特許第6042404号(P6042404)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6042404無機材料から成る多孔質造粒粒子を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042404
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】無機材料から成る多孔質造粒粒子を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 19/06 20060101AFI20161206BHJP
   C03B 19/10 20060101ALI20161206BHJP
   C03C 12/00 20060101ALI20161206BHJP
   C03B 20/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   C03B19/06 B
   C03B19/06 C
   C03B19/06 A
   C03B19/10 Z
   C03C12/00
   C03B20/00 D
【請求項の数】22
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-500325(P2014-500325)
(86)(22)【出願日】2012年3月14日
(65)【公表番号】特表2014-510691(P2014-510691A)
(43)【公表日】2014年5月1日
(86)【国際出願番号】EP2012054442
(87)【国際公開番号】WO2012126782
(87)【国際公開日】20120927
【審査請求日】2014年11月26日
(31)【優先権主張番号】102011014875.2
(32)【優先日】2011年3月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507332918
【氏名又は名称】ヘレーウス クヴァルツグラース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ノイマン
(72)【発明者】
【氏名】イェルク ベッカー
(72)【発明者】
【氏名】アヒム ホーフマン
【審査官】 吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−524570(JP,A)
【文献】 特表2010−526748(JP,A)
【文献】 特開平08−213034(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0014445(US,A1)
【文献】 特表平07−505113(JP,A)
【文献】 特開平09−286621(JP,A)
【文献】 特開平05−299797(JP,A)
【文献】 特開昭61−232239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 19/00 − 19/14
C03B 20/00
C03B 8/04
C03B 37/005
C03C 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機材料から成る多孔質のスート造粒粒子(13)を製造する方法であって、以下の方法ステップ、即ち、
(a)供給材料を熱分解又は加水分解によって無機材料から成る材料粒子に変換する反応区域に、供給材料流を供給するステップ、
(b)前記材料粒子を、スート層(5)を形成しながら、堆積面(1a)上に析出させるステップ、
(c)前記スート層(5)を多孔質スートプレート(5a)となるように熱的に硬化させるステップ、
(d)前記スートプレート(5a)を多孔質のスート造粒粒子(13)と成るように細分化するステップ、
を有していることを特徴とする、無機材料から成る多孔質のスート造粒粒子(13)を製造する方法。
【請求項2】
10〜500μmの範囲の厚さを有したスートプレート(5a)を形成する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
20〜100μmの範囲の厚さを有したスートプレート(5a)を形成する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
