特許第6042181号(P6042181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042181
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/532 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   A61F13/532 200
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-251488(P2012-251488)
(22)【出願日】2012年11月15日
(65)【公開番号】特開2014-97241(P2014-97241A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2015年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(74)【代理人】
【識別番号】100101292
【弁理士】
【氏名又は名称】松嶋 善之
(74)【代理人】
【識別番号】100155206
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 源一
(72)【発明者】
【氏名】張 雄
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 祐一
【審査官】 北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−032918(JP,U)
【文献】 特開2010−136900(JP,A)
【文献】 特開2012−086092(JP,A)
【文献】 特開2012−130364(JP,A)
【文献】 特開2010−273842(JP,A)
【文献】 実開昭59−076217(JP,U)
【文献】 特開2000−225145(JP,A)
【文献】 特開2004−275501(JP,A)
【文献】 特開2012−143535(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/134456(WO,A1)
【文献】 米国特許第05669895(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
A61L 15/16 − 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌当接面に液透過性の表面層、非肌当接面側に防漏層、前記表面層と防漏層の間に吸収層を有する吸収性物品であって、
該吸収層は、肌当接面側に溝を備える離間部と、該離間部によって区画された該離間部よりも高坪量である小吸収部とを有し、
前記溝は、前記吸収層の非肌当接面に及んでおらず、
前記小吸収部には、非肌当接側面に、肌当接面側へ向かう圧搾凹部を有する吸収性物品。
【請求項2】
前記圧搾凹部は、非肌当接面側からの平面視において、前記小吸収部の少なくとも一方向に延びている請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収層は縦長形状であり、前記圧搾凹部は、非肌当接面側からの平面視で、前記吸収層の長手方向及びこれに直交する幅方向に延在する請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記圧搾凹部は、非肌当接面側からの平面視で、前記小吸収部の端部まで到達している請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記圧搾凹部は、非肌当接面側から肌当接面側に向かい、少なくとも一方向の幅が不連続に減少する請求項1〜4の何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記圧搾凹部は、非肌当接面側から非肌当接面側に向かって、連続的に幅が減少する形状である請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記圧搾凹部は1つの小吸収部に複数個含まれている請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記圧搾凹部は非肌当接面側の平面視で、同心円の輪状である請求項7に記載の吸収性物品。
【請求項9】
平面視において、前記離間部は前記吸収層の中央から周囲方向へ放射状に延びており、前記圧搾凹部が複数の前記離間部と交差している請求項1に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキンや使い捨ておむつ、失禁パンツ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキンや使い捨ておむつ等吸収性物品の吸収体は着用者の排泄ポイントを覆うように配置された、吸収材料が連続的に存在している略長方形状のものが一般的である。
