(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042354
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】ステレオ画像又はその種のステレオ画像の透視画像を見るための眼鏡
(51)【国際特許分類】
G02B 27/22 20060101AFI20161206BHJP
G02C 7/10 20060101ALI20161206BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
G02B27/22
G02C7/10
G02B5/28
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-557053(P2013-557053)
(86)(22)【出願日】2012年3月2日
(65)【公表番号】特表2014-514594(P2014-514594A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】EP2012053639
(87)【国際公開番号】WO2012119944
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2015年2月17日
(31)【優先権主張番号】102011005136.8
(32)【優先日】2011年3月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509140663
【氏名又は名称】インフィテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Infitec GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アーノルト ズィーモン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート ヨアケ
【審査官】
山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/140787(WO,A1)
【文献】
特開平05−005804(JP,A)
【文献】
特開2010−204663(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02218742(EP,A1)
【文献】
特開2011−227951(JP,A)
【文献】
特開2010−217752(JP,A)
【文献】
特開平08−129105(JP,A)
【文献】
特開2009−094186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/22
G02B 5/28
G02C 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの感光性ポリマーフィルム(20,26,27)を備えている左目用の干渉フィルタ(3,21,25,32,33,40)および右目用の干渉フィルタ(3,21,25,32,33,40)を用いてステレオ画像、又はステレオ画像の透視画像を見るための眼鏡(1)において、
前記少なくとも一つの感光性ポリマーフィルム(20,26,27)内には、個別化された少なくとも二つのフィルタ領域(6,7,8,9,10,22,28,29,30,31,34,35,36,37,38,39)が配置されており、
前記フィルタ領域(6,7,8,9,10,22,28,29,30,31,34,35,36,37,38,39)は、前記干渉フィルタ(3,21,25,32,33,40)の第1の外面(5,23)に対して垂直に延びる少なくとも一つの垂線(11,13,15)に沿って、前記垂線(11,13,15)が前記第1の外面(5,23)を通る第1の点(12,14,16)と、前記垂線(11,13,15)が前記第1の点(12,14,16)を起点として前記干渉フィルタ(3,21,25,32,33,40)を貫通して前記干渉フィルタ(3,21,25,32,33,40)の第2の外面(4,24)を通る第2の点(17,18,19)との間において積層化されて配置されており、且つ、
前記垂線(11,13,15)に沿って、電磁スペクトルの各所定の波長区間に対して5%を下回る残余透過率を有し、
前記左目用の干渉フィルタ(3,21,25,32,33,40)は、前記第1の外面に対して垂直に延びる第1の垂線が前記第1の外面を通る点と前記第2の外面を通る点との間において積層化されて配置されている複数のフィルタ領域(34,35,36)の第1のセットを備え、前記右目用の干渉フィルタ(3,21,25,32,33,40)は、前記第1の外面に対して垂直に延びる第2の垂線が前記第1の外面を通る点と前記第2の外面を通る点との間において積層化されて配置されている複数のフィルタ領域(37,38,39)の第2のセットを備えており、
