(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記1つ又はそれ以上のフルオロポリマーを溶媒と混合して、前記組成物を前記溶媒中の前記1つ又はそれ以上のフルオロポリマーの混合物として生成するステップと、前記組成物を前記繊維製造装置内に配置するステップと、をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
前記繊維製造装置を駆動部に結合するステップと、前記駆動部を作動させるステップとをさらに含み、前記駆動部は、前記繊維製造装置を回転させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
小さい直径(例えば、マイクロメートル(「ミクロン」)からナノメートル(「ナノ」)まで)を有する繊維は、衣料産業から軍事用途に至る様々な分野で有用である。例えば、生物医学分野においては、生細胞を効果的に支持する組織増殖のための足場材料を与えるナノ繊維をベースとする構造体の開発に強い関心がもたれている。繊維の分野では、ナノ繊維が単位質量当たりの表面積が大きく、軽いが耐摩耗性の高い衣料品をもたらすという理由で、ナノ繊維に強い関心がもたれている。その1つの部類として、炭素ナノ繊維は、例えば、強化複合材料において、熱管理において、及びエラストマーの補強において、用いられている。小直径繊維を製造し、それらの化学的及び物理的性質を制御する技量が向上するにつれて、小直径繊維の多くの可能性のある用途が開発されている。
【0003】
超撥水性は、高い水接触角(「CA」)>150°により実証することができる固体表面の重要な特性である。超撥水性表面は、それに加えて通常10°未満の低い接触角ヒステリシスを有すると、付加的にセルフクリーニング性質も有することになる。これらの表面特性は、幾つか挙げただけでも自動車のフロントガラス、セルフクリーニング式窓ガラス、氷が付着しにくい表面、繊維製品、建築、塗料、マイクロ流体、Li−空気電池、及び太陽電池などの幾つもの用途に対して可能性を提供する。超撥水性は、表面に低表面エネルギー材料のナノ−マイクロサイズの構造体で外装を施すことにより、又は低表面エネルギー材料からなるナノ繊維のマット又は膜の開発を試みることにより、達成されている。これらの表面を製造するために、エッチング、リソグラフィ、機械的延伸、交互吸着(layer−by−layer)法、相分離、電気化学的析出、化学気相成長、及び電界紡糸などの様々なプロセスが行われてきた。
【0004】
フルオロポリマー(その表面エネルギーが極めて低いので超撥水性表面を調製するための最も優れた素材)の繊維形成の場合には、繊維マットを開発するために様々な試みが行われている。フルオロポリマーは「非溶融加工性」と分類され、またその極めて低い誘電率を考えると、これらの材料を加工するのは複雑であった。電界紡糸又は他のいずれかの技術により超微細フルオロポリマー(純粋なテフロン(登録商標)AF繊維など)を調製するための安定したプロセスは、文献に記されてはいないようである。幾つかの試みが進められており、これらを以下で説明する。
【0005】
単一ステップの無溶媒技術により、PTFEのような極めて高い溶融粘度を有するポリマーからマイクロ及びナノ繊維を生成する単一ステップのプロセスが提案された。PTFE(Dupont製PTFE601A又は7A粉末)と窒素及びアルゴンなどの高圧気体(40%まで)との混合物を、加熱された(260℃から360℃)ステンレス鋼ノズルを通して吐出させた。このプロセスの成果は、少量の純粋なPTFE繊維状材料であり、直径が小さくて30−40nm及び長さが長くて3−4mmの繊維の最小量が他の構造体の中に浸った状態が観察された。フィブリル化の程度は、材料の融点(例えば、PTFE601A又は7A粉末では350℃)を上回る温度で処理された繊維をジェット吐出した場合に、より高かった。生成された繊維の水接触角は、147°であると観察された。
【0006】
電界紡糸は、マイクロ及びナノ繊維を生成するための周知の技術である。PTFEを電界紡糸する最初の試みは、非イオン性湿潤剤及び安定剤を含む蒸留水中のPTFEの水分散液を電界紡糸することにより行われた。電界紡糸された材料を、150℃のホットプレートに固定した、導電性のフッ素ドープ酸化スズで被覆されたガラススライド上に堆積させた。このプロセスは、連続繊維を形成する代わりに、材料をスプレーする結果に終わった。エレクトロスプレーされたPRFE材料をさらに加熱して、水及び湿潤剤を除去した。スプレーされたままのPTFE被覆は、湿潤剤の存在により親水性であるが、湿潤剤はその後、空気中で265℃又は真空で190℃で加熱することにより除去された。このプロセスの後、被覆は、167°という高い水接触角を示し、転落角は2°であった。
【0007】
フルオロポリマー繊維を形成する別の方法では、電界紡糸プロセスにおいて犠牲マトリクスと所望のフルオロポリマーとのブレンドを用いて混合繊維を製造する。犠牲マトリクスはその後除去され、主としてフルオロポリマーからなる繊維が残される。例えば、脱イオン水中のポリ(ビニルアルコール)(「PVA」)とPTFEとのエマルジョンブレンドを電界紡糸した。電界紡糸された材料を焼結することによりPVAが除去され、フルオロポリマー繊維が得られた。電界紡糸は、幾らかは微細繊維(300nm)を与えたが、主として、エマルジョン質量比が30:70のPVA/PTFEの不均一な繊維を与えた。PVA含量を増やすと、均一な繊維が得られるが、繊維の直径が大きくなる。焼結の前後でのDSC及びATR−FTIRによる検討で、犠牲ポリマーであるPVAは電界紡糸された材料から完全に除去されたことが確認された。しかし、焼結後に複合繊維は交差部で融合し、多孔質膜を形成した。一般に、そのようなプロセスの最終材料として繊維は得られない。
【0008】
別のプロセスでは、フルオロポリマー繊維は、電界紡糸可能なコアポリマー材料をフルオロポリマーによって連続的に被覆することにより調製することができる。例えば、フルオロポリマー(例えば、テフロンAF)で、コア材料として用いられる電界紡糸可能なポリマー(例えば、ポリ(ε−カプロラクトン、「PCL」)上を連続的に被覆して、超撥水性同軸繊維を形成することができる。フロリナート(Fluorinert)FC−75溶媒(400−S1−100−1、DuPontから購入)中の1wt%のテフロンAF2400をシース材料として用い、2,2,2−トリフルオロエタノール(TFE、純度99.8%)中に溶解されたPCL溶液をコア材料として用いた。供給量1.5mL/hrの10wt%PCLコア及び供給量1mL/hrの1wt%テフロンシースにて均一な同軸繊維が形成され、直径は〜1−2μmであった。同軸PCL/テフロンAF繊維は、水接触角158°及びドデカンでの接触角およそ130°を示し、一方、PCLのみの繊維の場合の同じ値は、それぞれ125°及び0°であった。他の材料(例えば、ポリ(フッ化ビニリデン)又はポリ(アクリロニトリル))をコア材料として用いることができる。
【0009】
同軸電界紡糸法には多くの問題がある。同軸電界紡糸法は、一般に、観察される繊維の均一性を欠くことを示している。そのうえ、コアは常にコアとしてとどまっているわけではなく、また、シースは一般に、コア材料の均一な被覆ではない。さらに、同軸繊維を形成するプロセスは、複雑であり、かなりの量の溶媒を使用する。純粋なフルオロポリマー繊維を調製するための幾つかの試みがなされてきたが、上述の欠点を考えると、どの試みも商業的利用に合わせて容易にスケールアップできそうにない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】複数の周囲開口を有する単一プレートを含む繊維製造装置の実施形態の平面図である。
【
図1B】複数の周囲開口を有する単一プレートを含む繊維製造装置の実施形態の側面図である。
【
図1C】複数の周囲開口を有する単一プレートを含む繊維製造装置の実施形態の投影図である。
【
図3A】
図1に示す繊維製造装置を含む繊維製造装置、及び収集壁の平面図を示す。
【
図3B】
図1に示す繊維製造装置を含む繊維製造装置、及び収集壁の投影図を示す。
【
図5A】
図1に示す繊維製造装置を含む繊維製造装置、収集壁、及び収集ロッドの平面図を示す。
【
図5B】
図1に示す繊維製造装置を含む繊維製造装置、収集壁、及び収集ロッドの投影図を示す。
【
図6A】繊維製造システムの実施形態の部分切取斜視図を示す。
【
図7A】シールされた繊維製造システムの実施形態の部分切取斜視図を示す。
【
図7B】シールされた繊維製造システムの断面図を示す。
【
図8A】入口/出口開口に配置された弁を有する繊維製造システムの実施形態の部分切取斜視図を示す。
【
図8B】入口/出口開口に配置された弁を有する繊維製造システムの断面図を示す。
【
図9A】熱電冷却器を含む弁を有する繊維製造システムの実施形態の部分切取斜視図を示す。
【
図9B】熱電冷却器を含む弁を有する繊維製造システムの断面図を示す。
【
図10A】収集装置を有する繊維製造システムの実施形態の部分切取斜視図を示す。
【
図10B】収集装置を有する繊維製造システムの断面図を示す。
【
図11A】複数の周囲開口を有する3つのプレートを含む繊維製造装置の実施形態の投影図を示す。
【
図11B】複数の周囲開口を有する3つのプレートを含む繊維製造装置の実施形態の平面図を示す。
【
図11C】複数の周囲開口を有する3つのプレートを含む繊維製造装置の実施形態の側面図を示す。
【
図12A】
図11に示す繊維製造装置を含む繊維製造装置、及び収集壁の平面図を示す。
【
