(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
オスマゲンは硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、2−ベンゼンカルボン酸、安息香酸、フマル酸、クエン酸、マレイン酸、セバシン酸、ソルビン酸、アジピン酸、エデト酸、グルタミン酸、トルエンスルホン酸、酒石酸、マンニトール、スクロース、ソルビトール、キシリトール、ラクトース、デキストロース、およびトレハロースからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医薬剤形。
医薬剤形。
酸化防止剤はBHT、BHA、メタ重亜硫酸ナトリウム、没食子酸プロピル、グリセリン、ビタミンE、クエン酸およびパルミチン酸アスコルビルからなる群から選択される、請求項15に記載の医薬剤形。
前記水溶性ポリマーが、水溶性セルロース誘導体、アカシア、デキストリン、グアーガム、マルトデキストリン、アルギン酸ナトリウム、デンプン、ポリアクリレート、およびポリビニルアルコールからなる群から選択される、請求項19に記載の医薬剤形。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明は、炎症性および自己免疫性疾患、特に関節リウマチ(RA)を治療するためのトファシチニブの経口持続放出組成物に関する。トファシチニブの持続放出は、限定はしないが、浸透圧剤形、マトリックス剤形、多粒子剤形、胃内滞留剤形、およびパルス剤形の使用を含めて、医薬品業界で知られているいかなる手段によって実現してもよい。
【0052】
持続放出−マトリックス系(錠剤)
一実施形態では、トファシチニブは、浸食性または非浸食性のポリマー性マトリックス錠剤に組み込まれる。浸食性マトリックスとは、純水中で浸食性または膨潤性または溶解性のいずれかである、またはポリマー性マトリックスが、浸食または溶解を引き起こすのに十分なだけイオン化するのに、酸または塩基の存在が必要になるという意味の、水性浸食性または水膨潤性または水性溶解性という意味である。水性の使用環境と接触させたとき、浸食性ポリマー性マトリックスは、吸水し、トファシチニブを閉じ込める含水膨潤ゲルまたは「マトリックス」を形成する。含水膨潤したマトリックスは、使用環境中で徐々に浸食、膨潤、崩壊、分散または溶解し、それによって、トファシチニブの使用環境への放出が制御される。そのような剤形の例は、当業界でよく知られている。たとえば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、2000を参照されたい。
【0053】
水で膨潤したマトリックスの重要な成分は、一般に、オスモポリマー(osmopolymer)、ヒドロゲル、または水膨潤性ポリマーとして記載されることもある、水膨潤性、浸食性、または可溶性ポリマーである。このようなポリマーは、線状でも、分枝状でも、または架橋したものでもよい。こうしたポリマーは、ホモポリマーでもコポリマーでもよい。例となるポリマーとして、キチン、キトサン、デキストラン、プルランなどの自然発生する多糖;アガーガム、アラビアガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、トラガカントガム、カラゲナン、ガティガム、グアーガム、キサンタンガム、およびスクレログルカン;デキストリンやマルトデキストリンなどのデンプン;ペクチンなどの親水コロイド;アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、カリウム、またはカルシウム、アルギン酸プロピレングリコールなどのアルギネート;ゼラチン;コラーゲン;およびセルロース化合物が挙げられる。「セルロース化合物」とは、糖繰り返し単位上のヒドロキシル基の少なくとも一部分を化合物と反応させて、エステル結合またはエーテル結合した置換基を形成することにより修飾されているセルロースポリマーを意味する。たとえば、セルロース化合物のエチルセルロースは、糖繰り返し単位に結合しているエーテル結合したエチル置換基を有し、セルロース化合物の酢酸セルロースは、エステル結合した酢酸置換基を有する。
【0054】
浸食性マトリックス用のセルロース化合物は、エチルセルロース(EC)、メチルエチルセルロース(MEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、酢酸トリメリト酸セルロース(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP)、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)、酢酸トリメリト酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAT)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)などの水性可溶性および水性浸食性セルロース化合物を包含する。
【0055】
このようなセルロース化合物の特に好ましいクラスは、種々のグレードの低粘性(MW50,000ダルトン以下)および高粘性(MW50,000ダルトン超)HPMCを包含する。市販品として入手可能な低粘性HPMCポリマーとしては、Dow METHOCEL(商標)シリーズE3、E5、E15LV、E50LV、およびK100LVが挙げられ、高粘性HPMCポリマーとしては、E4MCR、E10MCR、K4M、K15M、およびK100Mが挙げられ、この群の中で特に好ましいのは、METHOCEL(商標)Kシリーズである。市販品として入手可能な他の種類のHPMCとして、信越METOLOSE(商標)90SHシリーズも挙げられる。一実施形態では、HPMCは、HPMCの2%(w/v)水溶液の粘性が約120cp未満であるという意味で、粘性が低い。好ましいHPMCは、HPMCの2%(w/v)水溶液の粘性が80〜120cpの範囲にあるもの(METHOCEL(商標)K100LVなど)である。
【0056】
浸食性マトリックス材料として有用な他の材料として、限定はしないが、プルラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、グリセロール脂肪酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、エタクリル酸またはメタクリル酸のコポリマー(EUDRAGIT(登録商標)、Rohm America,Inc.、ニュージャージー州Piscataway)、ならびに他のアクリル酸誘導体、たとえば、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、(2−ジメチルアミノエチル)メタクリレート、および(トリメチルアミノエチル)メタクリレートクロリドのホモポリマーおよびコポリマーが挙げられる。
【0057】
浸食性マトリックスポリマーは、オスモポリマー、オスマゲン(osmagen)、溶解性増強剤または抑制剤、および剤形の安定性を増進しまたは加工を円滑にする賦形剤を含めて、医薬品業界で知られている添加剤および賦形剤も含有してよい。
【0058】
非浸食性マトリックス系では、トファシチニブは、不活性マトリックス中に分布している。薬物は、不活性マトリックスを通しての拡散によって放出される。不活性マトリックスに適する材料の例として、不溶性プラスチック、たとえば、エチレンと酢酸ビニルのコポリマー、アクリル酸メチル−メタクリル酸メチルコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン;親水性ポリマー、たとえば、エチルセルロース、酢酸セルロース、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドンとしても知られる);および脂肪族化合物、たとえば、カルナウバ蝋、ミクロクリスタリンワックス、トリグリセリドが挙げられる。このような剤形については、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版(2000)においてさらに記載されている。
【0059】
持続放出−マトリックス系(多粒子)
別の実施形態では、マトリックス多粒子は、複数のトファシチニブ含有粒子を含み、各粒子は、トファシチニブと、トファシチニブの水性媒質への溶解速度を制限しうるマトリックスが形成されるように選択された1種または複数の賦形剤との混合物を含む。この実施形態に有用なマトリックス材料は、一般に、蝋、セルロース、他の水不溶性ポリマーなどの、水に不溶性の材料である。必要となれば、マトリックス材料に、結合剤または透過性改変剤として使用することのできる水溶性材料を場合により配合してもよい。こうした剤形の製造に有用なマトリックス材料としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの結合剤が加えられているグレードの微結晶性セルロースを含めて、Avicel(FMC Corp.(ペンシルヴェニア州フィラデルフィア)の登録商標)などの微結晶性セルロース、パラフィン、変性植物油、カルナウバ蝋、硬化ヒマシ油、蜜蝋などの蝋、ならびにポリ(塩化ビニル)、ポリ(酢酸ビニル)、酢酸ビニルとエチレンのコポリマー、ポリスチレンなどの合成ポリマーが挙げられる。マトリックスに場合により配合することのできる水溶性結合剤または放出調整剤としては、水溶性ポリマー、たとえば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、ポリ(N−ビニル−2−ピロリジノン)(PVP)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、キサンタンガム、カラゲナン、ならびに他のそうした天然および合成材料が挙げられる。加えて、放出調整剤として機能する材料として、糖や塩などの水溶性材料も挙げられる。好ましい水溶性材料としては、ラクトース、スクロース、グルコース、およびマンニトール、ならびにHPC、HPMC、およびPVPが挙げられる。
【0060】
マトリックス多粒子の製造プロセスは、押出し/球形化プロセスである。このプロセスでは、トファシチニブを、結合剤と共に湿式塊状化し(wet−massed)、多孔板または打抜型で押し出し、回転盤に載せる。押出物は、理想的に破砕されて断片になり、これが回転板上で丸められて、球形、回転楕円体、または丸みを帯びた棒になる。この方法のための別のプロセスおよび組成は、水を使用して、約20〜75%の微結晶性セルロースを含む、それに応じて約80〜25%のトファシチニブと混和された混和物を湿式塊状化するものである。
【0061】
マトリックス多粒子の別の製造プロセスは、蝋顆粒の調製である。このプロセスでは、所望の量のトファシチニブを液体蝋と共に撹拌して、均質な混合物を形成し、冷却し、次いでスクリーンに押し通して顆粒を形成する。好ましいマトリックス材料は、蝋様物質である。いくつかの好ましい蝋様物質は、硬化ヒマシ油、カルナウバ蝋、およびステアリルアルコールである。
【0062】
マトリックス多粒子の別の製造プロセスは、有機溶媒を使用して、トファシチニブのマトリックス材料との混合を助長するものである。この技術は、材料を溶融した状態で用いた場合、薬物またはマトリックス材料の分解が引き起こされる、または溶融粘度が許容されないものとなり、それによって、トファシチニブのマトリックス材料との混合が妨げられる、不適当に高い融点を有するマトリックス材料の利用が求められるときに使用することができる。トファシチニブおよびマトリックス材料を適量の溶媒と合わせてペーストを形成し、次いでスクリーンに押し通して顆粒を形成し、次いで、これから溶媒を除去することができる。別法としては、トファシチニブおよびマトリックス材料を、マトリックス材料を完全に溶解させるのに十分な溶媒と合わせ、得られる溶液(固体薬物粒子を含有することもある)をスプレー乾燥して、粒状剤形を形成することもできる。この技術は、マトリックス材料がセルロースエーテルやセルロースエステルなどの高分子量合成ポリマーであるときに好ましい。プロセスに通常用いられる溶媒として、アセトン、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、および2種以上の混合物が挙げられる。
【0063】
一実施形態では、マトリックス多粒子は、溶融スプレー凝結プロセスによって形成する。溶融凝結コアは、マトリックス材料を含む。マトリックス材料は、2つの機能に役立つ。第一に、マトリックス材料により、コーティングしやすい、比較的滑らかな、丸みのあるコアの形成が可能になる。第二に、マトリックス材料に、コアに組み込まれてもよい任意選択の賦形剤および/または薬物が結合される。マトリックス材料は、次の物理的性質を有する:すなわち、以下で詳述するとおり、溶融した状態で、粘性が多粒子の形成に十分な低さであること、およびその融点より低く冷却したとき、急速に固体に凝結すること。コアに薬物が組み込まれている多粒子については、マトリックスは、融点が薬物の融点または分解点より低く、薬物を実質的に溶解しないことが好ましい。
【0064】
溶融凝結コアは、本質的に、マトリックス材料と、場合により他の賦形剤とからなる連続相からなり、任意選択の薬物粒子および任意選択の膨潤剤粒子が中に封入されている。このため、コーティングするのに十分な大きさのある滑らかなコアを形成するのに十分な量のマトリックス材料が存在しなければならない。薬物や膨潤剤などの固体粒子を含有するコアの場合では、コアは、薬物および膨潤剤を封入するのに十分な量のマトリックス材料を含有して、従来のスプレーコーティングプロセスによって、でこぼこした形状のものより容易にコーティングされる、比較的滑らかで球形のコアを形成しなければならない。マトリックス材料は、コア中に、コーティングされていないコアの質量を基準として、少なくとも約30重量パーセント、少なくとも約50重量パーセント、少なくとも約70重量パーセント、少なくとも約80重量パーセント、少なくとも約90重量パーセントから、100重量パーセントまで存在してよい。
【0065】
小さく滑らかな丸みのあるコアを形成するために、マトリックス材料は、溶融させ、次いで微粒化することができるものでなければならない。マトリックス材料または材料の混合物は、25℃で固体である。しかし、マトリックス材料は、200℃未満の温度で、溶融し、または任意選択の加工助剤が加えられて溶融しうるため、以下で述べる溶融凝結加工に適するようになる。マトリックス材料は、融点が50℃〜150℃の間であることが好ましい。用語「溶融する」とは、一般に、結晶質材料の、その融点で起こる、その結晶質状態からその液体状態への転移を指し、用語「溶融した」とは、一般に、そのような結晶質材料がその流体状態にあることを指すが、本明細書では、これら用語をより大まかに用いる。「溶融する」の場合、この用語は、任意の材料または材料の混合物が、流体状態の結晶質材料と同じようにしてポンピングまたは微粒化することができるという意味で流体になるのに十分に、これを加熱することを指すのに使用する。同様に「溶融した」とは、そのような流体状態にある、任意の材料または材料の混合物を指す。
【0066】
マトリックス材料は、蝋、長鎖アルコール(C
12以上)、脂肪酸エステル、グリコール化脂肪酸エステル、ホスホグリセリド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、長鎖カルボン酸(C
12以上)、糖アルコール、およびこれらの混合物からなる群から選択される。例となるマトリックス材料として、精製度の高い形態の蝋、たとえば、カルナウバ蝋(Carnauba wax)、白色および黄色蜜蝋、セレシン蝋、ミクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス;長鎖アルコール、たとえば、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ポリエチレングリコール;脂肪酸エステル(脂肪またはグリセリドとしても知られる)、たとえば、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、モノ、ジ、およびトリベヘン酸グリセリルの混合物を始めとする、モノ、ジ、およびトリアルキルグリセリドの混合物、トリステアリン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、および硬化綿実油を始めとする硬化植物油;グリコール化脂肪酸エステル、たとえば、ステアリン酸ポリエチレングリコールおよびジステアリン酸ポリエチレングリコール;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリエトキシル化ヒマシ油誘導体;ステアリン酸などの長鎖カルボン酸;ならびにマンニトールやエリトリトールなどの糖アルコールが挙げられる。マトリックス材料は、前述のもののいずれかの混合物などの、材料の混合物を含むものでもよい。
【0067】
コアは、コーティングされていないコアの質量を基準として0〜40重量パーセントの量でコア中に存在する、他の様々な賦形剤も含有してよい。好ましい賦形剤の一つは、コアが水を取り込み、引き続いて膨潤剤が膨張する速度を増大させるのに使用することのできる溶解増強剤である。溶解増強剤は、マトリックス材料とは異なる材料である。溶解増強剤は、別の相にしてもよいし、またはマトリックス材料と一緒に単一の相にしてもよい。溶解増強剤の少なくとも一部分は、マトリックス材料と相が別であることが好ましい。水がコアに浸入するにつれて、溶解増強剤は、水のより急速なコアへの浸入を可能にする流路を残しながら、溶解する。一般に、溶解増強剤は、両親媒性化合物であり、一般にマトリックス材料より親水性である。溶解増強剤の例として、ポロキサマー、ドキュセート塩、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンモノエステルなどの界面活性剤;グルコース、キシリトール、ソルビトール、マルチトールなどの糖;塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸カリウムなどの塩;アラニンやグリシンなどのアミノ酸、およびこれらの混合物が挙げられる。界面活性剤タイプの溶解増強剤の一つが、ポロキサマー(BASF Corp.からLUTROLまたはPLURONICシリーズとして市販されている)である。
【0068】
コアは、薬物の多粒子からの放出を阻害し、または遅らせる薬剤などの、任意選択の他の賦形剤も含有してよい。そのような溶解阻害剤は、一般に疎水性であり、フタル酸ジブチルなどのジアルキルフタレート、およびミクロクリスタリンワックスやパラフィンワックスなどの炭化水素蝋がこれに含まれる。有用な別のクラスの賦形剤は、コアの形成に使用される溶融した供給材料の粘性の調整に使用することのできる材料を包含する。このような粘性を調整する賦形剤は、一般に、コアの0〜25重量パーセントを占める。溶融した供給材料の粘性は、粒径分布の狭いコアを得ることにおいて重要な変動要素である。たとえば、回転盤アトマイザー(spinning−disk atomizer)を用いるとき、溶融混合物の粘性は、少なくとも約1cpかつ約10,000cp未満、好ましくは少なくとも50cpかつ約1000cp未満であることが好ましい。溶融混合物がこれらの範囲外の粘性を有する場合、粘性調整剤を加えて、その粘性範囲内で溶融混合物を得ることができる。粘性を低下させる賦形剤の例としては、ステアリルアルコール、セチルアルコール、低分子量ポリエチレングリコール(すなわち、約1000ダルトン未満)、イソプロピルアルコール、および水が挙げられる。粘性を増大させる賦形剤の例としては、ミクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、合成蝋、高分子量ポリエチレングリコール(すなわち、約5000ダルトン超)、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、二酸化ケイ素、微結晶性セルロース、ケイ酸マグネシウム、糖、および塩が挙げられる。
【0069】
コアに薬物を含有する実施形態については、他の賦形剤を加えて、コアからの薬物の放出特性を調整してもよい。たとえば、酸または塩基を組成物中に含めて、薬物が水性の使用環境中に放出される速度を調整することができる。組成物中に含めることのできる酸または塩基の例として、クエン酸、アジピン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、リン酸水素ナトリウムおよびリン酸三ナトリウム(di− and tribasic sodium phosphate)、リン酸水素カルシウムおよびリン酸三カルシウム(di− and tribasic calcium phosphate)、モノ、ジ、およびトリエタノールアミン、炭酸水素ナトリウム、ならびにクエン酸ナトリウム二水和物が挙げられる。このような賦形剤は、コアの合計質量を基準として、コアの0〜25重量パーセントを占めてよい。
【0070】
コア上の静電荷を低減するまたはマトリックス材料の溶融温度を下げる賦形剤などの、さらに他の賦形剤を加えて、加工を改善してもよい。そのような帯電防止剤の例として、タルクおよび二酸化ケイ素が挙げられる。着香剤、着色剤、および他の賦形剤も、その通常の目的で、その通常の量で加えることができる。このような賦形剤は、コアの合計質量を基準として、コアの0〜25重量パーセントを占めてよい。
【0071】
多粒子は、(a)薬物、グリセリド(または他の蝋)、およびいずれかの放出調整剤を含む溶融混合物を形成するステップと、(b)ステップ(a)の溶融混合物を微粒化手段に送出して、溶融混合物から液滴を形成するステップと、(c)ステップ(b)からの液滴を凝結させて、多粒子を形成するステップとを含む溶融凝結プロセスによって作製される。
【0072】
加工条件は、薬物の結晶化度が維持されるように選択する。溶融混合物の温度は、薬物の融点より低く保つ。薬物の少なくとも70重量パーセント、より好ましくは少なくとも80重量パーセント、最も好ましくは少なくとも90重量パーセントが、溶融した供給材料内で結晶質のままであることが好ましい。
【0073】
本明細書で使用する用語「溶融混合物」とは、十分に加熱された結果、混合物が、液滴形成または微粒化ができるほど十分に流動性になっていることが求められる、薬物と、グリセリド(または他の蝋)と、いずれかの放出調整剤とからなる混合物を指す。溶融混合物の微粒化は、以下で述べる微粒化法のいずれかを使用して実施することができる。一般に、混合物は、遠心式または回転盤アトマイザーによって及ぼされるような、圧力、せん断、遠心力などの1つまたは複数の力がかかったときに流れるという意味で、溶融している。したがって、薬物/グリセリド/放出調整剤混合物は、薬物/グリセリド/放出調整剤混合物のいずれかの部分が、全体としての混合物を微粒化することのできるほど十分に流動性になっているとき、「溶融した」とみなすことができる。一般に、混合物は、溶融混合物の粘性が約20,000cp未満であるとき、微粒化するのに十分に流動性である。多くの場合、混合物は、グリセリド/放出調整剤混合物が、比較的鮮明な融点を示すのに十分に結晶質である場合では、混合物がグリセリド/放出調整剤混合物の融点より高く加熱されるときに、またはグリセリド/放出調整剤混合物が非晶質である場合、グリセリド/放出調整剤混合物の軟化点より高温で、溶融状態になる。したがって、溶融混合物は、多くの場合、固体粒子の流体マトリックス懸濁液である。好ましい一実施形態では、溶融混合物は、実質的に結晶質の薬物粒子が、実質的に流体であるグリセリド/放出調整剤混合物に懸濁した混合物を含む。このような場合において、薬物の一部分は、グリセリド/放出調整剤混合物に溶解していてもよく、グリセリド/放出調整剤混合物の一部分は、固体のままでもよい。
【0074】
事実上どのプロセスを使用して溶融混合物を形成してもよい。一つの方法は、タンクに入ったグリセリド/放出調整剤混合物を、これが流体になるまで加熱し、次いで、溶融したグリセリド/放出調整剤混合物に薬物を加えるものである。一般に、グリセリド/放出調整剤混合物は、これが流体になる温度より約10℃以上高い温度に加熱する。グリセリド/放出調整剤成分のうち1つまたは複数が結晶質であるとき、温度は、一般に、混合物のうち融点が最低である材料の融点より約10℃以上高い。このプロセスは、微粒化するまで、供給材料の少なくとも一部分が流体のままになるように実施する。グリセリド/放出調整剤混合物が流体になったなら、流体担体または「溶融物」に薬物を加えることができる。用語「溶融する」とは、一般に、結晶質材料の、その融点で起こる、その結晶質状態からその液体状態への転移を厳密に指し、用語「溶融した」とは、一般に、そのような結晶質材料がその流体状態にあることを指すが、本明細書では、これら用語をより大まかに用い、「溶融する」の場合、任意の材料または材料の混合物が、流体状態の結晶質材料と同じようにしてポンピングまたは微粒化することができるという意味で流体になるのに十分に、これを加熱することを指す。同様に「溶融した」とは、そのような流体状態にある、任意の材料または材料の混合物を指す。別法として、薬物、グリセリド(または他の蝋)、および放出調整剤をタンクに加え、混合物を流体になるまで加熱してもよい。
