(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
【0015】
「実施形態1」
図1は本発明に係る撮像面位相差方式の撮像装置としてのカメラの構成図で、撮像素子107を有したカメラ本体と撮影レンズが一体となった撮像装置としてのカメラを示している。同図において、101は撮影光学系(結像光学系)の先端に配置された第1レンズ群で、光軸方向に進退可能に保持される。102は絞り兼用シャッタで、その開口径を調節することで撮影時の光量調節を行うほか、静止画撮影時には露光秒時調節用シャッタとしての機能も備える。
【0016】
103は第2レンズ群である。そして、絞り兼用シャッタ102及び第2レンズ群103は一体となって光軸方向に進退し、第1レンズ群101の進退動作との連動により、変倍作用(ズーム機能)をなす。
【0017】
105は第3レンズ群であり、第3レンズ群が光軸方向に進退することで、焦点調節(フォーカス機能)を行う。106は光学的ローパスフィルタで、撮影画像の偽色やモアレを軽減するための光学素子である。107はC−MOSセンサとその周辺回路で構成された撮像素子である。撮像素子は、横方向m画素、縦方向n画素の受光ピクセル上に、ベイヤー配列の原色カラーモザイクフィルタがオンチップで形成された2次元単板カラーセンサが用いられる。
【0018】
撮像素子107は、撮影光学系の異なる射出瞳を通過した複数の光束を複数の焦点検出用画素S
HA、S
HBにて検出して得られた位相差検出用の第1の信号を出力する第1の光電変換セルと前記撮影レンズを通過した被写体像を撮像用画素にて検出して得られた画像生成用の第2の信号を出力する第2の光電変換セルとを有する。
【0019】
111はズームアクチュエータで、不図示のカム筒を回動することで、第1レンズ群101ないし第3レンズ群103を光軸方向に進退駆動し、変倍操作を行なう。112は絞りシャッタアクチュエータで、絞り兼用シャッタ102の開口径を制御して撮影光量を調節すると共に、静止画撮影時の露光時間制御を行なう。114はフォーカスアクチュエータで、第3レンズ群105を光軸方向に進退駆動して焦点調節を行なう。
【0020】
115は撮影時の被写体照明用電子フラッシュで、キセノン管を用いた閃光照明装置が好適だが、連続発光するLEDを備えた照明装置を用いても良い。116はAF補助光手段で、所定の開口パターンを有したマスクの像を、投光レンズを介して被写界に投影し、暗い被写体あるいは低コントラスト被写体に対する焦点検出能力を向上させる。
【0021】
121はCPU(カメラ制御部)で、カメラ本体の種々の制御を司るカメラ内CPUで、演算部、ROM、RAM、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、通信インターフェイス回路等を有し、ROMに記憶された所定のプログラムに基づいて、カメラが有する各種回路を駆動し、AF、撮影、画像処理と記録等の一連の動作を実行する。
【0022】
122は電子フラッシュ制御回路で、撮影動作に同期して照明手段115を点灯制御する。123は補助光駆動回路で、焦点検出動作に同期してAF補助光手段116を点灯制御する。124は撮像素子駆動回路で、撮像素子107の撮像動作を制御するとともに、取得した画像信号をA/D変換してCPU121に送信する。125は画像処理回路で、撮像素子107が取得した画像のγ変換、カラー補間、JPEG圧縮等の処理を行なう。
【0023】
126はフォーカス駆動回路で、焦点検出結果に基づいてフォーカスアクチュエータ114を駆動制御し、第3レンズ群105を光軸方向に進退駆動して焦点調節を行なう。128はシャッタ駆動回路で、絞りシャッタアクチュエータ112を駆動制御して絞り兼用シャッタ102の開口を制御する。129はズーム駆動回路で、撮影者のズーム操作に応じてズームアクチュエータ111を駆動する。
【0024】
