(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記油不溶性色素粒子及び前記油可溶性色素が、紫外線照射により可視光の蛍光を発するものであり、発光色が補色の関係にあるものであることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。
請求項1〜3の何れか一項に記載の潤滑油組成物が塗布された部分における油不溶性色素粒子と油可溶性色素との存在比を、塗布前の潤滑油組成物における油不溶性色素粒子と油可溶性色素との存在比と比較し、その変動から、塗布部分から拡散せずに付着している潤滑油組成物の量を求めることを含むことを特徴とする潤滑油組成物の付着量測定方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1に係る潤滑油組成物について説明する。
本発明の潤滑油組成物は、基油、油不溶性色素粒子及び油可溶性色素を少なくとも含むものである。
本発明で用いる基油としては、鉱油、合成油、油脂などが挙げられる。鉱油は、原油を蒸留により精製したものであり、パラフィン類を主として含み、芳香族成分などを含むものもある。合成油としては、例えばポリ−α−オレフィン、ポリイソブチレン(ポリブテン)、ジエステル、ポリオールエステル、芳香族多価カルボン酸エステル、リン酸エステル、ケイ酸エステル、ポリアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、シリコーン、フッ素化化合物、アルキルベンゼンなどが挙げられる。一般の合成油及び油脂に含まれないような各種高沸点溶剤も基油として使用することができる。沸点160℃以上、より好ましくは沸点200℃以上で、有機酸などの腐食性を有していないもの、例えばグリセリンなどのアルコールや各種の界面活性剤も基油として使用することができる。
【0010】
本発明で用いる基油は使用環境において流動性を示すものである。この基油を増稠剤と混合して基グリースとして使用してもよい。増稠剤としては、例えば、石鹸系増稠剤、コンプレックス石鹸系増稠剤、ウレア系増稠剤、テレフタラメート系増稠剤、無機系増稠剤などが挙げられる。石鹸系増稠剤としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノレイン酸などの脂肪酸とアルミニウム、バリウム、カルシウム、リチウム、ナトリウム、カリウムなどの塩基からなる石鹸をベースにするものが挙げられる。コンプレックス石鹸増稠剤としては、上記石鹸系増稠剤に更に酢酸、安息香酸、セバシン酸、アゼライン酸、リン酸、ホウ酸などを用いるものが挙げられる。ウレア系増稠剤としては、モノイソシアネートとモノアミンを反応させたモノウレア系化合物、ジイソシアネートとモノアミンを反応させたジウレア系化合物、ジイソシアネートとモノアミンとモノオールを反応させたウレアウレタン系化合物、ジイソシアネートとジアミンとモノイソシアネートを反応させたテトラウレア系化合物などが挙げられる。無機系増稠剤としては、ベントナイト、スメクタイト、シリカ、アルミナなどが挙げられる。
これらの増稠剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。増稠剤の量は、特に限定されるものではないが、基油及び増稠剤からなる基グリースに対して、好ましくは3質量%〜40質量%、より好ましくは5質量%〜20質量%である。増稠剤の量が3質量%未満であると、増稠剤の添加効果が殆ど得られないため好ましくない。一方、増稠剤の量が40質量%を超えると、基グリースから基油が外部へ拡散して抜け易くなり、基グリースから抜ける基油量が微量であっても稠度の変動が大きくなり、本発明で潤滑油組成物の拡散量を推定する有意性が得られ難くなるため好ましくない。
【0011】
