特許第6042285号(P6042285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042285
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】エレベーターの遠隔監視装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20161206BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20161206BHJP
   B66B 5/02 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B66B5/00 G
   B66B3/00 U
   B66B3/00 R
   B66B5/02 P
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-159445(P2013-159445)
(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-30560(P2015-30560A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】簗瀬 誠司
(72)【発明者】
【氏名】辻 太郎
(72)【発明者】
【氏名】高尾 俊志
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 洋一
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−7308(JP,A)
【文献】 特開2008−56360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00
B66B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターが設置される建屋側に設けられ、前記エレベーターの異常を検知して通報可能な監視装置と、公衆電話回線網を介して前記監視装置からの異常情報を受信する監視センタ装置とを備えたエレベーターの遠隔監視装置において、
前記建屋側に設けられ、保守員が再稼働不可と判断したときに投入する物損スイッチを備えると共に、前記物損スイッチの投入に応じて前記監視装置は、前記公衆電話回線網を介して前記監視センタ装置に通報を行うことを特徴としたエレベーターの遠隔監視装置。
【請求項2】
前記物損スイッチは、部品交換で再稼働可能と判断したときに投入する軽物損スイッチと、改修工事が必要であると判断したときに投入する重物損スイッチとを少なくとも備えることを特徴とした請求項1に記載のエレベーターの遠隔監視装置。
【請求項3】
前記物損スイッチは、かご内操作盤にあって施錠可能なボックス部に配置されることを特徴とした請求項1に記載のエレベーターの遠隔監視装置。
【請求項4】
前記物損スイッチは、キーにより操作されるキースイッチからなることを特徴とした請求項1に記載のエレベーターの遠隔監視装置。
【請求項5】
前記監視装置は、地震検出後、あらかじめ定められる所定時間以内に前記物損スイッチが投入されたことに応じて、前記公衆電話回線網を介して前記監視センタ装置に通報を行うことを特徴とした請求項1に記載のエレベーターの遠隔監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの遠隔監視装置に係り、特に、広域災害発生時にエレベーターの状態を監視センタで把握するエレベーターの遠隔監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地震等による広域災害発生時に、エレベーターの状態を監視センタで把握するものとして、特開2011−1156号公報(特許文献1)がある。