(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041810
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】トルクベクタリング装置
(51)【国際特許分類】
F16H 48/36 20120101AFI20161206BHJP
F16H 1/28 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
F16H48/36
F16H1/28
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-544429(P2013-544429)
(86)(22)【出願日】2011年12月14日
(65)【公表番号】特表2014-500458(P2014-500458A)
(43)【公表日】2014年1月9日
(86)【国際出願番号】SE2011051510
(87)【国際公開番号】WO2012082059
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2014年10月8日
(31)【優先権主張番号】1051324-0
(32)【優先日】2010年12月15日
(33)【優先権主張国】SE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】593118656
【氏名又は名称】ボルグワーナー トルクトランスファー システムズ エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】セヴェリンソン, ラルシュ
(72)【発明者】
【氏名】ニルソン, クリストファー
【審査官】
塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−177916(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/101506(WO,A1)
【文献】
特開2007−139011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 48/36
F16H 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
従来の差動装置(20−27)とともに設けられ、推進モータからの駆動トルクが供給される車両の駆動軸の既に存在する構成の2つのハーフアクスルのためのトルクベクタリング装置(4−18)であって、
回転トルク源(15)を有する前記トルクベクタリング装置(4−18)は、既に存在する構成である前記ハーフアクスルの一方(1)に接続される一方、前記差動装置(20−27)の枠組み(24)に接続される、自立したユニットであり、
前記回転トルク源(15)は、単一の遊星歯車機構(10)の形式の作動伝達装置を介して、前記ハーフアクスルの一方(1)と、前記枠組み(24)とに接続され、
前記ハーフアクスル(1)と、前記枠組み(24)の回転速度とが同じ時、前記トルクベクタリング装置において、前記回転トルク源が静止しており、
中空軸(3)が前記差動装置(20−27)の枠組み(24)に接続されており、前記ハーフアクスルの一方に接続された軸(1)が前記中空軸(3)を通って延びており、
第1のギヤ列(4−6)が前記軸(1)と遊星歯車機構(10)の遊星枠(8)に接続された軸構造(7)の間に配置されており、前記遊星枠は遊星歯車(9)を支持し、第2のギヤ列(11−13)が前記中空軸(3)と前記遊星歯車機構のリングギヤ(14)の間に配置されており、前記第2のギヤ列の最後の歯車(13)が前記軸構造(7)の上で回転可能であることを特徴とする、トルクベクタリング装置。
【請求項2】
前記回転トルク源(15)が前記遊星歯車機構(10)の太陽ギヤ(16)に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記回転トルク源(15)が電気モータであることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
減速ギヤ機構(17,18)が前記電気モータ(15)と前記遊星歯車機構(8,9,14,16)の前記太陽ギヤ(16)との間に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それを通じて例えば燃焼エンジンの様な推進モータから駆動トルクが供給される従来の差動装置(ディファレンシャル)とともに設けられる、車両の駆動軸(ドライブアクスル)の2つのハーフアクスル(車軸)のためのトルクベクタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路用の車両、特に自動車においては、車両の動的な駆動を強調するために、駆動トルクを異なるホイールに自由に分配できることは有利である。この望まれる結果を達成するための装置は、トルクベクタリング装置と呼ばれる技術に属する。
【0003】
一般的に言って、トルクベクタリング装置は、2輪駆動車か、4輪駆動車で使用され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トルクベクタリング装置の技術と道路用の車両におけるその使用方法について、一般的により良く理解できる従来のトルクベクタリング装置が開示されているものとしてWO 2010/101506を参照する。この公報におけるトルクベクタリング装置は、電気推進モータとともに用いられるように示されているが、本来それに限定されるものではなく、用いられる駆動源は、燃焼エンジンであってもよい。
【0005】
