特許第6042216号(P6042216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042216
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】除雪機
(51)【国際特許分類】
   E01H 5/04 20060101AFI20161206BHJP
   E01H 5/09 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   E01H5/04 D
   E01H5/09 A
【請求項の数】4
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-9281(P2013-9281)
(22)【出願日】2013年1月22日
(65)【公開番号】特開2014-141791(P2014-141791A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】川上 俊明
(72)【発明者】
【氏名】御菩薩池 勉
(72)【発明者】
【氏名】深野 純
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−032218(JP,A)
【文献】 特開2004−278052(JP,A)
【文献】 特開平10−088612(JP,A)
【文献】 特開平10−259619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 5/04
E01H 5/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置を有した走行フレームと、該走行フレームに対し昇降可能且つローリング可能であってオーガを有したオーガハウジングとを、備えている除雪機において、
前記走行装置が接地している接地面に対する前記走行フレーム自体の傾き角を検出するフレーム傾斜角検出部と、
前記走行フレームに対する前記オーガハウジングの相対的な傾き角を検出するハウジング傾斜角検出部と、
前記フレーム傾斜角検出部によって検出された傾き角と前記ハウジング傾斜角検出部によって検出された傾き角とに基づいて、前記接地面に対する前記オーガハウジングの全傾き角を判断する全傾き角判断部とを備え、
前記フレーム傾斜角検出部と前記ハウジング傾斜角検出部とは、前記除雪機のなかの、前記オーガハウジングと共にローリング運動をすることのない他の部位に、設けられていることを特徴とする除雪機。
【請求項2】
前記オーガハウジングを昇降駆動する昇降駆動機構及び前記オーガハウジングをローリング駆動するローリング駆動機構を、操作するためのハウジング姿勢操作部と、
該ハウジング姿勢操作部の操作終了時点における、前記全傾き角を記憶する傾き記憶部と、
前記操作終了時点の後に、前記傾き記憶部に記憶されている前記全傾き角を維持させるように、前記昇降駆動機構及び前記ローリング駆動機構を制御するハウジング姿勢制御部とを、更に備えていることを特徴とする請求項1記載の除雪機。
【請求項3】
前記ハウジング姿勢制御部は、前記オーガが回転中であるという第1条件と、前記除雪機が前進走行中であるという第2条件との、両方を満足していると判断した場合にのみ、前記全傾き角を維持させる制御を実行する構成であることを特徴とする請求項2記載の除雪機。
【請求項4】
前記全傾き角判断部は、前記除雪機が加速走行中、減速走行中又は旋回中であると判断した場合には、前記フレーム傾斜角検出部によって検出された傾き角の値を、緩慢に変化させるフィルタ機能を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の除雪機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右の走行装置及びオーガを備えて自力走行する形式の除雪機に関する。
【背景技術】
【0002】
除雪機のなかには、走行装置を備えた車体フレームに対して、オーガハウジングを昇降可能且つローリング可能に取り付けた型式のオーガ式除雪機がある。オーガハウジングは、オーガを備える。オーガ式除雪機は、前進走行しつつ前部のオーガによって雪を掻き集め、掻き集めた雪をブロアによってシュータを介して遠くへ飛ばすことができる。
【0003】
オーガを備えた除雪機においては、除雪作業の状況に応じてオーガハウジングの高さを変える方式を採用している。除雪機を移動するときには、オーガハウジングの下面を高くしたほうが能率良く移動できる。一方、除雪するときにはオーガハウジングの下面を低くしたほうが効率良く除雪できる。さらに、除雪するときには路面の凹凸に合せてオーガハウジングの高さを変えることが多い。このようなオーガハウジングの高さを人力で変更するには作業者の負担が大きい。作業者の負担を軽減するために、動力によってオーガハウジングの下面を昇降させるものがあり、この技術は特許文献1〜2から知られている。
【0004】
特許文献1で知られている除雪機は、オーガハウジングに設けた傾斜検知装置によって、オーガハウジングの傾きを検知することにより、オーガハウジングのローリング角度を制御するというものである。
【0005】
特許文献2で知られている除雪機は、オーガハウジングの昇降位置をハイト位置センサによって検出し、オーガハウジングの傾き位置をローリング位置センサによって検出することにより、オーガハウジングの昇降角度及びローリング角度を制御するというものである。各センサの取付位置は不明である。
【0006】
しかしながら、除雪作業のときには、オーガやブロアに発生する振動や衝撃が、オーガハウジングから検出部に伝わる可能性がある。従って、オーガハウジングの傾き角を正確に検出するとともに、検出部の耐久性を高めるには改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭63−136012号公報
【特許文献2】特開2007−32218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、走行装置が接地している接地面に対する、オーガハウジングの傾き角を正確に検出することができるとともに、傾き角を検出する検出部の耐久性を高めることができる技術を、提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、走行装置を有した走行フレームと、該走行フレームに対し昇降可能且つローリング可能であってオーガを有したオーガハウジングとを、備えている除雪機において、前記走行装置が接地している接地面に対する前記走行フレーム自体の傾き角を検出するフレーム傾斜角検出部と、前記走行フレームに対する前記オーガハウジングの相対的な傾き角を検出するハウジング傾斜角検出部と、前記フレーム傾斜角検出部によって検出された傾き角と前記ハウジング傾斜角検出部によって検出された傾き角とに基づいて、前記接地面に対する前記オーガハウジングの全傾き角を判断する全傾き角判断部とを備え、前記フレーム傾斜角検出部と前記ハウジング傾斜角検出部とは、前記除雪機のなかの、前記オーガハウジングと共にローリング運動をすることのない他の部位に、設けられていることを特徴とする除雪機が提供される。
【0010】
請求項2に記載のごとく、好ましくは、前記オーガハウジングを昇降駆動する昇降駆動機構及び前記オーガハウジングをローリング駆動するローリング駆動機構を、操作するためのハウジング姿勢操作部と、該ハウジング姿勢操作部の操作終了時点における、前記全傾き角を記憶する傾き記憶部と、前記操作終了時点の後に、前記傾き記憶部に記憶されている前記全傾き角を維持させるように、前記昇降駆動機構及び前記ローリング駆動機構を制御するハウジング姿勢制御部とを、更に備えている。
【0011】
請求項3に記載のごとく、好ましくは、前記ハウジング姿勢制御部は、前記オーガが回転中であるという第1条件と、前記除雪機が前進走行中であるという第2条件との、両方を満足していると判断した場合にのみ、前記全傾き角を維持させる制御を実行する構成である。
【0012】