50μmよりも小さい厚さを有したスートプレート(5a)を形成する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記スート造粒粒子(13)は、球面状ではないモルフォロジを有している、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記スート造粒粒子(13)は小板状又は棒片状に、少なくとも5の構造比をもって形成されている、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記スート造粒粒子(13)は小板状又は棒片状に、少なくとも10の構造比をもって形成されている、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記スート造粒粒子(13)は側方に、連続した孔を備えた破砕面(22)を有している、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記スート造粒粒子(13)は、10〜500μmの範囲の平均厚さを有している、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記スート造粒粒子(13)は、20〜100μmの範囲の平均厚さを有している、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記スート造粒粒子(13)は、50μmよりも小さい平均厚さを有している、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記堆積面(1a)が、回転軸線(2)を中心として回転するドラム(1)の円筒周面として形成されている、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記スート層(5)は、前記ドラム(1)が前記回転軸線(2)を中心として1回転する前に形成される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記スート層(5)の形成を、前記回転軸線(2)に沿って往復して動く、複数の析出バーナ(4)から成る装置(3)によって行う、請求項12又は13記載の方法。
【請求項15】
前記スート層(5)の形成を定置の直線的なバーナによって行い、該直線的なバーナの長手方向軸線は前記ドラム(1)に沿って延びている、請求項12又は13記載の方法。
【請求項16】
前記方法ステップ(c)による前記スート層(5)の熱的な高密化のステップは、少なくとも1つの付加的なバーナによる加熱を含む、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記堆積面(1a)は、内部から熱処理される中空体(1)上に形成されている、請求項1から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記スートプレート(5a)が、材料の最大の比密度に関して、10〜40%の範囲の相対密度を有している、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記スートプレート(5a)が、材料の最大の比密度に関して、25%よりも小さい相対密度を有している、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記方法ステップ(d)により細分化するために前記スートプレート(5a)を前記堆積面(1a)から離間して、この際に前記スートプレート(5a)の下面からガス流(7)を吹き付ける、請求項1から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記方法ステップ(d)による前記スートプレート(5a)の細分化を、前記堆積面(1a)から少なくとも部分的に空間的に分離されている区域で行う、請求項1から20までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
前記スートプレート(5a)の細分化を破砕により行う、請求項1から21までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機材料から成る多孔質造粒粒子を製造する方法に関する。
【0002】
さらに本発明は、このような形式の造粒粒子の特別な使用に関する。
【0003】
内部の多孔性を有する造粒粒子は、酸化物、窒化物、炭化物、ホウ化物から成る一次粒子のアグロメレート(Agglomereten)又はアグリゲート(Aggregaten)から成っている。例としては、二酸化ケイ素、酸化錫、窒化チタンが挙げられる。一次粒子は、例えば重合による合成、重縮合、沈殿、例えば合成石英ガラスの製造のためのものとして公知であるようなCVD析出法の際に生じる。一次粒子は、嵩密度が低いので取り扱いにくく、通常、構造化造粒法又はプレス造粒法により高密化される。例としては、造粒プレートにおけるロール造粒、スプレー造粒、遠心噴霧、渦流層造粒、造粒ミルを使用した造粒法、コンパクティング、ロールプレス、ブリケッティング、フレーク製造、又は押出成形が挙げられる。
【0004】