これに対し、特許文献1及び2には、複数の吸収部が互いに離間して、基盤シートに固定部を介して接合され、該固定部は平面視において前記吸収部の領域に包含されており、前記複数の吸収部は、互いに液体連通化しうる状態に配列された吸収体が開示されている。これらの文献で用いられている技術により、一般的な吸収体より柔軟性に優れた吸収体を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-268919号公報
【特許文献2】特開2010-273810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2記載の吸収体は、吸収体中の効率的な液の拡散と、裏面からの水分放散性・熱放散性に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、吸収体の柔軟性を維持しながら、排泄された液を素早く吸収し拡散させることができ、かつ、湿気及び熱を放散し易い吸収性物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、肌当接面に液透過性の表面層、非肌当接面側に防漏層、前記表面層と防漏層の間に吸収層を有する吸収性物品であって、該吸収層は、肌当接面側に溝を備える離間部と、該離間部によって区画された該離間部よりも高坪量である小吸収部とを有し、前記小吸収部には、非肌当接側面に、肌当接面側へ向かう圧搾凹部を有する吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸収性物品は、離間部の溝により液を素早く吸収することができ、小吸収部の内部にも疎密勾配が形成されるため、各小吸収部全体に体液が素早く移行、拡散が生じ易くなって、体液を広く全体の小吸収部へ固定化することができる。しかも、肌当接面側及び裏面側の両方から湿度を放散することができ、高い水分放散性・熱放散性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の吸収性物品の一実施形態としての生理用ナプキンを肌当接面方向から示した一部切欠斜視図である。
図2図2は、図1のI−I線断面図である。
図3図3は、図1に示す生理用ナプキンの有する1個の小吸収部を非肌当接面方向から視た平面図である。
図4図4(a)〜(c)は他の実施形態の圧搾凹部の形状を説明するための平面図である(図3相当図)。
図5図5(a)〜(b)は更に他の実施形態の圧搾凹部の形状を説明するための平面図であり(図3相当図)、図5(c)は図5(b)のII−II線断面図である。
図6図6は、更にまた他の実施形態の圧搾凹部を説明するための断面図である。
図7図7(a)は他の実施形態の生理用ナプキンの備える吸収層を肌当接面方向から視た平面図であり、図7(b)は該吸収層を非肌当接面方向から視た平面図である。
図8図8(a)は実施例6の生理用ナプキンの備える吸収層の圧搾凹部の形状を説明するための肌当接面方向から視た平面図であり、図8(b)は図8(a)のIII−III線断面図である。
図9図9(a)は実施例9の生理用ナプキンの備える吸収層を肌当接面方向から視た平面図であり、図9(b)は実施例9の生理用ナプキンの備える吸収層を非肌当接面方向から視た平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る吸収性物品の好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明における吸収性物品の好ましい一実施形態としての生理用ナプキン(以下、「ナプキン」とも言う)を肌当接面方向から示した一部切欠斜視図である。
本実施形態のナプキン1は、図1に示すような縦長の形状をしており、肌当接面側に配置される液透過性シートの表面層2、非肌当接面側に配置される液難透過性の防漏層4、及び該両シートの間に配置され、体液を吸収保持する吸収層3を備えている。吸収層3は、その肌当接面側と非肌当接面側にコアラップ5を備えて吸収性本体30となされている。表面層2及び防漏層4は、吸収層3の長手方向前後及び幅方向左右からそれぞれ外方へ延在し、重なり部分において接合されて一体化されている。また、左右方向外方部においては防漏層4が表面層2よりも長く、防漏層4の肌当接面側は撥水性のサイドシート9によって覆われている。本実施形態においては、サイドシート9の幅方向内側が表面層2と重なっているとともに、吸収層3の左右両側部においても重なっている。この構成によって、ナプキン1の幅方向中央寄りの領域は液体透過性であるが、幅方向左右外側領域では撥水性となって、吸収層3内に吸収された体液が幅方向左右に拡散された際にも、体液の滲み出しを抑制することができる。
【0010】
なお、本明細書においては、着用者の肌と接触する面を肌当接面、これと反対側の面を非肌当接面といい、相対的に肌当接面に近い方を肌当接面側又は上方、遠い方を非肌当接面側又は下方と言う。また、長手方向における両端部方向を前後方向、幅方向における両端部方向を左右方向とも言う。
【0011】
