(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
制動装置の1つとしてエレベーターを駆動する電動機の制動装置がある。この制動装置78としては、
図1にも示すような一般的にドラムブレーキと呼ばれる装置が用いられる。ドラムブレー
キは、乗りかごを上下方向に走行させる電動機の回転軸1に設けられたブレーキドラム2に、一対設けられたアーム4a,4bに取り付けられたブレーキシュー3a,3bを押し付けて制動するものである。電動機は、前記乗りかごと釣り合い錘を懸垂する主索が巻き掛けられる綱車を駆動して前記乗りかごを走行させる。アーム4a,4bにはばね5a,5b(図では圧縮コイルばね)がそれぞれ設けられ、このばね5a,5bの復元(弾性)力は常時ブレーキシュー3a,3bをブレーキドラム2に押し付けるようにアーム4a,4bに作用している。
【0003】
一方、電動機への制動を解除するために、前述のばね5a,5bの復元力に抗して、ブレーキシュー3a,3bがブレーキドラム2から離間する方向にアーム4a,4bを駆動させるブレーキコア7が備えられている。そして、このブレーキコア7の動作によりばね5a,5bの復元力に抗してブレーキドラム2からブレーキシュー3a,3bを離間させる方向にアーム4a,4bを動作させ、制動を解除する。
【0004】
制動装置78の動作においてはブレーキコア7がスムーズに迅速に動作するか否かが重要である。ブレーキコア7の動作が緩慢になるとアーム4a,4bの解放時間が遅くなる。その結果、ブレーキシュー3a,3bとドラムブレーキ2の接触時間が長くなり、ブレーキシュー3a,3bの摩耗が異常進行し、制動力の低下を招く。また、ブレーキコア7が完全に固渋した場合、アーム4a,4bが解放した状態で停止してしまうことも考えられる。このような場合、乗りかごの昇降動作に不測の事態が生じる可能性を否定できない。
【0005】
このように制動装置78はエレベーターの主幹部品であり、その動作を制御する重要部品である。そのため、ブレーキシュー3a,3bのような消耗品の点検項目の他に、制動装置78の動作特性を検出するブレーキ動作特性評価装置により判定している。また、保守作業の実施状況を顧客に説明する必要がある。
【0006】
そこで、このように保守作業の実施状況を顧客に説明するための報告書を作成する技術が例えば特開2007−91381号公報(特許文献1)に記載されている。
【0007】
この公知技術では、作業報告書は、作業結果報告先、及び作業を担当する保守員の写真を含む作業報告元情報から構成される報告先・報告元ブロックと、保守員が顧客へ報告すべき事項を文章表示する報告要旨ブロックと、選択的に設けられ、作業計画データからの作業写真撮影の指示により作業前後を撮影した写真を掲載する作業写真ブロックと、遠隔監視データ及び機械点検結果と作業結果データとを併記する作業内容報告ブロックと、選択的に設けられ、情報センタ装置に設けられる広告データ記憶手段に記憶された広告データを掲載するトピックス・CMブロックと、を含む構成となっている。そして、この構成により、顧客に対し保守作業の実施状況が分り易く、見映えの良い作業報告書を作成することができるというものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、エレベーターを昇降させる電動機に一般的に用いられるドラムブレーキからなるエレベーターの制動装置の概略構成を示す図である。
【0016】
同図において、エレベーターの制動装置78は、図示しない電動機の回転軸1にブレーキドラム2が直結しており、ブレーキドラム2を挟み込むように一対のアーム4a,4bが配置されている。これら一対のアーム4a,4bのブレーキドラム2と対向する面には、制動用の一対のブレーキシュー3a,3bがそれぞれ設けられている。アーム4a,4bは一端がアーム支持台8の支持部8a,8bに支持ピン8a1,8b1によって揺動可能に支持されている。また、他端は、互いに近接する方向に圧縮コイルばね(以下、単に、ばねと称する。)5a,5bにより弾性力が付与されている。これにより、ブレーキシュー3a,3bがブレーキドラム2と接触し、さらに前記弾性力により押圧されて制動に必要な摩擦力を得ることができる。
【0017】
アーム4a,4bの軌動力を解除させる場合、電磁コイル6に通電し、ブレーキコア7を下方へ移動させる(