従って、この場合、機械的かつ場合によっては熱的にも予め高密化された多孔質の離散造粒粒子は、多数の一次粒子から成っている。これらの造粒粒子が全体として「造粒体」を形成する。
【0005】
背景技術
DE10243953A1号明細書には、典型的な構造化造粒法が記載されており、この造粒法では、石英ガラス製造時にフィルター粉塵として生じるものと同様の、熱分解により製造される遊離SiO2パウダー(いわゆる「スート粉塵」)が水と混合され、懸濁液がつくられる。この懸濁液は、湿式造粒法によってSiO2粒子となるよう加工され、乾燥及びクリーニング後、塩素含有気体中で加熱することにより熱的に高密化され、この場合、140μmの粒径を有する透明な石英ガラス粒子となるまで焼結される。
【0006】
WO2007/085511A1号明細書に記載された造粒法では、微細な出発パウダーを機械的に、潤滑剤又はバインダも使用して、ロールコンパクティングにより、より粗い粒子となるように凝集させ、機械的な圧力により緻密化している。この場合、微細なシリカパウダーは、平滑な又は異形成形されていてよい逆転するロール間に通され、この際に、SiO2造粒体となるように緻密化される。このSiO2造粒体はいわゆる「フレーク」の形で生じる。これらは概ね帯状の構造を成し、通常、破砕され、サイズに応じて分級される。フレーク破砕片は、400〜1100℃の温度範囲でハロゲン含有気体中で乾燥され、1200〜1700℃の温度範囲で、「シリカガラス造粒体」となるように密に焼結されることができる。
【0007】
上記公知の造粒法は、例えばSiO2スートパウダのような微細な粉体から出発している。このような微細な粉体はさらなる方法ステップでさらに加工される。この方法ステップは部分的には時間のかかるものであり、高いエネルギ需要を伴う。このようにして得られた造粒粒子はしばしば球面状のモルフォロジを有している。機械的及び/又は熱的な高密化後に残される造粒体の内部の多孔性は、粉末出発材料の高密化特性とその都度の造粒プロセスに依存するものである。
【0008】
多孔質造粒体は例えば、充填材料として、又は不透明な石英ガラスの製造のために使用される。しかしながら、再充電可能なリチウムバッテリの電極材料を製造するための半製品としては必ずしも適しているわけではない。
【0009】
再充電可能なリチウムバッテリの電極材料では、リチウムが僅かな電荷損失で可逆的に充放電できるのが望ましい。そのためには、高い多孔性(貫通性)であると同時に、電極材料の表面積ができるだけ僅かであるように努められている。そのためには、「階層的多孔構造」として公知である特別な形式の内部多孔性が貢献している。この場合、ナノメートル範囲の孔が、一貫したマクロポア輸送システムを介して互いに接続され、これにより外部からこの孔へのアクセス性が高められる。
【0010】
適当な内部多孔構造を有する半製品の製造がUS2005/0169829A1号明細書により公知である。この場合、800nm〜10μmの直径を有した二酸化ケイ素粒子と重合化可能な物質とから成る分散液が所定の形で加熱されて、重合化により多孔質のシリカゲルが得られ、余剰な液体の除去後に乾燥され、完全に重合化される。
【0011】
この材料は、マクロポアとメソポアとから成る階層的多孔構造を備えたモノリシックな炭素製品を製造するためのいわゆる「テンプレート」として働く。このために、SiO2テンプレートの孔に炭素のための前駆体物質が含浸され、炭素前駆体物質が炭素となるように炭化され、次いでSiO2テンプレートがHF又はNaOHに内で溶解されることにより除去される。
【0012】
このような形式のSiO2テンプレートの製造には高い時間と材料コストがかかり、例えば二次電池のような大量生産品のための使用には特に、製造コストに響き、甘受できない。
【0013】
技術的課題
本発明の課題は、階層的多孔構造のより顕著な形を有した多孔質造粒体の安価であると同時に再現可能な製造を可能にする方法を提供することである。
【0014】
更に本発明の課題は、このような造粒粒子の適当な使用法を提供することである。
【0015】
本発明の概要
この課題は、方法に関しては、本発明により、以下の方法ステップを有する方法により解決される。即ち、
(a)供給材料を熱分解又は加水分解によって材料粒子に変換する反応区域に、供給材料流を供給するステップ、
(b)前記材料粒子を、スート層を形成しながら、堆積面上に析出させるステップ、
(c)前記スート層を多孔質スートプレートと成るように熱的に硬化させるステップ、
(d)前記スートプレートを多孔質の造粒粒子と成るように細分化するステップ、を有する方法によって、上記課題は解決される。
【0016】
本発明による方法はスート析出プロセスを含む。この場合、液体又は気体の出発物質を化学反応(加水分解又は熱分解)させ、気相から固体成分として堆積面に析出させる。反応区域は例えばバーナ火炎又はアーク(プラズマ)である。このような形式のプラズマ析出法、又は、例えばOVD法、VAD法、POD法として公知であるCVD析出法によって、工業的な規模において、合成石英ガラス、酸化錫、窒化チタン及びその他の合成材料が製造される。
