特許第6042231号(P6042231)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042231
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】自動車の前部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/00 20060101AFI20161206BHJP
   B60G 7/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B62D21/00 A
   B62D21/00 B
   B60G7/00
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-37755(P2013-37755)
(22)【出願日】2013年2月27日
(65)【公開番号】特開2014-162442(P2014-162442A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087619
【弁理士】
【氏名又は名称】下市 努
(72)【発明者】
【氏名】百中 淳志
(72)【発明者】
【氏名】新開 有里
【審査官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−138946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/00
B60G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパメンバとロアメンバとを中空状をなすように結合してなり、車幅方向中央部と該中央部より低所に位置し、ロアアームの取付け部となる側部とを有し、該側部の、車幅方向端部には開口部が形成され、後端コーナ部には車体への取付け座面が形成されたサスペンションメンバと、前記開口部内に前,後ブッシュが上下方向に向けて挿入され前記側部に締結されたロアアームと、前記車幅方向端部の上方を通るように配置され、ロアアームの上下揺動に伴って上下に変位するスタビライザとを有する自動車の前部車体構造において、
前記アッパメンバの前記側部に該側部より低い段落面を有する段差部を形成し、
該段落面は、最下に変位した前記スタビライザとの干渉を回避可能の低位置に位置し、かつ該スタビライザの少なくとも一部と上下方向に重なるように形成され、
前記段差部は、前記前ブッシュの取付け部と前記車体への取付け座面とを結ぶ直線と大略平行とされている
ことを特徴とする自動車の前部車体構造。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車の前部車体構造において、
前記開口部近傍内に上横辺部,下横辺部及び縦辺部を有する断面略凹形状のバルク部材を配設し、
前記段差部の前端は、平面視で前記バルク部材の前記上横辺部に形成された前ブッシュ取付け用フランジ部に連続するように配置され、
前記段差部の後端は、前記アッパメンバの前記車体への取付け座面に連続するように配置されている
ことを特徴とする自動車の前部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンションメンバの、車幅方向側端部の開口部内にロアアームの前,後ブッシュを締結し、上面にスタビライザを配設した自動車の前部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車の前部車体構造として、サスペンションメンバを、アッパメンバとロアメンバとを中空状をなすように結合すると共に、車幅方向両側部に開口部に有するものとし、該開口部内に、ロアアームの前,後ブッシュを車両上下方向に向けて差し込んで締結し、さらにサスペンションメンバの上面にスタビライザを配設したものがある。このような前部車体構造では、上下揺動するロアアームや上下に変位するスタビライザとの干渉を回避するために、前記サスペンションメンバの左,右側端部の、前,後ブッシュの取付け部間部分を車幅方向内側に湾曲させた形状が採用される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3419221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来構造では、サスペンションメンバの左,右側端部の前,後ブッシュの取付け部間部分を車両内側に湾曲させているので、ロアアームからの車両前後方向入力により前記湾曲部に応力が集中し、強度・剛性不足となり易いという問題がある。
