特許第6041811号(P6041811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041811
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】細菌由来の感染症を治療する抗細菌剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/18 20060101AFI20161206BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20161206BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20161206BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 47/42 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   A61K33/18
   A61P31/00
   A61P31/04
   A61P31/12
   A61K47/42
   A61K47/26
   A61K47/02
【請求項の数】12
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2013-547373(P2013-547373)
(86)(22)【出願日】2011年12月9日
(65)【公表番号】特表2014-502616(P2014-502616A)
(43)【公表日】2014年2月3日
(86)【国際出願番号】KZ2011000019
(87)【国際公開番号】WO2012091534
(87)【国際公開日】20120705
【審査請求日】2014年6月30日
(31)【優先権主張番号】2010/1816.1
(32)【優先日】2010年12月30日
(33)【優先権主張国】KZ
(73)【特許権者】
【識別番号】513164495
【氏名又は名称】“サイエンティフィク センター オブ アンティ−インフェクシャス ドラッグス”ジョイント−ストック カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イリン、アレクサンドル イヴァノヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】クルマノフ、ムラト エセンガリエヴィッチ
【審査官】 井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第01/078751(WO,A1)
【文献】 特表2006−525345(JP,A)
【文献】 KZ15116A(2004.12.15)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 33/00 − 33/44
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
院内感染及び薬剤耐性結核を含む細菌感染疾患を治療するための、タンパク質及び/又はポリペプチド、炭水化物、アルカリ金属、マグネシウム及びアルカリ土類金属の塩と、それらに挿入されたヨウ素から形成されるイオンナノ構造複合体を表し、イオンナノ構造複合体のタンパク質及び/又はポリペプチドが、Phe、Ala、Val、Leu、Ileからなる群から選択される少なくとも1つの鎖末端アミノ酸を含有することを特徴とする、抗細菌剤。
【請求項2】
タンパク質がインターロイキンである、請求項1に記載の抗細菌剤。
【請求項3】
抗細菌剤が、抗生物質耐性細菌を含めた、細菌の抗生物質に対する感受性を増加することを特徴とする、請求項1又は2に記載の抗細菌剤。
【請求項4】
院内感染及び薬剤耐性結核を含む細菌感染疾患の抗生物質治療の効率を増加することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の抗細菌剤。
【請求項5】
抗ウイルス作用を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の抗細菌剤。
【請求項6】
免疫原活性を有し、単球−マクロファージ及び細胞毒性Tリンパ球の活性を増加することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の抗細菌剤。
【請求項7】
骨髄の造血機能を刺激することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の抗細菌剤。
【請求項8】
抗新生物質作用を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の抗細菌剤。
【請求項9】
放射線防護特性を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の抗細菌剤。
【請求項10】
非経口、経口、外用又は他の適用に適した医薬形態で提示されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の抗細菌剤。
【請求項11】
容される濃度、請求項1から5までのいずれか一項に記載の抗細菌剤を含む非医薬組成物の製造のための、前記抗細菌剤の使用。
【請求項12】
炭水化物及びタンパク質とアルカリ金属、マグネシウム及びアルカリ土金属の塩との複合体形成反応、並びにイオン強度5・10−4〜15での複合体へのヨウ素の挿入を含み、当該タンパク質は、Phe、Ala、Val、Leu、Ileからなる群から選択される少なくとも1つの鎖末端アミノ酸を含有するイムノトロピックタンパク質を含み、当該タンパク質の導入が5〜95%のヨウ素挿入後の個別の段階で実施されることを特徴とする、院内感染及び薬剤耐性結核を含む細菌感染疾患を治療するための抗細菌剤の生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤、すなわち医薬に関し、細菌由来の疾患を治療するため、とりわけ、微生物の薬剤耐性菌株により、並びに細菌及びウイルス(混合)感染により引き起こされる疾患の治療に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
現在、病原性細菌を損傷する主な方法及び手段は、細菌、真菌及び原生動物などの感染性病原体の活性を抑制する全ての投薬と組み合わせた抗生物質である。
【0003】
しかし、既知の群の抗生物質に対する感染性病原体の薬剤耐性が高まっているので、新たな抗微生物薬の開発における問題は、その重要性を失っていない。
【0004】
したがって、例えば世界中で、薬剤耐性病原体が原因で結核の発症率が増加しており、死亡率の増加が観察されている。抗結核薬に対する耐性は、調査した35の国及び地域の全てにおいて見出され、この問題が地球規模であることを示している。
【0005】
抗結核薬に対する多重耐性は、現在知られている最も困難な形態の薬剤耐性である。WHOによると、90年代初頭から地球上の異なる地域において、多剤耐性結核の幾つかの大流行が報告されている。
【0006】
ヨウ素分子は、微生物の脂質二重細胞膜を容易に通過し、細胞内に侵入できることが知られている。ヨウ素化合物の抗微生物作用は、アミノ酸(リシン、ヒスチジン、アルギニンなど)のNH基と、またヌクレオチド(アデニン、シトシン、グアニン)と相互作用して、Nヨウ素誘導体を形成するヨウ素(ヨウ素元素、次亜ヨウ素酸、ヨウ素カチオン)の能力に起因している。加えて、システインのSH基の酸化も生じ、タンパク質合成の破壊をもたらす。ヨウ素チロシンのフェノール基との相互作用は、これらのアミノ酸における水素結合の破断をもたらす。不飽和脂肪酸の二重炭素結合に影響を及ぼすと、ヨウ素はそれによって脂質の性質を変える。
【0007】
細胞膜を通って容易に侵入するヨウ素の能力は、主な発症が細胞内構造において生じる感染(ブルセラ病、クラミジオシス(clamidiosis)、肝炎など)においてその適用をより重要にする。
【0008】
ヨウ素、ヨウ化カリウム又はナトリウム、合成水溶性ポリマー、多糖、単糖及びオリゴ糖などの天然ポリマーを以下の比率(g/L):
ヨウ素 6〜10
ヨウ化カリウム 9〜15
合成水溶性ポリマー 2〜4
天然ポリマー(多糖)、単糖及びオリゴ糖 8〜120
水 残部
で含有する、殺菌及び殺ウイルス活性を有する既知の薬剤ヨドミドール(Yodomidol)が存在する(KZ6730B、1998年11月16日)。この薬剤の欠点は、その相対的に高い毒性である。
【0009】
ヨウ素、ヨウ化カリウム又はナトリウム、合成水溶性ポリマー、天然の単糖、オリゴ糖及び多糖と塩化リチウムの混合物を以下の成分比(g/L):
ヨウ素 0.8〜25
ヨウ化カリウム 1.2〜38
塩化リチウム 0.1〜20
合成水溶性ポリマー 0.01〜6
単糖、オリゴ糖及び多糖 8〜400
水 残部
で含有する、抗ウイルス活性を有する既知の殺ウイルス性医薬品が存在する(EP0978289A1、2000年9月2日)。
【0010】
タンパク質及び/又はハロゲン化タンパク質のプール、炭水化物及び/又は炭水化物のハロゲン誘導体、合成水溶性ポリマー、塩化リチウム、ヨウ化カリウム又はナトリウム、ヨウ素、水又は生理食塩水を以下の比率(g/L):
タンパク質及び/又はハロゲン化タンパク質のプール 0.01〜200
炭水化物及び/又は炭水化物のハロゲン誘導体 0.01〜450
合成水溶性ポリマー 0.01〜100
塩化リチウム 0.01〜200
ヨウ化カリウム又はナトリウム 0.01〜300
ヨウ素 0.01〜200
水又は生理食塩水 1Lになる量
で含有する、結核、ブルセラ病、ペスト、肝炎、HIVを含む単一菌及び混合感染の予防及び治療のための既知の殺菌及び殺ウイルス性医薬品が存在する(KZ15116A、2004年12月15日)。
【0011】
殺菌及び殺ウイルス性医薬品は、単官能性及び多官能性リガンド(アニオン、タンパク質、炭水化物、合成水溶性ポリマー)及び酸(ヨウ素、アルカリ金属カチオン)により形成される複雑な物理化学系を表し、これは偽平衡状態にある。この系では、随伴する複合体形成、会合及び解離プロセスが生じる。酸塩基相互作用の一連のプロセス、それに関与する多官能性リガンド(タンパク質、炭水化物、水溶性合成ポリマー)の化学的性質、プロセスにおける異なる分子量のリガンド(例えば、単糖、オリゴ糖及び多糖)の存在は、系における構造形成をもたらし、したがってコロイド系の全ての特性を得る。
【0012】
組成物における医薬ヨウ素の存在は、ヨウ素それ自体の殺菌及び殺ウイルス特性に起因してそれらの特性を増強するばかりでなく、それぞれ個別の各活性物質の相乗効果及び平衡の取れた濃度で作用剤中に一緒に存在する活性物質全ての相乗効果も確実にする。
【0013】
この生成物は、ハロゲン化タンパク質及びハロゲン化炭水化物であるハロゲン誘導体化合物を含有する。
【0014】
0.5〜30重量%のヨウ素、0.2〜14重量%の塩、酸又はそれらのブレンド形態のヨウ化物及び2〜85重量%の、アルキルグルコースエーテル、アルドビオンアミド(aldobionamide)、グリシンアミド、グリセルアミド、グリセログルリポイド(glyceroglulipoid)、脂肪ポリヒドロキシ酸アミド、一般式:RO(RO)b(Z)a[式中、Rは6〜30個の炭素原子の一価有機ラジカルであり、Rは2〜4個の炭素原子を有する二価アルキレンラジカルであり、Zは5〜6個の炭素原子を含有する糖誘導体であり、bは0〜12の自然数であり、aは1〜6の自然数である]のアルキルポリグルコシドを含有する糖類の群から選択される糖界面活性剤を含有するアルキルポリグリコシドの既知のヨウ素複合体が存在する(WO9639839A1、1996年12月19日)。
【0015】
ヨウ素分子とヨウ化カリウムの複合体形成反応を介して固定酵素を生成する既知の方法が存在し(RU2157405C2)、複合体形成反応の結果、結合ヨウ素を含有するタンパク質が生成され、溶液が固相状態になり、すなわち水不溶性複合体が形成される。固相状態は、数マイクロメートルから数十又は数百ミクロンのサイズ範囲の多分散粒子の形成により特徴付けられ、微生物基質の分子と相互作用することができるチモフォールの大きな総表面積を考慮すると、粒子は固定酵素の抗微生物作用を確実にする。複合体の一部であるヨウ素は、殺微生物効果を提供する。
【0016】
少なくとも1つの消毒薬を既知の方法で得られる粒子形態の支持体と組み合わせて含有し、担体が、パルスレーザーを使用してポリマーで被覆された1〜30ミクロンのサイズ範囲である少なくとも1つのリポソーム調製物、微小球試料、ナノ粒子調製物、大型多孔質粒子調製物又は分子調製物を含有する、ハロゲンを含む消毒剤を下気道に投与するための既知の薬剤が存在する(特許RU2212884C2)。
【0017】
全ての上記の既知の特許において、著者たちは、所定の構造及び特性を有する複合化合物を合成する作業も、溶液から複合化合物を放出し、これらの組成及び物理化学特性を決定する作業も記載しておらず、殺生物特性を有する炭水化物及びタンパク質との複合ヨウ素化合物を、医薬品として使用することを困難にしている。更に、適切な投与形態を開発することは、物理的及び化学的特性、組成により特徴付けられる、抗細菌剤としての複合ヨウ素化合物の特性と品質の特定のセットがないと妨げられる。
【0018】
近年、炭水化物とマグネシウムやカルシウムの塩及び他の複合体形成剤との複合化合物の構造の探求に専念した幾つかの研究が、科学文献に現れている(O.Nimz,K.Geβler,I.Uson,W.Saenger//Carbohydrate Research 2001.V.336.P.141〜153.;M.Noltemeyer,W.Saenger//JACS 1980.V.102:8.9.P.2710.;M.Noltemeyer,W.Saenger//Nature.1976.V.259.26.P.629)。
【0019】
組成にマグネシウム、カリウム、カルシウム、リチウムの組成イオン、すなわち金属塩を有するような整数の酵素の結晶構造、が確立されている。(Y.Goldgur,F.Dyda,A.B.Hickman,T.M.Jenkins,R.Craigie,D.R.Davies//Proc.Natl.Acid.Sci USA 1998.V.95.No16.P.9150〜9154.;F.Dyda,A.B.Hickman,T.M.Jenkins,A.Engelman,R.Craigie,D.R.Davies//Science.1994.V.266.P.1981〜1986)。
【0020】
同時に、これらの化合物の作用機構の実現に適するように適応させたナノスケール構造を有し、したがって適応された殺生物特性を有するヨウ素配位化合物の意図的な合成を伴う研究がない。
【0021】
したがって、本発明の目的は、院内感染性疾患及び薬剤耐性TBを含む細菌由来の疾患の治療のために抗細菌剤(ABA)を作り出すことである。
【0022】
本発明の追加の目的は、細菌由来の感染症を治療する抗細菌剤及びABAに基づいた薬剤の調製方法を開発することである。
【0023】
本発明の技術的な結果は、免疫適格細胞の活性化を介したインビボでのABAの効率の増加である。
【発明の概要】
【0024】
技術的な結果は、開発されたABAを介して達成され、これはタンパク質及び/又は炭水化物、金属塩と、それらに挿入されたヨウ素から形成されるイオンナノ構造複合体(INSC)を表し、抗微生物剤の規則正しい構造及び必要なイムノトロピック(immunotropic)作用を得るためには、複合体形成反応が4段階で実施され、第1は、炭水化物及びタンパク質と金属塩の相互作用であり、第2工程は、ヨウ素の必要量の5〜95%を、複合体形成反応の第1段階で形成された複合体に特定のイオン強度で挿入することであり、第3段階は、電子供与官能基を有する少なくとも1つの鎖末端アミノ酸及び必要な免疫反応の原因となる特定の部位を含有するタンパク質を複合体形成反応に導入することであり、第4段階は、ヨウ素の残りの量を抗細菌剤に挿入することである。
【0025】
加えて、本発明によると、弱い抗腫瘍活性、弱い放射線防護効果を有するという事実にもかかわらず、骨髄の造血機能を回復する独特の能力とともに、腫瘍の複合薬剤療法に伴う化学及び放射線療法の可能性のある有害作用を防止する大きな実用的な重要性がありうるABAが提案された。
【0026】
別の技術的な結果は、ABAの一部であるタンパク質及び/又はポリペプチドが、免疫原活性を有し、電子供与官能基を有する少なくとも1つの末端アミノ酸を含有するという事実により達成され、これらは、ABAが体内に投与されると、疎水性及び電子供与官能基を有する鎖末端アミノ酸を介して免疫適格細胞のレセプターを刺激及び同時刺激する領域に固着し、これらのタンパク質の特定の部位は、防御の第一線及び第二線の免疫適格細胞の単球−マクロファージ及び細胞毒性Tリンパ球を活性化する。
【0027】
更に、本発明は、クレームされたABAの医薬形態を含む。
【0028】
特定の提案される用途に応じて、本発明の医薬組成物は、液剤、懸濁剤、非経口組成物、軟膏剤、クリーム剤、エアゾール剤、粉末剤、錠剤、カプセル剤又は許容される他の投与形態の剤形で調製することができ、これらは、特定の用量で投与され、適切に適用又は混合される。医薬製剤は、
