特許第6041875号(P6041875)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6041875薄膜デバイスを個別のセルに分割するための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041875
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】薄膜デバイスを個別のセルに分割するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0463 20140101AFI20161206BHJP
   B23K 26/00 20140101ALN20161206BHJP
   B23K 26/351 20140101ALN20161206BHJP
   B23K 26/57 20140101ALN20161206BHJP
   B23K 26/08 20140101ALN20161206BHJP
【FI】
   H01L31/04 532A
   !B23K26/00 H
   !B23K26/351
   !B23K26/57
   !B23K26/08 Z
   !B23K26/08 D
   !B23K26/08 F
【請求項の数】16
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-519619(P2014-519619)
(86)(22)【出願日】2012年7月13日
(65)【公表番号】特表2014-527284(P2014-527284A)
(43)【公表日】2014年10月9日
(86)【国際出願番号】GB2012000591
(87)【国際公開番号】WO2013011255
(87)【国際公開日】20130124
【審査請求日】2015年6月1日
(31)【優先権主張番号】1112285.0
(32)【優先日】2011年7月15日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512104823
【氏名又は名称】エム−ソルヴ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブラントン アダム ノース
【審査官】 濱田 聖司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/048352(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/002005(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/004509(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/011254(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00−31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部電極層である第1の層と、活性層である第2の層と、上部電極層である第3の層と、を含み、前記第1の層と、前記第2の層と、前記第3の層のてがデバイス全体に渡って連続している薄膜デバイスを、直列に電気的に相互接続された個別のセルに分割するための方法であって、前記セルの分割と隣接するセルの電気接続が、前記デバイスを横切る処理ヘッドの単一パス内に全て実行され、前記処理ヘッドは、前記デバイスの上方に位置する第1の部分と、前記デバイスの下方に位置する第2の部分と、を含み、前記処理ヘッドの前記第1および第2の部分は1つ以上の切削ユニットを備え、前記第1の部分は第1および第2のインクジェット印刷ヘッドを備え、前記第1及び第2の部分は
a)前記第1、第2、第3の層を貫く第1の切削部を形成するステップと、
b)前記第2および第3の層を貫く第2の切削部であって、かつ、前記第1の切削部に隣接する第2の切削部を形成するステップと、
c)前記第3の層を貫く第3の切削部であって、かつ、前記第2の切削部に隣接し、前記第2の切削部に対し前記第1の切削部の反対側にある第3の切削部を形成するステップと、
d)前記第1の切削部内に非導電性材料を積層するために、前記処理ヘッドの前記第1の部分上の前記第1のインクジェット印刷ヘッドを用いるステップと、
e)導電性材料を塗布して、前記第1の切削部内の前記非導電性材料を橋絡し、前記第2の切削部を完全にないしは部分的に充填して、前記第1の層と前記第3の層の間で電気的接続を形成するために、前記処理ヘッドの前記第1の部分上の前記第2のインクジェット印刷ヘッドを用いるステップと、
前記処理ヘッドの前記単一パス内で実行することが、前記第1及び第2の部分が同じ速度で一緒に前記デバイスに対して相対的に移動するように構成されることによって、前記デバイス全体に渡って行われるように構成され
ステップa)はステップd)に先行し、ステップd)はステップe)に先行し、ステップb)はステップe)に先行して実行され、または、前記ステップは前記デバイスを横切る前記処理ヘッドの前記単一パス内で任意の順番で実行され、
前記第1、第2、第3の切削部の少なくとも1つは、前記1つ以上の切削ユニットによって、前記処理ヘッドの前記第2の部分から前記第1、第2、第3の層に向けられるレーザービームを用いて、前記デバイスの下側から形成される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記単一パス内で実行される前記ステップの前記順番が、前記第1および第2のインクジェット印刷ヘッド、および、前記第1、第2、第3の切削部を形成するための前記処理ヘッド上の構成要素の、前記処理ヘッド上における相対的な位置によって決められる、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1、第2、第3の切削部のうちの2以上がレーザービームを使用して形成される、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の切削部が、前記処理ヘッドの前記第1の部分によって運ばれる切削手段によって、前記デバイスの上方から形成され、前記第2および/または第3の切削部が、前記処理ヘッドの前記第2の部分から前記デバイスの下側に向けられるレーザービームを用いて形成される、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記処理ヘッドが、前記薄膜デバイスを一方向または双方向に横切る単一パス内で、全ての前記ステップを実行することができる、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記非導電性材料および/または前記導電性材料の積層後、前記単一パスの間に1または複数の硬化ステップが実行される、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記処理ヘッドの前記第1および第2の部分が一体となって前記デバイスに対して相対的に動くよう構成され、それらの互いに対する相対位置は一定である、
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記薄膜デバイスは、ソーラーパネル、照明パネル、バッテリーのうちの1つである、
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
下部電極層である第1の層と、活性層である第2の層と、上部電極層である第3の層と、を含み、前記第1の層と、前記第2の層と、前記第3の層のてがデバイス全体に渡って連続している薄膜デバイスを、直列に電気的に相互接続された個別のセルに分割するための装置であって、前記装置は、前記デバイスの上方に位置するよう配置された第1の部分と前記デバイスの下方に位置するよう配置された第2の部分とを含む前記処理ヘッドを含み、前記第1および第2の部分が同じ速度で一緒に前記デバイスに対して相対的に移動するよう構成され、前記処理ヘッドの前記第1および第2の部分は、