図12B】
図11に示す繊維製造装置を含む繊維製造装置、及び収集壁の投影図を示す。
【
図13】シリンジ、プランジャ、及び種々のニードル繊維製造装置、並びにシリンジ支持装置を含む実施形態を示す。
【
図14A】シリンジ支持装置に固定されたシリンジを含み、該シリンジがニードル及びプランジャを装備した、繊維製造装置の実施形態の投影図を示す。
【
図14B】シリンジ支持装置に固定されたシリンジを含み、該シリンジがニードル及びプランジャを装備した、繊維製造装置の実施形態の底面図を示す。
【
図15A】シリンジ支持装置の実施形態の投影図を示す。
【
図15B】シリンジ支持装置の実施形態の底面図を示す。
【
図16】シリンジ支持装置に固定されたシリンジを含み、該シリンジがニードル及びプランジャを装備した実施形態の投影図を示す。
【
図17】シリンジ支持装置の代替的な実施形態を示す。
【
図18A】シリンジベースの繊維製造装置を含む繊維製造装置、及び収集壁の平面図を示す。
【
図18B】シリンジベースの繊維製造装置を含む繊維製造装置、及び収集壁の投影図を示す。
【
図19A】シリンジベースの繊維製造装置を有する繊維製造システムの実施形態の部分切取斜視図を示す。
【
図19B】シリンジベースの繊維製造装置を有する繊維製造システムの部分切取斜視図を示す。
【
図20A】凹型液溜めを含む繊維製造装置の実施形態の投影図を示す。
【
図20B】凹型液溜めを含む繊維製造装置の実施形態の平面図を示す。
【
図20C】凹型液溜めを含む繊維製造装置の実施形態の側面図を示す。
【
図21A】凹型液溜めを有する繊維製造装置を含む繊維製造装置の平面図を示す。
【
図21B】凹型液溜めを有する繊維製造装置を含む繊維製造装置の投影図を示す。
【
図22A】上部プレート及び下部プレートを含み、上部プレートと下部プレートとがマイクロメッシュ材料により分離された繊維製造装置の実施形態の投影図を示す。
【
図22B】上部プレート及び下部プレートを含み、上部プレートと下部プレートとがマイクロメッシュ材料により分離された繊維製造装置の実施形態の平面図を示す。
【
図22C】上部プレート及び下部プレートを含み、上部プレートと下部プレートとがマイクロメッシュ材料により分離された繊維製造装置の実施形態の側面図を示す。
【
図23A】メッシュ材料を有する繊維製造装置を含む繊維製造装置の平面図を示す。
【
図23B】メッシュ材料を有する繊維製造装置を含む繊維製造装置の投影図を示す。
【
図24】シリンジベースの繊維製造装置の代替版を示す。
【
図25】複数のシリンジ端部を含む繊維製造装置を示す。
【
図26A】遠心紡糸法により製造されたナノサイズのPTFE繊維のSEM画像を示す。
【
図26B】遠心紡糸法により製造されたナノサイズのPTFE繊維のSEM画像を示す。
【
図26C】遠心紡糸法により製造されたナノサイズのPTFE繊維のSEM画像を示す。
【
図26D】遠心紡糸法により製造されたナノサイズのPTFE繊維のSEM画像を示す。
【
図27A】PTFEナノ繊維マットで覆われたガラススライド上の水滴を示す。
【
図27C】PTFEナノ繊維マットで覆われたガラススライド上の凍結された水滴を示す。
【
図28】繊維を収集して糸にするための装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明には種々の改変及び代替的形態の余地があり得るが、その特定の実施形態が例として図面に示され、本明細書で詳しく説明されることになる。図面は、必ずしも縮尺通りには描かれていない。しかし、図面及びその詳細な説明は、本発明を開示された特定の形態に限定することを意図したものではなく、むしろ反対に、添付の特許請求の範囲によって定められる本発明の趣旨及び範囲に入るあらゆる改変、均等物、及び代替を網羅することが意図されていることを理解されたい。
【0017】
本発明は、特定の装置又は方法に限定されず、それらは、当然のことながら多様であり得ることを理解されたい。さらに、本明細書で用いる用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、限定することを意図したものではないことを理解されたい。本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられる場合、単数形の定冠詞(a、an)及び不定冠詞(the)は、文脈が明らかにそうではないことを規定しない限り、単数及び複数の指示対象を含む。さらに、単語「ことができる、あり得る(may)」は本出願を通して許容的意味(即ち、〜の可能性を有する、することができる)で用いられ、強制的意味(即ち、すべきである)では用いられない。用語「含む(include)」及びその派生語は、「〜を含んでいるがそれに限定されない」を意味する。用語「結合される(coupled)」は、直接的又は間接的に接続されることを意味する。
【0018】
用語「含む・備える(comprise)」(並びに「comprises」及び「comprising」など、compriseのあらゆる形)、「有する(have)」(並びに「has」及び「having」など、haveのあらゆる形」、「含む(include)」(並びに「includes」及び「including」など、includeのあらゆる形)、並びに「含む・含有する(contain)」(並びに「contains」及び「containing」などのcontainのあらゆる形)は、制限の無い(open−ended)連結動詞である。1つ又はそれ以上のステップ又は要素を「含む・備える(comprises)」、「有する(has)」、「含む(includes)」又は「含む・収容する(contains)」方法又は装置は、それら1つ又はそれ以上のステップ又は要素を持つが、それら1つ又はそれ以上のステップ又は要素のみを持つことに限定されるものではない。同様に、1つ又はそれ以上の特徴を「含む・備える(comprises)」、「有する(has)」、「含む(includes)」又は「含む・含有する(contains)」装置の要素は、それら1つ又はそれ以上の特徴を持つが、それら1つ又はそれ以上の特徴だけを持つことに限定されるものではない。
【0019】
本明細書において、マイクロ繊維及びナノ繊維などのフルオロポリマー繊維を作成する装置及び方法が説明される。本明細書で論じる方法は、遠心力を利用してフルオロポリマーを生成する。フルオロポリマー繊維を作成するのに用いることができる装置も説明される。遠心力を用いて繊維を作成することに関する幾つかの詳細は、全て引用により本明細書に組み入れられる特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4に見いだすことができる。
【0020】
繊維製造装置の1つの実施形態を
図1に示す。繊維製造装置100は、下部プレート103に結合された上部プレート101を含む。下部プレート103は、その中に材料を配置することができる液溜め(リザーバ)として機能する。液溜めカバープレート105を、下部プレート103を覆うように置いて、流出量を制御すること、そしてまた流体を液溜めから逃すための開口106を設けるようにすることができる。液溜めカバープレート105は、紡糸される材料の導入を可能にする円形開口を有する。この型式の繊維製造装置に関して、典型的な材料の量は50−100mLの範囲であるが、液溜め及び繊維製造装置のサイズは各々異なるものとすることができるので、この範囲より少ない量並びに多い量も用いることができる。下部プレート103の周囲に沿って、材料出口通路104がある。繊維製造装置が回転している間、材料は、概ねこの通路をたどることになる。材料は、1つ又はそれ以上の開口106を通って繊維製造装置を出て、通路104に沿って繊維製造装置から逃れる。換言すれば、上部プレート101及び/又は下部プレート103は、図示されるように、液溜めの周囲の周りに1つ又はそれ以上の周囲開口106を有する。幾つかの実施形態において、1つ又はそれ以上の周囲開口106は、複数の周囲開口を含む。
【0021】
代替的な実施形態においては、上部プレート101と下部プレート103との間に周囲間隙が存在してもよく、下部プレート内の材料は、その間隙を通って逃れる。周囲間隙のサイズは、上部プレート101と下部プレート103との間の距離を変更することにより調整することができる。この方式では、繊維製造装置100を回転させると、材料は周囲間隙を通過して通路104に沿って移動し、これを通って繊維製造装置から逃れることができる。
【0022】
穴107は、例えば自在ねじ切り継ぎ手を介して、駆動部に取り付けられるように構成される。適切な駆動部としては、ブラシレスDCモータなどの市販の可変電気モータが挙げられる。繊維製造装置100のスピン軸108は、穴107の中心を通って垂直に、上部プレート101に直交して延びる。繊維製造装置100は、溶融紡糸又は溶液紡糸に用いることができる。特定の実施形態において、繊維製造装置100を300−2,000秒間回転させて、マイクロ繊維及び/又はナノ繊維が形成される。繊維製造装置100は、連続モードでより長時間動作させることもできる。
【0023】
本明細書で説明される繊維製造装置を用いて作成される繊維は、様々な繊維収集装置を用いて収集することができる。様々な例示的な繊維収集装置が以下で論じられ、それらの装置の各々は互いに組み合わせることができる。
【0024】
最も簡単な繊維収集方法は、繊維製造装置を取り囲む収集壁の内側で繊維を収集することである(例えば、
図2に示す収集壁200を参照のこと)。繊維は、典型的には、収集壁200と同様の収集壁から不織繊維として収集される。