131はLCD等の表示器で、カメラの撮影モードに関する情報、撮影前のプレビュー画像と撮影後の確認用画像、焦点検出時の合焦状態表示画像等を表示する。132は操作スイッチ群で、電源スイッチ、レリーズ(撮影トリガ)スイッチ、ズーム操作スイッチ、撮影モード選択スイッチ等で構成される。133は着脱可能なフラッシュメモリで、撮影済み画像を記録する。
【0025】
図2は、撮像素子のブロック図を示している。なお、
図2のブロック図は、読み出し動作が説明できる最低限の構成を示しており、画素リセット信号などが省略されている。
図2において、201は、光電変換部(以下、PD
mnと略す。mは、X方向アドレスであり、m=0、1・・・m−1、nは、Y方向アドレスであり、n=0、1・・・n−1である。)であり、フォトダイオード、画素アンプ、リセット用のスイッチなどで構成されている。また、本発明の撮像素子は、m×nの光電変換部が2次元上に配置されている。符号は、煩雑になるので、左上の光電変換部PD
00付近のみに付記した。
【0026】
202は、光電変換部のPD
mnの出力を選択するスイッチであり、垂直操作回路208により、一行ごとに選択される。
【0027】
203は、201の光電変換部PD
mn出力を一時的に記憶するためのラインメモリであり、垂直走査回路により選択された、一行分の光電変換部の出力を記憶するものである。通常は、コンデンサが使用される。
【0028】
204は、水平出力線に接続されて、水平出力線を所定の電位VHRSTにリセットするためのスイッチであり、信号HRSTにより制御される。
【0029】
205は、前述の203のラインメモリに記憶された光電変換部PD
mnの出力を水平出力線に順次出力するためのスイッチであり、H
0からH
m−1のスイッチを後述の206の水平走査回路により、順次走査することにより、一行分の光電変換の出力が読み出される。
【0030】
206は、水平走査回路であり、ラインメモリに記憶された光電変換部の出力を順次操作して、水平出力線に出力させる。信号PHSTは、水平走査回路のデータ入力、PH1、PH2は、シフトクロック入力であり、PH1=Hでデータがセットされ、PH2でデータがラッチされる構成となっており、PH1、PH2にシフトクロックを入力することにより、PHSTを順次シフトさせて、H
0からH
m−1のスイッチを順次オンさせることができる。SKIPは、間引き読み出し時に設定を行なわせる制御端子入力である。SKIP端子をHレベルに設定することにより、水平走査回路を所定間隔でスキップさせることが可能になる。
【0031】
207は、垂直走査回路であり、順次走査して、V
0からV
n−1を出力することにより、光電変換部PD
mnの選択スイッチ202を選択することができる。制御信号は、水平走査回路と同様に、データ入力PVST、シフトクロックPV1、PV2、間引き読み設定SKIPにより制御される。動作に関しては、水平走査回路と同様であるので詳細説明は省略する。また、図中では、前記の制御信号は、不図示とした。
【0032】
図3、
図4、及び
図5は、撮像用画素と焦点検出用画素の構造を説明する図である。本実施例においては、2×2の4画素のうち、対角2画素にG(緑色)の分光感度を有する画素を配置し、他の2画素にR(赤色)とB(青色)の分光感度を有する画素を各1個だけ配置した、ベイヤー配列が採用されている。そして、ベイヤー配列の間に、後述する構造の焦点検出用画素が所定の規則にて分散配置される。
【0033】
図3に撮像用画素の配置と構造を示す。同図(a)は2×2の撮像用画素の平面図である。周知のごとく、ベイヤー配列では対角方向にG画素が、他の2画素にRとBの画素が配置される。そして、2行×2列の構造が繰り返し配置される。
【0034】
同図(a)の断面A−Aを同図(b)に示す。MLは各画素の最前面に配置されたオンチップマイクロレンズ、CF
RはR(Red)のカラーフィルタ、CF
GはG(Green)のカラーフィルタである。PDはC−MOSセンサの光電変換部を模式的に示したもの、CLはC−MOSセンサ内の各種信号を伝達する信号線を形成するための配線層である。TLは撮影光学系を模式的に示したものである。
【0035】