ナプキン1における吸収層3は、縦長形状をなしており、図1に示すように、その長手方向をナプキンの長手方向(Y方向)に一致させ、ナプキン1の幅方向(X方向)の中央寄りに位置するよう、防漏層の肌当接面側に接着剤等で接合され配設されている。
【0012】
ナプキン1の吸収層3は、図1に示すように、その肌当接面側に溝61を備えた離間部6と、離間部6によって区分された離間部6よりも高坪量である複数の小吸収部32,32、...とを有している。一方、非肌当接面側は溝61が及んでおらず、連続した連続層31が形成されている。連続層31と小吸収部32とは、別個の構造体がホットメルトや熱シールなどによって接合されているものや、両者が物理的に連続した一体構造のものが挙げられる。本実施形態の吸収層3は一体積繊によって形成された一体構造体である。
【0013】
溝61について、図1及び図2を参照しながら、より具体的に説明すると、溝61は、肌当接面側から非肌当接面側に向かって窪んだ凹部となっている。つまり溝61は、吸収層3の構成材料が配されない空間部分となっている。なお、本発明において「吸収層」とは、体液を吸収保持するのに必要な材料を備えた層をいい、これを保形するためのコアラップ材などは含まない。空間部分である溝61を含む離間部6によって区画された小吸収部32は、相対的に肌当接面側に突出し、複数が独立して整列配置された、突出吸収部構造となっている。また、図2に示すように、吸収層3を厚み方向にみて、溝61の非肌当接面側の底部は吸収層3の一部として凹部吸収部33となっていて、溝61と凹部吸収部33によって離間部6を構成している。凹部吸収部33は、溝61の空間の分だけ小吸収部32よりも厚みが薄く、非肌当接面側へと偏在しており、小吸収部32よりも坪量が低くなっている。したがって、離間部6は小吸収部32よりも坪量が低くなっている。この凹部吸収部33と小吸収部32とは、吸収層3の非肌当接面側で連続層31によって一体となっている。
【0014】
ナプキン1では、図1に示すように、溝61が、ナプキン1の長手方向(Y方向)とこれに直交する幅方向(X方向)それぞれに連続的に延びていて、これらによって四方を囲まれたブロック状の吸収体部分である小吸収部32が連続層31と一体となって、肌当接面側に向かって凸の複数の小吸収部32,32...が、所謂格子状に配置された吸収層3が構成されている。つまり、長手方向に延びる溝61及び幅方向に延びる溝61は、平面視した際の吸収層3が存在する領域の前後端及び左右両端に達して配設されている。
【0015】
なお本発明において、「連続」ないし「連続的」とは、本実施形態のように溝61が直線的に連なる形状に限定されるものではなく、溝がなす空隙が途切れない種々の形態を含む。たとえば、小吸収部32を千鳥状とする溝部61の配置形態でもよく、小吸収部32を亀甲状や扇型状となるよう、溝部61を製品中心部から見て外側に向かって放射状に配置する形態であってもよい。また、溝の61連なりの途中で幅が変化する形態であってもよく、また途中に調整弁のような小空間が配設される形態であってもよい。
【0016】
ナプキン1では、図1に示すように、吸収層3が溝61によって区画され、小吸収部32が動きやすくなる。これにより外力対する可撓性を有する。これを配置したナプキンは、肌面の起伏にフィットする「身体適合性」、及び着用者の動きにも良好に追随して肌との部分的な隙間を生じ難くできる「動作追随性」が極めて高くなる。
【0017】
吸収層3において、溝61や小吸収部32の大きさ、形状等は吸収性物品の大きさや使用目的に応じて異なるため一義的に定められない。吸収性物品がナプキンや軽失禁パッドの場合、小吸収部32の大きさに関しては、0.25cm2以上、特に0.5cm2であることが好ましく、25cm2以下、特に20cm2以下であることが好ましい。具体的には、0.25cm2以上25cm2以下が好ましく、特に0.5cm2以上20cm2以下であることが好ましい。下限値以上であると、確実に圧搾により加圧できること、小吸収部32内に適切な粗密勾配を設けることができるという観点から好ましく、上限値以下であると、効率よく湿気を排出するための必要な数の溝を確保することが容易になるという観点から好ましい。
【0018】
溝61の大きさに関しては、長手方向に延びる溝61の幅(r)は、0.2mm以上、特に0.5mm以上が好ましく、5mm以下、特に3mm以下が好ましい。前記下限以上とすることで、溝部が水路となり経血がここを流動し効率的に吸収体中に拡散することができるとともに、肌とナプキンの間に滞留した湿気を外気に逃がしやすくなる。上限以下とすることで溝を経血が一気に流れることによる漏れの発生を防止することに加え、小吸収部32間の液体伝達の阻害を防止することが出来る。また、幅方向に延びる溝61の幅(s)は、0.25mm以上、特に0.5mm以上が好ましく、5mm以下、特に3mm以下が好ましい。前記下限以上とすることで肌とナプキンの間に滞留した湿気を外気に逃がしやすくなり、上限以下とすることで溝6bを経血が一気に流れることによる漏れの発生を防止することが出来る。
【0019】
