(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンの実回転数とアクセル開度から算出される目標回転数との偏差に基づいて、エンジンによって駆動される可変容量型の油圧ポンプの斜板角度が制御される建設機械であって、
エンジンの目標回転数が検出された大気圧におけるエンジンの最大トルクを出力可能な最大トルク回転数以上の場合、アイソクロナス制御によってエンジンが制御され、
エンジンの目標回転数が検出された大気圧におけるエンジンの最大トルクを出力可能な最大トルク回転数未満の場合、ドループ制御によってエンジンが制御される建設機械。
アイソクロナス制御によってエンジンが制御される場合に前記油圧ポンプの斜板角度の制御を開始する制御目標回転数と、ドループ制御によってエンジンが制御される場合に前記油圧ポンプの斜板角度の制御を開始する制御目標回転数と、が異なる値に設定されている請求項1に記載の建設機械。
前記エンジンの実回転数がエンジンのローアイドル回転数に到達した場合、アイソクロナス制御によってエンジンが制御される請求項1または請求項2に記載の建設機械。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、
図1から
図3を用いて、本発明の建設機械の一実施形態であるバックホー1について説明する。以下の説明では矢印F方向をバックホー1の前方向、矢印U方向をバックホー1の上方向として前後左右上下方向を規定して説明する。なお、本実施形態においては、バックホー1を建設機械の一実施形態として説明するが、建設機械はこれに限るものではない。
【0016】
図1に示すように、バックホー1は、主として走行装置2、旋回装置4、および作業装置7を具備する。
【0017】
走行装置2は、主として左右一対のクローラ3・3、左走行用油圧モータ3L、および右走行用油圧モータ3Rを具備する。走行装置2は、左走行用油圧モータ3Lにより機体左側のクローラ3を、右走行用油圧モータ3Rにより機体右側のクローラ3を、それぞれ駆動することで、バックホー1を前後進および旋回させることができる。
【0018】
旋回装置4は、主として旋回台5、旋回モータ6、操縦部14、およびエンジン19等を具備する。旋回台5は、旋回装置4の主たる構造体となるものである。旋回台5は、走行装置2の上方に配置され、走行装置2に旋回可能に支持される。旋回装置4は、旋回モータ6を駆動することで、旋回台5を走行装置2に対して旋回させることができる。旋回台5には、作業装置7、操縦部14、動力源となるエンジン19、ECU22および油圧回路23(
図2参照)が設けられる。また、旋回台5には、大気圧Pを検出する大気圧センサ21(
図2参照)が設けられる。
【0019】
作業装置7は、主としてブーム8、アーム9、アタッチメントの一種であるバケット10、ブームシリンダ11、アームシリンダ12、アタッチメント用シリンダ13を具備する。
【0020】
ブーム8は、その一端部が旋回台5の略中央前端部に回転自在に支持される。ブーム8は、伸縮自在に駆動するブームシリンダ11によって一端部を回転中心として回転される。
【0021】
アーム9は、その一端部がブーム8の他端部に回転自在に支持される。アーム9は、伸縮自在に駆動するアームシリンダ12によって一端部を回転中心として回転される。
【0022】
アタッチメントの一種であるバケット10は、その一端部がアーム9の他端部に回転自在に支持される。バケット10は、伸縮自在に駆動するアタッチメント用シリンダ13によって一端部を回転中心として回転される。
【0023】
このように、作業装置7は、バケット10を用いて土砂等の掘削等を行う多関節構造を構成している。作業装置7には、ブームシリンダ11、アームシリンダ12およびアタッチメント用シリンダ13に作動油を供給するために図示しない油圧配管が設けられる。なお、本実施形態に係るバックホー1は、バケット10を有して掘削作業を行う作業装置7としているが、これに限定するものではなく、例えばバケット10の代わりに油圧ブレーカーを有して破砕作業を行う作業装置7であっても良い。
【0024】
