(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ターゲットホルダに所定の電圧を印加することによりプラズマを発生させ、前記ターゲットホルダに保持されたターゲットをスパッタリングして成膜するスパッタ装置であって、
処理チャンバと、
前記処理チャンバ内に設けられ、基板を保持するための基板保持面を有し、該基板保持面を所定の回転軸に対して回転可能に構成された基板ホルダと、
前記基板ホルダの回転を制御する回転駆動手段と、
前記基板ホルダの回転角を検出するための基板回転角検出手段と、
前記処理チャンバ内に設けられ、ターゲットを保持可能に構成され、前記回転軸がターゲットの中心点を通る垂線と不一致となるように設けられ、前記ターゲットのスパッタ面の中心点が、前記基板の中心点の法線に対して所定の寸法ずれた位置になるように、前記基板ホルダと対向して設けられたターゲットホルダと、
前記基板保持面を前記ターゲットホルダに露出させる第1の状態と、前記基板保持面を前記ターゲットホルダから遮蔽する第2の状態とを切り替えるシャッタと、
前記回転駆動手段および前記シャッタを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は記憶部を備え、
前記スパッタ装置は、対象となる成膜において目標となる膜厚を形成するために必要な成膜時間をT秒とした際に、該対象となる成膜をX回(Xは2以上の整数)に分割して行うことが可能に構成されており、
前記制御手段の前記記憶部には、制御プログラムが記憶されており、
前記制御プログラムは、
前記基板ホルダの回転を停止した状態で、前記ターゲットホルダに最も近い位置になるように、前記基板ホルダ上に基準点を設定するステップと、
前記基板ホルダを一定の回転速度で回転させるように前記回転駆動手段を制御するステップと、
前記プラズマが生成されている状態で、前記回転速度で前記基板ホルダを回転させている間に、前記第1の状態を形成して、前記基準点が、前記ターゲットホルダに最も近い位置になった状態から、前記分割された成膜の1回目の成膜を開始するように前記シャッタを制御するステップと、
前記プラズマが生成されている状態で、前記回転速度で前記基板ホルダを回転させながら、前記1回目の分割された成膜の開始から前記T/X秒経過したら、前記第2の状態を形成するように前記シャッタを制御するステップと、
前記プラズマが生成されている状態で、前記回転速度で前記基板ホルダを回転させながら、前記基板回転角検出手段による検出結果に基づいて、前記基準点が、前記1回目の対象となる成膜を開始した第1の基準点の位置から(n−1)×360/X度(nは、2〜Xの整数)回転し、第2の基準点の位置になったことを検出するステップと、
前記第1の状態を形成して、前記第2の基準点の位置に前記基準点がなった状態で、前記分割された成膜のn回目の成膜を開始するように前記シャッタを制御するステップと、
前記プラズマが生成されている状態で、前記回転速度で前記基板ホルダを回転させながら、前記n回目の分割された成膜の開始から前記T/X秒経過したら、前記第2の状態を形成するように前記シャッタを制御するステップと
を有することを特徴とするスパッタ装置。
前記シャッタは、前記ターゲットホルダを覆うように設けられ、前記第1の状態と前記第2の状態とを切り替え可能なターゲットシャッタ、および前記基板保持面を覆うように設けられ、前記第1の状態と前記第2の状態とを切り替え可能な基板シャッタの少なくとも一方であることを特徴とする請求項1に記載のスパッタ装置。
ターゲットホルダに所定の電圧を印加することによりプラズマを発生させ、前記ターゲットホルダに保持されたターゲットをスパッタリングして成膜するスパッタ装置であって、
処理チャンバと、
前記処理チャンバ内に設けられ、基板を保持するための基板保持面を有し、該基板保持面を所定の回転軸に対して回転可能に構成された基板ホルダと、
前記基板ホルダの回転を制御する回転駆動手段と、
前記基板ホルダの回転角を検出するための基板回転角検出手段と、
前記処理チャンバ内に設けられ、ターゲットを保持可能に構成され、前記回転軸がターゲットの中心点を通る垂線と不一致となるように設けられ、前記ターゲットのスパッタ面の中心点が、前記基板の中心点の法線に対して所定の寸法ずれた位置になるように、前記基板ホルダと対向して設けられたターゲットホルダと、
前記基板保持面を前記ターゲットホルダに露出させる第1の状態と、前記基板保持面を前記ターゲットホルダから遮蔽する第2の状態とを切り替えるシャッタとを備えるスパッタ装置の制御装置であって、
