(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042418
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】会陰切開術を施行するための装置およびそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/3201 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
A61B17/3201
【請求項の数】19
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-510869(P2014-510869)
(86)(22)【出願日】2012年5月14日
(65)【公表番号】特表2014-521378(P2014-521378A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】GB2012000428
(87)【国際公開番号】WO2012156662
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2015年3月13日
(31)【優先権主張番号】1108250.0
(32)【優先日】2011年5月17日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513288735
【氏名又は名称】プリマス ホスピタルズ エヌエイチエス トラスト
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】フリーマン, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ホランズ, ハイディ
(72)【発明者】
【氏名】バロン, ローリー
(72)【発明者】
【氏名】カポール, ダルメッシュ エス.
【審査官】
井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第03078503(US,A)
【文献】
特開平06−054861(JP,A)
【文献】
実公昭47−008388(JP,Y1)
【文献】
登録実用新案第045544(JP,Z2)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0043323(US,A1)
【文献】
米国特許第05542435(US,A)
【文献】
米国特許第02568234(US,A)
【文献】
英国特許出願公開第02451855(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/3201
A61B 17/42
B26B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において、会陰切開術を施行する際に使用するための会陰剪刀であって、前記剪刀は、
一対の枢動可能に接続された剪刀部材であって、
各剪刀部材は、枢動接続部から近位方向に延在するハンドルと、前記枢動接続部から遠位方向に延在する刃とを備える、剪刀部材と、
剪刀部材に取り付けられた誘導部材であって、前記誘導部材は、前記剪刀部材の前記刃の長手方向軸に対して鋭角に、前記剪刀部材から遠位方向に延在する誘導表面を有し、前記誘導部材は、前記刃の一部分から延在し、前記一部分は、前記刃の中点と前記枢動接続部との間の位置にある、誘導部材と
を備える、剪刀。
【請求項2】
各剪刀部材の前記ハンドルおよび刃は、直線に沿って延在する、請求項1に記載の剪刀。
【請求項3】
各剪刀部材の前記ハンドルおよび刃は、相互に対してある角度で延在する、請求項1に記載の剪刀。
【請求項4】
各剪刀部材の前記刃は、直線状である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の剪刀。
【請求項5】
前記誘導部材は、使用の際、前記剪刀を整合させるための外部縁表面を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の剪刀。
【請求項6】
前記誘導部材は、細長い、請求項1〜5のいずれか一項に記載の剪刀。
【請求項7】
前記誘導部材は、2〜10の縦横比を有する、請求項6に記載の剪刀。
【請求項8】
前記一部分は、前記刃の遠位端から所定の長さの位置にある、請求項1〜7のいずれか一項に記載の剪刀。