請求項4に記載のごとく、好ましくは、前記全傾き角判断部は、前記除雪機が加速走行中、減速走行中又は旋回中であると判断した場合には、前記フレーム傾斜角検出部によって検出された傾き角の値を、緩慢に変化させるフィルタ機能を有している。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、走行装置が接地している接地面に対する走行フレーム自体の傾き角を検出するフレーム傾斜角検出部と、走行フレームに対するオーガハウジングの相対的な傾き角を検出するハウジング傾斜角検出部とが、前記除雪機のなかの、オーガハウジングや、このオーガハウジングと共にローリング運動をすることのない他の部位、例えば車体フレームに設けられている。このため、除雪機による除雪作業のときに、オーガやブロアに発生する振動や衝撃が、オーガハウジング(ブロアケースを含む)から上記各検出部に直接に伝わることを、防止することができる。従って、各検出部の耐久性を高めることができる。しかも、各検出部は振動の影響を受けにくいので、高感度の応答性が良い検出部とすることができる。
【0014】
さらに、請求項1に係る発明では、走行装置が接地している接地面に対する走行フレーム自体の傾き角を検出するので、走行フレーム自体の傾き角を正確に検出することができる。そして、(1)フレーム傾斜角検出部によって検出された正確な傾き角と、(2)ハウジング傾斜角検出部によって検出された傾き角とに基づいて、(3)前記接地面に対するオーガハウジングの全傾き角を、全傾き角判断部によって判断するという、段階をふんで全傾き角を求める。従って、極めて高精度な全傾き角を、安価の構成によって容易に得ることができる。この結果、オーガハウジングの傾き制御を、より正確に行うことができる。
【0015】
請求項2に係る発明では、オーガハウジングを昇降、ローリング駆動する駆動機構を操作するための、ハウジング姿勢操作部の操作終了時点における全傾き角を、傾き記憶部によって記憶しておく。そして、操作終了時点の後には、ハウジング姿勢制御部は、記憶されている全傾き角を維持させるように、各駆動機構を制御する。このため、走行フレームが接地している現時点の接地面の変化にかかわらず、つまり現時点の走行フレームの姿勢にかかわらず、直前までオーガの作業状況に応じて操作している全傾き角を常に維持して、そのまま除雪作業を続けることができる。従って、除雪機による除雪作業の作業性を一層高めることができる。例えば、作業者が除雪作業の状況に合わせて、任意に操作した全傾き角を、ハウジング姿勢制御部が常に維持するように制御するので、様々な状況に対して、自動制御の補助を期待できる。
【0016】
また、除雪機によって除雪した後の路面には、多少の雪が残る。路面に一定の角度で概ね平坦に雪が残るように、除雪作業をするには、熟練を要する。しかし、全傾き角が常に維持されるので、熟練者でなくとも、路面に一定の角度で概ね平坦に雪が残るようにすることも容易である。
【0017】
また、例えば、走行フレームの姿勢が外乱によって傾いた場合であっても、オーガハウジングは直前までの姿勢を維持することができる。また、オーガハウジングの左右で雪質(例えば積雪の密度)が異なる場合には、オーガハウジングの左右の姿勢を、柔らかい雪側が高くなるようにローリング操作しておけば、走行フレームを水平状態のままで除雪することもできる。
【0018】
さらには、オーガの高さを超える積雪、いわゆる小高い雪山については、一般に上から順番に除雪(水平段切り作業)をすることになる。しかし、雪質は均一ではなく、走行フレームの姿勢を維持するには、作業者の負担が大きい。これに対し、請求項2では、雪山の登り斜面に対するオーガハウジングの傾き角度を、ハウジング姿勢操作部によって設定しておくことにより、操作終了時点の後には、前記傾き角度が自動制御される。このため、水平段切り作業が容易である。また、除雪機を雪山の登り斜面に沿って前後進させながら除雪する、いわゆる斜め段切り作業も容易に行うことができる。また、例えば、走行フレームが積雪に沈み込んだ場合であっても、オーガハウジングは傾き角度が自動制御されて一定に維持される。従って、オーガハウジングの姿勢操作が少なくてすむので、作業者の負担を軽減することができる。
【0019】
請求項3に係る発明では、ハウジング姿勢制御部は、除雪機を前進走行させつつオーガを回転させた場合にのみ、全傾き角を維持させる制御を実行する。このように、除雪機による除雪作業をしていない場合、例えば除雪機の後退走行時には、全傾き角を維持させる必要がないので、制御を行わない。従って、作業者はオーガハウジングを自由に昇降、ローリング操作することができる。状況に合わせて容易に操作できるので、操作に無駄がない。
【0020】
請求項4に係る発明では、全傾き角判断部は、除雪機が加速走行中、減速走行中又は旋回中の場合には、フレーム傾斜角検出部によって検出された傾き角の値を、緩慢に変化させる。従って、検出された傾き角の値は、除雪機が加速走行中、減速走行中又は旋回中に発生し得る、微少な時間だけの外乱(加速度や遠心力等)の影響を受けにくい。この結果、傾き角の値が極端に変化することなく安定するので、オーガハウジングの傾き制御を、より正確に且つ的確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る除雪機の側面図である。
図2図1に示された除雪機の模式的平面図兼制御系統図である。
図3図1に示された操作部の斜視図である。
図4図2に示された方向速度レバーの作用説明図である。
図5図2に示されたハウジング姿勢操作部と除雪作業部との関係の模式図である。
図6図5に示されたハイト位置センサの組み付け構成を側方から見た斜視図である。
図7図5に示されたローリング位置センサの組み付け構成を背面から見た斜視図である。
図8図2に示された制御部の制御フローチャートである。
図9図2に示された制御部のロール傾き角検出フローチャートである。
図10図2に示された制御部のハイト傾き角検出フローチャートである。
図11図8に示されるステップS12のサブルーチンである。
図12図11に示されたサブルーチンの続き部分である。
図13図8に示されるステップS13のサブルーチンである。
図14図13に示されたサブルーチンの続き部分である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は作業者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側、Leは左側、Riは右側を示す。
【実施例】
【0023】
実施例に係る除雪機について説明する。図1及び図2に示されるように、除雪機10は、左右の走行装置11L,11Rを備えた走行フレーム12に、除雪作業部13及びこの除雪作業部13を駆動するエンジン14を備えた車体フレーム15の後部を上下スイング可能に取付け、車体フレーム15の前部を昇降駆動機構16によって昇降(上下スイング)するようにし、さらに、走行フレーム12の後部から後方上部へ左右2本の操作ハンドル17L,17Rを延ばし、これらの操作ハンドル17L,17Rの先端にグリップ18L,18Rを設けた、自走式オーガ除雪機である。
【0024】
走行フレーム12及び車体フレーム15の組合せ構造は機体19をなす。走行フレーム12は、左右の走行装置11L,11Rを駆動する左右の電動モータ21L,21Rを備える。左右の走行装置11L,11Rは、左右のクローラベルト22L,22R、走行輪として後部に配置された左右の駆動輪23L,23R、及び、前部に配置された左右の転動輪24L,24Rからなる。
【0025】
左の電動モータ21Lの駆動力で、左の駆動輪23Lを介して左のクローラベルト22Lを駆動することができる。右の電動モータ21Rの駆動力で、右の駆動輪23Rを介して右のクローラベルト22Rを駆動することができる。
【0026】
除雪作業部13は、オーガハウジング25、オーガハウジング25の背面と一体のブロアケース26、オーガハウジング25に備えたオーガ31、ブロアケース26に備えたブロア32及びシュータ33からなる。オーガハウジング25は、後下端にスクレーパ27を備える。
【0027】
エンジン14は、除雪動力伝達機構34を介して除雪作業部13を駆動する除雪用駆動源である。除雪動力伝達機構34は、エンジン14のクランクシャフト14aに電磁クラッチ35を介して取付けた駆動プーリ36、伝動ベルト37、従動プーリ38を取付けた回転軸39からなる。
【0028】
エンジン14の動力は、クランクシャフト14a→電磁クラッチ35→駆動プーリ36→伝動ベルト37→従動プーリ38→回転軸39の経路でオーガ31及びブロア32に伝わる。オーガ31で掻き集めた雪を、ブロア32によってシュータ33を介して遠くへ飛ばすことができる。
【0029】
昇降駆動機構16は、シリンダからピストンが進退可能なアクチュエータである。このアクチュエータは、電動モータ16a(図2参照)にて図示せぬ油圧ポンプから発生させた油圧によって、ピストンを伸縮させる型式の電動油圧シリンダである。電動モータ16aは、昇降駆動機構16のシリンダの側部に一体に組込んだ、昇降用駆動源である。
