特許第6042255号(P6042255)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6042255光記録再生装置の光ビーム焦点位置決め機構、及びその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042255
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】光記録再生装置の光ビーム焦点位置決め機構、及びその方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 7/09 20060101AFI20161206BHJP
   G11B 7/24097 20130101ALI20161206BHJP
   G11B 7/007 20060101ALI20161206BHJP
   G11B 7/0065 20060101ALI20161206BHJP
   G11B 7/135 20120101ALI20161206BHJP
【FI】
   G11B7/09 B
   G11B7/24 571B
   G11B7/007
   G11B7/0065
   G11B7/135 Z
【請求項の数】13
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-74752(P2013-74752)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-199700(P2014-199700A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2015年12月1日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年9月30日〜10月4日開催、光メモリ国際シンポジウム2012において文書をもって公開
(73)【特許権者】
【識別番号】390013815
【氏名又は名称】学校法人金井学園
(74)【代理人】
【識別番号】100076484
【弁理士】
【氏名又は名称】戸川 公二
(72)【発明者】
【氏名】藤田 輝雄
【審査官】 川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−044815(JP,A)
【文献】 特開2006−107663(JP,A)
【文献】 特開2009−205754(JP,A)
【文献】 特開平11−311936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B7/00−7/013
G11B7/09−7/10
G11B7/12−7/22
G11B7/24−7/2595
G03H1/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク内部に参照面が形成され、かつ、この参照面上に回転の接線方向に距離sの周期間隔を持つ1次元周期構造が設けられた回転ディスク式光記録媒体を用いる光記録再生装置の光ビーム焦点位置決め機構であって、
前記光記録媒体の参照面に対して光ビームを照射する発光装置と;この発光装置と光記録媒体の間に配置されて、光記録媒体の参照面上に光ビームを集光する集光光学系と;前記発光装置と集光光学系の間に配置され、かつ、全体を構成する複数のセルの内、所定のセルを通過した光ビームの一部の光束について位相変調を行える光位相変調器と;この光位相変調器の前後何れか一方に配置され、かつ、全体を構成する複数のセルの内、任意のセルで光ビームの一部の光束を遮断できる光透過制御素子と;
前記光透過制御素子により集光光学系に入射する光ビームを同位相に揃えて、前記参照面に光ビームを集光照射した際に、前記1次元周期構造からの回折光と参照面反射光、若しくは回折光と透過参照光を、これらが重なり合うファーフィールド内へと誘導せしめる導光光学系と;
前記ファーフィールド内に設置された光検知器と;この光検知器を用いて、前記参照面上における、接線方向への距離間隔s/4に対応する4つの異なる位置で集束する光ビームの光強度サンプリングを行って得られたサンプリング値に基づいて演算を行い、光ビームの焦点誤差信号を生成する信号生成部と;この信号生成部で生成された焦点誤差信号に基いて、光ビームの焦点の参照面に対する深さ方向の位置を制御する焦点位置制御部とを含んで構成されていることを特徴とする光記録再生装置の光ビーム焦点位置決め機構。
【請求項2】
2次元的に振幅位相変調された光ビームを得るために、各セルに入射する部分光束の波面の位相を制御可能な2次元空間位相変調器を使用すると共に、光透過制御素子として各セルに入射する部分光束の振幅を制御可能な2次元空間光振幅変調器を使用したことを特徴とする請求項1記載の光記録再生装置の光ビーム焦点位置決め機構。
【請求項3】
光位相変調器として2次元位相マスクを使用したことを特徴とする請求項1または2に記載の光記録再生装置の光ビーム焦点位置決め機構
【請求項4】
光位相変調器の前後何れか一方に光振幅変調器を対向配置して、光位相変調器で同位相に波面が変調された、或いは変調される予定の部分光束を、光振幅変調器の所定のセルで透過もしくは反射可能とし、更にそれ以外の部分光束を光振幅変調器の残りのセルで遮断可能としたことを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の光記録再生装置の光ビーム焦点位置決め機構。
【請求項5】
ファーフィールド内に設置された光検知器が少なくとも2つのエレメントから成り、更に信号生成部において、前記2つのエレメントからの出力の差信号および和信号、それぞれ4つのサンプル値に基づいて焦点誤差信号を生成する演算処理が行われるようにしたことを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の光記録再生装置の光ビーム焦点位置決め機構。
【請求項6】
ホログラムからの信号を再生するために配置された2次元光検知器アレー中の複数のセルを2分割光検知器として使用したことを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の光記録再生装置の光ビーム焦点位置決め機構。
【請求項7】
信号生成部において、以下の数式を用いて演算処理を行うことにより焦点誤差信号が生成されることを特徴とする請求項1〜6の何れか一つに記載の光記録再生装置の光ビーム焦点位置決め機構。
【数1】
