特許第6042220号(P6042220)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6042220測定機器システムの検査、対応する測定機器システム、および、検査システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042220
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】測定機器システムの検査、対応する測定機器システム、および、検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01D 18/00 20060101AFI20161206BHJP
   G01F 1/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   G01D18/00
   G01F1/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-19799(P2013-19799)
(22)【出願日】2013年2月4日
(65)【公開番号】特開2013-160767(P2013-160767A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2015年5月13日
(31)【優先権主張番号】10 2012 002 013.9
(32)【優先日】2012年2月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009494
【氏名又は名称】クローネ メステヒニーク ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Krohne Messtechnik GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート ブロックハウス
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−300534(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0067506(US,A1)
【文献】 特表2002−526761(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/031376(WO,A1)
【文献】 独国特許出願公開第10231180(DE,A1)
【文献】 独国特許出願公開第10131760(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 18/00
G01F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの測定機器(2)を含む測定機器システム(1)の検査機器(6)を用いた検査方法であって、
前記測定機器(2)は、少なくとも1つの測定量の決定に基づき、取り出し位置(3)からタップ信号として取り出し得る少なくとも1つの出力信号を生成し、
前記検査機器(6)は、前記測定機器(2)が前記出力信号としてテスト信号を生成するように、該測定機器(2)に作用し、
制御要素(4)を介して、前記タップ信号が、予め設定された調整信号となるように、前記出力信号および/または該出力信号に依存する信号に影響を与える、検査方法において、
前記制御要素(4)は、電気抵抗特性を基本的な特徴とする部品であり、
前記測定機器(2)は、前記出力信号および/または該出力信号に依存する信号に影響を及ぼすため、前記制御要素(4)に印加される電圧を変化させる、
ことを特徴とする、測定機器システム(1)の検査方法。
【請求項2】
前記検査機器(6)が前記測定機器(2)に作用する前および/または作用している間、前記測定量の実際の値を求め、測定信号を生成する、
請求項1記載の測定機器システム(1)の検査方法。
【請求項3】
前記タップ信号が前記測定信号にしくなるように、前記出力信号および/または該出力信号に依存する信号に影響を与える、
請求項2記載の測定機器システム(1)の検査方法。
【請求項4】
予め設定された検査期間中、前記タップ信号が、予め設定された一定の値にしくなるように前記出力信号および/または該出力信号に依存する信号に影響を与える、
請求項1または2記載の測定機器システム(1)の検査方法。
【請求項5】
少なくとも1つの測定機器(2)と、少なくとも1つの取り出し位置(3)とを有する測定機器システム(1)であって、
前記測定機器(2)は、少なくとも1つの測定量の決定に基づき、前記取り出し位置(3)からタップ信号として取り出し得る少なくとも1つの出力信号を生成し、
少なくとも1つの制御要素(4)が設けられており、