【0030】
昇降駆動機構16は、一端を走行フレーム12に上下スイング可能に取付けるとともに、他端を車体フレーム15に上下スイング可能に取付けたものである。車体フレーム15、オーガハウジング25及びブロアケース26を昇降駆動機構16によって昇降(上下スイング)させることができる。
【0031】
作業者は、除雪機10に連れて歩行しながら、操作ハンドル17L,17Rで除雪機10を操作することができる。この例では、左右の操作ハンドル17L,17R間に操作ボックス41、制御部61、バッテリ62を上からこの順に配置した。
【0032】
除雪機10は、車体フレーム15に、オーガハウジング25及びブロアケース26をローリング可能に取付け、オーガハウジング25をローリング駆動機構65によってローリングさせるようにした構成である。
【0033】
詳しく説明すると、図7に示されるように、車体フレーム15の前端部で軸受66を介して回転支持部67を左右回転可能に支持し、この回転支持部67にブロアケース26の後端部を固定し、さらに、前後に延びる回転軸39を回転支持部67によって左右回転可能に支持することにより、回転軸39を回転中心として、車体フレーム15にオーガハウジング25及びブロアケース26を左右回転可能(ローリング可能)に取付けたものである。
【0034】
上述のように、走行フレーム12は車体フレーム15を取り付けた構成である。このため、走行フレーム12にオーガハウジング25及びブロアケース26をローリング可能(横揺れ可能)に取付けたことになる。この結果、走行フレーム12に対して、オーガハウジング25は昇降可能且つローリング可能である。
【0035】
ローリング駆動機構65は、シリンダからピストンが進退可能なアクチュエータである。このアクチュエータは、電動モータ65aにて図示せぬ油圧ポンプから発生させた油圧によって、ピストンを伸縮させる型式の電動油圧シリンダである。電動モータ65aは、ローリング駆動機構65のシリンダの側部に一体に組込んだ、ローリング用駆動源である。
【0036】
ローリング駆動機構65は、一端を車体フレーム15に左右スイング可能に取付けるとともに、他端をブロアケース26の背面に左右スイング可能に取付けたものである。オーガハウジング25及びブロアケース26をローリング駆動機構65によってローリングさせることができる。
【0037】
左右の操作ハンドル17L,17R間には、操作部40、制御部61、バッテリ62が配置されている。
【0038】
図3に示されるように、操作部40は、左右の操作ハンドル17L,17Rの間に設けた操作ボックス41と、グリップ18Lの近傍で左の操作ハンドル17Lに設けた走行準備レバー42並びに左の旋回操作レバー43Lと、グリップ18Rの近傍で右の操作ハンドル17Rに取付けた右の旋回操作レバー43Rとからなる。
【0039】
走行準備レバー42は、スイッチ42a(図2参照)に作用する走行準備部材であり、リターンスプリングの引き作用により、図に示すフリー状態になればスイッチ42aはオフになる。作業者の左手で走行準備レバー42を握ってグリップ18L側に下げれば、スイッチ42aはオンとなる。
【0040】
左右の旋回操作レバー43L,43Rは、左右のグリップ18L,18Rを握った手でそれぞれ操作する旋回操作部材であり、それぞれ対応する旋回スイッチ43La,43Ra(図2参照)に作用する機構である。
これら左右の旋回操作レバー43L,43Rは、リターンスプリングの引き作用により、図に示すフリー状態になれば旋回スイッチ43La,43Raはオフになる。作業者の左手で左の旋回操作レバー43Lを握ってグリップ18L側に上げれば、左の旋回スイッチ43Laはオンとなる。右の旋回スイッチ43Raについても同様である。このように、左右の旋回操作レバー43L,43Rが握られているか否かは旋回スイッチ43La,43Raで検出することができる。
【0041】
上記図2も参照しつつ説明すると、操作ボックス41はその背面41a(作業者側の面)に、メインスイッチ44及びオーガスイッチ45(「クラッチ操作スイッチ45」とも言う)を備える。メインスイッチ44を回してオンにすることで、エンジン14を始動させることができる。オーガスイッチ45は、電磁クラッチ35をオン・オフ切替えする手動スイッチであり、例えば押し釦スイッチからなる。
【0042】
さらに操作ボックス41はその上面41bに、スロットルレバー52、方向速度レバー53、リセットスイッチ54、オーガハウジング姿勢操作レバー55及びシュータ操作レバー56を備えている。
【0043】
スロットルレバー52は、エンジン14の回転数を制御する。方向速度レバー53は、電動モータ21L,21Rの回転を制御するための操作部材であり、その詳細については後述する。
【0044】
リセットスイッチ54(オーガ原位置自動復帰スイッチ54)は、オーガハウジング25の姿勢(位置)を、予め設定されている原点に復帰させるための手動スイッチである。このリセットスイッチ54として、例えば、押し釦スイッチが用いられる。リセットスイッチ54は、押し釦が手で押し込まれている状態でオンになり、手を離すと押し釦が復帰ばねにより押し込み前の位置に自動復帰してオフになる、いわゆる自動復帰式スイッチである。
【0045】
オーガハウジング姿勢操作レバー55は、オーガハウジング25の姿勢を変えるための、操作部材である。つまり、オーガハウジング姿勢操作レバー55は、オーガ31で除雪作業時にオーガハウジング25を雪面に合わせて昇降並びにローリングさせるべく、昇降駆動機構16やローリング駆動機構65を操作するための、操作部材である。
【0046】
シュータ操作レバー56は、シュータ33(図1参照)の向きを変えるための、操作部材である。
【0047】
図4に示されるように、方向速度レバー53(「前後進速度調節レバー53」とも言う)は、作業者の手で、矢印Ad,Baの如く前後に往復させることができ、「中立範囲」より「前進」側へ倒せば除雪機10(図1参照)を前進させることができ、且つ「前進」領域においては、Lfが低速前進、Hfが高速前進となるように、速度制御も行える。同様に、「中立範囲」より「後進」側へ倒せば除雪機10を後進させることができ、且つ「後進」領域においては、Lrが低速後進、Hrが高速後進となるように、速度制御も行える。
【0048】
この例では、図の左端に付記した通りに、後進の最高速が0V(ボルト)、前進の最高速が5V、中立範囲が2.3V〜2.7Vになるようにポテンショメータ53a(図2参照)でポジションに応じた電圧を発生させる。1つのレバーで前後の方向と高低速の速度制御とを設定できるので、方向速度レバー53と名付けた。
【0049】
次に、除雪機10の制御系統について図2に基づき説明する。除雪機10の制御系統は、制御部61に中心に集約されたものである。制御部61はメモリ63を内蔵し、このメモリ63に記憶されている各種の情報を適宜読み出して制御する構成である。
【0050】
さらに、制御部61はフレーム傾斜角検出部64を内蔵している。このフレーム傾斜角検出部64は、走行装置11L,11Rが接地している接地面Gr(図1参照)に対する走行フレーム12自体の傾き角を検出するものであり、例えば、制御部61の他の電子回路等と共に基盤に集積化(MEMS)される。このため、フレーム傾斜角検出部64を小型で安価にすることができる。
【0051】
図1に示されるように、左右の走行装置11L,11Rを有している走行フレーム12の後部から、後方上部へ左右2本の操作ハンドル17L,17Rを延ばし、この左右の操作ハンドル17L,17Rに制御部61を取り付け、この制御部61にフレーム傾斜角検出部64を設けている。このため、フレーム傾斜角検出部64は、走行フレーム12に直接に設けられている場合と、実質的に同じ構成であり、走行フレーム12自体の傾き角を検出することができる。なお、フレーム傾斜角検出部64は、走行フレーム12に直接に設けてもよい。
【0052】
フレーム傾斜角検出部64は、例えば加速度センサによって構成されている。この加速度センサはX軸、Y軸、及びZ軸という3軸方向の加速度を検出可能な、3軸加速度センサから成る。この3軸加速度センサは、いわゆる半導体加速度センサと称する、一般的なセンサでよい。半導体加速度センサの種類には、例えばピエゾ抵抗型、静電容量型、熱検知型がある。
【0053】
このような3軸加速度センサは、走行フレーム12自体に発生した3軸方向の加速度を検出することが可能である。X軸方向の加速度は、走行フレーム12自体に発生した、鉛直線方向、つまり重力方向の加速度(重力加速度)である。Y軸方向の加速度は、走行フレーム12自体に発生した、左右の水平方向の加速度である。Z軸方向の加速度は、走行フレーム12自体に発生した、前後の水平方向の加速度である。
