(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ダンピング回路は、前記圧電振動子の一方端に接続されて直列回路を構成する抵抗を有し、前記休止区間に当該抵抗を介して前記圧電振動子の両端を短絡することを特徴とする請求項4記載の超音波送受信装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
実施の形態1.
図1に示すように、本実施の形態1に係る超音波送受信装置1は、圧電素子により構成され超音波を送受信する振動子(圧電振動子)2と、振動子2を駆動するブリッジ回路3と、振動子2の受信信号を増幅する差動アンプ4と、受信信号をフィルタ処理してノイズ成分を除去するフィルタ処理部5と、受信信号を圧縮処理して振幅を増幅する圧縮処理部6と、送信信号の生成および受信信号に基づく物体検出を行う制御部7とを備える。
【0012】
この超音波送受信装置1は、振動子2を断続的に駆動して超音波を送信し、その超音波が物体に反射した反射波を振動子2で受信して、受信信号に基づいて当該物体を検出する。
先ず、超音波送受信装置1から超音波を送信する場合を説明する。
【0013】
図2および
図3に、振動子2、ブリッジ回路3および差動アンプ4の回路構成例を示す。
図2は超音波送信中、
図3は超音波送信直後を説明する図である。また、
図4は、振動子2およびブリッジ回路3の動作例を説明する図であり、
図4(a)はブリッジ回路3のスイッチング素子Tr1〜Tr4のスイッチング動作、
図4(b)は振動子2に印加される電圧の波形、
図4(c)は振動子2の振動波形を示す。
【0014】
ブリッジ回路3は、制御部7の制御信号に基づいてスイッチング動作する4個のスイッチング素子(例えば、バイポーラトランジスタ)Tr1〜Tr4から構成されている。直列に接続されたスイッチング素子Tr1,Tr4の接続点と、直列に接続されたスイッチング素子Tr2,Tr3の接続点との間に、振動子2が接続される。各スイッチング素子Tr1〜Tr4のベース端子B1〜B4には、制御部7から制御信号が入力される。
なお、図示例では、ブリッジ回路3を4個のバイポーラトランジスタで構成したが、電界効果トランジスタ等の他のスイッチング素子で構成してもよい。
スイッチング素子Tr1は第1のスイッチング素子、スイッチング素子Tr2は第2のスイッチング素子、スイッチング素子Tr3は第3のスイッチング素子、スイッチング素子Tr4は第4のスイッチング素子に該当する。
【0015】
超音波送信時、制御部7の出力する制御信号により、スイッチング素子Tr1,Tr2がオン、およびスイッチング素子Tr3,Tr4がオフに制御されると、振動子2に正電流が流れる(
図2に一点鎖線で示す)。他方、制御信号により、スイッチング素子Tr1,Tr2がオフ、およびスイッチング素子Tr3,Tr4がオンに制御されると、振動子2に負電流が流れる(
図2に破線で示す)。このように、スイッチング素子Tr1,Tr2とスイッチング素子Tr3,Tr4とを交互にオンオフ制御して振動子2に電圧を印加することにより、振動子2が振動して空中に超音波が送信される。
【0016】
超音波を送信した直後、スイッチング素子Tr1〜Tr4がオフになっても、振動子2の回路的な振動と機械的な振動により、
図4(c)に破線で示すような残響振動が生じる。そうすると、受信した反射波の振動が残響振動に紛れてしまい、物体を正しく検出できない場合がある。そこで、制御部7は、超音波を送信直後、ローサイド側のスイッチング素子Tr2,Tr4をオン、およびハイサイド側のスイッチング素子Tr1,Tr3をオフに制御して、振動子2の両端を短絡して電荷を放出させ(
