特許第6042267号(P6042267)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042267
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】液体燃料燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F23D 11/40 20060101AFI20161206BHJP
   F23D 11/02 20060101ALI20161206BHJP
   F23D 11/44 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   F23D11/40 A
   F23D11/02 D
   F23D11/44 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-105692(P2013-105692)
(22)【出願日】2013年5月20日
(65)【公開番号】特開2014-228152(P2014-228152A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2015年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】荏原 裕行
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−096715(JP,U)
【文献】 実開昭59−097319(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 11/40
F23D 11/02
F23D 11/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炎が形成される炎孔部を有するバーナと、前記炎孔部で形成される火炎から燃焼熱を回収する熱回収部を有する気化器とを備えた液体燃料燃焼装置であって、前記炎孔部は火炎形成用炎孔部と、この火炎形成用炎孔部と連通するとともに前記熱回収部と対向する熱回収用炎孔部とから構成され、かつ前記熱回収用炎孔部の長手方向と前記火炎形成用炎孔部の長手方向とが略直交して形成されており、前記火炎形成用炎孔部の周囲に燃焼状態を検知する炎検知手段が設けられていることを特徴とする液体燃料燃焼装置。
【請求項2】
前記熱回収部は長手方向が気化ガスの噴出方向と直交し、前記熱回収部の長手方向と前記熱回収用炎孔部の長手方向が同一方向となるよう配置されて構成されることを特徴とする請求項1記載の液体燃料燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体燃料を気化器で気化した気化ガスをバーナで燃焼させる液体燃料燃焼装置に関し、特に気化器が火炎から燃焼熱を回収する熱回収部を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃焼装置には、燃焼開始時にはヒータで気化器を加熱し、燃焼中は熱回収部が火炎から回収した燃焼熱によって気化器を加熱することで、気化器に供給された液体燃料から気化ガスを生成するように構成されたものがある。熱回収部は火炎からの熱を受けるためバーナの炎孔部に対向するように配置されるが、このバーナの形状には様々なものが提案されている。
【0003】
例えば特許文献1は、混合管上部に仕切板を設け、この仕切板には混合管の反吸込口側に開口が設けられている。さらに仕切板を挟んで混合管の吸込口側に炎孔部が形成されており、これにより混合管の有効全長が、仕切板の開口先端とバーナの反ノズル側端部との距離だけ延長したものと同じ役割を果たすこととなるため、混合管の長さを短くすることができ、燃焼装置の小型化を可能としている。
【0004】
さらに、特許文献2では、上述のバーナに大きさの異なる2つの炎孔網を設け、小さいほうの炎孔網にはフレームセンサを配置して燃焼状態検知用の炎孔網として機能させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−331107号公報
【特許文献2】特開平11−006618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、燃焼中は炎孔部に形成される火炎によって炎孔部の中央部分の温度が上昇するため、特許文献1のように炎孔部の縦横比の小さいバーナでは炎孔部の中央が変形し易くなってしまい耐久性に問題が生じることとなる。加えて、炎孔部面積に対する外周の長さの割合が小さいため、形成される火炎の表面積が小さくなることで二次空気との接触面積も小さくなり、その結果として火炎長が長くなってしまう。
【0007】
