【文献】
W.Clarkson, et. al.,“Two-mirror beam-shaping technique for high-power diode bars”,OPTICS LETTERS,1996年 3月15日,Vol.21, No.6,pp.375-377
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1及び第2軸は互いから等距離で第1距離だけ離れており、そして再調整されたこれらの軸は、互いから等距離で前記第1距離よりも短い第2距離だけ離れている、請求項6に記載の装置。
【背景技術】
【0003】
レーザ及び他の固体光源を組み合わせる多くの用途が存在する。一般的に、或る用途において、単一のレーザ光源から放射することができるパワーよりも大きなパワーが必要とされる場合、一般的な解決策では、同じ波長の2つ以上のレーザからの光を合成する。追加のレーザ群は物理的に異なる位置にあるので、レーザ出力ビーム群を合成し、そして積み重ねて、合成出力ビームの “dead space(デッドスペース)” を出来る限り無くすことが必要になる。
【0004】
レーザ群をこのようにして組み合わせる場合、組み合わせた光源を出来る限り小さくして(すなわち、エテンデューを可能な限り最も小さくして)、合成ビームのエネルギーを別の光学系に効果的かつ効率的に集光し、そして伝達することができるようにする。レーザ群が偏光光を放出する場合、これらのレーザを組み合わせるという通常の解決策は、偏光光学素子及び偏光面を用いる偏光合成である。波長差を利用しても偏光状態を利用してもレーザ光の合成には使用することができない場合、空間的組み合わせを用いる必要がある。空間的組み合わせでは、複数レーザ光源及び光軸方向変更光学系をコンパクトで正確な配置になるように位置決めして、合成ビーム群を出来る限り近接して詰め込んで、エテンデューを可能な限り小さくしながら光源エネルギーを供給する必要がある。
【0005】
複数光源の空間的組み合わせが特に肝心となる1つの用途は、ファイバレーザのポンプ励起である。ファイバレーザでは、活性利得媒体は、適切な希土類元素がドープされた光ファイバである。ポンプエネルギーは、多数の種類の光源から、例えば利得媒体にファイバ接続される一連の複数レーザダイオードを用いて供給することができる。多数のポンプ光源を用いることにより、より大きい光パワーを利得媒体に導くことができる。多数のレーザ光源を用いることによっても、ポンプレーザ群の各ポンプレーザを、所定のアンプ利得に対応するより低いパワーレベルで動作させることができるので、これらのポンプレーザの寿命を伸ばすことができ、従ってアンプの信頼性を高めることができる。これによって更に、ポンプレーザ群のうちの1つのポンプレーザが故障した場合に、或る程度の冗長性を持たせることができる。
【0006】
ポンプエネルギーには1つの波長しか必要としないので、個々の光源を正確に整合させる必要があり、実際にはレーザダイオード群が選択される。しかしながら、レーザダイオード群は、断面が円形のビーム、すなわち中心軸の回り高い対称性を有するエネルギー分布を持つビームを供給することができない。その代わり、出力光のアスペクト比は、著しく異なる発散角を直交方向に持つ状態で高い非対称性を示すので、ビームの幅(“fast(高速)”軸に沿った)の数倍とすることができる長さ(“slow(低速)”軸に沿っていると考えられる)を有する出力ビームを生成する。この非対称性により、ビームを構成する出力ビーム群を出来る限り密に重ね合わせて、更に対称に近いアスペクト比を持つ合成ビームを形成することが望ましい。制限要素として、ポンプエネルギーを受光する入力光ファイバは非常に小さい開口数(N.A.)を有し、これにより、入力合成ビームの角度範囲が制限され、そして成分ビーム群の間のデッドスペースを出来る限り無くすことが望ましい。
【0007】
複数レーザ光源を組み合わせてポンプレーザとして使用するために実施されてきた、または提案されてきた種々の解決策の中でもとりわけ、垂直方向にずらして配置されるレーザダイオード群及び対応するミラー群を備えるモジュール式ポンプモジュールがある。
図1A及び1Bは、この種類の代表的なポンプモジュール10の上面図及び側面図をそれぞれ示している。この手法では、3つのレーザ12a,12b,及び12cの各レーザは、ビームを、対応するシリンドリカルレンズ14a,14b,及び14cを通過してミラー16a,16b,及び16cにそれぞれ到達するように誘導する。フィルタ30は、以下に更に詳細に説明するように、戻り光FBからの保護対策を実現する。次に、合成ビーム28をレンズ18で光ファイバ20に集光させてポンプエネルギーとして使用する。また、これらの図には示していないが、更に別のレンズを各レーザ12a,12b,及び12cの端部に設ける。
【0008】
図を分かり易くするために垂直方向距離を意図的に誇張して描いている
図1Bの側面図が示しているように、レーザ12a,12b,及び12c、及びこれらのレーザに対応するシリンドリカルレンズ14a,14b,及び14c、及びミラー16a,16b,及び16cは、垂直方向にずらして配置される。反射素子をこのように配置すると、ビームを構成する出力ビーム群の間にずれ許容余裕度が殆ど残らない。レーザ12aからの光は、例えばミラー16bの上部で取り出される。同様に、レーザ12bからの光は、例えばミラー16cの上部で取り出される。
図1Aの挿入
図Wは、合成ビーム28が、出力ビーム22aがレーザ12aから、出力ビーム22bがレーザ12bから、そして出力ビーム22cがレーザ12cから放出される状態で形成される過程を示している。或る程度のデッドスペース24が出力ビーム群の間に、これらのビームが折り返しミラー16b及び16cを通過するために必要な許容範囲を設けるために必要になる。