※なお式中において、「FES」は焦点誤差信号を示す。また、「S1〜S4」は、光記録再生媒体の参照面上における接線方向の距離間隔s/4に対応する4つの異なる位置を示す。また、「IDF(0)、IDF(s/4)、IDF(s/2)、IDF(3s/4)」は、差信号のサンプル値を示す。また、「ISUM(0)、ISUM(s/4)、ISUM(s/2)、ISUM(3s/4)」は、和信号のサンプル値を示す。
【請求項8】
カード内部に参照面が形成され、かつ、この参照面上に距離sの周期間隔を持つ1次元周期構造が設けられたカード型光記録媒体を用いる光記録再生装置の光ビーム焦点位置決め機構であって、
前記光記録媒体の参照面に対して光ビームを照射する発光装置と;この発光装置と光記録媒体の間に配置されて、光記録媒体の参照面上に光ビームを集光する集光光学系と;光ビームの焦点を、参照面上に設けられた距離sの周期間隔をもった1次元周期構造を横切るように相対的に移動させる焦点スライド機構と;前記発光装置と集光光学系の間に配置され、かつ、全体を構成する複数のセルの内、所定のセルを通過した光ビームの一部の光束について位相変調を行える光位相変調器と;この光位相変調器の前後何れか一方に配置され、かつ、全体を構成する複数のセルの内、任意のセルで光ビームの一部の光束を遮断できる光透過制御素子と;
前記光透過制御素子により集光光学系に入射する光ビームを同位相に揃えて、前記参照面に光ビームを集光照射した際に、前記1次元周期構造からの回折光と参照面反射光、若しくは回折光と透過参照光を、これらが重なり合うファーフィールド内へと誘導せしめる導光光学系と;
前記ファーフィールド内に設置された光検知器と;この光検知器を用いて、前記参照面上における、接線方向への距離間隔s/4に対応する4つの異なる位置で集束する光ビームの光強度サンプリングを行って得られたサンプリング値に基づいて演算を行い、光ビームの焦点誤差信号を生成する信号生成部と;この信号生成部で生成された焦点誤差信号に基いて、光ビームの焦点の参照面に対する深さ方向の位置を制御する焦点位置制御部とを含んで構成されていることを特徴とする光記録再生装置の光ビーム焦点位置決め機構。
【請求項9】
ディスク内部に参照面が形成され、かつ、この参照面上に半径方向に距離pの周期間隔で並列するピット列が設けられると共に、ピット列の各ピットが半径方向にp/4ずつ位置ズレして並んだ1次元周期構造を有する回転ディスク式光記録媒体を用いる光記録再生装置の光ビーム焦点位置決め機構であって、
前記光記録媒体の参照面に対して光ビームを照射する発光装置と;この発光装置と光記録媒体の間に配置されて、光記録媒体の参照面上に光ビームを集光する集光光学系と;前記発光装置と集光光学系の間に配置され、かつ、全体を構成する複数のセルの内、所定のセルを通過した光ビームの一部の光束について位相変調を行える光位相変調器と;この光位相変調器の前後何れか一方に配置され、かつ、全体を構成する複数のセルの内、任意のセルで光ビームの一部の光束を遮断できる光透過制御素子と;
前記光透過制御素子により集光光学系に入射する光ビームを同位相に揃えて、前記参照面に光ビームを集光照射した際に、前記1次元周期構造からの回折光と参照面反射光、若しくは回折光と透過参照光を、これらが重なり合うファーフィールド内へと誘導せしめる導光光学系と;
前記ファーフィールド内に設置された光検知器と;この光検知器を用いて、前記参照面上における、隣り合う各ピット列における4つの異なる位置で集束する光ビームの光強度サンプリングを行って得られたサンプリング値に基づいて演算を行い、光ビームの焦点誤差信号を生成する信号生成部と;この信号生成部で生成された焦点誤差信号に基いて、光ビームの焦点の参照面に対する深さ方向の位置を制御する焦点位置制御部とを含んで構成されていることを特徴とする光記録再生装置の光ビーム焦点位置決め機構。
【請求項10】
信号生成部において、以下の数式を用いて演算処理を行うことにより焦点誤差信号が生成されることを特徴とする請求項9記載の光記録再生装置の光ビーム焦点位置決め機構。
【数2】
※なお式中において、「FES」は焦点誤差信号を示す。また、「P1〜P4」は、光記録再生媒体の参照面上における接線方向の距離間隔p/4に対応する4つの異なる位置を示す。また、「IDF(0)、IDF(p/4)、IDF(p/2)、IDF(3p/4)」は、差信号のサンプル値を示す。また、「ISUM(0)、ISUM(p/4)、ISUM(p/2)、ISUM(3p/4)」は、和信号のサンプル値を示す。
【請求項11】
回転ディスク式の光記録媒体の内部に参照面を形成して、この参照面上に回転の接線方向に距離sの周期間隔を持つ1次元周期構造を設ける一方、
発光装置からの光ビームを2次元的に振幅位相変調すると共に、これを前記参照面に対し集光照射して、この周期構造からの回折光と参照面反射光、もしくは、回折光と透過参照光とを、これらが重なり合うファーフィールド内に誘導せしめ、
このファーフィールド内に光検知器を配置して、前記参照面上における、接線方向への距離間隔s/4に対応する4つの異なる位置で集束する光ビームの光強度サンプリングを行い、これらのサンプリング値に基づいた演算により、集光される光ビームの参照面に対する深さ方向位置決めのための焦点誤差信号を生成して、前記集光光ビームの深さ方向位置決めを行うことを特徴とする光記録再生装置の光ビーム焦点位置決め方法。
【請求項12】
カード型光記録媒体の内部に参照面を形成して、この参照面上に記録再生用の光ビームが横切る方向に距離sの周期間隔を持つ1次元周期構造を設ける一方、
発光装置からの光ビームを2次元的に振幅位相変調すると共に、これを前記参照面に対し集光照射して、この周期構造からの回折光と参照面反射光、もしくは、回折光と透過参照光とを、これらが重なり合うファーフィールド内に誘導せしめ、
このファーフィールド内に光検知器を配置して、前記参照面上における、接線方向への距離間隔s/4に対応する4つの異なる位置で集束する光ビームの光強度サンプリングを行い、これらのサンプリング値に基づいた演算により、集光される光ビームの参照面に対する深さ方向位置決めのための焦点誤差信号を生成して、前記集光光ビームの深さ方向位置決めを行うことを特徴とする光記録再生装置の光ビーム焦点位置決め方法。
【請求項13】
回転ディスク式の光記録媒体の内部に参照面を形成して、この参照面上に半径方向に距離pの周期間隔で並列するピット列を設けると共に、ピット列の各ピットが半径方向にp/4ずつ位置ズレして並んだ一次元周期構造を設ける一方、
発光装置からの光ビームを2次元的に振幅位相変調すると共に、これを前記参照面に対し集光照射して、この周期構造からの回折光と参照面反射光、もしくは、回折光と透過参照光とを、これらが重なり合うファーフィールド内に誘導せしめ、