ここで、撮像用画素のオンチップマイクロレンズMLと光電変換部PDは、撮影光学系TLを通過した光束を可能な限り有効に取り込むように構成されている。換言すると、撮影光学系TLの射出瞳EPと光電変換部PDは、マイクロレンズMLにより共役関係にあり、かつ光電変換部の有効面積は大面積に設計される。また、同図(b)ではG画素の入射光束について説明したが、R画素及びB(Blue)画素も同一の構造となっている。従って、撮像用のRGB各画素に対応した射出瞳EPは大径となり、被写体からの光束を効率よく取り込んで画像信号のS/Nを向上させている。
【0036】
図4は、撮影光学系の水平方向(横方向)に瞳分割を行なうための焦点検出用画素の配置と構造を示す。ここで水平方向あるいは横方向の定義は、撮影光学系の光軸が水平となるようにカメラを構えたとき、撮影光学系の光軸に直交し、かつ水平方向に伸びる直線に沿った方向を指す。同図(a)は、焦点検出用画素を含む2行×2列の画素の平面図である。記録もしくは観賞のための画像信号を得る場合、G画素で輝度情報の主成分を取得する。そして人間の画像認識特性は輝度情報に敏感であるため、G画素が欠損すると画質劣化が認知されやすい。一方でRもしくはB画素は、色情報(色差情報)を取得する画素であるが、人間の視覚特性は色情報には鈍感であるため、色情報を取得する画素は多少の欠損が生じても画質劣化は認識され難い。
【0037】
そこで、本実施例においては、2行×2列の画素のうち、G画素は撮像用画素として残し、RとBの画素を焦点検出用画素に置き換える。これを同図(a)においてS
HA及びS
HBで示す。
【0038】
同図(a)における断面A−Aを同図(b)に示す。マイクロレンズMLと、光電変換部PDは
図3(b)に示した撮像用画素と同一構造である。本実施例においては、焦点検出用画素の信号は画像創生には用いないため、色分離用カラーフィルタの代わりに透明膜CF
W(White)が配置される。また、撮像素子で瞳分割を行なうため、配線層CLの開口部はマイクロレンズMLの中心線に対して一方向に偏心している。具体的には、画素S
HAの開口部OP
HAは右側に偏心しているため、撮影光学系TLの左側の射出瞳EP
HAを通過した光束を受光する。同様に、画素S
HBの開口部OP
HBは左側に偏心しているため、撮影光学系TLの右側の射出瞳EP
HBを通過した光束を受光する。
【0039】
よって、画素S
HAを水平方向に規則的に配列し、これらの画素群で取得した被写体像をA像とする。また、画素S
HBも水平方向に規則的に配列し、これらの画素群で取得した被写体像をB像とすると、A像とB像の相対位置を検出することで、被写体像のピントずれ量(デフォーカス量)が検出できる。
【0040】
図5は、撮像用画素および焦点検出用画素の配置を示した図である。同図において、Gは、緑フィルターを塗布された画素、Rは、赤フィルターを塗布された画素、Bは、青フィルターを塗布された画素である。図中のS
HAは、画素部の開口を水平方向に偏心させて、形成された焦点検出用の画素であり、後述のSB画素群との水平方向の像ずれ量を検出するための基準画素群である。また、S
HBは、画素の開口部をS
HA画素とは、逆方向に偏心させて形成された画素であり、S
HA画素群との水平方向の像ずれ量を検出するための参照画素群である。S
HA、S
HB画素の白抜き部分が、偏心した画素の開口位置を示している。
【0041】
図6は、撮像画面上の焦点検出領域を示した一例である。同図において、焦点検出領域では
図5に示した画素の配置となっており、焦点検出領域内には複数、若しくは一ライン分の測距ラインが含まれる。本実施例では、焦点検出領域内に複数測距ラインが含まれ、各測距ラインが演算した焦点調節状態の信頼性に応じて使用する測距ラインを選択する。また、本実施例では、撮像画面上の中央に設定しているが、焦点検出領域を複数領域配置し、それぞれの領域で結像された被写体像から焦点検出画素で像をサンプリングするようにしてもよい。
【0042】
図7〜