【0009】
図1A及び1Bを参照して説明した解決策は有効であることが立証されたが、改善の余地は残っている。製造許容誤差は非常に小さく、製造バラツキの余裕が殆ど無い。各部品を正確に位置合わせして、ミラー16a,16b,及び16cからの光を正しく方向変更する必要がある。各レーザ光は、異なるミラーで反射されるので、ミラー16a,16b,及び16cの間の発熱バラツキが、系の位置合わせ状態に動作中に悪影響する。極めて重要なことであるが、実用的な理由から、この種類の解決策によって、少ない数のレーザしか、3つ、またはそれよりも少ないレーザしか組み合わせることができない。複合出力ビームのアスペクト比は、合成系の設計により決定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
テーパ付きライトパイプを用いる、または様々な配置の合成ミラーを用いるようなビーム整形及びビーム合成に関する他の提案解決策は、必要なものが不足し、そして例えば組み合わせることができるレーザの数及び配置が制限されることにより、または結果として得られるビームのアスペクト比が固定されることにより他の制約をもたらす。レーザポンプ光の個別の光ビームを合成するこれらの従来の解決策は、ファイバレーザ自体により生成される戻り光によるダメージが生じる可能性があるという問題を解決することができない。レーザにおいて生成される高パワーのレーザ光は、ポンプレーザ波長とは異なり、通常、より長い波長である。ごく少量のこのファイバレーザ光がポンプレーザに戻る方向に進む場合でも、ポンプレーザに対するダメージが生じてしまう。この問題を解消するために、ポンプレーザダイオードモジュールの製造業者は通常、1つ以上のフィルタをポンプモジュールの出力に付加して、ファイバレーザからの如何なる戻り光も減衰させる。
図1Aは、この目的のために合成ビーム28の経路に沿って設けられるフィルタ30によって戻り光FBを減衰させ、そして阻止する様子を示している。しかしながら、この解決策によって、コスト及び部品がポンプ光モジュールの設計に付加される。
【0011】
一般的に、より効果的に、不所望な波長をフィルタで減衰させ、そして所望の波長をフィルタで透過させると、フィルタがより複雑になり、かつフィルタのコストが高く付く。非常に急峻な遷移領域を透過と反射との間に有するフィルタはまた、不所望な波長に亘って一層顕著な“ringing(リンギング)”またはリップルを示す。更に、例えばフィルタ表面の微小領域に集中するエネルギーレベルが高いことに起因するフィルタ性能の経時的な低下によって、この解決策が幾つかの用途において満足の行くものではなくなり、そして素子寿命が短くなる。
【0012】
従って、光源群を空間的に組み合わせる方法及び装置が必要であり、当該方法及び装置が、可変数のレーザダイオードまたは他のレーザ光源への使用に適合し、そして当該方法及び装置によって、ファイバレーザまたは他の励起レーザ光源からの戻り光を減少させる、または無くす際の問題を解決し易くなる必要があることが分かる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、レーザビーム合成の技術を発展させることにある。この目的を念頭に置いて、本開示は、第1波長λ1のポンプ光を、第2波長λ2で発光するレーザに供給する装置を提供するものであり、前記装置は:
光を第1軸に沿って第1方向に誘導するように励起できる、前記第1波長λ1の第1レーザと、
光を前記第1軸に平行な第2軸に沿って誘導するように励起できる、前記第1波長λ1の第2レーザであって、前記第1及び第2軸により第1平面が定義される、前記第2レーザと、
前記第1波長λ1の合成光ビームを形成するように配置されるフィルタ装置と、
を備え、
前記フィルタ装置は、前記誘導光の光路に配置される透明体の上に形成され、そして:
(i)前記フィルタ装置の第1表面に形成される第1フィルタであって、該第1フィルタが、前記第1及び第2軸に対して傾斜角で配置され、かつλ1を透過し、そしてλ2を反射する、前記第1フィルタと、
(ii)前記フィルタ装置の第2表面に形成される第2フィルタであって、前記第2表面が、前記第1表面に平行であり、前記第2フィルタがλ1を反射し、そしてλ2を透過する、前記第2フィルタと、
(iii)前記フィルタ装置の前記第1表面に形成され、かつ前記第1フィルタと同一平面に在る第3フィルタであって、該第3フィルタが、λ1を反射し、そしてλ2を透過する、前記第3フィルタと、
を有し、
前記フィルタ装置は、前記第1及び第2軸を、P1と直交し、かつ前記第1方向に平行である第2平面P2に沿うように再調整する。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、第1波長λ1のポンプ光を、第2波長λ2で発光するレーザに供給する装置を提供するものであり、該装置は:
光を第1軸に沿って第1方向に誘導するように励起できる、前記第1波長λ1の第1レーザと、
光を前記第1軸に平行な第2軸に沿って誘導するように励起できる、前記第1波長λ1の第2レーザであって、前記第1及び第2軸により第1平面P1が定義される、前記第2レーザと、
前記第1波長λ1の合成光ビームを形成するように配置されるフィルタ装置と、
を備え、
前記フィルタ装置は、前記誘導光の光路に配置される透明体の上に形成され、そして:
(i)前記フィルタ装置の第1表面に形成される第1短波長透過フィルタであって、該第1短波長透過フィルタが、前記第1及び第2軸に対して傾斜角で配置され、かつλ1を透過し、そしてλ2を反射する、前記第1短波長透過フィルタと、
(ii)前記フィルタ装置の第2表面に形成される第1長波長透過フィルタであって、前記第2表面が、前記第1表面に平行であり、前記第1長波長透過フィルタがλ1を反射し、そしてλ2を透過する、前記第1長波長透過フィルタと、