図3に破線で示す)、振動成分を抑制(ダンピング)して残響振動時間を短縮する。あるいは、スイッチング素子Tr2,Tr4をオフ、およびスイッチング素子Tr1,Tr3をオンに制御して振動子2の両端を短絡してもよい。
【0017】
次に、超音波送受信装置1が物体で反射した超音波を受信する場合を説明する。
差動アンプ4は、オペアンプOP1、抵抗R1〜R3、およびコンデンサC1,C2を備える。オペアンプOP1の反転入力端子は、抵抗R1およびコンデンサC1を介して振動子2の一方の端子に接続され、非反転入力端子は抵抗R2およびコンデンサC2を介して振動子2のもう一方の端子に接続される。また、オペアンプOP1の反転入力端子と出力端子は抵抗R3を介して接続され、抵抗R1,R3により増幅率が設定される。振動子2は受信した反射波を電圧に変換し、差動アンプ4が振動子2の両端の電位差を増幅して、受信信号としてフィルタ処理部5へ出力する。
【0018】
以上の振動子2、ブリッジ回路3および差動アンプ4は、アナログ回路により構成する。これに対し、以下に説明するフィルタ処理部5、圧縮処理部6および制御部7を含む信号処理部8は、アナログ回路およびデジタル回路のいずれにより構成しても構わない。信号処理部8をデジタル回路で構成する場合には、例えば信号処理部8をマイクロコンピュータで構成して、CPUが内蔵メモリのプログラムを読み出して実行することにより、受信信号を信号処理するフィルタ処理部5、圧縮処理部6および制御部7としての機能を実現する。
【0019】
このフィルタ処理部5は、超音波の送信周波数を通過帯域に設定したバンドパスフィルタであり、受信信号に含まれるノイズ成分を除去して圧縮処理部6へ出力する。圧縮処理部6は、フィルタ処理された受信信号を圧縮処理して振幅を増幅し、制御部7へ出力する。圧縮処理の具体例は後述する。
【0020】
制御部7は、超音波受信時、圧縮処理部6が圧縮処理した受信信号に基づいて、物体を検出する。
一方、超音波送信時は、上述したように制御部7からブリッジ回路3のスイッチング素子Tr1〜Tr4へ制御信号を出力して振動子2を駆動し、任意の送信周波数、位相、パルス数(または送信時間)で超音波を送信する。また、超音波送信直後は、制御部7からブリッジ回路3のスイッチング素子Tr1〜Tr4へ制御信号を出力して、振動子2の両端を短絡させ、残響振動時間を短縮する。
【0021】
ここで、超音波の送信周波数について説明する。
図5は、振動子2のインピーダンス特性の一例を示すグラフである。グラフの縦軸は振動子2のインピーダンスZ、横軸は周波数fを示す。周囲温度が変化するとインピーダンス特性が実線から破線へずれ、特に共振点frを含む共振周波数帯域においてずれが顕著である。これに対し、共振周波数帯域以外では周囲温度が変化してもインピーダンスのずれが小さい。そこで、本実施の形態1では、振動子2の共振周波数帯域以外の周波数(例えば、
図5の送信周波数帯域f1またはf2)を、送信周波数に用いる。これにより、周囲温度の変化に対して、送信効率および受信効率の低下を抑制できる。
【0022】
次に、圧縮処理部6による圧縮処理の具体例を説明する。
図6は、超音波送受信装置1が用いる送信信号を説明する図であり、
図6(a)は符号長5ビットのバーカ符号、
図6(b)はバーカ符号と送信信号の位相の対応関係、
図6(c)は超音波の送信波形、
図6(d)は超音波の受信波形、
図6(e)は受信信号の圧縮波形を示す。なお、
図4(a)では振動子2の駆動波形を矩形波で表示したが、
図6(c)では正弦波で表示している。
【0023】