図1の状態)。これにより、ばね5a,5bの復元力に対抗する力が発生し、クランク機構を介してアーム4a,4bを矢印a方向移動させる力が作用する。この矢印a方向の移動により、ブレーキシュー3a,3bがブレーキドラム2から離れ、ブレーキシュー3a,3bによるブレーキドラム2の制動力が解除される。
【0018】
図2は本発明の実施形態に係るエレベーターのブレーキ動作特性評価装置を含むブレーキ動作特性判定システムの概略構成を示す機能ブロック図である。ブレーキ動作特性評価装置70はエレベーター79の制動装置78の動作特性を評価する装置である。
【0019】
図2において、ブレーキ動作特性判定システムは、エレベーターのブレーキ動作特性評価装置70、電話回線72若しくは無線電話回線71、保守データ管理サーバー73、営業所74のPC、及びプリンタ80を含む構成となっている。
【0020】
エレベーター79のブレーキ動作特性評価装置70は、端末携帯装置75、カメラ76及びブレーキ動作特性判定部77を含む。ブレーキ動作特性判定部77には、エレベーターの制動装置78、計測装置771及び変位検出装置772が接続されている。また、ブレーキ動作特性評価装置70は、電話回線72、無線電話回線71を介して保守データ管理サーバー73及び営業所74のPC(パーソナルコンピュータ)と通信可能となっている。
【0021】
図2においては、エレベーター79には、制動装置78の他にエレベーター制御装置711及び駆動制御装置712が備えられている。エレベーター制御装置711は駆動制御装置712からの信号を取り込むとともに、それらのデータに基づき当該エレベーター79の運行を制御する。
【0022】
エレベーター制御装置711は、例えば、駆動制御装置712から電動機へ送られる運転信号から算出される運行時間を記憶する。また、エレベーター制御装置711は電話回線72を通じ保守データ管理サーバー73へデータを送受信することが可能であり、保守データ管理サーバー73においてデータを分析し、運行状況を確認することも可能である。さらに、営業所74つまり保守員の出動拠点のPCとも電話回線72を通じてデータの送受信が可能であり、エレベーター79の運行情報を得ることができる。
【0023】
保守データ管理サーバー73には、ビル設備情報データベースが格納されており、例えば、保守のスケジュールの管理を行うことも可能であり、スケジュールの自動割当、管理者による割り当てを行うこともできる。
【0024】
携帯端末装置75は保守データ管理サーバー73と電話回線72を介してデータの送受信が可能である。そのため、上記のように各ビル設備及びエレベーター79に割り当てられたスケジュールの受信とともに過去の保守情報を受信することができる。
【0025】
また、携帯端末装置75は、カメラ76と接続され、カメラ76で撮影されたデータを格納、記憶することができる。携帯端末装置75とカメラ76の接続に関しては、有線無線のいずれでも良いことは言うまでもない。また、フラッシュメモリなどのような記憶媒体を使用することも可能である
。ここまで、各装置は有線での通信としてきたが、それぞれの通信を無線電話回線71あるいは無線通信に置き換えることも可能である。さらに、電話回線に代えて有線あるいは無線のインターネット回線などのデータ通信回線を使用することもできる。
【0026】
図2におけるプリンタ80は、ここでは、携帯端末装置75から無線通信により送られた画像データを報告書20としてプリント出力する機能を有する。
【0027】
図3はブレーキ動作特性評価装置70で作成した作業報告書の概要を示す図である。同図において、保守作業結果報告書20は、上から基本情報表示ブロック21、保守作業内容及び結果表示ブロック22、部品写真ブロック23、並びに保守員連絡内容ブロック24の4つのブロックに分けられている。
【0028】
図4は、基本情報表示ブロック21の表示内容の詳細を示す図である。同図において、基本情報表示ブロック21の表示内容として、顧客情報入力欄31、保守担当情報入力欄32、保守員写真記載欄33が設けられている。
【0029】
顧客情報入力欄31には、ビル名、ご担当者(名)、対象設備、前回保守、納入年、製造#、累積走行時間及び月平均走行時間が記載される。また、保守担当情報入力欄32には、保守会社名、保守員氏名、作業日、問い合わせ先が記載される。保守員写真記載欄33には、保守員の顔写真が掲載される。