前記制御要素(4)が、前記出力信号および/または該出力信号に依存する信号に影響を及ぼすことにより、前記取り出し位置(3)から取り出し得るタップ信号は前記制御要素(4)に依存する、測定機器システム(1)において、
前記制御要素(4)は、電気抵抗特性を基本的な特徴とする部品である、
ことを特徴とする、測定機器システム(1)。
【請求項6】
前記制御要素(4)は前記測定機器(2)の一部であり、
前記測定機器(2)は、検査機器(6)を接続するための少なくとも1つのコネクタ(13)を有する、
請求項記載の測定機器システム(1)。
【請求項7】
前記測定機器(2)は、前記出力信号を出力するための信号出力端(8)を有し、
前記制御要素(4)は別体の部品として、前記信号出力端(8)に後置されている、
請求項記載の測定機器システム(1)。
【請求項8】
測定機器システム(1)を検査するための検査システムであって、
取り出し位置(3)からタップ信号として取り出し得る出力信号を少なくとも1つの測定量の決定に基づいて生成する測定機器(1)を検査するための少なくとも1つの検査機器(6)と、該出力信号および/または該出力信号に依存する信号に影響を与える少なくとも1つの制御要素(4)とが設けられており、
前記制御要素(4)を介した前記検査機器(6)の調整により、前記タップ信号が、予め設定された調整信号になるように、該検査機器(6)と該制御要素(4)とが構成されており、かつ相互に適合されている、検査システムにおいて、
前記制御要素(4)は、電気抵抗特性を基本的な特徴とする部品である、
ことを特徴とする、検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの測定機器を含む測定機器システムの検査方法に関する。前記測定機器は、少なくとも1つの測定量の決定に基づき、タップ(出力)場所からタップ(出力)信号として取り出され得る少なくとも1つの出力信号を生成する。本発明はさらに、少なくとも1つの測定機器とタップ場所とを含む測定機器システムにも関する。本発明はさらに、測定機器システムを検査するための検査システムにも関する。
【背景技術】
【0002】
最新のプロセスオートメーションでは、プロセスの開ループ制御または閉ループ制御の確実性と、このプロセスの制御に使用されるフィールド機器(たとえば、測定量ないしはプロセス量を求めるためのセンサおよび/または監視するためのセンサ、または、プロセスの開ループ制御または閉ループ制御のためのアクチュエータ)の信頼性の重要性が高くなり、ますます大きくなってきている。とりわけ、セーフティが重要視される用途では、測定機器または指示装置が正確な出力信号を生成し、すなわち、監視対象の状態に合った出力信号を生成し、この出力信号が後置のユニットまたは上位のユニットにおいて正確に処理される必要がある。
【0003】
それゆえ、プロセスオートメーションの機器の信頼性ないしは確かさを知ることができるようにするためには、個々の構成要素や設備全体の動作テストや検査を行う。その1つの手段として、フィールド機器によって監視されたとえば制御もされるシステムを複数の種々の状態で動作させ、測定機器によって生成された信号を評価することができる。たとえば、媒体の充填レベルを監視すべきタンクを機能検査する間、該タンクを充填したり空にしたりする。このことは部分的に非常に面倒であり、かつ、監視対象であるシステムの状態が特殊な状態になることを阻止することは常に可能であるとは限らず、ないしは、場合によっては、このように特殊な状態になること阻止する必要さえ出てくる。たとえば、危険物質が入った容器の過充填を絶対に検出ないしは阻止する必要があるときに、このような状態でテスト運転することはできない。それゆえテスト時に有利なのは、たとえば、状態ないしは該状態に関連する測定量の値に相当する信号をフィールド機器に入力することにより、この状態ないしは測定量の値の存在をシミュレートすることである。
【0004】
WO2010/006897A1にフィールド機器の検査方法が記載されている。同刊行物は、測定機器の動作テスト中に生成された出力信号が真の測定値を反映していないという問題を対象としている。それゆえ、測定量の値が固定的かつ既知となる期間中に測定機器のテストを行う。有利にはこのようなテストは、測定機器に後置されたユニットのテストないしは設備全体のテストも行われる時点で行われる。つまり、測定量が変化しないことが既知であるため測定を行う必要がない期間、ないしは、測定信号の実際の評価が上位のユニットのテストに起因して行われないため測定を行う必要がない期間を、テストに使用するということである。このことの欠点は、インライン測定を行えないこと、すなわち、プロセス運転中に測定を行えないことである。というのも、上記のテストを行うために本来の測定が行われないままにされるか、ないしは中断されるからである。
【0005】