【0054】
走行フレーム12自体に発生した加速度を加速度センサによって検出し、この検出値に基づいて、走行フレーム12自体の傾き角を求めることができるので、本発明では、フレーム傾斜角検出部64は加速度センサを含むものとした。
【0055】
エンジン14の出力の一部で発電機81を回し、得た電力をバッテリ62に供給するとともに、左右の電動モータ21L,21Rや他の電装品に供給する。エンジン14の出力の残部は、オーガ31及びブロア32の回転に充てる。
【0056】
走行準備レバー42を握るとともに、オーガスイッチ45を操作することにより、電磁クラッチ35をオンし、エンジン14の動力でオーガ31及びブロア32を回転させることができる。なお、走行準備レバー42をフリーにするか、又は、オーガスイッチ45を操作することにより、電磁クラッチ35をオフ状態にすることができる。
【0057】
次に走行部11L,11Rの系統の作動を説明する。本発明の除雪機10は、普通車両のパーキングブレーキに相当するブレーキとして、左右の電磁ブレーキ82L,82Rを備える。具体的には、左右の電動モータ21L,21Rの各モータ軸を左右の電磁ブレーキ82L,82Rによって制動する。これらの電磁ブレーキ82L,82Rは、駐車中は制御部61の制御により、ブレーキ状態(オン状態)にある。そこで、次の手順で電磁ブレーキ82L,82Rを開放する。
【0058】
メインスイッチ44がオン位置にあること、及び、走行準備レバー42が握られていることの2つの条件が満たされ、方向速度レバー53を前進又は後進に切換えると、電磁ブレーキ82L,82Rはオフ状態になる。
【0059】
方向速度レバー53の位置情報をポテンショメータ53aから得た制御部61は、左右のモータドライバ84L,84Rを介して左右の電動モータ21L,21Rを回転させ、電動モータ21L,21Rの回転速度をモータ回転センサ83L,83Rで検出して、その検出信号に基づいて回転速度が所定値になるようにフィードバック制御を実行する。この結果、左右の駆動輪21L,21Rが所望の方向に、所定の速度で回り、走行状態となる。
【0060】
走行中の制動は次の手順で行う。モータドライバ84L,84Rは、回生ブレーキ回路85L,85R及び短絡ブレーキ回路86L,86Rを含む。短絡ブレーキ回路86L,86Rはブレーキ手段である。
【0061】
左の旋回操作レバー43Lを握って左の旋回スイッチ43Laをオン操作している間は、制御部61は左の回生ブレーキ回路85Lを作動させ、左の電動モータ21Lの速度を下げる。右の旋回操作レバー43Rを握って右の旋回スイッチ43Raをオン操作している間は、制御部61は右の回生ブレーキ回路85Rを作動させ、右の電動モータ21Rの速度を下げる。すなわち、左の旋回操作レバー43Lを握っている間だけ、除雪機10を左旋回させることができる。また、右の旋回操作レバー43Rを握っている間だけ、除雪機10を右旋回させることができる。そして、(1)走行準備レバー42を離すか、(2)メインスイッチ44をオフ位置に戻すか、(3)方向速度レバー53を中立位置に戻すかの、何れかにより走行を停止させることができる。
【0062】
次に、図2に示される除雪作業部13とオーガハウジング姿勢操作レバー55との関係を、図5に基づいて詳しく説明する。
【0063】
オーガハウジング姿勢操作レバー55とオーガハウジング姿勢操作用の4つのスイッチ91〜94とによって、ハウジング姿勢操作部100が構成される。
【0064】
オーガハウジング姿勢操作レバー55を前側Frsにスイング操作すると、下降用スイッチ91はオンになる。オン信号を受けた制御部61は下降用リレー95をオン作動させることで、電動モータ16aに電力を供給して正転させる。これにより、昇降駆動機構16はオーガハウジング25及びブロアケース26を下降させる(矢印Dw方向へ変位させる)。
【0065】
オーガハウジング姿勢操作レバー55を後側Rrsにスイング操作すると、上昇用スイッチ92はオンになる。オン信号を受けた制御部61は上昇用リレー96をオン作動させることで、電動モータ16aに電力を供給して逆転させる。これにより、昇降駆動機構16はオーガハウジング25及びブロアケース26を上昇させる(矢印Up方向へ変位させる)。
【0066】
オーガハウジング姿勢操作レバー55を左側Lesにスイング操作すると、左ローリング用スイッチ93はオンになる。オン信号を受けた制御部61は左ローリング用リレー97をオン作動させることで、電動モータ65aに電力を供給して正転させる。これにより、ローリング駆動機構65はオーガハウジング25及びブロアケース26を左Leに傾動(ローリング)させる。
【0067】
オーガハウジング姿勢操作レバー55を右側Risにスイング操作すると、右ローリング用スイッチ94はオンになる。オン信号を受けた制御部61は右ローリング用リレー98をオン作動させることで、電動モータ65aに電力を供給して逆転させる。これにより、ローリング駆動機構65はオーガハウジング25及びブロアケース26を右Riに傾動(ローリング)させる。
【0068】
このように、オーガハウジング姿勢操作レバー55を前後にスイング操作することで、電動モータ16aは正逆転し、昇降駆動機構16のピストンを伸縮させる。この結果、オーガハウジング25及びブロアケース26は昇降する。オーガハウジング25の昇降位置については、ハイト位置センサ87によって検出し、その検出信号を制御部61に発するようにした。
【0069】
また、オーガハウジング姿勢操作レバー55を左右にスイング操作することで、電動モータ65aは正逆転し、ローリング駆動機構65のピストンを伸縮させる。この結果、オーガハウジング25及びブロアケース26は左右にローリングする。オーガハウジング25のローリング位置については、ローリング位置センサ88によって検出し、その検出信号を制御部61に発するようにした。
【0070】
図6に示されるように、ハイト位置センサ87(第1のハウジング傾斜角検出部87)は、走行フレーム12に対するオーガハウジング25の上下方向の相対的な傾き角を検出するものであって、例えば防水型の回転式ポテンショメータによって構成される。
【0071】
ハイト位置センサ87のケース87aは、上部ブラケット111によって車体フレーム15に取り付けられている。このように、ハイト位置センサ87は、除雪機10のなかの、オーガハウジング25やこのオーガハウジング25と共にローリング運動をすることのない部位、つまり車体フレーム15(機体19の一部)に設けられている。
【0072】
ハイト位置センサ87の入力軸87bは、ケース87aから車幅方向を向いており、ケース87aに回転可能に支持されている。ケース87aに対する入力軸87bの相対回転によって、ケース87aに内蔵されている可変抵抗器(図示せず)の抵抗値が変化する。入力軸87bには、スイングアーム112が一体的に取り付けられている。このスイングアーム112は、入力軸87bと共に前後スイング可能であって、下方へ延びており、先端にはアーム長手方向に細長い溝112a(長孔を含む)が形成されている。
【0073】
さらに、入力軸87bには、第1リンクアーム113が相対回転可能に支持されている(図6は、相対回転部分を誇張して表してある。)。この第1リンクアーム113は、入力軸87bに対して前後スイング可能である。第1リンクアーム113は、逆V字状の部材であって、V字の基端部が入力軸87bに支持され、V字の一方の先端に有している横向き状の第1ピン114がスイングアーム112の溝112aに係合され、V字の他方の先端に有している横向き状の第2ピン115が第2リンクアーム116の一端部に相対回転可能に連結されている。第2リンクアーム116は、第1リンクアーム113に対して前後スイング可能である。第2ピン115は第1ピン114よりも前方に位置している。
【0074】
第2リンクアーム116の他端部は、第3ピン117により下部ブラケット118を介して走行フレーム12に前後スイング可能に連結されている。下部ブラケット118は、走行フレーム12に対する車体フレーム15のスイング支持点119を基点として、後上方へ延びている。第3ピン117に対し、第1ピン114と入力軸87bとは上下方向の略一直線上に配列されている。入力軸87bから第1ピン114までの距離に対して、入力軸87bから第2ピン115までの距離は大きい。
【0075】
