特許第6041876号(P6041876)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6041876光学材料用重合性組成物、当該組成物から得られる光学材料およびプラスチックレンズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041876
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】光学材料用重合性組成物、当該組成物から得られる光学材料およびプラスチックレンズ
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/04 20060101AFI20161206BHJP
   G02B 5/23 20060101ALI20161206BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   G02B1/04
   G02B5/23
   G02C7/10
【請求項の数】6
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-522565(P2014-522565)
(86)(22)【出願日】2013年6月19日
(86)【国際出願番号】JP2013066812
(87)【国際公開番号】WO2014002844
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2014年7月17日
(31)【優先権主張番号】特願2012-143125(P2012-143125)
(32)【優先日】2012年6月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】龍 昭憲
【審査官】 高松 大
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−525462(JP,A)
【文献】 特表2004−500319(JP,A)
【文献】 特開2004−078052(JP,A)
【文献】 米国特許第06187444(US,B1)
【文献】 米国特許第05851593(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/04
G02B 5/23
G02C 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネートから選択される1種以上のイソシアネート化合物と、
(B)ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、2,5-ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、および一般式(2)
【化1】
(式中、a、bは、独立して1〜4の整数を示し、cは1〜3の整数を示す。Zは水素またはメチル基であり、Zが複数存在する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)で表される化合物よりなる群から選択される1種以上である二官能以上の活性水素化合物と、
(C)下記式(6)
【化2】
で表されるフォトクロミック化合物と、を含む、光学材料用重合性組成物(ただし、下記式(1)
【化3】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Phはフェニレン基を示し、j、nは同一又は異なる4〜20の整数を示し、k、p、mは0又は1を示す。)
で示されるジ(メタ)アクリル基を有する重合性単量体と、フォトクロミック化合物と、ポリオール又はポリチオールと、ポリイソシアネートとを含む組成物を除く。)。
【請求項2】
前記イソシアネート化合物(A)は、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタンである、請求項1に記載の光学材料用重合性組成物。
【請求項3】
前記活性水素化合物(B)は、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、およびジエチレングリコールビスメルカプトプロピオネートよりなる群から選択される1種以上である、請求項1または2に記載の光学材料用重合性組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の重合性組成物からなる光学材料。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の重合性組成物からなる基材を備える、プラスチックレンズ。
【請求項6】
(A)2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネートから選択される少なくとも1種のイソシアネート化合物と、(B)ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、2,5-ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、および一般式(2)
【化4】
(式中、a、bは、独立して1〜4の整数を示し、cは1〜3の整数を示す。Zは水素またはメチル基であり、Zが複数存在する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)で表される化合物よりなる群から選択される1種以上である二官能以上の活性水素化合物と、(C)下記式(6)
【化5】
で表されるフォトクロミック化合物とを、一括混合して、光学材料用重合性組成物を調製する工程と、
前記光学材料用重合性組成物を注型重合することによりレンズ基材を形成する工程を含む、プラスチックレンズの製造方法(ただし、前記光学材料用重合性組成物から、下記式(1)
【化6】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Phはフェニレン基を示し、j、nは同一又は異なる4〜20の整数を示し、k、p、mは0又は1を示す。)
で示されるジ(メタ)アクリル基を有する重合性単量体と、フォトクロミック化合物と、ポリオール又はポリチオールと、ポリイソシアネートとを含む組成物を除く。)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトクロミック化合物を含む光学材料用重合性組成物、当該組成物から得られる光学材料およびプラスチックレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは、無機レンズに比べ、軽量で割れ難いことから、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学素子に急速に普及してきている。近年では、フォトクロミック性能を有するプラスチックレンズの開発が進められている。
そのようなものとして、特許文献1〜4に記載の技術を挙げることができる。
【0003】
特許文献1には、所定のフォトクロミック化合物と、ジ(メタ)アクリレート化合物とを含む組成物からなる、レンズが記載されている。0009段落には、屈折率の高いウレタン樹脂やチオウレタン樹脂を用いた場合、モノマーの段階で樹脂原料であるイソシアネートがフォトクロミック化合物と反応し、全くフォトクロミック性能を呈しなくなると記載されている。
【0004】
特許文献2には、クロメン骨格を有するフォトクロミック化合物とフェノール化合物を含む組成物からなるコーティング層を、チオウレタン系プラスチックレンズの表面に設けたレンズが開示されている。
【0005】
特許文献3には、チオウレタン樹脂からなるレンズ基材と、該基材上に、フォトクロミック化合物とラジカル重合性単量体とを含む溶液を塗布することで形成されたフォトクロミック膜とを有するフォトクロミックレンズが開示されている。
なお、特許文献4には、フォトクロミック特性を有する化合物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−272036号公報
【特許文献2】特開2005―23238号公報
【特許文献3】特開2008―30439号公報
【特許文献4】特開2011―144181号公報
【特許文献5】米国特許6506538号
【特許文献6】特開2005−305306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの文献記載の発明は以下の点で問題を有していた。
【0008】
特許文献1〜3に記載されたフォトクロミックレンズは、ウレタン樹脂やチオウレタン樹脂からなるレンズ基材上に、フォトクロミック膜が設けられている。特許文献1の0009段落に記載のように、フォトクロミック化合物が、モノマーであるイソシアネートと反応し、全くフォトクロミック性能を呈しなくなるためであった。