また、特許文献2のように炎孔網を複数設けた場合には、炎孔網間で火移りさせる必要があるため炎孔網の間隔をあまり広く取ることができない。炎孔網の間隔が狭くなると、両炎孔から出る火炎が互いに干渉しあうことにより炎孔網間の表面温度が著しく上昇し、炎孔からの噴出速度より燃焼速度の方が速くなってしまう。これにより逆火現象が引き起こされて燃焼状態の悪化やバーナの劣化を招く原因となるおそれがある。さらに、炎孔網ごとに燃焼性能に若干の差が生じる可能性があるため、フレームセンサで検知した燃焼状態検知用の炎孔網での燃焼状態と、もう一方の炎孔網での燃焼状態が異なり正確な燃焼状態を検知できないことも考えられる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためのもので、安定した燃焼状態を維持しつつ熱回収を効果的に行うことのできる液体燃料燃焼装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、火炎が形成される炎孔部を有するバーナと、前記炎孔部で形成される火炎から燃焼熱を回収する熱回収部を有する気化器とを備えた液体燃料燃焼装置であって、前記炎孔部は火炎形成用炎孔部と、この火炎形成用炎孔部と連通するとともに前記熱回収部と対向する熱回収用炎孔部とから構成され、かつ前記熱回収用炎孔部の長手方向と前記火炎形成用炎孔部の長手方向とが略直交して形成されており、前記火炎形成用炎孔部の周囲に燃焼状態を検知する炎検知手段が設けられていることを特徴とする液体燃料燃焼装置である。
【0011】
また、前記熱回収部は長手方向が気化ガスの噴出方向と直交し、前記熱回収部の長手方向と前記熱回収用炎孔部の長手方向が同一方向となるよう配置されて構成されることを特徴とする請求項1記載の液体燃料燃焼装置である。

【発明の効果】
【0012】
上述のように構成することにより、逆火の発生を抑えて安定した燃焼状態を維持しつつ、燃焼火炎からの熱回収を効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例における気化器とバーナの配置を示す側面図である。
図2】バーナの分解図である。
図3】本発明の実施例における気化器とバーナの配置を示す平面図である。
図4】炎孔部のその他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
好適と考える本発明の実施形態を、本発明の作用効果を示して簡単に説明する。
【0015】
本発明は、火炎から燃焼熱を回収する熱回収型の液体燃料燃焼装置であって、火炎形成用炎孔部と熱回収用炎孔部を連通して炎孔部を構成し、火炎形成用炎孔部に燃焼状態を検知する炎検知手段を配置している。
【0016】
火炎形成用炎孔部と熱回収用炎孔部は一体に形成されているので、従来のように火炎が干渉して炎孔網間の表面温度の上昇を引き起こすことがないため逆火の発生が抑えられ、燃焼状態を良好に保つことができる。さらに、炎検知手段は火炎形成用炎孔部、つまりメインで燃焼を行う炎孔に配置することで燃焼状態を正確に検知することが可能となる。
【0017】
また、炎孔部は熱回収用炎孔部の長手方向と火炎形成用炎孔部の長手方向とを略直交させた形状とした。これにより、炎孔部の面積に対する外周の長さの割合が大きくなり、表面積の大きな火炎が形成される。つまり、火炎と二次空気との接触面積が大きくなるため、火炎は完全燃焼することとなり火炎長を短くすることができる。さらに、炎検知装置は火炎形成用炎孔部の長手側に配置することができるので配置の自由度を上げることができるとともに、熱回収部から離して配置することが可能になるため、熱回収部が火炎に与える影響に左右されることなく燃焼状態を正確に検知することができる。
【0018】
また、熱回収部の長手方向と熱回収用炎孔部の長手方向が同一方向となるよう気化器とバーナを配置した。これにより、熱回収部の全域が熱回収用炎孔部に晒されることとなるため効果的に火炎から熱を回収することができる。
【実施例1】
【0019】
以下本発明の一実施例としての液体燃料燃焼装置を図面により説明する。なお以下の説明においては、図中に示したX、Y,Zを用いて部品の位置関係における方向を「幅方向X」、「高さ方向Y」、「奥行き方向Z」として説明を行う。
【0020】
図1は本発明の燃焼装置における気化器1とバーナ2の配置を示す側面図、図2はバーナ2の分解図である。気化器1は液体燃料を気化して気化ガスとする気化室10と、気化室10を加熱するヒータ11と、気化室10で発生した気化ガスをバーナ2に噴出するノズル部12と、ノズル部12を開閉させるプランジャー部13と、バーナ2で形成される火炎から燃焼熱を回収する熱回収部14を備えている。
【0021】
バーナ2は、一端がノズル部12に対向して開口した混合管20と、混合管20の上部に配置されたバーナトップ21と、混合管20とバーナトップ21の間に介挿されてバーナ2内部を上下に仕切る仕切板22から構成されていて、仕切板22には混合管20の開口とは反対側に仕切板開口220が形成されている。
【0022】
また、バーナトップ21には火炎が形成される炎孔部23と、逆火防止及び混合ガスの流れの均一化を図るための火口網24が設けられている。炎孔部23は図のように網材により形成してもよいし、セラミックス基材に多数の小孔を設けたものであってもよい。
【0023】
炎孔部23の近傍には、炎孔部23から噴出する混合ガスに着火する着火手段3と、燃焼状態を検知する炎検知手段4が設けられている。
【0024】
図3は気化器1とバーナ2の配置を示す平面図である。炎孔部23は、熱回収部14と対向する位置に設けられた熱回収用炎孔部231と、一端がこの熱回収用炎孔部231と連通する火炎形成用炎孔部230とから構成されており、熱回収用炎孔部231の長手方向と火炎形成用炎孔部230の長手方向が略直交するように一体成形されている。本燃焼装置において、メインで燃焼を行う炎孔が火炎形成用炎孔部230であり、熱回収用炎孔部231は熱回収部14を加熱することを主な目的とした炎孔である。
