【文献】
Gardner et al.,Structure, crystallization and morphology of poly(aryl ether ketone ),POLYMER,米国,1992年,33(12),第2483頁〜第2495頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態では、1種以上の多形半結晶性又は結晶形成ポリマーを有するポリマー組成物を熱処理するための方法が提供され、この方法は、最も高い融解結晶形の融点より低く、かつ、その他の結晶形の融点以上の温度で、ポリマー組成物において最も高い融解結晶形の含量をその他の結晶形に対して増加させる時間にわたり、ポリマー組成物を熱処理するステップを少なくとも含む。
【0009】
別の実施形態では、少なくとも2つの結晶形を有することができる1種以上のポリエーテルケトンケトンポリマーを含むポリマー組成物を熱処理するための方法が提供され、この方法は、最も高い融解結晶形の融点より低く、かつ、その他の結晶形の融解範囲内又はそれより高い温度で、ポリマー組成物において最も高い融解結晶形の含量をその他の結晶形に対して増加させる時間にわたり、ポリマー組成物を熱処理するステップを少なくとも含む。
【0010】
また別の実施形態では、I型のポリエーテルケトンケトンの含量を増加させるための方法が提供され、この方法は、II型のポリエーテルケトンケトンの含量に対してI型のポリエーテルケトンケトンの含量を増加させるように、II型のポリエーテルケトンケトンの融解範囲内又はそれより高く、かつI型のポリエーテルケトンケトンの融点より低い温度で、II型のポリエーテルケトンケトンを含むポリマー組成物を熱処理するステップを少なくとも含む。
【0011】
本発明はまた、本発明の方法によって製造されるポリマー粉末組成物、並びにポリマー粉末組成物から形成される物品及びコーティングも提供する。
【0012】
また本明細書には、ポリマー粉末組成物又は物品の物理的性質(例えば、機械的強度及び/又は流動性)を改善するための方法も提供され、この方法は、本明細書に記載の方法に従い、1種以上の多形半結晶性又は結晶形成ポリマーを有するポリマー組成物を熱処理するステップと;任意選択により、熱処理ポリマー組成物を含む組成物から物品を形成するステップを含む。一実施形態では、物品は、レーザー又は圧力焼結工程によって形成される。
【0013】
本発明は、多形半結晶性及び/又は結晶形成ポリマーを含むポリマー組成物の特定の熱処理方法に関する。いくつかの実施形態では、材料の結晶度を最大にすること、及び/又はより高い結晶性相融点を得ることが所望される。熱処理の利点は、特に、ポリマー粉末及びそれから形成された物品の特性にみとめられる。
【0014】
ポリマー
ポリマー組成物に最も有用なポリマーは、多形半結晶性ポリマー及び/又はポリマーのガラス転移温度を超える温度に付すと半結晶性になることができるポリマーである。本明細書で用いる「半結晶性又は結晶性多形ポリマー」とは、ポリマーが、1つ以上の結晶形で存在することができること、また、ポリマーが、結晶性である、及び/又は熱処理すると、1つ以上の結晶性領域を形成することができることを意味する。こうしたポリマーの例として、限定するものではないが、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)若しくは交互ポリケトン又はこれらの混合物を含む。ポリアリールエーテルケトン(PAEK)は、非常に高い融点を有し、多くの場合、様々な形状に結晶化する。これらの両特性により、本発明の熱処理は、粉末化材料が長期間にわたって高温にさらされる用途に用いる場合、特にPAEKポリマーに有用となる。
【0015】
