【実施例】
【0022】
図1および2の各図に、測定機器システム1のそれぞれ異なる実施例を示す。これらの各図は、電気回路図を正確に示すためのものではなく、むしろ、複数の異なる構成要素間の協働関係が見て分かるようにするためのものである。
図3〜5に大幅に概略的に示された、
図1の測定機器システム1の可能な実施形態の構成要素は、基本的な幾つかの細部を示している。測定機器の一例であるMIDの各部分を検査するための2つの回路の一部を、
図6,7に概略的に示す。
図8には、本発明の検査システムを用いて、
図1に示された基本的構成を有する測定機器システムを検査するための、本発明の一実施例の方法の流れを示している。同図では各ステップの基本的な流れを示しており、各ステップを異なって組み合わせてグループにまとめたり、各ステップの順序を変更することも可能である。このような変更も本発明の範囲内である。
【0023】
図1は、本発明の測定機器システム1のブロック回路図である。測定機器2はここでは、制御要素4を介してタップ場所3に接続されており、該測定機器2はセンサ素子5本体を有する。このセンサ素子5は、ここでは一例として流量測定機器である。センサ素子5は、測定量(ここでは一例として、媒体の流量)に依存する原信号を生成し、測定機器2において、この原信号から本来の測定信号が生成される。
図1には、検査機器6を概略的にのみ示しており、検査時には、テスト信号が測定機器2の信号出力端8において出力信号として出力されるように、前記検査機器6が制御入力端7を介して該測定機器2に作用する。その際にはたとえば、前記テスト信号を検査機器6によって設定するか、または前記テスト信号を、該検査機器6が測定機器2の複数の異なる構成要素または機能ブロックに実際に及ぼす影響によって得られる信号とすることができる。一実施形態では、前記検査機器6によって、測定量の予め設定可能な値をシミュレートし、前記テスト信号を、測定機器2において行われる該測定量の値の処理によって得られる、該測定量の予め設定された値に対応する信号とする。その際に有利なのは、測定量のシミュレートされる値と実際の値とが異なることである。検査機器6が測定機器2に及ぼす作用の種類に応じて、該測定機器2の複数の異なる構成要素または機能をテストすることができる。テスト信号として生成される、測定機器2の出力信号は、ここでは信号出力端8から取り出すことができ、タップ場所3において、予め設定可能なタップ信号が生じるように、制御要素4を介して前記測定機器2の出力信号に影響を与えることができる。図中の実施形態では、検査機器6が作用を及ぼすことにより、上述のように制御要素4を介して測定機器2の出力信号に影響を与えることができる。
図1の実施形態では前記検査機器6は1つの部品として示されているが、この検査機器6は、それぞれ個別の機能を有する複数の個別部品から成る複合構成体とすることもできる。総じて前記検査機器6は、測定機器2と、該測定機器2の信号出力端8より下流の信号伝送経路とに作用する。
【0024】
図2の測定機器システム1の実施形態と
図1の実施形態との相違点は、制御要素4の位置ないしは測定機器2の構成である。
図2の実施形態では、前記制御要素4は測定機器2の一構成要素である。よって
図2の実施形態では、制御出力端8とタップ場所3とが一致する。
図2に示された実施形態では、検査機器6の作用を2倍にするため、検査機器6は相応に制御要素4にも作用することにより、予め設定されたタップ信号を生成するように構成されている。このことはたとえば制御入力端7を介して行われるか、または、‐同図にて示された実施例と同様‐測定機器2の別個の信号入力端ないしは制御入力端を介して行われる。この別個の信号入力端ないしは制御入力端には、測定機器2のコネクタ13によってアクセスすることができる。コネクタ13により、とりわけ、測定動作に必要な本来のコンタクトを遮断することなく、検査を行うことができる。したがって、このように制御要素4を組み付け、コネクタ13を介して接続することにより、検査を行うことができ、本発明の検査の各ステップを実施する際には、測定に影響を及ぼすことなく、測定を中断することなく検査を開始および終了させることができるよう、また、検査中であっても、測定機器2周辺の機器またはユニット等の動作を阻害しないように、検査を実現することができる。概観しやすくするため、
図2において、
図1の構成要素と同じ構成要素には同一の符号を付している。
図1および
図2の各実施形態では、検査システムは検査機器6と制御要素4とによって構成され、これら両構成要素が協働することにより、本発明の方法を実現することができる。
【0025】
図3に、測定機器2の一部と、該測定機器2に接続された構成要素の一部とを概略的に示す。ここでは一例として、測定機器2は、出力信号を出力するための信号出力端8において2線式導線に接続されている。前記出力信号として、とりわけ0〜20mA信号が生成される。ここではこの出力信号の生成は、内部の電圧源すなわち測定機器2に所属する電圧源に接続された制御可能な抵抗R
Vを介して行われる。
【0026】
