【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記「特許文献1」では、連結部材とケースの開口周縁部間に防水ダイヤフラムが介装されているため、以下の問題がある。
【0007】
第1には、ケースの開口部を密閉する防水ダイヤフラムおよび防水ダイヤフラムを設けるための連結部材が不可欠で、それだけ電子天秤の構造が複雑となる。
【0008】
第2には、計量時に防水ダイヤフラムが負荷としてロードセル(の起歪部)に作用し、ダイヤフラムが抵抗となる分、秤の性能が低下する。
【0009】
第3には、ケース内が密閉されているため、気温の変化によってケース内の空気が膨張縮小して、秤の性能が低下する。詳しくは、ケース内の温度が上昇(下降)しダイヤフラムが膨張(縮小)すると、ロードセルの可動端側が上方(下方)に付勢されてロードセル(の起歪部)が上方凹(凸)となる変形を受けるため、計量時の歪ゲージの変形がそれだけ小さく(大きく)、実際の計測値よりも小さい(大きい)値が検出される。
【0010】
発明者が従来技術について検討した結果、ケース内にロードセルを配設する以上、ケースの上面壁には、計量皿とロードセルの可動側端部を連結する連結部材を貫通配置できる開口部を設け、さらに前記連結部と前記開口部周縁部間に防水ダイヤフラムを介装することが不可欠である。
【0011】
そこで、発明者は、ロードセルをケース外に配設するとともに、ロードセルの固定側端部に、歪ゲージ等の電装部品とケース内の電子回路基板とを接続する電気配線を挿通するための孔を設け、この孔を密封(密閉)する構造にすれば、前記した第1〜第3の問題を解決できると考えた。
【0012】
そして、試作品を作りその効果を検証したところ、有効であることが確認されたことで、このたびの出願に至ったものである。
【0013】
本発明は、前記従来技術の課題に鑑みてなされたもので、その目的は、ロードセルをケース外に配設し、歪ゲージとケース内の電子回路基板とを接続する電気配線を挿通するための孔をロードセルの固定側端部に設けることで、簡潔な構成で、ケース密閉手段が計量時に負荷として作用したり、気温の変化によってロードセル(の起歪部)に不測の応力が作用することがない電子天秤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、請求項1に係る電子天秤においては、秤本体ケース上面にその固定側端部が固定されて水平に片持ち梁状に配設されたロードセルと、前記ロードセルの可動側端部に連結された計量皿と、前記秤本体ケース内に設けられて、前記ロードセルで検出した出力を演算処
理する電子回路基板とを備え、
前記ロードセルの固定側端部に、前記秤本体ケース内に連通する貫通孔を設け、前記貫通孔に、前記ロードセルと前記電子回路基板とを接続する電気配線を挿通するとともに、該貫通孔を所定の密閉手段によって密閉するように構成した。
【0015】
なお、ロードセルの固定側端部の貫通孔を密閉する密閉手段としては、例えばシリコン材などの弾性防水材を装填する方法が考えられる。
【0016】
(作用)従来構造では、計量皿は、ダイヤフラムを介装するための連結部材を介してロードセルの可動側端部に連結されているのに対し、本願発明では、計量皿がロードセルの可動側端部に直接連結されている。電子天秤構成部材として従来不可欠であった連結部材およびダイヤフラムが不要となる分、電子天秤を構成する部品点数が減る。即ち、前記した第1の問題が解決される。
【0017】
また、ロードセルの固定側端部は、秤本体ケース上面に固定されているので、計量皿に被計量物を載せた計量時(ロードセルに被計量物の荷重が作用する計量時)に、ロードセルの固定側端部の貫通孔に設けた密閉手段が負荷として、ロードセル(の起歪部)に作用することはなく、秤の性能が低下するおそれはない。即ち、前記した第2の問題が解決される。
