(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者は、災害等で動作を停止した基地局を早急に復旧することが困難な場合に、基地局の機能を代替する中継局を気球に搭載して、動作を停止した基地局がカバーしていたエリアの通信障害を早急に回復することを見出した。中継局を搭載した気球を約100[m]の高度まで上昇させて係留することにより、半径3[km]以上のエリアをカバーする中継局を実現することができる。
【0007】
中継局を搭載した気球は、通信障害の状況に応じて迅速に移動することを求められる場合があるので、中継局を搭載した気球を牽引車両に搭載して運搬することが考えられる。中継局を搭載した気球を牽引車両に搭載して運搬することにより、通信障害の状況が生じた基地局の近辺に中継局を搭載した気球を迅速に移動させることが可能になる。所望の場所に運搬された気球は、気球係留装置から放球されて気球係留装置に係留されることになる。例えば、通信障害が生じた基地局が市街地に位置していた場合、気球は、市街地に運搬されて、気球係留装置に係留されることになる。
【0008】
多数の公衆が往来する市街地に気球係留装置を配置して気球を係留する場合、公衆が気球係留装置に接近することを防止するために、気球係留装置の周囲に防護壁を設置することが考えられる。気球係留装置の周囲に防護壁を設置することにより、公衆が係留索に接触する等の不測の事態が生じることを防止することができる。
【0009】
しかしながら、気球係留装置の周囲に防護壁を設置すると、気球が風を受けて気球係留装置の直上の位置から移動した場合に、気球と気球係留装置とを接続する係留索が防護壁の上面に接触するおそれがある。係留索の防護壁への接触が繰り返されると、係留索が擦れて徐々に摩耗し、切断するおそれがある。また、気球係留装置の周囲には、防護壁の他にも種々の障害物が配置されていることがあり、これらの障害物と係留索とが接触するおそれもある。
【0010】
本発明は、この課題を解決するものであり、気球係留装置が係留索を介して気球を係留するときに、気球係留装置の周囲に配置された障害物に係留索が接触するおそれが低い気球係留装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を実現するために、本発明に係る気球係留装置は、気球と、気球が接続された係留索と、係留索を巻き出し且つ巻き取る巻取装置と、巻取装置から巻き出された係留索を係止する係止部と、係止部を、第1位置と第1位置よりも高い位置である第2位置との間で移動可能に支持する支持部材と、を有する。
【0012】
また、本発明に係る気球係留装置では、支持部材は、係止部を支持し且つ長さが伸縮可能な伸縮脚を有し、伸縮脚の長さが第1の長さであるときに、係止部は第1位置に位置し、伸縮脚の長さが第1の長さより長い第2の長さであるときに、係止部は第2位置に位置することが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る気球係留装置では、支持部材は、係止部を支持し且つ転倒させた転倒位置と起立させた起立位置との間で回転可能に形成された支持架台を有し、支持架台が転倒位置に位置するときに、係止部は第1位置に位置し、支持架台が起立位置に位置するときに、係止部は第2位置に位置することが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る気球係留装置は、支持架台の基部に位置し、転倒位置と起立位置との間で回転させる回転部を更に有することが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る気球係留装置は、支持架台が転倒位置であるときに、支持架台を水平方向に移動しながら起立位置に回転可能な移動機構を更に有することが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る気球係留装置では、係止部は、係留索が通過する索通過口が形成されることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る気球係留装置は、気球が係留されているときに、係止部を前記第2位置で固定する固定部材を更に有することが好ましい。
【0018】
さらに、本発明に係る気球格納箱は、気球係留装置と、気球係留装置が配置された底面と、下辺が底面の周囲に沿って配置された側面と、側面の下辺と対向する上辺に接するように配置された上面と、側面の少なくとも一部を、対向する側面との間の距離を広げるように移動する側面移動機構と、上面の少なくとも一部を開閉させるように側面に回転させる上面移動機構と、を有し、気球係留装置は、気球と、気球が接続された係留索と、係留索を巻き出し且つ巻き取る巻取装置と、巻取装置から巻き出された係留索を係止する係止部と、係止部を、第1位置と第1位置よりも高い位置である第2位置との間で移動可能に支持する支持部材と、を有する。