a)前記第1、第2、第3の層を貫く第1の切削部と、前記第2、第3の層を貫き、前記第1の切削部に隣接する第2の切削部と、前記第3の層を貫き、前記第2の切削部に隣接し、かつ、前記第2の切削部に対し前記第1の切削部の反対側にある第3の切削部と、を形成する1または複数の切削ユニットと、
b)前記第1の切削部内に非導電性材料を積層する第1のインクジェット印刷ヘッドと、
c)前記第1の切削部内の前記非導電性材料を橋絡し、前記第2の切削部を完全にまたは部分的に充填して、前記第1の層と前記第3の層との間で電気的接続を形成するために、導電性材料を塗布する第2のインクジェット印刷ヘッドと、
を含み、
前記装置は、
d)前記処理ヘッドを前記デバイスに対して相対的に移動させるための駆動手段と、
e)前記デバイスに対する前記処理ヘッドの相対的な移動を制御し、前記デバイスの個別のセルへの分割および隣接セル間の前記電気接続の形成が、前記デバイスを横切る前記処理ヘッドの単一パス内に全て実行できるよう、前記1または複数の切削ユニットおよび前記第1および第2のインクジェット印刷ヘッドを作動させるための制御手段と、をさらに含み、
前記第1および第2のインクジェット印刷ヘッドは、前記処理ヘッドの前記第1の部分に備えられ、前記デバイスの上側に物質を塗布するよう配置され、前記切削ユニットの少なくとも1つは、前記処理ヘッドの前記第2の部分に備えられ、前記処理ヘッドの前記第2の部分から前記第1、第2、第3の層に向けられるレーザービームによって、前記第1、第2、第3の切削部のうち少なくとも1つを前記デバイスの下側から形成するよう配置される、
ことを特徴とする装置。
【請求項10】
前記1または複数の切削ユニットが、前記処理ヘッドの前記第2の部分に備えられ、前記第1、第2、第3の切削部を形成するための1または複数のパルスレーザーを備える、
ことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記1または複数の切削ユニットが、前記第1、第2および/または第3の切削部を形成するための2以上のタイプのパルスレーザーを備える、
ことを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記第1および第2のインクジェット印刷ヘッドと、前記第1、第2、第3の切削部を形成するための前記処理ヘッド上の切削ユニットとの、前記処理ヘッド上における相対的な位置によって、前記処理ヘッドの前記単一パス内で実行される前記ステップの前記順番が決定される、
ことを特徴とする請求項9ないし11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記処理ヘッドの前記単一パスの間に、前記第1および/または第2のインクジェット印刷ヘッドによって塗布された前記非導電性材料および/または前記導電性材料を硬化させるための1または複数の硬化装置が前記処理ヘッドの前記第1の部分に備えられる、
ことを特徴とする請求項9ないし12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記駆動手段が、前記処理ヘッドの前記第1および第2の部分を、2つの直交する方向に前記デバイスに対して相対的に移動させるための1または複数の2軸サーボモータを備える、
ことを特徴とする請求項9ないし13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記制御手段は、前記デバイスと処理ヘッドが、前記デバイスを横切る連続的な経路で、前記第1および第2の切削部の長さ方向に平行な第1の方向に、互いに対して相対的に移動し、前記経路の終点において、前記第1の方向に垂直な方向に、前記デバイスに形成される前記セルの幅に等しいまたはその整数倍である所定の距離移動するように構成されていること、
を特徴とする請求項9ないし14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記第1、第2、第3の切削部の1つを形成するために前記処理ヘッドの前記第2の部分上の切削ユニットが使用される場合に前記デバイスの前記上側から放出された物質を収集する破片収集装置が前記処理ヘッドの前記第1の部分上に備えられている、
ことを特徴とする請求項9ないし15のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な薄膜デバイスを製造するために、スクライビング技術およびインクジェット印刷技術を用いて、個別の電気セル(electric cell)を形成してそれらを直列に相互接続するための処理に関する。特に、底部電極材料、半導体材料、頂部電極材料の連続的な層を含むソーラーパネルにおいて、セルおよび直列相互接続構造を単一ステップの処理で形成する新規な方法を記述するものである。単一ステップの処理は、層から層にかけてのスクライブ線の調整に関連した問題を解消するため、本発明はフレキシブル基板上に形成されたソーラーパネルには特に適している。この方法はまた、照明パネルやバッテリーなど、他の薄膜デバイスを製造することにも適している。本発明は、記述される方法を実行するための装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜ソーラーパネルにおいてセルを形成し、それらを相互に接続するための通常の方法には、一連の層コーティング処理とレーザースクライビング処理が含まれる。構造を完成させるためには、通常、個別のコーティング処理が3回、個別のレーザー処理が3回要求される。これらの処理は通例、以下に示すように、それぞれのコーティングステップの後に続くレーザーステップよりなる、6ステップシーケンスにより行われる。
a)基板表面全体に下部電極材料の薄い層を積層する。基板は通常ガラスであるが、ポリマーのシートであってもよい。この下部層は多くの場合、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)や酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電性酸化物であるが、モリブデンなどの光を通さない金属の場合もある。
b)連続膜を電気的に隔絶されたセル領域に分割するために、パネル表面を横切って、平行な線を典型的には5‐10mm間隔で、下部電極層を完全に貫通するようにレーザースクライブする。
c)基板領域全体に、活性発電層を積層する。この層は、アモルファスシリコンの単層で形成しても、アモルファスシリコンと微晶質シリコンの2層で形成してもよい。テルル化カドミウム、硫化カドミウム(CdTe/CdS)、ならびに二セレン化銅インジウムガリウム(CIGS)など、他の半導体材料でできた層も使用される。
d)下部電極材料に損傷を加えることなく、第1の電極層の最初のスクライブ線に平行にかつ可能な限り近くに、この1または複数の活性層を貫通して線をレーザースクライブする。
e)多くの場合アルミなどの金属またはZnOなどの透明導電体でできた第3の層、頂部電極層を、パネル領域全体に積層する。
f)頂部電極層の電気的連続性を断絶させるために、この第3層に、他の線の近くにかつ他の線に平行に、線をレーザースクライブする。
【0003】
その後にレーザーによる隔絶化を伴うこの積層手続は、パネルを多数の、個別の細長いセルに分割し、パネル内の全てのセルの間に直列的な電気接続をもたらす。この方法によるとパネル全体で作られる電圧は、各セル内で形成されるポテンシャルと、セルの数の積で与えられる。パネルは、典型的には50から100のセルに分割されるため、パネルの出力電圧全体は典型的には50ボルトから100ボルトの範囲内にある。各セルは、典型的には幅5−15mmで、長さ約1000mmである。この多段階ソーラーパネル製造法で使用される処理の詳細な記述は、特開平10−209475号公報にて与えられる。
【0004】