油不溶性色素及び油可溶性色素については、基油の種類によって任意に選択が可能である。特に限定するものでないが、以下の色素:カーボンブラック、キナクリドン系、キナクリドンキノン系、ジオキサジン系、アントラピリミジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、フラバンスロン系、ペリレン系、メチン・アゾメチン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、インジゴ系、キノフタロン系、アントラキノン系、チオインジゴ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリン系、イソインドリノン系、フタロシアニン系、アゾ系、インジゴイト系などを利用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記した色素を、油不溶性色素粒子として使用する場合には、他の物質に吸着、混合したものとして用いてもよい。
【0012】
油不溶性色素は、潤滑油組成物中ではそれ自身単独で粒子として存在するか、他の成分と混合して粒子を形成するか、または、固体粒子に付着した状態で粒子として存在することになる。この場合の粒子の平均粒径は、好ましくは15nm以上200μm以下、より好ましくは20nm以上40μm以下である。ここでの「平均粒径」とは、レーザー光散乱式粒度分布計で測定した時の平均粒径の値を意味する。油不溶性色素粒子の平均粒径が15nm未満であると、基油に溶解した油可溶性色素と同様に、基油の移動に伴って油不溶性色素粒子も移動してしまい、本発明の効果が明確に現れないことがあるため好ましくない。一方、油不溶性色素粒子の平均粒径が200μmを超えると、色素の添加量に比べて発色が少なくなり、潤滑油組成物の特性に影響を与えない添加量で効果を得ることが困難になる場合があり好ましくない。
【0013】
色素として、蛍光剤を用いることも好ましい。蛍光剤としては、例えば、フルオレッセイン、クマリン系、オキサゾール系、ピラゾリン系、チアジアゾール系、スピロピラン系、ピレンスルホン酸系、ベンゾイミダゾール系、ジアミノスチルベン系などの蛍光染料や硫化亜鉛/銅活性顔料などの硫化物系や酸化物系の無機蛍光剤などが利用できる。
【0014】
蛍光剤として、可視光線(白色光)下では白色又は透明を呈するが、紫外光下では、例えば青緑色、青色、緑色、赤色、橙色、黄色などに発光するものを用いることも好ましい。例えば、ZnO:Zn、Sr
3(PO
4)
3Cl:Eu、3(Ba,Mg)O・8Al
2O
3:Eu、Zn
2GeO
2:Mn、Y
2O
3:Eu、ZnS:Mn、Y
2O
2Si:Euなどの無機蛍光顔料、又はスチルベン系、ベンゾイミダゾール系、ベンジジン系、クマリン系、ナフタル酸イミド系、ピラゾリン系、ベンズアゾール系などの有機蛍光染料が利用できる。
【0015】
本発明の潤滑油組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、防腐剤、消泡剤、乳化剤、抗菌剤、抗かび剤、防食剤、酸化防止剤、分散剤、耐荷重添加剤、流動点降下剤、粘度指数向上剤、その他の公知の添加剤を添加してもよい。
【0016】
(色素の選択方法)
上記した色素の中から本発明で用いる色素の選択方法について説明する。油不溶性色素及び油可溶性色素は、最大吸収波長が離れたものを選定することが好ましい。このような色素を選択することにより、2種の色素による吸収の重なりを少なくすることができ、油不溶性色素と油可溶性色素との存在比をより高精度で測定することができる。結果として、潤滑油組成物の位置及び量を高精度に推定することが可能になる。
【0017】
目視での観察という点からも、好ましい色素の選択方法がある。油不溶性色素及び油可溶性色素を、緑とマゼンタ、赤とシアン、青とイエローなどの補色の組み合わせとし、配合濃度を調整することで、色素による潤滑油組成物の着色を少なくすることができる。塗布前の潤滑油組成物を着色が無い状態に設定しておき、潤滑油組成物の吸収や拡散が大きくなった時に、油不溶性色素と油可溶性色素との存在比が変化して着色するようにすることで、目視判定を容易にすることができる。
【0018】
デジタルカメラで撮影した画像から目視で拡散状態を確認する方法においても、色素の選択方法を工夫することでより良い結果が得られる。油不溶性色素及び油可溶性色素を、上記同様、補色の組み合わせとすることで、拡散の無い状態では色は打ち消しあい、拡散した場合にコントラストの高い色が現れるということになる。