このファーフィールド内に光検知器を配置して、前記参照面上における、隣り合う各ピット列における4つの異なる位置において集束する光ビームの光強度サンプリングを行い、これらのサンプリング値に基づいた演算により、集光される光ビームの参照面に対する深さ方向位置決めのための焦点誤差信号を生成して、前記集光光ビームの深さ方向位置決めを行うことを特徴とする光記録再生装置の光ビーム焦点位置決め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光記録媒体、例えば、光ディスク中に埋め込まれた回折構造を利用して焦点誤差信号を得て、集光される光ビーム焦点の深さ方向の位置決めを行う機構の改良であって、対物レンズへの照射光が非一様、また、この照射光が空間的に位相変調されている場合においても、前記集光される光ビームの光記録媒体に対する深さ方向の位置決めを行うことのできる光記録再生装置の光ビーム焦点位置決め機構、及びその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の光学的な情報記録再生装置における集束光ビームの焦点位置を検出する装置としては、2分割光検知器を、回転する光ディスクからの反射光と(円形ディスクの)半径方向への回折光が重なり合うファーフィールド領域に配置し、この2分割光検知器の差出力と和出力を、回折構造の周期に対して1/4周期毎に3点のサンプリングを行い、焦点誤差信号を生成する方式のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところが、上記<特許文献1>で述べられた焦点誤差信号生成装置は、情報トラックに垂直な方向(光ディスクの半径方向、即ちy方向)の周期性を利用して焦点誤差信号を生成すること、及び焦点誤差信号を生成するために必要な2分割検知器の位置調整を緩和することは可能であるものの、対物レンズに入射するレーザ光の強度分布が一様でないと正確な焦点制御を行えないという問題があった。
【0004】
ちなみに、この問題の原因は、対物レンズに入射するレーザ光の強度分布が一様でない場合、光スポットの情報記録面に対するズレが無い(焦点が合った)状態でも焦点誤差信号中にオフセットが発生するためである。また、光記録再生装置の光源として利用されている半導体レーザは、ビーム中央の光強度が周囲よりも高く光強度分布が一様でないため、殆どの光記録再生装置で上記問題が生じることになる。
【0005】
そこで、本件発明者は、上記2分割光検知器を、光ディスクからの反射光と(円形ディスクの)接線方向、または半径方向への回折光が重なり合うファーフィールド領域に配置して、2分割光検知器の差出力と和出力から、回折構造の周期に対し1/4周期毎に4点のサンプリングを行って焦点誤差信号を生成し、この信号に基づいて焦点位置を制御する方法を以前に提案している(特許文献2参照、非特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、上記<特許文献2>等に記載された焦点位置の制御方法では、従来のコンパクト・ディスクのような情報記録面上ではなく、情報記録媒体中に3次元的に情報を記録するホログラム・ディスク記録再生装置に適用した場合に、空間的にランダム位相変調された光ビームの焦点方向(即ち、光ディスクの深さ方向)の位置決めを正確に行うことができないという問題があった。
【0007】
これは、位相が揃った光ビームを対物レンズによって集光した場合、その集光位置には通常直径が1μm前後である集光スポットが形成されるが、ランダム位相マスクを透過、または反射した光ビームは空間周波数の直流成分を持たないため、対物レンズで集光しても集光スポットが形成されないためである。なお、この詳細については、<非特許文献2>の2.3節でも述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭63−58627号公報
【特許文献2】特開2010−44815号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Teruo Fujita(藤田輝雄)著,”Focus Sensing Method Using Far-Field Diffracted Waves and Its Application to Holographic Data Discs”,Japanese Journal of Applied Physics 48 (2009)
【非特許文献2】Kenji Tanaka,et al.”Improved performance in coaxial holographic data recording”,26 November 2007/Vol.15,No.24/OPTICS EXPRESS 16209
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来の光学装置に上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、光記録媒体中の参照面上の回折構造を利用して焦点誤差信号を生成する装置において、光ビームが空間的にランダム位相変調されている場合でも、参照面上における光ビームの焦点位置を正確に位置決め可能な光記録再生装置の光ビーム焦点位置決め機構、及びその方法を提供することにある。
【0011】
また、本発明は、対物レンズへの照射光が一様でない場合でも、焦点誤差信号へのオフセットの発生を抑制できる光記録再生媒体の焦点誤差信号生成方法を提供することを技術的課題とする。
【0012】
また更に、本発明は、反射もしくは透過光と回折光が重なり合う領域に配置された2分割光検知器が、この領域にある限り焦点誤差信号にオフセットを発生させないようにすることを技術的課題とする。
【0013】
そしてまた、本発明は、参照面をその内部に有するホログラム・ディスクに応用する場合に、空間的にランダム位相変調された信号光と参照光との焦点方向(光ディスクの深さ方向)の位置合わせを簡単に行うことができる光記録再生媒体の深さ方向位置決め信号生成方法を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
【0015】
即ち、本発明は、ディスク内部に参照面が形成され、かつ、この参照面上に回転の接線方向に距離sの周期間隔を持つ1次元周期構造が設けられた回転ディスク式光記録媒体を用いる光記録再生装置の光ビーム焦点位置決め機構において、
