(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042145
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】靴下の編成方法
(51)【国際特許分類】
A41B 11/00 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
A41B11/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-202553(P2012-202553)
(22)【出願日】2012年9月14日
(65)【公開番号】特開2014-55390(P2014-55390A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】512240268
【氏名又は名称】羽田 美香
(73)【特許権者】
【識別番号】512240279
【氏名又は名称】星川 優香
(73)【特許権者】
【識別番号】000111605
【氏名又は名称】ハマナカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽田 美香
(72)【発明者】
【氏名】星川 優香
【審査官】
新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−283258(JP,A)
【文献】
実開昭59−026684(JP,U)
【文献】
特開2012−001853(JP,A)
【文献】
特開2006−200063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 11/00 − 11/12
D05B 7/00
D05B 23/00
D05B 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
履き口部、レッグ部、踵部、足甲部、足裏部、及び爪先部から構成された靴下の編成方法であって、
前記足甲部を、前記レッグ部側に位置する第一足甲部と、前記爪先部側に位置し前記足裏部と長さの等しい第二足甲部の2つの領域から編成するとともに、前記踵部を、前記レッグ部から前記足裏部に向かう方向に沿ってその全域に亘って一定の目数で第一足甲部よりも長く編成し、
前記第一足甲部と前記踵部の始端同士、及び、前記第一足甲部と前記踵部の終端同士がそれぞれ合致するよう前記第一足甲部の縁に前記踵部の縁を段飛ばしに接ぎ合わせる踵部構成工程を含むことを特徴とする靴下の編成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の靴下の編成方法であって、
前記履き口部の前面側と、前記レッグ部の前面側と、前記第一足甲部と、前記第二足甲部と、前記爪先部の上半側とを一連に編むことにより前側平編み地を編成する一方、
前記履き口部の後面側と、前記レッグ部の後面側と、前記踵部と、前記足裏部と、前記爪先部の下半側とを一連に編むことにより後側平編み地を編成しておき、
前記前側平編み地と後側平編み地の全周縁を、前記履き口部において履き口となる縁を除いて、接ぎ合わせる際に前記踵部構成工程を行うことを特徴とする靴下の編成方法。
【請求項3】
請求項1に記載の靴下の編成方法であって、
前記履き口部と、前記レッグ部と、前記第二足甲部から前記足裏部に亘る部分の3つの部位を輪編みで編成することを特徴とする靴下の編成方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一つに記載の靴下の編成方法であって、
少なくとも前記踵部をガーター編みによって編成することを特徴とする靴下の編成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴下の編成方
法に関する。
【背景技術】
【0002】
毛糸の靴下を編む方法としては、例えば、
