【実施例】
【0097】
実施例1 FS−1.1
ABA合成を、実験室用反応器D−55122 Mainz、RuhrgefaB 2L型、QVF ENGINEERING GMBHにおいて一定の撹拌の後に実施する。温度を、サーモスタット「HUBER」−Ministat 230 CC2の使用により維持する。130gの炭水化物を500mlの水に50℃で溶解する。更に、100mlの水に溶解した3.0gの塩化ナトリウム及び1.98mgの塩化カルシウムを加える。混合物を十分に撹拌し、43℃に冷却する(生成物A)。
【0098】
5.0gのアルブミンを150mlの水に溶解し、次に3.96gの塩化リチウム、8.4gの塩化マグネシウム及び2.0gの塩化ナトリウムを加える(生成物B)。135mlの得られた溶液を反応器に注ぐ。反応体混合物を20分間撹拌し、その後、溶液温度を25℃に低減する。
【0099】
0.82gのI
2及びи 1.2gのヨウ化カリウムを100mlの水に溶解する(生成物B)。70mlの得られた溶液を少量ずつ反応器に注ぐ。ヨウ素挿入を25℃で2時間実施し、その後、残りの15mlの生成物Bを加える。1時間後、別の30mlの生成物Bを少量ずつ反応器に加え、ヨウ素挿入は2時間以内に完了する。
【0100】
溶液のイオン強度は13.6である。
【0101】
得られたイオンナノ構造ABA複合体を、適切な方法、例えば「Kromaton」FCPC(Fast Centrifugal Chromatography)による遠心分離クロマトグラフィー法の使用によって反応媒質から抽出し、乾燥する(
図10(a))。
分析結果:
【表1】
[5280L
1・1.5L
2・33I
2]・L
3
【0102】
実施例2 FS−1.2
ABA合成を、実験室用反応器D−55122 Mainz、RuhrgefaB 2L型、QVF ENGINEERING GMBHにおいて一定の撹拌の後に実施する。108.3gのデキストランを500mlの水に45℃で溶解する。温度を、サーモスタット「HUBER」−Ministat 230 CC2の使用により維持する。更に、150mlの水に溶解した2.5gのPVA、100mlの水に溶解した4.0gの塩化ナトリウム及び1.65gの塩化カルシウムを加える。混合物を十分に撹拌し、43℃に冷却する(生成物A)。
【0103】
4.17gのアルブミンを150mlの水に溶解し、次に3.3gの塩化リチウム、7.0gの塩化マグネシウム及び0.17gの塩化ナトリウムを加える。得られた溶液を、上記に特定された生成物Aの温度に達したときに反応器に移す。混合物を20分間撹拌し、その後、反応領域の温度を25℃に低減する(生成物B)。
【0104】
2.0gのI
2及び3.0gのヨウ化カリウムを100mlの水に溶解する。得られた溶液を少量ずつ複合化合物溶液に注ぐ(生成物B)。ヨウ素挿入を25℃で4時間実施する。
【0105】
溶液のイオン強度は13.2である。
【0106】
得られたイオンナノ構造ABA複合体を、適切な方法の使用により反応媒質から抽出し、乾燥する(
図10(b))。
分析結果:
【表2】
[38L
1・1.5L
2・97I
2]・L
3
【0107】
実施例3 FS−1.3
ABA合成を、実験室用反応器D−55122 Mainz、RuhrgefaB 2L型、QVF ENGINEERING GMBHにおいて一定の撹拌の後に実施する。72.0gの炭水化物を600mlの水に60℃で加水分解する。温度を、サーモスタット「HUBER」−Ministat 230 CC2の使用により維持する。更に、100mlの水に溶解した1.7gのPVA、100mlの水に溶解した2.8gの塩化ナトリウム及び1.1gの塩化カルシウムを注ぐ。混合物を十分に撹拌し、43℃に冷却する(生成物A)。
【0108】
2.8gのアルブミンを150mlの水に溶解し、次に2.2gの塩化リチウム、4.66gの塩化マグネシウム及び0.8gの塩化ナトリウムを加える。得られた溶液を、上記に特定された生成物Aの温度に達したときに反応器に移す。混合物を20分間撹拌し、その後、反応領域の温度を25℃に低減する(生成物B)。
【0109】
溶液のイオン強度は10.8である。
【0110】
4.1gのI
2及び6.0gのヨウ化カリウムを100mlの水に溶解する。得られた溶液を少量ずつ複合化合物溶液に注ぐ(生成物B)。ヨウ素挿入を25℃で4時間実施する。