図4に示したものは、一例であり、必要に応じて各種情報を記載すれば良い。また、これらの情報は手動での入力のほか保守データ管理サーバー73からの通信により自動入力することもできる。
【0030】
図5は保守作業内容及び結果表示ブロック22の表示内容の詳細を示す図である。同図において、保守作業内容及び結果表示ブロック22の表示内容として、点検項目結果入力欄41、消耗品寿命予測グラフ42及びブレーキ(動作)特性評価値グラフ43が設定されている。この保守作業内容及び結果表示ブロック22には、主に、ブレーキの消耗品、点検項目を記載するが、必要に応じて表示する点検項目を選択することができる。また、
図5ではブレーキシュー(ライニング)3a,3bの摩耗量を示しているが、他の消耗品に関するグラフを表示することも可能である。例えば、アーム4a,4bの支持部8a,8bの支持ピン8a1,8b1の摩耗量を記載するようにすることもできる。
【0031】
摩耗量は例えば
図1に示すようにアーム4a,4bの位置を検出する位置検出センサ773a,773bを設け、アーム4a,4bの位置変化を検出することにより検出することができる。この場合も位置検出センサ773a,773bの出力はブレーキ動作特性判定部77に入力され、ブレーキシュー3a,3bの摩耗量がブレーキ動作特性判定部77で算出され、残存量として
図5の点検項目結果入力欄41に記入される。これと並行して携帯端末装置75から保守データ管理サーバー73に摩耗量のデータが送信され、保守データ管理サーバー73の例えばビル設備情報データベースに格納される。
【0032】
なお、本実施形態では、ブレーキシュー3a,3bの摩耗量の検出に位置検出センサ773a,773bを使用しているが、摩耗量の検出が可能な公知の機構であれば、適用可能であることは言うまでもない。また、保守時に直接ブレーキシュー3a,3bの残量量を計測して摩耗量を検出することもできる。この場合には、位置検出センサ773a,773bは不要である。
【0033】
図6は部品写真ブロック23の表示内容の詳細を示す図である。部品写真ブロック23では、例えば、保守時に発見された部品の傷231などを表示する。このような部品の傷231は、カメラ76により撮影したデータを携帯端末装置75に取り込み、必要な画像を選択して表示する。このとき、
図6に示すように全体図と拡大図を組み合わせて分り易く表示することもできる。
【0034】
図7は保守員連絡内容ブロック24の表示内容の詳細を示す図である。この保守員連絡内容ブロック24には、保守の結果を踏まえ保守員が顧客へ向けて部品交換及び点検項目等に関する連絡を記入する。また携帯端末装置75に保守提案データベースを格納しておき、点検項目の良否により自動選択することもできる。
【0035】
ブレーキ動作特性判定部77は、電磁コイル6に任意の電流パターンを通電する制御基盤を有し、この制御基盤によって電磁コイル6への通電が制御される。また、ブレーキ動作特性判定部77には、計測装置771、変位検出装置772及び位置検出センサ773a,773bが接続されている。
【0036】
計測装置771は、電磁コイル6に通電する電流を監視して計測する電流計等によって構成され、計測結果は計測装置771の出力としてブレーキ動作特性判定部77に入力される。変位検出装置772は、ダイアルゲージや光学式変位計等により構成され、電磁コイル6に通電したときのブレーキコア7の動作変位を計測し、計測結果は変位検出装置772の出力としてブレーキ動作特性判定部77に入力される。ブレーキ動作特性判定部77は、計測した電流とブレーキコア7の移動変位の関係から、ブレーキシュー3a,3bの摩耗に伴うアーム4a,4bの移動量を検出し、この移動量からブレーキシュー3a,3bの摩耗量
を算出する。ブレーキ動作特性判定部77は、これらの結果から制動装置78が正常に動作しているかを判定する。
【0037】
図8は、横軸に電磁コイル6に通電する電流[A]、縦軸にブレーキコア7の移動変位[mm]を取り、電流とコアストロークとの関係を示す図である。
【0038】
前述したようにエレベーターの制動装置78はばね5a,5bとブレーキコア7の力の釣り合い状態により動作が決定する。また、電磁コイル6に通電する電流の大きさとブレーキコア7に発生する電磁力は比例している。よって、電流が大きくなるほどばね5a,5bに対抗する力が大きくなり、アーム4a,4bがブレーキドラム2から離れ、制動力が解放される。
