特許第6042008号(P6042008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6042008熱硬化性接着剤樹脂組成物、接着剤フィルム、カバーレイフィルム、金属張積層板及びフレキシブルプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042008
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】熱硬化性接着剤樹脂組成物、接着剤フィルム、カバーレイフィルム、金属張積層板及びフレキシブルプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20161206BHJP
   C08G 59/20 20060101ALI20161206BHJP
   C09J 129/14 20060101ALI20161206BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20161206BHJP
   C09J 7/00 20060101ALI20161206BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20161206BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20161206BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20161206BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   C09J163/00
   C08G59/20
   C09J129/14
   C09J11/06
   C09J7/00
   C09J7/02 Z
   B32B27/00 D
   H05K1/03 610L
   H05K1/03 670Z
   H05K1/03 650
   H05K3/28 C
   H05K3/28 F
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-61876(P2016-61876)
(22)【出願日】2016年3月25日
(65)【公開番号】特開2016-191046(P2016-191046A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2016年6月7日
(31)【優先権主張番号】特願2015-67877(P2015-67877)
(32)【優先日】2015年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100126745
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100188363
【弁理士】
【氏名又は名称】長沢 豊
(72)【発明者】
【氏名】千艘 智充
(72)【発明者】
【氏名】中村 詳一郎
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−254710(JP,A)
【文献】 特開2011−159693(JP,A)
【文献】 特開2012−007135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、C08G59、C09J163
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族エポキシ樹脂(A1)を含むエポキシ樹脂(A)と、
80℃以上のガラス転移温度を有するポリビニルアセタール樹脂(B)と、
水酸基を有する硬化剤(C)とを含み、
前記ポリビニルアセタール樹脂(B)が前記エポキシ樹脂(A)100質量部に対して30質量部以上180質量部以下の割合で配合され、
前記硬化剤(C)が、前記エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基の個数に対する前記硬化剤(C)中の前記水酸基の個数の比が0.5以上1.5以下となるように配合され、
前記エポキシ樹脂(A)中の前記脂肪族エポキシ樹脂(A1)の含有率が1質量%以上15質量%以下であり、
前記脂肪族エポキシ樹脂(A1)が脂肪族多価アルコールポリグリシジルエーテルであり、
前記エポキシ樹脂(A)はビフェニル型エポキシ樹脂及び/又はリン含有エポキシ樹脂からなるエポキシ樹脂(A2)をさらに含む熱硬化性接着剤樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載の熱硬化性接着剤樹脂組成物を用いて得られる接着剤層を含む接着剤フィルム。
【請求項3】
絶縁フィルムと、
前記絶縁フィルム上に設けられる接着剤層とを備え、
前記接着剤層が請求項1記載の熱硬化性接着剤樹脂組成物を用いて得られるカバーレイフィルム。
【請求項4】
ベースフィルムと、
前記ベースフィルムの一面側に設けられる金属層と、
前記ベースフィルムと前記金属層との間に設けられる接着剤層とを備え、
前記接着剤層が請求項1記載の熱硬化性接着剤樹脂組成物を用いて得られる金属張積層板。
【請求項5】
ベースフィルムの一面側に金属層を設けてなる金属張積層板と、請求項3記載のカバーレイフィルムとを、前記カバーレイフィルムの前記接着剤層と、前記金属張積層板の前記金属層とを対向させた状態で熱圧着してなる、フレキシブルプリント配線板。
【請求項6】
補強材と、ベースフィルムの一面側に金属層を設けてなる金属張積層板と、請求項3記載のカバーレイフィルムとを、前記カバーレイフィルムの前記接着剤層と前記金属張積層板の前記金属層とを対向させた状態で且つ前記補強材と前記金属張積層板との間に接着剤フィルムを介在させた状態で熱圧着してなり、前記接着剤フィルムが請求項2に記載の接着剤フィルムで構成される、フレキシブルプリント配線板。
【請求項7】