【0005】
一方、アッパメンバの前記ブッシュが締結される車幅方向側端部を低くすることにより前記湾曲形状を極力浅くして応力集中を緩和することが考えられる。しかしこのようにすると、前記車幅方向側端部とサスペンションメンバの車幅方向中央部とのオフセット量が大きくなり、該オフセット部分に作用する曲げモーメントが大きくなり、強度・剛性不足となり易いという問題が生じる。
【0006】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、サスペンションメンバの左,右両側端部における応力集中を緩和でき、かつロアアームやスタビライザとの干渉を回避しつつ側端部と中央部とのオフセット量を小さくできる自動車の前部車体構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アッパメンバとロアメンバとを中空状をなすように結合してなり、車幅方向中央部と、該中央部より低所に位置し、ロアアームの取付け部となる側部とを有し、該側部の、車幅方向端部には開口部が形成され、後端コーナ部には車体への取付け座面が形成されたサスペンションメンバと、前記開口部内に前,後ブッシュが上下方向に向けて挿入され前記側部に締結されたロアアームと、前記端部の上方を通るように配置され、ロアアームの上下揺動に伴って上下に変位するスタビライザとを有する自動車の前部車体構造において、
前記アッパメンバの前記側部に該側部より低い段落面を有する段差部を形成し、該段落面は、最下に変位した前記スタビライザとの干渉を回避可能の低位置に位置し、該スタビライザの少なくとも一部と上下方向に重なっており、前記段差部は、前記前ブッシュの取付け部と前記車体への取付け座面とを結ぶ直線と大略平行とされていることを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の自動車の前部車体構造において、
前記開口部近傍内に上横辺部,下横辺部及び縦辺部を有する断面略凹形状のバルク部材を配設し、前記段差部の前端は、平面視で前記バルク部材の前記上横辺部に形成された前ブッシュ取付け用フランジ部に連続するように配置され、
前記段差部の後端は、前記アッパメンバの前記車体への取付け座面に連続するように配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、アッパメンバの側部に該側部より低い段落面を有する段差部を形成し、該段落面を、最下に変位したスタビライザとの干渉を回避可能の低位置に位置させたので、ロアアームのブッシュ取付け部となるアッパメンバの側部を相対的に高い位置に位置させることができ、そのため該側部の中央部とのオフセット量を小さくでき、該オフセット部分に作用する曲げモーメントを小さくでき、強度・剛性不足の問題が生じるのを回避又は抑制できる。
【0010】
また、前記段落面を低所に位置させたので、該段落面を、前記スタビライザの少なくとも一部と上下方向に重なるように車幅方向外側に位置させることができ、また前記段差部を、前記前ブッシュの取付け部と前記サスペンションメンバの車体への取付け座面とを結ぶ直線と大略平行にすることができ、これにより前記サスペンションメンバの前,後ブッシュ取付け部間部分の湾曲を浅くでき、補強部品を追加することなく該湾曲部への応力集中を緩和でき、この点からも強度・剛性不足の問題が生じるのを回避又は抑制できる。その結果、操縦安定性を向上でき、ロードノイズの発生を抑制できる。
【0011】
このように補強部品を追加することなく湾曲部の応力集中を緩和できるため、軽量化が図られ、その結果コストを抑制できる。
【0012】
請求項2の発明によれば、段差部によりバルク部材の前ブッシュ取付け用フランジ部とアッパメンバの車体への取付け座面とを繋いだので、ロアアームからの前後方向入力に対する剛性をさらに高めることができ、その結果、より一層操縦安定性を向上でき、ロードノイズの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例1に係る自動車の前部車体構造の平面図である。
図2】前記構造におけるロアアーム取付け部の断面側面図(図1のII-II線断面図)である。
図3】前記構造における取付け脚部部分の断面正面図(図1のIII-III線断面図)である。
図4】前記構造におけるバルク部材の車幅方向内側から見た斜視図である。
図5】前記バルク部材の平面図である。
図6】前記構造におけるロアアームの平面図である。