(iii)前記フィルタ装置の前記第1表面に形成される第2長波長透過フィルタであって、該第2長波長透過フィルタがλ1を反射し、そしてλ2を透過する、前記第2長波長透過フィルタと、
を有し、
前記フィルタ装置は、前記第1及び第2軸を、P1と直交し、かつ前記第1方向に平行である第2平面P2に沿うように再調整する。
【0015】
本発明の特徴は、短波長透過フィルタ素子及び長波長透過フィルタ素子を組み合わせて使用して、合成ポンプ光ビームを個々の成分ビーム群から形成することである。
【0016】
本発明の利点は、個々の成分ビーム群から形成される合成ビームのアスペクト比を調整することができ、そしてこれらの成分ビームの間のデッドスペースの距離を増減させることができる能力である。
【0017】
本発明の別の利点は、可変数のレーザ光源からの光を合成することができ、そしてこれらの光源に対する保護レベルを、極めて高価なフィルタを必要とすることなく向上させることができる本発明の能力である。
【0018】
開示される発明の他の所望の目的、特徴、及び利点は、この技術分野の当業者には想到することができる、または明らかになる。本発明は添付の請求項により規定される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書において示され、そして説明される図は、種々の実施形態による光学装置の動作及び製造の重要原理を例示するために提供され、そして多数のこれらの図は、実際のサイズまたは寸法を示すつもりで描かれていない。ある程度誇張して、基本的な構造関係または動作原理を強調する必要がある。例えば、幾つかの同一平面構造を互いから若干ずらして、これらの構造が重なり合う箇所が見えるようにしている。
【0021】
本開示に関連して、“top”及び“bottom”または“above”及び“below”という用語は、相対関係を表わす用語であり、構成要素または表面の何れかの必要な向きを決して示唆している訳ではなく、構成要素内の、または材料ブロック内の反対側の表面または異なる光路を指すためにのみ、そして区別するためにのみ使用されるに過ぎない。同様に、“horizontal”及び“vertical” という用語は、種々の形状物に対する相対的な状態を指すために使用することにより、異なる平面で位置合わせされる構成要素群または光ビーム群の相対的な直交関係を表わすことができ、例えば、真の水平方向及び垂直方向の向きについて必要とされる構成要素の何れかの向きを決して示唆している訳ではない。
【0022】
これらの用語が用いられる場合、“first”,“second”などの用語は、必ずしも何れかの普通の意味における関係、または優先順位関係を指しているのではなく、1つの要素または時間区間を別の要素または時間区間から、より明確に区別するために使用される。固定された“first”要素または“second”要素は、本明細書において教示されるものには含まれず;これらの表現は、本開示の関係では、1つの要素を別の類似の要素から明確に区別するために使用されるに過ぎない。同様に、フィルタ指示記号F1,F2,F3,及びF4は、異なるフィルタをこれらの図中に、そして以下の説明中に特定するために割り当てられ、そしてフィルタ機能を特定し易くしている;普通の意味における関係、または優先順位関係は、或いは光路における必要な順序は、この部品番号付けに暗示されていない。
【0023】
本発明に関連して、特定の波長を“reflect(反射する)”または特定の波長に対して反射性を有すると考えられる表面は、当該波長の入射光の少なくとも約95%を反射する。特定の波長を“transmit(透過する)”または特定の波長に対して透過性を有すると考えられる表面は、当該波長の入射光の少なくとも約80%を透過する。光フィルタに関連して、“short wave pass”,“short wavelength pass”及び“SWP”という用語は同じ意味を持つと考えられ;同様に、“long wave pass”,“long wavelength pass”及び“LWP”という用語は同じ意味を持つと考えられる。
【0024】
本発明に関連して、 “oblique angle(傾斜角)”というフレーズを用いて、法線方向以外の角度を指す、すなわち傾斜していて法線とは異なる状態、すなわち90度から、または90度の整数倍から、少なくとも1つの軸に沿って少なくとも約2度以上異なる状態を指す。傾斜角は、この一般的定義を用いて90度未満とすることができる。
【0025】
本発明の実施形態は、ファイバレーザまたは他の種類のレーザのレーザポンプ光を、複数のレーザ光源から放出される光に基づいて形成される合成ビームとして供給する装置及び方法を提供する。本発明の実施形態は更に、ポンプレーザ光源を、ファイバレーザまたは他の種類の励起レーザからの漏洩光からフィルタで保護することができる。
【0026】
図1Aに戻ってこの図を参照するに、フィルタ30の機能は、ポンプ光源であるレーザ12a,12b,及び12cからの光を透過させ、そして高出力ポンプレーザからの戻り光FBを阻止することである。理想的には、ポンプ光の全てを透過させ、そして戻り光FBの全てを阻止する。光学技術分野の当業者の良く知るところであるが、1つの波長領域でほぼ100%の透過率を有し、そして異なる波長領域でほぼ100%の減衰率を実現する高性能フィルタは非常に高価であり、そして大きなリップルを、尖鋭な端面から取り出される光の波長領域において発生させる場合が多いスペクトル特性を有する。
【0027】
一例として、