前記光記録媒体の参照面に対して光ビームを照射する発光装置と;この発光装置と光記録媒体の間に配置されて、光記録媒体の参照面上に光ビームを集光する集光光学系と;前記発光装置と集光光学系の間に配置され、かつ、全体を構成する複数のセルの内、所定のセルを通過した光ビームの一部の光束について位相変調を行える光位相変調器と;この光位相変調器の前後に配置され、かつ、全体を構成する複数のセルの内、任意のセルで光ビームの一部の光束を遮断できる光透過制御素子と;
前記光透過制御素子により集光光学系に入射する光ビームを同位相に揃えて、前記参照面に光ビームを集光照射した際に、前記1次元周期構造からの回折光と参照面反射光、若しくは回折光と透過参照光を、これらが重なり合うファーフィールド内へと誘導せしめる導光光学系と;
前記ファーフィールド内に設置された光検知器と;この光検知器を用いて、前記参照面上における、接線方向への距離間隔s/4に対応する4つの異なる位置で集束する光ビームの光強度サンプリングを行って得られたサンプリング値に基づいて演算を行い、光ビームの焦点誤差信号(FES)を生成する信号生成部と;この信号生成部で生成された焦点誤差信号に基いて、光ビームの焦点の参照面に対する深さ方向の位置を制御する焦点位置制御部とを含んで構成した点に特徴がある。
【0016】
また本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、2次元的に振幅位相変調された光ビームを得るために、各セルに入射する部分光束の波面の位相を制御可能な2次元空間位相変調器を使用すると共に、光透過制御素子として各セルに入射する部分光束の振幅を制御可能な2次元空間光振幅変調器を使用するという技術的手段を採用することもできる。
【0017】
また本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、光位相変調器として2次元位相マスクを使用するという技術的手段を採用することもできる。
【0018】
また本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、光位相変調器の前後何れか一方に光振幅変調器を配置して、光位相変調器で同位相に波面が変調された、或いは変調される予定の部分光束を、光振幅変調器の所定のセルで透過もしくは反射可能とし、更にそれ以外の部分光束を光振幅変調器の残りのセルで遮断可能にするという技術的手段を採用することもできる。
【0019】
また本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、ファーフィールド内に設置された光検知器を少なくとも2つのエレメントから構成し、更に信号生成部において、前記2つのエレメントからの出力の差信号および和信号、それぞれ4つのサンプル値に基づいて焦点誤差信号を生成する演算処理が行われるようにするという技術的手段を採用することもできる。
【0020】
また本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、ホログラムからの信号を再生するために配置された2次元光検知器アレー中の複数のセルを2分割光検知器として使用するという技術的手段を採用することもできる。またこれによって、データ・ホログラムの3次元記録を行う光記録再生装置において、データ検出用2次元光検知器アレーを焦点誤差信号生成用に兼用することができるため、光記録再生装置の小型化及び低廉化が図れる。
【0021】
また本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、信号生成部において、以下の数式を用いて演算処理を行うことにより焦点誤差信号を生成するという技術的手段を採用することもできる。
【数1】
※なお式中において、「FES」は焦点誤差信号を示す。また、「S1〜S4」は、光記録再生媒体の参照面上における接線方向の距離間隔s/4に対応する4つの異なる位置を示す。また、「IDF(0)、IDF(s/4)、IDF(s/2)、IDF(3s/4)」は、差信号のサンプル値を示す。また、「ISUM(0)、ISUM(s/4)、ISUM(s/2)、ISUM(3s/4)」は、和信号のサンプル値を示す。
【0022】
また本発明は、上記手段に替えて、カード内部に参照面が形成され、かつ、この参照面上に距離sの周期間隔を持つ1次元周期構造が設けられたカード型光記録媒体を用いる光記録再生装置の光ビーム焦点位置決め機構において、
前記光記録媒体の参照面に対して光ビームを照射する発光装置と;この発光装置と光記録媒体の間に配置されて、光記録媒体の参照面上に光ビームを集光する集光光学系と;光ビームの焦点を、参照面上に設けられた距離sの周期間隔をもった1次元周期構造を横切るように相対的に移動させる焦点スライド機構と;前記発光装置と集光光学系の間に配置され、かつ、全体を構成する複数のセルの内、所定のセルを通過した光ビームの一部の光束について位相変調を行える光位相変調器と;この光位相変調器の前後に配置され、かつ、全体を構成する複数のセルの内、任意のセルで光ビームの一部の光束を遮断できる光透過制御素子と;
前記光透過制御素子により集光光学系に入射する光ビームを同位相に揃えて、前記参照面に光ビームを集光照射した際に、前記1次元周期構造からの回折光と参照面反射光、若しくは回折光と透過参照光を、これらが重なり合うファーフィールド内へと誘導せしめる導光光学系と;
前記ファーフィールド内に設置された光検知器と;この光検知器を用いて、前記参照面上における、接線方向への距離間隔s/4に対応する4つの異なる位置で集束する光ビームの光強度サンプリングを行って得られたサンプリング値に基づいて演算を行い、光ビームの焦点誤差信号を生成する信号生成部と;この信号生成部で生成された焦点誤差信号に基いて、光ビームの焦点の参照面に対する深さ方向の位置を制御する焦点位置制御部とを含む構成を採用することもできる。
【0023】
また更に本発明は、上記手段に替えて、ディスク内部に参照面が形成され、かつ、この参照面上に半径方向に距離pの周期間隔で並列するピット列が設けられると共に、ピット列の各ピットが半径方向にp/4ずつ位置ズレして並んだ1次元周期構造を有する回転ディスク式光記録媒体を用いる光記録再生装置の光ビーム焦点位置決め機構において、
前記光記録媒体の参照面に対して光ビームを照射する発光装置と;この発光装置と光記録媒体の間に配置されて、光記録媒体の参照面上に光ビームを集光する集光光学系と;前記発光装置と集光光学系の間に配置され、かつ、全体を構成する複数のセルの内、所定のセルを通過した光ビームの一部の光束について位相変調を行える光位相変調器と;この光位相変調器の前後に配置され、かつ、全体を構成する複数のセルの内、任意のセルで光ビームの一部の光束を遮断できる光透過制御素子と;