この公報には、災害発生時に災害の生じた災害復旧対象物件の物件識別データ・災害状況データを含む異常通報を送信するエレベーター制御盤または監視装置と、このエレベーター制御盤または監視装置から送られてくる異常通報に含む物件識別データ及び災害状況データを受信し、災害復旧対象物件に関する情報、災害復旧作業者及び災害状況等の災害状況付き災害復旧管理用地図を提供可能に作成する保守サービス管理センタと、災害発生時、アクセスのもとに保守サービス管理センタから災害状況付き災害復旧管理用地図の提供を受けて表示部に表示する各災害復旧作業者が所持する携帯端末とを備えた、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−1156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述したものでは、災害発生時、エレベーター側に設けられる監視装置が監視センタ装置に送信するのは、基本的に地震計等や制御装置が検知した異常に基づく異常情報である。しかしながら、実際、災害が発生すると、乗場ドアのビジョンガラスの破損等、装置では検知できない異常が発生することがある。このような異常が発生すると、異常内容に応じて現地出動した保守員は、地震計等の動作を復旧しつつも、エレベーターの再稼働は不可と判断する。このようにエレベーター再稼働不可と判断した場合、保守員はその理由を電話や携帯端末装置を介して監視センタに通報しなければならない。前述した特許文献においても、作業員が災害復旧対象物件を調べた結果、現状では復旧困難と判断したとき、携帯端末から保守サービス管理センタに対して電話をし、復旧困難な理由を通知する、と記載されている。しかし、電話や携帯端末装置を介して監視センタに通報しようとしても、大地震や風水害等の広域災害が発生した状況下にあっては、大量の電話が集中してシステムがダウンすることを防ぐ、いわゆる輻輳規制のため、電話や携帯端末装置が監視センタにつながらず、通報ができないという状況になる虞がある。
【0005】
このような状況で保守員は、被災した他のエレベーターも早急に復旧する必要があることから、監視センタへの通報を諦め、次の現場に赴くことになる。結果として、監視センタ側では、エレベーター不稼働の理由を把握できない事態となる。このような時に、顧客からエレベーターの早期稼働依頼や、不稼働内容の問い合わせがあっても、監視センタの応対者は回答することができず、また、保守員が現地確認済みかも把握できないことから、問い合わせのあったエレベーターの状況確認のために、他の保守員に再出動を指示しなければならなくなり、著しく業務効率が低下するという課題があった。なお、前述した特許文献には、管理室に設置される監視装置の管理人ないし監視員は、エレベーター制御盤から異常通報を受けることなく、自ら直接異常を認識して物件識別データを含む物件の災害状況データを保守サービス管理センタに伝送することもある、と記載されているが、これは建屋の管理を行う者からの情報のことであり、本発明の対象となっている、エレベーターの専門知識をもった保守員による現地からの通報とは、タイミングと主旨が異なるものである。
【0006】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、保守員が再稼働不可と判断したエレベーターの状態を監視センタ側が確実に把握することのできるエレベーターの遠隔監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、エレベーターが設置される建屋側に設けられ、前記エレベーターの異常を検知して通報可能な監視装置と、公衆電話回線網を介して前記監視装置からの異常情報を受信する監視センタ装置とを備えたエレベーターの遠隔監視装置において、前記建屋側に設けられ、保守員が再稼働不可と判断したときに投入する物損スイッチを備えると共に、前記物損スイッチの投入に応じて前記監視装置は、前記公衆電話回線網を介して前記監視センタ装置に通報を行うことを特徴としている。
【0008】
このように構成した本発明では、地震等の災害発生や出動依頼に応じて保守員がエレベーターを点検した際、再稼働不可と判断した場合、物損スイッチを投入する。この物損スイッチの投入に応じて監視装置は、公衆電話回線網を介して監視センタ装置に通報を行う。このように、保守員自身が電話や携帯端末装置により監視センタに通報を行わなくとも、点検が実施され、その結果、再稼働不可と判断した旨が監視センタ装置に通報されるから、エレベーターの状態を監視センタ側で確実に把握することができる。
【0009】
また、本発明は、前記物損スイッチは、部品交換で再稼働可能と判断したときに投入する軽物損スイッチと、改修工事が必要であると判断したときに投入する重物損スイッチとを少なくとも備えることを特徴としている。