【0111】
得られたイオンナノ構造ABA複合体を、適切な方法の使用により反応媒質から抽出し、乾燥する(
図10(c))。
分析結果:
【表3】
[611L
1・24L
2・294I
2]・L
3
【0112】
実施例4 FS−1.4
ABA合成を、実験室用反応器D−55122 Mainz、RuhrgefaB 2L型、QVF ENGINEERING GMBHにおいて一定の撹拌の後に実施する。72.0gの炭水化物を550mlの水に100℃で加水分解する。温度を、サーモスタット「HUBER」−Ministat 230 CC2の使用により維持する。更に、250mlの水に溶解した1.7gのPVAを注ぐ(生成物A)。混合物を20分間十分に撹拌し、その後、反応領域の温度を25℃に低減する。
【0113】
4.1gのI
2及び6.0gのヨウ化カリウムを200mlの水に溶解する。得られた溶液を少量ずつ複合化合物溶液に注ぐ(生成物B)。ヨウ素挿入を25℃で4時間実施する。
【0114】
得られたイオンナノ構造ABA複合体を、適切な方法の使用により反応媒質から抽出し、乾燥する(
図10(d))。
【0115】
溶液のイオン強度は3.02である。
分析結果:
【表4】
[37L
1・294I
2]・L
3
【0116】
実施例5 FS−1
ABA合成を、実験室用反応器D−55122 Mainz、RuhrgefaB 2L型、QVF ENGINEERING GMBHにおいて一定の撹拌の後に実施する。アミラーゼとアミロペクチンの1:4の比の130gの混合物を、500mlの水に43℃で溶解する。温度を、サーモスタット「HUBER」−Ministat 230 CC2の使用により維持する。更に、150mlの水に溶解した3.0gのPVA、100mlの水に溶解した4.5gの塩化ナトリウム及び2.0gの塩化カルシウムを注ぐ(生成物A)。
【0117】
5.0gのアルブミンを150mlの水に溶解し、次に4.0gの塩化リチウム、8.4gの塩化マグネシウム及び0.5gの塩化ナトリウムを加える。得られた溶液を反応器に移す。混合物を20分間撹拌し、その後、反応領域の温度を25℃に低減する(生成物B)。
【0118】
8.2gのI
2及び12.1gのヨウ化カリウムを100mlの水に溶解する。得られた溶液を少量ずつ複合化合物溶液に注ぐ(生成物B)。ヨウ素の挿入を、前記の例に記載されたように2段階で実施する。
【0119】
得られたイオンナノ構造ABA複合体を、適切な方法の使用により反応媒質から抽出し、乾燥する(
図11)。
【0120】
溶液のイオン強度は20.60である。
分析結果:
【表5】
[38L
1・2L
2・333I
2]・L
3
【0121】
実施例6 FS−1.5
ABA合成を、実験室用反応器D−55122 Mainz、RuhrgefaB 2L型、QVF ENGINEERING GMBHにおいて一定の撹拌の後に実施する。24.1gの炭水化物を、特定のモル重量に達するまで500mlの水に80℃で加水分解する。温度を、サーモスタット「HUBER」−Ministat 230 CC2の使用により維持する。更に、150mlの水に溶解した2.8gのPVAを注ぐ。混合物を十分に撹拌し、43℃に冷却する(生成物A)。
【0122】
34.0gのI
2及び50.5gのヨウ化カリウムを100mlの水に溶解する。得られた溶液を少量ずつ複合化合物溶液に注ぐ(生成物C)。ヨウ素の挿入を、25℃で4時間かけて2段階で実施する。
【0123】
得られたイオンナノ構造ABA複合体を、適切な方法の使用により反応媒質から抽出し、乾燥する(
図10(d))。
【0124】
溶液のイオン強度は25.3である。
分析結果:
【表6】
[8L
1・1488I
2]・L
3
【0125】
実施例7 FS−1.6
ABA合成を、実験室用反応器D−55122 Mainz、RuhrgefaB 2L型、QVF ENGINEERING GMBHにおいて一定の撹拌の後に実施する。24.1gの炭水化物を、特定のモル重量に達するまで500mlの水に100℃で加水分解する。温度を、サーモスタット「HUBER」−Ministat 230 CC2の使用により維持する。更に、150mlの水に溶解した2.8gのPVA、100mlの水に溶解した0.8gの塩化ナトリウム及び0.37gの塩化カルシウムを注ぐ。混合物を十分に撹拌し、43℃に冷却する(生成物A)。
