(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
[発明の詳細な説明]
〈一般〉
本明細書に記載されている本発明は、具体的に記載されているもの以外の変更および改良を受けることができると当業者は考えるだろう。本発明はこのような変更および改良を全て含むと理解するべきである。本発明はまた、本明細書に個別または集合的に言及されまたは示されているステップ、特徴、組成物および化合物の全て並びにステップまたは特徴の任意の2つ以上の任意および全ての組み合わせを含む。
【0020】
本発明は、例示目的であることだけが意図されている、本明細書に記載の具体的な実施態様によって範囲が限定されない。機能的に等価な製品、組成物および適宜方法は、明ら
かに、本明細書に記載されている本発明の範囲内である。
【0021】
本明細書および以下の請求の範囲において、本文がそうでないことを要求しない限り、「含む」という言葉または「(単数のものが何かを)含む」もしくは「含んでいる」などのバリエーションは、陳述されている整数または整数群を含むが、任意の他の整数または整数群を除外しないことを示すことが理解されるだろう。
【0022】
〈好ましい実施態様の説明〉
上記を考慮すると、本発明は、患者への移植に好適な生組織の移植可能な細胞懸濁液を作製に好適である独自の方法および/または装置を提供する。本発明の方法を適用する際および/または本発明の装置を使用する際には、ドナー組織を採取し、組織解離手段に付し、患者への移植に好適な細胞を回収し、レシピエントの移植部位への速やかな分散に好適である溶液に分散する。
【0023】
本発明は、そのいくつかが以下のパラグラフに例示されている従来技術を上回る利点を有する。
【0024】
1.本発明は、臨床の場において組織に細胞被覆を供給する時間効率的な方法を提供する。すなわち、細胞は、手術時に必要とされるときに、利用可能である。細胞調製時間が非常に短く、周術期または専門医もしくは一般医の診察室で移植術を実施することができるので、このようなことが可能になる。
【0025】
2.本発明は、従来のCEA'sの使用に関連する複雑さをかなり少なくする方法と装置
とを提供し、損傷時から時間がたって見せられた火傷症例に特に有用である。火傷が治癒されていない患者の紹介が遅れることにより、または単に移植片の培養に必要な時間がレシピエントをベッドに寝かせる準備をする時間を越えたことにより、細胞を利用できない場合がある。本発明は、移植片調製時間に関する問題を改善する。
【0026】
3.本発明は、損傷領域およびドナー部位の迅速な細胞被覆を実施する助けとなる。本発明は、ドナー部位のサイズを縮小する手段を提供し、生検ドナー部位は分層植皮のドナー部位より顕著に小さく、分層植皮のドナー部位の使用を減らすか、または使用をなくし、細胞被覆の増殖速度を改善し、小さいやけどの治癒速度を改善し、瘢痕などの狭い領域の皮膚再建に有用であり、瘢痕の質を改善する。
【0027】
4.本発明は、従来の組織培養方法に使用される溶液の使用に関連する問題を改善する。本発明の調製方法および治療方法によると、移植に使用する細胞を、異種血清を含有しない栄養液に懸濁させる。次いで、その懸濁液をレシピエント部位に直接配置する。
【0028】
5.本発明は、種々の皮膚障害または疾患を治療する手段を提供する。例えば、本発明は以下に使用することができる。すなわち、表皮リサーフェイシング、皮膚損失後の置換、皮膚領域の再色素沈着中の部位適合(match−up)、火傷創傷、例えば、不適切な創傷治癒、不適切な瘢痕方向または創傷収縮による瘢痕の歪みによって生じる瘢痕を治療する際の白斑(leukoderma)、白斑症(vitiligo)、まだら症、座瘡の治療、化粧品による剥皮のリサーフェイシング、レーザー治療によるリサーフェイシング、および、皮膚再建に関連するリサーフェイシングである。さらに、本発明の方法は、例えば、神経細胞置換治療、(尿路上皮細胞、口腔粘膜細胞および気道上皮細胞などの)上皮細胞置換治療、内皮細胞置換治療および骨形成前駆細胞置換治療を含む細胞置換治療に使用することができる。
【0029】
6.本発明は、インサイチュー(in situ)において見られるものに匹敵する互いの比の細
胞懸濁液を作製する手段を提供する。すなわち、ケラチノサイトの基底細胞、ランゲルハンス細胞、繊維芽細胞およびメラニン細胞などの細胞は、典型的には、標準的な細胞培養技法と比較して、生存率が高いが、選択細胞培養によりある種の細胞主を損失することがある。これは、皮膚移植後の皮膚の適正な再色素沈着を可能にするという利点を有する。
【0030】
7.本発明はより迅速な手術および治癒を可能にし、それによって診療中の患者のトラウマを低下する。
【0031】
本発明の第1の態様によると、損傷組織のリサーフェイシングおよび再建への使用に好適な細胞懸濁液を調製する方法が提供される。
【0032】
本発明の方法によると、組織移植術の分野に周知の手段によって、(好ましくは、自家性の)組織を患者から採取する。好ましくは、これは組織生検を採取することによって実施される。生検試料を採取する場合には、生検の深さおよび表面積サイズに考慮を払う必要がある。生検の深さおよびサイズは、手技を開始する容易さおよび患者が手技から回復する速度に影響を与える。本発明のかなり好ましい形態において、ドナー部位は、例えば、頭部および頸部のための耳後方部、下肢部のための大腿部、上腕部のための上腕内側部、または、足裏部のための手掌部もしくはその逆のように、レシピエント部位に適当に適合するように選択されるべきである。
