【文献】
DUAN, J. ET AL.,Fibronectin type III domain based monobody with high avidity.,Biochemictry,2007年,Vol.46 No.44,pages 12656-12664
【文献】
HACKEL, B.J. et al.,Picomolar affinity fibronectin domains engineered utilizing loop length diversity, recursive mutagenesis, and loop shuffling.,J. Mol. Biol.,2008年,Vol.381 No.5,pages 1238-1252
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
TRAIL R2特異的Tn3単量体足場に比較したTRAIL R2に対する結合の改善が、結合親和性の改善および/または結合アビディティの改善である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の多量体足場。
3つ以上のTn3単量体足場がリンカーにより連結され、少なくとも1つのリンカーが他のリンカーとは構造的に、および/または機能的に異なる、請求項5に記載の多量体足場。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
定義
本発明を詳細に記載する前に、具体的な組成物またはプロセスステップを変更しうるという理由から、本発明は、これらに限定されないことは理解されたい。本明細書および添付の請求項で使われる単数形「a」、「an」および「the」は、文脈から明確に別義が指示されない限り、複数参照対象を含むことに留意しなければならない。「a」(また「an」)という用語、ならびに「1つまたは複数の」、および「少なくとも1つの」という用語は、本明細書では同義に使用することができる。
【0024】
さらに、「および/または」は、本明細書で使用される場合は、他方を含め、または含めない、2つの特定された特徴または要素のそれぞれの特定的開示と解釈すべきである。従って、本明細書の語句、例えば、Aおよび/またはB」で使用される「および/または」という用語は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)、および「B」(単独)を含むことが意図されている。同様に、語句、例えば、「A、B、および/またはC」で使用される「および/または」という表現は、次の実施形態のそれぞれを包含することが意図されている:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);およびC(単独)。
【0025】
特に断らなければ、本明細書で使われる全ての技術的科学的用語は、本発明が関連する当業者によって通常理解されているのと同じ意味を有する。例えば、the Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology、Juo、Pei−Show、2nd ed.、2002、CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology、3rd ed.、1999、Academic Press;and the Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology、Revised、2000、Oxford University Press、は、本発明で使用されている多くの用語の一般的辞書を当業者に提供する。
【0026】
単位、接頭辞、および記号は、それらの国際単位系(SI)で認められた形式で表示される。数値の範囲は、範囲を定める数値を含む。他に指示がない限り、アミノ酸配列は、左から右へアミノからカルボキシの方向へ記述される。本明細書で記載される表題は、本発明の種々の態様または実施形態を限定するものではなく、これら態様または実施形態は明細書全体への参照により理解することができる。従って、すぐ後で定義される用語は、明細書全体への参照によりより完全に定義される。
【0027】
実施形態が、本明細書で用語「〜を含む(comprising)」を用いて記載される場合はいつでも、「〜からなる(consisting of)」および/または「本質的に〜からなる(consisting essentially of)」の用語で記載されるそれ以外の類似の実施形態もまた提供されることは理解されよう。
【0028】
アミノ酸は、本明細書では、IUPAC−IUB生化学命名法に関する委員会(IUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commission)により推奨されているそれらの一般に知られている3文字記号または1文字記号により参照される。同様に、ヌクレオチドは、それらの通常受け入れられている単一文字コードにより参照される。
【0029】
本明細書で使われる「エピトープ」という用語は、本発明の足場に結合できるタンパク質決定因子を指す。エピトープは、通常、化学的に活性な表面分子集団、例えば、アミノ酸または糖側鎖からなり、通常は、特異的3次元的構造特性、ならびに特異的電荷特性を有する。立体構造および非立体構造エピトープは、変性溶剤の存在下で前者に対する結合が失われ、後者に対しては失われないことから区別される。
【0030】
「フィブロネクチンタイプIII(FnIII)ドメイン」、「FnIIIドメイン」という用語は、ヒトフィブロネクチンタイプIIIドメインに相同なポリペプチドを指し、これは少なくとも7つのベータ鎖を有し、それらのベータ鎖は2つのベータシート間に分布し、それら自身で互いに集まってタンパク質のコアを形成し、さらに相互にベータ鎖を連結する溶媒に露出したループを含む。ベータシートサンドイッチの各エッジに少なくとも3つのこのようなループがあり、このエッジは、ベータ鎖の方向に垂直なタンパク質の境界である。ある特定の実施形態では、FnIIIドメインは、AB、BC、CD、DE、EF、およびFGと命名される6つのループ領域に結合したA、B、C、D、E、F、およびGと命名される7つのベータ鎖を含み、ループ領域は、各ベータ鎖を連結している。
【0031】
「DNA」という用語は、2つ以上の共有結合で結合した、天然または改変デオキシリボヌクレオチドの配列を指す。
【0032】
「融合タンパク質」という用語は、(i)1つまたは複数の本発明の足場と結合した(ii)第2の別のタンパク質(すなわち「異種の」タンパク質)を含むタンパク質を指す。
【0033】
本明細書で使われる「異種の成分」という用語は、本発明の足場に対する組成物の追加を示すのに使われ、その組成物は、FnIIIドメインの通常の部分ではない。代表的異種の成分には、タンパク質、ペプチド、タンパク質ドメイン、リンカー、薬剤、毒素、造影剤、放射性化合物、有機および無機のポリマー、ならびにFnIIIドメイン自体に固有ではない活性を提供可能な他のいずれかの組成物が含まれ、また、この活性を提供可能な組成物には、限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、細胞傷害性の試薬、放射性核種、造影剤、ビオチン、二量体化ドメイン(例えば、ロイシンジッパードメイン)、ヒト血清アルブミン(HSA)もしくはそのFcRn結合部分、抗体ドメインもしくは断片(例えば、抗体可変ドメイン、CH1ドメイン、Cカッパドメイン、Cラムダドメイン、CH2、またはCH3ドメイン)、単鎖抗体、ドメイン抗体、アルブミン結合ドメイン、IgG分子、酵素、リガンド、受容体、結合ペプチド、非FnIII足場、エピトープタグ、組換え型ポリペプチドポリマー、サイトカイン、等、が含まれる。
【0034】
本明細書で使われる「リンカー」という用語は、2つ以上の足場を結合またはこれらを連結するいずれの分子集合体をも指す。リンカーは、足場のモジュール間の「スペーサー」として作用する機能を有する分子であってもよく、また追加の機能を有する分子(すなわち、「官能性成分」)であってもよい。「異種の成分」の定義に含まれる分子もまた、リンカーとして機能することができる。
【0035】
「結合された(linked)」および「融合された(fused)」という用語は、同義に使用される。これらの用語は、化学の結合または組換え型手段を含む意味を有する全ての作用により、2つ以上の足場、異種の成分、またはリンカーを結合することを指す。
【0036】
「多量体」「多量体足場」および「多価性足場」という用語は、会合している少なくとも2つのFnIII足場を含む分子を指す。多量体足場を形成する足場は、各足場を独立に機能させるリンカーを介して結合できる。「多量体」および「多価性」は、本明細書では同義に使用できる。多価性足場は、単一特異性でも、二重特異性でもよい。
【0037】
「ドメイン」または「タンパク質ドメイン」という用語は、多くの場合残りのタンパク質とは無関係に、安定な3次元構造に折り畳み可能なタンパク質の領域を指し、これは特有の機能を備えることができる。この構造は、元のタンパク質内のドメインの機能に関連した、酵素活性、別の分子に対する認識モチーフの形成、等の特異的機能を保持し、またはタンパク質が、タンパク質の特定の環境中で存在するために必要な構造成分を提供する。タンパク質ファミリーおよび関連タンパク質スーパーファミリーの両方の内で、タンパク質ドメインは、進化的に保存された領域でありうる。多量体足場の成分を記述する場合、用語「ドメイン」、「単量体足場」、および「モジュール」は、同義に使用される。「自然FnIIIドメイン」は、生体によりコードされるいずれかの非組換え型FnIIIドメインを意味する。
【0038】
「タンパク質配列」または「アミノ酸配列」は、アミノ末端からカルボキシル末端方向のポリペプチド中のアミノ酸成分の直鎖状表示を意味し、その表示中で相互に隣接している残基は、ポリペプチドの一次構造中で連続している。
【0039】
「核酸」という用語は、2つ以上の共有結合しているヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体または誘導体のいずれをも指す。本明細書で使われるこの用語には、限定されないが、DNA、RNA、およびPNAが含まれる。「核酸」および「ポリヌクレオチド」は、本明細書では同義に使われる。
【0040】
「ポリヌクレオチド」という用語は、単一核酸ならびに複数核酸を包含することが意図され、単離核酸分子または構築物、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)またはプラスミドDNA(pDNA)を指す。「単離」核酸またはポリヌクレオチドという用語は、自然環境から取り出された核酸分子、DNAまたはRNAを指すことが意図される。例えば、ベクター中に含まれた本発明の足場をコードする組換え型ポリヌクレオチドは、本発明の目的のために単離されているものとする。単離ポリヌクレオチドのさらなる例には、異種の宿主細胞中に維持された組換え型ポリヌクレオチドまたは溶液中の(部分的にまたは実質的に)精製されたポリヌクレオチドが含まれる。単離RNA分子には、本発明のポリヌクレオチドのインビボまたはインビトロRNA転写物が含まれる。本発明による単離ポリヌクレオチドまたは核酸には、合成により製造されたそのような分子がさらに含まれる。さらに、ポリヌクレオチドまたは核酸は、調節配列、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、または転写ターミネーターであっても、またはこれらを含んでもよい。
【0041】
「薬学的に許容可能な」という用語は、顕著な医学的有害結果を伴うことなく動物(例えば、哺乳動物)に投与可能な化合物またはタンパク質を指す。
【0042】
「生理学的に許容される担体」という用語は、治療されている宿主に有意な顕著な影響を与えず、それとともに投与される、化合物の治療特性を維持できる担体を指す。1つの代表的な生理学的に許容される担体は、生理的食塩水である。他の生理学的に許容される担体およびその製剤は、当業者には既知であり、また、例えば、レミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、(18
thedition)、ed.A.Gennaro、1990、Mack Publishing Company、Easton、Pa.(参照により本明細書に組み込まれる)、に記載されている。
【0043】
「ポリペプチド」は、長さ、翻訳後改変、または機能に関わらず、アミド結合(ペプチド結合)により直鎖状に連結した2つ以上のアミノ酸の任意の配列を意味する。「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、本明細書では、同義に使用される。従って、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、またはオリゴペプチドは、「ポリペプチド」の定義の範囲内に含まれ、また、「ポリペプチド」という用語は、これらのいずれの用語に替えて、またはそれらと同義的に用いることができる。「ポリペプチド」という用語は、また、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、これに限定されないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク分解性開裂、または非天然アミノ酸による修飾、を含む修飾産物を指すことが意図されている。ポリペプチドは、天然生物源由来でも、または組換え型技術によって製造されてもよいが、必ずしも指定された核酸配列から翻訳される必要はない。ポリペプチドは、化学合成を含むどのような手法によっても生成可能である。
【0044】
また、本発明のポリペプチドには、前出のポリペプチドの断片、誘導体、類似体、または変異体、およびその任意の組み合わせが含まれる。変異体は、天然でも、または非天然でも発生可能である。非天然変異体は、既知の変異誘発技術を使って製造可能である。変異体ポリペプチドは、保存的もしくは非保存的アミノ酸置換、欠失、または付加を含むことができる。また、「誘導体」には、20種の標準アミノ酸の1つまたは複数の天然アミノ酸誘導体を含むペプチドも含まれる。
【0045】
「ランダム化(randomized)」または「変異した(mutated)」は、テンプレート配列に比較して、欠失、置換または付加等の、1つまたは複数のアミノ酸変化を含むことを意味する。「ランダム化する(randomizing)」または「変異させる(mutating)」は、配列中へのこのようなアミノ酸変化を導入するプロセスを意味する。ランダム化または変異は、一般的には、核酸コード配列の意図的な、盲検法による、または自然の配列変化により達成することができ、任意の技術、例えば、PCR、変異性PCR、または化学DNA合成によって発生させることができる。「ランダム化する」、「無作為の」、「変異させる」、「変異した」等の用語は、本明細書では、同義に使用される。
【0046】
「同種の」(cognate)または「同種の、非変異タンパク質」は、変異体タンパク質がランダム化または変異導入されている場合の変異体タンパク質に導入されたアミノ酸変異を除いて、変異体タンパク質に対する配列が同じであるタンパク質を意味する。
【0047】
「RNA」は、2つ以上の共有結合した天然または改変リボヌクレオチドの配列を意味する。この用語に含まれる改変RNAの一例は、ホスホロチオエートRNAである。
【0048】
本明細書で使われる「本発明の足場」または「本発明の足場(複数)」という用語は、FnIII多量体足場ならびに単量体足場を指す。「標的」という用語は、本発明の特定的な足場により認識される化合物を指す。典型的な標的には、タンパク質、多糖類、ポリヌクレオチドおよび小分子が含まれる。「標的」および「抗原」という用語は、本明細書では同義に使用される。例えば、本明細書で使われる「特異的に結合」または「特異的結合」という用語中の「特異的」という用語は、本発明の足場が1つまたは複数の抗原結合ドメインを介して1つまたは複数の抗原に結合する相対的親和性を指し、その結合は1つまたは複数の抗原結合ドメインと1つまたは複数の抗原の間の一定の相補性を必要とする。この定義に従って、ランダムな非関連エピトープに結合するのに比べてより容易にエピトープに結合する場合に、本発明の足場はそのエピトープに「特異的に結合する」と言われる。
【0049】
本明細書で使われる「親和性」という用語は、本発明のある特定の足場の個別エピトープに対する結合の強度の尺度を指す。
【0050】
本明細書で使われる「アビディティ」という用語は、本発明の足場集団とある特定のエピトープの間の複合体の全体的安定性、すなわち、機能的に組み合わされた複数の足場の抗原との結合強度を指す。アビディティは、個別の抗原結合ドメインの特異的エピトープに対する親和性、および、また本発明の足場の結合価の両方に関連する。
【0051】
「標的に対する作用」という用語は、本発明の多量体足場の1つまたは複数の標的に対する結合、およびこのような結合から得られた生物学的効果を指す。この点に関しては、多量体足場中の複数の抗原結合ユニットは、種々の標的および/またはエピトープと相互作用でき、例えば、2つの標的を物理的により接近させ、個別の標的との相互作用を通して、代謝カスケードを開始させる、等の作用をする。TRAIL R2に関しては、「標的に対する作用」は、例えば、1つまたは複数のTRAIL R2の生物学的活性の強化、刺激または活性化によって、達成される作用を指す。
【0052】
本明細書で使われる「結合価」という用語は、可能性のある抗原結合モジュールの数、例えば、多くの本発明の足場中のFnIIIモジュールを指す。本発明の足場が2つ以上の抗原結合モジュールを含む場合は、各結合モジュールは、例えば、同じ標的または異なる標的中の、同じエピトープまたは異なるエピトープに特異的に結合できる。
【0053】
本明細書で使われる「ジスルフィド結合」という用語は、2つの硫黄原子間で形成された共有結合を含む。アミノ酸システインは、第2のチオール基とジスルフィド結合または架橋を形成することができるチオール基を含む。
【0054】
本明細書で使われる「Tn3モジュール」および「Tn3足場」という用語は、FnIII足場を指し、ここで、Aベータ鎖は配列番号42を含み、Bベータ鎖は配列番号43を含み、Cベータ鎖は配列番号45または131を含み、Dベータ鎖は配列番号46を含み、Eベータ鎖は配列番号47を含み、Fベータ鎖は配列番号49を含み、およびベータ鎖Gは配列番号52を含み、少なくとも1つのループは、「野生型Tn3足場」のループの非天然変異体である。ある特定の実施形態では、Cベータ鎖中のシステイン残基(例えば、配列番号45または131中のシステイン)およびFベータ鎖(配列番号49)中のシステイン残基は置換されないことを除いて、1つまたは複数のTn3モジュールのベータ鎖は、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0055】
本明細書で使われる「野生型Tn3足場」という用語は、配列番号1、すなわち、ヒトテネイシンCの第3FnIII由来の操作FnIII足場を含むFnIII足場を指す。
【0056】
「免疫グロブリン」および「抗体」という用語は、生化学的に区別されうる種々の広範なクラスのポリペプチドを含む。当業者なら、重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンに分類されることを理解するであろう。抗体の「クラス」をそれぞれ、IgG、IgM、IgA、IgG、またはIgE、として決定するのは、この鎖の性質である。これらのクラスの改変物は、当業者には容易に識別可能である。本明細書で使われる「抗体」という用語には、限定されないが、無傷抗体、改変抗体、抗体VLまたはVLドメイン、CH1ドメイン、Cカッパドメイン、Cラムダドメイン、Fcドメイン(同上参照)、CH2、またはCH3ドメインが含まれる。
【0057】
本明細書で使われる「改変抗体」という用語には、天然に存在しない、例えば、少なくとも2つの重鎖部分を含むが、2つの完全な重鎖を含まない(例えば、ドメイン欠失抗体またはミニボディのような)抗体となるように変えられた合成型の抗体;2つ以上の抗原または単一抗原の異なるエピトープに結合するように変えられた多選択性型の抗体(例えば、二重特異性、三重特異性、等)が含まれる。さらに、「改変抗体」という用語には、多価型抗体(例えば、三価、四価、等の同じ抗原の3つ以上のコピーに対する抗体)が含まれる(例えば、Antibody Engineering、Kontermann & Dubel、eds.、2010、Springer Protocols、Springer、を参照のこと)。
【0058】
「インビボ半減期」という用語は、通常の意味、すなわち、ポリペプチドの生物活性の50%が身体/標的器官中にまだ存在している時間、またはポリペプチドの活性が初期値の50%になる時間の意味で使用される。機能的インビボ半減期を測定する代替法として、「血清半減期」、すなわち、除去される前に、ポリペプチド分子の50%が血漿または血流中を循環する時間を測定可能である。血清半減期の測定は、機能的インビボ半減期を測定するより簡単なことが多く、血清半減期の大きさは、通常、機能的インビボ半減期の大きさの良い指標である。血清半減期の代わりの用語には、血漿半減期、循環(circulating)半減期、循環(circulatory)半減期、血清クリアランス、血漿クリアランス、およびクリアランス半減期が含まれる。保持される機能は、通常、凝血促進性、タンパク分解性、補因子結合、受容体結合活性、または特定のタンパク質に関連する他のタイプの生物活性、から選択される。
【0059】
機能的インビボ半減期または血漿半減期に関連する「増加した」という用語は、参照分子(例えば、非改変ポリペプチド)に比べて、ポリペプチドの関連する半減期が同等の条件下で測定して、統計的に有意に増加していることを示すために使用される。
【0060】
本明細書で使われる「発現」という用語は、遺伝子が生化学物質、例えば、本発明の足場またはその断片を産生するプロセスを指す。このプロセスは、細胞内の遺伝子の機能的存在のいかなる現実化をも含み、限定されないが、遺伝子ノックダウンならびに一時的発現および安定発現の両方を含む。限定されないが、それは、遺伝子の1つまたは複数のmRNAへの転写、およびこのようなmRNAの1つまたは複数のポリペプチドへの翻訳を含む。最終目的産物が、生化学的である場合は、発現は、その生化学物質と任意の前駆物質の生成を含む。
【0061】
「発現産物」は、核酸、例えば、遺伝子の転写により産生されるメッセンジャーRNA、またはポリペプチドであってもよい。本明細書記載の発現産物は、さらに、転写後修飾、例えば、ポリアデニル化を受けた核酸、または転写後修飾、例えば、メチル化、グリコシル化、脂質付加、他のタンパク質サブユニットとの会合、タンパク分解性開裂、等を受けたポリペプチドを含む。
【0062】
本明細書で使われる「ベクター」または「発現ベクター」という用語は、本発明においては、宿主細胞中に導入し、目的の発現産物を発現させるための媒体として使用するベクターを意味するように使われる。当業者には既知であるように、そのようなベクターは、プラスミド、ファージ、ウイルスおよびレトロウイルス、からなる群より容易に選択できる。一般的に、本発明に適合するベクターは、選択マーカー、目的核酸のクローニングを、および真核または原核細胞中に入る能力、および/または増殖する能力を促進するための適切な制限酵素部位を含む。
【0063】
「宿主細胞」という用語は、組換DNA技術を使って構築され、少なくとも1つの発現産物をコードするベクターを収容する細胞を指す。組換え型宿主から発現産物を単離するプロセスの記述において、明確に別義が指示されていない限り、「細胞」および「細胞培養物」という用語は、同義に使用され、発現産物の源を意味する。すなわち、「細胞」からの発現産物の回収は、遠心沈殿全細胞からの回収、または培地および懸濁細胞の両方を含む細胞培養物からの回収を意味する。
【0064】
本明細書で使われる「治療する(treat)」または「治療(treatment)」という用語は、治療上の処置および予防または防止手段の両方を指し、その目的は、対象の望ましくない生理的な変化または障害、例えば、炎症性疾患または状態の進行、を防ぐか、または遅らせる(減らす)ことである。有益なまたは所望する臨床的結果には、限定されないが、検出可能、不可能に関わらず、症状の軽減、疾患の程度の低減、疾患の安定化(すなわち、悪化しない)状態、疾患進行の遅延化または緩徐化、改善または疾患状態の緩和、および寛解(部分または完全)が含まれる。
【0065】
「治療」という用語は、また、治療を受けていない場合に予想される生存に比べての生存の延長を意味する。治療を必要としている人には、既に状態または障害のある人、ならびに状態または障害になる傾向がある人、または状態または障害を予防すべき人が含まれる。
【0066】
「対象」、「個体」、「動物」、「患者」、または「哺乳動物」という用語は、診断、予後、または治療が望まれる任意の個体、患者または動物、特に、哺乳類の対象を指す。哺乳類の対象には、ヒト、飼育動物(domestic animal)、家畜(farm animal)、および例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、雌ウシ、等の、動物園の動物、スポーツ用動物またはペット動物が含まれる。
【0067】
本明細書で使われる「TRAIL受容体」という用語は、TRAILに結合し、TRAILに結合時に、腫瘍細胞のプログラム細胞死(アポトーシス)を活性化するタンパク質を指す。TRAIL受容体の非制限的例には、TRAIL2受容体が含まれる。
【0068】
「TRAIL R2」または「TRAIL R2受容体」は、本明細書では同義に使用され、完全長TRAIL受容体配列および可溶の、細胞外ドメイン型の受容体を指す。これは、Sheridan et al.、Science、277:818−821(1997);Pan et al.、Science、277:815−818(1997)、米国特許第6,072,047号および同6,342,369号:国際公開第98/51793号、同98/41629号、同98/35986号、同99/02653号、同99/09165号、98/46643号、および同99/11791号;Screaton et al.、Curr.Biol.、7:693−696(1997);Walczak et al.、EMBOJ.、16:5386−5387(1997);Wu et al.、Nature Genetics、17:141−143(1997)、に記載されている。代表的完全長長さTRAIL受容体配列は、GenBank受入番号AAC51778.1およびO14763.2.で入手可能である。
【0069】
「TRAIL受容体アゴニスト」または「アゴニスト」という用語は、最も広い意味で使用され、TRAIL R2および生物学的に活性なその変異体の1つまたは複数の生物活性を、インビトロ、インサイチュ、またはインビボで、部分的または完全に高める、作動させる、または活性化するいずれの分子をも含む。このような生物活性の例には、アポトーシスならびに文献で報告されているものがさらに含まれる。アゴニストは、直接的に機能しても、間接的でもよい。例えば、TRAIL受容体アゴニストは、受容体活性化またはシグナル伝達を起こすTRAIL R2への結合の結果として、1つまたは複数のTRAIL R2受容体、または1つまたは複数のTRAILR2受容体および他の標的の、1つまたは複数の生物活性を、インビボ、インビトロまたはインサイチュで、部分的にまたは完全に、強化、刺激または活性化するよう機能してもよい。