【0025】
チャンバ内の空気力学的流れは、繊維収集装置の設計(例えば、収集壁又はロッドの高さ、その位置)に影響を与える。空気力学的流れは、例えば、計算流体力学(CFD)などのコンピュータシミュレーションにより分析することができる。回転する繊維製造装置は、本明細書で説明する装置の拘束内で空気力学的流れを生じさせる。この流れは、例えば、繊維製造装置の速度、サイズ及び形状、並びに繊維製造装置の位置、形状及びサイズによって影響を受けることがある。収集壁の外側に配置される中間壁も、空気力学的流れに影響を与えることがある。中間壁は、例えば、流れの乱流に影響を及ぼすことにより、空気力学的流れに影響を与えることがある。中間壁を配置することが、繊維が繊維収集装置上で収集されるようにするために必要であることがある。特定の実施形態において、中間壁の配置は、実験を通して決定することができる。一実施形態において、繊維製造装置を繊維収集装置及び中間壁の存在下で動作させ、繊維が繊維収集装置で収集されるかどうかを観察する。繊維が繊維収集装置で適切に収集されない場合には、中間壁の位置を移動し(例えば、その直径をより小さく又はより大きくする、又は、中間壁をより高く又は低くする)、再度実験を行って、繊維の適切な収集が達成されるかどうか確認する。このプロセスを、繊維が繊維収集装置で適切に収集されるまで繰り返すことができる。
【0026】
よどみ領域が、例えば、回転する繊維収集装置の場所に(例えば、回転する繊維収集装置の中心に集中して)に生じることがある。繊維収集装置は、典型的にはよどみ領域を乱さないように設計される。繊維収集装置がよどみ領域に関して適正に設計されていない場合、繊維は、典型的には所望の仕様で形成されない。
【0027】
典型的には、繊維は、収集壁上で収集されるか又はよどみ領域のその他の設計構造体上に沈降する。温度もまた、形成される繊維のサイズ及び形態に影響を及ぼす。収集壁が例えば周囲温度よりも相対的に高温である場合には、収集壁上で収集された繊維が合体して、個々の繊維の集束及び/又は溶着がもたらされることがある。幾つかの実施形態において、中間壁の温度は、例えば、気体(例えば、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム)を中間壁と収集壁との間に吹き込むことなどによって制御することができる。この吹き込み気体の流量、種類、及び温度を制御することによって、繊維の温度及び形態を制御することが可能である。壁のパラメータ(例えば、高さ、位置等)も、繊維の形態に影響を与えることがある。
【0028】
中間壁は、装置内の空気力学的流れを制御し、調整し、及び/又はこれに影響を与えるために用いることもできる。空気力学的流れは、典型的には、繊維が1つ又はそれ以上の繊維収集装置上に静止するように導く。形成されたときに、ばらばらの繊維が(その非常に小さい質量のため)1つ又はそれ以上の繊維収集装置上に静止するに至らず装置内で浮遊する場合には、例えば、中間壁が正しく配置されていない、又は繊維収集装置が正しく配置されていない、及び/又は空気力学的流れが適正に理解されていない可能性がある。中間壁は、典型的には、用いることができるどの収集壁よりも高い(例えば、収集壁の約1.1倍から約3倍の高さ)。中間壁は、収集壁を、約1インチから約5インチまで、又は約2インチから約4インチまで、又は約3インチの距離で取り囲むことができる。中間壁は、収集壁より約10%から約30%大きい(例えば、20%大きい)ものとすることができる。中間壁は、分割することができ、その中に1つ又はそれ以上の穴を有することができる。
【0029】
図3Aは、
図1に示す繊維製造装置を含む繊維製造装置、及び収集壁200の平面図を示す。
図3Bは、
図1に示す繊維製造装置を含む繊維製造装置、及び収集壁200の投影図を示す。図示したように、繊維製造装置100は、スピン軸の周りを時計回りに回転し、材料は、繊維製造装置の開口106から繊維320として様々な経路310に沿って出ていく。繊維は、周囲の収集壁200の内側で収集される。
【0030】
一方向性の長い繊維を収集することが目的である場合には、収集ロッドを設計し、繊維製造装置から適当な距離に配置することができる。この一例は、
図4に示すような収集ロッド400である。1つ又はそれ以上の収集ロッド(ロッド400と同様の)が、典型的には繊維製造装置の中心から約1インチから約10インチまで、又は約5インチから約7インチまで、又は約6インチまでの距離に配置される。1つ又はそれ以上の収集ロッドを収集壁の内側の周囲に沿って配置することができる。収集ロッドは、繊維収集の間、静止させることもでき、又は収集の間、回転させることもできる。この性質のロッドは、ロッドにかなりの剛性を与える硬質ポリマー(例えば、ポリカーボネート)又は金属(例えば、アルミニウム又はステンレス鋼)などの任意の適切な材料で作ることができる。1つ又は複数の収集ロッドを回転させる幾つかの実施形態においては、ロッドは、繊維製造装置と共に駆動部に接続されるプレートのような構造体に固定することができる。ロッド保持プレート及び繊維製造装置を互いに連動させて、これら両方が単一の駆動部の回転の結果として同方向又は反対方向に回転するようにさせることができる。ロッドの直径は、約0.1インチから約1インチまで、又は約0.2インチから約0.5インチまで、又は約0.25インチとすることができるが、繊維製造装置の構成に応じて他の様々なサイズを用いることができる。ロッドは、例えば約50RPMから約250RPMの速度で回転させることができる。収集ロッドを収集壁及び中間壁と組み合わせて用いて、繊維の収集を最大化することができる。
【0031】
図5Aは、
図1に示す繊維製造装置を含む繊維製造装置、収集壁、及び収集ロッドの平面図を示す。
図5Bは、
図1に示す繊維製造装置を含む繊維製造装置、収集壁、及び収集ロッドの投影図を示す。図示したように、繊維製造装置100は、スピン軸の周りを時計回りに回転し、材料は、繊維製造装置の開口106から繊維510として様々な経路520に沿って出ていく。繊維は、周囲の収集壁200の内側及び収集ロッド400上で収集される。
【0032】
繊維が作成される環境の条件が、これらの繊維の様々な性質に影響を与えることがある。例えば、鉄繊維のようなある種の金属繊維は、周囲空気と反応する(酸化鉄に変換されることになる)。そのような用途では、周囲空気を不活性気体(例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン)で置き換えることが好ましい。湿潤条件は、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)繊維などの多くのポリマー繊維の表面に悪影響を与えることがある。従って、幾つかの材料の加工については、湿度レベルを下げることが好ましい。同様に、薬物は、周囲条件中では維持されない無菌条件下で開発されることが要求される場合があり、従って、そのような状況では無菌環境が好ましい。
【0033】
「環境」とは、繊維製造装置の構成要素を取り囲むハウジングによって定められる内部空間を指す。特定の使用に関して、環境は、単に周囲空気とすることができる。所望であれば、空気を環境内に吹き込むことができる。他の使用に関して、環境を、例えば真空ポンプを用いて、約1mmHgから約760mmHgまで、又はその中で導き出せる任意の範囲のような低圧条件に従わせるものとすることができる。あるいは、環境は、例えば高圧ポンプを用いて、761mmHgから4atmまでの範囲又はそれより高圧の条件のような、高圧条件に従うものとすることができる。環境の温度は、以下に説明される加熱及び/又は冷却システムの使用により、所望により下げることも又は上げることもできる。環境の湿度レベルは、加湿器を用いて変更することができ、湿度0%から100%までの範囲とすることができる。薬物の開発のような特定の用途に関しては、環境を無菌にすることができる。装置の構成要素の各々が例えばステンレス鋼で作られている場合には、全ての構成要素を個々に滅菌し、例えば、装置の無菌性を維持する条件下のクリーンルーム内で組み立てることができる。
【0034】
幾つかのタイプの加熱源及び冷却源を、本明細書で論じる装置及び方法において、例えば、繊維製造装置、収集壁、中間壁、材料、及び/又は装置内の環境の温度を個々に制御するために用いることができる。使用することができる熱源としては、抵抗加熱器、誘導加熱器、及びIR(赤外線)加熱器が挙げられる。ペルティエ又は熱電冷却(TEC)装置を加熱及び/又は冷却目的で用いることができる。冷温気体又は加熱気体(例えば、空気又は窒素)を、冷却又は加熱目的で環境内にポンプで送ることもできる。伝導、対流、又は放射伝熱機構を装置の様々な構成要素を加熱及び冷却するために用いることができる。
【0035】
図6Aは、繊維製造システム600の実施形態の部分切取斜視図を示す。
図6Bは、繊維製造システム600の断面図を示す。システム600は、繊維製造装置601を含み、この繊維製造装置601は、例えば
