(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042003
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】電子測定回路
(51)【国際特許分類】
G01P 15/125 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
G01P15/125 V
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-15220(P2016-15220)
(22)【出願日】2016年1月29日
(65)【公開番号】特開2016-156808(P2016-156808A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2016年1月29日
(31)【優先権主張番号】15156122.2
(32)【優先日】2015年2月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596162740
【氏名又は名称】イーエム・ミクロエレクトロニク−マリン・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・アントランジェ
(72)【発明者】
【氏名】ルカ・ロッシ
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァン・グロージャン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−ミシェル・ダガ
【審査官】
濱本 禎広
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−507221(JP,A)
【文献】
特表2001−518612(JP,A)
【文献】
特表2001−519534(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/115264(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 15/125
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理的パラメーターを測定するための電子測定回路であって、
それぞれが固定電極を有する2つの差動マウントされたキャパシター(C1、C2)、及び前記2つのキャパシター(C1、C2)の各固定電極に対して運動することができるように構成する前記2つのキャパシター(C1、C2)に対して共通の共通電極を有し、これによって、前記物理的パラメーターが測定されるときに各キャパシター(C1、C2)の容量値を変更する、測定センサー(1)と、
前記共通電極に接続され、前記測定センサー(1)から受けた電荷を積分し、前記共通電極に交互に接続されるように構成する2つの積分器を有する第1の積分ユニット(5)と、
前記第1の積分ユニット(5)の2つの積分器からのアナログ出力値を比較し第1のデジタル出力信号(ai)を供給する第1の比較器(9)と、
前記第1の積分ユニット(5)から受けた電荷を積分するように接続し、前記第1の積分ユニット(5)の前記2つの積分器から交互に電荷を積分するように構成する2つの積分器を有する第2の積分ユニット(7)と、
前記第2の積分ユニット(7)の前記2つの積分器からのアナログ出力値を比較し、第2のデジタル出力信号(bi)を供給する第2の比較器(19)と、
前記測定センサー(1)に接続され前記2つのキャパシター(C1、C2)にまたがる異なる電圧値をスイッチングするスイッチング回路(3)と、
前記第1の比較器(9)から前記スイッチング回路(3)に前記第1のデジタル出力信号(ai)を供給して前記スイッチング回路(3)の動作を制御する帰還回路(11)と、並びに
前記第1の比較器(9)から前記第1のデジタル出力信号(ai)を受け、前記第2の比較器(19)から前記第2のデジタル出力信号(bi)を受けて、当該測定回路の最終デジタル出力信号(y)を供給する増分計算ユニット(13)と
を有することを特徴とする測定回路。
【請求項2】
前記第1の積分ユニット(5)及び前記第2の積分ユニット(7)は、直列に接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の測定回路。
【請求項3】
前記第1の積分ユニット(5)及び前記第2の積分ユニット(7)は、交互に動作するように構成する2つのスイッチによって接続される
ことを特徴とする請求項2に記載の測定回路。
【請求項4】