ソーラーパネルを製造するこの多段階処理を、個別の層コーティングステップの幾つかを合併させることによって簡略化する方法が考案されてきた。このことは、基板が真空から大気環境に移動されねばならない回数を減らし、その結果、層の質の改善とソーラーパネルの性能の向上につながると考えられる。米国特許第6919530号明細書、米国特許第6310281号明細書および米国特許出願公開第2003/0213974号明細書はいずれも、必要な3枚の層のうち2層が、レーザースクライブを行う前にコーティングされるソーラーパネルの製造方法を記載している。下部電極層および(1ないし複数の)活性層が順次積層され、これら両方の層は一緒にレーザースクライブされて溝が形成され、当該溝にはその後絶縁性材料が充填される。米国特許第6310281号明細書および米国特許出願公開第2003/0213974号明細書に対しては、この溝の充填がインクジェット印刷によって行なわれることが提案されている。相互接続手続は上述したように、溝の充填に引き続いて、活性層を貫通するレーザースクライブと、頂部電極層の積層と、セルを隔絶させるための頂部電極層に対する最後のスクライブと、を伴う。
【0005】
レーザースクライビングが行われる前に、3層全てがコーティングされる方法も提案されてきた。国際公開第2007/044555号は、完全な3層のスタックが単一処理シーケンス内にコーティングされ、次いでレーザースクライブ線がスタック内に、スタックを貫通するように形成される、ソーラーパネルの製造方法を記載している。レーザースクライブ処理は、2つの異なる深さを持つ単一のスクライブ線よりなるため、複雑である。当該スクライブ線の第1の側では、下部電極層を電気的に分割してセルを画定するために、レーザーは完全な3層のスタックを基板に至るまで貫通し、当該スクライブ線の第2の側ではレーザーは、下部電極層材料のレッジ構造(ledge)が露出した領域を残すために、頂部層と活性層のみを貫通する。スクライブ線の第1の側の下部電極層の端部と活性層の端部を絶縁性材料が覆うように、基板にまで貫通するスクライブ線の第1の側に対して絶縁性材料が局所的に積層される。これに引き続いて、先に塗布された絶縁性材料を橋絡し、第1の側の頂部電極層と第2の側の下部電極材料のレッジ構造を接続するために、導電性材料がスクライブ線内に積層される。
【0006】
国際公開第2007/044555号に記載の処理は複雑であり、慎重な制御を必要とする。デュアルレベルレーザースクライブ処理の第2段階で発生した破片は、下部電極材料のレッジ構造の隣接する上表面に堆積し易く、これが劣悪な電気接続につながる。絶縁性材料がスクライブ線の第1の側の正しい位置に正確に配置され、また下部電極材料のレッジ構造の上に何も堆積していないということを確実なものにするためには、高いレベルの制御が必要である。導電性材料が正しく配置され、スクライブ線の第2の側の頂部電極に接していないということを確実なものにするためには、極めて高い精度が必要になる。これらの理由の全てによって、この方法により高い信頼性でセル接続が行われる可能性は低いと考えられる。
【0007】
従って、3層のフルスタックからスタートして、迅速かつ簡素で信頼性の高い方法によりセル相互接続の形成へと至る、ソーラーパネルなどのための新規なセル形成および相互接続処理への要求が、依然存在している。
【0008】
このような処理は、照明パネルやバッテリーなどの他の薄膜デバイスの製造のための、セルの形成と直列相互接続にも応用することができる。ソーラーパネルと同じくこれらのデバイスも、その全てが硬質基板ないしフレキシブル基板上に積層される、下部電極層、活性層および頂部電極層によって構成される。基礎となる単一セルの電圧よりも高い電圧における動作は、デバイスを複数のセルに分割し、当該セルを直列に接続することで成し遂げられる。本明細書で提案される、レーザーおよびインクジェットによるセル形成と相互接続のための装置は、そのような動作に適している。
【0009】
照明パネルの場合、上部電極および下部電極には、ソーラーパネルに使われるもの(TCOや金属など)と似た材料が適しているが、活性材料は非常に異なっている。この場合、活性層には有機材料が最も適しているが、無機材料であってもよい。活性有機層は、低分子量材料(いわゆるOLED)か高分子量ポリマー(いわゆるP‐OLED)のいずれかをベースとしている。正孔・電子輸送層は通常、活性発光層と関連している。これらの照明パネルの場合、動作は低電圧で行われ、また全ての層が薄い。従ってここに記載の相互接続処理は、もっと高い電圧で動作させるために、パネルをセルに分割して直列に接続するには理想的である。
【0010】
薄膜電池においては多くの場合、層がより複雑である。リチウムイオン技術に基づく薄膜電池の場合は、下部層は2つの構成要素、即ち、集電のための金属層とカソードとして機能するリチウムコバルト酸化物(LiCoO3)層を含んでいる。上部層も同じく2つの構成要素、即ち、集電のための金属層と、アノードとして機能する窒化スズ(Sn3S4)を含んでいる。これらの2層の間には、活性層であるオキシ窒化リチウムリン(LiPON)が存在している。このような電池の場合、動作は低電圧で行われ、全ての層が薄いため、ここで記載の相互接続処理はパネルを分割して直列に接続して、大幅に高い電圧で動作させるためには理想的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
出願人は、その中で全ての切削処理とインクジェットに基づく積層処理が、デバイスを横切る処理ヘッドの単一パス(single pass)内での移動によって実行される、1つに結合した処理において、薄膜デバイスを個別セルへ分割するための方法と装置を提案した。このことは国際公開第2011/048352号に記載されており、その教えるところは本出願に含まれている。本発明はこの方法と装置の改良に係るものであり、それによって前記単一パス内で処理ステップが実行される方法において大きな柔軟性がもたらされる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の様態によれば、下部電極層である第1の層と、活性層である第2の層と、上部電極層である第3の層と、を含み、全ての前記層がデバイス全体に渡って連続している薄膜デバイスを、直列に電気的に相互接続された個別のセルに分割するための方法であって、前記セルの分割と隣接するセルの電気接続が、前記デバイスを横切る処理ヘッドの単一パス内に全て実行され、前記処理ヘッドは、前記デバイスの上方に位置する第1の部分と、前記デバイスの下方に位置する第2の部分と、を含み、前記処理ヘッドの前記第1および第2の部分は、
a)前記第1、第2、第3の層を貫く第1の切削部を作るステップと、
b)前記第2および第3の層を貫く第2の切削部であって、かつ、前記第1の切削部に隣接する第2の切削部を形成するステップと、
c)前記第3の層を貫く第3の切削部であって、かつ、前記第2の切削部に隣接し、前記第2の切削部に対し前記第1の切削部の反対側にある第3の切削部を形成するステップと、
d)前記第1の切削部内に非導電性材料を積層するために、前記処理ヘッドの前記第1の部分上の第1のインクジェット印刷ヘッドを用いるステップと、
e)導電性材料を塗布して、前記第1の切削部内の前記非導電性材料を橋絡し、前記第2の切削部を完全にないしは部分的に充填して、前記第1の層と前記第3の層の間で電気的接続を形成するために、前記処理ヘッドの前記第1の部分上の第2のインクジェット印刷ヘッドを用いるステップと、
を前記単一パス内で実行し、
ステップ(a)はステップ(d)に先行し、ステップ(d)はステップ(e)に先行し、ステップ(b)はステップ(e)に先行して実行され、または、前記ステップは前記デバイスを横切る前記処理ヘッドの前記単一パス内で任意の順番で実行され、
前記第1、第2、第3の切削部の少なくとも1つは、前記処理ヘッドの前記第2の部分から前記第1、第2、第3の層に向けられるレーザービームを用いて、前記デバイスの下側から形成される。
【0013】