【0019】
さらに、本発明に係る気球運搬装置は、気球係留装置と、気球係留装置が配置された底面と、下辺が底面の周囲に沿って配置された側面と、側面の下辺と対向する上辺に接するように配置された上面と、側面の少なくとも一部を、対向する側面との間の距離を広げるように移動する側面移動機構と、上面の少なくとも一部を開閉させるように側面に回転させる上面移動機構と、を有する気球格納箱と、気球格納箱を搭載する車両と、を有し、気球係留装置は、気球と、気球が接続された係留索と、係留索を巻き出し且つ巻き取る巻取装置と、巻取装置から巻き出された係留索を係止する係止部と、係止部を、第1位置と第1位置よりも高い位置である第2位置との間で移動可能に支持する支持部材と、を有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、気球係留装置が係留索を介して気球を係留するときに、気球係留装置の周囲に配置された障害物に係留索が接触するおそれを低くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の図面を参照して、本発明に係る気球係留装置、気球係留装置を格納する気球格納箱、及び気球運搬装置について説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明との均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0023】
本願発明者は、基地局で通信障害が生じた場合に、気球が収納可能な気球収納箱を搭載した気球運搬装置で気球を通信障害が生じた基地局の近傍まで運搬し、気球収納箱の上面を開放して、上面が開放された気球収納箱から気球を放球することを見出した。気球を気球運搬装置で運搬し、気球運搬装置で運搬された気球収納箱から気球を放球することにより、気球を早急に容易に放球することが可能になる。
【0024】
図1(a)は気球運搬装置に搭載された気球格納箱から気球を放球する状態を示す概略断面図であり、
図1(b)は放球された気球が風を受けた第1の状態を示す概略断面図であり、
図1(c)は放球された気球が風を受けた第2の状態を示す概略断面図である。
【0025】
気球運搬装置901は、タイヤ9020及び荷台9021を備える貨物車両902と、貨物車両902に搭載され側面9031を備える気球格納箱903とを有する。気球格納箱903には巻取装置等を含む係留装置910と、係留装置910に係留索980を介して接続された気球990が搭載される。気球運搬装置901で運搬された気球990を係留するとき、上面が開放された気球格納箱903から気球990が放球される。気球990は、強風下では放球できないため、気球990は、略無風のとき又は微風下で放球される。放球された気球990は、放球された直後は、係留装置910の直上に位置している。その後、風速が増加するに従って、気球990は係留装置910の直上の位置から移動し、気球990と係留装置910とを接続する係留索980と鉛直方向との間の係留索傾斜角θiは大きくなる。そして、さらに風速が増加すると、係留索980が側面9031に接触するおそれがある。係留索980が側面9031に接触することを防止するために、係留索980が側面9031に接触することを防止するために、側面を倒すこと、及び側面の高さを低くすることが考えられる。
【0026】
図1(d)は気球格納箱の側面を倒した状態を示す概略断面図であり、
図1(e)は気球格納箱の側面の高さを低くした状態を示す概略断面図である。
【0027】
図1(d)に示す例では、気球運搬装置911に搭載された気球格納箱913は、側面9032を外側に回転させることによって、側面9032を倒している。一方、
図1(e)に示す例では、気球運搬装置921に搭載された気球格納箱923は、側面9033を折曲することによって、側面9033の高さを低くしている。気球格納箱913の側面9032を倒す、又は気球格納箱923の側面9033の高さを低くすることにより、気球990が強風を受けて係留索傾斜角θiが最大となった場合でも係留索980が側面9031に接触することを防止することができる。
【0028】
しかしながら、側面9032を外側に回転させる場合には、側面9032を倒すための領域を気球運搬装置911の周囲に確保する必要がある。一方、側面9033を折曲して側面9033の高さを低くする場合、側面9033を折曲する機構が必要になるため気球格納箱923の構造が複雑になる。また、側面9032を外側に回転させる場合及び側面9033の高さを低くする場合の何れの場合も、公衆が係留装置910に接近して公衆が係留索に接触する等の不測の事態が生じるおそれがある。さらに、これらの場合では、気球係留装置の巻き取り装置等が視認可能になるため、気球係留装置の美感が低下するという問題がある。