【0033】
生検試料が患者から採取されたら、組織試料の細胞層を解離することができる物理的および/または化学的解離手段に組織試料を付する。
【0034】
組織内の細胞層を解離する方法は当分野において周知である。例えば、解離手段は物理的または化学的離開手段であってもよい。物理的解離手段は、例えば小刀による組織試料の擦り取り、組織の切り刻み、層の物理的切り離しまたは組織の灌流を含んでもよい。化学的解離手段は、例えば、トリプシン、ディスパーゼ、コラゲナーゼ、トリプシン−edta、サーモリシン、プロナーゼ、ヒアルロニダーゼ、エラスターゼ、パパインおよびパンクレアチンなどの酵素による消化を含んでもよい。組織を解離するための非酵素液も使用することができる。
【0035】
好ましくは、組織試料の解離は、組織試料中の細胞層を解離するのに十分な量の酵素を含有する事前に加温した酵素液に試料を入れることによって実施される。これは、例えば、トリプシン液を使用することによって実施することができるが、細胞を他の細胞または固相表面から分離させられるディスパーゼ、コラゲナーゼ、トリプシン−edta、サーモリシン、プロナーゼ、ヒアルロニダーゼ、パンクレアチン、エラスターゼおよびパパインなどの任意の他の酵素をこの目的に使用することができる。使用する酵素がトリプシンである場合には、本発明の方法に使用する酵素液は、好ましくは、カルシウムおよびマグネシウムを含有しない。このような溶液の1つは、好ましくは、無カルシウムおよびマグネシウムイオンリン酸緩衝生理食塩液である。
【0036】
組織生検が(上皮−真皮細胞を含む)患者の皮膚由来である場合には、本発明の方法に使用してもよいトリプシンの量は、好ましくは、溶液1容量あたり約5〜0.1%のトリプシンである。望ましくは、溶液のトリプシン濃度は約2.5〜0.25%で、約0.5%トリプシンが最も好ましい。
【0037】
組織試料をトリプシン液に付する時間は、採取した生検試料のサイズに応じて変わってもよい。好ましくは、組織層間の密着結合を切断しやすくするのに十分な時間、組織試料をトリプシン液の存在下におく。例えば、組織試料を患者の皮膚から採取する場合には、試料を5〜60分間トリプシン液内においてもよい。好ましくは、組織試料を、10〜3
0分間トリプシン液に浸漬し、15〜20分がほとんどの組織試料に最適である。
【0038】
組織試料を適当な時間トリプシン液に浸漬したら、試料をトリプシン液から取り出し、栄養液で洗浄する。組織試料の洗浄は、処理後の試料を栄養液に部分的または完全に浸漬することを含んでもよい。または、さらに好ましくは、試料表面から任意の過剰なトリプシン液を除去するおよび/または十分に希釈するのに十分な容量の洗浄液を組織試料にて滴下する。好ましくは、希釈は、栄養液中0.05%トリプシン未満であればよい。
【0039】
本発明の方法に使用する栄養液は、希釈または中和によってトリプシンの影響を大幅に低下させるようにすべきであり、より好ましくはトリプシンの影響を除去することができるべきである。本発明に使用する栄養液はまた、好ましくは、(i)少なくとも異種血清を含有せず、(ii)患者に適用するまで、細胞の生存性を維持することができ、(iii)組織移植術を受ける患者の領域への直接適用に好適であるという特徴を有する。溶液は、基本的な塩溶液からさらに複雑な栄養液のいずれであってもよい。好ましくは、栄養液は血清を全く含有しないが、体液に見られる物質に類似した種々の塩を含有し、この種の溶液は、生理食塩液と呼ばれることが多い。リン酸塩または他の無毒性物質は、pHを適当な生理的レベルに維持するために、栄養液を緩衝することができる。特に好ましい好適な栄養液はハートマン(Hartmann's)液である。
【0040】
組織試料に栄養液を適用してから、試料の細胞層を分離して、再生できる細胞を細胞材料から取り出し、栄養液に懸濁させることができる。組織試料が皮膚である場合には、好ましくは、真皮および表皮を分離し、両方の表面の真皮−表皮接合部にアクセスしやすくする。
【0041】
次いで、当技術上周知の任意の手段によって分離後の層から再生可能細胞を除去する。好ましくは、小刀などの器具を使用して、再生細胞を層の表面から削り取る。真皮−表皮接合部の再生可能細胞には、ケラチノサイトの基底細胞、ランゲルハンス細胞、繊維芽細胞およびメラニン細胞が挙げられるが、これらに限定されない。組織試料から細胞を遊離させ、栄養液に懸濁させる。好ましくは、この採取ステップではごく少量の栄養液を組織試料に適用する。さもないと、懸濁液は流れやすくなってしまい、移植片への懸濁液の適用が困難になる。
【0042】
細胞懸濁液内の大きすぎる細胞凝集物をなくすために、好ましくは、懸濁液をろ過する。懸濁液から大きすぎる細胞凝集物を分離することができる任意のフィルターを本発明のこの好ましいステップに使用することができる。本発明のかなり好ましい形態において、フィルターサイズは50μm〜200μmである。さらに好ましくは、フィルターサイズは75μm〜150μmであり、100μmは1つの具体例である。
【0043】
移植部位への適用前またはろ過直後に、細胞懸濁液を希釈して、懸濁液を使用する目的に好適な適当な細胞密度にすることができる。
【0044】