前記金属張積層板が、前記ベースフィルムと前記金属層との間に接着剤層を備え、前記接着剤層が請求項1に記載の熱硬化性接着剤組成物を用いて得られる、請求項5又は6に記載のフレキシブルプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性接着剤樹脂組成物、接着剤フィルム、カバーレイフィルム、金属張積層板及びフレキシブルプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性接着剤組成物は加熱することで硬化し、フレキシブルプリント配線板や接触型ICカードなどの配線板を製造する際の接着剤として広く使用されている。
【0003】
このような熱硬化性接着剤組成物としては、例えば下記特許文献1記載の層間絶縁用樹脂組成物が知られている。下記特許文献1にはエポキシ樹脂とフェノール樹脂とポリビニルアセタール樹脂とを配合した層間絶縁用樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−154727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フレキシブルプリント配線板などの配線板に用いられる熱硬化性接着剤組成物には一般に、硬化後の樹脂に対する接着性、100℃における弾性率(以下、本明細書において「高温時弾性率」と呼ぶ)、吸湿後のはんだ耐熱性(以下、「吸湿はんだ耐熱性」と呼ぶ)及び柔軟性に優れることが求められる。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の層間絶縁用樹脂組成物は以下に示す課題を有していた。
【0007】
すなわち、上記特許文献1に記載の層間絶縁用樹脂組成物は、高温時弾性率が十分とは言えなかった。このため、高温の環境においてフレキシブルプリント配線板における層間絶縁用樹脂組成物を硬化して得られる硬化層とこれに隣接する層(フィルム部分や金属箔層部分)との間に局部的な歪みが生じ易く、結果として、フレキシブルプリント配線板の屈曲特性が低下する場合があった。
【0008】
また上記特許文献1に記載の層間絶縁用樹脂組成物は、ポリイミド樹脂に対する接着性に劣る場合があった。このため、上記特許文献1に記載の層間絶縁用樹脂組成物を接着剤として用いてフレキシブルプリント配線板を製造すると、フレキシブルプリント配線板の使用中にフレキシブルプリント配線板において層間絶縁用樹脂組成物を硬化してなる接着層とそれに接着されているポリイミドフィルムとの間で剥離が生じることがあった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、硬化後にポリイミド樹脂に対して優れた接着性を有するとともに、優れた高温時弾性率、吸湿はんだ耐熱性及び柔軟性を有することが可能な熱硬化性接着剤樹脂組成物、接着剤フィルム、カバーレイフィルム、金属張積層板及びフレキシブルプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、以下の発明により上記課題を解決し得ることを見出した。
【0011】
即ち本発明は、脂肪族エポキシ樹脂(A1)を含むエポキシ樹脂(A)と、80℃以上のガラス転移温度を有するポリビニルアセタール樹脂(B)と、水酸基を有する硬化剤(C)とを含み、前記ポリビニルアセタール樹脂(B)が前記エポキシ樹脂(A)100質量部に対して30質量部以上180質量部以下の割合で配合され、硬化剤(C)が前記エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基の個数に対する前記硬化剤(C)中の前記水酸基の個数の比が0.5以上1.5以下となるように配合され、前記エポキシ樹脂(A)中の前記脂肪族エポキシ樹脂(A1)の含有率が1質量%以上15質量%以下であり、前記脂肪族エポキシ樹脂(A1)が脂肪族多価アルコールポリグリシジルエーテルであり、前記エポキシ樹脂(A)はビフェニル型エポキシ樹脂及び/又はリン含有エポキシ樹脂からなるエポキシ樹脂(A2)をさらに含む熱硬化性接着剤樹脂組成物である。

【0012】
この熱硬化性接着剤樹脂組成物によれば、硬化後にポリイミド樹脂に対して優れた接着性を有するとともに、優れた高温時弾性率、吸湿はんだ耐熱性及び柔軟性を有することが可能となる。
【0013】
また本発明は、上記熱硬化性接着剤樹脂組成物を用いて得られる接着剤層を含む接着剤フィルムである。
【0014】
この接着剤フィルムによれば、接着剤層が硬化後にポリイミド樹脂に対して優れた接着性を有する熱硬化性接着剤樹脂組成物を用いて得られる。このため、本発明の接着剤フィルムを用いてフレキシブルプリント配線板(以下、「FPC」と呼ぶ)を製造する場合、接着剤層を硬化して得られる接着層とポリイミドフィルムとの間の剥離を十分に抑制することができる。また上記熱硬化性接着剤樹脂組成物は、硬化後に優れた吸湿はんだ耐熱性を有する。このため、本発明の接着性フィルムを用いてFPCを製造する場合、そのFPCに対して電子部品等をはんだ付けする際に、接着層に膨れが生じることによってFPCにおいて剥離が生じることを十分に抑制することができる。また上記熱硬化性接着剤樹脂組成物は、硬化後に優れた柔軟性を有する。このため、本発明の接着剤フィルムを用いてFPCを製造する場合、得られるFPCにおいて使用中の屈曲による接着層の破壊を十分に抑制することができる。さらに、本発明の接着剤フィルムを用いてFPCを製造する場合、接着剤層を硬化して得られる接着層は優れた高温時弾性率を有するため、高温の環境においてFPCを使用したとしても、FPCにおける層間絶縁用樹脂組成物を硬化して得られる硬化層とこれに隣接する層の間に局所的な歪みが生じにくく、FPCの屈曲特性を向上させることができる。
【0015】
また本発明は、絶縁フィルムと、前記絶縁フィルム上に設けられる接着剤層とを備え、前記接着剤層が上記熱硬化性接着剤樹脂組成物を用いて得られるカバーレイフィルムである。
【0016】