【0029】
そこで、実施形態に係る気球係留装置は、気球の放球までは、気球係留装置が気球を係留する位置を低くし、気球を係留する間は、気球係留装置が気球を係留する位置を高くする。すなわち、実施形態に係る気球係留装置は、巻取装置から巻き出された係留索を係止する係止部と、第1位置と第1位置よりも高い位置である第2位置との間で係止部を移動可能に支持する支持部材とを有する。気球に気体を充填して放球するときは、気球係留装置は、気球の充填作業が容易な第1位置で気球を係留する。気球の係留中、実施形態に係る気球係留装置は、係止部を第1位置よりも高い位置である第2位置で気球を係留する。実施形態に係る気球係留装置は、気球の係留中に気球をより高い位置で係留するので、気球を係留中に、係留索が側面に接触するおそれが低くなる。
【0030】
図2は、気球格納箱を搭載した実施形態に係る気球運搬装置の斜視図である。
【0031】
気球運搬装置1は、貨物車両2と、貨物車両2に搭載された気球格納箱3とを有する。貨物車両2は、キャビンとも称される乗員室201と、乗員室201の後方に配置される荷台202とを有する。貨物車両2の幅は、道路法に従って道路を通行することができるように、2.5メートル以下である。
【0032】
図3(a)は
図2のA−A´線に沿う断面図であり、
図3(b)は
図2のB−B´線に沿う断面図である。
【0033】
気球格納箱3は、長方形の底面330と、下辺が底面330の周囲に沿って配置された側面340と、側面の上辺に接するように配置された上面350とを有する。気球格納箱3は、側面の一部を底面330の周囲から外周に向けて移動する側面移動機構360と、上面350の一辺を軸として上面350を回転する上面移動機構370とを有する。気球格納箱3の幅は、貨物車両2の幅以下である。すなわち、気球格納箱3の幅は、2.5メートル以下である。気球格納箱3の幅を2.5メートル以下にすることにより、貨物車両2は、気球格納箱3を搭載した状態で、道路法に従って道路を通行することができる。
【0034】
気球格納箱3の内部には、支持架台10と、巻取装置17と、巻取装置17に係留索80を介して接続される気球90を有する気球係留装置4が配置される。支持架台10及び巻取装置17は、気球格納箱3の底面330に固定され、気球90は、ヘリウムガスがほとんど充填されていない状態で支持架台10の上面に搭載される。
【0035】
図4(a)は気球90が放球された直後の気球係留装置4の斜視図であり、
図4(b)は気球90を係留中の気球係留装置4の斜視図である。
【0036】
支持架台10は、底枠部11と、上枠部12と、第1伸縮脚131〜第4伸縮脚134と、第1固定部材141〜第4固定部材144と、索案内装置15と、ローラ16とを有する。
【0037】
底枠部11及び上枠部12のそれぞれは、鋼材で形成された枠状部材であり、底枠部11は不図示の締結部材により気球格納箱3の底面330に締結され、上枠部12は対向する辺から延伸する索案内装置支持部121及び122によって索案内装置15を支持する。
【0038】
第1伸縮脚131〜第4伸縮脚134のそれぞれは、第1の長さL1と第1の長さL1よりも長い第2の長さL2との間で伸縮可能な鋼材で形成された部材で、一端が底枠部11の角に接合され、他端が上枠部12の角に接合される。第1伸縮脚131〜第4伸縮脚134の長さは、気球運搬装置1により移動して気球90にヘリウムが充填されて気球90が放球されるまでの間、第1の長さL1とする。また、第1伸縮脚131〜第4伸縮脚134の長さは、気球90を係留している間、第2の長さL2とする。第1固定部材141〜第4固定部材144のそれぞれは、気球90を係留している間、第1伸縮脚131〜第4伸縮脚134を第2の長さL2に固定する。第2の長さL2は、気球格納箱3の側面340の高さと、索案内装置15と側面340との間の距離によって規定される。例えば、係留中の気球90の最大傾斜角が45度である場合、第2の長さL2は、索案内装置15の高さに相当する第2の長さL2と側面340の高さとの差が索案内装置15と側面340との間の距離以上の長さになるように規定される。
【0039】
索案内装置15は、方形に配置された2対のローラを有する四面ローラであり、四面ローラの内側に索通過口150が形成される。索案内装置15は、気球90の上昇及び下降に伴って係留索80が巻取装置17から巻き出されるとき及び係留索80が巻取装置17に巻き取られるときに、索通過口150を通る係留索80を摺動自在に案内する。索案内装置15は、索通過口150で規定される移動範囲内で移動する係留索80を介して気球90を索通過口150で係止する係止部として機能する。