【0017】
堆積面は例えば、容器、芯棒、円筒周面、プレート又はフィルタである。堆積面上に析出された多孔質の煤(ここでは、「スート」と言う)は、スート層の形で生じる。堆積面の温度を、析出された材料の密な焼結が行われない程度に低く保つことにより、スート層の多孔性は保証される。
【0018】
反応区域には、ナノメートル範囲の粒径を有した一次粒子が生じ、この一次粒子は、堆積面に到る経路で、概ね球面状のアグロメレート又はアグリゲートの形で集まって堆積する。堆積面への経路における反応区域との相互作用の程度に応じて、異なる数の一次粒子が堆積するので、基本的に、約5nm〜200nmの範囲における広い粒度分布が生じる。アグロメレート及びアグリゲートの内側で、一次粒子間に、ナノメートル範囲の特に小さい中空室及び孔、いわゆるメソポアが存在している。これに対して、個々のアグロメレート及びアグリゲートの間には比較的大きな中空室又は孔が形成され、これらは熱的に硬化されたスートプレート及びスートプレートの断片において、互いに結合されたマクロポアの系を形成する。少数の孔径分布モードを有するこのような内部の孔構造は、多孔質材料の所望の「階層的多孔構造」の特徴である。従ってスート析出プロセスによって、階層的多孔構造を有した異方性の質量分布が生じる。
【0019】
スート層を多孔質のスートプレートと成るように熱的に硬化することが所望されている。熱的な硬化は、スート層を析出プロセスで、又はこれとは選択的に又はこれ対して補足的に、この析出プロセスに続く別個の加熱プロセスで部分的に焼結することにより達成される。熱的な硬化の目的は、スートプレートを次いで細分化する際に、再現可能で一次粒子よりも大きく、かつ、その寸法が少なくともプレートの厚さ方向で規定されたように小さい造粒粒子を得るために十分な所定の機械的安定性を有した多孔質のスートプレートを得ることである。造粒粒子のこのような寸法は、浸潤の高い均一性が得られるならば、浸潤過程のために有利である。これについては詳しく後述する。
【0020】
硬化された多孔質のスートプレートを細分化する前に、スートプレートは堆積面から離される。選択的に、多孔質の造粒粒子へのスートプレートの細分化は、直接的に堆積面上で行われる。
【0021】
機械的な強度が比較的低いことにより、多孔質の造粒粒子へのスートプレートの細分化には僅かな力で十分である。細分化は、スートプレートの裁断又は破砕により行われる。破砕によっても、比較的狭い粒度分布をもった造粒粒子が得られる。何故ならば、造粒粒子の寸法はスートプレートの方向で見て、その厚さによって制限されるからである。造粒粒子の相応の寸法は、最も単純な場合、スートプレートの厚さに相当する。スートプレートが層状の構成により容易に層ごとに剥離されるならば、特に造粒粒子の寸法はスートプレートの厚さよりも小さくすることができる。狭い粒度分布は特に、造粒粒子ができるだけ短い時間内で外部から、液体又は気体の物質によって均一に浸潤される必要がある使用例で特に有利である。
【0022】
スート析出法により、冒頭で説明した製造法に比べて、階層的多孔構造を特徴とする多孔質のスート造粒粒子の安価な製造が工業的な規模で可能である。
【0023】
10〜500μmの範囲の、有利には20〜100μmの範囲の、特に有利には50μmよりも小さい厚さを有したスートプレートを形成するならば有利であることが判った。
【0024】
スートプレートの厚さは、造粒粒子の最大厚さを規定している。造粒粒子の最大厚さはスートプレートよりも薄くできるが、厚くはできない。ほぼ平らな上面とほぼ平らな下面に制限されている、造粒粒子のこの寸法は同時に、通常、造粒粒子の最小寸法を成している。従って、上面及び/又は下面を介して行われる、場合によっては時間に依存する浸潤プロセスは、造粒粒子への良好で均一な進入のために僅かな時間しか必要としない。500μmよりも大きな厚さの造粒粒子ではこの利点は得られず、10μmよりも小さい造粒粒子は機械的な安定性が低く、顕著な階層的多孔構造の構成は困難である。
【0025】
スート析出により得られる熱的に硬化されたスートプレートは僅かな手間で細分化することができ、この場合、小板状又はフレーク状のモルフォロジを有した造粒粒子が得られる。従ってこの造粒粒子は、特に均一かつ迅速に浸潤させることができる球面状ではないモルフォロジを特徴としている。
【0026】
球面状のモルフォロジを有する粒子、即ち球状又はほぼ球状のモルフォロジを有する粒子は体積に対する表面積が小さい。これに対して、球面状ではないモルフォロジを有する造粒粒子は、体積に対する表面積の比がより大きく、これは液体物質の浸潤を容易にかつ均質にさせる。