前記制御装置は、対象となる成膜において目標となる膜厚を形成するために必要な成膜時間をT秒とした際に、前記スパッタ装置が前記対象となる成膜をX回(Xは2以上の整数)に分割して行うように前記スパッタ装置を制御するものであり、
前記制御装置は、制御プログラムを記憶する記憶部を備え、
前記制御プログラムは、
前記基板ホルダの回転を停止した状態で、前記ターゲットホルダに最も近い位置になるように、前記基板ホルダ上に基準点を設定するステップと、
前記基板ホルダを一定の回転速度で回転させるように前記回転駆動手段を制御するステップと、
前記プラズマが生成されている状態で、前記回転速度で前記基板ホルダを回転させている間に、前記第1の状態を形成して、前記基準点が、前記ターゲットホルダに最も近い位置になった状態から、前記分割された成膜の1回目の成膜を開始するように前記シャッタを制御するステップと、
前記プラズマが生成されている状態で、前記回転速度で前記基板ホルダを回転させながら、前記1回目の分割された成膜の開始から前記T/X秒経過したら、前記第2の状態を形成するように前記シャッタを制御するステップと、
前記プラズマが生成されている状態で、前記回転速度で前記基板ホルダを回転させながら、前記基板回転角検出手段による検出結果に基づいて、前記基準点が、前記1回目の対象となる成膜を開始した第1の基準点の位置から(n−1)×360/X度(nは、2〜Xの整数)回転し、第2の基準点の位置になったことを検出するステップと、
前記第1の状態を形成して、前記第2の基準点の位置に前記基準点がなった状態で、前記分割された成膜のn回目の成膜を開始するように前記シャッタを制御するステップと、
前記プラズマが生成されている状態で、前記回転速度で前記基板ホルダを回転させながら、前記n回目の分割された成膜の開始から前記T/X秒経過したら、前記第2の状態を形成するように前記シャッタを制御するステップと
を備えることを特徴とする制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。なお、以下で説明する図面で、同機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略することもある。
【0013】
図1を参照して、本発明の一実施形態に係るスパッタ装置(以下、「成膜装置」ともいう)の全体構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる成膜装置1の概略図である。成膜装置1は、処理チャンバとしての真空容器2と、排気ポート8を通じて真空容器2内を排気するターボ分子ポンプ48とドライポンプ49とを有する真空排気装置と、真空容器2内へガスを導入することのできるガス導入系15とを備えている。
【0014】
排気ポート8は、例えば矩形断面の導管であり、真空容器2とターボ分子ポンプ48との間を繋いでいる。排気ポート8とターボ分子ポンプ48との間にはメインバルブ47が設けられている。
【0015】
ガス導入系15は、所定のガスを供給するためのガス供給装置(ガスボンベ)15aと、ガスの流量を制御するためのマスフローコントローラ15bと、ガスの供給を遮断したり開始したりするためのバルブ15cと、それぞれの構成要素を接続し、ガスを真空容器2内に導入するガス導入口15dとを有している。ガス導入系15のそれぞれの構成要素は配管により接続されており、所定のガスは、ガス供給装置15aから、マスフローコントローラ15b、バルブ15c、およびガス導入口15dを介して、ターゲット4付近から真空容器内に導入される。ガス導入系15は、必要に応じて減圧弁やフィルタなどを有しても良い。このようなガス導入系15は、後述する制御装置1000により指定されるガス流量を安定して流すことができる構成である。
なお、通常のスパッタを行う場合は、上記所定のガスとしてはアルゴンといった不活性ガスを用いれば良い。また、反応性スパッタの場合は、上記所定のガスとしては不活性ガスと反応性ガスとの混合ガスを用いれば良い。反応性スパッタの場合は、不活性ガスと反応性ガスとを別個に供給しても良いことは言うまでも無い。
【0016】
真空容器2内(処理チャンバ内)には、ターゲットを保持可能に構成されたターゲットホルダが設けられており、被スパッタ面が露出しているターゲット4がバックプレート5を介してターゲットホルダ6が保持されている。ターゲットホルダ6に対向して基板10を保持する基板ホルダ7が設けられている。該基板ホルダ7は、基板10を保持するための基板保持面7aを有しており、後述する回転駆動手段としての基板ホルダ駆動機構31により該基板保持面7aが回転軸Aに対して回転可能に構成されている。
【0017】