図3に示す編み図(但し、図示例は概略図)に従った編成方法が従来周知である。すなわち、輪編みで履き口部Aからメリヤス編みにより爪先部Fに向かって編み始め、レッグ部Bはメリヤス編み又は模様編みで編んでいく。踵部Cの始端に達したら、輪編みを二等分し、足甲部D側の目B1を休ませる一方、残りの側の踵部C側をメリヤス編みで往復編みにより編み進む。その際、踵部Cを踵に沿う立体的な湾曲面に形成するため、踵部Cの途中までの区間C1で減らし目を行い、その後の区間C2で増し目を行う。このようにして踵部Cを完成させたら、休ませておいた目のところから再び輪にして足底部Eと足甲部Dを編む。爪先部Fに達したら減らし目を行いながら輪編みをし、最後に休み目F1をメリヤス接ぎして靴下(
図4参照)を完成する(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
また、その他の編成方法として、レッグ部と、足甲部及び足裏部とをそれぞれ輪編みとしてゴム編みにより編み、踵部の少なくとも一部を袋編みで編む方法(例えば、特許文献1参照)や、踵部を、立体形状を編むのに適した引き返し編みで編む方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「手編みのくつした」、レディブティックシリーズ通巻3321号、ブティック社、2011年11月30日、p.33−67
【特許文献1】登録実用新案第3159398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記非特許文献1に開示されているような従来周知の編成方法にあっては、靴下全体を輪編みにより編成していくうえ、特に、踵部の編成時に減らし目と増し目を行う必要があるため、極めて煩瑣であり、初心者でも簡単に行えるとは到底云えるようなものでなかった。この点、上記特許文献1に開示されている編成方法では、前者の方法に比べて簡単に靴下を編むことができるものの、踵部の編成に袋編みを採用しているため、やはり初心者にとって簡単ではなかった。また、引き返し編みは、踵部を好ましい立体形状に編成し得るものではあるが、難度の極めて高い編み方であるため、これもまた初心者にとって簡単ではなかった。
【0006】
本発明は、係る点に鑑みて創案されたものであり、その目的とするところは、踵に沿った立体形状を呈する踵部を備えた靴下を熟練度に拘らず誰もが簡単に編成することのできる靴下の編成方
法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するため、本発明に係る靴下の編成方法は、履き口部、レッグ部、踵部、足甲部、足裏部、及び爪先部から構成された靴下の編成方法を前提としている。そのうえで、前記足甲部を、前記レッグ部側に位置する第一足甲部と、前記爪先部側に位置し前記足裏部と長さの等しい第二足甲部の2つの領域から編成するとともに、前記踵部を、前記レッグ部から前記足裏部に向かう方向に沿ってその全域に亘って一定の目数で第一足甲部よりも長く編成し、前記第一足甲部と前記踵部の始端同士、及び、前記第一足甲部と前記踵部の終端同士がそれぞれ合致するよう前記第一足甲部の縁に前記踵部の縁を段飛ばしに接ぎ合わせる踵部構成工程を含むことを特徴とするものである。
【0008】
上記の編成方法で編成された靴下は、履き口部、レッグ部、踵部、足甲部、足裏部、及び爪先部から構成された靴下を前提としている。そのうえで、前記足甲部が、前記レッグ部側に位置する第一足甲部と、前記爪先部側に位置し前記足裏部と長さの等しい第二足甲部の2つの領域から編成されるとともに、前記踵部が第一足甲部よりも長く編成され、前記第一足甲部と前記踵部の始端同士、及び、前記第一足甲部と前記踵部の終端同士がそれぞれ合致するよう前記第一足甲部の縁に前記踵部の縁が段飛ばしに接ぎ合わされて
なるものである。
【0009】
このような特定事項により、踵部を直線的に一定方向に編むだけであるにも拘らず、踵に沿った立体形状を呈する踵部を備えた靴下を誰もが簡単に編成することができる。すなわち、減らし目や増し目を行わずとも、また、袋編みや引き返し編みといった難度の高い編み方をせずとも、踵に沿った立体形状を呈する踵部を備えた靴下を編成することができることとなる。
【0010】
また、上記において前記履き口部の前面側と、前記レッグ部の前面側と、前記第一足甲部と、前記第二足甲部と、前記爪先部の上半側とを一連に編むことにより前側平編み地を編成する一方、前記履き口部の後面側と、前記レッグ部の後面側と、前記踵部と、前記足裏部と、前記爪先部の下半側とを一連に編むことにより後側平編み地を編成しておき、前記前側平編み地と後側平編み地の全周縁を、前記履き口部において履き口となる縁を除いて、接ぎ合わせる際に前記踵部構成工程を行ってもよい。