図9は、撮像面位相差方式の撮像装置としてのカメラの焦点調節及び撮影工程を説明するためのフローチャートである。先に説明した各図も参照しながら、
図7以降の制御フローを説明する。
【0043】
図7は、本実施例におけるカメラの動作を示すフローチャートである。
【0044】
撮影者がカメラの電源スイッチをメインスイッチオン操作すると(ステップS701)、ステップS702においてCPU121はカメラ内の各アクチュエータや撮像素子の動作確認を行ない、メモリ内容や実行プログラムの初期化を行なうと共に、撮影準備動作を実行する。ステップS703では、撮像素子の撮像動作を開始し、プレビュー用の低画素動画像を出力する。ステップS704では読み出した動画をカメラ背面に設けられた表示器131に表示し、撮影者はこのプレビュー画像を目視して撮影時の構図決定を行なう。
【0045】
ステップS705において画像領域の中から焦点検出領域を決定する。本実施例においては、
図6に示すように、測距点を中央のみに配置しているため、中央領域が選択される。その後、ステップS801に進み、焦点検出サブルーチンを実行する。
【0046】
図8は焦点検出サブルーチンのフロー図である。メインフローのステップS801から当サブルーチンにジャンプすると、ステップS802においては、メインルーチンのステップS705で決定した焦点検出領域に含まれる焦点検出用画素を読み出す。ステップS803では得られた2像の相関演算を行ない、一対の像信号(2像)の相対的な位置ずれ量を計算する。焦点検出画素列から読み出された一対の像信号(a1〜an、b1〜bn:aはA像のライン信号、bはB像のライン信号、nはデータ数を表す)に対して、式(1)に示す相関演算を行ない、相関量Corr(l)を演算する。ここで、akはA像のk番目の画素信号を表し、bkはB像のk番目の画素信号を表す。
【0048】
式(1)において、lは像ずらし量を表し、像をずらした際のデータ数はn−lに限定される。また、像ずらし量lは整数であり、データ列のデータ間隔を単位とした相対的なシフト量である。同式の演算結果は、
図10に示すように、一対のデータの相関が最も高い場合に、相関量Corr(l)が極小となる。さらに、相関量Corr(m)(極小となるシフト量m)、及びmに近いシフト量で算出された相関量を用いて、3点内挿の手法を用いて、連続的な相関量に対する極小値Corr(d)を与えるシフト量dを求める。
【0049】
ステップS804では、相関演算結果の信頼性を演算する。ここで、信頼性とは、2像の一致度FLVLを指す。一対の像信号(2像)の一致度FLVLは式(1)で算出した相関量Corr(l)に対して、相関性の最も高いときの値Corr(d)の逆数(1/Corr(d))とする。デフォーカス量が大きいとき、A像、B像の非対称性が大きくなるため、2像の一致度FLVLが小さく、信頼性が悪化する。一般的にデフォーカス量に対する2像の一致度FLVLは
図11の実線で示される関係となり、レンズの位置が合焦位置に近いほど、2像の一致度FLVLは高く演算され、信頼性が高い傾向となる。
【0050】
続くステップS805では、S803で演算された像ずれ量に対して、所定のデフォーカス換算係数を乗ずることでデフォーカス量DEFを演算する。
【0051】
次に、ステップS806では、焦点検出信号のコントラスト評価値Cntを式(2)によって演算する。ここで、akはA像のk番目の画素信号を表す。
【0053】
ここで、式(2)のnは焦点検出用ライン信号の画素数を表す。一例として、高周波被写体である白黒のエッジチャートに対して、同式で表されるコントラスト評価値Cntとデフォーカス量の関係を
図12において実線で示す。同図は、デフォーカス量が小さくなるにつれて、被写体像がシャープになるため、コントラスト情報であるコントラスト評価値Cntが高くなる関係を示す図である。通常、焦点検出画素による測距演算を行なった場合、様々な被写体に対して、コントラスト情報であるコントラスト評価値Cntと検出デフォーカスの関係は
図12の実線の内側に含まれる。しかし、被写体によって、誤測距が発生した場合は