「TRAIL」または「TRAILポリペプチド」は、1つまたは複数のTRAIL受容体に結合するリガンドを指し、TRAIL R2、ならびに生物学的に活性なその断片が含まれる。代表的TRAIL配列は、GenBankアクセッション番号AAH32722.1およびP50591.1で入手可能である。限定されないが、断片には、約5〜約50アミノ酸残基、または約5〜約25、または約10〜20残基、または約12〜約20アミノ酸残基のTRAILポリペプチド配列を有する配列が含まれる。任意選択で、TRAILペプチドは、25アミノ酸より多くない残基からなる(例えば、25、23、21、19、17、15またはそれ未満のアミノ酸残基)。
「アポトーシス」および「アポトーシス性活性」という用語は、広い意味で使用され、規則的または調節された形の哺乳動物の細胞死を指し、通常、細胞質の凝縮、細胞膜微絨毛の消失、核のセグメンテーション、染色体のDNAの分解またはミトコンドリア機能の消失、を含む、1つまたは複数の特徴的細胞変化が伴う。この活性は、よく知られた技術的方法、例えば、細胞生存率アッセイ、FACS分析またはDNA電気泳動、アネキシンVに対する結合、DNA断片化、細胞収縮、小胞体の膨張、細胞断片化、および/または膜ベシクルの形成(アポトーシス小体)により、判定および測定できる。
【0070】
緒言
TRAIL−R2タンパク質は、TNF受容体スーパーファミリー遺伝子のメンバーにコードされ、細胞内死ドメインを含む。一部の例では、これは、TNFRSFl0B;CD262、DR5、KILLER、KILLER/DR5、TRAIL R2、TRICK2、TRICK2A、TRICK2B、TRICKB、またはZTNFR9、としても知られる。この受容体は、腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド(TNFSF 10/TRAIL/APO−2L)により活性化され、アポトーシスシグナルを伝達する。さらに、TRAIL R2誘導アポトーシスには、カスパーゼおよび細胞内アダプター分子FADD/MORT1が関与する(Walczak et al.EMBOJ、(1997)、16、5386−97)。
【0071】
いくつかのタイプの正常細胞がTRAIL R2を発現するが、この受容体を経由するアポトーシスシグナル伝達は、主に、腫瘍細胞に限定されているように思われ、腫瘍細胞は、癌遺伝子、例えば、MycまたはRasによるそれらの形質転換との関連で細胞死受容体媒介アポトーシスをより受けやすくなる(Wang et al.、Cancer Ce ll5:501−12(2004);Nesterov et al.、Cancer Res.64:3922−7(2004))。TRAIL R2は、ヒト癌細胞株ならびに原発性腫瘍で発現することが多い。
【0072】
本発明は、TRAIL R2に結合可能な組換え型、非天然タンパク質足場ファミリーを提供する。特に、本明細書記載のタンパク質は、抗体可変領域の相補性決定領域(「CDR」)に類似の規定されたループを提示するのに使用できる。これらのループは、ランダム化または制限された進化を受け、多数の標的化合物に結合可能な多様性を生成することができる。タンパク質は、TRAIL R2および別の標的に結合可能な多選択性の足場に構築することができる。
【0073】
特定的な実施形態では、本発明は、限定されないが、癌等の疾患の予防、改善、検出、診断、またはモニタリングに有用なTRAIL R2特異的結合物質を提供する。他の特定的な実施形態では、本発明のTRAIL R2特異的結合足場は、癌細胞がTRAIL R2を発現する癌の治療に有用である。一部の実施形態では、癌には、限定されないが、肺癌、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、結腸癌、結腸直腸癌、膵臓癌、および多発性骨髄腫を含むことができる。本発明は、また、細胞集団を除去するための足場の使用方法を提供する。一実施形態では、本発明の方法は、次の細胞型の除去に有用である:好酸球、好中球、T細胞、B細胞、マスト細胞、単球および腫瘍細胞。
【0074】
本発明の足場は、ヒトテネイシンCの第3FnIIIドメイン由来の単量体足場を含む多量体足場であり、少なくとも1つの非天然分子内ジスルフィド結合が操作されている。本発明の多量体足場を構成するTn3足場は、相互に独立して正確に折り畳まれて、それらの結合特異性および親和性を維持し、また、それぞれの単量体足場は、その機能特性を保持する。本発明の多量体足場を構成するTn3足場が高結合価多量体足場、例えば、6価または8価足場、に構築される場合、単量体足場は相互に独立して正確に折り畳まれてそれらの結合特異性および親和性を維持し、また、それぞれ1つの単量体足場は、その機能特性を保持する。
【0075】
構築物の形態が直鎖状でない場合でも、例えば、単量体Tn3または多量体Tn3足場が複雑な分岐構造(例えば、Fc融合体構築物または抗体様構築物)に構築される場合でも、高結合価足場(例えば、6価または8価)を含む多量体Tn3足場は、正確に折り畳まれる。
【0076】
自然FnIIIドメイン、例えば、ヒトフィブロネクチンの第10FnIIIドメインおよび大部分の天然FnIIIドメインは、ジスルフィド結合または遊離システインを含まない。多ドメインタンパク質が複数のシステインの導入により操作される場合、タンパク質発現の欠失、生じたタンパク質の沈殿、または非機能性タンパク質の産生が頻繁に発生する。これらの有害作用は、分子内のドメイン内および/またはドメイン間ジスルフィド結合の不正確な形成、および/または分子間ジスルフィド結合の不正確な形成に起因し、これは不正確なタンパク質折り畳み構造を生ずる。これらの効果は、通常、システイン、および/またはタンパク質ドメインの数が増加すると増強される。
【0077】
例えば、8つの野生型Tn3足場(配列番号1)を含む直鎖多量体足場は、単一ポリペプチドアミノ酸配列に沿って16システインを含むことになるであろう。別の代表的実施形態では、4つのTn3モジュールを含む抗体様構築物(2つのTn3モジュールがIgG重鎖に結合し、2つのTn3がIgG軽鎖に結合している)は、4つの異なるポリペプチド鎖の中に分布した8システインを含むことになるであろう。このような数のシステインおよびこのような構造的複雑さを含む、例えば、4、6、または8つの直鎖Tn3モジュールを有する本発明の多量体足場は、正確に折り畳まれ、それぞれの単量体に比較して、改善された安定性と標的結合特性を示す。
【0078】
1つまたは複数の操作されたジスルフィド架橋を含むTn3足場が高結合価多量体型に構築されると、各個別単量体足場は正確に折り畳まれ、結合特異性および親和性、ならびに機能特性を保持する。さらに、単量体足場は、安定、機能的、かつ正確に折り畳まれた多量体足場を形成することができる。
【0079】
本発明の多量体足場の利点は、複数のエピトープに結合する能力、例えば、(i)単一標的中の複数のエピトープへの結合、(ii)複数標的中の単一エピトープへの結合、(iii)1つの標的の複数の異なるサブユニット上に位置する複数のエピトープへの結合、または(iv)複数の標的の複数のエピトープへの結合、すなわち、増加していくアビディティである。
【0080】
さらに、多量体足場の柔軟性、および複数のTn3単量体間の距離をリンカーを介して変えることができる可能性により、Tn3多量体足場は、表面(同じ細胞/表面または異なる細胞/表面)上の複数の標的分子に結合可能である。
【0081】
2つ以上の標的に同時に結合するそれらの能力の結果として、本発明の多量体足場は、複数の経路を調節し、細胞表面上の受容体に交差結合し、別々の細胞上の細胞表面受容体に結合し、および/または標的分子または細胞を基質に結合させるために使用することができる。
【0082】
FnIIIドメインの以前の配列解析から、BCとFGループで大きな変動が認められ、これらのループが安定性に重要ではないことを示唆している(例えば、国際公開第2009/058379号を参照)。本発明は、改善された安定性を有するTn3足場を提供し、これは、アミノ酸配列が変動するが、ヒトテネイシンCの対応する第3FnIIIのFGループよりも短い長さのFGループを含む。FGループの短縮化により安定性の増加した変異Tn3足場が生成されることが観察された。従って、本発明の別の態様では、タンパク質安定性の増加した野生型Tn3足場(配列番号1)の変異体が提供される。
【0083】
ある特定の実施形態では、本発明のTn3単量体足場は、9アミノ酸および10アミノ酸のFGループ長さを有する自然ヒトテネイシンC第3FnIIIドメインを含む足場に比べて増加した安定性を有するFGループを含む。さらに、本発明は、安定性の増加したTn3足場を単離するのに有用な特定したFGループ長さを有する多様なFnIII足場のライブラリーを提供する。
【0084】
さらに、本発明は、TRAIL R2および1つまたは複数の追加の標的に結合することのできる特異性足場、特定的な標的に対する親和性が変異により調節される親和性成熟足場、および動物種間の免疫原性および/または交差反応性が変異により調節されている足場を提供する。また、本発明は、本発明の足場の製造方法、ならびに足場を望ましい物理化学的、薬理学的、または免疫学的な特性を有するように操作する方法を提供する。さらに、本発明は、このような足場の使用、および治療、予防、および診断のための使用方法を提供する。
【0085】
FnIII構造モチーフ
本発明のTn3足場は、生命体およびウイルスの3つのドメイン全てにわたって、また、多数のタンパク質クラスで広く認められるドメインであるタイプIII(FnIII)フィブロネクチンモジュールの構造に基づいている。
【0086】
特定的な実施形態では、本発明の足場は、ヒトテネイシンCの第3のFnIIIドメイン(配列番号4)由来である。1つの特定的な実施形態では、本発明の足場は、Tn3モジュールを含む。このドメインの全体としての3次元折り畳みは、最小の機能的抗体断片である重鎖(VH)可変領域に密接に関連している。この重鎖(VH)可変領域は、ラクダおよびラクダ科動物(例えば、ラマ)の単一ドメイン抗体では、完全抗原認識ユニットを含む。
【0087】
本発明のTn3単量体足場およびテネイシンC由来自然FnIIIドメインは、同じ3次元構造、すなわち、一方の側に3つのベータ鎖(A、B、およびE)およびもう一方の側に4つのベータ鎖(C、D、F、およびG)を有し、6つのループ領域により連結されているベータサンドイッチ構造を特徴とする。これらのループ領域は、各ループのNおよびC末端に連結したベータ鎖に従って命名されている。従って、ABループは、ベータ鎖AとBの間に位置し、BCループは鎖BとCの間に位置し、CDループはベータ鎖CとDの間に位置し、DEループはベータ鎖DとEの間に位置し、EFループはベータ鎖EとFの間に位置し、およびFGループはベータ鎖FとGの間に位置する。FnIIIドメインは、ランダム化に耐性のある溶媒に露出したループを有し、これは、特定的な標的に高親和性で結合可能な多様なタンパク質足場プールの生成を促進する。
【0088】
本発明の一態様では、Tn3ドメインは、抗体可変領域の相補性決定領域(CDR)に類似の1つまたは複数のループをランダム化するように設計されている指向性進化に供される足場として使用される。このような指向性進化手法は、対象標的、例えば、TRAIL R2に対し高親和性を有する抗体様分子の産生をもたらす。さらに、一部の実施形態では、本明細書記載の足場は、確定した露出ループ(例えば、以前にランダム化され、標的との結合に基づいて選択されたループ)を、このような導入ループに結合する分子の進化を指示することを目的として、提示するために使用可能である。このタイプの選択は、いずれかの個別のCDR様ループに対して、認識分子を特定するために、または、その代わりに、2つまたは3つ全ての非線形エピトープ結合成分に組み合わされたCDR様ループの認識のために、行うことができる。
【0089】
本発明の足場は、国際公開第2009/058379号に記載のヒトテネイシンC構造モチーフの第3FnIIIドメインに基づいた分子である。特異的標的結合を付与することができる3つのループ(BC、DE、およびFGと命名)のセットは、それぞれ、BとC鎖;DとE鎖、およびFとGベータ鎖の間をつないでいる。ヒトテネイシンCの第3FnIIIドメインのBC、DE、およびFGループは、それぞれ、9、6、および10アミノ酸残基の長さである。これらループの長さは、抗体重鎖で見つかった同種の抗原認識ループの狭い範囲内、すなわち、それぞれ7〜10、4〜8、および4〜28アミノ酸長さ、に入る。同様に、第2のセットのループのAB、CD、およびEFループ(それそれ7、7、および8、アミノ酸長さ)は、それぞれ、AとBベータ鎖;CとDベータ鎖;およびEとFベータ鎖の間をつないでいる。
【0090】
ランダム化を行い、標的に対する高親和性結合で選択されると、Tn3ドメイン中のループは、抗体中の同種のCDRループの接触に等価の標的との接触が可能である。従って、一部の実施形態では、AB、CD、およびEFループは、ランダム化および1つまたは複数の標的、例えば、TRAIL R2に対する高親和性結合について選択される。一部の実施形態では、このランダム化および選択プロセスは、BC、DE、およびFGループのランダム化と平行に行うことができ、一方、他の実施形態では、このランダム化および選択プロセスは順次で行われる。
【0091】
本発明の単量体足場
本発明は、複数のループ領域に結合した複数のベータ鎖ドメインを含む組換え型、非天然FnIII足場を提供し、ここで1つまたは複数の前記ループ領域が、野生型Tn3(配列番号1)中の同種のループ由来の少なくとも1つのアミノ酸の欠失、置換または付加により変化している。
【0092】
新規結合特性を有する改善されたTn3モジュールを生成するために、野生型Tn3がアミノ酸付加、欠失または置換を受ける。改善された足場の配列をTn3配列に比較する場合、ベータ鎖およびループの同じ定義が使用されることは理解されよう。改善されたTn3足場は、ヒトテネイシンCの第3FnIIIドメイン、野生型Tn3足場、または以前改善されたTn3足場を使って生成できる。一部の実施形態では、本発明の単量体足場は、アミノ酸配列:
IEV(X
AB)
nALITW(X
BC)
nCELX
1YGI(X
CD)
nTTIDL(X
DE)
nYSI(X
EF)
nYEVSLIC(X
FG)
nKETFTT、
を含み、ここで、X
AB、X
BC、X
CD、X
DE、X
EF、およびX
FGは、それぞれAB、BC、CD、DE、EF、およびFGループ中に存在するアミノ酸残基を表し、X
1はアミノ酸残基AまたはTを表し、また、n=2〜26である。
【0093】
一実施形態では、X
ABは配列番号35からなる。一実施形態では、X
BCは配列番号36からなる。一実施形態では、X
CDは配列番号37からなる。一実施形態では、X
DEは配列番号38からなる。一実施形態では、X
EFは配列番号39からなる。一実施形態では、X
FGは配列番号40からなる。
【0094】
一実施形態では、X
ABは配列番号35を含む。一実施形態では、X
BCは配列番号36を含む。一実施形態では、X
CDは配列番号37を含む。一実施形態では、X
DEは配列番号38を含む。一実施形態では、X
EFは配列番号39を含む。一実施形態では、X
FGは配列番号40を含む。
【0095】
ある特定の実施形態では、X
ABは配列番号35からなり、X
CDは配列番号37からなり、さらにX
EFは配列番号39からなる。一実施形態では、X
BCは配列番号36からなり、X
DEは配列番号38からなり、さらにX
FGは配列番号40からなる。
【0096】
ある特定の実施形態では、X
ABは配列番号35を含み、X
CDは配列番号37を含み、さらにX
EFは配列番号39を含む。一実施形態では、X
BCは配列番号36を含み、X
DEは配列番号38を含み、さらにX
FGは配列番号40を含む。
【0097】
一部の実施形態では、本発明の単量体足場は、Tn3モジュールを含む。さらに他の実施形態では、本発明の足場は、Tn3モジュール(配列番号1)を含み、ヒトテネイシンCの第3のFnIIIドメインのベータ鎖C(配列番号4)がN末端システイを含む変異ベータ鎖C(配列番号45または配列番号131)により置換され、ヒトテネイシンCの第3FnIIIドメインのベータ鎖F(配列番号48)がC末端システインを含む変異ベータ鎖F(配列番号49)により置換されている。一部の実施形態では、本発明の足場は、Tn3モジュールを含み、CおよびFベータ鎖(それぞれ、配列番号45または131;および配列番号49)中のシステイン残基は置換できないことを除いて、1つまたは複数のベータ鎖が少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0098】
本発明の足場の種々のベータ鎖を結合するループは、長さおよび/または配列多様性に関しランダム化可能である。一実施形態では、本発明の足場は、長さおよび/または配列多様性に関しランダム化された少なくとも1つのループを有する。一実施形態では、足場の少なくとも1つの、少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、少なくとも5つのまたは少なくとも6つのループが長さおよび/または配列多様性に関しランダム化される。一実施形態では、本発明の足場の少なくとも1つのループは、一定に保持され、他方、少なくとも1つの別のループは、長さおよび/または配列多様性に関しランダム化される。別の実施形態では、ループAB、CD、EFのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てが一定に保持され、他方、ループBC、DE、FGのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てが長さまたは配列多様性に関しランダム化される。別の実施形態では、ループAB、CD、およびEFのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、または少なくとも3つ全てがランダム化され、他方、ループBC、DE、およびFGのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てが長さおよび/または配列多様性に関しランダム化される。さらに別の実施形態では、ループAB、CD、EF、BC、DE、およびFGのうちの少なくとも1つの、少なくとも2つの、少なくとも3つのループ、少なくとも4つの、少なくとも5つの、または6つ全てのループが長さまたは配列多様性に関しランダム化される。
【0099】
一部の実施形態では、1つまたは複数のループ内の残基が一定に保持され、他方、他の残基が長さおよび/または配列多様性に関しランダム化される。一部の実施形態では、1つまたは複数のループ内の残基が所定の、限られた数の異なるアミノ酸に限定され、他方、他の残基が長さおよび/または配列多様性に関しランダム化される。従って、本発明の足場は、縮重したコンセンサス配列および/または1つまたは複数の不変アミノ酸残基を有する1つまたは複数のループを含むことができる。一実施形態では、本発明の足場は、次のコンセンサス配列:K−X−X−X−X−X−a、を有するランダム化されたABループを含む。ここで、Xは、アスパラギン、アスパラギン酸、ヒスチジン、チロシン、イソロイシン、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、トレオニン、アラニン、プロリン、またはセリンを表し、(a)は、セリン、トレオニン、アラニン、またはグリシンを表す。別の実施形態では、本発明の足場は、次のコンセンサス配列:K−X−X−X−X−X−X−X−a、を有するランダム化されたABループを含む。ここで、Xは、アスパラギン、アスパラギン酸、ヒスチジン、チロシン、イソロイシン、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、トレオニン、アラニン、プロリン、またはセリンを表し、(a)は、セリン、トレオニン、アラニン、またはグリシンを表す。
【0100】
別の実施形態では、本発明の足場は、次のコンセンサス配列:S−X−a−X−b−X−X−X−G、を有するランダム化されたBCループを含む。ここで、Xは、任意のアミノ酸を表し、(a)は、プロリンまたはアラニンを表し、さらに、(b)は、アラニンまたはグリシンを表す。別の実施形態では、本発明の足場は、次のコンセンサス配列:S−P−c−X−X−X−X−X−X−T−G、を有するランダム化されたBCループを含み、Xは、任意のアミノ酸を表し、(c)は、プロリン、セリンまたはグリシンを表す。さらに別の実施形態では、本発明の足場は、次のコンセンサス配列:A−d−P−X−X−X−e−f−X−I−X−G、を有するランダム化されたBCループを含み、Xは、任意のアミノ酸を表し、(d)は、プロリン、グルタメートまたはリシンを表し、(e)は、アスパラギンまたはグリシンを表し、さらに、(f)は、セリンまたはグリシンを表す。
【0101】
一実施形態では、本発明の足場は、次のコンセンサス配列:X
nを有するランダム化されたCDループを含み、Xは、任意のアミノ酸を表し、n=6、7、8、9、または10である。別の実施形態では、本発明の足場は、次のコンセンサス配列:X
n、を有するランダム化されたCDループを含み、Xは、アスパラギン、アスパラギン酸、ヒスチジン、チロシン、イソロイシン、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、トレオニン、アラニン、プロリン、またはセリンを表し、n=7、8、または9である。
【0102】
一実施形態では、本発明の足場は、次のコンセンサス配列:X−X−X−X−X−X、を有するランダム化されたDEループを含み、Xは任意のアミノ酸を表す。
【0103】
一実施形態では、本発明の足場は、次のコンセンサス配列:X−b−L−X−P−X−c−X、を有するランダム化されたEFループを含み、Xは、アスパラギン、アスパラギン酸、ヒスチジン、チロシン、イソロイシン、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、トレオニン、アラニン、プロリン、またはセリンを表し、(b)は、アスパラギン、リシン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、またはグリシンを表し、さらに、(c)は、イソロイシン、トレオニン、セリン、バリン、アラニン、またはグリシンを表す。
【0104】
一実施形態では、本発明の足場は、次のコンセンサス配列:X−a−X−X−G−X−X−X−b、を有するランダム化されたFGループを含み、Xは、任意のアミノ酸を表し、(a)は、アスパラギン、トレオニンまたはリシンを表し、さらに、(b)は、セリンまたはアラニンを表す。別の実施形態では、本発明の足場は、次のコンセンサス配列:X−X−X−X−X−X−X−X−X(X
9)、を有するランダム化されたFGループを含み、Xは、任意のアミノ酸を表す。さらに別の実施形態では、本発明の足場は、次のコンセンサス配列:X−a−X−X−X−X−b−N−P−A、を有するランダム化されたFGループを含み、Xは、任意のアミノ酸を表し、(a)は、アスパラギン、トレオニンまたはリシンを表し、(b)は、セリンまたはグリシンを表す。特定的な実施形態では、本発明の足場は、次のコンセンサス配列:X−a−X−X−G−X−X−S−N−P−A、を有するランダム化されたFGループを含み、Xは、任意のアミノ酸を表し、(a)は、アスパラギン、トレオニンまたはリシンを表す。
【0105】
特定の実施形態では、本発明の足場は、ヒトテネイシンCの第3FnIIIドメインの同種のFGループよりも、少なくとも1つのアミノ酸残基分短くなるように維持され、1つまたは複数の位置でさらにランダム化されているFGループを含む。
【0106】
特定的な実施形態では、ループBC、DE、およびFGの内の少なくとも1つのループがランダム化され、Aベータ鎖が配列番号41または42を含み、Bベータ鎖が配列番号43を含み、Cベータ鎖が配列番号44を含み、Dベータ鎖が配列番号46を含み、Eベータ鎖が配列番号47を含み、Fベータ鎖が配列番号48、49、50、または51を含み、およびGベータ鎖が配列番号52または53を含み、ABループが配列番号35を含み、CDループが配列番号37を含み、さらにEFループが配列番号39を含む。
【0107】
他の特定的な実施形態では、ループAB、CD、およびEFの内の少なくとも1つのループがランダム化され、Aベータ鎖が配列番号41または42を含み、Bベータ鎖が配列番号43を含み、Cベータ鎖が配列番号44または45を含み、Dベータ鎖が配列番号46を含み、Eベータ鎖が配列番号47を含み、Fベータ鎖が配列番号48、49、50、または51を含み、さらに、Gベータ鎖が配列番号52または53を含み、BCループが配列番号36を含み、DEループが配列番号38を含み、さらに、FGループが配列番号40を含む。
【0108】
足場安定性の強化
非天然ジスルフィド結合
本発明のTn3足場の安定性は、多くの異なる手法により高めることができる。一部の実施形態では、本発明の足場は、Nおよび/またはC末端領域の伸長により安定化できる。Nおよび/またはC末端領域は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または10超のアミノ酸により伸長することができる。他の実施形態では、本発明のTn3足場は、本明細書記載の血清半減期を増加させる変化を導入することにより安定化できる。さらに別の実施形態では、本発明のTn3足場は、足場の疎水性のコアを安定化させるために、少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、欠失または置換を含む。
【0109】
本発明のTn3足場は、非天然ジスルフィド結合を操作することにより効果的に安定化できる。このように操作された足場は、多量体足場の一部として、効果的に発現させることができる。操作された足場のジスルフィド結合の正確な形成および正確な折り畳みは、足場の生物活の保存により証明される。非天然ジスルフィド結合を含む操作された足場は、少なくとも2つの標的(例えば、実施例8参照)または3つの標的(例えば、実施例12参照)に同時に結合できるという事実は、足場の3次元構造は、操作されたジスルフィド結合によって大きく変えられていないこと、および標的結合ループの相対的位置が保存されていることの証明を提供する。一部の実施形態では、本発明の足場は、国際公開第2009/058379号に記載のように、非天然ジスルフィド結合を含む。バイオインフォマティクス手法を利用して、ジスルフィド結合を操作するのに適した候補位置を特定できる。
【0110】
一実施形態では、本発明のTn3単量体足場は、少なくとも1つの、少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、または少なくとも5つの非天然分子内ジスルフィド結合を含む。特定的な実施形態では、本発明は、ヒトテネイシンCの第3FnIIIドメインに比べて安定性の増加した、2つ、3つ、4つ、またはそれを超える数の操作された分子内のジスルフィド結合を含むTn3足場を得る方法を提供する。
【0111】
一実施形態では、本発明のTn3単量体足場は、少なくとも1つの非天然分子内ジスルフィド結合を含み、少なくとも1つの前記非天然ジスルフィド結合が単量体足場を安定化させる。
【0112】
別の実施形態では、本発明の多量体足場は、少なくとも1つの同じ多量体足場中の2つの異なる単量体足場の間に位置する非天然ジスルフィド結合を含む。さらに別の実施形態では、本発明の足場は、少なくとも1つの非天然ジスルフィド結合を含み、結合は、2つの異なる多量体足場の間に位置する、すなわち、ジスルフィド結合は、分子間ジスルフィド結合である。例えば、ジスルフィド結合は、異なる足場(例えば、2つの分離したTn3単量体足場、分離したTn3単量体足場と多量体足場、または2つの多量体足場)、Tn3足場とリンカー、足場とFnドメイン、またはTn3足場と抗体またはその断片、を連結できる。一部の実施形態では、本発明の足場は、足場および分離した異種の成分、足場および同じ足場に融合またはコンジュゲートされた異種の成分、または足場および異なる足場に融合またはコンジュゲートされた異種の成分を連結する少なくとも1つの非天然分子間ジスルフィド結合を含む。