【0040】
ローラ16は、底枠部11に固定された回転可能な筒状部材であり、巻取装置17から水平方向に延伸してきた係留索80を索通過口150が位置する鉛直方向に屈折させる。巻取装置17は、係留索80を巻き取る巻取ドラム(図示せず)と、巻取ドラムを所定の速度で回転させる巻取モータ(図示せず)とを有する。巻取モータは、係留索80を巻き出すときに巻取ドラムを巻き出し方向に回転させ、係留索80を巻き取るときに巻取ドラムを巻き出し方向と反対方向の巻き取り方向に巻取ドラムを回転させる。巻取装置17は、気球90が係留されている間は、気球90の位置を一定にするために、係留索80の長さを一定の長さに固定する。
【0041】
気球係留装置4は、気球90を係留中に、第1伸縮脚131〜第4伸縮脚134の長さを気球90の放球前よりも長くすることにより、気球90を係止する係止部である索案内装置15の高さが高くなるので、係留索が側面340に接触するおそれが低くなる。
【0042】
側面340は、乗員室201から後方に向かって延伸する底面330の第1辺から上方に延伸する方形の第1側面341と、底面330の第1辺と対向する第2辺から上方に延伸する方形の第2側面342とを有する。側面340は、底面330の第1辺の後方の頂点から第2辺の後方の頂点に延伸する第3辺から上方に延伸する方形の第3側面343と、底面330の第1辺の前方の頂点から第2辺の前方の頂点に延伸する第4辺から上方に延伸する方形の第4側面344とを更に有する。
【0043】
上面350は、第1側面341の上辺から第1側面341に垂直の方向に延伸する第1上面351と、第2側面342の上辺から第2側面342に垂直の方向に延伸する第2上面352と、第3側面343の上辺から第3側面343に垂直の方向に延伸する第3上面353とを有する。第1上面351及び第2上面352は、互いの先端部が重なるように配置され、第3上面353は、第1上面351及び第2上面352の下方に位置するよう配置される。
【0044】
側面移動機構360は、第1側面341を移動する第1側面移動機構361と、第2側面342を移動する第2側面移動機構362と、第3側面343を移動する第3側面移動機構363とを有する。
【0045】
図5は、第1側面移動機構361の斜視図である。
図5は第1側面移動機構361の構成の一例を示すものであり、第1側面移動機構361の構成は
図5に示す構成に限定されるものではない。第2側面移動機構362及び第3側面移動機構363のそれぞれは、第1側面移動機構361と同様の構成及び機能を有するので、第2側面移動機構362及び第3側面移動機構363の詳細な説明は省略する。
【0046】
第1側面移動機構361は、第1腕部3611〜第3腕部3613と、ラック3614と、ピニオン3615と、駆動部3616とを有する。第1腕部3611〜第3腕部3613及びラック3614のそれぞれは、一端が第1側面341に接合される。ピニオン3615は、ラック3614に嵌合され、駆動部3616の回転に応じて、ピニオン3615に接合された第1側面341を移動する。駆動部3616は、不図示の電源から電源供給されるモータ及び減速機を有し、第1側面341を移動することを示す第1側面移動指示を受けると、回転を開始し、所定の時間が経過した後に回転を停止する。第1側面移動機構361のラック3614、ピニオン3615及び駆動部3616は、リニアヘッドとも称される一体型の直線移動機構としてもよい。
【0047】
第1側面移動機構361は、第1側面341を、前方から後方に向かって延伸する底面330の第1辺から外側に向けて移動する。第2側面移動機構362は、第1側面341を底面330の第1辺と対向する第2辺から外側に向けて移動する。第2側面移動機構362は、第1側面341を底面330の第1辺と対向する第2辺から外側に向けて移動する。第3側面移動機構363は、底面330の第1辺の後方の頂点から第2辺の後方の頂点に延伸する第3辺から外側に向けて移動する。
【0048】
上面移動機構370は、第1上面351を回転させる第1上面移動機構371と、第2上面352を回転させる第2上面移動機構372と、第3上面353を回転させる第3上面移動機構373とを有する。
【0049】
図6は第1上面移動機構371の動作を説明する側面図であり、
図6(a)は第1上面移動機構371が第1上面351を回転する前の状態を示す図であり、
図6(b)は第1上面移動機構371が第1上面351を回転した後の状態を示す図である。
図6は第1上面移動機構371の構成の一例を示すものであり、第1上面移動機構371の構成は