図1に示すように周囲開口を有し、自在ねじ切り継ぎ手などのねじ切り継ぎ手603に結合しており、このねじ切り継ぎ手603が次にシャフト605を介してモータ604に結合する。変速モータなどのモータ604は、支持ばね606により支持され、防振材607(例えば、高周波防振材)で取り囲まれる。モータハウジング608は、モータ604、支持ばね606及び防振材607を収容する。加熱ユニット609は、熱(熱エネルギー)を繊維製造装置601に向ける開口610aを有する筐体610(例えば、熱反射壁)内に収容される。図示された実施形態において、加熱ユニット609は、断熱材611上に配置される。筺体610は、収集壁612によって取り囲まれ、収集壁612は、さらに中間壁613によって取り囲まれる。シール615上に据え付けられたハウジング614は、繊維製造装置601、加熱筺体610、収集壁612及び中間壁613を収容する。ハウジング614内の開口616は、流体(例えば、空気、窒素、ヘリウム、アルゴン等のような気体)を装置の内部環境中に導入することを可能にし、又は、流体が装置の内部環境からポンプで外に送出されることを可能にする。システムの下半分は、基部618によって支持された壁617により収容される。壁617内の開口619は、装置の内部環境条件のさらなる制御を可能にする。電源用インジケータ620及び電子装置用インジケータ621は壁617の外側に配置され、制御スイッチ622及び制御ボックス623も同様である。
【0036】
装置の制御システム622は、ユーザが特定のパラメータ(例えば、RPM、温度、及び環境)を変更して繊維の性質に影響を与えることを可能にする。所望であれば、1つのパラメータを変更する一方で、他のパラメータを一定に保持することができる。装置内の1つ又はそれ以上の制御ボックスがこれらのパラメータに対して様々な制御を与えることができ、又は、特定のパラメータは、他の手段によって制御することができる(例えば、ハウジングに取り付けられた弁を手動で開き、気体がハウジングを通って装置の環境内に入ることができるようにする)。制御システムは、装置と一体式とすることもでき(
図6A及び
図6Bに示すように)、又は装置とは分離したものとすることもできることに留意されたい。例えば、制御システムは、装置に対する適切な電気接続部を備えたモジュール方式とすることができる。
【0037】
装置の構成要素は、様々な材料から作ることができる。特定の実施形態において、装置の構成要素は、ステンレス鋼で作ることができる。例えば、繊維製造装置、収集壁及びハウジングは各々、ステンレス鋼で作ることができる。この場合には、構成要素は、例えば、スズ(232℃)、亜鉛(420℃)、銀(962℃)及びそれらの合金のような低融点金属用に用いることができる。特定の実施形態において、セラミック製構成要素を、金(1064℃)及びニッケル(1453℃)のような高融点合金用に用いることができる。高融点合金の操作には、ハウジングを適切にシールして、構成要素の環境を窒素又はヘリウムのような不活性気体で覆うことが必要であり得る。
【0038】
本明細書で説明する特定の方法において、繊維製造装置内で紡糸される材料は、変化する歪み速度を受けることがあり、そこで材料は溶融物又は溶液として保持される。歪み速度は作成される繊維の機械的延伸を変化させるので、最終的な繊維の寸法及び形態は、印加される歪み速度により著しく変化し得る。歪み速度は、例えば、繊維製造装置の形状、サイズ、型式及びRPMによって影響を受ける。材料の粘度を、例えば、材料の温度を上げること若しくは下げること、又は添加剤(例えば、希釈剤)を加えることなどによって変化させることで歪み速度に影響を与えることもできる。歪み速度は、変速繊維製造装置によって制御することができる。材料に印加される歪み速度を、例えば、50倍(例えば、500RPMから25,000RPM)も変化させることができる。
【0039】
材料、繊維製造装置及び環境の温度は、制御システムを用いて個々に制御することができる。使用される温度値又は温度範囲は、典型的には意図される用途による。例えば、多くの用途に関して、材料、繊維製造装置及び環境の温度は、典型的には4℃から400℃までの範囲である。温度は、低くは、例えば−20℃から、高くは、例えば2500℃までの範囲とすることができる。溶液紡糸においては、繊維製造装置の周囲温度が通常用いられる。薬物開発研究においては、繊維製造装置の温度範囲は、例えば4℃から80℃までの間とすることができる。セラミック又は金属繊維を製造するときには、利用される温度は著しく高くすることができる。より高い温度用には、装置のハウジング及び/又は内部構成要素の材料に適切な変更(例えば、プラスチックを金属で置き換える)を加えるか、又は装置自体に適切な変更(例えば、絶縁材の追加)をすることが通常必要とされる。そのような変更はまた、酸化などの望ましくない反応を回避する役に立つこともある。
【0040】
本明細書で検討する可変要素をどのように制御及び操作して特定の繊維を作成するかについての一例は、薬物開発に関係する。薬物の溶解性及び安定性は、薬物送達システムを開発する際の2つの重要な考慮事項である。これらのパラメータの両方を、本明細書で説明する方法及び装置を用いて同時に制御することができる。薬物の溶解性は、そのサイズを制御することによって著しく改善されることが多く、すなわち、サイズが小さいほど溶解性が高くなる。例えば、光学活性ベータラクタムのミクロンサイズの繊維をその結晶から生じさせることができる(例えば、実施例5を参照)。この著しく小さくなったサイズでは、より大きいサイズの薬物粒子と比べて表面積がより大きいことから、水中での薬物の溶解性は著しい改善を示すことが予期される。さらに、後で蒸発する適切な溶媒中に薬物を溶解させ、薬物で構成された繊維を残すことができる。また、本明細書で論じる方法及び装置を用いて、そのような薬物を、同様に紡糸される材料の中にカプセル化し、それにより、薬物がカプセル化された繊維を形成することもできる。特定の薬物の安定性を助長するために、環境温度を周囲条件より低く下げることがしばしば必要とされ得る。装置のハウジングは、十分な絶縁材を備えるように設計することができるので、温度を例えば−10℃又はそれ以下など、必要に応じて下げることができる。
【0041】
繊維製造システム700の代替的な実施形態の部分切取斜視図を
図7Aに示す。
図7Bは、繊維製造システム700の断面図を示す。システム700は、繊維製造装置701を含み、この繊維製造装置701は、例えば
図1に示すように周囲開口を有し、自在ねじ切り継ぎ手などのねじ切り継ぎ手703に結合しており、このねじ切り継ぎ手703が次にシャフト705を介してモータ704に結合する。変速モータなどのモータ704は、支持ばね706により支持され、防振材707で取り囲まれる。モータハウジング708は、モータ704、支持ばね706及び防振材707(例えば、高周波防振材)を収容する。加熱ユニット709は、熱(熱エネルギー)を繊維製造装置701に向ける開口710aを有する筐体710(例えば、熱反射壁)内に収容される。図示された実施形態において、加熱ユニット709は、断熱材711上に配置される。筺体710は、収集壁712によって取り囲まれ、収集壁712は、さらに中間壁713によって取り囲まれる。ハウジング714は、繊維製造装置701、加熱筺体710、収集壁712及び中間壁713を収容する。システムの下半分は、壁717により収容される。電源用インジケータ720及び電子装置用インジケータ721は壁717の外側に配置され、制御スイッチ722及び制御ボックス723も同様である。
【0042】
繊維製造システム800の代替的な実施形態の部分切取斜視図を
図8Aに示す。
図8Bは、繊維製造システム800の断面図を示す。システム800は、繊維製造装置801を含み、この繊維製造装置801は、例えば
図1に示すような周囲開口を有し、自在ねじ切り継ぎ手などのねじ切り継ぎ手803に結合しており、このねじ切り継ぎ手803が次にシャフト805を介してモータ804に結合する。変速モータなどのモータ804は、支持ばね806により支持され、防振材807で取り囲まれる。モータハウジング808は、モータ804、支持ばね806及び防振材807(例えば、高周波防振材)を収容する。加熱ユニット809は、熱(熱エネルギー)を繊維製造装置801に向ける開口810aを有する筐体810(例えば、熱反射壁)内に収容される。図示された実施形態において、加熱ユニット809は、断熱材811上に配置される。筺体810は、収集壁812によって取り囲まれ、収集壁812は、さらに中間壁813によって取り囲まれる。ハウジング814は、繊維製造装置801、加熱筺体810、収集壁812及び中間壁813を収容する。ハウジング814内の開口816は、流体(例えば、空気、窒素、ヘリウム、アルゴン等のような気体)を装置の内部環境中に導入することを可能にし、又は、流体が装置の内部環境からポンプで外に送出されることを可能にする。システムの下半分は、壁817により収容される。壁817内の開口819は、装置の内部環境の条件のさらなる制御を可能にする。弁830は、開口816及び819を塞ぐように示されている。弁830は、装置の内部環境内への流体(例えば、気体)の導入及び内部環境から外への流体の放出の制御を可能にする。電源用インジケータ820及び電子装置用インジケータ821は壁817の外側に配置され、制御スイッチ822及び制御ボックス823も同様である。
【0043】
繊維製造システム900の代替的な実施形態の部分切取斜視図が
図9Aに示される。
図9Bは、繊維製造システム900の断面図を示す。システム900は、繊維製造装置901を含み、この繊維製造装置901は、例えば