【0019】
色素として蛍光を発するものを用いることで、より高精度に測定が可能となる。暗室などで環境光を抑制した場所で、色素から蛍光を発光させ、上記の方法でその強度を測定することで、潤滑を必要とする機械設備の表面及び潤滑油組成物中の他の成分の光反射の影響を排除できるためである。紫外線が励起光であり、且つ蛍光の波長が可視光領域のものであるといった場合のように、励起光の波長と発光波長が離れたものであると定量性の高い測定が可能になる。
【0020】
蛍光の場合においても、油不溶性色素及び油可溶性色素による発光を補色の組み合わせとし、配合濃度を調整することで、油不溶性色素及び油可溶性色素による潤滑油組成物の着色を少なくしたり、油不溶性色素と油可溶性色素との存在比の変化による着色で目視判定を容易にすることができる。
【0021】
蛍光色素として、紫外線励起で発光し、且つ紫外線を照射しないときには白色又は無色のものを用いることで、潤滑油組成物を着色することなく測定が可能となる。油不溶性色素粒子及び油可溶性色素の両方がこのような色素であれば、着色することなく処理が可能になる。油可溶性色素だけに、このような色素を用いた場合においても、潤滑油組成物の吸収・拡散が変動しても潤滑油組成物の色変化が無くなるため好ましい場合がある。また、油可溶性色素は、通常、光や熱により劣化しやすいため、これが添加された潤滑油組成物は長期的に変色する恐れがあるが、これを回避できる。
【0022】
本発明の潤滑油組成物における油不溶性色素粒子及び油可溶性色素の添加量は、潤滑油組成物の潤滑性能を低下させない範囲内で発色が良好となる量であればよい。通常、油不溶性色素粒子の添加量は、潤滑油組成物に対して、0.005質量%〜2質量%の範囲内であればよく、0.01質量%〜1質量%が好ましい。また、油可溶性色素の添加量は、潤滑油組成物に対して、0.001質量%〜1質量%の範囲内であればよく、0.005質量%〜0.5質量%が好ましい。
【0023】
(潤滑油組成物の付着状態の評価方法)
本発明の潤滑油組成物が、潤滑を必要とする位置に適正な量で存在しているか否かの確認は、付着している潤滑油組成物の色から判断することができる。色の測定は、汎用品のデジタルカメラで撮影して、画像処理ソフト上で、例えばRGBの3原色の比率を求めることなどにより簡単な比較が可能である。この場合には、所定の光源を用いること、基準となる色見本を同時に写しておくことで、判定の精度を向上できる。
【0024】
潤滑油組成物の付着状態を高精度に評価する方法として、潤滑油組成物が塗布された部分における油不溶性色素粒子と油可溶性色素との存在比を、塗布前の潤滑油組成物における油不溶性色素粒子と油可溶性色素との存在比と光学的に比較することが好ましい。この場合、複数の波長での潤滑油組成物の反射光の強度を測定することが好ましい。各波長での強度の比率により、潤滑油組成物中の油不溶性色素粒子と油可溶性色素との存在比を推定できる。測定する波長は、色素の種類に応じて決定する必要がある。各色素の最大吸収波長に近い波長2点を比較することが好ましく、さらに、これらと異なる波長での吸収を測定することで、油膜表面の散乱光による影響を補正することも好ましい。
【0025】
複数の波長での反射光強度の測定には、分光光度計を用いる方法がある。光ファイバーなどを利用して局所の反射光のスペクトルを測定できるものが好ましい。これ以外の方法として、各画素毎に分光スペクトルが測定できるカメラ(ハイパースペクトルカメラ)で測定する方法も好ましい。
【0026】
蛍光色素を用いる場合においても、上記方法における反射光を蛍光に置き換えた同様の測定方法が有効である。油可溶性の蛍光色素については、発光効率が濃度に依存し、高濃度では蛍光強度が低下する場合がある。この点に配慮して蛍光色素の添加濃度を設定したり、測定時の基準値を設定することが望ましい。
【0027】
画像が得られる方法では、潤滑油組成物が周囲に拡散している状態を直接確認することができる。この場合では、拡散距離や拡散面積から潤滑油組成物の付着状態を判定することも可能である。
【0028】
次に、本発明の潤滑油組成物の奏する効果を図を用いて説明する。