【0010】
このように構成した本発明では、保守員が再稼働不可と判断した際、部品交換で再稼働可能な状態であると判断した場合、軽物損スイッチを投入し、一方、改修工事が必要な状態であると判断したときには重物損スイッチを投入する。これによって、監視センタ側はより詳細にエレベーターの状態を把握することができる。
【0011】
さらに、本発明は、前記物損スイッチは、かご内操作盤にあって施錠可能なボックス部に配置されることを特徴としている。
【0012】
このように構成した本発明では、物損スイッチを、かご内操作盤にあって施錠可能なボックス部に配置することで、いたずらにより物損スイッチが投入されることを防ぐことができる。
【0013】
さらにまた、本発明は、前記物損スイッチは、キーにより操作されるキースイッチからなることを特徴としている。
【0014】
このように構成した本発明では、物損スイッチを、キーにより操作されるキースイッチとすることで、いたずらにより物損スイッチが投入されることを防ぐことができる。
【0015】
また、本発明は、前記監視装置は、地震検出後、あらかじめ定められる所定時間以内に前記物損スイッチが投入されたことに応じて、前記公衆電話回線網を介して前記監視センタ装置に通報を行うことを特徴としている。
【0016】
このように構成した本発明では、地震検出後、あらかじめ定められる所定時間以内に物損スイッチが投入されたことに応じて、公衆電話回線網を介して監視センタ装置に通報を行うことで、誤操作等により物損スイッチが投入され、不必要な通報が監視センタ装置に行われることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、建屋側に設けられ、保守員が再稼働不可と判断したときに投入する物損スイッチを備えると共に、物損スイッチの投入に応じて監視装置は、公衆電話回線網を介して監視センタ装置に通報を行うことにより、保守員自身が電話や携帯端末装置により監視センタに通報を行わなくとも、点検が実施され、その結果、再稼働不可と判断した旨が監視センタ装置に通報されるから、エレベーターの状態を監視センタ側で確実に把握することができる。これによって、顧客による監視センタへの問い合わせ等に適切に対応できる共に、不必要に保守員を再出動させるといった事態を回避することができる。
【0018】
また、物損スイッチは、部品交換で再稼働可能と判断したときに投入する軽物損スイッチと、改修工事が必要であると判断したときに投入する重物損スイッチとを少なくとも備えることにより、監視センタ側はより詳細にエレベーターの状態を把握することができ、これによって、監視センタ側は適切な対応をとり、迅速なエレベーターの再稼働を実現することができる。
【0019】
さらに、物損スイッチを、かご内操作盤にあって施錠可能なボックス部に配置したり、キーにより操作されるキースイッチから構成することにより、いたずらによって物損スイッチが投入されることを防ぐことができる。
【0020】
さらにまた、監視装置は、地震検出後、あらかじめ定められる所定時間以内に物損スイッチが投入されたことに応じて、公衆電話回線網を介して監視センタ装置に通報を行うことにより、誤操作等により物損スイッチが投入され、不必要な通報が監視センタ装置に行われることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のエレベーターの遠隔監視装置の一実施例を示す概略構成図である。
図2】本実施例における遠隔監視装置の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るエレベーターの遠隔監視装置の実施例を図に基づき説明する。
【実施例1】
【0023】
本実施例のエレベーターは、図1に示すように、乗りかご1とつり合いおもり3はメインロープを介して接続され、メインロープ2は、トラクションマシン4に巻き掛けられており、制御装置5は、トラクションマシン4に直結した図示しないモータを制御し、乗りかご1を昇降させる。また、昇降路下部には、地震を検出する地震計6が設置されている。
【0024】