本発明の第2の態様によると、本発明の第1の態様によって記載されている方法によって作製される細胞懸濁水溶液が提供される。この方法によって提供される細胞懸濁液は、組織再生および移植技法にかなり好適である。移植技術にこのような懸濁液を使用する重要な利点は、少数の細胞のインサイチュー操作によって迅速に治療することができる創傷領域または範囲を大幅に拡大するために使用することができるということである。移植部位に播種する細胞の数および濃度は、懸濁液中の細胞濃度を変更することによって、または、移植部位の所定の領域または範囲に分布させる懸濁液の量を変更することによって変えることができる。
【0045】
(i)異種血清を含有せず、(ii)患者に適用するまで細胞の生存性を維持することができ、(iii)組織移植術を受ける患者の領域への直接適用に好適である栄養液に細胞を懸濁させることによって、患者への移植の成果が改善されることを本発明者らは見出した。この部分的な説明は、異種血清、さらに好ましくは全ての血清を細胞懸濁液から除去することに起因すると思われる。異種血清は培地を移植する際の一般的な付加物であり、感染および感受性問題を生ずる可能性があることが周知である。しかし、このような血清は、一般に、インビトロにおける細胞の増殖に必要であり、使用する酵素がトリプシンである場合には、酵素の作用を中和することが必要である。懸濁液中の細胞集団は移植部位への適用前には増殖されないので、本発明に使用する栄養液はこのような血清を必要としない。むしろ、細胞増殖は、インビトロにおける系よりも患者において奨励される。トリプシンを使用する場合には、中和は他の手段によって実施される。
【0046】
本発明の第1の態様の方法により作製される細胞懸濁液の別の独自の特徴は、従来技術の細胞調製液と比較して、インサイチューにおいて見られるものに匹敵するということである。考えられる説明の1つは、従来技術において、細胞調製液の培養はケラチノサイトの選択的な培養を使用しているので、繊維芽細胞およびメラニン細胞などの細胞構成要素の損失が生じるが、本発明の第1の態様によって作製される細胞懸濁液は、インサイチューにおける細胞集団に匹敵する細胞組成を有する。本発明の第1の態様により作製される細胞懸濁液の別の特徴は、移植細胞は採取されるが、強力な消化酵素に長期間さらされる技法を使用する従来の細胞採取手法とは異なり、栄養液に採取されるとき、生存性が高いということである。細胞をこのような酵素に長時間さらすと、細胞懸濁液の生存性は低下する。
【0047】
本発明の第3の態様によると、組織移植を必要とする患者の治療方法が提供される。この方法によって、本発明の第1の態様により作製される細胞懸濁液を移植部位に適用する。細胞を含有する懸濁液は、噴霧、延展、ピペッティングおよび塗布を含むいくつかの技法のいずれかによって移植部位に手で分布させることができる。
【0048】
本発明のかなり好ましい形態において、懸濁液を移植部位に噴霧する。懸濁液は、液体を空気伝搬性の小液滴に変形する任意の種類のノズルを介して噴霧することができる。この実施態様は2つの制約を受ける。第1には、実質的な数の細胞を損傷または死滅させると思われる剪断力または圧力に細胞液を付してはいけない。第2に、細胞懸濁液に、細胞または創傷部に毒性または有害である噴射剤を混合することが要求されるべきではない。普通に入手可能な種々のノズルは両方の制約を満たしている。このようなノズルを、細胞懸濁液を含有する容器に、任意の従来の方法によって接続させることができる。
【0049】
または、懸濁液は、ピペット、通常の「点眼器」、注射筒および針および/または少量の細胞懸濁液を移植部位に配置する他の同様の装置を介して送達することができる。
【0050】
細胞懸濁液をレシピエントの移植部位に適用したら、創傷を包帯で巻くことができる。好ましい実施態様において、包帯剤は、織ってあるナイロン製包帯であるSurfasoft(商標)である。好ましくは、創傷の治癒は、当業者に周知の皮膚移植治療の標準的なプロトコールによって追跡される。
【0051】
本発明の第4の態様によると、組織再生液を形成するための装置であって、酵素液を必要な温度に加熱するのに好適であり、その液を好適な期間にわたって望ましい温度に維持することができる加熱手段と、細胞懸濁液から大きい細胞凝集塊を分離することができるフィルター手段を有するフィルター陥凹部分とを備えている装置が提供される。
【0052】
本発明の第4の態様の好ましい形態において、本発明の装置はまた、組織試料と、組織
試料中の細胞の生存性を維持することもできる栄養液を保持することができる容器も備える。さらに好ましくは、容器は、組織試料の操作を可能にして、組織細胞層の分離を可能にし、移植に好適な層からそのような細胞を採取するのに十分なサイズである。
【0053】
本発明の装置はまた、栄養液などの流体を貯蔵する1つ以上の流体保持ウェルを備えることができる。ウェルは、栄養液を保持するプラスチックまたはガラスバイアルなどの容器の受け器として代替的に作用することができる。好ましくは、ウェルは少なくとも10ml容量を保持することができる。このようなウェルにより、流体を組織試料に適用することを容易にすることができる。適用部位のごく近接位置にこのような流体を貯蔵することにより、流体が偶発的に漏洩する危険を低下するという利点が提供され、組織試料または細胞懸濁液に流体を正確に送達するために流体にアクセスする簡単な手段が提供される。
【0054】
本発明のかなり好ましい形態において、本発明の装置は、
(i)(a)酵素液を必要な温度に加熱するのに好適であり、その液を好適な期間にわたって望ましい温度に維持することができる少なくとも1つの加熱手段と、
