(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042348
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】改良コード化マイクロキャリア、それらを用いるアッセイシステム、およびアッセイの実施方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20161206BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20161206BHJP
G01N 35/08 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
G01N35/02 C
G01N37/00 101
G01N35/08 A
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-552083(P2013-552083)
(86)(22)【出願日】2012年2月6日
(65)【公表番号】特表2014-504733(P2014-504733A)
(43)【公表日】2014年2月24日
(86)【国際出願番号】CH2012000032
(87)【国際公開番号】WO2012106827
(87)【国際公開日】20120816
【審査請求日】2015年1月15日
(31)【優先権主張番号】11000970.1
(32)【優先日】2011年2月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514289908
【氏名又は名称】マイカーティス エヌベー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス デミエール
【審査官】
北川 創
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/072011(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0079635(US,A1)
【文献】
特許第4457236(JP,B2)
【文献】
特表2002−542484(JP,A)
【文献】
特表2010−504187(JP,A)
【文献】
特表2010−506174(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/149363(WO,A1)
【文献】
特表2004−524512(JP,A)
【文献】
特開2011−000040(JP,A)
【文献】
特表2005−533237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロキャリアを特定する読み取り可能なコードを含み、前記マイクロキャリアが化学的および/または生物学的反応を検出する少なくとも1つの検出面(6)を有する本体(3)を含むコード化マイクロキャリア(2)において、マイクロキャリアが、本体(3)から突き出ていて、かつコード化マイクロキャリア(2)を平板(10)上にその検出面(6)を前記平板(10)に向けて配置したとき、前記平板(10)とこの検出面(6)との間に確実にギャップ(11)が生じるように形成されている、少なくとも2つのスペーサ要素(9)を含み、各スペーサ要素(9)が、検出面(6)の周辺部に配置されていることを特徴とするコード化マイクロキャリア(2)。
【請求項2】
コード化マイクロキャリア(2)を平板(10)上にその検出面(6)をその平板(10)に向けて配置したとき、前記平板(10)と接触するよう意図されている接触面(14)の大きさが、前記平板(10)と対向している検出面(6)の部分の大きさの30%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満である請求項1に記載のコード化マイクロキャリア(2)。
【請求項3】
前記接触面(14)が、少なくともスペーサ要素(9)の遠位の端部(13)に存在する請求項2に記載のコード化マイクロキャリア(2)。
【請求項4】
接触面(14)が検出面から離れている請求項2または3に記載のコード化マイクロキャリア(2)。
【請求項5】
コード化マイクロキャリア(2)を平板(10)上に検出面(6)を前記平板(10)に向けて配置したとき、前記検出面(6)と前記平板(10)との間の最大距離(d)が、コード化マイクロキャリア(2)の最大高さ(H)の5%超、好ましくは10%超である請求項1〜4のいずれか一項に記載のコード化マイクロキャリア(2)。
