【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記焼却装置の給気システムが2段階枝分れダクト構造となっているためか、各枝ダクトの流速(風量)にバラツキが顕著であり、しかも、各枝ダクトの風量も非定常流であり、安定させるのに時間を要し、一旦安定してもすぐに風量バラツキと非定常流となってしまう。
【0006】
この現象の原因を考察すると、燃焼室内の堆積廃棄物の燃焼如何によっては大量ガスが瞬間的に発生し、燃焼室の内圧の瞬間的変動が局所的で頻繁に起る。また燃焼室内の堆積廃棄物や灰化層の堆積具合・稠密具合などからみて、枝ダクトの吹出口の閉塞やその吹出口から排気ダクトまでに至る流出経路の流動抵抗の急変がもたらされることから、これら燃焼室内の諸事象は枝ダクトの吹出口における局部抵抗係数の変動として等価的に捉えることもできる。ダクト設計の実際において、例えばパンチングのある吹出口の場合、その自由面積比が0.2のとき、その局部抵抗係数は30〜40と過大値となることからも容易に判るように、枝ダクトの吹出口の局部抵抗係数も過大値であって大幅な変動が瞬間的に起り得る。この枝ダクトの吹出口における局部抵抗係数の変動とは恰も枝ダクトの吹出口の開閉度に相当し、局部抵抗係数の急激増大は吹出口の瞬間閉塞に等しく、この際、行き場を失った気流が瞬間圧縮して生じる弾性波は枝ダクトから主ダクトへ伝播するという、ウォーターハンマー(水撃現象)を惹起する。この「ウォーターハンマー」の用語は水流(液体流)配管での命名であろうが、水流よりも圧縮性に富む気流の方がむしろ頻繁に起り易い。以下、本明細書では用語「ウォーターハンマー」の代わりに「弾性波伝播」の用語を使う。
【0007】
ある枝ダクトの吹出口で瞬間圧縮した弾性波は当該枝ダクトと主ダクトとの分岐箇所まで遡上し、主ダクトの上流側と下流側の双方へ分れて伝播して行き、上流側に向かう弾性波は上流側の竪ダクトとの接続箇所で反射波となって下流側へ伝播し、下流側に向かう弾性波は下流側の閉塞端(固定端)で反射波となって上流側へ伝播し、以下同様に、弾性波が伝播と反射を繰り返しながら減衰して行く。各枝ダクトの流量は主ダクト内の弾性波の通過時毎に減少と回復を繰り返して変動する非定常流となる。また、各枝ダクトの局部抵抗係数の変動は当然区々となるため、各枝ダクトの流速(風量)にバラツキが生じる。そして、主ダクトから櫛歯状に枝分れした枝ダクトの本数が増えるにつて弾性波伝播の発生確率が相加的に増大し、弾性波同士が干渉する確率も増すことから、上記のバラツキと非定常性の顕在化が常態となるものと言える。
【0008】
そこで、本発明の課題は、弾性波伝播を抑制することにより枝ダクトの風量の安定化を実現できる燃焼装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明に係る燃焼装置は、
図1(a)に概略的に示す如く、燃焼室A内へ給気する給気手段Bと、燃焼室A内の上部空間から排ガスを取り出す排気手段(図示せず)を備えた燃焼装置において、給気手段Bは、主ダクトSに対して送風する送風手段Cと、主ダクトSからその長さ方向で順次分岐し燃焼室A内へ空気を吹き込む複数本の枝ダクトD
1〜D
6とを有し、主ダクトSの両端口Sa,Sbの双方を送風手段C,Cからの吹込口として成ることを特徴とする。
【0010】
従来は、閉塞端(固定端)である主ダクトを用い、一端口のみが送風手段からの吹込口とするものであったが、本発明においては、両端口Sa,Sbのある主ダクト