図7】前記構造におけるサスペンションメンバの車体フレームへの取付け状態を模式的に示す側面図である。
図8】前記構造におけるスタビライザ及びロアアームの挙動を示す断面正面図(図1のVIII-VIII線断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1ないし図8は本発明の実施例1に係る自動車の前部車体構造を説明するための図であり、本実施例において、前,後,左,右とは、車両前方を見た状態での前,後,左,右を意味している。
【0016】
図において、12は車体骨格部材を構成する左,右のサイドメンバであり、該サイドメンバ12は車両前後方向に延びる本体部12aと、該本体部12aから車幅方向外側に拡開しつつ斜め上方に延び、そこから水平に前方に延びる前部12bとを有する。
【0017】
前記サイドメンバ12の本体部12aの前端部下面から前記前部12bの下方に渡るようにサスペンションメンバ14が配置されている。このサスペンションメンバ14は、アッパメンバ2とロアメンバ3とを中空状をなすように結合するとともに、車幅方向両側部に開口部1dを有するサスペンションメンバ本体1と、該開口部1dの前部近傍に設けられ、該サスペンションメンバ本体1を前記サイドメンバ(車体骨格部材)12に支持させる取付け脚部9とを備えている。
【0018】
前記サスペンションメンバ本体1は、前記左,右の取付け脚部9,9をボルト12cで前記サイドメンバ12の前部12bに締め付け、後述する後部コーナ部に形成された車体への取付け部1gをボルト12dで前記サイドメンバ12の本体部12aに締め付けることにより前記サイドメンバ12に固定支持されている。
【0019】
前記サスペンションメンバ本体1は、車両前後方向視で、車幅方向中央に位置する中央部1aと、車幅方向左,右側部で、かつ前記中央部1aより低所に段違い状を成すように配置された左,右のサイド部(側部)1b,1bと、該左,右のサイド部1b,1bと前記中央部1aとを接続するように配設され、車幅方向中央側ほど高くなる傾斜をなす左,右の傾斜部1c,1cとを有する。
【0020】
また前記サスペンションメンバ本体1の前部には、エンジンユニット等の配置スペースを確保するための凹部1eが車両後方に凹むように形成されている。また前記サスペンションメンバ本体1の後部コーナ部には該サスペンションメンバ本体1を前記サイドメンバ12の本体部12aに取付けるための取付け部1gが形成されている。なお、1fは、前記左,右の傾斜部1cから中央部1aに渡るように凹設された補強用ビードである。
【0021】
前記左,右のサイド部1b,1bに後述するロアアーム4を差し込むための前記開口部1dが形成されている。
【0022】
前記サスペンションメンバ本体1は、板金製で、横断面略ハット形状の前記アッパメンバ2と、同じく板金製で横断面略ハット形状の前記ロアメンバ3とを中空状をなすように、かつ前記開口部1dが形成されるように結合したものである。
【0023】
前記アッパメンバ2は、上壁部2a,前壁部2b,後壁部2c及び前,後フランジ部2d,2eを有し、前述の横断面略ハット形状をなしている。また、前記ロアメンバ3は、下壁部3a,前壁部3b,後壁部3c及び前,後フランジ部3d ,3eを有し、前述の横断面略ハット形状をなしている。前記ロアメンバ3の前,後のフランジ部3d,3eと前記アッパメンバ2の前,後のフランジ部2d,2eとがスポット溶接により結合されている。
【0024】
前記取付け部1gは、前記アッパメンバ2の上壁部2a,ロアメンバ3の下壁部3aに形成された取付け座面2h,3h間にカラー13bを配設し、溶接固定した構造を有する。
【0025】
前記サスペンションメンバ本体1の左,右側部内には板金製のバルク部材6が配設されている。このバルク部材6は、バルク前部6′とバルク後部6′′の前,後2部品を溶接結合したものであり、サスペンションメンバ本体1の前後方向長さと略同じ長さを有し、該サスペンションメンバ本体1の前記開口部1dの前部から前記傾斜部1cに渡るように少し斜めに配置されている。
【0026】
前記バルク部材6の前記バルク前部6′は、前記サイド部1bと略同じ幅を有する上横辺部6a,下横辺部6b及び前記サイド部1bと略同じ高さを有する縦辺部6cを有する横断面凹形状をなしている。また前記バルク後部6′′には上フランジ部6dが形成されている。前記上横辺部6a及び上フランジ部6d、下横辺部6b及び下縁部6eは、前記アッパメンバ2の上壁部2a,ロアメンバ3の下壁部3aにそれぞれ溶接固定されており、このようにして前記バルク部材6は、前記アッパメンバ2の上壁部2aとロアメンバ3の下壁部3aとを橋渡ししており、かつ前記開口部1dを略塞いでいる。