真空容器2の内面は接地されている。ターゲットホルダ6と基板ホルダ7との間の真空容器2の内面には接地された筒状のシールド40(防着シールド部材)が設けられている。シールド40(防着シールド部材)は、スパッタ粒子が真空容器2の内面に直接付着するのを防止ないしは低減させている。
【0018】
スパッタ面から見たターゲット4の背後には、マグネトロンスパッタリングを実現するためのマグネット13が配設されている。マグネット13は、マグネットホルダ3に保持されている。該マグネットホルダ3は、マグネットホルダ回転機構35に接続されており、該マグネットホルダ回転機構35の駆動により回転可能に構成されている。
【0019】
ターゲット4は、基板10に対して斜め上方に配置された位置(オフセット位置)に設置されている。ターゲット4のスパッタ面の中心点は、基板10の中心点の法線に対して所定の寸法ずれた位置にある。すなわち、基板ホルダ7の回転軸Aが上記ターゲット4の中心点を通る垂線と不一致となるようにターゲットホルダ6は設けられている。ターゲットホルダ6には、スパッタ放電用電力を印加する電圧供給手段としての電源12が接続されている。
図1に示す成膜装置1は、DC電源を備えているが、これに限定されるものではなく、例えば、RF電源を備えていてもよい。RF電源を用いた場合には電源12とターゲットホルダ6との間に整合器を設置する必要がある。ターゲットホルダ6は、絶縁体34により真空容器2から絶縁されており、またCu等の金属製であるのでDC又はRFの電力が印加された場合には電極となる。ターゲットホルダ6に電力(所定の電圧)が供給されることで、ターゲット近傍にプラズマが発生し、スパッタリングによる成膜が行われる。
【0020】
ターゲットホルダ6の近傍には、ターゲットシャッタ14がターゲットホルダ6を覆うように設置されている。ターゲットシャッタ14は、それぞれのシャッタ部材を独立して開閉することが可能な2重回転シャッタの構造を有している。ただしシャッタの枚数は特に問わない。ターゲットシャッタ14によって、基板ホルダ7とターゲットホルダ6との間を遮蔽する閉状態、または基板ホルダ7とターゲットホルダ6との間を開放する開状態を切り替えることができる。また、ターゲットシャッタ14には、二重シャッタを別々に開閉可能なように、ターゲットシャッタ駆動機構33が設けられている。
【0021】
基板ホルダ7には、基板ホルダ7を上下動したり、所定の速度で回転したりするための基板ホルダ駆動機構31が設けられている。すなわち、該基板ホルダ駆動機構31が有するモータの駆動により、回転軸Aを中心に基板保持面10を回転させることにより、基板10は該回転軸Aに対して回転する。また、基板ホルダ7には、基板回転角検出手段としてのセンサ31aが設けられており、基板10の回転角(回転位置)を検出することができる。本発明の一実施形態では、センサ31aとして、ロータリーエンコーダを用いている。なお、本発明の一実施形態では、センサ31aとして、例えば、上述のロータリーエンコーダのように、基板保持面7a(すなわち、基板保持面7a上に載置された基板10)の回転角を検出できるものであればいずれの構成を用いても良い。後述する制御装置1000は、基板ホルダ駆動機構31の動作を制御することができ、ロータリーエンコーダであるセンサ31aから、センサ31aの検出結果としての基板ホルダ駆動機構31が有するモータの回転情報を受信するように構成されている。
【0022】
また基板10の近傍で、基板ホルダ7とターゲットホルダ6との間には、基板シャッタ19が配置されている。基板シャッタ19は、基板シャッタ支持部材20により基板10の表面を覆うように支持されている。基板シャッタ駆動機構32は基板シャッタ支持部材20を回転させることにより、基板の表面付近の位置において、ターゲット4と基板10との間に基板シャッタ19が挿入される(閉状態)。基板シャッタ19がターゲット4と基板10との間に挿入されることによりターゲット4と基板10との間は遮蔽される。また、基板シャッタ駆動機構32の動作によりターゲットホルダ6(ターゲット4)と基板ホルダ7(基板10)との間から基板シャッタ19が退避すると、ターゲットホルダ6(ターゲット4)と基板ホルダ7(基板10)との間は開放される(開状態)。
【0023】
スパッタ放電用電力を印加する電源12、ガス導入系15、基板ホルダ駆動機構31、基板シャッタ駆動機構32、ターゲットシャッタ駆動機構33、マグネットホルダ回転機構35、および各ゲートバルブは、それぞれ電気的に制御装置1000に接続されており、該制御装置1000は、各構成部品を制御できるように構成されている。