【0011】
この場合、前側平編み地と後側平編み地とを別個に編成しておいてから、これらを接ぎ合わせるだけであり、しかも前記両編み地はいずれも単純な平編みで編成することができるため、従来必要とされていた輪編みの技術及び踵部を立体的に編成するための技術が一切不要となる。したがって、初心者でも簡単に一定品質の靴下を編成することができる。
【0012】
また、上記において、前記履き口部と、前記レッグ部と、前記第二足甲部から前記足裏部に亘る部分の3つの部位を輪編みで編成してもよい。
【0013】
この場合、平編みよりも輪編みに手馴れた技術者にとっては、迅速に編成することができる。
【0014】
さらに、上記において、少なくとも前記踵部をガーター編みによって編成してもよい。
【0015】
この場合、ガーター編みは、極めて簡単な編み方でありながら、踵部に必要な伸縮性を得ることができ、踵部を立体的に構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、踵部を立体的に編成するための前記したような難しい技術が一切不要となるので、初心者でも簡単に靴下を編成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る靴下の編成方法の一実施形態を示す編み図であり、(a)は、前側平編み地の編み図、(b)は、後側平編み地の編み図である。
【
図2】
図1に示す編み図に基づいて編成された靴下を示す概略斜視図である。
【
図3】従来の靴下の編成方法の一例を示す編み図である。
【
図4】
図3に示す編み図に基づいて編成された従来の靴下を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る靴下の編成方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、靴下の編成方法を示す編み図、
図2は、その編み図に基づいて編成された靴下を示す概略斜視図である。なお、
図1において、破線は中間省略を意味する。
【0020】
この靴下1の編成方法は、
図2に示すように、履き口部2、レッグ部3、踵部4、足甲部5、足裏部6、及び爪先部7から構成された靴下1の編成方法である。この編成方法の特徴は、足甲部5を、レッグ部3側に位置する第一足甲部51と、爪先部7側に位置し足裏部6と長さの等しい第二足甲部52の2つの領域から編成するとともに、踵部4を、レッグ部3から足裏部6に向かう方向に沿ってその全域に亘って一定の目数で第一足甲部51よりも長く編成し、第一足甲部51と踵部4の始端同士(5S1と4S1、5S2と4S2)、及び、第一足甲部51と踵部4の終端同士(5E1と4E1、5E2と4E2)がそれぞれ合致するよう第一足甲部51の縁に踵部4の縁を段飛ばしに接ぎ合わせる踵部構成工程を含むことにある。また、本実施形態は、請求項2に係る発明に対応するものであり、ここで開示する編成方法の特徴は、2枚の平編み地、つまり装着者の足の前側に対応する前側平編み地8と、後側に対応する後側平編み地9とを個々に編成しておいてから、これらを接ぎ合わせる点にある。ここで、「前側」とは、装着者の足首の前面から足甲を経て足指の上面に至る領域をいう。また、「後側」とは、装着者の足首の後側から踵及び足裏を経て足指の下面に至る領域をいう。以下、詳述する。
【0021】
まず、前側平編み地8を編成する。すなわち、
図1(a)に示すように、履き口部2の前面側2Fと、レッグ部3の前面側3Fと、足甲部5と、爪先部7の上半側7Uとを、この順に一連に編む。それらのうち、足甲部5は、後側平編み地9の踵部4に対応する第一足甲部51と、後側平編み地9の足裏部6に対応する第二足甲部52とを含むものである。この前側平編み地8の編み方としては、その全域をメリヤス編み、模様編みなどどのような編み方で編んでもよいが、例えば、レッグ部3の前面側3Fをゴム編みと模様編みで編むなど、各領域毎に異なる編み方で編んでもよい。爪先部7の上半側7Uは、先端(爪先)に向かうに従って減らし目とし、最終端7Eを伏せ目とする。
【0022】
前側平編み地8の編成が完了したら、次に後側平編み地9を編成する。すなわち、