【0126】
0.93gのアルブミンを150mlの水に溶解し、次に0.73gの塩化リチウム、1.55gの塩化マグネシウム及び0.13gの塩化ナトリウムを加える。得られた溶液を、上記に特定された必要な生成物Aの温度に達した後に反応器に移す。混合物を20分間撹拌し(生成物B)、その後、反応領域の温度を25℃に低減する。
【0127】
34.0gのI
2及び50.5gのヨウ化カリウムを100mlの水に溶解する。得られた溶液を少量ずつ複合化合物溶液に注ぐ(生成物C)。ヨウ素の挿入を、25℃で4時間かけて2段階で実施する。
【0128】
得られたイオンナノ構造ABA複合体を、適切な方法の使用により反応媒質から抽出し、乾燥する(
図10(e))。
【0129】
溶液のイオン強度は27.9である。
分析結果:
【表7】
[26L
1・L
2・4970I
2]・3L
3
【0130】
実施例8 FS−1.7
ABA合成を、実験室用反応器D−55122 Mainz、RuhrgefaB 2L型、QVF ENGINEERING GMBHにおいて一定の撹拌の後に実施する。130.0gのデキストリン及び3.0gのPVAを500mlの水に50℃で溶解する。温度を、サーモスタット「HUBER」−Ministat 230 CC2の使用により維持する。更に、100mlの水に溶解した4.0gの塩化ナトリウム及び2.0gの塩化カルシウムを注ぐ。混合物を十分に撹拌し、43℃に冷却する(生成物A)。
【0131】
5.0gのアルブミンを150mlの水に溶解し、次に4.0gの塩化リチウム、8.4gの塩化マグネシウム及び1.0gの塩化ナトリウムを加える。得られた溶液を、上記に特定された必要な生成物Aの温度に達した後に反応器に移す。混合物を20分間撹拌し(生成物B)、その後、反応領域の温度を25℃に低減する。
【0132】
8.2gのI
2及び12.1gのヨウ化カリウムを100mlの水に溶解する。70mlの得られた溶液を少量ずつ複合化合物溶液に注ぐ(生成物B)。ヨウ素の挿入を、25℃で4時間かけて2段階で実施する。
【0133】
0.6gのIL−2を150mlの水に溶解し、反応器にゆっくりと加える。IL−2の投入の30分後、20mlの生成物Bを反応器に加える。得られたイオンナノ構造ABA複合体を、適切な方法の使用により反応媒質から抽出し、乾燥する(
図10(f))。
【0134】
溶液のイオン強度は20.60である。
分析結果:
【表8】
[79L
1・3L
2・Il−2・684I
2]・2L
3
【0135】
実施例9 FS−1.8
ABA合成を、実験室用反応器D−55122 Mainz、RuhrgefaB 2L型、QVF ENGINEERING GMBHにおいて一定の撹拌の後に実施する。13.1gの炭水化物を100mlの水に130℃で加水分解する。温度を、サーモスタット「HUBER」−Ministat 230 CC2の使用により維持する。更に、150mlの水に溶解した3.0gのPVA、100mlの水に溶解した0.3gの塩化ナトリウム及び0.2gの塩化カルシウムを注ぐ(生成物A)。混合物を十分に撹拌し、43℃に冷却する。
【0136】
0.51gのアルブミンを150mlの水に溶解し、次に0.4gの塩化リチウム、0.84gの塩化マグネシウム及び0.2gの塩化ナトリウムを加える。得られた溶液を、上記に特定された必要な生成物Aの温度に達した後に反応器に移す。混合物を20分間撹拌し(生成物B)、その後、反応領域の温度を25℃に低減する。
【0137】
74.5gのI
2及び110.0gのヨウ化カリウムを500mlの水に溶解する。得られた溶液を少量ずつ複合化合物溶液に注ぐ(生成物B)。ヨウ素の挿入を、25℃で4時間かけて2段階で実施する。
【0138】
得られたイオンナノ構造ABA複合体を、適切な方法の使用により反応媒質から抽出し、乾燥する(
図10(g))。
【0139】
溶液のイオン強度は56.3である。
分析結果:
【表9】
[25L
1・L
2・19575I
2]・7L
3
【0140】
生物学的活性試験において、ABA FS−1はMRSA及びMSSAの臨床分離菌及び対照菌株の両方に対してインビトロで活性があることが確立された。抗微生物剤のMICは、0.938mg/mlから0.234mg/mlに変わった。