図2Aは、短波長透過フィルタのスペクトル特性曲線80を示し、百分率表示の反射率を波長に対してプロットしている。曲線80は、990nm近傍の低反射率と1010nm近傍を過ぎる位置での高反射率との間の急峻な遷移領域を示している。この種類のフィルタを用いて、例えば990nmのポンプ光を必要とし、かつ1030nm以上の波長の高出力レーザ光を放出するレーザからの戻り光FBを減衰させることができる。しかしながら、実際には、1030nmレーザのレーザポンプ光は、発光波長から50nm以上離れた通常用途における976nmのような異なる波長の光となってしまう。
図2Aを再度参照するに、スペクトル特性曲線80は、976nm近傍の光に対して殆ど20%に近い反射率を示している。従って、このようなフィルタによる戻り光FBの除去率が高いにも拘らず、スペクトル特性曲線80における極めて大きなリップルはまた、レーザ励起に必要なポンプ光(976nm)を減衰させてしまうという思いもよらない影響をもたらす。
【0028】
リップルの影響を低く抑えながらコストを抑え、かつ高性能を実現する1つの方法では、一連の低コストフィルタを“stacked(積層)”手法で使用し、この積層手法では、2つ以上のフィルタを、光路に沿って順番に配置する。減衰させる場合、積層フィルタの正味の効果は増倍し;この場合、第1及び第2フィルタはそれぞれ0.01の透過率を有し、これらのフィルタを積層して組み合わせると、0.0001の合計透過率が得られる。更に、低性能フィルタは普通、
図2Aの例において図示されるよりも目立たない大きさのリップルを持つ。この積層フィルタ手法により、低性能フィルタの利点を生かし易くなる;しかしながら、この積層フィルタ手法は、構成部品群が設計に付加されるだけでなく、光学アセンブリに対応して容積を付加するか、または“footprint(設置面積)”を加える必要があるので、レーザポンプモジュール設計には実用的ではなくなってしまう。
【0029】
本発明の実施形態は、レーザポンプ光を、戻り光を低減または無くしながら、光ファイバにより得られる適切なフィルファクタを実現するように効率的に合成する際の問題を解決する。これらの機能は、小型パッケージに収納される透過フィルタ及び反射フィルタからなる機構を利用して行なわれる。有利な点として、本発明の実施形態において提供される本発明による解決策によって、急峻な遷移領域を必要としないフィルタ群を、不所望な波長を大幅に減衰させながら使用することができる。更に、本発明の実施形態により、多数のポンプレーザからの光を光ファイバの開口部に誘導する、または開口数が小さい他の或る系の入力に誘導する或る程度の調整が可能になる。
【0030】
図2Bの簡易模式図は、フィルタ装置40を用いる合成装置60の構成要素群を示し、そしてレーザ光の関連する光路を示しており、この場合、フィルタ群で不所望な波長を減衰させ、そして光を再調整して合成光ビーム50を形成する。フィルタ表面の間の距離を誇張して描いて、光路を方向変更する原理を示している。動作原理を示すために、2個のレーザ12a及び12bのみが図示され、各レーザを励起して光を誘導することにより、光がシリンドリカルレンズ14a及び14bを通って、対応する軸A及びBにそれぞれ沿って伝搬するようにする。レーザ12a及び12bは波長λ1の光を放出し、この光を利用してレーザポンプ光を、光ファイバ20を経由して供給する。フィルタF1、F2、F3、及びF4を形成し、そして配置することにより、波長光λ1を、
図2Bに示す光路に収まるように選択的に保持し、そして波長光λ2を当該光路から外す。フィルタF1〜F4は、ガラスプレートまたはガラスブロックのような透明屈折体68の表面に形成されて、光路の屈折を生じさせることにより、軸Aが屈折して屈折体68内の方向変更軸A1となり、そして軸Bが屈折して屈折体68内の方向変更軸B1となる。任意の第1フィルタF1は、第1軸A及び第2軸Bに対して傾斜角で配置される短波長透過フィルタであり、そしてより短い波長λ1を透過し、そしてより長い波長λ2を反射する。第2フィルタF2は、第1フィルタF1から離間配置され、かつ第1フィルタF1に平行である。フィルタF2は、より短い波長λ1を反射し、そしてより長い波長λ2を透過する長波長透過フィルタである。第3長波長透過フィルタF3は、任意の短波長透過フィルタF1と同一平面に在り、かつλ1を反射し、そしてλ2を透過する。第4短波長透過フィルタF4は、より短い波長λ1を透過し、そしてより長い波長λ2を反射する。これらの構成部品を適正に離間させた状態で、フィルタ装置40は、最初に第1平面に沿うように調整される方向変更軸A1及びB1を、軸A及びBからなる第1平面と直交し、かつ軸A及びBに平行に延在する第2平面に沿うように再調整する。同一平面(coplanar)とは;平行な第1及び第2薄膜フィルタが、第1フィルタの任意の層が、第2フィルタの任意の層を含む同じ平面に沿って延在する場合に同一平面であると考えることができるという従来通りの意味を持っている。
【0031】
本明細書において提示される説明及び例では、ポンプレーザ12a,12bの波長λ1は、励起レーザ波長λ2よりも短いと仮定する。これは通常、ポンプレーザの場合に当てはまる;しかしながら、本発明のフィルタ装置40は、λ1がλ2よりも大きく、フィルタF1〜F4のスペクトル特性がそれに応じて変化する別の状況に対応して設計することができることを容易に理解できる。何れの状況においても、フィルタF1、F2、F3、及びF4を形成し、そして配置することにより、波長光λ1を
図2Bに示す光路に収まるように選択的に保持し、そして波長光λ2を当該光路から外すことができる。
【0032】
図2Bの2レーザモデルを拡張して、3個以上の励起レーザを組み合わせることができ、この場合、フィルタリングを行なって、これらのポンプレーザを戻り光エネルギーから保護する。
図2Cのそれぞれの斜視ブロック図、及び
図2Dの対応する上面図、及び