a)潜在的な製剤では、充填剤、特に発熱物質不含の水、緩衝剤又は通常生理食塩水;
b)軟膏剤、クリーム剤、エアゾール剤では、媒質、特に植物又は合成油、ラノリン、ペトロラタム又は高分子アルコール;
c)錠剤又はカプセル剤では、希釈剤、特にラクトース、結合剤、潤滑物質(例えば、ステアリン酸)並びに分解生成物(例えば、トウモロコシデンプン)
を含むことができる。
【0029】
本発明の全ての医薬製剤を、抗細菌剤(例えば、抗生物質)、抗ウイルス剤、抗腫瘍剤、免疫調節剤及び他の作用物質と組み合わせることができ、組み合わせた場合、これらがクレームされた医薬組成物と相乗効果を提供する又は医薬組成物に対して不応性であるとしても、組み合わせることにより治療スペクトルを広げる。
【0030】
更に、本発明によると、ABAを、特定の条件下で観察に付される非薬用作用物質(BAA、食品添加物、飼料添加剤、ローション、練り歯磨き粉、チューインガムなどのパーソナルケアプロダクト成分など)として使用することができる。そのような条件には、例えば、これらの成分のみであり、国際食品規格に規定された濃度のみでの組成物における使用が含まれる。
【0031】
本発明の複合化合物に基づいた非薬用調製物は、免疫調節効果を有し、季節性インフルエンザ、ARVI、ヨウ素欠乏症などの感染症の防止、並びにアダプトゲン(adaptogen)に使用することができる。
【0032】
本発明は、炭水化物及び/又はタンパク質の存在下、特定のイオン強度のアルカリ及びアルカリ土類金属の塩溶液において、ヨウ素挿入のプロセス中に複合体が固相に放出されるという、驚くべき事実に基づいている。
【0033】
本発明の基礎にある別の驚くべき事実は、実験データから確立されるように、本発明が、特定の免疫機能を有する部位を含有するタンパク質を抗微生物剤組成物に導入できるということである。
本願発明は以下のとおりである。
[発明1]
院内感染及び薬剤耐性TBを含む細菌感染疾患を治療するための、タンパク質及び/又はポリペプチド、炭水化物、アルカリ及びアルカリ土類金属塩と、それらに挿入されたヨウ素から形成されるイオンナノ構造複合体を表し、イオンナノ構造複合体のタンパク質及び/又はポリペプチドが、電子供与体官能基を有する少なくとも1つの鎖末端アミノ酸を含有することを特徴とする、抗細菌剤。
[発明2]
インターロイキンがタンパク質として使用され、鎖末端アミノ酸が、Phe、Ala、Val、Ala、Leu、Ileなどであることを特徴とする、発明1に記載の抗細菌剤。
[発明3]
抗微生物剤が、抗生物質耐性細菌を含めた、細菌の抗生物質に対する感受性を増加することを特徴とする、発明1又は2に記載の抗細菌剤。
[発明4]
院内感染及び薬剤耐性TBを含む細菌感染疾患の抗生物質治療の効率を増加することを特徴とする、発明1、4に記載の抗細菌剤。
[発明5]
抗ウイルス作用を有することを特徴とする、発明1から5までのいずれか一に記載の抗細菌剤。
[発明6]
免疫原活性を有し、単球−マクロファージ及び細胞毒性Tリンパ球の活性を増加することを特徴とする、発明1から6までのいずれか一に記載の抗細菌剤。
[発明7]
骨髄の造血機能を刺激することを特徴とする、発明1から5までのいずれか一に記載の抗細菌剤。
[発明8]
抗新生物質作用を有することを特徴とする、発明1から5までのいずれか一に記載の抗細菌剤。
[発明9]
放射線防護特性を有することを特徴とする、発明1から5までのいずれか一に記載の抗細菌剤。
[発明10]
INSCが以下の式:[{(Ln(MeI3)+)y[Me(Lm)I]+x}(Cl−)y+x+k]を有し、M=30〜300kDaであることを特徴とする、発明1から6までのいずれか一に記載の抗細菌剤。
[発明11]
非経口、経口、外用又は他の適用に適した医薬形態で提示されることを特徴とする、発明1から5までのいずれか一に記載の抗細菌剤。
[発明12]
特定の許容される濃度の成分において非薬剤であることを特徴とする、発明1から5までのいずれか一に記載の抗細菌剤。
[発明13]
炭水化物及びタンパク質と金属塩の複合体形成反応、並びにイオン強度5・10−4〜15での複合体へのヨウ素の挿入を含み、イムノトロピックタンパク質の導入が5〜95%のヨウ素挿入後の個別の段階で実施されることを特徴とする、発明1に記載の抗細菌剤の生成方法。
また、以下を特許請求する。
[発明1a]
院内感染及び薬剤耐性TBを含む細菌感染疾患を治療するための、タンパク質及び/又はポリペプチド、炭水化物、アルカリ及びアルカリ土類金属塩と、それらに挿入されたヨウ素から形成されるイオンナノ構造複合体を表し、イオンナノ構造複合体のタンパク質及び/又はポリペプチドが、電子供与体官能基を有する少なくとも1つの鎖末端アミノ酸を含有することを特徴とする、抗細菌剤。
[発明2a]
インターロイキンがタンパク質として使用され、鎖末端アミノ酸が、Phe、Ala、Val、Ala、Leu、Ileなどであることを特徴とする、発明1aに記載の抗細菌剤。
[発明3a]
抗微生物剤が、抗生物質耐性細菌を含めた、細菌の抗生物質に対する感受性を増加することを特徴とする、発明1a又は2aに記載の抗細菌剤。
[発明4a]
院内感染及び薬剤耐性TBを含む細菌感染疾患の抗生物質治療の効率を増加することを特徴とする、発明1aから3aまでのいずれか一に記載の抗細菌剤。
[発明5a]
抗ウイルス作用を有することを特徴とする、発明1aから4aまでのいずれか一に記載の抗細菌剤。
[発明6a]
免疫原活性を有し、単球−マクロファージ及び細胞毒性Tリンパ球の活性を増加することを特徴とする、発明1aから5aまでのいずれか一に記載の抗細菌剤。
[発明7a]
骨髄の造血機能を刺激することを特徴とする、発明1aから5aまでのいずれか一に記載の抗細菌剤。
[発明8a]
抗新生物質作用を有することを特徴とする、発明1aから5aまでのいずれか一に記載の抗細菌剤。
[発明9a]
放射線防護特性を有することを特徴とする、発明1aから5aまでのいずれか一に記載の抗細菌剤。
[発明10a]
INSCが以下の式:[{(Ln(MeI3)+)y[Me(Lm)I]+x}(Cl−)y+x+k]を有し、M=30〜300kDaであることを特徴とする、発明1aから6aまでのいずれか一に記載の抗細菌剤。
[発明11a]
非経口、経口、外用又は他の適用に適した医薬形態で提示されることを特徴とする、発明1aから5aまでのいずれか一に記載の抗細菌剤。
[発明12a]
特定の許容される濃度の成分において非薬剤であることを特徴とする、発明1aから5aまでのいずれか一に記載の抗細菌剤。
[発明13a]
炭水化物及びタンパク質と金属塩の複合体形成反応、並びにイオン強度5・10−4〜15での複合体へのヨウ素の挿入を含み、イムノトロピックタンパク質の導入が5〜95%のヨウ素挿入後の個別の段階で実施されることを特徴とする、発明1aに記載の抗細菌剤の生成方法。
また、以下も本願発明である。
[発明1b]
院内感染及び薬剤耐性結核を含む細菌感染疾患を治療するための、タンパク質及び/又はポリペプチド、炭水化物、アルカリ金属、マグネシウム及びアルカリ土類金属の塩と、それらに挿入されたヨウ素から形成されるイオンナノ構造複合体を表し、イオンナノ構造複合体のタンパク質及び/又はポリペプチドが、Phe、Ala、Val、Leu、Ileからなる群から選択される少なくとも1つの鎖末端アミノ酸を含有することを特徴とする、抗細菌剤。
[発明2b]
タンパク質がインターロイキンである、発明1bに記載の抗細菌剤。
[発明3b]
抗細菌剤が、抗生物質耐性細菌を含めた、細菌の抗生物質に対する感受性を増加することを特徴とする、発明1b又は2bに記載の抗細菌剤。
[発明4b]
院内感染及び薬剤耐性結核を含む細菌感染疾患の抗生物質治療の効率を増加することを特徴とする、発明1bから3bまでのいずれか一項に記載の抗細菌剤。
[発明5b]
抗ウイルス作用を有することを特徴とする、発明1bから4bまでのいずれか一項に記載の抗細菌剤。
[発明6b]
免疫原活性を有し、単球−マクロファージ及び細胞毒性Tリンパ球の活性を増加することを特徴とする、発明1bから5bまでのいずれか一項に記載の抗細菌剤。
[発明7b]
骨髄の造血機能を刺激することを特徴とする、発明1bから5bまでのいずれか一項に記載の抗細菌剤。
[発明8b]
抗新生物質作用を有することを特徴とする、発明1bから5bまでのいずれか一項に記載の抗細菌剤。
[発明9b]
放射線防護特性を有することを特徴とする、発明1bから5bまでのいずれか一項に記載の抗細菌剤。
[発明10b]
非経口、経口、外用又は他の適用に適した医薬形態で提示されることを特徴とする、発明1bから5bまでのいずれか一項に記載の抗細菌剤。
[発明11b]
組成物による、許容される濃度において非薬剤としての、発明1bから5bまでのいずれか一項に記載の抗細菌剤の使用。
[発明12b]
炭水化物及びタンパク質とアルカリ金属、マグネシウム及びアルカリ土類金属の塩との複合体形成反応、並びにイオン強度5・10−4〜15での複合体へのヨウ素の挿入を含み、Phe、Ala、Val、Leu、Ileからなる群から選択される少なくとも1つの鎖末端アミノ酸を含有するイムノトロピックタンパク質の導入が5〜95%のヨウ素挿入後の個別の段階で実施されることを特徴とする、院内感染及び薬剤耐性結核を含む細菌感染疾患を治療するための抗細菌剤の生成方法。
【0034】
クレームされた発明は、以下の図面により例示される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】調製物FS−1の異なる結晶構造の顕微鏡写真を表す。
図2】調製物FS−1の異なる結晶構造の顕微鏡写真を表す。
図3】調製物FS−1の異なる結晶構造の顕微鏡写真を表す。
図4】調製物FS−1の異なる結晶構造の顕微鏡写真を表す。
図5】イオン強度に対する三ヨウ化物イオンと炭水化物のカルシウム複合体の収率の依存性を示す。
図6】イオン強度に対する三ヨウ化物イオンと炭水化物のマグネシウム複合体の収率の依存性を示す。
図7】炭水化物−タンパク質−LiCl塩、MgCl塩の系における安定した配位化合物の形成を示す。
図8】ヨウ素分子とハロゲン化リチウム、炭水化物及びタンパク質の側鎖アミノ酸残基との相互作用を例示する構造を示す。
図9】ABAサブユニット形成のダイアグラムを表す。
図10図10a−iは、実施例1〜9の化合物の顕微鏡写真を表す。
図11】実施例5(FS−1)の化合物の顕微鏡写真を表す。
図12】1)800Rの照射線量、2)照射の30分前のHRP経口投与(1.0ml)に対する800Rの照射線量での照射後、30日間にわたる対照群及び実験群におけるラットの生存率の動力学を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
発明の実施可能性をサポートするデータ
上記から続けると、本発明によると、抗細菌剤組成物における免疫原性タンパク質の特性の保存を確実にするため、調製方法には複合体形成の第3及び第4の段階が補足される。
【0037】
本発明の文脈において、成分、これらの相互関係及びイオン強度間隔は、ABA合成において必須の特徴である。
【0038】
ABA組成物及び構造を決定する全ての特質が、処方目標を達成するために必要であり、十分である。除外できるもの又は別のものに代えることができるものはなく、そうでなければ技術的な結果が得られない。ABAを形成する物質の定性的な組成及び成分の定量的な比率の両方、並びにイオン強度間隔の選択は、構成成分の組成に応じた、複合体形成の規則性及びABA抗細菌活性を決定する数多くの実験データに基づいた。
【0039】
物質の定性的組成は、抗細菌効果をもたらす生物学的有意性及び化学的特性に基づいて選択された。
【0040】
本発明の著者によりリガンドとして選択された炭水化物は、極めて重要な部類の天然化合物である。生物学及び医学において、炭水化物の価値は、動物生体において指定されている支配的な役割及びそれらの機能の複雑さからなる。炭水化物は、高分子粒子の形態で大部分の生化学プロセスに関与するが、多くの体液は単糖及びオリゴ糖を含有する(Compressive Organic Chemistry/E.Haslam編.V.5.Biological Compounds Pergamon Press,19)。
【0041】
ヨウ素と炭水化物及び/又はタンパク質及び金属塩との複合化合物を表すABAの主な特徴は、末端アミノ酸の電子供与官能基と部位の特定のセットを有するタンパク質の存在である。
【0042】
タンパク質は、ほぼ全ての生物学的プロセスにおいて主要な役割を果たし、細胞において生物学的反応の進路を決定し、物質の輸送及びこれらの蓄積などの他の多様な機能に関与する。
【0043】
本発明は、低分子ペプチド及びこれらの構成モノマーも含む。
【0044】
タンパク質の輸送の役割は極めて重要であり、それは、膜を通過する場合、タンパク質に結合している拡散分子が化学的に修飾されず、他の種類の分子と結合しないからである。仲介又は単純化された膜輸送プロセスは、飽和動態学(すなわち、輸送系は、輸送される溶質により飽和されうる)及び輸送された物質に対する特異性によって特徴付けられる。
【0045】
仲介された輸送の可能性は、ヨウ素分子を含む特定の基質に可逆的に結合することができるタンパク質に起因する。これらの輸送タンパク質分子は、異なる名称:輸送系、輸送体、担体又は転移酵素を有する。
【0046】
表1は、アルカリ及びアルカリ土類金属の塩により作り出された異なるイオン強度の溶液で炭水化物、タンパク質及びヨウ素から合成されたABA組成物を示す。炭水化物:タンパク質(ポリペプチド)の比に応じた幾つかの化合物(抗細菌剤)の結晶構造が、光学及び電子写真で示される(図1〜4)。
【0047】
写真から分かるように、ABAは、ナノ結晶(図1:1Aは400×の拡大、1Bは40000×の拡大)、かなり大きな(0.1mm)微結晶(図2:2Aは5000×の拡大、2Bは12000×の拡大)、単結晶(図3)又は多様なサイズの結晶(図4)を形成することができる。
【0048】
結晶のサイズは、他の条件が全て同じであるとすると(溶液のイオン強度)、タンパク質(ポリペプチド)に対する炭水化物の含有量が増加すると減少し、また、ヨウ素:炭水化物及び/又はタンパク質(ペプチド)の比が増加すると減少する。
【0049】
クレームされた方法によると、ABA合成の反応は、複合体形成反応と一致して進行する。第1段階では、炭水化物(L)、タンパク質(L)、ポリマー(L)並びにカルシウム及びマグネシウムカチオンを含有する塩の複合体の形成が生じる。
【数1】
【0050】
ヨウ素挿入のために調製された溶液では、ヨウ素とヨウ化カリウムの複合体形成が生じる。
【数2】
【0051】
上記の溶液を混合する際ヨウ素及び/又はポリヨウ化物イオンの挿入が生じ、すなわち、第1溶液及び第2溶液の両方において形成された複合体粒子の間で相互作用が生じる。このプロセスにおいて、供与体−受容体特性に従って、ABA(複合体)を構成する物質の再分配が生じる。
【数3】
【0052】
反応(3)の結果により生成される三ヨウ化物イオンも、ヨウ素分子と同じように強力な複合体形成剤である。
【数4】
【0053】
ABA産出量:
【数5】
【0054】
最終生成物の産出量は、反応の物理化学的パラメーター(表2、3)に応じて決まる。
【0055】
予想外の事実は、反応媒質の特定のイオン強度でABA産出量が100%に近づくことであった。
【0056】
推定平衡の計算の結果によると、ABA産出量は、イオン強度が増加すると変化(増加)する(図5、6)。マグネシウムイオンを含有する複合体において観察されるイオン強度についてとりわけ有意な効果があり(図6)、これは、ピアソンによるより硬い酸としてのこのイオンの特性に起因しうる[Pearson R.G.,Journal ACS,1963,85,cl.3533.Pearson R.G.Journal Chemical Education,1968,45,cl.643.Pearson R.G.,Chemical Communication,1968,cl.65,Gehlen H.Z.,Physical chemistry,1954,203,125.Finston H.Z.,Rychtman A.C.,A new view of current acid−base series.N.Y.,Wile,1982]。
【0057】
更により驚くべきことは、遠心分離クロマトグラフィー及び/又は乾燥の方法を使用する抽出のプロセスにおいて、イオンポリマー複合体を表すABA結晶が形成されることであり、その上単結晶の組成は十分に確定し、一定であり、このことは個別のABA化合物の形成を示している。ABA構造及びこの構造形成のための一連の作用は、本発明によってクレームされた抗細菌剤調製の方法によると、以下(図7)のように表すことができる。この図では、青色の球が炭素原子であり、暗青色が窒素原子であり、黄色が塩素原子であり、赤色が酸素原子であり、黒色がマグネシウム原子であり、褐色がリチウム原子である。構造体Iでは、ΔE=−106.01kcal/molであり、構造体IIでは、ΔE=−79.12kcal/molであり、構造体IIIでは、ΔE=−88.86kcal/molである。