【0075】
グリセリド/放出調整剤混合物が流体になり、薬物を加えたなら、溶融混合物を混合して、そこでの薬物の均一な分布を確実にする。混合は、一般に、オーバーヘッドミキサー、磁気駆動のミキサーおよび撹拌子、遊星ミキサー、ホモジナイザーなどの機械的手段を使用して行う。場合により、タンクの中身は、タンクからポンプで汲み出し、インライン静的ミキサーまたは押出機に通し、次いでタンクに戻すこともできる。溶融した供給材料の混合に使用するせん断の量は、薬物の溶融担体への均一な分布が確実になるのに十分な程度に強くすべきである。せん断の量は、薬物の形態が変化しない、すなわち、非晶質薬物の量の増加または薬物の結晶質形態の変化が生じない程度に少なく保つ。せん断はまた、薬物結晶の粒径を小さくするほど強くないことが好ましい。溶融混合物は、数分〜数時間混合することができ、混合時間は、供給材料の粘性、ならびに薬物および担体中の任意選択のいずれかの賦形剤の溶解度に応じて決まる。
【0076】
溶融混合物を調製する代替法は、2つのタンクを使用し、グリセリド(もしくは他の蝋)または放出調整剤のいずれかを一方のタンクで、他方の成分を別のタンクで溶融させることである。これらのタンクの一方に薬物を加え、上述のとおりに混合する。次いで、2種の溶融物を、ポンプで、インライン静的ミキサーまたは押出機に通して、以下で述べる微粒化プロセスに向けられる、単一の溶融混合物を生成する。
【0077】
溶融混合物の調製に使用することのできる別の方法は、継続的な撹拌によるタンク系を使用することである。この系では、継続的な撹拌のための手段を備え付けた加熱されたタンクに、薬物、グリセリド(または他の蝋)、および放出調整剤を継続的に加え、一方、溶融した供給材料は、タンクから継続的に除去する。タンクの中身は、中身の温度が、担体の融点より約10℃以上高くなるように加熱する。薬物、グリセリド(または他の蝋)、および放出調整剤は、タンクから除去される溶融混合物が所望の組成を有するようになる割合で加える。薬物は通常、固体形態で加えられ、タンクに加える前に予熱してもよい。グリセリド(または他の蝋)および放出調整剤も、継続的な撹拌によるタンク系に加える前に、予熱してもよく、または予備溶融さえすることができる。
【0078】
溶融混合物を形成する別の方法は、押出機によるものである。「押出機」とは、熱および/またはせん断力によって、溶融した押出物を創出し、かつ/または固体および/または液体(たとえば、溶融した)供給材料から、均一に混合された押出物を生成する、デバイスまたはデバイスの集合を意味する。このようなデバイスとして、限定はしないが、一軸スクリュー押出機;同回転、反転、かみ合い、および非かみ合い押出機を含めた、二軸スクリュー押出機;多軸スクリュー押出機;熱シリンダーと、溶融した供給材料を押し出すピストンとからなる、ラム押出機;溶融した供給材料を同時に加熱およびポンプ送出する、一般に反転式の、熱歯車ポンプからなる歯車ポンプ押出機;ならびにコンベヤー押出機が挙げられる。コンベヤー押出機は、スクリューコンベヤーや空気コンベヤーなどの、固体および/または粉末状の供給材料を輸送するためのコンベヤー手段と、ポンプとを含む。
【0079】
コンベヤー手段の少なくとも一部分は、溶融混合物の生成に十分な高温に加熱される。溶融混合物は、溶融混合物をアトマイザーに振り向けるポンプへと向かわせる前に、場合により蓄積タンクに向かわせてもよい。場合により、ポンプの前または後にインラインミキサーを使用して、溶融混合物が実質的に均質になるのを確実にしてもよい。こうした押出機のそれぞれにおいて、溶融混合物が混合されて、均一に混合された押出物が形成される。このような混合は、混合素子、混練素子、および逆流によるせん断混合を含めた、種々の機械的手段および加工手段によって実現することができる。したがって、このようなデバイスでは、組成物が押出機に供給され、押出機によって溶融混合物が生成され、溶融混合物をアトマイザーに振り向けることができる。
【0080】
一実施形態では、組成物は、固体粉末の形態で押出機に供給される。粉末状の供給材料は、当業界でよく知られている、含量均一性の高い粉末状混合物を得るための方法を使用して調製することができる。一般に、実質的に均一な混和物を得るには、薬物、グリセリド(または他の蝋)、および放出調整剤の粒径が同様であることが望ましい。しかし、これは、本発明の実施の成功に必須ではない。
【0081】
実質的に均一な混和物を調製するプロセスの一例は、次のとおりである。まず、グリセリド(または他の蝋)および放出調整剤を、その粒径が薬物の粒径とほぼ同じになるように粉砕し、次に、薬物、グリセリド(または他の蝋)、および放出調整剤をVブレンダーで20分間混和し、次いで、得られる混和物をほぐして(de−lumped)、大きな粒子を除去し、最後に、得られる混和物をさらに4分間混和する。場合によっては、グリセリド(または他の蝋)および放出調整剤は、こうした材料の多くが、蝋様物質になる傾向があり、粉砕プロセスの間に生じる熱によって、粉砕設備が粘着物により動かなくなる場合があるため、所望の粒径に粉砕することが難しい。そのような場合では、以下で述べるような溶融またはスプレー凝結プロセスを使用して、グリセリド(または他の蝋)および放出調整剤の小さい粒子を形成することができる。得られる、グリセリド(または他の蝋)および放出調整剤の凝結粒子を、次いで薬物と混和して、押出機への供給材料を生成することができる。
【0082】
押出機への供給材料を生成する別の方法は、タンクに入ったグリセリド(または他の蝋)および放出調整剤を溶融させ、上でタンク系について述べたとおりに薬物に混合し、次いで溶融混合物を冷却して、薬物と担体の凝固した混合物を生成することである。次いで、この凝固した混合物を均一な粒径に粉砕し、押出機に供給することができる。
【0083】
溶融混合物の生成に、二供給押出機系を使用することもできる。この系では、すべてが粉末状の形態である、薬物、グリセリド(または他の蝋)、および放出調整剤が、押出機に、同じまたは異なる供給口から供給される。このように、成分を混和する必要がなくなる。
【0084】
別法として、粉末形態のグリセリド(または他の蝋)および放出調整剤を一度に押出機に供給して、押出機によるグリセリド(または他の蝋)および放出調整剤の溶融を可能にしてもよい。次いで、溶融したグリセリド(または他の蝋)および放出調整剤に、途中まで押出機の長さに沿った、第二の供給材料送出口から薬物を加え、したがって、薬物が溶融したグリセリド(または他の蝋)および放出調整剤と接触する時間は、最小限に抑えられる。第二の供給材料送出口が押出機出口に近いほど、押出機における薬物の滞在時間は短い。任意選択の賦形剤を多粒子に含めるとき、多供給押出機を使用することができる。
【0085】
別の方法では、組成物は、押出機に供給されるとき、粉末というより、大きい固体粒子または固体塊の形態である。たとえば、凝固した混合物を上述のとおりに調製し、次いで、ラム押出機のシリンダーに適合するように成形し、粉砕せずにそのまま使用することができる。
【0086】
別の方法では、グリセリド(または他の蝋)および放出調整剤を、たとえばタンクにおいてまず溶融させ、溶融した形態で押出機に供給することができる。次いで、グリセリド(または他の蝋)および放出調整剤を押出機に供給するのに使用したのと同じまたは異なる送出口から、通常は粉末状の形態である薬物を、押出機に導入することができる。この系は、グリセリド(または他の蝋)および放出調整剤の溶融ステップを、混合ステップと分ける利点を有し、薬物の、溶融したグリセリド(または他の蝋)および放出調整剤との接触が最小限に抑えられる。
【0087】
上の方法のそれぞれにおいて、押出機は、グリセリド/放出調整剤混合物中に薬物結晶が均一に分布している溶融混合物が生成されるように設計すべきである。一般に、押出物の温度は、薬物および担体混合物が流体になる温度より約10℃以上高くすべきである。押出機における種々の区画は、当業界でよく知られている手順を使用して、所望の押出物温度ならびに所望の度合いの混合またはせん断を実現するのに適切な温度に加熱すべきである。機械的な混合について上で論述したように、薬物の結晶質形態が変化せず、非晶質薬物の溶解または形成が最小限に抑えられるような、最小限のせん断を使用して、均一な溶融混合物を生成すべきである。
【0088】
供給材料は、薬物/グリセリド/放出調整剤溶融物の適正な均質性が確保されるように、凝結させる前に、少なくとも5秒間、より好ましくは少なくとも10秒間、最も好ましくは少なくとも15秒間溶融させることが好ましい。溶融混合物が溶融したままとなるのを約20分以下にして、薬物の溶融混合物への暴露を制限することも好ましい。上述のとおり、選択されたグリセリド/放出調整剤混合物の反応性に応じて、薬物の分解を許容されるレベルに制限するために、混合物を溶融させる時間を、20分よりかなり短くさらに短縮することが好ましい場合もある。このような場合では、こうした混合物は、15分間未満、場合によってはさらには10分間未満、溶融状態に維持されてもよい。押出機を使用して溶融した供給材料を生成するとき、上記の時間とは、材料が押出機に導入される時点から溶融混合物が凝結する時点までの平均時間を指す。このような平均時間は、当業界でよく知られている手順によって求めることができる。例となる一方法では、供給材料に少量の染料または他の同様の化合物を加え、押出機は通常の条件下で操作する。次いで、凝結させた多粒子を時間をかけて収集し、染料を分析し、それから平均時間を求める。
【0089】
溶融混合物が形成されたなら、それを、溶融した供給材料を小滴に破砕するアトマイザーに送出する。溶融混合物のアトマイザーへの送出には、ポンプおよび種々のタイプの空気デバイス(たとえば、加圧容器、ピストンポット)の使用を含めて、事実上どの方法を使用してもよい。押出機を使用して溶融混合物を形成するとき、押出機それ自体を使用して、溶融混合物をアトマイザーに送出することができる。通常、溶融混合物は、混合物をアトマイザーに送出する間、高めの温度に維持して、混合物の凝固を防ぎ、溶融混合物を流動性に保つ。
【0090】
一般に、微粒化は、(1)「圧力」または単流体ノズルによるもの、(2)二流体ノズルによるもの、(3)遠心式または回転盤アトマイザーによるもの、(4)超音波ノズルによるもの、および(5)機械的振動ノズルによるものを含めて、いくつかの方式の1つにおいて行われる。微粒化プロセスについての詳細な説明は、Lefebvre、Atomization and Sprays(1989)またはPerry’s Chemical Engineers’ Handbook(第7版、1997)で見ることができる。Niro A/S(デンマーク、Soeborg)製造のFX1 100−mm回転アトマイザーなどの、遠心式または回転盤アトマイザーを使用することが好ましい。
【0091】
溶融混合物が微粒化されたなら、通常は、液滴の凝固温度より低い温度の気体または液体と接触させることにより、液滴を凝結させる。通常、液滴は、約60秒未満、好ましくは約10秒未満、より好ましくは約1秒未満で凝結させることが望ましい。多くの場合、周囲温度で凝結させると、液滴は十分に急速に凝固する。しかし、凝結ステップは、多粒子の収集を簡単にするために、多くの場合、密閉された空間で行われる。このような場合では、凝結媒質(気体または液体のいずれか)の温度は、液滴が密閉された空間に導入されるにつれて、時間と共に上昇し、多粒子の形成または薬物の化学的安定性に影響を及ぼす可能性もある。したがって、多くの場合、密閉された空間全体に冷却用の気体または液体を循環させて、一定の凝結温度を維持する。たとえば分解を防ぐために、薬物が高温にさらされる時間を最小限に抑えることが望ましいとき、冷却用の気体または液体を周囲温度より低く冷却すると、急速な凝結を促進し、したがって分解物の形成を最小限に抑えることができる。
【0092】
多粒子を形成した後、多粒子を後処理して、薬物結晶化度および/または多粒子の安定性を向上させることが所望される場合もある。
【0093】
多粒子は、1種または複数の薬学的に許容できる材料と混合または混和して、好適な剤形を形成してもよい。好適な剤形として、錠剤、カプセル剤、サシェ剤、構成のための経口散剤などが挙げられる。
【0094】
溶融スプレー凝結多粒子を形成した後、多粒子は、追加の外面コーティングで場合によりコーティングしてもよい。外面コーティングは、薬物の遅延もしくは持続放出、または矯味を実現するコーティングである保護フィルムコーティングなどの、従来のどんなコーティングでもよい。
【0095】
一実施形態では、コーティングは、薬物の遅延放出をもたらす腸溶コーティングである。「腸溶コーティング」とは、約4未満のpHで無傷のままであり、溶解しない耐酸性コーティングを意味する。腸溶コーティングが多粒子を取り囲む結果、固体非晶質分散層は、胃において溶解または浸食されなくなる。腸溶コーティングは、腸溶コーティングポリマーを含んでもよい。腸溶コーティングポリマーは、一般に、pK
aが約3〜5であるポリ酸である。腸溶コーティングポリマーの例として、酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリト酸セルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸セルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、フタル酸メチルセルロース、フタル酸エチルヒドロキシセルロースなどのセルロース誘導体;酢酸フタル酸ポリビニル、酢酸ビニル−無水マレイン酸コポリマーなどのビニルポリマー;アクリル酸メチル−メタクリル酸コポリマー、メタクリレート−メタクリル酸−アクリル酸オクチルコポリマーなどの、ポリアクリレートおよびポリメタクリレート;ならびにスチレン−マレイン酸モノエステルコポリマーが挙げられる。これらは、単独でもしくは組み合わせて使用してもよいし、または上で挙げたもの以外のポリマーと一緒に使用してもよい。
【0096】
腸溶コーティング材料の一クラスは、メタクリル酸およびメタクリル酸メチルを主体とした、アニオン性の特徴を有するコポリマーである、薬学的に許容できるメタクリル酸コポリマーである。市販品として入手可能なEUDRAGIT腸溶性ポリマー、たとえば、メタクリル酸ジメチルアミノエチルから合成されるポリマーであるEudragit L30、ならびにEudragit SおよびEudragit FSなどの、こうしたポリマーの一部が、たとえば、pH5.5以上の水性媒質への溶解性を有する腸溶性ポリマーとして知られており、販売されている。
【0097】
外面コーティングは、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、クエン酸トリエチル、安息香酸ベンジル、脂肪酸のブチルおよびグリコールエステル、鉱油、オレイン酸、ステアリン酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ヒマシ油、トウモロコシ油、ヤシ油、およびショウノウ油を始めとする従来の可塑剤、ならびに粘着防止剤や流動促進剤などの他の賦形剤を含んでもよい。可塑剤については、クエン酸トリエチル、ヤシ油、およびセバシン酸ジブチルが特に好ましい。
【0098】
外面コーティングは、溶媒系およびホットメルトコーティングプロセスを使用して形成することができる。溶媒系プロセスでは、コーティングは、溶媒、コーティング材料、および任意選択のコーティング添加剤を含む溶液または懸濁液をまず形成することにより作製する。コーティング材料は、コーティング溶媒に完全に溶解していてもよいし、または乳濁液もしくは懸濁液または2つの組合せとして溶媒中に分散しているだけでもよい。ラテックス分散液は、溶媒系コーティングプロセスなどにおいて有用となりうる乳濁液または懸濁液の一例である。一態様では、溶媒は、室温で液体である。
【0099】
コーティングは、パンコーター、回転式造粒器、流動床コーター、たとえば、トップスプレー、接線スプレー、またはボトムスプレー(ワースターコーティング)によるものなどの従来の技術によって行うことができる。トップスプレー法も、コーティングの適用に使用することができる。この方法では、コーティング溶液を流動化したコアに吹き付ける。コーティングされたコアから溶媒が蒸発し、コーティングされたコアは、装置において再び流動化される。コーティングは、所望のコーティング厚さに到達するまで継続する。この実施形態の多粒子を作製するための組成および方法は、全体が参照として本明細書に援用される、米国特許出願US2005−0181062、US2008−0199527、US2005−0186285A1に詳述されている。
【0100】
本発明の多粒子は、一般に、平均直径が約40〜約3,000ミクロンのものであり、好ましい範囲は、50〜1,000ミクロン、最も好ましくは約100〜300ミクロンである。多粒子は、どんな形状およびテクスチャーを有するものでもよいが、球形で、表面のテクスチャーが滑らかであることが好ましい。多粒子のこうした物理特性により、その流れ特性が改善され、(所望されるなら)その均一なコーティングが可能になる。本明細書で使用するとき、用語「約」とは、値の+/−10%を意味する。
【0101】
本発明の多粒子は、使用環境に導入するとき、制御放出もしくは遅延放出、またはこれら2種の放出プロファイルのいずれかの組合せに特に適する。本明細書で使用するとき、「使用環境」は、胃腸(GI)管のin vivo環境または本明細書に記載のin vitro溶解試験のいずれかの場合がある。in vivo放出速度についての情報は、薬物動態学的プロファイルから、当業者に容易に知られるところとなるはずの標準のデコンボリューションまたはWagner−Nelsonデータ処理を使用して、求めることができる。
【0102】
上述の方法によってトファシチニブマトリックス多粒子が形成されたなら、多粒子を、ラクトース、微結晶性セルロース、リン酸二カルシウムなどの圧縮性賦形剤と混和し、混和物を圧縮して、錠剤またはカプセル剤を形成することができる。デンプングリコール酸ナトリウムや架橋ポリ(ビニルピロリドン)などの崩壊剤も、有益に用いられる。この方法によって調製された錠剤またはカプセル剤は、(胃腸管などの)水性媒質中に入ると崩壊し、それによって多粒子マトリックスが露出し、そこからトファシチニブが放出される。
【0103】
たとえば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版(2000)に記載されているような、当業界でよく知られている賦形剤を含めて、他の従来の製剤賦形剤を本発明の制御放出部分に用いてもよい。一般に、界面活性剤、pH調整剤、充填剤、マトリックス材料、錯化剤、可溶化剤、色素、滑沢剤、流動促進剤、着香剤などの賦形剤は、従来通りの目的で、組成物の性質に悪影響を及ぼすことのない典型的な量で使用してよい。
【0104】
マトリックス材料、充填剤、または希釈剤の例として、ラクトース、マンニトール、キシリトール、デキストロース、スクロース、ソルビトール、圧縮性の糖、微結晶性セルロース、粉末状セルロース、デンプン、α化デンプン、デキストレート、デキストラン、デキストリン、デキストロース、マルトデキストリン、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ポロキサマー、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0105】
持続放出−浸透圧系
別の実施形態では、トファシチニブは、浸透圧送達デバイス、または当業界で知られているとおりの「浸透圧ポンプ」に組み込まれる。浸透圧ポンプは、半透膜に取り囲まれた浸透圧的に有効な組成物を含有するコアを含む。用語「半透性」とは、この文脈では、水は、膜を介して容易に拡散しうるが、水に溶解した溶質は、水が膜を介して拡散する速度の割に、通常は膜を介して容易に拡散できないことを意味する。使用の際、水性環境に置かれたとき、デバイスは、コア組成物の浸透圧活性により、吸水する。取り囲んでいる膜が半透性の性質であるために、デバイスの中身(トファシチニブおよび任意の賦形剤を含む)は、膜の多孔質でない領域を通過することができず、浸透圧によって、剤形に予め作り込まれ、または別法として、コーティングに意図的に組み込まれた弱点が浸透圧の影響下で破裂するようなことにより胃腸管においてその場で形成された開口部または通路を通して、デバイスから押し出される。浸透圧的に有効な組成物としては、コロイド浸透圧を生じさせる水溶性の種、および水膨潤性ポリマーが挙げられる。このような剤形の例は、当業界でよく知られている。たとえば、参照として本明細書に援用される、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第21版、2006、第47章、950〜1頁を参照されたい。
【0106】
本発明の一実施形態では、トファシチニブは、トファシチニブ含有組成物が、水膨潤性ポリマーの形態の共留剤と、水膨潤性ポリマーおよび/または浸透活性剤を含有するが、いかなる活性薬剤も含有しない第二の押込層(push layer)または水膨潤層とを含まなければならないような、二層浸透圧送達デバイスに組み込まれる。二層の錠剤またはカプセル剤は、レーザー穿孔などの技術によって剤形に作り込まれた1つまたは複数の開口部を含んだ半透膜に取り囲まれている。このような水膨潤性ポリマーは、医薬品業界で、「オスモポリマー」または「ヒドロゲル」と呼ばれることが多い。共留剤は、(1つまたは複数の)送出口からの薬物の送出が助長されるように、薬物を懸濁させ、または共留する。特定の理論にとらわれるつもりはないが、剤形に水が吸収されると、共留剤は、薬物の懸濁または共留を可能にするだけの粘性を有するが、同時に、十分に流動性のままとなって、共留剤が薬物と共に(1つまたは複数の)送出口を通過することが可能になると考えられている。トファシチニブ含有組成物中に存在する共留剤の量は、約20wt%〜約95wt%の範囲でよい。共留剤は、単一の材料でも、または材料の混合物でもよい。非架橋ポリエチレンオキシド(PEO)は、共留剤として使用することができる。他の好適な共留剤として、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、およびポリビニルピロリドン(PVP)、ならびにこれらのポリマーのPEOとの混合物が挙げられる。
【0107】
PEOの分子量の選択は、一つには、PEOが、トファシチニブ含有組成物の非トファシチニブ部分の大部分を占めるのかどうか、または他の低分子量水溶性賦形剤が相当量含まれるのかどうかに応じて決まる、すなわち、PEO分子量の選択は、PEOであるトファシチニブ含有組成物の分率次第である。トファシチニブ含有組成物が速やかに流体にならなければ、剤形が膨張し、コアを取り囲むコーティングを破裂させる場合があり、剤形の機能喪失を引き起こす可能性がある。トファシチニブ含有組成物の賦形剤が主としてPEOである(たとえば、PEOが、トファシチニブ含有組成物の非トファシチニブ成分の約60wt%以上を占める)場合では、PEOは、平均分子量が約100,000〜300,000ダルトンであることが一般に好ましい。(本明細書で使用するとき、ポリマーの分子量への言及は、平均分子量を意味すると解釈すべきである。)
【0108】
別法として、本発明の別の実施形態は、非トファシチニブ賦形剤をより少ない分率とし、PEOの一部分を流動化剤で置き換えて、約500,000〜800,000ダルトンのより高分子量のPEOを使用するものである。普通、PEOがトファシチニブ含有組成物の非トファシチニブ成分の約60wt%以上を占めるとき、500,000ダルトン以上の分子量を有するPEOでは、トファシチニブ含有組成物があまりに粘性になる結果、コーティングが破裂し、または少なくともトファシチニブの放出が遅れる場合がある。しかし、トファシチニブ含有組成物の非トファシチニブ成分が約60wt%未満のPEOを含み、流動化剤も含有するとき、このようなより高分子量のPEOは好ましいことがわかっている。より高分子量のPEOを使用するとき、トファシチニブ含有組成物中に存在する流動化剤の量は、トファシチニブ含有組成物の約5〜約50wt%、好ましくは10〜30wt%の範囲でよい。好ましい流動化剤は、水への溶解度が30mg/mL以上である、非還元糖や有機酸などの低分子量の水溶性溶質である。好適な糖として、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、およびマルチトールが挙げられる。流動化剤として有用な塩としては、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、および酢酸ナトリウムが挙げられる。流動化剤として有用な有機酸として、アジピン酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、および酒石酸が挙げられる。
【0109】
比較的低いレベルのより高分子量のPEO(たとえば、約500,000〜約800,000ダルトン)と共に、流動化剤が存在することで、トファシチニブ含有組成物は、吸水すると、低い粘性に速やかに到達することが可能になる。加えて、このような実施形態は、比較的多い量のトファシチニブを送達できることもわかっている。