操縦部14は、種々の操作具を備え、バックホー1を操作可能に構成される。操縦部14は、旋回台5の左側前方に設けられる。操縦部14は、キャビン15内の略中央に操縦席16が配置され、その左右両側に操作レバー装置17(
図2参照)が配置される。操作レバー装置17は、作業装置7と旋回台5とを操作可能に構成される。
【0025】
操縦部14には、エンジン19のスロットル開度Snを変更するアクセル18(
図2参照)が備えられる。操縦者は、アクセル18を操作することによってエンジン19の出力(エンジン19の回転数)を変更することができる。
【0026】
エンジン19は、走行装置2、旋回装置4、および作業装置7に動力を供給するものである。具体的には、エンジン19は、
図2に示すように、走行装置2、旋回装置4、および作業装置7が具備する油圧機器に作動油を供給する後述の油圧ポンプ29とパイロット油圧ポンプ30とを駆動する。エンジン19は、ECU22によって制御される。
【0027】
エンジン19には、エンジン19の実回転数Nを検出する回転数検出センサ20が設けられる。回転数検出センサ20は、ロータリーエンコーダから構成され、エンジン19の出力軸に設けられる。なお、回転数検出センサ20は、本実施形態においては、ロータリーエンコーダから構成しているが、これは特に限定するものではなく、実回転数Nを検出することができるものであればよい。
【0028】
次に、
図2を用いて、バックホー1が具備するECU22について説明する。
【0029】
ECU22は、エンジン19等を制御するものである。ECU22は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。また、ECU22は、後述の制御装置36と一体的に構成されてもよい。ECU22は、エンジン19等を制御するために種々のプログラムが格納される。
【0030】
ECU22は、エンジン19の制御特性に関するプログラムとして、負荷の増減に伴ってエンジン19の回転数を変動させるドループ特性と、負荷の増減に関わらずエンジン19の回転数を一定とするアイソクロナス特性とに関するプログラムを格納する。また、排ガス規制値を満たすために、大気圧Pに基づいてエンジン19の出力トルク特性Tpを算出するための出力トルク特性マップM1を格納する。本実施形態において、出力トルク特性Tpとは、大気圧Pの下、エンジン19が排ガス規制値を満たした状態でのそれぞれのエンジン回転数(以下、単に「回転数」と記す)における出力可能範囲、すなわち各回転数における最大出力トルクを示すものである。
【0031】
さらに、ECU22は、算出した出力トルク特性Tpにおいて、目標回転数Nt(アクセル開度Snに対するエンジン19が維持すべき回転数)を指標として、エンジン19をドループ特性に基づいて制御するか(以下、単に「ドループ制御」と記す)、アイソクロナス特性に基づいて制御するか(以下、単に「アイソクロナス制御」と記す)を選択する制御特性マップM2を格納する。
【0032】
ECU22は、エンジン19に設けられる図示しない各種センサや燃料噴射装置に接続され、燃料噴射装置が噴射する燃料の噴射量等を制御することが可能である。
【0033】
ECU22は、回転数検出センサ20に接続され、回転数検出センサ20が検出するエンジン19の実回転数Nを取得することが可能である。
【0034】
ECU22は、大気圧センサ21に接続され、大気圧センサ21が検出する大気圧Pを取得することが可能である。
【0035】
ECU22は、取得した大気圧Pに基づいて、出力トルク特性マップM1からエンジン19の出力トルク特性Tpを算出することが可能である。
【0036】
ECU22は、後述の制御装置36に接続され、アクセル18のアクセル開度Snに基づいて制御装置36が算出する目標回転数Ntを取得することが可能である。
【0037】
ECU22は、取得した目標回転数Ntおよび算出した出力トルク特性Tpに基づいて、制御特性マップM2からアイソクロナス制御とドループ制御のうちエンジン19に適用する制御特性を選択することが可能である。
【0038】