走行フレーム12に対し、略水平状の車体フレーム15の前部が上方にスイングするにつれて、ハイト位置センサ87のケース87aは同方向にスイングする。入力軸87bもケース87aと共に同方向に変位する。しかし、第1リンクアーム113の回転量は、第1ピン114と第1リンクアーム113と第2ピン115と第2リンクアーム116と第3ピン117とによって、制限されている。このため、ケース87aに対する入力軸87bの相対回転角が増大する。その後、車体フレーム15の前部が下方にスイングすると、入力軸87bの相対回転角は減少する。車体フレーム15の上下スイング方向の変化量に対して、入力軸87bの回転角の変化量は小さくてすむ。
【0076】
図7に示されるように、ローリング位置センサ88(第2のハウジング傾斜角検出部88)は、車体フレーム15に対するオーガハウジング25の左右方向の相対的な傾き角を検出するものであって、例えば防水型の回転式ポテンショメータによって構成される。このことから、次のことがいえる。走行フレーム12に対して車体フレーム15が左右方向に相対的に傾くことはない。従って、ローリング位置センサ88は、走行フレーム12に対するオーガハウジング25の左右方向の相対的な傾き角を検出するものであると、いうことができる。
【0077】
ローリング位置センサ88のケース88aは、ブラケット121によって車体フレーム15の前端部に取り付けられている。このように、ローリング位置センサ88は、除雪機10のなかの、オーガハウジング25やこのオーガハウジング25と共にローリング運動をすることのない部位、つまり車体フレーム15(機体19の一部)に設けられている。
【0078】
ローリング位置センサ88の入力軸88bは、ケース88aから後方を向いており、ケース88aに回転可能に支持されている。ケース88aに対する入力軸88bの相対回転によって、ケース88aに内蔵されている可変抵抗器(図示せず)の抵抗値が変化する。入力軸88bには、スイングアーム122が一体的に取り付けられている。このスイングアーム122は、入力軸88bと共に上下スイング可能であって、車幅へ延びており、アーム長手方向に細長い溝122a(長孔を含む)が形成されている。
【0079】
さらに、車体フレーム15の前端部に設けられているブラケット121には、リンクアーム123が左右回転可能に支持されている。リンクアーム123は、背面視略L字状の部材であり、ブラケット121から後方へ延びた支持ピン124によって、L字の基端部(角部)が支持されている。スイングアーム122の溝122aには、リンクアーム123のL字の一方の先端に有しているピン125が係合している。リンクアーム123のL字の他方の先端は、下方へ延びるとともに、下方に細長い溝123a(長孔を含む)が形成されている。
【0080】
支持ピン124は、入力軸88bに対して車幅方向に横並びに位置するとともに、回転支持部67の真上に位置している。回転支持部67の外周部には、前後方向に細長いバー126が設けられている。このバー126には、リンクアーム123のL字の他方の先端に形成されている溝123aが係合している。支持ピン124からピン125までの距離に対して、入力軸88bからピン125までの距離は小さい。支持ピン124からピン125までの距離に対して、支持ピン124からバー126までの距離は略同一である。
【0081】
車体フレーム15に対し、オーガハウジング25が左または右にローリングするにつれて、回転支持部67及びバー126は同方向にローリングする。この結果、リンクアーム123は支持ピン124を中心にスイングして、ピン125及びスイングアーム122を介して入力軸88bをスイングさせる。従って、ケース88aに対する入力軸88bの相対回転角が増大する。その後、オーガハウジング25が元に戻るようにローリングすると、入力軸88bの相対回転角は減少する。オーガハウジング25のローリング方向の変化量に対して、入力軸88bの回転角の変化量は小さくてすむ。
【0082】
除雪機10による除雪作業のときには、オーガ31やブロア32に発生する振動が、オーガハウジング25やブロアケース26に伝わる。オーガハウジング25やブロアケース26から各センサ87,88に振動や衝撃が伝わることは、各センサ87,88の耐久性を高める上で不利である。
【0083】
これに対し、本発明では、各センサ87,88は、除雪機10のなかの、オーガハウジング25やこのオーガハウジング25と共にローリング運動をすることのない部位、つまり車体フレーム15(機体19の一部)に設けられている。このため、オーガハウジング25やブロアケース26から各センサ87,88に振動や衝撃が直接に伝わることを防止することができる。従って、各センサ87,88の耐久性を高めることができる。
【0084】
次に、制御部61(図2参照)をマイクロコンピュータによって構成した場合の制御フローについて、図8図14に基づき説明する。この制御フローは、例えばメインスイッチ44をオンにしたときに制御を開始し、メインスイッチ44をオフにしたときに制御を終了する。なお、図8図14に示される制御フローチャートでは、除雪機10の制御のなかの、オーガハウジング25のローリング制御及びハイト制御に関するステップのみを説明し、他の制御に関するステップについては省略する。以下、図2及び図5を参照しつつ説明する。
【0085】
図8は、本発明に係る制御部61の制御フローチャートである。制御部61は制御を開始すると、先ずステップS11において初期設定をすることにより、各設定値及びフラグを初期の値にリセットする。次に、オーガハウジング25のローリング制御を実行し(ステップS12)、次にオーガハウジング25のハイト制御を実行する(ステップS13)。なお、ステップS12とステップS13とは実行順序が逆であってもよい。ステップS12のローリング制御処理を実行するための具体的な制御フローについては、図11及び図12で説明する。ステップS13のハイト制御処理を実行するための具体的な制御フローについては、図13及び図14で説明する。
【0086】
ステップS13の次に、制御部61は、この制御フローを停止するか否かを判断する(ステップS14)。ここで、メインスイッチ44がオン(on)の場合には、制御を継続すると判断してステップS12に戻る。一方、メインスイッチ44がオフ(off)の場合には、制御を停止すると判断して、一連の制御を終了する。
【0087】
さらに、制御部61は、ステップS12〜S14を実行中において、図9に示されるロール傾き角検出フローと、図10に示されるハイト傾き角検出フローとを、所定の微少な一定のサンプリングタイミング毎、例えば数ミリ秒毎に実行している。
【0088】
先ず、図9に示されるロール傾き角検出フローについて説明する。制御部61は、ロール傾き角検出フローの実行を開始すると、先ずステップS101において、走行フレーム12のローリング方向の加速度αrを読み込む。この加速度αrについては、フレーム傾斜角検出部64(加速度センサ64)によって検出された検出値を読み込めばよい。
【0089】
次に、除雪機10の旋回信号、つまり左右の旋回スイッチ43La,43Raのスイッチ信号を読み込む(ステップS102)。次に、除雪機10が直進走行中であるか否かを判断する(ステップS103)。左右の旋回スイッチ43La,43Raがいずれもオフ(off)の場合には、直進走行中であると判断してステップS104に進む。一方、左右の旋回スイッチ43La,43Raのいずれかがオン(on)の場合には、旋回走行中であると判断してステップS105に進む。
【0090】
ステップS104では、ローリング方向の加速度αrの値の変化の追従性が大きくなるように、フィルタリングする。一方、ステップS105では、ローリング方向の加速度αrの値の変化の追従性が小さくなるように、フィルタリングする。具体的には、ステップS104〜S105は、例えば回帰フィルタ機能によってフィルタリングする。
【0091】
一例を挙げると、ステップS104〜S105は、加速度αrの入力値αriに次の式(1)に基づく演算を実行することによって、出力値αroを得る。入力値αriは、ステップS101で読み込まれた最新の加速度αrの入力値である。出力値αroは、直前のステップS104〜S105を実行したことによって得られた最新の出力値である。ここで、kはフィルタ係数であり、「0<k≦1.0」の範囲に設定される。
(αri−αro)・k+αro=αro ・・・(1)
【0092】