前記積分ユニット(5、7)のそれぞれは、1つの増幅器(amp1、amp2)、及び対称的な積分器として接続される2つの積分キャパシター(Ci1p、Ci1m、Ci2p、Ci2m)を有する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の測定回路。
【請求項5】
2つの差動マウントされたキャパシター(C1、C2)を有する測定センサー(1)を有する電子測定回路によって物理的パラメーターを測定する方法であって、
前記キャパシターはそれぞれ、固定電極と、及び前記キャパシター(C1、C2)の両方に共通の共通電極とを有し、
この共通電極は、前記2つのキャパシター(C1、C2)の各固定電極に対して運動することができるように構成して、これによって、前記物理的パラメーターが測定される時に各キャパシター(C1、C2)の容量値を変更し、
前記電子測定回路は、
前記共通電極に交互に接続され前記電荷の積分を交互に行う2つの積分器を有し、前記共通電極に接続され前記測定センサー(1)から受けた電荷を積分する第1の積分ユニット(5)と、
前記第1の積分ユニット(5)の前記2つの積分器からのアナログ出力値を比較し第1のデジタル出力信号(ai)を供給する第1の比較器(9)と、
前記第1の積分ユニット(5)の前記2つの積分器からの前記電荷の積分を交互に行う2つの積分器を有し、前記第1の積分ユニット(5)から受けた電荷を積分するように接続する第2の積分ユニット(7)と、
前記第2の積分ユニット(7)の前記2つの積分器からのアナログ出力値を比較し第2のデジタル出力信号(bi)を供給する第2の比較器(19)と、
前記第1の比較器(9)からのデジタル出力信号(ai)を前記測定センサー(1)に接続されたスイッチング回路(3)に供給する帰還回路(11)と、
受けた前記第1のデジタル出力信号(ai)の関数として前記2つのキャパシター(C1、C2)をまたがる電圧を変える前記スイッチング回路(3)と、
前記第1の比較器(9)から前記第1のデジタル出力信号(ai)を受け前記第2の比較器(19)から前記第2のデジタル出力信号(bi)を受け、前記測定回路のバイナリ出力信号(y)を供給する増分計算ユニット(13)と
を有することを特徴とする測定方法。
【請求項6】
前記2つのキャパシター(C1、C2)をまたがる電圧は、少なくとも3つの異なる電圧値(Vss、Vdd、Vref)の間をスイッチングされる
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記電圧値の1つは実質的にゼロであり、前記電圧値の1つは最大電圧を表し、
前記電圧値の1つはゼロから最大電圧までである
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の比較器の出力信号(ai)の1つの値によって、前記第1の積分ユニット(5)の前記2つの積分器のそれぞれが前記2つのキャパシター(C1、C2)の間の電荷の差が交互に積分される
ことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記第1の比較器の出力信号(ai)の1つの値は、前記2つのキャパシター(C1、C2)のそれぞれをまたがる電圧を、第1の電圧値(Vref)から第2の電圧値(Vdd、Vss)に変え、そして、前記第1の電圧値(Vref)に戻すように変える
ことを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記キャパシター(C1、C2)の1つをまたがる電圧値が前記第2の電圧値(Vdd、Vss)にスイッチングされる場合に、前記キャパシター(C1、C2)のうちの他のキャパシターをまたがる電圧値が前記第3の電圧値(Vdd、Vss)にスイッチングされる
ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記共通電極は、前記測定回路の動作の間、実質的に一定の電位にある
ことを特徴とする請求項5〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記第1の積分回路(5)は、2つのスイッチ(Tp、Tm)によって前記測定センサー(1)に接続され、
前記2つのスイッチ(Tp、Tm)の動作は、前記第1のデジタル出力信号(ai)の状態に応じて前記スイッチング回路(3)の動作と同期する
ことを特徴とする請求項5〜11のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理的パラメーターを測定する測定回路の分野に関する。より詳細には、本発明は、容量性センサーを有する測定回路に関する。本発明は、さらに、これに対応する物理的パラメーターを測定する方法及びコンピュータープログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