【0113】
一部の実施形態では、本発明の足場は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたはそれを超える数の多量体足場を形成するジスルフィド結合を含む。
【0114】
別の実施形態では、本発明の足場は、Nおよび/またはC末端領域の伸長を含んでもよい。一実施形態では、本発明の足場は、本明細書記載の血清半減期を延長するための変化を含む。さらに別の実施形態では、本発明の足場は、少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、欠失または置換を含み、疎水性の足場のコアを安定化させる。
【0115】
特定的な実施形態では、本発明の足場は、少なくとも1つの非天然分子内ジスルフィド結合を含み、Aベータ鎖ドメインは配列番号42を含み、Bベータ鎖は配列番号43を含み、Cベータ鎖は配列番号45を含み、Dベータ鎖は配列番号46を含み、Eベータ鎖は配列番号47を含み、Fベータ鎖は配列番号49を含み、さらにGベータ鎖は配列番号52を含む。
【0116】
特定的な実施形態では、本発明の足場は、少なくとも1つの非天然分子内ジスルフィド結合を含み、Aベータ鎖ドメインは配列番号42からなり、Bベータ鎖は配列番号43からなり、Cベータ鎖は配列番号45からなり、Dベータ鎖は配列番号46からなり、Eベータ鎖は配列番号47からなり、Fベータ鎖は配列番号49からなり、さらに、Gベータ鎖は配列番号52からなる。
【0117】
特定的な実施形態では、本発明の足場は、少なくとも1つの非天然分子内ジスルフィド結合を含み、Aベータ鎖ドメインは本質的に配列番号42からなり、Bベータ鎖は本質的に配列番号43からなり、Cベータ鎖は本質的に配列番号45からなり、Dベータ鎖は本質的に配列番号46からなり、Eベータ鎖は本質的に配列番号47からなり、Fベータ鎖は本質的に配列番号49からなり、さらに、Gベータ鎖は本質的に配列番号52からなる。
【0118】
足場安定性の強化:FGループ長
発明者はFGループの長さがTn3足場の安定性に対してある種の役割を果たすことを発見した。特に、FOIのFGループで認められる長さより少なくとも1つのアミノ酸長分短い非天然変異FGループを含むTn3足場は、強化された安定性を有することが示されている。ある特定の実施形態では、本発明の足場は、ヒトテネイシンCの第3FnIIIドメインのFGループより少なくとも1つのアミノ酸残基分が短い非天然変異体FGループを含む。
【0119】
特定的な実施形態では、Tn3足場の安定性は、FGループの少なくとも1つのアミノ酸の欠失により強化される。別の実施形態では、Tn3足場の安定性は、少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つ、または少なくとも5つ、または少なくとも6つ、または少なくとも7つ、または少なくとも8つ、または少なくとも9つ、または少なくとも10のFGループ中のアミノ酸の欠失により強化されうる。安定化Tn3足場は、少なくとも1つの非天然ジスルフィド結合を含んでもよいことが特に意図されている。
【0120】
ある特定の実施形態では、Tn3足場変異体は、また、長さおよび/または配列に関してランダム化された少なくとも1つのループ(すなわち、AB、BC、CD、DE、EF、および/またはFG)を含む。Tn3足場変異体は、少なくとも1つの非天然ジスルフィド結合を含んでもよいことが、特に意図される。
【0121】
特定の実施形態では、Tn3足場変異体は、少なくとも1つの、または少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つ、または少なくとも5つ、または少なくとも6つ、または少なくとも7つ、または少なくとも8つ、または少なくとも9つ、または少なくとも10だけ野生型Tn3足場のFGループより短いアミノ酸残基のFGループを含み、Tn3足場変異体は、少なくとも1つのアミノ酸置換をさらに含む。
【0122】
安定性の測定
単離された多量体足場またはその一部としての本発明の安定化FnIII足場の安定性の増加は、当技術分野でよく知られた技術、例えば、熱(T
m)および不安定化変性(例えば、尿素、またはグアニジン塩での処理)、プロテアーゼ処理(例えば、サーモリシンでの処理)またはタンパク質の安定性測定のために技術的に受け入れられた別の方法により容易に測定可能である。タンパク質の安定性測定に使用される技術の包括的考察は、canbefound、例えば、「Current Protocols in Molecular Biology」および「Current Protocols in Protein Science」by John Wiley and Sons.2007、で見付けることができる。
【0123】
多量体足場
本発明の一態様では、タンデムに連結された少なくとも2つの本発明のTn3単量体足場を含む多量体足場が提供される。このような多量体足場は、複数の形態に構築することができる。一部の実施形態では、Tn3単量体足場は、直鎖状形式で構築され、また、他の実施形態では、足場は、分岐形式で構築される(例えば、
図1参照)。特定的な態様では、本発明は多量体足場を提供し、少なくとも2つのTn3足場がペプチドリンカーを介してタンデムに連結される。一部の実施形態では本発明の多量体足場中の各Tn3足場はTRAIL R2に結合し、第2のTn3足場は、異なる標的に結合し、それにより複数の機能を示し、および/または同じ標的に結合し、それにより標的結合の結合価および/またはアビディティ、標的の他の作用、を高める。一部の実施形態では、複数の足場が同じ標的に結合する場合に標的結合の結合価および/またはアビディティの増加が達成される。一部の実施形態では、結合価の増加により、標的に対する特定の作用、例えば、標的タンパク質の二量体化の増加作用が改善される。
【0124】
特定的な実施形態では、本発明の多量体足場は、タンデムに連結された少なくとも2つの本発明のTn3足場を含み、各Tn3足場は、少なくとも1つの標的に結合し、各Tn3足場は、複数のループ領域に結合した複数のベータ鎖を含み、少なくとも1つのループは、野生型Tn3ドメインの同種のループの非天然変異体である。
【0125】
多量体タンデム足場
一実施形態では、本発明の多量体足場は、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、またはそれを超える数の本発明のTn3単量体足場を含む。一部の実施形態では、一部のTn3単量体足場がタンデムに連結される。さらに別の実施形態では、一部のTn3単量体足場がタンデムに連結され、一部のTn3単量体足場は、タンデムに連結されない。特定的な実施形態では、本発明の多量体足場は、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10またはそれ超のタンデムに連結された本発明の足場を含む(例えば、
図1および
図2参照)。
【0126】
一実施形態では、多量体足場は、Tn3単量体足場間の共有結合を介して、例えば、直接Tn3足場を連結することにより、またはリンカー、例えば、ペプチドリンカーを組み込む事により、生成される。特定の例では、共有結合足場は、Tn3単量体足場をコードする融合遺伝子を構築することにより、あるいは、システイン残基のコドンを単量体Tn3足場中へ操作して、発現産物間でジスルフィド結合形成を可能とすることにより、生成される。
【0127】
一実施形態では、本発明の多量体足場は、いかなる介在アミノ酸の追加をも必要とせず、相互に直接連結される少なくとも2つのTn3足場を含む。別の実施形態では、本発明の多量体足場は、リンカー、例えば、ペプチドリンカー経由でタンデムに連結されている少なくとも2つのTn3足場を含む。特定的な実施形態では、本発明の多量体足場は、ペプチドリンカーを介して連結されている少なくとも2つのTn3足場を含み、ペプチドリンカーは、1〜約1000、または1〜約500、または1〜約250、または1〜約100、または1〜約50、または1〜約25のアミノ酸を含む。特定的な実施形態では、本発明の多量体足場は、ペプチドリンカーを介してタンデムに連結されている少なくとも2つのTn3足場を含み、ペプチドリンカーは、1〜約20、または1〜約15、または1〜約10、または1〜約5のアミノ酸を含む。
【0128】
特定的な実施形態では、本発明の多量体足場は、リンカー、例えば、ペプチドリンカーを介してタンデムに連結されている少なくとも2つのTn3足場を含み、リンカーは、官能性成分である。官能性成分は、目的の多量体足場の機能および/または特性に基づき選択される。例えば、精製に有用な官能性成分(例えば、ヒスチジンタグ)は、リンカーとして使用可能である。リンカーとして使用可能な官能性成分には、限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、細胞傷害剤、放射性核種、造影剤、ビオチン、二量体化ドメイン、ヒト血清アルブミン(HSA)またはそのFcRn結合部分、抗体ドメインまたは断片、単鎖抗体、ドメイン抗体、アルブミン結合ドメイン、IgG分子、酵素、リガンド、受容体、結合ペプチド、非Tn3足場、エピトープタグ、組換え型ポリペプチドポリマー、サイトカイン、等が含まれる。リンカーとして使用可能な特定のペプチドリンカーおよび官能性成分は、下記に開示される。
【0129】
一部の実施形態では、多量体Tn3足場は、1つまたは複数のリンカーを介して連結されている少なくとも2つのTn3足場を含み、各Tn3足場間に挟まれたリンカーは、同一のリンカーであっても、または異なるリンカーであってもよい。一部の実施形態では、リンカーは、複数のリンカーを含むことができ、これらは、同一のリンカーでも異なるリンカーでもよい。一部の実施形態では、複数のリンカーが鎖状に連結される場合、一部または全部のリンカーが官能性成分であってよい。
【0130】
多量体足場結合化学量論
一部の実施形態では、多量体Tn3足場は、TRAIL R2に対し特異的な足場を含む。他の実施形態では、本発明の多量体足場は、異なるエピトープに対し特異的な足場を含み、異なるエピトープは、TRAIL R2上のまたは異なる標的上の異なるエピトープであり得る。
【0131】
特定的な実施形態では、多量体Tn3足場は、同じTRAIL R2上の2つ以上の異なるエピトープ(例えば、非重複エピトープ)に結合する。別の特定的な実施形態では、多量体Tn3足場は、TRAIL R2上の2つ以上の異なるエピトープに結合する。さらに別の特定的な実施形態では、多量体Tn3足場は、TRAIL R2上の2つ以上の異なるエピトープに結合し、さらに、1つまたは複数の異なる標的分子上の少なくとも1つのエピトープに結合する。さらに別の特定的な実施形態では、多量体Tn3足場は、TRAIL R2二量体上の同じエピトープに結合する。さらに別の実施形態では、多量体Tn3足場は、少なくとも2つのTRAIL R2分子上の同じエピトープに結合する。特定の実施形態では、多量体Tn3足場は、隣接する細胞表面のTRAIL R2分子の2つ以上のコピー上の同じエピトープに結合する。一部の実施形態では、多量体Tn3足場は、同じまたは異なる結合親和性および/またはアビディティで、TRAIL R2または異なる標的上の同じエピトープまたは異なるエピトープに結合することができる。
【0132】
別の実施形態では、多量体Tn3足場中の単量体足場は、所望の標的に対する作用、例えば、標的の二量体化を(例えば、相乗的に)達成する、または強化するように作られた特異的結合パターンに従ってTRAIL R2の1つまたは複数のコピー上のエピトープに結合することができる。例えば、直鎖多量体足場中のTn3足場は、ある特定のパターンに従って単一TRAIL R2または複数TRAIL R2に結合できる。例えば、6モジュール直鎖多価性足場中のTn3足場は、2つのTRAIL R2標的AとBに、AAABBBパターン、AABBAAパターン、ABABABパターン、AAAABBパターン、等に従って結合でき;3つの標的に、AABBCCパターン、ABCABCパターン、およびABCCBAパターン、等に従って、結合でき;4つの標的に、ABCDDAパターン、ABCADAパターン、等に従って結合できる;等である。さらに、本発明の多量体足場が、複数の操作された(例えば、ジスルフィド操作された、ループ操作された、またはジスルフィドおよびループ両方の操作された)および操作されていない足場を含む場合、このような単量体足場は、ある特定のパターンに従って配置され、ある特定の生物学的効果を達成する、または強化することができる。単量体Tn3足場のこのような組み合わせは、コンビナトリアルケミストリー的に組み立てられ、その後、当技術分野で既知の方法を使って評価できる。
【0133】
一部の実施形態では、分岐構築物中の多量体Tn3足場、例えば、Fc融合体または抗体様形式の多量体足場は、ある特定のパターンに従って単一TRAIL R2または複数のTRAIL R2に結合できる。例えば、特定の実施形態では、抗体様形式Tn3多量体足場中のIgG重鎖に融合した直鎖形式Tn3足場は、第1の標的に結合でき、一方、抗体様形式足場中のIgG軽鎖に融合した多価性のTn3直鎖足場は、第2の標的に結合できる。別の実施形態では、抗体様形式Tn3足場のIgG重鎖に融合した直鎖形式Tn3足場は、特定の親和性で標的に結合でき、一方、抗体様形式足場のIgG軽鎖に融合した直鎖形式足場は、異なる親和性で同じ標的に結合できる。一部の実施形態では、抗体の「Y」の左アーム中の鎖に融合したTn3足場は、第1の標的に結合することができ、一方、抗体の「Y」の右側の鎖に融合したTn3足場は、第2の標的に結合することができる。
【0134】
融合体
本発明は、少なくとも2つのTn3単量体足場を含む多量体Tn3足場をさらに提供し、少なくとも1つのTn3単量体足場が異種の成分に融合可能である。これに関連して、異種の成分は、スペーサーとして足場の連結に使用されないが、多量体Tn3足場に追加の機能性を与えることができ得る。例えば、一部の実施形態では、TRAIL R2に結合する多量体Tn3足場を細胞傷害剤に融合して、標的特異的細胞殺滅を促進できる。一部の実施形態では、異種の成分は、リンカーとして機能できる。
【0135】
本発明は、1つまたは複数の異種の成分にコンジュゲートした、または融合した多量体Tn3足場の使用を包含し、異種の成分には、限定されないが、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、融合タンパク質、核酸分子、小分子、模倣薬)、合成薬剤、無機分子、および有機分子が含まれる。本発明は、異種のタンパク質またはポリペプチドまたはその断片に組換えにより融合した、または化学的にコンジュゲートした多量体Tn3足場の使用を包含する。コンジュゲーションには、共有結合および非共有結合によるコンジュゲーションの両方が含まれる。一部の実施形態では、多量体Tn3足場は、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも500、または少なくとも1000アミノ酸のポリペプチドに融合、または化学的にコンジュゲートして、融合タンパク質を生成可能である。
【0136】
多量体Tn3足場の1つまたは複数の異種の成分に対する融合またはコンジュゲートは、直接、すなわち、Tn3足場と異種の成分の間にリンカー無しで、または、1つまたは複数の本明細書記載のリンカー配列を介してであり得る。一部の実施形態では、足場は、インビトロでまたはインビボで、Tn3足場を標的細胞、例えば、TRAIL R2中の特定の細胞表面受容体に特異的な抗体に融合またはコンジュゲートすることにより、異種のポリペプチドに特定の細胞型を標的にさせるのに使用できる。異種のポリペプチドに融合またはコンジュゲートした多量体Tn3足場は、また、当技術分野で既知の方法を使ったインビトロイムノアッセイおよび精製法に使用可能である。例えば、国際公開第93/21232号;欧州特許第439、095号;Naramura et al.Immunol.Lett.39:91−99、1994;米国特許第5,474,981号;Gillies et al.、PNAS 89:1428−1432、1992;およびFell et al.、J.Immunol.146:2446−2452、1991、を参照のこと。これらは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0137】
一部の実施形態では、多量体Tn3足場は、限定されないが、IgG(Fc)の定常領域、等の免疫グロブリンまたはそのドメインに、例えば、NまたはC末端を介して、足場を融合またはコンジュゲートすることにより、ヒト免疫応答に組み込むことができる。同様に、足場と補体タンパク質、例えば、CIqの間の融合体は、細胞を標的化するのに使用可能である。多量体Tn3足場と毒素の間の融合体は、本明細書記載のように特定の抗原を含む細胞を特異的に破壊するのに使用可能である。
【0138】
種々の出版物には、FcRn結合親和性が保存されているが、他のFc受容体に対する親和性は大きく低下している抗体と分子を融合することにより(例えば、国際公開第99/43713号参照)、または分子を抗体のFcRn結合ドメインと融合することにより(例えば、国際公開第00/09560号;米国特許第4,703,0390号参照)、FcRn結合ポリペプチドの分子中へ導入して、半減期を変更できる生理学的に活性な分子を得る方法に関し記載されている(例えば、国際公開第97/43316号;米国特許第5,869,046号;同5,747,035号;国際公開第96/32478号;および同91/14438号を参照)。生理的に活性な分子の半減期を延長する具体的な技術と方法は、また、米国特許第7,083,784号で見付けることができる。特に、多量体Tn3足場は、IgG由来のFc領域に融合でき、Fc領域は、アミノ酸残基変異M252Y/S254T/T256EまたはH433K/N434F/Y436H(アミノ酸位置はKabatナンバリングスキームに従い命名)を含むことが意図されている。一部の実施形態では、多量体Tn3足場の半減期は、多価Tn3足場を本質的に不定形の組換え型ポリペプチド(例えば、XTEN(商標)ポリペプチド)と遺伝的に融合することにより、またはポリエチレングリコール(PEG)とコンジュゲートすることにより、延長できる。
【0139】
一部の実施形態では、多量体Tn3足場は、インビボ、または血清半減期を増加または延長する分子と融合できる。一部の実施形態では、足場は、アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、その新生児Fc受容体(FcRn)結合断片、PEG、多糖類、抗体、補体、ヘモグロビン、結合ペプチド、リポタンパク質および血流中および/またはその組織浸透中のその半減期を増大させる他の因子に融合またはコンジュゲートされる。これらのいずれの融合体も、標準的な方法、例えば、公に利用可能な遺伝子配列を使って構築された組換え型融合体遺伝子由来の融合タンパク質の発現により、生成可能である。
【0140】
さらに、本発明の足場は、マーカー配列、例えば、精製促進用ペプチドに融合できる。一部の実施形態では、マーカーアミノ酸配列は、ポリヒスチジンペプチド(Hisタグ)、例えば、他のベクターも多くが市販されている中で、pQE発現ベクター(QIAGEN、Inc.、9259 Eton Avenue、Chatsworth、Calif、91311)中に提供されるタグのようなオクタヒスチジンタグ(His−8−tag)またはヘキサヒスチジンタグ(His−6−tag)がある。Gentz et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:821−824、1989、に記載のように、例えば、ポリヒスチジンは、融合タンパク質の簡便な精製法を提供する。精製に有用な他のペプチドタグには、限定されないが、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質由来のエピトープに対応する赤血球凝集素(「HA」)タグ(例えば、Wilson et al.、Cell 37:767、1984を参照)、FLAGタグ、Strepタグ、mycタグ、V5タグ、GFPタグ、AU1タグ、AU5タグ、ECSタグ、GSTタグ、またはOLLASタグが含まれる。
【0141】
本発明の足場を含むさらなる融合タンパク質は、遺伝子シャフリング、モチーフシャフリング、エキソンシャフリング、および/またはコドンシャフリング(まとめて「DNAシャフリング」と呼ばれる)の技術により生成可能である。
【0142】
DNAシャフリングは、標的に対するTn3足場の作用を変えるために(例えば、高い親和性と低い解離速度を有する足場、またはTRAIL R2を二量体化する能力を高めた足場を生成するために)採用できる。Tn3足場は、変異性PCR、ランダムヌクレオチド挿入または組換え前の他の方法を使ってランダム変異誘発を受けることにより改変できる。特異的標的に結合する、足場をコードするポリヌクレオチドの1つまたは複数の部分は、1つまたは複数の異種の分子の1つまたは複数の成分、モチーフ、断片、部分、ドメイン、断片、等と組換え可能である。
【0143】
抗体様多量体足場
一部の実施形態では、本発明の多量体足場は、少なくとも2つのTn3足場を含み、少なくとも1つのTn3足場は、限定されないが、無傷抗体、抗体可変ドメイン、CHlドメイン、Cカッパドメイン、Cラムダドメイン、Fcドメイン、CH2、またはCH3ドメイン、を含む抗体(例えば、IgG)のドメインまたは断片に融合されている。
【0144】
一部の実施形態では、Tn3足場は、抗体のドメインまたは断片に融合可能である。抗体のドメインまたは断片は、下記のFcドメインと同様に、本発明の多量体足場の形成を促進する二量体化または多量体化ドメインを提供することにより多量体足場のアビディティおよび/または親和性をさらに増強できる。さらに、抗体のドメインまたは断片は、標的に対する足場の作用をさらに、例えば、より効率的に標的の二量体化または多量体化を行う、等の増強をすることができる。
【0145】
一部の実施形態では、2つのTn3ドメインを含むただ1つの多量体Tn3タンデム足場が抗体のドメインまたは断片にコンジュゲートまたは融合される。例えば、単一多量体タンデム足場が、抗体のドメインまたは断片(例えば、抗体の重鎖または軽鎖)のポリペプチドのN末端に融合できる。一部の実施形態では、多量体Tn3足場が、1つまたは複数のFnIII足場を、抗体のドメインまたは断片(例えば、抗体の重鎖および/または軽鎖)のポリペプチドのN末端および/またはC末端に融合またはコンジュゲートすることにより生成される。一部の実施形態では、抗体のドメインまたは断片に融合した一部または全部のTn3足場は、同一である。一部の他の実施形態では、抗体のドメインまたは断片に融合した一部のまたは全部のTn3足場は、異なる。
【0146】
一部の実施形態では、抗体様多価性のTn3足場生成用に使用するタンデムTn3足場は、同じ数のTn3モジュールを含んでもよい。他の実施形態では、抗体様多価性のTn3足場生成用に使用するタンデムTn3足場は、異なる数のTn3モジュールを含んでもよい。例えば、四価のTn3足場は、例えば、直鎖型四価のTn3足場を単一位置に融合することにより、または1つのTn3単量体足場を1つの位置および3量体直鎖型Tn3足場を別の位置に融合することにより、または2つの2量体Tn3直鎖型足場を2つの異なる位置に融合することにより、または4つのTn3単量体足場をそれぞれ単一位置に融合することにより、形成可能である。
【0147】
特定的な実施形態では、本発明の多量体Tn3足場は、抗体のドメインまたは断片に融合した4つの多量体直鎖Tn3足場を含み、各多量体直鎖Tn3足場は、リンカーを介してタンデムに連結している2つのTn3単量体足場を含む(
図1)。他の実施形態では、本発明の多量体Tn3足場は、少なくとも1つの、少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、少なくとも5つの、少なくとも6つの、少なくとも7つのまたは少なくとも8つの抗体のドメインまたは断片に融合した本発明の単量体または多量体Tn3足場を含む。
【0148】
一特定的な実施形態では、四価のTn3足場は、1つのTn3足場を抗体のドメインまたは断片のそれぞれの軽鎖および重鎖のN末端に融合することにより生成できる(例えば、
図2のA9構築物参照)。
【0149】
抗体様形式の多価性Tn3足場は、Tn3足場の任意の組み合わせを抗体のドメインまたは断片または改変抗体に融合することにより生成できる。改変抗体の例には、ドメイン欠失した抗体、ミニボディ、(例えば、米国特許第5,837,821号参照)、四価ミニボディ、四価抗体(例えば、Coloma & Morrison、Nature Biotechnol.15:159−163、1997;国際公開第95/09917号参照)、熱安定化抗体、ヒト化抗体、等が含まれる。
【0150】
図1に従って抗体様多価性Tn3足場の生成に使用されるそれぞれの本発明の直鎖Tn3足場は、同じリンカーおよびリンカー分布、または異なるリンカーおよび異なるリンカー分布を含んでもよい。
【0151】
Fc融合多量体足場
一部の実施形態では、本発明の多量体Tn3足場はFcドメインに結合した複数の単量体または多量体Tn3足場を含む。本発明の多量体Tn3足場のFcドメインを含む抗体断片への融合体は、多量体Tn3足場の二量体の形成を促進する二量体化ドメインを提供することにより、多量体FnIII足場のアビディティおよび/または活性をさらに増強する。
【0152】
一部の実施形態では、ただ1つの多量体Tn3足場がFcドメインに融合される。特定的な実施形態では、本発明の多量体Tn3足場は、Fcドメインに融合した2つの多量体Tn3足場を含み、各多量体Tn3足場は、1つまたは複数のリンカーを介して連結された2つ以上のTn3足場を含む(
図1)。一特定的な実施形態では、Fcドメインに融合した多量体Tn3足場は、直鎖形式足場である。
【0153】
一特定的な実施形態では、2つのタンデムTn3ドメインを含む2つの直鎖形式Tn3足場は、Fcドメインに融合され、結合価4を有する多量体Tn3足場が生成する(例えば
図2のA7構築物参照)。別の特定的な実施形態では、2つの直鎖形式足場で、4つのTn3単量体足場を含むそれぞれがFcドメインに融合されて、結合価8の多量体Tn3足場が生成する(例えば、
図2のA8構築物参照)。
【0154】
一部の実施形態では、Fcドメインに融合されたTn3足場は、同じ数のTn3モジュールを含む。一部の実施形態では、Fcドメインに融合されたTn3足場は、異なる数のTn3モジュールを含む。一部の実施形態では、Fcドメインに融合されたTn3足場は、同じリンカーを含む。他の実施形態では、Fcドメインに融合されたTn3足場は、異なるリンカーを含む。
【0155】
一部の実施形態では、異なる本発明の多量体Tn3足場が、ヘテロ二量体の形成を助けるFcドメイン変異の使用により二量体化できる。Fc領域の変異体(例えば、アミノ酸置換および/または付加および/または欠失)は、抗体のエフェクター機能を強化または低下させ、また、抗体の薬物動態学的特性(例えば、半減期)を変えることができることが当技術分野で知られている。従って、特定の実施形態では、本発明の多選択性Tn3足場は、改変されたFc領域を含むFcドメインを含み、1つまたは複数の変化がFc領域で作られて、多量体Tn3足場の機能的および/または薬物動態学的特性を変える。
【0156】
エフェクター機能および/または抗炎症性活性を増加、または減少させるようにFc領域のグリコシル化を修飾できることも知られている。従って、一実施形態では、本発明の多量体FnIII足場のFc領域は、アミノ酸残基の改変されたグリコシル化を含み、多量体足場の細胞傷害性および/または抗炎症性特性が変えられる。