また溝61の深さの、吸収層3全体の厚みに対する割合は、20%以上、特に30%以上が好ましく、80%以下、特に70%以下が好ましい。前記下限以上とすることで肌とナプキンの間に滞留した湿気を外気に逃がしやすくなり、上限以下とすることで凹部吸収部により隣接する突出吸収部同士が繋ぎ合わされ、吸収層が着用者の動作により破断することを防止することが出来る。溝を経血が一気に流れることによる漏れの発生を防止することが出来る。具体的には、20%以上80%以下、特に30%以上70%以下が好ましい。なお、多層タイプの吸収層など、一部が他の部分よりも厚みが大きい部分を有する吸収層の場合には、厚みの大きい部分に溝が設けられていれば、当該部分の厚みに対する溝の深さが上記範囲であって、厚みの小さい部分に溝が設けられていれば、当該部分の厚みに対する溝の深さが上記範囲であれば良い。
【0020】
本発明のナプキン1においては、図2に示すように、吸収層3の小吸収部32には、非肌当接面側に、肌当接面側に向かう圧搾凹部8が設けられている。本実施形態のナプキン1では、吸収層3の非肌当接面側に配されたコアラップ5と共に圧搾された圧搾凹部8となされている。圧搾凹部8は各小吸収部32に少なくとも1つ設けられている。本実施形態では、各ブロック状の小吸収部32の内部に納まるように、各圧搾凹部8が設けられている。圧搾凹部8によって、小吸収部32内には、圧搾凹部8の周囲部にはその外側の領域よりも密度が高い高密度領域が設けられている。すなわち、小吸収部32内には、相対的に密度が高い高密度部と密度が低い低密度部が存在する。図2の形態においては、圧搾凹部8周囲および圧搾凹部8から厚み方向に関して肌当接面側の領域に高密度部が存在する。この密度勾配によって、吸収層3に吸収された体液は高密度部へと導かれやすくなる。高密度部の周囲には圧搾凹部8による空隙81が存在している。このため、高密度部に集中的に集まった体液の一部が空隙から蒸気となって吸収体の非肌当接面側外部へ放出され易くなっている。加えて、小吸収部を区画している溝61と高密度部とが、圧搾凹部8の存在によって近接する構造となっていることから、体液の一部が蒸気となって溝部61へと導かれやすい構造となっている。このために、ナプキン1内の蒸気は一箇所に留まりにくく、しかも、非肌当接面側に集中しやすい構造となっているので、着用者とナプキン1との間に蒸気が残り難く、ムレ感を感じにくくなる。
【0021】
このように本実施形態のナプキン1は、吸収した体液をナプキン1の非肌当接面側に素早く導いて、肌に近い側から体液を遠ざけることが出来るとともに、湿気の内部保湿と内部循環構造により、肌側への放湿を抑えて、肌との間の湿度低減を効果的に実現することができる。排泄液の多寡に係わらず、着用者に高いドライ感を与え、肌荒れ等を効果的に低減することができる。しかも、溝61が長手方向と幅方向に交差しながら延びる構造によって、より内部循環が効率的に行われると、ムレ感抑制には有効である。また、小吸収部8の密度が離間部6の密度よりも高くなっていることによって、体液が吸収層3の肌当接面側から侵入した際に離間部6から小吸収部側へ移行、拡散し易くなるので、体液が表面に溜まり難く、着用者にドライ感を与えやすくなっている。
【0022】
ナプキン1において圧搾凹部8は、非肌当接面側の平面視においては、図3に示すように、開口部が円形であり、厚み方向に関しては、図2に示すように、非肌当接面側から肌当接面側に向かって窄まる、すなわち面積が漸次小さくなる形状である。即ち、図3に示す圧搾凹部8は、非肌当接面側から非肌当接面側に向かって、連続的に幅が減少する形状である。より具体的には、図2に示すような、すり鉢状となっていることが好ましい。このような形状とすることにより、高密度領域中においても中心に向かって密度勾配が付与されることから、小吸収部32内での低密度部から高密度部へ液が導かれ易くなる。
【0023】
圧搾凹部8の開口部の形状としては、円形に代えて、非肌当接面側からの平面視において、小吸収部32の少なくとも一方向に延びるように、楕円形、三角形、正方形、菱形、長方形、星型、十字形状など種々の形状を採用することができる。これらの中でも、楕円形状(図4(a))や十字形状(図4(b),図4(c))が圧搾凹部の空隙表面積が大きくできるとともに小吸収部の体積を十分に確保し易いことに加え、小吸収部内の密度勾配をより広範囲に形成させることができるので、蒸れ抑制と吸収性能の両立が実現し易い。更に具体的に説明すると、図4(b)及び図4(c)に示す十字形状の圧搾凹部8は、非肌当接面側からの平面視で、吸収層3の長手方向(Y方向)及びこれに直交する幅方向(X方向)に延在している。更に図4(c)に示す十字形状の圧搾凹部8は、非肌当接面側からの平面視で、小吸収部32の端部(外周縁)まで到達している。
【0024】