前記光透過制御素子により集光光学系に入射する光ビームを同位相に揃えて、前記参照面に光ビームを集光照射した際に、前記1次元周期構造からの回折光と参照面反射光、若しくは回折光と透過参照光を、これらが重なり合うファーフィールド内へと誘導せしめる導光光学系と;
前記ファーフィールド内に設置された光検知器と;この光検知器を用いて、前記参照面上における、隣り合う各ピット列における4つの異なる位置で集束する光ビームの光強度サンプリングを行って得られたサンプリング値に基づいて演算を行い、光ビームの焦点誤差信号を生成する信号生成部と;この信号生成部で生成された焦点誤差信号に基いて、光ビームの焦点の参照面に対する深さ方向の位置を制御する焦点位置制御部とを含む構成を採用することもできる。
【0024】
また更に本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、信号生成部において、以下の数式を用いて演算処理を行うことにより焦点誤差信号を生成するという技術的手段を採用することもできる。
【数2】
※なお式中において、「FES」は焦点誤差信号を示す。また、「P1〜P4」は、光記録再生媒体の参照面上における接線方向の距離間隔p/4に対応する4つの異なる位置を示す。また、「IDF(0)、IDF(p/4)、IDF(p/2)、IDF(3p/4)」は、差信号のサンプル値を示す。また、「ISUM(0)、ISUM(p/4)、ISUM(p/2)、ISUM(3p/4)」は、和信号のサンプル値を示す。
【0025】
一方、本発明においては、上記課題を解決する光記録再生装置の光ビーム焦点位置決め方法として、
回転ディスク式の光記録媒体の内部に参照面を形成して、この参照面上に回転の接線方向に距離sの周期間隔を持つ1次元周期構造を設ける一方、
発光装置からの光ビームを2次元的に振幅位相変調すると共に、これを前記参照面に対し集光照射して、この周期構造からの回折光と参照面反射光、もしくは、回折光と透過参照光とを、これらが重なり合うファーフィールド内に誘導せしめ、
このファーフィールド内に光検知器を配置して、前記参照面上における、接線方向への距離間隔s/4に対応する4つの異なる位置で集束する光ビームの光強度サンプリングを行い、これらのサンプリング値に基づいた演算により、集光される光ビームの参照面に対する深さ方向位置決めのための焦点誤差信号を生成して、前記集光光ビームの深さ方向位置決めを行う方法を採用できる。
【0026】
また本発明は、上記方法だけでなく、カード型光記録媒体の内部に参照面を形成して、この参照面上に記録再生用の光ビームが横切る方向に距離sの周期間隔を持つ1次元周期構造を設ける一方、
発光装置からの光ビームを2次元的に振幅位相変調すると共に、これを前記参照面に対し集光照射して、この周期構造からの回折光と参照面反射光、もしくは、回折光と透過参照光とを、これらが重なり合うファーフィールド内に誘導せしめ、
このファーフィールド内に光検知器を配置して、前記参照面上における、接線方向への距離間隔s/4に対応する4つの異なる位置で集束する光ビームの光強度サンプリングを行い、これらのサンプリング値に基づいた演算により、集光される光ビームの参照面に対する深さ方向位置決めのための焦点誤差信号を生成して、前記集光光ビームの深さ方向位置決めを行う方法を採用することもできる。
【0027】
また更に本発明では、上記方法だけでなく、回転ディスク式の光記録媒体の内部に参照面を形成して、この参照面上に半径方向に距離pの周期間隔で並列するピット列を設けると共に、ピット列の各ピットが半径方向にp/4ずつ位置ズレして並んだ一次元周期構造を設ける一方、
発光装置からの光ビームを2次元的に振幅位相変調すると共に、これを前記参照面に対し集光照射して、この周期構造からの回折光と参照面反射光、もしくは、回折光と透過参照光とを、これらが重なり合うファーフィールド内に誘導せしめ、
このファーフィールド内に光検知器を配置して、前記参照面上における、隣り合う各ピット列における4つの異なる位置において集束する光ビームの光強度サンプリングを行い、これらのサンプリング値に基づいた演算により、集光される光ビームの参照面に対する深さ方向位置決めのための焦点誤差信号を生成して、前記集光光ビームの深さ方向位置決めを行う方法を採用することもできる。
【発明の効果】
【0028】
本発明では、回転ディスク式の光記録再生媒体の参照面上に接線方向、若しくは半径方向に等周期間隔をもった一次元周期構造を設ける一方、回転する前記光記録再生媒体における参照面に対し、レーザ光を集光照射して、前記周期構造からの回折光および参照面反射光、若しくは回折光および参照面透過光をファーフィールド領域内に誘導せしめ、所定速度で回転する光記録再生媒体の参照面上における接線(半径)方向への距離間隔s/4(p/4)に対応する4つの異なる位置において、干渉する光の光強度をそれぞれ計測することにより、レーザ光の焦点位置を参照面上に正確に位置決めすることができる。
【0029】
具体的には、上記ファーフィールド内に設置した光検知器で計測したサンプリング値に基づいて、信号生成部で演算を行って焦点誤差信号を生成すると共に、この信号に基づいて焦点位置制御部で、上記レーザ光の焦点位置を制御することにより、正確な焦点の位置決めが可能となる。
【0030】
しかも、本発明では、ホログラム・データ・ディスク記録再生装置において、対物レンズに入射される光ビームを、光位相変調器によって2次元的にランダム位相変調する場合でも、光透過制御素子によって光ビームの位相を揃えることができるため、上記参照面上の光ビームの焦点位置制御を問題なく行うことができる。
【0031】
またこれによって、参照面を基準にした記録再生を行うことが可能となるだけでなく、複数のホログラム・データ・ディスクを差し替えて、同じホログラム・データ記録再生装置を用いて記録再生することや、一つのホログラム・データ・ディスクを異なるホログラム・データ・ディスク記録再生装置で記録再生することも可能となる。
【0032】
また、本発明によれば、対物レンズに入射する照射光の強度分布が一様でない場合であっても、光記録媒体の参照面からの反射もしくは透過光と回折光が重なり合う領域の任意の位置に置かれた2分割の出力を用い、これの4点サンプリング値の積和演算によってオフセットのない焦点誤差信号を生成できるため、実用的なファーフィールド焦点誤差検出法を実現できる。
【0033】