【0058】
炭水化物−タンパク質−アルカリ又はアルカリ土類金属の塩系の複合ポリイオン化合物の形成は、量子化学計算、並びにUV、フーリエ変換IR分光法、電子及び光学顕微鏡法、量子化学計算データを介して確認される。
【0059】
最初の量子化学3−21G**方法の枠組み内で、構造体I〜IIIの計算が実施された(図7)。計算では、炭水化物をエタノールで模擬し、タンパク質骨格をアミドで模擬し、最も供与体活性な酸残基の1つであるヒスチジンをイミダゾール(imidozol)で模擬した。ΔE複合体形成エネルギーを以下のように計算した:
ΔE=E(複合体)−(E(LiCl)+E(エタノール)+E(アミド又はイミダゾール)
【0060】
構造体Iでは、ΔE=−106.01kcal/molであり、構造体IIでは、ΔE=−79.12kcal/molであり、構造体IIIでは、ΔE=−88.86kcal/molである。計算は、タンパク質及び炭水化物の供与体活性基によるLiCl塩、MgCl塩の配位が、エネルギー的に好ましいことを示した。
【0061】
系へのヨウ素分子の挿入では、複合体IV〜VIIが形成され、ここでヨウ素分子は、タンパク質及びハロゲン化リチウムにより配位され、ハロゲン化リチウムは炭水化物により配位される。
【0062】
ヨウ素分子とハロゲン化リチウム、炭水化物及びタンパク質の側鎖アミノ酸残基との複合体の安定性の計算は、系へのヨウ素分子挿入のプロセスにおいて、複合体が形成される(IV〜VII 図8)ことを示唆し、ここでヨウ素分子はタンパク質により配位され、ハロゲン化リチウム及びハロゲン化リチウムは炭水化物により配位される。
【0063】
表4は、複合体の安定化エネルギーのための配位結合の長さ及びΔEを示す。
【0064】
ΔEは、以下のように計算される:
ΔE=E(複合体)−(E+E) (9)
ここで、Eは総複合体エネルギーであり、Eは総LiClOHCエネルギーであり、Eは、アミノ酸残基とのI複合体の総エネルギーである。
【0065】
表4から分かるように、最も安定した複合体は、アルギニンの参加により形成され(構造体VII)、この場合、I−I結合は破断されており、そのような複合体では、ヨウ素分子の特性は保存されない。ヨウ素分子とアルギニンの複合体(−18.17kJ/mol)と、アデノシンの複合体(−10.93kcal/mol)及びグアニンの複合体(−11.50kJ/mol)との安定化エネルギーの比較は、アルギニンがABA組成物に含まれる場合、I分子が製剤の構造にそのまま残存して、DNAヌクレオチドと複合体を形成しないことを示唆している。
【0066】
複合体I〜IIIでは、I−I結合は破断せずに弱まるだけである。アルギニンに次いで最も安定した複合体は、タンパク質アミドフラグメントのカルボニル基の参加により得られる。アミドフラグメントは、ポリペプチド骨格の一部であり、アスパラギン及びグルタミンのアミノ酸残基の一部である。
【0067】
最終生成物の産出量は、反応の物理化学的パラメーターΚrev、化学量論係数n及び試薬の濃度によって決まる。
【0068】
UV、フーリエ変換IR分光法、電子及び光学顕微鏡法、量子化学計算のデータに基づいて、本発明によりクレームされたABA調製方法によるABAの構造及びこの構造の形成における一連の作用を、以下(図9)のように概略的に表すことができる。
【0069】
ABAサブユニット(分子)の形成は、286〜2860kg/cmの圧力に相当する0.015から10.2までの範囲のイオン強度で影響を受けた後に生じる。そのような圧力(イオン強度)の影響を受けた後、炭水化物及びタンパク質の巨大分子は、複合体形成に関与しない末端アミノ酸トリプレットがコアタンパク質及び/又はポリペプチド骨格鎖から外側に向かって配向されるように詰め込まれ、電子供与体官能基を含有する鎖末端アミノ酸を介して細胞膜に抗細菌剤を固着させることを実施し、このことは、下記に提示されているABAイムノトロピック作用についてのデータからまさに明白である。
【0070】
クレームされたABAの調製方法は、以下の通りである:
炭水化物試料を、水、ジオキサン他などの適切な溶媒に溶解する。この溶液において、複合化合物を得るために、金属塩及び塩化ナトリウムの特定の試料を加えて、適切なイオン強度の溶液を生じる(生成物A)。
【0071】
タンパク質試料を、水、ジオキサン他などの適切な溶媒に溶解する。この溶液において、複合化合物を得るために、金属塩及び塩化ナトリウムの特定の試料を加えて、適切なイオン強度の溶液を生じる(生成物B)。
【0072】
結晶性ヨウ素又はヨウ素及びヨウ化カリウムの試料を、クロロホルム、ヘキサン他などの適切な溶媒に溶解し、溶液を、ヨウ素が完全に溶解するまで撹拌する(生成物C)。
【0073】
次に生成物A及びBの混合物に、70%の生成物Cを、撹拌しながら少量ずつ加える。反応混合物を42÷43℃で1時間撹拌した後、電子供与体官能基を有する少なくとも1つの末端アミノ酸を含有する特定のイムノトロピック機能のタンパク質を溶液に加え、最終30%ヨウ素挿入を、残りの30%の生成物Cの少量ずつの添加により実施する。得られる抗細菌剤(ABA)(ヨウ素と炭水化物及び/又はタンパク質及び金属塩との複合化合物)を、適切な方法を使用して抽出し、乾燥する。この抗細菌剤に基づいた薬剤は、既知の方法を使用して、経口投与用の液剤、非経口使用の液剤、錠剤及びカプセル剤の剤形で調製した。
【0074】
抗細菌剤の分析は、色彩標示、電位差滴定(Sartorius Professional Meter PP−50)、キャピラリー電気泳動(Agilent Technologies CE3D,USA)、フーリエ変換による振動(IK)分光法(Thermo Electron Corporation Nicolet 6700)、紫外及び可視スペクトルでの電子顕微鏡法(PerkinElmer Lambda 35)により実施した。
【0075】
複合化合物の顕微鏡法は、走査電子顕微鏡Quanta 200i 3D(FEI Company,USA)により実施した。
【0076】
生成物の細胞毒性は、37℃で5%COを含有する雰囲気下でインキュベートした96ウエルプレートにおいて、マイクロメソッドによって、単層継代接種細胞培養物RD、MDCK、MRC−5、懸濁培養物のMT−2及びH9で顕微鏡法により、MTT試験を使用してインビトロで決定した(表5)。
【0077】
MRSA及びMSSAの臨床分離菌、並びに黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC43300及び黄色ブドウ球菌ATCC29213の参考菌株に対するABAの最小阻止濃度(MIC)の決定は、培養培地において段階希釈法により実施した[Clinical Laboratory Standards Institute,Document M7−A7.好気的に増殖する細菌における希釈抗微生物剤感受性試験の方法(Methods for dilution antimicrobial susceptibility tests for bacteria that grow aerobically);Approved standard−7th Edition,Wayne,Pa:Clincal Laboratory Standards Institute,2006](表6)。
【0078】
MRSA及びMSSAの臨床分離菌、並びに黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC43300及び黄色ブドウ球菌ATCC29213の参考菌株に対する、抗生物質とのABAの相乗作用の研究は、チェッカーボード(Checkerboard)法により実施した[Eliopoulos G及びMoellering R.抗微生物剤の組合せ(Antimicrobial combinations).In Antibiotics in Laboratory Medicine,1996,4rd edn(Lorian,V.,Ed.),Pcl.331〜396.Williams and Wilkins Co.,Baltimore,MD,USA]。
【0079】
時間−殺菌(Time-Kill)法による相乗作用の決定は、MRSA ATCC43300の対照菌株に対して実施した[National Committee for Clinical Laboratory Standards,Document M26−A.抗微生物剤の殺菌活性を決定する方法(Methods for Determining Bactericidal Activity of Antimicrobial Agents);Approved Guideline Wayne,Pa:National Committee for Clinical Laboratory Standards,1999]。
【0080】
ABA FS−1の抗マイコバクテリア効果は、薬剤を含有しない培地及び0.1μg/mlの濃度の第一選択薬剤であるイソニアジドを含有する培地における菌株の増殖と比較した、異なる濃度の生成物の存在下での濃縮液体培地Middlebrook 7H9における結核菌(M.tuberculosis)H37Rv、結核菌MS−115及びウシ型結核菌(M.bovis Bovinus)のマイコバクテリア菌株の増殖動力学に基づいて研究した。試験は3回繰り返した。増殖検出は、特別のMGIT管中のBactec MGIT 960(Becton Dickenson,USA)の培養物で自動化増殖記録系を使用して実施した。マイコバクテリア培養物の増殖検出は、Epicenterソフトウエア(Becton Dickenson,USA)を使用して毎時実施した。
【0081】
実施例5(FS−1)においてABAから作製した生成物の抗結核効果を研究するため、雌の白モルモットのガス産生性感染モデルを使用した。接種は、肺1つあたり150CFUの結核菌H37Rvの用量でエアゾールチャンバ「GlasCol」において実施した。
【0082】
FS−1の抗結核効果を研究するため、Dunkin Hartley系モルモットを使用した。、動物1匹あたり1ml中に約307〜692個の結核菌H37細菌体を含有する懸濁剤0.5mlによって筋肉内接種した。
【0083】
インフルエンザウイルスA/FPV/Waybrige/78/H7N7及び単純ヘルペスウイルス菌株「Victory」に対するインビトロでのABA抗ウイルス作用の決定は、継代接種したMDCK及びRD細胞培養物のマイクロメソッドを使用して実施した。物質を、最大許容濃度(MTC)の1/2、1/4、1/8、1/16に等しい濃度で加えた。
【0084】
ヒト免疫不全ウイルスHIV−1(LAI)に対するFS−1抗ウイルス作用の研究は、参照物質としてアジドチミジンを用いて、細胞培養物MT−2(HTLV−1ウイルスで形質転換されたヒトTリンパ芽球様細胞)において実施した。
【0085】
ウイルス含有材料の供給源は、ヒト免疫不全ウイルスHIV−1菌株(LAI)で慢性的に感染させたN9/HTLV−IIIB系細胞の培養液であった。
【0086】
Ames試験におけるFS−1の突然変異誘発活性の評価は、代謝活性化を有する及び代謝活性化を有さないサルモネラ・チフィムリウム(Salmonella thyphymurium)の4つの突然変異誘発性(ヒスチジンの栄養要求)菌株:TA98、TA100、TA102及びTA1535で実施した。
【0087】
コメットアッセイにおけるFS−1のDNA損傷活性の研究は、マウスリンパ腫細胞系L5178Y及びヒト肝細胞癌細胞系HepG2においてインビトロで実施した。
【0088】
ABAの細胞遺伝学的活性の研究は、哺乳類の骨髄白血球の染色体異常を考慮して、マウスにおいてインビボで実施した。
【0089】
ABAの細胞遺伝学的活性の研究は、マウスの骨髄細胞の多染性及び正染性赤血球において小核試験を使用してインビボで実施した。
【0090】
FS−1を投与したときの哺乳類における精子の優位致死突然変異の研究を、マウスにおいてインビボで実施した。
【0091】
多剤耐性(MDR)結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の博物館及び臨床分離菌を含む病原性微生物に対するABAの有効性を例示する本発明の記載に提示されている例の大部分は、実施例5(FS−1)のABAに基づいた薬剤に属するが、これらに限定されない。
【0092】
薬剤のABA FS−1の放射線防護特性を研究する実験は、体重190〜200gの白色ラット及び体重22〜25gの白色マウスで実施した。照射実験では、動物を、800R(LD50に近い放射線量)の線量で治療用X線装置RUM−17(180kV、10mA、フィルター0.5mm Cu+1.0 Al、焦点距離−40cm、放射線量率−178R/分)の単一で均一の放射線に曝露した。
【0093】
ABA FS−1による骨髄抑制の誘導は、[Galoyan A.A.,Korochkin L.I.,Rybalkina E.J.,Pavlova G.V.,Saburina I.N.,Zaraiski E.I.,Galoyan N.A.,Davtyan T.K.,Bezirganyan K.B.,Revishchin A.V.視床下部プロリン豊富ポリペプチドは骨髄コロニー形成細胞繁殖及び間質前駆細胞分化を増強する(Hypothalamic proline−rich polypeptide enhances bone marrow colony−forming cell proliferation and stromal progenitor cell differentiation)//Cell Transplantation.−2008.−Vol.17.−P.1061〜1066]の方法により実施した。
【0094】
動物の末梢血及び骨髄の試料採取は、[Bezirganyan KB,Davtyan TK,Galoyan AA 視床下部プロリン豊富ポリペプチドは造血を調節する(Hypothalamic proline rich polypeptide regulates hematopoiesis)//Neurochem.Res.−2010.−Vol.35.−CL.917〜924.Gershanovich M.L.,Paikin M.D.悪性疾患の対症治療(Symptomatic treatment of malignancies).2nd ed.−Moscow:Medicine,1986.−285p.]の方法により実施した。
【0095】
骨髄抑制の評価は、自動化血液学分析器Celly v2.20、Hycel Diagnosticsを使用して末梢血における白血球、リンパ球及び単球の絶対的及び相対的含有量をカウントすることにより実施した。
【0096】
骨髄の造血機能の回復は、顆粒球−単球コロニー形成(CFU−GM)前駆骨髄細胞の数を決定することにより、クローン原性試験[Bezirganyan K.B.,Davtyan T.K.,Galoyan A.A.視床下部プロリン豊富ポリペプチドは造血を調節する(Hypothalamic proline rich polypeptide regulates hematopoiesis)//Neurochem.Res.−2010.−Vol.35.−CL.917〜924]を使用して推定した。この目的のために、骨髄細胞は、メチルセルロース及び増殖因子の前駆細胞(幹細胞因子、GM−CSF及びIL−3)を含有する培地Methocult(商標)GF R3774、StemCell Technologies Inc(カタログ番号03774)で培養した。
【実施例】
【0097】
実施例1 FS−1.1
ABA合成を、実験室用反応器D−55122 Mainz、RuhrgefaB 2L型、QVF ENGINEERING GMBHにおいて一定の撹拌の後に実施する。温度を、サーモスタット「HUBER」−Ministat 230 CC2の使用により維持する。130gの炭水化物を500mlの水に50℃で溶解する。更に、100mlの水に溶解した3.0gの塩化ナトリウム及び1.98mgの塩化カルシウムを加える。混合物を十分に撹拌し、43℃に冷却する(生成物A)。
【0098】
5.0gのアルブミンを150mlの水に溶解し、次に3.96gの塩化リチウム、8.4gの塩化マグネシウム及び2.0gの塩化ナトリウムを加える(生成物B)。135mlの得られた溶液を反応器に注ぐ。反応体混合物を20分間撹拌し、その後、溶液温度を25℃に低減する。
【0099】
0.82gのI及びи 1.2gのヨウ化カリウムを100mlの水に溶解する(生成物B)。70mlの得られた溶液を少量ずつ反応器に注ぐ。ヨウ素挿入を25℃で2時間実施し、その後、残りの15mlの生成物Bを加える。1時間後、別の30mlの生成物Bを少量ずつ反応器に加え、ヨウ素挿入は2時間以内に完了する。
【0100】
溶液のイオン強度は13.6である。
【0101】
得られたイオンナノ構造ABA複合体を、適切な方法、例えば「Kromaton」FCPC(Fast Centrifugal Chromatography)による遠心分離クロマトグラフィー法の使用によって反応媒質から抽出し、乾燥する(図10(a))。
分析結果:
【表1】