本発明の第2の様態によれば、下部電極層である第1の層と、活性層である第2の層と、上部電極層である第3の層と、を含み、全ての前記層がデバイス全体に渡って連続している薄膜デバイスを、直列に電気的に相互接続された個別のセルに分割するための装置が提供され、前記装置は、前記デバイスの上方に位置するよう配置された第1の部分と前記デバイスの下方に位置するよう配置された第2の部分を含む前記処理ヘッドを含み、前記処理ヘッドの前記第1および第2の部分は、
f)前記第1、第2、第3の層を貫く第1の切削部と、前記第2、第3の層を貫き、前記第1の切削部に隣接する第2の切削部と、前記第3の層を貫き、前記第2の切削部に隣接し、かつ前記第2の切削部に対し前記第1の切削部の反対側にある前記第3の切削部と、を形成する、1または複数の切削ユニットと、
g)前記第1の切削部内に非導電性材料を積層する第1のインクジェット印刷ヘッドと、
h)前記第1の切削部内の前記非導電性材料を橋絡し、前記第2の切削部を完全にまたは部分的に充填して、前記第1の層と前記第3の層の間で電気的接続を形成するために、導電性材料を塗布する第2のインクジェット印刷ヘッドと、
を含み、
前記装置は、
i)前記処理ヘッドを前記デバイスに対して移動させるための駆動手段と、
j)前記デバイスに対する前記処理ヘッドの移動を制御し、前記デバイスの個別のセルへの分割および隣接セル間の前記電気接続の形成が、前記デバイスを横切る前記処理ヘッドの単一パス内に全て実行できるよう、前記1または複数の切削ユニットおよび前記第1および第2のインクジェット印刷ヘッドを作動させるための制御手段と、をさらに含み、
前記第1および第2のインクジェット印刷ヘッドは、前記処理ヘッドの前記第1の部分に備えられ、前記デバイスの上側に物質を塗布するよう配置され、前記切削ユニットの少なくとも1つは、前記処理ヘッドの前記第2の部分に備えられ、前記処理ヘッドの前記第2の部分から前記第1、第2、第3の層に向けられるレーザービームによって、前記第1、第2、第3の切削部のうち少なくとも1つを前記デバイスの下側から形成するよう配置される。
【0014】
ここで使用される上方、下方、上側、下側などの用語は、(平面状のデバイスがその上側に置かれた前記層と一緒に向きを変えると考えて)平面状のデバイスの表裏の面の相対的な位置を指し示すと理解されるべきであり、前記デバイスの空間内での向きには制限されない。実施に際しては、前記デバイスはどちらを向いてもよく、例えば重力に対して縦であっても横であってもよい。
【0015】
以下の発明の詳細な説明においては、様々な層を貫く切削部を形成するための切削ユニットは、全てレーザーに基づいており、切削ユニットから出るビームは、物質を切除し、除去して隔絶のための切削部を形成するよう集束される。これは切削部の形成のためには好適な方法だが、他の切削方法も使用されてよい。切削部の形成のための代替的な方法の1つは、細い針金やスタイラスを用いての機械的スクライビングである。このような機械的スクライビングは前記第1、第2、第3の切削部で、デバイスの下側から形成されるもの以外の全てあるいは幾つかを形成するために、レーザー切削の代わりに使用することができる。
【0016】
国際公開第2007/044555号に記載の発明のように、本発明は3層の完全なスタックを含む薄膜フィルムデバイスの処理を含むが、その後に続く層切削処理やインクジェット処理は、国際公開第2007/044555号に記載の発明に比べ、より単純で、より強力なものである。国際公開第2007/044555号にあるように、3回のコーティングはいずれも、層の切削やインクジェット方式による物質の積層の前に逐次なされる。理想的には、これらのコーティングは単一の真空処理の中でなされてもよいが、このことは必須ではない。
【0017】
上に示したように発明のキーポイントは、セルの相互接続を形成するために、コーティングの積層に続いて、層の切削とインクジェット処理を1つに結合した処理が使用されるということである。「1つに結合した処理」とは、全ての切削処理とそれにかかわる全てのインクジェット方式に基づく物質の積層処理が、基板表面に平行な平面内でのセル間の境界に平行な方向への、ソーラーパネルの全体または一部を横切る処理ヘッドの単一パス内での移動によって実行されることを意味する。1または複数のセル間接続を行うために必要な全ての切削ユニットと全てのインクジェット印刷ヘッドは、処理ヘッドの前記第1または第2の部分のいずれかに取り付けられているため、全ての部材がパネル全体にわたって同じ速度で一緒に移動し、また全ての処理はヘッドの単一パス内で実行される。
【0018】
様々な層切削処理やインクジェット積層処理を基板に対して施すシーケンスは、使用される材質に強く依存し、変化する可能性がある。様々な層切削ユニットとインクジェット印刷ヘッドが、処理ヘッドの第1および第2の部分に対して、処理ヘッドが基板に対して移動すると正しいシーケンスがなされるような配置で取り付けられる。
【0019】
描写を簡潔にするために、層切削処理とは以降はレーザーアブレーションを指すものとする。しかしながらこれらのレーザー切削処理の全てまたは幾つかは、デバイスの下側から実行される場合を除き、機械的スクライビング処理(または他の切削処理)によって置き換えられて良い。
【0020】
国際公開第2011/048352号は、薄膜ソーラーパネルを個別のセルに分割し、これらのセルを直列に電気的に接続するための方法と装置を記載している。当該装置は、適切な光学系によって供給される3つのレーザービーム、ならびに2以上のノズルによって届けられる絶縁性インクおよび導電性のインクを供給する処理ヘッドを使用する。これらの構成要素は全て、処理ヘッドの上に配置されており、当該処理ヘッドは、ソーラーパネル上を横切るヘッドの単一パスで(a single passage)1つの相互接続構造が作られるように、2つの隣接するセルの間の相互接続構造を処理する。
【0021】
十分な数のインク排出ノズルがあり、またこれらが処理ヘッドがどの方向に動いてもインクがレーザービームの作った溝に注がれるように配置してあれば、ヘッドがパネル上を両方の向きに横断することも可能である。
【0022】
基板の上を処理ヘッドが一回通過することで数個の相互接続構造を形成するために、レーザービーム伝送光学系と液体ノズルを数セット並行して使用することができる。相互接続構造は、処理ヘッドをセルの幅ないしはセルの幅の整数倍に等しい距離だけ、相互接続方向に垂直な方向に移動させ、処理ヘッドにパネル全体を横切らせることで形成される。しかしながら、全てのレーザービーム伝送系と液体ノズルは、基板に対してはコーティングを施された側からのみ、作用するよう配置されている。
【0023】
基板は透明であるので、1または複数のレーザービームが基板の反対側から基板に当たった方が望ましいこともある。このような場合、レーザービームはガラス基板を通過して、ソーラーセルの上部電極と下部電極、および活性層を構成する素材に対し、下から作用をする。
【0024】
活性材料としてアモルファスシリコン(α‐Si)をベースとするソーラーパネルの製造時に、活性層と上部電極層のスクライビングに使用したり、また活性材料としてCdTeを使用するソーラーパネルの製造時には3層全てのスクライビングに使用することも可能な、後側相互作用法が知られている。これらの既知の処理はいずれも、本発明が関連する1つに結合された処理とは非類似の、多段階処理を含んでいる。これら既知の処理はいずれも、処理ヘッドの同一パス内での物質の積層は含んでいない。
【0025】
本発明の好ましい態様においては、セル相互接続構造の形成のために、パネルのそれぞれ反対の側に対し配置された第1および第2の部分を含む、処理ヘッドの使用が提案されている。処理ヘッドの第1の部分は、基板の上部電極層、下部電極層と活性層でコーティングされた側に配置されており、セル相互接続構造の形成に必要な全ての絶縁性インクと導電性インクを届けるノズルを全て搭載している。処理ヘッドの第1の部分はまた、作動中にインクを硬化させるために必要な装置や、1または複数のレーザービームを伝送するための光学系を備えていてもよい。
【0026】
処理ヘッドの第2の部分は、基板の逆の、コーティングされていない側に配置されており、1または複数のレーザービームをデバイスの下側から送る。