【請求項9】
前記一部分は、前記刃の遠位端から少なくとも40mmの位置にある、請求項8に記載の剪刀。
【請求項10】
前記誘導部材は、少なくとも線まで延在し、前記線は、前記剪刀の前記ハンドルの長手方向軸に垂直に前記刃の遠位端から延在する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の剪刀。
【請求項11】
前記誘導部材は、前記刃の前記長手方向軸に対して、少なくとも30°の角度で延在する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の剪刀。
【請求項12】
前記誘導部材は、前記刃の前記長手方向軸に対して、40〜70°の角度で延在する、請求項11に記載の剪刀。
【請求項13】
前記誘導部材は、前記刃の前記長手方向軸に対して、60°の角度で延在する、請求項12に記載の剪刀。
【請求項14】
前記剪刀部材の前記ハンドルおよび刃は、一つの平面内にあり、前記誘導部材は、実質的に同一の平面において延在する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の剪刀。
【請求項15】
前記剪刀部材の前記ハンドルおよび刃は、一つの平面内にあり、前記誘導部材は、前記平面に対して、鋭角で延在する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の剪刀。
【請求項16】
前記誘導部材は、前記平面に対して、少なくとも20°の角度で延在する、請求項15に記載の剪刀。
【請求項17】
前記誘導部材は、前記平面に対して、30〜70°の角度で延在する、請求項16に記載の剪刀。
【請求項18】
前記誘導部材は、前記平面に対して、45°の角度で延在する、請求項17に記載の剪刀。
【請求項19】
前記剪刀部材は、前記枢動接続部において、ネジによって接続され、前記誘導部材は、前記ネジの頭部と反対側において、剪刀部材から延在する、請求項1〜18のいずれか一項に記載の剪刀。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、会陰切開術を施行するためのデバイスと、それを使用する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
経膣分娩の間、母親の膣口は、胎児の通過に対応するために、非常に膨張された状態となる。本膨張は、分娩手技の間、母親の膣口の周囲の組織の全体的変位を生じさせる。しかしながら、本伸展が不十分である場合、膣口を囲繞する組織に損傷または裂傷をもたらす可能性がある。
【0003】
便/肛門失禁は、5〜10%の成人女性人口に影響を及ぼしていると考えられる。女性における便失禁の主要原因の1つは、分娩から生じ、膣口と肛門との間に延在する組織(会陰)の裂傷によって生じる肛門括約筋/弁への損傷から発生する(典型的には、実際の分娩の間に発生する会陰の裂傷による)。膣口から延在するそのような裂傷は、肛門括約筋に損傷および長期傷害をもたらし、ひいては、前述の失禁を引き起こす可能性がある。
【0004】
会陰切開術は、一般に、経膣分娩の間、産科医または助産師によって実施される手技である。手技の間、開口部を拡大し、より容易に胎児を分娩させるために、膣口を囲繞する組織に切り込みが入れられる。通常の分娩手技が膣口を囲繞する組織を裂傷させるであろう危険が高い場合、会陰切開術を施すことが一般的である。会陰切開術の目的は、切開を生成することによって、組織を自然に裂傷させることから生じ得る、肛門括約筋への組織損傷を低減させることである。加えて、切開から生じる組織への損傷は、例えば、縫合によって、自然裂傷から生じる組織損傷より容易に修復される。最後に、可能性として、最も重要なこととして、裂傷が始まる前に、膣口を囲繞する組織に切開を生成することは、結果として生じる裂傷の方向を制御し、修復が非常に困難または不可能となり得る、囲繞組織への実質的損傷を回避することを可能にする。
【0005】
会陰切開術を行うための剪刀は、当技術分野において公知である。例として、特許文献1は、刃が、剪刀のハンドルに対して鋭角に延在し、一方の刃の先端部分が、側方に延在することにより、ガードを形成する、会陰剪刀を開示している。
【0006】
特許文献2は、剪刀の刃上に切断縁の特定の配列を有する、側方会陰剪刀を開示している。特許文献3は、同様に、その刃上に切断表面の特異的配列を有する、側方会陰剪刀に関する。