具体的には、ECU22は、大気圧Pから設定されたエンジン19の出力トルク特性Tpにおいて、目標回転数Ntが最大トルクを出力する最大トルク回転数Np以上の場合にはアイソクロナス制御を選択する。一方、ECU22は、出力トルク特性Tpにおいて、目標回転数Ntが最大トルク回転数Np未満の場合にはドループ制御を選択する。
【0039】
次に、
図2と
図3とを用いて、バックホー1が具備する油圧回路23について説明する。
【0040】
図2に示すように、油圧回路23は、旋回モータ用方向切換弁24、ブームシリンダ用方向切換弁25、アームシリンダ用方向切換弁26、アタッチメント用方向切換弁27、走行モータ用方向切換弁28、油圧ポンプ29、パイロット油圧ポンプ30、制御装置36、流量調節装置32(
図3参照)を具備する。
【0041】
旋回モータ用方向切換弁24、ブームシリンダ用方向切換弁25、アームシリンダ用方向切換弁26およびアタッチメント用方向切換弁27は、パイロット油圧によってスプールが摺動されることにより旋回モータ6、ブームシリンダ11、アームシリンダ12、およびアタッチメント用シリンダ13に供給される作動油の流れを切り換えるパイロット式の方向切換弁である。
【0042】
旋回モータ用方向切換弁24は、旋回モータ6に供給される作動油の方向を切り換える。旋回モータ用方向切換弁24が一のポジションのとき、旋回モータ6は作動油によって一方向に回転駆動される。旋回モータ用方向切換弁24が他のポジションのとき、旋回モータ6は作動油によって他方向に回転駆動される。
【0043】
ブームシリンダ用方向切換弁25は、ブームシリンダ11に供給される作動油の方向を切り換える。ブームシリンダ11は、ブームシリンダ用方向切換弁25の作用により伸縮し、ブーム10が上方または下方に回動される。
【0044】
アームシリンダ用方向切換弁26は、アームシリンダ12に供給される作動油の方向を切り換える。アームシリンダ12は、アームシリンダ用方向切換弁26の作用により伸縮し、アーム9がクラウド側またはダンプ側に回動される。
【0045】
アタッチメント用方向切換弁27は、アタッチメント用シリンダ13に供給される作動油の方向を切り換える。アタッチメント用シリンダ13は、アタッチメント用方向切換弁27の作用により伸縮し、バケット10がクラウド側またはダンプ側に回動される。
【0046】
走行モータ用方向切換弁28は、左走行用油圧モータ3L、および右走行用油圧モータ3R(以下、単に「走行モータ3L・3R」と記載する)に供給される作動油の方向を切り換える。走行モータ用方向切換弁28が一のポジションのとき、走行モータ3L・3Rは作動油によって一方向に回転駆動される。走行モータ用方向切換弁28が他のポジションのとき、走行モータ3L・3Rは作動油によって他方向に回転駆動される。
【0047】
旋回モータ用方向切換弁24、ブームシリンダ用方向切換弁25、アームシリンダ用方向切換弁26、アタッチメント用方向切換弁27および走行モータ用方向切換弁28は、操作レバー装置17の操作に基づいてパイロット油圧によって各方向切換弁に供給される作動油の方向を切り換え可能に構成される。
【0048】
油圧ポンプ29は、エンジン19によって駆動され、作動油を吐出するものである。油圧ポンプ29は、可動斜板29aの斜板角度を変更することによって吐出量を変更可能な可変容量型のポンプである。油圧ポンプ29から吐出された作動油は、各方向切換弁へと供給される。
【0049】
パイロット油圧ポンプ30は、エンジン19によって駆動され、作動油を吐出することにより、油路30a及び油路30b内にパイロット油圧を発生させる(
図3参照)。油路30aは、電磁比例減圧弁35を介して圧力サーボ弁34の第二パイロットポート34cに接続される。油路30a及び油路30b内のパイロット油圧は、リリーフ弁31により所定の圧力に保持される。
【0050】
図3に示すように、流量調節装置32は、油圧ポンプ29の吐出量を調節するものである。流量調節装置32は、主として、流量制御アクチュエータ33、圧力サーボ弁34、電磁比例減圧弁35を具備する。
【0051】