Sを用い、両端口Sa,Sbの双方が送風手段C,Cからの吹込口となっている。
【0011】
今ここで、仮に両端口Sa,Sbに対する吹込風量が等しく、枝ダクトD
1〜D
6の吹出口の局部抵抗係数が等しいという条件において、主ダクトSのうち枝ダクトD
3と枝ダクトD
4との分岐部間では、端口Saからの吹込み気流と端口Sbから吹き込む逆方向気流とがぶつかり合って拮抗し、枝ダクトD
3,D
4内へ流れ込む層流から勢力を受け続ける大小様々な渦や乱流を伴う淀み域Eが生じており、端口Saからの吹込風量は枝ダクトD
1〜D
3だけに分流され、また端口Sbからの吹込風量は枝ダクトD
4〜D
6だけに分流されている。
【0012】
現実の燃焼室A内においては、例えば枝ダクトD
2の吹出口の至近距離において大量ガスが発生したときは、その近傍の内圧が増大し、あるいは枝ダクトD
2の吹出口から始まる燃焼室A内での流出経路が塞がれたときは、
図1(b)に示す如く、枝ダクトD
2の吹出口で空気が瞬間圧縮されて弾性波Wが発生し、弾性波伝播が始まる。その弾性波は枝ダクトD
2と主ダクトSとの分岐箇所まで空気を圧縮しながら遡上した後、
図1(c)に示す如く、主ダクトSの端口Saのある上流側とその反対の下流側の双方へ分れて伝播して行き、下流側へ向かう弾性波W
1は淀み域Eにぶつかる。ぶつかった弾性波は淀み域E内の大小様々で多数の渦と衝突するので、散乱波となって減衰する。他方、端口Saのある上流側へ向かう弾性波W
2は端口Saで反射して下流側へ向かって淀み域Eにぶつかるため、上記と同様、淀み域Eで散乱を繰り返して減衰する。
【0013】
このように、弾性波伝播が発生しても、渦流のある淀み域Eが弾性波減衰域として機能しているため、弾性波伝播を速やかに解消でき、枝ダクトの風量の安定化を実現できる。
【0014】
ここで、主ダクトを燃焼室の側壁外側を巡る環状ダクトとすれば、送風手段は、送風機と、この送風機からの吹出し風量を環状ダクトの両端口の双方へ分流する竪型チャンバーボックスとすることができる。主ダクト,送風機及び竪型チャンバーボックスの単一化により、比較的小規模の燃焼室に好適であり、低コストを実現できる。
【0015】
主ダクトが環状ダクトでない場合、送風手段は、第1の送風機と、この第1の送風機からの吹出し風量を主ダクトの両端口のちの一方へ分流する第1の竪型チャンバーボックスと、第2の送風機と、この第2の送風機からの吹出し風量を上記両端口うちの他方へ分流する第2の竪型チャンバーボックスとすることが望ましい。各端口に十分な風量を吹込むことができる。特に、チャンバーボックス内の十分な風量容積によりある枝ダクトの吹出量が変動した際、他の枝ダクトの吹出量の変動を抑制することができる。
【0016】
上記燃焼装置に備わる給気手段は、単一の主ダクトを使用し、又は単一の主ダクトについて着目した表現となっているが、一般に、複数本の主ダクトを用いた給気手段としては、燃焼室の側壁外側に沿って高さ違いで配向した複数本の主ダクト及び各主ダクトからその長さ方向で順次分岐し燃焼室内へ空気を吹き込む複数本の枝ダクトから成るダクト配置構造を側壁の外側周りで第1区画から第n(但し、2以上の自然数)区画に亘って夫々備えており、区画毎の各主ダクトに対し送風する送風手段を有し、区画毎の各主ダクトの両端口の双方を区画毎の送風手段からの吹込口とする構成を採用する。
【0017】