図6に示す構成に限定されるものではない。第2上面移動機構372及び第3上面移動機構373のそれぞれは、第1上面移動機構371と同様の構成及び機能を有するので、第2上面移動機構372及び第3上面移動機構373の詳細な説明は省略する。
【0050】
第1上面移動機構371は、上面回転部3711と、上面駆動部3712とを有する。上面回転部3711は、第1側面341と、第1上面351とを接続する。上面駆動部3712は、コボレーンとも称される電導回転機構であり、不図示の電源から電源供給されるモータ及び減速機で形成される。上面駆動部3712が上面回転部3711を回転することにより、第1側面341に接続された第1上面351が回転して、水平方向に延伸するように配置されていた第1上面351は、鉛直方向に延伸するように移動する。
【0051】
図7は、気球90を係留中の気球運搬装置1の斜視図である。
図7では、説明を容易にするために、第1側面341〜第3側面343は底面330の周囲から外側に向けて移動されているが、気球90を係留しているとき、第1側面341〜第3側面343は底面330の周囲に位置していることが好ましい。
【0052】
係留索80は、一端がそれぞれ接続部91で気球90と接続される第1係留索81〜第3係留索83と、第1係留索81〜第3係留索83のそれぞれの他端と結節点84で接続される主係留索85とを有する。
【0053】
気球90は、合成繊維等の堅固、軽量且つ風を通さない材料で形成される外袋と、ヘリウムガスが充填されるヘリウム収納袋とを有する。気球90は、ヘリウム収納袋及び空気収納袋と外袋との二重構造となっているので、外袋は、ガスバリア性を有する材料で形成される必要はない。尚、気球90は本構成の一例を示すものであり、ヘリウム収納袋だけで構成される気球でも可能であり、その構成に限定されるものではない。
【0054】
気球90は、係留索80を介して支持架台10で係留される。気球運搬装置1では、気球90を放球する前に、第1側面移動機構361〜第3側面移動機構363のそれぞれが第1側面341〜第3側面343のそれぞれを移動する。また、気球90を放球する前に、第1上面移動機構371〜第3上面移動機構373のそれぞれが第1上面351〜第3上面353のそれぞれを回転して、第1側面341〜第3側面343に対向する位置に移動する。第1側面341〜第3側面343を底面330の周囲から外側に向けて移動して対向する側面との間の距離を広げることにより、気球格納箱3の容積が大きくなり、ヘリウムガスが充填された気球90を収納することができる容積を気球格納箱3が確保可能になる。気球格納箱3は、第1上面351〜第3上面353を第1側面341〜第3側面343に対向する位置に回転することにより、気球90を係留する支持架台10が配置される底面330の上方に、気球90が放球可能な開口部を確保することができる。
【0055】
気球運搬装置1では、気球90が放球された後、支持架台10の第1伸縮脚131〜第4伸縮脚134のそれぞれを第1の長さL1から第1の長さL1よりも長い第2の長さL2に伸ばした状態で、第1固定部材141〜第4固定部材144で固定する。気球90を係留する間、支持架台10の第1伸縮脚131〜第4伸縮脚134のそれぞれの長さは第2の長さL2で固定されているので、気球90が風により移動して係留索傾斜角が大きくなっても係留索80が側面340に接触するおそれは低い。
【0056】
図8〜10は、気球運搬装置1における気球90を放球するときの動作を示す概略図である。
図8は右側方向からの気球運搬装置1の断面図であり、
図9は後方からの気球運搬装置1の断面図であり、
図10は後方からの気球運搬装置1の平面図である。
図8(a)、9(a)及び10(a)は第1の状態を示し、
図8(b)、9(b)及び10(b)は第1の状態に続く第2の状態を示す。以下同様に、
図8(c)〜8(g)、9(c)〜9(g)及び10(c)〜19(g)のそれぞれは前の状態に続く状態を示し、
図8(h)、9(h)及び10(h)は第7の状態に続く第8の状態を示す。
【0057】
まず、気球運搬装置1は、所望の係留点に停車される(
図6(a)、7(a)及び8(a)を参照)。ここでは、貨物車両2により運搬されるために気球格納箱3の側面340は、底面330の周囲に沿って配置され、上面350は底面330に対向する位置に配置されている。気球格納箱3に格納されている気球90はヘリウムガスが充填されていない。なお、気球90を迅速に放球するために、気球90は、気球格納箱3に格納可能な大きさになる程度にヘリウムガスが充填されていてもよい。
【0058】
次いで、側面移動機構360は、側面340を底面330の周囲から外側に向けて移動して、対向する側面との間の距離を広げる(