【0007】
一般に、2種類の切開のうちの一方が、会陰切開術手技の間、対象に行われる。正中線切開は、特に、米国において使用される、会陰に沿って膣口から肛門の方向に生成される切開である。本形態の切開は、広く実践されているが、本形態の切開は、切開が、膣口の膨張のために、分娩手技の間、延在し、肛門を囲繞する組織、特に、肛門括約筋を損傷する危険性と関連付けられる。これは、ひいては、前述の長期肛門失禁につながる可能性がある。代替として、側方切開が行われ得、その場合、切り込みが、膣口と肛門との間の正中線から、側方方向に、膣口を囲繞する組織に生成される。これは、英国で使用される好ましい方法である。研究では、組織における第三度裂傷を被る危険性が、6°ずつ、切開が会陰正中線から離れる毎に、50%低下することを示している。故に、会陰切開術手技における側方切開の使用を支持する有力な証拠がある。
【0008】
実際は、胎児を取り上げる医療施術者(産科医)によって、器具を用いずに、目視によって、会陰正中線に沿って、マークし、かつ/または切開を生成することは、比較的に単純である。しかしながら、これは、施術者が、側方切開を生成することを所望している場合には、該当しない。研究では、多くの助産士および医師が、側方会陰切開の角度を有意に過小評価し、結果として生じる切開が、会陰正中線に非常に接近した状態となり、第三度裂傷および肛門括約筋への損傷の付帯的危険性が増加することを示している。
【0009】
分娩手技が進行し、胎児の頭部が、母親の膣口を膨張させるにつれて、膣口を囲繞する組織は、変位される。これは、ひいては、側方切開の正確度を低下させる。その結果、膣口の膨張後に施行される会陰切開術は、特に、開口部が完全に伸展されるときに開始し、切開生成時は、適切な側方角度であるように見えるが、膣口が、分娩後、弛緩すると、会陰正中線に接近していることが見出される可能性がある。
【0010】
故に、会陰切開術を実施する医療施術者を支援する、特に、正確な正中線切開を行うために、施術者を支援するデバイスの必要性が存在する。
【0011】
特許文献4は、分娩器具および方法に関する。特に、1つ以上の伸長参照スロットを有する器具が、開示され、1つ以上の伸長参照スロットを通して、会陰切開術が施行され得る。スロットは、会陰切開術を行うための適切な角度に配列され、器具の残りは、胎児を保護するためのガードとして作用する。
【0012】
恐らく最新のものとして、特許文献5は、母親の膣口と肛門との間の線に対して、誘導部の整合を示すための誘導手段を有し、それによって、側方会陰切開を促進する、会陰切開術誘導部を開示している。
【0013】
広範囲に及ぶ発展の結果、現在、誘導表面は会陰剪刀内に組み込まれ得、それによって、産科医または助産師が、剪刀を迅速に整合させ、最小数のデバイスおよび最小量の時間で会陰切開術を行うことを可能にし得ることが分かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第2,568,234号明細書
【特許文献2】中国特許第201213824号明細書
【特許文献3】中国特許第201192365号明細書
【特許文献4】国際公開第2009/020660号
【特許文献5】英国特許第2,451,855号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
故に、第1の側面では、本発明は、対象において、会陰切開術を施行する際に使用するための会陰剪刀であって、
一対の枢動可能に接続された剪刀部材であって、
各剪刀部材は、枢動接続部から近位方向に延在するハンドルと、枢動接続部から遠位方向に延在する刃とを備える、剪刀部材と、
剪刀部材に取り付けられた誘導部材であって、誘導部材は、剪刀部材の刃の長手方向軸に対して鋭角に、剪刀部材から遠位方向に延在する誘導表面を有する、誘導部材と、
を備える、剪刀を提供する。
【0016】
本発明の剪刀は、剪刀の刃の一方から延在する、誘導部材を備える。剪刀は、会陰の正中線に対してある角度で、膣口から延在する切開である、中外側会陰切開術を行うためのものである。本点において、正中線に対して60°の角度が、特に、好ましい。誘導部材は、実際、会陰切開が行われる前に、膣口に対して正確な配向において、剪刀を整合させるために使用される。特に、誘導部材は、母親の会陰の正中線と整合される。誘導部材がそのように整合されることによって、剪刀は、正中線に対して正確な角度において、中外側会陰切開術を行うための正確な配向および位置にくる。