【0027】
この観点から、小板状又は棒片状に、少なくとも5の、有利には少なくとも10の構造比をもって形成されている造粒粒子は特に有利であることがわかっている。
【0028】
この場合、「構造比」とは造粒粒子の最大の構造幅と厚さの比であると理解される。従って、少なくとも5の構造比は、1つの造粒粒子の最大構造幅が、その造粒粒子の厚さの少なくとも5倍の大きさであることを意味している。このような造粒粒子は板又は棒片の形状を有しており、連続した孔を備えた、ほぼ平行に延びる大きな2つの表面を特徴とする。充填すべき体積の厚さが比較的僅かであるので、これらの表面を介して液体物質の浸潤を比較的迅速に行うことができる。
【0029】
造粒粒子が、連続した孔を備えた側方の破砕面を有しているならば、このために貢献する。何故ならば造粒粒子のこのような構成では、液体物質の浸潤は造粒粒子の側方の開かれた破砕面を介しても行えるからである。
【0030】
造粒粒子の厚さが小さければそれだけ、場合によっては行われる浸潤は簡単かつ均質に行われるようになる。この観点で、造粒粒子は、10〜500μmの範囲の、有利には20〜100μmの範囲の、特に有利には50μmよりも小さい平均厚さを有しているならば特に好ましい。
【0031】
10μmよりも小さい厚さを有した造粒粒子では機械的な強度が低く、顕著な階層的多孔構造の構成を困難にする。500μmよりも大きな厚さでは、均一な浸潤を保証するのはさらに困難になる。
【0032】
製造コストの最小化のためには造粒粒子を継続的に製造することが望まれる。このためには堆積面は例えば、回転する搬送軌道として形成することができる。堆積面が、回転軸線を中心として回転するドラムの円筒周面として形成されているならば特に好ましいことも証明された。
【0033】
ドラムは最も単純な場合、円形の横断面を有している。即ち、ドラムは内実シリンダ又は中空シリンダとして形成することができる。その表面は好ましくは、所定の析出及び高密化温度ではスート層の材料と結合せず、従ってスート層の分離を容易にする材料から成っている。ドラムは複数の材料から成っていて良く、例えば、金属的な内側周面と、この内側周面を取り囲む、腐食作用から保護するためのセラミックの外側周面とから成っている。
【0034】
WO2008/136924A1号明細書により、石英ガラスプレートの製造方法が公知である。この場合、複数の火炎加水分解バーナによってSiO2スート粒子が形成され、中心軸線を中心として回転するドラムの円筒周面に、0.8〜1.25g/cm3の範囲の密度を有したスート層として析出される。このスート層はドラムから離間されて、直接加熱区域に供給され、加熱区域で、10〜40μmの厚さを有した石英ガラスプレートと成るようにガラス化される。この文献により公知の装置は、本発明の方法による多孔質の造粒粒子の製造にも適している。
【0035】
好ましくは、ドラムの直径は、該ドラムが回転軸線を中心として1回転する前にスート層が完全に形成されるような大きさである。
【0036】
これにより、ドラムの円筒周面からのスート層の分離が容易になる。
【0037】
特に、ドラムが僅か1回転する間にスート層を迅速かつ均一に形成するという観点から、スート層の形成を、回転軸線に沿って可逆的に動く、複数の析出バーナから成る1つの装置によって行う、という方法が特に好ましいことが示されている。
【0038】
この場合、これらの析出バーナは互いに固定間隔を置いて、一列に又は互いにずらされて、1つの共通のバーナベンチに取り付けられていて、このバーナベンチは、堆積面の幅よりも短い距離にわたって往復運動する。単数又は複数のこのようなバーナ列が設けられている。
【0039】
これに対して選択的に、かつ、経済的な方法形式及びスート層の均質な形成という観点で同等に有利には、スート層の形成は、その長手方向軸線がドラムに沿って延びている定置の1つの直線的なバーナによって行われる。
【0040】
直線的なバーナは、堆積面の幅にわたって延びる1つの火炎列内で、互いに直接隣接する複数のバーナ火炎を発生させる。単数又は複数のこのような火炎列が設けられている。
【0041】
最も単純な場合、スートプレートを形成するためのスート層の熱的高密化は、単数又は複数の前記析出バーナを用いた加熱によるスート粒子の析出プロセスの際に直接行われる。これによりスート層の領域における表面温度は、十分な高密化が行われるように調節することができる。また、方法ステップ(c)によるスート層の熱的な高密化は、有利には少なくとも1つの付加的なバーナによる加熱を含むこともできる。
【0042】
高密化するために単数又は複数の付加的なバーナを使用することにより、析出バーナを析出プロセスに、付加的なバーナを高密化目的に最適に適合させることができる。
【0043】
堆積面が、内部から熱処理される中空体上に形成されているならば有利である。
【0044】