前記第1のセットの前記フィルタ領域(34,35,36)の残余透過率が5%を下回る波長領域は、前記第2のセットの前記フィルタ領域(37,38,39)の残余透過率が5%を下回る波長領域とは異なる、
眼鏡(1)。
【請求項2】
前記フィルタ領域(6,7,8,9,10,22,28,29,30,31,34,35,36,37,38,39)の内の少なくとも二つ又は全てのフィルタ領域は、単一の感光性ポリマーフィルム(26,27)内に配置されている、
請求項1に記載の眼鏡(1)。
【請求項3】
積層化された少なくとも二つの感光性ポリマーフィルム(26,27)を有しており、
前記フィルタ領域の内の少なくとも二つのフィルタ領域(28,29,30,31)は異なる感光性ポリマーフィルム(26,27)内に配置されているか、又は、各フィルタ領域はそれぞれ一つの感光性ポリマーフィルム内に配置されている、
請求項1又は2に記載の眼鏡(1)。
【請求項4】
前記フィルタ領域の内の少なくとも一つのフィルタ領域(6,22,29,31)が前記干渉フィルタ(3,21,25)全体にわたり延在している、及び/又は、
隣接して配置されている複数のフィルタ領域(7,8,9)が、前記干渉フィルタ(3)にわたり延在している一つのフィルタ層を形成している、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の眼鏡(1)。
【請求項5】
前記干渉フィルタ(3,21,32,33,40)は、前記眼鏡(1)を装着した人の視角に依存する、前記フィルタ領域の内の少なくとも一つのフィルタ領域(6,7,8,9,10,22,34,35,36,37,38,39)の透過特性のシフトを低減するために、湾曲した形状を有している、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の眼鏡(1)。
【請求項6】
前記干渉フィルタはガラス基板又はプラスチック基板又は熱可塑性基板又はフィルム基板上に被着されている、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の眼鏡(1)。
【請求項7】
少なくとも一つの波長区間又は全ての波長区間は少なくとも部分的に、可視の前記電磁スペクトル内に位置している、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の眼鏡(1)。
【請求項8】
前記第1のセットの第1のフィルタ領域(34)は453nmから477nmの波長に対して5%を下回る残余透過率を有している、及び/又は、前記第1のセットの第2のフィルタ領域(35)は537nmから563nmの波長に対して5%を下回る残余透過率を有している、及び/又は、前記第1のセットの第3のフィルタ領域(36)は651nmから621nmの波長に対して5%を下回る残余透過率を有している、及び/又は、前記第2のセットの第1のフィルタ領域(37)は441nmから463nmの波長に対して5%を下回る残余透過率を有している、及び/又は、前記第2のセットの第2のフィルタ領域(38)は522nmから548nmの波長に対して5%を下回る残余透過率を有している、及び/又は、前記第2のセットの第3のフィルタ領域(39)は604nmから633nmの波長に対して5%を下回る残余透過率を有している、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の眼鏡(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの干渉フィルタを備えている、ステレオ画像又はステレオ画像の透視画像を見るための眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1からは、光学的に3次元で知覚可能な画像表現を形成するためのステレオ投影システムと方法とが公知である。そこでは、ステレオ画像の二つの透視画像の各々(左側又は右側)の画像に対して、青(B)、緑(G)及び赤(R)の色知覚領域において限定的な複数のスペクトル区間が透過されるように、カラーフィルタによって異なるように設定された、可視スペクトルの複数の領域が形成されている。透過区間の位置は二つの透視画像に対して異なるように選定されている。
【0003】
特許文献2からも同様のシステムが公知である。ステレオ画像を見るために、このシステムでは湾曲したレンズを備えている眼鏡が使用され、各レンズにはスペクトル補色フィルタが設けられている。レンズが湾曲していることにより、またそれによってフィルタも湾曲していることにより、眼鏡を装着した人の視線方向に依存する、フィルタの透過特性の波長シフトが補正される。
【0004】
更に特許文献3には、特に画像を視覚表示するためのホログラフィ媒体の製造に適している、書込モノマーとしての特殊なウレタンアクリレートを基礎とした感光性ポリマーの用途が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】DE 10 2006 054 713 A1