【0009】
このような構成のレンズを得るためには、レンズ基材上に、フォトクロミック膜を設ける必要があるため、製造工程が煩雑となり製造安定性に改善の余地あった。また、積層構造であるため、界面での剥離や屈折率の調整等の問題が生じ、そのため、製品の歩留まりが低下する可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下に示すことができる。
[1] (A)2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネートから選択される1種以上のイソシアネート化合物と、
(B)ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、2,5-ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、および一般式(2)
【化1】
(式中、a、bは、独立して1〜4の整数を示し、cは1〜3の整数を示す。Zは水素またはメチル基であり、Zが複数存在する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)で表される化合物よりなる群から選択される1種以上である二官能以上の活性水素化合物と、
(C)下記式(6)
【化2】
で表されるフォトクロミック化合物と、を含む、光学材料用重合性組成物(ただし、下記式(1)
【化3】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Phはフェニレン基を示し、j、nは同一又は異なる4〜20の整数を示し、k、p、mは0又は1を示す。)
で示されるジ(メタ)アクリル基を有する重合性単量体と、フォトクロミック化合物と、ポリオール又はポリチオールと、ポリイソシアネートとを含む組成物を除く。)。
[2] 前記イソシアネート化合物(A)は、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタンである、[1]に記載の光学材料用重合性組成物。
[3] 前記活性水素化合物(B)は、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、およびジエチレングリコールビスメルカプトプロピオネートよりなる群から選択される1種以上である、[1]または[2]に記載の光学材料用重合性組成物。
[4] [1]乃至[3]のいずれかに記載の重合性組成物からなる光学材料。
[5] [1]乃至[3]のいずれかに記載の重合性組成物からなる基材を備える、プラスチックレンズ。
[6] (A)2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネートから選択される少なくとも1種のイソシアネート化合物と、(B)ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、2,5-ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、および一般式(2)
【化4】
(式中、a、bは、独立して1〜4の整数を示し、cは1〜3の整数を示す。Zは水素またはメチル基であり、Zが複数存在する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)で表される化合物よりなる群から選択される1種以上である二官能以上の活性水素化合物と、(C)下記式(6)
【化5】
で表されるフォトクロミック化合物とを、一括混合して、光学材料用重合性組成物を調製する工程と、
前記光学材料用重合性組成物を注型重合することによりレンズ基材を形成する工程を含む、プラスチックレンズの製造方法(ただし、前記光学材料用重合性組成物から、下記式(1)
【化6】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Phはフェニレン基を示し、j、nは同一又は異なる4〜20の整数を示し、k、p、mは0又は1を示す。)
で示されるジ(メタ)アクリル基を有する重合性単量体と、フォトクロミック化合物と、ポリオール又はポリチオールと、ポリイソシアネートとを含む組成物を除く。)。
【発明の効果】
【0020】
本発明の光学材料用重合性組成物によれば、脂肪族、脂環族イソシアネートを用いることにより、フォトクロミック化合物を含むウレタン樹脂系光学材料またはチオウレタン樹脂系光学材料およびプラスチックレンズを、フォトクロミック化合物の性能低下を起こすことなく得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の光学材料用重合性組成物を、以下の実施の形態に基づいて説明する。
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、
(A)脂肪族イソシアネート化合物および脂環族イソシアネート化合物から選択される1種以上のイソシアネート化合物と、
(B)二官能以上の活性水素化合物と、
(C)フォトクロミック化合物と、を含んでなる。
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、下記のような特定の(A)イソシアネート化合物と(C)フォトクロミック化合物とを用いることにより、ウレタン樹脂系光学材料またはチオウレタン樹脂系光学材料においてもフォトクロミック性能を発揮することができる。
以下、各成分について説明する。
【0022】
[(A)イソシアネート化合物]
本実施形態における(A)イソシアネート化合物は、炭素数2〜25の脂肪族イソシアネート化合物および脂環族イソシアネート化合物から選択される1種以上のイソシアネート化合物である。なお、本実施形態において、脂肪族イソシアネート化合物は、一部に芳香環を含むイソシアネート化合物を含まない。
脂肪族イソシアネート化合物としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,8−オクタメチレンジイソシアネート等を挙げることができ、少なくとも一種を組み合わせて用いることができる。
脂環族イソシアネート化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物、2,5−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート等を挙げることができ、少なくとも一種を組み合わせて用いることができる。
【0023】
【化5】
【0024】
式(1)中、QおよびQは同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基を示す。本実施形態においては、QおよびQは水素原子であることが好ましい。
【0025】
式中、XおよびXは同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基を示す。本実施形態においては、XおよびXは水素原子であることが好ましい。
上記一般式(1)で表される化合物としては、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタンを挙げることができる。
【0026】
本実施形態において、(A)イソシアネート化合物として、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、一般式(1)で表される化合物、イソホロンジイソシアネート、2,5(6)−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタンから選択される少なくとも一種以上を用いることが好ましい。
(A)イソシアネート化合物としては、脂環族イソシアネート化合物が好ましく、その中でも一般式(1)で表される化合物、イソホロンジイソシアネート、2,5(6)−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタンから選択される少なくとも一種以上がより好ましく、一般式(1)で表される化合物であるビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタンが特に好ましい。
これらの化合物を用いることにより、フォトクロミック化合物を含むウレタン樹脂系光学材料またはチオウレタン樹脂系光学材料およびプラスチックレンズを提供することができる。
【0027】