【0141】
オキサシリンとの相乗作用についての試験は、両方の薬剤のMICが減少することを示している。低下は、オキサシリンでは256から64μg/mlであり、ALA FS−1では0.234から0.117μg/mlであった。この試験のFIC指数は0.75であり、これは試験薬剤間の部分的な相乗作用と考慮することができる。
【0142】
セファマンドールとの相乗作用についての試験は、両方の薬剤のMICが減少することを示している。低減範囲は、セファマンドールでは64から8μg/mlであり、ABA FS−1では0.469μg/mlから0.234μg/mlであった。この試験のFIC指数は0.62であり、これは、これらの抗生物質の相互作用が部分的な相乗作用であることを決定している。
【0143】
リンコマイシンとの相乗作用についての試験は、両方の薬剤のMICが減少することを示している。低減範囲は、リンコマイシンでは64μg/mlから8μg/mlであり、ABA FS−1では0.234mg/mlから0.117mg/mlであった。この試験のFIC指数は0.625であり、これは、これらの抗生物質の相互作用が部分的な相乗作用であることを決定している。
【0144】
実施例1〜9のABA(FS−1.1〜FS−1.8)は、異なる部類の病原性微生物に対して大きな又は小さな殺菌活性を有する(表6)。表6から分かるように、結核菌に対して最も許容性及び効果があるものは、実施例5のABA(FS−1)である。
【0145】
多剤耐性を有する結核菌H37Rv、結核菌MS−115、及びウシ型結核菌に対するFS−1の抗マイコバクテリア作用を研究した結果、1:12.5、1:25及び1:50の希釈の薬剤濃度で、マイコバクテリアの生殖の完全な抑制が記録期間の全体にわたって観察されたことが確立された。
【0146】
FS−1の殺菌活性は、Levenstein−Jensen培地へ続いて継代するShkolnikova液体培地において、二重段階希釈の微生物学的な方法を使用してインビトロで評価した。マイコバクテリアの野外菌株における1.750〜0.0437mg/mlの濃度範囲でのFS−1のインビトロ殺菌活性では、薬剤耐性臨床分離菌及び結核菌N37Rvが確立されている。FS−1の静菌効果は、0.0218〜0.0109mg/mlの濃度で観察される。
【0147】
博物館菌株の結核菌N37Rv及び8個の多剤耐性菌株に対して、Levenstein−Jensen培地へ続いて継代する、抗TB薬I型と組み合わせた濃度0.0437mg/mlのFS−1のインビトロでの殺菌活性を評価した。試験は、多様な濃度のI型抗TB薬によって、博物館感受性及び多剤耐性菌株を同定した。結果を表7に提示する。
【0148】
表7から分かるように、FS−1と異なる濃度の抗TB薬とを組み合わせた作用の後、結核菌の多剤耐性菌株の増殖は、実験試験管では検出されず、すなわち、菌株は、感受性がFS−1を有するものと有さないものの両方で観察された博物館菌株と比較して、I型抗TB薬の全ての濃度に対して感受性があった。
【0149】
感染したモルモットにFS−1を5mg/kgの用量で投与すると、動物の対照群と比較して、感染動物の肺から平板培養したマイコバクテリアの数が低減したことが、インビボで確立された。ABA FS−1は、モルモットの実験的結核の臨床経過に顕著な抗炎症効果を有し、肺実質の通風を2倍に増加する。
【0150】
治療開始後の21日目での0.3ml/kgの用量の抗TB薬とFS−1の併用は、感染性菌株の耐性の種類にかかわりなく、動物の臓器における結核変化の完全な消滅をもたらすことが、インビボで確立された。
【0151】
表8に提示された結果によると、第3群では、観察された肺の結核病変の数が減少し、治療開始後の35日目には完全に消滅したことが明白である。第4群では、肺及び肝臓における結核病変の消滅は、治療開始後の28日目に記録された。第5群では、肺及び肝臓における結核病変の消滅は、治療開始後の21日目に記録された。
【0152】
抗TB薬に対して耐性のマイコバクテリアの多剤耐性菌株に感染した動物の群では、以下の結果が観察された:第6群では、結核感染の進行性臨床経過があり、第7群では、肺及び肝臓における結核病変の消滅が治療開始後の35日目に記録され、第8群では、肺及び肝臓における結核病変の消滅が治療開始後の21日目に記録された。