図6の例では、送信側ではバーカ符号のような相関が鋭い符号系列に基づいて送信信号を生成し、受信側では受信信号を当該符号系列に基づいて圧縮処理する。
先ず、制御部7は、共振周波数帯域以外の送信周波数の送信信号を所定の符号系列に従って位相変調し、位相変調した送信信号に対応する制御信号によりブリッジ回路3のスイッチング素子Tr1〜Tr4のスイッチング動作を制御する。例えば
図6(a)に示す符号長5ビットのバーカ符号「11101」の場合、「1」の位相を正相、「0」の位相の逆相とすると、位相変調した送信信号の波形は
図6(c)になる。図中のtは、バーカ符号の1ビット当たりのパルス幅を示す。
【0024】
図7は、圧縮処理部6の構成例を示すブロック図である。圧縮処理部6は、バーカ符号の2ビット目〜5ビット目の受信信号をパルス幅t〜4tだけ遅延させて1ビット目の受信信号に同期させる遅延器61〜64と、4ビット目の「0」の受信信号の位相を逆転させるNOTゲート65と、遅延および位相逆転した各受信信号を加算する加算器66とを備える。
図6(d)に示すパルス幅5tの受信信号を圧縮処理した場合、
図6(e)に示すように受信信号の振幅が5倍に、パルス幅は1/5(即ち、t)になる。このように、相関の鋭い送信信号を受信して遅延加算処理することにより、受信感度を向上することができると共に、位相成分がランダムなノイズ成分を抑制することができるので、受信信号のSN比が向上する。なお、
図6(e)に示すn1,n2の波形は、圧縮処理後の残差信号波形であり、ノイズ信号波形の一つと考えてよい。
【0025】
以上より、実施の形態1によれば、超音波送受信装置1は、振動子2を駆動する4個のスイッチング素子Tr1〜Tr4から構成されたブリッジ回路3と、ブリッジ回路3の
1組のハイサイド側のスイッチング素子Tr1
およびローサイド側のスイッチング素子
Tr2と、もう1組のハイサイド側のスイッチング素子Tr3およびローサイド側のスイッチング素子Tr4とを交互に駆動する周期を送信周波数として、当該送信周波数および位相を任意に設定した送信信号に基づいてブリッジ回路3の各スイッチング素子Tr1〜Tr4を駆動し、超音波を送信させる制御部7と、振動子2で受信した受信信号を圧縮処理する圧縮処理部6とを備えるように構成した。このため、トランスに代えてブリッジ回路3を用いることにより、外来電磁ノイズの重畳を抑制することができるので、電磁シールド等が不要になり、超音波送受信装置1の小型化および低コスト化を図ることができる。
【0026】
なお、従来はトランスを用いて振動子の駆動電圧を昇圧していたが、本実施の形態1ではブリッジ回路3を用いて振動子2を駆動するため送信パワーが低下する。そのため、バーカ符号のビット数の増加および1ビット当たりの送信周波数の増大など、送信時間を長くすることにより電力不足を補い、従来と同等の送信パワーを実現することが望ましい。また、受信信号に対して圧縮処理を加えることにより、受信感度およびSN比を向上させると共に、送信時間を長くしたことによる距離分解能の低下を補完することができる。
【0027】
また、実施の形態1によれば、制御部7は、送信信号に位相変調信号を用い、圧縮処理部6は、受信信号を遅延加算処理するように構成した。このため、バーカ符号等、相関の鋭い符号系列に基づく位相変調信号を送受信し、受信側で遅延加算処理することにより、受信感度およびSN比を向上させることができる。
【0028】
また、実施の形態1によれば、制御部7は、送信周波数に振動子2の共振周波数帯域以外の周波数を用いるように構成したので、温度環境の変化による振動子2のインピーダンス変動を微小にすることができる。よって、送信効率および受信効率の低下を抑制できる。
【0029】
実施の形態2.