乗りかご1内には、かご内操作盤7が設置されており、かご内操作盤7には、乗客が乗りかご1の行き先階を登録する行き先階釦7e、乗りかご1のドアを開閉する開閉釦7fが配置されている。また、かご内操作盤7の下部には、通常時には施錠されており、保守員がエレベーターの各種操作を行うスイッチが配置されるスイッチボックス7aが設けられており、このスイッチボックス7aには、乗りかご1を停止させる際に投入する停止スイッチ7c、乗りかご1の保守作業の際に乗りかご1を低速運転に設置する保守スイッチ7d、エレベーターを稼働させることができない物損が発生したと保守員が判断したときにキーを使用して投入する物損スイッチ7bが配置されている。物損スイッチ7bを投入すると、停止スイッチ7cの操作時と同様に乗りかご1の運行は不可となる。
【0025】
かご内操作盤7に設置されている各スイッチの操作信号や各釦の押圧信号は、制御装置5に入力され、制御装置5にはこれら各種信号に応じた制御をエレベーターに対して実施する。また、制御装置5に入力される信号のすべては監視装置8に送信され、監視装置8は、これらの信号に基づき異常を判断する。異常を検知すると、公衆電話回線網9を介して監視センタ装置10に異常通報を行う。
【0026】
監視センタ装置10の処理装置10bは、通信装置10aで受信した異常通報に基づきエレベーターを特定するデータベース10dが接続されている。データベース10dは、保守契約しているエレベーターが設置される建屋の建屋情報、エレベーター情報等が記憶されている。したがって、処理装置10bは、異常通報を受信すると、特定したエレベーターを管轄する営業所11の表示装置11aに、通信装置10cを介して建屋情報、エレベーター情報、および受信した異常通報内容を送信する。
【0027】
営業所11には表示装置11aが設けられており、営業所11の管理者は、表示装置11aの表示内容を確認して、最寄りの保守員、または営業所11に待機している保守員に、異常通報を実施したエレベーターの点検を行うよう出動を指示する。
【0028】
本実施例にあっては、地震が発生すると制御装置5は、地震計6の地震計動作信号の入力に基づき、乗りかご1を最寄り階に乗客が使用できない状態にして停止させると共に、監視装置8は、制御装置5からの受信信号により、監視センタ装置10に地震通報を行い、地震により乗りかご1を停止させた旨を通報する。
【0029】
監視センタ装置10の処理装置10bは、通信装置10aで受信した地震通報をもとにデータベース10dから情報を読み出し、地震通報のあったエレベーターを管轄する営業所11の表示装置11aに、通信装置11cを介して建屋情報、エレベーター情報、および地震通報を送信する。
【0030】
営業所11の管理者は、表示装置11aの表示内容を確認して、最寄りの保守員、または営業所11に待機している保守員に、地震により停止したエレベーターに対応するよう出動を指示する。また、地震は広域で多数のエレベーターに影響を及ぼすので、各保守員は日頃から地震時の対応訓練を受けており、病院等の対応優先顧客の住所や巡回順序を熟知している。したがって、一旦地震が発生したことを知ると、管理者の指示が無くともあらかじめ定められた巡回順序に沿って地震で停止したエレベーターの復旧を実施する。
【0031】
地震で停止しているエレベーターは、乗りかご1の位置を示す位置表示灯が設置されている図示しない表示装置が消灯している。この場合、地震で停止したエレベーターを復旧させる保守員は、まず乗りかご1の位置を確認し、乗りかご1に乗り込んで保守スイッチ7dを投入し、乗りかご1を低速運転で昇降させ、各階の乗場の状態や走行中の乗り心地や異常の有無を確認する。このとき、乗場の状態や走行状態に支障がなく、異音等もなければ、通常運転支障なしと判断し、地震計6を復旧させ、利用者が使用可能な通常運転に設定して、保守員は次のエレベーターの復旧に向かう。監視装置8は、地震計6の復旧と通常運転の設定信号が入力されると、地震復旧信号を監視センタ装置10に送信する。この地震復旧信号により管理者は当該エレベーターの地震復旧処理が完了したことを認知する。
【0032】
一方、保守員による異常確認の際、例えば乗場ドアのビジョンガラスの破損や異音が発生していることを認知すると、乗りかご1の走行に支障ありと判断し、所持しているキーにより物損スイッチ7bを投入する。このとき、物損内容がガラス交換のように部品交換で対応可能なのか、或いはつり合いおもり3の脱レールのように改修工事が必要なのかを判断し、改修工事が必要な場合は、重物損と判断し、停止スイッチ7cを合わせて投入する。