【0027】
前記アッパメンバ2の上壁部2aの前記サイド部1b部分の前部,後部には、前記ロアアーム4の前,後ブッシュ4a,4bの上端部を取り付けるための凹状のアッパ前ビード2f,アッパ後ビード2gが前記開口部1d内に突出するように、かつ前記開口部1d側から前記傾斜部1cまで車幅方向に延びるように凹設されている。同様に、前記ロアメンバ3の下壁部3aの前記アッパ前ビード2f,アッパ後ビード2gに対向する部分には、ロアアーム4の前,後ブッシュ4a,4bの下端部を取り付けるためのロア前ビード3f,ロア後ビード3gが前記開口部1d内に突出するように、かつ前記開口部1d側から前記立ち上がり傾斜部1cまで車幅方向に延びるように形成されている。
【0028】
また前記バルク部材6のバルク前部6′の上横辺部6a,下横辺部6bには、前記アッパ前ビード2f,ロア前ビード3fを補強するための上補強ビード6f,下補強ビード6gが前記開口部1d内に突出するように、かつアッパ前ビード2f,ロア前ビード3fに内側から当接するように形成されている。該上補強ビード6f,下補強ビード6gは、アッパ前ビード2f,ロア前ビード3fに溶接固定されており、前記前ブッシュ4aを取り付けるための上,下フランジ部となっている。
【0029】
そして前記アッパ前ビード2f及び上補強ビード6fからロア前ビード3f及び下補強ビード6gを上下に貫通するように前ボルト孔aが形成され、前記アッパ後ビード2gからロア後ビード3gを上下に貫通するように後ボルト孔bが形成されている。
【0030】
ここで前記アッパメンバ2の上壁部2aとバルク部材6の上横辺部6aとで閉断面Aが以下のようにして前記前ボルト孔aから車両後方に拡がるように形成されている。即ち、前記下補強ビード6gは前記ロア前ビード3fと大略同じ形状,サイズに形成されているのに対し、前記上補強ビード6fは前記アッパ前ビード2fより車両後方に大きく拡がるように延長されている。この上補強ビード6fの延長部6f′と前記上壁部2aの該延長部6f′に対応する部分2f′により前記閉断面Aが形成されている。
【0031】
前記ロアアーム4は、車両前後方向に延びる基部4gと、該基部4gの前部から車幅方向外方に延びるアーム本体4eとを有する大略L字形状をなしており、前記基部4gの前,後端部に前記前,後ブッシュ4a,4bがその軸線を上下方向に向けて固定されている。前記前ブッシュ4a,後ブッシュ4bは、内筒4cと外筒4dとの間にゴム部材4fを焼付け固定したものである。
【0032】
前記ロアアーム4は、前ブッシュ4aを、これの軸線を上下に向けて前記前ボルト孔aに一致させ、また後ブッシュ4bをこれの軸線を上下に向けて前記後ボルト孔bに一致させ、この状態で前記内筒4cに下方からボルト5を挿入し、ナット部材5aを締め付けることでサスペンションメンバ本体1に支持されている。
【0033】
ここで前記ロアアーム4の基部4gの大部分は、前記アッパメンバ2,ロアメンバ3の前記サイド部1bを構成する上壁部2a,下壁部3a間に位置しており、左,右車輪の上下ストロークに伴って図3に示すように上下に揺動する。
【0034】
前記サスペンションメンバ本体1の、前記左,右の前ブッシュ4aの取付けボルト5の少し後方には、板金製の前記左,右の取付け脚部9,9が上方に突出するように形成されている。該各取付け脚部9は、車幅方向内側に位置する本体部10と、車幅方向外側に位置する補強部11とを溶接結合した筒状体である。
【0035】
前記補強部11の基部11a,突出部11bの下端にはフランジ部11c,11dが外方に折り曲げ形成されている。前記フランジ部11dは、前記アッパメンバ2の上壁部2aの前記閉断面Aを構成する部分2f′に溶接固定されている。また前記フランジ部11cは前記アッパ前ビード2fの前記閉断面Aとの境界部付近に溶接固定されている。
【0036】
また前記本体部10の下端部10eは、前記アッパメンバ2の上壁部2aからロアメンバ3の下壁部3aを下方に貫通しており、前記下端部10eは前記上壁部2a及び下壁部3aに溶接固定され、さらに前,後壁部10aの外端部10a′は前記バルク部材6の縦壁部6cに溶接固定されている。
【0037】
前記取付け脚部9の上端部には外方に向かう開口が形成され、該開口内にはカラー13aが配設されている。前記取付け脚部9を前記サイドメンバ12の前部12bに固定するボルト12cは前記カラー13a内を挿通している。
【0038】