本実施形態においては、脂肪族イソシアネート化合物および脂環族イソシアネート化合物から選択される1種以上のイソシアネート化合物、特に上記特定のイソシアネートを用いることにより、イソシアネート化合物とフォトクロミック化合物との反応を抑制することができ、フォトクロミック化合物の性能を維持することができる。これは、特定のイソシアネート中では、フォトクロミック化合物の溶解性が低いためであると推定される。
【0028】
[(B)二官能以上の活性水素化合物]
(B)二官能以上の活性水素化合物としては、特に限定されるものではないが、ポリオール化合物、ポリチオール化合物、ヒドロキシ基を有するチオール化合物等を挙げることができる。これらは適宜組み合わせて用いることができる。
【0029】
ポリオール化合物としては、たとえばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ブタントリオール、 1,2−メチルグルコサイド、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール、エリスリトール、スレイトール、リビトール、アラビニトール、キシリトール、アリトール、マニトール、ドルシトール、イディトール、グリコール、イノシトール、ヘキサントリオール、トリグリセロース、ジグリペロール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、シクロブタンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−ジメタノール、ビシクロ[4,3,0]−ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、トリシクロ[5,3,1,1]ドデカンジオール、ビシクロ[4,3,0]ノナンジメタノール、トリシクロ[5,3,1,1]ドデカン−ジエタノール、ヒドロキシプロピルトリシクロ[5,3,1,1]ドデカノール、スピロ[3,4]オクタンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、1,1'−ビシクロヘキシリデンジオール、シクロヘキサントリオール、マルチトール、ラクトース等の脂肪族ポリオール;
ジヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシナフタレン、テトラヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゼン、ベンゼントリオール、ビフェニルテトラオール、ピロガロール、(ヒドロキシナフチル)ピロガロール、トリヒドロキシフェナントレン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、キシリレングリコール、ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノールA−ビス−(2−ヒドロキシエチルエーテル)、テトラブロムビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールA−ビス−(2−ヒドロキシエチルエーテル)等の芳香族ポリオール;
ジブロモネオペンチルグリコール等のハロゲン化ポリオール;
エポキシ樹脂等の高分子ポリオールが挙げられる。本実施形態においては、これらから選択される少なくとも一種を組み合わせて用いることができる。
【0030】
また、ポリオール化合物として他に、シュウ酸、グルタミン酸、アジピン酸、酢酸、プロピオン酸、シクロヘキサンカルボン酸、β−オキソシクロヘキサンプロピオン酸、ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、サリチル酸、3−ブロモプロピオン酸、2−ブロモグリコール、ジカルボキシシクロヘキサン、ピロメリット酸、ブタンテトラカルボン酸、ブロモフタル酸などの有機酸と上記ポリオールとの縮合反応生成物;
上記ポリオールとエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどアルキレンオキサイドとの付加反応生成物;
アルキレンポリアミンとエチレンオキサイドや、プロピレンオキサイドなどアルキレンオキサイドとの付加反応生成物;さらには、
ビス−[4−(ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルフィド、ビス−[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]スルフィド、ビス−[4−( 2,3−ジヒドロキシプロポキシ)フェニル]スルフィド、ビス−[4−(4−ヒドロキシシクロヘキシロキシ)フェニル]スルフィド、ビス−[2−メチル−4−(ヒドロキシエトキシ)−6−ブチルフェニル]スルフィドおよびこれらの化合物に水酸基当たり平均3分子以下のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドが付加された化合物;
ジ−(2−ヒドロキシエチル)スルフィド、1,2−ビス−(2−ヒドロキシエチルメルカプト)エタン、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジスルフィド、1,4−ジチアン−2,5−ジオール、ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)スルフィド、テトラキス(4−ヒドロキシ−2−チアブチル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(商品名ビスフェノールS)、テトラブロモビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールS、4,4'−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチルチオエチル)−シクロヘキサンなどの硫黄原子を含有したポリオール等が挙げられる。本実施形態においては、これらから選択される少なくとも一種を組み合わせて用いることができる。
【0031】
ポリチオール化合物としては、例えば、メタンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール、1,2-シクロヘキサンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2-メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3-メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)エタン、1,2-ビス(3-メルカプトプロピルチオ)エタン、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2-メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3-メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3-ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5-ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、2,5-ジメルカプト-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプトメチル-2,5-ジメチル-1,4-ジチアン、及びこれらのチオグリコール酸およびメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2―メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3―メルカプトプロピネート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(2-メルカプトアセテート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(3-メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、トリス(メルカプトエチルチオ)メタン等の脂肪族ポリチオール化合物;
1,2-ジメルカプトベンゼン、1,3-ジメルカプトベンゼン、1,4-ジメルカプトベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5-トリメルカプトベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,5-トルエンジチオール、3,4-トルエンジチオール、1,5-ナフタレンジチオール、2,6-ナフタレンジチオール等の芳香族ポリチオール化合物;