図12の曲線から外側に外れることがある。コントラスト評価値Cntが高いにも関わらず、検出デフォーカスが大きく演算される場合は、正しく測距演算が行われている場合ではあり得ず、誤測距の可能性が高い。そのため、測距演算上では、信頼性を落とす必要がある。
【0054】
図12において、コントラスト評価値Cntが大きく、デフォーカス量DEF[Fδ](FはFナンバー、δは許容錯乱円径を表す)が零近傍の場合、信頼性が高い(信頼性がある)と判断し、コントラスト評価値Cntが小さく、デフォーカス量DEF[Fδ]が大きい場合、信頼性が低い(信頼性がない)と判断する。
【0055】
図12の信頼性の判定を行うことで、コントラスト評価値Cntが大きくてもデフォーカス量DEF[Fδ]が大きい場合、信頼性が低い(信頼性がない)と判断することで、撮像面位相差AFによる焦点検出性能の維持と画質劣化防止の両立を図れる。
【0056】
信頼性評価手段としてのCPU121は、コントラスト演算手段としてのCPU121の結果および焦点検出手段としての撮像素子107の結果の
図12の相関関係に基づいて焦点検出手段の結果の信頼性を評価している。
【0057】
信頼性評価手段としてのCPU121は、コントラスト評価値Cntが第1の所定値より大きい状態において、デフォーカス量DEFが第2の所定値より小さい場合、焦点検出手段としての撮像素子107の結果の信頼性があると判断を行い、デフォーカス量DEFが第2の所定値より大きい場合、焦点検出手段の結果の信頼性がないと判断する。
【0058】
本実施例では、
図12のように、信頼性高と判断された焦点検出手段の結果を用いて焦点調整が行われる。
【0059】
位相差式の焦点検出において、誤測距が発生する可能性の高い被写体として、焦点検出画素のサンプリング周期に対して小さい被写体、また周期性の高い被写体などが挙げられる。
【0060】
焦点検出画素は、A像画素、B像画素を同一位置に配置することができない為、サンプリング周期以下の被写体に対して、A像、B像で同一の被写体を捕捉することが困難となる。そのため、被写体によっては、A像、B像でそれぞれ別の被写体を撮像した像信号で相関がとれてしまい、誤った像ずれ量が算出される状況が発生する。
【0061】
また、周期性の高い被写体では、相関演算の際に相関が高く演算されるシフト量が複数存在するため、A像、B像でそれぞれ別の被写体で相関が高くとれてしまい、誤った像ずれ量が算出される状況が発生する。
【0062】
このような誤測距が発生する状況において、本実施例では、式(2)で示されるコントラスト評価値Cnt、及び検出デフォーカス量DEFを基に誤測距判定を実行する。
図12においては、斜線部で表示された領域の場合に信頼性を落とす演算を行なう。検出デフォーカスDEFに対して、コントラスト情報であるコントラスト評価値Cntが所定閾値以上の場合には、測距演算の信頼性を落とす演算を施す。
【0063】
ステップS807では、検出されたデフォーカス量に応じて決定される、コントラスト評価値の閾値Cthを演算する。検出デフォーカス量とコントラスト評価値の閾値Cthの関係は、
図12の点線で示す。続く、ステップS808では、ステップS806で演算されたコントラスト評価値Cntが、ステップS807で演算されたコントラスト評価値の閾値Cth以上か否かを比較することで、誤測距の判定を行なう。
図12の斜線部で示された領域にコントラスト評価値Cntが入る場合、誤測距の可能性大と判定し、続くステップS809で、測距結果の信頼性を落とす処理を施す。ステップS807では、コントラスト評価値Cntと閾値Cthの差分に応じて、式(3)で信頼性FLVLを算出する。
【0064】
〔数式3〕
FLVL(Cnt−Cth)=FLVL×E(Cnt−Cth) (3)
【0065】
ここで、E(Cnt−Cth)はCnt−Cthの値に比例し、Cnt−Cthの増加に伴って、FLVL(Cnt−Cth)を増加(信頼性低下)させる関数である。FLVL=1/Corr(d)とする。
【0066】