【0110】
トファシチニブ含有組成物は、他の水膨潤性ポリマーも含有してよい。たとえば、トファシチニブ含有組成物は、水の存在下で著しく膨張する、比較的少量の水膨潤性ポリマーを含有してよい。このような水膨潤性ポリマーとして、商品名EXPLOTABで販売されているデンプングリコール酸ナトリウム、および商品名AC−DI−SOLで販売されているクロスカルメロースナトリウムが挙げられる。このようなポリマーは、トファシチニブ含有組成物の0wt%〜10wt%の範囲の量で存在してよい。
【0111】
トファシチニブ含有組成物は、しばしば「オスマゲン」または「オスマジェント」と呼ばれる、浸透圧的に有効な溶質を場合により含んでもよい。トファシチニブ含有組成物中に存在するオスマジェントの量は、トファシチニブ含有組成物の約0wt%〜約50wt%、好ましくは10wt%〜30wt%の範囲でよい。典型的なクラスの好適なオスマジェントは、水溶性の塩、糖、有機酸、および、吸水して、それによって、取り囲んでいるコーティングのバリアの向こう側への浸透圧勾配を確立することのできる他の低分子量有機化合物である。有用な典型的な塩として、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、塩化カリウム、および硫酸ナトリウムが挙げられる。慣例的には、塩化ナトリウムなどの塩化物塩がオスマジェントとして利用される。
【0112】
トファシチニブ含有組成物は、トファシチニブ含有組成物の約0〜約30wt%の範囲の量で存在する、薬物の水性溶解性を増進する溶解性増強剤または可溶化剤をさらに含んでもよい。トファシチニブと用いるのに有用な可溶化剤としては、有機酸および有機酸塩、部分グリセリド、たとえば、グリセリド、モノグリセリド、ジグリセリド、グリセリド誘導体を含めた、グリセリンの不完全エステル化誘導体、ポリエチレングリコールエステル、ポリプロピレングリコールエステル、多価アルコールエステル、ポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ならびに炭酸塩が挙げられる。
【0113】
好ましいクラスの可溶化剤は、有機酸である。トファシチニブは、プロトン付加によって可溶化される塩基であり、pH5以上の水性環境におけるその溶解度は低下するので、トファシチニブ含有組成物に有機酸を加えることが、トファシチニブの可溶化、したがって吸収に役立つと考えられている。高pH水溶液のわずかなpHの低下でさえ、トファシチニブの溶解度が劇的に向上する結果となる。有機酸は、トファシチニブをプロトン付加された状態に維持する傾向があるため、使用環境に導入する前の貯蔵中の安定性も増進しうる。
【0114】
浸透圧剤形においてトファシチニブと共に可溶化剤として使用するのに適切な有機酸を選択する際、検討すべき様々な要素がある。有機酸は、トファシチニブと不都合に相互作用すべきでなく、水への適切な溶解性を有するべきであり、良好な製造特性をもたらすべきである。
【0115】
これに応じて、このような基準を満たす有機酸の好ましい部分集合は、クエン酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、リンゴ酸、および酒石酸からなることが見出された。クエン酸、リンゴ酸、および酒石酸は、水への溶解性が高く、浸透圧が高いという利点を有する。コハク酸およびフマル酸では、適度な溶解性と適度な浸透圧が兼備される。
【0116】
水膨潤性組成物は、場合により着色剤を含有してもよい。着色剤の目的は、コーティングを貫くレーザー穿孔などによって送出口を設ける目的で、錠剤面の薬物を含有する側の識別を可能にすることである。許容される着色剤として、限定はしないが、Red Lake No.40、FD C Blue 2およびFD C Yellow 6が挙げられる。
【0117】
トファシチニブ含有層および/または水膨潤性組成物層および/または速度制御機能膜は、場合により、限定はしないが、BHT、BHA、メタ重亜硫酸ナトリウム、没食子酸プロピル、グリセリン、ビタミンE、クエン酸、パルミチン酸アスコルビルなどの酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤は、トファシチニブ含有組成物層および/または水膨潤性組成物層および/または速度制御機能膜の0〜10wt%の範囲の量で存在してよい。酸化防止剤の追加の例については、C.−M.Andersson、A.Hallberg、およびT.Hoegberg、Advances in the development of pharmaceutical antioxidants、Advances in Drug Research、28:65〜180、1996を参照されたい。
【0118】
水膨潤性組成物は、薬学的に有用な従来の他の賦形剤、たとえば、HPC、HPMC、HEC、MC、およびPVPを始めとする結合剤、微結晶性セルロースなどの打錠助剤、ならびにステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も含んでよい。
【0119】
水膨潤性組成物は、水膨潤性ポリマーと他の賦形剤を混合して、均一な混和物を形成することにより調製する。均一な混和物を得るには、当業者に知られているタイプのプロセスを使用して、同様の粒径を有する成分を、湿式もしくは乾式造粒または乾式混和することが望ましい。
【0120】
打錠
コアは、まず、トファシチニブ含有組成物の混合物を錠剤成形機に入れ、次いで、混合物を緩やかな圧縮によって均展することにより調製する。次いで、トファシチニブ含有組成物の上部に水膨潤性組成物を載せ、圧縮して、コアの形成を完了する。別法として、錠剤成形機に最初に水膨潤性組成物を入れてから、トファシチニブ含有組成物を入れることもできる。
【0121】
トファシチニブ含有組成物および水膨潤性組成物のそれぞれの量は、トファシチニブが申し分なく放出されるように選択する。比較的小さい剤形サイズで多量のトファシチニブ用量を提供することが所望されるとき、良好な放出性能をなお実現しながら、トファシチニブ含有組成物の量を最大にし、水膨潤性組成物の量を最小限に抑えることが望まれる。本発明の剤形では、水膨潤性組成物中の水膨潤性ポリマーがPEOだけであるとき、トファシチニブ含有組成物は、コアの約50〜約85wt%、好ましくは約60〜約70wt%を占めてよい。これらの値は、トファシチニブ含有組成物の水膨潤性組成物に対する重量比で1〜約5.7に相当する。水膨潤性組成物中の水膨潤性ポリマーの全部または一部がデンプングリコール酸ナトリウムまたはクロスカルメロースナトリウムを含むとき、トファシチニブ含有組成物は、コアの50〜90wt%、好ましくは約75〜約85wt%を占めてよい。これらの値は、トファシチニブ含有組成物の水膨潤性組成物に対する重量比で1〜9に相当する。本発明の錠剤の直径および高さの絶対値は、広い範囲で様々となりうる。
【0122】
コーティング
コアの形成に続いて、半透性コーティングを適用する。コーティングは、高い透水性および高い強度を備えながら、同時に製作および適用が容易であるべきである。高い透水性は、水を十分な体積でコアに浸入させるのに必要となる。高い強度は、コアが吸水するにつれて膨張したとき、コーティングが破裂して、コアの中身が制御されずに送達されることがないよう徹底するために必要となる。最後に、コーティングは、再現性および収率が高くなければならない。
【0123】
コーティングは、コーティングの内部および外部と通じている、トファシチニブ含有組成物を送出するための少なくとも1つの送出口を有することが不可欠である。さらに、コーティングを介した浸透による送達とは対照的に、コーティングは、一般に、トファシチニブが(1つまたは複数の)送出口から実質的に完全に送出される程度に水に不溶性になるという意味で、トファシチニブ含有組成物が放出される間、非溶解および非浸食でなければならない。
【0124】
こうした特性を有するコーティングは、可塑化および非可塑化セルロースエステル、エーテル、およびエステル−エーテルなどの親水性ポリマーを使用して得ることができる。特に好適なポリマーとしては、酢酸セルロース(CA)、酢酸酪酸セルロース(CAB)、およびエチルセルロース(EC)が挙げられる。ポリマーの一部類は、アセチル基含量が25〜42%である酢酸セルロースである。典型的なポリマーの一つは、アセチル基含量が39.8%であるCA、特にCA398−10(Eastman Fine Chemicals、テネシー州キングズポート)である。CA398−10は、平均分子量が約40,000ダルトンであると報告されている。アセチル基含量が39.8%である別の典型的なCAは、平均分子量が約45,000より大きい高分子量CA、特に、平均分子量が50,000ダルトンであると報告されているCA398−30(Eastman Fine Chemical)である。
【0125】
コーティングは、まずコーティング溶液を形成し、次いで、浸漬、流動床コーティング、またはパンコーティングによってコーティングすることにより、従来のようにして行う。これを実現するために、ポリマーと溶媒とを含むコーティング溶液を形成する。上記セルロース化合物ポリマーと用いるのに有用な典型的な溶媒として、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルアセテート、二塩化メチレン、二塩化エチレン、二塩化プロピレン、ニトロエタン、ニトロプロパン、テトラクロロエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグリム、およびこれらの混合物が挙げられる。コーティング溶液は通常、2〜15wt%のポリマーを含有する。
【0126】
コーティング溶液は、コーティングの形成に使用する条件においてポリマーが可溶性のままとなる限り、またコーティングが透水性のままとなり、十分な強度を有する限り、細孔形成剤または非溶媒をいかなる量で含んでもよい。細孔形成剤、およびコーティングの製作におけるその使用については、米国特許第5,698,220号および第5,612,059号に記載されており、その該当する開示を参照により本明細書に援用する。用語「細孔形成剤」とは、本明細書で使用するとき、溶媒に比べて揮発性が低いまたは揮発性がないために、コーティングプロセスの後にコーティングの一部として残るが、十分に水膨潤性または水溶性であるために、水性の使用環境において、水で満たされたまたは水で膨張した流路または「細孔」を提供して、水の通過を可能にし、その結果、コーティングの透水性が増強される、コーティング溶液に加える材料を指す。好適な細孔形成剤として、限定はしないが、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリエチレングリコール(「PEG」)、PVP、およびPEOが挙げられる。PEGまたはHPCを細孔形成剤として使用するとき、高い透水性と高い強度の兼備を実現するために、CA:PEGまたはCA:HPCの重量比は、約6:4〜約9:1の範囲にすべきである。
【0127】
水などの非溶媒をコーティング溶液に加えると、並外れた性能が得られる。「非溶媒」とは、コーティング溶液に実質的に溶解し、(1または複数の)コーティングポリマーの溶媒への溶解度を低下させる、コーティング溶液に加えられる任意の材料を意味する。一般に、非溶媒の機能は、得られるコーティングに多孔性を付与することである。以下で述べるように、多孔質コーティングは、多孔質でない同じ組成の同等の重量のコーティングより高い透水性を有し、この多孔性は、コーティングの密度(質量/体積)の減少によって示される。細孔形成の特定の機序にとらわれるつもりはないが、非溶媒が加えられると、溶媒が蒸発する間、コーティング溶液が凝固前に液体と固体の相分離を経ることにより、コーティングに多孔性が付与されると一般に考えられている。コーティング溶液に候補非溶媒を濁りが出るまで漸進的に加えることにより、非溶媒としての使用について、特定の候補材料の適性および量を評価することができる。コーティング溶液の約50wt%までのいずれかの添加レベルで濁りが生じない場合、一般に、非溶媒としての使用に適切でない。「曇り点」と呼ばれる濁りが認められるとき、最大多孔度に適切な非溶媒のレベルは、曇り点の直下の量である。7wt%のCAおよび3wt%のPEGを含むアセトン溶液では、曇り点は、約23wt%の水のところにある。より少ない多孔度が所望されるとき、非溶媒の量は、所望されるだけ少なく減らすことができる。
【0128】
好適な非溶媒は、溶媒への溶解性がはっきりと認められ、コーティングポリマーの溶媒への溶解性を低下させる、いずれかの材料である。好ましい非溶媒は、選択した溶媒およびコーティングポリマーに応じて決まる。アセトンなどの揮発性極性コーティング溶媒を使用する場合では、好適な非溶媒として、水、グリセロール、メタノールやエタノールなどのアルコールが挙げられる。
【0129】
CA398−10を使用するとき、CA:PEG3350:水のコーティング溶液重量比は、2.4:1.6:5、2.8:1.2:5、3.2:0.8:5、および3.6:0.4:5であり、溶液の残りの分は、アセトンなどの溶媒を含む。したがって、たとえば、CA:PEG3350:水の重量比が2.8:1.2:5である溶液では、CAが溶液の2.8wt%を占め、PEG3350が溶液の1.2wt%を占め、水が溶液の5wt%を占め、アセトンが残りの91wt%を占める。同様に、CA:HPC:水のコーティング溶液重量比は、1.2:0.8:9.8、2.4:1.6:19.6、1.6:0.4:4.9、および3.2:0.8:9.8であり、溶液の残りの分は、アセトンなどの溶媒を含む。したがって、たとえば、CA:HPC:水の重量比が1.2:0.8:10である溶液では、CAが溶液の1.2wt%を占め、HPCが溶液の0.8wt%を占め、水が溶液の10wt%を占め、アセトンが残りの88wt%を占める。さらに、CA:HPC:メタノールのコーティング溶液重量比は、1.8:1.2:19.6、2.4:1.6:19.6、1.6:0.4:4.9、および3.2:0.8:9.8であり、溶液の残りの分は、アセトンなどの溶媒を含む。したがって、たとえば、CA:HPC:メタノールの重量比が1.8:1.2:19.6である溶液では、CAが溶液の1.8wt%を占め、HPCが溶液の1.2wt%を占め、メタノールが溶液の19.6wt%を占め、アセトンが残りの77.4wt%を占める。
【0130】
コーティング溶液に酸化防止剤を組み込むとき、酸化防止剤のコーティングへの良好な分散を確実にするために、第三の溶媒が必要となる場合もある。たとえば、溶液の0.05wt%の酸化防止剤を含む2.4:1.6:5のCA:PEG:水の組成には、5wt%のメタノールおよび86%のアセトンが必要となる。
【0131】
こうしたコーティング溶液から形成されたコーティングは、一般に多孔質である。「多孔質」とは、乾燥状態にあるコーティングが、非多孔質形態にした同じ材料の密度より低い密度を有することを意味する。「非多孔質形態」とは、非溶媒を含有しない、または均質なコーティング溶液を生成するのに必要な最小限の量の非溶媒しか含有しないコーティング溶液を使用して形成されたコーティング材料を意味する。コーティングの乾燥状態密度は、コーティング重量(コーティング前後の錠剤の重量増加から求める)を、コーティング体積(光学または走査電子顕微鏡法によって求められるコーティング厚さに、錠剤表面積を掛けることにより算出する)で割ることにより算出できる。コーティングの多孔性は、コーティングに高い透水性と高い強度を兼備させる要素の一つである。
【0132】
コア周囲のコーティングの重量は、コーティングの組成および多孔度次第であるが、一般に、コーティングされていないコアの重量を基準として3〜30wt%の範囲の量で存在すべきである。少なくとも約8wt%のコーティング重量が、信頼できる性能に十分な強度にするために通常は好ましいが、より少ないコーティング重量を使用しても、所望の速い吸水速度、ひいてはトファシチニブの剤形からのより速い放出速度を実現することができる。
【0133】
上述の、CA、PEGまたはHPC、および水を主体とした多孔質コーティングは、優秀な結果をもたらすが、コーティングが、高い透水性、高い強度、ならびに製作および適用の容易さを必要条件として兼備する限り、薬学的に許容できる他の材料をコーティングに使用してもよいことになる。さらに、このようなコーティングは、その該当する開示が参照により本明細書に援用される、米国特許第5,612,059号および第5,698,220号で開示されているものなどの、1または複数の稠密層と、1または複数の多孔質層とを備えて、稠密、多孔質、または「非対称」になるものでよい。
【0134】
コーティングは、薬物含有組成物を剤形の外部に放出させるために、コーティングの内部および外部と通じている少なくとも1つの送出口も含んでいなければならない。送出口は、大きさが、薬物粒子と同じくらいの大きさからの範囲に及ぶものでよく、したがって、直径が1〜100ミクロン程度の小ささでもよいことになり、直径約5000ミクロンまでは細孔と呼ばれることもある。送出口の形状は、スリットの形態で実質的に円形でもよいし、または製造および加工を容易にするのに好都合な他の形状でもよい。(1つまたは複数の)送出口は、コーティング後の機械的もしくは熱的手段によって、または光のビーム(たとえばレーザー)、粒子のビーム、もしくは他の高エネルギー源を用いて形成してもよいし、またはコーティングの狭い一部分を破裂させることによりその部分に形成してもよい。このような破裂は、コーティングに比較的狭い弱い一部分を意図的に組み込むことによって制御することができる。送出口は、水溶性材料の栓を浸食させ、またはコアのへこみを覆っているコーティングのより薄い一部分を破裂させることにより、その部分に形成することもできる。1つまたは複数の狭い領域がコーティングされないままとなるようにコアをコーティングすることによって、送出口を形成することもできる。加えて、送出口は、本明細書でより詳細に述べる非対称膜コーティング、ならびにその開示が参照により援用される、米国特許第5,612,059号および第5,698,220号で開示されているタイプの場合でのように、コーティングする間に形成しうる多数の孔または細孔にすることもできる。送達経路が細孔であるとき、大きさが1ミクロン〜100ミクロン超の範囲である多数の細孔が存在しうる。作業の間、このような細孔の1つまたは複数が、作業中に発生した静水圧力の影響を受けて広がることもある。少なくとも1つの送出口は、トファシチニブ含有組成物が、水膨潤性組成物の膨張作用によって送出口から押し出されるように、トファシチニブ含有組成物に近接している側のコーティング上に形成すべきである。送出口を形成するプロセスによっては、水膨潤性組成物に近接するコーティングにも孔または細孔が形成されることがあると理解される。
【0135】
コーティングは、場合により、水膨潤性組成物と通じている出口を含んでもよい。そのような送出口は、剤形のトファシチニブ放出特性を通常は変更しないが、製造上の利点をもたらすことがある。分子量が3,000,000〜8,000,000ダルトンの間であるPEOを含有するものなどの水膨潤性組成物は、粘性が高すぎて、認めうるほどに送出口を出ることができないと考えられている。送出口が機械的に、またはレーザーによって穿孔される剤形では、少なくとも1つの送出口がトファシチニブ含有組成物に近接するコーティングに形成されるように、錠剤の向きを合わせて配置しなければならない。製造において穿孔ステップの間にコア剤形の向きを合わせて配置するのに、水膨潤性組成物内に着色剤が使用される。剤形の両面に送出口を設けることにより、剤形の向きを合わせて配置する必要をなくすことができ、水膨潤性組成物から着色剤を除外することができる。
【0136】
さらに別の実施形態では、トファシチニブを、上述の浸透圧送達デバイスの変形形態である、非対称膜技術(AMT)に組み込む。こうしたデバイスは、Herbigら、J.Controlled Release、35、1995、127〜136ならびに米国特許第5,612,059号および第5,698,220号で、浸透圧薬物送達系におけるコーティングとして開示されている。このようなAMT系では、浸透圧制御放出デバイスの一般の利点(胃腸管での位置と無関係の信頼性のある薬物送達)が得られ、それでも、いくつかの他の浸透圧系で見られるような、コーティングに孔を開ける追加の製造ステップが必要とならない。こうした多孔質コーティングの形成では、水不溶性ポリマーを水溶性の細孔形成材料と合わせる。この混合物を、水と溶媒の組合せから、浸透圧錠剤コアにコーティングする。コーティングが乾燥するにつれて、多孔質の非対称膜を生成させる転相の過程が起こる。生理化学的性質の類似した薬物の制御放出へのAMT系の使用は、米国特許出願公開US2007/0248671に記載されており、参照として本明細書に援用される。
【0137】
非対称膜の生成における細孔形成剤としての使用について、いくつかの材料が開示されているが、これまでに開示された材料はすべて、系に化学的または物理的安定性の問題をもたらす。詳細には、先行技術材料の多くは、液体であり、ことによると貯蔵中にコーティングの外に滲出する可能性がある。固体である材料の中では、ポリマー材料および無機材料の両方が教示されている。無機材料は、いくつかの理由で使用しにくい場合がある。詳細には、無機材料は、貯蔵すると結晶する、および/または水分を吸着する傾向を有することが多い。教示されている詳細なポリマー材料には、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレングリコール(PEG)誘導体がある。これらの材料は両方とも、貯蔵すると過酸化物および/またはホルムアルデヒドを形成する傾向が強い(たとえば、Watermanら、「Impurities in Drug Products」、出典:Handbook of Isolation and Characterization of Impurities in Pharmaceuticals、S.AjiraおよびK.M.Alsante共編、2003、75〜85頁を参照されたい)。多くの原薬は、その固有の反応性と、貯蔵すると滲出する傾向の両方の理由で、このようなポリマー分解生成物と反応性である。しかし、この配合の余地は比較的狭い。米国特許第4,519,801号は、浸透圧系におけるコーティングに有用な水溶性ポリマー成分の広範なリストを開示しているが、AMT系用の水溶性成分の適切な選択については教示していない。したがって、貯蔵しても反応性副生物を発生させず、結晶せず、またはコーティングから滲出しない、AMT系用の新しい細孔形成材料が、依然として求められている。
【0138】
本発明の一態様は、(a)少なくとも1種の薬学的活性成分を含有するコアと、(b)少なくとも1層の非対称膜技術コーティングとを含む剤形であって、前記コーティングが、
a.実質的に水に不溶性の1種または複数のポリマーと、
b.40℃/75パーセントRHで12週間貯蔵した後、約0.01パーセントw:wより多い量の過酸化水素またはホルムアルデヒドを含有しない、1種または複数の固体水溶性ポリマー材料と
を含む、剤形を提供する。
【0139】
本発明の一態様は、薬物を主として浸透圧によって送達する剤形も提供する。詳細な実施形態では、本発明は、薬学的活性成分がトファシチニブまたは薬学的に許容できるその塩である剤形を提供する。本発明で使用する水不溶性ポリマーは、セルロース誘導体、より好ましくは酢酸セルロースを含むことが好ましい。本発明で使用する固体水溶性ポリマー材料は、重量平均分子量が2000〜50,000ダルトンの間であるポリマーを含む。好ましい実施形態では、固体水溶性ポリマー材料は、水溶性セルロース誘導体、アカシア、デキストリン、グアーガム、マルトデキストリン、アルギン酸ナトリウム、デンプン、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、およびゼインからなる群から選択される。詳細な実施形態では、水溶性セルロース誘導体は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースを含む。ある特定の実施形態では、固体水溶性ポリマー材料は、5パーセントw:w水溶液での粘度が400mPa・s未満である。他のある特定の実施形態では、固体水溶性ポリマー材料は、5パーセントw:w水溶液での粘度が300mPa・s未満である。他の実施形態では、固体水溶性ポリマー材料は、軟化温度が55℃より高い。
【0140】
本発明の剤形は、錠剤または多粒子でよい。ある特定の実施形態では、本発明のコアは、糖を含有する。糖は、ソルビトールであることがより好ましい。ある特定の実施形態では、水不溶性ポリマーは、酢酸セルロースであり、前記固体水溶性ポリマー材料は、ヒドロキシプロピルセルロースである。好ましいある特定の実施形態では、本発明の剤形は、トファシチニブまたは薬学的に許容できるその塩を薬学的活性成分として含有し、水不溶性ポリマーは酢酸セルロースであり、固体水溶性ポリマー材料はヒドロキシプロピルセルロースである。
【0141】