2-メチルアミノ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、3,4-チオフェンジチオール、ビスムチオール、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン等の複素環ポリチオール化合物;
下記一般式(2)
【0032】
【化6】
【0033】
(式中、a、bは、独立して1〜4の整数を示し、cは1〜3の整数を示す。Zは水素またはメチル基であり、Zが複数存在する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)で表される化合物等
を挙げることができるが、これら例示化合物のみに限定されるものではない。本実施形態においては、これらから選択される少なくとも一種を組み合わせて用いることができる。
【0034】
ヒドロキシ基を有するチオール化合物としては、例えば、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、グルセリンビス(メルカプトアセテート)、4−メルカプトフェノール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、ペンタエリスリトールトリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(チオグリコレート)等
を挙げることができるが、これら例示化合物のみに限定されるものではない。
【0035】
さらにこれら活性水素化合物のオリゴマーや塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換体を使用しても良い。これら活性水素化合物は単独でも、2種類以上を混合しても使用することができる。
【0036】
チオウレタン樹脂モノマーとしては、ポリチオール化合物が好ましく使用される。例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、2,5-ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、一般式(2)の化合物から選択される少なくとも一種が好ましく使用され、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、一般式(2)の化合物から選択される少なくとも一種が特に好ましく使用される。
【0037】
本実施形態において、二官能以上の活性水素化合物(B)としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、一般式(2)の化合物、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)から選択される少なくとも一種が特に好ましく使用され、
4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、一般式(2)で表される化合物であるジエチレングリコールビスメルカプトプロピオネートから選択される少なくとも一種が特に好ましく使用される。
【0038】
[(C)フォトクロミック化合物]
本実施形態においては、(C)フォトクロミック化合物として下記一般式(3)で表される化合物(以下、化合物(3)とも表記する。)を用いることができる。
【0039】
【化7】
【0040】
第1の実施の形態においては、以下のような置換基を有する。
式中、RおよびRは同一でも異なっていてもよく、独立して、水素;
炭素数1〜12の直鎖または分岐アルキル基;
炭素数3〜12のシクロアルキル基;
置換または無置換である、炭素数6〜24のアリール基または炭素数4〜24のヘテロアリール基;
アラルキルまたはヘテロアラルキル基(炭素数1〜4の直鎖または分岐アルキル基が前記のアリール基またはヘテロアリール基で置換されている。)を示す。
【0041】
置換された炭素数6〜24のアリール基または置換された炭素数4〜24のヘテロアリール基の置換基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜12の直鎖または分枝のアルキル基、炭素数1〜12の直鎖または分枝のアルコキシ基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された炭素数1〜12の直鎖または分枝のハロアルキル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された炭素数1〜12の直鎖または分枝のハロアルコキシ基、少なくとも一つの炭素数1〜12の直鎖または分枝のアルキル基またはアルコキシ基により置換されたフェノキシ基またはナフトキシ基、炭素数2〜12の直鎖または分枝のアルケニル基、−NH基、−NHR基、−N(R)基(Rは炭素数1〜6の直鎖または分枝のアルキル基である。Rが2つ存在する場合、2つのRは同一でも異なっていてもよい。)、およびメタクリロイル基またはアクリロイル基から少なくとも1つ選択される。
【0042】
3は同一でも異なっていてもよく、独立して、ハロゲン原子;
炭素数1〜12の直鎖または分岐アルキル基;
炭素数3〜12のシクロアルキル基;
炭素数1〜12の直鎖または分岐アルコキシ基;
少なくとも1つのハロゲン原子で置換された炭素数1〜12の直鎖または分枝のハロアルキル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された炭素数3〜12のハロシクロアルキル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された炭素数1〜12の直鎖または分岐ハロアルコキシ基;
置換または無置換である、炭素数6〜24のアリール基または炭素数4〜24のヘテロアリール基(置換基として、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜12の直鎖または分枝のアルキル基、炭素数1〜12の直鎖または分枝のアルコキシ基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された炭素数1〜12の直鎖または分枝のハロアルキル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された炭素数1〜12の直鎖または分枝のハロアルコキシ基、少なくとも一つの炭素数1〜12の直鎖または分枝のアルキル基またはアルコキシ基により置換されたフェノキシ基またはナフトキシ基、炭素数2〜12の直鎖または分枝のアルケニル基、およびアミノ基、から選択される少なくとも1つの置換基を有する。);
アラルキルまたはヘテロアラルキル基(炭素数1〜4の直鎖または分岐アルキル基が前記のアリール基またはヘテロアリール基で置換されている。);
置換または無置換のフェノキシまたはナフトキシ基(置換基として、炭素数1〜6の直鎖または分岐アルキル基またはアルコキシ基から選択される少なくとも1つの置換基を有する。);
−NH2、−NHR、−CONH2、または−CONHR
(Rが、炭素数1〜6の直鎖または分枝のアルキル基である。);
−OCOR8または−COOR8(ここで、R8が、炭素数1〜6の直鎖または分枝のアルキル基、または炭素数3〜6のシクロアルキル基、またはR1、R2において、置換アリールまたは置換ヘテロアリール基の置換基の少なくとも1つにより置換されているフェニル基または無置換のフェニル基である。);
を表す。
【0043】
少なくとも2つの隣接するR同士が結合し、Rが結合している炭素原子を含んで、1つ以上の芳香環基または非芳香環基を形成することができる。芳香環基または非芳香環基は、酸素、硫黄、及び窒素からなる群より選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい1つの環または2つのアネル化された環を含む。
【0044】
mが0から4までの整数であり;
Aは、下記式(A)〜(A
【0045】
【化8】
【0046】
を表す。
これらのアネル化環(A1)から(A5)において、点線が、一般式(3)のナフトピラン環の炭素C5炭素C6結合を表す。アネル化環(A4)または(A5)のα結合が、一般式(3)のナフトピラン環の炭素C5または炭素C6に結合される。
【0047】
4が、同じかまたは異なり、独立して、OH、炭素数1〜6の直鎖または分枝のアルキル基またはアルコキシ基を表し、もしくは2つのR4がカルボニル(CO)を形成する。
【0048】
5、R6およびR7が、独立して、ハロゲン原子(好ましくはフッ素、塩素または臭素);
炭素数1〜12の直鎖または分枝のアルキル基(好ましくは、炭素数1〜6の直鎖または分枝のアルキル基);
