(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041844
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 3/044 20060101AFI20161206BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
F24F3/044
F24F5/00 K
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-225618(P2014-225618)
(22)【出願日】2014年11月5日
(65)【公開番号】特開2016-90151(P2016-90151A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2015年12月27日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314013350
【氏名又は名称】総合施設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 博
(74)【代理人】
【識別番号】100194124
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英樹
【審査官】
小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−057880(JP,A)
【文献】
特開平08−068561(JP,A)
【文献】
特開2012−116446(JP,A)
【文献】
特開2011−174674(JP,A)
【文献】
特開2014−202460(JP,A)
【文献】
特開2012−247141(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3178089(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 3/044
F24F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高気密高断熱住宅用の空調システムであって、
屋内の非居住空間である屋根裏に対して一部が開口され、屋根裏の直ぐ下の居住空間の階に設けられた空調室と、
この空調室に設置された空調機と、
前記空調室から居住空間の複数の場所に空調空気を案内する複数の空調空気流路と、
この複数の空調空気流路を介して居住空間の複数の場所に空調空気を送るために、前記複数の空調空気流路に個別に対応して設けられた複数の送風機と、
前記空調室が開口された屋根裏に屋外の空気を導入する屋外空気導入手段と、
前記空調室が開口された屋根裏に屋内の居住空間の空気を導入する居住空間空気導入手段とを備え、
前記各送風機により居住空間の各場所に空調空気を送ることにより、前記空調室が開口された屋根裏に、前記屋外空気導入手段を介して屋外の空気が導入されると共に、前記居住空間空気導入手段を介して居住空間の空気が導入され、混合されて、この混合空気は前記開口から前記空調室に流入し、前記空調機により空調されて前記各送風機に至るように構成され、
前記各送風機は、前記空調室において、吸い込み口を下に向けて配設された
ことを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記送風機は、前記空調室において、高さ方向に複数並べて配設され、
前記空調室には、前記空調室における空調空気の流路を制御する仕切部材が設けられており、この仕切部材は、前記複数の送風機のうち少なくとも最も上に位置する送風機に対し、空調空気が下側に向かった後に上側に向かって吸い込み口に至るように構成されたことを特徴とする請求項1記載の空調システム。
【請求項3】
前記空調室が開口された非居住空間に前記空調室から空調空気を送る空調空気還流手段を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内の空調を行う空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高気密高断熱住宅用の空気調和装置として、1台の室内機に、複数の部屋に対応した数の吹出用ダクトと、室内の空気を吸い込む吸込用ダクトとを設けると共に、室内の汚れた空気を外に排出する排出用ダクトと、外の新鮮な空気を吸入する吸入用ダクトとを設け、各部屋の空気調和や換気を行うようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。ところが、このような空気調和装置では、1台の室内機で複数の部屋に対応するので、住宅全体の空気調和能力を確保するためには室内機が大形化してしまうという問題があった。