したときに、到達する電動機2の巻線の温度が、巻線許容上限温度Tw
_lim以下に収まるという特性を持つ特性線である。
【0034】
また、磁石特性線Lmgとは、電動機2の永久磁石の温度を、予め定められた当該永久磁石の減磁を防止するための許容上限温度(以下、「磁石許容上限温度」という)Tmg
_lim以下に維持するための、電動機回転速度Nmと電動機2の上限出力トルクとの関係を表す特性線である。より詳細には、特性線Lmgは、当該特性線Lmg上の任意の点の電動機回転速度Nmと電動機トルクτmとの組で電動機2を連続的に運転したときに、到達する電動機2の永久磁石の温度が、磁石許容上限温度Tmg
_lim以下に収まるという特性を持つ特性線である。
【0035】
図2では、電動機回転速度NmがNtのときに、第1巻線特性線Lwと磁石特性線Lmgとが交差している(以下、この交差している点を交点Pという)。詳細には、「Nm<Nt」のときには、電動機の回転速度に対する第1巻線特性線Lwにおける上限出力トルク(以下、「巻線上限トルク」という)τw
_limの方が、電動機の回転速度に対する磁石特性線Lmgにおける上限出力トルク(以下、「磁石上限トルク」という)τmg
_limよりも低い。一方、「Nm>Nt」のときには、磁石上限トルクτmg
_limの方が、巻線上限トルクτw
_limよりも低くなっている。
【0036】
そこで、本実施形態においては、電動機回転速度Nmが、交点Pにおける回転速度(以下、「閾値回転速度」という)Ntよりも大きいときには、閾値回転速度Ntよりも小さいときに設定される第1閾値T1に比べて低い第2閾値T2となるように、閾値温度Ttを低く設定している(当該処理が、閾値設定部102によって実行される処理に相当する。以下、当該処理を「閾値変更処理」という)。
【0037】
ここで、本実施形態では、巻線許容上限温度Tw
_limを第1閾値T1に設定している。なお、第1閾値T1は、巻線許容上限温度Tw
_limと同一の温度に設定するのではなく、余裕を持たせるために、巻線許容上限温度Tw
_limよりも若干低い温度(例えば、所定温度だけ低い温度)に設定されていてもよい。
【0038】
また、第2閾値T2は、電動機2の巻線の温度を、当該第2閾値T2以下に維持するための、電動機回転速度Nmと許容上限トルクとの関係を表す巻線特性線における電動機トルクτmが、「電動機回転速度Nm>閾値回転速度Nt」の任意の回転速度Nmにおいて、磁石特性線Lmgにおける電動機トルクτmよりも小さくなるという条件を満たすように設定されている。なお、
図2の第2巻線特性線Lwuは、電動機2の巻線の温度を、第2閾値T2以下に維持するための、電動機回転速度Nmと許容上限トルクとの関係を表す特性線である。
【0039】
上記閾値変更処理が行われることで、電動機2の巻線上限トルクτw
_limは、
図2の破線で示された特性線Lact(
図2の拡大図内において、第1巻線特性線Lwよりも細かな破線を参照)に従って規定される。詳細には、巻線上限トルクτw
_limは、「電動機回転速度Nm<閾値回転速度Nt」のときには、電動機2の巻線の温度を巻線許容上限温度Tw
_lim(第1閾値T1)以下に維持するための第1巻線特性線Lwに従って規定され、「電動機回転速度Nm>閾値回転速度Nt」のときには、電動機2の巻線の温度を第2閾値T2以下に維持するための第2巻線特性線Lwuに従って規定される。
【0040】
これにより、制御装置1は、電動機回転速度Nmが閾値回転速度Ntよりも大きい場合には、第1巻線特性線Lwよりも第2巻線特性線Lwuに従って電動機トルクτmの上限が規定されるので、電動機温度Tmが、第1閾値T1よりも低い第2閾値T2を超えたときに、電動機2の運転制限を行う。これにより、巻線及び永久磁石が過剰に昇温することを防止できる。
【0041】
更に、制御装置1は、電動機回転速度Nmが閾値回転速度Ntよりも小さい場合には、第2巻線特性線Lwuよりも第1巻線特性線Lwに従って電動機トルクτmの上限が規定されるので、電動機温度Tmが第2閾値T2よりも高い第1閾値T1を超えるまで電動機2の運転を必要以上に制限させることなく、電動機2の性能をより有効に活用できる。
【0042】
(3.電動機制御装置による制御)
次に、制御装置1によって実行される運転制御処理及び閾値変更処理の詳細について説明する。
【0043】
(3−1.運転制御処理)
制御装置1は、所定の制御周期毎に、
図3に示したフローチャートによる運転制御処理を実行する。