図2Eの後面図を参照するに、本発明の1つの実施形態によるフィルタ装置40を用いるレーザポンプモジュールの合成装置60が図示されている。ポンプレーザアレイ70のポンプレーザ12a,12b,及び12cの各ポンプレーザは、光をフィルタ装置40の入射面36に向けて放出する。ポンプレーザ12aは、発光軸Aに沿って発光し;ポンプレーザ12bは、発光軸Bに沿って発光し;そしてポンプレーザ12cは、発光軸Cに沿って発光する。ポンプレーザ12a,12b,及び12cは、第1波長λ1の光を放出し;この光を励起レーザ32のポンプ光として利用し、この励起レーザ32が、
図2Dに示す第2波長λ2の光を放出する。励起レーザ光は通常、供給されるポンプ光よりも波長が長い。励起レーザ32は、本発明の1つの実施形態によるファイバレーザである。各レーザ12a,12b,及び12cからの光は誘導されて、当該レーザに対応するシリンドリカルレンズ14a,14b,及び14cをそれぞれ通過する。フィルタ装置40は、ガラスプレートのような透明体または透明プレート42に形成される。第1波長λ1の光は、任意の短波長透過フィルタF1を透過し、そして透明プレート42の屈折材料に入射する。フィルタ装置40内の長波長透過フィルタF2とF3との間で続いて反射されると、そして短波長透過フィルタF4で順次フィルタリングされると、最初に平行に透過し、そして第1平面にあるように、または第1方向に向くように互いに調整されたレーザビーム群は、第1平面と略直交する、すなわち直角から約+/−2度の範囲に収まる角度で交わる第2平面に沿うように、または第2方向に向くように互いに再調整される。励起レーザ32からの第2波長λ2の迷光となる戻り光FBは必ず、フィルタ装置40内の光路から、短波長透過フィルタF4で反射され、長波長透過フィルタF2及びF3を透過し、そして任意の短波長透過フィルタF1で反射されることにより除去される。戻り光FBをこのように除去することにより、フィルタ装置40の表面を利用して多数の積層フィルタで保護するときの影響をエミュレートすることができる。
【0033】
図2Dの上面図では、放出されるレーザビーム群の軸は、軸A,B,及びCを含む第1平面P1を定義する第1方向に沿うように調整される(第1平面は、
図2Cの図では、略水平面であり、そして
図2Dのページの平面に在る)。発光軸A,B,及びCは、平面P1において互いから等距離に位置し、かつ
図2Dに示す軸間距離26だけ離間している。フィルタ装置40の出力では、合成ビーム群は第2直交方向に並ぶように再調整される、すなわちこれらの軸が直交平面P2(
図2Dに示すように、ページから垂直な方向に飛び出し、かつ
図2Eに表現されている)に沿って並ぶように調整され、そして平面P2にあるフィルタリングされた合成光のこれらの軸の間の距離は、平面P1にある入射光の軸間距離26よりも短い。これらの合成ビームは、合成光ビーム50を合成軸C2に沿って形成する。これらの成分ビームは、
図1Aの例における差し込み
図Wに図示されているように、この方向に離間して位置している。
図2D、及び以下に続く上面から見た同様の図を参照するに、フィルタF1及びF3は、より見え易くするために互いからずらして図示されている。本発明の実施形態では、フィルタF1及びF3は、同一平面に在る。
【0034】
従って、
図2Bを参照して説明される基本パターンに続いて、
図2C、及び更には
図2D及び2Eの上面図及び後面図は、合成装置60内の光ビーム群がフィルタ装置40内で連続的にシフトし、そして1つのフィルタから次のフィルタに誘導される過程を示している。軸Aに沿った光は、屈折し、そしてプレート42内または他の屈折体内を、方向変更軸A1に沿って、後面54に形成される長波長透過後面フィルタF2に向かって伝搬する。レーザ12aから放出されて軸A1に沿って進む第1波長λ1の光は、長波長透過フィルタF2で反射されて、長波長透過前面フィルタF3に向かって伝搬する。次に、光軸A1は、レーザ12bから軸Bに沿って放出されるこの場合も同じ第1波長λ1の光の入射点の直ぐ下の前面フィルタF3に入射する。後面フィルタF2及び前面フィルタF3は共に、光源12a〜12cからの波長λ1の光を反射してフィルタ装置40内に戻し、そして励起レーザ32からの発光レーザ波長λ2の光を透過してフィルタ装置40から外側に出射するように処理される、またはその他には、形成される。
図2Cに示すように、軸Bに沿った光は、プレート42に、長波長透過前面フィルタF3の縁部の直ぐ上の位置、または縁部を超えた直ぐ傍の位置で入射する。次に、プレート42で屈折すると、入射光は軸Bから、方向変更軸A1に並ぶように調整される方向変更軸B1に方向変更し、軸A1及びB1の調整方向は、軸A、B、及びCの初期調整方向(平面P1)と直交する。
【0035】
図2C、2D、及び2Eに示す光路についての説明を続けると、第1波長λ1の光の光軸A1及びB1は、長波長透過後面フィルタF2で反射されて前面フィルタF3に向かって戻される。この時点で、光軸A1及びB1は、長波長透過前面フィルタF3により、軸Cに沿ったレーザ12cからの光の入射点の直ぐ下で反射される。この場合も同じく、
図2Cに示すように、軸Cに沿った光はプレート42に、前面フィルタF3の縁部の直ぐ上の位置、または縁部を超えた直ぐ傍の位置で入射する。次に、プレート42で屈折すると、入射光は軸Cから、方向変更軸A1及びB1と方向が一致する方向変更軸C1に方向変更し、軸A1、B1、及びC1の調整方向は、軸A、B、及びCの初期調整方向(平面P1)と直交する。
図2C、2D、及び2Eの3つのレーザ形態では、方向変更軸A1、B1、及びC1に沿った波長λ1の光は同じようにして、長波長透過後面フィルタF2により反射されて前面フィルタF3に向かい、そしてプレート42から、短波長透過フィルタF4を通って出射されることにより、合成光ビーム50を形成する。任意のレンズ48は、