少なくとも1つのハロゲン原子により置換された、炭素数1〜6の直鎖または分枝のハロアルキル基(好ましくは、フルオロアルキル基);
炭素数3〜12のシクロアルキル基;
炭素数1〜6の直鎖または分枝のアルコキシ基;
置換または無置換のフェニルまたはベンジル基(置換基として、一般式(3)のR、R基が独立してアリールまたはヘテロアリール基に対応する場合、R、R基の定義において上述した置換基の少なくとも1つを有する。);
−NH2、−NHR
(ここで、Rが、炭素数1〜6の直鎖または分枝のアルキル基である。);
置換または無置換であるフェノキシまたはナフトキシ基(置換基として、少なくとも炭素数1〜6の直鎖または分枝のアルキル基またはアルコキシ基を有する。);
−COR9、−COOR9または−CONHR9基(ここで、R9が、炭素数1〜6の直鎖または分枝のアルキル基、または炭素数3〜6のシクロアルキル基、または置換または無置換のフェニルまたはベンジル基(置換基として、一般式(3)のR、R基が独立してアリールまたはヘテロアリール基に対応する場合、R1、R2基の定義において上述した置換基の少なくとも1つを有する)を表す。)を表す。
【0049】
nが0から6までの整数であり、oが0から2までの整数であり、pが0から4までの整数であり、qが0から3までの整数である。
【0050】
一般式(3)のフォトクロミック化合物(C)は、求められている用途に適用される変色反応速度と組み合わされ、40℃でさえ高い着色適性を有する。容易に達成できる色は、オレンジから青にまで及ぶ。
第1の実施態様において、化合物(3)のAが、上述したようなアネル化環(A1)または(A2)である化合物を挙げることができる。
【0051】
第2の実施態様において、化合物(3)のAが、上述したようなアネル化環(A3)、(A4)または(A5)である化合物を挙げることができる。
【0052】
なお、本実施態様において、A=(A1)である化合物(3)、A=(A2)である化合物(3)、A=(A3)である化合物(3)、A=(A4)である化合物(3)、およびA=(A5)である化合物(3)からなる群より選択される少なくとも1つの異なる種類に属する化合物(3)の混合物も包含する。
【0053】
第3の実施態様における化合物は、少なくとも2つの隣接するR3基が芳香族基または非芳香族基を形成している一般式(3)の化合物である。これらの芳香族基または非芳香族基は、酸素、硫黄および窒素からなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子を必要に応じて含む、1つの環(例えば、フェニル基)または2つのアネル化された環(例えば、ベンゾフラン基)を有する。アネル化された環は、R1および/またはR2におけるアリールまたはヘテロアリール基の置換基から選択される少なくとも1つの置換基により必要に応じて置換されている。
【0054】
この第3の態様における一群には、特に、2つの隣接するR3が少なくとも1つのアネル化環、例えばベンゾ基を形成し、(A1)、(A2)、(A3)、(A4)または(A5)に対応する少なくとも1つの脂環および/または芳香環Aがフェナントレン骨格の炭素5および6に結合している化合物(3)を含む。
【0055】
第3の態様における化合物は、特に、2つの隣接するR3が少なくとも1つのアネル化環、例えばベンゾ基を形成し、少なくとも1つの置換又は無置換の脂環または芳香環がフェナントレン骨格の炭素5および6に連結しているナフトピラン(I)である。
【0056】
第4の実施態様における化合物は、Aが、水素とは異なる少なくとも1つのR4置換基を有する(A1)または(A2)に対応し、かつ少なくとも2つの隣接するR3が、少なくとも1つの芳香族基または非芳香族基を形成しない化合物を除いた、一般式(3)の化合物である。除外される芳香族基または非芳香族基は、酸素、硫黄および窒素からなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子を必要に応じて含む、1つの環(例えば、フェニル基)または2つのアネル化された環(例えば、ベンゾフラン基)を有し、R1および/またはR2におけるアリールまたはヘテロアリール基の置換基から選択される少なくとも1つの置換基により必要に応じて置換されている環を有する。
【0057】
この第4の態様による化合物は、特に、2つのRがアネル化環を形成しない、例えば、m=1およびR3=−OMeであり、かつナフト骨格の炭素5および6が、(A1)および(A2)とは異なる少なくとも1つの脂環Aに連結されているナフトピラン(I)である。
【0058】
好ましくは、本実施形態による化合物は、一般式(3)において、
1、R2は同一でも異なっていてもよく、独立して、その基本構造が、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ピリジル、フリル、ベンゾフリル、ジベンゾフリル、N−(C1−C6)アルキルカルバゾール、チエニル、ベンゾチエニル、ジベンゾチエニル、ユロリジニル基からなる群より選択される、必要に応じて置換されたアリールまたはヘテロアリール基を表し、R1および/またはR2は好ましくはパラ置換されたフェニル基を表す化合物、または
1およびR2が結合して、アダマンチルまたはノルボルニル基を形成している化合物である。
【0059】
化合物(3)として、下記一般式(4)で表される化合物を好ましく用いることができる。
【0060】
【化9】
【0061】
Ar、Arは、芳香族基であり、これらは同一でも異なっていてもよく、置換されていてもよいベンゼン環またはチオフェン環を表す。ベンゼン環またはチオフェン環の置換基としては、炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキルモノ(またはジ)置換アミノ基を挙げることができる。R、R、R、m、n、pは前記と同義である。
【0062】
化合物(3)として、下記一般式(5)で表される化合物をさらに好ましく用いることができる。
【0063】
【化10】
【0064】
式(5)中、R10、R11はお互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキルモノ(またはジ)置換アミノ基を表す。mが2のとき、隣接するR同士が結合し、Rが結合している炭素原子を含んで環構造を形成することができる。r、sは、0〜4の整数である。上記環構造は、置換または無置換である、炭素数6〜24のアリール基または炭素数3〜24のヘテロアリール基である。
、R、R、m、n、pは前記と同義である。
【0065】
一般式(5)で示される化合物の具体例としては、下記式(6)または下記式(7)で示される化合物が挙げられる。本発明においては、式(6)で示される化合物が好ましい。
【0066】
【化11】
【0067】
【化12】
【0068】
フォトクロミック化合物(C)である一般式(3)で表される化合物は、公知の方法で合成することができる。たとえば、特開2004−500319号に記載の方法で合成することもできる。
【0069】
[その他の成分]
更に、(A)イソシアネート化合物、(B)活性水素化合物、(C)フォトクロミック化合物に加えて、重合触媒、内部離型剤、樹脂改質剤等をさらに含んでいてもよい。
重合触媒としては、3級アミン化合物およびその無機酸塩または有機酸塩、金属化合物、4級アンモニウム塩、または有機スルホン酸を挙げることができる。
【0070】
内部離型剤としては、酸性リン酸エステルを用いることができる。酸性リン酸エステルとしては、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルを挙げることができ、それぞれ単独または2種類以上混合して使用することできる。
【0071】
樹脂改質剤としては、例えば、エピスルフィド化合物、アルコール化合物、アミン化合物、エポキシ化合物、有機酸及びその無水物、(メタ)アクリレート化合物等を含むオレフィン化合物等が挙げられる。
【0072】
<光学材料用重合性組成物の製造方法>
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、(A)イソシアネート化合物と、(B)二官能以上の活性水素化合物と、(C)フォトクロミック化合物とを、一括混合して、調製することができる。
本実施形態において、イソシアネート化合物のイソシアナト基に対する、チオール化合物のメルカプト基のモル比率は0.8〜1.2の範囲内であり、好ましくは0.85〜1.15の範囲内であり、さらに好ましくは0.9〜1.1の範囲内である。上記範囲内で、光学材料、特に眼鏡用プラスチックレンズ材料として好適に使用される樹脂を得ることができる。
また、(C)フォトクロミック化合物は、(A)イソシアネート化合物および(B)活性水素化合物の合計に対して、10ppm〜5000ppmの量で用いることができる。