また前記サスペンションメンバ本体1の上面にはスタビライザ15が配設されている。このスタビライザ15は、ばね鋼製丸棒からなる平面視大略コ字形状のもので、車幅方向に延びる横辺部15aと、これの両端部に続いて前方に屈曲形成された縦辺部15c,15cを有する。前記横辺部15aの両端部は支持ブラケット15b,15bにより前記サスペンションメンバ本体1の前記中央部1aの両端部に回転自在に支持され、前記縦辺部15cは図示しない連結ロッドを介して前記ロアアーム4側に連結されている。
【0039】
前記スタビライザ15は左,右車輪の上下ストローク差に応じて捩じられ、該捩じりに伴って前記縦辺部15cが図8に示すように上下に変位する。
【0040】
ここで、前記アッパメンバ2の前記サイド部1bを構成する上壁部2aの車幅方向外端部には、該上壁部2aより低所に位置する段落面16aを有する段差部16が形成されている。前記段落面16aは、最下に変位した前記スタビライザ15′との干渉を回避可能の低位置に位置しており、平面視でスタビライザ15′の一部と上下方向に重なる位置まで車幅方向外方に延びている。
【0041】
また前記段差部16は、平面視で、前記前ブッシュ4aの取付け部、より具体的には前記ボルト5と、前記車体への取付け座面2h、より具体的にはボルト12dとを結ぶ直線Bと大略平行とされている。ここで正確には、前記段落面16aは前後方向中央部ほど幅広に形成されており、該段落面16aの外端面16a′は前記直線Bに平行により近くなっている。
【0042】
さらにまた、前記段差部16aの前端16bは、平面視で前記バルク部材6の前記前ブッシュ取付け用フランジ部6aの外縁に連続するように配置され、
前記段差部16aの後端16cは、前記アッパメンバ2の前記車体への取付け座面2hに連続するように配置されている。
【0043】
本実施例によれば、図8に示すように、アッパメンバ2のサイド部1bを構成する上壁部2aの車幅方向外側端部に、該上壁部2aより低い段落面16aを有する段差部16を形成し、該段落面16aを、最下に変位したスタビライザ15′との干渉を回避可能の低位置に位置させたので、ロアアーム4の前,後ブッシュ4a,4bの取付け部となるアッパメンバ2の上壁部2aをh1だけ相対的に高い位置に位置させることができ、そのため該上壁部2aの中央部1aとのオフセット量h2を小さくできる。その結果、前記ロアアーム4からの上下入力により、前記オフセット量h2を有する傾斜部1c部分に発生する曲げモーメントを小さくでき、強度・剛性不足の問題が生じるのを回避又は抑制できる。
【0044】
また、前記段落面16aを低所に位置させたので、該段落面16aを、前記スタビライザ15の一部と上下方向に重なるように車幅方向外側に位置させることができ、また前記段差部16を平面視で、前記前ブッシュ4aの取付け部と前記サスペンションメンバ本体1の車体への取付け座面2hとを結ぶ直線Bと大略平行にすることができる。これにより前記サスペンションメンバ本体1の前,後ブッシュ取付け部間部分の湾曲を浅くでき、該湾曲部への応力集中を緩和でき、この点からも強度・剛性不足の問題が生じるのを回避又は抑制できる。その結果、操縦安定性を向上でき、ロードノイズの発生を抑制できる。
【0045】
また補強部品を追加することなく湾曲部の応力集中を緩和できるため、軽量化が図られ、その結果コストを抑制できる。
【0046】
さらにまた、段差部16によりバルク部材6の前ブッシュ取付け用フランジ部6aとアッパメンバ2の車体への取付け座面2hとを繋いだので、ロアアーム4からの前後方向入力に対する剛性をさらに高めることができ、その結果、より一層操縦安定性を向上でき、ロードノイズの発生を抑制できる。
【0047】
また、サスペンションメンバ本体1の開口部1dの近傍内にバルク部材6を配設し、該バルク部材6の上横辺部6a,下横辺部6bを前記アッパメンバ2の上壁部2a,ロアメンバ3の下壁部3aにそれぞれ溶接固定したので、サスペンションメンバ本体1の、開口部1d近傍部分を上下に橋渡しでき、前記開口部1d周辺の剛性を高めることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 サスペンションメンバ本体
1a 中央部
1b サイド部(側部)
1d 開口部
2 アッパメンバ
2h 取付け座面
3 ロアメンバ
4 ロアアーム
4a,4b 前,後ブッシュ
6 バルク部材
6a 上横辺部
6b 下横辺部
6c 縦辺部
6f 上補強ビード(ブッシュ取付け用フランジ部)
15 スタビライザ
16 段差部
16a 段落面
16b 段差部の前端
16c 段差部の後端
B 直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8