特許第6041809号(P6041809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041809
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】中温作動ナトリウム電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/39 20060101AFI20161206BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   H01M10/39 C
   H01M4/38 Z
   H01M10/39 A
   H01M10/39 B
【請求項の数】19
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-542120(P2013-542120)
(86)(22)【出願日】2011年11月30日
(65)【公表番号】特表2013-545246(P2013-545246A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】US2011062534
(87)【国際公開番号】WO2012075079
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2014年11月6日
(31)【優先権主張番号】61/418,749
(32)【優先日】2010年12月1日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508011511
【氏名又は名称】セラマテック・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100097928
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 数彦
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】アルバーレ・ハビエル
【審査官】 神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04018969(US,A)
【文献】 特開2005−079096(JP,A)
【文献】 特開昭62−086672(JP,A)
【文献】 特表2013−537699(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0061288(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/39、4/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極材を収納する負極室と、正極室と、正極室中に存在する極性溶媒と、正極室中に存在する正極活物質と、負極室と正極室とを分離するイオン導電性セパレーターと、正極集電体とから成る再充電可能ガルバーニ電池であって、負極材は液体アルカリ金属から成り、正極活物質は、その比重が極性溶媒の比重よりも大きい非ガス物質から成り、正極集電体は、正極活物質および極性溶媒の界面位置が変化しても正極活物質および極性溶媒の界面を電気的に接続する構成を有し、ガルバーニ電池の充放電時に、正極室中の液体をガルバーニ電池から排出でき、再度ガルバーニ電池に流入できる構成をガルバーニ電池が有することを特徴とする再充電可能ガルバーニ電池。
【請求項2】
負極材がナトリウム又はリチウムから成る請求項1記載の再充電可能ガルバーニ電池。
【請求項3】
正極活物質が硫黄またはヨウ素の少なくとも1つから成る請求項2に記載の再充電可能ガルバーニ電池。
【請求項4】
負極材がリチウムから成り、正極活物質が硫黄から成り、ガルバーニ電池の温度が185℃〜250℃に維持される請求項3に記載の再充電可能ガルバーニ電池。
【請求項5】
負極材がナトリウムから成り、ガルバーニ電池の温度が100℃〜200℃に維持される請求項3に記載の再充電可能ガルバーニ電池。
【請求項6】
ガルバーニ電池の温度が100℃〜185℃に維持される請求項5に記載の再充電可能ガルバーニ電池。
【請求項7】
ガルバーニ電池の温度が110℃〜170℃に維持される請求項5に記載の再充電可能ガルバーニ電池。
【請求項8】
イオン導電性膜が、NaSICON、ナトリウムβアルミナ、ナトリウムβ’アルミナ、ナトリウムβ”アルミナ、LiSICON及びガラスセラミックの少なくとも1つから成る請求項3に記載の再充電可能ガルバーニ電池。
【請求項9】
極性溶媒が、アセトアミド、メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド(NMF)、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、テトラグリム、ジグリ
ム、ジメチルエーテル、硝酸エタノールアンモニウム、イミダゾリウムハロゲノアルミネート塩、及びこれらの組合せから選択される1つ以上から成る請求項3に記載の再充電可能ガルバーニ電池。
【請求項10】
ガルバーニ電池の充放電時に、極性溶媒をガルバーニ電池より排出でき、再度ガルバーニ電池に流入できる構成をガルバーニ電池が有する請求項3に記載の再充電可能ガルバーニ電池。
【請求項11】
負極室内の上部空間に不活性ガスを存在させることが出来、ガルバーニ電池の充放電時に不活性ガスをガルバーニ電池から排出でき、再度ガルバーニ電池に流入できる構成をガルバーニ電池が有する請求項10に記載の再充電可能ガルバーニ電池。