物理的パラメーターを測定するために用いられる容量性センサーが、2つの固定電極の間に弾性保持されるアーマチャーの一部を形成する可動共通電極を有することがある。この共通電極は、例えば、与えられる力に起因して、固定電極の一方又は他方の方向に特定の距離動くことができる。非稼動状態において、共通電極は、2つの固定電極からほぼ等しい距離にあり、この距離は、2つのキャパシターに対して同じ容量値を定める。与えられた力などに起因して共通電極が動くと、各キャパシターの容量値が、他方の容量値とは逆に変わる。このようにして、2つのキャパシターの容量における変化に依存する電圧の形態の出力信号を与えるように、容量性センサーの電子インタフェース回路を構成させる。この種の容量性センサーを、例えば、加速度値を測定するために用いることができる。
【0003】
測定センサーには電気的インタフェース回路が接続されており、測定センサーからの信号を処理する。米国特許US8429981B2に記載されているような従来のインタフェース回路は、容量性測定センサーの容量を前置帯電させるための入力として電圧を与えるためにデジタル/アナログ変換器(DAC)を用いている。このDACの分解能は、測定回路のデジタル出力の分解能に直接リンクしている。例えば、10ビットの分解能の出力は、インタフェース回路の帰還回路において10ビットの分解能のDACを必要とする。このような従来の技術は、低い分解能の出力(例、10ビットの分解能まで)に対しては非常に有効であることがある。しかし、DACの精度に固有ないくつかの線形性についての問題がこの分解能を超えて発生する。さらに、既存の解法では、測定センサーの容量を前置帯電させるために、繰り返しの前置帯電する段階が必要になる。しかし、この前置帯電する段階の短所は、キャパシターを帯電させるためにいくらかのエネルギーが用いられるのに、この段階の間にいずれの測定信号も生成されないということである。
【0004】
米国特許出願US2007/0247171A1は、容量が可変な1つ又は2つのキャパシターの電子インタフェース回路について記載している。このインタフェース回路は、2つの入力を有する差動積分増幅器と、第1段階において異なる電圧で各キャパシターを帯電させ第2段階において各キャパシターの固定電極を1つの対応する入力に接続させるスイッチング回路とを有する。第3の段階において各キャパシターは反転した異なる電圧によってバイアスをかけられ、第4の段階においてそれらの固定電極が増幅器の対応する入力に接続される。キャパシターの共通電極は、接地に接続される。増幅器からの2つの出力信号は、スイッチドキャパシター回路を制御するために比較器において比較される。この電子インタフェース回路の動作は、出力において測定値を得るのに比較的長く、キャパシターの励起は対称的な形態で行われる。このことは、課題である。
【0005】
米国特許出願US2010/0231237A1は、物理的パラメーターを測定する容量性センサーを備えた電子回路について記載している。このセンサーは、差動構成でマウントされた2つのキャパシターを有しており、その共通電極が電荷移動増幅器の1つの入力に接続されている。この電荷移動増幅器の出力に積分器が接続されており、これは、動的比較器によって制御される。第1の動作段階において励起ユニットを通して積分器の測定された出力をキャパシターの固定電極に与えることができる。第2の段階において、キャパシターの固定電極が、励起ユニットを通して2つの異なる電圧によってバイアスをかけられる。電子回路の出力で最終測定値を得るためにいくつかの測定サイクルを有することが必要となる。このことは、課題である。
【0006】
ドイツ特許出願DE102005031607A1及び米国特許出願US2007/0236373A1において、差動キャパシターの容量性信号変動をデジタル信号に変換する回路のみが記載されている。比較器に続く積分増幅器の入力には、異なるキャパシターを接続することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、容量性センサーを測定センサーとして用いる測定回路の動作又は構成に関連する上記の課題を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によると、請求項1に記載の電子測定回路が提供される。
【0009】