本発明のプロセスは、パンコーティングを使用して、アセトンと水の混合物からコーティングを適用するプロセスを包含する。本発明のプロセスは、非対称膜が、アセトン対水が約9:1〜6:4w:wの間、より好ましくは約7:3〜約6:4w:wの間である混合物からパンコーターを使用してコーティングされる酢酸セルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースを含むプロセスも包含する。特に、本発明のプロセスは、コアが、トファシチニブまたは薬学的に許容できるその塩を含むプロセスを包含する。
【0142】
本発明の非対称膜コーティングの調製において、非対称膜コーティングの水不溶性成分は、セルロース誘導体から形成することが優先される。詳細には、こうした誘導体には、セルロースエステルおよびエーテル、すなわち、アシル基が2個〜4個の炭素原子からなる、モノ、ジ、およびトリアシルエステル、ならびにアルキル基が1個〜4個の炭素原子を有するセルロースの低級アルキルエーテルが含まれる。セルロースエステルは、酢酸酪酸セルロースなどの混合エステル、またはセルロースエステルの混和物でもよい。同じ変形形態を、セルロースのエーテルにも認めることができ、セルロースエステルとセルロースエーテルの混和物を含める。本発明の非対称膜の作製において使用することのできる他のセルロース誘導体として、硝酸セルロース、アセトアルデヒドジメチルセルロース、酢酸エチルカルバミン酸セルロース(cellulose acetate ethyl carbamate)、酢酸フタル酸セルロース、酢酸メチルカルバミン酸セルロース(cellulose acetate methyl carbamate)、酢酸コハク酸セルロース、酢酸ジメタミノ酢酸セルロース(cellulose acetate dimethaminoacetate)、酢酸エチル炭酸セルロース(cellulose acetate ethyl carbonate)、酢酸クロロ酢酸セルロース、酢酸エチルシュウ酸セルロース(cellulose acetate ethyl oxalate)、酢酸メチルスルホン酸セルロース(cellulose acetate methyl sulfonate)、酢酸ブチルスルホン酸セルロース(cellulose acetate butyl sulfonate)、酢酸p−トルエンスルホン酸セルロース、シアノ酢酸セルロース、酢酸トリメリト酸セルロース、メタクリル酸セルロース、および酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。特に好ましい水不溶性成分は、酢酸セルロースである。特に好ましい酢酸セルロースとして、アセチル基含量が約40パーセントであり、ヒドロキシル基含量が約3.5パーセントであるものが挙げられる。実質的に水不溶性であり、フィルム形成性であり、薬学的用途における使用に安全であるという前提で、他の材料も、非対称膜技術コーティングの製作に使用してよい。
【0143】
本発明の非対称膜コーティングの調製において、本発明の水溶性ポリマー成分は、40℃/相対湿度75パーセントで12週間貯蔵しても過酸化水素またはホルムアルデヒドを約0.01パーセントw/w(100百万分率、ppm)より高い量で形成しない固体ポリマー材料を含む。水への溶解度に関して、固体水溶性ポリマー材料は、水への溶解度が0.5mg/mLより高い、より好ましくは2mg/mLより高い、さらにより好ましくは5mg/mLより高いことが優先される。
【0144】
固体水溶性ポリマー材料は、溶融または軟化温度が室温より高い。固体材料は、溶融または軟化温度が30℃より高い、より優先的には40℃より高い、最も優先的には50℃より高いことが優先される。融点および軟化点は、融点装置を使用して視覚的に求めることができ、または別法として、当業界で知られているような示差走査熱量測定(DSC)を使用して測定することができる。ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーのどちらでもよい。こうしたポリマーは、天然ポリマーでも、天然産物の誘導体でも、または完全な合成品でもよい。このような材料の分子量は、滲出を防ぎ、フィルム形成を助長するのに十分な高さであり、さらにコーティングを可能にするのに十分な低さであることが優先される(以下で論述するとおり)。したがって、本発明の好ましい分子量範囲は、2000〜50,000ダルトンの間(重量平均)である。非対称膜技術コーティングの水溶性成分として本発明に適する好ましいポリマーとして、置換水溶性セルロース誘導体、アカシア、デキストリン、グアーガム、マルトデキストリン、アルギン酸ナトリウム、デンプン、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、およびゼインが挙げられる。特に好ましい水溶性ポリマーとして、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびポリビニルアルコールが挙げられる。
【0145】
コーティング溶液の粘性が高すぎる場合、非対称膜コーティングを得ることは難しく、この問題を解決する一つの手法は、ポリマーのより希薄な溶液を使用することである。水溶性と有機溶媒溶性の両方の成分を有するコーティング溶液の相挙動のために、水溶性ポリマーの濃度をどれだけ低くできるか、およびそれでも製品化可能なプロセスを提供することには限界がある。この理由で、水溶性ポリマーは、粘性が高すぎないことが好ましい。粘度は、Brookfield LVF粘度計(Brookfield Engineering Corp.(マサチューセッツ州ミドルバラ)から入手可能)を、5パーセント(w:w)水溶液での粘性レベルに応じたスピンドルとスピードの組合せで使用して、25℃で求めることができる。好ましい水溶性ポリマーは、5パーセント(w:w)溶液での粘度が400mPa・s未満、より好ましくは300mPa・s未満である。
【0146】
上記基準を使用すると、特に好ましい水溶性ポリマーとして、5パーセント(w:w)での粘度が300mPa・s未満であるヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。このようなポリマーの市販品として入手可能な例としては、どちらもHercules Corp.(ヴァージニア州ホープウェル)のAqualon事業部が製造するKlucel EF(商標)およびNatrasol LR(商標)が挙げられる。
【0147】
水溶性固体ポリマー材料の、過酸化水素の形成に対する安定性は、温度および相対湿度(RH)がそれぞれ40℃および75パーセントRHであるオーブンにおいてポリマーを貯蔵することにより測定できる。ポリマーは、「開放された」条件下でオーブン環境にさらして貯蔵すべきである。ポリマーは、少なくとも12週間貯蔵すべきである。過酸化水素のレベルは、G.M.Eisenberg、「Colorimetric determination of hydrogen peroxide」、出典:Ind.Eng.Chem.(Anal.Ed.)、1943、15、327〜328に記載のとおりに管理することができる。このような貯蔵条件下で、本発明にとって許容できるポリマー材料は、過酸化水素レベルが100百万分率(ppm)未満、より好ましくは50ppm未満、最も好ましくは10ppm未満である。
【0148】
同様に、水溶性ポリマーの、ホルムアルデヒドの形成に対する安定性も、40℃および75パーセントRHのオーブンにおいてポリマーを貯蔵することにより測定できる。ポリマーは、揮発性のホルムアルデヒドの損失を回避するために密封容器で貯蔵すべきである。ポリマーは、少なくとも12週間貯蔵すべきである。ホルムアルデヒドのレベルは、M.Ashraf−Khorassaniら、「Purification of pharmaceutical excipients with supercritical fluid extraction」、出典:Pharm.Dev.Tech.2005、10、1〜10に記載のとおりに求めることができる。このような貯蔵条件下で、本発明にとって許容できる水溶性ポリマー材料は、ホルムアルデヒドレベルが100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、最も好ましくは10ppm未満である。
【0149】
非対称膜技術コーティング製剤が、その機能を大きく変化させ、または本発明の性質を変更することなく、少量の他の材料を含有する場合があることは、当業者には理解されよう。そのような添加剤としては、流動促進剤(たとえばタルクおよびシリカ)および可塑剤(たとえばトリエチルシトレートおよびトリアセチン)が挙げられ、これらは通常、必要なときに、コーティングの約5パーセント(w:w)未満のレベルで加えられる。
【0150】
活性医薬成分が薬学的に許容できる塩の形態にもなる場合があることは、当業者には理解されよう。本発明のコアには、可溶化添加剤も用いる場合がある。そのような添加剤として、コアを、活性医薬成分が溶液になって剤形の外にポンプで汲み出されるのに十分な高い溶解性を有するpHで維持するためのpH緩衝添加剤が挙げられる。活性医薬成分は、コア中に約0.1パーセント(w:w)〜約75パーセント(w:w)の範囲のレベルで存在してよい。
【0151】
コアは、薬物送達のための駆動力を与える助けとなる浸透圧剤(osmotic agent)を含有する場合がある。このような浸透圧剤として、水溶性の糖および塩が挙げられる。特に好ましい浸透圧剤は、マンニトールまたは塩化ナトリウムである。
【0152】
AMT系のコアは、安定性、製造性、システム性能などの利益を提供するための他の添加剤を含有することがある。安定化賦形剤としては、pH調整成分、酸化防止剤、キレート化剤、および当業界で知られているような他の添加剤が挙げられる。製造性を向上させる賦形剤には、流動、圧縮、または押出しに役立つ薬剤が含まれる。流動には、タルク、ステアリン酸塩、シリカなどの添加剤が役立つことがある。流動は、当業界で知られているような、薬物および賦形剤の造粒によっても改善される。そうした造粒には、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン(ポビドン)などの結合剤を加えることが多くの場合有益となる。圧縮は、製剤に希釈剤を加えることにより向上しうる。希釈剤の例としては、当業界で知られているように、ラクトース、マンニトール、微結晶性セルロースなどが挙げられる。押出しによって生成されるコアについては、賦形剤の溶融特性が重要となる場合がある。一般に、このような賦形剤は、溶融温度が約100℃未満であることが好ましい。溶融プロセスに適切な賦形剤の例としては、エステル化グリセリンおよびステアリルアルコールが挙げられる。圧縮剤形については、滑沢剤を加えて製造性を向上させることができる。特に好ましい滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムである。
【0153】
コアは、当業界で知られているような、標準の錠剤圧縮プロセスを使用して生成することができる。そのようなプロセスは、打抜型に粉末を充填した後、適切な押抜き具を使用して圧縮するものである。コアは、押出しプロセスによって生成することもできる。押出しプロセスは、小さいコア(多粒子)の作製に特に好適である。好ましい押出しプロセスは、参照により援用されるWO2005/053653A1に記載されているような、溶融スプレー凝結プロセスである。コアは、シードコアに薬物を層状に重ねることにより調製することもできる。そのようなシードコアは、糖または微結晶性セルロース製であることが優先される。薬物は、優先的には当業界で知られているような流動床作業において、吹付けによってコアに適用することができる。
【0154】
本発明の実施においては、コア全体にわたるコーティングとしての非対称膜を設けることのできるいずれかの技術によって、コアを非対称膜でコーティングする。好ましいコーティング法として、パンコーティングおよび流動床コーティングが挙げられる。どちらのコーティングプロセスにおいても、水不溶性ポリマーおよび水溶性ポリマーならびに他のいずれかの添加剤を、まず適切な溶媒または溶媒の組合せに溶解または分散させる。適度に多孔質の膜を得るには、コーティング溶媒を性能について最適化する必要がある。一般に、溶媒は、揮発性が高い溶媒ほど水不溶性ポリマー成分に良好な溶媒であるというように選択される。その結果、コーティングの際に、水不溶性ポリマー成分が溶液から沈殿する。好ましい溶媒および溶媒比は、系の多成分溶解性挙動を調べることにより求めることができる。好ましい溶媒混合物は、約9:1〜約6:4(w:w)の間の比であるアセトンと水である。
【0155】
本発明の好ましい実施形態では、トファシチニブは、押出性コア系として知られている一体式の浸透圧送達デバイスに組み込まれるため、トファシチニブ含有組成物は、高粘性化ポリマー(viscosifying polymer)および浸透活性剤を含まなければならず、溶解性増強剤および/または酸化防止剤を場合により含んでもよい。一体式の錠剤またはカプセル剤は、レーザー穿孔などの技術によって剤形に作り込まれた1つまたは複数の開口部を含んでいる半透膜に取り囲まれている。高粘性化ポリマーは、(1つまたは複数の)送出口からの薬物の送出が助長されるように、薬物を懸濁させ、または共留する。特定の理論にとらわれるつもりはないが、剤形に水が吸収されると、高粘性化ポリマーは、薬物の懸濁または共留を可能にするだけの粘性を有するが、同時に、十分に流動性のままとなって、高粘性化ポリマーが薬物と共に(1つまたは複数の)送出口を通過することが可能になると考えられている。トファシチニブ含有組成物中に存在する高粘性化ポリマーの量は、約2wt%〜約20wt%、好ましくは約3〜約15%、より好ましくは約4wt%〜約10wt%の範囲でよい。高粘性化ポリマーは、単一の材料でも、または材料の混合物でもよい。非架橋ポリエチレンオキシド(PEO)およびヒドロキシエチルセルロース(HEC)は、高粘性化ポリマーとして使用することができる。HECが、高粘性化ポリマーとして好ましい。HECの分子量は、約300,000〜約2,000,000、より好ましくは約700,000〜約1,500,000の間とすることができる。
【0156】
トファシチニブ含有組成物は、しばしば「オスマゲン」または「オスマジェント」と呼ばれる、浸透圧的に有効な溶質も含む。トファシチニブ含有組成物中に存在するオスマジェントの量は、トファシチニブ含有組成物の約15wt%〜約95wt%、好ましくは約40wt%〜約90wt%、より好ましくは約60%〜約85%、最も好ましくは約70%〜約85%の範囲でよい。典型的なクラスの好適なオスマジェントは、水溶性の塩、糖、有機酸、および、吸水して、それによって、取り囲んでいるコーティングのバリアの向こう側への浸透圧勾配を確立することのできる他の低分子量有機化合物である。有用な典型的な塩として、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、塩化カリウム、および硫酸ナトリウムが挙げられる。好ましい塩としては、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムが挙げられる。好ましい有機酸としては、アスコルビン酸、2−ベンゼンカルボン酸、安息香酸、フマル酸、クエン酸、マレイン酸、セバシン酸、ソルビン酸、アジピン酸、エデト酸、グルタミン酸、トルエンスルホン酸、および酒石酸が挙げられる。好ましい糖としては、マンニトール、スクロース、ソルビトール、キシリトール、ラクトース、デキストロース、およびトレハロースが挙げられる。より好ましい糖は、ソルビトールである。オスマジェントは、単独で、または2種以上のオスマジェントの組合せとして使用することができる。
【0157】
トファシチニブ含有組成物は、トファシチニブ含有組成物の約0〜約30wt%の範囲の量で存在する、薬物の水性溶解性を増進する溶解性増強剤または可溶化剤をさらに含んでもよい。トファシチニブと用いるのに有用な可溶化剤としては、有機酸および有機酸塩、部分グリセリド、たとえば、グリセリド、モノグリセリド、ジグリセリド、グリセリド誘導体を含めた、不完全エステル化グリセリンの誘導体、ポリエチレングリコールエステル、ポリプロピレングリコールエステル、多価アルコールエステル、ポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ならびに炭酸塩が挙げられる。
【0158】
好ましいクラスの可溶化剤は、有機酸である。トファシチニブは、プロトン付加によって可溶化される塩基であり、pH5以上の水性環境におけるその溶解度は低下するので、トファシチニブ含有組成物に有機酸を加えることが、トファシチニブの可溶化、したがって吸収に役立つと考えられている。高pH水溶液のわずかなpHの低下でさえ、トファシチニブの溶解度が劇的に向上する結果となる。有機酸は、トファシチニブをプロトン付加された状態に維持する傾向があるため、使用環境に導入する前の貯蔵中の安定性も増進しうる。
【0159】
浸透圧剤形においてトファシチニブと共に可溶化剤として使用するのに適切な有機酸を選択する際、検討すべき様々な要素がある。有機酸は、トファシチニブと不都合に相互作用すべきでなく、水への適切な溶解性を有するべきであり、良好な製造特性をもたらすべきである。
【0160】
これに応じて、このような基準を満たす有機酸の好ましい部分集合は、クエン酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、リンゴ酸、および酒石酸からなることが見出された。クエン酸、リンゴ酸、および酒石酸は、水への溶解性が高く、浸透圧が高いという利点を有する。コハク酸およびフマル酸では、適度な溶解性と適度な浸透圧が兼備される。
【0161】
トファシチニブ含有組成物層および/または速度制御機能膜は、場合により、限定はしないが、BHT、BHA、メタ重亜硫酸ナトリウム、没食子酸プロピル、グリセリン、ビタミンE、クエン酸、パルミチン酸アスコルビルなどの酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤は、トファシチニブ含有組成物層および/または水膨潤性組成物層および/または速度制御機能膜の0〜10wt%の範囲の量で存在してよい。酸化防止剤の追加の例については、C.−M.Andersson、A.Hallberg、およびT.Hoegberg、Advances in the development of pharmaceutical antioxidants、Advances in Drug Research、28:65〜180、1996を参照されたい。
【0162】
トファシチニブ含有組成物は、高粘性化ポリマーと他の賦形剤を混合して、均一な混和物を形成することにより調製する。均一な混和物を得るには、当業者に知られているタイプのプロセスを使用して、成分を湿式もしくは乾式造粒または乾式混和することが望ましい。
【0163】
打錠
コアは、まずトファシチニブ含有組成物の混合物を錠剤成形機に入れ、圧縮して、コアの形成を完了することにより調製する。錠剤の形状には、当業者に知られているどんな錠剤形状も含めることができる。好ましい錠剤形状として、SRC(標準丸凹形)、楕円、変形楕円、カプセル、カプレット、およびアーモンドが挙げられる。より好ましい錠剤形状として、楕円、変形楕円、カプレット、およびカプセルが挙げられる。
【0164】
コーティング
コアの形成に続いて、半透性コーティングを適用する。コーティングは、高い透水性および高い強度を備えながら、同時に製作および適用が容易であるべきである。高い透水性は、水を十分な体積でコアに浸入させるのに必要となる。高い強度は、コアが吸水するにつれて膨張したとき、コーティングが破裂して、コアの中身が制御されずに送達されることがないよう徹底するために必要となる。最後に、コーティングは、再現性および収率が高くなければならない。
【0165】
コーティングは、コーティングの内部および外部と通じている、トファシチニブ含有組成物を送出するための少なくとも1つの送出口を有することが不可欠である。さらに、コーティングを介した浸透による送達とは対照的に、コーティングは、一般に、トファシチニブが(1つまたは複数の)送出口から実質的に完全に送出される程度に水に不溶性になるという意味で、トファシチニブ含有組成物が放出される間、非溶解および非浸食でなければならない。
【0166】
こうした特性を有するコーティングは、可塑化および非可塑化セルロースエステル、エーテル、およびエステル−エーテルなどの親水性ポリマーを使用して得ることができる。特に好適なポリマーとしては、酢酸セルロース(CA)、酢酸酪酸セルロース(CAB)、およびエチルセルロース(EC)が挙げられる。ポリマーの一部類は、アセチル基含量が25〜42%である酢酸セルロースである。典型的なポリマーの一つは、アセチル基含量が39.8%であるCA、特にCA398−10(Eastman Fine Chemicals、テネシー州キングズポート)である。CA398−10は、平均分子量が約40,000ダルトンであると報告されている。アセチル基含量が39.8%である別の典型的なCAは、平均分子量が約45,000より大きい高分子量CA、特に、平均分子量が50,000ダルトンであると報告されているCA398−30(Eastman Fine Chemical)である。
【0167】
コーティングは、まずコーティング溶液を形成し、次いで、浸漬、流動床コーティング、またはパンコーティングによってコーティングすることにより、従来のようにして行う。これを実現するために、ポリマーと溶媒とを含むコーティング溶液を形成する。上記セルロース化合物ポリマーと用いるのに有用な典型的な溶媒として、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルアセテート、二塩化メチレン、二塩化エチレン、二塩化プロピレン、ニトロエタン、ニトロプロパン、テトラクロロエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグリム、およびこれらの混合物が挙げられる。コーティング溶液は通常、2〜15wt%のポリマーを含有する。
【0168】
コーティング溶液は、コーティングの形成に使用する条件においてポリマーが可溶性のままとなる限り、またコーティングが透水性のままとなり、十分な強度を有する限り、細孔形成剤または非溶媒をいかなる量で含んでもよい。細孔形成剤、およびコーティングの製作におけるその使用については、米国特許第5,698,220号および第5,612,059号に記載されており、その該当する開示を参照により本明細書に援用する。用語「細孔形成剤」とは、本明細書で使用するとき、溶媒に比べて揮発性が低いまたは揮発性がないために、コーティングプロセスの後にコーティングの一部として残るが、十分に水膨潤性または水溶性であるために、水性の使用環境において、水で満たされたまたは水で膨張した流路または「細孔」を提供して、水の通過を可能にし、その結果、コーティングの透水性が増強される、コーティング溶液に加える材料を指す。好適な細孔形成剤として、限定はしないが、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリエチレングリコール(「PEG」)、PVP、およびPEOが挙げられる。PEGまたはHPCを細孔形成剤として使用するとき、高い透水性と高い強度の兼備を実現するために、CA:PEGまたはCA:HPCの重量比は、約6:4〜約9:1の範囲にすべきである。CA:HPCが、好ましいコーティング組成である。好ましいCA:HPC重量比は、6:4〜7:3の範囲になるはずである。好ましいCA:PEG重量比は、6:4〜7:3の範囲になるはずである。
【0169】
水やメタノールなどの非溶媒をコーティング溶液に加えると、並外れた性能が得られる。「非溶媒」とは、コーティング溶液に実質的に溶解し、(1または複数の)コーティングポリマーの溶媒への溶解度を低下させる、コーティング溶液に加えられる任意の材料を意味する。一般に、非溶媒の機能は、得られるコーティングに多孔性を付与することである。以下で述べるように、多孔質コーティングは、多孔質でない同じ組成の同等の重量のコーティングより高い透水性を有し、この多孔性は、コーティングの密度(質量/体積)の減少によって示される。細孔形成の特定の機序にとらわれるつもりはないが、非溶媒が加えられると、溶媒が蒸発する間、コーティング溶液が凝固前に液体と固体の相分離を経ることにより、コーティングに多孔性が付与されると一般に考えられている。コーティング溶液に候補非溶媒を濁りが出るまで漸進的に加えることにより、非溶媒としての使用について、特定の候補材料の適性および量を評価することができる。コーティング溶液の約50wt%までのいずれかの添加レベルで濁りが生じない場合、一般に、非溶媒としての使用に適切でない。「曇り点」と呼ばれる濁りが認められるとき、最大多孔度に適切な非溶媒のレベルは、曇り点の直下の量である。7wt%のCAおよび3wt%のPEGを含むアセトン溶液では、曇り点は、約23wt%の水のところにある。より少ない多孔度が所望されるとき、非溶媒の量は、所望されるだけ少なく減らすことができる。
【0170】
好適な非溶媒は、溶媒への溶解性がはっきりと認められ、コーティングポリマーの溶媒への溶解性を低下させる、いずれかの材料である。好ましい非溶媒は、選択した溶媒およびコーティングポリマーに応じて決まる。アセトンなどの揮発性極性コーティング溶媒を使用する場合では、好適な非溶媒として、水、グリセロール、メタノールやエタノールなどのアルコールが挙げられる。