【請求項12】
イオン導電性膜が平面状またはチューブ状である請求項1に記載の再充電可能ガルバーニ電池。
【請求項13】
正極集電体が、正極室の基部から上部に向けて伸びている1つ以上のフィンから成る請求項1に記載の再充電可能ガルバーニ電池。
【請求項14】
電池が完全に充電された状態または完全に放電した状態において、界面がフィンの高さを超えないようにフィンの高さが設計されている請求項13に記載の再充電可能ガルバーニ電池。
【請求項15】
フィンに1つ以上の穴が設けられている請求項14に記載の再充電可能ガルバーニ電池。
【請求項16】
負極材から成る負極室と、正極室と、正極室内に存在する極性溶媒と、正極室内に存在する正極活物質と、負極室と極性溶媒とを分離するイオン導電性セパレーターと、正極集電体とから成るガルバーニ電池が1つ以上から成る電池であって、電池は100℃〜250℃で作動し、負極は液体のナトリウム又はリチウムから成り、正極活物質は液体の硫黄またはヨウ素から成り、正極活物質の比重は極性溶媒の比重より大きく、正極集電体は、正極活物質および極性溶媒の界面位置が変化しても正極活物質および極性溶媒の界面を電気的に接続する構成を有し、ガルバーニ電池の充放電時に、正極室中の液体をガルバーニ電池から排出でき、再度ガルバーニ電池に流入できる構成をガルバーニ電池が有することを特徴とする電池。
【請求項17】
極性溶媒が、アセトアミド、メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド(NMF)、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、テトラグリム、ジグリム、ジメチルエーテル、硝酸エタノールアンモニウム、イミダゾリウムハロゲノアルミネート塩、及びこれらの組合せから選択される1つ以上から成り、イオン導電性膜が、NaSICON、ナトリウムβアルミナ、ナトリウムβ’アルミナ、ナトリウムβ”アルミナ、LiSICON及びガラスセラミックの少なくとも1つから成り、イオン導電性膜が平面状またはチューブ状である請求項16に記載の電池。
【請求項18】
負極材がナトリウムから成り、ガルバーニ電池の温度が100℃〜200℃に維持される請求項17に記載の電池。
【請求項19】
負極室と、正極室と、正極室内に存在する正極集電体と、正極室から負極室を分離するイオン導電性膜とから成る電池を得る工程と;負極室内に負極材を配置する工程と;正極室内に正極活物質を配置する工程と;正極室内に極性溶媒を配置する工程と;正極活物質および極性溶媒の界面位置が変化しても正極活物質および極性溶媒の界面を電気的に接続することを確実にする工程と、ガルバーニ電池の充放電時に、正極室中の液体をガルバーニ電池から排出でき、再度ガルバーニ電池に流入できる構成を付与する工程とから成るガルバーニ電池の組立方法であって、負極材は液体アルカリ金属から成り、正極活物質は硫黄またはヨウ素から成り、正極活物質が正極室内の極性溶媒よりも下に位置するように正極活物質の比重は極性溶媒の比重よりも大きいことを特徴とするガルバーニ電池の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、発明の名称が「中温作動ナトリウム電池」である2010年12月1日出願の米国仮特許出願61/418,749を優先権主張し、この仮出願を参照により明確に本願に引用する。
【0002】
本発明は電池に関し、詳しくは、ナトリウム−硫黄電池およびナトリウム−ヨウ素電池の特性を改良するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
現代社会において、コンピューター、携帯電話、携帯音楽プレーヤー、照明装置、更に他の種々の電子機器などの数多くの装置のエネルギー供給源として電池に頼るようになってきた。それにもかかわらず、電池技術における更なる発展のために継続的な要求がある。例えば、自動車の電力供給や、風力、太陽光その他のエネルギー技術の負荷平準化能力を付与することが出来る安価な電池の大きな需要がまだある(そのような負荷平準化能力は、風力や太陽光発電によって生じるエネルギーを貯蔵するための機構としての発電所において使用される)。更に、「情報化時代」において、軽量、高エネルギー、長時間放電、小さく特注化できるデザインを供給できる携帯電池の要求が高まっている。これらの進歩を達成するため、技術者は、より高エネルギー密度でありながら、安全で、出力密度が高く、安価で他の必要とされる特性を満たす電池の開発を続けている。
【0004】
ナトリウム−硫黄(Na−S)電池は、上述の要求を満足するような大きな起電力を提供できる。ナトリウム−硫黄電池の理論的比エネルギーは792Wh/kgであり、全体的な化学反応は以下の式で示される。
2Na+3S→Na
【0005】
これは、非ガス構成の公知の電池で最大比エネルギーの1つである。これらの電池を製造するのに必要な材料は、軽量で、エネルギーを有し、安価で容易に入手できる。正極材の他の種とは対照的に、硫黄は相対的に毒性が低いため、人体接触という点でこれらの電池は比較的安全に製造できる。
【0006】
高比エネルギーを考慮すると、ナトリウム−硫黄電池は、高温(例えば250℃を超え、代表的には300℃〜350℃)で作動する電池が商業化されている。そのようなナトリウム−硫黄電池は、通常、一種または二種以上のβアルミナ膜またはβ”アルミナ膜を使用する。これらの膜は、良好な伝導性のために高温が必要である。これらのNa−S電池と関連して、ナトリウム負極および硫黄正極もまた、高温において(例えば300℃〜350℃)融解する。