【0017】
剪刀は、任意の好適な形態を有してもよい。会陰切開術を行うために好適な剪刀は、当技術分野において公知である。一実施形態では、剪刀は、2つの剪刀部材を備え、剪刀が閉じられると、刃およびハンドルが、実質的に直線に沿ってあるように、ハンドルおよび刃が、単一の長手方向軸に沿って延在する。
【0018】
代替として、剪刀は、ハンドルおよび刃が、相互に対してある角度で延在する、剪刀部材を備えてもよい。剪刀が閉じられると、ハンドルは、第1の線に沿って、相互に平行に整合および延在し、刃は、第1の線に対してある角度にある第2の線に沿って整合および延在する。本種類の剪刀の設計の1つは、当技術分野において公知かつ市販のBarnes剪刀である。Braun−Stadler剪刀は、同様に、構成される。
【0019】
剪刀の刃は、曲線状または直線状であってもよい。好ましくは、刃は、直線状である。
【0020】
本発明の剪刀は、誘導部材を備える。誘導部材は、ユーザが、要求される会陰切開を行うために、剪刀を整合させることを可能にする、任意の好適な形態であってもよい。特に、誘導部材が、患者の会陰の正中線と整合されることを可能にし、順に、剪刀の刃を整合させることは、側方会陰切開を行うための正確な角度となる。例えば、誘導部材は、スロット等の開口部を備えてもよく、その縁は、使用の間、剪刀を整合させるための誘導表面を提供する。好ましくは、誘導部材は、剪刀を整合させるための外部縁表面を有する。
【0021】
特に好ましい実施形態では、誘導部材は、概して、細長い。ある好ましい実施形態では、誘導部材は、少なくとも、2、好ましくは、少なくとも3、より好ましくは、少なくとも5、さらにより好ましくは、少なくとも10の縦横比を有する。
【0022】
誘導部材は、その長さに沿って、曲線状であってもよい。より好ましくは、誘導部材は、その長さに沿って、実質的に直線状である。
【0023】
誘導部材は、例えば、剪刀部材に取り付けられ、剪刀部材から延在する。好ましくは、誘導部材は、剪刀部材の刃から延在する。代替として、誘導部材は、剪刀部材のハンドルから延在し、好ましくは、刃の近位端に隣接してもよい。
【0024】
誘導部材は、剪刀の剪刀部材から、遠位方向に延在する。誘導部材は、患者の会陰の正中線と整合され、適切な切開が行われることを可能にする、剪刀部材上の任意の位置から延在してもよい。好ましくは、誘導部材は、要求される長さの切開が、剪刀からの単一の切り込みによって形成され得る、刃の遠位端から十分に離間した位置において、剪刀部材から延在する。本点において、誘導部材は、好ましくは、刃の遠位端から、少なくとも40mm、より好ましくは、少なくとも50mmの位置において、剪刀部材から延在し、それによって、本長さの切開が、単一の切り込みにおいて形成されることを可能にする。
【0025】
記載されるように、誘導部材は、好ましくは、刃の長さに沿って、好適な位置から延在する。一実施形態では、誘導部材は、刃の中点と剪刀の枢動接続部との間の刃上の位置、より好ましくは、剪刀の枢動接続部と刃の中点との間の中間の位置から延在する。
【0026】
誘導部材は、剪刀が、会陰の正中線に対して整合されることを可能にする、任意の好適な長さであってもよい。一実施形態では、誘導部材は、比較的に長く、誘導部材は、少なくとも、剪刀のハンドルの長手方向軸に垂直な、刃の遠位端または点から延在する線まで、より好ましくは、該線を越えて、延在する。本配列は、剪刀が、刃およびハンドルが単一の直線に沿って延在する、剪刀部材を備えるとき、好ましくあり得る。代替実施形態では、誘導部材は、より短い。本配列は、剪刀が、ハンドルおよび刃が相互に対してある角度で延在する、剪刀部材を備えるとき、好ましくあり得る。
【0027】
誘導部材は、剪刀部材から、遠位方向に延在し、誘導部材は、刃の長手方向軸に対して鋭角に取り付けられる。本角度は、前述のように、誘導部材が母親の会陰の正中線と整合されると、中外側会陰切開術が行われる角度を決定する。本角度は、好ましくは、少なくとも30°、より好ましくは、少なくとも40°、さらにより好ましくは、少なくとも50°である。本角度は、好ましくは、80°未満、より好ましくは、75°未満、さらにより好ましくは、70°未満である。30〜80°の範囲内の角度が、好ましく、より好ましくは、40〜75°、さらにより好ましくは、50〜70°である。一実施形態では、鋭角は、55〜65°、より好ましくは、約60°である。