US5481200では、2線式カレントループに接続されたフィールド機器の出力を監視する。この監視を行うためには、カレントループにおいて2つの異なる電流を切り替えることによりループ抵抗を求める。このことにより、フィールド機器の不具合、特に信号出力のエラーを検出する。このことの欠点は、異なる電流を切り替えることにより、測定値に対応する電流値を伝送できなくなること、すなわち、本来の測定値を出力することができないままになることである。
【0006】
US2011/0148431A1に、電流変換器を監視する手法、たとえば測定機器の一部である電流変換器を監視する手法が記載されている。この監視を行うためには、電流変換器の入力端にテスト信号を与え、出力信号と目標信号とを比較する。このことの欠点もまた、テスト状態がテスト対象の動作を阻害してしまうことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2010/006897A1
【特許文献2】US5481200
【特許文献3】US2011/0148431A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それゆえ本発明の課題は、測定ないしは測定値伝送を中断することなくインライン検査を行える、測定機器システムの監視方法と、‐対応する測定機器システムと、その他に検査システムと‐を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記で提起した課題を解決する本発明の方法は、まず基本的に、以下のステップを特徴とする:測定機器がテスト信号を出力信号として生成するように該測定機器に作用するステップ。次のステップにおいて、タップ信号が、予め設定された設定信号となるように、前記出力信号および/または該出力信号に依存する信号に影響を与える。本発明の測定機器システムでは、通常時すなわち測定機器の検査が行われないとき、前記測定機器は、測定対象および/または監視対象である測定量の測定に基づいて測定信号を生成し、たとえば信号出力端を介して、該測定信号を前記出力信号として出力する。この出力信号は次にタップ位置から取り出され、タップ信号として、たとえば上位のユニットへ伝送される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態の測定機器システムを示すブロック回路図を用いて、重要な機能的協働関係を示す概略図である。
図2】本発明の第2の実施形態の測定機器システムを示すブロック回路図を用いて、重要な機能的協働関係を示す概略図である。
図3図1の測定機器システムの第1の変形形態の一部を概略的に示す図である。
図4図1の測定機器システムの第2の変形形態の一部を概略的に示す図である。
図5図1の測定機器システムの第3の変形形態の一部を概略的に示す図である。
図6】前記測定機器である、測定機器を検査するための回路を備えた第1の変形形態の電磁誘導流量測定機器(MID)の一部を示す概略図である。
図7】前記測定機器である、測定機器を検査するための回路を備えた第2の変形形態のMIDの一部を示す概略図である。
図8】本発明の方法の各ステップの実施例を示す概略的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
簡単なケースでは、前記測定機器は、該測定機器に接続された2線式線路へ出力信号を出力し、該2線式線路から該出力信号はタップ信号として取り出されるように構成されている。本発明の方法では、検査時には、前記出力信号がテスト信号となるように前記測定機器を駆動制御する。その際にはテスト信号を、予め設定可能な信号とすることができ、たとえば、測定対象である測定量が所定の値になったときの出力信号‐有利には‐測定量の値が最新値でないときの出力信号とすることができる。別の実施形態では、前記テスト信号は、前記測定機器が測定量のシミュレート値自体から生成したかないしは測定量から導出した信号とすることができる。前記第1の実施形態では、たとえば測定機器の検査中、信号をテスト信号として該測定機器の信号出力端に直接与えるのに対し、第2の実施形態では、測定量を設定ないしはシミュレートし、該測定機器はこのシミュレートされた測定量からテスト信号を出力信号として生成する。上述の2つの実施形態の相違点はとりわけ、どの程度の深さまで測定機器を検査するかということ、基本的に信号出力の領域のみを検査するか、または、本来の測定量から出力信号を生成する構成要素も検査するか、ということである。
【0012】