【0027】
稼働に際しては、処理ヘッドの第1および第2の部分はパネル全体に渡り、一方はその上を、もう一方はその下を、一緒になって移動する。これは、2つの部分を物理的につなげるか、2つの部分の位置が組み合されたままになるようコントロールシステム付きの個別のリニアステージに配置させるかによって実現されてもよい。別の方法としては、処理ヘッドの2つの部分を固定させ、基板が両者の間を移動するようにしてもよい。この場合、2つの部分の互いへの相対的な位置が固定されることで、これら2つの部分が実質的に組み合わされているようにすることが望ましい。
【0028】
処理ヘッドの第1および第2の部分が、物理的に互いに組み合わされるか、第1の部分の動きを制御する操作信号および第2の部分の動きを制御する操作信号を電気的に「組み合わせる」ことによって、これらが一体的に移動するよう構成することが好ましいが、初期の配置を正確にし、その後もその配置を保持するように十分正確な制御を行うことで、両者を実質的に組み合わせることも可能である。
【0029】
上述の1つに結合された処理は、製造処理を簡素化するとともに処理の高速化を可能にするという点の他に、全ての切削ステップと積層ステップが正確に位置決めされ、また互いの位置が調整されるという点で、多大な強みを持つと考えられる。本発明はこれらの強みを、切削処理のうちの少なくとも幾つかがデバイスの下側からなされることが望ましい(或いは必要である)場合にまで拡張する。このことは、所望の切削部を形成するために使用される別の技術を可能にし、可能な選択肢においてより大きな柔軟さをもたらす。処理ヘッドの2つの部分が接続され、また/あるいは一体となって移動するよう構成されているため、1つに結合された処理の位置調整と速度の利点がこれら別の技術にまで及ぶ。本発明によらない場合、異なるステップを基板の別々の側から実行しても、処理の全ての段階を正確に揃えるのがより困難になるだけであると考えられる。
【0030】
また、レーザースクライビングのうちの幾つか、特に(3層全てを貫く)第1の切削部を作っていたものを、デバイスの上側から行うことも好まれる。従って1つを上から、2つを下から(またはその逆)など、切削ステップを基板の異なる側から実行できるというのは、強みとなる。
【0031】
上で示したように、レーザー切削ステップを下方から行うことの利点は、このことが異なる切削技術の使用を可能にするということである。上からのレーザー切削は、層の上表面から層の材料に作用して溝を形成するため、一般に物質の溶発を伴う。下からのレーザー切削は、物質は逆方向から照射を受けるので、形成しようとする溝の底部にある物質をその上の物質を除去ないし飛散させるように熱することで実行できる。溝の形状をよりよく制御できること、および/またはより低電力のレーザーが使用されることからこの技術が好まれる場合もある。基板の下からの切削は、溝から放出された物質がレーザーを基板に集束させる光学系の方に向かわないため、放出される物質による光学系の汚染が回避されるという点でも好都合となりうる。さらに、物質が基板のレーザービームから遠い方の側から(レーザービーム源に戻るように、ではなく)放出されるので、放出された物質を適切な除去ノズルなどで収集して、基板の他の場所に堆積するのを防ぐことが容易である(基板上方に位置する処理ヘッドの第1の部分は、破片収集装置のための空間を確保するために、必要であれば放出領域から遠ざけてもよい)。他の好適かつ選択可能な本発明の特徴は、明細書に添付の請求の範囲により明らかにされる。
【0032】
以下、本発明を添付の図面を参照して単なる例示として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】国際公開第2011/048352号に記載された既知の装置の一部を、拡大して概念的に図示した平面図である。本図は、3つのレーザービームと、1つのセル相互結合構造を作るために処理ヘッドに取り付けられた2つのインクジェットノズルの構成を図示したものである。
図2】国際公開第2011/048352号に記載された既知の装置の別の実施例を、拡大して概念的に図示したものである。本図は、3つのレーザービームと、処理ヘッドをいずれかの方向に動かすことで1つのセル相互結合構造を作るために処理ヘッドに取り付けられた、2セットの付随するインクジェットノズルの構成を図示したものである。
図3】国際公開第2011/048352号に記載された、薄膜デバイスを個別のセルに分割するための一連のレーザー処理およびインクジェット処理を図示したものである。
図4】国際公開第2011/048352号に記載された、基板を処理ヘッドに対して2つの方向に動かすための既知の装置を図示したものである。
図5図4に図示した装置(幾つかの部材を省略)の概略側面図である。
図6】国際公開第2011/048352号に記載の既知の処理ヘッドを、拡大して概念的に示した平面図である。本図は、レーザービームの1つの列とインクジェットノズルの2つの列が、どのように処理ヘッドに搭載され、パネルの上でのいずれかの方向への単一パス内に、複数の隣接するセル相互接続構造を形成するために使用することが可能であるか、図示したものである。
図7】薄膜デバイスを個別のセルに分割するための、本発明の第1の実施例に係る一連のレーザー処理とインクジェット処理を図示したものである。
図8図7に図示の処理で使用することが可能な装置の概略側面図である。
図9】薄膜デバイスを個別のセルに分割するための、本発明の第2の実施例に係る一連のレーザー処理とインクジェット処理を図示したものである。
図10図9に図示の処理で使用することが可能な装置の概略側面図である。
図11図7に図示の処理と図9に図示の処理で使用することが可能な装置の、別の形態の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は国際公開第2011/048352号に基づく先行技術を図示している。本図は、ヘッドの単一パス内で1つのセル相互結合構造を作るための、3つのレーザービームと処理ヘッドに取り付けられた2つのインクジェットノズルの第1の構成を図示している。ソーラーパネル1は、Y方向の長さに沿って複数のセルを含んでいる。相互接続はこのように、処理ヘッドのパネルに対するX方向への相対運動によって作られる。隣り合うセルが形成され、接続されることになる領域を含む、パネルの領域2は、本図の右側に拡大して示されている。これは、移動する処理ヘッドとそれに付随するレーザービームとインクジェットノズルの、1つのセル相互接続構造に対応する部分を図示したものである。ソーラーパネルは下部電極層、活性層および上部電極層を含み、第1、第2、第3のレーザービーム3、4、5は、3層全てを貫通して第1のスクライブ線6を、上の2層を貫通して第2のスクライブ線を、頂部層を貫通して第3のスクライブ線8を、それぞれ作る。第3のレーザービームは活性層を貫通してもよいが、下部電極層は貫通してはならない。本図は、処理ヘッドとそれに付随するレーザービームが、基板表面で第1のレーザービーム3が第2のレーザービーム4に対して先行し、第2のレーザービーム4が同様に第3のレーザービーム5に先行するように、基板に対してX方向に移動する様子を示したものである。インクジェットノズル9は処理ヘッドに取り付けられ、X方向に平行な線の上に位置しながら第1のレーザービーム3の位置を通り過ぎる。このノズル9は、第1のレーザースクライブ線6を充填するための絶縁性液体10の連続流または液滴流を注入する。第2のインクジェットノズル11は、第1のノズルに類似しつつもそれと同様ないしそれより大きな液滴噴出頻度で作動するか、放出される液滴のサイズにおいてそれと同様ないしより大きいか、複数のより小さなノズルで構成されているか、のいずれかであるが、同じく処理ヘッドに取り付けられ、処理ヘッドが基板の上を移動するときに第2のインクジェットノズル11が第1のインクジェットヘッド9と第2のレーザービーム4に追随するよう、X方向に位置する。この第2のインクジェットノズル11は導電性液体12の連続流か液滴流を注入する。当該ノズルは、液体12を基板表面に積層し、先に塗布された絶縁性液体10の上に導電性の橋絡を形成するように、第1および第2のレーザスクライブ線6、7の上をY方向に位置する。当該橋絡は、第1のスクライブ線6の左側の上部電極表面から、第2のスクライブ線7の底にある下部電極表面に延びている。処理ヘッドが基板上をX方向に横断する際、相互接続構造を形成し、完成させるための5つの処理は以下の通りである。