【0157】
多量体足場トポロジー
当業者なら、上記
図1、
図2で、および本明細書全体で考察される多量体足場は、単に説明用の例であることをわかるであろう。
図1と
図2で示す構築物トポロジーまたは形式は、一部の実施形態では、本発明の足場がFcドメインおよび抗体のポリペプチド成分のN末端に融合されることを示している。本発明の足場は、任意の適切な空間配置のFcドメイン、抗体軽鎖、および抗体重鎖のC末端に融合可能である。例えば、一部の実施形態では、四価の足場は、FnIII単量体足場を抗体の各重鎖のN末端およびFnIII単量体足場を各軽鎖のC末端ドメインに融合させることにより、FnIII単量体足場を抗体の各軽鎖のN末端およびFnIII単量体足場を各重鎖のC末端に融合することにより、またはFnIII単量体足場を抗体の各重鎖のN末端およびFnIII単量体足場を各軽鎖のN末端に融合させることにより、作成できる。単量体および/または多量体FnIII足場は、可変領域および定常領域の両方を含む完全長重鎖および/または軽鎖に融合できる。あるいは、FnIII単量体および/または多量体足場は、定常領域のみを含む切断型重鎖および/または軽鎖に融合できる(例えば、
図2のA9構築物、等)。
【0158】
多量体Tn3足場は、
図1に示す形式を構成単位として使って、作成できる。例えば、抗体様およびFc融合体形式は、より単純な直鎖形式Tn3モジュールを含む組み合わせである。従って、一部の実施形態では、
図1の構成単位を組み合わせて、さらに複雑な多量体Tn3足場形式を作成できる。
【0159】
図1と2は、また、一部の実施形態で、多量体Tn3足場は、直鎖でも、分岐でもよく、異なるレベルの分岐を示してもよいことを示している。例えば、Fc形式は、一次分岐形式の一例を提供し、一方、抗体様形式は、二次分岐形式の一例を提供する。より高次の分岐構築物は、抗体様形式またはFc融合体形式中の直鎖形式構成単位をFc融合体形式構成単位または抗体様構成単位で置き換え、それらをFcまたは抗体のポリペプチド成分のC末端またはN末端に連結することにより得られる。
【0160】
図1と2、および表1は、一部の実施形態では、多量体Tn3足場中のリンカーは、構造的に、および機能的に多様であってよく、複数の結合点を提供することができるという事実を示している。例えば、(Gly
4Ser)
2GlyThrGlySerAlaMetAlaSer(Gly
4Ser)
1Alaリンカーにより連結されている第4および第5 Tn3モジュールを除いて、A4およびA5構築物中の全てのTn3モジュールは、(Gly4−Ser)
3Alaリンカーにより連結されている。例えば、A7構築物では、第1と第2Tn3ドメインおよび第3と第4Tn3ドメインは、(Gly
4Ser)
3Alaリンカーにより連結されており、一方、第2と第3Tn3ドメインは、官能性成分リンカーとしてFcドメインにより連結されている。
【0161】
図1のFc融合体は、一部の実施形態では、単量体または多量体Tn3足場は、官能性成分リンカーのポリペプチドのN末端に融合できることを例示している。一部の実施形態では、本発明の単量体または多量体Tn3足場は、Fc融合体形式の構築物中のFcドメインのC末端に容易に融合できる。
【0162】
同様に、抗体様形式構築物中の抗体または改変抗体は、また、官能性成分リンカーでもある。この事例では、(Gly
4Ser)
3Alaもしくは(Gly
4−Ser)
2GlyThrGlySerAlaMetAlaSer(Gly
4Ser)
1Alaの場合のような2つの結合点の代わりに、またはFcドメインの場合のような4つの可能な結合点の代わりに、
図1の抗体様の例に示される抗体は、6つの可能な結合点を提供する。
図1の抗体様形式は、一部の実施形態では、官能性成分リンカー中のN末端結合点のみが、Tn3足場により結合されることを例示している。抗体様形式構築物では、一部または全部の本発明のTn3足場が、抗体または改変抗体ドメインの重鎖および軽鎖のC末端に容易に融合できる。他の場合も融合化学量論が適用でき、すなわち、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、またはそれを超える数の本発明のTn3足場を、抗体または改変抗体に融合できる。
【0163】
図1と2は、また、一部の実施形態では、多量体Tn3足場は、他のTn3多量体足場を組み合わせることにより生成できることを示している。例えば、
図2のFc形式A6、A7、およびA8足場は、多量体Tn3足場が2つのポリペプチド鎖で形成されているホモ2量体Tn3足場であり、ポリペプチド鎖はそれぞれFcドメインに融合した直鎖形式Tn3足場を含み、それらは次いで分子間ジスルフィド結合を介して連結される。
図1と2の抗体様足場は、ヘテロテトラマーTn3足場の例であり、2つの異なる型の足場(Tn3単量体足場をIgG軽鎖定常領域に融合して形成された2つのTn3足場、およびTn3単量体足場をIgGのCH1−ヒンジ領域−Fc領域に融合することにより形成された2つのTn3足場)に対応する4つのポリペプチドが分子間ジスルフィドを介して連結されている。
【0164】
本発明の足場の生成
本明細書記載のTn3足場は、新しいまたは改良された標的結合タンパク質を進化させるいずれの技術においても使用可能である。一特定例では、標的は、固体支持体、例えば、カラム樹脂またはマイクロタイタープレートウエル、上に固定され、標的は、候補足場に基づいた結合タンパク質のライブラリーと接触させられる。このようなライブラリーは、CDR様ループの配列および/または長さのランダム化を使ってTn3足場から構築されたクローンから構成できる。
【0165】
この点については、バクテリオファージ(ファージ)ディスプレイは、よく知られた技術の1つであり、大きなオリゴペプチドライブラリーを選別し、標的に特異的に結合することができるこれらのライブラリーのメンバーを特定することを可能とする。ファージディスプレイは、バクテリオファージ粒子表面のコートタンパク質への融合体として、変異体ポリペプチドが提示される技術である(Scott、J.K.and Smith、G.P.(1990)Science 249:386)。バイオインフォマティクス手法は、天然FnIIIドメインのループ長さおよび多様性の優先傾向を測定するために使用可能である。この分析を使って、ループ長さおよび配列多様性に対する優先傾向を、「制限されたランダム化」手法の開発に採用できる。この制限されたランダム化では、相対的ループ長さおよび配列の優先傾向が、ライブラリー戦略の開発に組み込まれる。ループ長さおよび配列多様性分析をライブラリー開発に一体化することが、制限されたランダム化(すなわち、アミノ酸が入ることができるランダム化ループ内の特定の位置が限定されている)につながる。
【0166】
本発明は、また、本発明の非天然Tn3足場の多様な集団を含む組換え型ライブラリーを提供する。一実施形態では、ライブラリーは、複数のループ領域に連結した複数のベータ鎖ドメインを含む非天然Tn3足場を含み、1つまたは複数の前記ループが、少なくとも1つのアミノ酸の欠失、置換または付加により変化する。特定的な実施形態では、ライブラリーは、野生型Tn3足場由来のTn3足場を含む。
【0167】
上で詳細に説明したように、足場の種々のベータ鎖を連結するループは、長さおよび/または配列多様性に関しランダム化できる。一実施形態では、本発明のライブラリーは、長さおよび/または配列多様性に関しランダム化されている少なくとも1つのループを有するTn3足場を含む。一実施形態では、Tn3足場の少なくとも1つの、少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、少なくとも5つのまたは少なくとも6つのループが、長さおよび/または配列多様性に関してランダム化されている。一実施形態では、少なくとも1つのループが、一定に保持され、一方、少なくとも1つの追加のループが、長さおよび/または配列多様性に関してランダム化されている。別の実施形態では、ループAB、CD、およびEFの内の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てが一定に保持され、ループBC、DE、およびFGの内の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てが長さまたは配列多様性に関しランダム化されている。別の実施形態では、ループAB、CD、およびEFの内の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または少なくとも3つ全てがランダム化され、ループBC、DE、およびFGの内の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または少なくとも3つ全てが長さおよび/または配列多様性に関してランダム化されている。
【0168】
FOIのFGループ中のものより、少なくとも1つのアミノ酸分短い長さのFGループが、安定性の増加を示すということを発見した。従って、本発明は、Tn3足場を含むライブラリーを提供し、ここで、FGループの長さが少なくとも1つのアミノ酸分だけ、10アミノ酸残基を含むヒトテネイシンCの第3FnIIIドメインの同種のFGループよりも短く保持されていることを除いて、少なくとも1つのループが長さおよび/または配列多様性に関しランダム化される。一部の実施形態では、本発明のライブラリーは、Tn3足場を含み、各足場は、A、B、C、D、E、F、およびGと命名された、6つのループ領域に結合した7つのベータ鎖を含み、ループ領域は、各ベータ鎖を連結し、AB、BC、CD、DE、EF、およびFGと命名されている;また、少なくとも1つのループは、野生型Tn3足場ループの非天然変異体であり、FGループは、野生型Tn3足場の同種のループよりも少なくとも1つのアミノ酸分短い。
【0169】
特定的な実施形態では、本発明のライブラリーは、FnIII足場を含み、Aベータ鎖は、配列番号42を含み、Bベータ鎖は配列番号43を含み、Cベータ鎖は配列番号45を含み、Dベータ鎖は配列番号46を含み、Eベータ鎖は配列番号47を含み、Fベータ鎖は配列番号49を含み、さらに、Gベータ鎖は配列番号52を含む。
【0170】
特定的な実施形態では、本発明のライブラリーはFnIII足場を含み、Aベータ鎖は配列番号42からなり、Bベータ鎖は配列番号43からなり、Cベータ鎖は配列番号45からなり、Dベータ鎖は配列番号46からなり、Eベータ鎖は配列番号47からなり、Fベータ鎖は配列番号49からなり、さらに、Gベータ鎖は配列番号52からなる。
【0171】
特定的な実施形態では、本発明のライブラリーはFnIII足場を含み、Aベータ鎖は本質的に配列番号42からなり、Bベータ鎖は本質的に配列番号43からなり、Cベータ鎖は本質的に配列番号45からなり、Dベータ鎖は本質的に配列番号46からなり、Eベータ鎖は本質的に配列番号47からなり、Fベータ鎖は本質的に配列番号49からなり、さらに、Gベータ鎖は本質的に配列番号52からなる。
【0172】
上で詳細に説明したように、ループ内の1つまたは複数の残基が一定に保持でき、一方、他の残基は、長さおよび/または配列多様性に関してランダム化される。任意選択で、または、代わりに、ループ内の1つまたは複数の残基が、所定の、限られた数の異なるアミノ酸に限定でき、一方、他の残基は、長さおよび/または配列多様性に関してランダム化される。従って、本発明のライブラリーは、縮重したコンセンサス配列および/または1つまたは複数の不変のアミノ酸残基を有する1つまたは複数のループを含むことができるTn3足場を含む。
【0173】
別の実施形態では、本発明のライブラリーは、BCループを有するTn3足場を含み、このループはランダム化された次のコンセンサス配列を有する:S−X−a−X−b−X−X−X−G、ここで、Xは、任意のアミノ酸を表し、(a)は、プロリンまたはアラニンを表し、また、(b)は、アラニンまたはグリシンを表す。別の実施形態では、本発明のライブラリーは、BCループを有するTn3足場を含み、このループはランダム化された次のコンセンサス配列を有する:S−P−c−X−X−X−X−X−X−T−G、ここで、Xは、任意のアミノ酸を表し、また、(c)は、プロリン、セリンまたはグリシンを表す。さらに別の実施形態では、本発明のライブラリーは、BCループを有するTn3足場を含み、このループはランダム化された次のコンセンサス配列を有する:A−d−P−X−X−X−e−f−X−I−X−G、ここで、Xは、任意のアミノ酸を表し、(d)は、プロリン、グルタメートまたはリシンを表し、(e)は、アスパラギンまたはグリシンを表し、また、(f)は、セリンまたはグリシンを表す。
【0174】
一実施形態では、本発明のライブラリーは、DEループを有するTn3足場を含み、このループはランダム化された次のコンセンサス配列を有する:X−X−X−X−X−X、ここで、Xは、任意のアミノ酸を表す。
【0175】
一実施形態では、本発明のライブラリーは、FGループを有するTn3足場を含み、このループはランダム化された次のコンセンサス配列を有する:X−a−X−X−G−X−X−X−b、ここで、Xは、任意のアミノ酸を表し、(a)は、アスパラギン、トレオニンまたはリシンを表し、また、(b)は、セリンまたはアラニンを表す。別の実施形態では、本発明のライブラリーは、FGループを有するFnIII足場を含み、このループはランダム化された次のコンセンサス配列を有する:X−X−X−X−X−X−X−X−X(X
9)、ここで、Xは、任意のアミノ酸を表す。
【0176】
特定的な実施形態では、本発明のライブラリーは足場を含み、その足場は、アミノ酸配列:IEV(X
AB)
nALITW(X
BC)
nCELX
1YGI(X
CD)
nTTIDL(X
DE)
nYSI(X
EF)
nYEVSLIC(X
FG)
nKETFTT、を含み、ここで、X
AB、X
BC、X
CD、X
DE、X
EF、およびX
FGは、それぞれ、AB、BC、CD、DE、EF、およびFGループ中に存在するアミノ酸残基を表し、X
1は、アミノ酸残基AまたはTを表し、また、n=2〜26およびm=1〜9である。
【0177】
本発明は、本発明のライブラリー、本発明のライブラリーを選別することにより、標的、例えば、TRAIL R2に結合し、野生型Tn3足場に比較して増加した安定性または標的、例えば、TRAIL R2に対する改良された作用を有する組換え型Tn3足場を特定する方法をさらに提供する。
【0178】
ある特定の実施形態では、野生型Tn3足場に比べて増加したタンパク質安定性を有し、特異的に標的に結合する組換え型Tn3足場を特定する方法は、以下を含む:
a.足場:標的リガンド複合体形成に適切な条件下、標的リガンドを本発明のライブラリーと接触させる;
b.その複合体から標的リガンドに結合する足場を得る;
c.ステップ(b)で得られた足場の安定性が野生型Tn3足場のそれより大きいかどうかを測定する。
【0179】
同じ方法を使って、標的に対し改善された結合親和性、アビディティ、等を有する組換え型Tn3足場を特定することができる。一実施形態では、ステップ(a)で、本発明の足場ライブラリーを固定化標的と共にインキュベートする。一実施形態では、ステップ(b)で、足場:標的リガンド複合体を洗浄して非特異的結合物質(binder)を除去し、最も強固な結合物質を極めてストリンジェントな条件で溶出し、PCRにかけて配列情報を取り出す。ステップ(b)で得られた結合物質および/または配列情報は、本明細書に開示の方法または当業者に既知の方法を使って新しいライブラリーの構築に使用可能であり、さらなる配列の変異誘発を行って、または行わないで、選択プロセスを反復するために使用可能できることが特に意図されている。一部の実施形態では、いくつかの選択のラウンドを、抗原に対する充分な親和性を有する結合物質が得られるまで行うことができる。
【0180】
本発明のさらなる実施形態は、本発明および上述の足場を含むライブラリーをコードする単離核酸分子コレクションである。
【0181】
本発明の足場は、親和性成熟に供してもよい。この当技術分野で受け入れられたプロセスでは、特定の結合タンパク質が、特定の標的に対する増加した親和性に対して選択されるスキームににさらされる(Wu et al.、Proc Natl Acad Sci USA.95(11):6037−42、参照)。結果として得られる本発明の足場は、親和性成熟前の足場と比べて少なくとも同等の大きさの結合特性を示しうる。
【0182】
本発明は、また、足場:標的複合体を形成するために、標的に結合可能なタンパク質足場のアミノ酸配列を特定する方法を提供する。一実施形態では、この方法は、以下を含む:a)固定された、または分離可能な標的と本発明のライブラリーを接触させる;b)遊離足場から足場:標的複合体を分離する;c)低下した多様性を有することにより、また、標的に結合可能な提示足場の濃縮によって、(a)におけるものとは区別される新規ポリペプチドディスプレイライブラリーを生成するために、(b)の分離した足場を複製させる;d)任意選択で、(a)、および(b)のステップを(c)の新規ライブラリーを使って、繰り返す;およびe)(d)由来の種の提示足場をコードする領域の核酸配列を決定し、それにより、標的に結合できるペプチド配列を推定する。
【0183】
別の実施形態では、本発明の足場は、ライブラリー選別による特定後に、さらにランダム化できる。一実施形態では、本発明の方法は、本明細書記載の方法を使ってライブラリーから特定された足場の少なくとも1つの、少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、少なくとも5つのまたは少なくとも6つのループのさらなるランダム化を含む。別の実施形態では、さらにランダム化された足場が、その後の標的に結合できる足場を特定する方法に供される。この方法は、(a)前記さらにランダム化された足場を固定された、または分離可能な標的と接触させること、(b)さらにランダム化された足場:標的複合体を遊離足場から分離すること、(c)(b)の分離された足場の複製をさせるステップで、さらに、任意選択で(a)〜(c)ステップを繰り返すこと、および(d)前記さらにランダム化された足場をコードする領域の核酸配列を決定し、それにより、標的に結合できるペプチド配列を推測すること、を含む。
さらなる実施形態では、さらにランダム化された足場は、最初のライブラリーで以前ランダム化されている、少なくとも1つの、少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、少なくとも5つの、または少なくとも6つのランダム化されたループを含む。別のさらなる実施形態では、さらにランダム化された足場は、最初のライブラリーで以前ランダム化されていない、少なくとも1つの、少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、少なくとも5つの、または少なくとも6つのランダム化されたループを含む。
【0184】
本発明は、また、少なくとも1つまたは複数の標的に結合する少なくとも2つのTn3足場を得る方法を提供する。この方法は、協動して特定の応答を誘発するように作用する試薬の選別を可能とする。2つ以上の足場の協動が必要なアゴニスト活性が要求される場合(例えば、限定されないが、TNF受容体ファミリーに属する受容体のアゴニズム)、このような選別を使用するのは、好都合であろう。この方法は、多量体複合体を形成するためにライブラリーを再編成することなく協動試薬の選別を可能とする。一実施形態では、本発明の方法は、足場:標的リガンド複合体の形成を可能とする条件下、標的リガンドを本発明のライブラリーと接触させること、前記足場を架橋試薬(少なくとも2つの同じまたは異なる足場を近接近状態に結合させる試薬と定義される)と結合させ、足場の架橋を検出可能な応答を誘発すること、および複合体から、前記標的に結合する足場を得ること、を含む。さらなる実施形態では、架橋試薬は、足場特異的抗体、またはその断片、エピトープタグ特異的抗体、またはその断片、二量体化ドメイン、例えば、Fc領域、コイルドコイルモチーフ(例えば、これに限定されないが、ロイシンジッパー)、化学架橋剤、または当技術分野で既知の別の二量体化ドメイン、である。
【0185】
本発明は、また、本発明の足場を利用して、化合物を検出する方法を提供する。ライブラリー選別により得られた足場の結合特異性に基づいて、例えば、診断法のために、このような足場をアッセイに使用し、検体中の特異的標的を検出することが可能である。一実施形態では、化合物の検出方法は、化合物:足場複合体を形成可能とする条件下で、検体中の前記化合物を本発明の足場に接触させること、さらに、前記足場を検出し、それにより、検体中の前記化合物を検出すること、を含む。さらなる実施形態では、足場は、標識(すなわち、放射標識、蛍光、酵素結合または比色標識)して、化合物の検出を促進する。
【0186】
本発明は、また、本発明の足場を利用して、化合物を捕捉する方法を提供する。ライブラリー選別から得られた足場の結合特異性に基づいて、例えば、精製の目的で検体中の特異的標的を捕捉するために、アッセイ中でこのような足場の使用が可能である。一実施形態では、試料中の化合物の捕捉方法は、化合物:足場複合体の形成を可能とする条件下で、試料中の前記化合物を本発明の足場を接触させること、および前記複合体を検体から取り出し、それにより、前記検体中の前記化合物を捕捉する、を含む。さらなる実施形態では、足場が固定され、化合物:足場複合体の取り出しを促進する。
【0187】
一部の実施形態では、本発明のライブラリーから単離された足場は、少なくとも1つの、少なくとも2つの、少なくとも4つの、少なくとも5つの、少なくとも6つの、またはそれを超える数のランダム化ループを含む。一部の実施形態では、単離足場ループ配列は、ドナー足場から受け側足場の任意のループと入れ替えできる(例えば、ドナー足場由来のFGループ配列は受け側足場の任意のループに移すことができる)。特定的な実施形態では、単離ループ配列は、受け側足場の同種のループに移すことができる(例えば、ドナー足場由来のFGループ配列は、FGループ位置の受け側足場に移すことができる)。一部の実施形態では、単離ループ配列は、種々の受け手足場とランダムに「組み合わせて(mix and matched)」使うことができる。
【0188】
他の実施形態では、単離足場配列は、ループ配列により特定できる。例えば、ライブラリーは、特定の標的に対し選別するために使用され、特異的結合物質のコレクションが単離される。ランダム化ループ配列は、足場背景とは独立して特異的配列として特徴付け出来る(すなわち、標的Xに結合する足場で、前記足場は配列番号XのFGループ配列を含む)。別の代替の実施形態では、足場が標的Xに結合する2つのループ配列を示す場合は、ループ配列は、足場配列が無い場合の結合標的Xとして特徴付け出来る。言い換えれば、特定の標的に結合するライブラリーから単離された足場は、足場骨格とは独立した標的に結合する可変ループ配列として発現できることが意図されている。この過程は、抗体の可変領域のCDRの概念と類似であろう。
【0189】
親和性成熟
TRAIL R2 Tn3足場の開発は、1つまたは複数のインビトロまたはインビボ親和性成熟ステップを含んでもよい。所望の抗原に対するTn3足場の結合を改善できるようにTn3ドメインまたはTn3ドメインループのアミノ酸変化を生ずるいずれの親和性成熟手法も採用可能である。
【0190】
これらのアミノ酸変化は、例えば、ランダム変異誘発、「ウォークスルー型(walk through)」変異誘発、および「ルックスルー型(look through)」変異誘発により達成可能である。このような変異誘発は、全または部分FnIIIベース結合分子の非経験的合成の間に、例えば、変異性PCR、酵母または細菌の「変異誘発遺伝子」株、ランダムまたは規定核酸変化の組込み、を使って達成可能である。親和性成熟および/または変異誘発を行う方法は、例えば、米国特許第7,195,880号;同6,951,725;同7,078,197号;同7,022,479号;同5,922,545号;同5,830,721号;同5,605,793号;同5,830,650号;同6,194,550号;同6,699,658号;同7,063,943号;同5,866,344号および国際公開第06023144号、に記載されている。
【0191】
そのような親和性成熟方法は、抗原結合選別アッセイの厳密性を高くして、改善された抗原に対する親和性を有するTn3足場を選択することがさらに必要である可能性がある。タンパク質−タンパク質相互作用アッセイの厳密性を高める技術的に認められた方法は、本明細書で使用可能である。一実施形態では、1つまたは複数のアッセイ条件を変えて(例えば、アッセイ緩衝液の塩濃度を変えて)目的の抗原に対するTn3足場の親和性を低下させる。別の実施形態では、Tn3足場が目的抗原に結合するのに許容される時間の長さを短くする。
別の実施形態では、競合的結合ステップをタンパク質−タンパク質相互作用アッセイに追加できる。例えば、最初に、Tn3足場を目的の固定化抗原に結合させる。次に、特定の濃度の非固定化抗原を添加し、固定化抗原と結合に対して競合させ、それにより、抗原に対する最低の親和性のTn3足場が固定化抗原から溶離され、改善された抗原結合親和性を有するTn3足場の選択がなされる。アッセイ条件の厳密性は、添加される非固定化抗原の濃度を増やすことにより、さらに高めることができる。
【0192】
また、選別方法に関しては、1つまたは複数の改善された抗原結合を有するTn3足場を濃縮するために、複数の選択ラウンドが必要な可能性もある。一実施形態では、各選択ラウンドで、さらなるアミノ酸変異がTn3足場に導入される。別の実施形態では、各選択ラウンドで、目的の抗原への結合の厳密性が高められ、抗原に対する親和性の増加したTn3足場が選択される。
【0193】
一部の実施形態では、親和性成熟が、Tn3のBC、DE、およびFGループ部分の飽和変異誘発により行われる。一部の実施形態では、飽和変異誘発が、Kunkel変異誘発を使って行われる。他の実施形態では、飽和変異誘発が、PCRを使って行われる。
一部の実施形態では、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5ラウンド、または5ラウンド超の親和性成熟が適用される。一部の実施形態では、飽和変異誘発がただ1つのループに適用され、一方、一部の他の実施形態では、ただ1つのループまたはループの一部が親和性成熟の1ラウンドの間に変異導入される。一部の実施形態では、2つ以上のループまたは1つまたは複数のループの一部が、親和性成熟の同じラウンドの間に変異導入される。
【0194】
他の実施形態では、BC、DE、およびFGループが、同じラウンドの親和性成熟の間に同時に変異導入される。
【0195】
Tn3足場を同じ標的の異なるエピトープに結合する多量体足場に構築する場合、または二重特異性Tn3足場の場合には、各結合特異性を、独立に選別できる。従って、一部の実施形態では、第1の標的、例えば、TRAIL R2に結合する個別Tn3結合分子を特定するための最初の選別は、Tn3足場の第1ライブラリーを使って行い、1つまたは複数のループ中の1つまたは複数のアミノ酸が変えられる。一部の実施形態では、異なる標的または同じ標的の異なるエピトープに結合する個別Tn3分子を特定するために、追加の選別を行うことができる。
一部の実施形態では、ループが、ファージディスプレイライブラリーを使ってランダム化される。一部の実施形態では、Tn3足場の目的の標的に対する結合を当技術分野で既知の方法を使って判定できる。また、選別で特定されたTn3足場のアミノ酸を、当技術分野で既知の方法を使って判定できる。