【特許文献2】WO 2008/140787 A2
【特許文献3】EP 2 218 742 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、光学的な特性を高い精度で決定することができ、更には、廉価に製造することができる、ステレオ画像又はステレオ画像の透視画像を見るための眼鏡を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は請求項1の特徴部分に記載されている構成を備えている眼鏡によって解決される。有利な実施の形態は従属請求項に記載されている。
【0008】
本発明によれば、少なくとも一つの感光性ポリマーフィルムを有している少なくとも一つの干渉フィルタを用いてステレオ画像、又はステレオ画像の透視画像を見るための眼鏡が提供され、干渉フィルタは、個別化された少なくとも二つのフィルタ領域を有しており、フィルタ領域は、干渉フィルタの第1の外面に対して垂直に延びる少なくとも一つの垂線に沿って、垂線が第1の外面を通る第1の点と、垂線が第1の点を起点として干渉フィルタを貫通してその干渉フィルタの第2の外面を通る第2の点との間において積層化されて配置されており、且つ、垂線に沿って、電磁スペクトルの各所定の波長区間に対して少なくともほぼ非透過性である。
【0009】
本発明による眼鏡の、感光性ポリマーフィルムを有している干渉フィルタは、コーティング法によって製造される干渉フィルタとは異なり、簡単且つ廉価なやり方で、コヒーレントな光を用いた二つの側からのホログラム露光によって製造される。この露光によって、ポリマーフィルム内にフィルタ領域又は光学的な干渉構造が形成され、それらは続く漂白過程によって固定される。露光の際に入射角度を変化させることによって、干渉構造の高さ、従ってフィルタ領域の反射スペクトル及び透過スペクトルを調整することができる。そのようにして、高い精度でフィルタ領域を製造することができ、特に10nmから15nmの厚さ、また入射光の10%を下回る、5%を下回る、3%を下回る、2%を下回る、またそれどころか1%を下回る残余透過率を有している、層状のフィルタ領域又はフィルタ層を製造することができる。換言すれば、前述のフィルタ領域乃至フィルタ層は入射する光に対してほぼ非透過性である。使用される光学的な露光方法は高いプロセス安定性を示す。何故ならば、露光は通常の場合、一定の波長のレーザを用いて行なわれるからである。ポリマーフィルムのフィルム厚さ又は屈折率の場合によっては生じる変動は、確かに、形成されるフィルタ領域の内部構造に影響を及ぼすが、しかしながら、反射特性には殆ど影響を及ぼさない。機械的な変動は僅かであり、非常に短い露光時間によって良好に制御することができる。更には、通常の場合は真空中で実施されるコーティングプロセスを省略することができるので、本発明による眼鏡は、ステレオ画像を見るための公知の眼鏡とは異なり、簡単且つ廉価に製造することができ、特に一つの連続的なプロセスにおいて製造することができる。更には、ポリマー材料を用いることによって、ほぼ全ての形状の干渉フィルタを実現することができ、また半径の小さい干渉フィルタも実現することができる。フィルタ領域の数及び配置構成並びに所定の波長区間を適切に選択することによって、任意の透過特性を備えた、ステレオ画像を見るための眼鏡を製造することができる。干渉フィルタ又はポリマーフィルムを含むフィルタ領域の数は任意である。フィルタ領域の個々の波長区間又は全ての波長区間を相互に隔てることができるか、又は、それらの波長区間を少なくとも部分的に重畳させることができる。湾曲している干渉フィルタを備えている眼鏡では、垂線又は法線の配向が場所に依存し、且つ、干渉フィルタの第1の外面上の第1の点の位置に依存する。しかしながら、本発明による眼鏡にとって、干渉フィルタの複数の外面の内の少なくとも一つの任意の外面に対して垂直に延びており、且つ、その外面と、干渉フィルタの通過後に干渉フィルタの別の外面とを通る少なくとも一つの垂線が設けられており、それらの通過点の間にフィルタ領域が積層化されて配置されていれば十分である。特に、第1の外面が眼鏡を装着した人と対向する側の外面であっても、眼鏡を装着した人とは反対側の外面であっても良い。
【0010】