図6(b)、7(b)及び8(b)を参照)。第1側面移動機構361は第1側面341を底面330の端部から外側に移動し、第2側面移動機構362は第2側面342を底面330の端部から外側に移動し、第3側面移動機構363は第3側面343を底面330の端部から外側に移動する。第1側面移動機構361〜第3側面移動機構363のそれぞれが第1側面341〜第3側面343のそれぞれを底面330の周囲から外側に向けて移動することにより、気球格納箱3の容積は第1側面341〜第3側面343が移動する前よりも大きくなる。気球格納箱3の容積が気球の大きさに応じて大きくなることにより、気球90は、気球格納箱3の内部でヘリウムガスを充填することが可能になる。
【0059】
次いで、上面移動機構370は、上面350の一辺を軸として上面350を回転して上面350が側面340に対向する位置となるように移動する(
図6(c)、7(c)及び8(c)を参照)。第1上面移動機構371は第1側面341と接する第1上面351の辺を軸として第1上面351を回転し、第2上面移動機構372は第2側面342と接する第2上面352の辺を軸として第2上面352を回転する。第3上面移動機構373は、第3側面343と接する第3上面353の辺を軸として第3上面353を回転する。第1上面移動機構371〜第3上面移動機構373のそれぞれは、第1上面351〜第3上面353のそれぞれを回転して、第1上面351〜第3上面353のそれぞれを第1側面341〜第3側面343のそれぞれと対向する位置に移動する。第1上面351〜第3上面353のそれぞれを回転することにより、気球格納箱3の底面330の上方には開口部が形成される。気球格納箱3の底面330の上方には開口部が形成されることにより、気球格納箱3の内部でヘリウムガスが充填された気球90は、気球格納箱3の外部に移動されることなく、気球格納箱3の内部から放球されることが可能になる。
【0060】
次いで、気球90は、不図示のガス貯蔵容器に貯蔵されたヘリウムガスが充填される(
図6(d)、7(d)及び8(d)を参照)。ヘリウムガスが充填された気球90は、巻取装置17から係留索が巻き出されるまで気球格納箱3の内部で保持される。
【0061】
次いで、気球90は、放球され、上昇する(
図6(e)、7(e)及び8(e)を参照)。気球係留装置4が巻取装置17から主係留索85が巻き出すに従って、気球90は上昇する。気球90の高さが所望の高さになると、気球係留装置4は主係留索85の巻き出しを終了する。
【0062】
次いで、側面移動機構360は、底面330の周囲の外側に配置された側面340を底面330の周囲に向けて移動する(
図6(f)、7(f)及び8(f)を参照)。第1側面移動機構361は第1側面341を底面330の端部に移動し、第2側面移動機構362は第2側面342を底面330の端部に移動し、第3側面移動機構363は第3側面343を底面330の端部に移動する。側面340を底面330の周囲に位置させることにより、側面が元の位置に戻り、気球格納箱の内部に側面から人々が侵入することを防止できる。気球90が放球されている間、側面340は、底面330の周囲に沿って配置される(
図6(g)、7(g)及び8(g)を参照)。このときの支持架台10の第1伸縮脚131〜第4伸縮脚134の長さは、第1の長さL1である。
【0063】
そして、支持架台10の第1伸縮脚131〜第4伸縮脚134のそれぞれを第1の長さL1から第1の長さL1よりも長い第2の長さL2に伸ばして、第1固定部材141〜第4固定部材144で固定する(
図6(h)、7(h)及び8(h)を参照)。
【0064】
図11は第2実施形態に係る気球係留装置を示す図であり、
図11(a)は気球90が放球された直後の第2実施形態に係る気球係留装置の斜視図であり、
図11(b)は気球90を係留中の第2実施形態に係る気球係留装置の斜視図である。
【0065】
第2実施形態に係る気球係留装置5は、固定部材24が配置されることが気球係留装置4と相違する。また、気球係留装置5は、支持架台10の代わりに、回転部21を有し且つ第1伸縮脚131〜第4伸縮脚134の代わりに第1脚231〜第4脚234が配置された支持架台20を有することが気球係留装置4と相違する。そこで、以下では第1実施形態と相違する回転部21、第1脚231〜第4脚234及び固定部材24について説明する。なお、気球係留装置5の回転部21、第1脚231〜第4脚234及び固定部材24以外の構成素子は、第1実施形態に係る気球係留装置4と同様な構成及び機能を有するので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0066】
