(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041916
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】印刷装置及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41F 17/10 20060101AFI20161206BHJP
G02B 6/44 20060101ALI20161206BHJP
B41F 9/00 20060101ALI20161206BHJP
B41M 1/10 20060101ALI20161206BHJP
B41M 1/34 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
B41F17/10 C
G02B6/44 311
B41F9/00 Z
B41M1/10
B41M1/34
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-41447(P2015-41447)
(22)【出願日】2015年3月3日
(62)【分割の表示】特願2013-3067(P2013-3067)の分割
【原出願日】2013年1月11日
(65)【公開番号】特開2015-145128(P2015-145128A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2015年3月3日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100102783
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 高明
(72)【発明者】
【氏名】八木 翔太
(72)【発明者】
【氏名】伊佐地 瑞基
(72)【発明者】
【氏名】大里 健
【審査官】
藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭61−160934(JP,U)
【文献】
特開2008−041574(JP,A)
【文献】
特開昭62−134612(JP,A)
【文献】
実開平03−092317(JP,U)
【文献】
特開2004−001444(JP,A)
【文献】
実開昭54−96301(JP,U)
【文献】
特開昭52−43504(JP,A)
【文献】
実開平7−25517(JP,U)
【文献】
特開平7−214751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 17/10
B41F 31/06
B41M 1/10
B41M 1/30
B41M 1/34
G02B 6/44
H01B 13/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容するインク槽と、
前記インク槽内からインクを掻き揚げる掻き揚げロールと、
前記掻き揚げロールから受け渡されるインクを充填可能な印刷パターンが設けられ、前記印刷パターンに充填されたインクを走行する光ファイバ素線の表面に転写する印刷ロールと、
前記印刷パターンにインクを押し込むとともに、前記印刷ロール表面に付着した余分なインクを掻き取るドクターブレードと、を備え、
前記光ファイバ素線は、前記印刷ロールに非接触であり、
前記印刷ロールは、独立して回転速度を設定可能であり、
前記掻き揚げロールと前記印刷ロールとは、非接触で配置されており、
前記掻き揚げロールの回転速度が、前記印刷ロールの回転速度より遅いことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
インクを収容するインク槽と、
前記インク槽内からインクを掻き揚げる掻き揚げロールと、
前記掻き揚げロールから受け渡されるインクを充填可能な印刷パターンが設けられ、前記印刷パターンに充填されたインクを走行する光ファイバ素線の表面に転写する印刷ロールと、
前記印刷パターンにインクを押し込むとともに、前記印刷ロール表面に付着した余分なインクを掻き取るドクターブレードと、を備え、
前記光ファイバ素線は、前記印刷ロールに非接触であり、
前記印刷ロールは、独立して回転速度を設定可能であり、
前記掻き揚げロールと前記印刷ロールとは、非接触で配置されており、
前記掻き揚げロールの周速度が、前記印刷ロールの周速度より遅いことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の印刷装置であって、
前記印刷パターンは、メッシュサイズが75mesh〜150meshであることを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
掻き揚げロールを用いてインク槽内からインクを掻き揚げるステップと、