【0039】
ここで、ブレーキコア7が動作しきったところをフルストロークとする(
図8では、約1.5mm)。ブレーキコア7に抵抗力例えば摩擦抵抗が発生している場合、ブレーキコア7がフルストロークに達するまでに、正常状態よりも大きな電流が必要となる。
図8においては、正常状態を正常波形として、異常状態を異常波形として図示している。ブレーキコア7の動きが緩慢すなわち動作が異常になる場合は、
図8に示す電流幅idが広くなる。
【0040】
そこで、このフルストロークの手前の電流値を比較することにより、制動装置78の特性を評価する。電流幅idを取る位置は電流がほぼ垂直に立ち上がっている起動側と、同様にほぼ垂直に立ち下っている釈放側のフルストローク手前の範囲で設定をする。
【0041】
また、単純に電流幅idを比較するだけでなく、ブレーキ機構を運動方程式によりモデル化し、計測値からそのブレーキ特性評価値を算出することも可能である。このような電流幅id等の演算はブレーキ動作特性判定部77によって行われ、ブレーキ動作特性判定部77が演算装置として機能する。また、ブレーキ動作特性判定部77は、どの程度の電流幅idが標準値であり、電流幅idがどの程度広くなると異常であると判断する異常判定値を保持している。これにより、演算装置による計算結果をこの標準値若しくは異常判定値と比較して正常か異常かを判定する。
【0042】
さらに、ブレーキ動作特性判定部77は、上記計測結果及び過去のデータの傾向から後述のように制動装置78の部品交換時期を予測することもできる。
【0043】
図9は横軸に走行時間を、縦軸にブレーキ特性評価値を取った制動動作の動作特性の劣化予測を示す図である。走行時間はエレベーター制御装置711から得られるエレベーター79の走行時間に、ブレーキ特性評価値はブレーキ動作特性判定部77から得られたブレーキ動作特性を評価するために指標化した値であり、実機で計測し、蓄積されたデータから劣化状態を数値に置き換えた便宜上の値である。この値に基づいて本実施形態では、整備が必要な値、整備要規定値を設定している。
【0044】
また、計測し、蓄積したブレーキ特性評価値のデータから制動動作の動作特性劣化予測線L1を作成する。この劣化予測線L1の作成には近似曲線若しくは近似直線を用いる。近似曲線あるいは近似直線のいずれを用いるかは、データの傾向に基づいて選択される。なお、
図9では、3点の計測値(計測結果)に沿った指数近似曲線を使用して劣化予測線L1を作成した。
【0045】
さらに、ブレーキ動作特性判定部77は、装置計測結果のみならず他の保守作業結果の入力も可能である。例えば、
図5に示したような消耗品であるブレーキシュー3a,3bの厚みの計測結果などである。この結果も過去の計測結果を利用し、ブレーキシュー3a,3bの摩耗進行を予測する摩耗進行予測線L2を作成し、摩耗量限界既定値V2を設定して保守時期、部品交換の提案を行うことができる。なお、ブレーキシュー3a,3bの厚み(残存量)は、前述のように位置検出センサ773a,773bの出力から検出できることは言うまでもない。
【0046】
図10は横軸に走行時間、縦軸にシュー摩耗量を取ったブレーキシュー3a,3bの摩耗進行予測を示す図である。なお、この曲線の作成には4点の計測値(計測結果)に基づいて2次の多項近似曲線を用いた。
【0047】
図9では予め設定した整備要既定値V1と制動動作の動作特性の劣化予測線L1が交差する点(走行時間8000時間)、
図10では予め設定した摩耗量限界既定値V2と摩耗進行予測線L2が交差する点(走行時間8000時間)が、次回保守予定より早い場合は、点検時期を早める提案をする、又は部品交換の提案をするなど、図を参照することにより分り易く説明することができる。
【0048】
その際、計測結果数に応じて予測線を作成し、点検日を早め、部品交換を提案する表を作成する。
図11は計測点数と予測線の作成方法及び点検の対応を表形式で示す図である。
図11では、計測点数が1点、2点、3点以上に分け、予測線の作成方法、次回点検予定日以前に予測線が摩耗量限界既定値V2を上回る場合の対応を示している。
【0049】