[5280L・1.5L・33I]・L
【0102】
実施例2 FS−1.2
ABA合成を、実験室用反応器D−55122 Mainz、RuhrgefaB 2L型、QVF ENGINEERING GMBHにおいて一定の撹拌の後に実施する。108.3gのデキストランを500mlの水に45℃で溶解する。温度を、サーモスタット「HUBER」−Ministat 230 CC2の使用により維持する。更に、150mlの水に溶解した2.5gのPVA、100mlの水に溶解した4.0gの塩化ナトリウム及び1.65gの塩化カルシウムを加える。混合物を十分に撹拌し、43℃に冷却する(生成物A)。
【0103】
4.17gのアルブミンを150mlの水に溶解し、次に3.3gの塩化リチウム、7.0gの塩化マグネシウム及び0.17gの塩化ナトリウムを加える。得られた溶液を、上記に特定された生成物Aの温度に達したときに反応器に移す。混合物を20分間撹拌し、その後、反応領域の温度を25℃に低減する(生成物B)。
【0104】
2.0gのI及び3.0gのヨウ化カリウムを100mlの水に溶解する。得られた溶液を少量ずつ複合化合物溶液に注ぐ(生成物B)。ヨウ素挿入を25℃で4時間実施する。
【0105】
溶液のイオン強度は13.2である。
【0106】
得られたイオンナノ構造ABA複合体を、適切な方法の使用により反応媒質から抽出し、乾燥する(図10(b))。
分析結果:
【表2】