【0007】
明らかに、研究者は、より低い作動温度(例えば250℃未満)で動作可能なナトリウム−硫黄電池の開発に取り組んでいる。例えば、特許文献1:米国特許出願公開第2010/0239893号明細書に、アルカリイオン導電性セラミック膜および固体アルカリ金属負極(例えばナトリウム)を使用したナトリウム−硫黄電池が開示されている。この特許文献の電池は200℃未満で作動するように設計されている。(特許文献1:米国特許出願公開第2010/0239893号明細書の開示内容は本発明に参照により引用される)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0239893号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、より低温で作動でき、高出力、高電流密度および他の要求される特性を提供できる新しいナトリウム−硫黄電池(更にナトリウム−ヨウ素電池)が求められている。本発明では、そのような電池を開示する。
【0010】
このように、溶融ナトリウム系再充電可能電池は入手可能であるが、斯かる電池には前記した問題点も存在する。従って、議論すべき技術の改良があり、更にある種の従来の溶融ナトリウム系再充電可能電池を他の溶融ナトリウム系再充電可能電池に代替すべき技術の改良が必要であろう。
【0011】
本発明は、約100℃〜約170℃の温度で機能する溶融ナトリウム二次電池(又は再充電可能電池)を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、高い動作電池電位および高出力を有しながら、他のナトリウム−硫黄電池よりも低温で動作可能である電池を提供する。本実施態様における電池は1つ以上のガルバーニ電池から構成される。これらのガルバーニ電池のそれぞれが負極と正極を有していてもよい。正極は非ガス物質または非ガスの活物質を有する。換言すれば、通常の電池の動作温度である100〜250℃において、正極(又は負極活物質)は非ガス状態である。通常、ナトリウムやリチウム等のアルカリ金属は溶融状態にある範囲において、正極は非ガス状とすることが出来る。多くの実施態様において、正極活物質は液体状態である。
【0013】
極性溶媒は正極活物質と併せて使用される。正極活物質の比重は極性溶媒の比重より大きい。電池反応における正極活物質はまた、アルカリ金属塩または極性溶媒中に少なくとも部分的に可溶する化合物を形成する。
【0014】
極性溶媒は、電池の動作温度より高い温度範囲、すなわち通常100〜250℃、好ましくは185〜250℃で液体として残存している物から選択される。電池の動作温度が狭い範囲である場合、極性溶媒は、この狭い温度領域を通じて液体として残存すべきである。正極活物質と共に使用する極性溶媒としては、N−メチルフォルムアミド(NMF)、フォルムアミド、ジメチルフォルムアミド、テトラグリム、ジグリム、ジメチルエーテル、アセトアミド、メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド及び他の溶媒が例示される。これらの溶媒のほとんどは、比重が0.9〜1.1/cmである。他の極性溶媒として、硝酸エタノールアンモニウム、イミダゾリウムハロゲノアルミネート塩、および/または他のイオン性液体などのイオン性液体が挙げられる。前述の溶媒は単独でも2つ以上組合せて使用してもよい。極性溶媒は非水溶媒であってもよい。
【0015】
本実施態様の電池の好ましい正極活物質は硫黄とヨウ素である。硫黄は比重が2.07g/cmであり、115〜445℃で溶融する。硫黄は更にナトリウムと結合を形成する。電池の正極に硫黄を使用し、負極にナトリウムを使用した場合、電池は約2.2Vの出力(起電力)が可能となる。同様に、ヨウ素は比重が4.92g/cmであり、114〜185℃で液体である。ヨウ素は更にナトリウムイオンと錯体を形成する。ヨウ素を電池の正極に使用し、ナトリウムを負極に使用した場合、電池は約3.2Vの起電力が可能となる。更に、硫黄およびヨウ素の両方のナトリウム塩は、当然極性を有し、上述の溶媒を含む種々の極性溶媒に可溶である。実際、ナトリウムポリスルフィドはNMFに特に可溶である。
【0016】
硫黄/ヨウ素が正極で使用される場合(更にナトリウムが負極で使用される場合)以下の反応が正極において生じる。
【0017】
電池が放電時:
Na+1/2I+e→NaI
2Na+1/8S+2e→NaS 又は
2Na+3/8S+2e→Na
(硫黄の場合、種々の価数のポリスルフィドも正極において形成されるであろう)
【0018】
電池が充電時:
NaI→Na+1/2I+e
NaS→2Na+1/8S+2e 又は
Na→2Na+3/8S+2e
(硫黄の場合、種々の価数のポリスルフィドも正極において還元されるであろう)
【0019】