【0153】
結核菌H37Rvの菌株に感染した動物の群とマイコバクテリアの多剤耐性菌株に感染した群の両方において、抗TB薬と組み合わせ実施例5(FS−1)の薬剤は、結核の臨床経過に対して治療効果を有する。結核で典型的な病理学的変化は、21日及び28日後にそれぞれ消滅する(第4群及び第7群)。
【0154】
なにも治療を受けなかった対照群の動物では、結核のプロセスは、全体的な内臓傷害を有する全身性の形態に進行した(第1群及び第2群)。
【0155】
複合化合物作用の機構を説明するために提供されるあらゆる機構が、限定的であると考慮されるべきではないが、ABAの抗微生物活性は、a)生物学的に活性な炭水化物及びペプチドの構造、b)細菌細胞の膜を通過した活性物質の拡散における、細胞膜及び細胞構造の両方に対するヨウ素分子の酸化作用、c)微生物のDNAのハロゲン化、d)免疫適格細胞に対する複合化合物の影響の経過でのインターフェロン誘導、e)単球−マクロファージ及び細胞毒性Tリンパ球の活性化に関連する可能性が最も高い。
【0156】
インビトロでの実施例1〜9において研究されたABAは、インフルエンザ、ヘルペス及びHIV−1免疫不全ウイルスに対するより大きな又はより小さな殺ウイルス活性を有する(表9〜13)。
【0157】
継代接種細胞培養物に対するインビトロでのFS−1抗ウイルス作用試験では、FS−1の抗HIV活性が、HIV−1の実験室菌株(LAI)に対する細胞培養物において同定された。薬剤誘導作用の後のHIVウイルスの感染力指数−p24含有量及びリバーストランスクリプターゼ−の低下は、ヒト免疫不全ウイルスに対する薬剤の殺ウイルス(virusocidal)作用を示す。0.188mg/ml及び0.094mg/mlの用量でのFS−1又は0.01mg/mlの用量でのアジドチミジンの適用は、プラセボと比較して死滅に有意な減少をもたらし、結果的にヒト免疫不全ウイルスのp24タンパク質(ウイルスの感染力指数)を60分の1に減少した(表12)。
【0158】
0.094mg/ml及び0.188mg/mlの用量でのFS−1の適用は、陰性対照と比較して、リバーストランスクリプターゼの含有量−ウイルスの感染力指数−を4.1及び12.7倍減少した。陽性対照として0.01mg/mlの用量でアジドチミジンを適用すると、この数値は5分の1に低下しただけであった(表13)。
【0159】
インフルエンザウイルスA/FPV/Rostock/34に対する薬剤FS−1の抗ウイルス活性が、インビトロ及びインビボで確立された(表14〜16)。
【0160】
したがって、0.290mg/kg及び1.458mg/kgの用量での薬剤FS−1の予防的使用後の、100EID
50/0.1mlの用量でインフルエンザウイルスに感染したニワトリの生存率は100%であり、リマンタジンの予防的使用後では、28±12.53%であった。生理食塩水を受けた対照ニワトリは全て死亡した(死亡率100%)。
【0161】
実施例1〜9のABAの細胞毒性及び効果の試験は、急性毒性の観点から試験した3つの主要な化合物を同定した。毒性試験は、生命倫理基準(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals.Washington:National Academy Press.1996)に従って実験動物において実施した。急性毒性(LD50)のパラメーターを確立するため、ABAをマウス及びラットに経腸的及び非経口的に投与した。
【0162】
非近交マウスへの経腸的及び非経口的経路の投与による3つのABAの急性毒性の結果を表17、18に示す。
【0163】
最小毒性物質はABA FS−1であることが証明された。マウス及びラットへの経腸的(胃内)投与では、投与薬剤の最大量がそれぞれ1ml及び5mlであり、一方、用量がそれぞれ922及び496mg/kgであったので、FS−1の致死効果は達成されなかった。死亡動物の内部臓器の肉眼試験は、死亡原因が血行力学的障害に関連すると思われ、このことが死亡した動物の内部臓器における散在的な凝血傾向及び重度の血液充満の発生により間接的に確認されることを明らかにした。14日目の終了時には、内部臓器及び組織の構造における異常は、対照グループと比べた生存動物における病理形態学的研究によって検出されなかった。この場合、胃腸管の粘膜に有意な傷害は確認されなかった。累積計数(Ccum)は1.85であり、これは、国際薬剤毒性スケールによると、かすかな蓄積効果を有する薬剤のパラメーターに相当する。