前記掻き揚げロールにより掻き揚げられたインクを、前記掻き揚げロールと非接触で配置されており、インクを充填可能な印刷パターンが設けられた印刷ロールへ受け渡すステップと、
前記印刷パターンにインクを押し込むとともに、前記印刷ロール表面に付着した余分なインクを掻き取るステップと、
前記印刷パターンに充填されたインクを走行する光ファイバ素線の表面に転写するステップと、を備え、
前記光ファイバ素線は、前記印刷ロールに非接触であり、
前記印刷ロールは、独立して回転速度を設定可能であり、
前記掻き揚げロールの回転速度が、前記印刷ロールの回転速度より遅いことを特徴とする印刷方法。
【請求項5】
掻き揚げロールを用いてインク槽内からインクを掻き揚げるステップと、
前記掻き揚げロールにより掻き揚げられたインクを、前記掻き揚げロールと非接触で配置されており、インクを充填可能な印刷パターンが設けられた印刷ロールへ受け渡すステップと、
前記印刷パターンにインクを押し込むとともに、前記印刷ロール表面に付着した余分なインクを掻き取るステップと、
前記印刷パターンに充填されたインクを走行する光ファイバ素線の表面に転写するステップと、を備え、
前記光ファイバ素線は、前記印刷ロールに非接触であり、
前記印刷ロールは、独立して回転速度を設定可能であり、
前記掻き揚げロールの周速度が、前記印刷ロールの周速度より遅いことを特徴とする印刷方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の印刷方法であって、
前記印刷パターンは、メッシュサイズが75mesh〜150meshであることを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷方法、光ファイバ及び光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバテープ心線の識別のための印刷(マーキング)方法として、インクジェットプリンタを用いてマーキングを行うインクジェット印刷が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
インクジェット印刷において、1台のインクジェットプリンタでは高速印刷に対して限度があるため、光ファイバの線速を上げる場合、インクジェットプリンタを数台直列に設置する必要がある。また、インクジェットプリンタのよるマーキングにおいて、4心や12心の光ファイバテープ心線を並べて同時に印刷するためには、インクジェットプリンタの台数を増やして対応するのが現状であり、製造コストが増加する。
【0004】
また、他の印刷方法としては、印刷ロールを用いたロール印刷が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−123041号公報
【特許文献2】特開2011−011532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ロール印刷で光ファイバ心線のように直径が1mm以下の線条体に対してマーキングを視認性良く行うことは困難である。このため、直径が1mm以下の線条体に対してロール印刷は行われていなかった。
【0007】
本発明の目的は、光ファイバに対してマーキングを高速で且つ視認性良く行うことができる印刷装置、印刷方法、光ファイバ及び光ファイバケーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、インクを収容するインク槽と、インク槽内からインクを掻き揚げる掻き揚げロールと、掻き揚げロールから受け渡されるインクを充填可能であり、メッシュサイズが75mesh〜150meshの印刷パターンが設けられ、印刷パターンに充填されたインクを走行する光ファイバ表面に転写する印刷ロールと、印刷パターンにインクを押し込むとともに、印刷ロール表面に付着した余分なインクを掻き取るドクターブレードとを備える印刷装置が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、掻き揚げロールを用いてインク槽内からインクを掻き揚げるステップと、掻き揚げロールにより掻き揚げられたインクを、メッシュサイズが75mesh〜150meshの印刷パターンが設けられた印刷ロールへ受け渡すステップと、印刷パターンにインクを押し込むとともに、印刷ロール表面に付着した余分なインクを掻き取るステップと、印刷パターンに充填されたインクを走行する光ファイバ表面に転写するステップとを含む印刷方法が提供される。
【0010】
本発明の更に他の態様によれば、掻き揚げロールを用いてインク槽内からインクを掻き揚げるステップと、掻き揚げロールにより掻き揚げられたインクを、メッシュサイズが75mesh〜150meshの印刷パターンが設けられた印刷ロールへ受け渡すステップと、印刷パターンにインクを押し込むとともに、印刷ロール表面に付着した余分なインクを掻き取るステップと、印刷パターンに充填されたインクを走行する光ファイバ表面に転写するステップとを含む印刷方法を用いて製造された光ファイバが提供される。