【0044】
制御装置1は、まず最初のステップST1で、電動機2の目標トルクτcmdを決定する。例えば、制御装置1は、アクセルセンサ23の出力信号に基づいて、予め定められたマップ又はテーブル等を参照して目標トルクτcmdを決定している。
【0045】
制御装置1は、続いてステップST2に進み、電動機温度Tmが閾値温度Ttよりも大きいか否かを判定する。
【0046】
制御装置1は、ステップST2で、電動機温度Tmが閾値温度Ttよりも大きいと判定した場合には、ステップST3に進み、電動機トルクτmの上限値である上限トルクを減少させる。このとき、ステップST1で決定された目標トルクτcmdが当該減少した上限トルクを上回っている場合には、目標トルクτcmdを上限トルクまで減少させる。これにより、電動機2の巻線及び永久磁石が過剰に昇温することを防止できる。
【0047】
ここで、本実施形態においては、「ステップST3における電動機トルクτmの上限トルクを減少させる」ことが、本発明の「電動機の運転制限を行う」ことに相当する。なお、電動機の運転制限は、これに限らず、電動機2の巻線の温度を、現時点の温度よりも昇温させることを防止できるような運転制御であれば、他の運転制御であってもよい。
【0048】
制御装置1は、ステップST2で電動機温度Tmが閾値温度Ttよりも大きくないと判定した場合、又はステップST3の処理が終了すると、ステップST4に進む。制御装置1は、ステップST4で、電動機トルクτmが目標トルクτcmdとなるように電動機2を制御する。
【0049】
制御装置1は、ステップST4の処理が終了すると、本フローチャートを終了する。
【0050】
(3−2.閾値変更処理)
制御装置1は、所定の制御周期毎に、
図4に示したフローチャートによる閾値変更処理を実行する。
【0051】
制御装置1は、まず最初のステップST101で、電動機回転速度Nmが閾値回転速度Ntよりも小さいか否かを判定する。制御装置1は、ステップST101で、電動機回転速度Nmが閾値回転速度Ntよりも小さいと判定した場合には、ステップST102に進み、閾値温度Ttを第1閾値T1に設定する。
【0052】
制御装置1は、ステップST101で、電動機回転速度Nmが閾値回転速度Ntよりも小さくないと判定した場合には、ステップST103に進み、閾値温度Ttを第2閾値T2に設定する。制御装置1は、ステップST102又はステップST103の処理が終了すると、本フローチャートの処理を終了する。
【0053】
(4.変形例)
(4−1.閾値温度の変形例)
なお、電動機回転速度Nmが閾値回転速度Ntよりも大きいときにおいて(換言すれば、本実施形態において閾値温度Ttを第2閾値T2に設定する場合において)、電動機2の回転速度が相対的に小さいときには、相対的に大きいときに比べて、当該閾値温度Ttが高くなるように当該閾値温度Ttを設定してもよい。詳細には、例えば、電動機回転速度Nmが閾値回転速度Ntよりも大きいときに、当該電動機回転速度Nmが大きくなるほど、閾値温度Ttを段階的又は連続的に小さくするように設定してもよい。
【0054】
これにより、電動機回転速度Nmが閾値回転速度Ntよりも大きいときにおいて、電動機回転速度Nmが相対的に小さいときには、相対的に大きいときに比べて、電動機2の巻線の温度が相対的に高い温度になるまで電動機2の運転が制限されないので、電動機2の運転が必要以上に制限されることを効果的に防止できる。
【0055】
(4−1−1.閾値温度を段階的に小さくする例)
電動機回転速度Nmが閾値回転速度Ntよりも大きいときに、当該電動機回転速度Nmが大きくなるほど、閾値温度Ttを段階的に小さくするように設定する場合の閾値変更処理について、
図2及び
図5を参照して説明する。
【0056】
制御装置1は、まず最初のステップST201で、電動機回転速度Nmが第1閾値回転速度Nt1(本発明の「閾値回転速度」に相当する)より小さいか否かを判定する。制御装置1は、ステップST201で、電動機回転速度Nmが第1閾値回転速度Nt1より小さいと判定した場合には、ステップST202に進み、閾値温度Ttを第1閾値T1に設定する。
【0057】
制御装置1は、ステップST201で、電動機回転速度Nmが第1閾値回転速度Nt1より小さくないと判定した場合には、ステップST203に進み、電動機回転速度Nmが第2閾値回転速度Nt2より小さいか否かを判定する。ここで「第1閾値回転速度Nt1<第2閾値回転速度Nt2」である。
【0058】