【0025】
また、炎孔部23を上述のような形状とすることで、炎孔部23の面積に対する外周の長さの割合が大きくなるため、炎孔部23では表面積の大きな火炎が形成される。つまり、火炎と二次空気との接触面積が大きくなるため、火炎は完全燃焼することとなり火炎長を短くすることができる。
【0026】
着火手段3と炎検知手段4は、火炎形成用炎孔部230周辺の適宜位置に先端が火炎に晒されるようにして配置される。さらに言えば、着火手段3と炎検知手段4が配置されるのは火炎形成用炎孔部230の長手方向沿いであるため、配置することのできる距離が長くなり配置の自由度が大きくなる。よって、燃焼装置の他の部品との兼ね合いにより着火手段3と炎検知手段4を配置することのできる場所に制限があったとしても柔軟に対応することができる。
【0027】
なお炎孔部23は、熱回収用炎孔部231と火炎形成用炎孔部230とが連通し、かつそれぞれの長手方向が略直交するように配置されていればよく、図3で示すようなT字形状のほか図4で示すようにL字形状であってもよい。
【0028】
次に、上述の構成における液体燃料燃焼装置の動作について説明する。
【0029】
燃焼開始が指示されると、まず気化器1のヒータ11へ通電が行われ、ヒータ11の発する熱が気化室10の温度を上昇させる。気化室10の温度は図示しないサーミスタにより検知されており、気化室10が液体燃料を気化することのできる温度まで上昇したことを検知すると図示しない電磁ポンプが始動して液体燃料が気化室10内に供給される。気化室10に供給された液体燃料は、加熱気化されて気化ガスとなる。
【0030】
そして、電磁ポンプの始動に相前後してプランジャー部13に通電が行われノズル部12が開放される。すると気化室10で発生した気化ガスはノズル部12よりバーナ2の混合管20に向けて噴出される。
【0031】
混合管20に向けて噴出された気化ガスは、噴出された際のエジェクタ効果により周囲の空気を一次空気として取り込み、混合管20から仕切板開口220を通過してバーナトップ21内部に流入する。そしてこの間に気化ガスと一次空気が混合されて混合ガスとなり、この混合ガスは火口網24を通り炎孔部23のうちまず上流に位置する火炎形成用炎孔部230から噴出して、着火手段3により着火されて火炎が形成される。
【0032】
さらに混合ガスは炎孔部23の上流から順次噴出して火炎形成用炎孔部230の端部まで到達すると、次に熱回収用炎孔部231から噴出し、熱回収用炎孔部231でも火炎が形成される。このようにして燃焼が開始されると、熱回収部14は熱回収用炎孔部231で形成される火炎に晒されて燃焼熱を回収するようになる。
【0033】
なお、燃焼中は炎検知手段4によって燃焼状態が監視されるため、燃焼状態を良好に保つためには火炎の状態を正確に検知することが必要となる。
【0034】
熱回収用炎孔部231の上方には熱回収部14が配置されているため、熱回収用炎孔部231付近では火炎が熱回収部14に触れることにより火炎の温度が低下したり形状が変形してしまう。したがって、熱回収部14の近傍では燃焼状態を正確に検知することは難しく、できるだけ熱回収部14から離れた位置で燃焼状態を検知することが望ましい。本実施例の形状によれば、炎検知手段4を火炎形成用炎孔部230の長手方向に配置するようになっているので、炎検知手段4の配置を火炎形成用炎孔部230の上流側にするほど熱回収部14から離れた位置で燃焼状態を検知することができるようになる。
【0035】
そして、熱回収部14が火炎から回収した燃焼熱は気化室10へ伝熱し、気化室10を加熱するようになる。サーミスタは常時気化室10の温度を検知しており、気化室10の温度が液体燃料の気化に適した温度となるようヒータ11への通電が制御され、熱回収部14が回収した熱により気化室10が十分に加熱される状態であれば、ヒータ11への通電を停止する。これにより、燃焼中の消費電力を低減させることができる。
【0036】
本実施例の気化器1の熱回収部14は、押出加工により成形され、幅方向Xに長い形状となっている。そして熱回収部14の幅方向と熱回収用炎孔部231の長手方向とが一致するように気化器1とバーナ2を配置することで、熱回収部14の全域が火炎に晒されることとなり、火炎からの熱を効果的に回収することが可能となる。
【0037】
なお、気化器1の熱回収能力は、熱回収部14の幅方向の長さを変えることによって増減可能である。押出加工を用いれば押出長により熱回収能力を調整することができるため、1つの押出金型で気化能力の異なる気化器1に対応することができるので気化器1の生産能力にすぐれた効果を発揮するのである。
【0038】
さらに、熱回収部14は幅方向Xに長い形状であって奥行き方向Zの長さが短いため、バーナ2の奥行き方向Zの長さを短くすることができ、燃焼装置全体の奥行きをコンパクトに構成することが可能となる。
【符号の説明】
【0039】
1 気化器
2 バーナ
4 炎検知手段
14 熱回収部
23 炎孔部
230 火炎形成用炎孔部
231 熱回収用炎孔部
図1
図2
図3
図4