図1Aに示したように、合成光ビーム50を、光ファイバまたは他の素子に向かって、励起レーザ32に向かう方向に集光させる。
【0036】
図2C〜2Eに示す実施形態における各光路を辿ると、各光路が全ての4つのフィルタF1〜F4に至る様子が分かる。レーザ光源12a〜12cの各レーザ光源からの入射光は、短波長透過フィルタF1及びF4の各短波長透過フィルタに1回だけ入射する。レーザ12cから延びる光路C〜C1もまた、長波長透過後面フィルタF2に1回だけ入射し、そして長波長透過前面フィルタF3に1回だけ入射する。レーザ12bから延びる光路B〜B1は、長波長透過後面フィルタF2に2回入射し、そして長波長透過前面フィルタF3に2回入射する。レーザ12aから延びる光路A〜A1は、長波長透過後面フィルタF2に3回入射し、そして長波長透過前面フィルタF3に3回入射する。この配置によって、励起レーザからの戻り光FBを大幅に低減することができ、そして戻り光FBがポンプレーザに達するのを殆ど無くすことができることが分かる。従って、
図2Bに示す4個のフィルタF1〜F4を配置することにより、任意の数のレーザに対応する積層フィルタの性能を効果的に向上させることができる。前に説明したように、短波長透過フィルタF1を設けるかどうかは任意である。別の実施形態では、
図2B〜2EのフィルタF1またはフィルタF4の何れかについて図示される位置に設けることができる短波長透過フィルタを1つだけ設ける。短波長透過フィルタF1を用いない場合、反射防止(AR)コーティングが普通、対応する表面に設けられる。
【0037】
図2Aから、非常に急峻な遷移領域を短い波長領域に亘って有するフィルタを用いる場合に生じ得る問題が判明した。
図2B〜2Eの実施形態を用いる場合、フィルタ装置40により得られる積層フィルタの効果により、不所望な戻り光FBを、長波長透過フィルタF3及びF2が標準並みの品質でしかない場合でも減衰させることができるという方法を考えると有益である。
【0038】
図3Aを参照するに、短波長透過(SWP)フィルタF1及びF4のスペクトル特性曲線82が、本発明の1つの実施形態による透過率について図示されている。曲線82が示しているように、不所望な1030nm波長の戻り光FBが、或る程度透過している。しかしながら、これらの短波長透過フィルタのうちの2つの短波長透過フィルタが光路に位置している実施形態では、各フィルタに3%の透過率(0.03)が許容される場合でも、2つの短波長透過フィルタF1及びF4を透過することになる1030nm波長の光が占める割合は:
(0.03)
2=0.0009または0.09%となる。
【0039】
図3Bを参照するに、長波長透過(LWP)フィルタF2及びF3のスペクトル特性曲線84がこの場合も同じように、本発明の1つの実施形態による透過率について図示されている。曲線84が示しているように、不所望な1030nm波長の戻り光FBの反射率が、依然として或る程度残っている。しかしながら、積層フィルタの効果も作用してこの場合は有利に働いている。前面及び後面の長波長透過フィルタF3及びF2がFB光をこの光の96%を透過させることにより減衰させ、そして短波長透過フィルタF1及びF4がFB光を当該光の97%を反射することにより減衰させる
図2Cの例示的な系について考察すると、ポンプレーザ12cが受光してしまうFB光の割合は積:
(0.04)
2(0.03)
2=0.0000014または0.00014%
で表わされる。
【0040】
ポンプレーザ12bが受光してしまうFB光の割合は次式の通りである:
(0.04)
4(0.03)
2=2.304E−7=0.0000002394または0.00002394%
ポンプレーザ12aが受光してしまうFB光の割合は次式の通りである:
(0.04)
6(0.03)
2=3.6864E−12=0.0000000000036864または0.00000000036864%
このように、フィルタ装置40は、励起レーザからの迷光となる戻り光を減衰させて、如何なる戻り光FBも、無視できる程度に大幅に低減させることにより、ポンプレーザ12a〜12cへのダメージに対する保護を容易にするという大きな利点をもたらす。戻り光FBに対する高い減衰率は、フィルタ群をこの配置で積層することにより得られるので、個々の性能が標準並みのフィルタ群を用いる場合でも、これらのフィルタを組み合わせると結果的に、単一のフィルタを用いて可能となるスペクトル特性を上回ることができるスペクトル特性が得られる。
【0041】
図2Dは更に、励起レーザ32からの迷光となる戻り光FBを吸収する或る種類の光ダンプとして設けられる任意の吸光体56の配置を示している。1つの吸光体56は、長波長透過後面フィルタF2を透過した光を吸収する後面54の近傍に配置される。別の吸光体56は、入射面36の近傍に配置されて、長波長透過前面フィルタF3の一部の上縁部に位置合わせされる様子が図示されている。吸光体56は、長波長透過フィルタF3またはF2のいずれかの後面に形成することができるか、またはフィルタ装置40の表面と並んで、かつフィルタ装置40の表面から離間して個別に形成し、そして配置することができる。
【0042】
図2Dを参照し続けると、前面フィルタF3及び後面フィルタF4を不本意に透過してくる励起レーザ32からの戻り光FBを吸収するために設けられる吸光体56は、ポンプ光の出射点Qにより近接する位置で、戻り光FBからのエネルギーのより大きな部分を受光することになる。長波長透過フィルタF3及びF2による減衰を繰り返した後、戻り光FBの無視できる構成成分のみが、例えば出射点Qから遠く離れた表面36または54を透過する可能性がある。従って、吸光体56は、フィルタF3及びF2の全長に亘って延在させなくてもよい、または例えば出射点Qからの当該吸光体の距離によって異なるが、可変の厚さとすることができる。