【0033】
監視装置8は、物損スイッチ7bの投入信号の入力に応じ、停止スイッチ7cの投入状態信号も合わせて物損スイッチ通報として監視センタ装置10に送信する。この物損スイッチ通報により、管理者は当該エレベーターが通常運転利用不可であること、同時に送信された停止スイッチ7cの投入状態信号により、エレベーターを利用するために、部品交換、または改修工事のどちらかが必要なのかを判断することができる。したがって、エレベーターの顧客から問い合わせがあった場合、現地確認済みであること、エレベーターを利用するために、部品交換、または改修工事が必要なことを回答することができる。なお、この物損スイッチ7bの投入により、エレベーター走行停止となると共に、物損スイッチ通報も実施される重要度の高いものであることから、誤操作等により不必要な通報が行われることを防ぐため、地震計6による地震検出後、あらかじめ定められる所定時間以内で物損スイッチ7bが有効となるように設定されている。
【0034】
次に、図2のフローチャートに基づき地震発生時の具体的な処理について説明する。なお、図2にあって、保守員が行う処理はSには手順番号を付し、監視装置8の処理にはTに処理番号を付し、監視センタ装置10の処理にはUに手順番号を付して説明する。
【0035】
まず、監視装置8の手順T1で地震計6の動作を常時確認しており、所定震度以上の地震が発生し、地震計6が動作すると、エレベーターを停止すると共に、手順T2として地震計動作通報を監視センタ装置10に送信する。
【0036】
監視センタ装置10の処理装置10bは手順U1として、通信装置10aによる地震計動作通報受信の有無を確認しており、地震計動作通報の受信があった場合、地震計動作通報とデータベースに記憶されたデータから、建屋情報、およびエレベーター情報を当該エレベーターを管轄する営業所11の表示装置11aに送信装置10cを介して送信する。
【0037】
営業所11の表示装置11aは、地震計動作通報があったエレベーターの建屋情報、およびエレベーター情報を表示し、管理者は担当の保守員に現地に出動し対応するように指示する。
【0038】
出動対応の指示、またはあらかじめ定められる地震時の巡回順序に沿ってエレベーター状態の確認を行う保守員は、手順S1でエレベーターが停止していない場合、現地確認を終了する。この後、保守員は、地震時である場合、巡回順序に沿って次のエレベーターの確認に赴く。
【0039】
一方、手順S1でエレベーターが止まっている場合(手順U2で出動指示された場合は必然的に止まっていることが前提である。)、手順S2として、エレベーターの点検を実施する。この点検の結果、物損や異音がなく、利用者がエレベーターを使用するのに支障がなければ、手順S6として、地震計6の復旧を行う。しかし、エレベーターを稼働するのに支障がある場合、手順S3として、部品交換で復旧可能かどうかを判断し、改修工事が必要であると判断した場合は、手順S4として、停止スイッチ7cを投入し、この状態でさらに手順S5として、物損スイッチ7bも投入する。一方、部品交換で復旧可能であると判断した場合は、停止スイッチ7cは投入せず、手順S5として、物損スイッチ7bのみを投入する。次いで、手順S6として、保守員は地震計6を復旧し、当該エレベーターの現地確認を終了する。この後、保守員は巡回順序にしたがって次のエレベーターに赴く。
【0040】
手順T2を実施した監視装置8は、手順T3として、地震計6の動作から所定時間経過したかどうかを確認し、所定時間内に手順T4として、物損スイッチ7bが投入されたことを検知すると、手順T5として、物損スイッチ投入通報を監視センタ装置10に送信する。このとき、停止スイッチ7cの投入状態も合わせて送信する。次いで、手順T6で、地震計6の復旧を確認し、復旧確認の時点で手順T7として、地震計復旧通報を監視センタ装置10に送信する。
【0041】
手順U2を実施した監視センタ装置10は、手順U3として、通信装置10aによる物損スイッチ投入通報受信の有無を確認し、物損スイッチ投入通報受信があると、処理装置10bは、物損スイッチ投入通報とデータベースに記憶されたデータから、建屋情報、エレベーター情報、および物損スイッチ投入通報を当該エレベーターを管轄する営業所11の表示装置11aに送信する。これに応じて表示装置11aは、送られてきた情報の表示を行う。