このカバーレイフィルムによれば、接着剤層が、硬化後にポリイミド樹脂に対して優れた接着性を有する熱硬化性接着剤樹脂組成物を用いて得られる。このため、本発明のカバーレイフィルムを用いてFPCを製造した場合において、絶縁フィルムがポリイミドフィルムで構成されると、その絶縁フィルムと接着剤層を硬化して得られる接着層との間に剥離が生じることを十分に抑制できる。さらに上記熱硬化性接着剤樹脂組成物は、硬化後に優れた吸湿はんだ耐熱性を有する。このため、本発明のカバーレイフィルムを用いて製造されるFPCに対して電子部品等をはんだ付けする際に、接着層に膨れが生じることによってFPCにおいて剥離が生じることを十分に抑制することができる。また上記熱硬化性接着剤組成物は、硬化後に優れた柔軟性を有する。このため、本発明のカバーレイフィルムを用いてFPCを製造すると、そのFPCにおいて、使用中の屈曲による接着層の破壊を十分に抑制することができる。さらに、本発明の接着剤フィルムを用いてFPCを製造する場合、接着剤層を硬化して得られる接着層は優れた高温時弾性率を有するため、高温の環境においてFPCを使用したとしても、FPCにおける層間絶縁用樹脂組成物を硬化して得られる硬化層とこれに隣接する層の間に局所的な歪みが生じにくく、FPCの屈曲特性を向上させることができる。
【0017】
また本発明は、ベースフィルムと、前記ベースフィルムの一面側に設けられる金属層と、前記ベースフィルムと前記金属層との間に設けられる接着剤層とを備え、前記接着剤層が上記熱硬化性接着剤樹脂組成物を用いて得られる金属張積層板である。
【0018】
この金属張積層板によれば、接着剤層が、硬化後に優れた吸湿はんだ耐熱性を有する熱硬化性接着剤樹脂組成物を用いて得られる。このため、本発明の金属張積層板を用いて製造されるFPCに対して電子部品等をはんだ付けする際に、接着剤層を硬化させて得られる接着層に膨れが生じることによって、ベースフィルムと接着層との間に剥離が生じることを十分に抑制することができる。また上記熱硬化性接着剤樹脂組成物は、硬化後にポリイミド樹脂に対して優れた接着性を有する。このため、本発明の金属張積層板を用いてFPCを製造し、接着剤層を硬化により接着層とした場合、金属張積層板のベースフィルムがポリイミドフィルムで構成されると、そのベースフィルムと接着層との間で剥離が生じることを十分に抑制することができる。また上記熱硬化性接着剤樹脂組成物は、硬化後に優れた柔軟性を有している。このため、本発明の金属張積層板を用いてFPCを製造すると、そのFPCにおいて、使用中の屈曲による接着層の破壊を十分に抑制することができる。さらに、本発明の接着剤フィルムを用いてFPCを製造する場合、接着剤層を硬化して得られる接着層は優れた高温時弾性率を有するため、高温の環境においてFPCを使用したとしても、FPCにおける層間絶縁用樹脂組成物を硬化して得られる硬化層とこれに隣接する層の間に局所的な歪みが生じにくく、FPCの屈曲特性を向上させることができる。
【0019】
また本発明は、ベースフィルムの一面側に金属層を設けてなる金属張積層板と、前記カバーレイフィルムとを、前記カバーレイフィルムの前記接着剤層と、前記金属張積層板の前記金属層とを対向させた状態で熱圧着してなる、FPCである。
【0020】
このFPCによれば、金属張積層板とカバーレイフィルムとを、カバーレイフィルムの接着剤層と金属張積層板の金属層とを対向させた状態で熱圧着してなる。このため、本発明のFPCにおいて、カバーレイフィルムの接着剤層は硬化されて接着層となっている。このとき、接着剤層は、硬化後に優れた吸湿はんだ耐熱性を有する熱硬化性接着剤樹脂組成物を用いて得られる。このため、本発明のFPCに対して電子部品等をはんだ付けする際に接着層に膨れが生じることによって絶縁フィルムやベースフィルムと接着層との間に剥離が生じることを十分に抑制することができる。また接着層は接着剤層を硬化させて得られるため、ポリイミド樹脂に対して優れた接着性を有する。このため、本発明のFPCは、絶縁フィルム及び/又はベースフィルムがポリイミドフィルムで構成される場合、そのポリイミドフィルムと接着層との間に剥離が生じることを十分に抑制することができる。また上記熱硬化性接着剤樹脂組成物は、硬化後に優れた柔軟性を有する。このため本発明のFPCは、使用中の屈曲による接着層の破壊を十分に抑制することができる。さらに、本発明の接着剤フィルムを用いてFPCを製造する場合、接着剤層を硬化して得られる接着層は優れた高温時弾性率を有するため、高温の環境においてFPCを使用したとしても、FPCにおける層間絶縁用樹脂組成物を硬化して得られる硬化層とこれに隣接する層の間に局所的な歪みが生じにくく、FPCの屈曲特性を向上させることができる。
【0021】
また本発明は、補強材と、ベースフィルムの一面側に金属層を設けてなる金属張積層板と、上記カバーレイフィルムとを、前記カバーレイフィルムの前記接着剤層と前記金属張積層板の前記金属層とを対向させた状態で且つ前記補強材と前記金属張積層板との間に接着剤フィルムを介在させた状態で熱圧着してなり、前記接着剤フィルムが上記接着剤フィルムで構成される、FPCである。
【0022】
このFPCは、補強材と、金属張積層板と、カバーレイフィルムとを、カバーレイフィルムの接着剤層と、金属張積層板の金属層とを対向させた状態で且つ補強材と金属張積層板との間に上述した接着剤フィルムを介在させた状態で熱圧着してなる。その結果、本発明のFPCにおいて、カバーレイフィルムの接着剤層及び接着剤フィルムの接着剤層は硬化されて接着層となっている。このとき、接着剤層は、硬化後に優れた吸湿はんだ耐熱性を有する熱硬化性接着剤樹脂組成物を用いて得られる。このため、本発明のFPCに対して電子部品等をはんだ付けする際に接着層に膨れが生じることによって絶縁フィルム、ベースフィルム及び/又は補強材と接着層との間に剥離が生じることを十分に抑制することができる。また、上記熱硬化性接着剤樹脂組成は硬化後にポリイミド樹脂に対して優れた接着性を有する。このため、本発明のFPCは、絶縁フィルム、ベースフィルム及び/又は補強材がポリイミドフィルムで構成される場合、そのポリイミドフィルムと接着層との間に剥離が生じることを十分に抑制することができる。また、上記熱硬化性接着剤樹脂組成物は硬化後に優れた柔軟性を有する。このため、本発明のFPCは、使用中の屈曲による接着層の破壊を十分に抑制することができる。さらに、本発明の接着剤フィルムを用いてFPCを製造する場合、接着剤層を硬化して得られる接着層は優れた高温時弾性率を有するため、高温の環境においてFPCを使用したとしても、FPCにおける層間絶縁用樹脂組成物を硬化して得られる硬化層とこれに隣接する層の間に局所的な歪みが生じにくく、FPCの屈曲特性を向上させることができる。
【0023】
上記FPCにおいて、前記金属張積層板が、前記ベースフィルムと前記金属層との間に接着剤層を備え、前記接着剤層が上記熱硬化性接着剤組成物を用いて得られることが好ましい。