本発明による眼鏡では、単一の感光性ポリマーフィルム内に、フィルタ領域の内の少なくとも二つ又は全てのフィルタ領域を配置することができる。眼鏡は更に、積層化された少なくとも二つの感光性ポリマーフィルムを有しており、フィルタ領域の内の少なくとも二つのフィルタ領域は異なる感光性ポリマーフィルム内に配置されているか、又は、各フィルタ領域はそれぞれ一つの感光性ポリマーフィルム内に配置されている。積層化されたポリマーフィルムは個々のポリマーフィルムを重ね合わせることによって製造することができる。従って基本的に、フィルタ領域を一つのポリマーフィルム又は干渉フィルタの内部に完全に設けることができるか、又は、その縁部に配置することができる。フィルタ領域が干渉フィルタの縁部に設けられている場合には、フィルタ領域の表面が干渉フィルタの外面の内の一つの少なくとも一部を形成する。基本的に、二つのフィルタ領域を相互に間隔を空けて設けることができるか、又は、相互に間隔を空けずに積層化することができ、その際、二つのフィルタ領域が同一のポリマーフィルムに形成されているか、又は異なるポリマーフィルムに形成されているか、若しくは、ポリマーフィルムの内部に設けられているか、又はその縁部に設けられているかは問題ではない。
【0011】
有利には、本発明による眼鏡においては、フィルタ領域の内の少なくとも一つのフィルタ領域が干渉フィルタ全体にわたり延在している、及び/又は、隣接して配置されている複数のフィルタ領域が、干渉フィルタにわたり延在している一つのフィルタ層を形成している。干渉フィルタ全体にわたり延在しているフィルタ領域は前述の露光法によって非常に簡単に製造することができる。しかしながら、フィルタ領域は必ずしもポリマーフィルム全体にわたり延在している必要はなく、その代わりに、フィルタ領域をポリマーフィルムの限定的な領域内にのみ形成することができる。例えば、フィルタ領域はポリマーフィルムの円形の領域内に形成することができる。各フィルタ領域に対してほぼ非透過性である相応に選択された波長区間を有している、相互に接している別のフィルタ領域を用いることによって、ほぼ連続的に変化する透過区間を備えたフィルタ層を実現することができる。横方向において連続的に変化するフィルタ特性を備えているフィルタ層を、コヒーレントな光の露光角度を位置に応じて変化させることによって、ポリマーフィルムのホログラム露光でもって製造することができる。眼鏡の透過特性の、眼鏡を装着した人の視線方向への角度依存性が低減されるか、又は、完全に補償されるように、フィルタ層の横方向に変化するフィルタ特性を設計することができる。
【0012】
特に有利には、本発明の眼鏡では、眼鏡を装着した人の視角に依存する、フィルタ領域の内の少なくとも一つの透過特性のシフトを低減するために、干渉フィルタが湾曲した形状を有している。フィルムは成形時の可撓性が非常に高い点で優れており、またほぼ全ての任意の形状を取ることができるので、干渉フィルタが一つのポリマーフィルタを含んでいるという状況が非常に有利であることが分かった。例えば、露光されたポリマーフィルムを深絞りによって、種々の視線方向に関するフィルタ領域の透過特性の角度依存性を低減するか、又はそれどころか補償する、湾曲した形状にすることができる。特に有利には、湾曲した又は撓んだ干渉フィルタが、眼鏡の透過特性の視角に依存する波長シフトを低減するために、相応に設計されたフィルタ領域と組み合わされて使用される。
【0013】
本発明の眼鏡は、ガラスの代わりに少なくとも一つの干渉フィルタを含むことができるか、又は、眼鏡を装着した人の右目及び左目それぞれに対して一つの干渉フィルタを含むことができる。その種の眼鏡は、重量が非常に軽い点で優れており、これは眼鏡フレームの材料を適切に選択することによって更に軽量化することができる。基本的に、干渉フィルタをガラス基板又はプラスチック基板又は熱可塑性基板又はフィルム基板上に被着させることもできる。特に、熱可塑性基板上に被着又は積層化された干渉フィルタを被着後に基板と一緒にあらゆる任意の形状にすることができる。
【0014】
本発明による眼鏡はステレオ画像を見るために設けられているので、特に有利には少なくとも一つの波長区間、又は全ての波長区間が少なくとも部分的に、可視の電磁スペクトル内に位置している。
【0015】
更に眼鏡は、有利には、第1の外面に対して垂直に延びる第1の垂線が第1の外面を通る点と第2の外面を通る点との間において積層化されて配置されている複数のフィルタ領域の第1のセットと、第1の外面に対して垂直に延びる第2の垂線が第1の外面を通る点と第2の外面を通る点との間において積層化されて配置されている複数のフィルタ領域の第2のセットとを備えており、第1のセットのフィルタ領域がほぼ非透過性である波長領域は、第2のセットのフィルタ領域がほぼ非透過性である波長領域とは異なる。本発明による眼鏡のこの実施の形態においては、フィルタ領域の二つのセットはそれぞれ眼鏡を装着した人の各目のために設けられており、フィルタ領域が非透過性である各波長区間を適切に選択することによって、立体的に見るために必要とされる透視画像を形成することができる。特に有利には、第1のセットの第1のフィルタ領域は453nmから477nmの波長に対して少なくともほぼ非透過性である、及び/又は、第1のセットの第2のフィルタ領域は537nmから563nmの波長に対して少なくともほぼ非透過性である、及び/又は、第1のセットの第3のフィルタ領域は651nmから621nmの波長に対して少なくともほぼ非透過性である、及び/又は、第2のセットの第1のフィルタ領域は441nmから463nmの波長に対して少なくともほぼ非透過性である、及び/又は、第2のセットの第2のフィルタ領域は522nmから548nmの波長に対して少なくともほぼ非透過性である、及び/又は、第2のセットの第3のフィルタ領域は604nmから633nmの波長に対して少なくともほぼ非透過性である。