1)第1のレーザービーム3で、3層全てを貫く線6をレーザースクライブする。
2)第1のインクジェットノズル9により送られる絶縁性インク10で第1のレーザースクライブ線6を充填する。
3)第2のレーザービーム4で、上の2層を貫く線7をレーザースクライブする。
4)第2のインクジェットノズル11により送られる導電性インク12で、第1のレーザースクライブ線6から第2のレーザースクライブ線7にかけて導電性の橋絡を形成する。
5)第3のレーザービーム5で、一番上の層を貫く線7をレーザースクライブする。
【0035】
一般に、導電性インクを塗布する前に絶縁性インクを硬化させることが必要であるため、熱や紫外線(UV)を局所的に加える硬化装置(図示せず)が使用される。この装置は、ノズル9とノズル11の間など処理ヘッドの適切な位置に取り付けられる。静止した基板表面の上を処理ヘッドを(図示するように)X方向に動かす代わりに、処理ヘッドを固定してパネルをX方向の逆の向きに動かすことでレーザー処理とインクジェット処理の同じ一連の処理が得られる。
【0036】
国際公開第2011/048352号に示されている通り、レーザービームの位置と処理ヘッドのノズルには多くの代替的な構成がある。その全てのケースにおいて要件を満たす相互接続を形成するために必要なことは、
1)第1のレーザースクライブ処理は、常に第1の印刷処理に先行しなければならない。
2)第1の印刷処理は、常に第2の印刷処理に先行しなければならない。
3)第2のレーザースクライブ処理は、常に第2の印刷処理に先行しなければならない。
ということである。
【0037】
図1に図示したレーザービームとノズルの構成や、ノズルが第1および第2のレーザービームから見て片方の側にのみ存在するような構成では、処理ヘッドが基板の上を一つの方向に横断することによってのみ、相互接続が形成される。このような構成により相互接続の形成速度が制限されることもあり得るため、好ましい構成では、ノズルが第1および第2のレーザービームから見て両方の側にあり、このためどちらの方向にも相互接続形成が可能となる。
【0038】
図2は国際公開第2011/048352号に基づくさらに別の先行技術を図示したものである。本図は3つのレーザービームと、ヘッドのいずれの方向への稼働をも可能にするように配置された、第1のインクジェットヘッド2つと第2のインクジェットヘッド2つの構成を図示したものである。ソーラーパネル1はY方向の長さに沿って複数のセルを含んでいる。これは、パネルを処理ヘッドに対してX方向のどちらの向きに動かしても、相互接続が形成されるということを意味する。隣接するセルが接続される領域を含むパネルの領域2は本図の右側に拡大して図示されており、移動する処理ヘッドとそれに付随するレーザービームとインクジェットノズルの、1つのセル相互接続構造に対応する部分を図示している。第1、第2、第3のレーザービーム3、4、5は、3層全てを貫通して第1のスクライブ線を、上の2層を貫通して第2のスクライブ線を、頂部層を貫通して第3のスクライブ線を、それぞれ作る。2つの第1のインクジェットノズル9と9’は処理ヘッドに取り付けられ、X方向に平行な線の上で第1のレーザービームの両側に位置しつつ、第1のレーザービーム3の位置を通過する。これらの第1のノズルは、絶縁性液体の流れを注入して第1のレーザースクライブ線を充填する。2つのより大きな第2のインクジェットノズル、または多数のより小さなノズル、11と11’も処理ヘッドに取り付けられ、X方向に平行な線の上で第1のレーザービームの両側に位置し、第1のレーザービーム3の近くの位置を通過する。これらの第2のインクジェットノズルは、導電性液体の流れを注入する。基板表面を被覆する導電性液体が先に塗布された絶縁性液体の上に導電性の橋絡を形成するよう、ノズル11と11’は第1および第2のレーザースクライブ線6、7の上をY方向に配置され、当該橋絡は、第1のスクライブ線の左側の上部電極表面から、第2のスクライブ線の底にある下部電極表面に延びている。処理ヘッドが基板をX方向のどちらの向きに横断する際も、相互接続構造の形成と完成のために実行される3つの処理の順序が以下の通りとなるように、第1のインクジェットノズル各々のうちのいずれかと、対応する、第2のインクジェットノズルのいずれかが稼働する。
1)第1、第2、第3のレーザービームにより、第1、第2、第3のレーザースクライブを実行する。
2)処理ヘッドの移動する向きに応じ、第1のインクジェットノズル9または9’のいずれかにより届けられる絶縁性インクで、第1のレーザースクライブ線を充填する。
3)処理ヘッドの移動する向きに応じ、第2のインクジェットノズル11または11’のいずれかにより届けられる導電性インクで、第1のレーザースクライブ線を越えて第2のレーザースクライブ線に至る導電性橋絡を形成する。
【0039】
一般に、導電性インクを塗布する前に絶縁性インクを硬化させることが必要であるため、熱や紫外線(UV)を局所的に加える硬化装置(図示せず)が使用される。この装置は、ノズル9とノズル11の間やノズル9’とノズル11’の間など、処理ヘッドの適切な位置に取り付けられる。
【0040】
静止した基板表面の上を処理ヘッドを(図示するように)X方向に動かす代わりに、処理ヘッドを固定してパネルをX方向の逆の向きに動かすことでレーザー処理とインクジェット処理の同じ一連の処理が得られる。
【0041】
図3は、図2で図示の装置により基板表面に対し届けられるレーザー処理とインクジェット処理の時系列を示したものである。図3Aは、下部電極層、活性層および上部電極層で構成される層スタック13がその上に積層した、電極1を図示したものである。これらの層は、中途のレーザー処理を一切伴わずに順次積層される。図3Bは、次いで実行される3つのレーザー処理を図示したものである。第1のレーザービーム3がコーティングに入射し、3層全てを基板に至るまで貫く溝6をスクライブする。第2のレーザービーム4もコーティングに入射し、上2層を貫くが下部電極層は貫かない溝7をスクライブする。第3のレーザービーム5もコーティングに入射し、溝8をスクライブする。当該溝8は頂部電極層を貫いて活性層にも侵入してよいが、下部電極層を損なってはならない。図2に図示のレーザービームの構成では、これら3つのレーザースクライブは同時になされているが、このことは必須ではなく、これらは逐次なされてもよい。加えて、これらが行われる順序は重要ではない。3つのレーザー処理全てが完了すると、物質がインクジェット印刷により塗布される。図3Cは、絶縁性液体10がインクジェットノズル14によりどのように第1のレーザースクライブ線の中に塗布されるか、図示したものである。固体を形成するために液体10は直ちに紫外線乾燥されるか、後になって熱乾燥される。図3Dは、導電性であるか、導電性粒子を含む液体12が、インクジェットノズル15によって第1のスクライブ線の中の絶縁性材料10の上に、また第2のレーザースクライブ線の中に塗布される、次のステップを示したものである。液体12は引き続いて熱乾燥され、固体になる。液体12は第3のスクライブ線8にまでは広がらない。導電性材料12は絶縁性材料10をまたいで橋絡を形成し、左側の頂部電極層を右側の底部電極層に接続し、隣接セルを直列に接続する。
【0042】