このような2段階枝分れダクト配置構造の各主ダクトのある隣接枝ダクト同士の分岐部間においても、一方の端口からの風量と他方の端口からの風量とがほぼ均衡して大小様々な渦や乱流のある淀み域が存在することになるため、弾性波伝播が頻繁に発生しても、淀み域が弾性波減衰域として機能し、弾性波伝播を抑制でき、各枝ダクトの風量の安定化を実現できる。
【0018】
ここで、n本の主ダクトは竪型チャンバーボックスを介して環状に繋げることが望ましい。即ち、第i(但し、i=1,2,…n−1)区画の送風手段は、第i番目の送風機と、この第i番目の送風機からの吹出し風量を第i区画の各主ダクトの両端口のちの一方へ分流する第i番目の竪型チャンバーボックスと、第(i+1)番目の送風機と、この第(i+1)番目の送風機からの吹出し風量を第i区画の各主ダクトの上記両端口のちの他方へ分流する第(i+1)番目の竪型チャンバーボックスとを有し、第i区画の送風手段は、第i番目の送風機と、この第i番目の送風機からの吹出し風量を第i区画の各主給気ダクトの両端口のちの一方へ分流する第i番目の竪型チャンバーボックスと、第1番目の送風機と、この第1番目の送風機からの吹出し風量を第n区画の各主ダクトの上記両端口のちの他方へ分流する第1番目の竪型チャンバーボックスとから成る。
【0019】
各主ダクトの両端口にそれぞれ十分な風量を吹込むことができる。特に、チャンバーボックス内の十分な風量容積により枝ダクトの吹出量が変動した際、他の枝ダクトの吹出量の変動を抑制することができる。
【0020】
上記の主ダクトから分岐する枝ダクトは当該主ダクトから真下に延びる鉛直ダクトとエルボを介して燃焼室の側壁に差し込まれた水平ダクトとから成ることが望ましい。そして、鉛直ダクトに負イオン発生ユニットを取り付けることが望ましい。
【0021】
加えて、竪型チャンバーボックスは大径円形ダクトであり、主パイプは中径円形ダクトであり、枝ダクトは小径円形ダクトであることが望ましい。2段階枝分れダクト配置構造を採用していることから、枝ダクトよりも主ダクト、主ダクトよりも竪型チャンバーボックスと、より上流側の風量容積を高めることで分流の安定化を図ることができる。
【0022】
枝ダクトは燃焼室の側壁で片持ち支持されることになるため、燃焼室が大きくなるにつれ、吹出口が燃焼室の中心部に位置するまで長い枝ダクトを差し込むことは難しい。そこで、主ダクトと燃焼室を挟んで反対側の別の主ダクトとを燃焼室内を介して連通し、当該燃焼室内へ空気を吹き込む室内渡りダクトを設けることが望ましい。両持ち支持の室内渡りダクトであるため、ダクトの曲げ変形などを抑えることができ、大きな燃焼室でも中央部へ直接給気することができる。
【0023】
この室内渡りダクトは、燃焼室外形の短辺に対して実質的に平行な配向であることが望ましい。長辺に平行な配向である場合に比べ、ダクト長さを短くできるので、曲げ変形などを抑えることができる。
【0024】
そして、室内渡りダクトの燃焼室内の範囲に亘って上方吹出し口が列設されており、室内渡りダクトの上側に異物除け手段を設けることが望ましい。上方吹出し口の上側に異物除け手段があるので、室内渡りダクトの上に被処理物が直接堆積せず、上方吹出し口の閉塞を防止でき、また上方吹出し口から異物除け手段への吹出流がその狭間に入る異物を排除し、吹き出し流の放散空間を常に確保できる。
【0025】
燃焼室の中央部では被処理物の堆積が稠密であって、燃焼ガスを下から上へ導く隙間ができ難くなる。そのため、燃焼室の床面に立設した柱体を1又は2以上設けることが望ましい。柱体と堆積物との間に隙間を確保でき、燃焼ガスを下から上へ導き易くなる。