また、1つの小吸収部32あたりに複数個の圧搾凹部8を含んでいても良い。例えば、図5(a)のように開口部が円形の圧搾凹部を並べるように配置する形態や、図5(b),図5(c)のように環状開口部形状の圧搾凹部を同心円上配置する形態、即ち、圧搾凹部8は、非肌当接面側の平面視で、同心円の輪状である。これにより、最外の環状開口部形状圧搾凹部でもけられた高密度部と溝部61との距離を縮めることができ、液の移動に有利であることに加え、環状開口部の内側も、吸収性を有する低坪量部と高坪量部の密度勾配が存在することから、環状で開口部形状でないものと比べて全体的な吸収容量及び液拡散性が高まる。また、この形態では、最外の環状開口部形状圧搾凹部の高密度領域と、環状開口部の内側に存在する圧搾凹部による別の高密度領域とを比較した場合、内側の方がより高密度であることが、密度勾配の付与という観点で好ましい。
【0025】
圧搾凹部8を平面視して、圧搾凹部8の開口部の面積は、小吸収部32の非肌当接面側の平面面積に対して、1%以上、特に3%以上、更に10%以上であることが好ましく、70%以下、特に60%以下、更には50%以下であることが好ましい。具体的には、1%以上70%以下、特に3%以上60%以下、更に10%以上50%以下が好ましい。下限値以上であると、十分な導液性が得られやすいとともに、蒸気放出によるムレ感抑制が得られやすくなる。また、上限値以下であると、十分な液保持量を確保しつつ、吸収体が適度な柔らかさを保ち、着用者に違和感を与え難くなる。
【0026】
圧搾凹部8の断面形状は、すり鉢様形状に代えて、種々の形状を採用することが可能である。たとえば図非肌当接面側から対して階段様に長手方向長さ又は幅方向長さが段階的に減少する形態(図6参照)が挙げられる。即ち、図6に示す圧搾凹部8は、非肌当接面側から肌当接面側に向かい、少なくとも一方向の幅が不連続に減少している。このようにすることによって、吸収層3の吸収容量を維持しながら、蒸気放出部としての開口面積を広げ、しかも、小吸収部3の肌面側面積が大きいので、着用者から受ける圧への抵抗力や表面層2から吸収層3への液の移行性が維持できる。
【0027】
圧搾凹部8の厚み方向長さは、吸収層3全体の厚みの50%以下、特に40%以下であることが、体液の保持空間の確保の観点から好ましい。また、厚み方向に関して、図2に示すように、圧搾凹部8の上方端部は、該圧搾凹部8が小吸収部32内にある場合には溝61の下方端部の位置よりも上方であることが、溝61を伝わった拡散した体液を小吸収部に速やかに取り込むことが容易となることと、非肌当接面側からの水分の蒸散を一層促進して、ムレを低減容易にする観点から好ましい。一方、圧搾凹部8が凹部吸収部33の領域にまで存在する場合には、該圧搾凹部8の上方端部は溝部6の下方端部よりも下方に位置することが好ましい。
【0028】
図2に示す圧搾凹部8は吸収層3に非肌当接面側に配されたコアラップ5と共に圧搾されて一体となるように設けられているが、圧搾凹部8は吸収層3のみに設けられていても良い。図2に示す圧搾凹部8のように、吸収層3にコアラップ5を圧搾して一体となったものとする場合には、コアラップ5としてなるべく坪量の低いシートを使用することが、蒸散を有効に進める点から好ましい。そのようなコアラップ5としては、坪量が200g/m2以下の不織布やパルプシートが挙げられる。体液吸収性を有するパルプシート(吸収紙)であることが好ましい。
【0029】
さらに本発明において、吸収層3の構造は、本実施形態の1層に限定されず、前記作用を奏する限り、2層以上にしてもよい。
【0030】
吸収層3の構成材料としては、特に制限はないが繊維材料、多孔質体、それらの組み合わせなどを用いることができる。繊維素材としては例えば、木材パルプ、コットン、麻などの天然繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオフィレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等の合成樹脂からなる単繊維、これらの樹脂を2種以上含む複合繊維、アセテートやレーヨンなどの半合成繊維を用いることができる。合成繊維からなる繊維を用いる場合、該繊維は熱によって形状が変化する熱収縮繊維であってもよい。例えば、熱によって繊度は大きくなるが繊維長が短くなるものや、繊度はほとんど変化しないが、形状がコイル状に変化することでみかけの繊維の占有する長さが短くなるものであってもよい。多孔質体としては、スポンジ、不織布、高吸水性ポリマーの凝集物(高吸水性ポリマーと繊維とが凝集したもの)などを用いることができる。好ましい吸収層としては、パルプ繊維及び高吸収性ポリマーの混合積層体であって、これをコアラップ5としての吸収紙で被覆したものが特に好ましい。
【0031】
表面層2としては、各種不織布(たとえば、エアスルー不織布やスパンボンド不織布など)を単独、または複数の重ね合わせた構成や、不織布とフィルムとのラミネートからなり多数の開孔が形成されている複合シート等が用いられる。また表面層は、前記の突起のある上層及び下層とからなるものや、起伏のある上層と平坦な下層との層からなるものであってもよい。この場合、表面シートに繊維の密度勾配ができ、表面シート1上の液を素早く吸収体側へ透過させることができるので好ましい。上層及び下層の部材として、カード法によって形成されたウェブや嵩高な不織布などの繊維同士が極めて緩く絡んでいる状態の繊維集合体を用いることができ、下層の部材としてカード法によって形成されたウェブや熱収縮性を有する不織布を用いることができる。