電池の一部分であるアルカリ金属イオン導電性膜は、正極物質から負極物質を分離する。この種の膜として使用される物質例としてはナトリウムβアルミナ、ナトリウムβ”アルミナ及びNaSICON(もし負極物質がナトリウムであるなら)が挙げられる。市販品として入手可能なNaSICON膜(例えばセラマテック インク社(Ceramatec,Inc.)、米国、ユタ州、ソルトレークシティー)はナトリウム−金属−リン酸塩構造(Na1+xZr(PO)を基にする。ここでxは0〜3であり、Xはドーパントである。このNaSICON膜の伝導性は、100℃において4.6ミリシーメンス/センチメーター(mS/cm)程度であり、200℃において約17.5mS/cmに上昇する。また、他の種のNaSICON膜を使用してもよい。負極材料がリチウムの場合、LISICON又はガラスセラミック材料などのリチウム伝導膜を使用してもよい。LISICONとしては、Li2+2xZn1−xGeO(−0.36<x<0.87)、Li14ZnGe16及び化学量論量からカチオン置換により若干変動したものを含むリチウム伝導セラミックが挙げられる。ここで使用する「LiSICON」という語は、更にリチウム/アルミニウム/チタニウム/リン酸塩複合体類も含み、その例として、特に限定されないが、Li1+xAlTi2−x(PO(0.0≦x≦0.5)、Li(l+x+4y)AlTi(l−x−y)(PO(0.0≦x≦0.5、0.0≦y≦0.5)の化学式を有するセラミック膜、更には特性改善のためこれらを若干量カチオン置換したものが挙げられる。リチウムイオン伝導ガラスセラミック材料としては、特に限定されないが、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO3−xLiO(x=0.0−0.20)等のリチウムアルミノシリケートガラスセラミック類複合体が挙げられる。1つ以上の元素を他の元素で部分的に置換することにより性能が向上し、この化学量論量の変動/置換についても本発明の実施態様の一部と理解すべきである。
【0020】
正極室は正極集電体を収納してもよい。正極活物質の比重が極性溶媒より大きいため、液体正極活物質は正極室の底部に存在し、一方極性溶媒は正極活物質の上に存在する。電池の充放電状態により、電池の底部に存在する正極活物質の高さは上昇したり下降したりする。従って、液体正極活物質の高さ変化を補填するために、たとえ高さの変化が生じようとも活物質/溶媒界面電気的接触を確実にするように正極集電体を構成してもよい。換言すれば、正極集電体は、界面の位置に関わりなく、極性溶媒/正極活物質の界面における液体正極活物質および極性溶媒の電気的接触を付与するように構成される。
【0021】
正極反応中、正電荷を運ぶナトリウムイオンは正極集電体の方に移動する。そのような移動により、ナトリウムイオンが極性溶媒、電子および正極活物質を介して移動させられる。上述の通り、液体活物質の高さが変化することにより反応の生じる場所は変化する(すなわち、液体硫黄またはヨウ素の高さ/上昇)。正極集電体は、電気的導電性を有し、且つ正極活物質、溶媒およびアルカリ塩と反応しないことが必要である。正極活物質が硫黄またはヨウ素である場合、ヨウ化ナトリウムが正極室内に含まれ、混合物のイオン伝導性が増加する。
【0022】
負極活物質としてリチウムを使用する場合、正極活物質として硫黄を選択すべきである。その理由は、リチウムが181℃で融解し、その温度がヨウ素の沸点に近いためである。それゆえ、リチウムと硫黄の組合せの場合、好ましい動作温度は182〜250℃である。もちろん、反応中、極性溶媒は182〜250℃の温度で液体として存在する必要がある。
【0023】
本発明の上述および他の特徴ならびに利点を容易に理解するため、上述の簡単な本発明の説明の更なる詳細な記載が、添付の図面に記載されるぐらい的な実施態様を参照して与えられる。これらの図面は本発明の代表例を示すものであり、本発明の要旨がこれらの例に限定されないことを理解すべきである。本発明の更なる特定や具体例は、添付の図面を使用して記載され、説明される。
【発明の効果】
【0024】
本発明の電池は、高い動作電池電位および高出力を有しながら、他のナトリウム−硫黄電池よりも低温で動作可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明のガルバーニ電池の概略図である。
図2図2は、本発明の他のガルバーニ電池の概略図である。
図3図3は、負極として溶融ナトリウムを使用し、NaSICONセラミック膜を使用し、正極室の極性溶媒としてジメチルアセトアミド使用し、硫黄/硫化物を正極活物質として使用した電池の25mA/cmにおける充放電性能を示すグラフである。
図4図4は、負極として溶融ナトリウムを使用し、NaSICONセラミック膜を使用し、正極室の極性溶媒としてジメチルアセトアミド使用し、硫黄/硫化物を正極活物質として使用した電池の100mA/cmにおける充放電性能を示すグラフである。
図5図5は、ガルバーニ電池をどのようにして組合せて電池を形成するかを示す配線図である。
図6図6は、ガルバーニ電池を構築する典型的な方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面を参照することにより、本発明の好ましい実施態様はより良く理解される。なお、図中、類似の構成は類似の符号を付してある。図中に一般的に記載されている本発明の構成要素は異なる配置形状に種々配置および設計されてもよいことを理解すべきである。それゆえ、以下の図面に示される本発明の詳細な説明は、本発明をこれらに限定することは意図せず、単に本発明の好ましい実施態様の代表例である。
【0027】
図1を参照すると、ガルバーニ電池10の代表的な概略図が記載されている。図1において、電池10は正極室11及び負極室16を含む。当業者であれば、正極室11及び負極室16を有する電池10をいかに構成するかは十分理解できるであろう。工業的に知られているように、筐体壁30が正極室11及び負極室16に使用されていてもよい。筐体壁30は、負極室16と正極室11とが電気的に直接接続されないように構築されればよい。この筐体壁30は、水や空気などが電池10に侵入しないような不透過性で、筐体内の化学物質と反応することを防ぐために不活性である。