(b)細胞懸濁液から大きい細胞凝集塊を分離することができるフィルター手段を備える少なくとも1つのフィルター陥凹部分と、
(c)栄養液を貯蔵するための少なくとも1つの流体保持ウェルと
を備える第1の部材と、
(ii)前記流体保持ウェルに組織試料および栄養液を保持することができる容器を形成する第2の部材と
を備え、組織操作中に前記第2の部材を配置することができる座部を前記第1の部材が提供する。
【0055】
本発明のさらに別の好ましい形態において、第1の部材は、上記方法に使用するツールおよび溶液を貯蔵することができる貯蔵コンパート−メントを提供する。このようなコンパート−メントを装置に提供する場合には、第2の部材はそのコンパート−メントに蓋部またはクロージャーを提供することができる。使用時には、好ましくは、蓋部はコンパート−メントの上部から除去され、上下を逆さにされる。蓋部の裏側は、好ましくは、第2の部材が2つの目的を果たすことができる容器を形成する。本発明に使用するツールおよび溶液はコンパート−メントからアクセスすることができる。上下を逆さにした蓋部はコンパート−メントの上に配置することができ、装置の容器となる。
【0056】
本発明の装置は金属、プラスチックまたは任意の他の材料から製造することができる。さらに、容器は任意のサイズであってもよい。好ましくは、容器のサイズは目的の用途およびガンマ線照射および/またはエチレンオキサイドの使用などの滅菌の必要性によってのみ限定される。
【0057】
本発明の装置に使用する加熱手段は、第1の部材の上面に加熱パッドを単に構成することができると考えられるべきである。しかし、このような装置には問題が付随しており、その多くは、加熱を受ける容器の偶発的な溢流の可能性である。従って、一実施態様において、第1の部材の陥凹部に1つ以上の加熱手段を収容することができる。酵素液にさらすために組織を配置することができる少なくとも1つの容器もその陥凹部に配置される。別の実施態様において、1つ以上の加熱手段を装置の基底部に収容することができる。このような構成において、第1の部材は、流体を保持することができる容器を収容するのに好適で、過熱手段への容器のアクセスを提供する少なくとも1つの開口部を有する。
【0058】
装置を2つ以上の用途のために設計する場合には、加熱手段は、繰り返し加熱および冷却することができることが考慮される。または、各加熱装置は1つの用途を可能にするこ
とができるが、複数の加熱事象を容易にするために、複数の加熱装置を装置にすることができる。
【0059】
装置のかなり好ましい構成において、陥凹部内に加熱用カラーを配置し、酵素用容器(例えば、バイアル)が配置されている第1の部材内に加熱用陥凹部を形成する。容器は、好ましくは、容器の上側部分の一部を望ましくは取り囲んで、装置からの容器の偶発的な放出を防ぐ少なくとも1つの拘束手段によってその場に保持される。装置を1つの用途に使用することが意図されている状況では、拘束手段は第1の部材の構成部分として形成することができ、従って容器の取り外しは、第1の部材を物理的に破壊することによってのみ実施することができることを意味する。
【0060】
本発明の装置に使用する加熱手段は、好ましくは、必要時に加熱要素の作動を可能にする回路によって制御される。例えば、加熱手段は、例えば、第1の部材の表面に配置されているスタートボタンを押すことによってスイッチを入れることができる。または、加熱手段は、装置の基底部に配置されているスイッチを作動するのに十分な力で容器を下方向に押すことによって作動することができる。装置に提供されている加熱装置を作動するために、多種多様の電子的手段を使用することができることを当業者は考慮している。
【0061】
望ましくは、加熱装置はまた、酵素液を所定の時間加熱するように適合されているタイマー機構に機能的に接続される。装置を複数の用途に使用することが意図されている状況では、好ましくは、特定の長さの時間に達したとき加熱要素を停止するようにタイマーを設定することができる。その時点において、時間が経過したことをユーザに知らせるために、アラームが働いてもよい。
【0062】
本発明のさらに別の好ましい実施態様において、加熱手段に調整式温度制御を提供することができる。温度調整を必要とする場合には、このような形態は、温度制御機構を備えるかまたはそれと対話して、加熱装置の温度を一定範囲内で常に変動させられる加熱制御回路を適合することによって実施しても、または加熱制御手段を設定することができる範囲の選択温度を提供することができる。温度制御手段は、有利なことに、異なる細胞種の採取および調製に装置が使用される予定の装置、および/または、装置が独自の用途を有する採取方法に異なる酵素が使用される装置に備えられている。
【0063】
別のさらに好ましい形態において、本発明の装置は1つの用途のために設計される。このような場合には、タイマー機構は、加熱手段を制御する回路の一部である。加熱手段が作動されると、それは所定の時間溶液を加熱し、次いで自己停止する(self-destructs)。このような装置には、酵素は必要な温度、溶液内での時間および/または回路の自己停止までの時間に達した、などのことを示すことができる種々のモニター手段が備え付けられていることを当業者は考慮するべきである。単なる例として、モニター手段は、ある事象が生じたときに作動する一連のLED'sからなってもよい。かなり好ましい実施態様に
おいて、加熱要素は、好ましくは、最長45分から1時間加熱モードにある。
【0064】