直進走行中であるステップS104では、フィルタ係数kは大きい値、例えば1.0又は1.0に近い値に設定される。このため、出力値αroは入力値αriに合致又は入力値αriに近似した値となり、入力値αriの変化に対して早く収束することになる。従って、ローリング方向の加速度αrの値の変化の追従性が大きくなる。この結果、出力値αroは、走行フレーム12自体の傾きに応答しやすいので、直進走行時に最適である。
【0093】
一方、旋回中であるステップS105では、フィルタ係数kはステップS104の場合よりも小さい値に設定される。従って、ローリング方向の加速度αrの値の変化の追従性が小さくなり、入力値αriの変化に対して緩慢に収束することになる。この結果、出力値αroは、入力値αriのピーク値の影響を受けることなく、誤作動を防止することができるので、旋回時における信号処理に最適である。
【0094】
ステップS104又はステップS105の処理が完了した後には、加速度αrの出力値αroから、走行フレーム12自体のローリング方向の傾き角θrを求める(ステップS106)。加速度αrの出力値αroに基づいてローリング方向の傾き角θr(以下、ロール傾き角θrという。)を求める方法としては、例えば一般的な演算式またはマップによって求めればよい。マップを採用した場合には、加速度αroに対するロール角傾き角θrの関係を予め設定して、メモリ63に記憶しておく。
【0095】
次に、ロール傾き角θrの値を初期設定値θrsによって補正する(ステップS107)。この初期設定値θrsは、生産工場から出荷する前に各除雪機10毎に補正された(零点補正された)基準値となる零点であり、メモリ63に記憶される。この零点補正は、例えば、予め設定された水平な平坦面に除雪機10を載せた状態で施される。除雪機10に組み付けられたフレーム傾斜角検出部64の組み付け誤差を補正することができる。
【0096】
次に、走行フレーム12に対するオーガハウジング25のローリング方向の相対的な傾き角βrを読み込む(ステップS108)。このローリング方向の相対的な傾き角βr(以下、ロール相対傾き角βrという。)については、ローリング位置センサ88によって検出された検出値を読み込めばよい。
【0097】
次に、ロール相対傾き角βrの値を初期設定値βrsによって補正する(ステップS109)。この初期設定値βrsは、生産工場から出荷する前に各除雪機10毎に補正された(零点補正された)基準値となる零点であり、メモリ63に記憶される。この零点補正は、例えば、予め設定された水平な平坦面に除雪機10を載せた状態で施される。除雪機10に組み付けられたローリング位置センサ88の組み付け誤差を補正することができる。
【0098】
次に、ステップS107において補正されたロール傾き角θrと、ステップS109において補正されたロール相対傾き角βrとに基づいて、接地面Grに対するオーガハウジング25の実際のロール傾き角βrr、つまりローリング方向の全傾き角βrrを求めた後に(ステップS110)、ロール傾き角検出フローの制御を終了する。具体的には、全傾き角βrrを演算式「βrr=θr+βr」によって求める。
【0099】
次に、図10に示されるハイト傾き角検出フローについて説明する。制御部61は、ハイト傾き角検出フローの実行を開始すると、先ずステップS201において、走行フレーム12の前後方向(オーガハウジング25のハイト方向に相当)の加速度αhを読み込む。このハイト方向の加速度αhについては、フレーム傾斜角検出部64(加速度センサ64)によって検出された検出値を読み込めばよい。
【0100】
次に、除雪機10の走行の加減速信号を読み込む(ステップS202)。例えば、走行準備レバー42のスイッチ42aと方向速度レバー53のポテンショメータ53aの、信号を読み込む。方向速度レバー53を「中立範囲」から「前進」側に操作すると、除雪機10は発進して加速する。また、前進走行中の除雪機10は、方向速度レバー53を低速前進Lf側から高速前進Hf側に操作すると加速し、方向速度レバー53を高速前進Hf側から低速前進Lf側に操作すると減速し、方向速度レバー53を中立位置に戻すと減速して停止し、走行準備レバー42を離すと急減速して停止する。
【0101】
次に、除雪機10が定速走行中であるか否かを判断する(ステップS203)。一定速度で走行中の場合には、直進走行中であると判断してステップS204に進む。一方、加速走行中又は減速走行中の場合には、加減速走行中であると判断してステップS205に進む。
【0102】
ステップS204では、ハイト方向の加速度αhの値の変化の追従性が大きくなるように、フィルタリングする。一方、ステップS205では、ハイト方向の加速度αhの値の変化の追従性が小さくなるように、フィルタリングする。具体的には、ステップS204〜S205は、例えば回帰フィルタ機能によってフィルタリングする。
【0103】
一例を挙げると、ステップS204〜S205は、加速度αhの入力値αhiに次の式(2)に基づく演算を実行することよって、出力値αhoを得る。入力値αhiは、ステップS201で読み込まれた最新の加速度αhの入力値である。出力値αhoは、直前のステップS204〜S205を実行したことによって得られた最新の出力値である。ここで、kはフィルタ係数であり、「0<k≦1.0」の範囲に設定される。
(αhi−αho)・k+αho=αho ・・・(2)
【0104】
定速走行中であるステップS204では、フィルタ係数kは大きい値、例えば1.0又は1.0に近い値に設定される。このため、出力値αhoは入力値αhiに合致又は入力値αhiに近似した値となり、入力値αhiの変化に対して早く収束することになる。従って、ハイト方向の加速度αhの値の変化の追従性が大きくなる。この結果、出力値αhoは、走行フレーム12自体の傾きに応答しやすいので、定速走行時に最適である。
【0105】
一方、加減速走行中であるステップS205では、フィルタ係数kはステップS204の場合よりも小さい値に設定される。従って、ハイト方向の加速度αhの値の変化の追従性が小さくなり、入力値αhiの変化に対して緩慢に収束することになる。この結果、出力値αhoは、入力値αhiのピーク値の影響を受けることなく、誤作動を防止することができるので、加減速走行時における信号処理に最適である。
【0106】
ステップS204又はステップS205の処理が完了した後には、加速度αhの出力値αhoから、走行フレーム12自体の前後方向(オーガハウジング25のハイト方向に相当)の傾き角θhを求める(ステップS206)。加速度αhの出力値αhoに基づいてハイト方向の傾き角θh(以下、ハイト傾き角θhという。)を求める方法としては、例えば一般的な演算式またはマップによって求めればよい。マップを採用した場合には、加速度αhに対するハイト傾き角θhの関係を予め設定して、メモリ63に記憶しておく。
【0107】
次に、ハイト傾き角θhの値を初期設定値θhsによって補正する(ステップS207)。この初期設定値θhsは、生産工場から出荷する前に各除雪機10毎に補正された(零点補正された)基準値となる零点であり、メモリ63に記憶される。この零点補正は、例えば、予め設定された水平な平坦面に除雪機10を載せた状態で施される。除雪機10に組み付けられたフレーム傾斜角検出部64の組み付け誤差を補正することができる。
【0108】
次に、走行フレーム12に対するオーガハウジング25のハイト方向の相対的な傾き角βhを読み込む(ステップS208)。このハイト方向の相対的な傾き角βh(以下、ハイト相対傾き角βhという。)については、ハイト位置センサ87によって検出された検出値を読み込めばよい。
【0109】
次に、ハイト相対傾き角βhの値を初期設定値βhsによって補正する(ステップS209)。この初期設定値βhsは、生産工場から出荷する前に各除雪機10毎に補正された(零点補正された)基準値となる零点であり、メモリ63に記憶される。この零点補正は、例えば、予め設定された水平な平坦面に除雪機10を載せた状態で施される。除雪機10に組み付けられたハイト位置センサ87の組み付け誤差を補正することができる。
【0110】
次に、ステップS207において補正されたハイト傾き角θhと、ステップS209において補正されたハイト相対傾き角βhとに基づいて、接地面Grに対するオーガハウジング25の実際のハイト傾き角βhr、つまりローリング方向の全傾き角βhrを求めた後に(ステップS210)、ロール傾き角検出フローの制御を終了する。具体的には、全傾き角βhrを演算式「βhr=θh+βh」によって求める。
【0111】
次に、ローリング制御処理を実行するための具体的な制御フローについて説明する。図11及び図12は、制御部61が上記図8に示されるステップS12の「ローリング制御」を実行するためのサブルーチンである。