【0028】
負極材17は負極室16内に有ってもよい。この負極材17は金属であってもよい(それゆえ、ここでは、負極材17を負極金属17と参照する)。ここで負極金属は、ナトリウム又はリチウム等のアルカリ金属である。通常、電池10は、負極金属17が液体となる温度で動作させる(例えばナトリウム又はリチウムの場合)。それゆえ、図1の描写において、負極金属17は液体状として示される。例えば、負極金属17がリチウムの場合、電池10は約185℃〜約250℃の温度で作動する(及び/又は維持する)ように設計される。負極金属17がナトリウムの場合、電池10は約100℃〜約200℃の温度、好ましくは約100℃〜約185℃の温度、更に好ましくは約110℃〜約170℃の温度で作動する(及び/又は維持する)ように設計される。ある実施態様において、負極室は、スチール、ステンレススチール等の金属によって覆われる。他の材料もまた使用できる。
【0029】
代表的には、負極室16内に上部空間18があり、それは液体負極金属17の上方に位置する。上部空間18は、更に、窒素、アルゴン等の不活性ガス19から成っていてもよい。電池10が充放電時に、負極金属17(ナトリウム又はリチウム)は消費されるか又は放出される。従って、負極金属17の量が変化するため、液体負極金属17の液面高さが変化する(例えば、上昇または下降)。液体負極金属17の液面高さが変化した際、不活性ガス19は、管路27を介してオーバーフロー室26に流出および流入する。それゆえ、上部空間18に存在する不活性ガス19は、ガルバーニ電池10の充放電時に電池10から排出され、電池10に再度流入できるようにする。必要であれば、管路27の一部としてバルブ又は他の調整機構を使用し、不活性ガス19が室26に流出および流入できるようにする。
【0030】
電池10において、イオン導電性膜15が使用される。イオン導電性膜15は負極室16から正極室11を分離する。すなわち、正極室11内に収納される化学物質を負極金属17から区分け分離する。イオン導電性膜は、負極室16と正極室11との間に直通の空隙が無いように構成される。膜15は、膜15を介してナトリウムカチオン、リチウムカチオン等のアルカリ金属イオンを透過できる。ある実施態様において、膜15は、膜15の有効表面積を増加させるために、膜の外側面上に多孔質層を有していてもよい。図1の他の実施態様において、イオン導電性膜15はNaSICON膜である。しかしながら、上述の様に、イオン導電性膜15として使用される他の材料、例えばLiSICON、ナトリウムβアルミナ及び/又は他の材料であってもよい。図1の実施態様において、イオン導電性膜15は平面状である。
【0031】
電池10の正極室11は筐体壁30で形成されている。ある実施態様において、筐体壁30は、電気的導電性を有し及び/又は不透過性を有する多層に分離する。壁による各層は、電子透過機能および/または壁の中に各要素を包含する機能などのそれぞれの機能を供給してもよい。換言すれば、筐体壁30は、筐体壁30内に電子透過機能と各要素を包含する機能とを有するように設計された単層であってもよい。例えば、筐体壁30は、主として、グラファイト又は絶縁性で不活性なポリマーで(外側を)覆われた耐腐食性金属から成ってもよい。
【0032】
正極室11は極性溶媒14を収納する。極性溶媒14は、電池の動作温度(例えば100℃〜200℃)よりも上で液体として残存しているようなものから選択される。正極活物質と共に使用される極性溶媒としては、N−メチルホルムアミド(NMF)、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、テトラグリム、ジグリム、ジメチルエーテル等が例示される。これらの溶媒の比重は、ほとんどが0.9g/cm〜1.1g/cmである。他の極性溶媒としては、硝酸エタノールアンモニウム、イミダゾリウムハロゲノアルミネート塩などのイオン性液体が挙げられる。他の実施態様において、アセトアミド、メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミドを使用してもよい。
【0033】
正極室11は正極活物質13も収納する。この正極活物質13は硫黄またはヨウ素である。硫黄の比重は2.07g/cmで、溶融温度は115℃〜445℃である。同様に、ヨウ素の比重は4.92g/cmで、液体状である温度は114℃〜185℃である。硫黄およびヨウ素のナトリウム塩は本来極性を有し、上述の極性溶媒に可溶である。実際、ナトリウムポリスルフィドは特にNMFに可溶である。
【0034】
硫黄およびヨウ素の比重は極性溶媒14の比重よりも大きいので、正極活物質13(例えば硫黄/ヨウ素)は極性溶媒14よりも下に位置する(例えば、正極室11の底部またはその付近)。電池10が充電または放電している時、正極活物質13(硫黄またはヨウ素)は反応において消費されるか又は放出される。従って、正極活物質13の量は変化し、正極室11内の極性溶媒14の液面高さもまた変化する(上昇または下降)。正極活物質13の高さが変化した時、極性溶媒14は管路37を介してオーバーフロー室35に流出および流入する。それゆえ、極性溶媒14が、ガルバーニ電池10の充放電時に電池10から排出され、電池10に再度流入できるようにする。必要であれば、管路37の一部としてバルブ又は他の調整機構を使用し、極性溶媒14が室35に流出および流入できるようにする。
【0035】
