(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、
図1に示すように上下・前後・左右を定義する。
【0014】
≪実施形態≫
図1は、本実施形態に係る浮体吊具100と、展開された状態の浮体200と、を右斜め前方から見下ろした斜視図である。浮体吊具100は、側面視(前後方向)でW字状に折畳み可能な浮体200を吊り上げた状態で、空中にて浮体200を展開・折畳みするものである。
以下では、浮体吊具100の説明に先立って、まず浮体200について簡単に説明する。
【0015】
<浮体の構成>
浮体200は、前記した浮橋(図示せず)を架設する際の橋節となるものであり、架設時において河川等に投入される。浮体200は、側面視(前後方向)でW字状に折畳み可能であり、折畳んだ状態で河川等に投入されると、重力及び浮力の影響で自ずから展開するように構成されている。
【0016】
浮体200は、二つの内側浮体201a,201b(浮体片)と、二つの外側浮体202a,202b(浮体片)と、を備えている。
図1、
図7等に示すように、内側浮体201a,201bは、互いに回動自在に連結されている。
外側浮体202aは、内側浮体201aの右側に配置され、内側浮体201aに対して回動自在に連結されている。同様に、外側浮体202bは、内側浮体201bの左側に配置され、内側浮体201bに対して回動自在に連結されている。つまり、二つの外側浮体202a,202bは、二つの内側浮体201a,201bの外側に一つずつ配置され、自身と隣り合う内側浮体に対して回動自在に連結されている。
【0017】
内側浮体201a,201b及び外側浮体202a,202bは、それぞれ殻状の金属部材(例えば、アルミニウム)で構成され、その内部は中空になっている。
内側浮体201a,201bは、外形が直方体状を呈しており、互いに対向する面(内側浮体201aの左側面、内側浮体201bの右側面)の下辺が回動軸Pとなるようにヒンジ(図示せず)で連結されている。
内側浮体201a,201bの前面のうち、前記したヒンジに対応する箇所には、メインホイスト130aのフック131が掛けられるU字状の掛具203が設置されている。同様に、内側浮体201a,201bの後面のうち、前記したヒンジに対応する箇所に掛具203が設置されている。
【0018】
外側浮体202aは、その外形が、前後方向に沿う柱状を呈しており、内側浮体201aに対して回動自在に連結されている。つまり、互いに対向している外側浮体202aの左側面、及び内側浮体201aの右側面の上辺が回動軸Qとなるように、ヒンジ(図示せず)によって外側浮体202aが内側浮体201aに連結されている。また、浮体200が水上でスムーズに展開するように、外側浮体202aは、右端に向かうにつれて上下方向の長さが短くなるように構成されている。
【0019】
外側浮体202aの右端付近には、サブホイスト140aのフック141が掛けられるU字状の掛具204が設置されている。
同様に、互いに対向している外側浮体202bの右側面、及び内側浮体201bの左側面の上辺が回動軸Rとなるように、ヒンジ(図示せず)によって外側浮体202bが内側浮体201bに連結されている。
【0020】
このように浮体200を構成することで、浮体200を側面視(前後方向)でW字状に展開・折畳みすることができる(
図7、
図8参照)。換言すると、浮体200は、複数の浮体片(内側浮体201a,201b、外側浮体202a,202b)が蛇腹折り状に展開可能に連結されている。
なお、
図1等に示す浮体200の構成は一例であり、蛇腹折り状に展開可能であれば他の構成であってもよい。
【0021】
<浮体吊具の構成>
浮体吊具100は、浮体200を吊り上げた状態で空中にて展開・折畳みするものである。浮体吊具100は、メインフレーム110と、アーム120a,120bと、メインホイスト130a,130bと、サブホイスト140a,140bと、を備えている。
【0022】
(メインフレーム)
メインフレーム110(フレーム、第1フレーム)は、前後方向の両端にメインホイスト130a,130bが設置される部材であり、例えば、アルミ鋼板を穿設・折曲・溶接加工することで形成される。また、メインフレーム110は、二つのアーム120a,120bを回動自在に軸支している(