【0016】
以下では、図面を参照しながら、複数の実施例に基づき本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】
図1に示した眼鏡の干渉フィルタの断面図を示す。
【
図3】ホログラム露光されたポリマーフィルムを示す。
【
図5】
図4に示した干渉フィルタを備えている眼鏡の透過特性を概略的に示す。
【
図6】湾曲部を備えている、
図4に示した干渉フィルタを示す。
【
図8】眼鏡を装着した人の各目にそれぞれ一つずつ対応付けられている、本発明による眼鏡の二つのフィルタ領域を示す。
【
図9】眼鏡を装着した人の各目にそれぞれ一つずつ対応付けられているフィルタ領域の各セットを備えている、本発明による眼鏡の干渉フィルタを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1には、ステレオ画像を見るための本発明による眼鏡1が示されている。眼鏡1はフレーム2と、レンズの代わりとなる、右側のフィルム状干渉フィルタ3並びに左側のフィルム状干渉フィルタ3とを有している。レンズの代わりに干渉フィルタ3が使用されることによって、眼鏡1の重量は総じて軽くなっている。二つの干渉フィルタ3は同様の構成を有しており、また、可視光の波長スペクトルに関して、この眼鏡1を用いて公知のやり方で、ステレオ画像の二つの透視画像の各々(左側及び右側)の画像に対して異なるように設定されている可視スペクトルの領域が形成されるような光学的な特性若しくは透過特性を有している。
【0019】
図2にはフィルム状の干渉フィルタ3の断面が示されている。干渉フィルタ3は湾曲した形状を有しており、この形状は眼鏡を装着した人の異なる視線方向、特に横方向の視線方向での干渉フィルタ3の透過特性の波長シフトを低減するために設けられている。このことは下記において
図4から6を参照しながら詳細に説明する。
図2から見て取れるように、眼鏡1を装着した人と対向する側の干渉フィルタ3の外面4と、眼鏡1を装着した人とは反対側の干渉フィルタ3の外面5との間には、層状の種々のフィルタ領域6,7,8,9及び10が形成されている。フィルタ領域6,7,8,9及び10は個別化されている。つまり、それらのフィルタ領域6,7,8,9及び10は相互に一義的に区別することができ、また特に重畳部を有していない。この実施の形態において、フィルタ領域6は、干渉フィルタ3の外面4と外面5との間において干渉フィルタ3全体にわたり延在しているフィルタ領域又はフィルタ層である。並んで配置されている三つのフィルタ領域7,8及び9は一緒に、フィルタ層6に実質的に平行に延びており、且つ、フィルタ層6から間隔を空けて、フィルタ6と同様に干渉フィルタ3全体にわたり延在している一つのフィルタ層を形成している。これに対して、外面4の一番近くに位置する層状のフィルタ領域10は局地的に限定されて設けられている。
【0020】
各フィルタ領域6,7,8,9及び10は、可視光のそれぞれ定められた波長区間に対して、5%を下回る残余透過率を有しており、従ってその波長領域の波長に対してほぼ非透過性である。その種のフィルタ領域はノッチフィルタとも称される。
【0021】
コヒーレントな二つのレーザビームを用いた感光性ポリマーフィルムのホログラム露光、またそれに続く、漂白過程における固定によって、フィルタ領域6,7,8,9及び10がポリマーフィルム内に形成され、そのポリマーフィルムが内部に形成されたフィルタ層6,7,8,9及び10と共に最終的に相互に積層化されることによって、干渉フィルタ3は製造される。例えばフィルタ層6を、ポリマーフィルムの露光によって第1の感光性ポリマーフィルム内に形成することができる。ポリマーフィルムの露光後に、その露光によって内部に形成されたフィルタ層6が固定される。相応のやり方で、フィルタ層7,8及び9を第2の感光性ポリマーフィルム内に形成することができる。単一のポリマーフィルム内において相互に並んで配置されているフィルタ層7,8及び9を達成するために、露光中にポリマーフィルムに対する露光角度が位置に応じて変更される。同様に、第3のポリマーフィルム内にフィルタ層10を形成することができる。第2のポリマーフィルムが第3のポリマーフィルムの上に重ねられ、第1のポリマーフィルムが第2のポリマーフィルムに重ねられると、それによって
図2に示されている構造を有する干渉フィルタ3が得られ、これを眼鏡1において使用することができる。
【0022】
干渉フィルタ3が湾曲した形状又は撓んだ形状を有しているので、外面4又は5の各点を通る、各外面4及び5に対して垂直に延びる垂線はそれぞれ異なる配向を有している。