【0043】
図2C〜2Eが示しているように、光はフィルタ装置40に向かって傾斜入射角で誘導される。少なくとも軸A及びBで定義される平面内で、
図2Dの平面P1内で斜めに入射すると、各軸に沿った光が屈折して方向変更するので、第1軸から出射されて長波長透過前面フィルタF3及びF2により反射される光は、隣接する軸に沿った入射光と方向が一致する。
図2Dの軸Cに沿ってαで指示される角度は、表面36の法線を基準にして図示され、そして入射面36と平面P1内に在る入射軸A,B,及びCのうちの何れかの軸とがなす角度である。本開示に関連して、この入射角αは、面内角であると考えられる。
【0044】
平面P1に在る入射光に対して入射面が傾斜している他に、フィルタ装置40は更に、平面P1に平行である軸に対する傾斜指標を有する。有利な点として、この傾斜は調整可能であり、そしてフィルタ装置40に、当該フィルタ装置が合成光ビーム50のアスペクト比を制御することができる能力を付与する。これにより、
図1Aにデッドスペース24として図示される成分光ビーム群の間の距離を調整することができる。
図4の斜視図は、傾斜を調整するための傾斜調整軸52を示している。傾斜調整軸52は、光軸A、B、及びCを含む平面(
図2D及び2Eの平面P1)に平行である。傾斜調整軸52の回りの回転が生じると、入射面36と軸A、B、及びCに沿った光とがなす入射角が変化し、そして波長λ1の光が長波長透過前面フィルタF3及び長波長透過後面フィル板フィルタF2で反射される角度に、それに応じた変化を起こすことができる。1つの実施形態では、取り付け金具をフィルタ装置40に取り付けることにより、傾斜調整軸52の回りの回転調整が、例えば合成装置60の初期調整及び設定中に可能になる。吸光体群56のうちの1つ以上の吸光体も傾斜調整軸52の回りを、フィルタ装置40を回転させると回転することができる。
【0045】
図5の断面図は、傾斜調整軸52の回りの傾斜が成分ビーム50に与える影響を示している。傾斜角θ1が法線(
図5の表示における垂直方向)を基準としている
図5の上側の方の第1傾斜角θ1では、出力ビーム22a,22b、及び22cは、図示のように、デッドスペース24の距離だけ離間している。
図5の下側部分に図示される、より小さい傾斜角θ2で傾斜すると、出力ビーム22a,22b、及び22cの間のデッドスペース24の距離がそれに応じて小さくなる。これにより、ビーム50のアスペクト比が変化し、このアスペクト比は、例えばフィルタ装置40によって形成される合成光ビームのyに対するxの比、または幅に対する高さの比として表現することができる。図を参照すると、傾斜角θ1及びθ2は、
図2Dの平面P1と直交する方向を基準とし、この場合、直交する方向は、
図5の破線L1として図示される。平面P1は、ページに垂直であり、かつ
図5の断面図におけるA,B,C軸に沿っている。
【0046】
図5に示すように、アスペクト比を1回の傾斜調整で変えることができる能力は、光ファイバ20または他の光学素子に入力する合成光ビーム50を整形するために有利である。一例として、
図6A及び6Bは、3個のレーザを使用し、かつ2つの異なる傾斜角になっているフィルタ装置40を用いる装置からのエネルギー強度の測定空間形状を示している。
図6Bが示しているように、より小さい傾斜角θを使用すると、ビームを構成する出力ビーム群の間のデッドスペースが圧縮される、または無くなる。比較するために、
図6A及び6Bの各図の円は、光ファイバの概略開口数(N.A.)を示している。
【0047】
F1〜F4を備えるフィルタ装置40を用いる場合の更なる利点は、
図1A及び1Bを参照して既に説明した限界のような現在の限界が従来の装置について見られるように、3個よりも多くのレーザを使用することができる能力に関連している。
図7の斜視図、及び
図8の側面図を参照するに、合成装置60は、4個のレーザ12a,12b,12c,及び12dをポンプレーザアレイ70として有する。各レーザ12a,12b,12c,及び12dは、対応するシリンドリカルレンズ14a,14b,14c,及び14dを有する。この別の角度から見て表示されているように、光軸A,B,C、及びDは、フィルタ装置40の入射面で垂直方向に並んでおり、そして水平方向に再調整されて合成光ビーム50となる。図を分かり易くするために
図7の図には図示していない任意の吸光体56を更に、この実施形態において設けることができる。
【0048】
更に別のレーザを、4個を超えるように、フィルタF1〜F4を備えるフィルタ装置40を用いて追加することができ、この場合、長波長透過前面フィルタF3及び長波長透過後面フィルタF2の寸法は適切に設定される。
図9及び10は、5個のレーザ12a,12b,12c,12d,及び12eをポンプレーザアレイ70として有する合成装置60の斜視図及び側面図をそれぞれ示している。各レーザ12a,12b,12c,12d,及び12eは、対応するシリンドリカルレンズ14a,14b,14c,14d,及び14eを有し、そして光を、これらのシリンドリカルレンズの対応する軸A,B,C,D,またはEに沿って誘導する。
図9及び10の実施形態では、レーザ12eは長波長透過フィルタF3及びF2によって保護されない。これは可能な実施形態であるが、短波長透過フィルタF4及び任意の短波長透過フィルタF1が、レーザ波長λ2の戻り光に対する高い除去率を有することを必要とする。
【0049】