回転部21は、支持架台20の基部に位置し、底枠部11の一辺に接合された軸210と、軸210の両端に配置され軸を回転可能に気球格納箱3の底面330に固定する軸受部211とを有し、支持架台20を気球格納箱3の底面330に回転可能に支持する。第1脚231〜第4脚234のそれぞれは、鋼材で形成された棒状部材であり、一端が底枠部11に接続され、他端が上枠部12に接続される。固定部材24は、一端が気球格納箱3の底面330に回転可能に固定され、他端が気球格納箱3の底面330に不図示の締結部材で締結可能な円弧状の部材である。
【0067】
支持架台20は、
図11(a)に示すように第1脚231及び第2脚232が気球格納箱3の底面330に接する転倒位置と、
図11(b)に示すよう底枠部11が気球格納箱3の底面330に接する起立位置との間で回転可能である。支持架台20が
図11(b)に示す起立位置のとき、固定部材24は、底枠部11の軸210が接合された辺に対向する辺を気球格納箱3の底面330に固定する。固定部材24が底枠部11の一辺を固定することにより、支持架台20が起立位置では、支持架台20は回転部21によって回転されることはない。
【0068】
支持架台20は、気球運搬装置1により移動して気球90にヘリウムが充填されて気球90が放球されるまでの間、転倒位置にされる。また、支持架台20は、気球90を係留している間、起立位置にされる。支持架台20が転倒位置のとき、気球格納箱3の底面330から係留索80が通過する索通過口150の上部までの高さは第1の長さL1になる。また、支持架台20が起立位置のとき、気球格納箱3の底面330から索案内装置15の上面までの高さは第1の長さL1よりも長い第2の長さL2になる。
【0069】
図12は第3実施形態に係る気球係留装置を示す図であり、
図12(a)は気球90が放球された直後の第3実施形態に係る気球係留装置の斜視図であり、
図12(b)は気球90を係留中の第3実施形態に係る気球係留装置の斜視図である。
【0070】
第3実施形態に係る気球係留装置6は、回転部を有さず且つ固定部材24の代わりに及び固定部材34を有することが第2実施形態に係る気球係留装置5と相違する。また、支持架台20の代わりに、第1レール331、第2レール332及び第1車輪35〜第4車輪38を有する支持架台30を有することが気球係留装置4と相違する。そこで、以下では第2実施形態と相違する固定部材34、第1レール331、第2レール332及び第1車輪35〜第4車輪38について説明する。なお、気球係留装置6の固定部材34、第1レール331、第2レール332及び第1車輪35〜第4車輪38以外の構成素子は、第2実施形態に係る気球係留装置5と同様な構成及び機能を有するので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0071】
第1レール331及び第2レール332は凹形状の断面を有し、第1脚231と第2脚232との間の長さと略同一の長さ離隔して平行に配置される。第1車輪35〜第4車輪38のそれぞれは、第1レール331及び第2レール332の凹部に配置可能な一対の車輪と、支持架台30に接合され、一対の車輪を回転可能に支持する軸とを有する。第1車輪35及び第2車輪36は、支持架台30が
図12(a)に示す転倒位置のとき、第1レール331及び第2レール332の凹部に配置される。また、第3車輪37及び第4車輪38は、支持架台30が
図12(b)に示す起立位置のとき、第1レール331及び第2レール332の凹部に配置される。固定部材24は、両端が気球格納箱3の底面330に不図示の締結部材で締結可能な円弧状の部材である。固定部材24は、支持架台30が起立位置のときに、底枠部11の一辺を気球格納箱3の底面330に固定する。第1レール331、第2レール332及び第1車輪35〜第4車輪38は、底枠部11、上板部及び第1脚231〜第4脚234とは、支持架台30が転倒位置であるときに、支持架台30を水平方向に移動しながら起立位置に回転可能な移動機構を形成する。
【0072】
支持架台30は、不図示の作業者が第1車輪35〜第4車輪38を第1レール331及び第2レール332上で滑走させると共に、上枠部12を上方に移動させることにより
図12(a)に示す転倒位置から
図12(b)に示す起立位置に回転可能である。具体的には、作業者は、気球90を放球した後、支持架台30を
図11(a)において矢印Aで示される方向に滑走させると共に、上枠部12を上方に持ち上げる。上枠部12が上方に持ち上げられることにより、第1車輪35及び第2車輪36が順に第1レール331及び第2レール332から離れ、次いで第3車輪37及び第4車輪38が順に第1レール331及び第2レール332上に配置される。これにより、支持架台30は、転倒位置から起立位置に回転される。そして、作業者は、起立位置である支持架台30を固定部材34によって所定の位置で気球格納箱3の底面330に固定し、気球90を係留している間、支持架台30を起立位置にする。支持架台30が転倒位置のとき、気球格納箱3の底面330から係留索80が通過する索通過口150の上部までの高さは第1の長さL1になる。また、支持架台30が起立位置のとき、気球格納箱3の底面330から索案内装置15の上面までの高さは第1の長さL1よりも長い第2の長さL2になる。