提案される新しい手法は、電子測定回路における増分原理によって高い分解能の出力信号が得られるという利点を有する。連続的シグマデルタ技術を用いる電子回路とは対照的に、この電子測定回路の動作によって、アナログ/デジタル変換をシングルショットモードで行うことが可能になる。さらに、高い分解能を維持し非常に良好な線形性を有することによって、推定を行うために必要なサンプルの数を劇的に減らすことができる。例えば、連続的手法において、200のサンプルを用意されるが、本発明においては、増分原理によって測定出力信号を決めるために128のサンプルのみが用意される。
【0010】
好ましいことに、中央ノード(両方のキャパシターに対する共通電極)におけるこの仮想接地のおかげで、当該信号は寄生容量に依存しなくなる。この信号は、中央の寄生容量によって悪影響を及ぼされない。また、第1の比較器からの帰還信号の所与の値が有効な測定出力信号を生成するため/分解能を改善するために用いられる間、すべての電圧がセンサーキャパシターをまたがって遷移する。
【0011】
好ましいことに、2つの固定電極によって中央電極又は可動質量体に与えられる平均の静電力を有するようにされる。この平均の静電力は、ゼロである。さらに、必要な分解能に対する消費の適応がされる。
【0012】
本発明の第2の態様によると、請求項5に記載の物理的パラメーターを測定する方法が提供される。
【0013】
添付の従属請求項には、本発明の他の態様が記載されている。
【0014】
図面を参照して例示的な実施形態(これに制限されない)についての以下の説明を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一態様に係る二次電子測定回路を示すブロック図である。
【
図2】2つの可能性のある値を有するデジタル帰還信号に対する
図1の回路における測定センサーキャパシターの電圧スイッチングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面を参照にして、本発明の実施形態について詳細に説明する。異なる図に示した同一又は対応する機能的及び構造的な要素には、同じ参照符号を割り当てている。
【0017】
図1に示す測定回路又はシステムは、キャパシターC1及びC2、スイッチング回路3、第1の積分回路ないしユニット5、第1の比較器9、第2の積分回路ないしユニット7、第2の比較器19及び帰還回路11を有する測定センサー1によって構成している。また、増分計算ユニット13を示しており、これは、2つの比較器9、19から2のデジタル出力信号ai、biを受け、また、最終デジタル出力信号yのサンプリングレートを減らすように構成している。なお、実測結果は、デシメーションの後に出力信号によって与えられ、通常、12又は14ビットのビット列である。
【0018】
スイッチング回路3によって、Vref、Vdd及びVss電圧源への接続によるキャパシターC1及びC2の帯電又は放電が可能になる。ここで、Vssは、接地又は0Vであり、Vddは、測定回路に与えることができる最大電圧であり、Vrefは、VssとVddの間であって、好ましくはVdd/2ではないような電圧値である。これらのキャパシターの両方は、これらのキャパシターをまたがる電圧がVrefである場合に放電する。第1の積分回路5では、差動電荷積分器は、第1の上側分岐積分キャパシターCi1p、第1の増幅器amp1及び第1の下側分岐積分キャパシターCi1mで構成される。図示した差動の電荷積分器は対称的な積分器であり、増幅器amp1を用いて、2つのキャパシターCi1によって電荷を積分する。この積分器は、上側分岐スイッチTpと下側分岐スイッチTmによってノードMに接続される。
【0019】
第1の積分回路5は、
図1に示すようなさらなるスイッチを介して、そして第1の比較器9に直接、第2の積分回路7に接続される。このようにして、第1の積分回路5からの2つのアナログ出力信号Vi1p及びVi1mが、第1の比較器9及び第2の積分回路7に与えられるように構成している。
【0020】
第2の積分回路7における積分器は、第2の上側分岐積分キャパシターCi2p、第2の下側分岐積分キャパシターCi2m、及び第2の増幅器amp2で構成される。また、この積分器は対称的にスイッチングされる積分器であり、キャパシターCi2p、Ci2mと増幅器amp2を交互に用いることによって、第1の積分回路5から受けた電荷を積分する。また、キャパシターCs2p及びCs2mを示しており、これも積分器が電荷の積分を行うことを支援する。
【0021】
この例における第2の積分回路7は、第2の比較器19に直接接続しており、第2の積分回路7からの2つのアナログ出力信号Vi2p及びVi2mが第2の比較器19に与えられるように構成している。第2の比較器19は、第2の積分回路7から受けた2つのアナログ入力信号を比較するように構成している。
【0022】