【0024】
この場合、前記ベースフィルムと前記金属層との間の接着強度をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、硬化後にポリイミド樹脂に対し優れた接着性を有するとともに、優れた高温時弾性率、吸湿はんだ耐熱性及び柔軟性を有することが可能な熱硬化性接着剤樹脂組成物、カバーレイフィルム、接着剤フィルム、金属張積層板及びFPCが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係るカバーレイフィルムの一実施形態を示す断面図である。
図2】本発明に係る接着剤フィルムの一実施形態を示す断面図である。
図3】本発明に係る金属張積層板の一実施形態を示す断面図である。
図4】本発明に係るFPCの一実施形態を示す断面図である。
図5図4のFPCを製造する工程を示す断面図である。
図6】実施例及び比較例で耐剥がれ性試験の評価に使用する銅回路パターンを形成した金属張積層板を示す平面図である。
図7】実施例及び比較例に係るFPCに対し耐剥がれ性試験を行っている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について必要に応じて図面を参照しながら詳細に説明する。なお、全図中、同一又は同一の構成要素については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0028】
<熱硬化性接着剤組成物>
まず本発明の熱硬化性接着剤組成物について説明する。
【0029】
本発明の熱硬化性接着剤樹脂組成物は、脂肪族エポキシ樹脂(A1)を含むエポキシ樹脂(A)と、80℃以上のガラス転移温度を有するポリビニルアセタール樹脂(B)と、水酸基を有する硬化剤(C)とを含み、ポリビニルアセタール樹脂(B)がエポキシ樹脂(A)100質量部に対して30質量部以上180質量部以下の割合で配合され、硬化剤(C)が、エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基の個数に対する硬化剤(C)中の水酸基の個数の比が0.5以上1.5以下となるように配合され、エポキシ樹脂(A)中の脂肪族エポキシ樹脂(A1)の含有率が1質量%以上15質量%以下であり、脂肪族エポキシ樹脂(A1)が脂肪族多価アルコールポリグリシジルエーテルである。
【0030】
この熱硬化性接着剤樹脂組成物によれば、硬化後にポリイミド樹脂に対して優れた接着性を有するとともに、優れた高温時弾性率、吸湿はんだ耐熱性及び柔軟性を有することが可能となる。
【0031】
次に、エポキシ樹脂(A)、ポリビニルアセタール樹脂(B)及び硬化剤(C)についてさらに詳細に説明する。
【0032】
(A)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂(A)は、脂肪族エポキシ樹脂(A1)を含む。
【0033】
エポキシ樹脂(A)100質量%中の脂肪族エポキシ樹脂(A1)の含有率は1質量%以上15質量%以下である。エポキシ樹脂(A)100質量%中の脂肪族エポキシ樹脂(A1)の含有率が1質量%未満になると、硬化物とポリイミド樹脂との接着性が低下する。一方、脂肪族エポキシ樹脂(A1)の含有率が15質量%より高くなると、硬化物の高温時弾性率が低下する。
【0034】
エポキシ樹脂(A)100質量%中の脂肪族エポキシ樹脂(A1)の含有率は1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、3質量%以上7質量%以下であることがより好ましい。
【0035】
脂肪族エポキシ樹脂(A1)としては脂肪族多価アルコールポリグリシジルエーテルであることが好ましい。これは、脂肪族多価アルコールポリグリシジルエーテルを用いることで、熱硬化性接着剤樹脂組成物の粘度を低下させることができる。このため、FPCを製造する場合、熱硬化性接着剤樹脂組成物の基板表面の凹凸に対する追従性が増すため、接着強度をより向上させることができる。
【0036】
脂肪族多価アルコールポリグリシジルエーテルの具体的な例としては、1,6‐ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製の商品名「EX−212L」等)、1,4‐ブタンジオールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製の商品名「EX−214L」等)、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製の商品名「EX−216L」等)、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(新日鐵住金化学社製の商品名「ZX−1542」等)、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製の商品名「EX−850L」等)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製の商品名「SR−NPG」等)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製の商品名「SR−PG」等)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製の商品名「SR−8EGS」等)、などが挙げられる。
【0037】
エポキシ樹脂(A)は、脂肪族エポキシ樹脂(A1)のほか、エポキシ樹脂(A2)をさらに含む。
【0038】
エポキシ樹脂(A2)は1分子中にエポキシ基を2個以上有し、脂肪族エポキシ樹脂(A1)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂であればよい。エポキシ樹脂(A2)の具体例としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、アクリル酸変性エポキシ樹脂(エポキシアクリレート)、リン含有エポキシ樹脂、及びこれらのハロゲン化物(臭素化エポキシ樹脂など)や水素添加物などが挙げられる。これらは単独で用いても、2つ以上を併用してもよい。中でもエポキシ樹脂(A2)としてはビフェニル型エポキシ樹脂又はリン含有エポキシ樹脂が好ましい。