[38L・1.5L・97I]・L
【0107】
実施例3 FS−1.3
ABA合成を、実験室用反応器D−55122 Mainz、RuhrgefaB 2L型、QVF ENGINEERING GMBHにおいて一定の撹拌の後に実施する。72.0gの炭水化物を600mlの水に60℃で加水分解する。温度を、サーモスタット「HUBER」−Ministat 230 CC2の使用により維持する。更に、100mlの水に溶解した1.7gのPVA、100mlの水に溶解した2.8gの塩化ナトリウム及び1.1gの塩化カルシウムを注ぐ。混合物を十分に撹拌し、43℃に冷却する(生成物A)。
【0108】
2.8gのアルブミンを150mlの水に溶解し、次に2.2gの塩化リチウム、4.66gの塩化マグネシウム及び0.8gの塩化ナトリウムを加える。得られた溶液を、上記に特定された生成物Aの温度に達したときに反応器に移す。混合物を20分間撹拌し、その後、反応領域の温度を25℃に低減する(生成物B)。
【0109】
溶液のイオン強度は10.8である。
【0110】
4.1gのI及び6.0gのヨウ化カリウムを100mlの水に溶解する。得られた溶液を少量ずつ複合化合物溶液に注ぐ(生成物B)。ヨウ素挿入を25℃で4時間実施する。
【0111】
得られたイオンナノ構造ABA複合体を、適切な方法の使用により反応媒質から抽出し、乾燥する(図10(c))。
分析結果:
【表3】