測定機器2の検査時には、テスト信号によって、信号出力端8における電流の値が得られる。この信号出力端8における電流値は、とりわけ、測定量の測定される値に対応する電流値と異なる。前記信号出力端8には制御要素4が後置されている。図中の実施例ではこの制御要素4は、測定機器2の外部に設けられる電気抵抗素子である。検査時には、前記検査機器6が、抵抗として形成された制御要素4において降下する電圧U
Pを介して検査電流I
Pを制御する。この検査電流I
Pは、測定機器2の信号出力端8にて出力される電流に加算される。電圧U
Pの調整と、該電圧U
Pによって生じる検査電流I
Pとにより、タップ場所3において、測定量の測定される値に対応する電流のような電流が生じるように、信号出力端8における電流を補正することができる。このことにより、測定システムより下流のユニットのためにも、テスト信号の作用が相殺され、検査によって測定動作が中断することがなくなる。その際には、タップ信号として取り出される電流は、たとえば負荷抵抗9を介して求めることができる。この負荷抵抗9は図中では、タップ場所3に後置されている。その際には、前記タップ信号をどのように評価するかは、従来技術の種々の実施形態に応じて選択することができ、とりわけ、信号出力端8の形式ないしは測定機器2の出力信号の形式に応じて選択することができる。
【0027】
検査機器6はテスト信号に影響を及ぼすので、検査機器6の構成ないしは検査システムの構成により(たとえば、ホイートストン測定ブリッジとしての構成が考えられる)、テスト信号の補償の程度から、測定機器2に生じる可能性のあるエラー等を推定することができる。
【0028】
この実施形態では全体的に、前記制御要素4は、測定機器2の信号出力端8とタップ場所3との間に入れるだけである。しかし有利なのは、検査時には検査機器のコンタクトのみを行えばよくなるように、制御要素4を永久的かつ固定的に取り付けることである。それゆえ、検査を行うために、後で再び閉成しなければならない接続部を解除する必要はなく、基本的には、測定機器2と制御要素4とをコンタクトさせるだけでよい。
【0029】
図4の回路が
図3の回路と相違する点は、
図4の実施形態の測定機器2に専用の電圧源が設けられていないため、たとえば、信号出力端8を測定機器2の電流供給にも使用できることである。
図4の実施形態の信号出力端は、
図3の実施形態の能動的な出力端と異なって受動素子であり、
図4の信号出力端では、プロセスコントロールステーション側で別の形式の信号評価を行う必要がある。図中の実施形態では、このプロセスコントロールステーションに電圧源が設けられており、この電圧源はこの実施例では、24Vで一定にされている。ここで、負荷抵抗9を介して測定される電圧(ここでは、2つのタップと、負荷抵抗9に平行な矢印とによって示されている)は、測定機器2の出力信号を表す尺度となり、これにより、‐検査機器6によって行われる、出力信号の本発明の補償に起因して‐測定信号を表す尺度にもなる。
【0030】
図5の実施形態には一例として、オープンコレクタ動作のためのパッシブなバイナリ出力端を有する測定機器2を示す。ここでは、出力信号の大きさは一例として、1Hz〜10kHzの周波数において0mA〜150mAとなっている。このような出力信号により、‐
図4の実施形態と同様‐プロセスコントロールステーションの評価を行う側において、たとえば24Vの電圧を生成する、図中に示された電圧源が必要になる。
図5では、アースに接続された、前記タップ場所3の下方のコンタクトと、負荷抵抗9より上流の、上方のタップとの間にあるタップ(出力)を示しており、このタップから得られる電圧値(これも矢印によって示されている)から、制御要素4ないしは検査機器6によって補正された、測定機器2の出力信号が、タップ信号として得られる。ここでは、検査機器6と測定機器2とを接続するために、コネクタ13が測定機器2の一部として設けられており、このコネクタ13を介して、検査機器6が制御要素4に作用する。ここでも、前記制御要素4は測定機器2の固定的な一部となっている。
【0031】
図6および7に、前記測定機器2の一例である電磁誘導流量測定機器(MID)の細部を概略的に示す。MIDでは、磁界中にて運動する電荷の分離を利用する測定方式が実現される。この測定技術の基本となるのは、非磁性材料から成る測定管である。この測定管はたとえば非磁性金属から成り、該測定管の流れ側は絶縁性の被覆部によって被測定流体から電気的に絶縁されており、該測定管には、流れ方向に対して垂直方向に、磁気回路装置のコイルによって生成される磁界が通る。微小の導電率を有する被測定流体を測定管中に流すと、この導電性の被測定流体中に存在するキャリアが磁界によって偏向する。電荷の分離により、磁界と流れ方向とに垂直に配置された測定電極に電圧が発生し、この電圧は測定機器によって検出され、測定電圧として評価される。測定される電圧は、被測定流体とともに移動するキャリアの流れ速度に比例するので、この流れ速度から、測定管内の流量を推定することができる。
【0032】
前記測定機器2としてのMIDの検査に関して、