制御装置1は、ステップST203で、電動機回転速度Nmが第2閾値回転速度Nt2より小さいと判定した場合には、ステップST204に進み、閾値温度Ttを第3閾値T21に設定する。ここで、「第1閾値T1>第3閾値T21」である。
【0059】
制御装置1は、ステップST203で、電動機回転速度Nmが第2閾値回転速度Nt2より小さくないと判定した場合には、ステップST205に進み、電動機回転速度Nmが第3閾値回転速度Nt3より小さいか否かを判定する。ここで「第2閾値回転速度Nt2<第3閾値回転速度Nt3」である。
【0060】
制御装置1は、ステップST205で、電動機回転速度Nmが第3閾値回転速度Nt3より小さいと判定した場合には、ステップST206に進み、閾値温度Ttを第4閾値T22に設定する。ここで、「第3閾値T21>第4閾値T22」である。
【0061】
制御装置1は、ステップST205で、電動機回転速度Nmが第3閾値回転速度Nt3より小さくないと判定した場合には、ステップST207に進み、閾値温度Ttを第2閾値T2に設定する。ここで、「第4閾値T22>第2閾値T2」である。
【0062】
制御装置1は、ステップST202,ST204,ST206,ST207のいずれかの処理が終了すると、本フローチャートの処理を終了する。
【0063】
制御装置1がこのように制御することにより、電動機2の巻線上限トルクτw
_limは、
図2の細い実線(実線で描かれたLmgよりも細い実線)で示された特性線Lact2に従って決定される。このように、電動機2の巻線上限トルクτw
_limが特性線Lact2に従って決定される場合の方が、特性線Lactに従って決定される場合に比べて、電動機回転速度NmがNt1〜Nt3の範囲において、電動機トルクτmを必要以上に制限させることなく、当該電動機2の性能をより有効に活用できる。
【0064】
(4−1−2.閾値温度を連続的に小さくする例)
電動機回転速度Nmが閾値回転速度Ntよりも大きいときに、当該電動機回転速度Nmが大きくなるほど、閾値温度Ttを連続的に小さくするように設定する場合の閾値変更処理について、
図2及び
図6を参照して説明する。
【0065】
制御装置1は、まず最初のステップST301で、電動機回転速度Nmが閾値回転速度Ntよりも小さいか否かを判定する。制御装置1は、ステップST301で、電動機回転速度Nmが閾値回転速度Ntよりも小さいと判定した場合には、ステップST302に進み、閾値温度Ttを第1閾値T1に設定する。
【0066】
制御装置1は、ステップST301で、電動機回転速度Nmが閾値回転速度Ntよりも小さくないと判定した場合には、ステップST303に進み、閾値温度Ttを次式(1)に従って設定する。
【0067】
Tt=T1−α・(Nm−Nt) …(1)
ここで、αは、正の定数であり、予め実験等によって決定されている。
【0068】
制御装置1は、ステップST302又はステップST303の処理が終了すると、本フローチャートの処理を終了する。
【0069】
制御装置1がこのように制御することにより、電動機2の巻線上限トルクτw
_limは、
図2の細い破線(破線で描かれたLactよりも細い破線)で示された特性線Lact3に従って決定される。このように、電動機2の巻線上限トルクτw
_limが特性線Lact3に従って決定される場合の方が、特性線Lact及び特性線Lact2に従って決定される場合に比べて、電動機トルクτmを必要以上に制限させることなく、当該電動機2の性能をより有効に活用できる。
【0070】
(4−2.その他の変形例)
本実施形態では、閾値回転速度Ntが、交点Pにおける回転速度と同じ回転速度に設定されていたが、これに限らず、交点Pにおける回転速度に一致させるように設定されていてもよい。ここで、「一致させるように」とは、同一の回転速度に設定されるものに加え、それに近い回転速度に設定されているものも含む。
【0071】
また、本実施形態においては、電動機2の力行運転中に上記閾値変更処理及び上記運転制御処理を行うことについて説明したが、電動機2の回生運転中に当該閾値変更処理及び当該運転制御処理を行ってもよい。
【0072】
また、本実施形態では、電動機温度Tm又は電動機回転速度Nmを、温度センサ21又は回転速度センサ22によって直接検知しているが、これに限らず、例えば、電動機温度Tm又は電動機回転速度Nmに対して一定の相関性を有する他の状態量の検出値から、電動機温度Tm又は電動機回転速度Nmを推定してもよい。