流量制御アクチュエータ33は、油圧ポンプ29の可動斜板29aに連結され、可動斜板29aの斜板角度を変更することで、油圧ポンプ29の吐出量を制御するものである。流量制御アクチュエータ33のボトム室は、油路33aを介して圧力サーボ弁34と接続される。
【0052】
圧力サーボ弁34は、流量制御アクチュエータ33に供給される作動油の流量を変更するものである。圧力サーボ弁34は、油路29cを介して油路29bと接続される。圧力サーボ弁34の第一パイロットポート34aは、油路34bを介して油路29bと接続される。圧力サーボ弁34の第二パイロットポート34cは、油路30a、電磁比例減圧弁35を介してパイロット油圧ポンプ30と接続される。圧力サーボ弁34は、スプールの摺動によりポジション34X、又はポジション34Yに切り換わることが可能である。
【0053】
圧力サーボ弁34がポジション34Xにある場合、油圧ポンプ29の吐出圧力は、流量制御アクチュエータ33のボトム室に付与されず、ボトム室内の作動油は油路33a、圧力サーボ弁34、及び油路34dを介して作動油タンクに戻される。この結果、流量制御アクチュエータ33は、油圧ポンプ29の吐出量を増加させるように油圧ポンプ29の可動斜板29aの角度を変更する。
【0054】
圧力サーボ弁34がポジション34Yにある場合、油圧ポンプ29の吐出圧力は、流量制御アクチュエータ33のボトム室に付与される。この結果、流量制御アクチュエータ33は、油圧ポンプ29の吐出量を減少させるように油圧ポンプ29の可動斜板29aの角度を変更する。
【0055】
電磁比例減圧弁35は、圧力サーボ弁34に付与されるパイロット油圧を減圧するものである。電磁比例減圧弁35は油路30aの中途部に配置される。電磁比例減圧弁35は、圧力サーボ弁34の第二パイロットポート34cに付与されるパイロット油圧を減圧させて圧力サーボ弁34のポジションをポジション34Xに切り換え可能に構成される。
【0056】
制御装置36は、流量調節装置32によって油圧ポンプ29の吐出量を制御するものである。制御装置36は、アクセル開度Snに基づいて目標回転数Ntを算出するための目標回転数マップM3、算出した目標回転数Ntに基づいて電磁比例減圧弁35の制御を行う基準となる制御目標回転数Ncを算出するための制御目標回転数マップM4、実回転数Nと制御目標回転数Ncとの偏差ΔNに基づいて電磁比例減圧弁35の制御を行うための種々のプログラムが格納される。目標回転数Ntは、アクセル開度Snに対するエンジン19が維持すべき回転数である。制御目標回転数Ncは、油圧ポンプ29の吐出量を変更する制御を開始する基準となる回転数である。
【0057】
制御装置36は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。
【0058】
制御装置36は、操作レバー装置17に接続され、操作レバー装置17からの操作信号を取得することが可能である。
【0059】
制御装置36は、アクセル18に接続され、アクセル18からの操作信号であるエンジン19のアクセル開度Snを取得することが可能である。
【0060】
制御装置36は、電磁比例減圧弁35に接続され、電磁比例減圧弁35に制御信号を伝達することが可能である。
【0061】
制御装置36は、ECU22に接続され、ECU22が後述の回転数検出センサ20から取得したエンジン19の実回転数Nおよび算出した出力トルク特性Tpを取得することが可能である。
【0062】
制御装置36は、取得したアクセル開度Snに基づいて、目標回転数マップM3からエンジン19の目標回転数Ntを算出することが可能である。
【0063】
制御装置36は、算出した目標回転数Ntに基づいて、制御目標回転数マップM4から制御目標回転数Ncを算出することが可能である。
【0064】
具体的には、制御装置36は、エンジン19の目標回転数Ntに基づいて異なる制御目標回転数Ncを算出する。また、制御装置36は、目標回転数Ntが最大トルク回転数Np未満の場合の制御目標回転数Ncよりも目標回転数Ntが最大トルク回転数Np以上の場合の制御目標回転数Ncのほうが大きく(目標回転数Ntと制御目標回転数Ncとの偏差が小さく)なるように算出する。すなわち、制御装置36は、エンジン19の制御がドループ制御である場合の制御目標回転数Ncよりもアイソクロナス制御である場合の制御目標回転数Ncのほうが大きくなるように算出する。