【0032】
防漏層4は、透湿性フィルム単独、又はフィルムと不織布の貼り合わせ、撥水性の不織布(SMSやSMMS等)を用いることができる。コスト面やズレ止め粘着剤とのマッチングなどから、透湿フィルム単独を防漏材として用いることが最も好ましい。この場合のフィルム材としては、熱可塑性樹脂と、これと相溶性のない無機フィラーを溶融混練して押し出したフィルムを所定の寸法に延伸して微細孔をあけたフィルム、または、本質的に水分の相溶性が高く、浸透膜のように水蒸気排出可能な無孔性のフィルムが挙げられる。本発明に関わる湿度排出の性能を十分に発現し、かつ、水分のにじみ出しがない防漏層を具現化するには、透湿度は、0.7〜3.0g/m2・24hrの範囲にあることが好ましく、1.0〜2.5g/m2・24hrの範囲にあることが更に好ましい。さらっと感を十分に高める観点からは1.5〜2.5g/m2・24hrにあることが最も好ましい。また、フィルムの破れ等のトラブルなく使用可能であるためには、フィルム坪量は18〜70g/m2、より好ましくは25〜60g/m2である。また好ましい無機フィラー配合量は、フィルム全体の質量に対するフィラーの質量%として30〜65質量%、より好ましくは40〜60質量%である。
【0033】
なお、シート材の透湿性の測定は、JIS Z0208防湿包装材料の透湿試験方法に準じ、温度条件は35℃として行った。具体的には、まず透湿カップ内に吸湿剤(塩化カルシウム)を入れ、この透湿カップの口に直径70mmに裁断した試験片をのせて、パッキン及びリングを蝶ナットで固定した後、透湿カップと試料の接合部をビニル粘着テープでシールして試験体とした。この試験体を35±2℃、90±5%RHの恒温恒湿装置内に所定時間放置した。1時間後に試験体を取り出し、質量を測定し、測定後再び前記恒温恒湿装置内に置き、4時間後に取り出して質量を測定し、次式により、透湿度を、シート(1m2当たり)を通過した水蒸気の質量(g)として求めた。
透湿度(g/m2・24h)=(240×m)/(t・s)
s:透湿面積(cm2)
t:試験を行った最後の2つの秤量間隔の時間の合計(h)
m:試験を行った最後の2つの秤量間隔・増加質量の合計(mg)
【0034】
本発明の吸収性物品は、上記の実施形態の生理用ナプキンに制限されるものではなく、例えば使い捨ておむつや尿とりパッド、失禁パッド、失禁ライナ等に適応することができる。また、経血に限らずその他、尿、おりもの、軟便等に対しても効果的である。また、表面層、吸収層、防漏層及びサイドシートの他にも用途や機能に合わせ適宜部材を組み込んでもよい。なお、上記実施形態の生理用ナプキンの表面層、吸収層及び防漏層の材料、製法における条件や、製品の寸法等は特に限定されず、通常の生理用ナプキン等において用いられている各種材料を用いることができる。
【0035】
また、上記の実施形態の生理用ナプキン1においては、図1に示すように、溝61が、ナプキンの長手方向(Y方向)及び幅方向(X方向)それぞれに延びており、溝61を含む離間部6もナプキンの長手方向(Y方向)及び幅方向(X方向)それぞれに延びているが、例えば、図7(a)に示す吸収層3のように、吸収層3の平面視において、隙間部6(溝61)が吸収層3の中央から周囲方向へ放射状に延びるように配してもよい。放射状に延びるように隙間部6(溝61)を配した場合、圧搾凹部8は、図7(b)に示すように、複数の離間部6(溝61)と交差するように配すればよい。このように吸収層3の離間部6(溝61)及び圧搾凹部8を配することによって、吸収層3の広い範囲で非肌当接面側からの水分蒸散を促進することが容易となり、ムレの一層の低減を促進できるとの効果を奏する。
【0036】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の吸収性物品を開示する。
<1>肌当接面に液透過性の表面層、非肌当接面側に防漏層、前記表面層と防漏層の間に吸収層を有する吸収性物品であって、該吸収層は、肌当接面側に隙間部と、これによって区画された該隙間部よりも高坪量である小吸収部とを有し、前記小吸収部には、非肌当接側面に、肌当接面側へ向かう圧搾凹部を有する吸収性物品。
【0037】
<2>前記吸収層がその肌当接面側と非肌当接面側をコアラップで覆われており、前記圧搾
凹部が非肌当接面側のコアラップを含んで形成されている前記<1>に記載の吸収性物品。
<3>前記圧搾凹部は、非肌当接面側からの平面視において、前記吸収層の少なくとも一方向に延在している前記<1>又は<2>記載の吸収性物品。
<4>前記吸収層は縦長形状であり、前記圧搾凹部は、非肌当接面側からの平面視で、前記吸収層の長手方向及びこれに直交する幅方向に延在する前記<3>記載の吸収性物品。
【0038】
<5>前記溝は吸収層の長手方向に沿って配される長手方向溝を含み、該長手方向溝の幅が0.2mm以上5mm以下である前記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<6>前記溝として、前記長手方向と直交する方向である幅方向に沿って前記吸収層を横断し