また、空気調和と共に換気を行う場合には、室内の空気と外の新鮮な空気とを十分に混合することが難しく、部屋により温度むらが生じてしまうという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−325565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、小型化することができ、温度むらを小さくすることができる空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の空調システムは、屋内の非居住空間に対して一部が開口された空調室と、この空調室に設置された空調機と、空調室から居住空間の複数の場所に空調空気を案内する複数の空調空気流路と、この複数の空調空気流路を介して居住空間の複数の場所に空調空気を送るために、複数の空調空気流路に個別に対応して設けられた複数の送風機と、空調室が開口された非居住空間に屋外の空気を導入する屋外空気導入手段と、空調室が開口された非居住空間に屋内の居住空間の空気を導入する居住空間空気導入手段とを備え、各送風機により居住空間の各場所に空調空気を送ることにより、空調室が開口された非居住空間に、屋外空気導入手段を介して屋外の空気が導入されると共に、居住空間空気導入手段を介して居住空間の空気が導入され、混合されて、空調室に流入するように構成されたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、屋内の非居住空間において屋外の空気と屋内の居住空間の空気とを混合して空調室に流入させるようにしたので、屋外の空気と居住空間の空気を空調室に至る前に混合することができる。よって、空調空気の温度むら、すなわち居住空間の温度むらを小さくすることができる。また、非居住空間を利用して屋外の空気と居住空間の空気を混合するので、空調室の大きさを混合のために大きくする必要がなく、空調室の大きさを小さくすることができる。
【0007】
また、各送風機を空調室において吸い込み口を下に向けて配設するようにすれば、運転の安全性を確保することができる。
【0008】
更に、送風機を空調室において高さ方向に複数並べて配設し、かつ、空調室に仕切部材を設け、複数の送風機のうち少なくとも最も上に位置する送風機に対し、空調空気が下側に向かった後に上側に向かって吸い込み口に至るようにすれば、送風機の近傍においては空調空気が下から上に向かって流れるので、上側に位置する送風機と、下側に位置する送風機とで、温度むらをより小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る空調システムを高気密高断熱住宅に設置した状態を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態に係る空調システム10を高気密高断熱住宅20に設置した状態を表すものである。この空調システム10は、空調を行う空調室11を備えており、この空調室11で空調した空調空気を屋内の居住空間21における複数の場所、例えば、各部屋や廊下に送風するものである。空調室11には、空調機12が設置されている。空調機12としては、例えば、エアコンが挙げられ、空調室11に例えば1台が設置される。空調室11は、建物のどこに設置してもよいが、本実施の形態では、例えば、2階の一部分に設けられている。また、空調室11は、屋内の非居住空間22に対して一部が開口されている。非居住空間22というのは、例えば、屋根裏や天井懐や床下であり、本実施の形態では、屋根裏に対して開口されている。
【0012】
この空調システム10は、また、空調室11から屋内の居住空間21における複数の場所に空調空気を案内する複数の空調空気流路13を備えている。空調空気流路13は、例えば、ダクトにより構成されている。各空調空気流路13の一端部は、例えば、空調室11に対してそれぞれ配設され、他端部は、例えば、居住空間21の各場所に設けられた吹出口に個別に対応してそれぞれ配設されている。空調室11には、例えば、送風機14が各空調空気流路13に個別に対応してそれぞれ設けられており、各空調空気流路13の一端部が個別に連結され、各空調空気流路13を介して屋内の各場所に空調空気を送るようになっている。なお、空調空気流路13は、居住空間21に加えて、非居住空間22、例えば床下にも空調空気を案内するように配設されていてもよい。
【0013】
各送風機14は、例えば、空調室11において、吸い込み口14Aを下に向けて配設されることが好ましい。送風機14の運転の安全性も確保することができるからである。また、各送風機14は、例えば、空調室11において、高さ方向に複数並べて配設されている。なお、
図1では、送風機14を高さ方向に3台並べて配置する場合について示したが、2台でもよく、4台以上並べてもよい。また、各送風機14は、高さ方向に1列に並べて配設してもよいが、複数列に分けて配設するようにしてもよい。
【0014】
空調室11には、また、空調室11における空調空気の流路を制御するための仕切部材15が設けられていることが好ましい。この仕切部材15は、例えば、各送風機14が配設されている送風機領域と、空調機12が配設されている空調領域とを分け、空調空気が空調機12から送風機14に至る経路を長くして、各送風機14の温度むら小さくするためのものである。具体的には、例えば、各送風機14のうち少なくとも最も上に位置する送風機14に対し、空調空気が下側に向かった後に上側に向かって吸い込み口14Aに至るように構成されていることが好ましい。すなわち、仕切部材15は、例えば、高さ方向に並べて配設された送風機14のうち最も上に位置する送風機14の吸い込み口14Aよりも下側の空間について、上部と、側部の上からの一部とを覆うように設けられていることが好ましい。仕切部材15の高さ方向の長さは、下から2番目に位置する送風機14の吹き込み口14Aよりも下まで形成されていればより好ましい。
【0015】