加熱手段は、当技術上周知の任意の手段によって電力を供給することができる。好ましくは、電源は電池によって提供される。本発明の一形態において、電源は、装置の基底部に配置される1つの電池または複数個の電池である。
【0065】
本発明のさらに別の実施態様において、本発明に使用する、例えば酵素液などの溶液の混合を容易にするための1つ以上の手段を装置に提供することができる。一態様において、単なる例として、装置は、磁気ビーズを撹拌するように調節されている電磁システムなどの、溶液を撹拌する手段を備えることができる。装置が、電磁混合システムを備える場合には、磁気ビーズは、好ましくは、溶液を装置に貯蔵する容器(例えば、バイアル)に
提供される。また、混合が望ましいときに、磁気ビーズを溶液に添加することができる。
【0066】
本発明のかなり好ましい形態において、溶液の一定の加熱を均一に促進にするために、混合手段に加熱手段が1つの装置として、または別個の装置として組み合わされる。このような混合手段を使用することにより、溶液を加熱する間に加熱装置の近接部に位置する溶液が過剰に加熱される可能性をなくす。このようなシステムは、溶液のより一定な加熱を提供する。溶液を混合する別の手段は当技術上周知であり、一例として機械的、物理的、電気的および電磁的手段を含む。任意の混合手段を装置に使用することができるが、好ましくは、混合手段は、装置の振動を最小にするように選択されるか、またはこのような振動を最小にする方法で装置に組み込まれる。これに関しては、混合手段は1つ以上の振動緩衝装置上に収容されても、または装置は基底部に1つ以上の振動緩衝装置を備えてもよい。
【0067】
混合手段が装置に組み込まれる場合には、混合手段は、加熱装置が作動すると自動的に作動されても、または別個の作動システムであってもよい。さらに、混合速度は固定されていても、変動してもよい。好ましくは、混合手段には別個の作動システムが存在する。
【0068】
装置に組み込まれるフィルター陥凹部は、細胞懸濁液のろ過を促進する任意のサイズまたは形状であってもよい。さらに、陥凹部は、細胞懸濁液をろ過することができる少なくとも1つの管を収容し、保持するように調整することができる。好ましくは、陥凹部は、ろ過後に全量の細胞懸濁液にアクセスする手段を容易に提供する円錐形の基底部を有する。
【0069】
望ましくは、第3の陥凹部は100μmの細胞フィルターを収容するように設計される。第3の陥凹部は、円錐形の管に接続された100μmの細胞フィルターを収容することができる。好ましくは、管は、面積/容積メモリが側面につけられている。
【0070】
装置はまた、細胞採取に必要なツールセットを備えることもできる。細胞採取に必要な任意のツールを装置に備えることができることが当業者に考慮される。好ましくは、一連のツールは滅菌されている。ほんの一例として、一連のツールは、分離酵素のガラスバイアル、酵素の懸濁のための滅菌溶液、滅菌栄養液、小刀、ピンセット、注射筒、医用滴びん、細胞フィルター、創傷用包帯、および/または、噴霧ノズルを備えることができる。かなり好ましい実施態様において、ツールセットは、使用しないときは第2の部材によって被覆される、装置の第1の部材内に形成されるコンパートメントに貯蔵される。
【0071】
かなり好ましい実施態様において、装置は、以下の方法で細胞の懸濁液を採取し、レシピエント部位に細胞を適用するために使用される。
【0072】
少量の滅菌水を凍結乾燥状態の分離酵素の一部と混合して、加熱用陥凹部に配置する。次いで、加熱手段を作動し、30〜37℃、好ましくは33〜37℃、一例として37℃の作業温度に2分を越えることなく容器の内容物(すなわち、酵素液)を加熱し、作業温度に少なくとも45分間維持する。動作温度に達したら、ドナー部位から採取した組織試料を酵素液に入れ、作業温度においてインキュベーションする。組織試料を5〜45分間インキュベーションする。組織試料層を分離するのにかかる時間は、組織試料の厚さおよびサイズ並びにインキュベーション温度に依存することを当業者は考慮している。組織層の酵素分離が実施されたら、組織試料を容器に取り出し、手術器具を使用して組織層を分離する。
【0073】
次いで、慎重に計測した分量の第2の溶液を、注射筒に吸引することによって流体保持ウェルから取り、層に適用する。組織層間の細胞を擦り取り、栄養液と混合することによ
って懸濁させる。次いで、好ましくは注射筒およびカニューレを使用することによって、細胞懸濁液を回収する。
【0074】
次いで、採取した細胞懸濁液を、フィルター陥凹部に配置した細胞フィルターに通し、ろ過後の細胞懸濁液をフィルター陥凹部に回収する。必要に応じて、容器を別の容量の第2の溶液で洗浄し、結果として生じる細胞懸濁液もろ過し、フィルター陥凹部に回収する。
【0075】
次いで、必要に応じて、ろ過後の細胞懸濁液を注射筒に吸引し、レシピエント部位に適用することができる。
【0076】
[本発明を実施する最良の形態]
本発明のさらに別の特徴は、以下の限定するものではない実施例にさらに詳細に記載されている。しかし、この詳細な説明は、本発明を例示する目的にのみ加えられていることが理解されるべきである。上記に記載されている本発明の広範な説明を制限するものといかなる意味においても理解されるべきではない。
【実施例1】
【0077】
〈レシピエント部位の調製〉
皮膚移植の成功率を最適にするために、創傷をきれいにし、適当な深さであることを評価する。さらに、止血を確立し、周囲の蜂巣炎または感染の徴候について創傷をチェックする。領域を調製する技法には、シャープな切開、削皮術またはレーザーリサーフェイシングが挙げられる。