て延在する幅方向溝も備えるとともに、該幅方向溝は前記長手方向溝と交差している前記<5
>に記載の吸収性物品。
<7>前記幅方向溝の幅が0.25mm以上5mm以下である前記<6>記載の吸収性物品。
<8>前記圧搾凹部は、非肌当接面側からの平面視で、前記小吸収部の端部まで到達していることを特徴とする前記<1>〜<7>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<9>前記圧搾凹部は、非肌当接面側から肌当接面側に向かい、少なくとも一方向の幅が不連続に減少する前記<1>〜<8>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<10>前記圧搾凹部は、非肌当接面側から非肌当接面側に向かって、連続的に幅が減少する形状である前記<1>〜<9>に記載の吸収性物品。
【0039】
<11>前記圧搾凹部は1つの小吸収部に複数個含まれている前記<1>〜<10>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<12>前記圧搾凹部は非肌当接面側から平面視で、同心円の輪状である前記<11>記載の吸収性物品。
<13>平面視において、前記隙間部は前記吸収層の中央から周囲方向へ放射状に延びており、
前記圧搾凹部が複数の前記隙間部と交差している前記<1>に記載の吸収性物品。
<14>前記防漏層が透湿性のフィルムである前記<1>〜<13>いずれか1つに記載の
吸収性物品。
<15>前記圧搾部は小吸収部の非肌側面の平面積に対して当り1%以上70%以下の開口面積で設けられている前記<1>〜<14>いずれか1つに記載の吸収性物品。
<16>前記吸収性物品が生理用ナプキン又は失禁パッドである前記<1>〜<15>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
【実施例】
【0040】
本発明について以下に実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。
【0041】
〔実施例1〕
花王株式会社の市販の生理用ナプキン(商品名「ロリエエフ 多い昼〜ふつうの日用」)から吸収体(本発明における吸収層と、コアラップを含む構造体)及び防漏層を構成するフィルムを取り除き、取り除いた吸収体と防漏層の各位置に後述の吸収層試験体及び防漏透湿フィルムを配置し、他を復元して、評価用の生理用ナプキンを得た。
【0042】
防漏透湿フィルム
透湿度が2.0g/m2・24h、フィルム坪量が40g/m2、無機フィラー配合量は、フィルム全体の質量に対するフィラーの質量%として50質量%の透湿フィルムを使用した。
【0043】
吸収体試験体
小吸収部32(未圧搾状態)の坪量240g/m2、凹部吸収部33の坪量112g/m2のパルプ繊維及び高吸水性ポリマーの積繊体を得た。この積繊体をコアラップ5としての吸収紙で被覆し、一対のプレスロール間に通して、3.0kgf/cm2の圧力で圧縮し、得た吸収体を吸収体試験体の原型とした。小吸収部32の密度は、0.12g/cm3であり、凹部吸収部33の密度は、0.08g/cm3であった。領域38の坪量は240g/m2であり、領域39の坪量は112g/m2であった。また、凹部吸収部33の厚みは1.4mmであり、小吸収部32の厚みは2.0mmであった。 小吸収部のサイズは横幅T=8mm、縦幅S=12mmであった。
この吸収体試験体の原型に、小吸収部各々に対し、1個の圧搾凹部8を小吸収部の中央に、非肌当接面側の吸収紙の上から施した。圧搾凹部は図3に示す真円でその開口部大きさは直径1.5mmであり、圧搾凹部における小吸収部の厚みは0.4mmであり、密度は0.60g/cm3であった。
【0044】
〔実施例2〕
実施例1の吸収体試験体に対し、圧搾凹部の形状を、非肌当接面側平面視で長手方向に延在する長径6mm、幅方向の短径1.5mmの図4(a)に示す楕円に変更した以外は同様にして生理用ナプキンを作成した。
【0045】
〔実施例3〕
実施例1の吸収体試験体を以下の点のみ変更して得た吸収体試験体を用いて生理用ナプキンを作成した。圧搾凹部の形状を、図4(b)に示すように、非肌当接面側平面視で吸収性本体の長手方向と幅方向の両方に延在させた十字柄とし、各小吸収部に1つずつ配置した。なお、圧搾凹部は、その長手方向及び幅方向の延在長さを6mm、幅を1.5mmとした。
【0046】
〔実施例4〕
実施例1の吸収体試験体を以下の点のみ変更して得た吸収体試験体を用いて生理用ナプキンを作成した。圧搾凹部の形状として、図4(c)に示すように、非肌当接面側平面視でその長手方向の延在長さを12mm、幅方向の延在長さを8mmとしそれぞれが小吸収部の端部に到達させた。
【0047】
〔実施例5〕