【0073】
実施形態に係る気球係留装置は、係留索を係止する係止部として機能する索案内装置と、第1位置と第1位置よりも高い位置である第2位置との間で索案内装置を移動可能に支持する支持部材を有する。具体的には、第1実施形態に係る気球係留装置4は、気球を係留中に、伸縮可能な第1伸縮脚131〜第4伸縮脚134の長さを第1の長さL1より長い第2の長さL2で固定することにより索案内装置15の底面330からの高さを第2の高さに固定する。第2実施形態に係る気球係留装置5は、気球を放球するまでは支持架台20を転倒位置とし、気球を係留中に、索案内装置15の高さが転倒位置のときよりも高い起立位置で支持架台20を固定する。第3実施形態に係る気球係留装置6は、気球を放球するまでは支持架台30を転倒位置とし、気球を放球した後に、支持架台30を滑走させ且つ索案内装置15を上方に移動させることによりの高さが転倒位置のときよりも高い起立位置で支持架台30を固定する。このように、実施形態に係る気球係留装置では、係留索を係止する係止部として機能する索案内装置の気球を係留中の位置が放球前の位置よりも高くなるので、係留索が側面に接触するおそれが低くなる。さらに第3実施形態に係る気球係留装置6では、支持架台30を滑走させて支持架台30を起立位置にするので、第2実施形態に係る気球係留装置4よりも気球係留装置が占める領域を小さくできると共に、より小さな力で支持架台を起立させることができる。
【0074】
また、実施形態に係る気球格納箱3は、上面350の一辺を軸として上面350を回転して上面350が側面340に対向する位置となるように移動にする上面移動機構370を有するので、気球格納箱3の底面330の上方には開口部が形成される。気球格納箱3の底面330の上方には開口部が形成されることにより、気球格納箱3の内部でヘリウムガスが充填された気球90は、気球格納箱3の外部に移動することなく、気球90を気球格納箱3の内部から放球することが可能になる。また、実施形態に係る気球格納箱3では、気球90の係留中は、気球格納箱の内部に側面から人々が侵入することを防止できる。
【0075】
また、実施形態に係る気球運搬装置1は、気球格納箱3と、気球格納箱3を搭載する貨物車両2とを有するので、気球運搬装置1は、気球90を所望の場所に運搬可能であると共に、運搬先で迅速に気球90を放球することができる。また、実施形態に係る気球運搬装置1では、貨物車両2の幅及び気球格納箱3の幅が2.5メートル以下であるので、貨物車両2は、気球格納箱3を搭載した状態で、道路法に従って道路を通行することができる。
【0076】
実施形態に係る気球係留装置は、第1位置と第1位置よりも高い位置である第2位置との間で索案内装置を移動可能に支持する他の構造としてもよい。例えば、索案内装置を支持する支持部材は、それぞれが中央で回転可能に接続された2つの板状部材からなる複数の伸縮部材の端部を互いに接続した蛇腹状の伸縮脚を有してもよい。
【0077】
また、実施形態に係る気球係留装置では、係留索が通過する索通過口150が形成された索案内装置15が、気球90を係止する係止部として機能する。しかしながら、係止部は、係留索80を支持架台10の上枠部12に固定する等、気球90に接続された係留索80の係留端を一定の範囲に係止可能な他の形態としてもよい。
【0078】
また、実施形態に係る気球係留装置は、気球格納箱の内部に配置して使用されるが、防護壁等の高さが高い障害物が周囲に配置される環境で使用されてもよい。また、気球格納箱3は、貨物車両に搭載されて移動可能であるが、実施形態に係る気球格納箱は、所定の場所に固定されて使用されてもよい。
【0079】
また、気球格納箱3では、側面340を底面330の周囲から外側に移動したとき、第1側面341と第3側面343との間、第1側面341と第4側面344との間、第2側面342と第3側面343との間、第2側面342と第4側面344との間に空隙が形成される。しかしながら、第1側面341〜第4側面344の間に形成される空隙から風が気球格納箱3の内部に侵入することを防止するために、気球格納箱は、第1側面341〜第4側面344の間に形成される空隙に配置可能な空隙用側面を更に有してもよい。気球格納箱が第1側面341〜第4側面344の間に形成される空隙に配置可能な空隙用側面を有することにより、気球格納箱3の内部に人が侵入することを防止することが可能になる。