【0078】
〈ドナー部位の生検〉
ドナー部位は、レシピエント部位に適当に適合するように選択した。ドナー部位の皮膚の下部の皮下組織に局所麻酔剤およびアドレナリンを浸潤させた。これにより、ドナー部位は固定され、薄い分層植皮生検を採取する助けとなった。生検の寸法は、被覆するレシピエント部位の表面領域のサイズに決定された。
【0079】
典型的には、生検サイズは、拡大比が1:10〜1:80である。この場合には、2cm×2cmの生検サイズをドナー部位から採取し、拡大比は1:60であった。
【0080】
〈迅速な技法を使用した細胞リサーフェイシング〉
創傷の治療は、以下の実施例2にさらに詳細に説明されている、Re−Cell(商標)迅速技術による細胞採取装置を使用して実施した。装置は、創傷治療に必要な器具、溶液、酵素および包帯の全てを有した。
【0081】
加熱要素は、「スタートボタン」を押すことによって作動した。溶液(注射用滅菌水)(10ml)を溶液Aと記された供給されているプラスチック容器から、分離酵素(凍結乾燥トリプシン)を含有するガラスバイアルに移し、最終濃度0.5%トリプシンとした。次いで、酵素液を混合し、加熱要素陥凹部にすでに配置されている容器に移して、37℃に加熱した。
【0082】
溶液B(栄養培地)を含有する容器を、供給されている容器から流体保持ウェルに移した。
【0083】
次いで、先に得られた組織試料を酵素液に入れ、37℃において10〜15分インキュベーションした。この後、1対のピンセットを使用して組織試料を酵素液から取り出し、溶液Bを含有する流体保持ウェルに浸漬することによって洗浄し、真皮側を下にし、上皮
側を上にして容器に入れた。
【0084】
次いで、溶液Bをウェルから注射筒に吸引し、生検の両側の層に注射筒から滴下した。
【0085】
ピンセットを使用して皮膚層を分離した。これにより、両面の真皮−上皮接合帯にアクセスした。細胞を表面から擦り取り、容器内に羽毛状の細胞を形成した。次いで、細胞を溶液Bに混合した。次いで、19ゲージのカニューレを介して、羽毛状の細胞を注射筒内にくみ上げた。
【0086】
供給されているフィルター(100μm細胞フィルター)をフィルター陥凹部に乗せ、溶液B中の羽毛状の細胞をフィルターに通した。別の少量の溶液Bを使用して、容器(例えば、ペトリ皿)を洗浄し、残っているいずれの細胞も回収し、フィルターに通した。
【0087】
円錐陥凹部に回収された細胞懸濁液を注射筒に吸引し、創傷領域に噴霧または滴下するために、ノズルを注射筒に接続した。
【0088】
清浄化され、破片を含有しないこと、および細菌汚染物の痕跡がないことを確実にするために、創傷を再度チェックした。さらに、止血されているかどうかを判定するために、創傷をチェックした。レシピエント部位の用意ができたら、ノズルを使用して細胞懸濁液を創傷表面に適用した。
【0089】
装置に供給されている、Surfasoft(商標)という織ってあるナイロン製包帯剤で創傷を巻いた。創傷の治癒は、皮膚移植治療の標準的なプロトコールを使用して追跡した。
【実施例2】
【0090】
図1に示す実施態様は、患者への移植に好適な生組織の移植可能な細胞懸濁液を作製する際に使用するための、Re−Cell(商標)という迅速技法による細胞採取装置に関する。
【0091】
図1に例示するように、装置は、基底部16を開放可能であるようにかみ合わせるように適合されたロック機構14を有する閉じ蓋12を備える。ロック機構14は、使用しないときに装置16を閉じる手段を提供する。酵素用バイアル22が配置されている開口部20が提供されている第1の部材18が基底部16に配置されている。開口部に隣接して、加熱手段(示していない)を作動することができる作動スイッチ24が提供されている。第1の部材はまた、流体保持ウェル26およびフィルター陥凹部28を提供する。この例に示されるように、フィルター29は、フィルター陥凹部に配置される。通常、フィルターは、装置の別個の項目として備えられている必要に応じた項目である。
【0092】
第1の部材18の開口部20は、望ましくは、バイアル22の頚部を第1の部材18の上方に突出させられるような寸法である。開口部20の周辺部には、バイアル22の本体の直径よりわずかに小さいカラー21が取り付けられている。従って、使用時には、バイアル22は、開口部20の周辺部に配置されているカラー21によって保持されるので、装置10から離脱できない。
【0093】
開口部20に隣接して配置されている、流体保持ウェル26およびフィルター陥凹部28は、第1の部材18内の貯蔵コンパート−メント(示していない)に配置されている座部(示していない)に位置づけられている第2の部材30である。上下逆さにすると、第2の部材30は、組織操作を実施することができる容器を形成する。第1の部材18から第2の部材30の分離を容易にするために、第2の部材30の一部の側面に切り込み32
が提供されており、第1の部材18内にある座部から第2の部材を持ち上げることができるサイズである。
【0094】
フィルター陥凹部28内には、細胞上清から100μmを超える細胞材料を分離することができるメッシュを有するフィルター29(他の構成成分とは別個に提供されている)が配置されている。
【0095】
図2は、装置10の一部拡大斜視図を提供しており、第2の部材30が第1の部材18から取り外され、上下逆さにされている。第2の部材30を上下逆さにすると、容器の流体保持障壁および組織操作を実施することができる容器領域を形成する第2の部材30の側壁32が見られる。