[611L・24L・294I]・L
【0112】
実施例4 FS−1.4
ABA合成を、実験室用反応器D−55122 Mainz、RuhrgefaB 2L型、QVF ENGINEERING GMBHにおいて一定の撹拌の後に実施する。72.0gの炭水化物を550mlの水に100℃で加水分解する。温度を、サーモスタット「HUBER」−Ministat 230 CC2の使用により維持する。更に、250mlの水に溶解した1.7gのPVAを注ぐ(生成物A)。混合物を20分間十分に撹拌し、その後、反応領域の温度を25℃に低減する。
【0113】
4.1gのI及び6.0gのヨウ化カリウムを200mlの水に溶解する。得られた溶液を少量ずつ複合化合物溶液に注ぐ(生成物B)。ヨウ素挿入を25℃で4時間実施する。
【0114】
得られたイオンナノ構造ABA複合体を、適切な方法の使用により反応媒質から抽出し、乾燥する(図10(d))。
【0115】
溶液のイオン強度は3.02である。
分析結果:
【表4】

[37L・294I]・L
【0116】
実施例5 FS−1
ABA合成を、実験室用反応器D−55122 Mainz、RuhrgefaB 2L型、QVF ENGINEERING GMBHにおいて一定の撹拌の後に実施する。アミラーゼとアミロペクチンの1:4の比の130gの混合物を、500mlの水に43℃で溶解する。温度を、サーモスタット「HUBER」−Ministat 230 CC2の使用により維持する。更に、150mlの水に溶解した3.0gのPVA、100mlの水に溶解した4.5gの塩化ナトリウム及び2.0gの塩化カルシウムを注ぐ(生成物A)。
【0117】
5.0gのアルブミンを150mlの水に溶解し、次に4.0gの塩化リチウム、8.4gの塩化マグネシウム及び0.5gの塩化ナトリウムを加える。得られた溶液を反応器に移す。混合物を20分間撹拌し、その後、反応領域の温度を25℃に低減する(生成物B)。
【0118】
8.2gのI及び12.1gのヨウ化カリウムを100mlの水に溶解する。得られた溶液を少量ずつ複合化合物溶液に注ぐ(生成物B)。ヨウ素の挿入を、前記の例に記載されたように2段階で実施する。
【0119】
得られたイオンナノ構造ABA複合体を、適切な方法の使用により反応媒質から抽出し、乾燥する(図11)。
【0120】
溶液のイオン強度は20.60である。
分析結果:
【表5】