【0011】
本発明の更に他の態様によれば、掻き揚げロールを用いてインク槽内からインクを掻き揚げるステップと、掻き揚げロールにより掻き揚げられたインクを、メッシュサイズが75mesh〜150meshの印刷パターンが設けられた印刷ロールへ受け渡すステップと、印刷パターンにインクを押し込むとともに、印刷ロール表面に付着した余分なインクを掻き取るステップと、印刷パターンに充填されたインクを走行する光ファイバ表面に転写するステップとを含む印刷方法を用いて製造された光ファイバを実装したことを特徴とする光ファイバケーブルが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光ファイバに対してマーキングを高速で且つ視認性良く行うことができる印刷装置、印刷方法、光ファイバ及び光ファイバケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係る印刷装置の一例を示す断面図(
図2のA−A切断面の断面図)である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る印刷装置の一例を示す上面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る印刷パターンの一例を示す上面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るマーキング後の光ファイバの一例を示す上面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る印刷パターンの一例を示す概略図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る印刷パターンの他の一例を示す概略図である。
【
図9】本発明の実施の形態の第1の実施例に係る実験結果を表す表である。
【
図10】本発明の実施の形態の第2の実施例に係る実験結果を表す表である。
【
図11】本発明のその他の実施の形態に係る印刷ロールの一例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0015】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
(印刷装置)
本発明の実施の形態に係る印刷装置は、光ファイバ等の直径1mm以下の線条体に対して印刷(マーキング)を行う印刷装置である。本発明の実施の形態に係る印刷装置は、
図1及び
図2に示すように、インクIを収容するインク槽1と、インク槽1内のインクIに一部が浸漬された掻き揚げロール2と、掻き揚げロール2近傍に配置された印刷ロール3と、印刷ロール3に当接されたドクターブレード4とを備える。
【0017】
光ファイバ5に対する印刷時には、掻き揚げロール2が矢印Aの方向へ回転しながらインクIを掻き揚げる。一方、印刷ロール3は掻き揚げロール2の回転方向とは反対方向の矢印Bの方向へ回転し、掻き揚げロール2により掻き揚げたインクIが受け渡される。ドクターブレード4が、印刷ロール3に付着した余分なインクIを掻き取るとともに、印刷ロール3に設けられた印刷パターン31〜36にインクIを押し込む。印刷パターン31〜36に充填されたインクIが、印刷ロール3上を矢印Cの方向へ走行している光ファイバ5へ転写されて、マーキングが行われる。
【0018】
マーキング対象である光ファイバ5の直径は1mm以下であり、例えば0.25mm程度である。光ファイバ5としては、光ファイバ素線、光ファイバ心線、又は光ファイバテープ心線等を採用可能である。光ファイバテープ心線としては、例えば間欠固定型の光ファイバテープ心線等が使用可能である。本発明の実施の形態において、光ファイバ5の本数や種類、サイズ等は特に限定されない。光ファイバ5が複数本の場合には、1つの印刷ロール3で一括して並列にマーキングすることが可能である。光ファイバ5の走行速度(線速)は100m/min〜800m/min程度である。光ファイバ5は、印刷ロール3に接触又は非接触であり、印刷ロール3によりしごかれないように、且つ印刷ロール3からのインクIが付着するように走行する。
【0019】
インク槽1内のインクIの粘度は1mPa・s〜2000Pa・s程度(水及びUV硬化インクが入りうる範囲)である。掻き揚げロール2及び印刷ロール3の直径D1,D2はそれぞれ100m程度であり、幅W1,W2はそれぞれ50mm程度である。掻き揚げロール2及び印刷ロール3は互いに非接触で、表面張力によりインクIを受け渡し可能な位置に配置されている。印刷ロール3の回転速度は光ファイバ5の走行速度(線速)に対応して適宜設定される。掻き揚げロール2の回転速度は、印刷ロール3の回転速度よりも遅くても良く、適宜設定される。