図1の実施態様において、極性溶媒14が正極室11を満たし、極性溶媒14がイオン導電性膜15と正極活物質13との間のイオン伝導を付与できるように、正極活物質13によっては正極室11は満たされていない。オーバーフロー室35内に、極性溶媒14の上方に上部空間21が存在する。他の実施態様において、壁または壁の一部を可動性または可撓性にして容積を可変できるようにして、極性溶媒14がオーバーフロー室35を全て満たすように設計してもよい。また、他の実施態様において、不活性ガス(例えば、アルゴン、窒素など)を上部空間21に使用してもよい。
【0036】
図1に示すように、この実施態様において、正極室11は少なくとも1つの正極集電体8を収納するように構成される。図1の実施態様において、集電体8は1つ以上の集電体フィン(集電体安定板)12から成る(もちろん、他の実施態様において、集電体が他の構造を有するように設計されていてもよい)。これらの集電体フィン12は、正極室11の基部50から上方の正極室11に向かって伸びていてもよい。フィン12は棒状や他の類似構造を有していてもよい。集電体フィン12は、正極室11の底部に存在するより密度の高い正極活物質13と正極室11の上部に位置する液体性極性溶媒14との間の界面62の電気的接触の役割を担う。フィン12は、フィン12の間の物質移送を促進するために、多孔性でまたは1つ以上の穴を有していてもよい。図1において、1つのフィン12に穴60が設けられている。しかしながら、必要であれば、フィン12の全てに穴60が有ってもよい。更に必要であれば、1つ以上の穴60が1つ又は複数のフィン12に設けられていてもよい。更に、フィン12は、極性溶媒14/正極活物質13の間の界面62が上昇/下降した際に、フィン12がなお界面62の電気的接触を付与できるように構成される。換言すれば、界面62の位置が変化(上昇)したとしても、フィン12は界面62の電気的接触を付与する。フィン12はまた、より大きい反応場面積を提供するので更に有利である。1つ以上のフィン12の高さは、電池10が完全に充電された状態または完全に放電した状態において、界面62が少なくとも1つのフィン12の高さを超えないように設計されている。
【0037】
電池10に関連した反応を以下に説明する。以下の例では負極金属17としてナトリウムを使用した場合の例である。
【0038】
<放電時>
正極反応:
1/2I+e→I
(正極活物質13としてヨウ素を使用した場合)
1/8S+2e→S−2 又は
+2e→S−2 1<y<30 又は
1/8S+S−2+2e→S(y+1)−2 1<y<30
(正極活物質13として硫黄を使用した場合、しかしながらある種のポリスルフィドもまた正極に形成される)
負極反応:
Na→Na+e
【0039】
<充電時>
正極反応
I→1/2I+e
(正極活物質13としてヨウ素を使用した場合)
S→1/8S+2e 又は
−2→S+2e 1<y<30 又は
(y+1)−2→1/8S+S−2+2e 1<y<30
(正極活物質13として硫黄を使用した場合)
負極反応
Na+e→Na
【0040】
電池の正極として硫黄を使用し、負極としてナトリウムを使用する場合、電池は2.2V程度の出力を生じることが出来る。電池の正極としてヨウ素を使用し、負極としてナトリウムを使用する場合、電池は3.2V程度の出力を生じることが出来る。
【0041】
他の実施態様において、負極金属17としてリチウムが使用されるように設計される。この場合、硫黄を正極活物質13として選択できる。その理由は、リチウムが181℃で融解するため、ヨウ素の沸点と近いからである。それゆえ、リチウムと硫黄を使用する場合、好ましい電池の動作温度は182℃〜250℃である。もちろん、反応中にこの温度範囲内で、極性溶媒が液体として残存していなければならない。この実施態様の場合、LiSICON又は他の材料が膜15として使用される。この実施態様における反応は以下の通りである。
【0042】
<放電時>
正極反応:
2Na+1/8S+e→Na
(正極活物質13として硫黄を使用した場合、しかしながらある種のポリスルフィドもまた正極に形成される)
負極反応:
Na→Na+e
【0043】
<充電時>
正極反応:
NaS→2Na+1/8S+2e
負極反応:
Na+e→Na
【0044】
図1の実施態様において、充電/放電中に室の容積が可変なため、溶媒または不活性ガスを受け入れるように設計される室26及び35を有する。これらの付加的な室は、液体状または気体状物質を収納できる室、袋または他の類似の構造であってもよい。ある実施態様において、正極室11及び/又は負極室16は、これらの室の容積自体が電池の充電/放電中に変化できるような可撓性材料から形成されていてもよい。そのような実施態様において、室11及び16が可撓性材料から形成され、付加的な室26及び35は必ずしも必要としない。他の実施態様において、室26及び35は、膨張または収縮して容積を変更できるようなピストンや嚢(ブラダー、袋)の使用を含んでもよい。同様に、必要であれば、電極室11及び16自体に、容積可変機構としてのピストンや嚢から成っていてもよい。
【0045】
図2は、ガルバーニ電池100の他の実施態様において図示する。電池100は、図1に示す電池10に類似している。従って、電池100の多くの構成成分/要素は、電池10の構成成分/要素と類似である。簡潔にするために、これらの類似の構成成分/要素の多くは説明を省略する。しかしながら、図2の実施態様において、負極室16から正極室11を分離する膜は、底部が閉形のチューブ状である。
【0046】