1点の場合あるいは据え付け時は、予測不能なので、劣化予測線L1、摩耗進行予測線L2の作成は行わない。計測点が2点ある場合には、初期計測値と2点目の計測値から劣化予測線L1、摩耗進行予測線L2を作成する。作成結果から次回点検予定日以前に予測線が摩耗量限界既定値V2を上回ると判断された場合は、点検日を早めること、及び部品交換を行うことを提案する。
【0050】
計測点が3点以上ある場合には、3点以上の計測点から得られる近似直線若しくは近似曲線を使用して予測線を作成する。作成結果から次回点検予定日以前に予測線L1,L2が摩耗量限界既定値V2を上回ると判断された場合は、2点の場合と同様に、点検日を早めること、及び部品交換を行うことを提案する。
【0051】
図12は部品交換が発生した場合の寿命及び摩耗進行予測を示す図である。この予測図は、図示しない表示装置に表示され、また、プリンタ80から報告書20の形で印字出力される。
図10と同様に横軸に走行時間を、縦軸にシュー摩耗量を取っている。
図12では、グラフ上に部品交換の旨を表示し、部品交換後の計測結果をプロットする。そして、部品交換以前の摩耗進行予測線L2を部品交換直後の計測結果から引きなおし、消耗品の摩耗及び劣化進行を予測する。
【0052】
現地状態により摩耗進行予測線L2が変化する場合もあるので、随時新しい計測結果から摩耗進行予測線L2を補正する。また、計測結果を保守データ管理サーバー73に蓄積し、今後の保守間隔の設計にフィードバックすることができる。
【0053】
なお、整備要規定値、あるいは摩耗量限界既定値に到達する時期は、規定値に到達すると予測される総走行時間、その総走行時問に到達する残時間、あるいは前記各規定値に到達すると予測される総走行時間に到達する日時等、その時期が具体的に推定できるものであれば、本実施形態のような予測線を設定するものでなくとも良く、特にその推定の形態を限定するものではない。
【0054】
また、
図3に示す部品写真ブロック23には、
図6に示すような保守時に発見された傷などの写真を掲載するだけでなく、必要に応じて保守データ管理サーバー73から制動装置78の構造図を引用して表示することも可能である。これにより顧客への部品交換への理解の促進へつなげることができる。そして、
図7に示すように保守員から顧客へ部品交換の要旨を報告書として文章で説明することにより、メンテナンス、部品交換の提案を分り易く確実に行うことができる。
【0055】
以上説明したような測定結果、グラフ、写真、及び説明文などの情報は、携帯端末装置75が備えるディスプレイなどからなる表示装置に表示され、その表示結果をプリンタ80などの出力装置によって保守作業結果報告書20等の形態にして出力することができる。
【0056】
なお、本実施形態におけるブレーキ動作特性判定部77としては、エレベーター制御装置711や駆動制御装置712等とは別に設けられたCPUやマイコンなどにより構成することができる。また、エレベーター制御装置711や駆動制御装置712あるいは携帯端末装置75によってその機能を兼ねさせることもできる。
【0057】
以上のように、本実施形態によれば、次のような効果を奏する。
なお、以下の実施形態における効果の説明では、本実施形態の各部について、特許請求の範囲における各構成要素をかっこ書きで示し若しくは参照符号を付し、両者の対応関係を明確にしている。
【0058】
1)電磁コイル6及びブレーキコア7を含み、アーム4a,4bに取り付けられたブレーキシュー3a,3bを電動機と直結したブレーキドラム2に押圧し、電動機の回転軸1を制動する制動装置78を備えた制動装置の動作特性評価装置70であって、前記電磁コイル6の通電により動作する前記ブレーキコア7の変位量を検出する変位検出装置772(変位量検出手段)と、前記電磁コイル6に通電された電流値を計測する計測装置771(計測手段)と、前記変位検出装置772により検出された変位量に対応して前記計測装置771により計測された計測値から前記制動装置78の動作特性を評価するブレーキ動作特性評価装置70(評価手段)と、前記ブレーキ動作特性評価装置70による評価結果を提示する携帯端末75及びプリンタ80(提示手段)と、を備えたので、ブレーキ動作特性評価装置70によって評価された評価結果を例えば報告書20として携帯端末装置75のディスプレイに表示し、あるいはプリンタ80から印字出力することにより顧客に提示することが可能となり、エレベーター79の制動装置の構造を詳しく知らない顧客へ分り易く保守結果を提示することができる。これに伴い、部品交換の提案も容易に行うことが可能となる。