【0024】
図2は、本発明の一実施形態のスパッタ装置1における制御系の概略構成を示すブロック図である。
【0025】
図2において、制御装置1000はスパッタ装置1の全体を制御する制御手段としての制御部である。この制御装置1000は、種々の演算、制御、判別などの処理動作を実行するCPU1001と、このCPU1001によって実行される、
図4にて後述される処理などの制御プログラムなどを格納するROM1002とを有する。また、制御装置1000は、CPU1001の処理動作中のデータや入力データなどを一時的に格納するRAM1003、および不揮発性メモリ1004などを有する。また、制御装置1000には、所定の指令あるいはデータなどを入力するキーボードあるいは各種スイッチなどを含む入力操作部1005、スパッタ装置1の入力・設定状態などをはじめとする種々の表示を行う表示部1006が接続されている。また、制御装置1000には、基板ホルダ7上に保持された基板10の回転角を検出するセンサ31aが接続されている。さらに制御装置1000には、電源12、ガス導入系15、基板ホルダ駆動機構31、基板シャッタ駆動機構32、ターゲットシャッタ駆動機構33、およびマグネットホルダ回転機構35などがそれぞれ駆動回路1007〜1012を介して接続されている。
【0026】
ここで、本発明の一実施形態に係る成膜方法について説明する。
本発明の一実施形態では、形成しようとする膜の成膜(対象となる成膜)において、該対象となる成膜の開始から所望の膜厚(目標とする膜厚)が得られるまでの時間を成膜時間T(T秒)と呼ぶことにする。すなわち、成膜時間Tとは、形成対象の膜を、所定の成膜レートによる成膜により目標となる膜厚で形成するのに必要な時間であって、実際に基板上に所定の膜が形成されている時間である。よって、各分割された成膜の間の時間は成膜時間Tに含まれない。該成膜時間Tを、成膜レートと上記目標となる膜厚とから算出しても良いし、パラメータとしてユーザが入力しても良い。
【0027】
本発明の一実施形態では、対象となる成膜において、成膜時間TをX(Xは2以上の整数)分割し、分割された成膜をX回行う。よって、分割された成膜をX回行った後には、結果として成膜時間Tの成膜が行われたことになり、目標とする膜厚の膜が形成される。具体的には、上記対象となる成膜においては、基板ホルダ7を一定の回転速度で回転させたまま、分割された成膜の各々を行う。
【0028】
すなわち、一定の回転速度で基板保持面7a(基板10)を回転させている状態で、分割された成膜の1回目が行われ、T/X秒だけ成膜したら該1回目の分割された成膜を一旦終了する。基板保持面7a上に設定された基準点(基板10上に設定された基準点と同義である)に対する1回目の分割された成膜の開始時(すなわち、対象となる成膜の開始時)からの回転角をθとすると、1回目の分割された成膜の開始時においては、回転角θ=0度である。その後、基板保持面7a上に設定された基準点に対する対象となる成膜の開始時からの回転角θが360/X度の時に、再度成膜を開始し(分割された成膜の2回目を開始)、再びT/X秒だけ成膜したら該2回目の分割された成膜を終了する。Xが3以上の場合はその後、基板保持面7a上に設定された基準点に対する対象となる成膜の開始時からの回転角θが2×360/X度の時に、再度成膜を開始し(分割された成膜の3回目を開始)、再びT/X秒だけ成膜したら該3回目の分割された成膜を終了する。すなわち、2回目以降の分割された成膜については、基板ホルダ7を一定の回転速度で回転しながら、基板保持面7a上に設定された基準点に対する対象となる成膜の開始時からの回転角θが(n−1)×360/X(nは、2〜Xの整数)度の時に、n回目の分割された成膜を開始し、T/X秒だけ成膜を行うと該n回目の分割された成膜を終了する。このように、本発明の一実施形態では、一定の回転速度で基板ホルダ7(すなわち、基板保持面7aおよび基板10)を回転させながら、基板ホルダ上に設定された基準点(基板保持面7a上の基準点)が対象となる成膜を開始した地点から(n−1)×360/X度だけ回転した位置にくると、T/X秒だけ成膜(n回目の分割された成膜)が行われる。
【0029】
上記回転角θは、基板保持面7aにおいて、回転軸Aを中心に該基板保持面7aをある角度だけ回転させたときのその角度(回転位相)である。
図3は、本発明の一実施形態に係る回転角θを説明するための図である。