第1及び第2の比較器9及び19における比較に基づいて、第1の比較器の出力信号aiは、正又は負の値のいずれかを有し、あるいは、1又は0(−1)に等しく、第2の比較器の出力信号biは、正又は負の値のいずれかを有し、これは、1又は0(−1)である。第1及び第2の比較器9及び19からの2つの出力信号ai及びbiは、増分計算ユニット13に与えられ、これは、この測定回路の最終デジタル出力信号yを供給する。各比較器9又は19がアナログ/デジタル変換器としても動作すると考えることができる。
【0023】
ここで、第1の比較器の出力信号aiは、帰還信号線11を通ってスイッチング回路3に与えられ、下でより詳細に説明するようにスイッチング動作を制御するように構成している。この信号aiの値によって、積分すべき電荷が正か負であるかどうかが決まる。すなわち、積分が、測定構成の上側分岐によって行われるか、又は測定構成の下側分岐、具体的には、第1の積分回路5によって行われるかが決まる。ここで説明している回路が電荷を積分する手法のために、
図1に示す回路が、二次シグマデルタ構成であると考えることができる。
【0024】
この信号aiの値が正である場合、正帰還がスイッチング回路3に与えられ、この例においては、時間Tpの後の以下の2つの遷移のシーケンスがキャパシターC1及びC2に適用される。これも
図2に示した。
− 第1の遷移:
V1の電位がVrefからVddまでスイッチングされ、このときに、V2の電位がVrefからVssまでスイッチングされ、スイッチTpが活性化ないし閉じられる。これによって、C1に格納された電荷とC2に格納された電荷との差が、第1の上側分岐積分キャパシターCi1pに移される。所与の期間の後、スイッチTpが開く。
− 第2の遷移:
V1の電位がVssからVrefまでスイッチングされ、このとき、V2の電位がVddからVrefまでスイッチングされ、スイッチTmが活性化ないし閉じられる。これによって、C1に格納された電荷とC2に格納された電荷との差が、第1の下側分岐積分キャパシターCi1mに移される。所与の期間の後、スイッチTmが開く。
【0025】
信号aiの値が負である場合、負帰還がスイッチング回路3に与えられ、この例においては、所定の第2の時間Tmの後に、2つの遷移の以下のシーケンスが適用される。これも
図2に示した。
− 第1の遷移:
V1の電位がVrefからVssまでスイッチングされ、このとき、V2の電位がVrefからVddまでスイッチングされ、スイッチTmが活性化ないし閉じられる。これによって、C1に格納された電荷とC2に格納された電荷との差が、第1の下側分岐積分キャパシターCi1mに移される。所与の期間の後、スイッチTmが開く。
− 第2の遷移:
V1における電位がVssからVrefまでスイッチングされ、このとき、V2における電位がVddからVrefまでスイッチングされ、スイッチTpが活性化ないし閉じられる。これによって、C1に格納された電荷とC2に格納された電荷との差が、第1の上側分岐積分キャパシターCi1pに移される。所与の期間の後、スイッチTpが開く。
【0026】
本発明によると、電圧の遷移ごとに電荷を積分するように積分器が構成している。すなわち、キャパシターC1及び/又はC2をまたがる電圧が1つの値から別の値まで上昇又は降下している時である。しかし、電圧値が一定のままである場合には、積分が行われない。スイッチTp及びTmの動作は、好ましくは、スイッチング回路3の動作と同期される。スイッチング回路3において、電圧スイッチング周波数は、例えば、100kHz〜1000kHzである。電圧スイッチング周波数は、好ましくは、測定回路の動作の間一定である。電荷の積分は、測定回路の上側分岐の積分器と下側分岐の積分器との間で交互に行われる。すなわち、スイッチTpが閉じている場合、スイッチTmは開いており、その逆も成り立っている。
【0027】
この実施形態によると、Vcmが第2の積分回路7に接続されている初期化段階において、共通ノードMがVrefに直接接続され、この回路の通常動作の間には、ノードMが、増幅器amp1を通して仮想接地Vrefに接続され続け、したがって、実質的に一定の電位を維持する。この特性によって、ノードMと接地の間の寄生容量をなくすことができる。このようにして、移された電荷に対応する信号が、その後に、寄生容量によって影響を受けない。
【0028】
容量性感知のための二次アナログフロントエンドの動作を上で
図1を参照して説明した。二次構成という用語は、ここでは、2つの積分回路を有する構成を意味するものとして理解されるものである。しかし、より高次元の構成を用いて測定回路を実装することもできる。実際に、測定構成における積分回路の数が大きいほど、量子化雑音を多く減らすことができる。
【0029】