【0039】
(B)ポリビニルアセタール樹脂
ポリビニルアセタール樹脂(B)は、80°以上のガラス転移温度を有する。ポリビニルアセタール樹脂(B)のガラス転移温度が80℃未満である場合、硬化物の高温時弾性率が低下する。ポリビニルアセタール樹脂(B)のガラス転移温度は86℃以上であることが好ましく、100℃以上であることが好ましい。但し、ポリビニルアセタール樹脂(B)のガラス転移温度は160℃以下であることが好ましい。
【0040】
ポリビニルアセタール樹脂(B)は、エポキシ樹脂(A)100質量部に対し、30質量部以上180質量部以下の割合で配合されている。ポリビニルアセタール樹脂(B)が30質量部未満になると、硬化物の柔軟性が低下する。ポリビニルアセタール樹脂(B)が180質量部より多くなると、硬化物の吸湿はんだ耐熱性が低下する。
【0041】
ポリビニルアセタール樹脂(B)の配合量はエポキシ樹脂(A)100質量部に対して、30質量部以上143質量部以下であることが好ましく、30質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
【0042】
(硬化剤)
硬化剤(C)は、エポキシ樹脂(A)の硬化剤としての作用を有するものであればよく、具体的には脂肪族アミン系硬化剤、芳香族アミン系硬化剤、第2級アミン、第3級アミン、酸無水物系硬化剤、ジシアンジアミド、三フッ化ホウ素錯塩、イミダゾール及びその誘導体、フェノール樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。中でもフェノール樹脂とメラミン樹脂の混合物が好ましい。ここで、フェノール樹脂とメラミン樹脂とは、60:40〜95:5の比率で混合されていることが好ましい。上記硬化物(C)は単独で用いても、2つ以上を併用してもよい。
【0043】
硬化剤(C)は、エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基の個数に対する硬化剤(C)中の水酸基の個数の比が0.5以上1.5以下となるように配合されている。硬化剤(C)は、エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基の個数に対する硬化剤(C)中の水酸基の個数の比が0.8以上1.2以下となるように配合されることが好ましい。
【0044】
また、本発明の熱硬化性接着剤樹脂組成物は、必要に応じて溶剤、添加剤を更に含んでもよい。添加剤としては、例えば、シリカ、マイカ、クレー、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、シランカップリング剤、イミダゾール等が挙げられる。
【0045】
<カバーレイフィルム>
次に本発明のカバーレイフィルムの実施形態について図1を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明のカバーレイフィルムの一実施形態を示す断面図である。
【0046】
図1に示すように、カバーレイフィルム10は、絶縁フィルム11と、絶縁フィルム11上に設けられる接着剤層12とを備え、接着剤層12が、上記熱硬化性接着剤組成物を用いて得られるものである。
【0047】
絶縁フィルム11としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アラミド樹脂等の樹脂を用いることができる。絶縁フィルム11の厚さは特に限定されるものではないが、通常は3〜50μm程度である。
【0048】
接着剤層12は、上記熱硬化性接着剤組成物で構成されていてもよく、上記熱硬化性接着剤組成物のBステージ状態のものであってもよい。なお、本明細書において、Bステージとは熱硬化性樹脂の反応の中間的な段階であって、材料は加熱により軟化して膨張するが、ある種の液体と接触しても、完全には溶融又は溶解しない状態を言う。
【0049】
このカバーレイフィルム10によれば、接着剤層12が、硬化後にポリイミド樹脂に対して優れた接着性を有する熱硬化性接着剤樹脂組成物を用いて得られる。このため、カバーレイフィルム10を用いてFPCを製造した場合において、絶縁フィルム11がポリイミドフィルムで構成されると、その絶縁フィルム11と接着層との間に剥離が生じることを十分に抑制できる。さらに上記熱硬化性接着剤樹脂組成物は、硬化後に優れた吸湿はんだ耐熱性を有する。このため、カバーレイフィルム10を用いて製造されるFPCに対して電子部品等をはんだ付けする際に、接着層に膨れが生じることによってFPCにおいて剥離が生じることを十分に抑制することができる。また上記熱硬化性接着剤組成物は、硬化後に優れた柔軟性を有する。このため、カバーレイフィルム10を用いてFPCを製造すると、そのFPCにおいて、使用中の屈曲による接着層の破壊を十分に抑制することができる。さらに、本発明の接着剤フィルムを用いてFPCを製造する場合、接着剤層を硬化して得られる接着層は優れた高温時弾性率を有するため、高温の環境においてFPCを使用したとしても、FPCにおける層間絶縁用樹脂組成物を硬化して得られる硬化層とこれに隣接する層の間に局所的な歪みが生じにくく、FPCの屈曲特性を向上させることができる。
【0050】
カバーレイフィルム10は、絶縁フィルム11上に接着剤層12を設けてなるものであり、熱硬化性接着剤組成物を含む接着剤溶液を絶縁フィルム11上に塗布し乾燥することにより得ることができる。
【0051】
<接着剤フィルム>
次に、本発明の接着剤フィルムの実施形態について図2を参照しながら詳細に説明する。図2は、本発明の接着剤フィルムの一実施形態を示す断面図である。
【0052】
図2に示すように、接着剤フィルム20は、上記熱硬化性接着剤組成物を用いて得られる接着剤層22を含むものである。
【0053】
接着剤層22は、上記熱硬化性接着剤組成物で構成されていてもよく、上記熱硬化性接着剤組成物のBステージ状態のものであってもよい。
【0054】
接着剤フィルム20は、図2に示すように、接着剤層22のみで構成されていてもよく、離型処理を施したキャリアフィルム上に接着剤層22を有してなる積層体で構成されていてもよい。
【0055】
キャリアフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂などを用いることができる。
【0056】
この接着剤フィルム20によれば、接着剤層22が硬化後にポリイミド樹脂に対して優れた接着性を有する熱硬化性接着剤樹脂組成物を用いて得られる。このため、接着剤フィルム20を用いてFPCを製造する場合、接着剤層20を硬化して得られる接着層と接触する基板がポリイミドフィルムで構成される場合には、その基板と接着層との間の剥離を十分に抑制することができる。また上記熱硬化性接着剤樹脂組成物は、硬化後に優れた吸湿はんだ耐熱性を有する。このため、接着性フィルム20を用いてフレキシブルブルプリント配線板を製造する場合、そのFPCに対して電子部品等をはんだ付けする際に、接着層に膨れが生じることによってFPCにおいて剥離が生じることを十分に抑制することができる。また上記熱硬化性接着剤樹脂組成物は、硬化後に優れた柔軟性を有する。このため、接着剤フィルム20を用いてFPCを製造する場合、得られるFPCにおいて使用中の屈曲による接着層の破壊を十分に抑制することができる。さらに、本発明の接着剤フィルムを用いてFPCを製造する場合、接着剤層を硬化して得られる接着層は優れた高温時弾性率を有するため、高温の環境においてFPCを使用したとしても、FPCにおける層間絶縁用樹脂組成物を硬化して得られる硬化層とこれに隣接する層の間に局所的な歪みが生じにくく、FPCの屈曲特性を向上させることができる。
【0057】
接着剤フィルム20は、離型処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルムなどからなるキャリアフィルム上に熱硬化性接着剤組成物を含む接着剤溶液を塗布し乾燥して接着剤層22を得た後、キャリアフィルムから剥離することによって得ることができる。あるいは、接着剤フィルム20は、離型処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルムなどからなるキャリアフィルム上に熱硬化性接着剤組成物を含む接着剤溶液を塗布し乾燥して接着剤層22を形成することによって得ることもできる。
【0058】
<金属張積層板>
次に、本発明の金属張積層板の実施形態について図3を参照しながら詳細に説明する。図3は、本発明の金属張積層板の一実施形態を示す断面図である。
【0059】
図3に示すように、金属張積層板30は、ベースフィルム31と、ベースフィルム31の一面側に設けられる金属層33と、ベースフィルム31と金属層33との間に設けられる接着剤層32とを備え、接着剤層32が上記熱硬化性接着剤組成物を用いて得られるものである。
【0060】
接着剤層32は、上記熱硬化性接着剤組成物で構成されていてもよく、上記熱硬化性接着剤組成物を部分的に硬化させて得られるものであってもよい。
【0061】
ベースフィルム31としては、電気絶縁性及び可撓性を有する樹脂フィルムが用いられ、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂等の樹脂が用いられる。
【0062】
金属層33としては、例えば銅箔等が用いられる。
【0063】
この金属張積層板30によれば、接着剤層32が、硬化後に優れた吸湿はんだ耐熱性を有する熱硬化性接着剤樹脂組成物を用いて得られる。このため、金属張積層板30を用いて製造されるFPCに対して電子部品等をはんだ付けする際に、接着剤層32を硬化させて得られる接着層に膨れが生じることによって、ベースフィルム31と接着層との間に剥離が生じることを十分に抑制することができる。また上記熱硬化性接着剤樹脂組成物は、硬化後にポリイミド樹脂に対して優れた接着性を有する。このため、金属張積層板30を用いてFPCを製造し、接着剤層32を硬化により接着層とした場合、金属張積層板30のベースフィルム31がポリイミドフィルムで構成されると、そのベースフィルム31と接着層との間で剥離が生じることを十分に抑制することができる。また上記熱硬化性接着剤樹脂組成物は、硬化後に優れた柔軟性を有している。このため、金属張積層板30を用いてFPCを製造すると、そのFPCにおいて、使用中の屈曲による接着層の破壊を十分に抑制することができる。さらに、本発明の接着剤フィルムを用いてFPCを製造する場合、接着剤層を硬化して得られる接着層は優れた高温時弾性率を有するため、高温の環境においてFPCを使用したとしても、FPCにおける層間絶縁用樹脂組成物を硬化して得られる硬化層とこれに隣接する層の間に局所的な歪みが生じにくく、FPCの屈曲特性を向上させることができる。
【0064】
金属張積層板30は、ベースフィルム31上に接着剤層32および金属層33を順次設けてなるものであり、熱硬化性接着剤組成物を含む接着剤溶液をベースフィルム31上に塗布し乾燥することにより形成した接着剤層32上に金属層33を貼り付けることによって得ることができる。
【0065】
<FPC>
次に本発明のFPCの実施形態について図4を参照しながら詳細に説明する。図4は、本発明に係るFPCの好適な実施形態を示す断面図である。図4に示すように、FPC100はベースフィルム31を備えている。ベースフィルム31の表面31a上には接着層132が設けられ、接着層132上には回路を形成する金属層33が設けられ、接着層132の上には、金属層33を覆うように接着層112が設けられ、接着層112上には絶縁フィルム11が設けられている。
【0066】
一方、ベースフィルム31の裏面31b上には接着層122を介して補強材40が設けられている。
【0067】
次に、FPC100の製造方法について図5を参照しながら説明する。図5は、図4のFPCを製造する工程を示す断面図である。
【0068】
まず図5に示すように、まずカバーレイフィルム10と、金属張積層板30と、補強材40と、金属張積層板30及び補強材40同士を貼り合わせるための接着剤フィルム20とを準備する。
【0069】
そして、補強材40の上に、接着剤フィルム20、金属張積層板30、カバーレイフィルム10を順次配置する。このとき、金属張積層板30のベースフィルム31と接着剤フィルム20とを対向させた状態とし、カバーレイフィルム10の接着剤層12と金属張積層板30の接着剤層32及び金属層33とを対向させた状態とする。
【0070】