本発明の方法ではさらに、たとえば、タップ場所において調整信号がタップ信号として生じるように、テスト信号ないしは出力信号がとる信号伝送経路に作用する。この調整信号もまた、予め設定可能である。通常動作時にはこのタップ場所において、本来の測定信号から得られるタップ信号を取り出すことができる。しかし本発明の方法では、前記タップ信号が、とりわけテスト信号が取り出される場合とは異なる信号になる、予め設定可能な調整信号となるように、前記出力信号および/または該出力信号に依存する信号に影響を及ぼす。すなわち、測定機器の検査時には、少なくとも1つの場所にて出力信号に対する介入を行い、少なくとも1つの場所にて、出力信号がさらに辿る後続の経路に介入を行うという、少なくとも2つの場所において介入が行われる。とりわけ、出力信号に作用する第2の介入により、測定機器と後置されたユニットまたは上位のユニットとの接続に影響を及ぼし、このことにより、該測定機器が後置または上位のユニットに与える影響を決定することもできる。本発明の方法では、測定機器に作用することによってテスト信号を生成するだけでなく、テスト信号が取り出されるときの状態にも作用する。
【0013】
本発明の方法の有利な実施形態では、測定機器に作用する前および/または作用する間、すなわち、測定機器の検査前および/または検査中に、測定量の実際の値を求め、測定信号を生成する。この実施形態では、測定機器の検査前または検査中にも、測定量を測定して相応の測定信号を生成する。前記実施形態に付随する非常に有利な実施形態では、前記タップ信号が前記測定信号に実質的に等しくなるように、出力信号および/または該出力信号に依存する信号に影響を与える。この実施形態では、タップ信号が測定信号に相当するように、テスト信号である出力信号に影響を与えるか、ないしは、‐たとえば出力信号がさらに変換され、この出力信号が変換したものがタップ場所において取り出すことができる場合‐、該出力信号に依存する信号に影響を与える。テスト信号と本来の測定信号とが相違する場合、本発明の方法のこの実施形態では、本来の測定信号がタップ信号として取り出されるようにテスト信号と測定信号との差の程度を補正し、たとえば、この本来の測定信号が上位のユニットへも供給できるようにする。このような実施形態により、全体として、測定機器の検査によって測定ないしは測定値の通信が中断されることなく、測定機器の検査を行うことができる。すなわち、測定機器のインライン検査を行うことができる。
【0014】
上述の実施形態に代わる択一的な実施形態では、予め設定されたテスト期間中、タップ信号が所定の一定の値に実質的に等しくなるように、該出力信号および/または該出力信号に依存する信号に影響を与える。この実施形態ではタップ信号は、所定の一定の値をとる。
【0015】
一実施形態では、制御要素を介して出力信号および/または該出力信号に依存する信号に影響を与える。一実施形態では前記制御要素は、基本的に電気抵抗特性を特徴とする部品である。その一例に、電気抵抗素子がある。このような実施形態において出力信号および/または該出力信号に依存する信号に影響を与えるためには、たとえば、前記制御要素に生じる電圧を変化させる。前記制御要素の実際の抵抗値に依存して電流が生じ、‐とりわけ該制御要素の接続配線と、該制御要素をタップ場所より上流に配置することとにより‐この電流は相応の影響をタップ信号に及ぼす。
【0016】
冒頭に述べた測定機器システムの、本発明の別のコンセプトによれば、少なくとも1つの制御要素が設けられており、タップ場所から取り出すことができるタップ信号が該制御要素に依存する構成により、上記にて提起した課題が解決される。本発明の測定システムは、少なくとも1つの測定量の決定に基づいて出力信号を生成する測定機器と、該出力信号‐または場合によっては、該出力信号に依存する信号‐をタップ信号として取り出すことができるタップ場所とを有する。‐とりわけ本発明の上述の方法にしたがって‐検査を行うために有利には、前記測定機器は、テスト信号を前記出力信号として生成するのを可能にする制御入力端も有する。本発明の測定機器システムでは、さらに付加的に、タップ場所より上流ないしはタップ場所において、予め設定されたタップ信号を生成するための制御要素が設けられる。この制御要素については、本発明の方法についての上述の説明を参照されたい。本発明の方法の制御要素についての説明は、測定機器システムにも当てはめることができる。
【0017】
有利な実施形態では、前記制御要素は前記測定機器の一部であり、該測定機器は、検査機器を接続するための少なくとも1つのコネクタを有する。この実施形態では、前記制御要素を前記測定機器の一部とすること、すなわち、測定機器が事前に制御要素を備えていることにより、コンパクトな構成を実現することができる。とりわけこの実施形態では、測定機器を検査するために、測定機器外部からたとえば検査機器が前記制御要素に作用するようにも構成される。その際には、コンタクトを行うためにとりわけ、テストを行うために前記検査機器と測定機器とを接続するための適切な(検査用)コネクタが設けられる。検査機器用の前記コネクタは有利には、テストないしは検査機器の接続が、測定機器の本来のコンタクトに影響を及ぼすことがないよう、測定機器の動作に必要とされる、該測定機器の通常の端子に対する追加部品として設けられる。