堆積面の加熱又は冷却により、析出プロセスの効率、高密化の程度、スート層の分離は最適化することができる。
【0045】
前記スートプレートが、10〜40%の範囲の、有利には25%よりも小さい、材料の最大の比密度に関する相対密度を有しているならば好ましい。
【0046】
スートプレートの平均密度が低いほど、利用できる孔体積は大きくなり、テンプレート材料として使用する場合の材料損失及び材料除去のための手間は小さくなる。しかしながら10%よりも低い密度では、機械的な安定性が低くなり、造粒粒子の取り扱い及び使用が困難になる。多孔質のスートプレートの密度は例えば、スート析出プロセスの際の表面積温度、及び/又は別個の高密化過程における温度及び/又はスート層に対する機械的圧力の付与により調節される。
【0047】
スートプレートは、前記方法ステップ(d)により細分化するために堆積面から離され、この場合、スートプレートの下面からガス流が吹き付けられる。
【0048】
ガス流によってスートプレートは継続的に支持面から持ち上げられ、細分化プロセスへと供給される。搬送ベルトから物品を分離するこのような方法形式は、「エアナイフ」又は「エアブレード」の名称で一般的に公知である。
【0049】
この場合、前記方法ステップ(d)によるスートプレートの細分化を、前記堆積面から少なくとも部分的に空間的に分離されている区域で行うならば有利である。
【0050】
これにより、細分化プロセスにより生じる埃が、析出領域に進入するのを防いでいる。
【0051】
スートプレートの細分化は好ましくは破砕又は裁断により行われる。
【0052】
スートプレートは機械的な安定性が低いので、細分化は簡単に破砕及び裁断によって行うことができる。例えばスートプレートを破砕のために、複数の成形ロールの間に通すだけで十分である。機械的な粉砕工具の摩擦により不純物が粉砕物に入り込みやすく、通常広い粒度分布が生じる粉砕法とは異なり、破砕及び裁断の際の不純物の進入の危険は僅かであり、特に、破砕された又は裁断された造粒粒子は再現可能な狭い粒度分布を示す。
【0053】
無機材料は好ましくはSiO2である。合成SiO2は、安価な出発物質を使用してスート析出法によって工業的な規模で比較的安価に製造可能である。
【0054】
造粒粒子の使用に関しては、上記課題は本発明によれば、この造粒粒子を、多孔質の炭素から成る製品を製造するためのテンプレートとして使用することにより解決される。
【0055】
合成的に形成された無機材料、特にSiO2から成るスート層は、良好な耐熱性と、異方性の孔分布を特徴としており、このような孔分布によりスート層は、多孔質の炭素フレーク又は炭素小板の製造用のテンプレートとして直接使用するのに適したものとなる。この場合に得られた炭素フレーク又は炭素小板は、層状のモルフォロジと階層的多孔構造を有した多孔質の炭素ストラクチャーから成っている。これは、本発明の方法につき詳しく上述したように、気相析出による造粒粒子の製造に基づき生じる。
【0056】
実施例
以下に本発明を、実施例と図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】SiO2造粒粒子を製造する装置を示した図である。
図2】SiO2造粒粒子を拡大して示した図である。
【0058】
図1に示された装置は、SiO2から成る多孔質の造粒粒子を製造するために使用される。この装置は、回転軸線2を中心として回転可能な、特殊鋼製の基体から成るドラム1を有しており、このドラム1は炭化ケイ素から成る薄層で被覆されている。ドラム1は30cmの外径と50cmの幅を有している。ドラム1の周面1aにはSiO2スートから成る層5が析出されており、これは直接、SiO2スートプレート5aと成るようにガラス化される。
【0059】
スートの析出のために、複数の火炎加水分解バーナ4が使用される。そのうちの4つが、1つの共通のバーナ列3において、ドラム長手方向軸線2の方向で相前後して配置されている。バーナ列3は、回転軸線2に対して平行に、定置の2つの転換点の間で往復運動する。火炎加水分解バーナ4には、燃焼ガスとしての酸素と水素並びにSiO2粒子の形成のための添加材料としてのオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)が供給される。この場合生じるSiO2一次粒子のサイズはナノメートル範囲であり、複数の一次粒子がバーナ火炎6中で集まり、50m2/gの範囲のBET比表面積を有した概ね球面状のアグリゲートとして生じ、これはドラム周面1a上に、一貫した均一な厚さのSiO2スート層5を形成する。
【0060】
