【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくとも一つの実施形態は、
少なくとも一つのコラムを有し、水面に浮かぶように構成された浮体と、
前記少なくとも一つのコラム上に立設されるタワーと、を少なくとも備える浮体式風力発電装置の組み立て方法において、
前記コラムと前記タワーとを溶接により接合し、前記コラム上に前記タワーを立設するタワー立設工程を含み、
前記タワー立設工程は、前記タワーの基端側を前記コラムの内部に埋設し、該埋設した埋設部分の外周面および/または内周面を、前記タワーの軸方向の所定の長さに亘って前記コラムに溶接することで、前記タワーと前記コラムとを接合することを特徴とする。
【0008】
上記浮体式風力発電装置の組み立て方法では、コラムとタワーとを溶接し、コラム上にタワーを立設するタワー立設工程を含む。このため、大きな曲げモーメントが作用するタワーの基端部において、コラムとタワーとが溶接によって接合されるため、従来のフランジ構造によって接合される場合と比べて、曲げ耐久性における信頼性に優れる。また、フランジ径の製造限界に制限されることなく、タワー径を大きくすることもできる。
また、タワーの基端側の一部がコラムの内部に埋設され、該埋設部分の外周面および/または内周面とコラムとが軸方向の所定の長さに亘って溶接されるため、タワー基端部に生ずる曲げ応力を効果的に低減することができる。
【0009】
なお、上述した「タワーの軸方向の所定の長さに亘ってコラムに溶接する」とは、具体的には、
図8(a)に示すように、タワー6とコラム22とを接合する縦状の溶接部6aが、タワー6の軸方向に沿って所定の長さL1(L1≦L、L:埋設部分の全長)に亘って形成される態様の他に、
図8(b)に示すように、タワー6とコラム22とを接合する周状の溶接部6bが、タワー6の軸方向に間隔を置いて所定の長さL2(L2≦L)に亘って複数形成される態様、及び
図8(c)に示すように、タワー6とコラム22とを接合する螺旋状の溶接部6cが、タワー6の軸方向の所定の長さL3(L3≦L)に亘って形成される態様を少なくとも含む。
【0010】
一実施形態では、前記タワーは、タワー本体と、前記タワー本体に連結されるタワー下部連結管とを含み、前記タワー立設工程は、前記タワー下部連結管を前記コラムの内部に挿入する連結管挿入工程と、前記コラムの内部に挿入した前記タワー下部連結管の外周面および/または内周面を前記タワーの軸方向の所定の長さに亘って前記コラムに溶接する連結管接合工程と、前記コラムに接合された前記タワー下部連結管に前記タワー本体を溶接するタワー形成工程と、を含む。
上記実施形態のタワーは、タワー本体と、コラムとタワー本体とを連結するためのタワー下部連結管を含む。そして、上記実施形態の組み立て方法では、このタワー下部連結管をコラムの内部に挿入してコラムに溶接し、タワー下部連結管にタワー本体を溶接することで、コラム上にタワーを立設する。このように、コラムとタワー本体とを連結するためのタワー下部連結管を採用することで、タワー下部連結管を備えていない場合と比べて、施工性に優れている。
【0011】
上記実施形態において、前記連結管接合工程では、前記コラムの内部に挿入した前記タワー下部連結管を、前記タワーの軸方向に沿って延在する少なくとも一つの板状部材を介して、前記コラムに接合する。
このような構成によれば、タワー下部連結管とコラムとが、タワーの軸方向に沿って延在する少なくとも一つの板状部材を介して接合されるため、タワー基端部に生ずる曲げ応力を効果的に低減することができる。
【0012】
他の実施形態では、前記タワーは、タワー本体と、前記タワー本体に連結されるタワー下部連結管と、前記タワー下部連結管に連結されるリング状部とを含み、前記タワー立設工程は、前記リング状部を前記コラムの内部に形成するとともに、前記リング状部の外周面および/または内周面を前記タワーの軸方向の所定の長さに亘って前記コラムに溶接するリング状部形成工程と、前記コラムの内部に形成された前記リング状部に前記タワー下部連結管を溶接する連結管接合工程と、前記リング状部に溶接された前記タワー下部連結管に前記タワー本体を溶接するタワー形成工程と、を含む。
上記実施形態のタワーは、タワー本体と、タワー本体に連結されるタワー下部連結管と、タワー下部連結管に連結されるリング状部とを含む。そして、上記実施形態の組み立て方法では、先ずコラムの内部にリング状部を形成し、このリング状部にタワー下部連結管を溶接し、タワー下部連結管にタワー本体を溶接することで、コラム上にタワーを立設する。このように、先ずコラムの内部にリング状部を形成し、このリング状部にタワー下部連結管を連結する構成としたことで、リング状部を備えていない場合と比べて、施工性に優れている。
【0013】
上記実施形態において、前記リング状部形成工程では、前記コラムの内部に形成した前記リング状部を、前記タワーの軸方向に沿って延在する少なくとも一つの板状部材を介して、前記コラムに接合する。
このような構成によれば、リング状部とコラムとが、タワーの軸方向に沿って延在する少なくとも一つの板状部材を介して接合されるため、タワー基端部に生ずる曲げ応力を効果的に低減することができる。
【0014】
幾つかの実施形態では、前記タワーの外周面および/または内周面には、前記コラムの頂面に対応する位置より前記タワーの軸方向の先端側に向かって所定の長さに亘って延在する少なくとも一つの補強リブが溶接されている。
このような構成によれば、タワーの最も大きい曲げモーメントが作用する位置に補強リブが設けられるため、タワーに生ずる曲げ応力を効果的に低減することができる。