【0065】
以下では、上述の如く構成されるバックホー1のエンジン19および油圧ポンプ29の制御態様について説明する。
【0066】
制御装置36は、制御装置36から取得したアクセル開度Snに基づいて目標回転数マップM3から目標回転数Ntを算出する。
【0067】
ECU22は、出力トルク特性マップM1からエンジン19の出力トルク特性Tpを算出する。そして、ECU22は、算出した出力トルク特性Tpにおいて、目標回転数Ntに基づいて制御特性マップM2からエンジン19の制御特性をドループ制御とアイソクロナス制御とのうちいずれか一方を選択する。
【0068】
制御装置36は、算出した目標回転数Ntに基づいて、制御目標回転数マップM4から制御目標回転数Ncを算出する。そして、制御装置36は、ECU22から取得したエンジン19の実回転数Nと算出した制御目標回転数Ncとから偏差ΔN(=Nc−N)を算出し、0以上か否か判断する。
【0069】
偏差ΔNが0よりも大きい場合、制御装置36は、電磁比例減圧弁35によって圧力サーボ弁34をポジション34Yにするように制御する。この結果、流量制御アクチュエータ33によって油圧ポンプ29の吐出量(吸収トルク)が減少するように油圧ポンプ29の可動斜板29aの角度が変更される。偏差ΔNが0未満の場合、制御装置36は、電磁比例減圧弁35によって圧力サーボ弁34をポジション34Xにするように制御する。この結果、流量制御アクチュエータ33によって油圧ポンプ29の吐出量(吸収トルク)が増加するように油圧ポンプ29の可動斜板29aの角度が変更される。
【0070】
以下では、
図4から
図7を用いて、ECU22と制御装置36とにおけるエンジン19と油圧ポンプ29との制御態様について具体的に説明する。説明の都合上、
図4に示すECU22によるエンジンの制御態様を説明した後に、
図5に示す制御装置36による油圧ポンプ29の制御態様を説明するが、制御の優劣を示すものではなくECU22と制御装置36とが相互に連携してエンジン19と油圧ポンプ29とを制御している。
【0071】
図4に示すように、ステップS110において、ECU22は、大気圧センサ21が検出する大気圧Pを取得し、ステップをステップS120に移行させる。
【0072】
ステップS120において、ECU22は、回転数検出センサ20からエンジン19の実回転数Nを取得し、ステップをステップS130に移行させる。
【0073】
ステップS130において、ECU22は、取得した大気圧Pに基づいて出力トルク特性マップM1から出力トルク特性Tpを算出し、算出した出力トルク特性Tpを大気圧Pにおけるエンジンの出力トルク特性として設定する。同時に、ECU22は、算出した出力トルク特性Tpから最大トルク回転数Npを算出し、ステップをステップS140に移行させる。
【0074】
ステップS140において、ECU22は、制御装置36から目標回転数Ntを取得し、ステップをステップS150に移行させる。
【0075】
ステップS150において、ECU22は、算出した取得した目標回転数Ntが最大トルク回転数Np未満であるか否か判定する。
その結果、目標回転数Ntが最大トルク回転数Np未満であると判定した場合、ECU22はステップをステップS160に移行させる。
一方、目標回転数Ntが最大トルク回転数Np未満でないと判断した場合、すなわち、目標回転数Ntが最大トルク回転数Np以上であると判断した場合、ECU22はステップをステップS260に移行させる。
【0076】
ステップS160において、ECU22は、算出した取得した目標回転数Ntがローアイドル回転数Nlowであるか否か判定する。
その結果、目標回転数Ntがローアイドル回転数Nlowであると判定した場合、ECU22はステップをステップS170に移行させる。
一方、目標回転数Ntがローアイドル回転数Nlowないと判定した場合、ECU22はステップをステップS370に移行させる。
【0077】
ステップS170において、ECU22は、エンジン19の制御としてアイソクロナス制御を選択しステップをステップS110に戻す。