【0164】
更に研究は、5.0mg/kg(ラットに確立されたMTDの1/100に等しい用量)及び50mg/kg(ラットに確立されたMTDの1/10に等しい用量)の用量で60日間及び30日間の回復期間で投与する胃内投与方法により、ラット及びウサギにおいて慢性毒性について実施した。
【0165】
5.0mg/kgの用量での薬剤の慢性投与は、血液及び尿の体重動力学的、物理的、血液学的、及び生化学的指数に関して対照群の動物との偏差がなかった。心臓周期に異常は観察されなかった。全ての動物は、内部臓器の正常なマクロ構造及びミクロ構造を保持した。
【0166】
ラット及びウサギにおける薬剤の50.0mg/kgの用量での慢性投与は、以下の毒性作用を引き起こした。血液生化学パラメーターの部分では、肝臓酵素のアラニントランスアミラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ及びアルカリホスファターゼ、並びに窒素代謝の成分のクレアチニン、尿素に僅かな増加があった。一部の動物は、静脈性多血症、細胞質に変性変化の徴候がある肝細胞を有することが見出されて、胃壁に非びらん性点状出血が観察された。一部の動物は小腸皮膜膨張を有した。この群の動物における甲状腺の変化は、極めて多様であり、独特であった。一般に、大きな濾胞の出現及び上皮の平坦化に起因する甲状腺の機能的活性の減少があった。しかし、実験の90日目(回復期間の30日目)に実施した研究は、内部臓器の同定された生化学的変化及びミクロ構造変化が可逆性であることを示した。
【0167】
生殖毒性をマウスで試験した。妊娠前及び期間中の雌に、実施例5の薬剤を胃内及び筋肉内に投与した。試験の結果を表19に提示する。
【0168】
胃内投与(妊娠前及び後)は、高用量(100mg/kg)で薬剤を試験した場合でも、マウスに未熟分娩をもたらさなかったことが確立された。
【0169】
胎芽毒性試験をニワトリの胚において実施した。12.5mg/mlまでの実施例5のABA用量は、異なる段階の胚の発育に病理学的効果を有さないことを示した。
【0170】
実施例5(FS−1)の薬剤の発癌活性試験では、大腸菌(E.coli)Ec1000(PJE43)のSOS Chromotestにおける遺伝子毒性活性の同定、1〜2000μg/mlの濃度範囲での血球における及び横紋筋肉腫の細胞培養物における一本鎖DNA破断の同定及び回復(不定期)DNA合成の決定を含む、一連の試験を使用した。FS−1の発癌活性の研究の結果を表20に提示する。使用した条件では、試験したFS−1は、大腸菌Ec1000(PJE43)の試験菌株の細胞においてSOS反応インデューサーではない。
【0171】
陰性の結果は、200、300、600μg/mlのFS−1に曝露されたときに認められた(一本鎖DNA破断の不在)。
【0172】
実施例5の薬剤の遺伝子毒性活性は、提供者の末梢血の細胞における不定期(回復)DNA合成の誘導試験で研究した。50、100、200μg/mlの濃度範囲では、代謝活性化を有する又は有さないにかかわらず、不定期合成への刺激が検出されないことが示された。
【0173】
代謝活性化を有するもの及び代謝活性化を有さないものの両方の実験において、Ames試験の際に、研究されたサルモネラ・チフィムリウムの4つ全ての突然変異誘発性菌株の増殖活性には、陰性対照と比較してFS−1の影響後、有意な変化は検出されなかった。
【0174】
その上、突然変異誘発性菌株の増殖に対する効果の欠如は、1.0及び2.0mg/cuclなどの比較的高い濃度でも記録された。したがって、FS−1は、Ames試験においてサルモネラ・チフィムリウムのヒスチジン栄養要求性菌株のDNAに対して突然変異誘発性ではない。
【0175】