一部の実施形態では、本発明の親和性成熟単量体足場は、表面プラズモン共鳴法または当技術分野で既知の他のアッセイで測定して、親和性成熟前の同じTn3足場に比べて、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも40倍、少なくとも60倍、少なくとも80倍、または少なくとも100倍もしくはそれ超のTRAIL R2に対する増加した親和性を示す。一部の実施形態では、本発明の親和性成熟単量体足場は、表面プラズモン共鳴法または当技術分野で既知の他のアッセイで測定して、5μM未満、1μM未満、500μM未満、250μM未満、100μM未満、または50μM未満の解離定数(K
d)を有する。
これらの親和性成熟方法は、望ましい改善された結合特性、例えば、増加した親和性、または好ましい薬物動態学的特性、高効力、低免疫原性、他の生物由来のTRAIL R2受容体との増加した、もしくは低下した交差反応性、等、の他の望ましい特性を有するTn3足場を開発するために適用可能である。
【0196】
タンデム反復の生成
タンデム構築物の結合は、限定されないが、II型およびIIS型制限酵素を含む当技術分野で既知の制限酵素を使って、制限酵素部位でのオリゴヌクレオチドの連結反応により形成できる。
【0197】
本発明の多量体Tn3足場は、C末端および/またはN末端の位置に、および/または本明細書記載のドメイン間にリンカーを含んでもよい。さらに、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つのポリペプチド足場を含む本発明の足場は、二量体化ドメインに融合またはコンジュゲートしてもよい。二量体化ドメインには、限定されないが、以下から選択される抗体成分が含まれる:
(i)VL、CL、VHおよびCH1ドメインを有するFab断片;
(ii)CH1ドメインのC末端に1つまたは複数のシステイン残基を有するFab断片であるFab’断片;
(iii)VHおよびCH1ドメインを有するFd断片;
(iv)VHおよびCH1ドメインならびにCH1ドメインのC末端に1つまたは複数のシステイン残基を有するFd’断片;
(v)抗体単一アームのVLおよびVHドメインを有するFv断片;
(vi)VHドメインからなるdAb断片;
(vii)単離CDR領域;
(viii)ヒンジ部でのジスルフィド架橋により連結された2つのFab’断片を含むを含む二価の断片であるF(ab’)
2断片;
(ix)単鎖抗体分子(例えば、単鎖Fv;scFv);
(x)同じポリペプチド鎖中で軽鎖可変ドメイン(VL)に連結した重鎖可変ドメイン(VH)を含む、2つの抗原結合部位を有する「ダイアボディ」;
(xi)相補的な軽鎖ポリペプチドと一緒に一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFdセグメント(VH−CH1−VH−CH1)を含む「直鎖抗体」;
(xii)完全長抗体;および
(xiii)CH2−CH3を含み、さらに全ての、または一部のヒンジ部および/またはCH1領域を含むFc領域。種々の結合価、親和性、および空間配向スキームが、以下の実施例で例示されている。
【0198】
足場の製造
本発明の足場の組み換え体発現には、足場をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターの作成が必要である。足場をコードするポリヌクレオチドが得られると、足場製造用ベクターが当技術分野でよく知られた技術を使って組換えDNA技術により作製可能である。従って、ヌクレオチド配列をコードする足場を含むポリヌクレオチドを発現させることによるタンパク質調製方法が本明細書で記載される。当業者によく知られた方法を使用して足場ポリペプチドコード配列および適切な転写および転写調節シグナルを含むベクターを構築できる。これらの方法には、例えば、インビトロ組換DNA技術、合成技術、およびインビボ遺伝的組換え技術が含まれる。本発明は、従って、本発明の足場をコードするヌクレオチド配列を含み、プロモーターに機能的に連結された複製可能なベクターを提供する。
【0199】
発現ベクターを従来の技術を使って宿主細胞に導入し、その後、形質移入された細胞を従来の技術により培養して本発明の足場を製造する。従って、本発明は、本発明の足場をコードし、異種のプロモーターに機能的に連結されたポリヌクレオチドを含む宿主細胞を含む。適切な宿主細胞には、限定されないが、細菌(例えば、大腸菌および枯草菌)等の微生物が含まれる。
【0200】
種々の宿主発現ベクター系が本発明の足場の発現に利用可能である。このような宿主発現系は、対象のコード配列を産生し、その後精製できるように使われる媒体を表すが、また、適切なヌクレオチドコード配列で形質転換された、またはこれを形質移入された場合は、本発明の足場をその場発現可能な細胞も表す。これらには、足場コード配列を含む組換え型バクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、大腸菌および枯草菌)等の微生物、または哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、NSO、および3T3細胞)、が含まれる(これらに限定されない)。
【0201】
本発明の足場の製造に有用な方法が、例えば、国際公開第2009/058379号に開示されている。本発明の足場が組み換え体発現により製造されると、当技術分野で既知のタンパク質のいずれかの精製方法により精製可能である。
【0202】
研究室での本発明の足場の製造は、米国特許公開第2010−0298541A1号に記載のように、分析的規模のリアクターまたは生産規模のリアクターで足場を製造できるように、スケールアップできる。
【0203】
分泌足場の拡張可能な製造
本発明のTn3足場は、細胞内で、または分泌型として産生できる。一部の実施形態では、分泌足場は、正しく折り畳まれ、完全に機能する。本発明のTn3足場は、拡張可能プロセスにより産生出来る。一部の実施形態では、足場は、本発明の足場をスケールアップして分析規模のバイオリアクター(例えば、限定されないが、5L、10L、15L、30L、または50Lバイオリアクター)で産生可能な、本発明の拡張可能プロセスにより研究室で産生出来る。他の実施形態では、本発明のTn3足場をスケールアップして生産規模のバイオリアクター(例えば、限定されないが、75L、100L、150L、300L、または500L)で産生可能な、本発明の拡張可能プロセスにより研究室で産生出来る。一部の実施形態では、本発明の拡張可能プロセスは、研究室で行った産生プロセスに比べて、生産効率の低下をほとんど、または全く生じない。
【0204】
リンカー
多量体足場中のTn3足場は、タンパク質および/または非タンパク質リンカーにより連結され得、各リンカーは、少なくとも2つの本発明のTn3足場に融合される。適切なリンカーは、タンパク質リンカー、非タンパク質リンカー、およびそれらの組み合わせからなってよい。リンカーの組み合わせは、ホモマーであっても、ヘテロマーであってもよい。一部の実施形態では、本発明の多量体Tn3足場は、複数の単量体Tn3足場を含み、全てのリンカーは同一である。他の実施形態では、多量体Tn3足場は、複数のTn3足場を含み、少なくとも1つのリンカーは、残りのリンカーとは機能的にまたは構造的に異なる。一部の実施形態では、リンカーは、標的に対する結合に直接的または間接的に関与することにより、それ自体で、多量体FnIII足場の活性に寄与できる。
【0205】
一部の実施形態では、タンパク質リンカーは、ポリペプチドである。リンカーポリペプチドは、2つ以上の本発明の単量体足場または2つ以上の本発明の多量体足場を、目的活性を保持できるように、相互に対し正しい立体構造を呈するような方法で連結するのに適する長さを持たねばならない。
【0206】
一実施形態では、ポリペプチドリンカーは、1〜約1000アミノ酸残基、1〜約50アミノ酸残基、1〜25アミノ酸残基、1〜20アミノ酸残基、1〜15アミノ酸残基、1〜10アミノ酸残基、1〜5アミノ酸残基、1〜3アミノ酸残基を含む。本発明は、ポリペプチドリンカー配列をコードする核酸、例えば、DNA、RNA、または両方の組み合わせをさらに提供する。ポリペプチドリンカーに組み入れるために選択されるアミノ酸残基は、本発明の多量体Tn3足場の活性または機能と大きく干渉しない特性を有すべきである。従って、ポリペプチドリンカーは、全体として、本発明の多量体足場の活性また機能と一致しない、または内部折り畳みと干渉する、または本発明の多量体足場のTRAIL R2に対する結合を大きく妨害する可能性のあるTn3単量体ドメインの1つまたは複数のアミノ酸残基と結合を形成する、または他の相互作用を形成する電荷を示すべきではない。
【0207】
ポリペプチドを新規連結融合体ポリペプチドに連結するための、天然ならびに人工ペプチドリンカーの使用は、文献でよく知られている。従って、2つ以上の本発明の足場を融合しているリンカーは、天然リンカー、人工リンカー、またはこれらの組み合わせである。一部の実施形態では、本発明の多量体足場中に存在する全ペプチドリンカーのアミノ酸配列は、同一である。他の実施形態では、本発明の多量体足場中に存在するペプチドリンカーの少なくとも2つのアミノ酸配列は異なる。
【0208】
一部の実施形態では、ポリペプチドリンカーは、立体構造の柔軟性を有する。特定的な実施形態では、ポリペプチドリンカー配列は、(G−G−G−G−S)
xアミノ酸配列を含み、xは正の整数である。一部の実施形態では、ポリペプチドリンカーは、本質的に構造不定の天然または人工ポリペプチドである(例えば、Schellenberger et al.、Nature Biotechnol.27:1186−1190、2009、を参照;また、Sickmeier et al.、Nucleic Acids Res.35:D786−93、2007、も参照のこと)。
【0209】
ペプチドリンカーは、非ポリペプチド成分に結合させる基を含むアミノ酸残基が導入されるように修飾可能である。そのようなアミノ酸残基の例は、システイン残基であってよく(非ポリペプチド成分が、その後、それに対し結合される)、またはアミノ酸配列がインビボN−グリコシル化部位を含んでもよい(それにより、糖成分(インビボで)をペプチドリンカーに結合させる)。
【0210】
一部の実施形態では、ポリペプチド多量体中に存在する全ペプチドリンカーのアミノ酸配列は同一である。あるいは、ポリペプチド多量体中に存在する全ペプチドリンカーのアミノ酸配列は異なる。
【0211】
足場の標識またはコンジュゲート
本発明の足場は、非コンジュゲート型で用いられてもよいし、あるいは、標的検出を容易にするために、または画像化もしくは治療のために、種々の異種の成分のうちの少なくとも1つに対してコンジュゲートされてもよい。この足場は、精製が行われるとき、精製の前にまたは後のいずれに標識されてもまたはコンジュゲートされてもよい。
【0212】
多くの異種の成分は、本発明の足場が連結され得る適切な官能基を欠く。従って、いくつかの実施形態では、エフェクター分子が、リンカーを通じて足場に結合され、ここでこのリンカーは、コンジュゲーションのための反応性基を含む。いくつかの実施形態では、本発明の足場に対してコンジュゲートされた異種の成分は、リンカーとして機能し得る。他の実施形態では、この成分は、切断可能または切断不能であり得るリンカーを介して足場にコンジュゲートされる。一実施形態では、切断可能な連結分子は、酸化還元切断可能連結分子であり、その結果その連結分子は、細胞質および他の領域と遊離スルフヒドリル基を有する高濃度の分子のような、より低い酸化還元電位で、環境中で切断可能である。酸化還元電位における変化に起因して切断され得る連結分子の例としては、ジスルフィドを含有する分子が挙げられる。
【0213】
いくつかの実施形態では、本発明の足場は、コンジュゲーションのための反応性基を得るように操作される。このような足場では、N末端および/またはC末端はまた、コンジュゲートのための反応性基を提供するように機能し得る。他の実施形態では、N末端は、1つの部分(例えば、限定されるものではないが、PEG)にコンジュゲートされ得るが、C末端は、別の部分(例えば、限定されるものではないが、ビオチン)にコンジュゲートされ、または逆もまた真である。
【0214】
「ポリエチレングリコール」または「PEG」という用語は、ポリエチレングリコール化合物またはその誘導体を意味し、ここでカップリング剤、カップリングまたは活性化部分を有する場合と有さない場合がある(例えば、チオール、トリフレート、トレシレート、アジリジン、オキシラン、N−ヒドロキシスクシンイミジンまたはマレイミド部分)。「PEG」という用語は、500〜150、000Daの間の分子量のポリエチレングリコール(その類似体を含む)を意図し、そこで、例えば、末端のOH基が、メトキシ基(mPEGと呼ばれる)で置換されている。
【0215】
本発明の足場は、ポリエチレングリコール(PEG)で誘導体化され得る。PEGは、2つの末端ヒドロキシル基を有するエチレンオキシド反復ユニットの直線の水溶性ポリマーである。PEGは、典型的には約500ダルトン〜約40、000ダルトンにおよぶそれらの分子量によって分類される。特定の実施形態では、使用されるPEGは、5、000ダルトン〜約20、000ダルトンにおよぶ分子量を有する。本発明の足場に結合されるPEG類は、分岐されてもまたは非分岐であってもよい(例えば、Monfardini、C.ら、1995 Bioconjugate Chem 6:62−69を参照のこと)。PEG類は、Nektar Inc.、Sigma Chemical Co.および他の会社から市販される。このようなPEG類としては限定されるものではないが、モノメトキシポリエチレングリコール(MePEG−OH)、モノメトキシポリエチレングリコール−スクシナート(MePEG−S)、モノメトキシポリエチレングリコール−スクシンイミジルスクシナート(MePEG−S−NHS)、モノメトキシポリエチレングリコール−アミン(MePEG−NH2)、モノメトキシポリエチレングリコール−トレシレート(MePEG−TRES)、およびモノメトキシポリエチレングリコール−イミダゾリル−カルボニル(MePEG−IM)が挙げられる。
【0216】
簡潔に述べると、使用される親水性ポリマー、例えば、PEGは、メトキシ基またはエトキシ基のような非反応性の基によって末端でキャップされる。その後、ポリマーは、適切な活性化剤、例えば、ハロゲン化シアヌル(例えば、塩化シアヌル、臭化シアヌルまたはフッ化シアヌル)、カルボニルジイミダゾール、無水物試薬(例えば、ジハロコハク酸無水物、例えば、ジブロモコハク酸無水物)、アシルアジド、p−ジアゾニウムベンゾイルエーテル、3−(p−ジアゾニウムフェノキシ)−2−ヒドロキシプロピルエーテル)などとの反応によってその末端で活性化される。この活性化ポリマーは次いで、本明細書に記載のようなポリペプチドと反応されて、ポリマーで誘導体化されたペプチドが生成される。あるいは、本発明の足場中の官能基は、ポリマーとの反応のために活性化されてもよく、または2つの基は、公知のカップリング方法を用いて共同カップリング反応で連結されてもよい。本発明のポリペプチドは、当業者に公知であってかつ用いられる無数の他の反応スキームを用いてPEGで誘導体化され得る。PEGは、足場のどちらかの末端または足場内の1つまたは複数の官能基の位置で、本発明の足場に結合可能である。ある特定の実施形態では、PEGは、N末端またはC末端で結合される。
【0217】
他の実施形態では、本発明の足場、その類似体または誘導体は、診断剤または検出剤にコンジュゲートされ得る。このような足場は、臨床試験手順の一部として疾患の発生または進行をモニタリングまたは診断するために、例えば、特定の治療の有効性を決定するために有用であり得る。
【0218】
本発明はさらに、治療部分にコンジュゲートさせた足場の使用を包含する。足場は、細胞毒素(例えば細胞増殖抑制剤もしくは細胞破壊剤)、治療剤または放射性金属イオン(例えばα線放射体)などの治療部分にコンジュゲートされてもよい。細胞毒素または細胞傷害剤としては、細胞にとって有害である任意の因子が挙げられる。
【0219】
足場のアッセイ
抗原に対する足場の結合親和性および他の結合特性は、当該技術分野において公知の種々のインビトロアッセイ法によって決定することができ、これには、例えば、平衡法(例えば、酵素結合免疫吸収アッセイ(ELISA)、またはラジオイムノアッセイ(RIA))、または速度論(例えば、BIACORE(登録商標)分析)、および他の方法、例えば、間接結合アッセイ、競合結合アッセイ、ゲル電気泳動、およびクロマトグラフィー(例えば、ゲル濾過)が挙げられる。これらのおよび他の方法では、色素生産、蛍光、発光、または同位体標識が含まれるが、これらに限定されない、検査されている1つ以上の成分に対する標識を利用し、および/または種々の検出方法を使用してもよい。結合親和性および速度論についての詳細な説明は、Paul、W.E.、編集、Fundamental Immunology、第4版、Lippincott−Raven、Philadelphia(1999)に見出すことができる。いくつかの実施形態では、本発明の足場は、特定の反応速度で標的に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、本発明の足場は、1×10
−2M、1×10
−3M、1×10
−4M、1×10
−5M、1×10
−6M、1×10
−7M、1×10
−8M、1×10
−9M、1×10
−10M、1×10
−11M、1×10
−12M、1×10
−13M、1×10
−14M未満、または1×10
−15M未満という解離定数すなわちK
d(k
off/k
on)を有し得る。特定の実施形態では、本発明の足場は、BIAcoreアッセイ(登録商標)によって、または当該分野で公知の他のアッセイによって決定して、500μM、100μM、500nM、100nM、1nM、500pM、100pM、またはそれより小さいK
dを有する。別の実施形態では、本発明の親和性は、会合定数(K
a)を単位として記載され、この定数は、少なくとも1×10
2M
−1、1×10
3M
−1、1×10
4M
−1、1×10
5M
−1、1×10
6M
−1、1×10
7M
−1、1×10
8M
−1、1×10
9M
−1、1×10
10M
−11×10
11M
−11×10
12M
−1、1×10
13M
−1、1×10
14M
−1、1×10
15M
−1、または少なくとも5×l0
15M
−1というk
on/k
off比として算出される。ある特定の実施形態では、本発明の足場が、標的エピトープから解離する速度が、K
dまたはK
aの値よりも適切であり得る。いくつかの実施形態では、本発明の足場は、10
−3s
−1未満、5×10
−3s
−1未満、10
−4s
−1未満、5×10
−4s
−1未満、10
−5s
−1未満、5×10
−5s
−1未満、10
−6s
−1未満、5×10
−6s
−1未満、10
−7s
−1未満、5×10
−7s
−1未満、10
−8s−1未満、5×10
−8s
−1未満、10
−9s
−1未満、5×10
−9s
−1、または10
−10s
−1未満というk
offを有する。ある特定の他の実施形態では、本発明の足場が標的エピトープと会合する速度が、K
dまたはK
aの値よりも適切であり得る。この場合、本発明の足場は、少なくとも10
5M
−1s
−1、少なくとも5×10
5M
−1s
−1、少なくとも10
6M
−1s
−1、少なくとも5×10
6M
−1s
−1、少なくとも10
7M
−1s
−1、少なくとも5×10
7M
−1s
−1、または少なくとも10
8M
−1s
−1、または少なくとも10
9M
−1s
−1というk
on速度で標的に結合する。
【0220】
本発明の足場はまた、標的抗原のイムノアッセイまたは精製に特に有用な固体支持体に結合され得る。このような固体支持体としては限定されるものではないが、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンが挙げられる。
【0221】
TRAIL R2特異的Tn3足場
TRAIL R2タンパク質は、TNF受容体スーパーファミリー遺伝子のメンバーによりコードされており、細胞内死ドメインを含む。一部の例では、また、TNFRSFlOB;CD262、DR5、KILLER、KILLER/DR5、TRAILR2、TRICK2、TRICK2A、TRICK2B、TRICKB、またはZTNFR9、としても知られている。この受容体は、腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド(TNFSF10/TRAIL/APO−2L)により活性化され、アポトーシスシグナルを伝達できる。さらに、TRAIL R2誘導アポトーシスには、カスパーゼおよび細胞内アダプター分子FADD/MORT1が関与する(Walczak et al.EMBOJ、(1997)、16、5386−97)。
【0222】
本発明は、TRAIL R2に特異的に結合するTn3足場を提供する。特定的な実施形態では、本発明の足場は、ヒトTRAIL R2に特異的に結合する。他の特定的な実施形態では、本発明のTn3足場は、マウス、ニワトリ、アカゲザル、カニクイザル、ラット、またはウサギ由来のTRAIL R2ホモログと結合する。一部の実施形態では、本発明のTn3足場は、TRAIL R2の露出エピトープに結合する。そのような実施形態では、細胞上で内因的に発現したTRAIL R2および/またはその受容体を異所的に発現するように形質移入された細胞が含まれる。
【0223】
他の実施形態では、本発明のTn3足場は、単量体TRAIL R2上で提示されたエピトープを認識する。他の実施形態では、本発明のTn3足場は、ホモ二量体型のTRAIL R2上で提示されたエピトープを認識する。また他の実施形態では、本発明のTn3足場は、単量体TRAIL R2に結合し、2つ以上のTRAIL R2分子の二量体化またはオリゴマー化(例えば、多量体足場(これに限定されない))を促進する。また他の実施形態では、本発明の足場は、TRAIL R2とTRAILリガンドの間の相互作用を減らすか、または阻害する。他の実施形態では、本発明の足場は、TRAILリガンドとTRAIL R2の相互作用を模倣する。さらなる実施形態では、本発明のTn3足場は、TRAIL R2による細胞シグナル伝達を作動させる。
本発明は、また、本明細書記載のTn3足場を使ってTRAIL R2活性を調節する方法を提供する。一部の実施形態では、本発明の方法は、TRAIL R2を発現している細胞をTRAIL R2特異的足場と接触させ、TRAILリガンドとの相互作用を遮断することを含む。他の実施形態では、本発明の方法は、TRAIL R2を発現している細胞をTRAIL R2特異的Tn3足場と接触させ、TRAILリガンドとTRAIL R2との相互作用を模倣させることを含む。
他の実施形態では、本発明の方法は、TRAIL R2特異的Tn3足場と接触させることによりTRAIL R2を作動させる(agonize)ステップを含む。他の実施形態では、本発明の方法は、細胞上に発現したTRAIL R2単量体をTRAIL R2特異的足場と接触させ、二量体化またはオリゴマー化を促進することによるTRAIL R2を二量体化またはオリゴマー化するステップを含む。さらなる実施形態では、TRAIL R2の二量体化は、例えば、限定されないが、TRAIL R2二量体を模倣する、TRAIL R2ダイマー形成を安定化する、TRAIL R2単量体を不安定化する、または単に細胞上に提示されたTRAIL R2二量体を認識する、多量体Tn3足場の使用により達成可能である。
【0224】
他の実施形態では、TRAIL R2の二量体化またはオリゴマー化は、足場二量体化またはオリゴマー化試薬と結合した単量体Tn3足場の使用により達成可能である。このような足場の二量体化またはオリゴマー化試薬には、例えば、限定されないが、抗足場抗体、エピトープタグに対する抗体に結合したエピトープタグを有する足場の使用、または本明細書記載および当技術分野で既知の種々のタンパク質二量体化またはオリゴマー化モチーフの組込み、を含んでもよい。さらなる実施形態では、TRAIL R2二量体またはオリゴマーは、単量体足場の投与に続く足場二量体化またはオリゴマー化試薬の投与により誘導されうる。
【0225】
一部の実施形態では、本発明の方法は、当技術分野で既知の日常的アッセイにより測定して、細胞生存率を減少させるTRAIL R2特異的足場の投与を含む。さらなる実施形態では、細胞生存率の減少は、当技術分野で既知のアッセイで測定したアポトーシスの活性化である。他の実施形態では、細胞生存率の減少は、技術的に受け入れられた方法で測定した細胞分裂の抑制である。一部の実施形態では、処置が無い場合の細胞生存率に比べて、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれ超だけ細胞生存率が減少する。
一部の実施形態では、本発明のTRAIL R2結合Tn3足場は、TRAILとして知られるTRAIL R2用リガンドと類似の活性によりTRAIL R2を作動させる。他の実施形態では、本発明のTRAIL R2結合Tn3足場は、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達経路の活性化を生ずるのに充分な程度にTRAIL R2の活性化(カスパーゼ3、カスパーゼ8、カスパーゼ10、またはFADDの活性化を含む)を可能とする。他の実施形態では、本発明のTRAIL R2結合Tn3足場は、少なくとも1つの癌細胞型のアポトーシスを活性化する。さらなる実施形態では、本発明のTRAIL R2結合Tn3足場は、TRAILに比較して、少なくとも1つの細胞型アポトーシスの活性化の増強を示す。
他の実施形態では、本発明のTRAIL R2結合Tn3足場は、TRAIL R2上の、TRAIL(リガンド)が結合するのと同じエピトープに結合、または結合の競合が可能である。このような実施形態では、TRAIL R2結合足場は、TRAIL R2とTRAILの相互作用を、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれ超の、遮断または阻害ができる(可溶性TRAILリガンド(例えば、TRAILリガンドの114−281断片)を使ったインビトロ競合アッセイ、結晶学的試験、または他の既知のインビボまたはインビトロ試験で測定可能)。
【0226】
治療におけるTn3 TRAIL R2特異的足場の使用方法
TRAIL R2は、アポトーシスシグナル伝達を媒介することが知られている。いくつかのタイプの正常細胞がTRAIL R2を発現するが、この受容体を介したアポトーシスシグナル伝達は、主に腫瘍細胞に限定されているように思われ、癌遺伝子、例えば、MycまたはRasによるそれらの形質転換との関連で、細胞死受容体媒介アポトーシスの影響を受けやすくなる(Wang et al.、Cancer Cell 5:501−12(2004);Nesterov et al.、Cancer Res.64:3922−7(2004))。TRAIL R2は、ヒト癌細胞株ならびに原発性腫瘍で発現することが多い。
【0227】
一部の実施形態では、TRAIL R2特異的本発明の足場は、治療を必要としている対象(すなわち、癌患者)に投与される。そのような実施形態では、無菌の、発熱性物質を含まないTRAIL R2特異的足場含有組成物が、それを必要としている対象に投与される。治療の効果は、当技術分野でよく知られた種々のインビトロおよびインビボアッセイ、例えば、限定されないが、アネキシンV結合のカスパーゼ活性化を使ったアポトーシス活性、ならびに腫瘍組織重量または腫瘍体積の減少を使って測定できる。
【0228】
他の実施形態では、TRAIL R2特異的本発明の足場は、癌または他のTRAIL R2関連疾患の診断および検出に有用である。そのような実施形態では、本発明のTRAIL R2特異的足場は、検出試薬、例えば、限定されないが、放射性同位元素、蛍光または化学発光標識に結合される。そのような結合物質は、対象または前記対象から採取した検体における癌またはTRAIL R2関連疾患の検出または診断法に有用である。さらに、TRAIL R2特異的足場は、ヒトを含む哺乳動物の他のTRAIL R2関連病理学的状態、例えば、免疫関連疾患の診断および治療に有用である。