[38L・2L・333I]・L
【0121】
実施例6 FS−1.5
ABA合成を、実験室用反応器D−55122 Mainz、RuhrgefaB 2L型、QVF ENGINEERING GMBHにおいて一定の撹拌の後に実施する。24.1gの炭水化物を、特定のモル重量に達するまで500mlの水に80℃で加水分解する。温度を、サーモスタット「HUBER」−Ministat 230 CC2の使用により維持する。更に、150mlの水に溶解した2.8gのPVAを注ぐ。混合物を十分に撹拌し、43℃に冷却する(生成物A)。
【0122】
34.0gのI及び50.5gのヨウ化カリウムを100mlの水に溶解する。得られた溶液を少量ずつ複合化合物溶液に注ぐ(生成物C)。ヨウ素の挿入を、25℃で4時間かけて2段階で実施する。
【0123】
得られたイオンナノ構造ABA複合体を、適切な方法の使用により反応媒質から抽出し、乾燥する(図10(d))。
【0124】
溶液のイオン強度は25.3である。
分析結果:
【表6】

[8L・1488I]・L
【0125】
実施例7 FS−1.6
ABA合成を、実験室用反応器D−55122 Mainz、RuhrgefaB 2L型、QVF ENGINEERING GMBHにおいて一定の撹拌の後に実施する。24.1gの炭水化物を、特定のモル重量に達するまで500mlの水に100℃で加水分解する。温度を、サーモスタット「HUBER」−Ministat 230 CC2の使用により維持する。更に、150mlの水に溶解した2.8gのPVA、100mlの水に溶解した0.8gの塩化ナトリウム及び0.37gの塩化カルシウムを注ぐ。混合物を十分に撹拌し、43℃に冷却する(生成物A)。
【0126】
0.93gのアルブミンを150mlの水に溶解し、次に0.73gの塩化リチウム、1.55gの塩化マグネシウム及び0.13gの塩化ナトリウムを加える。得られた溶液を、上記に特定された必要な生成物Aの温度に達した後に反応器に移す。混合物を20分間撹拌し(生成物B)、その後、反応領域の温度を25℃に低減する。
【0127】
34.0gのI及び50.5gのヨウ化カリウムを100mlの水に溶解する。得られた溶液を少量ずつ複合化合物溶液に注ぐ(生成物C)。ヨウ素の挿入を、25℃で4時間かけて2段階で実施する。
【0128】
得られたイオンナノ構造ABA複合体を、適切な方法の使用により反応媒質から抽出し、乾燥する(図10(e))。
【0129】
溶液のイオン強度は27.9である。
分析結果:
【表7】

[26L・L・4970I]・3L
【0130】
実施例8 FS−1.7
ABA合成を、実験室用反応器D−55122 Mainz、RuhrgefaB 2L型、QVF ENGINEERING GMBHにおいて一定の撹拌の後に実施する。130.0gのデキストリン及び3.0gのPVAを500mlの水に50℃で溶解する。温度を、サーモスタット「HUBER」−Ministat 230 CC2の使用により維持する。更に、100mlの水に溶解した4.0gの塩化ナトリウム及び2.0gの塩化カルシウムを注ぐ。混合物を十分に撹拌し、43℃に冷却する(生成物A)。
【0131】
5.0gのアルブミンを150mlの水に溶解し、次に4.0gの塩化リチウム、8.4gの塩化マグネシウム及び1.0gの塩化ナトリウムを加える。得られた溶液を、上記に特定された必要な生成物Aの温度に達した後に反応器に移す。混合物を20分間撹拌し(生成物B)、その後、反応領域の温度を25℃に低減する。
【0132】
8.2gのI及び12.1gのヨウ化カリウムを100mlの水に溶解する。70mlの得られた溶液を少量ずつ複合化合物溶液に注ぐ(生成物B)。ヨウ素の挿入を、25℃で4時間かけて2段階で実施する。
【0133】
0.6gのIL−2を150mlの水に溶解し、反応器にゆっくりと加える。IL−2の投入の30分後、20mlの生成物Bを反応器に加える。得られたイオンナノ構造ABA複合体を、適切な方法の使用により反応媒質から抽出し、乾燥する(図10(f))。
【0134】
溶液のイオン強度は20.60である。
分析結果:
【表8】

[79L・3L・Il−2・684I]・2L
【0135】
実施例9 FS−1.8
ABA合成を、実験室用反応器D−55122 Mainz、RuhrgefaB 2L型、QVF ENGINEERING GMBHにおいて一定の撹拌の後に実施する。13.1gの炭水化物を100mlの水に130℃で加水分解する。温度を、サーモスタット「HUBER」−Ministat 230 CC2の使用により維持する。更に、150mlの水に溶解した3.0gのPVA、100mlの水に溶解した0.3gの塩化ナトリウム及び0.2gの塩化カルシウムを注ぐ(生成物A)。混合物を十分に撹拌し、43℃に冷却する。
【0136】
0.51gのアルブミンを150mlの水に溶解し、次に0.4gの塩化リチウム、0.84gの塩化マグネシウム及び0.2gの塩化ナトリウムを加える。得られた溶液を、上記に特定された必要な生成物Aの温度に達した後に反応器に移す。混合物を20分間撹拌し(生成物B)、その後、反応領域の温度を25℃に低減する。
【0137】
74.5gのI及び110.0gのヨウ化カリウムを500mlの水に溶解する。得られた溶液を少量ずつ複合化合物溶液に注ぐ(生成物B)。ヨウ素の挿入を、25℃で4時間かけて2段階で実施する。
【0138】
得られたイオンナノ構造ABA複合体を、適切な方法の使用により反応媒質から抽出し、乾燥する(図10(g))。
【0139】
溶液のイオン強度は56.3である。
分析結果:
【表9】