したがって、本発明は、対物レンズへの照射光が2次元的にランダムな位相変調を受けている場合、さらに、強度分布が一様でない場合でも、参照面を基準とした焦点誤差信号へのオフセットの発生を抑圧することができることから、光学装置における実用的利用価値は頗る高いものがある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の実施例1の光再生記録装置の光ビーム焦点位置決め機構を表す概略図である(右上の丸枠内は、光強度分布と光検知器の配置を示す図)。
図2】本発明の実施例1の光記憶媒体の構造と、光ビームの焦点位置を表わす説明図である(中央はディスク上面図、下側はディスク断面図、上側は参照面の拡大図)。
図3】本発明の実施例1の実証試験で得られた光ビームの振幅分布を示すデータである。
図4】本発明の実施例1の実証試験で得られた集光スポット強度分布形状を示すデータである(セル数1024×1024での高速フーリエ変換による計算結果)。
図5】本発明の実施例1の実証試験で得られた反射回折光の光強度分布を示すデータである。
図6】本発明の実施例1の実証試験で得られたサンプリングポイントS1における反射回折光の光強度分布を示すデータである。
図7】本発明の実施例1の実証試験で得られたサンプリングポイントS2における反射回折光の光強度分布を示すデータである。
図8】本発明の実施例1の実証試験で得られたサンプリングポイントS3における反射回折光の光強度分布を示すデータである。
図9】本発明の実施例1の実証試験で得られたサンプリングポイントS4における反射回折光の光強度分布を示すデータである。
図10】本発明の実施例1の実証試験で得られた焦点のズレと焦点誤差信号の関係を示すデータである。
図11】本発明の実施例2の光再生記録装置の光ビーム焦点位置決め機構を表す概略図である(右上の丸枠内は、光強度分布と光検知器の配置を示す図)。
図12】本発明の実施例2の光記憶媒体の構造と、光ビームの焦点位置を表わす説明図である(中央はディスク上面図、下側はディスク断面図、上側は参照面の拡大図)。
図13】本発明の実施例3の光記憶媒体の構造と、光ビームの焦点位置を表わす説明図である(中央はディスク上面図、下側はディスク断面図、上側は参照面の拡大図)。
【発明を実施するための形態】
【0035】
『実施例1』
本発明の実施例1を図1から図10に基づいて説明する。なお図中、符号1で指示すものは、発光装置であり、符号2で示すものは光透過制御素子である。また符号3で指示するものは、光位相変調器であり、符号4で指示するものは、集光光学系である。また符号5で指示するものは、光記録媒体であり、符号6で指示するものは、導光光学系である。また符号7で指示するものは、光検知器であり、符号8で指示するものは、信号生成部である。また符号9で指示するものは、焦点位置制御部である。
【0036】
まずこの実施例1では、光記録再生装置の発光装置1としてレーザ光源を使用すると共に、この発光装置1から出射される光ビームL(レーザ光)の進行方向に、光透過制御素子2、光位相変調器3、集光光学系4、及びディスク内部に参照面51が形成された回転ディスク型の光記録媒体5を順に配置している(図1参照)。
【0037】
また本実施例では、上記光透過制御素子2に、全体を構成する複数のセルの内、任意のセルで光ビームLの一部の光束を遮断でき、更に各セルに入射する部分光束の振幅も制御可能な二次元空間光振幅変調器を使用し、この光透過制御素子2で任意の遮断パターン22(黒色のセルは光ビームLを透過しないセル、白色のセルは光ビームLを透過するセル)を形成できるようにしている。
【0038】
また更に本実施例では、上記光位相変調器3に、全体を構成する複数のセルの内、所定のセルを通過した光ビームLの一部の光束について位相変調を行える位相マスク31を二次元空間光位相変調器として使用している。なお、この位相マスク31には、位相変調が可能なセルとそうでないセルがランダムに配置された所定の変調パターン32(灰色のセルは入射した部分光束の位相を変調できるセル、白色のセルは入射した部分光束の位相を変調しないセル)が形成されている。
【0039】
そして、上記対向配置した光透過制御素子2と光位相変調器3については、光透過制御素子2の黒色のセルと光位相変調器3の灰色のセルが光ビームLの進行方向に重なるように、また光透過制御素子2の白色のセルと光位相変調器3の白色のセルが重なるように遮断パターン22と変調パターン32を形成することによって、集光光学系4に入射する光ビームLの位相を揃えることが可能となる。
【0040】
もちろん、上記光透過制御素子2の配置に関しては、光位相変調器3の後側に配置しても同様の効果を得ることができ、また光位相変調器3で同位相に波面が変調された、或いは変調される予定の部分光束を、光振幅変調器の所定のセルで透過もしくは反射して、それ以外の部分光束を残りのセルで遮断することで同様の効果を得ることもできる。
【0041】
一方、本実施例では、上記集光光学系4を、対物レンズ41とリレーレンズ42とから構成している。なお、集光光学系4のリレーレンズ42は、上記光振幅変調器21と位相マスク31で空間的に振幅位相変調された光ビームLの振幅位相分布を、対物レンズ41の入射瞳上に投影する機能だけでなく、入射ビームの焦点方向集束パワーや光ビームLの焦点位置を外部入力により微調整する機能も有している。
【0042】
また本実施例では、上記光記録媒体5に、参照面51上に回転の接線方向(x方向)に距離sの周期間隔を持つ1次元周期構造52・52…が設けられたホログラム・データ・ディスクを使用している(図2参照)。また、この光ディスクは、駆動部にスピンドルモータを備えた回転ディスク装置Dにセットしている。
【0043】
そしてまた、本実施例では、上記光透過制御素子2により集光光学系4に入射する光ビームLを同位相に揃えて、光記録媒体5の参照面51に光ビームLを集光照射した際に、1次元周期構造52から生じる回折光と参照面反射光、若しくは回折光と透過参照光を、これらが重なり合うファーフィールド内へと誘導せしめる導光光学系6を設けている。
【0044】
具体的には、集光光学系4の対物レンズ41とリレーレンズ42の間に、半透過鏡61(ビームスプリッタ)を配置すると共に、この半透過鏡61で外側に分離した光の進行方向にリレーレンズ62を配置している。なお、ここでいう「半透過」とは、一方の旋光方向の円偏光成分を部分的に反射/透過することをいい、その反射/透過の比率は任意の値(例えば、反射光の比率でいうと、1%〜99.5%)をとることができる。
【0045】