電池100において、正極室11が図示されている。正極室11は、正極活物質13を収納する筐体である。この正極活物質13は硫黄またはヨウ素である。電池100が充電時において、正極活物質13は正極筐体の底部に存在する。極性溶媒14は正極活物質13の上方に存在する(正極活物質13の比重が溶媒14の比重より大きいためである)。
【0047】
正極室11は正極集電体8を有する。前述の実施態様に示すように、集電体8は1つ以上の集電体フィン12から成っていてもよい。そのようなフィン12は、正極室11の底部またはその周辺に配置される。集電体フィン12は、正極室11の底部に存在するより密度の高い正極活物質13と正極室11の上部に位置する液体性極性溶媒14との間の界面62の電気的接触の役割を担う。フィン12は、フィン12の間の物質移送を促進するために、多孔性でまたは1つ以上の穴を有していてもよい。更に、フィン12は、極性溶媒14/正極活物質13の間の界面62が上昇/下降した際に、フィン12がなお界面62の電気的接触を付与できるように構成される。電池100が充電または放電している際、正極活物質13(硫黄またはヨウ素)は反応によって消費されるか又は放出される。従って、正極活物質13の量は変化し、正極室11内の極性溶媒14の液面高さもまた変化する(上昇または下降)。正極活物質13の高さが変化した時、極性溶媒14は管路37を介してオーバーフロー室35に流出および流入する。必要であれば、管路37の一部としてバルブ又は他の調整機構を使用し、極性溶媒14が室35に流出および流入できるようにする。更に、正極室11内の極性溶媒14の上方に上部空間21が存在する。ある実施態様において、不活性ガス(例えば、アルゴン、窒素など)を上部空間21に満たしてもよい。電池が充放電時に各室に生じる容積変化に対応して、この不活性ガスが室35に排出または流入してもよい。それゆえ、上部空間21内の不活性ガスは、電池100の充放電時に電池100から排出され、電池100に再度流入できるようにする。別の態様としては、電池100の充放電時に、上部空間21内の不活性ガスを分離室/貯留タンクに排出および流入させてもよい。
【0048】
電池100は、更に、負極金属17を収納する負極室16を有する。上述のように、負極金属17はナトリウム又はリチウム等のアルカリ金属である。電池100は、負極金属17が液体である温度で作動させる。従って、負極金属17の高さ(垂直高さ)は、電池100の充電状態により上がり下がりする(例えば、電池100が満充電の場合、完全放電の場合、部分充電の場合など)。
【0049】
代表的には、上部空間18は負極室16内に存在し、液体負極金属17の上部に位置する。上部空間18は、更に不活性ガス19(例えば、窒素、アルゴンなど)を含んでいてもよい。電池10が充放電時、負極金属17(ナトリウム又はリチウム)は反応により消費されるか又は放出される。従って、負極金属17の量は変化し、液体負極金属17の液面高さもまた変化する(上昇または下降)。液体負極金属17液面高さが変化した際、不活性ガス19は管路27を介してオーバーフロー室26(リザーバー)に流出および流入する。必要であれば、管路27の一部としてバルブ又は他の調整機構を使用し、不活性ガス19が室26に流出および流入できるようにする。
【0050】
負極集電体23は負極金属に電気的接触を付与し、電池の全放電まで接触するように設計される。蓋22は電池100を外部環境から遮断密封する。
【0051】
図2の実施態様において、イオン導電性膜チューブ20内に負極金属17が含まれる。イオン導電性膜チューブ20は負極室16から正極室11を分離する。すなわち、正極室11内に収納される化学物質を負極金属17から区分け分離する。イオン導電性膜は、負極室16と正極室11との間に直通の空隙が無いように構成される。膜チューブ20は、膜を介してナトリウムカチオン、リチウムカチオン等のアルカリ金属イオンを透過できる。ある実施態様において、膜チューブ20は膜20の有効表面積を増加させるために、膜の外側面上に多孔質層を有していてもよい。図2に示すように、膜は、閉鎖系の底を有するチューブ状である。正極室11は、40イオン導電性膜チューブ20の低位置部40(例えば底部)を超えるように設計された1つ以上の壁42を有する。
【0052】
電池100は上述の方法で作動(例えば、充電および放電)させる。適切な温度における電池の動作が確実になるために、温度が制御できる環境に電池10、100が含まれているべきであるということを理解すべきである。ある実施態様において、負極のアルカリ金属としてナトリウムを使用する場合、動作可能温度は100℃〜200℃の温度範囲である。負極材としてリチウムを使用する場合、電池10及び100は、182℃〜250℃の温度範囲で作動させる。それゆえ、本実施態様は、中温で動作可能な(例えば250℃未満)、Na−S電池またはNa−I(又はLi−S或いはLi−I)電池を提供できる。
【0053】
図2の実施態様において、1つ以上のフィン12を含んでもよい。図1の実施態様と同様に、1つ以上のフィン12の高さは、電池10が完全に充電された状態または完全に放電した状態において、界面62が少なくとも1つのフィン12の高さを超えないように設計されている。更に、フィン12は、必要であれば、1つ以上の穴60を有していてもよい。また、図2において、1つのフィン12に穴60が設けられているが、当業者ならば、(1)更なる穴をフィン12に設けてもよく、(2)他のフィン12にも1つ以上の穴60を設けてもよいことは理解できるであろう。
【0054】