本実施の形態2の超音波送受信装置1は、
図1〜
図3に示す超音波送受信装置1と図面上では同様の構成であるため、以下では
図1〜
図3を援用して説明する。
また、
図8は、本実施の形態2に係る超音波送受信装置1が用いる送信信号を説明する図であり、
図8(a)は休止区間を設けた符号長5ビットのバーカ符号、
図8(b)はバーカ符号と送信信号の位相の対応関係、
図8(c)は超音波の送信波形、
図8(d)は受信信号の圧縮波形を示す。なお、
図8(d)に示すn1,n2,n3の波形は、圧縮処理後の残差信号波形であり、ノイズ信号波形の一つと考えてよい。
【0030】
バーカ符号等の符号系列に基づいた位相変調信号を送信する場合、ビット間で位相が逆転するときに送信波形が歪み、不要な振動が発生することがある。そこで、本実施の形態2に係る制御部7は、
図8(a)に示すように、位相変調信号のビット間に休止区間を設けて、ブリッジ回路3のスイッチング素子Tr1〜Tr4をオフに制御し、各ビットの送信波形が歪まないようにする。
【0031】
あるいは、休止区間において振動子2の両端を短絡させ、位相が逆転するときの振動成分を抑制(ダンピング)するようにしてもよい。この場合、制御部7は休止区間においてブリッジ回路3のスイッチング素子Tr1,Tr3をオフ、およびスイッチング素子Tr2,Tr4をオンに制御し(あるいは、スイッチング素子Tr1,Tr3をオン、およびスイッチング素子Tr2,Tr4をオフに制御し)、振動子2の両端を短絡する。この場合には各休止区間を短縮できるので送信時間を短縮できる。
【0032】
なお、休止区間を設ける場合には、
図7に示した構成の圧縮処理部6において、バーカ符号の2ビット目〜5ビット目の受信信号をパルス幅+休止区間だけ遅延させて1ビット目の受信信号に同期させるよう、各遅延器61〜64の遅延時間を変更する必要がある。
【0033】
以上より、実施の形態2によれば、制御部7は、送信信号に所定の符号系列に基づく位相変調信号を用い、当該符号系列のビット間に超音波を送信停止する休止区間を設けるように構成した。このため、位相が逆転するときの振動成分を抑制することが不要になる。
【0034】
また、実施の形態2によれば、ブリッジ回路3は、休止区間に振動子2の両端を短絡するダンピング回路を有し、当該ダンピング回路は、ブリッジ回路3のハイサイド側の各スイッチング素子Tr1,Tr3あるいはローサイド側の各スイッチング素子Tr2,Tr4から構成され、制御部7は、ダンピング回路を構成する各スイッチング素子Tr1,Tr3あるいはTr2,Tr4を休止区間に同時に駆動するように構成した。このため、位相が逆転するときの振動成分を抑制して送信時間を短縮し、超音波の送信効率を高めることができる。
【0035】
実施の形態3.
図9は、本実施の形態3に係る超音波送受信装置1のブリッジ回路3の回路構成例である。
図9において
図1〜
図3と同一または相当の部分については同一の符号を付し説明を省略する。
上記実施の形態1,2では、ブリッジ回路3を構成するスイッチング素子Tr2,Tr4(またはスイッチング素子Tr1,Tr3)をダンピング回路に利用して、振動子2の両端を短絡し、不要な振動を抑制(ダンピング)する構成にしたが、本実施の形態3では、振動子2の一方の端子にマッチング負荷用の抵抗R4(
図9)を接続して直列回路を構成し、この直列回路を短絡する短絡用のスイッチング素子(例えば、バイポーラトランジスタ)Tr5を設けてダンピング回路とする。この抵抗R4の抵抗値を調整して直列回路と振動子2のインピーダンスを一致させ、不要な振動成分を効率良く吸収(熱消費)させる。
【0036】
ここで、
図10に、超音波送信時の送信信号とスイッチング素子Tr1〜Tr5のスイッチング動作との対応関係の一例を示す。
図10(a)は休止区間を設けた符号長5ビットのバーカ符号、
図10(b)はバーカ符号と送信信号の位相の対応関係、
図10(c)はスイッチング素子Tr1〜Tr5のスイッチング動作の波形、
図10(d)は超音波の送信波形を示す。
【0037】
図10に示すように、バーカ符号に基づいて位相変調した送信信号の休止区間では、制御部7がスイッチング素子Tr2,Tr5をオン、およびスイッチング素子Tr1,Tr3,Tr4をオフに制御して、振動子2の両端を短絡し、位相が逆転するときの振動成分を抑制(ダンピング)する。このとき、抵抗R4を介することにより、振動抑制効果を高めることができる。
【0038】
図11は、ダンピング効果を説明する概念図を示し、
図11(a)は休止区間を設けない符号長5ビットのバーカ符号に基づき位相変調した送信信号をダンピングした場合としない場合、
図11(b)は休止区間を設けた符号長5ビットのバーカ符号に基づき位相変調した送信信号をダンピングした場合としない場合の比較例である。図示するように、ダンピングしない場合、位相が逆転するタイミングで送信波形が歪むが、ダンピングした場合にはこの歪みを抑制することができ、不要な振動を抑制することができる。
【0039】
以上より、実施の形態3によれば、ダンピング回路は、振動子2の一方端に接続されて直列回路を構成する抵抗R4を有し、休止区間に当該抵抗R4を介して振動子2の両端を短絡するように構成した。このため、位相が逆転するときの振動成分を抑制して送信時間を短縮し、超音波の送信効率を高めることができる。
【0040】
実施の形態4.