この実施例では、幅約40cmかつ厚さ約45μmのSiO2スート層5が生じるように、ドラム1の回転速度と火炎加水分解バーナ4の析出率が調整される(スート層5は図1では見やすくするために誇張した厚さで示されている)。同時にバーナ4は、スートプレート5aが生ずるようにスート層5の所定の予備焼結を行わせる。即ち、この際に、バーナ4は、最も上のスート層の表面上に約1200℃の平均温度を生ぜしめる。予備焼結は管状の赤外線放射装置14によって支援される。赤外線放射装置14は、中空ドラムとして形成されたドラム1の内側の左下方四半分円内に配置されており、ドラム1の周面を、スート層5の付与直後に内側から加熱している。
【0061】
このようにして得られた、幾分予備焼結された多孔質のスートプレート5aは約22%の平均相対密度を有している(石英ガラスの密度2.21g/m3に関する)。
【0062】
ドラムが約半回転以上回転した後で、スートプレート5aは、ファン7の作用領域に到る。ファン7によって、スートプレート5aの下面に向けられたガス流が発生させられ、これによりスートプレート5aはドラム周面1aから持ち上げられる。
【0063】
次いでスートプレート5aは、支持ロール8を介して破砕工具9へと供給される。破砕工具9は互いに逆方向に回転する2つのロール10a,10bから成っており、これらのロール10a,10bの間にはスートプレート5aの厚さを有した間隙が設けられていて、これらのロール10a,10bの表面には長手方向プロフィール(成形輪郭)が設けられている。
【0064】
間隙を通ったスートプレート5aはロール10a,10bの長手方向プロフィールによってほぼ同じ大きさの破砕片(造粒粒子13)と成るように分けられ、これらの造粒粒子13は捕集容器11内に集められる。
【0065】
ドラム1と破砕工具9との間には、スートプレート5aを通すための開口を備えた分離壁12が設けられており、この分離壁12は、スート析出プロセスを、細分化プロセスの作用から遮蔽するために働く。
【0066】
本発明による方法の選択的な構成では、複数の別個の析出バーナ4の代わりに、ドラム1の回転軸線2に沿って延びる1つの直線的なバーナが設けられている。
【0067】
直線的なバーナによるスート層の析出後、スート層は直接ドラム加熱の作用下でも焼結されて、(透明な石英ガラスの密度に関して)22%のスート密度となるようにされる。
【0068】
この方法により得られた造粒粒子13は、小板状又はフレーク状のモルフォロジを有しており、スートプレート5aの厚さにほぼ相当する、即ち約45μmの厚さを有している。上記の破砕過程の結果、造粒粒子13はほぼ同じ大きさであるので、狭い粒度分布が生じる。
【0069】
図2には、本発明により得られるこのような形式の、球面状ではなく小板状のSiO2造粒粒子13が概略的に示されている。この造粒粒子13は、概ね平らな上面20と、これに対して平行に延びる下面21と、側方の破砕面22とを有しており、これらの面はそれぞれ連続した孔を有している。厚さ寸法は「c」で示されており、側方の両寸法は「a」と「b」で示されている。構造比「A」、即ち、造粒粒子13の最も大きな構造幅(a又はb)と厚さ(c)との比は、この実施例では約10である。
【0070】
このように得られた造粒粒子13は、多孔質の炭素フロックの製造のためのテンプレート(鋳型)として使用される。この目的で、造粒粒子13は、微細に粉砕されたピッチ粉末と体積比1.6:1(ピッチ:造粒粒子)で互いに均質に混合され、粒子混合物は300℃の温度に加熱される。
【0071】
粘性の低いピッチは小さいSiO2造粒粒子13を取り囲み、孔内に入り込み、造粒粒子13に浸潤する。ピッチと造粒粒子の体積比はこの場合、ピッチで孔が充填されるように選択されていて、これにより自由な孔体積は殆ど残らず、自由な溶液中で殆ど完全に消費される。
【0072】
30分の浸潤時間後、温度を700℃に上げ、これによりピッチは炭化する。球面状ではない多孔質のSiO2造粒粒子から成る多孔質の複合材料が形成され、この複合材料には黒鉛化可能な炭素から成る層が外側から被覆され、これによりその孔はほぼ完全に充填される。
【0073】
次いで、複合材料をフッ酸浴に入れてSiO2造粒粒子を除去する。SiO2造粒粒子の腐食除去後、多孔質の炭素から成る予備製品が得られ、その構造は、もともとの多孔質SiO2造粒粒子のほぼネガ形状を成しており、階層的多孔構造を有している。階層的多孔構造では、比較的大きな多数のポアチャネル(マクロポア、マイクロメートル領域の孔)が、その他の微細な亀裂の多い表面構造を通っている。
【0074】
このようにして得られた炭素製品は、すすがれ、乾燥され、必要に応じてさらに細分化される。炭素フロックが得られ、この炭素フロックでは、微細な亀裂の多い表面に、より大きな中空室がチャネル状に通っている。BET法による内側の比表面積の測定により、約50m2/gの測定値が得られる。
【0075】
階層的多孔構造を有した多孔質の炭素から成る炭素フロックは、特に複合電極のための、充電可能なリチウムバッテリの電極層の製造に特に適している。
図1
図2