このようなコネクタ構成により、全体的に、測定機器のテストを行うことによって該測定機器のコンタクトが遮断されたり、測定機器による測定値の出力が遮断されたりすることがないという大きな利点が奏される。測定機器の検査全体は、たとえば以下のように行われる。測定機器のコネクタを介して前記検査機器を接続する。測定機器の他のコンタクトがこの接続によって妨害されることはない。その後、タップ信号を検査機器によって適切に調整して、検査を開始する。次に検査機器を引き抜き、測定機器を作動状態に維持する。測定機器においてテスト信号を出力信号として生成し、前記制御要素を介して、設定された調整信号が前記タップ信号としてタップ場所において取り出されるようにする。この実施形態において有利なのは、前記タップ場所を測定機器の信号出力端とすることである。前記測定機器は全体として、出力信号のみを生成するのではなく、該測定機器に所属する制御要素により、前記タップ場所において取り出すために該出力信号に影響を与えることも可能であるように構成されていることを特徴とする。抽象的に捉えると、いわば、測定機器自体には信号を出力するために、2つの相互に並んで配置された出力端が設けられることになり、一方の出力端は前記出力信号を出力するためのものであり、‐この出力は内部用のみであり‐、他方の出力端は、前記タップ信号を取り出すためのタップ場所であり、‐これは、測定機器の通常の信号出力端であり‐、測定機器の2つの「出力端」間に前記制御要素が配置される。
【0018】
上述の実施形態に代わる択一的な実施形態では、前記測定機器は、出力信号を出力するための信号出力端を有し、前記制御要素は別体の部品として、前記信号出力端に後置されている。この実施形態では測定機器は、前記出力信号に作用するための制御入力端と、前記信号出力端を有するだけでよい。この実施形態では、前記出力信号の「補償」は外部の制御要素を介して行われる。この外部の制御要素は原則的に、従来技術の任意の測定機器に接続可能なものである。したがって前記実施形態は、測定機器本体に課される要求ないしは既存の測定機器の構成の変更に課される要求を小さく抑えることができるという利点を奏する。
【0019】
冒頭に述べた、測定機器システムを検査するための検査システムの、本発明の別のコンセプトによれば、少なくとも1つの検査機器と少なくとも1つの制御要素とが設けられた構成により、上記にて提起した課題が解決される。前記検査機器は、少なくとも1つの測定量の決定に基づき、タップ場所からタップ信号として取り出され得る出力信号を生成する、測定機器の検査に使用される。前記制御要素は前記出力信号‐すなわちテスト信号‐および/または該出力信号に依存する信号に影響を与える。さらに、前記制御要素を介した前記検査機器の調整により、設定された調整信号に前記タップ信号が相当するように、前記検査機器および前記制御要素は構成され、かつ相互に適合されている。前記検査機器の特徴は、テスト信号が生成されるだけでなく、該テスト信号の後置の「運命」に影響を及ぼし、予め設定可能なタップ信号が生成されることである。
【0020】
本発明の方法と、これに対応する測定機器システムとに関する上述の説明は、検査システムにも相応に当てはまる。本発明の検査システムによって、出力信号をタップ信号としてそのまま直接取り出せるようにするのではなく適切に変化することにより、本来の測定プロセスを中断したり測定データの伝送を中断することなく、測定機器のテストを行える環境が実現される。テスト信号を補正することにより、テストが外部に及ぼす影響、すなわち、測定機器の信号の領域に隣接する信号領域に及ぼす影響を低減させるかないしは消失させることができる。ここでの検査機器の特徴は、測定機器にのみ作用するのではなく、該測定機器によって生成された出力信号の後続の流れにも影響することである。こうするためには、複数の別体のユニットまたは部品から前記検査機器を組み立てることもできる。
【0021】
詳細には、本発明の方法、本発明の測定機器システム、および本発明の検査システムを実施および発展させることができる手段が数多く存在する。これらの手段に関しては、請求項1および請求項7に後置された請求項と、図面を参照してなされる、以下の実施例の説明とを参照されたい。
【実施例】
【0022】
図1および2の各図に、測定機器システム1のそれぞれ異なる実施例を示す。これらの各図は、電気回路図を正確に示すためのものではなく、むしろ、複数の異なる構成要素間の協働関係が見て分かるようにするためのものである。図3〜5に大幅に概略的に示された、図1の測定機器システム1の可能な実施形態の構成要素は、基本的な幾つかの細部を示している。測定機器の一例であるMIDの各部分を検査するための2つの回路の一部を、図6,7に概略的に示す。図8には、本発明の検査システムを用いて、図1に示された基本的構成を有する測定機器システムを検査するための、本発明の一実施例の方法の流れを示している。同図では各ステップの基本的な流れを示しており、各ステップを異なって組み合わせてグループにまとめたり、各ステップの順序を変更することも可能である。このような変更も本発明の範囲内である。