続くステップS810は、測距領域内の全測距ラインに対して測距演算が終了しているか否かの判定を行ない、終了していない場合、他のラインに対してステップS802から同様の処理を施す。
【0067】
続くステップS811は、測距領域内にある複数の焦点検出ラインの中から、信頼性の高い(FLVLの小さい)情報を優先的に使用する処理を施し、最終的な測距結果を決定する。
【0068】
続くステップS812で
図7のメインフロー内のステップS707にリターンする。
【0069】
本実施例においては、誤測距の判定として、焦点検出信号から算出されるコントラスト評価値Cnt、及び検出デフォーカス量DEFを用いた。ここで、像のコントラスト評価値を演算する際には焦点検出画素の信号を使用したが、公知のコントラストAFで演算されるコントラスト評価値のように撮像用画素から算出されるコントラスト評価値を演算するようにしてもよい。この場合、コントラスト情報であるコントラスト評価値を演算する撮像用画素は、演算対象となる焦点検出画素の近傍領域の撮像画素を使用する必要がある。
【0070】
誤測距の判定がなされた場合、
図4に基づく撮像面位相差AFを中断してTV−AF(コントラストAF)に切換える。又は、誤測距の判定がなされた場合、
図4に基づく撮像面位相差AFを中断して、AF(オートフォーカス)制御を行わなくても良い。
【0071】
図7のステップS707では、検出デフォーカス量が許容値以下か否かを判断する。そして検出デフォーカス量が許容値以上である場合は、非合焦と判断し、ステップS708でフォーカスレンズを駆動し、その後ステップS801ないしステップS707を繰り返し実行する。そしてステップS707にて合焦状態に達したと判定されると、ステップS709にて合焦表示を行ない、ステップS710に移行する。
【0072】
ステップS710では、撮影開始スイッチがオン操作されたか否かを判別し、オン操作されていなければステップS710にて撮影待機状態を維持する。ステップS710で撮影開始スイッチがオン操作されるとステップS901に移行し、撮影サブルーチンを実行する。
【0073】
図9は撮影サブルーチンのフロー図である。撮影開始スイッチが操作されると、ステップS901を経由して、ステップS902では光量調節絞りを駆動し、露光時間を規定するメカニカルシャッタの開口制御を行なう。ステップS903では、高画素静止画撮影のための画像読み出し、すなわち全画素の読み出しを行なう。ステップS904では読み出した画像信号の欠損画素補間を行なう。すなわち、焦点検出用画素の出力は撮像のためのRGBカラー情報を有しておらず、画像を得る上では欠陥画素に相当するため、周囲の撮像用画素の情報から補間により画像信号を創生する。
【0074】
ステップS905では、画像のγ補正、エッジ強調等の画像処理をおこない、ステップS906において、フラッシュメモリ133に撮影画像を記録する。ステップS907では、表示器131に撮影済み画像を表示し、ステップS908で
図7のメインフローにリターンする。
【0075】
図7のメインフローに戻ると、ステップS712にて一連の撮影動作を終了する。
【0076】
以上説明した実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【0077】
「実施形態2」
実施形態1では、焦点検出結果の誤測距判定として、焦点検出信号から算出されるコントラスト評価値Cnt、及び検出デフォーカス量DEFを用いた。ここで、像のコントラスト評価値の代わりに前述した一対の像信号(2像)の一致度FLVLを使用しても、同様の効果を得ることができる。
【0078】
本実施形態の撮像素子107も、実施形態1と同様に、撮影光学系の異なる射出瞳を通過した複数の光束を複数の焦点検出用画素S
HA、S
HBにて検出して得られた位相差検出用の第1の信号を出力する第1の光電変換セルと前記撮影レンズを通過した被写体像を撮像用画素にて検出して得られた画像生成用の第2の信号を出力する第2の光電変換セルとを有する。
【0079】
CPU121は、位相差方式の焦点検出演算を行なう際に、