本発明は、特に、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)に有用である。ポリエーテルケトンケトンは、当該技術分野では公知であり、あらゆる好適な重合方法を用いて調製することができ、このような方法として、以下の特許明細書に記載されている方法がある(各々、あらゆる目的のためにその全文を参照として本明細書に組み込むものとする):米国特許第3,065,205号明細書;同第3,441,538号明細書;同第3,442,857号明細書;同第3,516,966号明細書;同第4,704,448号明細書;同第4,816,556号明細書;及び同第6,177,518号明細書。PEKKポリマーは、多くが、反復単位として2つの異なるケトン−ケトンの異性体型を含む点で、PAEKの一般クラスと相違する。これらの反復単位は、以下の式I及びIIによって表すことができる:
−A−C(=O)−B−C(=O)− I
−A−C(=O)−D−C(=O)− II
(式中、Aは、p,p’−Ph−O−Ph−基であり、Phは、フェニレン基であり、Bはp−フェニレンであり、Dは、m−フェニレンである)。ポリエーテルケトンケトンにおける式I:式II異性体の比(一般に、T:I比と呼ばれる)を選択することにより、ポリマーの総結晶度を変える。T/I比は、一般に、50:50から90:10まで変動し、いくつかの実施形態では、60/40〜80/20である。高いT:I比(例えば、80:20)ほど、低いT:I比(例えば、60:40)と比べて、高い結晶化度をもたらす。
【0016】
PEKKのホモポリマーの結晶構造、多形性及び形態学は、研究されており、例えば、以下の文献に記載されている:Cheng,Z.D.et al,“Polymorphism and crystal structure identification in poly(aryl ether ketone ketone)s”,Macromol.Chem Phys.197,185−213(1996)(この開示内容は、その全文を参照として本明細書に組み込む)。上記の論文は、全パラ−フェニレン結合[PEKK(T)]、1つのメタ−フェニレン結合[PEKK(I)]又は交互T及びI異性体[PEKK(T/I)]を有するPEKKホモポリマーについて研究しており、PEKK(T)およびPEKK(T/I)は、結晶化条件及び方法に応じて異なる結晶多形性を明らかにしている。
【0017】
PEKK(T)では、2つの結晶形、I型及びII型が観察されている。I型は、サンプルが、低い過冷却で融液から結晶化されるとき生成されるのに対し、II型は、一般に、溶媒誘導結晶化により、又は比較的高い過冷却で、ガラス状態からの冷結晶化によって得られる。PEKK(I)は、PEKK(T)におけるI型構造と同じカテゴリーに属する結晶単位格子を1つだけ有する。この単位格子のc軸次元は、ジグザグ形状の3つのフェニレンとして決定されており、バックボーン平面にはメタ−フェニレンが存在する。PEKK(T/I)は、結晶形I型及びII型を示し(PEKK(T)と同様に)、また、ある条件下では、III型を示す。
【0018】
好適なポリエーテルケトンケトンは、様々な商標で、複数の商業的供給源から入手可能である。例えば、ポリエーテルケトンケトンは、商標名OXPEKK(商標)ポリマーで、Oxford Performance Materials(Enfield,Connecticut)から販売されており、OXPEKK(商標)−C、OXPEKK(商標)−CE、OXPEKK(商標)−D及びOXPEKK(商標)−SPポリマーなどがある。ポリエーテルケトンケトンポリマーは、Arkemaによっても製造及び販売されている。特定のT:I比を有するポリマーを用いる以外に、ポリエーテルケトンケトンの混合物を用いてもよい。
【0019】
本発明において他の有用なポリマーとしては、限定するものではないが、PEEKEK、PEEKK、PEKEKK(ここで、E=エーテル、K=ケトン)がある。本発明の範囲内でポリエーテルケトンケトンのブレンド又は混合物を用いてもよい。本発明の熱処理から利益を得ることができるその他の多形ポリマーとして、限定するものではないが、ポリアミド11(PA11)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)ホモポリマー及びコポリマーがある。
【0020】