【0112】
制御部61は、先ずステップS301において、図5に示されるハウジング姿勢操作部100の4つのスイッチ91〜94の各スイッチ信号を読み込む。この各スイッチ信号によってオーガハウジング姿勢操作レバー55(以下、姿勢操作レバー55という。)の操作方向が判る。
【0113】
次に、姿勢操作レバー55の操作方向が左、右、中立のどれであるかを判定する(ステップS302)。ここで、姿勢操作レバー55の操作方向が左側Lesであると判定した場合には、ステップS303に進み、ローリング駆動機構65によってオーガハウジング25及びブロアケース26を左Leに傾動させる(左ローリング駆動する)。
【0114】
ステップS302において、姿勢操作レバー55の操作方向が右側Risであると判定した場合には、ステップS304に進む。このステップS304では、ローリング駆動機構65によってオーガハウジング25及びブロアケース26を右Riに傾動させる(右ローリング駆動する)。
【0115】
ステップS303又はステップS304の処理が完了した後には、現時点における、実際のロール傾き角βrr(ローリング方向の全傾き角βrr)の値を、目標ロール角βrs(目標ロール傾き角βrs)と設定した後に(ステップS305)、このサブルーチンを終了し、上記図8のステップS13に進む。現時点における、実際のロール傾き角βrrは、上記図9のステップS110によって得られた値である。
【0116】
一方、ステップS302において、姿勢操作レバー55の操作方向が中立であると判定した場合には、ステップS306に進む。このステップS306では、リセットスイッチ54のスイッチ信号を読み込む。
【0117】
次に、リセットスイッチ54がオンであるか否かを判定する(ステップS307)。ここで、オン(on)であると判定した場合には、予め初期設定されているロール傾き角βrf(初期設定ロール傾き角βrf)の値を、目標ロール角βrsと設定した後に(ステップS308)、このサブルーチンを終了し、上記図8に示されるステップS13に進む。上述のように、リセットスイッチ54がオンになると、ローリング駆動機構65はオーガハウジング25及びブロアケース26の姿勢を、図5に示される左右方向に水平な位置βrfに戻すことになる。
【0118】
上記ステップS307において、リセットスイッチ54がオフ(off)であると判定した場合には、図12に示されるステップS309に進む。ステップS309では、方向速度レバー53の操作方向信号を読み込む。この信号は方向速度レバー53のポジションにより定まる。つまり、方向速度レバー53のポテンショメータ53aから制御部61に発した信号を読み込む。
【0119】
次に、ポテンショメータ53aに基づいて方向速度レバー53の操作方向を判定する(ステップS310)。「中立位置」なら停止制御であると判定して、このサブルーチンを終了し、上記図8に示されるステップS13に進む。「後退位置」なら後退走行制御であると判定して、このサブルーチンを終了し、上記図8に示されるステップS13に進む。「前進位置」なら前進走行制御であると判断してステップS311に進む。
【0120】
ステップS311では、オーガスイッチ45のスイッチ信号を読み込む。次に、オーガスイッチ45がオンであるか否かを判定する(ステップS312)。ここで、オフ(off)であると判定した場合には、このサブルーチンを終了し、上記図8に示されるステップS13に進む。一方、上記ステップS312において、オン(on)であると判定した場合には、オーガ31及びブロア32が駆動して除雪作業を実行するとともに、ステップS313に進む。
【0121】
ステップS313では、現時点における実際のロール傾き角βrr(ローリング方向の全傾き角βrr)を、目標ロール角βrsと比較する。ここで、実際のロール傾き角βrrが目標ロール角βrsよりも右下がりに傾いていると判定した場合には、ステップS314に進む。また、実際のロール傾き角βrrが目標ロール角βrsよりも左下がりに傾いていると判定した場合には、ステップS315に進む。
【0122】
ステップS314では、左ローリング用リレー97をオン作動させることにより、電動モータ65aに電力を供給して正転させた後に、このサブルーチンを終了し、上記図8に示されるステップS13に進む。これにより、ローリング駆動機構65はオーガハウジング25及びブロアケース26を左Leに傾動(ローリング)駆動する。この左Leへのローリング駆動は、ステップS313において、実際のロール傾き角βrrが目標ロール角βrsに合致したと判定するまで続く。
【0123】
ステップS315では、右ローリング用リレー98をオン作動させることにより、電動モータ65aに電力を供給して逆転させた後に、このサブルーチンを終了し、上記図8に示されるステップS13に進む。これにより、ローリング駆動機構65はオーガハウジング25及びブロアケース26を右Riに傾動(ローリング)駆動する。この右Riへのローリング駆動は、ステップS313において、実際のロール傾き角βrrが目標ロール角βrsに合致したと判定するまで続く。
【0124】
ステップS313において、実際のロール傾き角βrrが目標ロール角βrsに合致したと判定した場合には、次に、左右のローリング用リレー97,98の両方をオフさせることにより、電動モータ65aを停止させた後に(ステップS316)、そのままこのサブルーチンを終了し、上記図8に示されるステップS13に進む。
【0125】
次に、ハイト制御処理を実行するための具体的な制御フローについて説明する。図13及び図14は、制御部61が上記図8に示されるステップS13の「ハイト制御」を実行するためのサブルーチンである。
【0126】
制御部61は、先ずステップS401において、図5に示されるハウジング姿勢操作部100の4つのスイッチ91〜94の各スイッチ信号を読み込む。この各スイッチ信号によって姿勢操作レバー55の操作方向が判る。
【0127】
次に、姿勢操作レバー55の操作方向が上、下、中立のどれであるかを判定する(ステップS402)。ここで、姿勢操作レバー55の操作方向が上側Frsであると判定した場合には、ステップS403に進み、昇降駆動機構16によってオーガハウジング25及びブロアケース26を上Upに傾動させる(上ハイト駆動する)。
【0128】
ステップS402において、姿勢操作レバー55の操作方向が下側Rrsであると判定した場合には、ステップS404に進む。このステップS404では、昇降駆動機構16によってオーガハウジング25及びブロアケース26を下Dwに傾動させる(下ハイト駆動する)。
【0129】
ステップS403又はステップS404の処理が完了した後には、現時点における実際のハイト傾き角βhrの値を、目標ハイト傾き角βhsと設定した後に(ステップS405)、このサブルーチンを終了し、上記図8にステップS14に進む。現時点における、実際のハイト傾き角βhrは、上記図10のステップS210によって得られた値である。
【0130】
一方、ステップS402において、姿勢操作レバー55の操作方向が中立であると判定した場合には、ステップS406に進む。このステップS406では、リセットスイッチ54のスイッチ信号を読み込む。
【0131】
次に、リセットスイッチ54がオンであるか否かを判定する(ステップS407)。ここで、オン(on)であると判定した場合には、予め初期設定されているハイト傾き角βhfの値を、目標ハイト傾き角βhsと設定した後に(ステップS408)、このサブルーチンを終了し、上記図8に示されるステップS14に進む。上述のように、リセットスイッチ54がオンになると、昇降駆動機構16はオーガハウジング25及びブロアケース26の姿勢を図5に示される上下方向の基準高さ位置βhfに戻すことになる。
【0132】
従って、リセットスイッチ54をオンにすれば、雪山の雪が比較的固い場合には、オーガハウジング25を水平に維持することによって、水平段切り作業を行う場合に便利である。
【0133】
上記ステップS407において、リセットスイッチ54がオフ(off)であると判定した場合には、図14に示されるステップS409に進む。ステップS409では、方向速度レバー53の操作方向信号を読み込む。この信号は方向速度レバー53のポジションにより定まる。つまり、方向速度レバー53のポテンショメータ53aから制御部61に発した信号を読み込む。
【0134】
次に、ポテンショメータ53aに基づいて方向速度レバー53の操作方向を判定する(ステップS410)。ここで「中立位置」なら、停止制御であると判定して、このサブルーチンを終了し、上記図8に示されるステップS14に進む。