【0028】
剪刀の一実施形態では、剪刀部材はそれぞれ、単一の直線に沿って延在する、刃およびハンドルを有し、誘導部材は、刃およびハンドル両方に対して、ある角度で延在する。代替実施形態では、剪刀部材はそれぞれ、ハンドル部材に対してある角度で延在する刃を有し、誘導部は、刃に対してある角度で延在し、ハンドルの長手方向軸に沿って、またはそれに平行に延在するように整合される。さらなる代替実施形態では、誘導部材は、剪刀部材の刃およびハンドル部材の両方に対してある角度で延在し、誘導部材は、剪刀部材に取着されるか、または剪刀部材から延在する。
【0029】
概して、剪刀のハンドルおよび刃は、実質的に、単一の平面にある。誘導部材は、剪刀の刃およびハンドルの平面と同一の平面において、剪刀部材から遠位方向に延在してもよい。本配列は、剪刀部材の刃が、そのそれぞれのハンドルに対してある角度で延在する実施形態において好ましくあり得る。このように、本実施形態の剪刀の刃は、切開が形成されることになる組織に対して、より容易に配向される。
【0030】
代替として、誘導部材は、剪刀の刃およびハンドルの平面に対して鋭角にある、刃に対するある角度で延在する。このように、本実施形態の剪刀の刃は、誘導部材が適切に整合されると、切断される組織に対して、より便宜的に配向される。これは、ひいては、医療施術者による剪刀の使用を容易にする。誘導部材は、剪刀の平面に対して、任意の好適な角度で延在してもよい。好ましくは、本角度は、少なくとも20°、より好ましくは、少なくとも30°、さらにより好ましくは、少なくとも40°である。本角度は、好ましくは、80°未満、より好ましくは、70°未満、さらにより好ましくは、60°未満である。20〜80°の範囲内の角度が、好ましく、より好ましくは、30〜70°、さらにより好ましくは、40〜60°である。一実施形態では、鋭角は、35〜50°、より好ましくは、約45°である。
【0031】
誘導部材は、剪刀の剪刀部材と一体的に形成されてもよい。より好ましくは、誘導部材は、それと別個に形成されて、刃に取着される。誘導部材を剪刀に取着する任意の好適な手段が、使用されてもよい。溶接、例えば、レーザ溶接が、特に、好ましい。
【0032】
誘導部材は、剪刀の剪刀部材のいずれか一方から延在してもよい。誘導部材が取り付けられる剪刀部材の選択は、例えば、剪刀が左利き用または右利き用であるかどうかによって決定されてもよい。概して、外科用剪刀は、2つの剪刀部材を備え、それぞれは、ハンドル部分および刃部分から成る。2つの構成要素は、各構成要素のハンドル部分および刃部分の結合部分において、枢動可能に接続される。典型的には、枢動接続は、ネジを使用して形成される。好ましくは、誘導部材は、剪刀のネジの頭部に対向する側の剪刀部材から、延在する。これは、特に、誘導部材が、溶接、特に、レーザ溶接によって、剪刀部材に取着される場合に該当する。
【0033】
誘導部材は、任意の好適な材料から形成されてもよい。最も好ましくは、誘導部材は、剪刀と同一の材料から形成される。外科用剪刀を形成するための好適な材料は、当技術分野において公知である。これは、典型的には、ステンレス鋼である。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
対象において、会陰切開術を施行する際に使用するための会陰剪刀であって、
一対の枢動可能に接続された剪刀部材であって、
各剪刀部材は、前記枢動接続部から近位方向に延在するハンドルと、前記枢動接続部から遠位方向に延在する刃とを備える、剪刀部材と、
剪刀部材に取り付けられた誘導部材であって、前記誘導部材は、前記剪刀部材の刃の長手方向軸に対して鋭角に、前記剪刀部材から遠位方向に延在する誘導表面を有する、誘導部材と、
を備える、剪刀。
(項目2)
各剪刀部材の前記ハンドルおよび刃は、直線に沿って延在する、項目1に記載の剪刀。
(項目3)
各剪刀部材の前記ハンドルおよび刃は、相互に対してある角度で延在する、項目1に記載の剪刀。
(項目4)
各剪刀部材の前記刃は、直線状である、項目1〜3のいずれか一項に記載の剪刀。
(項目5)
前記誘導部材は、使用の際、前記剪刀を整合させるための外部縁表面を有する、項目1〜4のいずれか一項に記載の剪刀。
(項目6)
前記誘導部材は、細長い、項目1〜5のいずれか一項に記載の剪刀。
(項目7)
前記誘導部材は、2〜10の縦横比を有する、項目6に記載の剪刀。
(項目8)