【0171】
CA398−10を使用するとき、CA:PEG3350:水のコーティング溶液重量比は、2.4:1.6:5、2.8:1.2:5、3.2:0.8:5、および3.6:0.4:5であり、溶液の残りの分は、アセトンなどの溶媒を含む。したがって、たとえば、CA:PEG3350:水の重量比が2.8:1.2:5である溶液では、CAが溶液の2.8wt%を占め、PEG3350が溶液の1.2wt%を占め、水が溶液の5wt%を占め、アセトンが残りの91wt%を占める。同様に、CA:HPC:水のコーティング溶液重量比は、1.2:0.8:9.8、2.4:1.6:19.6、1.6:0.4:4.9、および3.2:0.8:9.8であり、溶液の残りの分は、アセトンなどの溶媒を含む。したがって、たとえば、CA:HPC:水の重量比が1.2:0.8:10である溶液では、CAが溶液の1.2wt%を占め、HPCが溶液の0.8wt%を占め、水が溶液の10wt%を占め、アセトンが残りの88wt%を占める。さらに、CA:HPC:メタノールのコーティング溶液重量比は、1.8:1.2:19.6、2.4:1.6:19.6、1.6:0.4:4.9、および3.2:0.8:9.8であり、溶液の残りの分は、アセトンなどの溶媒を含む。したがって、たとえば、CA:HPC:メタノールの重量比が1.8:1.2:19.6である溶液では、CAが溶液の1.8wt%を占め、HPCが溶液の1.2wt%を占め、メタノールが溶液の19.6wt%を占め、アセトンが残りの77.4wt%を占める。
【0172】
コーティング溶液に酸化防止剤を組み込むとき、酸化防止剤のコーティングへの良好な分散を確実にするために、第三の溶媒が必要となる場合もある。たとえば、溶液の0.05wt%の酸化防止剤を含む2.4:1.6:5のCA:PEG:水の組成には、5wt%のメタノールおよび86%のアセトンが必要となる。
【0173】
こうしたコーティング溶液から形成されたコーティングは、一般に多孔質である。「多孔質」とは、乾燥状態にあるコーティングが、非多孔質形態にした同じ材料の密度より低い密度を有することを意味する。「非多孔質形態」とは、非溶媒を含有しない、または均質なコーティング溶液を生成するのに必要な最小限の量の非溶媒しか含有しないコーティング溶液を使用して形成されたコーティング材料を意味する。コーティングの乾燥状態密度は、コーティング重量(コーティング前後の錠剤の重量増加から求める)を、コーティング体積(光学または走査電子顕微鏡法によって求められるコーティング厚さに、錠剤表面積を掛けることにより算出する)で割ることにより算出できる。コーティングの多孔性は、コーティングに高い透水性と高い強度を兼備させる要素の一つである。
【0174】
コア周囲のコーティングの重量は、コーティングの組成および多孔度次第であるが、一般に、コーティングされていないコアの重量を基準として3〜30wt%の範囲の量で存在すべきである。少なくとも約5wt%のコーティング重量が、信頼できる性能に十分な強度にするために通常は好ましいが、より少ないコーティング重量を使用しても、所望の速い吸水速度、ひいてはトファシチニブの剤形からのより速い放出速度を実現することができる。トファシチニブ含有剤形については、所望の放出性能を実現するのに、5〜10%のコーティングによる重量増加が好ましい。
【0175】
上述の、CA、PEGまたはHPC、および水またはメタノールを主体とした多孔質コーティングは、優秀な結果をもたらすが、コーティングが、高い透水性、高い強度、ならびに製作および適用の容易さを必要条件として兼備する限り、薬学的に許容できる他の材料をコーティングに使用してもよいことになる。さらに、このようなコーティングは、その該当する開示が参照により本明細書に援用される、米国特許第5,612,059号および第5,698,220号で開示されているものなどの、1または複数の稠密層と、1または複数の多孔質層とを備えて、稠密、多孔質、または「非対称」になるものでよい。
【0176】
コーティングは、錠剤コアの中身を剤形の外部に放出させるために、コーティングの内部および外部と通じている少なくとも1つの送出口も含んでいなければならない。送出口は、大きさが、薬物粒子と同じくらいの大きさからの範囲に及ぶものでよく、したがって、直径が1〜100ミクロン程度の小ささでもよいことになり、直径約5000ミクロンまでは細孔と呼ばれることもある。送出口の形状は、スリットの形態で実質的に円形でもよいし、または製造および加工を容易にするのに好都合な他の形状でもよい。(1つまたは複数の)送出口は、コーティング後の機械的もしくは熱的手段によって、または光のビーム(たとえばレーザー)、粒子のビーム、もしくは他の高エネルギー源を用いて形成してもよいし、またはコーティングの狭い一部分を破裂させることによりその部分に形成してもよい。このような破裂は、コーティングに比較的狭い弱い一部分を意図的に組み込むことによって制御することができる。送出口は、水溶性材料の栓を浸食させ、またはコアのへこみを覆っているコーティングのより薄い一部分を破裂させることにより、その部分に形成することもできる。1つまたは複数の狭い領域がコーティングされないままとなるようにコアをコーティングすることによって、送出口を形成することもできる。加えて、送出口は、本明細書でより詳細に述べる非対称膜コーティング、ならびにその開示が参照により援用される、米国特許第5,612,059号および第5,698,220号で開示されているタイプの場合でのように、コーティングする間に形成しうる多数の孔または細孔にすることもできる。送達経路が細孔であるとき、大きさが1ミクロン〜100ミクロン超の範囲である多数の細孔が存在しうる。作業の間、このような細孔の1つまたは複数が、作業中に発生した静水圧力の影響を受けて広がることもある。(1つまたは複数の)送出口の場所は、錠剤表面のどこに配置してもよい。(1つまたは複数の)送出口の好ましい場所として、錠剤の面および錠剤帯域が挙げられる。より好ましい場所としては、丸いSRC形状の錠剤での、錠剤帯域のほぼ中央、ならびにカプセル、カプレット、楕円、または変形楕円形状の錠剤での、錠剤帯域の長軸に沿った錠剤帯域のほぼ中央、および/または短軸に沿った錠剤帯域のほぼ中央が挙げられる。(1つまたは複数の)送出口の最も好ましい場所は、カプセル、カプレット、楕円、または変形楕円形状の錠剤での、錠剤帯域の長軸に沿った錠剤帯域のほぼ中央である。
【0177】
持続放出−レザバー系
別のクラスの本発明のトファシチニブ持続放出剤形として、膜調節またはレザバー系が挙げられる。このクラスにおいて、トファシチニブのレザバーは、律速膜に取り囲まれている。トファシチニブは、限定はしないが、膜に溶解した後、膜の向こう側へ拡散するもの、または膜内の、液体で満たされた細孔を通して拡散するものを含めて、当業界でよく知られている物質輸送機序によって膜を横断する。こうした個々のレザバー系剤形は、単一の大きなレザバーを含有する錠剤の場合でのように大きくてもよいし、または、それぞれが個々に膜でコーティングされている複数のレザバー粒子を含有するカプセル剤の場合でのように多粒子でもよい。コーティングは、多孔質ではないが、トファシチニブに対して透過性であるものでもよく(たとえば、トファシチニブは、膜から直接拡散してもよい)、または多孔質のものでもよい。本発明の他の実施形態でのように、特定の輸送機序が肝要であるとは考えられていない。
【0178】
膜の製作には、当業界で知られているような持続放出コーティング、特に、セルロースエステルもしくはエーテル、アクリル酸ポリマー、またはポリマーの混合物などのポリマーコーティングを用いることができる。好ましい材料として、エチルセルロース、酢酸セルロース、および酢酸酪酸セルロースが挙げられる。ポリマーは、有機溶媒の溶液として、または水性分散液もしくはラテックスとして適用することができる。コーティング作業は、流動床コーター、ワースターコーター、回転床コーターなどの標準設備において行うことができる。
【0179】
所望であれば、2種以上の材料を混和することにより、コーティングの透過性を調整してもよい。コーティングの多孔度を調節するのに有用なプロセスは、糖または塩や水溶性ポリマーなどの予め決められた量の微粉化した水溶性材料を、使用する膜形成ポリマーの溶液または分散液(たとえば、水性ラテックス)に加えることを含む。剤形が摂取されて胃腸管の水性媒質中に入ると、こうした水溶性膜添加剤は、薬物の放出を促進する細孔を残しながら、膜の外に浸出する。膜コーティングは、当業界で知られているような可塑剤を加えて改変することもできる。
【0180】
膜コーティングを適用するプロセスの有用な変形形態は、コーティングが乾燥するにつれて、適用されたコーティング溶液中で転相が起こる結果、多孔質構造を有する膜が得られるような、選択された溶媒の混合物にコーティングポリマーを溶解させることを含む。このタイプのコーティング系の数多くの例が、参照により本明細書に援用される、1990年3月7日公開の欧州特許第0357369(B1)号に示されている。
【0181】
膜の形態は、本明細書で挙げる透過性の特徴を満たす限り、決定的な重要事項ではない。膜は、非晶質でも、結晶質でもよい。膜は、特定のいずれかのプロセスによって生成されるいかなる範疇の形態を有するものでもよく、たとえば、界面重合による膜(多孔質支持体上に薄い律速スキンを含む)、多孔質親水性膜、多孔質疎水性膜、ヒドロゲル膜、イオン性膜、およびトファシチニブに対する透過性が制御されることを特徴とする他の材料でよい。
【0182】
有用なレザバー系実施形態は、以前に論述した膜材料のいずれかを始めとする律速膜の材料を含む殻を有し、トファシチニブ薬物組成物で満たされている、カプセル剤である。この構成の詳細な利点は、カプセルを、薬物組成物と無関係に調製することができ、したがって、カプセルの調製に、薬物に悪影響を及ぼすと思われるプロセス条件を使用してよいことである。一実施形態は、熱による形成プロセスによって作製された、多孔質または透過性ポリマー製の殻を有するカプセル剤である。別の実施形態は、非対称膜の形態のカプセル殻、たとえば、一方の表面上に薄いスキンを有し、その厚さのほとんどが、透過性の高い多孔質材料で構成されている膜である。非対称膜カプセルの調製プロセスは、カプセル形状の型にコーティングされたポリマーの溶液を、溶媒を混和性非溶媒と交換することによって相分離させる、溶媒交換転相を含む。本発明において有用な非対称膜の例は、前述の欧州特許第0357369(B1)号で開示されている。
【0183】
レザバー系のクラスの別の実施形態は、トファシチニブの持続放出をもたらすように設計されたポリマーで各粒子がコーティングされている多粒子を含む。多粒子粒子は、それぞれが、トファシチニブと、製作および性能のための必要に応じて、1種または複数の賦形剤とを含む。個々の粒子の大きさは、以前に言及したとおり、一般に、約50ミクロン〜約3mmの間であるが、この範囲外の大きさのビーズも有用となる場合がある。一般に、ビーズは、トファシチニブと、1種または複数の結合剤とを含む。小さく、飲み込みやすい剤形を生成することが一般に望ましいので、賦形剤に対して多い分率のトファシチニブを含有するビーズが好ましい。こうしたビーズの作製において有用な結合剤としては、微結晶性セルロース(たとえば、Avicel(登録商標)、FMC Corp.)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、および同類の材料、またはこれらの組合せが挙げられる。一般に、デンプン、α化デンプン、ポリ(N−ビニル−2−ピロリジノン)(PVP)などの、造粒および打錠において有用である結合剤も、多粒子の形成に使用することができる。
【0184】
レザバー系トファシチニブ多粒子は、限定はしないが、押出しおよび球形化、湿式造粒、流動床造粒、ならびに回転床造粒の技術を始めとする、当業者に知られている技術を使用して調製することができる。加えて、ビーズは、トファシチニブ組成物(薬物プラス賦形剤)を、パウダーコーティングなどの薬物成層技術により、シードコア(ノンパレイユシードなど)上に構築することによって、またはワースターコーターや回転式加工装置などの流動床において、適切な結合剤溶液中のトファシチニブの溶液または分散液をシードコアに吹き付けてトファシチニブ組成物を適用することによって調製することもできる。好適な組成物および方法の一例は、トファシチニブ/ヒドロキシプロピルセルロース組成物の水分散液を吹き付けることである。有利なことに、トファシチニブは、水性組成物中に、その水への溶解度の限界を超えて、投入することができる。
【0185】
この実施形態の多粒子コアの製造方法は、マトリックス多粒子について以前に論述したような押出し/球形化プロセスである。この方法のための別のプロセスおよび組成は、水を使用して、約5〜75%の微結晶性セルロースを、それに応じて約95〜25%のトファシチニブと湿塊混和するものである。別の実施形態では、プロセスは、水を使用して、約5〜30%の微結晶性セルロースを、それに応じて約5〜70%のトファシチニブと湿塊混和するものである。
【0186】
レザバー系について以前に論述したように、当業界で知られているような持続放出コーティング、特にポリマーコーティングを、膜の製作に用いることができる。好適で好ましいポリマーコーティング材料、設備、およびコーティング方法としても、以前に論述したものが挙げられる。
【0187】
コーティングされた多粒子からのトファシチニブ放出の速度は、薬物含有コアの組成および結合剤含量、コーティングの厚さおよび透過性、多粒子の表面対体積比などの要素によって制御することもできる。コーティングの厚さが増すと、放出速度が低下し、コーティングの透過性または多粒子の表面対体積比が増すと、放出速度が上昇することは、当業者には理解されよう。所望であれば、2種以上の材料を混和することにより、コーティングの透過性を調整してもよい。有用な一連のコーティングは、水不溶性と水溶性のポリマー、たとえば、それぞれ、エチルセルロースとヒドロキシプロピルメチルセルロースの混合物を含む。コーティングに対する有用な改変は、糖や塩などの微粉化した水溶性材料を加えることである。こうした水溶性膜添加剤は、水性媒質中に入ると、薬物の送達を促進する細孔を残しながら、膜の外に浸出する。膜コーティングは、当業者に知られているような可塑剤を加えて改変することもできる。膜コーティングの別の有用な変形形態は、コーティングが乾燥するにつれて、適用されたコーティング溶液中で転相が起こる結果、多孔質構造を有する膜が得られるような、選択された溶媒の混合物を利用するものである。
【0188】
別の実施形態は、乾燥して連続フィルムを形成するエチルセルロースの水性分散液で個々の粒子がコーティングされている、約5〜50%のトファシチニブを含む多粒子である。
【0189】
別の実施形態は、トファシチニブビーズが約400ミクロン未満の大きさであり、エチルセルロースまたは酢酸セルロースの転相膜でコーティングされているときに得られる。
【0190】
別の実施形態は、トファシチニブビーズが約400ミクロン未満の大きさであり、乾燥して連続フィルムを形成するエチルセルロースの水性分散液でコーティングされているときに得られる。
【0191】
別の実施形態は、トファシチニブビーズが約300ミクロン未満の大きさであり、乾燥して連続フィルムを形成するエチルセルロースの水性分散液でコーティングされているときに得られる。
【0192】
遅延放出および制御放出成分
別のクラスの剤形として、トファシチニブの制御放出が始まる前に遅れが組み込まれている形態が挙げられる。一実施形態は、トファシチニブの制御放出に有用なタイプのポリマー材料からなる第一のコーティングと、剤形が摂取されたときに薬物の放出を遅らせるのに有用なタイプの第二のコーティングでコーティングされたトファシチニブを含有するコアを含む錠剤を実例として挙げることができる。第一のコーティングは、錠剤を覆って適用され、錠剤を取り囲む。第二のコーティングは、第一のコーティングを覆って適用され、これを取り囲む。
【0193】
錠剤は、当業界でよく知られている技術によって調製することができ、治療に有用な量のトファシチニブに加え、そのような技術による錠剤の形成に必要となるような賦形剤を含有する。
【0194】
第一のコーティングは、レザバー系について以前に論述したように、膜を製作するための、当業界で知られているような制御放出コーティング、特にポリマーコーティングでよい。好適なポリマーコーティング材料、設備、およびコーティング方法としても、以前に論述したものが挙げられる。
【0195】
錠剤上の第二のコーティングの調製に有用な材料としては、医薬品の遅延放出のための腸溶コーティングとして当業界で知られているポリマーが挙げられる。これらは、最も一般的には、「遅延放出」において下記でより十分に詳述しているとおり、感pH性材料、たとえば、酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリト酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ(酢酸フタル酸ビニル)、ならびにアクリル酸コポリマー、たとえば、Eudragit L−100(RohmPharma)、Eudragit L30 D−55、Eudragit S100、Eudragit FS 30D、および同類の材料である。遅延放出コーティングの厚さおよびタイプは、所望の遅延特性が得られるように調整する。一般に、より厚いコーティングは、浸食に対する耐性がより強く、その結果として、7より高いpHで溶解するように設計されているコーティングに関しては、より長い遅延がもたらされる。好ましいコーティングは、通常、厚さ約10ミクロン〜厚さ約3mm、より好ましくは10μm〜500μmの範囲である。
【0196】
2回コーティングされた錠剤は、摂取されると、胃を通過するが、胃では、第二のコーティングが、そこで優勢な酸性条件下でのトファシチニブの放出を妨げる。錠剤が胃を通り過ぎ、pHがより高い小腸に入ると、第二のコーティングは、選択された材料の物理化学的性質に従って、浸食され、または溶解する。第二のコーティングが浸食され、または溶解すると、第一のコーティングが、トファシチニブの即時または急速の放出を妨げ、高い濃度が生じないように放出をモジュレートし、それによって副作用が最小限に抑えられる。
【0197】
別の実施形態は、各粒子が、最初に、トファシチニブの制御放出をもたらすように設計されたポリマーで、次いで、剤形が摂取されたとき、胃腸管の環境において放出の開始を遅らせるように設計されたポリマーで、錠剤について上述したように二重コーティングされている、多粒子を含む。ビーズは、トファシチニブを含有し、製作および性能のための必要に応じて、1種または複数の賦形剤を含有してもよい。結合剤に対して多い分率のトファシチニブを含有する多粒子が望ましい。多粒子は、レザバー系の作製に使用する多粒子について以前に開示した技術(押出しおよび球形化、湿式造粒、流動床造粒、および回転床造粒、シード構築などが含まれる)のいずれかによる組成のものでよく、それによって製作したものでよい。
【0198】
制御放出コーティングは、レザバー系について以前に論述したように、膜を製作するための、当業界で知られているようなもの、特にポリマーコーティングでよい。好適なポリマーコーティング材料、設備、およびコーティング方法としても、以前に論述したものが挙げられる。
【0199】
制御放出コーティングされた多粒子(たとえば、遅延放出コーティングがなされる前の多粒子)からのトファシチニブ放出の速度、およびコーティングを改変する方法はまた、レザバー系トファシチニブ多粒子について以前に論述した要素によって制御される。
【0200】
二重コーティングされた多粒子のための第二の膜またはコーティングは、錠剤について上で開示したとおり、第一の制御放出コーティングを覆って適用される遅延放出コーティングであり、同じ材料から形成されたものでもよい。この実施形態を実施するための、いわゆる「腸溶性」材料の使用は、従来の腸溶剤形を生成するためのその使用とは著しく異なることを留意すべきである。従来の腸溶性形態では、目的は、剤形が胃を通過してしまうまで薬物の放出を遅らせ、次いで、胃から排出された後、用量をすぐに送達することである。しかし、トファシチニブが十二指腸に直接かつ完全に投薬されることは、本発明が最小限に抑え、または回避しようと努めている局所代謝のために、望ましくない。したがって、従来の腸溶性ポリマーをこの実施形態の実施に使用する場合、剤形が下位の胃腸管に到達するまで薬物放出を遅らせるには、慣行の場合より著しく厚く適用することが必要となりうる。しかし、遅延放出コーティングが溶解し、または浸食された後は、トファシチニブの制御された送達を実現することが好ましく、したがって、この実施形態の利益は、遅延放出性が制御放出性と正しく組み合わさることで実現でき、遅延放出部分だけでは、USP腸溶性基準に必ずしも合致するかどうか定かでない。遅延放出コーティングの厚さは、所望の遅延特性が得られるように調整する。一般に、より厚いコーティングは、浸食に対する耐性がより強く、その結果として、より長い遅延がもたらされる。
【0201】
また、上で規定したような持続放出浸透圧系も、現在の、遅延に次ぐ制御放出の範疇の中に定める場合があってよいことを留意すべきである。典型的な浸透圧持続放出系では、0.5〜6時間の初期遅延の後、制御された形で薬物が放出される。この形式において、標準の浸透圧一体式または二層持続放出系は、遅延に続く制御放出の定義が具体化されたものである。
【0202】
破裂浸透圧ビーズおよびコア(パルス送達)
さらなる一実施形態(「破裂浸透圧コアデバイス」)では、トファシチニブが、トファシチニブと、場合により1種または複数のオスマジェントとを含有する錠剤コアまたはビーズコアを含む浸透圧破裂デバイスに組み込まれている。このタイプのデバイスは、参照により本明細書に援用される、Bakerの米国特許第3,952,741号で一般に開示されている。オスマジェントの例は、グルコース、スクロース、マンニトール、ラクトースなどの糖、塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸ナトリウムなどの塩、酒石酸やフマル酸などの水溶性の酸である。トファシチニブを含有する錠剤コアまたはビーズコアは、半透膜、すなわち、水に対しては透過性であるが、トファシチニブに対しては実質的に不透過性である膜を形成するポリマーでコーティングされている。半透膜となるポリマーの例は、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、およびエチルセルロースであり、好ましくは酢酸セルロースである。別法として、半透性コーティング膜は、1種または複数の蝋、たとえば、蜜蝋などの昆虫および動物蝋、ならびにカルナウバ蝋や硬化植物油などの植物蝋から構成されたものでもよい。イソニアジド錠剤についてYoshinoが記載しているように(Capsugel Symposia Series、Current Status on Targeted Drug Delivery to the Gastrointestinal Tract、1993、185〜190頁)、ポリエチレングリコール、たとえばポリエチレングリコール−6000と、硬化油、たとえば硬化ヒマシ油の溶融混合物を、コーティングとして使用してもよい。一部の好ましい半透性コーティング材料は、セルロースエステルおよびセルロースエーテル、ポリアクリレートやポリアクリル酸エステルなどのポリアクリル酸誘導体、ならびにエチレンビニルアルコールコポリマーなどのポリビニルアルコールとポリアルケンである。他の半透性コーティング材料は、酢酸セルロースおよび酢酸酪酸セルロースである。
【0203】
本発明の「破裂浸透圧コア」実施形態のコーティングされた錠剤またはビーズが水性の使用環境に置かれると、水が半透膜を通過してコアに入って、トファシチニブおよびオスマジェントの一部分を溶解させ、コロイド浸透圧を発生させる結果、半透膜が破裂し、トファシチニブが水性環境中に放出される。ビーズまたは錠剤コアの大きさおよび幾何学的配置、オスマジェントの実体および量、ならびに半透膜の厚さの選択により、剤形が水性の使用環境に置かれた時間と、封入されたトファシチニブが放出される時間とのずれを選択することができる。剤形の表面対体積比を増大させること、およびオスマジェントの浸透圧活性を増大させることが、時間のずれを小さくするのに役立ち、コーティングの厚さを増大させることが、時間のずれを大きくすることは、当業者には理解されよう。本発明の浸透圧破裂デバイスは、剤形が胃を出て行き、小腸に約15分間以上滞在するまで、剤形からのトファシチニブの放出を実質的に示さないものである。一部の浸透圧破裂デバイスは、剤形が胃を出て行き、小腸に約30分間以上滞在するまで、剤形からのトファシチニブの放出を実質的に示さない。他の浸透圧破裂デバイスは、剤形が胃を出て行き、小腸に約90分間以上滞在するまで、剤形からのトファシチニブの放出を実質的に示さない。さらに他の浸透圧破裂デバイスは、剤形が胃を出て行き、小腸に、最も好ましくは3時間以上滞在するまで、剤形からのトファシチニブの放出を実質的に示さず、したがって、十二指腸および上位小腸において最小限のトファシチニブしか放出されないことが確実になる。破裂浸透圧コア錠剤またはビーズは、トファシチニブを約10〜95%、上述のようなオスマジェントを約0〜60%、結合剤や滑沢剤などの他の医薬助剤を約5〜20%含有してよい錠剤またはビーズコアを有する。酢酸セルロースコーティングなどの錠剤上の半透膜コーティングは、錠剤コアの重量の約2%〜約30%、好ましくは約3%〜約10%に相当する重量で存在する。酢酸セルロースコーティングなどのビーズ上の半透膜コーティングは、ビーズコアの重量の約2%〜約80%に相当する重量で存在する。別の実施形態では、ビーズ上の半透性コーティングは、ビーズコアの重量の3%〜30%に相当する重量で存在する。