【0078】
ステップS260において、ECU22は、エンジン19の制御としてアイソクロナス制御を選択しステップをステップS110に戻す。
【0079】
ステップS370において、ECU22は、エンジン19の制御としてドループ制御を選択しステップをステップS110に戻す。
【0080】
次に、
図5に示すように、ステップS410において、制御装置36は、アクセル18からの操作信号であるアクセル開度Snを取得し、ステップをステップS420に移行させる。
【0081】
ステップS420において、制御装置36は、取得したアクセル開度Snからエンジン19の目標回転数Ntを算出し、ステップをステップS430に移行させる。
【0082】
ステップS430において、制御装置36は、ECU22から実回転数Nを取得し、ステップをステップS440に移行させる。
【0083】
ステップS440において、制御装置36は、算出した目標回転数Ntに基づいて制御目標回転数マップM4から制御目標回転数Ncを算出し、ステップをステップS450に移行させる。
【0084】
ステップS450において、制御装置36は、取得した実回転数Nと算出した制御目標回転数Ncとから偏差ΔN(Nc−N)を算出し、ステップをステップS460に移行させる。
【0085】
ステップS460において、制御装置36は、算出した偏差ΔNが算出した0よりも大きいか否か判定する。
その結果、偏差ΔNが0よりも大きいと判定した場合、制御装置36はステップをステップS470に移行させる。
一方、偏差ΔNが0よりも大きくないと判定した場合、すなわち、偏差ΔNが0未満であると判定した場合、制御装置36はステップをステップS570に移行させる。
【0086】
ステップS470において、制御装置36は、電磁比例減圧弁35によって圧力サーボ弁34をポジション34Yにするように制御し、すなわち、油圧ポンプ29の吐出量を減少させてステップS410に戻す。
【0087】
ステップS570において、制御装置36は、電磁比例減圧弁35によって圧力サーボ弁34をポジション34Xにするように制御し、油圧ポンプ29の吐出量を増加させてステップS410に戻す。
【0088】
例えば、
図6と
図7とに示すように、ECU22は、大気圧P1に基づいて出力トルク特性マップM1から算出した出力トルク特性Tp1を出力トルク特性として設定する。
【0089】
図6に示すように、ECU22は、目標回転数Ntが最大トルク回転数Np1未満の場合、エンジン19の制御としてドループ制御を選択する。制御装置36は、負荷トルク(油圧ポンプ29の吸収トルク)の増加に伴ってドループ制御によりエンジン19の実回転数Nを緩やかに低下させる。制御装置36は、偏差ΔNが0よりも大きくなると電磁比例減圧弁35によって圧力サーボ弁34をポジション34Yにするように制御して油圧ポンプ29の吐出量を減少させる。すなわち、制御装置36は、油圧ポンプ29の吸収トルクThがそのときのエンジン19の出力トルクTa未満になるように電磁比例減圧弁35を制御する。制御目標回転数Ncは、ECU22がエンジン19をドループ制御可能な程度に設定されている。
【0090】
図7に示すように、ECU22は、目標回転数Ntが最大トルク回転数Np1以上の場合、エンジン19の制御としてアイソクロナス制御を選択する。制御装置36は、負荷トルクの増加に伴ってアイソクロナス制御によりエンジン19の出力トルクを増加させる。ECU22は、エンジン19の出力トルクが目標回転数Ntにおける最大トルクに到達すると実回転数Nを低下させて出力トルクを増加させる。制御装置36は、実回転数Nが低下することにより偏差ΔNが0よりも大きくなると、油圧ポンプ29の吸収トルクThがそのときのエンジン19の出力トルクTb未満になるように電磁比例減圧弁35によって圧力サーボ弁34をポジション34Xにするように制御する。制御目標回転数Ncは、エンジン19がECU22によってアイソクロナス制御されていることから、ドループ制御での制御目標回転数Ncよりも大きく設定されている。
【0091】