【0073】
(A)イソシアネート化合物と、(B)活性水素化合物と、(C)フォトクロミック化合物と、その他添加剤を混合して重合性組成物を調製する場合の温度は通常25℃以下で行われる。重合性組成物のポットライフの観点から、さらに低温にすると好ましい場合がある。ただし、触媒、内部離型剤、添加剤のモノマーへの溶解性が良好でない場合は、あらかじめ加温して、モノマー、樹脂改質剤に溶解させることも可能である。
【0074】
本実施形態において、樹脂成形体の製造方法は、特に限定されないが、好ましい製造方法として注型重合が挙げられる。はじめに、ガスケットまたはテープ等で保持された成型モールド間に重合性組成物を注入する。この時、得られるプラスチックレンズに要求される物性によっては、必要に応じて、減圧下での脱泡処理や加圧、減圧等の濾過処理等を行うことが好ましい場合が多い。
【0075】
重合条件については、重合性組成物の組成、触媒の種類と使用量、モールドの形状等によって大きく条件が異なるため限定されるものではないが、およそ、−50〜150℃の温度で1〜50時間かけて行われる。場合によっては、10〜150℃の温度範囲で保持または徐々に昇温して、1〜25時間で硬化させることが好ましい。
【0076】
樹脂成形体は、必要に応じて、アニール等の処理を行ってもよい。処理温度は通常50〜150℃の間で行われるが、90〜140℃で行うことが好ましく、100〜130℃で行うことがより好ましい。
【0077】
本実施形態において、樹脂を成形する際には、上記「その他の成分」に加えて、目的に応じて公知の成形法と同様に、鎖延長剤、架橋剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ブルーイング剤、油溶染料、充填剤、密着性向上剤などの種々の添加剤を加えてもよい。
【0078】
<用途>
本実施形態のチオウレタン樹脂は、注型重合時のモールドの種類を変えることにより種々の形状の成形体として得ることができる。樹脂成形体は、フォトクロミック性能を備えるともに、高い屈折率及び高い透明性を備え、プラスチックレンズ等の各種光学材料に使用することが可能である。特に、プラスチック眼鏡レンズとして好適に用いることができる。
【0079】
[プラスチック眼鏡レンズ]
本実施形態の樹脂を用いたプラスチック眼鏡レンズは必要に応じて、片面又は両面にコーティング層を施して用いてもよい。
本実施形態のプラスチック眼鏡レンズは、上述の重合性組成物からなるレンズ基材とコーティング層とからなる。
【0080】
コーティング層として、具体的には、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、防曇コート層、防汚染層、撥水層等が挙げられる。これらのコーティング層はそれぞれ単独で用いることも複数のコーティング層を多層化して使用することもできる。両面にコーティング層を施す場合、それぞれの面に同様なコーティング層を施しても、異なるコーティング層を施してもよい。
【0081】
これらのコーティング層はそれぞれ、紫外線からレンズや目を守る目的で紫外線吸収剤、赤外線から目を守る目的で赤外線吸収剤、レンズの耐候性を向上する目的で光安定剤や酸化防止剤、レンズのファッション性を高める目的で染料や顔料、さらにフォトクロミック染料やフォトクロミック顔料、帯電防止剤、その他、レンズの性能を高めるための公知の添加剤を併用してもよい。塗布によるコーティングを行う層に関しては塗布性の改善を目的とした各種レベリング剤を使用してもよい。
【0082】
プライマー層は通常、後述するハードコート層とレンズとの間に形成される。プライマー層は、その上に形成するハードコート層とレンズとの密着性を向上させることを目的とするコーティング層であり、場合により耐衝撃性を向上させることも可能である。プライマー層には得られたレンズに対する密着性の高いものであればいかなる素材でも使用できるが、通常、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラニン系樹脂、ポリビニルアセタールを主成分とするプライマー組成物などが使用される。プライマー組成物は組成物の粘度を調整する目的でレンズに影響を及ぼさない適当な溶剤を用いてもよい。無論、無溶剤で使用してもよい。
【0083】
プライマー層は塗布法、乾式法のいずれの方法によっても形成することができる。塗布法を用いる場合、プライマー組成物を、スピンコート、ディップコートなど公知の塗布方法でレンズに塗布した後、固化することによりプライマー層が形成される。乾式法で行う場合は、CVD法や真空蒸着法などの公知の乾式法で形成される。プライマー層を形成するに際し、密着性の向上を目的として、必要に応じてレンズの表面は、アルカリ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの前処理を行っておいてもよい。
ハードコート層は、レンズ表面に耐擦傷性、耐摩耗性、耐湿性、耐温水性、耐熱性、耐候性等機能を与えることを目的としたコーティング層である。
【0084】
ハードコート層は、一般的には硬化性を有する有機ケイ素化合物とSi,Al,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,In及びTiの元素群から選ばれる元素の酸化物微粒子の1種以上および/またはこれら元素群から選ばれる2種以上の元素の複合酸化物から構成される微粒子の1種以上を含むハードコート組成物が使用される。
【0085】
ハードコート組成物には上記成分以外にアミン類、アミノ酸類、金属アセチルアセトネート錯体、有機酸金属塩、過塩素酸類、過塩素酸類の塩、酸類、金属塩化物および多官能性エポキシ化合物の少なくともいずれかを含むことが好ましい。ハードコート組成物にはレンズに影響を及ぼさない適当な溶剤を用いてもよいし、無溶剤で用いてもよい。
【0086】
ハードコート層は、通常、ハードコート組成物をスピンコート、ディップコートなど公知の塗布方法で塗布した後、硬化して形成される。硬化方法としては、熱硬化、紫外線や可視光線などのエネルギー線照射による硬化方法等が挙げられる。干渉縞の発生を抑制するため、ハードコート層の屈折率は、レンズとの屈折率の差が±0.1の範囲にあるのが好ましい。
【0087】
反射防止層は、通常、必要に応じて前記ハードコート層の上に形成される。反射防止層には無機系および有機系があり、無機系の場合、SiO、TiO等の無機酸化物を用い、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビ−ムアシスト法、CVD法などの乾式法により形成される。有機系の場合、有機ケイ素化合物と、内部空洞を有するシリカ系微粒子とを含む組成物を用い、湿式により形成される。
【0088】
反射防止層は単層および多層があり、単層で用いる場合はハードコート層の屈折率よりも屈折率が少なくとも0.1以上低くなることが好ましい。効果的に反射防止機能を発現するには多層膜反射防止膜とすることが好ましく、その場合、低屈折率膜と高屈折率膜とを交互に積層する。この場合も低屈折率膜と高屈折率膜との屈折率差は0.1以上であることが好ましい。高屈折率膜としては、ZnO、TiO、CeO、Sb、SnO、ZrO、Ta等の膜があり、低屈折率膜としては、SiO膜等が挙げられる。
【0089】
反射防止膜層の上には、必要に応じて防曇層、防汚染層、撥水層を形成させてもよい。防曇層、防汚染層、撥水層を形成する方法としては、反射防止機能に悪影響をもたらすものでなければ、その処理方法、処理材料等については特に限定されずに、公知の防曇処理方法、防汚染処理方法、撥水処理方法、材料を使用することができる。例えば、防曇処理方法、防汚染処理方法では、表面を界面活性剤で覆う方法、表面に親水性の膜を付加して吸水性にする方法、表面を微細な凹凸で覆い吸水性を高める方法、光触媒活性を利用して吸水性にする方法、超撥水性処理を施して水滴の付着を防ぐ方法などが挙げられる。また、撥水処理方法では、フッ素含有シラン化合物等を蒸着やスパッタによって撥水処理層を形成する方法や、フッ素含有シラン化合物を溶媒に溶解したあと、コーティングして撥水処理層を形成する方法等が挙げられる。
【0090】
この出願は、2012年6月26日に出願された日本出願特願2012−143125を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【実施例】
【0091】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0092】
重合により得られたレンズは性能試験を行い評価した。性能試験は、屈折率およびアッベ数、耐熱性および比重、フォトクロ性能とし、以下の試験方法により評価した。