図3において、基板保持面7aには基準点301が設けられており、基板10には基準点302が設けられている。該基準点301、302はそれぞれ、例えばノッチなど物理的な構造であっても良いし、仮想点であっても良い。一回目の分割された成膜の開始時(すなわち、対象となる成膜の開始時)において、基準点301、302がそれぞれ、地点303、304に位置すると仮定すると、基板保持面7aが一定の回転速度で回転しているので、地点303、304からの該回転における基準点301、302の回転位相が回転角θ(0度≦θ<360度)である。
【0030】
(第1の実施形態)
本実施形態では、各分割された成膜の制御(開始および終了)を、電圧供給手段としての電源12からカソードとしてのターゲットホルダ6へのプラズマ生成のための所定の電圧の供給の制御により行う。従って、制御装置1000は、基板ホルダ駆動機構31を制御して基板ホルダ7(基板保持面7a)を一定の回転速度で回転させながら、X回に分割された成膜の各回ではT/X秒間だけ成膜が行われるよう所定の電圧をターゲットホルダ6に供給するように電源12を制御するように構成されている。すなわち、制御装置1000は、1回目の分割された成膜の際には、該1回目の分割された成膜の開始時(すなわち、対象となる成膜の開始時)における基板ホルダ7の回転角θ=0度として、上記所定の電圧がターゲットホルダ6にT/X秒間だけ印加されるように電源12を制御して、T/X秒だけ成膜が行われるように構成されている。さらには、制御装置1000は、n回目(nは、2〜Xの整数)の分割された成膜の際には、対象となる成膜の開始時からの基板ホルダ7の回転角θが(n−1)×360/X度の時に上記所定の電圧がターゲットホルダ6にT/X秒間だけ印加されるように電源12を制御して、分割された成膜の2回目以降の各回においてT/X秒だけ成膜が行われるように構成されている。
【0031】
以下に一例として、成膜時間T=4.0秒、基板ホルダ7の回転速度60rpmとして成膜した場合の例を示す。また、
図3の基準点302を基板10に形成されたノッチ(以降、ノッチ302とも呼ぶ)とし、基準点302(すなわち、基準点301)がカソードとしてのターゲットホルダ6に最も接近する点を基準角度(回転角θ=0度)とする。ノッチ302がこの点に来たときに対象となる成膜(分割された成膜の1回目)が開始されるので、この点が、
図3における地点304(地点303)となる。本実施形態では、例えば、基板ホルダ7の回転が停止した状態で、ノッチ302がターゲットホルダ6に最も近い位置に位置するように基板10を基板保持面7a上に配置する。この状態で、基板保持面7aを回転させると、制御装置1000は、センサ31aの検知結果により基板保持面7aの回転角を検出することができるので、地点304からのノッチ302の回転角、すなわち回転角θを検出することができる。
なお、本実施形態では、ノッチ302を回転角検出の基準にすることが本質では無い。本実施形態では、対象となる成膜の開始時(1回目の分割された成膜の開始時)以降の所定のタイミングにおける上記対象となる成膜の開始時からの回転角を検出することが重要である。従って、制御装置1000は、センサ31aからの回転情報に基づいて、対象となる成膜の開始時からの回転角を所定のタイミングで検出できるように構成されていれば良い。
【0032】
図4は、本実施形態の対象となる成膜をX回に分割して行う成膜方法の処理手順を示すフローチャートである。以下、このフローチャートを参照して、成膜方法にかかる各工程を説明する。すなわち、本実施形態に係る成膜方法が開始されると、制御装置1000は、
図4に示すフローチャートに従って以下の成膜動作シーケンスを実行する。
なお、成膜の分割数に対応するX(2以上の整数)の値については、対象となる成膜毎に更新しても良いし、デフォルト値としてスパッタ装置1に持たせても良い。いずれにしても、X値については不揮発性メモリ1004等に格納しておけば良い。
【0033】
ステップS41では、制御装置1000は、対象となる成膜における、成膜レートおよび目標となる膜厚(以降、単に“目標膜厚”とも呼ぶ)に関するユーザ入力を受け付ける。すなわち、ユーザが入力操作部1005を介して所望の成膜レートおよび目標膜厚を入力すると、制御装置1000は、ユーザにより入力された成膜レートおよび目標膜厚をRAM1003に格納する。
ステップS42では、制御装置1000は、ステップS41にてRAM1003に格納された成膜レートおよび目標膜厚を読み出し、該読み出された成膜レートと目標膜厚とから、上記対象となる成膜の成膜時間Tを算出し、RAM1003に格納する。なお、RAM1003に予め定められた所定の成膜時間Tが格納されていても良い。
【0034】