本発明に記載する熱処理は、単一の結晶形を有する材料、例えば、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)及びPEK(ポリエーテルケトン)にも適用可能であり、この場合、高温での処理は、層状結晶の線形結晶度の増加を促進し、最終生成物の融解温度に直接影響を及ぼす。
【0021】
上記の用途に用いられる粉末は、様々な方法、例えば、粉砕、空気粉砕、噴霧乾燥、凍結乾燥、又は微粉末への直接融液処理によって製造される。熱処理は、粉末を製造する前又は後のどちらでも達成することができるが、粉末の形成前に処理する場合には、融解温度、又は熱処理中に形成される結晶の量を有意に低下させないように、粉末形成工程の温度を調節しなければならない。
【0022】
熱処理工程及びこの工程によって製造される粉末は、特定の粒度に限定されない。前述したように、高い融点及び高い結晶度の有益な特性が損なわれない限り、特定の用途の要求に応じて、熱処理工程前又は後に粒度を調節することができる。一般に、熱処理粉末は、0.002nm〜0.1メートル、より好ましくは0.01mm〜1.0mmの重量平均粒度を有する。選択的レーザー焼結(SLS)に用いる場合には、15〜150ミクロンの重量平均粒度が好ましい。
【0023】
熱処理工程
本発明に従い、結晶の融点を高めることにより、高温での粉体流動性が求められる用途において、より優れた粉体処理及び耐久性をもたらすような方法で、様々な構造を有する多形半結晶性又は結晶形成ポリマーを熱処理する。
【0024】
いくつかの実施形態では、熱処理の間、ポリマーを、低融解結晶性多形の少なくとも1つ又は全部の融解範囲内又はそれより高く、かつ、最も高い融解結晶形の融点より低い温度に付す。別の実施形態では、低融解結晶性多形の少なくとも1つ又は全部の融点以上、かつ、最も高い融解結晶形の融点より低い温度に、ポリマーを付すのが望ましい。本明細書で用いる「融解範囲」とは、ポリマーの特定の結晶形が、融解を開始する温度で始まり、その結晶形の融点(Tm)で終わり、これを含む温度範囲を意味する。ポリマーの結晶形の融解範囲及び融点(Tm)は、当業者には公知の各種分析技法、例えば、DSC及びX線回析によって決定することができる。好ましくは、ポリマーの融点は、X線回析によって決定する。
【0025】
別の実施形態では、熱処理は、2番目に高い融解結晶相の融解範囲内又はそれより高いが、最も高い融解結晶形より低い範囲で実施するのが望ましい。いくつかの実施形態では、熱処理温度は、2番目に高い融解結晶相の融点以上で、かつ、最も高い融解結晶形の融点より低いことが望ましい。ただし、この場合、熱処理温度が、最も高い融解結晶相の融点に近すぎると、材料は軟化し、互いに粘着することになる。いくつかの実施形態では、熱処理は、最も高い融解結晶形のTmより15℃以下低い、さらに好ましくは、最も高い融解結晶形のTmより1℃〜10℃低い温度で実施する。別の実施形態では、熱処理温度は、最も高い融解結晶形のTmより20℃未満、又は10℃未満、又は5℃未満低い。
【0026】
ポリマーは、最も高い融解結晶形の総量を増加させる、またいくつかの実施形態では、最大にする時間にわたり、上記の範囲内の1つ以上の温度でポリマーを維持する、及び/又はこれに付す。いくつかの実施形態では、熱処理後、組成物中の最も高い融解結晶形の量は、熱処理後の結晶の総数に基づき、少なくとも40%又はそれを上回り、別の実施形態では、最も高い融解結晶形の量は、熱処理後の結晶の総数に基づき、少なくとも90%又はそれを上回る。いくつかの実施形態では、すべての結晶(100%)を最も高い融解結晶形に転換することが望ましい。
【0027】
別の実施形態では、ポリマーを上記の温度範囲に付して、ポリマーの融解温度を高める、また、いくつかの実施形態では、最大にする。必要な時間の量は、各ポリマーによって異なり、熱処理温度が、最も高い結晶形の融点に近いほど、短くなる。しかし、熱処理温度が、最も高いTmに近すぎると、粉末又はペレットは互いに融合する可能性があり、恐らく、その本来の形態に戻すためにポリマー組成物の後処理が必要になる。
【0028】