・屈折率(ne)アッベ数(νe): 島津製作所製プルフリッヒ屈折計KPR−30を用いて、20℃で測定した。
・耐熱性: 島津製作所製TMA−60を使用し、TMAペネトレーション法(50g荷重、ピン先0.5mmφ)でのガラス転移温度(Tg)を耐熱性とした。
・比重:20℃にてアルキメデス法により測定した。
【0093】
・フォトクロ性能:厚さ2.0mmの樹脂平板を作製し、アズワン社製ハンディUVランプSLUV−6を用いて、365nmの紫外線を高さ155mmの位置から60分間樹脂平板に照射させ、UV照射後の樹脂平板の色相を色彩色差計(コニカミノルタ社製CR−200)にて、L*値およびa*値、b*値を測定。UV照射前後のL*値およびa*値、b*値を基に、下記式より色相の変化量を算出する。
ΔE*ab=〔(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)21/2
算出結果を、以下の基準にて評価した。
ΔE*ab値が10以上のものを◎、4以上10未満のものを○、4未満のものを×と評価した。
【0094】
(実施例1)
2,5(6)−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン50.57gに、硬化触媒としてジブチル錫ジクロライド0.0375g、内部離型剤(商品名、ゼレックUN)0.10g、フォトクロ色素として式(6)で示される化合物0.050gを15℃にて混合溶解し、均一溶液とした。この均一溶液に、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート23.86gと4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン25.57gを一括して加え、水浴中15℃で30分かけて混合溶解し均一溶液とした。この均一溶液を、600Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターにてろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型をオーブンへ投入後、25℃から120℃まで20時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出し、離型して2.0mm厚樹脂を得た。得られた樹脂平板をさらに120℃で4時間アニール化を行った。
得られたレンズの性能試験結果を以下の表1に記載した。
【0095】
【化13】
【0096】
(実施例2)
2,5(6)−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン50.57gに、硬化触媒としてトリエチルアミンと内部離型剤(商品名、ゼレックUN)混合物(トリエチルアミン:内部離型剤=1:5.00)0.12g、フォトクロ色素として式(6)で示される化合物0.050gを15℃にて混合溶解し、均一溶液とした。この均一溶液に、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート23.86gと4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン25.57gを一括して加え、水浴中15℃で30分かけて混合溶解し均一溶液とした。この均一溶液を、600Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターにてろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型をオーブンへ投入後、25℃から120℃まで20時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出し、離型して2.0mm厚樹脂を得た。得られた樹脂平板をさらに120℃で4時間アニール化を行った。
得られたレンズの性能試験結果を以下の表1に記載した。
【0097】
(実施例3)
ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン58.65gに、硬化触媒としてジブチル錫ジクロライド0.2500g、内部離型剤(商品名、ゼレックUN)0.10g、フォトクロ色素として式(6)で示される化合物0.050gを15℃にて混合溶解し、均一溶液とした。この均一溶液に、ジエチレングリコールビスメルカプトプロピオネート4.11gと4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン37.24gを一括して加え、水浴中15℃で30分かけて混合溶解し均一溶液とした。この均一溶液を、600Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターにてろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型をオーブンへ投入後、25℃から120℃まで20時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出し、離型して2.0mm厚樹脂を得た。得られた樹脂平板をさらに120℃で4時間アニール化を行った。
得られたレンズの性能試験結果を以下の表1に記載した。
【0098】
(実施例4)
ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン58.65gに、硬硬化触媒としてトリエチルアミンと内部離型剤(商品名、ゼレックUN)混合物(トリエチルアミン:内部離型剤=1:4.25)0.18g、フォトクロ色素として式(6)で示される化合物0.050gを15℃にて混合溶解し、均一溶液とした。この均一溶液に、ジエチレングリコールビスメルカプトプロピオネート4.11gと4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン37.24gを一括して加え、水浴中15℃で30分かけて混合溶解し均一溶液とした。この均一溶液を、600Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターにてろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型をオーブンへ投入後、25℃から120℃まで20時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出し、離型して2.0mm厚樹脂を得た。得られた樹脂平板をさらに120℃で4時間アニール化を行った。
得られたレンズの性能試験結果を以下の表1に記載した。
【0099】
(実施例5)
ACOMON社製RAVolution(tm)IS60.10gに、内部離型剤(商品名、ゼレックUN)1.759g、フォトクロ色素として式(6)で示される化合物0.050gを40℃にて混合溶解し、均一溶液とした。この均一溶液に、RAVolutiom(tm)PO39.90gを加え、温浴中40℃で30分かけて混合溶解し均一溶液とした。この均一溶液を、600Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターにてろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型をオーブンへ投入後、40℃から130℃まで20時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出し、離型して2.0mm厚樹脂を得た。得られた樹脂平板をさらに120℃で4時間アニール化を行った。
得られたレンズの性能試験結果を以下の表1に記載した。
【0100】
(実施例6)
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート37.89gに、硬化触媒としてジブチル錫ジクロライド0.0350g、内部離型剤(商品名、ゼレックUN)0.10g、フォトクロ色素として式(6)で示される化合物0.050gを15℃にて混合溶解し、均一溶液とした。この均一溶液に、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)62.11gを加え、水浴中15℃で30分かけて混合溶解し均一溶液とした。この均一溶液を、600Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターにてろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型をオーブンへ投入後、25℃から120℃まで20時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出し、離型して2.0mm厚樹脂を得た。得られた樹脂平板をさらに120℃で4時間アニール化を行った。