【0229】
特異的TRAIL R2結合配列
一部の実施形態では、本発明のTRAIL R2特異的Tn3単量体足場は、少なくとも1つの、少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、少なくとも5つの、または少なくとも6つのTRAIL R2に結合するループ配列を含む。
【0230】
一部の実施形態では、TRAIL R2特異的Tn3足場は、少なくとも1つの、少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、少なくとも5つの、または少なくとも6つの、1C12(配列番号132)、G3(配列番号133)、1E11(配列番号134)、C4(配列番号135)、C11(配列番号136)、F4(配列番号137)、およびG6(配列番号138)から選択されるTRAIL R2結合単量体足場クローンのループ配列を含む。
【0231】
一部の実施形態では、TRAIL R2特異的Tn3単量体足場は、表4に挙げられたループ配列から選択される少なくとも1つのループ配列を含む。他の実施形態では、TRAIL R2特異的単量体足場は、表4に挙げられたBCループ配列から選択される少なくとも1つのBCループ配列を含む。他の実施形態では、TRAIL R2特異的単量体足場は、表4に挙げられたDEループ配列から選択される少なくとも1つのDEループ配列を含む。他の実施形態では、TRAIL R2特異的単量体足場は、表4に挙げられたFGループ配列から選択される少なくとも1つのFGループ配列を含む。
【0232】
一部の実施形態では、TRAIL R2特異的Tn3単量体足場は、表4に挙げられたBCループ配列から選択されるBCループ配列を含み、表4に挙げられたDEループ配列から選択されるDEループ配列を含む。他の実施形態では、TRAIL R2特異的Tn3単量体足場は、表4に挙げられたBCループ配列から選択されるBCループ配列を含み、表4に挙げられたFGループ配列から選択されるFGループ配列を含む。他の実施形態では、TRAIL R2特異的Tn3単量体足場は、表4に挙げられたDEループ配列から選択されるDEループ配列を含み、表4に挙げられたFGループ配列から選択されるFGループ配列を含む。一部の実施形態では、TRAIL R2特異的Tn3単量体足場は、1つ、2つまたは3つの異なるTn3クローン由来のループ配列に対応するループ配列を含む。
【0233】
一部の実施形態では、TRAIL R2特異的Tn3多量体足場は、直鎖多量体であり、例えば、二量体、例えば、配列番号139の1E11タンデム2足場、四量体、例えば、配列番号140の1E11タンデム4足場もしくは配列番号143のG6タンデム4足場、六量体、例えば、配列番号141の1E11タンデム6足場、配列番号144のG6タンデム6足場もしくは配列番号167のF4mod12タンデム6、または八量体、例えば、配列番号142の1E11タンデム8足場、配列番号145のG6タンデム8足場、もしくは配列番号166のF4mod12タンデム8足場である。
一部の実施形態では、TRAIL R2特異的Tn3多量体足場は、Fc融合体であり、例えば、配列番号149の1C12のFc融合体、配列番号150のG3のFc融合体、配列番号151の1E11のFc融合体、配列番号152のC4のFc融合体、または配列番号153のG6のFc融合体である。
【0234】
一部の実施形態では、TRAIL R2特異的Tn3多量体足場は、抗体様融合体であり、例えば、配列番号154の1C12のIgG1重鎖定常領域足場と配列番号155の1C12カッパ軽鎖足場の結合により得られる足場、配列番号156のG3のIgG1重鎖足場と配列番号157のG3カッパ軽鎖足場の結合により得られる足場、配列番号158の1E11のIgG1重鎖足場と配列番号159の1E11カッパ軽鎖足場の結合により得られる足場、配列番号160のC4のIgG1重鎖足場と配列番号161のC4カッパ軽鎖足場の結合により得られる足場、または配列番号162のG6のIgG1重鎖足場と配列番号163のG6カッパ軽鎖足場の結合により得られる足場である。
【0235】
一部の実施形態では、TRAIL R2特異的Tn3多量体足場は、Fc融合体形式を直鎖形式と結合し、例えば、配列番号164の1E11タンデムの2Fc融合体、または配列番号165の1E11タンデム4である。
【0236】
TRAIL R2特異的Tn3多量体足場配列が配列のC末端にリンカーおよび/またはヒスチジンタグを含むような、ある特定の実施形態では、このC末端リンカーおよび/またはヒスチジンタグは、取り除くことができ、従って、対応するアミノ酸配列はC末端リンカーおよびヒスタグ配列の欠失を含む。
【0237】
一部の実施形態では、TRAIL R2特異的Tn3多量体足場は、PEGにコンジュゲートされる。特定的な実施形態では、F4mod12タンデム6(配列番号167)またはF4mod12タンデム8(配列番号166)足場は、PEGにコンジュゲートされる。さらなる実施形態では、PEGは多量体足場分子のN末端またはC末端にコンジュゲートされる。
【0238】
薬学的組成物
別の態様では、本発明は、組成物、例えば、限定されるものではないが、薬学的に許容される担体と一緒に処方された、本発明の足場または多量体足場の1つまたは組み合わせを含んでいる薬学的組成物を提供する。このような組成物は、例えば、限定されるものではないが、本発明の2つ以上の異なる足場のうちの1つまたは組み合わせを含んでもよい。例えば、本発明の薬学的組成物は、標的抗原上の異なるエピトープに結合するか、または相補的な活性を有する足場の組み合わせを含んでもよい。特定の実施形態では、薬学的組成物は、本発明の多量体足場を含む。
【0239】
本発明の薬学的組成物はまた、他の薬剤との組合せなどの併用療法において投与してもよい。例えば、併用療法は、免疫療法、化学療法、放射線療法、または薬物療法であってよい、少なくとも1つの他の療法と組み合わせた本発明の足場を含んでもよい。本発明の医薬品は、1つまたは複数の薬学的に許容可能な塩を含んでもよい。
【0240】
薬学的な用法および用量
本発明の足場を含む薬学的組成物または滅菌組成物を調製するために、足場を、薬学的に許容される担体または賦形剤と混合する。治療剤のための投与計画の選択は、実体の血清もしくは組織回転率、症状のレベル、実体の免疫原性、生体マトリックス中の標的細胞の接近性などのいくつかの要因に依存する。ある特定の実施形態においては、投与計画は、許容し得るレベルの副作用と一致する患者に送達される治療剤の量を最大化する。本発明の薬学的組成物中の活性成分の実際の用量レベルを、患者に対して毒性を示すことなく、特定の患者、組成物、および投与様式に対する所望の治療応答を達成するのに有効である活性成分の量を取得するために変化させてもよい。選択される用量レベルは、使用される本発明の特定の組成物、またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、使用されている特定の化合物の排出速度、治療期間、使用される特定の組成物と共に用いられる他の薬剤、化合物および/もしくは物質、処置される患者の年齢、性別、体重、症状、一般的な健康および以前の病歴、ならびに医学界で周知の同様の要因などの様々な薬物動態要因に依存するであろう。
【0241】
本発明の組成物はまた、当該分野で公知の種々の方法のうちの1つ以上を用いて1つ以上の投与経路を介して投与されてもよい。特定の実施形態では、本発明のTn3足場をインビボで適切な分布が確実になるように処方してもよい。
【0242】
足場の使用方法
本発明の足場は、インビトロまたはインビボにおいて、診断上および治療上の有用性を有する。例えば、これらの分子を、培養物中の細胞に、例えば、インビトロもしくはエキソビボで、または対象中に、例えば、インビボで投与して、様々な障害を治療、予防または診断してもよい。
【0243】
また、多くの細胞表面受容体は、サブユニットの交差結合の結果として活性化または不活性化する。本発明のTn3足場を用いて、TRAIL R2等の細胞表面受容体の交差結合によって標的細胞中での応答を刺激または阻害してもよい。別の実施形態においては、本発明の足場を用いて、複数の細胞表面受容体と抗原との相互作用を遮断してもよい。別の実施形態においては、本発明のTn3足場を用いて、複数の細胞表面受容体と抗原との相互作用を強化してもよい。別の実施形態においては、同じ抗原に対する特異性を共有するか、または2個の異なる抗原に結合する結合ドメインを含んでいる本発明のTn3足場を用いて、細胞表面受容体のホモまたはヘテロ二量体を架橋することが可能な場合がある。別の実施形態においては、本発明のTn3足場を用いて、特定の細胞表面受容体にリガンド、またはリガンド類似体を送達してもよい。
【0244】
本発明はまた、伝統的な抗体では容易に達成されないエピトープを標的化する方法も提供する。例えば、一実施形態においては、本発明のTn3足場を用いて、隣接する抗原を最初に標的してもよく、結合の間、別の結合ドメインが潜在的(cryptic)抗原に関与してもよい。
【0245】
本発明はまた、異なる細胞型を一緒にするために本発明のTn3足場を用いる方法も提供する。一実施形態においては、本発明の足場は、1個の結合ドメインを有する標的細胞に結合し、別の結合ドメインを介して別の細胞を動員してもよい。別の実施形態においては、第1の細胞は癌細胞であり得、第2の細胞はNK細胞などの免疫エフェクター細胞である。別の実施形態においては、本発明のTn3足場を用いて、おそらく免疫応答を増進する、抗原提示細胞とT細胞のような2種の異なる細胞間の相互作用を強化してもよい。
【0246】
本発明はまた、癌またはその症状を改善、処置、または予防するためにTn3足場を用いる方法も提供する。一実施形態においては、本発明は、本発明のTn3足場を使ってTRAIL抵抗性細胞集団を減少させる方法を提供する。これに関して、本発明のTn3足場は、一部のタイプの治療耐性癌の治療に使用できる。
【0247】
本発明はまた、細胞集団を枯渇させるためにTn3足場を用いる方法も提供する。一実施形態においては、本発明の方法は、以下の細胞型の枯渇において有用である:好酸球、好塩基球、好中球、T細胞、B細胞、肥満細胞、単球および腫瘍細胞。本発明は、また、本発明の足場を使って、サイトカインを不活化、阻害、または減少させる方法を提供する。また、本発明は、Tn3足場タンパク質を診断薬として使う方法を提供する。これに関して、一部の実施形態では、本発明のTn3足場のTRAIL R2受容体に対する結合を使って、TRAIL R2を発現している細胞を検出し、診断に役立てることができる。他の実施形態では、TRAILに耐性であるがTRAIL模倣薬には感受性がある細胞集団、およびTRAILにもTRAIL模倣薬にも耐性である細胞集団との間の差異を鑑別できる本発明のTn3足場の能力(例えば、実施例19参照)を診断の目的のために使用可能である。本発明のTn3足場は、異なる抗原が同時に効率的に捕捉されることが必要である場合に、キットまたは試薬として有用でありうる。また、アポトーシスの異常が原因の癌も、本発明の方法と組成物により治療可能であることも意図されている。
【0248】
別の実施形態では、本発明は、癌の予防、管理、治療または改善の方法を提供する。TRAIL R2特異的多量体Tn3足場は、癌、例えば、肺癌、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、結腸癌、結腸直腸癌、脾臓癌、および多発性骨髄腫の治療に使用できる。TRAIL R2特異的多量体Tn3による癌の治療は、追加の療法、例えば、免疫療法、生物学的療法、化学療法、放射線療法、または小分子薬物療法をさらに含んでもよい。
【0249】
癌を治療する方法は、それを必要とする対象に、予防上または治療上有効用量の本発明の1種以上のTn3足場を、外科手術と組み合わせて、単独で、または標準的もしくは実験的化学療法、ホルモン療法、生物療法/免疫療法および/もしくは放射線療法の投与とさらに組み合わせて投与することを含む。これらの実施形態に従えば、癌、自己免疫疾患、炎症性疾患もしくは感染性疾患またはその1つ以上の症状を予防、管理、処置または改善するのに利用される本発明のTn3足場を、部分(例えば、治療剤もしくは薬剤)にコンジュゲートさせるか、または融合させてもさせなくてもよい。
【0250】
等価物
当業者であれば、日常的なものを超えない実験を用いて、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、または確認することができるであろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲により包含されるものとする。
【0251】
本明細書に記載の全ての刊行物、特許および特許出願は、あたかも各々の個々の刊行物、特許または特許出願が具体的かつ個別に参照により本明細書に援用されると示されるのと同程度まで、参照により本明細書に援用されるものとする。本出願は、その内容全体が参照によって本明細書に援用される、2010年4月13日出願の米国特許仮出願第61/323、708号に対する優先権の恩典を請求する。さらに、2008年10月10日に出願され、国際公開番号WO2009/058379A2として公開された、PCT出願PCT/US2008/012398号は、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に援用される。
【表1】
【実施例】
【0259】
ここで本発明を、以下の実施例を参照して説明する。これらの実施例は、例示に過ぎず、本発明は、決してこれらの実施例に限定されるものではなく、本明細書に示される技術の結果として証明される任意のかつ全ての変形を包含すると解釈されるべきである。
【0260】
実施例1
種々の多価Tn3形式のデザイン
Tn3足場の多価形式が設計された。この多価形式は、それら自体に融合されるか、オリゴマー形成し得る他のタンパク質モチーフに融合されるか、またはそれら自体におよびオリゴマー形成し得る他のタンパク質モチーフに融合される、1つ以上のTn3モジュールを含むことが
図1に示される。各々の場合に、得られた分子実体は、少なくとも2つのTn3モジュールを含む。お互いに対する、または他のタンパク質モチーフに対するTn3モジュールを接続するポリペプチドリンカーが構築されても、または未構築であってもよく、機能はある場合とない場合がある。多価Tn3足場タンパク質のこれらの例示的な分類が、特に提供される:(i)直線の(L)多価タンパク質であって、ポリペプチドリンカーを介してお互いに対して融合されたTn3モジュールを含有する多価タンパク質;(ii)抗体様(Ig)多価タンパク質であって、抗体または抗体フラグメントの軽鎖および重鎖に融合された1つ以上の直鎖的に融合されたTn3モジュールを含む多価タンパク質;ならびに(iii)Fc含有多価タンパク質であって、抗体Fc領域に融合された1つ以上の直鎖状に融合されたTn3モジュールを含む、多価タンパク質(
図1)。
【0261】
実施例2
多価TRAIL R2特異的なTn3含有タンパク質の発現および精製
ヒトTRAIL R2の結合特異性を有する一連の8つの多価Tn3モジュール(足場タンパク質を含む)(「Tn3タンパク質」または「Tn3足場」とも呼ばれる)を調製した。実施例は、実施例1に記載の3つの多価形式の各々から調製し、これらのタンパク質の全てが、2つ以上のTRAIL R2−結合Tn3モジュールA1(クローン1E11、G6または1C12)を示した。TRAIL R2特異的な多価Tn3タンパク質については、TRAIL R2に結合しなかった対応する対照のTn3タンパク質(クローンD1、Synagis(登録商標)抗体に特異的なTn3ドメイン)も生成され、これは、成分Tn3モジュールの配列および結合特異性においてのみ異なる。Tn3クローンD1は、Tn3タンパク質であって、ここで1E11クローンのBC、DE、およびFGループは、それぞれ配列番号99、38、および107に対応する配列を有する別のループで置き換えられる(表4を参照のこと)。発現された多価Tn3タンパク質構築物の配列同一数を表2に示しており、全ての可能な構築物は、表3および
図2に模式的に示される。クローンのループ配列を表4に示す。
【表2】
【表3】
【0262】
【表4】
【0263】
発現構築物の調製:用いられた酵素は、New England Biolabs(Ipswich、MA)のものであり、DNA精製キットは、Qiagen(Germantown、MD)のであり、DNAプライマーは、IDT(Coralville、IA)のであった。2つ以上の直鎖状に融合されたT3モジュールをコードする発現構築物の調製は、以下のとおりであった。TRAIL R2特異的なTn3モジュールをコードするDNA(例えば、1E11;配列番号134;G6、配列番号138;など)は、プライマー「Tn3 gly4ser1モジュールフォワード」(配列番号112)および「Tn3 gly4ser2モジュールリバース」(配列番号113)(表5)を用いるPCRによって増幅した。
【0264】
PCR産物の浄化後、増幅されたDNAを2つに分け、ここで、半分はBpmIで消化し、残りの半分はAcuIで消化した。消化したサンプルを、PCR浄化キットを用いて精製し、T4 DNAリガーゼで連結して、2つのTn3モジュール(A2)をコードするDNA産物を作製した。この物質を、アガロースゲル電気泳動によって精製して、再度2つに分けた。NcoIおよびKpnIでの消化、続いてNcoI/KpnI消化したpSec−oppA(L25M)への連結によって(WO2009/058379A2、実施例18に記載)、タンパク質A2についての細菌発現構築物を得た。pCR2.1−TOPOベクター(Invitrogen、Carlsbad、CA)への未消化生成物の連結によって、より高次の融合物の生成のための遺伝物質を得た。4つのTn3モジュール(A3)をコードするDNAフラグメントを作製するために、TOPOクローニングされたA2のDNAを、プライマー「モジュール amp フォワード」(配列番号114)および「モジュール amp リバース」(配列番号115)(表5)でPCR増幅し、精製して、AcuIまたはBpmIでの消化のために2つに分けた。A3発現構築物を作製するためのプロセスの残りは、A2構築物を作製するために用いたものと同じであって、ここでA3をコードするDNAを、A2構築ブロックからアセンブルした。再度、pCR2.1−TOPO中にアセンブルされたA3のDNAの同時的なクローニングによって、より高次の融合物の生成のための遺伝物質を得た。
【0265】
A4およびA5細菌発現構築物の調製のために、アダプターモジュールを、A3発現構築物内のマルチ−Tn3コード配列の3’末端に導入した。この目的を達成するために、A3発現ベクターを最初に、KpnIおよびEcoRIで消化して、切り出したフラグメントを、オリゴヌクレオチド「pSecフォワード中のインサートBamHI(insert BamHI in pSec forward)」(配列番号116)および「pSecリバース中のインサートBamHI(insert BamHI in pSec reverse)」(配列番号117)(表5)を含有する二重カセットで置き換えた。対応するpCR2.1TOPO構築物由来のA2およびA3配列のPCR増幅を、プライマー「モジュールインサートBamHIフォワード(モジュール insert BamHI forward)」(配列番号118)および「モジュールampリバース(モジュール amp reverse)」(配列番号115)(表5)で行った。増幅された生成物を、BamHI/KpnIで二重消化して、同時に消化したA3発現構築物中にクローニングした。
【0266】
タンパク質A6−A9を、WO2009/058379(A2)の実施例16に記載されるように、293F細胞の一過性のトランスフェクションによって発現した。簡潔に述べると、発現ベクターを、細菌発現構築物からTn3モジュール(単数または複数)をPCR増幅すること、ならびにFc融合物もしくは抗体タンパク質の発現のために、Fc領域、カッパ軽鎖定常領域および/またはCH1ヒンジCH2−CH3重鎖定常領域をコードする自家ベクター中にこれらをクローニングすることによって生成した。タンパク質A9については、Tn3モジュールは、ヒトのIgG1重鎖およびカッパ軽鎖中の抗体可変領域を置き換える。タンデム構築物のFc融合物を作製するための適合するのNheIおよびKasI部位を付加するプライマーを表5に示す。
【表5】
【0267】
タンパク質の発現および精製:多価または直鎖状のTn3タンパク質は、BL21(DE3)E.coli(EMD/Novagen、Gibbstown、NJ)中で発現され、His−タグ化タンパク質は、Ni NTA Superflow樹脂(Qiagen)を用いて培養培地から精製した。驚くべきことに、分子量の大きな相違にもかかわらず、E.coli中で中レベルから高レベルで発現されるこれらの構築物の全てが、培地中に効率的に分泌された(表6および
図3)。
【0268】
Fc融合および抗体様タンパク質(A6−A9)を発現するために、293F細胞を、適切な発現構築物で一過的にトランスフェクトした。上清の回収は、6日および10日に行い、タンパク質は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。
【0269】
全ての精製したタンパク質を、SDS−PAGEによって、NuPage Novexで、MES緩衝液中の4〜12%のビストリスゲル上で還元剤なしで分析し、SimplyBlue SafeStain(Invitrogen、Carlsbad、CA)を用いて可視化した。サイズ排除クロマトグラフィーもまた用いて、精製されたタンパク質を分析し、必要に応じて、凝集した物質を、Superdex 75 10/300GLまたはSuperdex 200 10/300GLカラム(GE Healthcare、Piscataway、NJ)のいずれかで除去して、総タンパク質の10%未満の最終レベルにした。Mustang E膜を備えるAcrodiscユニット(Pall Corporation、Port Washington、NY)を、製造業者が示すとおり用いて、細菌発現したタンパク質調製物からエンドトキシンを除去した。
【表6】
【0270】
実施例3
一価および多価のTn3タンパク質についてのTRAIL R2結合親和性
一連のTRAIL R2特異的Tn3タンパク質の結合親和性に対するTn3の価数の影響を測定するために、競合的ELISA実験を行った。96ウェルのNUNC MaxiSorpプレート(Thermo Fisher、Rochester、NY)を、A9(1C12)(配列番号154+配列番号145)TRAIL R2特異的な足場を用いて、抗体様の形式で、PBS中で、2μg/mlで、4℃で一晩コーティングした。プレートを、PBS0.1%Tween20+10mg/mlのBSAでブロックした。A1(1E11単量体)、および線形方式のA2(1E11二価)またはA3(1E11四価)多量体足場の希釈物を、このコーティングしたプレート上で0.75nMのビオチニル化TRAIL R2−Fcとともに、2時間室温で、PBS0.1%Tween20+1mg/mlBSAn中でインキュベートして、洗浄した。結合したビオチニル化TRAIL R2 Fcを、ストレプトアビジンHRP、TMBで検出して、酸で中和した。吸光度は、450nmで読み取った。データを
図4に示す。結合親和性(IC
50)を、表7に示しており、ビオチニル化TRAIL R2−Fcの最大結合を50%まで減少するために必要な競合するタンパク質の濃度として算出した。
【0271】
A2およびA3についてのIC
50値は、単量体A1のものよりも少なくとも30倍低く、かつこのアッセイの限界である(すなわち、ビオチニル化TRAIL R2−Fcの濃度にほぼ等しい)。固定されたTRAIL R2特異的なTn3に対するビオチニル化TRAIL R2−Fcの結合は、TRAIL R2結合構築物によって置き換えた。
【0272】
単量体のA1タンパク質に対して、二価および四価のA2およびA3タンパク質は、30〜40倍高い親和性でTRAIL R2−Fcに結合し、これは、多重Tn3モジュールがその結合活性を保持し、かつ結合活性効果を通じて高い親和性に寄与することを示すものである。一価および二価または四価のTn3タンパク質の間の親和性における真の差異は、A2およびA3についてのIC
50値がこのアッセイで用いられるビオチニル化TRAIL R2−Fcの濃度とほぼ等しかったと仮定すれば(0.75nM)、30〜40倍大きいものであり得る。
【表7】
【0273】
実施例4
細胞結合の確認のためのフローサイトメトリー
フローサイトメトリーを用いて、H2122細胞の表面上で発現される内因性TRAIL R2に対する多価TRAIL R2特異的なTn3タンパク質の結合の特異性を確認した。付着性のH2122細胞(非小細胞細胞肺癌腺癌細胞株)を、Accutase(Innovative Cell Technologies、San Diego、CA)を用いて組織培養フラスコから剥がした。細胞を、完全培地(10%FBSを補充したRPMI 1640培地)ですすぎ、PBS/2%FBS中に約2×10
6細胞/mLで再懸濁した。Tn3タンパク質A9(1E11)(配列番号158+配列番号159)、四価抗体様の形式の多量体足場、または形式の適合した対照のTn3タンパク質B9(クローンD1)を、40nMの濃度でPBS中で/2%FBS中で調製した。
【0274】
細胞を、1ウェルあたり75μlで96ウェルのU底(丸底)プレートに播いて、タンパク質試料を、1ウェルあたり25μlで添加した(10nMの最終濃度まで)。プレートを、4℃で約1時間インキュベートし、次いでPBS/2%FBSで3回洗浄した。抗ヒトIgG Alexa Fluor 488コンジュゲートした添加された二次抗体を添加して(100μl/ウェル)、プレートを4℃で約30分間インキュベートして、上記のように洗浄した。細胞を、100μlのPBS/2% FBS中に再懸濁して、フローサイトメトリー分析を、BD LSR II血球計算器(BD Biosciences、San Jose、CA)を用いて行った。対照に対してTRAIL R2特異的な Tn3タンパク質とインキュベートした場合の傾向的に標識したH2122細胞でのシフト(増大)によって、TRAIL R2特異的なTn3タンパク質が、細胞性TRAIL R2に結合し得ることが確認された(
図5)。
【0275】
実施例5
TRAIL R2特異的なTn3タンパク質によるH2122細胞のアポトーシスに対する価数および形式(フォーマット)の効果
アポトーシス性の細胞死は、細胞表面TRAIL R2の架橋によって、癌細胞株で誘導され得る。この効果は、生存細胞の数を測定する細胞アッセイで決定され得る。この目的を達成するために、肺癌細胞株H2122細胞を、96ウェルプレート中に、10、000細胞/ウェルの密度で、75μlの完全培地(10%FBSを補充したRPMI 1640培地)中でプレートした。一晩37℃でインキュベーションした後、培地に、連続希釈のTRAIL R2特異的な(クローン1E11)または負の対照(クローンD1)Tn3タンパク質を含有する25μlの追加の培地を補充した。全ての処置は、二重のウェルで行った。市販のTRAILリガンド(Chemicon/Millipore、Billerica、MA)を、TRAIL受容体−誘導性の細胞死の陽性対照として用いた。72時間後、PromegaのCellTiter−Gloキット(Madison、WI)を、製造業者の指示に従って用いて、培養中の生存細胞の数の指標であるATPレベルをアッセイした。アッセイの発光は、Envision Plateリーダー(PerkinElmer、Waltham、MA)で測定した。細胞生存の阻害は、処理した細胞についての発光の値を未処理の生存細胞についての平均の発光で除すことによって決定した。阻害対化合物濃度の用量応答プロットを作製し、細胞殺滅力価(EC