図11の相関評価値を演算する相関評価値演算手段としての機能を備えている。
【0080】
デフォーカス量に対する一対の像信号(2像)の一致度FLVLは
図11の実線で示される関係となり、レンズの位置が合焦位置に近いほど、2像の一致度FLVLは高く演算される。同図において、斜線で表示された領域の場合に検出デフォーカス量の信頼性を落とす演算を行なう。検出デフォーカスDEFに対して、2像の一致度FLVLが所定値以上の場合には、測距演算の信頼性を落とす演算を施す。
【0081】
図13は、
図8で誤測距判定に使用していたコントラスト評価値Cntの代わりに、2像の一致度FLVLを使用した場合の焦点検出サブルーチンのフロー図である。S1301から当サブルーチンにジャンプすると、ステップS1302においては、メインルーチンのステップS705で決定した焦点検出領域に含まれる焦点検出用画素を読み出す。ステップS1303では得られた2像の相関演算を行ない、2像の相対的な位置ずれ量を計算する。
【0082】
続くステップS1304では、相関演算結果の信頼性FLVLを演算する。
【0083】
次にステップS1305では、S1303で演算された像ずれ量に対して、所定のデフォーカス換算係数を乗ずることでデフォーカス量DEFを演算する。続くステップS1306では、検出デフォーカス量DEFから2像一致度の閾値FLVLthを演算する。検出デフォーカス量と2像の一致度の閾値FLVLthの関係は、
図11の点線で示す。
【0084】
続く、ステップS1307では、ステップS1304で演算された2像の一致度FLVLが、ステップS1306で演算された2像の一致度の閾値FLVLth以上か否かを比較することで、誤測距の判定を行なう。
【0085】
ステップS1308では、2像の一致度FLVLと閾値FLVLthの差分に応じて、式(4)で信頼性FLVLを算出する。
【0086】
〔数式4〕
FLVL(FLVL−FLVLth)=FLVL×E(FLVL−FLVLth) (4)
【0087】
ここで、E(FLVL−FLVLth)はFLVL−FLVLthの値に比例し、FLVL−FLVLthの増加に伴って、FLVL(FLVL−FLVLth)を増加(信頼性低下)させる関数である。
【0088】
続くステップS1309は、測距領域内の全測距ラインに対して測距演算が終了しているか否かの判定を行ない、終了していない場合、他のラインに対してステップS1302から同様の処理を施す。
【0089】
図11において、一対の像信号の一致度FLVLが小さく、デフォーカス量DEF[Fδ]が零近傍の場合、信頼性が高い(信頼性がある)と判断し、一対の像信号の一致度FLVLが小さく、デフォーカス量DEF[Fδ]が大きい場合、信頼性が低い(信頼性がない)と判断する。
【0090】
図11の信頼性の判定を行うことで、一対の像信号の一致度FLVLが小さく、デフォーカス量DEF[Fδ]が大きい場合、信頼性が低い(信頼性がない)と判断することで、撮像面位相差AFによる焦点検出性能の維持と画質劣化防止の両立を図れる。
【0091】
信頼性評価手段としてのCPU121は、相関評価値演算手段としてのCPU121の結果および焦点検出手段としてのCPU121の結果の
図11の相関関係に基づいて焦点検出手段としてのCPU121の結果の信頼性を評価する。
【0092】
信頼性評価手段としてのCPU121は、一対の像信号の一致度FLVLが第3の所定値より小さい状態において、デフォーカス量DEFが第4の所定値より小さい場合、焦点検出手段としての撮像素子107の結果の信頼性があると判断を行い、デフォーカス量DEFが前記第4の所定値より大きい場合、焦点検出手段としての撮像素子107の結果の信頼性がないと判断する。
【0093】
本実施例では、
図11のように、信頼性高と判断された焦点検出手段の結果を用いて焦点調整が行われる。
【0094】
続くステップS1310は、測距領域内にある複数の焦点検出ラインの中から、信頼性の高い(FLVLの小さい)情報を優先的に使用する処理を施し、最終的な測距結果を決定する。