【請求項6】
検出面(6)が平坦である請求項1〜5のいずれか一項に記載のコード化マイクロキャリア(2)。
【請求項7】
各スペーサ要素(9)が、コード化マイクロキャリア(2)を平板(10)上にその検出面(6)を前記平板(10)に向けて配置したとき、前記平板(10)と前記検出面(6)が互いに平行になることを保証するよう形成されている請求項6に記載のコード化マイクロキャリア(2)。
【請求項8】
各スペーサ要素(9)が、少なくとも1つの検出面(6)から突き出ている請求項1〜7のいずれか一項に記載のコード化マイクロキャリア(2)。
【請求項9】
少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個のスペーサ要素(9)はコード化マイクロキャリア(2)を平板(10)上に配置したとき、前記少なくとも2個のスペーサ要素(9)が前記平板(10)に対向するように設計されている請求項1〜8のいずれか一項に記載のコード化マイクロキャリア(2)。
【請求項10】
複数の請求項1〜9のいずれか一項に記載の複数のコード化マイクロキャリア(2)を含み、さらに、複数の前記コード化マイクロキャリア(2)を収容するように形成された少なくとも1つのマイクロ流体チャンネル(102)を有し、前記マイクロ流体チャンネル(102)がアッセイのモニタリングを可能にする少なくとも1つの観察壁(106)を有するアッセイ装置(101)を含むアッセイシステム(100)であって、前記コード化マイクロキャリア(2)が前記検出面(6)を前記観察壁(106)に向けて前記マイクロ流体チャンネル(102)に導入されたとき、前記マイクロ流体チャンネル(102)と各コード化マイクロキャリア(2)のスペーサ要素(9)が、前記検出面(6)と前記観察壁(106)との間に確実にギャップ(11)を生じ、前記ギャップ(11)の中で流れが循環可能となるように形成されているアッセイシステム(100)。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のコード化マイクロキャリア(2)の少なくとも1種を使用する工程を含む、化学的および/または生物学的アッセイの実施方法であって、化学的および/または生物学的反応を、前記コード化マイクロキャリア(2)の検出面(6)でモニタリングする方法。
【請求項12】
アッセイ装置(101)の前記観察壁(106)を通して、少なくとも1つの化学的および/または生物学的反応をモニタリングする工程をさらに含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
アッセイ装置(101)の前記観察壁(106)を通して、前記コード化マイクロキャリア(2)に付したコードを読み取る工程をさらに含む請求項11または12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コード化マイクロキャリア、より具体的にはスペーサ要素を有するマイクロキャリアと、アッセイシステムと、化学的および/または生物学的アッセイの実施方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の範囲内で、マイクロ粒子またはマイクロキャリアとは、それぞれ、顕微鏡的大きさ(最大寸法が、通常100nm〜300マイクロメートル、好ましくは1μm〜200μm)の任意のタイプの粒子、任意のタイプのキャリアを指す。
【0003】
本発明において、用語、マイクロキャリアは、マイクロキャリアの表面に結合するか、またはそのバルク中に含浸した、1種以上のリガンドまたは機能性ユニットを含むか、または含むように設計された、機能性の、または機能を有するように設計されたマイクロ粒子を指す。非常に広範囲にわたる化学的および生物学的分子が、リガンドとしてマイクロキャリアに付着し得る。マイクロキャリアは多くの機能および/またはリガンドを有することができる。本明細書で使用されるとき、用語、機能性ユニットは、前記マイクロキャリアの表面を改質するか、表面に付着するか、表面から付加されるか、表面を被覆するか、または表面に共有結合もしくは非共有結合で結合するか、あるいはそのバルク中に含浸するあらゆる種類のものを定義するものである。これらの機能には、ハイスループットスクリーニング技術および診断で通常使用されるあらゆる機能が含まれる。
【0004】