図9参照)。
図2は、メインフレームを右方から視た側面図である。メインフレーム110は、フレーム部111と、吊持部112a,112bと、被挿通部113と、延出部114H,114Lと、規制部115と、を有している。
【0023】
フレーム部111は、外形が直方体状を呈しており、前後方向に沿って細長く延びている。また、フレーム部111内に配線(図示せず)を引き回したり、軽量化を図ったりするために、フレーム部111は中空構造を呈しており、左壁及び右壁にそれぞれ複数の孔h1が形成されている。
なお、フレーム部111の前後方向の長さは、浮体200前後方向の長さに対応している(
図1参照)。
【0024】
吊持部112aは、浮体吊具100の使用時にメインホイスト130aを吊持する板状部材であり、フレーム部111の前端付近の下壁に溶着されている。吊持部112bについても同様である。
被挿通部113は、浮体吊具100全体を重機(図示せず)で吊り上げる際、チェーンK(
図1参照)が挿通される板状部材である。二つの被挿通部113は、前後方向において延出部114Hを挟むように、フレーム部111の上壁に溶着されている。
【0025】
延出部114Hは、板状を呈しており、前後方向においてフレーム部111の中央付近に設けられている。延出部114Hは、その上面がフレーム部111の上面に連なるように形成され、フレーム部111から右方に延びている(
図1参照)。
同様に、延出部114Lは、その下面がフレーム部111の下面に連なるように形成され、フレーム部111から右方に延びている。
【0026】
延出部114H,114L間の距離は、上下方向におけるアーム120aの長さに対応している。つまり、延出部114H,114Lは、上下方向においてアーム120aを挟むように形成されている(
図1参照)。
延出部114H,114Lには、後記する連結ピン123が挿通される孔(図示せず)が形成されている。また、メインフレーム110を補強するために、上側の延出部114Hは、下側の延出部114Lよりも前後方向において幅広に形成されている。
なお、前記した延出部114H,114Lと同様の構成が、フレーム部111の左側にも形成されている(
図1参照)。
【0027】
規制部115は、上側の延出部114Hと下側の延出部114Lとの間に介在する板状部材であり、後記するアーム120aの回動(平面視で左回りの回動:
図9参照)を規制するために設けられている。規制部115を設けることで、フレーム部111の延在方向(前後方向)と、回動するアーム120aの延在方向と、が略垂直となった状態でアーム120aの回動が規制される。
【0028】
規制部115は、上端が延出部114Hに溶着され、下端が延出部114Lに溶着されている。また、規制部115は、アーム120aが折り畳まれた状態から展開される際、メインフレーム110とアーム120aとが垂直になるまでアーム120aの回動を許容するように配置されている(
図9参照)。
【0029】
(アーム)
図1に示すアーム120a(フレーム、第2フレーム)は、メインフレーム110に対して回動自在に軸支されるとともに、右端付近にサブホイスト140aが設置される部材であり、例えば、アルミ鋼板を穿設・折曲・溶接加工することで形成される。
【0030】
図3は、右側のアームを後方から視た側面図である。アーム120aは、フレーム部121と、吊持部122と、連結ピン123と、を有している。
フレーム部121は、外形が直方体状を呈しており、左右方向に沿って細長く延びている。なお、メインフレーム110とアーム120aとが平面視で垂直になるまでアーム120aの回動が許容されるように(つまり、規制部115に当たらないように)、フレーム部121の左端は平面視で半円形を呈している(
図9参照)。
また、フレーム部121は中空構造を呈しており、前壁及び後壁にそれぞれ複数の孔h2が形成されている。
【0031】
フレーム部121の一端(
図1では、左端)には、連結ピン123を挿通するための孔(図示せず)が上下方向に沿って形成されている。なお、メインフレーム110に対してアーム120aをスムーズに回動させるために、前記した孔の径は、連結ピン123の径よりも若干大きく形成されている。