【0096】
第1の部材18から第2の部材30を取り外すと、装置10を使用しないときには、溶液およびツールを貯蔵することができる第1の部材18の貯蔵コンパート−メント36も見られる。貯蔵コンパート−メント36内には、第2の部材30が存在することができる座部38が配置されている。座部38は、好ましくは、第2の部材30の側壁32の高さに等しい、第1の部材18の表面から下の深さで、貯蔵コンパート−メント36の周辺付近に配置される。
【0097】
図3aは、第1の部材に形成された貯蔵コンパート−メント36、ヒーター作動スイッチ24、開口部20、流体保持ウェル26およびフィルター陥凹部28を示す第1の部材18の斜視図を提供する。
図3bは、フィルター陥凹部28、流体保持ウェル26、ヒーター作動スイッチ24、開口部カラー21および貯蔵コンパート−メント36の後部壁を示す第1の部材18の背面図を提供する。図からわかるように、フィルター陥凹部は、円錐形の基底部を有し、それによってろ過された細胞懸濁液に容易にアクセスする手段を提供する。流体保持ウェルに隣接し、フィルター保持ウェルの反対側に配置されている、装置(示していない)の基底部16方向に突出し、加熱手段を作動するために必要な電池を保持する手段を提供する電池位置づけ部材40も提供されている。
【0098】
図4は、保持領域42内に配置されたバイアル22を示す、装置10の基底部16の斜視図を提供する。保持領域42とバイアル22との間には、バイアル本体を取り囲む加熱用カラー44が配置されている。保持領域に隣接して、回路基板保持手段48、50、52によって位置に保持される回路基盤46がある。前記回路基板46は、電線54によって加熱用カラー44と電気的通信状態である。回路基板はまた、電線58によって、ヒーター作動スイッチ(示していない)と電気的通信状態である。回路基板46に隣接して、4つのAA電池を動かない位置に(示していない)保持する電池保持手段58が提供される。電池は、電線60で回路基板46と電気的通信状態である。第1の部材18を基底部16に取り付ける場合には、電池は、電池保持手段58、電池位置づけ手段40および流体保持ウェル26の各々の基底部およびフィルター陥凹部28によって保持される。好ましくは、フィルター陥凹部28の円錐形の基底部が、電池の間に突出して、電池を動かない位置に固定する別の手段を提供する。
【0099】
記載されている本発明の方法および装置の改良および変更は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者に明らかである。本発明は具体的な好ましい実施態様に関連して記載されているが、主張されている本発明は、このような具体的な実施態様に不当に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際、本発明が存在する関連分野の当業者に明らかな本発明を実施するための記載されている様式の種々の改良は、以下の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。
【0100】
なお、原出願の出願当初の特許請求の範囲は以下の通りである。
〔請求項1〕
患者に適用する細胞懸濁液を作製する方法であって、
(a)組織試料中の細胞層を解離する少なくとも1つの物理的および/または化学的解離手段に、患者に移植する細胞を含む組織試料を付するステップと、
(b)該ステップ(a)で使用する解離手段から組織試料を取り出して、栄養液の存在下において組織試料から、患者に移植するのに好適な細胞を回収するステップであって、前記栄養液は、(i)異種血清を含有せず、(ii)患者に適用するまで細胞の生存性を維持することができ、(iii)移植術を受ける患者の領域への直接適用に好適である、ステップと、
(c)該ステップ(b)により作製した細胞懸濁液をろ過して、大きい細胞凝集塊を除去するステップと、
を含む細胞懸濁液の作製方法。
〔請求項2〕
試料中の粘着性の組織層片を解離するのに好適な酵素がトリプシンまたはトリプシン様酵素である請求項1に記載の細胞懸濁液の作製方法。
〔請求項3〕
前記酵素が、トリプシン、トリプシン−EDTA、ディスパーゼ、コラゲナーゼ、サーモリシン、プロナーゼ、ヒアルロニダーゼ、パンクレアチン、エラスターゼおよびパパインからなる群から選択される請求項2に記載の細胞懸濁液の作製方法。
〔請求項4〕
前記栄養液がハートマン液である請求項1に記載の細胞懸濁液の作製方法。
〔請求項5〕
請求項1に記載の細胞懸濁液の作製方法により作製される細胞懸濁液。
〔請求項6〕
自家細胞から作製される、請求項5に記載の細胞懸濁液。
〔請求項7〕
移植術を必要としている患者を治療する方法であって、
(a)請求項1に記載の方法により細胞懸濁液を作製するステップと、
(b)移植領域に比較的均一に分布するような細胞懸濁液の拡散を容易にするように、細胞移植を必要としている患者の領域に直接懸濁液を投与するステップと、
を含む方法。
〔請求項8〕
(a)患者に移植するのに好適な細胞を含む組織試料を、試料中の粘着性の組織層片を解離するのに好適な酵素に付するステップと、
(b)該ステップ(a)において使用する酵素液から組織試料を取り出して、栄養液の存在下において組織試料から、患者に移植するのに好適な細胞を回収するステップであって、栄養液は、(i)異種血清を含有せず、(ii)患者に適用するまで、細胞の生存性を維持することができ、(iii)移植術を受ける患者の領域への直接適用に好適である、ステップと、