50)は、細胞生存度の50%を阻害するのに必要なタンパク質の濃度として決定した。
【0276】
多価TRAIL R2特異的なTn3タンパク質のプロアポトーシス性の活性に対する価数の影響を試験するために、H2122細胞を、一価のTn3タンパク質A1(クローン1E11)、および一連の直鎖状に融合されたTn3タンパク質A2−A5(各々のクローン1E11)(2、4、6または8のTn3モジュールを含む)で処理した。一価および二価のTn3タンパク質は、殺滅活性をまったくまたはほとんど示さなかったが、4、6および8のTn3モジュールを含有するタンパク質は、H2122細胞生存度を強力に阻害し、ここで力価は、価数の関数として増大した(
図6A;表8)。タンパク質A3(四価)は、TRAIL、天然のTRAIL R2リガンドに対して類似の力価を有するが、タンパク質A4(六価)およびA5(八価)は、1〜2対数強力であった。このアッセイから、所定の分子フォーマットについて、細胞殺滅は、アッセイがもはや識別できない点まで高い価数で改善することが明らかである。
【表8】
【0277】
細胞生存度の阻害が、TRAIL R2結合に依存することを示すため、100pMのタンパク質A5(クローンG6)(すなわち、167×EC
50)を、H2122細胞と共に、可溶性のTRAIL R2−Fcタンパク質の存在下でインキュベートした。可溶性のTRAIL R2−Fcによる細胞殺滅の用量依存性の抑制は、細胞殺滅が、細胞表面TRAIL R2に対するタンパク質A5結合に依存することを示すものである(
図6B)。クローン1E11ループを含むタンパク質A5で同様の結果が示された(データ示さず)。
【0278】
結合モジュールの数に加えて、多価Tn3タンパク質の活性はまた、個々の結合単位を示すために用いられる分子フォーマットによって影響され得る。活性に対する分子フォーマットの効果を試験するために、H2122細胞を、同じ数のTn3結合モジュールの同じ数を提示する種々のTRAIL R2特異的なTn3タンパク質で処理した。四価タンパク質A3、A7およびA9(各々クローン1E11)が、H2122細胞の殺滅を誘導する能力を、細胞生存度アッセイで試験し、同様に、八価のTn3タンパク質A5およびA8(各々クローン1E11)の対も試験した。不活性な一価および二価のタンパク質を、負の対照として、およびTRAILを正の対照として含めた(
図7;表9および表10)。
図7Aでは、4の価数で試験した3つの構築物について、A3(直鎖状フォーマット)およびA7(Fc融合物フォーマット)が、それらの細胞殺滅活性において同様であり、かつA9よりもH2122細胞を殺滅するのに強力であることが明らかである(抗体様の融合形式)。これによって、Tn3モジュールの空間的配向が、生理活性にかなりの影響を有し得、ここでA3は、H2122細胞生存度を阻害するのにおいてA9タンパク質よりも約150倍強力であることが明確に示される(表9)。
図7Bによって、八価のTRAIL R2結合性Tn3タンパク質、A5(直鎖状)およびA8(Fc融合物)の両方の形式とも、H2122細胞の生存度を阻害するのに同様の有効性を有することが示される。これらの構築物についてのEC
50データを、表9に示す。親和性、価数および空間配向を繊細に調節する能力によって、所望の治療結果を正確に操作する能力に関してかなりの柔軟性が得られる。
【表9】
【表10】
【0279】
実施例6
細胞株Colo205およびJurkatにおける用量依存性の細胞殺滅
多価TRAIL R2特異的なTn3タンパク質が、H2122以外の癌細胞株を殺滅し得ることを示すために、他のTRAIL R2発現性の細胞株も試験した。結腸直腸腺癌細胞株Colo205(
図8A)およびJurkat T細胞白血病株(
図8B)を、それらが、タンパク質A3(四価、直鎖状形式)(配列番号143)およびA5(八価、直鎖状フォーマット)(配列番号145)(各々クローンG6)によって殺滅され得る能力について試験した。各々の細胞株を、A3、A5、正の対照TRAIL、または負の対照タンパク質B5(配列番号148)(これは、TRAIL R2に結合しない)とともにインキュベートして、細胞生存度アッセイを、H2122について記載されるとおり行った。これらの細胞株の各々において、A5は、細胞生存度の極度に強力な阻害を示す。より低い価数のA3タンパク質はまた、A5よりも低い価数ではあるが、細胞殺滅を誘導する。従って、構築物の価数が高いほど、大きい活性を示す。予想どおり、TRAILはまた、細胞生存度を阻害し得るが、八価の負の対照タンパク質B5(TRAIL R2に結合しない)は阻害し得ない。
【表11】
【表12】
【0280】
細胞は、実施例5のCellTiter−Gloアッセイによって分析した。
【0281】
実施例7
マウスのCD40L特異的な二価のタンデム足場のデザイン、発現および活性
二価のマウスCD40L特異的なTn3タンパク質(表13)を、一対の同一のTn3モジュールを融合することによって調製した。M13は、マウスCD40Lに特異的に結合するTn3タンパク質である。M13配列は、Tn3の配列に対応し、ここでは、BC、DE、およびFGループの配列が、それぞれ、配列番号100、104および110に対応する配列を有する別のループで置き換えられる(表4を参照のこと)。Gly
4Ser(GS)ユニットの1(構築物C1(M13))、3(構築物C2(M13))、5(構築物C3(M13))、または7(構築物C4(M13))コピーを含むリンカーを用いて、13〜43アミノ酸の総リンカー長を得た(
図9Aおよび表3を参照のこと)。
【表13】
【0282】
簡潔に述べると、発現構築物を、以下のとおり生成した:フラグメントAは、Tn3遺伝子の上流のpSecベクターに特異的なプライマー、およびプライマー「1−3 GSリンカー リバース」(配列番号123)を用いる、実施例1に記載されるpSec−oppA(L25M)ベクター中にクローニングされたマウスCD40L結合因子pSec−M13のPCR増幅によって生成した(用いられるTn3特異的プライマーの配列については表14を参照のこと)。フラグメントB1GSおよびB3GSは、それぞれ、プライマー「1GSリンカー」(配列番号121)または「3GSリンカー」(配列番号122)、およびTn3遺伝子の下流のpSecベクターに特異的なプライマーを用いて同じテンプレートのPCR増幅によって生成した。フラグメントをゲル精製して、フラグメントAおよびB1GS、またはフラグメントAおよびB3GSを混合して、タンデム構築物を、2つのpSecベクター特異的なプライマーを用いてPCR反応において重複PCRによって生成した。この生成物を、NcoIおよびKpnIで消化して、pSec−oppA(L25M)ベクター中に、実施例1に記載のようにクローニングして戻し、2つの構築物を得た:C1(M13)およびC2(M13)。5および7のGSリンカー構築物を生成するために、プライマー「GS L Amp フォワード」(配列番号126)および「GS L Amp リバース」(配列番号127)を用いて、それぞれ、オリゴヌクレオチド「5GSリンカー」(配列番号124)および「7GSリンカー」(配列番号125)のPCR増幅によって生成されたリンカー挿入物を、PstIおよびXmaIで消化して、PstIおよびXmaIを用いてpSecM13−1GS−M13を切断することによって生成したベクターフラグメント中にクローニングして、構築物C3(M13)およびC4(M13)を得た。
【表14】
【0283】
同一のTn3足場を含む一価および二価のタンデム構築物を、実施例2に記載のように、組み換え的に発現して、E.coliから精製した。
図9Bは、還元条件および非還元条件下での精製タンパク質調製物のSDS−PAGE分析を示す。
【0284】
二価タンデムM13−M13構築物の結合有効性を試験して、それらを、一価のM13足場と比較するために、それらが、バイオセンサーチップ上に固定されたマウスCD40受容体に対するマウスCD40L結合の競合的阻害を試験した。
【0285】
簡潔に述べると、IgG1のFc領域とのキメラ融合の形態であるマウスCD40受容体のフラグメントを、約3000という応答ユニットの密度でGLCチップ(Bio−Rad)上に固定した。競合結合アッセイについて、一価のM13または異なるリンカー長を有するM13のタンデム二価構築物の3倍連続希釈を、20分間、0.1%(v/v)Tween−200および0.5mg/mLのBSAを含有するPBS中に含まれる固定濃度のE.coli生成組み換えマウスCD40L(0.5μg/ml)とともにインキュベートした。次いで、これらの試料を、30μL/分の流速でGLCチップ上に300秒間注入して、結合したCD40Lのレベルをセンサーグラム内で固定の時点で記録して、任意の競合因子の非存在下で、結合したタンパク質の対応するレベルと比較した。各々の結合測定の後、残りのCD40Lを、10mMグリシン−HCl(pH2.0)を注入することによってチップ表面から脱着させた。非特異的な結合の効果を、チップのインタースポットからセンサーグラムを差引きすることによって修正した。マウスCD40Lの50%を置き換えるのに必要なTn3構築物の濃度に対応するIC
50値は、GraphPad Prismを用いて算出した。
【0286】
図9Cに示されるとおり、M13単量体についての最大半減阻害濃度(IC
50)は71nMであったが、二価タンデム構築物C1(M13)についてのIC
50は29nMであった。5または6nMという同様のIC
50値が、より長いリンカーを含む二価構築物について得られた(それぞれ、構築物C2(M13)、C3(M13)およびC4(M13))。このアッセイで用いられるCD40Lの濃度に起因して、これは、このアッセイで観察できるIC
50の下限である。この二価構築物は全てが、一価の構築物に比較して低いIC
50値を有し、このことは、単一のM13 Tn3モジュールに比較して二価タンデム構築物の結合活性の増強を示した。これらの二価構築物におけるリンカー長は、アッセイ力価に対してある程度の効果を示し、ここでは最短のリンカー長の構築物が中間の力価を有するが、23以上のアミノ酸のリンカーを有するこれらの構築物は、このアッセイで等価である。
【0287】
細胞に基づいたの活性において二価タンデムTn3構築物の活性を試験し、それらを一価のM13足場と比較するために、B細胞上のマウスCD40L−誘導性のCD86発現の阻害を試験した。対照として、市販の抗マウスCD40L特異的な抗体(MR1)を、平行して試験した。
【0288】
このアッセイは、健常なボランティア由来の血液から調製したPBMCを利用する。簡潔に述べると、新鮮に吸引した血液を、ヘパリンを含むBD Vacutainer(登録商標)CPT(商標)細胞調製試験管中に収集した。遠心分離後、PBMCを含有する細胞層を、収集して、PBSを用いて2回、およびRPMI 1640培地を用いて1回洗浄した。細胞を、完全RPMI 1640培地(10%熱不活化ウシ胎仔血清を補充、1%P/S)中に、5×10
6細胞/mlの濃度で再懸濁した。
【0289】
マウスCD40L−発現性のTh2細胞株D10.G4.1を、洗浄して、完全RPMI 160培地中に、1×10
6細胞/mlの濃度で再懸濁した。
【0290】
M13、M13−M13タンデム二価構築物C1−C4、またはMR1抗体(BioLegendカタログ番号106508)を、完全RPMI 1640培地中で連続希釈した(1:3)。各々の希釈物の50μlサンプルを、96ウェル丸底組織培養プレート中のウェルに添加した。次いで、各々のウェルに50μlのD10.G4.1細胞(5×10
4)を入れて、混合後、プレートを、37℃で1時間インキュベートした。次いで、100μlの再懸濁したPBMC(5×10
5細胞)を、各々のウェルに添加して、37℃で20〜24時間インキュベートした。
【0291】
PBMCを収集して、APC抗ヒトCD86(BD bioscience、カタログ番号555660)およびFITC抗ヒトCD19(BD bioscience、カタログ番号555412)が含有されるFACS緩衝液(PBS pH7.4、1%BSA、0.1%アジ化ナトリウム)4℃で30分間、暗所で染色した。FACS緩衝液中での2回洗浄後、次に試料を、FACS LSRII(Becton Dickinson)によって分析した。CD19ゲートしたB細胞上のCD86発現を評価した。CD86発現の分析は、試験タンパク質の関数として、GraphPad Prismソフトウェアを用いて行った。
【0292】
図9Dに示されるとおり、二価M13−M13タンデム構築物は全てが、MR1抗体(100pM)のIC
50に匹敵する、100〜200pMというIC
50でCD86発現を阻害し、M13一価足場自体よりも約3 log強力であった。生化学的アッセイと異なり、この細胞に基づいたのアッセイでは、リンカー長の効果は観察されず、そして、13〜43アミノ酸長におよぶリンカーを有する二価構築物は全てが、一価のタンパク質に比較して力価を増強に関し同じ能力を示す。
【0293】
実施例8
二重特異性のタンデム足場の発現
TRAIL R2およびヒトCD40L(HuCD40L)に特異性を有する二重特異性のTn3構築物を生成するために、2つのTn3モジュール(1つは、TRAIL R2に特異性を有するもの(クローン1E11)、および1つは、ヒトCD40Lに特異性を有するもの(クローン79))を2つのモジュールを分ける可変長のリンカーと一緒に融合した(表3および表15)。クローン79タンパク質の配列(配列番号184)は、Tn3モジュールの配列に対応し、ここでBC、DE、およびEFループは、それぞれ、配列番号101、105および111に対応する別のループで置き換えた。1および3個のGly
4Ser(GS)リピートを有するリンカーを含む、タンデム二重特異性の足場についての発現構築物(それぞれ、構築物C6およびC8)は、Tn3改変体A1および79を担持するプラスミドを、最初にPCRテンプレートとして用いたこと以外は、実施例7に記載のとおり生成した。構築物C5(ヒトテネイシンCにおける第二および第三のFnIIIドメインを連結する天然の配列由来の短いリンカーを含み、これは、第三のFnIIIドメインのAβ鎖の一部と解釈され得るが、足場結合には必要ではない)、および構築物C7は、「0 GSリンカー リバース」を、「1−3 GSリンカー リバース」の代わりにC5に用いたこと以外は、表16に列挙される追加のプライマーを用いて、C6およびC8と同様の方法で生成した。
【表15】
【表16】
【0294】
一価、ならびにタンデム二重特異性のTn3足場を、実施例2に記載のようにE.coli培地で組み換え的に発現させた。可溶性構築物の発現レベルは、SDS−PAGEを用いて分析した。
図10は、試験した構築物について許容できる発現レベルを示す。
【0295】
実施例9
二重特異性のタンデム足場の特異的な結合
CD40LおよびTRAIL R2に対する二重特異性のTn3構築物の結合を測定するために、捕捉ELISAアッセイを使用した。簡潔に述べると、8×His−タグ化タンパク質構築物:A1、79、C5、C6、C7またはC8(詳細に関しては、表15を参照のこと)を、E.coli培地から、抗His抗体コーティングしたウェル上に以下のとおり捕捉した。96ウェルのMaxiSorbプレートを、Qiagen抗His抗体を用いて2μg/mlで一晩コーティングした。コーティングしたプレートを、0.1%(v/v)のTween−20および4%(w/v)の脱脂粉乳(PBST4%乳)を含有するPBSで1.5時間ブロックした。コーティングしたプレートを、PBSTで洗浄して、可溶性の発現されたタンパク質を含有する希釈した細菌培地(30倍希釈)を添加して、プレートを室温で2時間インキュベートした。PBSTでの洗浄後、捕捉された構築物を含有するウェルを、種々の濃度のビオチニル化TRAIL R2(
図11A)またはE.coli産生のHisタグ化HuCD40Lとビオチニル化抗His抗体とのプレインキュベーションによって生成された複合体(
図11B)のいずれかとともに1.5時間インキュベートした。PBSTでの洗浄後、結合したTRAIL R2またはHuCD40L/抗His抗体複合体を、ストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ(RPN1231V;GE Healthcare;1000×ワーキング希釈液)を用いて20分間検出し、PBSTで洗浄し、TMB基質(Pierce)の添加によって比色分析によって検出した。吸光度は、450nmで読んだ。
【0296】
TRAIL R2に対する二重特異性のタンデムTRAIL R2−HuCD40L特異的な足場の結合、およびHuCD40Lに対する二重特異性のタンデムTRAIL R2−HuCD40L特異的な足場の結合を、それぞれ
図11Aおよび
図11Bに示す。HuCD40L特異的なTn3ドメインに融合されるTRAIL R2特異的なTn3ドメインを含む、C5〜C8と命名された二重特異性のタンデム足場は、TRAIL R2およびHuCD40Lに結合した;しかし、単量体の/一価特異的なTn3構築物A1および79は、それらの既知の特異性に従ってTRAIL R2またはHuCD40Lのいずれかに結合したが、両方の標的には結合しなかった。
【0297】
TRAIL R2およびHuCD40Lに対するタンデムTRAIL R2−HuCD40L特異的構築物の同時結合は、AlphaScreen(商標)アッセイを用いて決定した。タンパク質A1、79、C5、C6、C7およびC8を含有するE.coli培地の希釈物を、10nMのTRAIL R2−Fc融合タンパク質、50nMのビオチニル化 HuCD40L(E.coliで産生)、ストレプトアビジンAlphaScreenドナービーズ(0.02mg/ml)およびプロテインA AlphaScreenアクセプタービーズ(0.02mg/ml)が含有されるPBS+0.01%Tween+0.1%BSAとともにインキュベートした。試料を、PerkinElmer Envisionリーダー中での読み取りの前に暗所で1時間インキュベートした。ドナービーズ集団を、680nmのレーザーで励起して、一重項酸素の放出を生じた。一重項酸素は、寿命が限られており、基底状態に戻る前に拡散によって最大200nmまで移動することを可能とする。一重項酸素は、アクセプタービーズを励起させて、520〜620nmの光の放射を生じる(これは、Envisionリーダーで測定される)。ドナーおよびアクセプタービーズが近位である場合のみ、シグナルが生成される。従って、シグナルの増大は、2種のビーズが、2つの標的と同時に相互作用する分子によって一緒にされる場合に観察される。いずれの標的に対する結合も存在しなければ、シグナルは検出されないはずである。
【0298】
図12に示すとおり、タンデム二重特異性構築物は、TRAIL R2およびHuCD40Lに同時に結合して、強力なAlphaScreenシグナルを生成した;しかし、一価のTn3足場、A1および79は、シグナルを生成せず、このことは、それらが、両方の標的を同時に結合することによってドナーおよびアクセプタービーズを近位にし得ないことを示す。
【0299】
実施例10
9アミノ酸長のFGループを有するTn3足場の安定性の増大
Tn3安定性に対するFGループ長の影響を測定するために、pH7.0での塩酸グアニジン(GuHCl)による6つのHuCD40L特異的なTn3足場の折り畳みを、内因性のトリプトファン蛍光によって評価した。これらのTn3単量体足場は、9、10または11アミノ酸のFGループ長を含んだ。種々の濃度の塩酸グアニジンを含有する0.05mg/mLのTn3足場のサンプルを、pH7.0で50mMのリン酸ナトリウム中で調製した。蛍光放射スペクトルは、Horiba Fluoromax−4スペクトロフルオロメーターで、280nmの励起波長で得た。360nmの相対的な蛍光放射強度を、各々のタンパク質についてGuHCl濃度の関数としてプロットした。各々の足場は、固有のBC、DE、およびFGのループ配列を含んだ。クローンA3(配列番号185;本実施例のA3単量体足場は、表3に提供されるようにA3と命名された構築物とは別であることに注意)、71(配列番号186)、79(配列番号184)、127(配列番号187)、252(配列番号188)、および230(配列番号189)は、pH7.0で3.0MのGuHCl(親のTn3の50%未折り畳みを発揮するのに必要なGuHCl濃度(C
m)である)中で50%を超えて未折り畳みであった。クローンA3、79、127、252および230のC
m値は、それぞれ、2.2M、2.7M、2.4M、2.7M、2.4Mであった。これらのクローンについてのFGループ長は、それぞれ、11、11、11、10および11アミノ酸であるが、親のTn3のFGループ長は、10アミノ酸である。驚くべきことに、クローン71(9アミノ酸というFGループ長を有する唯一の改変体)は、親のTn3足場、または試験した他の5つの改変体よりも有意に高い安定性である、4.2MというCmを示した。結果を
図13に示す。
【0300】
Tn3クローン71の安定性の増強が、その配列に内因性であるか、または短縮されたFGループ長の結果であるかを決定するため、このクローンおよび2つの通過の単量体のTn3足場タンパク質、(A6(配列番号190;本実施例におけるA6単量体の足場は、表3に提供されるようにA6と命名された構築物とは別であることに注意)およびP1C01(配列番号191))、であって9アミノ酸のFGループ長を有する(ただし、異なるBC、DEおよびFGループ配列)を、示差走査熱量測定(DSC)によって分析し、10アミノ酸長さであるFGループを含む親のTn3足場と比較した。Tn3タンパク質サンプルは、1mg/mLでPBS(pH7.2)中で分析した。全ての場合に、熱未折り畳みの中点は、10残基のFGループを有する親(WT)Tn3に比較して9残基FGループを有するクローンについて高かった。熱未折り畳みは、同じサンプルを冷却して再加熱した場合、上書き可能なサーモグラムによって証明されるとおり、可逆性であるか、または部分的に可逆性(クローンA6)であった。
図14に示されるとおり、親のTn3についての融点(T
m)は72.1℃であって、P1C01については、Tmは75.2℃であって、A6については、T
mは77.5℃であって、かつ71については、T
mは74.4℃であった。
【0301】
これらの知見を、塩酸グアニジン安定性実験において同じTn3タンパク質改変体を試験することによって、裏付けた。pH7.0での塩酸グアニジン(GuHCl)による親の(WT)Tn3、P1C01、A6、および71の未折り畳みを、上記のように内因性のトリプトファン蛍光によって評価した。
図15に示されるとおり、
図14のDSCデータと一致して、Tn3クローンA6、71、およびP1C01は全てが、親の(WT)Tn3足場よりも有意に高いGuHCl濃度で未折り畳みの中点を有し、このことは、9アミノ酸長である(すなわち、親のTn3足場の長さよりも短い)FGループを有するTn3タンパク質の安定性が増強されることを示す。
【0302】
実施例11
FGループ長の安定性分析
上記のように、予備的分析によって、9残基というFGループ長を有するTn3分子が、それより長いFGループを有するTn分子よりも有意に安定であることが示された。これらの研究では、本発明者らは、1セットのランダムなTn3で安定性分析を行って、熱安定性に対するFGループ長の効果を評価した。
【0303】
Tn3ライブラリーを、pSEC発現ベクター中にサブクローニングした。このライブラリーは、種々の配列であって同様に種々のただし規定の長さのBC、DE、およびFGループを有するTn3をコードする。これらの研究の焦点であるFGループは、9、10または11残基長であってもよい。BCループは、9、11、または12残基長であってもよい。このライブラリーのDEループは、6残基という固定長を有する。サブクローニングされたライブラリーを用いて、DH5αコンピテント細胞を形質転換して、これからプラスミドプールを精製して、BL21(DE3)細胞を形質転換するのに用いた。BL21コロニーを、配列決定して、全長Tn3をコードする96クローンを特定した。この最終の96クローンを、96ディープ−ウェルプレート中に500μlのスケールで、標準のMagic Media発現(接種後24時間37℃で振盪する)を用いて増殖して、SDS−PAGEで分析した。中度〜高度の発現レベルを有する29個のランダムなクローンを、50mL規模の発現までスケールアップして、標準的な固定金属アフィニティークロマトグラフィーを用いて精製した。全てのタンパク質が何であるかは、質量分析法によって確認した。
【0304】
ランダムなクローンを、DSCによって安定性に関して分析した。簡潔に述べると、DSC測定は、VP−Capillary DSC(MicroCal)で行った。タンパク質を、十分な透析を通じてPBS(pH 7.2)に交換して、DSC分析のために0.25〜0.5mg/mlの濃度に調節した。サンプルを、20〜95℃で、90℃/時間のスキャン速度で、反復スキャンなしで、スキャンした。結果を表17に示す。
【表17】
【0305】
この研究では、ループ長FG9またはFG10および11を有するTn3の熱安定性を比較した。この傾向は、長さ9のFGループを有するTn3ドメインが、ループ長FG10または11を有するものよりも熱安定性であることを示す。対照の野生型Tn3ドメイン(10残基のFGループを有する)は、上記のサンプルと平行して行った場合、72℃のTmを有した。各々のループ長で見られるT
m値の範囲によって、他の要因もまた、Tn3ドメイン熱安定性を決定するのにある役割を果たすことが示される。
【0306】
実施例12
三重特異性のTn3の生成および特徴付け
これらの実験では、3つの異なる標的に結合特異性を有するTn3分子を生成して、特徴付けた。D1、Synagis(登録商標)抗体に特異的なTn3ドメインは、それぞれ、1E11(TRAIL受容体2に特異的なTn3ドメイン)、および79(CD40Lに特異的なTn3ドメイン)に連結された(
図16A)。この構築物は、BL21(DE3)E.coli細胞で発現され、標準的な方法を用いて精製された(
図16Bを参照のこと)。
【0307】
三重特異性の構築物が、同時に3つ全ての標的の対に結合し得るかを確認するために、AlphaScreenおよびELISA実験の両方を行った。AlphaScreen実験については、三重特異性のTn3、3つの総標的分子のうちの2つのサブセット(1つは、ビオチニル化、他方は、抗体Fc領域を含む)、プロテインAドナービーズ、およびストレプトアビジンアクセプタービーズを、上記のように、384ウェルのホワイトオプティプレート(white Optiplate)中で合わせた。AlphaScreenシグナルは、ストレプトアビジンドナービーズおよびプロテインAアクセプタービーズがお互いに近位にある(お互いに200nm)である場合にのみ観察され得、近位であることは、このアッセイでは、三重特異性の分子による架橋を通じて達成される。D1−1E11−79が同時に、huCD40Lおよび TRAIL R2−Fcに(
図17A)、ならびに同時にhuCD40Lおよび Synagis(登録商標)に(
図17B)結合する能力は、以下のようにAlphaScreenによって確認された:384−ウェルのホワイトオプティプレート中で、以下の成分を総容量30μl中に合わせた:20mMの精製したD1−1E11−79、50mMのビオチニル化−huCD40L、(0、1、2.5、5、10、または42nM)TrailR2−Fc(
図18A)または(0、1、2.5、5、10、または42nM)Synagis(登録商標)(
図18B)、5μlの各々の1/50希釈のAlphaScreenプロテインAアクセプタービーズおよびストレプトアビジンドナービーズ。暗野での1時間のインキュベーション後、プレートを、Envisionプレートリーダー上で、AlphaScreenモードで読んだ。
【0308】