この公報のトルクベクタリング装置は、差動機構を介して車両の駆動軸の2つのハーフアクスルの間でトルクを伝達するように構成され、電気モータの形式のトルク源を有している。
【0006】
本発明の主たる目的は、従来の車両の差動装置(ディファレンシャル)とともに、ユニットとして用いられるトルクベクタリング装置を達成することである。また、さらなる目的は、現在のトルクベクタリング装置よりも、このユニットを小さく、軽く、簡単に装着でき、安価にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、トルクベクタリング装置は、ハーフアクスルの一方に接続される一方、差動装置の枠組みか、あるいはもう一方のハーフアクスルに接続され、
前記トルクベクタリング装置の回転トルク源は、遊星歯車機構の形式の作動伝達装置を介して、前記ハーフアクスルの一方と、前記枠組みまたは前記もう一方のハーフアクスルとに接続され、
前記ハーフアクスルと、前記枠組みまたは前記もう一方のハーフアクスルの回転速度とが同じ時、前記トルクベクタリング装置において、前記回転トルク源が静止している。
【0008】
前記車両の2つの駆動ハーフアクスルが同じ速度で回転するとき、前記回転トルク源には回転が与えられないこと、それにより本発明のトルクベクタリング装置は2つのハーフアクスルの回転速度の違いに対して動作すること、は重要な側面である。
【0009】
中空軸は、実際上は前記差動装置の枠組みに接続され、一方、前記ハーフアクスルの一方に接続された軸は、中空軸を通って延びる。
【0010】
第1のギヤ列が前記軸と遊星歯車機構の遊星枠に接続された軸構造の間に配置されており、前記遊星枠は遊星歯車を支持し、一方、第2のギヤ列が前記中空軸と前記遊星歯車機構のリングギヤの間に配置されており、前記第2のギヤ列の最後の歯車が前記軸構造の上で回転可能である
前記回転トルク源は、前記遊星歯車機構の太陽ギヤに接続されている。
【0011】
前記回転トルク源は、好ましくは電気モータである。本発明のトルクベクタリング装置の動作状態により、この電気モータは、車両の通常の電気システムとして動作されることができ、通常より大きい電圧レベルは必要とされない。
【0012】
減速ギヤ機構が前記電気モータと前記遊星歯車機構の前記太陽ギヤの間に配置され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係わるトルクベクタリング装置の斜視図である。
【
図3】
図1とは異なる角度から見たトルクベクタリング装置の斜視図である。
【
図4】本発明のトルクベクタリング装置と接続するための手段を有する従来のディファレンシャルの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のトルクベクタリング装置は、例えば後輪駆動車のプロペラシャフト(カルダンシャフト)を介して駆動トルクが加えられる従来のディファレンシャルに接続される2つのハーフアクスル(車軸)を備える車両の駆動軸のために意図されている。
【0015】
軸1は、ディファレンシャルのサイドギヤのうちの1つに接続されている(
図4に示す)。軸1は、例えばフランジ2を介して車両の第1の駆動ハーフアクスル(不図示)に接続されている。内部を軸1が通る中空軸3が、ディファレンシャルの冠歯車あるいは枠組みに接続されている。
【0016】
第1ギヤ4が軸1に取り付けられており、第2ギヤ5と噛み合っている。この第2ギヤ5は、軸構造7を介して遊星歯車機構10の遊星歯車9のための遊星枠8に接続された第3ギヤ6と噛み合っている。これらのギヤ4〜6は、第1ギヤ列と呼ばれ得る。
【0017】
変形例として、第2ギヤ5を省略して、第1ギヤ4と第3ギヤ6が直接噛み合っていてもよい。
【0018】
同様に、第4ギヤ11が中空軸3に取り付けられており、第5ギヤ12と噛み合っている。この第5ギヤ12は、軸構造7の上で回転可能であり、遊星歯車機構10のリングギヤ14に接続されている。これらのギヤ11〜13は、第2のギヤ列と呼ばれ得る。
【0019】
変形例として、(上記の変形例と同様に)第5ギヤ12を省略して、第4ギヤ11と第6ギヤ13が直接噛み合っていてもよい。
【0020】
回転トルク源15、好ましくは電気モータは、例えば、太陽歯車16の軸上のより大きい第8ギヤ18に噛み合う、電気モータの軸上のより小さい第7ギヤ17を備える減速ギヤ機構を介して、太陽歯車16に接続されている。
【0021】
遊星歯車機構10と第1〜第6ギヤ4〜6,11〜13のギヤ比の違いは、軸1と中空軸3が同じ速度で回転している時、つまり車両の左右のホイールが同じ速度で回転するとき、電気モータ15が作動しないかあるいは回転しないように計算される。2つのホイールの回転速度の差、つまり軸1と中空軸3の回転速度の差は、電気モータ15によりトルクを加えることで中和される。あるいは、電気モータ15は、2つのホイールの間に望まれる回転速度差を生成するのに用いられ得る。
【0022】
図1〜
図3を用いて説明したトルクベクタリング装置の配置と取り付けが、従来のディファレンシャルとともに
図4に模式的に描かれている。軸1と、フランジ2と、中空軸3が示されている。軸1が1つのサイドギヤ20に接続される一方、第2のサイドギヤ21は第2の駆動ハーフアクスル22に接続されている。サイドギヤ20,21は、ディファレンシャルの枠組み24内に支持された遊星歯車23に接続されている。枠組み24に接続された冠歯車26はプロペラシャフト28上のピニオンギヤ27と噛み合っている。
【0023】
本発明の装置の他のトルクベクタリング装置に比較しての重要な利点は、他の車種ではなく特定の車種に他のどんな変形も必要とすることなく取り付けられる自立したユニットとして組み立てられ得ることである。
【0024】
なお、添付の特許請求の範囲の趣旨内で、種々の変形が可能である。