図2においては例示的に、外面5の点12において外面5に対し垂直に延びる垂線11と、外面5の別の点14において外面5に対して垂直に延びる垂線13と、外面5の更に別の点16において外面5に対して垂直に延びる垂線15とが示されている。この実施例のように外面4及び5が実質的に相互に平行である特別な場合には、垂線11,13及び15が二つの外面4及び5のいずれに対しても同時に直角又は垂直である。つまりこのことは一般的に必ずしも必要では無い。何故ならば、外面4及び5は大抵の場合、異なる形状を有していることが考えられ、特に平行に延びている必要はないからである。従って本願発明の対象にとっては、請求項1の特徴部分に記載されている構成を満たしている、外面4又は5のいずれか一方に対して垂直である垂線が一つでも存在していれば十分である。
【0023】
外面5の点12を通って延びる垂線11は点17において外面4を通り、その一方で、外面5の点14を通って延びる垂線13は点18において外面4を通り、また、外面5の点16を通って延びる垂線15は点19において外面4を通る。点12と点17との間には、フィルタ領域6及び7が重なって配置されており、点14と点18との間には、フィルタ領域6,8及び10が重なって配置されており、また、点16と点19との間には、フィルタ領域6,9及び10が重なって配置されている。このことは、垂線11に沿った視線方向ではフィルタ領域6及び7の光学的な作用が付加されることを意味する。何故ならば、垂線11に沿った各フィルタ領域6及び7は電磁スペクトルの所定の各波長区間に対して少なくともほぼ非透過性であり、それによってその視線方向における干渉フィルタ3は、フィルタ領域6が非透過性である波長区間に対してほぼ非透過性であるだけでなく、フィルタ領域7が非透過性である波長区間に対してもほぼ非透過性であるからである。干渉フィルタ3を通過して上記の視線方向に入射する光からそれら二つの波長区間が除かれるか、若しくは、それら二つの波長区間が干渉フィルタ3によってブロックされる。相応に、垂線13に沿った視線に関してフィルタ領域6,8及び10は協働し、また垂線15に沿った視線に関してフィルタ領域6,9及び10は協働し、それどころかいずれの場合においても干渉フィルタ3によって三つの波長区間がブロックされる。垂線に沿っているのではなく、任意の方向に延びる視線方向に関しても干渉フィルタ3は同様に作用する。従って、フィルタ領域6,7,8,9及び10の内のどのフィルタ領域が任意の視線方向においてそれと交差しているかに応じて、干渉フィルタ3の相応の波長区間がブロックされる。従って、フィルタ領域の数、形状、大きさ及び配置を適切に選択することによって、またそれらのフィルタ領域によってブロックされる波長区間を適切に選択することによって、任意の視線方向に関してほぼ任意の透過特性を備えた眼鏡を実現することができる。特にそのようにして、視線方向に依存する、干渉フィルタの透過特性の波長シフトを少なくとも低減することができるか、又は、それどころか完全に補償することができる。このために、フィルタ領域を有利には、干渉フィルタの相応の成形部、特に湾曲部と組み合わせることができる。
【0024】
フィルタ領域7,8及び9の上述の例と同様に横方向に変化する透過特性を備えたフィルタ層を得るために、異なるフィルタを備えている複数のフィルタ領域を相互に並べて配置する代わりに、コヒーレントなレーザ光を異なる入射角度で両面からポリマーフィルムに入射させることによって、ホログラム露光により感光性ポリマーフィルム内に横方向に連続的に変化する透過特性を備えた一つのフィルタを形成することができる。このことは
図3においてポリマーフィルム20を例にして示されている。このポリマーフィルム20は
図3においてコヒーレントなレーザ光でもって上側及び下側から照射され、ポリマーフィルム20へのレーザ光の入射角度は位置に応じて変化する。
【0025】
別の実施例として、
図4には、それぞれが相互に間隔を空けており、且つ、干渉フィルタ21全体にわたって相互に平行に延在している、全部で8個のフィルタ領域22又はフィルタ層を備えた湾曲していない干渉フィルタ21の断面図が示されている。8個の各フィルタ領域22は各波長区間に対してほぼ非透過性であり、全部で8個の波長区間は相互に分離されている。従って干渉フィルタ21全体に関しては、
図5において一例として概略的に示した透過特性が生じる。
図5には、干渉フィルタ21の透過率Tが波長λにわたりプロットされている。
図5から見て取れるように、干渉フィルタ21は、既述の8個の波長区間の波長を除いた全ての波長に対して透過率1を有しており、それら8個の波長区間の波長に対しては透過率0を有している。従って、干渉フィルタ21を通過した光における、8個の波長区間の波長を除いた全ての波長は、妨害されること無く干渉フィルタ21を通過し、その一方で8個の波長区間の波長はブロックされる。
【0026】