【0059】
2)前記計測装置771(計測手段)は、前記変
位検出装置772(変位量検出手段)によって検出された変位量が最大となる直前における電流値を計測し、前記ブレーキ動作特性評価装置70(評価手段)が、前記変位量が最大となる直前における前記計測された電流値と、正常状態における同様の電流値とを比較して前記制動装置78の劣化状態を判定するブレーキ動作特性判定部77(判定手段)を含むので、前記電流値の比較により劣化の進行状態を容易に判定し、ブレーキ動作特性評価を精度良く行うことができる。
【0060】
3)前記計測装置771(計測手段)による過去の計測データを記憶する保守データ管理サーバー73(記憶手段)と、前記保守データ管理サーバー73との間でデータを送受信可能な携帯端末装置75及び電話回線72あるいは無線電話回線71(データ通信手段)と、をさらに備え、前記ブレーキ動作特性判定部77が、前記携帯端末装置75及び電話回線72あるいは無線電話回線71を介して前記保守データ管理サーバー73から取得した過去の計測データと、今回の計測により得られた同様の計測データとから、制動動作の動作特性の劣化を予測するので、それぞれの制動装置78独自の動作環境及び駆動状態に対応した劣化予測が可能となる。
【0061】
4)前記ブレーキ動作特性判定部77(判定手段)が、予測した制動動作の動作特性の劣化を劣化予測線L1(予測線)として算出し、算出された劣化予測線L1と予め設定された整備要規定値V1とから前記制動動作の動作特性の劣化が前記整備要規定値V1に到達する時期を推定するので、エレベーター79の制動装置78の構造や保守の実態に疎い顧客に対しても視覚的に次の保守整備(点検)が必要な時期を理解させることが可能となる。これに伴い、必要に応じて予定よりも早い点検日の設定を顧客に提案することができる。
【0062】
5)前記ブレーキシュー3a,3bの摩耗量を検出する位置検出センサ773a,773b及びブレーキ動作特性判定部77(摩耗量検出手段)と、前記位置検出センサ773a,773b及びブレーキ動作特性判定部77によって検出された過去の摩耗量データを記憶する保守データ管理サーバー73(摩耗量記憶手段)と、前記保守データ管理サーバー73との間でデータを送受信可能な携帯端末装置75及び電話回線72又は無線電話回線71(データ通信手段)と、をさらに備え、前記ブレーキ動作特性判定部77(判定手段)が、前記携帯端末装置75を介して前記保守データ管理サーバー73から取得した過去の摩耗量データと、今回の計測により得られた同様の摩耗量データとから、前記ブレーキシュー3a,3bの摩耗量の増大を予測するので、それぞれの制動装置78独自の動作環境及び駆動状態に対応したブレーキシュー3a,3bの劣化予測が可能となる。
【0063】
6)前記ブレーキ動作特性判定部77(判定手段)が、予測した摩耗量の増大を摩耗進行予測線L2(予測線)として算出し、算出された摩耗進行予測線L2と予め設定された摩耗量限界規定値V2とか
ら前記ブレーキシュー3a,3bの摩耗量が前記摩耗量限界規定値V2に到達する時期を推定するので、エレベーターの制動装置78の構造や保守の実態に疎い顧客に対しても視覚的に次の部品交換が必要な時期を理解させることが可能となる。これに伴い、必要に応じて予定よりも早い部品交換日の設定を顧客に提案することができる。
【0064】
7)前記提示手段が、判定結果を表示する携帯端末装置75のディスプレイ(表示手段)と、前記判定結果を(保守作業結果)報告書20として印字出力するプリンタ80(印字出力手段)を含むので、顧客への説明時にも、消耗品の消耗の進行や過去データとの比較から制動装置の劣化状態を、視覚を通じて分り易く説明することが可能となり、顧客及び保守員の労力の削減につなげることができる。
【0065】
8)前記制動装置78が、乗りかごと釣り合い錘を懸垂する主索が巻き掛けられる綱車を駆動して前記乗りかごを上下方向に走行させる電動機の回転軸を制動するエレベーター79のドラムブレーキであるので、エレベーター79の保守に際してエレベーター79の制動装置の構造を詳しく知らない顧客へ視覚を通じて分り易く保守結果を提示し、また、点検日の設定時期を提案することができる。
【0066】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。