【0204】
破裂浸透圧コアデバイスは、デバイスが胃を出て行き、十二指腸に入ったことを「感知する」機序を有していない。したがって、このタイプのデバイスは、水性環境に入った後、たとえば、飲み込まれた後、予め決められた時間にトファシチニブを放出する。絶食状態において、本発明の「破裂浸透圧コアデバイス」などの、非消化性非崩壊性固体は、ヒトではおよそ2時間毎に起こる、消化管間欠伝播性収縮(Interdigestive Migrating Myoelectric Complex)(IMMC)の第III期の間に胃から排出される。絶食状態における投薬時のIMMCの段階に応じて、破裂浸透圧コアデバイスは、胃を、投薬のほとんど直後に出て行く場合もあれば、または投薬後2時間程度で出て行く場合もある。摂食状態において、直径が11mm未満である非消化性非崩壊性固体は、食事の内容と共にゆっくりと胃から排出される(KhoslaおよびDavis、Int.J.Pharmaceut.62(1990)R9−R11)。非消化性非崩壊性固体が直径約11mmより大きい、たとえば、典型的な錠剤とほぼ同じ大きさである場合、食事が消化される期間の間、胃の中に滞留し、全部の食事が消化され、胃を出て行った後、IMMCの第III期の間に十二指腸へと出て行く。トファシチニブの放出は、約15分以上先まで遅らせることができる。トファシチニブの放出は、30分以上先まで遅らせることもできる。トファシチニブの放出は、約90分以上先まで遅らせることもできる。トファシチニブの放出は、剤形が胃を出て行った後、約3時間以上先まで遅らせることもできる。破裂浸透圧コアデバイスは、絶食状態で服用されたとき、水性環境に入ってから、たとえば摂取されてから、約2.5時間後にトファシチニブを放出し始めて、デバイスがそのトファシチニブを十二指腸より遠位に放出することがより確実になる。別の「破裂浸透圧コアデバイス」は、水性環境に入ってから約4時間後にトファシチニブを放出し始める。この4時間の遅れにより、摂食状態での投薬が可能になり、摂食時の胃における約3.5時間の滞留に続いて、剤形が胃を出て行った後、およそ30分の遅れを許容する。このようにして、胃腸管の最も敏感な部分である十二指腸へのトファシチニブの放出が最小限に抑えられる。
【0205】
さらなる一実施形態では、参照により本明細書に援用されるMilosovichの米国特許第3,247,066号に記載されているように、膨潤性コロイド(たとえばゼラチン)などの膨潤性材料も25〜70%含むトファシチニブ含有錠剤またはビーズである、「破裂コーティング膨潤コア」を調製する。膨潤コア材料は、ヒドロゲル、たとえば、水を吸って膨張する親水性ポリマー、たとえば、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸誘導体、たとえば、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニル−2−ピロリドン、カルボキシメチルセルロース、デンプンなどである。この実施形態のための膨潤ヒドロゲルとしては、ポリエチレンオキシド、カルボキシメチルセルロース、およびクロスカルメロースナトリウムが挙げられる。コロイド/ヒドロゲルを含有するトファシチニブ含有コア錠剤またはビーズは、少なくとも一部が、半透膜によってコーティングされる。半透膜となるポリマーの例は、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、およびエチルセルロースである。別法として、半透性コーティング膜は、1種または複数の蝋、たとえば、蜜蝋などの昆虫および動物蝋、ならびにカルナウバ蝋や硬化植物油などの植物蝋から構成されたものでもよい。イソニアジド錠剤についてYoshinoが記載しているように(Capsugel Symposia Series、Current Status on Targeted Drug Delivery to the Gastrointestinal Tract、1993、185〜190頁)、ポリエチレングリコール、たとえばポリエチレングリコール−6000と、硬化油、たとえば硬化ヒマシ油の溶融混合物を、コーティングとして使用してもよい。いくつかの半透性コーティング材料は、セルロースエステルおよびセルロースエーテル、ポリアクリレートやポリアクリル酸エステルなどのポリアクリル酸誘導体、エチレンビニルアルコールコポリマーなどのポリビニルアルコールとポリアルケン、酢酸セルロース、ならびに酢酸酪酸セルロースである。
【0206】
破裂コーティング膨潤コアを有するコーティングされた錠剤またはビーズが、水性の使用環境に置かれると、水が半透膜を通過してコアに入って、コアを膨潤させる結果、半透膜が破裂し、トファシチニブが水性環境中に放出される。ビーズまたは錠剤コアの大きさおよび幾何学的配置、膨潤剤の実体および量、ならびに半透膜の厚さの選択により、剤形が水性の使用環境に置かれた時間と、封入されたトファシチニブが放出される時間とのずれを選択することができる。本発明の好ましい破裂コーティング膨潤コアデバイスは、剤形が胃を出て行き、小腸に約15分間以上、好ましくは約30分間以上滞在するまで、剤形からのトファシチニブの放出を実質的に示さず、したがって、十二指腸において最小限のトファシチニブしか放出されないことが確実になるものである。
【0207】
破裂コーティング膨潤コア錠剤またはビーズは、トファシチニブを約10〜70%、膨潤材料、たとえばヒドロゲルを約15〜60%、任意選択のオスマジェントを約0〜15%、結合剤や滑沢剤などの他の医薬助剤を約5〜20%含有してよい錠剤またはビーズコアを有する。錠剤上の半透膜コーティング、好ましくは酢酸セルロースコーティングは、錠剤コアの重量の約2%〜約30%、好ましくは3%〜10%に相当する重量で存在する。ビーズ上の半透膜コーティング、好ましくは酢酸セルロースコーティングは、ビーズコアの重量の約2%〜約80%、好ましくは3%〜30%に相当する重量で存在する。
【0208】
破裂コーティング膨潤コアデバイスは、デバイスが胃を出て行き、十二指腸に入ったことを感知する機序を有していない。したがって、このタイプのデバイスは、破裂浸透圧コアデバイスについて以前に論述したように、水性環境に入った後、たとえば、飲み込まれた後、予め決められた時間にそのトファシチニブ内容物を放出し、同じ考察および選好が、破裂コーティング膨潤コアデバイスの作製に当てはまる。破裂コーティング膨潤コアデバイスを、即時放出デバイスと組み合わせて、投与直後と、投薬後の予め決められた追加の1または複数の時点の両方において薬物を放出する剤形を創出することもできる。
【0209】
さらなる一実施形態「pH誘発性浸透圧破裂デバイス」では、トファシチニブが、参照により本明細書に援用される、1994年10月25日発行の、認められた、同一出願人による同時係属の米国特許第5,358,502号に記載されているタイプのデバイスに組み込まれている。デバイスは、少なくとも一部が半透膜に取り囲まれた、トファシチニブと、場合により1種または複数のオスマジェントとを含む。半透膜は、水に対しては透過性であり、トファシチニブおよびオスマジェントに対しては実質的に不透過性である。有用なオスマジェントは、破裂浸透圧コアデバイスについて上で述べたものと同じである。有用な半透膜材料は、破裂浸透圧コアデバイスについて上で述べたものと同じである。pH誘因手段は、半透膜に取り付ける。pH誘因手段は、5.0より高いpHによって活性化され、トファシチニブの急な送達を誘発する。この実施形態では、pH誘因手段は、半透性コーティングを取り囲む膜またはポリマーコーティングを含む。pH誘因コーティングは、胃のpH範囲では実質的に不透過性および不溶性であるが、十二指腸とほぼ同じpH、すなわちpH約6.0で透過性および可溶性になるポリマーを含有する。
【0210】
例としての感pH性ポリマーは、ポリアクリルアミド、フタル酸誘導体、たとえば、炭水化物の酸性フタレート、酢酸フタル酸アミロース、酢酸フタル酸セルロース、他のセルロースエステルフタレート、セルロースエーテルフタレート、フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルエチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸メチルセルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、ポリビニルアセテート水素フタレート、酢酸フタル酸セルロースナトリウム、酸性フタル酸デンプン(starch acid phthalate)、スチレン−マレイン酸ジブチルフタレートコポリマー、スチレン−マレイン酸ポリビニルアセテートフタレートコポリマー、スチレンとマレイン酸のコポリマー、ポリアクリル酸誘導体、たとえば、アクリル酸とアクリル酸エステルのコポリマー、ポリメタクリル酸およびそのエステル、ポリアクリル酸メタクリル酸コポリマー、セラック、ならびに酢酸ビニルとクロトン酸のコポリマーである。
【0211】
好ましい感pH性ポリマーとしては、セラック;フタル酸誘導体、詳細には、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルアセテートフタレート、およびフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース;ポリアクリル酸誘導体、詳細には、メタクリル酸ポリメチルをアクリル酸とアクリル酸エステルのコポリマーと混和したもの;ならびに酢酸ビニルとクロトン酸のコポリマーが挙げられる。上述のとおり、酢酸フタル酸セルロースは、Aquateric(登録商標)(FMC Corp.(ペンシルヴェニア州フィラデルフィア)の登録商標)の商品名でラテックスとして入手可能であり、アクリル酸コポリマーは、Eudragit−R(登録商標)およびEudragit−L(登録商標)の商品名で入手可能である。この実施形態における適切な適用について、これらのポリマーは、上述の可塑剤を利用して可塑化すべきである。pH誘因コーティングは、ポリマーの混合物、たとえば、酢酸セルロースと酢酸フタル酸セルロースを含むものでもよい。別の好適な混合物は、Eudragit−L(登録商標)とEudragit−S(登録商標)を含み、2者の比およびコーティングの厚さによって、「誘因」の感度、たとえば、外側のpH誘因コーティングが脆弱化または溶解するpHが規定される。
【0212】
pH誘発性浸透圧破裂デバイスは、一般に、次のように動作する。トファシチニブを含有するコア錠剤またはビーズを取り囲む半透性コーティングをさらに取り囲むpH誘因コーティングは、経口摂取された後、胃の中で溶解せず、無傷のままとなる。胃において、水が、pH誘因コーティングおよび半透性コーティングを透過し始め、したがって、トファシチニブおよび任意選択のオスマジェントを含有するコアの水和が開始されるかどうかは定かでない。デバイスが胃を出て行き、小腸に入った後、pH誘因コーティングは、急速に崩壊および溶解し、水が半透性コーティングを通過して、コア内のトファシチニブおよび任意選択のオスマジェントを溶解させる。半透性コーティングの向こう側へのコロイド浸透圧がある閾値を超えると、半透性コーティングは機能しなくなり、デバイスは破裂して、トファシチニブを放出する。この破裂およびトファシチニブの放出は、pH誘発性浸透圧破裂デバイスが胃を出て行き、十二指腸に入ってから、約15分以上後、好ましくは30分以上後に起こり、したがって、敏感な十二指腸のトファシチニブへの暴露が最小限に抑えられることが好ましい。
【0213】
pH誘発性浸透圧破裂デバイスについて、ずれ時間または遅延時間は、コア中のオスマジェントの選択および量、半透性コーティングの選択、ならびに半透性コーティングの厚さによって制御される。たとえば、より厚い半透性コーティングでは、デバイスが胃を出て行った後、より長い遅れが生じることは、当業者には理解されよう。好ましいpH誘発性浸透圧破裂デバイスは、トファシチニブと任意選択のオスマジェントのビーズまたは錠剤コアが、3〜20重量%の酢酸セルロース膜でコーティングされたものが、約1:1の酢酸セルロース/酢酸フタル酸セルロースで構成された3〜20重量%の膜でコーティングされたものである。好ましい別のpH誘発性浸透圧破裂デバイスは、トファシチニブと任意選択のオスマジェントのビーズまたは錠剤コアが、3〜20重量%の酢酸セルロース膜でコーティングされたものが、約9:1〜約1:1のEudragit−L(登録商標)/Eudragit−S(登録商標)を含む3〜20重量%の膜でコーティングされたものである。
【0214】
有利なことに、pH誘発性浸透圧破裂デバイスは、デバイスが胃を出て行ったことを感知する機序を有するので、胃内容排出に対象間でばらつきがあることが重大にならない。
【0215】
さらなる一実施形態「pH誘発性破裂コーティング膨潤コア」では、トファシチニブおよび膨潤材料を含有する錠剤コアまたはビーズが、感pH性コーティングでさらにコーティングされている半透性コーティングでコーティングされている。膨潤材料の選択を含めたコア組成は、破裂コーティング膨潤コア実施形態について上で述べたとおりである。半透性コーティング材料および感pH性コーティング材料の選択は、「pH誘発性浸透圧コア」実施形態について上で述べたとおりである。このデバイスについては、参照により本明細書に援用される、1993年2月25日出願の、同一出願人による同時係属の米国特許出願第08/023,227号に詳述されている。
【0216】
pH誘発性破裂膨潤コア実施形態は、一般に、次のように動作する。トファシチニブを含有するコア錠剤またはビーズを取り囲む半透性コーティングをさらに取り囲むpH誘因コーティングは、経口摂取された後、胃の中で溶解せず、無傷のままとなる。胃において、水が、pH誘因コーティングおよび半透性コーティングを透過し始め、したがって、トファシチニブおよび水膨潤性材料、好ましくはヒドロゲルを含有するコアの水和が開始されるかどうかは定かでない。pH誘発性破裂膨潤コアデバイスが胃を出て行き、小腸に入ると、pH誘因コーティングは、急速に崩壊および溶解し、水が半透性コーティングを通過して、コア内のトファシチニブを溶解させ、水膨潤性材料を膨張させる。半透性コーティングの向こう側への膨潤圧力がある閾値を超えると、半透性コーティングは機能しなくなり、デバイスは破裂して、トファシチニブを放出する。この破裂およびトファシチニブの放出は、pH誘発性破裂膨潤コアデバイスが胃を出て行き、十二指腸に入ってから、約15分以上後、約30分程度後に起こり、したがって、敏感な十二指腸のトファシチニブへの暴露が最小限に抑えられる。
【0217】
「pH誘発性破裂膨潤コア」デバイスについて、ずれ時間または遅延時間は、コア中の膨潤材料の選択および量、半透性コーティングの選択、ならびに半透性コーティングの厚さによって制御することができる。たとえば、より厚い半透性コーティングでは、デバイスが胃を出て行った後、より長い遅れが生じることは、当業者には理解されよう。pH誘発性破裂膨潤コアデバイスは、トファシチニブと合成ヒドロゲル、好ましくはカルボキシメチルセルロースのビーズまたは錠剤コアが、3〜20重量%の酢酸セルロース膜でコーティングされたものが、約1:1の酢酸セルロース/酢酸フタル酸セルロースで構成された3〜20重量%の膜でコーティングされたものを含有する。別のpH誘発性破裂膨潤コアデバイスは、トファシチニブと合成ヒドロゲル、好ましくはカルボキシメチルセルロースのビーズまたは錠剤コアが、3〜20重量%の酢酸セルロース膜でコーティングされたものが、約9:1〜約1:1のEudragit−L(登録商標)/Eudragit−S(登録商標)で構成された3〜20重量%の膜でコーティングされたものを含有する。
【0218】
有利なことに、pH誘発性破裂膨潤コアデバイスは、デバイスが胃を出て行ったことを感知する機序を有するので、胃内容排出に対象間でばらつきがあることが重大にならない。pH誘発性破裂膨潤コアデバイスを、即時放出デバイスと組み合わせて、投与直後と、投薬後の、胃腸管における予め決められた追加の1または複数の場所での両方において薬物を放出する剤形を創出することもできる。
【0219】
この破裂技術に関する最新の総説は、Journal of Controlled Release;134(2009)74〜80であり、その全体を参照として本明細書に援用する。
【0220】
本発明の遅延放出実施形態は、その組み込まれているトファシチニブを哺乳動物の胃に10%以下しか放出せず、前記哺乳動物の十二指腸に入った後、最初の15分の間にさらに10%以下しか放出しない、トファシチニブと薬学的に許容できる担体とを含む、経口投与用の固体剤形である。胃または十二指腸におけるトファシチニブの放出のタイミングは、限定はしないが、x線評価、核磁気共鳴像法、γシンチグラフィ、または挿管による胃および十二指腸の内容物の直接のサンプル採取を始めとする様々な手法を利用して試験することができる。これらの試験は、可能ではあるが、ヒトにおいて実施することが非常に難しい場合がある。本発明の遅延放出実施形態のためのより好都合な試験は、2段階のin vitro溶解試験である。
【0221】
本発明について、以下の非限定的な実施例において例示する。
【実施例1】
【0222】
押出性コア系浸透圧錠剤
22mg錠剤コア
1回分量の半分のソルビトール2663.01グラム(以下の表1も参照のこと)を、28L容器に加えた。次いで、28L容器に、1回分量のコポビドン420.00グラムを加えた。次いで、28L容器に、1回分量のトファシチニブ623.98gを加えた。次いで、28L容器に、1回分量のヒドロキシセルロース560.00グラムを加えた。28L容器に、残りの1回分量の半分のソルビトール2663.01グラムを加えた。成分すべてを、容器において12+/−1RPMで15分間混和した。
【0223】
混和物を、0.032”スクリーン、およびおよそ950RPMで回転する丸刃インペラを備え付けたComil回転ミルに通した。混和物を第二の28L容器に集めた。容器の中身を15+/−1RPMで10分間混和した。
【0224】
ステアリン酸マグネシウム70gを、850ミクロンメッシュのスクリーンに通し、容器に加え、中身を12+/−1RPMで5.5分間混和した。最終混和物を、Fette回転錠剤成形機のホッパーに移した。0.2620”×0.5240”変形楕円成形型を使用して、平均目標重量400mg+/−5%、平均目標厚さ5.35mm+/−0.05mm、および目標硬さ13kPに錠剤を圧縮した。錠剤をデダスターおよび金属検出器に通した。
【0225】
【表1】
【0226】
11mg錠剤コア
1回分量の半分のソルビトール2819.01グラム(以下の表2も参照のこと)を、28L容器に加えた。次いで、28L容器に、1回分量のコポビドン420.00グラムを加えた。次いで、28L容器に、1回分量のトファシチニブ311.99gを加えた。次いで、28L容器に、1回分量のヒドロキシセルロース560.00グラムを加えた。28L容器に、残りの1回分量の半分のソルビトール2819.0グラムを加えた。成分すべてを、容器において12+/−1RPMで15分間混和した。
【0227】
混和物を、0.032”スクリーン、およびおよそ950RPMで回転する丸刃インペラを備え付けたComil回転ミルに通した。混和物を第二の28L容器に集めた。容器の中身を15+/−1RPMで10分間混和した。
【0228】
ステアリン酸マグネシウム70gを、850ミクロンメッシュのスクリーンに通し、容器に加え、中身を12+/−1RPMで5.25分間混和した。最終混和物を、Fette回転錠剤成形機のホッパーに移した。0.2620”×0.5240”変形楕円成形型を使用して、平均目標重量400mg+/−5%、平均目標厚さ5.35mm+/−0.05mm、および目標硬さ15kPに錠剤を圧縮した。錠剤をデダスターおよび金属検出器に通した。
【0229】
【表2】
【0230】
錠剤コーティングおよび穿孔
4.049キログラムのコーティング溶液を、次のステップに従って調製した。最初に、全396.0グラムの水(以下の表3も参照のこと)および1464.0グラムのアセトンを、5リットル容器に加え、5分間混合した。混合物に、32.4グラムのヒドロキシプロピルセルロースを加え、5分間混合した。混合物に、48.6グラムの酢酸セルロースを加え、5分間混合した。混合物に、残りの2108グラムのアセトンを加え、3時間混合した。この手順によって、2%固体(w/w)溶液が生じた。
【0231】
【表3】
【0232】
1.5リットルの半多孔(semi−perforated)パンを備えたVector LDCS−5において、20rpmおよび風量30CFMで動作させ、排気温度を40℃として、400mg重量の楕円形錠剤900グラムをコーティングした。湿重量増加が6.2%のレベルに達するまで、2%固体(w/w)溶液を適用した。次いで、錠剤をコーティングパンから取り出し、40℃で16時間乾燥させた。
【0233】
楕円形錠剤の帯域の端に、単一の孔(1000ミクロン)を開けた。孔は、機械的手段またはレーザー切除のどちらによって開けてもよい。6%のコーティングでは、溶解試験1に基づき、pH6.8の媒質、50rpmのパドルにおいて、以下の放出が実現された(表4)。
【0234】
【表4】
【実施例2】
【0235】
アセトン:メタノールコーティング溶液を用いた200mg押出性コア系浸透圧錠剤
11mg錠剤コア
1回分量の半分のソルビトール38.014キログラム(以下の表5も参照のこと)を、300L容器に加えた。次いで、300L容器に、1回分量のコポビドン6.00キログラムを加えた。次いで、300L容器に、1回分量のトファシチニブ8.914キログラムを加えた。次いで、300L容器に、1回分量のヒドロキシセルロース8.00キログラムを加えた。300L容器に、残りの1回分量の半分のソルビトール38.014キログラムを加えた。材料はすべて、真空移送システムによって加え、0.032”スクリーン、およびおよそ1400RPMで回転する丸刃インペラを備え付けたComil回転ミルに通した。成分すべてを、容器において12+/−1RPMで20分間混和する。
【0236】
混和物を、0.032”スクリーン、およびおよそ1400RPMで回転する丸刃インペラを備え付けたComil回転ミルに通した。混和物を第二の300L容器に集めた。容器の中身を12+/−1RPMで20分間混和した。
【0237】
ステアリン酸マグネシウム1.00キログラムを、850ミクロンメッシュのスクリーンに通し、容器に加え、中身を12+/−1RPMで5分間混和した。Manesty Mark IV回転錠剤成形機において、0.2080”×0.4160”変形楕円成形型を使用して、平均目標重量200mg+/−5%、平均目標厚さ4.17mm+/−0.05mm、目標硬さ10kPに錠剤を圧縮した。錠剤をデダスターおよび金属検出器に通した。
【0238】
【表5】
【0239】
22mg錠剤コア
1回分量の半分のソルビトール33.086キログラム(以下の表6も参照のこと)を、300L容器に加えた。次いで、300L容器に、1回分量のコロイド状二酸化ケイ素1.00kgを加えた。次いで、300L容器に、1回分量のコポビドン6.00キログラムを加えた。次いで、300L容器に、1回分量のトファシチニブ8.914キログラムを加えた。次いで、300L容器に、1回分量のヒドロキシセルロース8.00キログラムを加えた。300L容器に、残りの1回分量の半分のソルビトール33.086キログラムを加えた。材料はすべて、真空移送システムによって加え、0.032”スクリーン、およびおよそ1400RPMで回転する丸刃インペラを備え付けたComil回転ミルに通した。成分すべてを、容器において12+/−1RPMで20分間混和した。
【0240】
混和物を、0.032”スクリーン、およびおよそ1400RPMで回転する丸刃インペラを備え付けたComil回転ミルに通した。混和物を第二の300L容器に集めた。容器の中身を12+/−1RPMで20分間混和した。
【0241】
ステアリン酸マグネシウム1.00キログラムを、850ミクロンメッシュのスクリーンに通し、容器に加え、中身を12+/−1RPMで5分間混和した。Manesty Mark IV回転錠剤成形機において、0.2080”×0.4160”変形楕円成形型を使用して、平均目標重量200mg+/−5%、平均目標厚さ4.17mm+/−0.05mm、目標硬さ11kPに錠剤を圧縮した。錠剤をデダスターおよび金属検出器に通した。
【0242】
【表6】
【0243】