ステップS43では、制御装置1000は、不揮発性メモリ1004からX値を読み出し、RAM1003からステップS42にて算出された成膜時間Tを読み出し、T/Xを算出する。制御装置1000は、このように算出された、分割された成膜の各回における成膜時間に対応するT/XをRAM1003に格納する。
ステップS44では、制御装置1000は、基板ホルダ駆動機構31を制御して、基板ホルダ7を所定の回転速度で回転させる。本実施形態では、基板ホルダ7の回転速度を60rpmに設定しているので、制御装置1000は、基板保持面7aが回転軸Aを中心に60rpmで回転するように基板ホルダ駆動機構31を制御する。
【0035】
ステップS45では、制御装置1000は、対象となる成膜をX回に分割された成膜の1回目の成膜を開始させる制御を行う。本実施形態では、分割された成膜の各回における成膜の開始と終了との制御を、プラズマ発生用の電圧供給のための電圧供給機構としての電源12からカソードとしてのターゲットホルダ6への所定の電圧の供給のON/OFFを制御することによって行っている。従って、制御装置1000は、電源12を制御して、ターゲットホルダ6に所定の電圧を供給させて、分割された成膜の1回目を開始させる。なお、該1回目の分割された成膜の際には、制御装置1000は、ステップS41にて入力された成膜レートによる成膜が行われるように、各条件を設定することは言うまでも無い。このとき、制御装置1000は、分割された成膜の回数に関するカウント1をRAM1003に記憶する。本実施形態において、“カウントN”とは、分割された成膜を行う毎に1ずつ累積し、該累積されたカウント値はRAM1003に記憶される。
また、ターゲットシャッタ14および基板シャッタ19の少なくとも一方が閉状態である場合には、制御装置1000は、基板シャッタ駆動機構32およびターゲットシャッタ駆動機構33の少なくとも一方を制御して、閉状態のシャッタを開状態とする。
【0036】
ステップS46では、制御装置1000は、ステップS45にて開始された分割された成膜の1回目の成膜からT/X秒後に、該分割された成膜の1回目の成膜を終了させる制御を行う。すなわち、制御装置1000は、RAM1003からT/Xを読み出し、ステップS45における1回目の分割された成膜の開始からT/X秒だけ経過したら、ターゲットホルダ6への所定の電圧の供給を停止するように電源12を制御する。この制御により、基板10上にT/X秒だけ成膜が行われる。
【0037】
ステップS47では、制御装置1000は、基板上に設定された基準点であるノッチ302(すなわち、基板ホルダ上に設定された基準点301)が、対象となる成膜を開始した地点である地点304(地点303)から(n−1)×360/X度(nは2〜Xの整数)に来ると、分割された成膜のn回目の成膜を開始させる制御を行う。すなわち、制御装置1000は、センサ31aから受信した回転情報に基づいて、基準点であるノッチ302の、対象となる成膜を開始した地点である地点304からの回転角θが(n−1)×360/X度の時に、電源12を制御して、ターゲットホルダ6に所定の電圧を供給させて、分割された成膜のn回目を開始させる。なお、このn回目の分割された成膜においては、制御装置1000は、ステップS41にて入力された成膜レートによる成膜が行われるように各条件を設定することは言うまでも無い。このとき、制御装置1000は、分割された成膜の回数に関するカウントを1累積し、該累積されたカウント値をRAM1003に記憶する。
【0038】
ステップS48では、制御装置1000は、ステップS47にて開始された分割された成膜のn回目の成膜からT/X秒後に、該分割された成膜のn回目の成膜を終了させる制御を行う。すなわち、制御装置1000は、RAM1003からT/Xを読み出し、ステップS47におけるn回目の分割された成膜の開始からT/X秒だけ経過したら、ターゲットホルダ6への所定の電圧の供給を停止するように電源12を制御する。この制御により、基板10上にT/X秒だけ成膜が行われる。
【0039】
ステップS49では、制御装置1000は、RAM1003に記憶された分割された成膜の回数に関するカウント値を参照して、分割された成膜がX回行われたか否かを判断する。カウント値がXよりも小さい場合は、制御装置1000は、分割された成膜がまだX回行われていないと判断して、ステップS47に進み、ステップS47〜S49を繰り返す。一方、カウント値がXと等しい場合は、制御装置1000は、分割された成膜がX回行われたと判断して、ステップS50に進む。
ステップS50では、制御装置1000は、基板ホルダ駆動機構31を制御して、ステップS44〜S49において一定の回転速度で回転動作を行っている基板ホルダ7の回転を停止させる。ステップS50にて、基板ホルダ7の回転を停止させると、本成膜方法を終了する。