図1は、潤滑を必要とする表面に本発明の潤滑油組成物を塗布した直後の状態を説明するための模式図である。
図1に示されるように、塗布直後の潤滑油組成物には、基油1、油不溶性色素粒子2及び油可溶性色素3が塗布前の潤滑油組成物と同じ組成で、潤滑を必要とする表面4に存在する。本発明の潤滑油組成物中には、油不溶性色素粒子2及び油可溶性色素3という2種類の色素が混合されているため、塗布した直後の潤滑油組成物は色素の混合色として確認することができる。
【0029】
図2は、本発明の潤滑油組成物を塗布してから所定時間経過後に、潤滑油組成物が所定外の部位に拡散した状態を説明するための模式図である。油不溶性色素粒子2は、基油1が拡散しても基油と共に移動し難く、初期に塗布した部分に残留する。一方、油可溶性色素3は基油1と共に拡散する。そのため、初期に塗布した部分では、油可溶性色素3の濃度が減少して(油不溶性色素粒子2の濃度が増大して)油不溶性色素粒子2と油可溶性色素3との存在比が変化する。一方、拡散した部分では、油不溶性色素粒子2はほとんど存在せず油可溶性色素3が主となる。
【0030】
図3は、本発明の潤滑油組成物を塗布した直後の状態と、塗布してから所定時間経過後に潤滑油組成物が拡散した状態とを説明するための模式図である。
図3において、5は潤滑油組成物を塗布した直後の塗布部分を表しており、6は潤滑油組成物を塗布してから所定時間経過後の潤滑油組成物の拡散部分を表している。潤滑油組成物を塗布した直後においては、油不溶性色素粒子及び油可溶性色素が塗布前の潤滑油組成物と同じ組成で塗布部分5に存在するので、塗布部分5は油不溶性色素粒子と油可溶性色素とを混合した色を呈している。潤滑油組成物が拡散すると、拡散部分6は油可溶性色素の色を呈し、初期の塗布部分は初期の混合色より油可溶性色素が減った混合色を呈する。
【0031】
本発明によれば、上記のように潤滑油組成物の拡散した範囲を目視で容易に確認することができる。これは、従来の蛍光剤などの色素を油に混合することで漏洩を検知する方法と同様の効果である。本発明においては、基油1と共に移動しにくい油不溶性色素粒子2を混合しているため、所定時間経過後に潤滑油組成物が拡散しても初期に塗布した部位を確認することができる。さらには、初期に塗布した部分、すなわち、潤滑を必要とする部分における潤滑油の付着量を定量することができる。この付着量の定量は、油不溶性色素粒子2と油可溶性色素3との存在比を求めることで可能である。簡便には目視にて塗布部分の色調の変化を確認することで可能である。より定量的には、塗布前の潤滑油組成物の複数の波長での反射光や蛍光の強度を測定して油不溶性色素粒子2と油可溶性色素3との存在比を予め求めておき、塗布部分の複数の波長での反射光や蛍光の強度を測定して同様に存在比を求め、これらを比較することで潤滑油の付着量を推定することができる。
【0032】
ここでの色素に、蛍光色素を用いることで、潤滑油組成物の付着状態の変化をより確実に確認することができる。潤滑油組成物の塗布量が少ない場合、潤滑油組成物を使用する環境の光が暗かったり波長に偏りがある場合、潤滑を必要とする表面の色が潤滑油組成物の色と区別することが困難な場合においては、通常の色素での発色が十分でないことが多い。蛍光を利用することで、潤滑を必要とする表面の色や環境光の影響を受けにくくなり確実に確認ができるようになる。
【0033】
潤滑油組成物の拡散には、潤滑を必要とする表面と潤滑油組成物がなじみやすく、その表面を濡らしていく場合、潤滑を必要とする表面が多孔性であり潤滑油組成物が浸透していく場合、あるいは潤滑を必要とする表面に付着する他の油やその表面を構成する材質と混合する場合がある。潤滑を必要とする表面を濡らしていく場合においては、拡散する油層が薄いため、色素による呈色が少なく視認しにくい場合がある。このような場合には蛍光色素の利用で確認が容易になる。潤滑を必要とする表面に潤滑油組成物が浸透していく場合やその表面を構成する材質と潤滑油組成物が混合する場合においては、塗布部分の周辺へ拡散する距離が短くなり、塗布部分から内部へ浸透する比率が高くなる。このような場合においても塗布部分の色の変化から塗布部分に残留する潤滑油組成物の量を定量することが可能である。
【0034】
実施の形態2.