【0032】
また、アーム120aに作用する重力のモーメントを考慮し、フレーム部121のうち前記した延出部114H,114Lによって挟まれる左端付近が補強されている。
なお、フレーム部121の左右方向の長さは、展開した状態における浮体200のうち、一対の内側浮体201a及び外側浮体202aの左右方向の長さに対応している(
図1、
図7(f)参照)。
【0033】
図3に示す吊持部122は、浮体吊具100の使用時にサブホイスト140a(
図1参照)を吊持する板状部材である。吊持部122は、フレーム部121の右端付近の下壁に溶着されている。
【0034】
連結ピン123は、上下方向に延びる棒状部材であり、平断面視で円形を呈している。連結ピン123は、フレーム部121及び延出部114H,114Lに挿通された状態で、その上端が延出部114Hに溶着され、下端が延出部114Lに溶着される。これによって、連結ピン123を回動軸として、メインフレーム110に対しアーム120aを水平面上で回動させることができる(
図9参照)。
他方のアーム120b(第2フレーム:
図1参照)の構成は、前記したアーム120aと同様であるから説明を省略する。
【0035】
メインフレーム110と、アーム120a,120bと、が
図1に示すように連結されることで、メインホイスト130a,130b及びサブホイスト140a,140bを平面視で十字配置状に吊持することができる。
前記した「十字配置状」とは、互いに垂直な一対の直線のうち、前後方向に沿う直線上にメインホイスト130a,130bが配置され、左右方向(展開方向)に沿う直線上にサブホイスト140a,140bが配置されることを意味している。
【0036】
(メインホイスト)
図4は、メインホイストの正面図である。メインホイスト130a(第1ホイスト)は、内側浮体201a,201bの連結箇所(回動軸Pの前端:
図1参照)を吊り上げ、当該連結箇所の高さを調整する機器である。メインホイスト130aは、フック131と、フックシーブ132と、ワイヤロープ133と、電動機(図示せず)と、筐体134と、を有している。
【0037】
フック131は、回動軸P(
図1参照)の前端の掛具203に掛けられる部材であり、フックシーブ132に設置されている。
フックシーブ132は、ワイヤロープ133をガイドする円盤状の滑車であり、浮体200等に作用する重力を、ワイヤロープ133を介した張力として筐体134内の電動機(図示せず)に作用させるものである。
【0038】
ワイヤロープ133は、フックシーブ132に掛けられており、筐体134内の電動機(図示せず)によって巻上げ又は巻下げられる紐体である。なお、ワイヤロープ133は、筐体134内のワイヤドラム(図示せず)に巻回されている。電動機によってワイヤドラムを回転させることで、ワイヤロープ133が繰り出される長さ(つまり、
図1に示すフック131の高さ)が調整される。
【0039】
電動機(図示せず)は、前記したワイヤドラム(図示せず)を回転させる機能を有しており、例えば、3相交流電力で駆動する。電動機は、ワイヤドラムの回転軸に連結された状態で、筐体134に収容されている。
電動機には、インバータ等の電子回路を有する制御盤150(
図1参照)を介して、例えば外部の発動発電機(図示せず)から電力が供給される。なお、電動機の電力源は発動発電機に限定されず、他の発電機、蓄電装置、又は系統電力であってもよい。
筐体134は、電動機(図示せず)、ワイヤドラム(図示せず)等を収容し、メインフレーム110の吊持部112a(
図2参照)に設置される。
【0040】
他方のメインホイスト130b(第1ホイスト:
図1参照)は、内側浮体201a,201bの連結箇所(回動軸Pの後端:
図1参照)を吊り上げ、当該連結箇所の高さを調整する機器である。なお、メインホイスト130bには、制御盤150に接続された配線(図示せず)を介して電力が供給される。メインホイスト130bの構成については、前記したメインホイスト130aと同様である。
つまり、一対のメインホイスト130a,130bは、浮体200の展開方向(左右方向)と直交する幅方向(前後方向)において、浮体200の両端を吊る機能を有している。