上記実施の形態1〜3では位相変調信号を送信したが、送信信号はこれに限定されるものではなく、例えばバースト信号を送信してもよい。本実施の形態4では、バースト信号を送受信して圧縮処理する場合を説明する。
【0041】
図12は、本実施の形態4に係る超音波送受信装置1の圧縮処理部6の構成例と、この圧縮処理部6が行うバースト信号の圧縮処理の一例を説明する図である。本実施の形態4の超音波送受信装置1は、圧縮処理部6を除いて、
図1〜
図11に示す超音波送受信装置1と図面上では同様の構成であるため、以下では
図1〜
図11を援用して説明する。
先ず、制御部7は、共振周波数帯域以外の送信周波数のバースト信号を例えば4ビット分、即ち、パルス幅4t分送信する。振動子2は、時系列にパルス幅4t分のバースト信号を受信し、差動アンプ4およびフィルタ処理部5を経由して圧縮処理部6へ出力する。
【0042】
圧縮処理部6は、バースト受信信号のうちの2ビット目〜4ビット目の受信信号を所定パルス幅t1(t>t1)ずつ遅延させる遅延器67〜69を有し、遅延した各受信信号を加算器66で加算する。
図12に示すパルス幅4tのバースト受信信号を圧縮処理した場合、振幅が最大で4倍になる。このように、相関の鋭い送信信号を受信して遅延加算することにより、受信感度を向上することができると共に、位相成分がランダムなノイズ成分を抑制することができるので、受信信号のSN比が向上する。
【0043】
なお、上記実施の形態1と同様に本実施の形態4でも送信パワーの低下を補うために、バースト送信信号のビット数を増加したり1ビット当たりの送信周波数を増大したりすることが望ましい。また、
図12の圧縮処理例では、パルス幅tの受信信号を所定パルス幅t1ずつシフトして加算したが、これに限定されるものではなく、受信信号を同期させて加算してもよい。
【0044】
また、超音波送受信装置1が
図7に示す圧縮処理部6と
図12に示す圧縮処理部6とを両方備え、上記実施の形態1〜3に示した圧縮処理と本実施の形態4に示した圧縮処理を組み合わせて実施する構成にしてもよい。例えば、
図6(c)に示すパルス幅5tの位相変調信号を4回繰り返して送受信し、先ず、
図7に示す圧縮処理部6がパルス幅5tの位相変調信号の圧縮処理を4回繰り返して行い、パルス幅tの4つの圧縮波形を出力する。続いて
図12に示す圧縮処理部6が、パルス幅tの4つの圧縮波形を所定パルス幅t1ずつシフトして圧縮処理し、1つの圧縮波形にする。これにより受信信号のSN比をさらに向上することが可能である。
【0045】
以上より、実施の形態4によれば、制御部7は、送信信号にバースト信号を用い、圧縮処理部6は、受信信号を遅延加算処理するように構成したので、上述の位相変調信号を用いた場合と同様に、受信感度およびSN比を向上させることができる。
【0046】
実施の形態5.