図4は、図1または図2に図示のセル相互接続処理の実行に好適な装置を図示したものである。ソーラーパネル1は、互いに垂直で自身の縁に平行な2方向、X方向およびY方向に移動することが出来るように、ステッピングモータないしサーボモータ17、17’などの適切なモータで駆動される、トランスレーションステージ16、16’の上に積載された、平らなチャックプレート上に搭載されている。レーザーユニット18から発したビームはミラー19、19’によって、パネル上方に搭載された処理ヘッド20に導かれる。ビームを第1、第2、第3のレーザービームに分岐させる処理ヘッド内の光学系と、処理ヘッド上の付随する第1、第2のインクジェットノズルの詳細は図示されていない。実施に際しては、処理ヘッドは静止しており、パネルはY方向への一連の直線状の動き、すなわちその後にX方向への移動を伴う、基板を横切る各パス、によって移動する。処理ヘッドは、各パスごとの単一のセル相互接続処理を、図1に図示のヘッドの構成により1つの向きに行ってもよいし、図2に図示のヘッドの構成により両方の向きに行ってもよい。本図は処理ヘッドが静止し、基板が二軸方向に移動する様子を図示しているが、実施に際しては他の構成も可能である。好適な構成は1つの軸方向に移動する基板と、別の軸方向に移動する処理ヘッドを含んでいる。処理ヘッドが静止した基板の上を、互いに垂直な2軸方向に移動する構成も可能である。第1、第2、第3のレーザービームは、単一のレーザー源から発しても、複数の類似ないし非類似のレーザー源から発してもよい。
【0043】
図5は、国際公開第2011/048352号に基づく先行技術を図示したものである。この図は図4に図示の装置の簡略化図を示したものであり、1または多数のレーザーユニット18から発する3つのレーザービーム3、4、5全てと、第1のインクジェットノズル9、9’および第2のインクジェットノズル11、11’から発する絶縁性インクと導電性インク全てを、1つの処理ヘッドが基板の一方の側面にのみ届ける様子を強調している。当該一方の側面は、塗布されたコーティングのスタックがある側面である。
【0044】
図6は、図2に図示の個別の相互接続処理を行う装置をどのように、複数の相互接続処理を同時並行的に行う装置をもたらすよう拡張できるか、示したものである。本図は長さYに沿って複数のセルを持つソーラーパネル1を示している。数個のセルの間の接続を含むパネルの領域2は、本図の右側に拡大して図示されている。これは、移動する処理ヘッドとそれに付随するレーザービームやインクジェットノズルの、(本例では)5つのセル相互接続構造に対応する部分を示したものである。装置21は、第1、第2、第3のレーザービーム22の5つの平行なセットを、線に沿って保持し、位置合わせをしている。個々のビームは図示されていない。Y方向におけるビームのセット間の間隔を、セルの間隔と正確に合わせるために、この装置は図の平面に垂直な軸に対して回転することができる。第1、第2、第3のビームの5つのセットの並びは、3層を貫く5つの平行な第1の切削部を、第2および第3の層を貫く5つの平行な第2の切削部を、頂部層を貫く5つの平行な第3の切削部を、作る。装置23と23’は、5つの第1のレーザー切削部の中に絶縁性液体の5つの平行な線を塗布するために、5つの平行な第1のインクジェットノズル9ないし9’を線に沿って保持し、位置合わせをしている。Y方向におけるノズル間の間隔をセルの間隔と正確に合わせるために、この装置は図の平面に垂直な軸に対して回転することができる。第1のレーザー切削に絶縁性インクの塗布が続くように、第1のインクジェットノズルのいずれかのセットが処理ヘッドが基板表面に対してX方向のどちらの向きに移動するかに応じ、作動する。装置24と24’は、5つの第1の切削部の中の絶縁性液体の上と5つの第2の切削部の中に導電性液体の5つの平行な線を塗布するために、5つの平行な第2のインクジェットノズル11ないし11’を線に沿って保持し、位置合わせをしている。Y方向におけるノズル間の間隔をセルの間隔と正確に合わせるために、これらの装置は図の平面に垂直な軸に対して回転することができる。第1と第2のレーザー切削に引き続く絶縁性インクの塗布に導電性インクの塗布が続くように、第2のインクジェットノズルのいずれかのセットが、処理ヘッドが基板表面に対してX方向のどちらの向きに移動するかに応じ作動する。基板の領域が以下のものと順次出会うように、パネル1と処理ヘッドはX方向のいずれかの向きに、互いに相対的に動かされる。
1)第1、第2、第3のレーザービームの列
2)第1のインクジェットノズルの列
3)第2のインクジェットノズルの列
【0045】
図7は、本発明による処理の態様を解説したものであり、基板に届けられるレーザー処理とインクジェット処理の時系列を図示したものである。図7Aは、下部電極層、活性層および上部電極層で構成される層スタック13がその上に積層した、透明電極1を図示したものである。これらの層は、中途のレーザー処理を一切伴わずに順次積層される。図7Bは、次いで実行される3つのレーザー処理を図示したものであり、この例においてはこれらは基板の下側のコーティングされていない側から入射する。第1のレーザービーム3は下方からコーティングに作用し、3層全てを除去して、3層全てを超えて基板表面にまで達する溝6を形成する。第2のレーザービーム4も下方からコーティングに作用し、上の2層を除去して、これらを貫くが下部電極層は貫かない溝7を形成する。第3のレーザービーム5も下方からコーティングに作用し、少なくとも頂部層を除去して、頂部電極層を貫く溝8を形成する。レーザービーム5はセル相互接続構造の有効性に影響を与えずに、活性層を(図示するように)部分的にまたは全体的に除去してもよい。3つのレーザースクライブは同時になされてもよいし、逐次なされてもよい。これらが行われる順序は重要ではない。3つのレーザー処理全てが完了すると、物質がインクジェット印刷により塗布される。図7Cは、インクジェットノズル14により液体10がどのように第1のレーザースクライブ線の中に塗布されるかを図示したものである。固体を形成するために液体10は直ちに紫外線硬化されるか、後になって熱硬化される。図7Dは、導電性であるか、または導電性粒子を含有する液体12が、インクジェットノズル15を用いて第1のスクライブ線の中の絶縁性材料10の上と第2のレーザースクライブ線の中に塗布される、次のステップを図示したものである。液体12は、引き続いて熱ないしその他の手段で硬化され、固体となる。導電性液体12は、第3のスクライブ線8にまでは広がらない。導電性液体12は絶縁性材料10をまたいで橋絡を形成し、左側の頂部電極層を右側の底部電極層に接続し、隣接セルを直列に接続する。
【0046】
図8は、図7に図示の処理を実行するために使用が可能な、処理ヘッドの第1および第2の部分の構成を図示したものである。処理ヘッドの第1の部分20は、第1のインクジェットノズル9と9’および第2のインクジェットノズル11と11’から発する全ての絶縁性インクおよび導電性インクを、基板1の塗布されたコーティングのスタックがある側に届ける。処理ヘッドの第2の部分25は3つのレーザービーム3、4、5の全てを、ガラス基板を通過して基板の上側にある種々の層と作用できるよう基板に届ける。処理ヘッドの第1および第2の部分の、基板表面に平行な平面内における相対的な位置は、処理ヘッドの第1の部分の上のノズルによって積層されるインクと、処理ヘッドの第2の部分によって届けられるレーザービームによって層の中に作られる溝とが正確に一致するように調整され、保持される。
【0047】
第1、第2、第3のレーザービームは、単一のレーザー源から発射されても、多数のレーザー源から発射されてもよい。後者の場合は、レーザーは互いに類似するタイプのものであってもよいし、異なるタイプのものであってもよい。
【0048】
処理ヘッドと基板の間の相対運動は、処理ヘッドの2つの部分を静止させて基板を2軸方向に動かす方法、基板を1つの軸方向に動かし、処理ヘッドの2つの部分を一緒に別の軸方向に動かす方法、基板が静止した状態で処理ヘッドの2つの部分を一緒に互いに垂直な2軸方向に動かす方法など、幾つかの方法によって実現できる。
【0049】