【0041】
(サブホイスト)
図5は、サブホイストの正面図である。サブホイスト140a(第2ホイスト)は、外側浮体202aの右端(外側端部)を吊り上げ、当該右端の高さを調整する機器である。サブホイスト140aは、アーム120aの吊持部122(
図3参照)に設置され、筐体144内の電動機(図示せず)を駆動することでチェーン143が繰り出される長さを調整可能になっている。
【0042】
フックシーブ142に設置されるフック141は、外側浮体202a(
図1参照)の右端の掛具204に掛けられる。そして、前記した電動機の駆動によってチェーン143が巻上げ/巻下げられることで、外側浮体202aの掛具204の高さが調整される。
【0043】
他方のサブホイスト140b(第2ホイスト)は、アーム120bの左端に設置される。また、サブホイスト140bのフック141は外側浮体202bの左端の掛具204に掛けられる。
そして、サブホイスト140a,140bによって、浮体200の左右両端(外側端部)の高さが調整される。つまり、一対のサブホイスト140a,140bは、浮体200の展開方向(左右方向)において、浮体200の両端を吊る機能を有している。
【0044】
(その他機器)
図6は、制御盤に無線信号を送るリモコンの説明図である。リモコン300は、メインホイスト130a,130b及びサブホイスト140a,140bを遠隔操作する際に操作され、当該操作に応じて制御盤150に無線信号を発信する。
リモコン300には、作業者によって操作されるボタンが複数設けられている。前記したボタンには、電源ボタン301、非常停止ボタン302、連動ボタン303U等、単動ボタン305U等がある。
【0045】
連動ボタン303Uは、二つのメインホイスト130a,130bに関して、ワイヤロープ133を巻上げるように各電動機を同期運転する際、作業者によって押されるボタンである。作業者によって連動ボタン303Uが押された場合、メインホイスト130a,130bのフック131の高さが略同一にして回動軸Pを水平に保ちつつ、この回動軸Pを上昇させることができる。なお、その他の連動ボタン303D,304U,304Dについても同様である。
【0046】
単動ボタン305Uは、一方のメインホイスト130aのフック131を上昇させる際、作業者によって押されるボタンである。作業者によって単動ボタン305Uが押されることでメインホイスト130aのみを上昇させ、前記した回動軸P(
図1参照)の前端を上昇させて微調整することができる。なお、その他の単動ボタン305D,306U,306Dについても同様である。
単動ボタン307Uは、一方のサブホイスト140aのフック141を上昇させる際、作業者によって押されるボタンである。なお、その他の単動ボタン307D,308U,308Dについては説明を省略する。
【0047】
<浮体の展開手順>
図7は、陸上における浮体の展開手順を示す側面図(後方から視た図)である。
図7(a)に示すように、側面視でW字状に展開・折畳み可能な浮体200が、折畳まれた状態で陸上に載置されている。なお、浮体200の損傷を防止するため、浮体200は枕木Gの上に載置される。
【0048】
図7(a)に示すように、浮体200が折畳まれた状態において、内側浮体201a,201bの連結箇所に設置された掛具203と、外側浮体202a,202bの外側端部に設置された掛具204と、が浮体200の上端付近で露出している。
まず、作業者によって、
図1に示す回動軸Pの前端の掛具203にチェーンT1の一端が掛けられ、メインホイスト130aのフック131(
図4参照)にチェーンT1の他端が掛けられる。同様に、回動軸Pの後端の掛具203と、メインホイスト130bのフック131と、にチェーンT1が取り付けられる。
【0049】
また、作業者によって、外側浮体202aの右端の掛具204(
図1参照)にチェーンT2の一端が掛けられ、サブホイスト140aのフック141(
図5参照)にチェーンT2の他端が掛けられる。同様に、外側浮体202bの左端の掛具204と、サブホイスト140bのフック141(
図5参照)と、にチェーンT2が取り付けられる。
【0050】