本発明の潤滑油組成物を機械設備の保守作業に適用した場合について説明する。
本発明の潤滑油組成物を機械設備の潤滑を必要とする表面に塗布してから所定時間経過後の保守作業時に、塗布部分における油不溶性色素粒子と油可溶性色素との存在比を、塗布前の潤滑油組成物における油不溶性色素粒子と油可溶性色素との存在比と光学的に比較することで、実施の形態1で説明したのと同様に、残留する潤滑油組成物の量や拡散した潤滑油組成物の量を把握することができる。
保守作業時に潤滑油組成物を補充する場合、初期に塗布した潤滑油組成物よりも油不溶性色素粒子の添加量が少ないものを用いるか、あるいは油不溶性色素粒子を添加していない潤滑油組成物を用いることが好ましい。潤滑油組成物を補充する場合に、初期に塗布した潤滑油組成物と同様の組成のものを用いると、塗布部分において、初期に塗布した分と補充分との両方の油不溶性色素粒子が存在することになる。一方、油可溶性色素は、拡散した分だけ少ないことになるため、補充後は発色の観点から好ましい存在比にはならない(油不溶性色素粒子と油可溶性色素との存在比を初期状態に戻すことができない)。また、繰り返し補充することで、過剰な油不溶性色素粒子が蓄積されていくことになり好ましくない。補充する潤滑油組成物に油不溶性色素粒子が添加されていないものを使用することで、このような問題点を回避できる。また、色素の存在比を確認することで、過剰な潤滑油組成物の補充を避けることも可能になる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
<実施例1>
炭化水素油(シェルモーリナS1)に、油不溶性色素粒子として、平均粒径5μmの青色発光蛍光顔料(DayGlo社製T−19)を0.25質量%及び油可溶性色素として、黄色発光蛍光色素(シラド化学株式会社製Liquid Fluorescent Yellow 3G)を50ppm添加した。混合後、ホモジナイザーで色素を十分に分散させて、潤滑油組成物を調製した。
【0036】
脱脂したステンレス板(SUS304)上に、潤滑油組成物を厚さ100μm程度となるように30mm×10mmの範囲に塗布した。定量的な塗布のためスクリーン印刷機を利用した。潤滑油組成物を塗布した後、ステンレス板を50℃のオーブン中に保管した。
【0037】
ブラックライトでの目視観察では、塗布直後は潤滑油組成物はやや青みを帯びた発光を示した。日が経つにつれ、塗布部分の周囲に黄色く発光する油の滲みが現れた。初期の塗布部分は、そのままの形状で青みを帯びたまま明瞭に視認できた。滲みが拡がると共に、塗布部分の色調は青味を増した。
【0038】
塗布直後、3日後及び1週間後に、ブラックライトで照射しながら、光ファイバーを備えた分光光度計(オーシャンオプティクス社製USB2000+)で蛍光強度を測定した。600nm(オレンジ)、450nm(紫)及び530nmの光強度を求めた。事前に、蛍光顔料と蛍光染料との存在比を変えた潤滑油組成物の各波長における発光強度の比率を求めておき、この値から測定部分の潤滑油組成物の拡散量を求めた。また、蛍光発光から潤滑油組成物の拡散距離を求めた。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
目視で潤滑油組成物の拡散距離が明確に分かったが、分光スペクトルから求めた潤滑油組成物の拡散量は、これに対応したものとなっていた。このように本発明の潤滑油組成物を用いることで、拡散の状況が明瞭に視認できるだけでなく、拡散状態が目視できない状況でも、塗布部分の光学的な測定で拡散量が定量できることを示している。
【0041】
<実施例2>
実施例1の潤滑油組成物から油不溶性色素粒子としての青色発光蛍光顔料(DayGlo社製T−19)を除き、同重量のヘキサンを混合して補填用の潤滑油組成物を調製した。実施例1の1週間後の試料に対し、補充用の潤滑油組成物をハケを用いてごく微量補充し、1日放置後、分光スペクトルを測定した。この補充用の潤滑油組成物の塗布、1日放置及び分光スペクトル測定の操作を3回繰り返した。なお、補填用の潤滑油組成物は、ヘキサンの添加により低粘度化されているので、微量塗布が容易にできた。
ブラックライトを照射することで発光させて測定したが、測定時には、補充塗布直後の油のムラが緩和されていること、補充により油の色調が、青味を増していくことが確認でき、目視でも油の補充の状況が確認できた。分光スペクトルによる測定結果は、最初の油量に対し、1回目は−20%、2回目は90%、3回目は105%となった。本発明の潤滑油組成物を機械設備の保守作業に適用することで、初期状態への回復が的確に行えることが分かる。