熱処理は、多形半結晶性又は結晶形成ポリマーに特に有用である。というのは、これらのポリマーから製造した粉末の物理的性質は、これら結晶形のいくつかの融点付近、又はそれを超える高温に維持すると、変化する傾向があるからである。例えば、低融解結晶形の全融解範囲内又はそれより高く、かつ、最も高い融解結晶形の融点より低い温度に多形半結晶性又は結晶形成ポリマーを付すと、低融解結晶は、少なくとも部分的に、より高い融解結晶形に転換するであろう。こうした変化は、粉末の処理、並びに最終製品の物理的性質及び/又は外観の変化として表れる。
【0029】
一実施形態では、ポリマー組成物は、少なくとも2つの結晶形を有することができるポリエーテルケトンケトン(PEKK)を含む。この実施形態では、PEKKは初め非晶質であるが、熱処理を受けると、PEKKの少なくとも一部が少なくとも1つの結晶形に転換することが可能であり、その結晶形は、少なくともその一部を、より高い融解結晶形に転換することができる。次に、熱処理ステップは、ポリマー組成物において最も高い融解結晶形の含量がその他の結晶形に対して増加する時間にわたり、最も高い融解結晶形の融点より低く、かつ、その他の結晶形の融解範囲内又はそれより高い温度にポリマー組成物を付すことにより、より高い融解結晶形の含量を増加させることができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、より高い融解結晶形は、I型ポリエーテルケトンケトンであり、その他の結晶形は、II型ポリエーテルケトンケトンである。約60:40のT:I比を有するPEKKについてのいくつかの実施形態では、熱処理温度は、例えば、約230℃〜約300℃の範囲でよく、別の実施形態では、約275℃〜約290℃であってよい。約80:20のT:I比を有するPEKKについてのいくつかの実施形態では、熱処理温度は、例えば、約270℃〜約375℃の範囲でよく、別の実施形態では、約330℃〜約370℃であってよい。
【0031】
また別の実施形態では、I型ポリエーテルケトンケトンの含量を増加させるための方法が提供され、この方法は、II型ポリエーテルケトンケトンの融解範囲内又はそれより高く、かつ、I型ポリエーテルケトンケトンの融点より低い温度で、II型ポリエーテルケトンケトンを含むポリマー組成物を熱処理するステップを少なくとも含む。上記の実施形態でも、出発ポリエーテルケトンケトンは、初め非晶質であるが、熱処理を受けると、ポリエーテルケトンケトンの少なくとも一部がII型に転換することが可能である。いくつかの実施形態では、熱処理後、組成物中のI型ポリエーテルケトンケトンの量は、熱処理後のPEKK結晶の総数に基づき、少なくとも40%又はそれを上回り、別の実施形態では、I型の量は、熱処理後のPEKK結晶の総数に基づき、少なくとも90%又はそれを上回る。いくつかの実施形態では、全PEKK結晶(100%)をI型に転換することが望ましい。
【0032】
半結晶性又は結晶形成多形ポリマー自体を処理する以外にも、本発明は、ポリマーのブレンド又はポリマー複合材料を熱処理することも考慮する。従って、半結晶性又は結晶形成多形ポリマーを含むポリマー組成物は、1種以上の非多形ポリマー、充填剤、繊維、又はこうしたポリマー組成物に一般に用いられるその他の添加剤を含んでもよい。こうした他の成分は、もし存在すれば、組成物の総重量に基づき、約0.5重量%〜約40重量%の量であってよい。本発明の熱処理方法はまた、均質ポリマー組成物に限定されるわけではない。異種ポリマー組成物、例えば、ポリマー複合材料、ポリマーブレンド、及び/又は充填剤含有系も、本発明の熱処理方法から利益を得ることができる。
【0033】
熱処理は、多数の異なる方法で達成することができ、こうした方法は、本明細書の記載に基づき、当業者には公知であろう。好適な熱処理装置として、例えば、オーブン(例えば、静的、連続的、バッチ、対流)、流動床加熱器などがある。一実施形態では、ポリマーは、オーブン内で、粉末、ペレット、シート又はその他の形態で処理することができる。ペレット、シート又はその他の大型の固体形態を熱処理する利点は、起こりうる凝集が最小限であることである。こうしたポリマーは、所望であれば、熱処理後に粉砕に付すことができる。本発明の別の実施形態では、ポリマー組成物を熱処理前に粉砕するのが望ましい場合もある。というのは、粉砕はポリマー組成物の一部に局部的加熱を引き起こす恐れがあり、この温度がポリマーの融点を超えると、結晶度が低下しうるためである。