図4の干渉フィルタ21は、相互に平行に配向されている外面23及び24を備えている、湾曲されていない平坦な形状である。相応に、二つの外面23及び24のいずれかの個所に対して垂直に延びており、任意の点においてそれらの外面を通る全ての垂線は同様に相互に平行であり、各垂線は8個のフィルタ領域22の各々と垂直に交差する。垂線に対して平行ではない線又は方向は、確かに同様に8個のフィルタ領域22の各々と同様に交差するが、しかしながら、フィルタ領域22の内の一つを横断するためにその種の方向において伝播する光線が必要とする距離は長くなる。この距離の延長は、干渉フィルタ21の透過特性の波長シフトを惹起し、これはその種の干渉フィルタ21を備えた眼鏡を装着した人の視線方向に依存する。人の視線方向が干渉フィルタ21の外面23,24に対して垂直である限り、干渉フィルタ21の透過特性は
図5に示されたようになる。視線方向の、外面23,24に対して垂直な方向からの偏差が大きくなればなるほど、干渉フィルタ21の透過特性のシフトは一層大きくなる。実際にこのことは、眼鏡を通して視線を側方に向ける人が、見る画像の色シフトを知覚するように作用する。
【0027】
上述したように、干渉フィルタ21においてその種の色シフトを抑制するための一つの可能性は、通常は不変であるフィルタ領域22において、干渉フィルタ21を
図6に示されているように側方に向かって湾曲させ、眼鏡を装着した人が視線を横に向けた際にその人の目に入射する光線がフィルタ領域22を通過した辿る距離を最小にし、それによってその距離を、垂線に対して平行な光線がフィルタ領域22を通って干渉フィルタ21を横切る際に辿る距離に対応させることである。
【0028】
図4に示した干渉フィルタ21が視角に依存する波長シフトを抑制する別の可能性は、干渉フィルタ21の通常は不変である形状においてフィルタ領域22を適切に設計することである。例えばフィルタ領域22が、
図2において相互に並んで整列されているフィルタ領域7,8及び9と同様に、複数の部分領域を有することができ、それらの部分領域に対して、波長シフトを抑制するように透過特性がそれぞれ選定されている。相互に並んで配置されており、段階的に変化する透過特性を備えている、その種の多数の部分領域は、全体としては、横方向において連続的に変化する透過特性を備えている、干渉フィルタ21を通り延在する一つのフィルタ層と同様に作用する。しかしながら、フィルタ領域22は
図3に示されているような露光によって、横方向において変化する透過特性を備えるように形成される。
【0029】
従って、視角に依存する波長シフトを種々のやり方で低減することができるか、又は完全に補償することができる。つまり、フィルタ領域全体にわたり一定であるか、横方向において変化させることができる透過特性を備えているフィルタ領域が適切に選択されるか、又は、干渉フィルタが
図6に示されているように相応に湾曲されるか、又は、それら二つの可能性が相互に組み合わされ、干渉フィルタの湾曲部が相応に配置及び設計されたフィルタ領域と共に設けられる。後者は
図2の干渉フィルタ3の場合である。
【0030】
上記において説明した全ての実施例においては、全てのフィルタ領域が完全に、単一の感光性ポリマーフィルムの内部に存在している。しかしながらこのことは必ずしも必要ではない。殆どの場合、干渉フィルタのフィルタ領域を、一つ又は複数のポリマーフィルム内に任意に配置することができる。特に、フィルタ領域を相互に間隔を空けて積層化すること、又はポリマーフィルム内に完全に配置することは必ずしも必要ではなく、干渉フィルタ25が示されている
図7から見て取れるように、干渉フィルタ25は相互に積層化された二つの感光性ポリマーフィルム26及び27を含んでいる。ポリマーフィルム26は、その縁部部分に設けられているフィルタ領域28を有しており、フィルタ領域28の表面は干渉フィルタ25の外面の一部を形成している。局所的に限定されており、且つ、フィルタ領域28から間隔を空けて設けられている別のフィルタ領域29は完全にポリマーフィルム26内に配置されている。第2のポリマーフィルム27は、その縁部部分に同様に配置されているフィルタ領域30を有しているが、しかしながら、フィルタ領域30の表面は、ポリマーフィルム26が積層化されている、ポリマーフィルム27の外面の一部を形成している。ポリマーフィルム27内に設けられており、ポリマーフィルム27全体を通って延びているフィルタ領域31はフィルタ領域30と当接するように設けられている。
【0031】