750キログラムのコーティング溶液を、次のステップに従って調製した(表7も参照のこと)。最初に、全147.0キログラムのメタノールおよび580.5キログラムのアセトンを、250ガロンの容器に加えた。混合物に、13.5キログラムの酢酸セルロースを加えた。混合物に、9.0キログラムのヒドロキシプロピルセルロースを加えた。容器の中身を1時間混合した。この手順によって、3%固体(w/w)溶液が生じた。
【0244】
【表7】
【0245】
Vector HC−130において、8rpmおよび風量1000CFMで動作させ、排気温度を28℃として、200mg重量の楕円形錠剤250キログラムをコーティングした。湿重量増加が6.8%のレベルに達するまで、3%固体(w/w)溶液を適用した。次いで、錠剤をコーティングパンから取り出し、45℃で24時間乾燥させた。
【0246】
楕円形錠剤の帯域の端に、単一の孔(600ミクロン)を開けた。孔は、機械的手段またはレーザー切除のどちらによって開けてもよい。6.6%のコーティングでは、溶解試験1に基づき、pH6.8の媒質、50rpmのパドルにおいて、以下の放出が実現された(表8)。
【0247】
【表8】
【実施例3】
【0248】
酢酸セルロースおよびポリエチレングリコールコーティング膜を用いた200mg押出性コア系浸透圧錠剤
11mgおよび22mgのトファシチニブ持続放出錠剤コアを、実施例2に記載のとおりに調製した。
【0249】
1200グラムのコーティング溶液を、次のステップに従って調製した(表9も参照のこと)。最初に、60グラムの水および19.2グラムのポリエチレングリコールを、5リットル容器に加え、溶液が透明になるまで撹拌した。溶液に、60グラムのメタノールおよび0.504グラムのBHAを加え、透明になるまで撹拌した。混合物に、1031.496グラムのアセトンおよび28.8グラムの酢酸セルロースを加えた。容器の中身を3時間混合した。この手順によって、4%固体(w/w)溶液が生じた。
【0250】
【表9】
【0251】
Vector LDCS−5において、30rpmおよび風量40CFMで動作させ、排気温度を28℃として、200mg重量の楕円形錠剤240グラムをコーティングした。湿重量増加が9.2%のレベルに達するまで、3%固体(w/w)溶液を適用した。次いで、錠剤をコーティングパンから取り出し、40℃で16時間乾燥させた。
【0252】
楕円形錠剤の帯域の端に、単一の孔(600ミクロン)を開けた。孔は、機械的手段またはレーザー切除のどちらによって開けてもよい。9%のコーティングでは、溶解試験1に基づき、pH6.8の媒質、50rpmのパドルにおいて、以下の放出が実現される(表10)。
【0253】
【表10】
【実施例4】
【0254】
親水性マトリックス制御放出錠剤
1回分量(以下の表11も参照のこと)1484.85gのLactose Fast Flo 316を加え、12+/−1RPMで2分間混和することにより、10L容器の金属表面を予めコーティングした。10L容器に、1回分量のトファシチニブ171.15gを加え、ラクトース一水和物中に混ぜ込んだ。トファシチニブ容器を、10L容器からのラクトース一水和物の一部ですすいだ。10L容器に、1回分量のヒプロメロース720gを加えた。成分すべてを、容器において12+/−1RPMで10分間混和した。
【0255】
混和物を、0.032”スクリーン、およびおよそ1400RPMで回転する丸刃インペラを備え付けたComil回転ミルに通した。混和物を第二の10L容器に集めた。容器の中身を12+/−1RPMで10分間混和した。
【0256】
粒内ステアリン酸マグネシウム6gを容器に加え、12+/−1RPMで3分間混和した。滑沢剤処理した混和物を、刻み付ローラーと、サイドリムと、ポケットローターおよび1mmラスピングプレートを収容するインライン振動ミルとを備え付けたGerteisローラー圧縮機で加工した。目標リボン状固形分率は0.7(0.67〜0.73)であり、顆粒を最初の10L容器に集めた。
【0257】
容器に、粒外ステアリン酸マグネシウム18gを加え、中身を12+/−1RPMで3分間混和した。最終混和物をKilian T−100回転錠剤成形機に載せた。13/32”SRC成形型を使用して、平均目標重量500mg+/−5%、目標硬さ15kPに錠剤を圧縮した。錠剤をデダスターおよび金属検出器に通した。
【0258】
【表11】
【0259】
この圧縮錠剤では、溶解試験1に基づき、pH6.8の媒質、50rpmのパドルにおいて、以下の放出が実現される(表12)。
【0260】
【表12】
【実施例5】
【0261】
20mg二層浸透圧錠剤
1回分量のトファシチニブおよびポリエチレンオキシドN80(表13も参照のこと)を、30メッシュスクリーンに通し、500cc褐色びんに加えた。混和物をTurbulaボトルブレンダーで10分間混合した。0.2グラムのステアリン酸マグネシウムを30メッシュスクリーンに通し、活性混和物のびんに加え、3分間混合した。
【0262】
1回分量のポリエチレンオキシド(凝固剤グレード)、青色レーキ染料、および塩化ナトリウムを、20または30メッシュスクリーンに通し、500ccびんにこの順序で加えた。混和物をTurbulaボトルブレンダーで10分間混合した。0.5グラムのステアリン酸マグネシウムを30メッシュスクリーンに通し、膨潤剤層(sweller layer)のびんに加え、3分間混合した。
【0263】
9mm標準丸凸形成形型を使用して、平均目標重量400mg+/−5%、平均目標厚さ7mm+/−0.05mm、目標硬さ15kPに錠剤を圧縮した。
【0264】
【表13】
【0265】
コーティング溶液は、次のステップに従って調製した(以下の表14も参照のこと)。最初に、全194.6グラムの水および800グラムのアセトンを5リットル容器に加え、5分間混合した。混合物に、24グラムのヒドロキシプロピルセルロースを加え、5分間混合した。混合物に、36グラムの酢酸セルロースを加え、5分間混合した。混合物に、残りの946.3グラムのアセトンを加え、3時間混合した。この手順によって、3%固体(w/w)溶液が生じた。
【0266】
【表14】
【0267】
0.5リットルの半多孔パンを備えたVector LDCS−5において、30rpmおよび風量30CFMで動作させ、排気温度を40℃として、400mg重量のSRC錠剤250グラムをコーティングした。湿重量増加が6.2%のレベルに達するまで、3%固体(w/w)溶液を適用した。次いで、錠剤をコーティングパンから取り出し、40℃で16時間乾燥させた。
【0268】
楕円形錠剤の帯域の端に、単一の孔(1000ミクロン)を開けた。孔は、機械的手段またはレーザー切除のどちらによって開けてもよい。6%の目標コーティングでは、溶解試験1に基づき、pH6.8の媒質、50rpmのパドルにおいて、以下の放出が実現された(表15)。
【0269】
【表15】
【実施例6】
【0270】
11mg二層浸透圧錠剤
1回分量のポリエチレンオキシドN80(活性層)(表16も参照のこと)を30メッシュスクリーンに通した。スクリーンに残った大きい粒子を廃棄した。ポリエチレンオキシドを500cc褐色びんに加え、手作業で混和して、びんの内側をコーティングした。1回分量のトファシチニブを加え、Turbulaボトルブレンダーで10分間混合した。活性混和物のびんに1.0グラムのステアリン酸マグネシウムを加え、3分間混合した。
【0271】
1回分量のポリエチレンオキシド凝固剤グレード(膨潤剤層)および塩化ナトリウムを30メッシュスクリーンに通した。ポリエチレンオキシド、1回分量の微結晶性セルロース、1回分量の青色レーキ染料、および塩化ナトリウム粉末を、950ccびんにこの順序で加えた。混和物をTurbulaボトルブレンダーで10分間混合した。膨潤剤層のびんに1.0グラムのステアリン酸マグネシウムを加え、3分間混合した。
【0272】
9/32インチ標準丸凸形成形型を使用して、平均目標重量180.0mg+/−5%、平均目標厚さ5.0mm+/−0.1mmに、二層錠剤を圧縮した。
【0273】
【表16】
【0274】
コーティング溶液は、次のステップに従って調製した(表17も参照のこと)。最初に、4L混合容器に入った48.6グラムのPEG3350に、180.0グラムの水を加え、PEGが完全に溶解するまで、手作業で混合またはかき回した。次に、PEG−水溶液を含有する4L混合容器に、131.4gの酢酸セルロースを加えた。CAが、スラリーまたは湿ったケークとして分配された。回転インペラを備え付けた4L混合容器を使用しながら、PEG−水−CA混合物に、2,640.0グラムのアセトンを加えた。すべての固体が溶解するまで、混合容器の中身を撹拌した。
【0275】
【表17】
【0276】
0.5リットルの完全多孔コーティングパンを備えたVector LDCS−5において、30rpmおよび風量35CFMで動作させ、排気温度を32℃として、180mgの二層錠剤コア250グラムをコーティングした。1錠あたり25.2mgのプロセス内コーティング重量増加が実現されるまで、6%固体(w/w)溶液を適用した。次いで、錠剤をコーティングパンから取り出し、40℃で16時間乾燥させた。
【0277】
二層錠剤の薬物層側の面の中央に位置する、コーティング膜を貫く直径1.0mmの単一送出口を形成した。送出口は、機械的手段またはレーザー切除のどちらによって形成してもよい。23.4mgまたは目標二層コア重量の13%の目標コーティングレベルでは、溶解試験1に基づき、pH6.8の媒質、50rpmのパドルにおいて、3.5時間で80%の薬物の送達を示す制御放出薬物送達が実現された。追加の溶解データを表18に示す。
【0278】
【表18】
【実施例7】
【0279】
酸化防止剤を含有する11mg二層浸透圧錠剤
実施例7の製剤は、次のとおりに作製した(表19も参照のこと)。ポリエチレンオキシドN80を30メッシュスクリーンに通した。スクリーンに残った大きいポリエチレンオキシドN80粒子を廃棄した。別途、メタ重亜硫酸ナトリウムおよびブチルヒドロキシアニソールの一次粒径を、乳鉢と乳棒を使用して小さくした。4分の1回分量のポリエチレンオキシドを、1回分量のメタ重亜硫酸ナトリウムおよびブチルヒドロキシアニソールと合わせ、950cc褐色ガラスびんに加え、Turbulaボトルブレンダーで5分間混合した。950cc褐色ガラスびんに、残りのポリエチレンオキシドN80および1回分量のトファシチニブクエン酸塩を加え、Turbulaボトルブレンダーで10分間混合した。混和物を、0.8mmスクリーンサイズを使用してmini Co−milに通して、成分の混合および分布を強化した。次いで、混和物をTurbulaボトルブレンダーでさらに10分間混合した。次いで、950cc褐色ガラスびんに入った先の混合物に、1回分量のステアリン酸マグネシウムを加え、Turbulaボトルブレンダーで3分間混合した。
【0280】
ポリエチレンオキシド凝固剤グレードおよび塩化ナトリウムを30メッシュスクリーンに通し、スクリーンに残った大きい粒子を廃棄した。別途、メタ重亜硫酸ナトリウムおよびブチルヒドロキシアニソールの一次粒径を、乳鉢と乳棒を使用して小さくした。1回分量の半分のポリエチレンオキシドを、1回分量のメタ重亜硫酸ナトリウムおよびブチルヒドロキシアニソールと合わせ、950cc褐色ガラスびんに加え、Turbulaボトルブレンダーで5分間混合した。残りの量のポリエチレンオキシド凝固剤グレード、微結晶性セルロース、青色レーキ染料、および塩化ナトリウム粉末を、950cc褐色ガラスびんにこの順序で加え、Turbulaボトルブレンダーで10分間混合した。混和物を、0.8mmスクリーンサイズを使用してmini Co−milに通して、成分の混合および分布を強化した。1.0グラムのステアリン酸マグネシウムをびんに加え、3分間混合した。
【0281】
9/32インチ標準丸凸形成形型を使用して、平均目標重量180.0mg+/−5%、平均目標厚さ5.0mm+/−0.1mmに二層錠剤を圧縮した。
【0282】
【表19】
【0283】
コーティング溶液は、次のステップに従って調製した(表20も参照のこと)。最初に、4L混合容器に入った40.5グラムのPEG3350に、150.0グラムの水を加え、PEGが完全に溶解するまで、手作業で混合またはかき回した。次に、PEG−水溶液を含有する4L混合容器に、109.5gの酢酸セルロースを加えた。CAが、スラリーまたは湿ったケークとして分配された。回転インペラを備え付けた4L混合容器を使用しながら、PEG−水−CA混合物に、2198.1グラムのアセトンを加えた。すべての固体が溶解するまで、混合容器の中身を撹拌した。
【0284】
【表20】
【0285】
0.5リットルの完全多孔コーティングパンを備えたVector LDCS−5において、30rpmおよび風量35CFMで動作させ、排気温度を32℃として、250グラムのトファシチニブ二層錠剤コアをコーティングした。1錠あたり25.2mgのプロセス内コーティング重量増加が実現されるまで、6%固体(w/w)溶液を適用した。次いで、錠剤をコーティングパンから取り出し、40℃で16時間乾燥させた。
【0286】
二層錠剤の薬物層側の面の中央に位置する、コーティング膜を貫く直径1.0mmの単一送出口を形成した。送出口は、機械的手段またはレーザー切除のどちらかによって形成した。23.7mgまたは目標二層コア重量の13%の目標コーティングレベルでは、溶解試験1に基づき、pH6.8の媒質、50rpmのパドルにおいて、2.8時間で80%の薬物の送達に相当する制御放出薬物送達が実現される。追加の溶解データを表21に示す。
【0287】
【表21】
【実施例8】
【0288】
22mg二層浸透圧錠剤
実施例8の製剤は、次のとおりに作製した(表22も参照のこと)。1回分量のポリエチレンオキシドN80を30メッシュスクリーンに通した。スクリーンに残った大きい粒子を廃棄した。ポリエチレンオキシドN80を500cc褐色びんに加え、手作業で混和して、びんの内側をコーティングした。1回分量のトファシチニブを加え、Turbulaボトルブレンダーで10分間混合した。活性混和物のびんに1.0グラムのステアリン酸マグネシウムを加え、3分間混合した。
【0289】
1回分量のポリエチレンオキシド凝固剤グレードおよび塩化ナトリウムを30メッシュスクリーンに通した。ポリエチレンオキシド、1回分量の微結晶性セルロース、1回分量の青色レーキ染料、および塩化ナトリウム粉末を、950ccびんにこの順序で加えた。混和物をTurbulaボトルブレンダーで10分間混合した。膨潤剤層のびんに、1.0グラムのステアリン酸マグネシウムを加え、3分間混合した。
【0290】
5/16インチ標準丸凸形成形型を使用して、平均目標重量250.0mg+/−5%、平均目標厚さ5.6mm+/−0.1mmに錠剤を圧縮した。
【0291】
【表22】
【0292】
コーティング溶液は、次のステップに従って調製した(表23も参照のこと)。最初に、4L混合容器に入った48.6グラムのPEG3350に、180.0グラムの水を加え、PEGが完全に溶解するまで、手作業で混合またはかき回した。次に、PEG−水溶液を含有する4L混合容器に、131.4gの酢酸セルロースを加えた。CAが、スラリーまたは湿ったケークとして分配された。回転インペラを備え付けた4L混合容器を使用しながら、PEG−水−CA混合物に、2,640.0グラムのアセトンを加えた。すべての固体が溶解するまで、混合容器の中身を撹拌した。
【0293】
【表23】
【0294】
0.5リットルの完全多孔コーティングパンまたはドラムを備えたVector LDCS−5において、30rpmおよび風量35CFMで動作させ、排気温度を32℃として、二層錠剤コア250グラムをコーティングした。1錠あたり30.0mgのプロセス内コーティング重量増加が実現されるまで、6%固体(w/w)溶液を適用した。次いで、錠剤をコーティングパンから取り出し、40℃で16時間乾燥させた。
【0295】
二層錠剤の薬物層側の面の中央に位置する、コーティング膜を貫く直径1.0mmの単一送出口を形成した。送出口は、機械的手段またはレーザー切除のどちらによって形成してもよい。27.5mgまたは目標二層コア重量の11%の目標コーティングレベルでは、溶解試験1に基づき、pH6.8の媒質、50rpmのパドルにおいて、3.7時間で80%の薬物の送達を示す制御放出薬物送達が実現された。追加の溶解データを表24に示す。
【0296】
【表24】
【実施例9】
【0297】
20mg AMT製剤
実施例9は、次のように製剤する(表25も参照のこと)。1回分量のトファシチニブ、マンニトール、微結晶性セルロース、およびリン酸水素カルシウムを、30メッシュスクリーンに通し、500cc褐色びんに加える。混和物をTurbulaボトルブレンダーで10分間混合する。0.3グラムのステアリン酸マグネシウムを30メッシュスクリーンに通し、活性混和物のびんに加え、3分間混合する。
【0298】
混和物を、固形分率が約0.70である圧縮物に圧縮する。圧縮物を粉砕して、造粒物を形成する。0.2グラムのステアリン酸マグネシウムを30メッシュスクリーンに通し、活性造粒物のびんに加え、3分間混合する。
【0299】
9mm標準丸凸形成形型を使用して、平均目標重量400mg+/−5%、平均目標厚さ7mm+/−0.05mm、目標硬さ15kPに錠剤を圧縮する。
【0300】
【表25】
【0301】
コーティング溶液は、次のステップに従って調製する(表26も参照のこと)。最初に、115グラムの水および150グラムのアセトンを2リットル容器に加え、5分間混合する。混合物に、12グラムのヒドロキシプロピルセルロースを加え、5分間混合する。混合物に、28グラムの酢酸セルロースを加え、5分間混合する。混合物に、残りの195グラムの酢酸セルロースを加え、3時間混合する。この手順によって、8%固体(w/w)溶液が生じる。
【0302】
【表26】
【0303】
0.5リットルの半多孔パンを備えたVector LDCS−5において、30rpmおよび風量30CFMで動作させ、排気温度を40℃として、400mg重量のSRC錠剤250グラムをコーティングする。湿重量増加が7.5%のレベルに達するまで、8%固体(w/w)溶液を吹き付ける。錠剤をコーティングパンから取り出し、40℃で16時間乾燥させる。
【実施例10】
【0304】
20mg二層浸透圧カプセル剤
プレミックス
98.94グラムのポリエチレンオキシド(Polyox WSR N80 LEO)および1.06グラムのステアリン酸マグネシウムを、30メッシュ篩に通し、250ml褐色びんに加えた。49サイクル/分で動作するTurbulaミキサー(モデルT2F)を使用して、混和物を2分間混合した。
【0305】
活性薬剤層−600mg重量
283.71mgのプレミックスを1ドラムガラスバイアルに加え、手作業で振盪して、ガラスバイアルの内側を予めコーティングした。32.57mgのトファシチニブクエン酸塩を20または30メッシュ篩に通し、1ドラムガラスバイアルに加えた。次いで、1ドラムガラスバイアルに、追加の283.71mgのプレミックスを加えた。次いで、ガラスバイアルの中身を、49サイクル/分で動作するTurbulaミキサー(モデルT2F)を使用して5分間混和した。次いで、混和物をNatoli単一ステーション液圧錠剤成形機に移し、5.500”B型0.3051”Modified Ball Upper Punchと4.755”B型0.3051”Flat Face Bevel Edge Lower Punchを使用して、目標厚さ15.6mmに圧縮した。
【0306】
膨潤剤層−300mg重量
実施例10の製剤のための膨潤剤層を、次のとおりに作製した(表27も参照のこと)。1回分量のポリエチレンオキシド凝固剤グレード、青色レーキ染料、塩化ナトリウム、および微結晶性セルロースを、20または30メッシュスクリーンに通し、10リットルビンブレンダーにこの順序で加えた。ブレンダーの中身を12rpmで10分間混合した。次いで、混和物を、丸インペラおよび0.055”丸スクリーンを備えた、1000rpmで動作するComil 197Sに通した。ビンブレンダー中のほぐした混和物の中央に、1回分量のステアリン酸マグネシウムを加えた。ブレンダーの中身を12rpmで5分間混合した。次いで、混和物をKilian T−100回転錠剤成形機に移し、5.500”B型0.3051”Modified Ball Upper Punchと4.755”B型0.3051”Flat Face Bevel Edge Lower Punchを使用して、目標重量300mg、目標厚さ6.65mmに圧縮した。
【0307】
【表27】
【0308】
カプセル殻
25グラムのポリソルベート80を2475グラムのアセトンと合わせ、10分間または溶解するまで混合して1%(w/w)溶液を得ることにより、2.5kgのプレコーティング溶液を調製した。
【0309】
15kgの機能コーティング溶液を、次のステップに従って調製した(表28も参照のこと)。最初に、全375グラムの水および120グラムのPEG3350を好適な容器に加え、混合した。混合物に、14,325グラムのアセトンを加え、混合した。混合物に、180グラムの酢酸セルロースを加え、均一な溶液が得られるまで混合した。この手順によって、2%固体(w/w)溶液が生じた。
【0310】
【表28】
【0311】
1.5リットル半多孔パンを備えたVector LDCS−5において、18rpmおよび風量40CFMで動作させ、排気温度を40℃として、1kgのHDPEカプセル型(キャップまたはボディいずれか)をコーティングした。型を1%w/wプレコーティング溶液で簡単にコーティングした後、機能2%固体(w/w)コーティング溶液を、微粒化空気圧を10psi、噴霧機と床の距離(gun−to−bed distance)を3インチとして、湿重量増加が12.5%のレベルに達するまで、20グラム/分の速度で吹き付けた。次いで、カプセル型をコーティングパンから取り出し、40℃で24時間乾燥させた。次いで、カプセル殻を型から外し、トリミングした。
【0312】
カプセルボディーの端に、単一の孔(2000ミクロン)を開けた。孔は、機械的手段またはレーザー切除のどちらによって開けてもよい。
【0313】
組み立て
活性層を、予め孔が開けられたカプセル殻の片方に挿入した。同じ方のカプセル殻に、膨潤剤層を平らな側面から挿入して、激しく膨らんで活性層にぶつかるようにした。これらの構成要素を、カプセル殻のもう片方に挿入して、カプセルを閉じた。このようにして調製し、合体させたとき、これらの構成要素では、溶解試験1に基づき、pH6.8の媒質、50rpmのパドルにおいて、以下の放出が実現された(表29)。
【0314】
【表29】
【0315】
溶解試験1において、トファシチニブの80%が約6時間で溶解した。
【実施例11】
【0316】
20mg二層浸透圧カプセル剤
プレミックス
98.94グラムのポリエチレンオキシド(Polyox WSR N80 LEO)および1.06グラムのステアリン酸マグネシウムを30メッシュ篩に通し、250ml褐色びんに加えた。49サイクル/分で動作するTurbulaミキサー(モデルT2F)を使用して、混和物を2分間混合した。
【0317】
活性層−600mg重量
283.71mgのプレミックスを1ドラムガラスバイアルに加え、手作業で振盪して、ガラスバイアルの内側を予めコーティングした。32.57mgのトファシチニブクエン酸塩を20または30メッシュ篩に通し、1ドラムガラスバイアルに加えた。次いで、1ドラムガラスバイアルに、283.71mgのプレミックスを加えた。次いで、ガラスバイアルの中身を、49サイクル/分で動作するTurbulaミキサー(モデルT2F)を使用して5分間混和した。次いで、混和物をNatoli単一ステーション液圧錠剤成形機に移し、5.500”B型0.3051”Modified Ball Upper Punchと4.755”B型0.3051”Flat Face Bevel Edge Lower Punchを使用して、目標厚さ15.6mmに圧縮した。
【0318】
膨潤剤層
実施例11の製剤のための膨潤剤層を、次のとおりに作製した(表30も参照のこと)。1回分量のポリエチレンオキシド凝固剤グレード、青色レーキ染料、塩化ナトリウム、および微結晶性セルロースを、20または30メッシュスクリーンに通し、10リットルビンブレンダーにこの順序で加えた。ブレンダーの中身を12rpmで10分間混合した。次いで、混和物を、丸インペラおよび0.055”丸スクリーンを備えた、1000rpmで動作するComil 197Sに通した。ビンブレンダー中のほぐした混和物の中央に、1回分量のステアリン酸マグネシウムを加えた。ブレンダーの中身を12rpmで5分間混合した。次いで、混和物をKilian T−100回転錠剤成形機に移し、5.500”B型0.3051”Modified Ball Upper Punchと4.755”B型0.3051”Flat Face Bevel Edge Lower Punchを使用して、目標重量300mg、目標厚さ6.65mmに圧縮した。
【0319】
【表30】
【0320】
カプセル殻
25グラムのポリソルベート80を2475グラムのアセトンと合わせ、10分間または溶解するまで混合して1%(w/w)溶液を得ることにより、2.5kgのプレコーティング溶液を調製した。
【0321】
15kgの機能コーティング溶液を、次のステップに従って調製した(表31も参照のこと)。最初に、375グラムの水および61.5グラムのPEG3350を好適な容器に加え、混合した。混合物に、14,325グラムのアセトンを加え、混合した。混合物に、225グラムの酢酸セルロースを加え、混合した。混合物に、13.5グラムのTECを加え、均一な溶液が得られるまで混合した。この手順によって、2%固体(w/w)溶液が生じる。