マウスリンパ腫L5178Y細胞及びヒト肝細胞癌HepG2細胞の両方へのFS−1のDNA損傷効果の分析は、これらの系の細胞において彗星状(尾状)DNAの自発的形成に有意な増加がないことを明らかにした。更に、両方の種類の研究細胞系の細胞質における彗星状(尾状)DNAの形成に対して効果を誘導する薬剤の不在も、マウスにおける肝臓酵素による代謝活性化の存在下で明らかとなった。したがって、研究範囲の濃度の薬剤は、1.0及び2.0mg/mlのように大きい場合でも、代謝活性化の不在及び後の両方において、インビトロで真核生物DNAに対して損傷効果を有さない。
【0176】
表21は、細胞遺伝学的活性研究の結果を提示する。染色体異常を有する骨髄白血球のレベルに統計的に有意な差は検出されず、動物体重の22mg/kgの用量のFS−1の単回投与の影響の後、骨髄白血球の染色体異常の量及び質は見出されなかった。更に、動物体重の8mg/kgの用量のFS−1の反復投与も、対照と比較して、骨髄白血球の染色体異常の数及び特徴の両方に対する影響の欠如によって特徴付けられた(表21)。
【0177】
したがって、調査した用量のFS−1は、インビボで真核生物DNAに対して損傷効果を有さない。
【0178】
表22に提示されているデータは、動物体重の22mg/kgの用量での単回FS−1投与の後、小核を有する多染性及び正染色性骨髄赤血球の含有量、並びにそれらにおける小核の数に増加がないことを示す。加えて、動物体重の8mg/kgの用量での反復薬剤投与も、対照と比較して、小核を含有する多染性及び正染性赤血球の数と赤血球における小核の総数の両方に対する効果の不在によって特徴付けられる(表22)。
【0179】
したがって、調査用量の薬剤は、インビボでの通常の発育の経過において、真核生物DNAに対する損傷効果を有さず、特に小核の形態の核からのDNAの一部の放出がない。
【0180】
生殖細胞におけるFS−1による優位致死突然変異の誘導を研究する実験の結果は、動物体重の22mg/kgの用量での筋肉内注射を介して薬剤に曝露された動物(試験群1.1〜1.3)における着床後損失のレベルが、対照群と比較して変化がなかったことを示している(表23)。
【0181】
したがって、FS−1は、調査用量で体内に投与されたとき、哺乳類においてインビボで生殖細胞(成熟精子細胞、後期及び初期精細胞)に優位致死突然変異の発生を誘導せず、すなわち、優位致死対立遺伝子の試験において突然変異誘発活性を有さない。
【0182】
インビトロ及びインビボの両方における、異なる感受性を有する試験系でFS−1突然変異誘発活性を試験する多数の実験の結果は、薬剤が有意な量であっても突然変異誘発性ではないことを示している。このことは、FS−1が、活動的な分化を含む真核細胞との相互作用及び高度な感受性の部類に属する生殖細胞との相互作用において、DNA損傷及び特定の突然変異誘発効果を有さず、すなわち、遺伝学的装置の通常の実行においてDNA損傷及び/又は機能不全を引き起こさないことを示している。
【0183】
電離放射線量の曝露、すなわち800Rの場合では、照射の前に0.15mlのFS−1を受けたマウスの群では、特定の放射線防護効果が達成された。30日間の最終日までには、対照群では生存率は30%であり、平均寿命は18.9±0.4日間であり、実験群では、これらの数値はそれぞれ70%及び24.6±0.7日間であった。スチューデントt検定を使用した結果(平均寿命)の統計的分析は、平均寿命に関して有意な差(30%)を示した(p<0.05)。
【0184】
観察期間の最終日における800Rの線量でのラットの実験では、26.7%のラットが生存し、この群の平均寿命は17.2±0.5日間であった。800Rの線量で曝露される前に1.0mlのFS−1を胃内に受けたラットでは、生存率は50%であり、平均寿命は24%延びた(21.3±0.8日間)(
図12)。そしてこの場合では、特定の放射線防護効果があった。スチューデントt検定を使用した結果(平均寿命)の統計的分析は、平均寿命に関して有意な差を示した(p<0.05)。実験の結果を比較すると、FS−1は、半致死(LD
50)に近い線量で照射された動物において現れた特定の放射線防護効果を有すると結論付けることができる。
【0185】