また更に、上記ファーフィールド内には光検知器7を設置しており、上記導光光学系6のリレーレンズ62によって、対物レンズ41の射出瞳上での光強度分布を光検知器7上に結像させることができる。また本実施例では、上記光検知器7に、2つのエレメントから構成された2分割光検知器を使用している。
【0046】
また、上記2分割検知器については、ホログラムからの信号を再生するために配置された2次元光検知器アレー中の複数のセルを2分割光検知器として使用することもでき、これによって、ホログラム・データの3次元記録を行う光記録再生装置において、データ検出用2次元光検知器アレーを焦点誤差信号生成用に兼用することができるため、光記録再生装置の小型化及び低廉化も図れる。
【0047】
また更に、上記光検知器7は、光記録媒体5の参照面51上における、接線方向への距離間隔s/4に対応する4つの異なる位置(図2参照)で集束する光ビームLの光強度サンプリングを行って得られたサンプリング値に基づいて光ビームLの焦点誤差信号を生成する信号生成部8(デジタル信号処理装置)に接続している。
【0048】
なお本実施例では、2分割光検知器の2つのエレメントからの出力の差信号及び和信号、それぞれ4つのサンプル値を信号生成部8に送信して演算処理を行っている。また本実施例では、光検知器7と信号生成部8の間に、アナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ-デジタルコンバータC1・C1を介すと共に、このアナログ-デジタルコンバータC1・C1に、サンプリング信号を供給するサンプリングパルス発生回路Jを接続している。
【0049】
また本実施例では、上記信号生成部8において、以下の数式を用いて演算処理を行うことにより焦点誤差信号を生成している。
【数1】
※なお式中において、「FES」は焦点誤差信号を示す。また、「S1〜S4」は、光記録再生媒体の参照面上における接線方向の距離間隔s/4に対応する4つの異なる位置を示す。また、「IDF(0)、IDF(s/4)、IDF(s/2)、IDF(3s/4)」は、差信号のサンプル値を示す。また、「ISUM(0)、ISUM(s/4)、ISUM(s/2)、ISUM(3s/4)」は、和信号のサンプル値を示す。
【0050】
そして、上記信号生成部8で焦点誤差信号を生成した後は、焦点誤差信号を焦点位置制御部9に送信し、この焦点位置制御部9で、集光光学系4のリレーレンズ42のフィードバック制御を行うことにより、光ビームLの参照面51に対する深さ方向の焦点位置Fを最適な位置に微調整できる。
【0051】
また、光記録媒体5として用いる光ディスクが上下震動を無視できる(対物レンズ41の焦点深度以下、即ちサブμm以下)程度で回転する場合、光ディスクの参照面51の位置に焦点位置Fを維持することができる(例えば図2中において、光記録媒体が半周回転した場合には、符号F’の位置に光ビームLが照射される)。
【0052】
また本実施例では、上記焦点位置制御部9と集光光学系4のリレーレンズ42の間に、デジタル信号をアナログ信号に変換するデジタル-アナログコンバータC2を介している。また更に本実施例では、上記信号生成部8と焦点位置制御部9を分けて構成したが、信号生成部8に用いるデジタル処理装置を焦点位置制御部9として兼用することもできる。
【0053】
[効果の実証試験]
次に、上記光ビーム焦点位置決め機構を動作させて行った試験結果について以下に説明する。まず、光透過制御素子2の光ビーム遮蔽セルと光位相変調器3の位相変調セルが空間的に位置整合させて、位相変調する部分光束を光透過制御素子2によって遮蔽可能な状態で光記録媒体5に対する光ビームLの照射を行った。
【0054】
その結果、集光光学系4の対物レンズ41には、光位相変調器3の位相変調の影響を全く受けない、図3に示すような斑状の振幅分布を有する光ビームLを入射させることができた。また、上記光ビームLの集光スポットの光強度分布を調べてみたところ、図4に示すように、光透過制御素子2や光位相変調器3を使用しない場合と殆ど同じ結果を示した。
【0055】
なお、上記図3は、数値計算ソフト(Matlab)を使って、対物レンズ41の入射瞳上での光振幅分布(中心が左下、開口の直径は128で開口の1/4部分が示されている)を描画させたものであり、セルサイズは4×4である
【0056】
次に、光ビームLの焦点位置Fを、光記録媒体5の参照面51から5μmディフォーカスした状態で光ビームLの照射を行ったところ(対物レンズ41の開口数は0.43、レーザ光の波長は0.69μm、一次元周期構造の周期sは1.3μm)、反射回折光の光強度分布は図5に示す結果となった。
【0057】
この結果から、焦点ズレに対応した大きな周期の干渉縞(3から4周期)が生じていること、及びセルサイズで光強度が変動していることが確認できた。なお、図5は、対物レンズ41の射出瞳、即ち光検知器7が配置された面で観測される光強度分布の一つの状態をMatlabにて計算したものである。
【0058】
次に、光記録媒体5の参照面51上における所定のサンプリングポイント(S1・S2・S3・S4の4点)に光ビームLを照射したところ、図6図9に示す光強度分布(計算)のデータが得られた。なお図6〜9中、光検知器7は長方形の枠で示されており、光強度は濃淡で示されている。またこのデータは、以下の[数3]において、βがπ/4、δ=−π/2(図6)、δ=0(図7)、δ=π/2(図8)、δ=π(図9)の状態である。
【数3】
【0059】
なお、上記図6〜9において、強度が変化しないセルは、反射光も1次回折光も存在しない領域、若しくは反射光のみが存在して1次回折光が存在しない領域、若しくは反射光は存在せず1次回折光が存在する領域の何れかであり、焦点位置Fの移動によって光強度が変動しない領域である。
【0060】
一方で、反射光と1次回折光が重なりあう領域は、焦点位置Fの移動によって光強度が変化するため、この領域に光検出器7を配置して、上記4点のサンプリングにより得られたデータを以下の[数4]〜[数8]を使って信号生成部8で演算処理すれば、焦点誤差信号を生成できる。
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【0061】
また、図10は、上記信号生成部8で生成された焦点誤差信号であり、焦点ズレ無しの点(中央)を中心に上下左右対称、オフセットのないSカーブが得られることが示されている。なお、焦点誤差信号のキャプチャレンジの広さは2分割光検知器7の2つの受光エレメント間の間隔に反比例する。
【0062】
『実施例2』