図8に図示の構成を、図6に図示したタイプの装置を用いて、基板をまたぐ処理ヘッドの単一パス内に同時に複数のセル相互接続を形成するよう、拡張することが容易に可能である。この場合、単一の相互接続構造を作ることに対してのみ十分な、第1および第2のノズルを処理ヘッドの第1の部分に搭載するのではなく、並行して稼働する数セットの第1および第2のノズルを搭載するのに適切な装置が使用される。ノズルのセットは、セルの間隔ないしはセル複数個分の間隔だけ間が開けられている。これに加えて、処理ヘッドの第2の部分によって届けられる3つのレーザービームだけでなく、並行して稼働する数セットのレーザービームを届けるための適切な装置が使用される。レーザービームのセットは、セルの間隔、ないしはセル複数個分の間隔だけ間が開けられている。
【0050】
インクジェットノズルとレーザー源に加え、処理ヘッドの第1の部分には、処理ヘッドの第2の部分の上のレーザー源を用いてレーザー切削が行われた際、基板の上側から出る破片を除去する吸引ノズルなどの破片収集装置(図示せず)が備えられてもよい。
【0051】
図9は、本発明の他の好適な態様による、基板に届けられるレーザー処理とインクジェット処理の時系列を示している。処理ヘッドは対向する2つの部分よりなるが、この場合はレーザービームのうちの1つは、処理ヘッドの第1の部分によってコーティングされた側に届けられ、3つのレーザービームのうち残る2つは処理ヘッドの第2の部分によって、コーティングされていない側から基板に届けられる。図9Aは、下部電極層、活性層および上部電極層よりなる層スタック13がその上に積層された基板1を図示したものである。これらの層は、中途のレーザー処理を伴わずに順次積層される。図9Bは、次いで実行される3つのレーザー処理で、この場合には基板の両側から入射するものを図示したものである。第1のレーザービーム3は上方からコーティングに入射し、3層全てを貫いて基板にまで達する溝6をスクライブする。第2のレーザービーム4は下方からコーティングに作用して上の2層を除去し、上の2層は分断するが下部電極層は分断しない、溝7をスクライブする。第3のレーザービーム5も下方からコーティングに作用し、少なくとも頂部電極層を除去し、頂部電極層を分断する溝8をスクライブする。レーザービーム5は、セル相互接続構造の有効性に影響を与えずに、活性層を(図示するように)除去してもよい。これら3つのレーザースクライブは同時に行われても、逐次実行されてもよい。これらが行われる順序は重要ではない。3つのレーザー処理全てが完了すると、物質がインクジェット印刷により塗布される。図9Cは、液体10がインクジェットノズル14によって、第1のレーザースクライブ線の中にどのように塗布されるかを図示したものである。固体を形成するために液体10は直ちに紫外線硬化されるか、後になってから熱硬化される。図9Dは、導電性であるか、または導電性粒子を含有する液体12が、インクジェットノズル15によって第1のスクライブ線の中の絶縁性材料10の上と、第2のレーザースクライブ線の中に塗布される、次のステップを図示したものである。続いて液体12は、熱硬化され、固体となる。導電性材料12は、第3のスクライブ線8にまでは広がらない。導電性材料12は絶縁性材料10をまたいで橋絡を形成し、左側の頂部電極層を右側の底部電極層に接続し、隣接セルを直列に接続する。
【0052】
図10は、図9に図示の処理を実行するために使用が可能な、処理ヘッドの第1および第2の部分の構成を図示したものである。処理ヘッドの第1の部分20は、第1のインクジェットノズル9、9’および第2のインクジェットノズル11、11’から発する全ての絶縁性インクおよび導電性インクを、基板1の塗布されたコーティングのスタックがある側に届ける。処理ヘッドの第1の部分20によって、レーザー源18より発した第1のレーザービーム3が基板の上側のコーティングされた側に届けられる。処理ヘッドの第2の部分25は、第2、第3のレーザービーム4、5がガラス基板を通り抜けて基板の上側にある種々の層と作用できるよう基板に届ける。第2および第3のレーザービームは、同じ単一のレーザー源から発射されても、多数のレーザー源から発射されてもよい。後者の場合は、レーザーは同じタイプのものであっても、異なるタイプのものであってもよい。
【0053】
図7、8、9、10に図示されたもの以外の、多くのレーザービームの分類が可能である。
a)第1、第2のレーザービームをコーティングされた側から、第3のレーザービームをコーティングされていない側から
b)第1、第3のレーザービームをコーティングされた側から、第2のレーザービームをコーティングされていない側から
c)第2、第3のレーザービームをコーティングされた側から、第1のレーザービームをコーティングされていない側から
d)第1、第2のレーザービームをコーティングされていない側から、第3のレーザービームをコーティングされた側から
e)第1、第3のレーザービームをコーティングされていない側から、第2のレーザービームをコーティングされた側から
【0054】
図10に図示の構成と上にリストアップしたもの全てもまた、図6に図示したタイプの装置を用いて、基板をまたぐ処理ヘッドの単一パス内に同時に複数のセル相互接続を形成するよう、拡張することが容易に可能である。この場合は、単一の相互接続構造を作ることに対してのみ十分な、第1および第2のノズルを処理ヘッドの第1の部分に搭載するのではなく、並行して稼働する数セットの第1および第2のノズルを搭載するために適した装置が使用される。ノズルのセットは、セルの間隔、ないしはセル複数個分の間隔だけ間が開けられている。加えて、処理ヘッドの第1および第2の部分の組み合わせによって届けられる、3つのレーザービーム1セットのみでなく、並行して作動する数セットの3つのレーザービームを届けるための適切な装置が使用される。レーザービームのセットは、セルの間隔、ないしはセル複数個分の間隔だけ間が開けられている。
【0055】
図11は、上述した相互接続形成処理を実行するための、代替的な装置を図示したものである。図4、5、8、10は全て、基板がコーティングされた側を上にして水平に配置され、処理ヘッドの第1の部分が基板の上方にあり、第2の部分が基板の下方にある、好適な構成を図示したものである。その他の構成も可能であり、好適なものを図11に図示している。この場合は、基板1は垂直に配置され、その両側に処理ヘッドの第1および第2の部分がある。図示された構成では、処理ヘッドの第1の部分20は、絶縁性インクと導電性インクを基板のコーティングされた側に届けるための、第1のインクジェットノズル9、9’および第2のインクジェットノズル11、11’を含み、処理ヘッドの第2の部分25は、(1ないし複数の)レーザー源18からの第1、第2、第3のレーザービーム3、4、5を、基板のコーティングされた側とは反対の側に届ける。セル相互接続構造は垂直であり、図示されているように、相互接続構造を形成する処理ヘッドの2つの部分は基板の両側を垂直なX方向に一緒に移動し、基板は装置の間を水平なY方向に移動する。
【0056】
第1、第2、第3のレーザービームの一部が、処理ヘッドの第1の部分によって届けられるような構成も可能である。上述の処理と装置には、幾つか重要な特徴がある。
1)処理ヘッドの第1および第2の部分は、基板のそれぞれ反対の側に対して位置する。
2)基板のコーティングされた側に対して配置された処理ヘッドの第1の部分は、全ての絶縁性インクと導電性インクを届ける。
3)基板のコーティングされていない側に対して配置された処理ヘッドの第2の部分は、少なくとも1つのレーザービームを届ける。
4)処理ヘッドの第2の部分によって届けられないレーザービームは、処理ヘッドの第1の部分によって届けられる。
5)処理ヘッドの第1および第2の部分の位置は、これらが一体となって(基板に対して相対的に)移動するように、互いに固定される。
6)処理ヘッドの第1および第2の部分は、基板をまたぐ単一パス内に、一緒にセル相互接続を形成する。
7)処理ヘッドは、単一の方向ないしは双方向に相互接続構造を形成するよう、構成が可能である。
8)処理ヘッドは、単一パス内に1または複数の相互接続を形成するよう、構成が可能である。
9)基板は水平でも垂直でもよい。
10)処理ヘッドの第1の部分によって実行される、1または複数のレーザー層スクライビング処理は、機械的スクライブ処理に置き換えられてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11