【0023】
図1は、本発明の測定機器システム1のブロック回路図である。測定機器2はここでは、制御要素4を介してタップ場所3に接続されており、該測定機器2はセンサ素子5本体を有する。このセンサ素子5は、ここでは一例として流量測定機器である。センサ素子5は、測定量(ここでは一例として、媒体の流量)に依存する原信号を生成し、測定機器2において、この原信号から本来の測定信号が生成される。図1には、検査機器6を概略的にのみ示しており、検査時には、テスト信号が測定機器2の信号出力端8において出力信号として出力されるように、前記検査機器6が制御入力端7を介して該測定機器2に作用する。その際にはたとえば、前記テスト信号を検査機器6によって設定するか、または前記テスト信号を、該検査機器6が測定機器2の複数の異なる構成要素または機能ブロックに実際に及ぼす影響によって得られる信号とすることができる。一実施形態では、前記検査機器6によって、測定量の予め設定可能な値をシミュレートし、前記テスト信号を、測定機器2において行われる該測定量の値の処理によって得られる、該測定量の予め設定された値に対応する信号とする。その際に有利なのは、測定量のシミュレートされる値と実際の値とが異なることである。検査機器6が測定機器2に及ぼす作用の種類に応じて、該測定機器2の複数の異なる構成要素または機能をテストすることができる。テスト信号として生成される、測定機器2の出力信号は、ここでは信号出力端8から取り出すことができ、タップ場所3において、予め設定可能なタップ信号が生じるように、制御要素4を介して前記測定機器2の出力信号に影響を与えることができる。図中の実施形態では、検査機器6が作用を及ぼすことにより、上述のように制御要素4を介して測定機器2の出力信号に影響を与えることができる。図1の実施形態では前記検査機器6は1つの部品として示されているが、この検査機器6は、それぞれ個別の機能を有する複数の個別部品から成る複合構成体とすることもできる。総じて前記検査機器6は、測定機器2と、該測定機器2の信号出力端8より下流の信号伝送経路とに作用する。
【0024】
図2の測定機器システム1の実施形態と図1の実施形態との相違点は、制御要素4の位置ないしは測定機器2の構成である。図2の実施形態では、前記制御要素4は測定機器2の一構成要素である。よって図2の実施形態では、制御出力端8とタップ場所3とが一致する。図2に示された実施形態では、検査機器6の作用を2倍にするため、検査機器6は相応に制御要素4にも作用することにより、予め設定されたタップ信号を生成するように構成されている。このことはたとえば制御入力端7を介して行われるか、または、‐同図にて示された実施例と同様‐測定機器2の別個の信号入力端ないしは制御入力端を介して行われる。この別個の信号入力端ないしは制御入力端には、測定機器2のコネクタ13によってアクセスすることができる。コネクタ13により、とりわけ、測定動作に必要な本来のコンタクトを遮断することなく、検査を行うことができる。したがって、このように制御要素4を組み付け、コネクタ13を介して接続することにより、検査を行うことができ、本発明の検査の各ステップを実施する際には、測定に影響を及ぼすことなく、測定を中断することなく検査を開始および終了させることができるよう、また、検査中であっても、測定機器2周辺の機器またはユニット等の動作を阻害しないように、検査を実現することができる。概観しやすくするため、図2において、図1の構成要素と同じ構成要素には同一の符号を付している。図1および図2の各実施形態では、検査システムは検査機器6と制御要素4とによって構成され、これら両構成要素が協働することにより、本発明の方法を実現することができる。
【0025】
図3に、測定機器2の一部と、該測定機器2に接続された構成要素の一部とを概略的に示す。ここでは一例として、測定機器2は、出力信号を出力するための信号出力端8において2線式導線に接続されている。前記出力信号として、とりわけ0〜20mA信号が生成される。ここではこの出力信号の生成は、内部の電圧源すなわち測定機器2に所属する電圧源に接続された制御可能な抵抗Rを介して行われる。
【0026】