【0135】
また、ステップS410で「後退位置」なら、後退走行制御であると判定して、次に現時点における実際のハイト傾き角βhrが後退時ハイト下限値βhuよりも小さいか否かを判定する(ステップS411)。後退時ハイト下限値βhu(ハイト傾き角の下限値)は、除雪機10の後退走行時にオーガハウジング25の下端が接地面Grを引き摺ることのない、予め設定された一定の値に設定されている。
【0136】
ここで、βhrがβhuよりも小さいと判定した場合には、上昇用リレー96をオン作動させることにより、電動モータ16aに電力を供給して逆転させた後に(ステップS412)、このサブルーチンを終了し、上記図8に示されるステップS14に進む。これにより、昇降駆動機構16はオーガハウジング25及びブロアケース26を上昇させる。この上方Upへの駆動は、ステップS411において、実際のハイト傾き角βhrが後退時ハイト下限値βhuまで上昇したと判定するまで続く。
【0137】
ステップS411において、現時点における実際のハイト傾き角βhrが後退時ハイト下限値βhuまで上昇したと判定した場合には、次に、上昇用リレー96をオフさせることにより、電動モータ16aを停止させた後に(ステップS413)、そのままこのサブルーチンを終了し、上記図8に示されるステップS14に進む。
【0138】
また、ステップS410で「前進位置」なら前進走行制御であると判断して、ステップS414に進む。
【0139】
ステップS414では、オーガスイッチ45のスイッチ信号を読み込む。次に、オーガスイッチ45がオンであるか否かを判定する(ステップS415)。ここで、オフ(off)であると判定した場合には、このサブルーチンを終了し、上記図8に示されるステップS14に進む。一方、上記ステップS415において、オン(on)であると判定した場合には、オーガ31及びブロア32が駆動して除雪作業を実行するとともに、ステップS416に進む。
【0140】
ステップS416では、現時点における実際のハイト傾き角βhr(昇降方向の全傾き角βhr)を、目標ハイト傾き角βhsと比較する。ここで、実際のハイト傾き角βhrが目標ハイト傾き角βhsよりも下がっていると判定した場合には、ステップS417に進む。また、実際のハイト傾き角βhrが目標ハイト傾き角βhsよりも上がっていると判定した場合には、ステップS418に進む。
【0141】
ステップS417では、上昇用リレー96をオン作動させることにより、電動モータ16aに電力を供給して逆転させた後に、このサブルーチンを終了し、上記図8に示されるステップS14に進む。これにより、昇降駆動機構16はオーガハウジング25及びブロアケース26を上昇させる。この上方Upへの駆動は、ステップS416において、実際のハイト傾き角βhrが目標ハイト傾き角βhsに合致したと判定するまで続く。
【0142】
ステップS418では、下降用リレー95をオン作動させることにより、電動モータ16aに電力を供給して正転させた後に、このサブルーチンを終了し、上記図8に示されるステップS14に進む。これにより、昇降駆動機構16はオーガハウジング25及びブロアケース26を下降させる。この下方Dwへの駆動は、ステップS416において、実際のハイト傾き角βhrが目標ハイト傾き角βhsに合致したと判定するまで続く。
【0143】
ステップS416において、実際のハイト傾き角βhrが目標ハイト傾き角βhsに合致したと判定した場合には、次に、下降用リレー95及び上昇用リレー96の両方をオフさせることにより、電動モータ16aを停止させた後に(ステップS419)、そのままこのサブルーチンを終了し、上記図8に示されるステップS14に進む。
【0144】
以上の説明から明らかなように、実施例では、フレーム傾斜角検出部64は、加速度センサによって構成されており、加速度αr,αhを検出することにより、「走行装置11L,11Rが接地している接地面Grに対する走行フレーム12自体の傾き角θr,θh」を、ステップS106,S206で間接的に求めている。しかし、上記加速度センサは、傾き角θr,θhを得るための基本的な検出情報(加速度αr,αh)を検出する検出部であるから、フレーム傾斜角検出部64の一種であるとする。なお、フレーム傾斜角検出部64は、加速度センサの構成に限定されるものではなく、接地面Grに対する走行フレーム12自体の傾き角θr,θhを直接に検出するものを含む。
【0145】
図9に示されるステップS101〜S110と、図10に示されるステップS201〜S210とからなる、ステップの集合は、接地面Grに対するオーガハウジング25の全傾き角βrr,βhrを判断する「全傾き角判断部131」を構成している。
【0146】
図9に示されるステップS104〜S105と、図10に示される及びステップS204〜S205は、フィルタ132を構成している。このように、全傾き角判断部131は、除雪機10が加速走行中、減速走行中又は旋回中であると判断した場合には、フレーム傾斜角検出部64によって検出された傾き角(加速度αr,αhを含む)の値を、緩慢に変化させるフィルタ機能を有している。
【0147】
図5に示されるメモリ63は、ハウジング姿勢操作部100の操作終了時点における、全傾き角βrr,βhrを記憶する傾き記憶部を構成している。
【0148】
図12に示されるステップS313〜S316と、図14に示されるステップS416〜S419とからなる、ステップの集合は、ハウジング姿勢操作部100の操作終了時点の後に、傾き記憶部63に記憶されている全傾き角βrr,βhrを維持させるように、昇降駆動機構16及びローリング駆動機構65を制御する「ハウジング姿勢制御部133」を構成している。
【0149】
つまり、ハウジング姿勢制御部133は、オーガ31が回転中であるという第1条件と、除雪機10が前進走行中であるという第2条件との、両方を満足していると判断した場合にのみ、全傾き角βrr,βhrを維持させる制御を実行する。ここで、ステップS312,S415でオーガスイッチ45がオンであれば、オーガ31が回転中であるという第1条件を満足する。また、ステップS310,S410で方向速度レバー53の操作方向が前進位置であれば、除雪機10が前進走行中であるという第2条件を満足する。
【0150】
このように、除雪作業中には、ハウジング姿勢制御部133はメモリ63に記憶されている全傾き角βrr,βhrを維持するように制御する。一方、除雪機10を後退させるときには、オーガハウジング25の下端が低すぎると、下端が接地面Grを引き摺ったり、接地面Grの凹凸に引っ掛かることによるスタックが発生し得る。これに対し、除雪機10の後退走行時には、ハウジング姿勢制御部133は、オーガハウジング25を後退時ハイト下限値βhuまで自動的に上昇させる。その後、再び除雪作業を行うときには、ハウジング姿勢制御部133はメモリ63に記憶されている全傾き角βrr,βhrを維持するように制御する。このため、除雪作業と後退とを繰り返すたびに、作業者がオーガハウジング25を昇降操作する必要はない。作業者による操作を大幅に軽減することができるので、作業性が高まる。
【0151】
また、除雪作業中に、現在のオーガハウジング25の傾き角が判らなくなった場合には、リセットスイッチ54をオン操作すればよい。リセットスイッチ54をオンにすることにより、オーガハウジング25の姿勢は、予め設定されている原点に戻る。つまり、オーガハウジング25は絶対水平状態に且つ所定の高さ状態に自動的に戻るので、作業者が原点に操作する面倒がない。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明の除雪機10は、少なくともオーガをエンジンによって駆動するオーガ式除雪機に好適である。
【符号の説明】
【0153】
10…除雪機、11L,11R…走行装置、12…走行フレーム、15…オーガハウジングと共にローリング運動をすることのない他の部位(車体フレーム)、16…昇降駆動機構、25…オーガハウジング、31…オーガ、63…傾き記憶部(メモリ)、64…フレーム傾斜角検出部、65…ローリング駆動機構、87,88…ハウジング傾斜角検出部、100…ハウジング姿勢操作部、131…全傾き角判断部、132…フィルタ、133…ハウジング姿勢制御部、Gr…接地面、θr,θh…接地面に対する走行フレーム自体の傾き角、βr,βh…走行フレームに対するオーガハウジングの相対的な傾き角、βrr,βhr…接地面に対するオーガハウジングの全傾き角。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14