Venturi(2000)により行われた研究によると、ヨウ素は地球の生命の夜明けにおける最初の酸化防止剤であり、人類の進化において桁外れに大きな役割を果たしてきた。主な有害放射線因子は、照射直後に体内に形成されるフリーラジカルであることが良く知られている(Bacq,1965;Alexander,Bacq,1974;Halliwell,1985,1991)。ヨウ素を含む酸化防止剤は、フリーラジカルと結合して、体の生体分子との相互作用を妨げる(Shimoi,1996;Halliwell,1985,1991)。
【0186】
実施例5(FS−1)のABAに基づいた薬剤の治療作用の有効性は、MDR肺結核を有する志願患者の3つの群における臨床試験によって確立された(表24)。
【0187】
第1群(n=19)は、体重の0.1ml/kgの用量でのII型の抗TB薬と実施例5のABAとの併用療法を受けた。第2群(n=17)は、体重の0.1ml/kgの用量でのII型の抗TB薬とプラセボを受け、第3群(n=19)は、体重の0.125ml/kgの用量でのII型の抗TB薬とFS−1を受けた。全ての薬剤を1日1回投与した。
【0188】
耐性肺結核を有する患者の複合体治療の最初の1か月間の止血(APTT、プロトロンビン指数、トロンビン時間、フィブリノゲン)に基づいた薬剤安全性研究は、0.1及び0.125mg/kgの使用用量のFS−1が凝血に対して効果がないことを示した。更に、療法の1か月後の甲状腺超音波検査は、被験者にどのような変化も検出しなかった。
【0189】
結核菌の薬剤感受性試験によると、I型のTB薬(以降、TBD)(イソニアジド(H)、リファンピシン(R)、エタンブトール,(E)、ストレプトマイシン(S))に対する耐性が立証された。患者を無作為に3つの群にした。第1群(一次)は、II型のTBD(サイクロセリン(Cs)、オフロキサシン(Ofs)、PAS、プロチオナミド(Pto)、カプリオミシン(capriomicine)(Cm))+FS−1(0.1ml/kg)を受け、第2群(一次)は、II型のTBD(サイクロセリン(Cs)、オフロキサシン(Ofs)、PAS(Pas)、プロチオナミド(Pto)、カプリオミシン(Cm))+FS−1(0.125ml/kg)を受け、第3群(対照)は、II型のTBD(サイクロセリン(Cs)、オフロキサシン(Ofs)、PAS(Pas)、プロチオナミド(Pto)、カプリオミシン(Cm))+プラセボ)を受けた。
【0190】
被験者の平均年齢は33.14±9.03(歳)であり、そのうち75.8%が男性であり、24.2%が女性であった。臨床形態のうち、最も頻繁な形態は浸潤性であり(70.1%)、頻度の低いものは線維海綿状(fibrocavernous)であった(28.2%)。群は均一であり、背景特徴に有意な差は観察されなかった。
【0191】
薬剤の治療効果の予備研究は、スメア変換が、治療の3か月目から始まって一次群において有意に高いことを示し、これは併用療法におけるFS−1の効能を立証している(表28)。
【0192】
表29に提示されているデータは、療法の3か月目から始まって、陰性培養物が対照群と比較して一次群において有意に高いことも示し、これはTB治療におけるFS−1の効能を立証している。
【0193】
固形培地の喀痰接種の伝統的な方法(表30)は、II型の抗TB薬と組み合わせてFS−1を受けている耐性TBの患者において、陰性結果の細菌検査の特定の重量が、療法の2か月後に対照と比較して有意に高いことも示唆し、これを3及び4か月後も追跡することができる。
【0194】
II型の抗TB薬と組み合わせてFS−1を受けているMDR結核患者のX線パターンの変化は、治療の1か月後の早さで、陽性動力学が対照群(プラセボ+TBD、II型)よりも有意に高いこと、すなわち、浸潤の吸収、病巣の硬化及び空洞の退縮(表31)が早期に開始することを示唆している。
【0195】
表32から分かるように、主要な群に体重増加が観察され、一方、対照群では、反対に体重が減少し、3か月後には体重の有意な変化が第1群及び第2群において明らかであり、4か月後には第3群において明らかである。
【0196】
第II相臨床試験の予備段階の結果は、MDR TBの患者における併用抗結核療法へのFS−1の適用の効能を立証している。
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【表28】
【表29】
【表30】
【表31】
【表32】
【表33】
【表34】
【表35】
【表36】
【表37】
【表38】
【表39】
【表40】
【表41】