図1−2の実施態様において、正極室11は極性溶媒14及び活物質13の異なる物質を含む。当業者ならば、更なる実施態様として、活物質13がゲルやエマルション中に浮遊するような構成も理解できるであろう(このような場合、ゲル/エマルション溶媒を構成する)。例えば、溶媒14は、PBDF又はPVMF(両者とも不活性物質である)のマトリックスであってもよい。そのような実施態様において、正極室の内容物の容積はマトリックス中で同じであるだろう。正極の伝導度を増加させるために、電気伝導体(炭素や炭素発泡体材料など)を添加してもよい。例えば、電極を炭素発泡体中に浸して伝導度または電位を増加させてもよい。
【0055】
他の実施態様として、正極室11は溶媒が流れるための多孔質カーボンを含み、正極室の伝導度を増加させるように設計される。
【0056】
本発明の実施態様で構成された電池の具体例の特性例を示す。例として、図3及び4は、他の実施態様を構築した際に得られたテスト結果を示す。特に、図3は、負極として溶融ナトリウムを、膜としてNaSICONセラミック膜を、正極溶媒としてジメチルアセトアミドを、正極活物質として硫黄/硫化物をそれぞれ使用した250mA/cmにおける電池の充放電特性を示す。
【0057】
図4は、負極として溶融ナトリウムを、膜としてNaSICONセラミック膜を、正極溶媒としてメチルアセトアミドを、正極活物質として硫黄/硫化物をそれぞれ使用した100mA/cmにおける電池の充放電特性を示す。
【0058】
図5は本発明の電池10及び100がいかに電池200を形成するかを示す概略図である。具体的には、電池200は、1つ以上のガルバーニ電池10から成る。図5の実施態様において、電池200は、図1のガルバーニ電池10を4つ含む。しかしながら、図2のガルバーニ電池100もまた電池200を形成できることは、当業者に理解できるであろう。更に、4つのガルバーニ電池10が電池200に示されているが、これに限定されない。電池200を形成するガルバーニ電池10の数は、必要に応じていくつであってもよい。換言すれば、電池200は1つ以上のガルバーニ電池(ガルバーニ電池10でもガルバーニ電池100でもどちらでも)から成っていればよい。図5に示すように、1つ以上のガルバーニ電池10は、接続部210を介して電気的に接続される。当業者ならば、電池200の機能が発揮されるためにどのように電池10を接続するかは理解できるであろう。
【0059】
ここでは、電池200(及びガルバーニ電池10又は100)はより高温で作動さてもよいように設計される。例えば、ある実施態様において、電池10、100は、約185℃〜約250℃で作動(及び/又は維持)させるように設計される(例えば、負極金属がリチウムの場合)。他の実施態様において、電池10、100は、約100℃〜約200℃で作動(及び/又は維持)させるように設計される(例えば、負極金属がナトリウムの場合)。更に他の実施態様において、電池10、100は、約100℃〜約185℃で作動(及び/又は維持)させるように設計される(例えば、負極金属がナトリウムの場合)。セル/電池をこれらの高い温度にするために、電池200は高温槽220内に配置される。このような温度上昇を行うため、加熱装置230により電池200に向けて熱240を発生させ、電池200が所望の温度で作動(充電、放電および/または電力貯蔵)するようにする。もちろん、図5の実施態様は説明のための単なる例示である。当業者ならば、電池200及び/又は電池10、100をどのように使い、室温よりも高い温度で維持し及び/又は作動させるかは理解できるであろう。
【0060】
図6は、ガルバーニ電池の製造方法の実施態様300を示したものである。本方法は電池(セル)を得る工程304を含む。電池は電池10又は電池100(又は他の実施態様)であってもよい。ここで、電池は負極室および正極室を含む。電池は、更に正極室から負極室を分離するイオン導電性膜を含む。更に、電池は正極集電体を含む。正極集電体は正極室内に配置される。
【0061】
負極材は負極室内の308に配置される。負極材はリチウム又はナトリウム金属から成る。負極材は溶融リチウム金属またはナトリウム金属から成り、また他の実施態様において、負極材は固体状のリチウム又はナトリウム金属で、加熱により液体状のリチウム又はナトリウム金属となる。正極活物質を正極室内に配置する(工程312)。正極活物質はヨウ素または硫黄から成る。正極室内に極性溶媒を配置する(工程316)。正極活物質の比重は極性溶媒の比重よりも大きい。従って、正極活物質および極性溶媒の両方が正極室内に配置されると、正極活物質は正極室の底部に位置する(すなわち、極性溶媒の下方である)。更に、方法300は、正極集電体が、正極室内の正極活物質と極性溶媒との間の界面の電気的接続を付与することを確実にする工程320を含む。正極集電体は、界面位置が変化しても電気的接続を付与する。
【0062】
方法300の各工程は単なる例示であって、図6に示されるのと異なる順番で行われるような種々の方法であってもよい。工程の順番が異なるそのような実施態様も、本発明の範囲とする。
【0063】
本発明は、本発明の構成、方法または他の基本特性から逸脱しない範囲において広く記載され広く特許請求されるものであるため、他の種々の実施態様も含んでいる。記載された実施態様は、単なる例示であって、これに限定されるものではない。本発明の範囲は上述の記載によるのではなく添付の特許請求の範囲に規定されるものである。特許請求の範囲と均等の意味および範囲内で可能な全ての変更も本発明の範囲内とする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6