図11の斜視図は、出力合成光ビーム50が長波長透過後面フィルタF2によって反射され、かつ短波長透過フィルタF4が短波長透過フィルタF1及び長波長透過フィルタF3と同一平面に在る構成の別の実施形態を示している。この実施形態では、後面54を長波長透過フィルタF2で部分的に、または全面的に被覆することができる。短波長透過フィルタF1及びF4を任意であるが組み合わせて、十分な長さの単一のフィルタを形成することにより、入射光及び出射光をフィルタリングすることができる。この実施形態は、
図2C〜2Eの実施形態について説明したのと同じようにして、積層フィルタをエミュレートすることができ、そしてパッケージ封止し、そして光路を折り返すという利点を有することができる。しかしながら、この実施形態では、合成光ビーム50のアスペクト比を調整することができず、アスペクト比を調整すると、出射合成光軸C2の角度も変わってしまう(垂直平面P2に対して)。
【0050】
本発明の合成装置60は、多数のレーザ光源を組み合わせて単一の合成光ビームを形成する従来の解決策よりも優れた多数の特徴及び利点を提供する。これらの利点として:
(i)レーザ光を同じ平面に沿って配置し、そしてレーザ光を平行に誘導することにより、レーザアレイの使用が可能となり、そして
図1Bを参照して説明した配置のような以前のレーザダイオード配置に関して段階的に高くするという要求よりもレーザ光調整を簡易化することができること。
【0051】
(ii)フィルタコーティングを施したガラスプレートのような低コストの透明プレートを使用する。薄膜コーティングを使用することにより、非常に鋭利な端面を入射光ビームに対して持つことができるので、散乱及び他の影響を低減することができること。
【0052】
(iii)
図4〜6Bを参照して前に説明したように、アスペクト比が調整可能であること。
【0053】
(iv)
図7及び8を参照して説明したように、4個以上のレーザを用いる実施形態を含む2個以上のレーザからレーザの数を変更することができるので拡張可能性があること。
【0054】
(v)熱安定性が、全てのポンプレーザから光が同じフィルタ素子を透過するように誘導されるので向上すること。
【0055】
(vi)干渉波長光から保護する、特に励起レーザから放出される漏れ光から保護する内蔵型保護機能があること。
【0056】
(vii)製造及び調整が簡易化されること。
【0057】
(viii)素子寿命が向上すること。これは、ポンプレーザ自体の寿命とともにフィルタ表面F1,F2,F3,及びF4の寿命が、従来の単一フィルタを配置する場合、または積層フィルタを配置する場合よりも長くなることを意味すること。例えば、薄膜フィルタは、他のフィルタ種類よりも優れていることにより、高い損傷閾値をレーザ光に対して有していること。
【0058】
製造
フィルタ装置40の透明プレート42は通常、所望のレーザ波長に適合するように選択されるガラスプレートである。他の透明材料を用いることができ、これらの透明材料として、例えば結晶材料及びプラスチックを挙げることができる。
図2C及び2Dを参照して前に説明したように、従来の取り付け方法を用いてフィルタ装置40を、放出レーザビームに対して適切な面内傾斜角αとなるように位置決めすることができる。面内角αは、選択されるガラスの屈折率n、または透明プレート42または他の透明体に使用される他の透明材料ブロックの屈折率nにより決定される。
【0059】
長波長透過前面フィルタF3及び長波長透過後面フィルタF2を形成することにより、またはその他には、処理することにより、より短い第1波長λ1の光を、この場合はポンプ光波長の光を反射し、そしてより長い第2波長λ2の光を、この場合は励起レーザ波長の光を透過する。フィルタF3及びF2は、1つの実施形態では、ダイクロイックコーティングで形成することができ、高いフィルタ選択性、反射性、及び透過性を有する非常に薄い表面を実現するので有利である。所定のスペクトル特性を実現する薄層ダイクロイックコーティングの設計は、薄膜設計技術の当業者には公知であり、そして当該設計では通常、近似設計から開始して、一連の最適化を、所望のスペクトル特性が得られるまで繰り返し行なう。
【0060】
調整可能機構を設けて、
図5の傾斜角θ1及びθ2として説明された傾斜角の調整を可能にする。この調整は手動で行なうか、またはモータまたは他の自動装置を用いて行なうことができる。ロックダウン装置を設けて傾斜調整を固定することができる。
【0061】
合成装置60のフィルタ装置40は、2本以上のレーザビームを合成して、上に説明した単一の出射軸に沿って導き、そしてレーザダイオード群からのポンプレーザ光を合成するために特に適合しており、この場合、放出光ビームは1つの軸に沿って細長いので、これらのビームを一括積層してアスペクト比が可変の合成光ビームを形成することができる。上に提示される本発明の実施形態は、同時に生成されるビーム群を合成するフィルタ装置40の使用について記述している。光学技術の当業者であれば容易に理解できることであるが、フィルタ装置40の合成作用を交互に利用して光を、発光軸を同じ平面に沿って有する複数のレーザを有するレーザ集合のうちの任意の適正な非空の部分集合から導くことができる。従って、例えば単一のポンプレーザを用いて、1つのパワーレベルの光を透過させ、そして2つのレーザを用いて、より大きなパワーレベルのポンプ光を透過させることができる。別の構成として、異なる波長のレーザを選択して軸C2に沿って透過させることができる。
【0062】
本発明について、本発明の特定の好適な実施形態を具体的に参照して詳細に説明してきたが、変更及び変形は、上に説明され、かつ添付の請求項に記載される本発明の範囲内で、この技術分野の当業者によって本発明の範囲から逸脱しない限り加えることができることを理解できるであろう。本発明は、これらの請求項により規定される。
【0063】
従って、提供されるのは、レーザポンプ光源への使用、及び固体レーザ光源を用いる他の合成用途への使用に極めて良好に適合する、レーザ光を合成する装置及び方法である。