前記誘導部材は、剪刀部材の刃から延在する、項目1〜7のいずれか一項に記載の剪刀。
(項目9)
前記誘導部材は、前記刃の中点と前記枢動接続部との間の刃上の位置から延在する、項目8に記載の剪刀。
(項目10)
前記誘導部材は、要求される長さの切開が、前記剪刀からの単一の切り込みによって形成され得るように、前記剪刀部材上の位置から延在する、項目1〜9のいずれか一項に記載の剪刀。
(項目11)
前記誘導部材は、前記刃の遠位端から少なくとも40mmの前記剪刀部材上の位置から延在する、項目10に記載の剪刀。
(項目12)
前記誘導部材は、少なくとも、前記刃の遠位端から前記剪刀のハンドルの長手方向軸に垂直に延在する線まで延在する、項目1〜11のいずれか一項に記載の剪刀。
(項目13)
前記誘導部材は、前記刃の長手方向軸に対して、少なくとも30°の角度で延在する、項目1〜12のいずれか一項に記載の剪刀。
(項目14)
前記誘導部材は、前記刃の長手方向軸に対して、40〜70°の角度で延在する、項目13に記載の剪刀。
(項目15)
前記誘導部材は、前記刃の長手方向軸に対して、60°の角度で延在する、項目14に記載の剪刀。
(項目16)
前記誘導部材は、前記剪刀部材と実質的に同一の平面に延在する、項目1〜15のいずれか一項に記載の剪刀。
(項目17)
前記誘導部材は、前記剪刀部材の平面に対して、鋭角で延在する、項目1〜15のいずれか一項に記載の剪刀。
(項目18)
前記誘導部材は、前記剪刀部材の平面に対して、少なくとも20°の角度で延在する、項目17に記載の剪刀。
(項目19)
前記誘導部材は、前記剪刀部材の平面に対して、30〜70°の角度で延在する、項目18に記載の剪刀。
(項目20)
前記誘導部材は、前記剪刀部材の平面に対して、45°の角度で延在する、項目19に記載の剪刀。
(項目21)
前記剪刀部材は、前記枢動接続部において、ネジによって接続され、前記誘導部材は、前記ネジの頭部と反対側において、剪刀部材から延在する、項目1〜20のいずれか一項に記載の剪刀。
(項目22)
会陰切開を行う際における、項目1〜21のいずれか一項に記載の会陰剪刀の使用。
(項目23)
項目1〜21のいずれか一項に記載の剪刀の前記誘導部材を対象の会陰の正中線と整合させることと、前記対象の膣口から側方切開を行うこととを含む、会陰切開術を行う方法。
(項目24)
前記切開は、前記剪刀の単一の切り込みにおいて行われる、項目23に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0034】
次に、本発明の誘導部の実施形態が、付随の図を参照して、単なる一例として、説明される。
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による、剪刀の平面図である。
【
図2】
図2は、線II−IIに沿った
図1の剪刀の側面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施形態による、剪刀の平面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第3の実施形態による、剪刀の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1を参照すると、概して、2として示される、会陰剪刀が、図示される。剪刀2は、2つの剪刀部材4a、4bを備え、それぞれ、ハンドル6a、6bおよび刃8a、8bから成る。剪刀部材4a、4bは、従来の様式において、ネジ10によって枢動可能に接続される。剪刀部材は、ステンレス鋼から形成される。剪刀部材4a、4bの構成は、概して、従来通りであって、外科用剪刀に一般的である。特に、各剪刀部材のハンドルおよび刃は、
図1に示されるように、単一の直線に沿って延在する。
【0036】
誘導部材20は、一方の刃8aから延在し、誘導部材20は、ステンレス鋼の細片の形態である。誘導部材20は、レーザ溶接によって、刃8aの一端に取着される。誘導部材20は、対向する縁表面22a、22bを有する。
【0037】
刃8aは、刃の遠位端または点9とネジ10との間の中間にある点である、中点Xを有する。
図1および2に示されるように、誘導部材20は、ネジ10と刃8aの中点Xとの間のほぼ中間にある位置において、刃8aに取着される。これは、誘導部材20が、刃8aの遠位端または先端9から少なくとも50mmの位置において、刃に取着されることを可能にする。
【0038】