【0040】
さて、成膜開始時には成膜レートに一定の変動が生じる。例えば、低圧力雰囲気中でスパッタを行う場合、放電開始時は一時的に圧力を上昇させる必要がある。このため、成膜開始時は成膜レート安定時に比べて一時的に成膜レートが大きくなる。基板ホルダの回転速度が60rpmであり4秒成膜の場合、成膜開始角と成膜終了角とは一致する。しかしながら、
図5に示すように、ターゲットホルダに最も近い点を回転角の0度とした場合、該0度側(ターゲットホルダ側)の膜厚が厚く、180度側(ターゲットホルダ側と反対側)の膜厚が薄くなり、膜厚分布が生じる。
【0041】
これに対して本実施形態では、成膜時間TをX分割し、X分割された成膜の各々について、
図5のように成膜開始時の成膜レートの変動に起因する膜厚分布が生じる成膜を、基板の円周上のある位置を基準に考えると該ある位置の回転位置が他の成膜時とは異なる回転位置に位置する時にT/X秒だけ行い、該T/X秒の成膜(分割された成膜)をX回行う。従って、各分割された成膜において、上記膜厚分布の方向(例えば、膜厚分布における膜厚の厚い方から薄い方に向かう方向)を基板の円周方向に沿って変えることができ、膜厚分布の方向が互いに異なる各分割された成膜をトータルすると、膜厚分布を全体としてキャンセルさせることができる。
図6は本実施形態(X=2)を用いた場合の膜厚分布の様子を示す図である。まず、回転角θ=0度のときに1回目の分割された成膜を開始し、2.0秒(成膜時間4.0秒/2)経過後に1回目の分割された成膜を終える(1回目の分割された成膜の終了)。次に、回転角θ=180度(360/2度)のときに再び成膜(2回目の分割された成膜)を開始し、2.0秒経過後に2回目の分割された成膜を終える(2回目の分割された成膜の終了)。
【0042】
本実施形態では、
図7(a)に示すように、1回目の分割された成膜により形成された膜の膜厚分布においては、ターゲットホルダ6に最も近い点を回転角θの0度とした場合、0度側が厚くなる。一方、
図7(b)に示すように、2回目の分割された成膜により形成された膜の膜厚分布においては、180度側が厚くなる。すなわち、1回目の分割された成膜と2回目の分割された成膜とで膜厚分布がほぼ対称となるため、対象となる成膜においては、1回目の分割された成膜の膜厚分布と2回目の分割された成膜の膜厚分布とが全体としてキャンセルされる。よって、成膜開始時の成膜レートの変動が生じたとしても、
図6に示すように、膜厚分布を低減した膜を形成することができる。すなわち、本実施形態では、膜厚に分布が生じる成膜を、基板の外周方向に沿って等間隔に異なるX箇所に基板保持面や基板に形成された所定の点(例えば、基準点)が来たときに開始させている。従って、X分割された成膜により形成された膜毎に膜厚分布の方向が等間隔で回転することになり、各分割された成膜において形成された膜の膜厚分布の方向を等方的にすることができる。よって、対象となる成膜の完了後の膜全体として見ると、X分割して行われた各分割された成膜により形成された膜の膜厚分布をキャンセルすることができる。
【0043】
また本実施形態では、成膜終了角と成膜開始角とが計算上一致している場合を挙げたが、本実施形態は、成膜開始角と成膜終了角とが一致しない場合にも有効である。いずれの場合にも第1の分割された成膜と第2の分割された成膜とで各々厚い部分と薄い部分とが対称、あるいは基板の回転方向に対して等間隔に生じるため、膜厚分布がキャンセルされるからである。
【0044】
(第2の実施形態)
本実施形態では、各分割された成膜の制御(開始および終了)を、ターゲットシャッタ14および/または基板シャッタ19の開状態および閉状態の制御により行う。
【0045】
ターゲットシャッタ14および/または基板シャッタ19を用いる場合、ターゲット4上の放電を維持したまま、基板10へのターゲット4の露出および該露出の遮断によって成膜を制御することになる。例えば、ターゲットシャッタ14および基板シャッタ19を用いる場合は、スパッタのためのプラズマが形成されている状態で、ターゲットシャッタ14および基板シャッタ19を双方とも閉状態とした状態から開状態とすることにより、基板10に対してターゲット4が露出することになり、成膜が開始される。一方、該成膜時において、ターゲットシャッタ14および基板シャッタ19の双方共に閉状態とすることにより、基板10に対してターゲット4の露出が遮断されることになり、成膜が停止される。
【0046】