(c)該ステップ(b)により作製した細胞懸濁液をろ過して、大きい細胞凝集塊を除去するステップと
により作製される移植に好適な細胞懸濁液の、移植術を必要とする組織障害を治療するのに好適な治療用製剤を作製するための方法。
〔請求項9〕
前記栄養液がハートマン液である請求項8に記載の方法。
〔請求項10〕
組織再生液を形成するための装置であって、
(a)酵素液を必要な温度に加熱するのに好適であり、その液を好適な期間にわたって望ましい温度に維持する加熱手段と、
(b)細胞懸濁液から大きい細胞凝集塊を分離するフィルター手段を有するフィルター
陥凹部分と、
を備えている組織再生液形成装置。
〔請求項11〕
組織試料および栄養液を保持する容器をさらに備えている、請求項10に記載の組織再生液形成装置。
〔請求項12〕
流体を貯蔵するための1つ以上の流体保持ウェルを備えている請求項10に記載の組織再生液形成装置。
〔請求項13〕
(i)(a)酵素液を必要な温度に加熱するのに好適であり、その液を好適な期間にわたって望ましい温度に維持する加熱手段と、
(b)細胞懸濁液から大きい細胞凝集塊を分離するフィルター手段を有するフィルター陥凹部分と、
(c)栄養液を貯蔵するための少なくとも1つの流体保持ウェルと、
を備えている第1の部材と、
(ii)流体保持ウェルに組織試料および栄養液を保持する容器を形成する第2の部材と、
を備え、組織操作中に前記第2の部材を配置することができる座部を前記第1の部材が提供する、組織再生液形成装置。
また、以下に、分割直前の原出願(特願2010−163176号)の特許請求の範囲を示す。
[請求項1]
患者の移植部に速やかに分散させることに適した、患者の周術期に皮膚の組織再生液を形成する装置であって、
(i)(a)皮膚の組織試料内の細胞層を解離することができる、酵素液を必要な温度に加熱するのに好適であり、その液を好適な期間にわたって必要な温度に維持する加熱手段と、
(b)インビトロにおける細胞の増殖を促進することなしに前記移植部へ速やかに分散させることに適している、前記皮膚の組織再生液とするための、前記酵素液での解離後の前記皮膚の組織試料から採取した細胞をもつ、細胞懸濁液から200μmより大きい細胞凝集塊を分離するフィルター手段を有するフィルター陥凹部分と、
(c)皮膚の組織試料から採取した細胞を懸濁することに用いる、前記移植部へ直接適用に好適である、栄養液を貯蔵するための少なくとも1つの流体保持ウェルと、
(d)貯蔵コンパート−メントと、
を備えている第1の部材と、
(ii)前記流体保持ウェルに皮膚の組織試料及び前記栄養液を保持する容器を形成する第2の部材と、
を備え、皮膚の組織試料操作中に前記第2の部材を配置することができる座部を前記第1の部材が提供する、皮膚組織再生液形成装置。
[請求項2]
前記皮膚の組織試料が分層皮膚の組織試料である、請求項1に記載の装置。
[請求項3]
前記栄養液が異種血清を含有せず、患者に適用するまで細胞の生存性を維持することが可能である、請求項1、2のいずれか一つに記載の装置。
[請求項4]
前記細胞懸濁液が真皮及び表皮の細胞を含む、請求項1〜3のいずれか一つに記載の装置。
[請求項5]
前記細胞懸濁液が真皮―表皮接合部で採取した再生可能細胞を含む、請求項1〜4のいずれか一つに記載の装置。
[請求項6]
前記細胞懸濁液がケラチノサイトの基底細胞、メラニン細胞、及び、繊維芽細胞を含む、請求項1〜5のいずれか一つに記載の装置。
[請求項7]
前記細胞がインサイチューにおいて見られるものに匹敵する互いの比である、請求項6に記載の装置。
[請求項8]
患者から得られた皮膚の組織試料から採取した細胞を含み、患者の移植部へ速やかに分散させることに適し、患者の周術期に形成する細胞懸濁液であって、前記皮膚の組織試料は真皮、表皮、及び、それらの間の真皮―表皮接合部を含み、
(a)前記患者の真皮―表皮接合部の真皮及び表皮から採取した自家移植の細胞であり、真皮、表皮を含む前記細胞と、
(b)前記患者の移植部に直接適用することに適している栄養液と
を含み、
インビトロにおける細胞の培養を促進することなしに移植部へ速やかに分散させることに適しており、前記真皮―表皮接合部で採取した真皮及び表皮の細胞を含み、200μmより大きい細胞凝集塊を含有しない細胞懸濁液。
[請求項9]
前記栄養液が前記患者の異種血清を含有せず、患者に適用するまで細胞の生存性を維持することが可能である、請求項8に記載の細胞懸濁液。
[請求項10]
前記細胞懸濁液が真皮―表皮接合部で採取した再生可能細胞を含む、請求項8、9のいずれか一つに記載の細胞懸濁液。
[請求項11]
前記細胞懸濁液がケラチノサイトの基底細胞、メラニン細胞、及び、繊維芽細胞を含む、請求項8〜10のいずれか一つに記載の細胞懸濁液。
[請求項12]
前記細胞がインサイチューにおいて見られるものに匹敵する互いの比である、請求項11に記載の細胞懸濁液。
[請求項13]
前記細胞が前記真皮―表皮接合部の真皮及び表皮の表面から細胞を擦り取ることによって採取する、請求項8〜12のいずれか一つに記載の細胞懸濁液。
[請求項14]
移植部へ速やかに分散させるための前記細胞懸濁液であって、インビトロにおける培養なしに移植部へ速やかに分散させることが可能である、請求項8〜13のいずれか一つに記載の細胞懸濁液。
[請求項15]
細胞置換治療、好ましくは尿路上皮細胞、口腔粘膜細胞、及び、気道上皮細胞の置換への使用のための、請求項8〜14のいずれか一つに記載の細胞懸濁液。