本明細書中、マイクロキャリアまたはマイクロ粒子のコードへのいずれの言及にも、前記マイクロキャリアまたは前記マイクロ粒子の表面に書き込まれたコードも、マイクロキャリアまたはマイクロ粒子の内部深くに書き込まれたコードも含まれる。そのようなコードおよびコードの書き込み方法は、例えば、特許出願(特許文献1)に開示されており、それは参照により本明細書中に組み込まれる。特に、この特許出願(特許文献1)のコードと、書き込みおよび読み取り方法に関する全ての態様は、参照することにより本明細書中に具体的に組み込まれる。
【0005】
一般に、薬物の発見またはスクリーニング、およびDNA配列の決定は、非常に多くの化合物または分子についてアッセイを行うことを含む。これらの代表的なアッセイとしては、例えば、対象化合物または特定の標的分子についての化学ライブラリのスクリーニング、または分子間で生じる、対象とする化学的および生物学的相互作用の検定が挙げられる。それらのアッセイには、数多くの個別の化学的および/または生物学的反応を行う必要があることが少なくない。
【0006】
そのような多くの個別の反応を実施する際、多くの実際的な問題が生じる。最も重大な問題は、おそらく、各個別の反応に標識を付し、その反応の追跡を行う必要があることであろう。
【0007】
反応を同定するための従来の追跡方法の一つは、マイクロタイタープレートで各反応を物理的に分離することによってなされる。しかしながら、マイクロタイタープレートの使用には、特に、使用するマイクロタイタープレートの大きさが物理的に限られており、このため、プレートで行い得る反応の数も限られるといった不利な点がいくつかある。
【0008】
マイクロアレイを使用した場合の制限を考慮して、今日では、化学的および/または生物学的アッセイを行うために、それらを機能性コード化マイクロ粒子で有利に置き換えられる。各機能性コード化マイクロ粒子は、その表面に結合した特定のI’リガンドを一意的に特定するコードを有している。そのような機能性コード化マイクロ粒子の使用により、数多くの、一意的に機能化されたコード化マイクロ粒子が全て混合され、同時にアッセイに供され得ることを意味する、ランダム処理が可能になる。機能性コード化マイクロ粒子の例は、国際特許出願(特許文献1)に記載されており、
図1に示す。
【0009】
国際特許出願(特許文献2)には、複数の機能性コード化マイクロ粒子1(
図1)を充填し得る反応チャンバーとして機能する、少なくとも1つのマイクロ流体チャンネルを備えたアッセイ装置が記載されている。マイクロ流体チャンネルは、化学的および/または生物学的試薬を含む溶液は流し、機能性コード化マイクロ粒子1はブロックして内部に留めるフィルターとして働く阻止手段を備えている。前記マイクロ流体チャンネルの幾何学的高さおよび前記機能性コード化マイクロ粒子1の大きさは、前記マイクロ粒子が、通常、各マイクロ流体チャンネル内に単層で配列され、前記マイクロ粒子1が互いに重なり合うことのないように選択される。
【0010】
付着したリガンドと流れてくる化学的および/または生物学的試薬との間で、対象とする好ましい反応を示すそれらの機能性コード化マイクロ粒子1から、その後、それらのコードを読み取り、それにより好ましい反応を起こしたリガンドを特定することができる。
【0011】
用語、マイクロ流体チャンネルは、閉じたチャンネル、すなわち、顕微鏡的大きさの断面を有する、すなわち、断面の最大寸法が通常約1〜約500マイクロメートル、好ましくは約10〜約300マイクロメートルの細長い流路をいう。マイクロ流体チャンネルは、長さ方向を有し、それは必ずしも直線とは限らず、マイクロ流体チャンネル内の流れの方向、すなわち、好ましくは、層流領域を仮定した場合に、実質的に平均速度ベクトルに対応する方向である。
【0012】
(特許文献2)に記載のアッセイ装置では、対象の反応の検出は、
図6aに示すように、マイクロ流体チャンネル内に存在する各機能性コード化マイクロ粒子1の蛍光強度を連続的に読み取ることに基づいている。
図6aは、各機能性コード化マイクロ粒子1の強度を時間の関数とみなした場合に、原点での傾きから初期の定量的情報を抽出することが困難であるか、もしくは不可能でさえあることを明確に示している。したがって、機能性コード化マイクロ粒子1と、(特許文献2)に記載のアッセイ装置では、蛍光信号が飽和する、平衡に達する前の試薬またはリガンドの急速な定量化はできない。(特許文献2)に記載のアッセイ装置は、ナノモル範囲の典型的な濃度の検体では、平行に達するのに必要な時間を短縮するものの、依然10〜20分を必要とし、より低濃度のピコモル範囲では、定量化が可能な状態に到達して、定量化するまでに、最長数時間を要し得る。さらに、平衡に到達後でさえ、それらの蛍光信号、特に、拡散パターンに違いがあるため、定量的情報は、約15%未満の誤差範囲では測定されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第00/63695号