次に、チェーンKに重機(又は天井クレーン:図示せず)のフックFが掛けられ、この重機によって浮体吊具100全体が吊り上げられる。なお、チェーンKは、メインフレーム110の被挿通部113(
図1参照)に挿通される。
そして、ワイヤロープ133及びチェーン143が張った状態となるように(
図7(a)参照)、リモコン300(連動ボタン304U等:
図6参照)の操作によってメインホイスト130a,130b、サブホイスト140a,140bを駆動する。
【0051】
次に、
図7(b)に示すように、重機(図示せず)によって浮体吊具100全体を吊り上げて上昇させ、浮体200を地切りする。ここで、リモコン300の操作によってサブホイスト140a,140bのチェーン143を巻上げることで、外側浮体202a,202bの左右端(外側端部)を吊り上げる。つまり、外側浮体202a,202bにおいて展開方向外向きに張力(水平方向の分力)を発生させる。
【0052】
これによって、次にメインホイスト130a,130bのワイヤロープ133を巻下げる際、内側浮体201a,201b及び外側浮体202a,202bが開きやすくなる(
図7(c)参照)。
なお、
図7(b)に示す状態では、内側浮体201a,201bに作用する重力と、各ヒンジからの抗力と、チェーンT1の張力と、がつり合っており、内側浮体201a,201bが折畳まれたままになっている。
【0053】
次に、リモコン300(連動ボタン303D等:
図6参照)の操作によってメインホイスト130a,130bのワイヤロープ133が巻下げられると、
図7(c)に示す状態になる。すなわち、外側浮体202a,202bから受ける左右方向外向きの引張力と、内側浮体201a,201bの自重と、によって、前記したヒンジ(図示せず)を回動軸P(
図1参照)として内側浮体201a,201bが展開する。
【0054】
さらにメインホイスト130a,130bのワイヤロープ133が巻下げられると、内側浮体201aの左壁と、内側浮体201bの右壁と、が接触し、
図7(d)に示すように内側浮体201a,201bの展開が規制される。
【0055】
次に、内側浮体201a,201b及び外側浮体202a,202bの相対位置を保ちつつ、重機(図示せず)によって内側浮体201a,201bを枕木Gに下ろすと、
図7(e)に示す状態になる。
さらに、重機(図示せず)によって浮体吊具100全体を下ろしつつ、リモコン(連動ボタン303U等)の操作によってメインホイスト130a,130bのワイヤロープ133が巻上げられると、
図7(f)に示す状態になる。その結果、外側浮体202aは、内側浮体201aとの連結箇所(回動軸Q:
図1参照)を中心に回動して展開する。外側浮体202bについても同様である。
【0056】
<浮体の折畳み手順>
図8は、陸上における浮体の折畳み手順を示す側面図(後方から視た図)である。
図8(a)に示すように、展開した状態で浮体200が枕木Gに載置されている。
折畳み時における浮体吊具100の動作は、前記した展開時とは逆の順序になる。すなわち、重機等(図示せず)によって浮体吊具100全体を吊り上げた状態で、掛具203にチェーンT1の一端が掛けられ、メインホイスト130a,130bのフック131(
図4参照)にチェーンT1の他端が掛けられる。
また、掛具204にチェーンT2の一端が掛けられ、サブホイスト140a,140bのフック141(
図5参照)にチェーンT2の他端が掛けられる。
【0057】
次に、重機(図示せず)で浮体吊具100全体を引き上げつつメインホイスト130a,130bのワイヤロープ133を巻下げて、外側浮体202a,202bを起立させる(
図8(b)参照)。続いて、内側浮体201a,201bと外側浮体202a,202bとの相対位置を保ちつつ、重機によって浮体吊具100全体を吊り上げて、浮体200を地切りする(
図8(c)参照)。
次に、サブホイスト140a,140bのチェーン143が張られた状態を保ちつつ、メインホイスト130a,130bのワイヤロープ133を巻上げて、内側浮体201a,201bの連結箇所を上昇させる(
図8(d)参照)。
【0058】
さらに、メインホイスト130a,130bのワイヤロープ133を巻上げて、内側浮体201a,201bを折畳む(