Synagis(登録商標)およびTRAIL R2−Fcは両方とも、Fcドメインを含むので、AlphaScreenアッセイを用いても、三重特異性の構築物に対するこれらの分子の同時の結合を示すことはできなかった。その代わり、ELISA実験を行った。MaxiSorpプレートを、TRAIL R2−Fc(1μg/mlで100μl)でコーティングして、4%ミルクでブロックし、次いで、種々の濃度の三重特異性構築物を添加した。ビオチニル化Synagis(登録商標)、第二の標的リガンドを、添加して、HRP−ストレプトアビジンの添加によって検出した(
図18)。D1−1E11−79はまた、
図18のELISAの結果によって示されるように、同時にTRAIL R2−FcおよびSynagis(登録商標)の両方に結合し得ることが示された。従って、この構築物は、同時にその標的の3つ全ての対に結合し得ると本発明者らは、結論し得る。
【0309】
実施例13
リードの単離
アゴニストTn3を開発する最初の工程は、TRAIL R2に結合し得、かつ多価形式に連結された場合アポトーシス経路に関与するように2つ以上のTRAIL R2細胞外ドメインに結合し得るTn3単量体を単離することである。全ての結合因子がアゴニストとして機能し得るのではないので、本発明者らは、結合因子のパネルを最初に単離することを決め、次いで、インビトロの細胞殺滅アッセイで二次的に作用薬についてスクリーニングした。本発明者らは、最初に、結合因子の最初のパネルを単離するために、組み換えTRAIL R2−Fc上で、BC、DE、およびFGループに変化を有するTn3の大きいファージ提示ライブラリーをパニングした。このライブラリーの基礎として選択したTn3足場は、テネイシンCからの天然の3番目のFnIIIドメインではないが、安定性を改善するために遺伝子操作されたジスルフィドを有するバージョンであった。自家のTn3/遺伝子3融合ファージディスプレイライブラリーを構築した(これは、BC、DE、およびFGループ中にランダム化を含んでいた)。複数の結合因子が、ファージELISAによって見出され、ここでは、TRAIL R2を直接、プレート上にコーティングして、1:3希釈したファージのPBS+0.1%Tween20(PBST)1%ミルク中での結合を、抗M13−ペルオキシダーゼコンジュゲート抗体(GE Healthcare Biosciences、Piscataway、NJ)によって検出した。ほとんどの結合因子は、ループの1つの望ましくない遊離のシステインを有し、さらなる研究については選択されなかった。不対のシステインを欠くクローンのサブセットを、Fc融合物または抗体様構築物のいずれかを生じる発現ベクター中にクローニングし(
図1)、細胞殺滅のために腫瘍細胞株H2122において試験した(データ示さず)。Fc融合形式では、その融合したTn3にかかわらず、細胞を殺滅することができなかったが、抗体様の形式では、2つ以上の結合因子について応答を引き出した。
【0310】
実施例14
親和性成熟
クローン1C12(配列番号132)(
図19を参照のこと)は、最初のスクリーニングアッセイにおける最高の細胞殺滅を示し、従って、親和性成熟のために選択された。親和性成熟は、Kunkel突然変異誘発またはランダム化を含むオリゴヌクレオチドによるPCRのいずれかを用いるループの一部の飽和突然変異誘発、アセンブリおよびファージディスプレイベクターへの連結によって行った。1回目および3回目は、それぞれBCおよびFGループの一部の別個の飽和突然変異誘発からなり、2回目は、3つ全てのループの一部の飽和突然変異誘発、パニング、遺伝子シャッフリング、次いでシャッフリングされた変異体のパニングを組み合わせて、最高の親和性のアウトプットクローンを得た。親和性成熟したクローンのプールは、ファージから直接PCRによって、またはQiagenキット(Qiagen、Valencia、CA)を用いて一本鎖DNAを調製することおよび次いでPCRよってパニング後に回収した。PCR産物を、NcoI〜KpnI(New England Biolabs、Ipswich、MA)消化して、本発明者らの自家の発現ベクターpSEC中にクローニングした。このクローンを、MagicMedia(Invitrogen、Carlsbad、CA)中で発現させて、ゲル上で泳動して、発現がクローンの間で大きく異ならなかったことを確認した。改善されたクローンを、競合ELISAによって特定し、ここではプレートを、四価の抗体様の1C12(配列番号154および155)でコーティングして、MagicMedia中で、Tn3の希釈の存在下で0.75nMのTRAIL R2ビオチンの結合の阻害を、ストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ(GE Healthcare Biosciences、Piscataway、NJ)を用いて測定した。TMB(KPL、Gaithersburg、MD)を添加して、酸で中和した。吸光度は、450nmで読み取った。
【0311】
親和性測定は、GLCセンサーチップを備えるProteOn XPR36タンパク質相互作用アレイシステム(Bio−Rad、Hercules、CA)で25℃で行った。0.005%Tween20、pH7.4を含有するProteOnリン酸緩衝化生理食塩水(PBS/Tween)を泳動緩衝液として用いた。TRAIL R2を、チップ上に固定し、Tn3結合因子(1C12(配列番号132)、1E11(配列番号134)、G3(配列番号133)、C4(配列番号135)、およびG6(配列番号138))の2倍の12ポイントの連続希釈を、36μM〜700nMにおよぶ出発濃度で、PBS/Tween/0.5mg/ml BSA、pH7.4中で調製した。各々の濃度の試料を、6つの分析物チャネル中に、30μl/分の流速で300秒間注入した。K
dは、ProteOnソフトウェア中で平衡分析設定を用いることによって決定した。各々の回の最良のクローンの配列を
図19に示す。3回の親和性成熟後の親和性の総改善は、ほぼ2ケタの大きさであって、最良のクローンは、40〜50nMの範囲の親和性を有する(表18)。
【表18】
【0312】
実施例15
抗体様形式での力価に対するTn3親和性の効果
力価に対する個々のTN3サブユニットの親和性の効果を評価するため、表18のクローンの全てを、
図1に示される抗体様の構築物中に再フォーマットした。抗体様のタンパク質を発現するために、293F細胞を、適切な発現構築物で一過的にトランスフェクトした。上清の回収を、6日目および10日目に行って、タンパク質を、プロテインA親和性クロマトグラフィーによって精製した。全ての精製したタンパク質を、SDS−PAGEによって、NuPage Novex4−12%ビストリスゲル上で、MES緩衝液中で、還元剤なしで分析し、SimplyBlue SafeStain(Invitrogen、Carlsbad、CA)を用いて可視化した。
【0313】
サイズ排除クロマトグラフィーも用いて、精製したタンパク質を分析し、必要に応じて、凝集した物質を、Superdex 75 10/300GLまたはSuperdex 200 10/300GLカラム(GE Healthcare、Piscataway、NJ)上で取り除いて、10%未満の総タンパク質という最終レベルにした。MustangE膜を備えるAcrodiscユニット(Pall Corporation、Port Washington、NY)を、製造業者が示したとおり用いて、細菌が発現したタンパク質調製物から内毒素を取り除いた。
【0314】
次いで、H2122細胞を、CellTiter−Glo細胞生存度アッセイを用いて、アゴニストの抗体様の構築物に対する感度について試験した。このアッセイでは、蛍光は、96ウェルプレートの所定のウェル内のATPのレベルに対して直接比例し、これが次に、代謝的に活性な生存細胞の量と直接比例する。H2122細胞株については、細胞を、96ウェルプレート中に、10,000細胞/ウェルの密度で、75μlの完全培地(10%FBSを補充したRPMI 1640培地)中でプレートした。37℃での一晩のインキュベーション後、培地に25μlの追加の培地(TRAIL R2特異的なまたは負の対照のタンパク質の連続希釈を含有)を補充した。全ての処理は、二重のウェルで行った。市販のTRAIL リガンド(Chemicon/Millipore、Billerica、MA)を、TRAIL受容体誘導性の細胞死についての正の対照として用いた。
【0315】
72時間後、CellTiter−Gloキットを、製造業者の指示に従って用いた。アッセイの発光は、Envision Plateリーダー(PerkinElmer、Waltham、MA)で測定した。細胞生存度の阻害は、処理した細胞についての発光の値を未処理の生存細胞についての平均発光値で除すことによって決定した。
【0316】
2つの可変量が効力を決定する:ある構築物が細胞の生存度を50%まで阻害する濃度(EC
50)および細胞生存度の最大阻害。
図20は、一般的な傾向として、Tn3単量体親和性が大きいほど、抗体様構築物のEC
50が低くなることを示す。なぜなら、G6は、1E11よりも低いEC
50を有し、かつ1E11は、1C12よりも低いEC
50を有するからである。
【0317】
実施例16
直鎖Tn3の薬物動態
1つのタンデム(直列)あたりのTn3モジュールの数の関数として直鎖Tn3タンデム半減期を決定するため、G6単量体(配列番号138)、G6タンデム4(配列番号143)、G6タンデム6(配列番号192)、およびG6タンデム8(配列番号145)を、マウスに注射し、Tn3の血清濃度をELISAによってモニターした。投与の経路は、腹腔内(IP)注射であった。実験デザインを、表19に示す。マウスを、1時点あたり150μL採血した。Tn3を、ELISAによって血清中で検出し、ここでは自家で生成したTRAIL R2コーティングしたプレートを、PBST1%ミルク中で希釈した血清とともにインキュベートした。最初のELISAを行って、所定の時点について、アッセイの動的な範囲内にシグナルがあるように正確な希釈範囲を決定した。結合したTn3を、PBST1%ミルク中のウサギからのポリクローナル抗Tn3血清の1,000希釈中の1(Covance、Princeton、NJ)で、続いて、ロバ抗ウサギHRPのPBST1%ミルク中の10,000希釈中の1(Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA)で検出した。各々の構築物について、標準曲線を作製し、統計学的分析を、自家の統計学的プログラムを用いて行った。
【0318】
「最大血漿濃度」(「C
max」)という用語は、患者に対する試験物質の投与後、血漿中のタンデムTn3の最高の観察された濃度を指す。
【0319】
「T
max」という用語は、最大血漿濃度C
maxまでの時間を指す。
【0320】
「曲線下面積」(「AUC」)という用語は、時間に対する血漿中のタンデムTn3の濃度のプロットにおける曲線下の面積である。AUCは、時間間隔の間の即時的血漿濃度(C
p)の積分の指標であり得、質量*時間/容量の単位を有する。しかし、AUCは通常は、時間間隔ゼロから無限まで示される。従って、本明細書において用いる場合、「AUC
inf」とは、無限の時間間隔にまたがるAUCを指す。
【0321】
「生物学的半減期」(「T
1/2」)という用語は、タンデムTn3の血漿濃度がそのもとの値の半分になるのに必要な時間として規定される。
【0322】
「CL/F」という用語は、用量/AUC
infとして算出される見かけの総身体クリアランスを指す。
【0323】
生物学的半減期(T
1/2)は、直鎖状分子についてタンデムTn3の数が増大するとともに増大する。7つのTn3を付加して単量体からタンデム8を作製することで、半減期はほぼ50%まで増大した。価数の増大は、T
maxには影響しなかった。しかし、価数が1から8へ増大することによって、それぞれ、C
maxおよびAUC
infにおいて、約10倍および7倍の増大が生じた。さらに、価数が1から8まで増大する場合、クリアランスにおける約7倍の低下(CL/F)が観察された。
【表19】
【表20】
【0324】
実施例17
カニクイザル交差反応性の遺伝子操作された増強
カニクイザル(Macaca fascicularis)での前臨床毒性試験のために、カニクイザル(cynomolgus)TRAIL R2(cyno TRAIL R2)と交差反応する抗TRAIL R2−Tn3を開発することが所望される。本発明者らの最初の親和性成熟したリードクローンは、cyno TRAIL R2との交差反応が乏しいが、ヒトTRAIL R2に対する相同性は88%である。交差反応性は、クローンF4(配列番号137)に基づくライブラリーを作製することによって増強されたが、このクローンは、親和性成熟から生じたクローンの間で最高のカニクイザル交差反応性を有するクローンであった。
【0325】
2つのライブラリーを、飽和突然変異誘発によって作製した:1つは、FGループ単独に多様性を有し、1つは、BCおよびFGループに多様性を有した。低エラー率変異原性PCRをまた用いて、増強されたcynoTRAIL R2結合に有益であり得るループの外側の変異を可能にした。4回のファージパニングを、自家で製造したcyno TRAIL R2で行い、アウトプットを、pSEC発現ベクター中にクローニングした。ELISAフォーマットにおける最初のヒットのスクリーニングのために、Tn3は、MagicMedia(Invitrogen、Carlsbad、CA)中に分泌され、抗hisタグ抗体(R and D Systems、Minneapolis、MN)を用いて上清から捕捉された。
【0326】
捕捉されたTn3に対する、溶液中のヒトまたはcyno TRAIL R2−Fcのいずれかの結合を、抗ヒト−Fc−HRPによって検出した。cyno TRAIL R2−Fcに対する有意な結合を有し、かつヒトTRAIL R2−Fcに対する結合を失うと思われなかったクローンを、引き続くスクリーニングELISAのために選択して、ここではヒトまたはcyno TRAIL R2−Fcのいずれかを、プレート上にコーティングして、Tn3上清を滴定し、次いで抗hisタグHRPで検出した。クローンからクローンへの発現レベルの変化のレベルが低いため、およびまた溶液中に有する二価TRAIL R2−Fcからのアビディティは、Tn3親和性における相違をマスクできなかったので、このELISAが親和性識別を可能にした。1つの変異、DEループの前のDからGの2つのアミノ酸の変異は、全ての操作されたカニクイザル交差反応性クローンに存在したことが見出された(
図22A)。このDからGへの変異は、もとのF4に操作して、F4mod1という名称のクローン(配列番号193)を作製し、カニクイザルについての交差反応性は、ヒトTRAIL R2に対する犠牲的結合なしに大きく改善された(
図22B)。このELISAでは、精製されたF4またはF4mod1による、F4mod1コーティングしたプレートに対する0.75nMのヒトまたはcyno TRAIL R2−Fcの結合の阻害を測定した。
【0327】
cyno TRAIL−R2−Fcに対するカニクイザル交差反応性の増強クローンの結合は、ヒトTRAIL R2−Fcに対するその結合の10倍内であることが望ましい。また、cyno TRAIL−R2−Fcに対するカニクイザル交差反応性の増強クローンの結合は、ヒトTRAIL R2−Fcに対するF4の結合の10倍内であることも望ましい。cyno TRAIL R2に対するF4mod1結合についてのIC
50は、ヒトTRAIL R2に対するF4mod1結合についてのIC
50よりも3倍未満異なる。さらに、ヒトTRAIL R2に対するF4mod1結合についてのIC
50は、ヒトTRAIL R2に対するF4結合についてのIC
50よりも6倍強い。従って、F4mod1は、意図される交差反応性の要件を満たす。
【0328】
実施例18
増強されたカニクイザル交差反応性クローンの生殖細胞系列の操作
クローンF4mod1をさらに操作して可能性のある免疫原性の危険性を低減するために生殖細胞系列から本質的でない変異を排除した。12の異なる改変群を作製して、ヒトおよびカニクイザルの両方のTRAIL R2に対する結合に対して所定の変異からの効果があったか否かを決定した。
図23Aは、最終クローンF4mod12(配列番号194)の比較を示しており、これは、他の構築物に対して、結合に影響しない全ての試験した生殖細胞系列変異を組み込む、すなわち、Tn3生殖細胞系列、もとのF4親、およびクローンF4mod1(最初の増強された遺伝子操作されたカニクイザル交差反応性)。
【0329】
F4mod12のアミノ酸配列は、天然のTn3配列SQで開始して、Lで終わり、AからTへのフレームワーク2変異の逆転を有し、かつDEループの最後の2つのアミノ酸のTAからNQの逆転を有する。
図23Bは、F4、F4mod1、およびF4mod12が全て、ヒトTRAIL R2に対するそれらの結合においてお互いの6倍内であることを示す。F4mod1およびF4mod12は、cyno TRAIL R2に対するそれらの結合においてお互いの2倍内であることも示される。
【0330】
F4mod12は、タンデム6(配列番号167)およびタンデム8(配列番号166)構築物中に再フォーマットされて、試験されたG6タンデム6(配列番号144)およびタンデム8(配列番号145)に対する力価の損失がないことが確認された。
図23Cおよび
図23Dによって、遺伝子操作された生殖細胞系列について、Colo205細胞株におけるG5タンデムと比較して増強されたカニクイザル交差反応性F4mod12タンデムは力価の損失がないことが示される。
【0331】
実施例19
TRAIL耐性細胞株におけるG6タンデムの活性
複数の細胞株が、TRAILによる殺滅に耐性である。従って、本発明者らは、TRAIL感受性細胞株におけるTRAILに対するG6タンデム8構築物の力価の増強が、TRAIL耐性細胞株におけるG6タンデム8の力価に現れるか否かを評価した。いくつかの癌細胞株におけるApo2L/TRAILに対する感受性は、CellTiter−Glo Luminescent Cell Viability Assay(Promega、Madison、WI)で決定した。簡潔に述べると、細胞を、96ウェルプレート上にプレートして、一晩接着させ、次いで、種々の濃度の組み換えヒトApo2L/TRAILおよびTRAIL模倣G6タンデム8が含まれる培地(10%FBS含有)で処理した。48〜72時間後、細胞生存度を、製造業者のプロトコールに従って決定した。
図24は、TRAIL耐性細胞株HT29について、G6タンデム8が、強力な細胞殺滅活性を示すが、TRAILは示さないことを示す。表21は、G6タンデム8が細胞殺滅活性を多くの、ただし全てではない試験したTRAIL耐性細胞株で有することを示す。結合モジュールの空間的配向も一定の効果を有する可能性はあるが、効力の増強は、TRAILに比べて、タンデム型のより高い結合価に起因すると思われる。
【表21】
【0332】
実施例20
TRAIL R2結合単量体の免疫原性研究
免疫原性は、いずれの治療タンパク質にとっても、それがヒト由来である場合でさえ、あり得る問題である。免疫原性応答は、炎症をもたらし得る中和抗体を通じて有効性を限定し得る。免疫応答の生起における最も重要な要因の1つは、CD4+T細胞増殖を刺激し得るエピトープの存在である。EpiScreen試験(Antitope、Cambridge、UK)では、CD8+T細胞を欠く末梢血単核細胞(PBMC)を、試験タンパク質とともにインキュベートして、CD4+T細胞増殖およびIL−2分泌をモニターする(Baker & Jones、Curr.Opin.Drug Discovery Dev.10:219−227、2007;Jaber & Baker、J.Pharma.Biomed.Anal.43:1256−1261、2007;.Jonesら、J.ThrombosisおよびHaemostasis 3:991−1000、2005;Jonesら、J.Interferon Cytokine Res.24:560−72、2004)。PBMCは、世界の集団で発現されるHLA−DRアロタイプに相当するドナーのプールから単離される。
【0333】
図25に示されるTn3単量体を、発現し(GGGGHHHHHHHHリンカー−Hisタグと共に)、精製し、SECによって単量体であることを確認し、上記のように内毒素除去のために濾過した。試験した全ての非野生型クローンは、カニクイザル交差反応性を増強するための操作の回からであった(
図22A)。しかし、これらのクローンは、F4mod1バックグラウンドにおける結合に影響を示さなかった生殖細胞系列に対して変異を有した。これらのクローンをELISAで試験して、生殖細胞系列の変異が結合に影響しなかったことを確認した。T細胞増殖アッセイおよびIL−2分泌アッセイの両方で、2を超える刺激指数(stimulation index)(SI)が、所定のドナーについての陽性応答として以前に確立された。平均のSI、または陽性応答集団のSIの平均は、応答の強度の指標である。強力な応答を誘導することが公知の対照のタンパク質である、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)を両方のアッセイに含んだ。
【0334】
表22は、全ての試験タンパク質についての平均SIを示しており、これは、KLHについて有意に低く、かつ陽性平均SIについての2というカットオフよりもそれほど高くない。さらに、試験タンパク質についての応答の頻度は、極めて低かった(90%という過剰で応答した対照を除けば、全ての試験したタンパク質について10%以下)。Antitopeによる以前の研究では、10%未満というEpiScreen応答は、臨床の免疫原性の危険性が低い指標であることが明らかになった。従って、試験した全てのTn3が10%以下の応答頻度を有するという本発明者らの観察によって、臨床上の免疫原性のリスクが低いことが示される。
【表22】
【0335】
実施例21
未精製および精製したG6タンデム8 Tn3の凝集状態
複数のシステインを含むタンパク質、例えば、内部ジスルフィド結合を含むタンデムリピートからできたタンパク質は、適切なジスルフィド対合を示さない場合が多いことは当該分野で公知である。ジスルフィドのスクランブリングは、培地中への発現を減少または排除し得る。タンパク質が培地中へ発現する場合、これは不適切に折り畳まれたタンパク質と、分子間の、ならびにミスマッチの分子間のジスルフィド対(凝集をもたらす)との混合物である場合がある。本発明者らのSECデータによって、細菌発現培地中のタンデムタンパク質のほとんどが、単量体の適切に折り畳まれた状態であることが明らかになった。Hiタグ化G6タンデム8タンパク質のNi−NTA精製後、タンパク質のうち約15%が凝集した。観察された凝集は、2mMのDTTによる還元によって、4%まで低下し(
図26A)、このことは、ほとんどの凝集がジスルフィド媒介性であったことを示す。凝集物のほとんどを、上記のように、SEC精製によって除去した(
図26B)。
【0336】
実施例22
Colo205結腸直腸癌異種移植片モデルにおけるTRAIL模倣物、G6TN6およびG6TN8の腫瘍増殖阻害の決定
TRAIL Tn3模倣物、G6タンデム6(G6TN6)(配列番号144)およびG6タンデム8(G6TN8)(配列番号145)の抗腫瘍活性を、Colo205、ヒト結腸直腸癌異種移植片モデルで評価した。Colo205細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS)を含むRoswell Park Memorial Institute(RPMI)1640培地中で、5%CO
2下、37℃で半接着単層培養物として維持した。トリプシン処理によって回収した細胞を、ハンクス平衡塩溶液(Hank’s balanced salt solution)(HBSS)中で3×10
7細胞/mLという最終濃度に再懸濁した。無胸腺雌性ヌードマウスに各々、右わき腹の皮下に(SC)3×10
6個のColo205細胞を注射した。本研究は、腫瘍が平均で約177mm
3に達した時点で開始した。研究デザインは、表23にまとめる。TRAILを、ストック溶液から20mMのTris−HCl 300mMのアルギニン−HCl(pH7)で希釈して、体重に応じて(10mL/kg)全部で5用量を毎日、表23に示す用量で、静脈内に(IV)投与した。G6タンデム6(G6TN6)およびG6タンデム8(G6TN8)を、各々ストック溶液からPBSで希釈して、体重に応じて(10mL/kg)全部で5用量を毎日、表24に示す用量で、静脈内に(IV)投与した。腫瘍体積および体重の測定を記録した。腫瘍の測定は、電子カリパスを用いて行い、そして腫瘍体積(mm
3)は、腫瘍体積=[長さ(mm)×幅(mm)
2]/2という式を用いて算出した。腫瘍増殖阻害(TGI)は、TGIパーセント=(1−T/C)×100として算出し、ここでT=最終投与後の処置群の最終腫瘍体積であり、かつC=最終投与後の対照群の最終腫瘍体積である。
【0337】
投与段階(dosing phase)(DP)の間(
図27)、3mg/kgおよび30mg/kgのG6TN6は、それぞれ、92%(p<0.0001)および93%(p<0.0001)の有意なTGIを生じた(表24)。同様に、最終濃度のための等モル調節後、2.25mg/kgおよび25.5mg/kgのG6TN8によって、それぞれ93%(p<0.0001)および94%(p<0.0001)という有意なTGIが生じた(表24)。30mg/kgのTRAILは、60%のTGIを生じた(p<0.001)、(表25)。
【0338】
再増殖段階(regrowth phase)(RP)の34日まで(
図27)、3mg/kgのG6TN6は、なんらCR(CR;2回の連続した測定に対し、検出可能な触知腫瘍のない群のマウスのパーセンテージ)を生じなかったが、2.25mg/kgのG6TN8は、90%のCRを生じた。30mg/kgというより高用量では、G6TN6は、50%のCRを達成した。他方では、25.5mg/kgのG6TN8は、100%のCRを生じた(表25)。両方の用量からの結果によって、G6TN8は、G6TN6に比較して大きい有効性を生じたことが示唆される。しかし、G6TN6とG6TN8の両方とも特定の用量で有効性を示した。さらに重要なことに、両方の構築物とも、なんらPRもCRも生じなかったTRAILよりも有意に優れていた。
【0339】
図28に示すとおり、この研究の投与および再増殖段階の間、全ての用量でG6TN6およびG6TN8の両方にいかなる体重減少も観察されなかった。
【表23】
【表24】
【表25】
【0340】
上記の実施例は、本発明の種々の態様および本発明の実施方法を説明している。これらの例は、多くの異なる本発明の実施形態の完全な記述を提供することを意図するものではない。従って、本発明を図および実施例を用いて幾分詳細に記述し、理解の明確化を期してきたが、当業者なら、添付の請求項の趣旨や範囲から逸脱することなく多くの変更と修正を行うことができることは、容易にわかるであろう。
本明細書で挙げた全ての出版物、特許および特許出願は、それぞれの出版物、特許および特許出願が、具体的に参照により本明細書に組み込まれることが指示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0341】
前述の実施例は、本発明および本発明の方法の実施の種々の態様を例示説明する。実施例は、本発明の多くの異なる実施形態の網羅的な説明を提供することを意図していない。従って、前述の本発明は、理解の明確化の目的で例示説明および実施例によってある程度詳細に記載してきたが、当業者には、それに対して多くの変化および改変が、添付の特許請求の趣旨からも範囲からも逸脱することなくなされ得ることが容易に理解される。
【0342】
本明細書に言及される全ての刊行物、特許および特許出願は、あたかも各々の個々の刊行物、特許または特許出願が、参照によって本明細書に援用されると詳細にかつ個々に示されるかのように、本明細書に参照によってここに援用される。