測定機器2の検査時には、テスト信号によって、信号出力端8における電流の値が得られる。この信号出力端8における電流値は、とりわけ、測定量の測定される値に対応する電流値と異なる。前記信号出力端8には制御要素4が後置されている。図中の実施例ではこの制御要素4は、測定機器2の外部に設けられる電気抵抗素子である。検査時には、前記検査機器6が、抵抗として形成された制御要素4において降下する電圧Uを介して検査電流Iを制御する。この検査電流Iは、測定機器2の信号出力端8にて出力される電流に加算される。電圧Uの調整と、該電圧Uによって生じる検査電流Iとにより、タップ場所3において、測定量の測定される値に対応する電流のような電流が生じるように、信号出力端8における電流を補正することができる。このことにより、測定システムより下流のユニットのためにも、テスト信号の作用が相殺され、検査によって測定動作が中断することがなくなる。その際には、タップ信号として取り出される電流は、たとえば負荷抵抗9を介して求めることができる。この負荷抵抗9は図中では、タップ場所3に後置されている。その際には、前記タップ信号をどのように評価するかは、従来技術の種々の実施形態に応じて選択することができ、とりわけ、信号出力端8の形式ないしは測定機器2の出力信号の形式に応じて選択することができる。
【0027】
検査機器6はテスト信号に影響を及ぼすので、検査機器6の構成ないしは検査システムの構成により(たとえば、ホイートストン測定ブリッジとしての構成が考えられる)、テスト信号の補償の程度から、測定機器2に生じる可能性のあるエラー等を推定することができる。
【0028】
この実施形態では全体的に、前記制御要素4は、測定機器2の信号出力端8とタップ場所3との間に入れるだけである。しかし有利なのは、検査時には検査機器のコンタクトのみを行えばよくなるように、制御要素4を永久的かつ固定的に取り付けることである。それゆえ、検査を行うために、後で再び閉成しなければならない接続部を解除する必要はなく、基本的には、測定機器2と制御要素4とをコンタクトさせるだけでよい。
【0029】
図4の回路が図3の回路と相違する点は、図4の実施形態の測定機器2に専用の電圧源が設けられていないため、たとえば、信号出力端8を測定機器2の電流供給にも使用できることである。図4の実施形態の信号出力端は、図3の実施形態の能動的な出力端と異なって受動素子であり、図4の信号出力端では、プロセスコントロールステーション側で別の形式の信号評価を行う必要がある。図中の実施形態では、このプロセスコントロールステーションに電圧源が設けられており、この電圧源はこの実施例では、24Vで一定にされている。ここで、負荷抵抗9を介して測定される電圧(ここでは、2つのタップと、負荷抵抗9に平行な矢印とによって示されている)は、測定機器2の出力信号を表す尺度となり、これにより、‐検査機器6によって行われる、出力信号の本発明の補償に起因して‐測定信号を表す尺度にもなる。
【0030】
図5の実施形態には一例として、オープンコレクタ動作のためのパッシブなバイナリ出力端を有する測定機器2を示す。ここでは、出力信号の大きさは一例として、1Hz〜10kHzの周波数において0mA〜150mAとなっている。このような出力信号により、‐図4の実施形態と同様‐プロセスコントロールステーションの評価を行う側において、たとえば24Vの電圧を生成する、図中に示された電圧源が必要になる。図5では、アースに接続された、前記タップ場所3の下方のコンタクトと、負荷抵抗9より上流の、上方のタップとの間にあるタップ(出力)を示しており、このタップから得られる電圧値(これも矢印によって示されている)から、制御要素4ないしは検査機器6によって補正された、測定機器2の出力信号が、タップ信号として得られる。ここでは、検査機器6と測定機器2とを接続するために、コネクタ13が測定機器2の一部として設けられており、このコネクタ13を介して、検査機器6が制御要素4に作用する。ここでも、前記制御要素4は測定機器2の固定的な一部となっている。
【0031】
図6および7に、前記測定機器2の一例である電磁誘導流量測定機器(MID)の細部を概略的に示す。MIDでは、磁界中にて運動する電荷の分離を利用する測定方式が実現される。この測定技術の基本となるのは、非磁性材料から成る測定管である。この測定管はたとえば非磁性金属から成り、該測定管の流れ側は絶縁性の被覆部によって被測定流体から電気的に絶縁されており、該測定管には、流れ方向に対して垂直方向に、磁気回路装置のコイルによって生成される磁界が通る。微小の導電率を有する被測定流体を測定管中に流すと、この導電性の被測定流体中に存在するキャリアが磁界によって偏向する。電荷の分離により、磁界と流れ方向とに垂直に配置された測定電極に電圧が発生し、この電圧は測定機器によって検出され、測定電圧として評価される。測定される電圧は、被測定流体とともに移動するキャリアの流れ速度に比例するので、この流れ速度から、測定管内の流量を推定することができる。
【0032】
前記測定機器2としてのMIDの検査に関して、図6に、コイルを介して磁界を生成する電流を検査する実施形態を示しており、また図7に、電極から取り出される電圧の処理を監視するための実施形態を示している。これら2つの図に示された実施形態により、測定機器2に介入し、この介入によって該測定機器2の個々の構成要素をテストすることができる。
【0033】