図8(e)参照)。なお、次に浮体吊具100全体が下ろされた際、枕木Gからの抗力によって外側浮体202a,202bが折畳まれるように、
図8(e)の状態においてサブホイスト140a,140bから繰り出すチェーン143の長さに多少の余裕を持たせておく。
次に、重機(図示せず)によって浮体吊具100全体が下ろされると、枕木Gからの抗力によって外側浮体202a,202b(浮体200全体)が完全に折畳まれる。
【0059】
<浮体吊具の折畳み手順>
図9は、メインフレームに対してアームを折畳む際の手順を示す平面図である。
図9(a)の二点鎖線で示すように、浮体吊具100が平面視で十字状に展開された状態において、浮体吊具100の占めるスペースが大きく(例えば、8.1m×8.5m)、このままでは運搬する際に不便である。したがって、本実施形態では、浮体吊具100の収納・運搬等を容易にするために、連結ピン123を回動軸としてアーム120a,120bを折畳み可能な構成にした。
【0060】
例えば、専用車両で浮体吊具100を運搬する際、平面視において左回りでアーム120aを回動させるように力のモーメントが加えられると、連結ピン123を中心としてアーム120aが回動する(
図9(a)の実線)。さらにアーム120aを回動させると、アーム120aの側壁(展開時の前壁:
図1参照)がメインフレーム110の右壁に接触し、前記した回動が規制される(
図9(b)参照)。他方のアーム120bについても同様である。これによって、コンパクトな状態(例えば、8.1m×1.3m)で浮体吊具100を運搬・収容することができる。
【0061】
なお、折畳まれた状態の浮体吊具100を展開する場合、平面視においてアーム120a,120bを右回りに回動させる力のモーメントを加え、メインフレーム110の規制部115によって規制されるまでアーム120a,120bを回動させる。アーム120a,120bの回動しきった状態において浮体吊具100は、平面視で十字状を呈している(
図9(a)の二点鎖線)。
【0062】
<効果>
本実施形態に係る浮体吊具100(
図1参照)によれば、側面視でW字状に展開・折畳み可能な浮体200を吊り上げた状態で空中にて展開・折畳みすることができる。したがって、浮体200を陸上で整備する際、浮体吊具100によって浮体200を吊った状態でメインホイスト130a,130b及びサブホイスト140a,140bを操作し、浮体200を容易に展開・折畳みすることができる。
また、メインフレーム110と、アーム120a,120bと、が平面視で十字状である。したがって、前記した十字の中心付近に重機等のフックF(
図1参照)を掛ければよく、浮体吊具100自体の吊り上げ作業も容易に行うことができる。
【0063】
なお、従来は、二台の重機を用いて浮体200を片側ずつ順に展開していた。例えば、二台の重機によって回動軸P,Q(
図1参照)を吊り上げることで内側浮体201a及び外側浮体202aを展開した後、回動軸P,Rを吊り上げることで内側浮体201b及び外側浮体202bを展開していた。このように、二台の重機が必要である上に浮体200の展開・折畳みに非常に手間がかかっていた。
これに対して本実施形態では、一台の重機で浮体吊具100を吊り上げ、浮体200の展開・折畳み作業を容易かつ短時間に行うことができる。したがって、浮体200の展開・折畳みを行う際の作業負担を大幅に軽減できる。
【0064】
また、浮体吊具100はメインフレーム110、アーム120a,120b、メインホイスト130a,130b、及びサブホイスト140a,140bを備える単純な構成であり、浮体吊具100の製造等に要するコストを抑えることができる。
また、リモコン300(
図5参照)を操作することで無線の指令信号が制御盤150に出力され、これに応じてメインホイスト130a,130b及びサブホイスト140a,140bが駆動する構成となっている。つまり、浮体200を展開・折畳みする際、作業者は浮体200の状態を注視しつつリモコン300を操作すればよく、浮体200を展開・折畳みする際の作業負担を軽減できる。
【0065】
また、浮体吊具100はメインフレーム110に対し、連結ピン123を中心としてアーム120a,120bを回動させることで折畳み可能に構成されている(