なお、空調機12は、例えば、仕切部材15により仕切られた空調領域において、仕切部材15の側部上側に配設されていることが好ましい。空調空気が空調機12から各送風機14の吹き込み口14Aに至るまでの長さを長くすることができるからである。
【0016】
この空調システム10は、更に、空調室11が開口された屋内の非居住空間22に屋外の空気を導入する屋外空気導入手段16と、空調室11が開口された屋内の非居住空間22に屋内の居住空間の空気を導入する居住空間空気導入手段17とを備えている。これにより、この空調システム10では、各送風機14により空調空気を居住空間21の各場所に送り、空調室11が負圧になると、空調室11が開口された非居住空間22に、屋外空気導入手段16を介して屋外の空気が導入されると共に、居住空間空気導入手段17を介して居住空間の空気が導入され、混合されて、空調室11に流入するようになっている。空調室11に至る前に屋外の空気と居住空間の空気を十分に混合することができ、温度むらを小さくすることができるからである。
【0017】
屋外空気導入手段16は、例えば、一端部が屋外に対して連通されたダクトにより構成されている。屋外空気導入手段16には、また、熱交換器16Aを設け、屋外から導入した空気と、後述する排気手段19により排出する居住空間21の排出空気との間で熱交換をするようにすることが好ましい。居住空間空気導入手段17は、例えば、居住空間の天井に設けられたガラリにより構成されている。
【0018】
また、空調室11が開口された屋内の非居住空間22には、空調空気が空調空気還流手段18により空調室11から送られるようになっていることが好ましい。より温度むらを小さくすることができるからである。空調空気還流手段18は、例えば、ダクトにより構成されている。空調空気還流手段18には、例えば、図示しない送風機が連結されていることが好ましい。
【0019】
この空調システム10は、加えて、例えば、屋内の居住空間21の空気を屋外に排出する排気手段19を備えていることが好ましい。排気手段19は、例えば、ダクトにより構成されている。居住空間21は、空調空気流路13を介して空調空気が送られて加圧状態となっており、それにより居住空間21の空気の一部が排出空気として排気手段19を介して屋外に排出されるようになっている。排気手段19には、例えば、上述した熱交換器16Aが設けられており、排出空気と屋外空気導入手段16により導入された屋外の空気との間で熱交換をするように構成されていることが好ましい。なお、排気手段19は、居住空間21に加えて、非居住空間22、例えば床下の空気を屋外に排出するように配設されていてもよい。
【0020】
この空調システム10は、例えば、次のように作動する。まず、例えば、空調機12により空調室11の空気を空調する。すなわち、例えば、空調室11の空気の温度や湿度を調節する。空調機12により空調された空調空気は、例えば、空調室11の内部を仕切部材15により案内されて下側に迂回したのち、各送風機14に吸い込まれる。各送風機14に吸い込まれた空調空気は、例えば、各送風機14により、各空調空気流路13を通って居住空間21の各場所に送風される。また、各送風機14により空調空気が送風されると空調室11は負圧となり、空調室11が開口された非居住空間22に、屋外空気導入手段16を介して屋外の空気が導入されると共に、居住空間空気導入手段17を介して居住空間21の空気が導入され、混合されて、空調室11に流入する。
【0021】
このように本実施の形態によれば、屋内の非居住空間22において屋外の空気と屋内の居住空間21の空気とを混合して空調室11に流入させるようにしたので、屋外の空気と居住空間21の空気を空調室11に至る前に混合することができる。よって、空調空気の温度むら、すなわち居住空間21の温度むらを小さくすることができる。また、非居住空間22を利用して屋外の空気と居住空間21の空気を混合するので、空調室11の大きさを混合のために大きくする必要がなく、空調室11の大きさを小さくすることができる。
【0022】
また、各送風機14を空調室11において吸い込み口を下に向けて配設するようにすれば、運転の安全性を確保することができる。
【0023】
更に、送風機14を空調室11において高さ方向に複数並べて配設し、かつ、空調室11に仕切部材15を設け、複数の送風機14のうち少なくとも最も上に位置する送風機14に対し、空調空気が下側に向かった後に上側に向かって吸い込み口に至るようにすれば、送風機14の近傍においては空調空気が下から上に向かって流れるので、上側に位置する送風機14と、下側に位置する送風機14とで、温度むらをより小さくすることができる。
【0024】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、各構成要素について具体的に説明したが、全ての構成要素を備えていなくてもよく、他の構成要素を備えていてもよい。また、各構成要素は、他の構成を有していてもよい。
なお、上記実施の形態では、空調室11を2階の一部分に設ける場合について説明したが、
参考例として、図2を示す。図2は、1階の居住空間21の空調室11を1階と2階との間の天井懐に設け、2階の居住空間21の空調室11を2階と屋根との間の屋根裏に設け
たものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
建物の空調に用いることができる。
【符号の説明】
【0026】
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