【特許文献2】国際公開第2010/072011号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記欠点の全部または一部を改善することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、マイクロキャリアを特定する読み取り可能なコードを含むコード化マイクロキャリアであって、化学的および/または生物学的反応を検出する少なくとも1つの検出面を有する本体を含み、本体から突き出ていて、かつコード化マイクロキャリアを平板上にその検出面を前記平板に向けて配置したとき、前記平板とこの検出面との間に確実にギャップが生じるように形成されている、少なくとも1つのスペーサ要素を含むマイクロキャリアを提供することによって、これらの目的を達成している。
【0016】
本発明はまた、本発明の複数のコード化マイクロキャリアを含み、さらに、複数の前記コード化マイクロキャリアを収容するように形成された少なくとも1つのマイクロ流体チャンネルを有し、前記マイクロ流体チャンネルがアッセイのモニタリングを可能にする少なくとも1つの観察壁を有するアッセイ装置を含むアッセイシステムであって、前記コード化マイクロキャリアが前記検出面を前記観察壁に向けて前記マイクロ流体チャンネルに導入されたとき、前記マイクロ流体チャンネルと各コード化マイクロキャリアのスペーサ要素が、前記検出面と前記観察壁との間に確実にギャップを生じ、前記ギャップの中で流れが循環するように形成されているアッセイシステムに関する。
【0017】
さらに、本発明は、本発明のコード化マイクロキャリアの少なくとも1種を使用する工程を含む、化学的および/または生物学的アッセイの実施方法であって、化学的および/または生物学的反応を、前記コード化マイクロキャリアの検出面でモニタリングする方法に関する。
【0018】
したがって、マイクロ流体チャンネルを有するアッセイ装置で、少なくとも1つの本発明のコード化マイクロキャリアを使用すれば、化学的および/または生物学的アッセイを、迅速に、多重的に、かつ定量的に実施することができる。本発明のコード化マイクロキャリアは、多重定量分析において、初期の定量を、典型的にはアッセイの開始後数秒で可能にし、したがって、(特許文献2)に記載の機能性コード化マイクロ粒子を用いて実施される定量分析の所要時間が大幅に短縮される(典型的には、少なくとも10分の1の所要時間)。本発明のアッセイ装置ではまた、信頼できる定量分析結果を得るのに必要なコード化マイクロキャリアが、先行技術における機能性コード化マイクロ粒子の場合の必要量に比べてはるかに少なくてすみ、したがって、多重化の程度が増大し、読み取り時間が短縮されることも見出された。コード化マイクロキャリアをアッセイ装置のマイクロ流体チャンネルに、その検出面を観察壁に向けて収容すると、アッセイに使用する化学的および/または生物学的試薬を含む溶液は、スペーサ要素により生じた前記検出面と前記観察壁の間のギャップの中を流れることができる。スペーサ要素によって、コード化マイクロキャリアはマイクロ流体チャンネルの幾何学的高さに整列することができ、したがってマイクロ流体チャンネル内の溶液の流れが加速される。
【0019】
先行技術では、機能性コード化マイクロ粒子1をマイクロ流体チャンネルに充填するとき、それらの位置は正確にはコントロールされず、一部がマイクロ流体チャンネルの表面の1つ、特に観察壁に接触した状態になる。そのような接触は、接触面(その1つが検出面であり得る)間で生じる対流を阻害し、試薬の物質移動を、マイクロ流体チャンネルの表面と接触している機能性コード化マイクロ粒子の検出面への拡散流れに制限する。
【0020】
逆に、本発明のコード化マイクロキャリアでは、各スペーサ要素が検出面とマイクロ流体チャンネルの壁との接触を妨げ、対流を起こし、検出面における反応が拡散流れのみに支配されるのを回避する。マイクロ流体チャンネルの特定の壁は、例えば、アッセイ装置の観察壁である。
【0021】