図1(b)に示すように、履き口部2の後面側2Bと、レッグ部3の後面側3Bと、踵部4と、足裏部6と、爪先部7の下半側7Bとを、この順に一連に編む。この後側平編み地9の編み方としては、その全域をメリヤス編みで編んでもよいが、特に、踵部4はガーター編みで編むのが好ましい。ガーター編みは、極めて簡単な編み方でありながら、踵部4に必要な伸縮性を得ることができ、踵部4を立体的に構成することができる。また、他の領域においても、例えば、レッグ部3の後面側3Bをゴム編みと模様編みで編むなど、各領域毎に異なる編み方で編んでもよい。爪先部7の下半側7Bは、先端(爪先)に向かうに従って減らし目とし、最終端7Eを伏せ目とする。
【0023】
以上のようにして別個に編成された前側平編み地8と後側平編み地9とは、
図1に示すように、幅寸法は同じで、長さ寸法は後側平編み地9の方が前側平編み地8よりも長いものとなっている。これは、踵部4を立体的に形成するためであり、後側平編み地9の踵部4の長さを、この踵部4に対応する前側平編み地8の第一足甲部51の長さより僅かに長く設定していることによる。踵部4と第一足甲部51の長さの差を増減することで、踵部4の形状を適宜調整することができる。
【0024】
編成方法の最終工程として、前側平編み地8と後側平編み地9の全周縁を、履き口部2において履き口となる縁(
図1において下端縁)を除いて、例えば、すくいとじによって接ぎ合わせ、これにより
図2に示すような靴下1が完成する。ここで、前側平編み地8と後側平編み地9との接ぎ合わせは、前側平編み地8の第一足甲部51と後側平編み地9の踵部4の始端同士(5S1と4S1、5S2と4S2)、また、前側平編み地8の第一足甲部5と後側平編み地9の踵部4の終端同士(5E1と4E1、5E2と4E2)がそれぞれ合致するよう第一足甲部51の縁に踵部4の縁を段飛ばしに接ぎ合わせる。このようにすることで、踵部4が丸みを帯びた立体形状を呈するように形成される。
【0025】
次に、上記した靴下の編成方法の一具体例について説明する。
【0026】
ここでは、装着者の足首周りが21cm、足裏の長さが23cmである場合の靴下1を例に挙げている。
【0027】
前側平編み地8の幅寸法(
図1において左右方向)は10.5cmとされ、目数は22目とされる。また、長さ寸法(
図1において上下方向)は37.5cmとされ、各領域の長さ寸法(cm)と段数(段)については次の通りとされる。
【0028】
履き口部2:2cm、6段
レッグ部3の前面側3F:14.5cm、40段
第一足甲部5:5cm、14段
第二足甲部5:12cm、34段
爪先部7の上半側7U:4cm、12段
一方、後側平編み地9の幅寸法は上記前側平編み地8と同様に10.5cmとされ、目数は22目とされる。また、長さ寸法は、前側平編み地8より3cm長い40.5cmとされ、各領域の長さ寸法(cm)と段数(段)については次の通りとされる。
【0029】
履き口部2:2cm、6段
レッグ部3の後面側3B:14.5cm、40段
踵部4:8cm、28段
足裏部6:12cm、34段
爪先部7の下半側7B:4cm、12段
なお、踵部4の編み方は、上記したように、ガーター編みが好ましいが、伸縮性を発揮する編み方であればガーター編み以外の編み方であってもよい。
【0030】
以上、本発明に係る靴下の編成方法の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、上記の実施形態では、装着者の足の前側に対応する前側平編み地8と、後側に対応する後側平編み地9とを個々に編成しておいてから、これらを接ぎ合わせているが、履き口部2と、レッグ部3と、第二足甲部52から足裏部6に亘る部分の3つの部位を輪編みで編成し、第一足甲部51と踵部4とを上記の実施形態で示した方法で接ぎ合わせてもよい。この場合、平編みよりも輪編みに手馴れた技術者にとっては、迅速に編成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、毛糸の靴下を編成する場合に使用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 靴下
2 履き口部
2A 履き口部の前面側
2B 履き口部の後面側
3 レッグ部
3A レッグ部の前面側
3B レッグ部の後面側
4 踵部
5 足甲部
6 足裏部
7 爪先部