図2に示し上で説明したキャパシターC1及びC2をまたがる電圧の変動によって、出力信号aiの値に応じて電荷QのCi1p、Ci1mへの遷移を、そして、それから他の積分器のキャパシターへの遷移を誘導し、ノードVi1p及びVi1mにおける電圧の積分を誘導する。実際に、電荷Qの遷移は、以下のように、上側分岐ないし正の分岐にて(スイッチTpを介して)定められる。
【0030】
信号aiの値が正(例、+1)である場合の第1の遷移は、
Q = dQ1+dQ2
である。
ここで、
dQ1 = C1・(Vref−Vref)−C1・(Vref−Vdd)、
dQ2 = C2・(Vref−Vref)−C2・(Vref−Vss)、Vref = Vdd/2+Vmax
であり、ここで、dQ1とdQ2は、キャパシターC1及びC2における格納された電荷ないし表面電荷の変化のレートであり、Vmaxは、システムの感度を収束させるための自由度([デシメーションの後の出力信号]/(C1−C2))を示している。したがって、
Q = −C1・(−Vdd/2+Vmax)−C2・(Vdd/2+Vmax)、又は
Q = (C1−C2)・Vdd/2−Vmax・(C1+C2)
である。
【0031】
信号aiの値が負(例、−1又は0)である場合の第2の遷移は、
Q = dQ1+dQ2
である。ここで、
dQ1 = C1・(Vref−Vref)−C1・(Vss−Vref)、
dQ2 = C2・(Vref−Vref)−C2・(Vdd−Vref)、Vref = Vdd/2+Vmax
である。したがって、
Q = C1・(Vdd/2+Vmax)+C2・(−Vdd/2−Vmax)、又は
Q = (C1−C2)・Vdd/2+Vmax・(C1+C2)
である。
【0032】
結果として、以下の式が得られる。
Vi1p(n+1) = Q/Ci1p = ((C1−C2)/Ci1p)・Vdd/2−Vmax・((C1+C2)/Ci1p)・ai+Vi1p(n)
【0033】
上の式において、変数nは、所与の状態を表す。Vi1mの電圧は、Vi1pの電圧の対称的なノード電圧であり、その式は、以下の通りである。
Vi1m(n+1) = Q/Ci1m = −((C1−C2)/Ci1m)・Vdd/2+Vmax・((C1+C2)/Ci1m)・ai−Vi1m(n)
【0034】
二次シグマデルタのための推定を定めることができる。これは、例えば、増分計算によって、以下のように与えられる。
i = 1からkに対して、Σi (k−i)・(ai+bi)、精度は、2/(k・(k+1))
【0035】
上の式において、変数kは、用いたデジタルサンプルai及びbiの数であり、これらは、一連のデジタル出力である。12ビット分解能の変換を達成するためには、128サイクルが必要である。2つの一連のデジタル出力ai及びbiがあれば、単一ショットの出力yを再構成することができる。したがって、ユニット13における計算は増分原理によって動作する。
【0036】
上記の測定回路をいくつかの他の手法で変更することができる。例えば、測定回路の次元を増やして、積分回路の数を増やしたり、マルチビット量子化器を用いたりすることができる。マルチビット構成は、マルチレベル量子化器を用いて、1つの帰還信号サイクルに対して、すなわち、帰還信号の1つの値に対して、いくつかの遷移(例、2より大きい数)を用いることによって達成することができる。この構成の少しの改変とは関係なく、2つの固定電極によって中央電極又は運動質量体に与えられる平均静電力は、ゼロである。さらに、測定回路の対称な構成のおかげで、すべての帰還信号サイクルに対してリセット段階が必要ではない。実際に、本発明において、2つの遷移の後に、C1とC2をまたがる電圧は、Vrefに再びスイッチングされる。これは、初期状態に対応し、これは、好ましくは、Vdd/2ではない。
【0037】
図面や上記の説明において本発明を図示し説明したが、このような図示及び説明は、例示的なものであって、これらに制約されるものではないと考えるべきである。本発明は、開示された実施形態には制限されない。図面、開示内容及び添付の請求の範囲を検討することに基づいて、当業者であれば、請求範囲の発明を実施する際に、他の実施形態及び変種を理解し、実現することができる。
【0038】
請求の範囲において、「有する」という用語は、他の要素又はステップがあることを排除するものではなく、単数表現であっても複数あることを排除するものではない。互いに異なる従属請求項に異なる特徴が記載されていることだけでは、これらの特徴の組み合わせを有効に用いることができないことを意味しているわけではない。請求の範囲における参照符号を本発明の範囲を制限するものとして解釈するべきでない。
【符号の説明】
【0039】
1 測定センサー
3 スイッチング回路
5、7 積分ユニット
9、19 比較器
11 帰還回路
13 増分計算ユニット
amp1 増幅器
C1 キャパシター
Tp スイッチ