一実施形態においては、コード化マイクロキャリアを平板上にその検出面を平板に向けて配置する際、前記平板と接触させることを意図した接触面は、検出面の20%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは7%未満である。これにより、拡散流れによる物質移動を促進することができる。特定の平板は、例えば、アッセイ装置の観察壁である。コード化マイクロキャリアを平板上に、その検出面を平板に向けて配置する際、前記平板に接触させることを意図した接触面は、前記平板に対向する検出面の部分の20%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは7%未満である。
【0022】
技術的特徴によると、検出面は、少なくとも1つの領域を有し、前記マイクロキャリアを平板上に、その検出面を平板に向けて配置した際、前記領域の各点は、互いに垂直で、かつ前記平板に対しも垂直な、前記コード化マイクロキャリアの2つの異なる断面に属し、前記断面はスペーサ要素を有していない。この技術的特徴により、マイクロキャリアが前記平板に対して平らに配置され、平板に対して実質的に平行な層流内にあるとき、平板に垂直な軸周りのマイクロキャリアの方向が、ギャップ内の流れにあまり影響しないことが保証される。言い換えれば、検出面上で生じる反応の効率を変化させるような、流れに対するマイクロキャリアの好ましい回転方向はない。
【0023】
一実施形態では、前記接触面は、全てのスペーサ要素によってのみ形成される。接触面は、少なくともスペーサ要素の検出面から遠い一方の端部に存在することがより好ましい。そのような端部は、遠位の端部とも呼ばれる。
【0024】
一実施形態では、接触面は検出面から離れている。
【0025】
一実施形態では、コード化マイクロキャリアは、少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個のスペーサ要素を含み、コード化マイクロキャリアを平板上に配置したとき、前記少なくとも2個のスペーサ要素が、前記平板に対向するように設計されている。
【0026】
本発明の一実施形態においては、本体は円筒形状またはウェハ形状を有する。
【0027】
好ましい一実施形態では、検出面は実質的に平面である。
【0028】
一実施形態では、少なくとも1個のスペーサ要素は前記本体と一体化している。他の実施形態では、少なくとも1個のスペーサ要素は、本体に固定されている別個の部材である。
【0029】
一実施形態においては、コード化マイクロキャリアを平板上にその検出面を前記平板に向けて配置したとき、前記検出面と前記平板との間の最大距離は、コード化マイクロキャリアの最大高さの5%超、好ましくは10%超である。これにより、検出面と平板とのギャップ断面の大きさが増し、マイクロ流体チャンネル内のコード化マイクロキャリアによって生じる滞留が減少し、前記マイクロ流体チャンネル内における層流の形成が可能になる。そのようなギャップ断面の大きさが増すことにより、検出面に対する流れ速度が増大し、その結果、流体溶液中の対象分子とコード化マイクロキャリアに付着しているリガンドとの接触の機会が増大するであろう。それによりアッセイの感度は増大する。さらに、この割合は、前記コード化マイクロキャリアがマイクロ流体チャンネルに充填されているとき、そこを通って流れる液体の流体抵抗を減少させる。マイクロ流体の抵抗が減少することは、アッセイで、所与のマイクロ流体チャンネルに充填するコード化マイクロキャリアの数を増加させられることができ、したがって多重化の程度を増大させることができることを意味する。本発明のコード化マイクロキャリアが、アッセイ中、アッセイ装置の完全性を維持することがわかった。
【0030】
一実施形態では、各スペーサ要素は少なくとも検出面から突き出ている。
【0031】
好ましい実施形態では、各スペーサ要素は、コード化マイクロキャリアを平板上にその検出面を前記平板に向けて配置したとき、前記平板と前記検出面が実質的に互いに平行になることを保証するよう形成されている。それにより、コード化マイクロキャリアがマイクロ流体チャンネルに充填されているとき、検出面と前記平板とのギャップは、層流の形成を促進する。前記平板と検出面の距離が一定である、本発明のコード化マイクロキャリアは、層流の形成を促進する。
【0032】
1つの可能性では、各スペーサ要素は検出面の外周に位置する。
【0033】
本発明のコード化マイクロキャリアは、ハイスループットスクリーニング技術および診断で通常使用されている任意の材料から製造し得るか、またはそのような材料を含み得る。これらの材料の例としては、ラテックス、ポリスチレン、架橋デキストラン、ポリメチルスチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、セルロース、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、フッ素化エチレン−プロピレン、および、ガラス、SiO