【0042】
また、手順U5として、通信装置10aによる地震復旧通報受信の有無を確認し、地震復旧通報受信があると、処理装置10bは手順U6として、地震復旧通報とデータベースに記憶されたデータから、建屋情報、エレベーター情報、および地震復旧通報を当該エレベーターを管轄する営業所11の表示装置11aに送信する。これに応じて表示装置11aは、送られてきた情報の表示を行う。
【0043】
前述した処理により、営業所11の管理者は、地震発生後、管轄地域において、保守員が現地出動して確認したエレベーターの台数、未確認のエレベーターの台数、確認により稼働不可と判断したエレベーターの物損の程度を確実に把握する。そして、エレベーターの顧客から問い合わせがあった場合、現地対応の実施や未実施、稼働の可否、稼働不可時の被災状況の概略的な説明を行う。
【0044】
本実施例によれば、建屋側に設けられ、保守員が再稼働不可と判断したときに投入する物損スイッチ7bを備えると共に、物損スイッチ7bの投入に応じて監視装置8は、公衆電話回線網9を介して監視センタ装置10に通報を行うことにより、保守員自身が電話や携帯端末装置により監視センタに通報を行わなくとも、点検が実施され、その結果、再稼働不可と判断した旨が監視センタ装置10に通報されるから、エレベーターの状態を監視センタ側で確実に把握することができる。これによって、顧客による監視センタ10への問い合わせ等に適切に対応できる共に、不必要に保守員を再出動させるといった事態を回避することができる。
【0045】
また、保守員による異常確認で乗りかご1の走行に支障ありと判断した際、部品交換で再稼働可能と判断したときには物損スイッチ7bを投入し、改修工事が必要であると判断したときには停止スイッチ7cと共に物損スイッチ7bを投入することにより、監視センタ側はより詳細にエレベーターの状態を把握することができ、これによって、監視センタ側は適切な対応をとり、迅速なエレベーターの再稼働を実現することができる。
【0046】
さらに、物損スイッチ7bを、かご内操作盤7にあって施錠可能なスイッチボックス7aに配置すると共に、キーにより操作されるキースイッチから構成することにより、いたずらによって物損スイッチ7bが投入されることを防ぐことができる。
【0047】
さらにまた、監視装置8は、地震検出後、あらかじめ定められる所定時間以内に物損スイッチ7dや停止スイッチ7cが投入されたことに応じて、公衆電話回線網9を介して監視センタ装置10に通報を行うことにより、誤操作等により物損スイッチ7dや停止スイッチ7cが投入され、不必要な通報が監視センタ装置10に行われることを防ぐことができる。
【0048】
なお、前述した実施例では、一般的にスイッチボックス7a内に設けられ、保守員によって操作される停止スイッチ7cに重物損スイッチの役割を持たせ、保守員による異常確認の際、改修工事が必要であると判断したときに、停止スイッチ7cと共に物損スイッチ7bを投入し、一方、部品交換で再稼働可能と判断したときには物損スイッチ7bのみを投入するようにしたが、物損スイッチとして、部品交換で再稼働可能と判断したときに投入する軽物損スイッチと、改修工事が必要であると判断したときに投入する重物損スイッチとを別途設けても良い。また、物損の基準として、本実施例では、部品交換で再稼働可能とする軽物損と、改修工事が必要であるとする重物損の2つに分類したが、本発明はこれに限らず、さらに物損の程度を細分化し、それぞれの物損の程度を通報するスイッチを設け、さらに詳細な情報を監視センタで把握できるようにしても良い。さらに、物損スイッチ7bは、キーの所有者のみ操作可能なキースイッチが望ましいが、停止スイッチ7cや保守スイッチ7dと同様の波型スイッチで構成することもできる。
【符号の説明】
【0049】
1 乗りかご
2 メインロープ
3 つり合いおもり
4 トラクションマシン
5 制御装置
6 地震計
7 かご内操作盤
7a スイッチボックス
7b 物損スイッチ
7c 停止スイッチ
7d 保守スイッチ
7e 行き先階釦
7f 開閉釦
8 監視装置
9 公衆電話回線網
10 監視センタ装置
10a 通信装置
10b 処理装
10c 送信装置
10d データベース
11 営業所
11a 表示装置
図1
図2