【0018】
また、ロードセルは、秤本体ケース外に設けられているので、気温の変化によって秤の性能が低下するおそれがない。詳しくは、秤本体ケース内が密閉されているため、気温の変化によってケース内の空気が膨張縮小して、ロードセルの固定側端部の貫通孔に設けた密閉手段が上方(下方)に付勢されるが、ロードセルの固定側端部は、秤本体ケース上面に固定されているので、計量皿に被計量物を載せた計量時(ロードセルに被計量物の荷重が作用する計量時)に、密閉手段に作用する上方(下方)付勢力が負荷としてロードセル(の起歪部)に作用して秤の性能を低下させるおそれは全くない。即ち、前記した第3の問題が解決される。
【0019】
請求項2においては、請求項1に記載の電子天秤において、前記ロードセルは、起歪部画成用のめがね型の側面貫通孔を設けた金属製矩形ブロック状の起歪体と、前記起歪体の上側起歪部上面に貼り付けられた歪ゲージを備え、前記起歪体の固定側端部に、上下に延びる前記電気配線挿通用の貫通孔を設けるように構成した。
【0020】
(作用)金属製矩形ブロック状の起歪体の上面側には、歪ゲージや出力補償用抵抗等のブリッジ回路を構成するフレキシブルプリント配線板等の電装部品が搭載されており、起歪体に搭載された電装部品から導出する電気配線は、起歪体の上面に沿って延出した後、起歪体の固定側端部の上面に開口する貫通孔を貫通して秤本体ケース内に導出して、ロードセルで検出した出力を演算処
理する電子回路基板に接続されている。
【0021】
即ち、歪ゲージなどの電装部品が搭載されている起歪体の上面側に電気配線挿通用の貫通孔が開口しているので、ロードセル(に搭載された電装部品)と秤本体ケース内に配設された電子回路基板とを接続する電気配線が、起歪体の上面から左右にはみ出すことなく収まるので、起歪体の上面に露呈している電装部品の導電部に防水のための絶縁被覆を形成し易いし、ロードセルを搬送したり組み付ける際に電気配線が何かに引っ掛かって絶縁被膜が剥がれるおそれもない。
【0022】
請求項3においては、請求項1または2に記載の電子天秤において、平面視略矩形状に形成された前記秤本体ケースの正面側に、前記ロードセルの一側面に沿って延在する立壁状の表示部を該秤本体ケースに一体的に設けるとともに、前記表示部背後のロードセル配設空間を、着脱可能な透明カバーで囲むように構成した。
【0023】
(作用)ロードセル配設空間を取り囲む透明カバーは、風防として作用するとともに、ロードセル配設空間へのゴミ等の侵入を防止するので、ロードセル配設空間(ロードセル周辺領域)が汚れにくい。
【0024】
また、ロードセル配設空間(ロードセル周辺領域)の汚れ具合は、透明カバーを通して外部から視認できるので、必要に応じて透明カバーを取り外して、ロードセル配設空間(ロードセル周辺領域)の汚れを洗浄できる。
【0025】
請求項4においては、請求項3に記載の電子天秤において、前記透明カバーを、前記計量皿に一体化されて下方に延出する隔壁で構成するようにした。
【0026】
なお、透明カバーが計量皿に一体化されている構成には、第1の実施例(
図1〜
図4)に示すように、透明カバーが計量皿に一体成形されている構成と、第1の実施例の変形例(
図5)に示すように、計量皿とは別部材で構成された透明カバーを、ネジなどの固定手段によって計量皿に一体化されている構成の双方を含む。
【0027】
(作用)計量皿のロードセルとの連結を解除して、計量皿とともに透明カバー(ロードセル配設空間を取り囲む隔壁)をロードセルから取り外すことで、ロードセル配設空間を開放した形態にして、ロードセル配設空間(ロードセル周辺領域)の汚れを洗浄することができる。
【0028】