図1に示すように周囲開口を有し、自在ねじ切り継ぎ手などのねじ切り継ぎ手903に結合しており、このねじ切り継ぎ手903が次にシャフト905を介してモータ904に結合する。変速モータなどのモータ904は、支持ばね906により支持され、防振材907で取り囲まれる。モータハウジング908は、モータ904、支持ばね906及び防振材907(例えば、高周波防振材)を収容する。加熱ユニット909は、熱(熱エネルギー)を繊維製造装置901に向ける開口910aを有する筐体910(例えば、熱反射壁)内に収容される。図示された実施形態において、加熱ユニット909は、断熱材911上に配置される。システム900はまた、装置の内部環境を冷却することができる冷却システム930も含む。一実施形態において、冷却システム930は、熱電冷却システムである。筺体910は、収集壁912によって取り囲まれ、収集壁912は、さらに中間壁913によって取り囲まれる。ハウジング914は、繊維製造装置901、加熱筺体910、収集壁912及び中間壁913を収容する。冷却システム930は、ハウジング914に結合しており、これを用いてハウジングの内部を冷却することができる。システムの下半分は、壁917により収容される。電源用インジケータ920及び電子装置用インジケータ921は壁917の外側に配置され、制御スイッチ922及び制御ボックス923も同様である。
【0044】
図10Aは、繊維製造システム1000の実施形態の部分切取斜視図を示す。
図10Bは、繊維製造システム1000の断面図を示す。システム1000は、繊維製造装置1001を含み、この繊維製造装置1001は、例えば
図1に示すように周囲開口を有し、シャフト1005を介してモータ1004に結合する。変速モータなどのモータ1004は、支持ばね1006により支持され、防振材1007(例えば、高周波防振材)で取り囲まれる。モータハウジング1008は、モータ1004、支持ばね1006及び防振材1007を収容する。加熱ユニット1009は、熱(熱エネルギー)を繊維製造装置1001に向ける開口1010aを有する筐体1010(例えば、熱反射壁)内に収容される。図示された実施形態において、加熱ユニット1009は、断熱材1011上に配置される。筺体1010は、収集壁1012によって取り囲まれ、収集壁1012は、さらに中間壁1013によって取り囲まれる。シール1015上に据え付けられたハウジング1014は、繊維製造装置1001、加熱筺体1010、収集壁1012及び中間壁1013を収容する。ハウジング1014内の開口1016は、流体(例えば、空気、窒素、ヘリウム、アルゴン等のような気体)を装置の内部環境中に導入することを可能にし、又は、流体が装置の内部環境からポンプで外に送出されることを可能にする。システムの下半分は、基部1018により支持された壁1017により収容される。壁1017内の開口1019は、装置の内部環境の条件のさらなる制御を可能にする。電源用インジケータ1020及び電子装置1021用インジケータは壁1017の外側に配置され、制御スイッチ1022及び制御ボックス1023も同様である。システム1000はまた、1つ又はそれ以上の収集ロッド1030も含む。収集される繊維のタイプに応じて、収集ロッドを収集壁と併用して繊維を収集することもでき、又は各々のタイプの収集装置を別々に用いることもできる。
【0045】
繊維製造装置の代替的な実施形態を用いて繊維を製造することができる。例えば、別の実施形態の繊維製造装置1100を
図11A−
図11Cに示す。繊維製造装置1100は、カバープレート1101、ベースプレート1102及び保持プレート1103を含み、保持プレート1103は、ねじ切りされており、保持プレートねじ1104を伴って示されている。カバープレートは、穴1105を特徴としており、この穴を通してプレート固定ねじ1106を使用して、3つのプレートを一緒にプレート固定ナット1107と共に固定することができる。カバープレートはまた、材料注入口1108も特徴とする。材料を保持するためのベースプレート1102内の液溜め1109は、複数のチャネル1110に接合しており、液溜め1109内に保持された材料が繊維製造装置から開口1111を通って出ていくことができるようになっている。この型式の繊維製造装置に関して、典型的な材料の量は約5mLから約100mLまでの範囲であるが、液溜め及び繊維製造装置のサイズは各々異なるものとすることができるので、この範囲より少ない量並びに多い量を用いることもできる。繊維製造装置1100のスピン軸1112は、液溜め1109の中心を通って垂直に、3つのプレート1101、1102及び1103の各々に直交して延びる。特定の実施形態においては、この型式の繊維製造装置を約10秒から約500秒間回転させて繊維を形成する。この型式の繊維製造装置100は、連続モードでより長時間動作させることもできる。
【0046】
図12Aは、
図11に示す繊維製造装置含む繊維製造装置、及び収集壁200の平面図を示す。
図12Bは、
図11に示す繊維製造装置を含む繊維製造装置、及び収集壁200の投影図を示す。図示したように、繊維製造装置1100は、スピン軸の周りを時計回りに回転し、材料は、繊維製造装置の開口1111から繊維1120として様々な経路1130に沿って出ていく。繊維は、周囲の収集壁200の内側で収集される。
【0047】
図13は、繊維製造装置の別の実施形態を示す。繊維製造装置1300は、プランジャ1302を装備したシリンジ1301と、シリンジ1301に開口1304のところで随意に結合することができる様々なニードル1303とを含む。シリンジ1301は、シリンジ支持装置1305の上に配置することができる。シリンジ支持装置1305は、本明細書で論じるように、繊維収集装置としても働くことができる。材料がシリンジ1301から噴出する角度を変更するために、シリンジ1301とシリンジ支持装置1305との間にウェッジ1306を随意に配置することができる。自在ねじ切り継ぎ手などのねじ切り継ぎ手1307が、シリンジ支持装置1305に取りつけられた状態で示されている。
【0048】
図14Aは、シリンジ支持装置に固定されたシリンジを含む繊維製造装置の実施形態の投影図を示し、ここでシリンジにはニードル及びプランジャが装備されている。
図14Bは、シリンジ支持装置に固定されたシリンジを含む繊維製造装置の実施形態の底面図を示し、ここでシリンジにはニードル及びプランジャが装備されている。プランジャ1302及びニードル1303を装備したシリンジ1301を含む繊維製造装置1400は、2つのクランプ1405を用いてシリンジ支持装置1404に固定される。典型的には約10mLから約500mLまでの材料がシリンジ内に配置されるが、この量はシリンジのサイズに応じて変化し得る。シリンジ支持装置は、2つの壁1406と、基部1407とを含む。壁1406は、真っ直ぐ又は円筒形(湾曲)とすることができる。繊維が繊維製造装置1400から出ていくときにこの繊維を壁1406の外側で収集することができるので、従って、このシリンジ支持装置は、繊維収集装置としても機能することができる。自在ねじ切り継ぎ手などのねじ切り継ぎ手1408が、穴1409のところでシリンジ支持装置1404の取り付けられた状態で示されている。この繊維製造装置のスピン軸1410は、穴1409の中心を通って垂直に延びる。この繊維製造装置は、溶液紡糸に用いることができる。特定の実施形態において、このタイプの繊維製造装置を約30秒から約1,000秒間回転させて繊維を形成する。繊維製造装置1400は、連続モードでより長時間動作させることもできる。
【0049】
同様に繊維収集装置としてとして機能することができる代替的なシリンジ支持装置1500を
図5A及び
図5Bに示す。シリンジ支持装置1500は、2つの壁1501と、シリンジをその上に配置することができる基部1502とを含む。壁1501は円筒形(湾曲)とすることができる。基部1502は、穴1503を含み、自在ねじ切り継ぎ手などを介して駆動部に取り付けられるように構成される。繊維がシリンジ支持装置に結合されたシリンジから出ていくときにこの繊維を壁1501の外側で収集することができるので、従って、壁は繊維収集装置として機能することができる。
【0050】
図16は、プランジャ1302及びニードル1403を装備したシリンジ1301を含む、繊維製造装置1600を示す。シリンジ1301は、対向する円筒形の壁1605の間の張力によってシリンジ支持装置1604により保持することができる。非限定的な取り付け機構としては、スナップ嵌め又は接着接合が挙げられる。シリンジ支持装置1604は、繊維が繊維製造装置1600から出ていくときに、この繊維を例えば壁1605の外側などで収集することにより、繊維収集装置としても機能することができる。自在ねじ切り継ぎ手のようなねじ切り継ぎ手1606が、穴1607のところでシリンジ支持装置1604に取り付けられた状態で示されている。この繊維製造装置のスピン軸1608は、穴1607の中心を通って垂直に延びる。繊維製造装置1600は、溶液紡糸に用いることができる。典型的には約10mLから約500mLまでの材料がシリンジ内に配置されるが、この量は、シリンジのサイズに応じて変化し得る。特定の実施形態において、繊維製造装置1600を約10秒から約1,000秒間回転させて繊維を形成する。繊維製造装置は、連続モードでより長時間動作させることもできる。
【0051】
図24は、シリンジベースの繊維製造装置の代替的な実施形態を示す。シリンジベースの繊維製造装置2400は、ボディ2430に結合された第1のシリンジ連結部2410及び第2のシリンジ連結部2420を含む。第1のシリンジ連結部2410及び第2のシリンジ連結部2420は両方とも、ニードルをボディ2430に取り外し可能に結合するためのそれぞれのコネクタを含む。ボディ2430は開口2450を含み、これを通して、紡糸される材料をボディ2430内に導入することができる。シリンジベースの繊維製造装置2400は、
図13−
図17のいずれかで説明するシリンジ支持体内で保持することができる。
【0052】