【0020】
印刷ロール3には印刷パターン31〜33が設けられている。印刷パターン31〜33の回転方向に対して平行な長さL1は1mm〜50mm程度であり、回転方向に対して直交する幅W3は1mm〜50mm程度である。印刷パターン31〜33の間隔S1は1mm〜50mm程度である。なお、印刷パターン31〜36の形状は矩形に限定されない。
【0021】
図1に示すように、印刷ロール3の円周方向において、印刷パターン31〜33に対向する位置に、印刷パターン31〜33と同様な構成の印刷パターン34〜36が設けられている。なお、
図1では3つの印刷パターン31〜33と3つの印刷パターン34〜36が、印刷ロール3の互いに対向する位置に設けられた場合を説明したが、印刷パターン31〜36の個数やサイズ、印刷ロール3上における配置位置も特に限定されない。
【0022】
印刷パターン31は、
図3に示すようにメッシュパターンであり、網目状に交差する凸部31aと、菱形(正方形)の溝部(凹部)31bとを有する。溝部31bの深さは例えば5μm〜50μm程度である。この溝部31bに充填されたインクIが光ファイバ5表面と接触して、光ファイバ5へ付着する。光ファイバ5表面に付着したインクIは、光ファイバ5表面で流動して相互に連結し、
図4に示すように印刷パターン31〜33に対応するインク層51〜53が形成される。なお、
図1及び
図2に示した印刷パターン32〜36も、
図4に示した印刷パターン31と同様の構成を有する。
【0023】
印刷パターン31〜36の形成方法としては、例えば、印刷パターン31〜36を形成するためのパターンが施された加工ロールを用いて印刷ロール3の表面に圧接しても良く、レーザー加工を行っても良く、又はレジストパターンをマスクとして用いたエッチングを行っても良い。
【0024】
印刷パターン31〜36のメッシュサイズは、75mesh〜150meshに規定され、75mesh〜133meshとすることがより好ましい。但し、「mesh」は、1インチあたりの網目の数を表す。
【0025】
図5は、印刷パターン31の凸部31aを模式的に実線で示し、矢印方向に走行する光ファイバ5を点線で示す。
図5において、光ファイバ5が凸部31aにより構成されるメッシュの交差位置を通るように印刷パターン31上を走行しているが、光ファイバ5の走行位置はこれに限定されない。
【0026】
印刷パターン31のメッシュを粗くしていくと、
図5に示すように1メッシュにおけるインクIの表面積が大きくなり、表面張力により光ファイバ5に付着するインク量が多くなる。この結果、
図6に示すように、光ファイバ5の円周方向においてインク層51が形成される角度(以下、「印刷角度」ともいう。)θが大きくなり、マーキングの良好な視認性が得られる。しかしながら、メッシュサイズが150meshより大きくなると、印刷パターン31からインクIが漏れ出し、光ファイバ5のマーキング位置以外の位置にインクIが付着してしまい、視認性が悪化する。
【0027】
一方、メッシュサイズが小さくなると、1メッシュにおけるインクIの表面積が小さくなり、光ファイバ5に付着するインク量が少なくなる。
図7は、
図5よりもメッシュサイズが小さい場合であり、印刷パターン31の凸部31aを模式的に実線で示し、矢印方向に走行する光ファイバ5を点線で示す。メッシュサイズが小さくなると、
図8に示すように印刷角度θが小さくなっていく。ここで、メッシュサイズが75meshより小さくなると、印刷角度θが小さくなりすぎ、マーキングの視認性が悪化する。
【0028】
よって、印刷パターン31〜36のメッシュサイズを75mesh〜150meshとすることで、印刷パターン31〜36からのインク漏れを防止しつつ、マーキングの良好な視認性を得ることができる。
【0029】
(印刷方法)
次に、本発明の実施の形態に係る光ファイバ5に対する印刷方法(マーキング方法)の一例を説明する。
【0030】
(イ)
図1及び
図2に示した掻き揚げロール2を矢印Aの方向へ回転させて、インクIを掻き揚げる。
【0031】
(ロ)メッシュサイズが75mesh〜150meshの印刷パターン31〜36が設けられた印刷ロール3を矢印Bの方向へ回転させて、掻き揚げロール2から印刷ロール3へインクIを受け渡す。
【0032】
(ハ)ドクターブレード4が、印刷ロール3に設けられた印刷パターン31〜33の溝部31bへインクIを押し込むとともに、印刷ロール3表面に付着した余分なインクIを掻き取る。
【0033】
(ニ)印刷ロール3に設けられた印刷パターン31〜33の溝部31bに充填されたインクIを、矢印Cの方向へ走行している光ファイバ5へ転写する。
【0034】