図9参照)。したがって、例えば、浮体吊具100を運搬する際、アーム120a,120bを折畳むことで浮体吊具100全体をコンパクト(細長の形状)とし、浮体吊具100を専用車両に積載することができる。
【0066】
また、例えば、浮体200(橋節)を河川に投入して浮橋を架設する際、両岸の地面と河川の水面との高低差が大きい場合がある。このような場合、専用車両に積載した浮体200をそのまま河川に投入すると、河底との接触に伴う衝撃で浮体200が損傷するおそれがある。
本実施形態に係る浮体吊具100を用いて浮体200を吊り上げ、河川の水面に向けて浮体200を徐々に下ろして投入することで、前記した浮体200の損傷を防止できる。
【0067】
≪変形例≫
以上、本発明に係る浮体吊具100について前記実施形態により説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、浮体200は、複数の浮体片が蛇腹折り状に展開可能に連結された構成であればよく、浮体片が4つ(内側浮体201a,201b、及び外側浮体202a,202b)である前記実施形態の場合に限定されない。
また、展開方向(
図1に示す左右方向)において浮体200の両端を吊る一対のサブホイスト140a,140bに加え、前記した浮体片の数に応じて別のサブホイストを追加してもよい。
【0068】
また、前記実施形態では、メインフレーム110及びアーム120a,120bを備える「フレーム」が、平面視で十字状を呈する場合について説明したが(
図1、
図9参照)、これに限らない。
図10は、変形例に係る浮体吊具が備えるフレームの平面図である。前記実施形態で説明したメインフレーム110及びアーム120a,120bに代えて、
図10に示すように、平面視で四角枠状を呈するフレーム160を用いてもよい。
【0069】
フレーム160は、符号A1,B1で示す箇所でそれぞれメインホイスト130a,130bを吊持し、符号A2,B2で示す箇所でそれぞれサブホイスト140a,140bを吊持するように構成されている。つまり、メインホイスト130a,130b及びサブホイスト140a,140bは、フレーム160によって、平面視で十字配置状に吊持される(
図10の一点鎖線参照)。
フレーム160が重機等によって吊り上げられた状態で、メインホイスト130a,130b、及びサブホイスト140a,140bを駆動することによって、浮体200を空中にて展開・折畳みできる。
【0070】
また、前記実施形態では、メインフレーム110に対してアーム120a,120bを折畳み可能に構成していたが、これに限らない。すなわち、平面視で浮体吊具100が十字状を呈するように、メインフレーム110に対して略垂直にアーム120a,120bを固定してもよい。
【0071】
また、前記実施形態では、リモコン300を操作することでメインホイスト130a,130b及びサブホイスト140a,140bを駆動させる場合について説明したが、これに限らない。例えば、メインホイスト130a,130b及びサブホイスト140a,140bのそれぞれにペンダントスイッチ(図示せず)を設置してもよい。この場合、四つのペンダントスイッチそれぞれに作業者を割り当て、各作業者が浮体200の状態を確認しながらペンダントスイッチを操作する。
【0072】
また、前記実施形態では、
図4に示す構成のメインホイスト130a,130bを用いる場合について説明したが、これに限らない。すなわち、二つの内側浮体201a,20bの連結箇所の高さを調整可能であれば、他の種類のホイストを用いてもよい。同様に、二つの外側浮体202a,202bの外側端部の高さを調整可能であれば、他の種類のホイストを用いてもよい。
【0073】
また、前記実施形態では、メインフレーム110の被挿通部113に挿通されたチェーンKにフックFを掛けて重機等で吊り上げる場合について説明したが(
図1参照)、これに限らない。すなわち、アーム120a,120bが、その上壁に溶着された被挿通部(図示せず)を有し、この被挿通部に挿通されたチェーンKにフックFを掛けて重機等で吊り上げるようにしてもよい。
また、メインフレーム110と、アーム120a,120bの両方に被挿通部を設けてもよい。