得られたレンズの性能試験結果を以下の表1に記載した。
【0101】
(実施例7)
イソホロンジイソシアネート54.58gに、硬化触媒としてジブチル錫ジクロライド0.2500g、内部離型剤(商品名、ゼレックUN)0.10g、フォトクロ色素として式(6)で示される化合物0.050gを15℃にて混合溶解し、均一溶液とした。この均一溶液に、ジエチレングリコールビスメルカプトプロピオネート4.51gと4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン40.91gを一括して加え、水浴中15℃で30分かけて混合溶解し均一溶液とした。この均一溶液を、600Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターにてろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型をオーブンへ投入後、25℃から120℃まで20時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出し、離型して2.0mm厚樹脂を得た。得られた樹脂平板をさらに120℃で4時間アニール化を行った。
得られたレンズの性能試験結果を以下の表1に記載した。
【0102】
(実施例8)
ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン59.40gに、硬化触媒としてジブチル錫ジクロライド0.2500g、内部離型剤(商品名、ゼレックUN)0.10g、フォトクロ色素として式(6)で示される化合物0.050gを15℃にて混合溶解し、均一溶液とした。この均一溶液に、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン40.60gを加え、水浴中15℃で30分かけて混合溶解し均一溶液とした。この均一溶液を、600Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターにてろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型をオーブンへ投入後、25℃から120℃まで20時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出し、離型して2.0mm厚樹脂を得た。得られた樹脂平板をさらに120℃で4時間アニール化を行った。
得られたレンズの性能試験結果を以下の表1に記載した。
【0103】
(比較例1)
m−キシリレンジイソシアネート50.71gに、硬化触媒としてジブチル錫ジクロライド0.0100g、内部離型剤(商品名、ゼレックUN)0.10g、フォトクロ色素として式(6)で示される化合物0.050gを15℃にて混合溶解し、均一溶液とした。この均一溶液に、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、および4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンの混合物49.29gを加え、水浴中15℃で30分かけて混合溶解し均一溶液とした。この均一溶液を、600Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターにてろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型をオーブンへ投入後、25℃から120℃まで20時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出し、離型して2.0mm厚樹脂を得た。得られた樹脂平板をさらに120℃で4時間アニール化を行った。
得られたレンズの性能試験結果を以下の表1に記載した。
【0104】
(比較例2)
トリレンジイソシアネート48.50gに、硬化触媒としてジブチル錫ジクロライド0.0300g、内部離型剤(商品名、ゼレックUN)0.10g、フォトクロ色素として式(6)で示される化合物0.050gを15℃にて混合溶解し、均一溶液とした。この均一溶液に、ジエチレングリコールビスメルカプトプロピオネート5.12gと4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン46.38gを一括して加え、水浴中15℃で30分かけて混合溶解し均一溶液とした。この均一溶液を、600Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターにてろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型をオーブンへ投入後、25℃から120℃まで20時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出し、離型して2.0mm厚樹脂を得た。得られた樹脂平板をさらに120℃で4時間アニール化を行った。
得られたレンズの性能試験結果を以下の表1に記載した。
【0105】
(比較例3)
トリレンジイソシアネート49.26gに、硬化触媒としてジブチル錫ジクロライド0.0300g、内部離型剤(商品名、ゼレックUN)0.10g、フォトクロ色素として式(6)で示される化合物0.050gを15℃にて混合溶解し、均一溶液とした。この均一溶液に、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン50.74gを加え、水浴中15℃で30分かけて混合溶解し均一溶液とした。この均一溶液を、600Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターにてろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型をオーブンへ投入後、25℃から120℃まで20時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出し、離型して2.0mm厚樹脂を得た。得られた樹脂平板をさらに120℃で4時間アニール化を行った。
得られたレンズの性能試験結果を以下の表1に記載した。
【0106】
【表1】
【0107】
表1中の記号は以下の内容を示す。
(A)−1: 2,5(6)−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン
なお、以上の各例において、2,5(6)−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタンとして、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタンおよび2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタンの混合物を用いた。
(A)−2: m−キシリレンジイソシアネート
(A)−3: ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン
(A)−4: ACOMON社製RAVolution(tm)IS(脂環族イソシアネート)
(A)−5: 1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート
(A)−6: イソホロンジイソシアネート
(A)−7: トリレンジイソシアネート
(B)−1: ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート
(B)−2: 4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン
(B)−3: 5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、および4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンの混合物
(B)−4: ジエチレングリコールビスメルカプトプロピオネート
(B)−5: ACOMON社製RAVolution(tm)PO(ポリオール(混合物))
(B)−6: トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)
【0108】
以上の結果より、脂肪族イソシアネートまたは脂環族イソシアネートを用いて得られた実施例の樹脂では、所望のフォトクロ性能が確認される一方、芳香環を含むイソシアネートである、m-キシリレンジイソシアネートやトリレンジイソシアネートを用いて得られた比較例の樹脂では、所望のフォトクロ性能が得られないことが分かった。