【0095】
誤測距の判定がなされた場合、
図4に基づく撮像面位相差AFを中断してTV−AF(コントラストAF)に切換える。又は、誤測距の判定がなされた場合、
図4に基づく撮像面位相差AFを中断して、AF(オートフォーカス)制御を行わなくても良い。
【0096】
続くステップS1311で
図7のメインフロー内のステップS707にリターンする。
【0097】
なお、
図11に示したデフォーカス量と2像の一致度FLVLの関係は、撮影レンズ特性に依存するため、予め撮影レンズ毎に、様々な被写体と2像の一致度FLVLの関係を測定、記憶しておくことで、交換レンズタイプのカメラについても適応可能となる。
【0098】
「他の実施形態」
上述の実施形態は、システム或は装置のコンピュータ(或いはCPU、MPU等)によりソフトウェア的に実現することも可能である。
【0099】
従って、上述の実施形態をコンピュータで実現するために、該コンピュータに供給されるコンピュータプログラム自体も本発明を実現するものである。つまり、上述の実施形態の機能を実現するためのコンピュータプログラム自体も本発明の一つである。
【0100】
なお、上述の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムは、コンピュータで読み取り可能であれば、どのような形態であってもよい。例えば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等で構成することができるが、これらに限るものではない。
【0101】
上述の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムは、記憶媒体又は有線/無線通信によりコンピュータに供給される。プログラムを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ等の磁気記憶媒体、MO、CD、DVD等の光/光磁気記憶媒体、不揮発性の半導体メモリなどがある。
【0102】
有線/無線通信を用いたコンピュータプログラムの供給方法としては、コンピュータネットワーク上のサーバを利用する方法がある。この場合、本発明を形成するコンピュータプログラムとなりうるデータファイル(プログラムファイル)をサーバに記憶しておく。プログラムファイルとしては、実行形式のものであっても、ソースコードであっても良い。
【0103】
そして、このサーバにアクセスしたクライアントコンピュータに、プログラムファイルをダウンロードすることによって供給する。この場合、プログラムファイルを複数のセグメントファイルに分割し、セグメントファイルを異なるサーバに分散して配置することも可能である。
【0104】
つまり、上述の実施形態を実現するためのプログラムファイルをクライアントコンピュータに提供するサーバ装置も本発明の一つである。
【0105】
また、上述の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムを暗号化して格納した記憶媒体を配布し、所定の条件を満たしたユーザに、暗号化を解く鍵情報を供給し、ユーザの有するコンピュータへのインストールを許可してもよい。鍵情報は、例えばインターネットを介してホームページからダウンロードさせることによって供給することができる。
【0106】
また、上述の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムは、すでにコンピュータ上で稼働するOSの機能を利用するものであってもよい。
【0107】
さらに、上述の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムは、その一部をコンピュータに装着される拡張ボード等のファームウェアで構成してもよいし、拡張ボード等が備えるCPUで実行するようにしてもよい。
【0108】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために以下の請求項を添付する。