2、ケイ素、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリシリコン、モリブデン、ポリイミド、金、銀、アルミニウム、鋼鉄もしくは他の金属、SU−8などのエポキシベースの感光性材料などの、微細加工もしくはマイクロミリングで一般に使用されている材料が挙げられるが、これらに限定されない。コード化マイクロキャリアは、任意の形状およびサイズを有し得る。好ましくは、コード化マイクロキャリアは、シリコンの結晶から製造される。
【0034】
一実施形態では、本発明のコード化マイクロキャリアは、コードを読み取ることによってその機能を決定できるようコード化される。
【0035】
好ましい実施形態では、本発明のコード化マイクロキャリアの本体は、ウェハの形状を有する。用語、ウェハは、コード化マイクロキャリアの本体が、2つの実質的に平行で、かつ実質的に平坦な主面を有し、その一方は少なくとも検出面として機能すること、および、2つの主面間の高さが幅および長さと比べて著しく小さい(例えば、少なくとも2倍)ことを意味する。
【0036】
技術的特徴によると、各主面は任意の形状を有することができる。非限定的な例として、正方形、長方形、円、三角形または六角形が挙げられる。
【0037】
したがって、特許出願(特許文献2)に記載のように、長方形または長方形に近い断面を有するマイクロ流体チャンネルに、ウェハ形状の本体を有するコード化マイクロキャリアを導入すると、それらは、マイクロ流体チャンネルの2つの主面(そのうちの一方は観察壁である)に実質的に対向する2つの主面を有しており、観察壁を通して光学的手段により容易に検出することができる。
【0038】
他の実施形態では、コード化マイクロキャリアは磁気特性を有する。それによって、それらをマイクロ流体チャンネル内に固定することができる。
【0039】
一実施形態では、本発明の方法は、1個以上のコード化マイクロキャリアを、本発明のアッセイ装置のマイクロ流体チャンネルに導入する工程をさらに含む。
【0040】
好ましい一実施形態では、本発明の方法は、アッセイ装置の前記観察壁を通して、前記コード化マイクロキャリアに付したコードを読み取る工程をさらに含む。
【0041】
一実施形態では、アッセイ装置の前記観察壁を通して、前記コード化マイクロキャリアに付したコードを読み取る工程をさらに含む方法。
【0042】
添付の図面を考慮して記載した以下の詳細な説明により、本発明をさらに説明するが、図面はコード化マイクロキャリアの例示および説明のための実施形態を表すものであり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】従来技術のコード化マイクロ粒子の上面斜視図を示す。
【
図2】本発明のコード化マイクロキャリアの上面斜視図を示す。
【
図3】本発明のアッセイ装置のマイクロ流体チャンネルの断面図を示す。
【
図4】
図3のマイクロ流体チャンネルに充填した
図2のコード化マイクロキャリアの平面図を示す。
【
図5】
図3および
図4のマイクロ流体チャンネルに充填した
図2のコード化マイクロキャリアの詳細な断面図を示す。
【
図6a】アッセイ開始後最初の1分以内に観察された、
図1の機能性コード化マイクロ粒子上の蛍光発光を示す。
【
図6b】アッセイ開始後最初の1分以内に観察された、
図2のコード化マイクロキャリアの蛍光発光を示す。
【
図7a】
図1の機能性コード化マイクロ粒子上で生じた蛍光信号の動力学的曲線を示す。
【
図7b】
図2のコード化マイクロキャリア上で生じた蛍光信号の動力学的曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図2、4、5および6bに示す本発明のコード化マイクロキャリア2は、
図2、4、5および6bに示すように、円筒面4と2つの円形主面5で輪郭が描かれる、直円筒形状を有する本体3を含む。これらの主面5の少なくとも1つは、化学的および/または生物学的反応を検出するための、実質的に平坦な検出面6(
図2および5に示す)を含む。コード化マイクロキャリア2の典型的な直径は、1〜約200μmの範囲である。
【0045】
前記コード化マイクロキャリア2の本体3は、円筒状ウェハの形状を有しており、これは直円筒形の高さが主面5の半径より著しく小さい(少なくとも2分の1倍)ことを意味する。化学的および/または生物学的反応を検出するためには、コード化マイクロキャリア2の検出面6が部分的、または全面的に機能化されていることが有利である。