図2および3に示されるように、誘導部材は、ネジの頭部に対向する側において、刃に取着される。
【0039】
図1に示されるように、誘導部材20は、刃の遠位端を越えて、つまり、刃の長手方向軸に対して垂直に刃の先端から描かれる線を越えて、刃8aから延在する。
【0040】
誘導部材20は、
図1に示されるように、刃の長手方向軸に対して鋭角αで、刃8aから遠位方向に延在する。好ましい実施形態では、角度αは、60°(+/−2°)である。
【0041】
さらに、
図3に示されるように、誘導部材20は、剪刀の平面に対して角度βで延在する。好ましい実施形態では、角度βは、45°(+/−2°)である。
【0042】
使用時、誘導部材20は、縁表面22a、22bが、正中線の両側から延在するように、母親の会陰の正中線と整合される。剪刀の刃8a、8bは、したがって、要求される角度で、膣口を囲繞する組織に中外側切開を行うように角度付けられる。
【0043】
図4を参照すると、概して、102として示される、本発明の剪刀の第2の実施形態が、示される。剪刀102は、2つの剪刀部材104a、104bを備え、それぞれ、ハンドル106a、106bおよび刃108a、108bから成る。剪刀部材104a、104bは、従来の様式において、ネジ110によって枢動可能に接続される。剪刀部材は、ステンレス鋼から形成される。
【0044】
図4に示されるように、ハンドル106a、106bは、それぞれの刃108a、108bに対してある角度で延在する。剪刀部材104a、104bの構成は、概して、従来通りであって、外科用剪刀に一般的である。
【0045】
誘導部材120は、一方の刃108aから延在し、誘導部材120は、ステンレス鋼の細片の形態である。誘導部材120は、レーザ溶接によって、刃108aの一端に取着される。誘導部材120は、対向する縁表面122a、122bを有する。
【0046】
誘導部材120は、刃の近位端の領域、つまり、刃の先端109の反対にあって、ハンドル106aに隣接する端において、刃108aに取着される。
図4に示されるように、誘導部材120は、誘導部材およびハンドルが、単一の直線に沿って延在するように、ハンドル106aと整合される。
【0047】
図1から3の実施形態と同様に、誘導部材は、ネジの頭部に対向する側において、刃に取着される。
【0048】
誘導部材120は、
図4に示されるように、刃の長手方向軸に対して、鋭角αで、ハンドル106aから遠位方向に延在する。好ましい実施形態では、角度αは、60°(+/−2°)である。
【0049】
誘導部材120は、2つの剪刀部材104a、104bの平面と実質的に同一の平面に延在する。
【0050】
剪刀102の使用は、
図1の実施形態に関する前述の使用に類似する。
【0051】
図5を参照すると、概して、202として示される、本発明の剪刀のさらなる実施形態が、示される。剪刀202は、2つの剪刀部材204a、204bを備え、それぞれ、ハンドル206a、206bおよび刃208a、208bから成る。剪刀部材204a、204bは、従来の様式において、ネジ210によって枢動可能に接続される。剪刀部材は、ステンレス鋼から形成される。
【0052】
図5に示されるように、ハンドル206a、206bは、それぞれの刃208a、208bに対してある角度で延在する。剪刀部材204a、204bの構成は、概して、従来通りであって、外科用剪刀に一般的である。
【0053】
誘導部材220は、一方の刃208aから延在し、誘導部材220は、ステンレス鋼の細片の形態である。誘導部材220は、レーザ溶接によって、刃208aの一端に取着される。誘導部材220は、対向する縁表面222a、222bを有する。
【0054】
誘導部材220は、刃の近位端の領域、つまり、刃の先端209の反対にあって、ハンドル206aに隣接する端において、刃208aに取着される。
図1から3の実施形態と同様に、誘導部材は、ネジの頭部に対向する側において、刃に取着される。
【0055】
誘導部材220は、
図5に示されるように、刃208aの長手方向軸に対して鋭角αを形成するように、ハンドル206aから、ハンドル206aに対してある角度で、遠位方向に延在する。好ましい実施形態では、角度αは、60°(+/−2°)である。
【0056】
誘導部材220は、2つの剪刀部材204a、204bの平面と実質的に同一の平面に延在する。
【0057】
剪刀202の使用は、
図1の実施形態に関する前述の使用に類似する。