そして、補強材40、接着剤フィルム20、金属張積層板30及びカバーレイフィルム10を積層して積層体を形成し、この積層体を熱圧着する。その結果、カバーレイフィルム10の接着剤層12は硬化して接着層112となり、金属張積層板30の接着剤層32は硬化して接着層132となり、接着剤フィルム20の接着剤層22は硬化して接着層122となる。こうしてFPC100が得られる。
【0071】
このとき、接着剤層12,22,32は、硬化後に優れた吸湿はんだ耐熱性を有する熱硬化性接着剤樹脂組成物を用いて得られる。このため、FPC100に対して電子部品等をはんだ付けする際に接着層112、122,132に膨れが生じることによって絶縁フィルム11、ベースフィルム31及び/又は補強材40と接着層112,122,132との間に剥離が生じることを十分に抑制することができる。また、上記熱硬化性接着剤樹脂組成物は硬化後にポリイミド樹脂に対して優れた接着性を有する。このため、FPC100は、絶縁フィルム11、ベースフィルム31及び/又は補強材40がポリイミドフィルムで構成される場合、そのポリイミドフィルムと接着層112,122,132との間に剥離が生じることを十分に抑制することができる。また、上記熱硬化性接着剤樹脂組成物は硬化後に優れた柔軟性を有する。このため、FPC100は、使用中の屈曲による接着層112,122,132の破壊を十分に抑制することができる。さらに、本発明の接着剤フィルムを用いてFPCを製造する場合、接着剤層を硬化して得られる接着層は優れた高温時弾性率を有するため、高温の環境においてFPCを使用したとしても、FPCにおける層間絶縁用樹脂組成物を硬化して得られる硬化層とこれに隣接する層の間に局所的な歪みが生じにくく、FPCの屈曲特性を向上させることができる。
【0072】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、FPC100は、補強材40及び接着剤フィルム20を用いて製造されているが、これらは必ずしも必要なものではなく、省略が可能である。また金属張積層板30に使用される接着層32も省略が可能である。
【0073】
また上記FPCの製造方法では、補強材40、接着剤フィルム20、金属張積層板30及びカバーレイフィルム10を重ね合せて一括して接着剤層12,接着剤層32及び接着剤フィルム20の接着剤層22を硬化させているが、FPC100を得るためには、接着剤層12、接着剤層32及び接着剤フィルム20の接着剤層22を必ずしも一括して硬化させる必要はない。例えば、補強材40、接着剤フィルム20及び金属張積層板30を重ね合せ、接着剤層32及び接着剤フィルム20の接着剤層22を硬化させて積層体を得た後、この積層体と、カバーレイフィルム10とを重ね合せ、接着剤層12を硬化させてもFPC100を得ることができる。
【実施例1】
【0074】
以下、本発明の内容を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0075】
(実施例1〜16及び比較例1〜8)
以下のようにして熱硬化性接着剤樹脂組成物を調製した。
【0076】
エポキシ樹脂(A)、ポリビニルアセタール樹脂(B)、硬化剤(C)及びカルボキシ化NBR(D)を表1〜5に示す配合割合で有機溶媒に溶解又は分散させて、固形分(エポキシ樹脂(A)、ポリビニルアセタール樹脂(B)、硬化剤(C)及びカルボキシ化NBR(D))の濃度が20質量%の接着剤溶液を調製した。なお、有機溶媒については、各実施例及び比較例において、メチルエチルケトン、キシレン、シクロヘキサノン1−メトキシ−2−プロパノールのうち少なくとも1種を適宜選択して使用した。
【0077】
なお、表1〜5において、数値の単位は、特に指定しない限り、質量部を表す。但し、硬化剤(C)の水酸基比の数値は無単位である。また上記エポキシ樹脂(A)、ポリビニルアセタール樹脂(B)、硬化剤(C)及びカルボキシ化NBR(D)としては、具体的には下記のものを使用した。また、ポリビニルアセタール樹脂(B)のガラス転移温度(以下、「Tg」と呼ぶ)はJIS K7121に準拠して測定されたものである。
(A)エポキシ樹脂
(A1)脂肪族エポキシ樹脂
(A1−1)脂肪族エポキシ樹脂:商品名「EX−850L」、ナガセケムテックス(株)製
(A1−2)脂肪族エポキシ樹脂:商品名「ZX−1542」、新日鐵住金化学(株)製
(A2)エポキシ樹脂
(A2−1)リン含有エポキシ樹脂:商品名「FX−305EK70」、新日鐵住金化学(株)製、固形分70質量%
(A2−2)ビフェニル型エポキシ樹脂:商品名「NC−3000」、日本化薬(株)製
(B)ポリビニルアセタール樹脂
(B1)ポリビニルアセタール樹脂:商品名「KS−3」、積水化学工業(株)製、Tg=110℃
(B2)ポリビニルアセタール樹脂:商品名「BX−5」、積水化学工業(株)製、Tg=86℃
(B3)ポリビニルアセタール樹脂:商品名「BH−3」、積水化学工業(株)製、Tg=71℃
(C)硬化剤:フェノール樹脂(商品名「PSM−4326」、群栄化学工業(株)製)とメラミン樹脂(商品名「MS−001」、三和ケミカル(株)製)とを、質量比でフェノール樹脂:メラミン樹脂=72:28となるように混合したもの
(D)カルボキシ化NBR:商品名「ニポール1072」、日本ゼオン(株)製
【0078】
[評価]
実施例1〜16及び比較例1〜8で得られた熱硬化性接着剤組成物について、硬化後のポリイミド樹脂(PI)に対する接着性、高温時弾性率、吸湿はんだ耐熱性、及び、柔軟性について以下のようにして評価した。
【0079】
<金属張積層板の作製>
以下の評価に際して使用する金属張積層板(以下、「CCL」と呼ぶ)を以下のようにして作製した。
【0080】
厚さ25μmのポリイミドフィルム上に、乾燥後の厚さが10μmとなるように実施例1〜16及び比較例1〜8で得られた熱硬化性接着剤樹脂組成物を塗布し乾燥させて接着剤層を得た。次に、この接着剤層に厚さ18μmの圧延銅箔を貼り合せた。こうしてCCLを得た。
【0081】
<接着性試験>
(PIに対する接着強度)