図13は、本実施の形態5に係る超音波送受信装置1の構成を示すブロック図である。なお、
図13において
図1と同一または相当の部分については同一の符号を付し説明を省略する。
本実施の形態5に係る超音波送受信装置1において、制御部7は、振動子2の共振周波数帯域以外の第1の送信周波数f1(例えば、
図5に示した送信周波数帯域f1)と第2の送信周波数f2(例えば、
図5に示した送信周波数帯域f2)とを切り替え、1つの振動子2から異なる送信周波数f1,f2の超音波を送信可能とする。他方の信号処理部8は、第1の送信周波数f1で送信したときの受信信号をフィルタ処理する第1のフィルタ処理部5−1およびその受信信号を圧縮処理する第1の圧縮処理部6−1、ならびに、第2の送信周波数f2で送信したときの受信信号をフィルタ処理する第2のフィルタ処理部5−2およびその受信信号を圧縮処理する第2の圧縮処理部6−2を備える。
【0047】
図14は、第1および第2の送信周波数f1,f2の超音波の検出範囲を説明する図である。
図14では、本実施の形態5に係る超音波送受信装置1を車両100の前部に取り付けた使用例を示しており、グラフの縦軸は路面からの高さ、横軸は超音波送受信装置1からの距離を示す。超音波は、送信周波数が低い方が空中を伝播しやすいため、第1の送信周波数f1の超音波と第2の送信周波数f2の超音波とで検出範囲が異なる。この検出範囲の違いを利用して、例えば障害物の簡単な高さ判定が可能になる。
図14の例では、超音波送受信装置1が第1の送信周波数f1でセンシングした場合に検出可能な高さの壁102を車両100の障害物と判定する。一方、第1の送信周波数f1でセンシングした場合には検出されず第2の送信周波数f2でセンシングした場合のみ検出される低い縁石101は障害物と判定しない。
【0048】
また、第1のフィルタ処理部5−1および第2のフィルタ処理部5−2において受信信号を周波数弁別するので、第1の送信周波数f1の超音波と第2の送信周波数f2の超音波が干渉することがない。従って、近傍領域での同時送受信が可能になる。
そのため、例えば車両前部に複数の超音波送受信装置1を並べて設置することができ、車両前方の障害物をくまなくセンシング可能となる。
【0049】
図15は、本実施の形態5に係る超音波送受信装置1を組み合わせて使用する場合の構成例を示す図である。これら第1〜第4の超音波送受信装置1−1〜1−4を車両前部に車幅方向に並べて設置して、車両前方の障害物をセンシングする。
第1の超音波送受信装置1−1は、振動子2、ブリッジ回路3、差動アンプ4、第1のフィルタ処理部5−1、第2のフィルタ処理部5−2、第1の圧縮処理部6−1、および第2の圧縮処理部6−2を備える。第2〜第4の超音波送受信装置1−2〜1−4もそれぞれ第1の超音波送受信装置1−1と同様の構成である。また、
図15の例では、第1〜第4の超音波送受信装置1−1〜1−4が1つの制御部7を共有する構成であるが、これに限定されるものではなく、第1〜第4の超音波送受信装置1−1〜1−4がそれぞれ個別に制御部7を有する構成であってもよい。
【0050】
図16は、
図15に示す第1〜第4の超音波送受信装置1−1〜1−4の動作例を説明する図である。制御部7は、1サイクル目において第1の送信周波数f1を第1の超音波送受信装置1−1に、第2の送信周波数f2を第3の超音波送受信装置1−3に割当ててそれぞれ超音波を送受信させて障害物を検出し、続く2サイクル目において第1の送信周波数f1を第2の超音波送受信装置1−2に、第2の送信周波数f2を第4の超音波送受信装置1−4に割当ててそれぞれ超音波を送受信させて障害物を検出するというように、
図16(a)〜(d)の4サイクルを繰り返す。これにより、4サイクルで車両前方を第1および第2の送信周波数f1,f2でセンシングでき、精密なセンサ間隔での障害物検出および送受信周期の短縮が可能になる。
【0051】
なお、図示例では、複数の超音波送受信装置1を車両前部に設置する例を説明したが、車両後部および側部など任意の場所に設置可能である。
【0052】
以上より、実施の形態5によれば、制御部7は、送信周波数に振動子2の共振周波数帯域以外の複数の周波数を切り替えて用いるように構成したので、温度環境が変化しても、共振周波数帯域以外の周波数において一様の送信感度で超音波の送受信が可能になる。また、送信周波数に応じて超音波の検出範囲が異なるので、例えば、障害物の簡単な高さ判定が可能になる。さらに、受信側で周波数弁別すれば相互干渉しないので、複数の超音波送受信装置を接近して配置して同時送受信が可能になる。
【0053】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。