【0034】
別の実施形態では、ポリマー粉末は、流動床で熱処理してよい。流動床の使用により、従来のオーブンと比較して、さらに加熱が促進され、また、撹拌は、熱処理中の凝集を防止する上で役立つ。
【0035】
処理粉末の特性
T:I比が、60:40のように比較的低い場合、結晶化の速度は、非常に遅いため、ポリマーをそのガラス転移温度より高い温度で一定時間維持することにより、材料を熱処理するか、又はアニールしない限り、一般に、溶融処理ポリマー中に結晶は形成されない。従って、これらのポリマーは、本来半結晶性であっても、非晶質ポリマーと呼ばれることが多い。本発明の目的のための非晶質ポリマーは、X線回析によって結晶相を示さないポリマーを意味する。PEKKの市販のOXPEKK(商標)−SPポリマーグレードは、初め非晶質であるが、ガラス転移温度より高い温度で熱処理すると、部分的に結晶性になる組成物の一例である。
【0036】
OXPEKK(商標)−SPポリエーテルケトンケトン(T:I=60:40)の場合、Tgは約155℃であるが、最も低い融解多形のTmは約272℃である。最も高い融解多形のTmは約297℃である。このポリマーについて、形成された結晶のタイプへの影響及び熱処理温度に対する感受性を表1に示す。結晶度(%)は、196℃(Tgより40℃高い)での8時間のアニール後にほぼ最大になったが、これらの温度では、高融解結晶の量にはほとんど又は全く変化がなかった。表1に示すように、高温結晶の量は、熱処理温度が、低融解結晶形の融点の温度に近づいたとき、変化し始める。高融解結晶形のへの転換は、熱処理温度が、低融解結晶形の融点を超えたとき、99%までほぼ最大になる。
【0038】
本発明は、OXPEKK−SPポリエーテルケトンケトンのような低結晶化速度のポリ(アリールエーテルケトン)に特に有用であるが、この処理は、より結晶性の多形ポリマー、例えば、OXPEKK−C、又はMwがより高いOXPEKK CEポリエーテルケトンケトン(いずれも、T:I比は約80:20である)でも有用である。これらのポリエーテルケトンケトンポリマーは、より高いTgを有し、多数の微結晶が存在するために広い融点範囲を有する。一般的には、T:I比が80:20のこれらのポリマーは、約270℃〜約375℃の融解範囲、及び約330℃〜約370℃の融点を呈示し、160℃に近いTgを有する。ガラス転移温度より20℃高い温度での加熱は、全結晶性を発現する助けとなりうるが、結晶のタイプを有意に改変しない、又は融点範囲を有意に狭めない。これらの作用は、熱処理温度を、低融解多形の融解範囲内又はこれより高く、かつ、高融解多形の融点より低くなるように設計するとき、最も効率的にもたらされ、これは、本発明の一実施形態である。
【0039】
本発明の熱処理方法を用いることにより、粉末は、適用中、特性にほとんど変化を示さず、従って、多くの場合、優れた物理的性質を備えた、より均質な物品又はコーティングを提供すると共に、粉末の使用率を高め、すなわち損失を低減し、しかも優れた再循環用性を提供する。従って、本発明は、半結晶性又は結晶形成ポリマー粉末を高温、特に、微結晶の測定融点に近い、又はそれら融点範囲内の温度で用いる、あらゆる工程で有用となりうる。
【0040】
熱処理粉末の具体的利点として、以下のものがある:凝集をほとんど又は全く生じない粉体床中での優れた粉末管理;SLS工程の粉体床におけるx、y、z軸上の機械的性質の一貫性の向上;粉末コーティング又は回転成形工程の微小要素への優れた流入。SLS工程では、本発明の方法により得られた粉末は、3次元的に同等の特性を提供する。望ましくはないが、SLS工程中に熱処理を実施することも可能である。いくつかの実施形態では、熱処理は、SLS工程の前に実施する。
【0041】