【0322】
【表31】
【0323】
1.5リットル半多孔パンを備えたVector LDCS−5において、18rpmおよび風量40CFMで動作させ、排気温度を40℃として、1kgのHDPEカプセル型(キャップまたはボディいずれか)をコーティングした。型を1%w/wプレコーティング溶液で簡単にコーティングした後、機能2%固体(w/w)コーティング溶液を、微粒化空気圧を10psi、噴霧機と床の距離を3インチとして、湿重量増加が12.5%のレベルに達するまで、20グラム/分の速度で吹き付けた。次いで、カプセル型をコーティングパンから取り出し、40℃で24時間乾燥させた。次いで、カプセル殻を型から外し、トリミングした。
【0324】
カプセルボディーの端に、単一の孔(2000ミクロン)を開けた。孔は、機械的手段またはレーザー切除のどちらによって開けてもよい。
【0325】
組み立て
活性層を、予め孔が開けられたカプセル殻の片方に挿入する。同じ方のカプセル殻に、膨潤剤層を平らな側面から挿入して、激しく膨らんで活性層にぶつかるようにする。これらの構成要素を、カプセル殻のもう片方に、カプセルが閉じるまで挿入する。このようにして調製し、合体させたとき、これらの構成要素では、溶解試験1に基づき、pH6.8の媒質、50rpmのパドルにおいて、以下の放出が実現される(表32)。
【0326】
【表32】
【0327】
溶解方法1において、トファシチニブの80%が約14時間で溶解する。
【実施例12】
【0328】
親水性マトリックス制御放出錠剤
1回分量(以下の表33も参照のこと)963gのLactose Fast Flo 316を加え、12+/−1RPMで2分間混和することにより、10L容器の金属表面を予めコーティングした。10L容器に、1回分量のトファシチニブ164gを加え、ラクトース一水和物中に混ぜ込んだ。トファシチニブ容器を、10L容器からのラクトース一水和物の一部ですすいだ。10L容器に、1回分量のヒプロメロース1150gを加えた。成分すべてを、容器において12+/−1RPMで10分間混和した。
【0329】
混和物を、0.032”スクリーン、およびおよそ1400RPMで回転する丸刃インペラを備え付けたComil回転ミルに通した。混和物を第二の10L容器に集めた。容器の中身を12+/−1RPMで10分間混和した。
【0330】
粒内ステアリン酸マグネシウム5.75gを容器に加え、12+/−1RPMで3分間混和した。滑沢剤処理した混和物を、刻み付ローラーと、サイドリムと、ポケットローターおよび1mmラスピングプレートを収容するインライン振動ミルとを備え付けたGerteisローラー圧縮機で加工した。目標リボン状固形分率は0.7(0.67〜0.73)であり、顆粒を最初の10L容器に集めた。
【0331】
容器に、粒外ステアリン酸マグネシウム17.25gを加え、中身を12+/−1RPMで3分間混和した。最終混和物をKilian T−100回転錠剤成形機に載せた。13/32”SRC成形型を使用して、平均目標重量500mg+/−5%、目標硬さ15kPに錠剤を圧縮した。錠剤をデダスターおよび金属検出器に通した。
【0332】
【表33】
【0333】
この圧縮錠剤では、溶解試験1に基づき、pH6.8の媒質、50rpmのパドルにおいて、以下の放出が実現される(表34)。
【0334】
【表34】
【実施例13】
【0335】
10mg即時放出錠剤
【0336】
【表35】
【0337】
実施例13の錠剤製剤は、次のプロセスに従って製造する。成分1〜4を合わせ、混和−粉砕−混和手順を使用して加工する。次いで、混和物内容に成分5を加え、混和手順を使用して混ぜ合わせる。次いで、この滑沢剤処理された混和物を乾式造粒する。次いで、乾式造粒物に成分6を加え、混和手順を使用して混ぜ合わせる。滑沢剤処理された造粒物を、回転錠剤成形機を使用して、400mg重量の錠剤に圧縮する。次いで、成分7および8を含有する溶液を吹き付けるフィルムコーターを使用して、錠剤に12mgのコーティングが適用されるまで、錠剤をコーティングする。
【実施例14】
【0338】
5mg即時放出錠剤
【0339】
【表36】
【0340】
次のプロセスに従って錠剤を製造する。成分1〜4を合わせ、混和−粉砕−混和手順を使用して加工する。次いで、混和物内容に成分5を加え、混和手順を使用して混ぜ合わせる。次いで、この滑沢剤処理された混和物を乾式造粒する。次いで、乾式造粒物に成分6を加え、混和手順を使用して混ぜ合わせる。滑沢剤処理された造粒物を、回転錠剤成形機を使用して、500mg重量の錠剤に圧縮する。次いで、成分7および8を含有する溶液を吹き付けるフィルムコーターを使用して、錠剤に20mgのコーティングが適用されるまで、錠剤をコーティングする。
【実施例15】
【0341】
研究A
20mgトファシチニブの異なる2種の経口持続放出製剤の単一用量の、10mgトファシチニブ即時放出(IR)錠剤の単一用量を基準とした相対的生物学的利用能を実施し、トファシチニブについて、次の終点:C
max、T
max、AUC
inf、AUC
lastを求めた。各持続放出製剤に関するトファシチニブの相対的生物学的利用能(%RBA)について、追加の終点を、IR製剤を基準として求めた。
【0342】
研究は、12人の健康な男性対象における無作為化された非盲検、単一用量、3期、3治療、6シーケンスのクロスオーバー研究とした(表37を参照のこと)。対象に、トファシチニブの異なる2種の持続放出製剤および即時放出錠剤製剤を、服用の間に3日の休薬期間を設けて与えた。持続放出製剤は、20mgの単一用量として与え、即時放出製剤は、単一用量で2個の5mg錠剤として与えた。
【0343】
【表37】
【0344】
研究薬物の投与前に、対象を少なくとも8時間終夜絶食させた。各期間の1日目の朝に、全対象に、単一経口用量の研究薬物を240mLの水と共に与えた。用量を投与してから4時間後に、対象に標準化された軽食を許可した。
【0345】
投与した剤形:
トファシチニブ10mg即時放出対照錠剤(参照):実施例13で調製したもの
トファシチニブ20mg二層浸透圧カプセル剤:実施例10で調製したもの
トファシチニブ20mg二層浸透圧カプセル剤:実施例11で調製したもの
【0346】
すべての研究期間の間、薬物動態学的分析用の血漿を得るための血液サンプルは、周期的時点で採取した。PKサンプルは、標準の有効な分析方法を使用して分析した。用量について正規化した、自然対数変換されたAUC
inf、AUC
last、およびC
maxを、固定効果としてのシーケンス、期間、および治療と、変量効果としてのシーケンス内対象とを含む混合効果モデルを使用して、トファシチニブについて分析する。モデルから、調整平均差(試験−参照)の推定値および対応する90%信頼区間を取得した。調整平均差、および差についての90%信頼区間を累乗して、調整幾何平均の比(試験/参照)の推定値および比についての90%信頼区間を得た。即時放出対照錠剤製剤を参照治療とし、持続放出製剤を試験治療とした。
【0347】
トファシチニブの相対的生物学的利用能は、AUC
infに関する、試験と参照についての用量正規化調整幾何平均の比として推定した。
【0348】
PKパラメータのAUC
inf、AUC
last、C
max、T
max、およびt
1/2は、治療および分析物によって説明的に要約した(適用できる場合)。AUC
infおよびC
maxについては、個々の対象パラメータを、各分析物について別個に、治療によってプロットした(適用できる場合)。濃度は、PKサンプル採取時間、治療、および分析物によって説明的に列挙および要約した(適用できる場合)。個々の対象、濃度−時間データの平均および中央値プロファイルは、治療および分析物によってプロットした(適用できる場合)。要約統計値、ならびにサンプル採取時間による平均および中央値プロットについては、名目上のPKサンプル採取時間を使用し、時間による個々の対象プロットについては、実際のPKサンプル採取時間を使用した。
【0349】
予測定常状態値は、ソフトウェアパッケージWinNonLin(Pharsight Corp)を使用して、重ね合わせ法によって取得した。個々の各薬物動態学的プロファイルにおいて重ね合わせを使用して、各個体の定常状態薬物動態学的プロファイルを作成した。PKパラメータの定義および決定方法を表38に示す。研究の結果は、表39に示す。
【0350】
【表38】
【0351】
【表39】
【0352】
この研究の結果は、トファシチニブの80%の放出および溶解に6時間以上を要する持続放出剤形が、トファシチニブ持続放出剤形の所望の薬物動態学的属性を満たさないことを示している。詳細には、トファシチニブの80%の放出および溶解に6時間以上を要し、かつ即時放出剤形と同等なAUC値を示すのに必要な量のトファシチニブを有する持続放出剤形では、17ng/ml(JAK1/3受容体IC
50値)を上回る時間が、即時放出剤形での17ng/mlを上回る時間より長くなる。さらに、トファシチニブの80%の放出および溶解に14時間を要する持続放出剤形は、用量正規化Cmin,ssがより高く、用量正規化AUCがより小さく、即時放出剤形に対する相対的生物学的利用能が低いため、AUCを即時放出剤形と同等にするのに、トファシチニブの薬物負荷量の増加が必要となる。これらの結果は、トファシチニブの80%の放出および溶解に6時間未満しか必要としないトファシチニブの持続放出剤形という要件を裏付けるものである。
【実施例16】
【0353】
研究B
22mgトファシチニブの異なる3種の経口持続放出製剤の、10mgトファシチニブ即時放出(IR)錠剤の単一用量を基準とした相対的生物学的利用能を実施し、トファシチニブについて、次の終点:C
max、T
max、AUC
inf、AUC
lastを求めた。各持続放出製剤に関するトファシチニブの相対的生物学的利用能(%RBA)について、追加の終点を、IR製剤を基準として求めた。
【0354】
調査は、30人の健康な男性対象における無作為化された非盲検、単一用量、4期、6治療、6シーケンスの部分的クロスオーバー研究とした(表40を参照のこと)。第1期では、対象に、摂食状態で、トファシチニブの異なる3種の持続放出製剤のうちの1種を与えた。第2および第3期では、対象に、3種の持続放出製剤のうちの2種を与えた。第4期では、対象に、即時放出錠剤製剤を与えた。服用の間に3日の休薬期間を使用した。3種の持続放出製剤は、22mgの単一用量として与え、即時放出製剤は、単一用量で2個の5mg錠剤として与える。
【0355】
【表40】
【0356】
第1期では、少なくとも8時間の終夜の絶食後、対象に、標準の高脂肪FDA朝食を、研究薬物を投与する30分前に供与した。朝食は、30分以内に消費された。対象は、朝食を開始してから30分(+/−5分)後に、治療Aまたは治療Bどちらかの投与を受けた。服用後少なくとも4時間は、追加の食物を許可しなかった。服用前1時間および研究薬物投与後1時間は、水を差し控えた。第1、第2、および第3期における投薬に続いて、72時間の最小限の休薬を行った。研究の次の期(第2、第3、および第4期)は、先行する期(それぞれ第1、第2、および第3期)の4日目に、72時間のPKサンプル手順が完了してから直ちに開始した。第2、第3、および第4期では、少なくとも8時間終夜絶食させた後、研究薬物を投与した。服用してから4時間後に限り食物を許可した。服用前1時間および研究薬物投与後1時間は水を差し控えた。
【0357】
投与した剤形:
トファシチニブ5mg即時放出錠剤(参照):上記実施例14で調製したもの
トファシチニブ22mg押出性コア系錠剤:上記実施例1で調製したもの
トファシチニブ22mgマトリックス錠剤:上記実施例4および12で調製したもの
【0358】
すべての研究期間の間、薬物動態学的分析用の血漿を得るための血液サンプルは、周期的時点で採取した。研究結果は、表41に示す。PKサンプルは、標準の有効な分析方法を使用して分析した。用量について正規化した、自然対数変換されたAUC
inf、AUC
last、およびC
maxを、固定効果としてのシーケンス、期間、および治療と、変量効果としてのシーケンス内対象とを含む混合効果モデルを使用して、トファシチニブについて分析した。モデルから、調整平均差(試験−参照)の推定値および対応する90%信頼区間を取得した。調整平均差、および差についての90%信頼区間を累乗して、調整幾何平均の比(試験/参照)の推定値および比についての90%信頼区間を得た。即時放出対照錠剤製剤を参照治療とし、持続放出製剤を試験治療とした。
【0359】
トファシチニブの相対的生物学的利用能は、AUC
infに関する、試験と参照についての用量正規化調整幾何平均の比として推定した。
【0360】
PKパラメータのAUC
inf、AUC
last、C
max、T
max、およびt
1/2は、治療および分析物によって説明的に要約する(適用できる場合)。AUC
infおよびC
maxについては、個々の対象パラメータを、各分析物について別個に、治療によってプロットした(適用できる場合)。濃度は、PKサンプル採取時間、治療、および分析物によって説明的に列挙および要約する(適用できる場合)。個々の対象、濃度−時間データの平均および中央値プロファイルは、治療および分析物によってプロットした(適用できる場合)。要約統計値、ならびにサンプル採取時間による平均および中央値プロットについては、名目上のPKサンプル採取時間を使用し、時間による個々の対象プロットについては、実際のPKサンプル採取時間を使用した。
【0361】
予測定常状態値は、ソフトウェアパッケージWinNonLin(Pharsight Corp)を使用して、重ね合わせ法によって取得した。個々の各薬物動態学的プロファイルにおいて重ね合わせを使用して、各個体の定常状態薬物動態学的プロファイルを作成した。
【0362】
【表41】
【0363】
4〜5時間でトファシチニブの80%を放出し、溶解させる、22mgのトファシチニブを含有する持続放出剤形は、絶食状態で服用されたとき、用量に比例する薬物動態学的性能を示し、所望の薬物動態学的要求を満たす。トファシチニブの80%を浸透圧によって4時間で放出し、溶解させる、22mgのトファシチニブを含有する持続放出剤形は、摂食および絶食どちらの状態で投与したときも、同様の薬物動態学的性能を示す。トファシチニブの80%をマトリックス拡散および浸食によって5時間で放出し、溶解させる、22mgのトファシチニブを含有する持続放出剤形は、摂食および絶食どちらの状態で投与したときも、同様のCmax性能を示さない。
【実施例17】
【0364】
研究C
11mgトファシチニブの経口持続放出製剤の単一用量の、22mgトファシチニブ持続放出錠剤の単一用量を基準とした相対的生物学的利用能を実施し、トファシチニブについて、次の終点:C
max、T
max、AUC
inf、AUC
lastを求める。11mg持続放出製剤に関するトファシチニブの用量正規化相対的生物学的利用能(%RBA)について、追加の終点を、22mg持続放出製剤を基準として求めた。
【0365】
研究は、20人の健康な男性対象における無作為化された非盲検、単一用量、2期、2治療、2シーケンスのクロスオーバー研究とした(表42を参照のこと)。対象に、トファシチニブの異なる2種の持続放出製剤を、服用の間に3日の休薬期間を設けて与えた。持続放出製剤は、11mgまたは22mgの単一用量として与えた。
【0366】
【表42】
【0367】
研究薬物の投与前に、対象を少なくとも8時間終夜絶食させた。各期間の1日目の朝に、全対象に、単一経口用量の研究薬物を240mLの水と共に与えた。用量を投与してから4時間後に、対象に標準化された軽食を許可した。
【0368】
投与した剤形:
トファシチニブ22mg持続放出剤形:上記実施例1で調製したもの
トファシチニブ11mg持続放出剤形:上記実施例1で調製したもの
【0369】
すべての研究期間の間、薬物動態学的分析用の血漿を得るための血液サンプルは、周期的時点で採取した。研究結果は、表43に示す。PKサンプルは、標準の有効な分析方法を使用して分析した。用量について正規化した、自然対数変換されたAUC
inf、AUC
last、およびC
maxを、固定効果としてのシーケンス、期間、および治療と、変量効果としてのシーケンス内対象とを含む混合効果モデルを使用して、トファシチニブについて分析した。モデルから、調整平均差(試験−参照)の推定値および対応する90%信頼区間を取得した。調整平均差、および差についての90%信頼区間を累乗して、調整幾何平均の比(試験/参照)の推定値および比についての90%信頼区間を得た。22mg持続放出製剤を参照治療とし、11mg持続放出製剤を試験治療とした。
【0370】
トファシチニブの相対的生物学的利用能は、AUC
infに関する、試験と参照についての用量正規化調整幾何平均の比として推定した。
【0371】
PKパラメータのAUC
inf、AUC
last、C
max、T
max、およびt
1/2は、治療および分析物によって説明的に要約した(適用できる場合)。AUC
infおよびC
maxについては、個々の対象パラメータを、各分析物について別個に、治療によってプロットする(適用できる場合)。濃度は、PKサンプル採取時間、治療、および分析物によって説明的に列挙および要約した(適用できる場合)。個々の対象、濃度−時間データの平均および中央値プロファイルは、治療および分析物によってプロットした(適用できる場合)。要約統計値、ならびにサンプル採取時間による平均および中央値プロットについては、名目上のPKサンプル採取時間を使用し、時間による個々の対象プロットについては、実際のPKサンプル採取時間を使用した。
【0372】
予測定常状態値は、ソフトウェアパッケージWinNonLin(Pharsight Corp)を使用して、重ね合わせ法によって取得した。個々の各薬物動態学的プロファイルにおいて重ね合わせを使用して、各個体の定常状態薬物動態学的プロファイルを作成した。
【0373】
【表43】
【0374】
(溶解試験1に基づく)要求に従ってトファシチニブを放出し、溶解させる、11mgおよび22mgのトファシチニブを含有する持続放出剤形は、用量に比例する薬物動態学的性能を示し、所望の薬物動態学的要求を満たす。
【実施例18】
【0375】
研究D
11mgトファシチニブ持続放出錠剤の、2個の5mgトファシチニブ即時放出(IR)錠剤の単一用量を基準とした相対的生物学的利用能を実施し、トファシチニブについて、次の終点:C
max、T
max、AUC
inf、AUC
lastを求めた。各持続放出製剤に関するトファシチニブの相対的生物学的利用能(%RBA)について、追加の終点を、IR製剤を基準として求めた。
【0376】
研究は、26人の健康な対象における無作為化された非盲検、単一用量、2期、2治療、2シーケンスのクロスオーバー研究とした(表44を参照のこと)。対象に、トファシチニブクエン酸塩の11mg持続放出製剤またはトファシチニブクエン酸塩の2個の5mg即時放出製剤のどちらかを、服用の間に3日の休薬期間を設けて与えた。
【0377】
【表44】
【0378】
【表45】
【0379】
1回分量の半分のソルビトール114.172キログラムを、800L容器に加えた。次いで、800L容器に、1回分量のコポビドン18.000キログラムを加えた。次いで、800L容器に、1回分量のトファシチニブ26.656キログラムを加えた。次いで、800L容器に、1回分量のヒドロキシセルロース24.000キログラムを加えた。800L容器に、残りの1回分量の半分のソルビトール114.172キログラムを加えた。材料はすべて、真空移送システムによって加え、0.032”スクリーン、およびおよそ1400RPMで回転する丸刃インペラを備え付けたComil回転ミルに通した。成分すべてを、容器において12+/−1RPMで20分間混和する。
【0380】
混和物を、0.032”スクリーン、およびおよそ1400RPMで回転する丸刃インペラを備え付けたComil回転ミルに通した。混和物を第二の800L容器に集めた。容器の中身を12+/−1RPMで20分間混和した。
【0381】
ステアリン酸マグネシウム3.000キログラムを、850ミクロンメッシュのスクリーンに通し、容器に加え、中身を12+/−1RPMで5分間混和した。Manesty Mark IV回転錠剤成形機において、0.2080”×0.4160”変形楕円成形型を使用して、平均目標重量200mg+/−5%、平均目標厚さ4.17mm+/−0.05mm、目標硬さ11kpに錠剤を圧縮した。錠剤をデダスターおよび金属検出器に通した。
【0382】
【表46】
【0383】
750キログラムのコーティング溶液を、次のステップに従って調製した。最初に、全147.0キログラムのメタノールおよび580.5キログラムのアセトンを、250ガロン容器に加えた。混合物に、13.5キログラムの酢酸セルロースを加えた。混合物に、9.0キログラムのヒドロキシプロピルセルロースを加えた。容器の中身を1時間混合した。この手順によって、3%固体(w/w)溶液が生じた。
【0384】
Vector HC−130において、8rpmおよび風量1500CFMで動作させ、排気温度を28℃として、200mg重量の楕円形錠剤250キログラムをコーティングした。湿重量増加が7%のレベルに達するまで、3%固体(w/w)溶液を適用した。次いで、錠剤をコーティングパンから取り出し、45℃で24時間乾燥させた。
【0385】
楕円形錠剤の帯域の端に、単一の孔(600ミクロン)を開けた。孔は、機械的手段またはレーザー切除のどちらによって開けてもよい。7%のコーティングでは、溶解試験1に基づき、pH6.8の媒質、50rpmのパドルにおいて、以下の放出が実現された(表47)。
【0386】
【表47】
【0387】
B:以下のとおりに調製したトファシチニブ2×5mg即時放出錠剤(参照):
【0388】
【表48】
【0389】
次のプロセスに従って錠剤を製造する。成分1〜4を合わせ、混和−粉砕−混和手順を使用して加工する。次いで、混和物内容に成分5を加え、混和手順を使用して混ぜ合わせる。次いで、この滑沢剤処理された混和物を乾式造粒する。次いで、乾式造粒物に成分6を加え、混和手順を使用して混ぜ合わせる。滑沢剤処理された造粒物を、回転錠剤成形機を使用して、200mg重量の錠剤に圧縮する。次いで、成分7および8を含有する溶液を吹き付けるフィルムコーターを使用して、錠剤に6mgのコーティングが適用されるまで、錠剤をコーティングする。
【0390】
研究薬物の投与前に、対象を少なくとも8時間終夜絶食させた。各期間の1日目の朝に、全対象に、単一経口用量の研究薬物を240mLの水と共に与えた。用量を投与してから4時間後に、対象に標準化された軽食を許可した。
【0391】
投与した剤形:
トファシチニブ5mg即時放出錠剤(参照):上記のとおり調製したもの
トファシチニブ11mg持続放出剤形:上記のとおり調製したもの
【0392】
すべての研究期間の間、薬物動態学的分析用の血漿を得るための血液サンプルは、周期的時点で採取した。研究結果は、表49に示す。PKサンプルは、標準の有効な分析方法を使用して分析した。用量について正規化した、自然対数変換されたAUC
inf、AUC
last、およびC
maxを、固定効果としてのシーケンス、期間、および治療と、変量効果としてのシーケンス内対象とを含む混合効果モデルを使用して、トファシチニブについて分析した。モデルから、調整平均差(試験−参照)の推定値および対応する90%信頼区間を取得した。調整平均差、および差についての90%信頼区間を累乗して、調整幾何平均の比(試験/参照)の推定値および比についての90%信頼区間を得た。2×5mg即時放出製剤を参照治療とし、11mg持続放出製剤を試験治療とした。
【0393】
トファシチニブの相対的生物学的利用能は、AUC
infに関する、試験と参照についての幾何平均の比として推定した。
【0394】
PKパラメータのAUC
inf、AUC
last、C
max、T
max、およびt
1/2は、治療および分析物によって説明的に要約した(適用できる場合)。AUC
infおよびC
maxについては、個々の対象パラメータを、各分析物について別個に、治療によってプロットする(適用できる場合)。濃度は、PKサンプル採取時間、治療、および分析物によって説明的に列挙および要約した(適用できる場合)。個々の対象、濃度−時間データの平均および中央値プロファイルは、治療および分析物によってプロットした(適用できる場合)。要約統計値、ならびにサンプル採取時間による平均および中央値プロットについては、名目上のPKサンプル採取時間を使用し、時間による個々の対象プロットについては、実際のPKサンプル採取時間を使用した。
【0395】
予測定常状態値は、ソフトウェアパッケージWinNonLin(Pharsight Corp)を使用して、重ね合わせ法によって取得した。個々の各薬物動態学的プロファイルにおいて重ね合わせを使用して、各個体の定常状態薬物動態学的プロファイルを作成した。
【0396】
【表49】
【0397】
4〜5時間でトファシチニブの80%を放出し、溶解させる、11mgのトファシチニブを含有する持続放出剤形は、絶食状態で服用されたとき、10mgのトファシチニブを含有する即時放出剤形と同様の薬物動態学的性能を示し、所望の薬物動態学的要求を満たす。