図25は、繊維製造装置の代替的な実施形態を示す。繊維製造装置2500は、ボディ2520に結合された複数のシリンジ連結部2510を含む。シリンジ連結部2510は、ニードルをボディ2520に取り外し可能に結合することを可能にするコネクタを含む。ボディ2520は開口2550を含み、これを通して、紡糸される材料をボディ内に導入することができる。一実施形態において、ボディ2520は、実質的に円筒形であり、シリンジ連結部2510は、実質的に均等にボディの周りに配置される。
図25は8つのシリンジ連結部2510を示しているが、より多くの又はより少ないシリンジ連結部をボディ2520に結合することできることも理解されたい。ボディ2520は、該ボディを回転させることができる駆動部にボディを結合するために用いることができる結合部材2530を含む。
【0053】
図17は、繊維収集装置として機能することができるシリンジ支持装置1700を示す。シリンジ支持装置1700は、シリンジの円筒形の外壁に接触するように構成された対向する弧状の(湾曲した)壁1701と、穴1703を含む基部1702とを含む。繊維が繊維製造装置1700から出ていくときにこの繊維を壁1701の外側で収集することができるので、従って、このシリンジ支持装置は、繊維収集装置としても機能することができる。
【0054】
シリンジベースの繊維製造装置を用いてマット繊維を収集することができる。マット繊維が収集されないとすれば、その1つの理由は、繊維製造装置がよどみ領域を乱していることであり得る。従って、
図13−
図17の実施形態に関して、よどみ領域の乱れを最小化するために、典型的にはシリンジ支持装置/繊維収集装置は、±20%(直径及び長さ両方に関して)で、ほぼシリンジのサイズとすべきと決定された。シリンジを使用する特定の実施形態において、シリンジ支持装置の設計は、このパラメータを念頭に置いて行うことができる。
【0055】
図18Aは、
図14A及び
図14Bに示す繊維製造装置1400を含む繊維製造装置、及び収集壁200の平面図を示す。
図18Bは、
図14A及び
図14Bに示す繊維製造装置1400を含む繊維製造装置、及び収集壁200の投影図を示す。図示したように、繊維製造装置1400は、スピン軸の周りを時計回りに回転し、材料は、シリンジ1301のニードル1403から繊維1810として様々な経路1820に沿って出ていく。繊維は、周囲の収集壁200の内側、並びに繊維製造装置1400上で収集されるので、シリンジ支持装置も繊維収集装置として機能する。
【0056】
図19Aは、シリンジベースの繊維製造装置1901を有する繊維製造システム900の実施形態の部分切取斜視図を示す。
図19Bは、繊維製造システム1900の断面図を示す。システム1900は、シリンジベースの繊維製造装置1901を含み、これは、シリンジ1902、シリンジ支持体1904及びニードル1903を含み、シャフト1905を介してモータ1907に結合する。変速モータなどのモータ1904は、支持ばね1906により支持され、防振材1907(例えば、高周波防振材)で取り囲まれる。モータハウジング1908は、モータ1904、支持ばね1906及び防振材1907を収容する。加熱ユニット1909は、熱(熱エネルギー)を繊維製造装置1901に向ける開口(図示せず)を有する筐体1910(例えば、熱反射壁)内に収容される。図示された実施形態において、加熱ユニット1909は、断熱材1911上に配置される。筺体1910は、収集壁1912によって取り囲まれ、収集壁1912は、さらに中間壁1913によって取り囲まれる。シール1915上に据え付けられたハウジング1914は、繊維製造装置1901、加熱筺体1910、収集壁1912及び中間壁1913を収容する。ハウジング1914内の開口1916は、流体(例えば、空気、窒素、ヘリウム、アルゴン等のような気体)を装置の内部環境中に導入することを可能にし、又は、流体が装置の内部環境からポンプで外に送出されることを可能にする。システムの下半分は、基部1918によって支持された壁1917により収容される。壁1917内の開口1919は、装置の内部環境の条件のさらなる制御を可能にする。電源用インジケータ1920及び電子装置用インジケータ1921は壁1917の外側に配置され、制御スイッチ1922及び制御ボックス1923も同様である。
【0057】
繊維製造装置のさらに別の実施形態を
図20A−
図20Cに示す。繊維製造装置2000は、壁2002内の中央に凹型空洞形状の液溜め2001を含む。典型的には、約100mLから約1,000mLまでの材料が液溜め内に配置されるが、液溜め及び繊維製造装置のサイズは各々異なるものとすることができるので、これよりも少ない量並びに多い量も用いることができる。繊維製造装置2000は、蓋2003を含み、この蓋は、ねじ穴2004を含み、このねじ穴2004が、蓋2003を1つ又はそれ以上のねじ2005を用いて液溜め2001に固定することを可能にする。蓋を液溜め2001に固定するために全てのねじ穴2004を用いる必要があるわけではなく、少なくとも1つの穴2004は、紡糸中にそこを通って材料が出ていくことができる開口としても機能する。特定の実施形態において、材料は、蓋2003と液溜めとの間の間隙を経て液溜め2001から出ていくことができる。自在ねじ切り継ぎ手などのねじ切り継ぎ手2006が、繊維製造装置の基部に取り付けられた状態で示されている。この繊維製造装置のスピン軸2007は、液溜め2001の中心を通って垂直に延びる。繊維製造装置2000は、溶融紡糸又は溶液紡糸に用いることができる。特定の実施形態において、繊維製造装置2000を約10秒から約5,000秒間回転させて繊維を形成する。繊維製造装置2000は、連続モードでより長時間動作させることもできる。
【0058】
図21Aは、
図20A及び
図20Bに示す繊維製造装置2000を含む繊維製造装置、及び収集壁200の平面図を示す。
図18Bは、
図20A及び
図20Bに示す繊維製造装置2000を含む繊維製造装置、及び収集壁200の投影図を示す。図示したように、繊維製造装置2000は、スピン軸の周りを時計回りに回転し、材料は、開口2004から繊維2110として様々な経路2120に沿って出ていく。繊維は、周囲の収集壁200の内側で収集される。
【0059】
繊維製造装置の別の実施形態を
図22A−
図22Cに示す。繊維製造装置2200は、メッシュ材料2203で分離された上部プレート2201及び下部プレート2202を含む。メッシュ材料は、ポリマー、金属(例えば、ステンレス鋼)、又はポリマー/金属の組み合わせから形成することができる。このようなメッシュ材料は、MSC Industrial Supply Co.(カタログ番号52431418)などの商業的供給元から入手することができる。上部プレート2201と下部プレート2202との間のメッシュ2203が張られた距離は、例えば、約1インチから約10インチまでの範囲、又はその中の任意の値又は範囲とすることができる。上部プレート2201と下部プレート2202との間のメッシュ2203が張られた距離は、1インチ、2インチ、3インチ、4インチ、5インチ、6インチ、7インチ、8インチ、9インチ、又は10インチとすることができる。下部プレート2202の穴2204は、下部コネクタ2205を貫通して延びており、自在ねじ切り継ぎ手などのねじ切り継ぎ手との接続を可能にする。繊維製造装置2200は、典型的には溶融紡糸に用いられる。材料の粒子(例えば、ポリマー粒子/ビーズ)を下部プレート2202内に配置することができ、この下部プレート2202は、他の繊維製造装置の場合のように液溜めとしてではなく、貯蔵部として機能する。しかしながら、下部プレート2202をこのプレートの中実の壁を高くすることによって改造し、液体材料用の液溜めとして機能するようにさせることも可能である。そのような改造により、この繊維製造装置を溶液紡糸に用いることが可能になる。この繊維製造装置のスピン軸2206は、穴2204の中心を通って垂直に延びる。繊維製造装置2200は、材料が下部プレート2202に連続的に供給される連続方式で動作させることができる。
【0060】
図22Aは、
図21A及び
図21Bに示す繊維製造装置2200を含む繊維製造装置、及び収集壁200の平面図を示す。
図22Bは、
図21A及び
図21Bに示す繊維製造装置2200を含む繊維製造装置、及び収集壁200の投影図を示す。図示したように、繊維製造装置2200は、スピン軸の周りを時計回りに回転し、材料は、メッシュ2203を、繊維2310として様々な経路2320に沿って通過する。繊維は、周囲の収集壁200の内側で収集される。
【0061】
1つの実施形態において、1つ又はそれ以上のフルオロポリマーを繊維製造装置の中に配置して、1つ又はそれ以上のフルオロポリマーで構成されたマイクロ繊維及び/又はナノ繊維を生成することができる。「フルオロポリマー」という用語は、ポリマーの繰返し単位の少なくとも一部分の中に炭素原子に結合した1つ又はそれ以上のフッ素原子を含むポリマーを指す。一般に、フルオロポリマーは、炭素、フッ素、及び水素で構成されるが、フルオロカーボンは、塩素及び酸素原子を含むこともできる。フルオロポリマーの例としては、これらに限定されないが、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PTCFE)、パーフルオロアルコキシポリマー(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、全フッ素化エラストマー、フルオロカーボン[フッ素化クロロトリフルオロエチレンビニリデン]、及びパーフルオロポリエーテル(PEPE)が挙げられる。
【0062】