[25L・L・19575I]・7L
【0140】
生物学的活性試験において、ABA FS−1はMRSA及びMSSAの臨床分離菌及び対照菌株の両方に対してインビトロで活性があることが確立された。抗微生物剤のMICは、0.938mg/mlから0.234mg/mlに変わった。
【0141】
オキサシリンとの相乗作用についての試験は、両方の薬剤のMICが減少することを示している。低下は、オキサシリンでは256から64μg/mlであり、ALA FS−1では0.234から0.117μg/mlであった。この試験のFIC指数は0.75であり、これは試験薬剤間の部分的な相乗作用と考慮することができる。
【0142】
セファマンドールとの相乗作用についての試験は、両方の薬剤のMICが減少することを示している。低減範囲は、セファマンドールでは64から8μg/mlであり、ABA FS−1では0.469μg/mlから0.234μg/mlであった。この試験のFIC指数は0.62であり、これは、これらの抗生物質の相互作用が部分的な相乗作用であることを決定している。
【0143】
リンコマイシンとの相乗作用についての試験は、両方の薬剤のMICが減少することを示している。低減範囲は、リンコマイシンでは64μg/mlから8μg/mlであり、ABA FS−1では0.234mg/mlから0.117mg/mlであった。この試験のFIC指数は0.625であり、これは、これらの抗生物質の相互作用が部分的な相乗作用であることを決定している。
【0144】
実施例1〜9のABA(FS−1.1〜FS−1.8)は、異なる部類の病原性微生物に対して大きな又は小さな殺菌活性を有する(表6)。表6から分かるように、結核菌に対して最も許容性及び効果があるものは、実施例5のABA(FS−1)である。
【0145】
多剤耐性を有する結核菌H37Rv、結核菌MS−115、及びウシ型結核菌に対するFS−1の抗マイコバクテリア作用を研究した結果、1:12.5、1:25及び1:50の希釈の薬剤濃度で、マイコバクテリアの生殖の完全な抑制が記録期間の全体にわたって観察されたことが確立された。
【0146】
FS−1の殺菌活性は、Levenstein−Jensen培地へ続いて継代するShkolnikova液体培地において、二重段階希釈の微生物学的な方法を使用してインビトロで評価した。マイコバクテリアの野外菌株における1.750〜0.0437mg/mlの濃度範囲でのFS−1のインビトロ殺菌活性では、薬剤耐性臨床分離菌及び結核菌N37Rvが確立されている。FS−1の静菌効果は、0.0218〜0.0109mg/mlの濃度で観察される。
【0147】
博物館菌株の結核菌N37Rv及び8個の多剤耐性菌株に対して、Levenstein−Jensen培地へ続いて継代する、抗TB薬I型と組み合わせた濃度0.0437mg/mlのFS−1のインビトロでの殺菌活性を評価した。試験は、多様な濃度のI型抗TB薬によって、博物館感受性及び多剤耐性菌株を同定した。結果を表7に提示する。
【0148】
表7から分かるように、FS−1と異なる濃度の抗TB薬とを組み合わせた作用の後、結核菌の多剤耐性菌株の増殖は、実験試験管では検出されず、すなわち、菌株は、感受性がFS−1を有するものと有さないものの両方で観察された博物館菌株と比較して、I型抗TB薬の全ての濃度に対して感受性があった。
【0149】
感染したモルモットにFS−1を5mg/kgの用量で投与すると、動物の対照群と比較して、感染動物の肺から平板培養したマイコバクテリアの数が低減したことが、インビボで確立された。ABA FS−1は、モルモットの実験的結核の臨床経過に顕著な抗炎症効果を有し、肺実質の通風を2倍に増加する。
【0150】
治療開始後の21日目での0.3ml/kgの用量の抗TB薬とFS−1の併用は、感染性菌株の耐性の種類にかかわりなく、動物の臓器における結核変化の完全な消滅をもたらすことが、インビボで確立された。
【0151】
表8に提示された結果によると、第3群では、観察された肺の結核病変の数が減少し、治療開始後の35日目には完全に消滅したことが明白である。第4群では、肺及び肝臓における結核病変の消滅は、治療開始後の28日目に記録された。第5群では、肺及び肝臓における結核病変の消滅は、治療開始後の21日目に記録された。
【0152】
抗TB薬に対して耐性のマイコバクテリアの多剤耐性菌株に感染した動物の群では、以下の結果が観察された:第6群では、結核感染の進行性臨床経過があり、第7群では、肺及び肝臓における結核病変の消滅が治療開始後の35日目に記録され、第8群では、肺及び肝臓における結核病変の消滅が治療開始後の21日目に記録された。
【0153】
結核菌H37Rvの菌株に感染した動物の群とマイコバクテリアの多剤耐性菌株に感染した群の両方において、抗TB薬と組み合わせ実施例5(FS−1)の薬剤は、結核の臨床経過に対して治療効果を有する。結核で典型的な病理学的変化は、21日及び28日後にそれぞれ消滅する(第4群及び第7群)。
【0154】
なにも治療を受けなかった対照群の動物では、結核のプロセスは、全体的な内臓傷害を有する全身性の形態に進行した(第1群及び第2群)。
【0155】
複合化合物作用の機構を説明するために提供されるあらゆる機構が、限定的であると考慮されるべきではないが、ABAの抗微生物活性は、a)生物学的に活性な炭水化物及びペプチドの構造、b)細菌細胞の膜を通過した活性物質の拡散における、細胞膜及び細胞構造の両方に対するヨウ素分子の酸化作用、c)微生物のDNAのハロゲン化、d)免疫適格細胞に対する複合化合物の影響の経過でのインターフェロン誘導、e)単球−マクロファージ及び細胞毒性Tリンパ球の活性化に関連する可能性が最も高い。
【0156】
インビトロでの実施例1〜9において研究されたABAは、インフルエンザ、ヘルペス及びHIV−1免疫不全ウイルスに対するより大きな又はより小さな殺ウイルス活性を有する(表9〜13)。
【0157】
継代接種細胞培養物に対するインビトロでのFS−1抗ウイルス作用試験では、FS−1の抗HIV活性が、HIV−1の実験室菌株(LAI)に対する細胞培養物において同定された。薬剤誘導作用の後のHIVウイルスの感染力指数−p24含有量及びリバーストランスクリプターゼ−の低下は、ヒト免疫不全ウイルスに対する薬剤の殺ウイルス(virusocidal)作用を示す。0.188mg/ml及び0.094mg/mlの用量でのFS−1又は0.01mg/mlの用量でのアジドチミジンの適用は、プラセボと比較して死滅に有意な減少をもたらし、結果的にヒト免疫不全ウイルスのp24タンパク質(ウイルスの感染力指数)を60分の1に減少した(表12)。
【0158】
0.094mg/ml及び0.188mg/mlの用量でのFS−1の適用は、陰性対照と比較して、リバーストランスクリプターゼの含有量−ウイルスの感染力指数−を4.1及び12.7倍減少した。陽性対照として0.01mg/mlの用量でアジドチミジンを適用すると、この数値は5分の1に低下しただけであった(表13)。
【0159】
インフルエンザウイルスA/FPV/Rostock/34に対する薬剤FS−1の抗ウイルス活性が、インビトロ及びインビボで確立された(表14〜16)。
【0160】
したがって、0.290mg/kg及び1.458mg/kgの用量での薬剤FS−1の予防的使用後の、100EID50/0.1mlの用量でインフルエンザウイルスに感染したニワトリの生存率は100%であり、リマンタジンの予防的使用後では、28±12.53%であった。生理食塩水を受けた対照ニワトリは全て死亡した(死亡率100%)。
【0161】
実施例1〜9のABAの細胞毒性及び効果の試験は、急性毒性の観点から試験した3つの主要な化合物を同定した。毒性試験は、生命倫理基準(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals.Washington:National Academy Press.1996)に従って実験動物において実施した。急性毒性(LD50)のパラメーターを確立するため、ABAをマウス及びラットに経腸的及び非経口的に投与した。
【0162】
非近交マウスへの経腸的及び非経口的経路の投与による3つのABAの急性毒性の結果を表17、18に示す。
【0163】
最小毒性物質はABA FS−1であることが証明された。マウス及びラットへの経腸的(胃内)投与では、投与薬剤の最大量がそれぞれ1ml及び5mlであり、一方、用量がそれぞれ922及び496mg/kgであったので、FS−1の致死効果は達成されなかった。死亡動物の内部臓器の肉眼試験は、死亡原因が血行力学的障害に関連すると思われ、このことが死亡した動物の内部臓器における散在的な凝血傾向及び重度の血液充満の発生により間接的に確認されることを明らかにした。14日目の終了時には、内部臓器及び組織の構造における異常は、対照グループと比べた生存動物における病理形態学的研究によって検出されなかった。この場合、胃腸管の粘膜に有意な傷害は確認されなかった。累積計数(Ccum)は1.85であり、これは、国際薬剤毒性スケールによると、かすかな蓄積効果を有する薬剤のパラメーターに相当する。
【0164】
更に研究は、5.0mg/kg(ラットに確立されたMTDの1/100に等しい用量)及び50mg/kg(ラットに確立されたMTDの1/10に等しい用量)の用量で60日間及び30日間の回復期間で投与する胃内投与方法により、ラット及びウサギにおいて慢性毒性について実施した。
【0165】
5.0mg/kgの用量での薬剤の慢性投与は、血液及び尿の体重動力学的、物理的、血液学的、及び生化学的指数に関して対照群の動物との偏差がなかった。心臓周期に異常は観察されなかった。全ての動物は、内部臓器の正常なマクロ構造及びミクロ構造を保持した。
【0166】
ラット及びウサギにおける薬剤の50.0mg/kgの用量での慢性投与は、以下の毒性作用を引き起こした。血液生化学パラメーターの部分では、肝臓酵素のアラニントランスアミラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ及びアルカリホスファターゼ、並びに窒素代謝の成分のクレアチニン、尿素に僅かな増加があった。一部の動物は、静脈性多血症、細胞質に変性変化の徴候がある肝細胞を有することが見出されて、胃壁に非びらん性点状出血が観察された。一部の動物は小腸皮膜膨張を有した。この群の動物における甲状腺の変化は、極めて多様であり、独特であった。一般に、大きな濾胞の出現及び上皮の平坦化に起因する甲状腺の機能的活性の減少があった。しかし、実験の90日目(回復期間の30日目)に実施した研究は、内部臓器の同定された生化学的変化及びミクロ構造変化が可逆性であることを示した。
【0167】
生殖毒性をマウスで試験した。妊娠前及び期間中の雌に、実施例5の薬剤を胃内及び筋肉内に投与した。試験の結果を表19に提示する。
【0168】
胃内投与(妊娠前及び後)は、高用量(100mg/kg)で薬剤を試験した場合でも、マウスに未熟分娩をもたらさなかったことが確立された。
【0169】
胎芽毒性試験をニワトリの胚において実施した。12.5mg/mlまでの実施例5のABA用量は、異なる段階の胚の発育に病理学的効果を有さないことを示した。
【0170】
実施例5(FS−1)の薬剤の発癌活性試験では、大腸菌(E.coli)Ec1000(PJE43)のSOS Chromotestにおける遺伝子毒性活性の同定、1〜2000μg/mlの濃度範囲での血球における及び横紋筋肉腫の細胞培養物における一本鎖DNA破断の同定及び回復(不定期)DNA合成の決定を含む、一連の試験を使用した。FS−1の発癌活性の研究の結果を表20に提示する。使用した条件では、試験したFS−1は、大腸菌Ec1000(PJE43)の試験菌株の細胞においてSOS反応インデューサーではない。
【0171】
陰性の結果は、200、300、600μg/mlのFS−1に曝露されたときに認められた(一本鎖DNA破断の不在)。
【0172】
実施例5の薬剤の遺伝子毒性活性は、提供者の末梢血の細胞における不定期(回復)DNA合成の誘導試験で研究した。50、100、200μg/mlの濃度範囲では、代謝活性化を有する又は有さないにかかわらず、不定期合成への刺激が検出されないことが示された。
【0173】
代謝活性化を有するもの及び代謝活性化を有さないものの両方の実験において、Ames試験の際に、研究されたサルモネラ・チフィムリウムの4つ全ての突然変異誘発性菌株の増殖活性には、陰性対照と比較してFS−1の影響後、有意な変化は検出されなかった。
【0174】
その上、突然変異誘発性菌株の増殖に対する効果の欠如は、1.0及び2.0mg/cuclなどの比較的高い濃度でも記録された。したがって、FS−1は、Ames試験においてサルモネラ・チフィムリウムのヒスチジン栄養要求性菌株のDNAに対して突然変異誘発性ではない。
【0175】
マウスリンパ腫L5178Y細胞及びヒト肝細胞癌HepG2細胞の両方へのFS−1のDNA損傷効果の分析は、これらの系の細胞において彗星状(尾状)DNAの自発的形成に有意な増加がないことを明らかにした。更に、両方の種類の研究細胞系の細胞質における彗星状(尾状)DNAの形成に対して効果を誘導する薬剤の不在も、マウスにおける肝臓酵素による代謝活性化の存在下で明らかとなった。したがって、研究範囲の濃度の薬剤は、1.0及び2.0mg/mlのように大きい場合でも、代謝活性化の不在及び後の両方において、インビトロで真核生物DNAに対して損傷効果を有さない。
【0176】
表21は、細胞遺伝学的活性研究の結果を提示する。染色体異常を有する骨髄白血球のレベルに統計的に有意な差は検出されず、動物体重の22mg/kgの用量のFS−1の単回投与の影響の後、骨髄白血球の染色体異常の量及び質は見出されなかった。更に、動物体重の8mg/kgの用量のFS−1の反復投与も、対照と比較して、骨髄白血球の染色体異常の数及び特徴の両方に対する影響の欠如によって特徴付けられた(表21)。
【0177】
したがって、調査した用量のFS−1は、インビボで真核生物DNAに対して損傷効果を有さない。
【0178】
表22に提示されているデータは、動物体重の22mg/kgの用量での単回FS−1投与の後、小核を有する多染性及び正染色性骨髄赤血球の含有量、並びにそれらにおける小核の数に増加がないことを示す。加えて、動物体重の8mg/kgの用量での反復薬剤投与も、対照と比較して、小核を含有する多染性及び正染性赤血球の数と赤血球における小核の総数の両方に対する効果の不在によって特徴付けられる(表22)。
【0179】
したがって、調査用量の薬剤は、インビボでの通常の発育の経過において、真核生物DNAに対する損傷効果を有さず、特に小核の形態の核からのDNAの一部の放出がない。
【0180】
生殖細胞におけるFS−1による優位致死突然変異の誘導を研究する実験の結果は、動物体重の22mg/kgの用量での筋肉内注射を介して薬剤に曝露された動物(試験群1.1〜1.3)における着床後損失のレベルが、対照群と比較して変化がなかったことを示している(表23)。
【0181】
したがって、FS−1は、調査用量で体内に投与されたとき、哺乳類においてインビボで生殖細胞(成熟精子細胞、後期及び初期精細胞)に優位致死突然変異の発生を誘導せず、すなわち、優位致死対立遺伝子の試験において突然変異誘発活性を有さない。
【0182】
インビトロ及びインビボの両方における、異なる感受性を有する試験系でFS−1突然変異誘発活性を試験する多数の実験の結果は、薬剤が有意な量であっても突然変異誘発性ではないことを示している。このことは、FS−1が、活動的な分化を含む真核細胞との相互作用及び高度な感受性の部類に属する生殖細胞との相互作用において、DNA損傷及び特定の突然変異誘発効果を有さず、すなわち、遺伝学的装置の通常の実行においてDNA損傷及び/又は機能不全を引き起こさないことを示している。
【0183】
電離放射線量の曝露、すなわち800Rの場合では、照射の前に0.15mlのFS−1を受けたマウスの群では、特定の放射線防護効果が達成された。30日間の最終日までには、対照群では生存率は30%であり、平均寿命は18.9±0.4日間であり、実験群では、これらの数値はそれぞれ70%及び24.6±0.7日間であった。スチューデントt検定を使用した結果(平均寿命)の統計的分析は、平均寿命に関して有意な差(30%)を示した(p<0.05)。
【0184】
観察期間の最終日における800Rの線量でのラットの実験では、26.7%のラットが生存し、この群の平均寿命は17.2±0.5日間であった。800Rの線量で曝露される前に1.0mlのFS−1を胃内に受けたラットでは、生存率は50%であり、平均寿命は24%延びた(21.3±0.8日間)(図12)。そしてこの場合では、特定の放射線防護効果があった。スチューデントt検定を使用した結果(平均寿命)の統計的分析は、平均寿命に関して有意な差を示した(p<0.05)。実験の結果を比較すると、FS−1は、半致死(LD50)に近い線量で照射された動物において現れた特定の放射線防護効果を有すると結論付けることができる。
【0185】
Venturi(2000)により行われた研究によると、ヨウ素は地球の生命の夜明けにおける最初の酸化防止剤であり、人類の進化において桁外れに大きな役割を果たしてきた。主な有害放射線因子は、照射直後に体内に形成されるフリーラジカルであることが良く知られている(Bacq,1965;Alexander,Bacq,1974;Halliwell,1985,1991)。ヨウ素を含む酸化防止剤は、フリーラジカルと結合して、体の生体分子との相互作用を妨げる(Shimoi,1996;Halliwell,1985,1991)。
【0186】
実施例5(FS−1)のABAに基づいた薬剤の治療作用の有効性は、MDR肺結核を有する志願患者の3つの群における臨床試験によって確立された(表24)。
【0187】
第1群(n=19)は、体重の0.1ml/kgの用量でのII型の抗TB薬と実施例5のABAとの併用療法を受けた。第2群(n=17)は、体重の0.1ml/kgの用量でのII型の抗TB薬とプラセボを受け、第3群(n=19)は、体重の0.125ml/kgの用量でのII型の抗TB薬とFS−1を受けた。全ての薬剤を1日1回投与した。
【0188】
耐性肺結核を有する患者の複合体治療の最初の1か月間の止血(APTT、プロトロンビン指数、トロンビン時間、フィブリノゲン)に基づいた薬剤安全性研究は、0.1及び0.125mg/kgの使用用量のFS−1が凝血に対して効果がないことを示した。更に、療法の1か月後の甲状腺超音波検査は、被験者にどのような変化も検出しなかった。
【0189】
結核菌の薬剤感受性試験によると、I型のTB薬(以降、TBD)(イソニアジド(H)、リファンピシン(R)、エタンブトール,(E)、ストレプトマイシン(S))に対する耐性が立証された。患者を無作為に3つの群にした。第1群(一次)は、II型のTBD(サイクロセリン(Cs)、オフロキサシン(Ofs)、PAS、プロチオナミド(Pto)、カプリオミシン(capriomicine)(Cm))+FS−1(0.1ml/kg)を受け、第2群(一次)は、II型のTBD(サイクロセリン(Cs)、オフロキサシン(Ofs)、PAS(Pas)、プロチオナミド(Pto)、カプリオミシン(Cm))+FS−1(0.125ml/kg)を受け、第3群(対照)は、II型のTBD(サイクロセリン(Cs)、オフロキサシン(Ofs)、PAS(Pas)、プロチオナミド(Pto)、カプリオミシン(Cm))+プラセボ)を受けた。
【0190】
被験者の平均年齢は33.14±9.03(歳)であり、そのうち75.8%が男性であり、24.2%が女性であった。臨床形態のうち、最も頻繁な形態は浸潤性であり(70.1%)、頻度の低いものは線維海綿状(fibrocavernous)であった(28.2%)。群は均一であり、背景特徴に有意な差は観察されなかった。
【0191】
薬剤の治療効果の予備研究は、スメア変換が、治療の3か月目から始まって一次群において有意に高いことを示し、これは併用療法におけるFS−1の効能を立証している(表28)。
【0192】
表29に提示されているデータは、療法の3か月目から始まって、陰性培養物が対照群と比較して一次群において有意に高いことも示し、これはTB治療におけるFS−1の効能を立証している。
【0193】
固形培地の喀痰接種の伝統的な方法(表30)は、II型の抗TB薬と組み合わせてFS−1を受けている耐性TBの患者において、陰性結果の細菌検査の特定の重量が、療法の2か月後に対照と比較して有意に高いことも示唆し、これを3及び4か月後も追跡することができる。
【0194】
II型の抗TB薬と組み合わせてFS−1を受けているMDR結核患者のX線パターンの変化は、治療の1か月後の早さで、陽性動力学が対照群(プラセボ+TBD、II型)よりも有意に高いこと、すなわち、浸潤の吸収、病巣の硬化及び空洞の退縮(表31)が早期に開始することを示唆している。
【0195】
表32から分かるように、主要な群に体重増加が観察され、一方、対照群では、反対に体重が減少し、3か月後には体重の有意な変化が第1群及び第2群において明らかであり、4か月後には第3群において明らかである。
【0196】
第II相臨床試験の予備段階の結果は、MDR TBの患者における併用抗結核療法へのFS−1の適用の効能を立証している。
【表10】
【表11】
【表12】

【表13】

【表14】

【表15】

【表16】
【表17】

【表18】

【表19】

【表20】

【表21】

【表22】

【表23】

【表24】

【表25】

【表26】

【表27】

【表28】

【表29】

【表30】

【表31】

【表32】

【表33】

【表34】

【表35】

【表36】

【表37】

【表38】

【表39】

【表40】

【表41】
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図10
図11
図9
図12