また、ECU22は、目標回転数Ntが最大トルク回転数Np1未満の場合でも実回転数Nがローアイドル回転数Nlowに到達するとエンジン19の制御としてアイソクロナス制御を選択する。従って、制御装置36は、エンジン19の制御態様がアイソクロナス制御に切り替わると、制御目標回転数Ncをローアイドル回転数Nlowにおけるアイソクロナス制御に対応した制御目標回転数Ncに切り替えて油圧ポンプ29の斜板角度を制御する。
【0092】
このように構成することで、バックホー1は、エンジン19の目標回転数Ntが最大トルク回転数Np1未満の場合、負荷トルクの増加に伴いドループ特性に基づいてエンジン19の実回転数Nを緩やかに低下させる。これにより、バックホー1は、エンジン19の出力トルクがその実回転数Nにおける最大トルクを上回る前に偏差ΔNが0よりも大きくなり、油圧ポンプ29の吐出量(吸収トルク)が減少するように流量制御アクチュエータ33を制御する。
【0093】
すなわち、バックホー1は、エンジン19の目標回転数Ntが最大トルク回転数Np未満の場合、エンジン19のドループ制御に加え、油圧ポンプ29の吐出量を制御することにより、急激なエンジン19の実回転数Nの変動を防止することができる。従って、バックホー1は、作業内容に応じてエンジン19の制御態様を選択しつつ、ECU22によるエンジン19の制御と制御装置36による油圧ポンプ29の制御との干渉によるエンジン19の回転数のハンチングの発生を防止することができる。
【0094】
また、バックホー1は、エンジン19の制御がドループ制御である場合の制御目標回転数Ncよりもアイソクロナス制御である場合の制御目標回転数Ncのほうが大きくなるように算出する。さらに、エンジン19の目標回転数Ntがローアイドル回転数の場合にアイソクロナス制御が適用される。これにより、バックホー1は、エンジン19の制御態様に応じて油圧ポンプ29の吐出量が制御される。従って、バックホー1は、ECU22によるエンジン19の制御と制御装置36による油圧ポンプ29の制御とのバランスがとれて、エンジンの出力を有効活用し、エンストを防止することができる。
【0095】
また、バックホー1は、目標回転数Ntが最大トルク回転数Np以上の場合、ECU22が制御装置36からクレーン走行モードが選択された旨の信号を取得すると、エンジンの目標回転数Ntを最大トルク回転数Np未満に変更する。すなわち、ECU22は、エンジン19の制御としてドループ制御を選択するとともに、クレーン作業可能な吊り走行速度までエンジンの目標回転数Ntを低下させる。これにより、バックホー1は、エンジン19の実回転数Nを低下させるための回路素子、入出力ポート、バックホー1の走行速度を低下させるためのスイッチ等が不要になる。
【0096】
次に、
図6から
図8を用いて、本発明に係るバックホー1のエンジン19および油圧ポンプ29の制御態様ついて具体的に説明する。なお、以下の実施形態において、既に説明した実施形態と同様の点に関してはその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0097】
制御装置36は、流量調節装置32によって油圧ポンプ29の吐出量を制御するものである。制御装置36は、アクセル開度Snに基づいて目標回転数Ntを算出するための目標回転数マップM3、算出した目標回転数Ntに基づいて基準偏差ΔNsを算出するための基準偏差マップM4A、実回転数Nと目標回転数Ntとの偏差ΔN1(Nt−N)に基づいて電磁比例減圧弁35の制御を行うための種々のプログラムが格納される。目標回転数Ntは、アクセル開度Snに対するエンジン19が維持すべき回転数である。基準偏差ΔNsは、油圧ポンプ29の吐出量を変更する制御を開始する基準となる目標回転数Ntと実回転数Nとの偏差をいう。
【0098】
制御装置36は、算出した目標回転数Ntに基づいて、基準偏差マップM4Aから基準偏差ΔNsを算出することが可能である。
【0099】
具体的には、制御装置36は、エンジン19の目標回転数Ntに基づいて異なる基準偏差ΔNsを算出する。また、制御装置36は、目標回転数Ntが最大トルク回転数Np未満の場合の基準偏差ΔNsよりも目標回転数Ntが最大トルク回転数Np以上の場合の基準偏差ΔNsのほうが小さくなるように算出する。すなわち、制御装置36は、エンジン19の制御がドループ制御である場合の基準偏差ΔNsよりもアイソクロナス制御である場合の基準偏差ΔNsのほうが小さくなるように算出する。