図6に、コイルを介して磁界を生成する電流を検査する実施形態を示しており、また
図7に、電極から取り出される電圧の処理を監視するための実施形態を示している。これら2つの図に示された実施形態により、測定機器2に介入し、この介入によって該測定機器2の個々の構成要素をテストすることができる。
【0033】
図6にMIDの一部を示す。このMIDは、磁界を生成するための第1のコイル10と第2のコイル11とを有し、さらに、両コイル10,11間に中間タップ12を有する。ここでは、両コイル10,11はそれぞれ複素抵抗R
S1,R
S2を有する。同図には3つの信号入力端E7,E8およびE9が示されており、E7とE9との間すなわち中間タップ12に電流I
7が流れ、E9とE8との間に電流I
8が流れる。電流I
7およびI
8は、測定機器の検査中に適切に調整することができる。さらに、入力端E7と第1のコイル10との間に検査抵抗R
P7が設けられており、入力端E8と第2のコイル11との間に抵抗R
P8が設けられている。さらにコネクタ13が概略的に示されており、このコネクタ13を介して、対応する電圧を取り出すことができる。ここでは原則、抵抗R
P7,R
P8,R
S1およびR
S2と、電流I
7およびI
8と、測定される電圧U
P7,U
P8,U
7およびU
8との間に以下の関係が成り立つ:
I
7=U
P7/R
P7
I
8=U
P8/R
P8
R
S1=U
7/I
7
R
S2=U
8/I
8
【0034】
回路の一部を概略的に示す
図7の実施形態でも、3つの入力端E1,E2,E3と3つの信号出力端A1,A2,A3とが設けられており、入力端E1,E2,E3はセンサ本体の方向に、ないしは、ここでは特に、信号を取り出すための電極の方向に設けられている。この信号を取り出すための電極は、同図には示されていない。E1とA1との間に検査抵抗R
P1が設けられており、さらに、該検査抵抗R
P1より上流にバッファB1が設けられている。E2とA2との間に第2の検査抵抗R
P2と第2のバッファB2とが設けられている。さらに、検査機器を接続するためのコネクタ13を示している。E2とA2との間の接続部と、E3とA3との間の接続部との間において、検査電圧U
P2を取り出すことができる。E1とA1との間の接続部と、E3とA3との間の接続部との間において、検査電圧U
P3を取り出すことができる。MIDの検査期間の間、両検査電圧U
P2,U
P3は、電極電圧の制御によって、すなわち、E1,E2およびE3から取り出すことができる電圧によって設定することができ、このような設定により、電極に後置された電子回路‐または‐ここでは出力端A1,A2およびA3に後置された‐評価構成要素‐を検査することができる。
【0035】
バッファB1,B2により、センサ内部の‐図中に示されていない‐電極の妨害が阻止され、抵抗R
P1およびR
P2は基本的に、バッファB1,B2の保護を行うためだけに機能する。
【0036】
図8に、本発明の一実施形態の方法のフローチャートを概略的に示す。この方法は、
図1に一例として示されたような測定機器システムに適用するためのものである。第1のステップ101において、測定機器は測定量の実際値を求め、これにより測定信号を生成する。ここで示された、測定機器を検査する各ステップの実施中、ステップ102において、検査機器は測定機器に介入し、この介入により、テスト信号が出力信号として生成されるようにする。その際に特に有利なのは、テスト信号が測定信号と異なることである。このテスト信号はたとえば、被測定媒体の流量が実際に通常領域内にあるときの、センサ素子に流れる最大流量に相当する。ステップ103において、測定機器は信号出力端において、前記テスト信号を出力信号として出力する。次のステップ104において、前記検査機器は制御要素を介して、測定機器の信号出力端より下流の信号伝送経路に作用し、この作用により、タップ場所にて取り出すことができるタップ信号が設定可能なタップ信号となるようにする。このタップ信号はとりわけ、テスト信号ないしは該テスト信号の時間特性と異なる信号である。一実施形態では、前記タップ信号が実質的に測定信号と等しくなるように、前記テスト信号を補正する。この場合には、測定機器の検査中でも、正しい測定信号を取り出すことができる。一実施形態ではこうするために、検査機器が測定信号を記憶し、出力信号が測定信号に相当するようになるまでの間、検査機器は制御要素を介して出力信号を補正する。
【0037】
別の実施形態では、とりわけ検査期間に相当する時間にわたって、前記タップ信号は実質的に、一定の値に等しくされる。一実施形態では、測定機器を検査するための、テスト信号として生成された出力信号の評価は有利には、検査機器によっても行われる。場合によっては、測定信号、ないしは、設定された一定の値がタップ信号として発生するまで、出力信号をどの程度補償すべきであるかを、検査機器が評価する。一実施形態では、ステップ104の後に検査を終了し、その結果をたとえば上位のユニットへ伝送する。その代わりに択一的に、場合によっては別のテスト信号を生成するために、前記の一連の流れを再び実施する。