本発明の熱処理粉末を用いる別の利点は、SLS工程において、より低い粉体床温度を用いることができ、これによって、粉末をより多様な機械で有用にすると同時に、摩耗及び裂け目、並びにエネルギー消費を低減できることである。
【0042】
使用
高温で良好な粉体流動性から利益を得られる用途の例として、回転成形、選択的レーザー焼結及び粉末コーティングがあるが、本発明の熱処理方法で製造された粉末の使用はこれらの用途に限定されるわけではない。熱処理を受ける粉末は、粉末の良好な流動性、はっきりとした融点及び耐久性が要求されるあらゆる用途で有用である。驚くことに、これらの熱処理粉末は、最終製品の優れた特性及び優れた外観を提供するだけではなく、この粉末から形成される最終製品の物理的性質を改善することもできることが見出された。
【0043】
熱処理方法によって得られる有益な特性は、用途によって異なる。例えば、回転成形では、所望の中空製品の外形を有する型に粉末を添加する。型は、加熱しながら、一定に3次元回転させる。型の温度がポリマーの融点を超えると、ポリマー粉末は、加熱された型に付着して、型の内側表面全体に、比較的均質なポリマー層を形成し、これによって、型と同じ形状の中空の物品が得られる。型の内側を均質に被覆するために、粉末は、型内側の様々な形状に流れ込まなければならない。型の表面要素の寸法が小さいとき、流動性は特に重要である。この場合、高温で軟質のポリマー粉末は、要素の開口部にブリッジを形成する可能性があり、適正に型を充填しない。
【0044】
同様の課題は、粉末コーティング用途、特に、流動床を用いて、コーティングを塗布する場合にみとめられる。あるタイプの粉末コーティング作業では、粉末化ポリマーの容器を流動化させ、いくつかの形態では、流動床の底部から入る気流によって加熱する。塗布しようとする物品をポリマーの融点より高い温度に加熱して、流動床に浸漬することにより、加熱物品に均質なコーティングを形成する。均質なコーティングを製造するためには、粉末は、均一な粒度を有して、しかも均質に融解し、流動しなければならない。加熱物品は、粉末を融解して、流動させるのに必要な熱のほとんどを提供するが、いくつかの例では、ポリマーを予熱すると同時に、加熱した部分を冷却させないように、流動床も加熱するのが有益となりうる。この場合、加熱可塑粒子は、互いに粘着し合い、大きな凝集体を形成するが、これはよく流動せず、均質に融解しないため、コーティングに欠陥を形成しうる。同様に、空気の作用によって、弱い粒子が摩耗されて、微粉粒子を形成する可能性があるが、これは、流動床から吹き飛ばされるか、又は流動床中で分離して、不均質なコーティングを形成する恐れがある。粉末を熱処理することによって、粉末粒子が均質かつ制御可能に軟化し、均質なコーティングへと融解及び融合するように、粒子の融解範囲を狭めて精密にすることができる。さらに、結晶度を高めると、粒子の強度が増して、より微細な粒子へと摩耗して、消失する傾向が低くなる。
【0045】
選択的レーザー焼結(SLS)の場合、粉体床を予熱室内で予熱した後、焼結室で薄い層として分布させ、レーザーを用いて、粉体床の特定の部分を加熱し、予め定めた形模様で粉末の一部を選択的に焼結する。続いて、第2層を粉体床に形成し、第2層中の材料を再び加熱して選択的に、ある形模様に焼結する。同時に、第2層も、第1層の焼結部分と融合させる。このようにして、連続的積層及び焼結により、3次元の物品が形成され、これを非焼結粉体床から取り出す。この用途では、工程で用いる全粉末の小部分、すなわち50%、あるいは10%というわずかな部分のみが焼結されて、使用可能な部分になる。従って、粉末を次の粉体床に戻して再循環可能であることは非常に有益である。従って、これは、粉末が均一に融解して、良好な表面仕上げの物品を形成し、大きな粒子に凝集したり、摩耗したりしなければ有益である。
【0046】
多量の高融解微結晶を含む粉末もまた、標準的圧力焼結方法に有用である。このタイプの方法では、熱処理ポリマー粉末を型に導入した後、ポリマーの非晶質領域が互いに融合するように、高圧に付してよい。次に、完成品の結晶度は、熱処理、例えば標準的アニール方法、又は本明細書に記載の改良方法によるものに付すことができる。しかし、既に示したように、典型的アニール方法を用いると、総結晶度を増加させることはできるが、高融解多形の量は最大にならない。