しかしながら、この場合も同様にターゲットシャッタや基板シャッタの開閉動作によって成膜開始時及び終了時に成膜レートに一定の変動が生じる。従って、特許文献1に開示された技術のように、例え成膜開始角度と成膜終了角度を一致させたとしても、成膜後の膜には膜厚分布が生じる。本実施形態によれば、このような場合にも成膜開始時及び終了時の成膜レート変動部分をキャンセルすることが可能となる。
【0047】
本実施形態においては、制御装置1000は、プラズマが生成されている状態で、基板ホルダ駆動機構31を制御して基板ホルダ7(基板保持面7a)を一定の回転速度で回転させながら、X回に分割された成膜の各回の開始時においてターゲットシャッタ14および基板シャッタ19の双方が開状態となるようにターゲットシャッタ駆動機構33および基板ホルダ駆動手段31を制御し、かつX回に分割された成膜の各回の終了時においてターゲットシャッタ14および基板ホルダ19の双方が閉状態となるようにターゲットシャッタ駆動機構33および基板シャッタ駆動機構31を制御するように構成されている。すなわち、制御装置1000は、1回目の分割された成膜の際には、プラズマが生成されている状態で、該1回目の分割された成膜の開始時における基板ホルダ7の回転角θ=0度として、ターゲットシャッタ14および基板シャッタ19の双方が開状態となり、かつ1回目の分割された成膜の開始時からT/X秒経過後にターゲットシャッタ14および基板シャッタ19の双方が閉状態となるようにターゲットシャッタ駆動機構33および基板シャッタ駆動機構31を制御するように構成されている。さらには、制御装置1000は、n回目(nは、2〜Xの整数)の分割された成膜の際には、プラズマが生成されている状態で、対象となる成膜の開始時からの基板ホルダ7の回転角θが(n−1)×360/X度の時に、ターゲットシャッタ14および基板シャッタ19の双方が開状態となり、かつn回目の分割された成膜の開始時からT/X秒経過後にターゲットシャッタ14および基板シャッタ19の双方が閉状態となるようにターゲットシャッタ駆動機構33および基板シャッタ駆動機構31を制御するように構成されている。
【0048】
なお、本実施形態では、分割された成膜の各回における開始および終了の制御するためにターゲットシャッタ14および基板シャッタ19の双方を設ける形態について説明したが、ターゲットシャッタ14および基板シャッタ19の一方を設ける形態にも本実施形態は適用できる。また、ターゲットシャッタ14や基板シャッタ19に限らず、例えば、ターゲットホルダ6と基板ホルダ7との間の中点やその近傍など、ターゲットホルダ6と基板ホルダ7との間の所定の位置に設けられたシャッタであっても良い。また、シャッタの数も特に限定は無い。すなわち、本実施形態では、プラズマが生成された状態で、基板とターゲットとの間の遮蔽および開放により、分割された成膜の各回における開始および終了の制御することが重要である。よって、基板ホルダ7の基板保持面7aをターゲットホルダ6(ターゲットホルダ6に保持されたターゲット4)に露出させる第1の状態、および該基板保持面7aをターゲットホルダ6から遮蔽する第2の状態(基板保持面7aをターゲットホルダ6に露出させない状態)の双方を形成可能なシャッタであって、第1の状態および第2の状態を切り替え可能なシャッタを用いれば良いのである。
【0049】
(その他の実施形態)
上記制御装置1000は、成膜装置1内に組み込まれていても良いし、該成膜装置1と別個に設けても良い。この場合は、PC(パーソナルコンピュータ)等に組み込めば良い。このように、制御装置1000と成膜装置1とを別個に設ける場合は、両者を、LANやWANといったネットワーク、直接配線接続等の有線接続、または、赤外線等を用いた無線接続を介して接続すれば良い。
【0050】
また、前述した実施形態の制御装置1000の機能を実現するように前述した実施形態の構成を動作させるプログラムを記憶媒体に記憶させ、該記憶媒体に記憶されたプログラムをコードとして読み出し、コンピュータにおいて実行する処理方法も上述の実施形態の範疇に含まれる。即ちコンピュータ読み取り可能な記憶媒体も実施例の範囲に含まれる。また、前述のコンピュータプログラムが記憶された記憶媒体はもちろんそのコンピュータプログラム自体も上述の実施形態に含まれる。
かかる記憶媒体としてはたとえばフロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性メモリカード、ROMを用いることができる。
また前述の記憶媒体に記憶されたプログラム単体で処理を実行しているものに限らず、他のソフトウエア、拡張ボードの機能と共同して、OS上で動作し前述の実施形態の動作を実行するものも前述した実施形態の範疇に含まれる。