図6にMIDの一部を示す。このMIDは、磁界を生成するための第1のコイル10と第2のコイル11とを有し、さらに、両コイル10,11間に中間タップ12を有する。ここでは、両コイル10,11はそれぞれ複素抵抗RS1,RS2を有する。同図には3つの信号入力端E7,E8およびE9が示されており、E7とE9との間すなわち中間タップ12に電流Iが流れ、E9とE8との間に電流Iが流れる。電流IおよびIは、測定機器の検査中に適切に調整することができる。さらに、入力端E7と第1のコイル10との間に検査抵抗RP7が設けられており、入力端E8と第2のコイル11との間に抵抗RP8が設けられている。さらにコネクタ13が概略的に示されており、このコネクタ13を介して、対応する電圧を取り出すことができる。ここでは原則、抵抗RP7,RP8,RS1およびRS2と、電流IおよびIと、測定される電圧UP7,UP8,UおよびUとの間に以下の関係が成り立つ:
=UP7/RP7
=UP8/RP8
S1=U/I
S2=U/I
【0034】
回路の一部を概略的に示す図7の実施形態でも、3つの入力端E1,E2,E3と3つの信号出力端A1,A2,A3とが設けられており、入力端E1,E2,E3はセンサ本体の方向に、ないしは、ここでは特に、信号を取り出すための電極の方向に設けられている。この信号を取り出すための電極は、同図には示されていない。E1とA1との間に検査抵抗RP1が設けられており、さらに、該検査抵抗RP1より上流にバッファB1が設けられている。E2とA2との間に第2の検査抵抗RP2と第2のバッファB2とが設けられている。さらに、検査機器を接続するためのコネクタ13を示している。E2とA2との間の接続部と、E3とA3との間の接続部との間において、検査電圧UP2を取り出すことができる。E1とA1との間の接続部と、E3とA3との間の接続部との間において、検査電圧UP3を取り出すことができる。MIDの検査期間の間、両検査電圧UP2,UP3は、電極電圧の制御によって、すなわち、E1,E2およびE3から取り出すことができる電圧によって設定することができ、このような設定により、電極に後置された電子回路‐または‐ここでは出力端A1,A2およびA3に後置された‐評価構成要素‐を検査することができる。
【0035】
バッファB1,B2により、センサ内部の‐図中に示されていない‐電極の妨害が阻止され、抵抗RP1およびRP2は基本的に、バッファB1,B2の保護を行うためだけに機能する。
【0036】
図8に、本発明の一実施形態の方法のフローチャートを概略的に示す。この方法は、図1に一例として示されたような測定機器システムに適用するためのものである。第1のステップ101において、測定機器は測定量の実際値を求め、これにより測定信号を生成する。ここで示された、測定機器を検査する各ステップの実施中、ステップ102において、検査機器は測定機器に介入し、この介入により、テスト信号が出力信号として生成されるようにする。その際に特に有利なのは、テスト信号が測定信号と異なることである。このテスト信号はたとえば、被測定媒体の流量が実際に通常領域内にあるときの、センサ素子に流れる最大流量に相当する。ステップ103において、測定機器は信号出力端において、前記テスト信号を出力信号として出力する。次のステップ104において、前記検査機器は制御要素を介して、測定機器の信号出力端より下流の信号伝送経路に作用し、この作用により、タップ場所にて取り出すことができるタップ信号が設定可能なタップ信号となるようにする。このタップ信号はとりわけ、テスト信号ないしは該テスト信号の時間特性と異なる信号である。一実施形態では、前記タップ信号が実質的に測定信号と等しくなるように、前記テスト信号を補正する。この場合には、測定機器の検査中でも、正しい測定信号を取り出すことができる。一実施形態ではこうするために、検査機器が測定信号を記憶し、出力信号が測定信号に相当するようになるまでの間、検査機器は制御要素を介して出力信号を補正する。
【0037】
別の実施形態では、とりわけ検査期間に相当する時間にわたって、前記タップ信号は実質的に、一定の値に等しくされる。一実施形態では、測定機器を検査するための、テスト信号として生成された出力信号の評価は有利には、検査機器によっても行われる。場合によっては、測定信号、ないしは、設定された一定の値がタップ信号として発生するまで、出力信号をどの程度補償すべきであるかを、検査機器が評価する。一実施形態では、ステップ104の後に検査を終了し、その結果をたとえば上位のユニットへ伝送する。その代わりに択一的に、場合によっては別のテスト信号を生成するために、前記の一連の流れを再び実施する。
【符号の説明】
【0038】
1 測定機器システム
2 測定機器
3 タップ場所
4 制御要素
5 センサ素子
6 検査機器
7 制御入力端
8 信号出力端
13 コネクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8