【0046】
本発明のコード化マイクロキャリア2は、読み取り可能なコードをさらに含む。それにより、コード化マイクロキャリア2は、その機能化がそのコードを読み取ることによって特定できるような方法でコード化され、機能化される。
図2および6bに示すように、このコードは、複数の横断穴7からなる特有のパターンを含む。このコードはまた、好ましくは、L形標示(
図2)または三角形などの非対称配向標識8を含む。この非対称配向標識8は、主面5を互いに区別する意味を有する。
【0047】
本発明のコード化マイクロキャリア2は酸化ケイ素から作られている。本発明のコード化マイクロキャリア2は、乾式および/または湿式エッチング技術を使用して形成することができる。
【0048】
さらに、本発明のコード化マイクロキャリア2は、本体3から突き出た複数のスペーサ要素9(
図2および5に示す、)、具体的には20個のスペーサ要素9を含む。スペーサ要素9を有するコード化マイクロキャリア2は、コード化マイクロキャリア2を平板10上にその検出面6を前記平板10に向けて配置したとき、
図5に示すように、ギャップ11が前記平板10と検出面6の間に存在するのを保証するように形成される。
【0049】
各スペーサ要素9は、直円筒12の先端を切り取った形状を有し、検出面6の周辺部に配置され、円筒面4に続いて遠位の端部13まで延出している。各直円筒12は高さ方向に沿って、コード化マイクロキャリア2の円筒面4によって切り取られている。
【0050】
図示しなかったが、代替形態においては、各スペーサ要素9は、円錐台形状またはスパイク形状を有し得るであろう。
【0051】
各スペーサ要素9の高さは、互いに等しい。各スペーサ要素9の遠位の端部13は、共に、検出面6に実質的に平行な接触面14(
図2に示す)を形成している。前記コード化マイクロキャリア2を平板10上にその検出面6をそのような平板10に向けて配置したとき、この接触面14は前記平板10と接触するようになっている。接触面14の大きさは、検出面6の大きさの20%未満、好ましくは15%未満である。
【0052】
先端が切り取られた各直円筒12の高さの選択により、検出面6と、後述するように(
図5)コード化マイクロキャリア2が配置される前記平板10との間の距離d(
図5に示す)が決められる。この距離d、すなわち、ギャップ11の高さは、コード化マイクロキャリア2の最大高さHの30%未満が有利である(
図5)。最も好ましくは、距離dは、高さHの5%超であり、より好ましくは10%超である。図の例では、コード化マイクロキャリア2の高さHは約10μm、距離dは約1μmである。
【0053】
検出面6はさらに、領域15を有し、コード化マイクロキャリア2を平板10上にその検出面6を前記平板10に向けて配置したとき、前記領域15の各点が、互いに、かつ前記平板10に対しても垂直である軸AAおよびBB(
図2に示す)に沿う2つの異なる断面に属している。前記断面はスペーサ要素9を有しない。これにより、マイクロキャリア2が、前記平板10に対して平らに配置され、かつ平板10に実質的に平行な層流内にあるとき、平板10に垂直な軸周りのマイクロキャリア2の方向が、ギャップ11内の流れにあまり影響しないことが保証される。言い換えれば、検出面6上で生じる反応の効率を変化させるような、流れに対するマイクロキャリア2の好ましい回転方向はない。
【0054】
機能性コード化マイクロキャリア2は、本発明のアッセイシステムで化学的および/または生物学的アッセイを実施するのに有用である。実際、コード化マイクロキャリア2は、化学的および/または生物学的アッセイ用の担体として機能する。この能力において、コード化マイクロキャリア2は、その表面に結合した、具体的には検出面6に結合した1種以上のリガンドを含む。リガンドが結合したコード化マイクロキャリア2と、1種以上の標的検体を含み得る溶液とを接触させると、適切な検体が存在するか否かに応じて、対象とする反応が検出面6で生じ得る。一例を挙げれば、対象とする反応は、モニタリング可能な蛍光信号を発するか阻止することができる。検出面6での反応を検出することにより、対象とする特定の検体が存在するか否かを決定することができる。
【0055】
本発明のアッセイシステム100は、複数の本発明のコード化マイクロキャリア2を含み、アッセイ装置101(
図3〜5に部分的に示す)をさらに含む。アッセイ装置101は、