実施例1〜16及び比較例1〜8で得られた熱硬化性接着剤組成物を塗布し乾燥させてなる厚さ25μmの接着剤層で構成される接着剤フィルムを準備した。一方、厚さ125μmのポリイミドシートを用意した。そして、上記接着剤フィルムを上記CCLのポリイミドフィルムと上記ポリイミドシートとの間に挟んで積層体を形成し、この積層体を、160℃、45kg/cmで60分間熱圧着し、接着剤層を硬化させて接着層とした。こうして評価用サンプルを作製した。
【0082】
この評価用サンプルにおいて、上記CCLのポリイミドフィルムを上記ポリイミドシートに対して垂直な方向に引張り、このときの剥離強度(90°剥離強度)をPIに対する接着強度(接着強度(対PI))として測定した。結果を表1〜5に示す。
【0083】
(耐剥がれ性試験)
以下のようにして評価用サンプルを作製した。
【0084】
はじめに上記CCLの銅箔に図6に示すような銅回路パターンを形成した。銅回路の末端には端子を設けた。図6に示す寸法の単位はmmである。
【0085】
次に、別の厚さ25μmのポリイミドフィルム上に乾燥後の厚さが25μmとなるように接着剤溶液を塗布して乾燥させて接着剤層を形成した。こうしてカバーレイフィルム(以下、「CL」と呼ぶ)を作製した。
【0086】
そして、このCLの接着剤層と上記CCLの銅回路パターンとを対向させた状態にして160℃、45kg/cmにて60分間熱圧着した。こうして評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルの両端部を、図7に示すように、互いに平行に配置された固定冶具51と可動冶具52とにそれぞれ屈曲部53の曲率半径rが2mmとなるように屈曲した状態で取り付けた。そして、室温で可動治具52を固定治具51に対して平行な方向に、ストローク量が20mm、往復運動が1000回/分で1000万回繰り返し往復運動させ、そのとき、接着剤層を硬化して得られる接着層とポリイミドフィルムとの間に剥離が生じたかどうかを調べた。結果を表1〜5に示す。なお、表1〜6において、剥離を発生させなかった熱硬化性接着剤組成物については、PIに対して優れた接着性を有すると評価して「○」と表示し、剥離を発生させた熱硬化性接着剤組成物についてはPIに対して優れた接着性を有しないと評価して「×」と表示した。
【0087】
なお、上記耐剥がれ性試験の結果より、硬化後に90°剥離強度が7N/cm以上となる熱硬化性接着剤組成物については、硬化後にPIに対して優れた接着性を有し、90°剥離強度が7N/cm未満となる熱硬化性接着剤組成物については、硬化後にPIに対して優れた接着性を有していないことが分かった。
【0088】
<高温時弾性率>
実施例1〜16及び比較例1〜8で得られた熱硬化性接着剤樹脂組成物を塗布し乾燥させてなる接着剤層で構成される接着剤フィルムを用意した。そして、この接着剤フィルムを160℃で1時間硬化させて評価用シートを得た。この評価用シートについて、動的弾性測定により、100℃における貯蔵弾性率を高温時弾性率として測定した。結果を表1〜5に示す。100℃における貯蔵弾性率を1GPa以上とした熱硬化性接着剤組成物については硬化後に優れた高温時弾性率を有すると評価して合格とし、100℃における貯蔵弾性率を1GPa未満とした熱硬化性接着剤組成物については、硬化後に優れた高温時弾性率を有していないと評価して不合格とした。
【0089】
<吸湿はんだ耐熱性>
まず厚さ25μmのポリイミドフィルム上に実施例1〜16及び比較例1〜8で得られた熱硬化性接着剤組成物を塗布し乾燥させて厚さ25μmの接着剤層を形成した。こうしてCLを用意した。そして、このCLと上記CCLとを、CLの接着剤層と銅箔とが対向するように貼り合わせて積層体を形成し、この積層体を160℃、45kg/cmで60分間熱圧着し、上記CLの接着剤層、及び、上記CCLの接着剤層をそれぞれ熱圧着により硬化させて接着層とした後、25mm角に切り出したものを評価用サンプルとした。
【0090】
そして、この評価用サンプルを40℃、90%RHのオーブン中に96時間置いて、オーブンから取り出した直後に260℃のはんだ浴に60秒間浮かべ、接着層に膨れや剥がれが発生したかどうかを調べた。結果を表1〜5に示す。なお、表1〜5においては、接着層に膨れや剥がれが発生しなかった評価用サンプルを吸湿はんだ耐熱性に優れるとして「○」と表示し、接着層に膨れや剥がれが発生した評価用サンプルを吸湿はんだ耐熱性に優れていないとして「×」と表示した。
【0091】
<柔軟性>
まず厚さ25μmのポリイミドフィルム上に実施例1〜16及び比較例1〜8で得られた熱硬化性接着剤組成物を塗布し乾燥させて厚さ25μmの接着剤層を形成した。こうしてCLを用意した。そして、このCLと上記CCLとをCLの接着剤層とCCLの銅箔とを対向させた状態で160℃、45kg/cmで60分間熱圧着させ、評価用サンプルを作製した。
【0092】
こうして得られた評価用サンプルを180°折り曲げた後に、割れ、白化があるかどうか調べた。結果を表1〜5に示す。なお、表1〜5において、接着層に割れや白化が見られた場合には柔軟性に劣ると評価して「×」と表示し、割れも白化も見られなかった場合には柔軟性に優れていると評価して「○」と表示した。
【0093】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0094】
表1〜5に示す結果より、実施例1〜16で得られた熱硬化性接着剤樹脂組成物は、硬化後のPIに対する接着性、高温時弾性率、吸湿はんだ耐熱性及び柔軟性の全ての点で合格基準に達していることが分かった。これに対し、比較例1〜8で得られた熱硬化性接着剤樹脂組成物は、硬化後のPIに対する接着性、高温時弾性率、吸湿はんだ耐熱性及び柔軟性の少なくとも1つの点で、合格基準に達しないことが分かった。
【0095】
以上のことから、本発明の熱硬化性接着剤樹脂組成物によれば、硬化後にPIに対して優れた接着性を有するとともに、優れた高温時弾性率、吸湿はんだ耐熱性及び柔軟性を有することが可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0096】
10…カバーレイフィルム
11…絶縁フィルム
12,22,32…接着剤層
20…接着剤フィルム
30…金属張積層板
31…ベースフィルム
33…金属層
40…補強材
100…FPC
112,122,132…接着層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7