本発明の実施の形態に係る印刷装置及び印刷方法によれば、ロール印刷により光ファイバ5に対してマーキングを行うことにより、インクジェット印刷の場合のように台数を増加させることなく、インクジェット印刷に比較して高速にマーキングを行うことができる。
【0035】
更に、複数本の光ファイバ5に対しても、インクジェット印刷の場合のように台数を増加させることなく、一括して並列にマーキングを行うことができる。
【0036】
更に、メッシュサイズが75mesh〜150meshの印刷パターン31〜36の印刷ロール3を用いることにより、マーキングの良好な視認性を得ることができる。
【0037】
(第1の実施例)
第1の実施例として、メッシュサイズの異なる7種類の印刷ロールと、メッシュの無い印刷ロールを用いて、直径250μmの光ファイバ素線に対するマーキングを行い、試料1〜8を作製した。光ファイバ素線の走行速度は400m/minとした。印刷ロールの直径は100mm、幅は15mmとした。インクは、大日製化工業株式会社のVS5990と溶剤VS1000を2:1の割合で混合したものを使用した。
【0038】
作製した試料1〜12を用いて、印刷角度を測定し、インク漏れ及び視認性を評価した。
図9に実験結果を示す。
図9において、印刷角度は、光ファイバ素線断面の円周においてマーキングされた角度を示す。インク漏れは、マーキング後の試料1〜8を目視で観察し、インク漏れの有無を判定する。視認性は、10名が確認し、全員がマーキングによる試料1〜8の識別が容易にできると判定した場合「○」とし、それ以外を「×」とした。更に、総合判定として、インク漏れが無く、且つ視認性が良好な場合を「○」とし、インク漏れが有るか、視認性が悪い場合を「×」とした。
【0039】
図9から、メッシュサイズが粗くなるほど印刷角度が増加するのが分かる。そして、メッシュサイズが175mesh、200meshである試料1、2では、印刷角度が20°以下となり、印刷面積の狭さから視認性が悪化した。一方、メッシュが50mesh、メッシュがない試料7、8では、インク漏れが発生し、狙いの位置以外の位置にマーキングされてしまい、視認性が悪くなっていた。
【0040】
(第2の実施例)
第2の実施例として、直径250μmの光ファイバ素線の走行速度(線速)及び心数を変えてマーキングを行い、試料1〜12を作製した。印刷パターンのメッシュサイズは133meshとした。印刷ロールの直径は100mm、幅は55mmとした。インクは、大日精化工業株式会社のVS5990と溶剤VS1000を2:1の割合で混合したものを使用した。
【0041】
作製した試料1〜12を用いて、第1の実施例と同様にインク漏れ及び視認性を評価した。
図10に実験結果を示す。
図10に示すように、1心〜12心の範囲で、線速が100m/min〜400m/minの範囲でインク漏れは生じず、良好な視認性が得られた。
【0042】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0043】
例えば、本発明の実施の形態に係る印刷装置は、
図1に示した構成に限定されず、メッシュサイズが75mesh〜150meshの印刷パターン31〜36の印刷ロール3を少なくとも有していれば良い。
【0044】
また、印刷パターン31〜36の溝部31bの菱形は、4つの角が90°の正方形パターンに限定されず、4つの角が鋭角と鈍角の組み合わせであっても良い。また、印刷パターン31〜36のメッシュを構成する菱形は、印刷ロール3の回転方向に対して各辺が斜め方向であるパターンを示したが、特にこれに限定されない。例えば
図11に示すように、印刷パターン31を構成する凹部31cの形状が、印刷ロール3の回転方向に対して対向する2辺が平行であり、他の2辺が直交していても良い。また、印刷パターン31〜36の凹部31aは開口部が菱形であれば良く、凹部31aの3次元形状は四角柱(立方体又は直方体)であっても良く、三角柱であっても良い。
【0045】
また、本発明の実施の形態に係る光ファイバ5を外被(シース)で覆うことにより実装した光ファイバケーブルを製造可能である。光ファイバケーブルの種類は特に限定されず、スロットレス型光ファイバケーブルや、SZスロット型光ファイバケーブル又はテープスロット型光ファイバケーブル等のスロット型光ファイバケーブルにも適用可能である。
【0046】
また、本発明の実施の形態に係る光ファイバ5の代わりに、通常の電線やワイヤ等の1mm以下の直径を有する線条体も使用可能である。
【0047】
また、本発明の実施の形態に係る印刷装置は、光ファイバ5等の線条体に対して印刷する他、線条体以外のシート等に対して印刷することも可能である。
【0048】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0049】
1…インク槽
2…掻き揚げロール
3…印刷ロール
4…ドクターブレード
5…光ファイバ
7…試料
31a…凸部
31b…溝部
31〜36…印刷パターン
51,52,53…インク層