図3〜5に示す、少なくとも1つのマイクロ流体チャンネル102を有する。そのようなアッセイ装置101は、例えば特許出願(特許文献2)に記載されており、この点に関して、それは本明細書に参照により組み込まれる。マイクロ流体チャンネル102は、入口103および出口104を含み、複数の前記コード化マイクロキャリア2を収容するよう形成されている。マイクロ流体チャンネル102は、マイクロ流体チャンネル102の出口104の近傍に配置され、溶液は流し、前記コード化マイクロキャリア2はブロックして内部に留めることができるフィルターとして働く阻止手段105を備えている。マイクロ流体チャンネル102は、少なくとも2個のマイクロキャリア2を、前記マイクロ流体チャンネル102の全長にわたって、
図4に示されているように、単層に並べて配置できる断面を有する。マイクロ流体チャンネル102およびコード化マイクロキャリア2の大きさは、前記コード化マイクロキャリア2の高さHが、マイクロ流体チャンネル102の最小高さD(
図5)の約51%〜約95%の範囲になるように選択される。
【0056】
マイクロ流体チャンネル102は、それを通してアッセイのモニタリングが可能な、少なくとも1つの観察壁106を含む。通常、アッセイが蛍光信号によってモニタリングされるとき、観察壁106は透明である。
【0057】
本発明のシステムでは、コード化マイクロキャリア2がマイクロ流体チャンネル102に、前記検出面6が前記観察壁106に向けて充填すると、スペーサ要素9が前記検出面6と前記観察壁106との間にギャップ11を作り出し、前記ギャップ11内で液体の循環を可能にする。ギャップ11内で流れることができるこの液体は、アッセイで対象とする化学的および/または生物学的試薬を含んでいる。
【0058】
従来のアッセイシステムの使用に替えて、本発明のアッセイシステム100でコード化マイクロキャリア2を使用することの有利性を実証するために、従来技術のコード化マイクロ粒子1のセットと、コード化マイクロキャリア2のセットの両者を、同一条件下、同一のリガンドで機能化した。前記コード化マイクロキャリア2または前記コード化マイクロ粒子の機能化に関係する化学は良く知られており、リガンドを結合させる前に、まずシラノール基で表面のシラン処理を行い、次いでカルボキシル基へ酸化することを含む。本明細書に記載のアッセイでは、表面に結合させたリガンドは、タンパク質、免疫グロブリンG抗体(IgG)であった。その後、コード化マイクロ粒子1のセットおよびコード化マイクロキャリア2のセットのそれぞれを、2つの類似のマイクロ流体チャンネル102に充填し、前記リガンドと容易に反応して蛍光信号を発する化学試薬を含む同一の液体に両者を接触させ、蛍光信号をモニタリングした。このアッセイでは、液体には抗免疫グロブリンG(抗IgG)が含まれた。
【0059】
図6aおよび6bは、約100nMの濃度で、アッセイの開始から最初の1分以内に、コード化マイクロ粒子1およびコード化マイクロキャリア2がそれぞれ発した信号を示す。
【0060】
従来技術の所与のコード化マイクロ粒子1の表面は、
図6aに示すように、拡散パターンまたは線パターンを示すことが多い。逆に、コード化マイクロキャリア2は、スペーサ要素9の使用により、
図6bに示すように、所与の検出面6上で均一な信号を示す。
【0061】
図7aおよび
図7bは、それぞれ、各コード化マイクロ粒子1または各コード化マイクロキャリア2の時間に対する蛍光信号の定量的測定を示す。コード化マイクロ粒子1は、
図7aに示すように、マイクロ粒子毎に蛍光信号の相当な不一致を示し、有意な情報を抽出するには、結局、大きな統計パネルを必要とする。
【0062】
逆に、アッセイの開始から最初の数分間で、各コード化マイクロキャリア2の各検出面6上における記録信号は、
図7bに示すように、互いに不一致を示さない。
【0063】
したがって、スペーサ要素9により、マイクロ流体チャンネル101全体で均一な対流が生じ、時間と共に、かつコード化マイクロキャリア2の全体にわたって、均一な蛍光の増加がもたらされる。
【0064】
信号が均一に増加するので、蛍光の速度を観察することにより、最初の数秒から輝き出す検体の迅速な定量が可能になる。従来技術のコード化マイクロ粒子1では、蛍光信号の増加は、
図7aの強調した領域で示しているように、物質移動の人為的結果の影響に埋没してしまうため、先の様にはならず、マイクロ粒子の大きな統計パネルに頼らざるを得ない。
【0065】
本明細書および本明細書で開示した本発明の実施を考慮すれば、当業者には、本発明の他の実施形態が明らかになるであろう。本明細書および実施例は単なる例示であり、本発明の真の範囲と精神は以下の請求の範囲で示されるものとする。