フルオロポリマー繊維は、溶液紡糸法を用いて作成することができる。1つの実施形態において、1つ又はそれ以上のフルオロポリマーの混合物を適切な溶媒の中に溶解及び/又は懸濁させることができる。フルオロポリマーを溶解するのに適した溶媒の例には、フッ素化溶媒及び非フッ素化有機溶媒が含まれる。フッ素化溶媒の例としては、それらに限定されないが、フッ素化炭化水素(例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロデカリン、及びパーフルオロオクタン)、フッ素化エーテル(例えば、パーフルオロテトラヒドロフラン、パーフルオロ(ブチルテトラヒドロフラン、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、FC−77、Novec(登録商標)7100、Novec(登録商標)7200)、フロリナート(商標)溶媒(ミネソタ州セントポールの3Mから入手可能)が挙げられる。非フッ素化有機溶媒の例は、ジメチルホルムアミドである。フロオロポリマーと溶媒との混合物は、所望の粘度を達成するように選択することができる。所望の繊維に価値(例えば、抗酸化剤又は着色剤の性質)を付加するために、特定の材料を添加することができる。本明細書に用いられる「溶媒」という用語は、その溶媒と混合された材料を少なくとも部分的に溶解する液体を指す。
【0063】
材料が回転する繊維製造装置から噴出されると、細い材料の噴出物は、同時に、延伸され、かつ周囲環境内で冷却される。高い歪み速度(延伸による)における材料と環境との間の相互作用が、材料が固化してフルオロポリマー繊維となることをもたらし、これには溶媒の蒸発が付随することがある。温度及び歪み速度を操作することにより、材料の粘度を制御して、作成されるフルオロポリマー繊維のサイズ及び形態を操作することができる。環境及びプロセスの適切な操作により、様々な構造、例えば、連続的、不連続的、マット、ランダム繊維、一方向繊維、織布又は不織布など、並びに、様々な繊維形状、例えば、円形、楕円形及び矩形(例えば、リボン)などのフルオロポリマー繊維を形成することが可能である。他の形状も可能である。生成される繊維は、単一内腔(シングルルーメン)又は多重内腔(マルチルーメン)とすることができる。
【0064】
プロセスパラメータを制御することにより、繊維は、ミクロン、サブミクロン及びナノサイズで、並びにこれらの組合せで作成することができる。一般に、作成される繊維は、比較的狭い繊維直径分布を有することになる。個々の繊維の長さに沿って、及び繊維間で、直径及び断面構成に多少のばらつきが生じることがある。
【0065】
一般的に言えば、繊維製造装置は、繊維の様々な性質、例えば、繊維の断面形状及び直径などを制御するのに役立つ。より具体的には、繊維製造装置の速度及び温度、並びに、繊維製造装置内の出口の断面形状、直径及び角度は全て、繊維の断面形状及び直径を制御するのに役立つものであり得る。生成される繊維の長さもまた、使用する繊維製造装置の選択によって影響され得る。
【0066】
繊維製造装置を回転させる速度もまた繊維の性質に影響し得る。繊維製造装置の速度は、繊維製造装置が回転している間一定とすることもでき、又は繊維製造装置が回転している間に調整することもできる。その速度を調整することができる繊維製造装置は、特定の実施形態において、「可変速度繊維製造装置」として特徴付けられる。本明細書で説明する方法において、材料を保持する構造体は、約500RPMから約25,000RPMまで、又はその中で導き出せる任意の範囲で回転させることができる。特定の実施形態において、材料を保持する構造体を、約50,000RPM、約45,000RPM、約40,000RPM、約35,000RPM、約30,000RPM、約25,000RPM、約20,000RPM、約15,000RPM、約10,000RPM、約5,000RPM、又は約1,000RPMを超えない速度で回転させる。特定の実施形態において、材料を保持する構造体を約5,000RPMから約25,000RPMまでの速度で回転させる。
【0067】
一実施形態において、材料は、繊維製造装置の液溜め内に配置することができる。液溜めは、例えば、繊維製造装置の凹型空洞によって定めることができる。特定の実施形態において、繊維製造装置は凹型空洞と連通する1つ又はそれ以上の開口を含む。繊維は、繊維製造装置がスピン軸の回りで回転する間に、開口から押し出される。1つ又はそれ以上の開口は、スピン軸と非平行な開口軸を有する。繊維製造装置は、凹型空洞を含むボディと、ボディの上に配置される蓋とを含むことができ、蓋とボディとの間には間隙が存在するようになっており、回転された材料がこの間隙を通って凹型空洞から出ていく結果として、ナノ繊維が作成される。
【0068】
一実施形態において、繊維製造装置は、駆動部に結合されるシリンジを含む。シリンジは市販されており、様々なサイズで売られている。材料をシリンジ内に保持するためにはプランジャが通常用いられるが、他のストッパもこの目的で用いることができる。プランジャ又はストッパの反対側の端部には穴があり、この穴にねじ山をつけることができ、ニードルをこの穴に取り付けることができる。様々な長さ及びゲージのニードルを含む種々のニードルが市販されている。ニードルを交換することにより、異なるニードルを単一のシリンジで用いることができる。シリンジは、典型的にはシリンジ支持装置に固定され、シリンジとシリンジ支持体が共に回転するようになっている。
【0069】
例えば、繊維製造装置は、シリンジ及びプランジャを含むことができる。当業者に既知のように、プランジャを装備した任意のシリンジを用いることができる。材料は、シリンジ内に配置することができる。さらに、プランジャの代わりに、シリンジからの材料の望ましくない漏出を防止する別の物体を用いることができる。特定の実施形態において、シリンジは、シリンジに取り付けられるニードルをさらに含む。ニードルのゲージ(G)は、例えば、16G(1.194mm)から25G(0.241mm)までの範囲とすることができる。特定の実施形態において、シリンジ及びプランジャを、約500RPMから約25,000RPMまでの速度、又はその中で導き出せる任意の範囲の速度で回転させる。特定の実施形態において、少なくとも約10mLから約500mLまでの材料がシリンジ内に配置され、シリンジ及びプランジャを、約500RPMから約25,000RPMまでの速度で約10秒間から約1,000秒間回転させる。特定の実施形態において、シリンジ支持装置がシリンジを支持する。シリンジ支持装置は、例えば、開放された端部及び開放された上部を有する細長い構造体を含むことができる。
【0070】
繊維製造装置の別の可変要素には、繊維製造装置を作成するのに使用される材料が含まれる。繊維製造装置は、金属(例えば、真鍮、アルミニウム、ステンレス鋼)及び/又はポリマーを含む様々な材料で作成することができる。材料の選択は、例えば、材料が加熱される温度、又は無菌状態が所望されるかどうか、に依存する。
【0071】
特定の繊維製造装置は、開口を有し、材料は回転中にそこを通って噴出される。そのような開口は、様々な形状(例えば、円形、楕円形、矩形、正方形、三角形など)及びサイズ(例えば、直径0.01−0.80mmのサイズが典型的である)を呈することができる。開口の角度は、±15度の間で変化させることができる。開口には、ねじ山をつけることができる。ねじ付き開口などの開口は、ニードルを保持することができ、ニードルは、様々な形状、長さ、及びゲージサイズのものとすることができる。ねじ穴は、繊維製造装置のボディ内の空洞の上に蓋を固定するために用いることもできる。蓋は、蓋とボディとの間に間隙が存在するようにボディの上方に位置決めすることができ、紡糸される材料が間隙を通って空洞から出ていく結果として、繊維が作成される。繊維製造装置は、同じ装置内で1つの繊維製造装置を別の繊維製造装置と取り替え、これに関して何ら調整を必要としないように構成することもできる。様々な繊維製造装置に取り付けられた自在ねじ切り継ぎ手は、この取替を容易にすることができる。繊維製造装置は、連続方式で動作するように構成することもできる。
【0072】
本明細書で説明するいずれの方法も、作成されたマイクロ繊維及び/又はナノ繊維の少なくとも一部分を収集することをさらに含むことができる。本明細書で用いる場合、繊維の「収集」は、繊維が繊維収集装置で支えられて静止することを指す。繊維が収集された後、繊維は、人間又はロボットによって繊維収集装置から取り外される。様々な方法及び繊維(例えば、ナノ繊維)収集装置を用いて繊維を収集することができる。例えば、ナノ繊維に関しては、ナノ繊維の少なくとも一部分を収集する収集壁を使用することができる。特定の実施形態においては、収集ロッドがナノ繊維の少なくとも一部分を収集する。収集ロッドは、収集の間、静止させることもでき、又は、収集の間、収集ロッドを回転させることもできる。例えば、収集ロッドは、特定の実施形態において、50RPMから約250RPMで回転させることができる。特定の実施形態においては、開放端部及び開放上部を有する細長い構造体がナノ繊維の少なくとも一部分を収集する。上述のように、シリンジ支持装置は、開放端部及び開放上部を有する細長い構造体を含むことができる。特定の実施形態においては、シリンジ支持装置もまた、ナノ繊維などの繊維を収集する。
【0073】
収集される繊維に関して、特定の実施形態において、収集される繊維の少なくとも一部分は、連続、不連続、マット、織布、不織布、又はこれらの構成の混合物である。幾つかの実施形態において、繊維は生成後、円錐形に束ねられない。幾つかの実施形態において、繊維は生成中、円錐形に束ねられない。特定の実施形態において、繊維は、繊維が作成されるとき及び/又は作成された後に、繊維に吹き付けられる周囲空気などの気体を用いて、円錐形のような特定の形状に形成されない。