実施例1の吸収体試験体を以下の点のみ変更して得た吸収体試験体を用いた生理用ナプキンを作成した。圧搾凹部の開口部での形状を直径3mmとし、そこから肌当接面側に0.6mmの深さまで同じ直径の円柱形状を維持し、それより0.4mmの深さを直径1.5mmの円柱形状となるように、図6に示すように、不連続に直径が変化する、断面視において階段形状をなす圧搾凹部形状とした。階段状とはある仮想軸においてエンボスが中央に向けて非連続的に深くなっていることを表す。本実施例では、圧搾凹部を非肌当接面側から平面視したときに、異なる半径の円柱状部分が同心円状に配置されている。
【0048】
〔実施例6〕
実施例1の吸収体試験体に関して、図8(a),図8(b)に示すように、凹部形状を断面視ですり鉢状に変更した以外は同様にして生理用ナプキンを得た。すり鉢状とは、エンボス内におけるエンボス深さが、ある仮想軸において中央に向けて連続的に深くなっていることを表す。本実施例は、圧搾凹部の開口部形状が真円で、エンボス内における同一深さの部分が平面視において開口部と同心円になっており、エンボス凹部形状が円錘状になっているものである。開口部での直径が3mmであり、そこから徐々に直径が小さくなり、最も深い位置での直径は1.5mmであって、そこでの小吸収体厚みは0.4mmであった。
【0049】
〔実施例7〕
実施例1の吸収体試験体に関して、圧搾凹部の個数を、小吸収部1つに対し、図5(a)に示すように、4個設けた点のみ変更した以外は同様にして、生理用ナプキンを作成した。なお、圧搾凹部はすべて、小吸収部の中央領域に施した。圧搾凹部の大きさは直径1mmであり、圧搾凹部における小吸収部の厚みは0.4mmであった。長手方向に2個、幅方向に2個ずつ並列で並べた。長手方向における圧搾凹部の中心から他方圧搾凹部の中心までの距離で4mm、幅方向における圧搾凹部の中心から他方圧搾凹部の中心までの距離を2mmとした。
【0050】
〔実施例8〕
実施例1の吸収体試験体に対し、圧搾凹部の形状を、図5(b),図5(c)に示すように、非肌当接面側平面視で2つの同心円の輪状に変更を行った以外は同様にして整理用ナプキンを作成した。線幅1mmである外縁の直径が3mm(即ち内縁の直径が1mm)の輪状形状と、線幅1mmである外縁の直径が7mm(即ち内縁の直径が5mm)の輪状形状を同心円に配置させ、当該中心を小吸収部の中央とした。
【0051】
〔実施例9〕
実施例1の吸収体試験体に代えて、図9のような隙間部とエンボス形状とした以外は、同様にして生理用ナプキンを得た。なお、具体的な寸法は図9に示すとおりである。
【0052】
〔比較例1〕
吸収体として、特許文献1の実施例に記載の吸収体試験体を用いた以外は実施例1と同様にして生理用ナプキンを作成した。
【0053】
〔比較例2〕
吸収体として、特許文献2の実施例1に記載の吸収体試験体を用いた以外は実施例1と同様にして生理用ナプキンを作成した。
【0054】
〔性能評価〕
<吸収性の試験方法>
実施例1〜9、比較例1および2で作成したナプキンを水平に置き、底部に直径1cmの注入口がついた円筒つきアクリル板を重ねて、注入口から脱繊維馬血(日本バイオテスト(株)製)5gを注入し、注入後1分間その状態を保持した。次に、円筒つきアクリル板を取り除き、表面シートの表面上に、縦6cm×横9.5cmで坪量13g/m2の吸収紙(市販のティッシュペーパー)を16枚重ねて載せた。更にその上に圧力が4.0×102Paになるように重りを載せて5秒間加圧した。加圧後、吸収紙を取り出し、加圧前後の紙の重さを測定して、吸収紙に吸収された脱繊維馬血の重量を測定して表面液残り量とした。
表面液残り量100mg以上をC、75mg以上100mg未満をB、50mg以上75mg未満をA、50mg未満をA+とした。
【0055】
<拡散性の試験方法>
吸収性の試験方法が終了した後の吸収層の肌当接面側の拡散面積を測定した。測定には、各種カメラ(撮影データが電子化されるものが好ましい)によって、前述の試験が終了した直後の拡散状態を記録し、その拡散の輪郭をマーキングし、マーキングした輪郭から画像解析装置(NEXUS製:NEW QUBE Ver.4.20)を使用してそれらの拡散面積を求めた。25cm2未満をC、25cm2以上30cm2未満をB、30〜25cm2未満をA、35cm2以上をA+とした。
【0056】
<放湿性の試験方法>
吸収性の試験方法が終了した後のナプキンを、30℃、65%RHの環境下に表面材側をアクリル板に接する形で置き、8時間放置したときの製品の重量変化を測定し、その量の比較例1との比をとり、1以上1.05未満をC、1.05以上1.10未満をB、1.10以上1.20未満をA、1.20以上をA+とした。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1〜9の生理用ナプキンは、吸収性、拡散性及び放湿性の何れの観点においても、比較例1〜2の生理用ナプキンに比べて、優れていることがわかった。
【符号の説明】
【0059】
1 生理用ナプキン(吸収性物品)
2 表面層
3 吸収層
30 吸収性本体
31 連続層
32 小吸収部
33 凹部吸収部
4 防漏層
5 コアラップシート
6 離間部
61 溝
8 圧搾凹部
81 空隙
9 サイドシート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9