図8には、本発明による別の眼鏡の二つの干渉フィルタ32及び33の断面図が示されている。干渉フィルタ32は、眼鏡を装着した人の左目に対応付けられており、干渉フィルタ33は、眼鏡を装着した人の右目に対応付けられている。各干渉フィルタ32及び33は、それぞれ積層化された三つのフィルタ領域のセットをそれぞれ一つずつ有しており、各フィルタ領域は約10nmの厚さを有している。二つの干渉フィルタ32及び33は、フィルタ領域の透過特性の、視角に依存する波長シフトを補償するために湾曲した形状に形成されている。干渉フィルタ32は、干渉フィルタ32の外面に対して垂直に延びる各垂線がその外面を通る点の間に積層化されて配置されている三つのフィルタ領域34,35及び36のセットを含んでおり、また干渉フィルタ33は、干渉フィルタ33の外面に対して垂直に延びる各垂線がその外面を通る点の間に積層化されて配置されている三つのフィルタ領域37,38及び39のセットを含んでいる。第1のセットのフィルタ領域において、フィルタ領域34は453nmから477nmの波長に対して非透過性であり、フィルタ領域35は537nmから563nmの波長に対して非透過性であり、フィルタ領域36は651nmから621nmの波長に対して非透過性であり、また、第2のセットのフィルタ領域において、フィルタ領域37は441nmから463nmの波長に対して非透過性であり、フィルタ領域38は522nmから548nmの波長に対して非透過性であり、フィルタ領域39は604nmから633nmの波長に対して非透過性である。従って、波長が或る程度重畳しているにも係わらず、第1のセットのフィルタ領域34,35及び36がほぼ非透過性である波長と、第2のセットのフィルタ領域37,38及び39がほぼ非透過性である波長とを区別することができる。これによって、干渉フィルタ32及び33を備えている眼鏡は、左目及び右目に対してステレオ画像の各透視画像を生じさせることができる。
【0032】
ステレオ画像を見るためにただ一つの干渉フィルタ40を有している本発明による別の眼鏡の干渉フィルタ40の断面図が
図9に示されている。干渉フィルタ40は、眼鏡を装着した人の各目にそれぞれ一つずつ対応付けられている三つのフィルタ領域のセットを含んでいる。三つのフィルタ領域のそれらの各セットのフィルタ特性は、
図8における干渉フィルタ32及び33のフィルタ領域のセットに対応し、従って同一の参照番号が付されている。従って相応に、
図9の干渉フィルタ40は、干渉フィルタ40を備えた眼鏡を装着した人の左目に対応付けられている、フィルタ領域の第1のセットの三つのフィルタ領域34,35及び36を有しており、フィルタ領域34は453nmから477nmの波長に対して非透過性であり、フィルタ領域35は537nmから563nmの波長に対して非透過性であり、またフィルタ領域36は651nmから621nmの波長に対して非透過性であり、また、干渉フィルタ40は、干渉フィルタ40を備えた眼鏡を装着した人の右目に対応付けられている、フィルタ領域の第2のセットの三つのフィルタ領域37,38及び39を有しており、フィルタ領域37は441nmから463nmの波長に対して非透過性であり、フィルタ領域38は522nmから548nmの波長に対して非透過性であり、フィルタ領域39は604nmから633nmの波長に対して非透過性である。フィルタ領域の透過特性の、視角に依存する波長シフトを補償するために、干渉フィルタ40は相応に湾曲した形状に形成されている。
【0033】
図8及び
図9の眼鏡の場合のように、左目及び右目に対して、異なる透過特性を備えているフィルタ領域のセットをそれぞれ設ける代わりに、左目及び右目に対応付けられているフィルタ領域のセットが同一のものであっても良く、それによって、左目に対するその種の眼鏡の透過特性を右目に対する透過特性と同一のものにすることができる。その種の眼鏡を用いることによって、例えば、ステレオ画像の二つの透視画像の内の一つだけを見ることができる。
【0034】
しかしながら大抵の場合、フィルタ領域のセットは、ステレオ画像の二つの透視画像の各々に対して異なるように設定された、可視スペクトルの領域を、複数の制限的なスペクトル区間が透過されるように構成することが提案される。二つの透視画像に対する透過区間の位置は異なるように選定されている。このことは
図10に示されている。
【0035】
図10には、
図8及び
図9に示されている場合と同様に、眼鏡を装着した人の左目及び右目に対して、異なる透過特性を備えているフィルタ領域のセットがそれぞれ設けられている、ステレオ画像を見るための眼鏡の透過特性が示されているが、もっとも各セットは積層化されて配置されている三つのフィルタ領域の代わりに四つのフィルタ領域を備えている。
図10の上部には、右目に関する眼鏡の透過スペクトルが示されており、
図10の下部には左目に関する眼鏡の透過スペクトルが示されている。ここでは、透過率のパーセンテージが波長(単位nm)にわたりそれぞれプロットされている。図から見て取れるように、眼鏡は右目に対して可視スペクトルの内、四つの波長区間が除かれている。左目に関しても同様に、可視スペクトルの内、四つの波長区間が除かれている。しかしながら、左目に関して除かれている四つの波長区間は常に、右目に関して除かれている波長区間の間に位置しており、その際に、左目に関して除かれている波長区間が右目に関して除かれている波長区間と重畳することはない。従って、右目に関して除かれている波長区間は、左目に関して除かれている波長区間と交互に配置されている。