次に本発明の実施例2を、図11及び図12に基づいて以下に説明する。この実施例2では、発光装置1として、ホログラム記録再生用のレーザ光L1(例えば、青紫色のレーザ光)を出射するメインレーザ光源11と、サーボ用のレーザ光L2(例えば、赤色のレーザ光)を出射するサブレーザ光源12を使用している(図11参照)。
【0063】
また、上記サブレーザ光源12と光記録媒体5の間には、導光光学系6であるサーボ用半透過鏡63・63’、及び集光光学系4である対物レンズ41を配置して、図12に示す光記録媒体5のサーボ面53に、サブレーザ光源12から出射したレーザ光L2を対物レンズ41で集光して照射できるようにしている。
【0064】
また本実施例では、上記サーボ面53からの反射光を検出するための光検知器7を、サーボ用半透過鏡63を介して反射光を検出可能な位置に配置し、焦点誤差信号を生成可能な信号生成部8に接続している。またこの信号生成部8は、焦点位置制御部9(サーボ用アンプ91)を介して、集光光学系4の対物レンズ41と光記録媒体5の間隔を調整して焦点位置Fを微調整できるアクチュエータ41aに接続している。
【0065】
そして、上記のように構成したことにより、サブレーザ光源12からレーザ光L2を光記録媒体5のサーボ面53に照射したとき、サーボ面53からの反射光を光検出器7に導いて、信号生成部8で焦点誤差信号を生成し、この信号に基づいて焦点位置制御部9を介して対物レンズ41のアクチュエータ41aを駆動させることができるため、サーボ面53に焦点が合うようにレーザ光L2の焦点位置F2を制御することができる。
【0066】
なお、上記サーボ用レーザ光L2の焦点位置F2の誤差を検出する焦点誤差検出系(光検知器7や信号生成部8等)については、通常の光ピックアップに使われている非点収差法等を利用するものを採用できる。またその他の部分は、実施例1の光ビーム焦点位置決め機構と同じ構成を共通している。
【0067】
次に、上記メインレーザ光源11から出射したレーザ光L1の焦点位置合わせ手段について説明する。まず、メインレーザ光源11から出射したレーザ光L1を、光振幅変調器2及び光位相変調器3を介して空間的に変調する。また、メインレーザ光源11からのレーザ光L1が参照面51上に照射されている間は、同じ光軸上にあるサブレーザ光源12からのレーザ光L2をオフにし、サーボ面53を基準にするサーボをロックする。
【0068】
そして、上記サブレーザ光源12からのレーザ光L2をオフにした状態で、メインレーザ光源11からのレーザ光L1の参照面51に対する焦点位置合わせを実施例1と同様の方法で行う。これにより、ホログラム記録再生用のレーザ光L1の焦点位置F1と、サーボ用のレーザ光L2の焦点位置F2の間隔を、光記録媒体5内の参照面51とサーボ面53と同じ間隔に保つことができる。
【0069】
『実施例3』
次に本発明の実施例3を、図13に基づいて以下に説明する。この実施例3では、回転ディスク式光記録媒体5の参照面51上に、半径方向に距離pの周期間隔で並列するピット列54・54…を設けて一次元周期構造を構成すると共に、ピット列54・54…を構成する各ピット54a・54a…については、接線方向に進むにつれて位置が半径方向にp/4ずつズレるように形成した。
【0070】
そして、上記参照面51上の隣り合う各ピット列における4つの異なる位置で、サンプリングを行い、このサンプリング値に基づいて信号生成部8で焦点誤差信号を生成することにより、光ビームLの焦点位置Fを微調整できるようにした。また、信号生成部8では、以下の数式を用いた演算処理を行って焦点誤差信号を生成した。
【数2】
※なお式中において、「FES」は焦点誤差信号を示す。また、「P1〜P4」は、光記録再生媒体の参照面上における接線方向の距離間隔p/4に対応する4つの異なる位置を示す。また、「IDF(0)、IDF(p/4)、IDF(p/2)、IDF(3p/4)」は、差信号のサンプル値を示す。また、「ISUM(0)、ISUM(p/4)、ISUM(p/2)、ISUM(3p/4)」は、和信号のサンプル値を示す。
【0071】
『実施例4』
次に本発明の実施例4を以下に説明する。この実施例4では、光記録媒体5にカード内部に参照面が形成されたカード型の光記録媒体を使用すると共に、この光記録媒体5に合わせて、光ビームLの焦点を、参照面51上に設けられた距離sの周期間隔をもった1次元周期構造を横切るように相対的に移動させることができる焦点スライド機構を付設して構成した(図示です)。この形態でも、上記実施例1と同様の焦点位置合わせ機能を発揮させることができる。
【0072】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、実施例に限定されるものではなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、発光装置1にはレーザ光源以外の光源を使用することができ、また光透過制御素子2についても、光振幅変調器以外のものを使用できる。また光位相変調器3についても、位相マスク以外のものを適宜使用できる。
【0073】
そしてまた、導光光学系6に関しても、半透過鏡以外の光学部材を使用して構成することもでき、また焦点位置の制御方法についても、集光光学系4の対物レンズ41やリレーレンズ42を移動させる以外の方法を採用することもでき、上記何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0074】
近年、次世代の光記録媒体として記録容量が非常に大きいホログラム・データ・ディスクの研究が進められてる。そのような中で、本発明の光ビーム焦点位置決め機構は、光記録装置の実用性を一段を高めることが可能な有用な技術であることから、その産業上の利用価値は非常に高い。
【符号の説明】
【0075】
1 発光装置
11 メインレーザ光源
12 サブレーザ光源
2 光透過制御素子
21 光振幅変調器
22 遮断パターン
3 光位相変調器
31 位相マスク
32 変調パターン
4 集光光学系
41 対物レンズ
41a アクチュエータ
42 リレーレンズ
5 光記録媒体
51 参照面
52 周期構造
53 サーボ面
54 ピット列
54a ピット
6 導光光学系
61 半透過鏡
62 リレーレンズ
63 サーボ用半透過鏡
7 光検知器
8 信号生成部
9 焦点位置制御部
91 サーボ用アンプ
L 光ビーム
1 ホログラム記録再生用レーザ光
2 サーボ用レーザ光
D 回転ディスク装置
P 焦点位置
1 アナログ-デジタルコンバータ
2 デジタル-アナログコンバータ
J サンプリングパルス発生回路
H ホログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13