【0074】
本方法は、例えば、入口を通してハウジング内に気体を導入することをさらに含むことができ、このハウジングは、少なくとも繊維製造装置を囲むものである。気体は、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、又は酸素とすることができる。特定の実施形態においては、気体の混合物を用いることができる。
【0075】
繊維が作成される環境は、様々な条件を含むことができる。例えば、本明細書で論じるいずれの繊維も無菌環境内で作成することができる。本明細書で用いる場合、「無菌環境」という用語は、生きた細菌及び/又は微生物の99%より多くが除去された環境を指す。特定の実施形態において、「無菌環境」は、生きた細菌及び/又は微生物が実質的に無い環境を指す。繊維は、例えば、真空中で作成することができる。例えば、繊維製造システム内の圧力は、周囲圧力より低くすることができる。幾つかの実施形態において、繊維製造システム内の圧力は、約1ミリメートル(mm)水銀(Hg)から約700mmHgまでの範囲とすることができる。他の実施形態において、繊維製造システム内の圧力は、周囲圧力又はその付近とすることができる。他の実施形態において、繊維製造システム内の圧力は、周囲圧力より高くすることができる。例えば、繊維製造システム内の圧力は、約800mmHgから約4気圧(atm)までの範囲、又はその中で導き出せる任意の範囲とすることができる。
【0076】
特定の実施形態において、繊維は、湿度0−100%、又はその中で導き出せる任意の範囲の環境で作成される。繊維を作成する環境の温度は広範囲に変えることができる。特定の実施形態において、繊維を作成する環境の温度は、熱源及び/又は冷却源を用いて動作の前(例えば、回転の前)に調整することができる。さらに、繊維を作成する環境の温度は、熱源及び/又は冷却源を用いて動作中に調整することができる。環境の温度は、氷点下の温度、例えば、−20℃又はそれ以下に設定することができる。環境の温度は、例えば、2500℃までも高くすることができる。
【0077】
作成される繊維は、例えば、1ミクロン又はそれ以上の長さにすることができる。例えば、作成される繊維は、約1μmから約50cmまで、約100μmから約10cmまで、又は約1mmから約1cmまでの範囲の長さにすることができる。幾つかの実施形態において、繊維は狭い長さ分布を有することができる。例えば、繊維の長さは、約1μmから約9μmまでの間、約1mmから約9mmまでの間、又は約1cmから約9cmまでの間にすることができる。幾つかの実施形態において、連続法が実施される場合、長さが約10メートルまで、約5メートルまで、又は約1メートルまでの繊維を形成することができる。
【0078】
特定の実施形態において、繊維の断面は、円形、楕円形、又は矩形にすることができる。他の形状も可能である。繊維は、単一内腔繊維又は多重内腔繊維とすることができる。
【0079】
繊維を作成する方法の別の実施形態において、方法は、材料を紡糸して繊維を作成することを含み、ここで、繊維が作成されるときに、繊維は外部から印加された電界又は外部から加えられた気体に曝されず、繊維は、作成された後で液体の中に落下しない。
【0080】
本明細書で論じる繊維は、少なくとも100又はそれ以上のアスペクト比を示す部類の材料である。「マイクロ繊維」という用語は、10ミクロンから700ナノメートルまで、又は5ミクロンから800ナノメートルまで、又は1ミクロンから700ナノメートルまでの範囲の最小直径を有する繊維を指す。「ナノ繊維」という用語は、500ナノメートルから1ナノメートルまで、又は250ナノメートルから10ナノメートルまで、又は100ナノメートルから20ナノメートルまでの範囲の最小直径を有する繊維を指す。
【0081】
繊維は、当業者に既知のいずれかの手段により分析することができる。例えば、走査電子顕微鏡法(SEM)を用いて、所与の繊維の寸法を測定することができる。物理的特性及び材料特性決定のために、示差走査熱量測定(DSC)、熱分析(TA)及びクロマトグラフィなどの技術を用いることができる。
【0082】
以下の例は、本発明の好ましい実施形態を示すために含まれる。当業者であれば、以下の実施例において開示される技術は、本発明の実施において良好に機能する本発明者によって発見された技術を代表するものであり、従って、本発明の実施のための好ましいモードを構成するものと考えることができることを理解するであろう。しかしながら、当業者は、本開示に鑑みて、本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに、開示された特定の実施形態に多くの変更を加えることができること、そしてそれでもなお同様の又は類似の結果を得ることができることを認識するであろう。
【実施例】
【0083】
実施例1
遠心紡糸法を用いて、純粋なPTFE(例えば、テフロンAF)ナノ繊維の調製を達成した。繊維形成プロセスは、非常に安定しており、大量の繊維を生成し(商業的な観点から、高収率であることは極めて重要である)、単繊維、不織マット又は糸になることができる、清潔で純粋なPTFE繊維を生成する。
【0084】
フロリナートFC−40に溶解されたテフロンAFのポリマー溶液を、二重オリフィス式の繊維製造装置を用いて紡糸した。繊維製造装置は、装置の開口に結合された2つのニードルを含むものとした。繊維は、繊維製造装置に結合された27ゲージのニードル及び30ゲージのニードルを用いて形成された。いずれかのゲージのニードルを用いて、繊維製造装置を>8000rpmより高速で稼働させた。27ゲージニードルを用いたとき、ナノ繊維は、約7000rpmの速度で製造された。上述のニードルゲージ、速度、及び二重オリフィス式紡糸口金を用いると、1gを上回る繊維を調製するのに15秒(どちらかのゲージのニードルを用いて10,000rpmにて)しかかからない。ひとたび繊維製造ボディが充填されると、ノズルを接続した。
【0085】
紡糸サイクルの後、繊維は、基材としてのガラススライド上に収集されるか、又は、収集器から糸として紡がれる。
図26A−
図26Dは、遠心紡糸法により製造されたナノサイズのPTFE繊維のSEM画像を示す。
図26B−
図26Dは、
図26Aに示された繊維と同じ繊維の倍率を次第に上げて示したものである。生成された繊維は、ビーディングも、相互接続も、融合も示さないPTFEナノ繊維であった。測定された接触角は、繊維マットの厚さに応じて160°を下回ることはなかった。
図27Aは、PTFEナノ繊維マットで覆われたガラススライド上の水滴を示す。
図27Bは、
図27Aの水滴の拡大を示す。
図27Cは、PTFEナノ繊維マットで覆われたガラススライド上の凍結された水滴を示す。
【0086】
繊維は、糸に形成することができる。糸状繊維は、
図28に示される糸収集システムを用いて製造した。収集システムに取り付けられたモータが、繊維を引っ張り、撚りをかけて、糸を形成する。
【符号の説明】
【0087】
100、601、701、801、901、1001、1100、1300、1400、1600、1901、2000、2200、2400、2500:繊維製造装置
106、1111、1304、2004:開口
107、1409、1503、1607、1703、2204:穴
108、1112、1410、1608、2007、2206:スピン軸
200、612、712、812、912、1012、1912:収集壁
310、520、1130、1820、2120、2320:繊維の経路
320、510、1120、1810、2110、2310:繊維
400、1030:収集ロッド
600、700、800、900、1000、1900:繊維製造システム
603、703、1307、1408、1606、2006:ねじ切り継ぎ手
604、704、804、904、1004、1904:モータ
605、805、1905:シャフト
606、706、806、906、1006、1906:支持ばね
607、707、807、907:防振材
608、708、808、1908:モータハウジング
609、809、909、1009:加熱ユニット
610、710、810、910、1010:筺体
610a、710a、810a、910a、1010a、2004:筐体の開口
611、811、911、1011、1911:断熱材
613、713、813、913、1013、1913:中間壁
614、714、814、914、1014、1914:ハウジング
615、1015、1915:シール
616、1016、1916:ハウジングの開口
617、717、817、917、1017、1917:壁
618、1018、1918:基部
619、819、1019、1919:壁の開口
620、720、820、920、1020、1920:電源用インジケータ
621、721、821、921、1021、1921:電子装置用インジケータ
622、722、822、922、1022、1922:制御スイッチ
623、723、823、923、1023、1923:制御ボックス
930:冷却システム
1109、2001:液溜め
1301、1902:シリンジ
1302:プランジャ
1303、1403、1903:ニードル
1305、1404、1500、1604、1700、1904:シリンジ支持装置(シリンジ支持体)
2203:メッシュ材料
2410、2420、2510:シリンジ連結部
2430、2520:ボディ
2450、2550:ボディの開口