【0015】
一実施形態では、前記連結管挿入工程及び前記連結管接合工程は、前記浮体がドッグ内または陸上に配置された状態で実施され、前記タワー形成工程は、前記浮体が水面に浮設され且つ接岸された状態で実施される。
このような構成によれば、ドッグ内や陸上などに浮体を安定して配置した状態でタワー下部連結管をコラムに接合するため、タワー下部連結管をコラムに溶接する際の施工性に優れている。
また、浮体が接岸された状態でタワー形成工程を実施するため、タワー本体を陸上から吊降ろしてタワー下部連結管に接合することができるとともに、組み立て完了後は、完成した浮体式風力発電装置をそのまま曳航して目的地まで搬送することができる。
【0016】
他の実施形態では、前記リング状部形成工程及び前記連結管接合工程は、前記浮体がドッグ内または陸上に配置された状態で実施され、前記タワー形成工程は、前記浮体が水面に浮設され且つ接岸された状態で実施される。
このような構成によれば、ドッグ内や陸上などに浮体を安定して配置した状態でコラム内部にリング状部を形成するとともに、該リング状部にタワー下部連結管を溶接するため、施工性に優れている。
また、浮体が接岸された状態でタワー形成工程を実施するため、タワー本体を陸上から吊降ろしてタワー下部連結管に接合することができるとともに、組み立て完了後は、完成した浮体式風力発電装置をそのまま曳航して目的地まで搬送することができる。
【0017】
幾つかの実施形態では、前記タワー下部連結管と前記タワー本体との溶接箇所は、前記コラムの頂面よりも上方に位置し、前記タワー立設工程は、前記タワー形成工程の前に、前記タワー下部連結管の外周面または内周面の少なくともいずれか一方の周面に沿って、少なくとも前記タワー下部連結管と前記タワー本体との溶接箇所の高さまで作業者が移動するための足場を設置する足場設置工程を含む。
上記のとおり、タワー形成工程は浮体が水面に浮設された状態で行われるため、このような足場をコラムの頂面上に組むことで、タワー下部連結管とタワー本体とを溶接により接合することができる。
【0018】
幾つかの実施形態では、前記タワー本体は、複数のタワー分割体からなり、前記タワー形成工程は、前記タワー下部連結管に前記複数のタワー分割体の内の最も基端側に位置するタワー分割体を溶接する工程と、前記複数のタワー分割体同士を互いに溶接により接合する工程とを含む。
このような構成によれば、複数のタワー分割体が互いに溶接により一体化されるため、曲げ耐久性に優れるタワー本体とすることができる。
【0019】
上記実施形態において、前記複数のタワー分割体の各々の溶接箇所の近傍には補強リングが設置されている。
各々のタワー分割体の溶接箇所は開口端でもあるため、自重により変形し易い。このため、溶接箇所の近傍に補強リングを設置することで、タワー分割体の溶接箇所における変形を防止することができる。
【0020】
幾つかの実施形態では、前記タワー下部連結管の内側には、前記浮体の浮沈状態を制御する浮沈制御機器類の操作装置が少なくとも配置される。
上記のとおり、タワー下部連結管は、例えばドッグ内などで浮体が陸上に配置された状態で浮体に接合される。このため、タワー下部連結管の内側に、浮体の浮沈状態を制御する浮沈制御機器類の操作装置を配置する構成とすれば、タワー下部連結管の浮体への接合作業の完了後、例えばドッグ近傍の安定海面にて、速やかに浮沈試験を実施することができる。
【0021】
幾つかの実施形態では、前記コラムの内部に埋設されている埋設長をH1、前記埋設長H1を含む前記タワーの全長をHとした時に、H1/Hが0.03〜0.15の範囲にある。
コラム内部へのタワーの埋設長を長くするほどタワー基端部に生ずる曲げ応力を低減することができるが、一方においてタワーの埋設長を長くすることは、建設コストの増加要因ともなる。したがって、タワー全長Hと埋設長H1の比率を上記範囲内とすることで、曲げ耐久性と建設コストとのバランスに優れたタワーとすることができる。
【0022】
幾つかの実施形態では、前記コラムの頂面が平面視において矩形状に形成されているとともに、前記コラムの内部には、頂面側に開口を有する環状の埋設空間が形成されている。
一般にコラムは断面矩形状に形成されるのに対して、タワーは筒状に形成されており、両者の形状は異なっている。このため、頂面側に開口を有する環状の埋設空間をコラムの内部に形成し、該埋設空間にタワーの基端部を埋設することで、タワーとコラムとを容易に連結することができる。
【0023】
また、本発明の少なくとも一つの実施形態は、
少なくとも一つのコラムを有し、水面に浮かぶように構成された浮体と、
前記少なくとも一つのコラム上に立設されるタワーと、を少なくとも備える浮体式風力発電装置において、
前記タワーの基端側を前記コラムの内部に埋設し、該埋設した埋設部分の外周面および/または内周面を、前記タワーの軸方向の所定の長さに亘って前記コラムに溶接することで、前記タワーと前記コラムとが接合されていることを特徴とする。
【0024】
上記浮体式風力発電装置では、大きな曲げモーメントが作用するタワーの基端部において、コラムとタワーとが溶接によって接合されるため、従来のフランジ構造によって接合される場合と比べて、曲げ耐久性における信頼性に優れる。また、フランジ径の製造限界に制限されることなく、タワー径を大きくすることもできる。
また、タワーの基端側の一部がコラムの内部に埋設され、該埋設部分の外周面および/または内周面とコラムとが軸方向の所定の長さに亘って溶接されるため、タワー基端部に生ずる曲げ応力を効果的に低減することができる。