【0100】
以下では、上述の如く構成されるバックホー1のエンジン19および油圧ポンプ29の制御態様について説明する。
【0101】
制御装置36は、算出した目標回転数Ntに基づいて、基準偏差マップM4Aから基準偏差ΔNsを算出する。そして、制御装置36は、ECU22から取得したエンジン19の実回転数Nと算出した目標回転数Ntとから偏差ΔN1(=Nt−N)を算出し、基準偏差ΔNsと比較する。
【0102】
偏差ΔN1が基準偏差ΔNs以上の場合、制御装置36は、電磁比例減圧弁35を電磁比例減圧弁35によって圧力サーボ弁34をポジション34Yにするように制御する。この結果、流量制御アクチュエータ33によって油圧ポンプ29の吐出量(吸収トルク)が減少するように油圧ポンプ29の可動斜板29aの角度が変更される。偏差ΔN1が基準偏差ΔNs未満の場合、制御装置36は、電磁比例減圧弁35によって圧力サーボ弁34をポジション34Xにするように制御する。この結果、流量制御アクチュエータ33によって油圧ポンプ29の吐出量(吸収トルク)が増加するように油圧ポンプ29の可動斜板29aの角度が変更される。
【0103】
以下では、
図8を用いて、ECU22と制御装置36とにおけるエンジン19と油圧ポンプ29との制御態様について具体的に説明する。
【0104】
次に、
図8に示すように、ステップS441において、制御装置36は、算出した目標回転数Ntと取得した実回転数Nから偏差ΔN1を算出し、ステップをステップS451に移行させる。
【0105】
ステップS451において、制御装置36は、算出した目標回転数Ntに基づいて、基準偏差マップM4から基準偏差ΔNsを算出し、ステップをステップS461に移行させる。
【0106】
ステップS461において、制御装置36は、算出した偏差ΔN1が算出した基準偏差ΔNs以上か否か判定する。
その結果、偏差ΔN1が基準偏差ΔNs以上と判定した場合、制御装置36はステップをステップS470に移行させる。
一方、偏差ΔN1が基準偏差ΔNs以上でないと判定した場合、すなわち、偏差ΔN1が基準偏差ΔNs未満であると判定した場合、制御装置36はステップをステップS570に移行させる。
【0107】
図6に示すように、制御装置36は、偏差ΔN1が基準偏差ΔNs以上になると電磁比例減圧弁35によって圧力サーボ弁34をポジション34Yにするように制御して油圧ポンプ29の吐出量を減少させる。すなわち、制御装置36は、油圧ポンプ29の吸収トルクThがそのときのエンジン19の出力トルクTa未満になるように電磁比例減圧弁35を制御する。基準偏差ΔNsは、ECU22がエンジン19をドループ制御可能な程度に設定されている。
【0108】
図7に示すように、制御装置36は、実回転数Nが低下することにより偏差ΔN1が基準偏差ΔNs以上になると、油圧ポンプ29の吸収トルクThがそのときのエンジン19の出力トルクTb未満になるように電磁比例減圧弁35によって圧力サーボ弁34をポジション34Yにするように制御する。基準偏差ΔNsは、エンジン19がECU22によってアイソクロナス制御されていることから、ドループ制御での基準偏差ΔNsよりも小さく設定されている。
【0109】
また、制御装置36は、エンジン19の制御態様がアイソクロナス制御に切り替わると、基準偏差ΔNsをローアイドル回転数Nlowにおけるアイソクロナス制御に対応した基準偏差ΔNsに切り替えて油圧ポンプ29の斜板角度を制御する。
【0110】
このように構成することで、バックホー1は、エンジン19の出力トルクがその実回転数Nにおける最大トルクを上回る前に偏差ΔN1が基準偏差ΔNsよりも大きくなり、油圧ポンプ29の吐出量(吸収トルク)が減少するように流量制御アクチュエータ33を制御する。また、バックホー1は、エンジン19の制御がドループ制御である場合の基準偏差ΔNsよりもアイソクロナス制御である場合の基準偏差ΔNsのほうが小さくなるように算出する。