【0047】
以上説明した4つの用途のうち、SLS及び圧力焼結は、最終工程で、一般に、ポリマーを完全には融解しない点で独特である。従って、高融解結晶性多形の高い結晶度(%)又は高い融点は、SLS若しくは圧力焼結工程の前に発現されなければ、全く発現されないか、又は完成品をSLS若しくは圧力焼結工程後に熱処理しなければならないであろう。この製造後熱処理は、製造コストを増すだけではなく、熱処理中に物品に歪又は変形が生じた場合、欠陥品を生み出す可能性もある。選択的レーザー焼結から形成することができる物品の例は、例えば、国際公開第2010/019463号パンフレットに開示されており、その開示内容は、参照としてその全文を本明細書に組み込むものとする。
【0048】
前述した用途以外にも、本方法及び本方法によって製造された材料はまた、記載していない他の用途においても有用となりうることが考えられる。これらの具体的方法の説明によって、本発明に従い製造された熱処理ポリマー組成物をどこに用いてよいかを限定する意図はない。
【実施例】
【0049】
表1の知見をさらに詳しく調べるため、T:I比が60:40のOXPEKK(商標)SPポリエーテルケトンケトン粉末及びペレットを、200℃、250℃及び285℃の温度で、1〜16時間の範囲の時間にわたって強制通風炉内で熱処理した。
【0050】
形態及び結晶度を決定するために、以下の条件で、サンプルを標準ステージ上でθ−θ平行ビームジオメトリでのX線回析によって分析した:
管電流=40mA、管電圧=40kV、Cu K−α線
発散スリット=1mm、平行スリットアナライザー(0.011°)
2θ範囲=5°〜80°、滞留時間=5秒、増分=0.02°
発散Hスリット=10mm、平行ビーム光学系、ソーラースリット=5°
散乱スリット=受光スリット=開
【0051】
表2は、PEKK粉末についての結果を示し、表3はPEKKペレットについての結果を示す。両方の表で、I型は、主単位格子、すなわち(110)の主要結晶面の強度によって定量する。同様に、II型の量も、主単位格子、すなわち(020)の主要結晶面の強度によって定量する。
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
表2及び3に示すように、加熱温度とは関係なく、粉末の結晶度の値の方が、ペレットの値より高い。表3から分かるように、出発ペレットは、非晶質であるが、熱処理により、結晶性が回復する。ペレットについての最も高い結晶度の値は、250℃での短時間の加熱後に達成される。285℃までさらに加熱すると、結晶度の低下を招くが、これは一部に、I型への多形転移によって、II型が失われるためである。
【0055】
温度200℃及び285℃については時間の関数として結晶度が増加する。結晶度の増加の大部分は、わずか1時間又は2時間の熱処理時間後に見られる。温度が250℃のとき、1時間の経過後も、結晶度はほとんど変化しない。
【0056】
粉末及びペレットのいずれも、200℃での熱処理後、有意な量のII型が残る。250℃では、粉末及びペレットのいずれにおいても、I型の量が増加する。温度が、285℃までさらに上昇すると、粉末及びペレット両方の結晶部分が完全にI型に転換する。また、温度が上昇するにつれ、I型及びII型のいずれも、結晶サイズの増大が観察される。
【0057】
表2における285℃で16時間熱処理したペレット(実施例6)及び対照粉末についてのX線回析パターンを
図1及び2にそれぞれ示す。
図1は、I型のX線回析パターンを示し、
図2は、II型のX線回析パターンを示す。
【0058】
図1に示すように、PEKKI型(融液結晶化から典型的)は、その結晶面に対応する、以下の固有ピーク(散乱角)(2θ(度)で表す)を有する:
【0059】
【表4】
【0060】
図2に示すように、PEKKII型(溶媒結晶化から典型的)は、その結晶面に対応する、以下の固有ピーク(散乱角)(2θ(度)で表す)を有する:
【0061】
【表5】