請求項5においては、請求項3に記載の電子天秤において、前記透明カバーを、前記立壁状の表示部を含む前記秤本体ケース外周に組み付けられた隔壁で構成した。
【0029】
なお、請求項5における透明カバーの具体的な構成としては、第2の実施例(
図6〜
図9)に示すように、立壁状の表示部の表示画面に対応する開口部が設けられ、立壁状の表示部を含む秤本体ケースに上方から被着されて、立壁状の表示部と協働してロードセル配設空間の前後左右の側面を覆う枠形状の隔壁で構成されて、計量皿をロードセルから取り外した状態で、秤本体ケースの上方から透明カバー(枠形状の隔壁)を着脱できる第1の構成と、第3の実施例(
図10、
図11)に示すように、ロードセル配設空間の左右側面から背面側にかけた領域を覆う水平断面略U字型の隔壁で構成されて、計量皿をロードセルから取り外すことなく、秤本体ケースの背後から透明カバー(水平断面略U字型の隔壁)を進退動作させて着脱できる第2の構成が考えられる。
【0030】
(作用)本体ケースから透明カバーを取り外すことで、ロードセル配設空間の少なくとも左右側面から背面側を開放した形態にして、ロードセル配設空間(ロードセル周辺領域)の汚れを洗浄することができる。
【0031】
詳しくは、第1の構成(
図6〜
図9に示す第2の実施例)では、まず、計量皿をロードセルから取り外して、ロードセル配設空間の上方を開放し、次いで、透明カバー(枠形状の隔壁)を秤本体ケースの上方に抜き出すことで、ロードセル配設空間の左右側面から背面側を開放して、ロードセル配設空間(ロードセル周辺領域)の汚れを洗浄する。
【0032】
第2の構成(
図10、
図11に示す第3の実施例)では、計量皿をロードセルから取り外すことなく、秤本体ケースの背後から透明カバー(水平断面略U字型の隔壁)を後方に抜き出すことで、ロードセル配設空間の左右側面から背面側を開放して、ロードセル配設空間(ロードセル周辺領域)の汚れを洗浄する。
【発明の効果】
【0033】
本願発明(請求項1)に係る電子天秤によれば、従来構造において不可欠であった連結部材およびダイヤフラムが不要となる分、簡潔な構造の電子天秤を提供できる。
【0034】
ロードセル(の起歪部)には、計量皿に被計量物を載せた計量時(ロードセルに被計量物の荷重が作用する計量時)に、ロードセルの固定側端部の貫通孔に設けた密閉手段が負荷として作用することも、気温の変化によって秤本体ケース内の空気が膨張縮小して貫通孔に設けた密閉手段に作用する上方(下方)付勢力が負荷として作用することもないので、高性能の電子天秤を提供できる。
【0035】
請求項2に係る電子天秤によれば、ロードセル(起歪体)の上面に露呈している電装部品の導電部への防水絶縁被覆の形成作業が容易となるとともに、電気配線が何かに引っ掛かって絶縁被膜が剥がれるおそれもないので、ロードセルの搬送や組み付け作業も容易となる。
【0036】
請求項3に係る電子天秤によれば、風防として作用する透明カバーにより、計量皿が風の影響を受けない分、高精度の測定が可能となる。
【0037】
また、ロードセル配設空間(ロードセル周辺領域)が汚れにくい分、汚れを除去するための作業の頻度が低減される。
【0038】
また、ロードセル配設空間(ロードセル周辺領域)の汚れ具合を外部から視認できるので、必要性に応じて透明カバーを取り外して汚れを除去できる。
【0039】
請求項4に係る電子天秤によれば、ロードセル配設空間を解放した状態でロードセル周辺領域の汚れを洗浄できるので、洗浄作業がし易い。
【0040】
請求項5に係る電子天秤によれば、ロードセル配設空間の少なくとも左右側面から背面側を開放した状態でロードセル周辺領域の汚れを洗浄できるので、洗浄作業がし易い。
【0041】
特に、第2の構造(第3の実施例)では、計量皿をロードセルから取り外すことなく、ロードセル周辺領域を洗浄することができるので、それだけ洗浄作業が簡単である。