(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲は、この形態に限定されるものではない。
【0014】
本発明は、一態様によれば、光学的立体造形用組成物に関する。本発明に係る光学的立体造形用組成物は、成分(A)〜(F)を少なくとも含有し、必要に応じてその他の成分をさらに含有する。
【0015】
成分(A)は、グリシジルエーテル構造を有するソルビトールのエーテル誘導体である水溶性のカチオン重合性化合物である。成分(A)を含有させることにより、光学的立体造形用組成物が水に溶けやすくなるという効果がある。成分(A)は、未硬化の状態で、常温の水で洗い流せる程度に水溶性であれば十分であり、例えば、常温(25℃)での水への溶解度が5g/100ml、好ましくは40g/100ml以上、より好ましくは50g/100ml以上である。成分(A)のグリシジルエーテル構造を有するソルビトールのエーテル誘導体において、ソルビトールはD体及びL体のいずれであってもよく、ソルビトールがD体のものとL体のものとが混在していてもよい。
【0016】
成分(A)のグリシジルエーテル構造を有するソルビトールのエーテル誘導体は、下記式(I):
【化1】
で表されるソルビトールの6個の水酸基の水素の少なくとも1個が、下記のグリシジル基:
【化2】
で置換されたものである。
【0017】
または、成分(A)のグリシジルエーテル構造を有するソルビトールのエーテル誘導体は、ソルビトールの6個の水酸基の水素の少なくとも1個が、下記のグリシジルポリオキシエチレン基:
【化3】
(式中、nは独立して1〜50の整数を表す。)
で置換されていてもよい。もしくは、成分(A)のグリシジルエーテル構造を有するソルビトールのエーテル誘導体は、ソルビトールの6個の水酸基の水素の少なくとも1個がグリシジル基で置換され、ソルビトールの残りの水酸基の水素の少なくとも1個がグリシジルポリオキシエチレン基でさらに置換されていてもよい。グリシジルポリオキシエチレン基でさらに置換された成分(A)のグリシジルエーテル構造を有するソルビトールのエーテル誘導体は、「ソルビトールのポリオキシエチレンエーテルのグリシジルエーテル」とも称する。成分(A)のグリシジルエーテル構造を有するソルビトールのエーテル誘導体は、グリシジルポリオキシエチレン基をさらに有する場合、グリシジル基が多く導入され水酸基が減っても水に溶けやすい。
【0018】
成分(A)のカチオン重合性化合物のエポキシ当量は、好ましくは155〜200g/当量、より好ましくは160〜180g/当量であり、さらに好ましくは165〜175g/当量である。ここで、エポキシ当量は、JIS K7236に準拠した方法により測定した1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数である。成分(A)のカチオン重合性化合物は、常温において液状であることが好ましい。
【0019】
成分(A)の水溶性カチオン重合性化合物は、公知の方法(例えば、特開2001−39960号公報、実験化学講座第4版28巻P428)を参考にすることで合成できるほか、市販のものを用いることもできる。例えば、市販製品の具体例として、ナガセケミテック社製のソルビトールポリグリシジルエーテル製品のデナコールEX-611(エポキシ当量167g/当量)、デナコールEX-612(エポキシ当量166g/当量)、デナコールEX-614(エポキシ当量167g/当量)、及びデナコールEX-614B(エポキシ当量173g/当量)、並びにエメラルド社製のERISYS GE-60(エポキシ当量160〜195g/当量)が挙げられる。
【0020】
成分(A)のカチオン重合性化合物の含有量は、光学的立体造形用組成物の総量中に10〜70質量%であり、好ましくは20〜60質量%であり、より好ましくは30〜50質量%である。成分(A)のカチオン重合性化合物の含有量が10質量%未満である場合、光学的立体造形用組成物の水溶性が不十分であり、70質量%を越えると硬化薄膜層同士の密着性が弱くなる。硬化薄膜層同士の密着が良いと、立体造形物の作製の際の反り変形が改善され、得られた立体造形物の引張り強度、伸度、曲げ強度、及び曲げ弾性率等の機械的特性を向上させることができる。
【0021】
光学的立体造形用組成物は、成分(A)のカチオン重合性化合物に加え、他のカチオン重合性化合物をさらに含有していてもよい。他のカチオン重合性化合物は、好ましくは、1分子中に2個以上のカチオン重合性結合を有する多官能モノマーである。他のカチオン重合性化合物は、例えば、エポキシ基、ビニルエーテル基、又はオキセタン基を有するカチオン重合性化合物であり、好ましくは、エポキシ基を1つ以上有するカチオン重合性化合物である。このエポキシ基を有するカチオン重合性化合物は、成分(A)のグリシジルエーテル構造を有するソルビトールのエーテル誘導体ではない。
【0022】
エポキシ基を有するカチオン重合性化合物の具体例としては、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール#200ジグリシジルエーテル及びポリエチレングリコール#400ジグリシジルエーテル等のポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキシルサンカルボキシレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール#400ジグリシジルエーテル等のポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ビスフェノールA PO2mol付加物ジグリシジルエーテル等のビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(液状型)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(液状型)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(液状型)、4−(2,3−エポキシプロパン−1−イルオキシ)−N,N−ビス(2,3−エポキシプロパン−1−イル)−2−メチルアニリン、グリシジルメタクリレート、アルキルフェノールモノグリシジルエーテル、4,4−メチレンビス[N,N−ビス(オキシラニルメチル)アニリン]、並びに柔軟強靭性液状エポキシ樹脂EXA−4850−150(DIC社製)等が挙げられる。
【0023】
ビニルエーテル基を有するカチオン重合性化合物の具体例としては、シクロペンタジエンビニルエーテル、トリシクロデカンビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、オキセタンジビニルエーテル、4−シクロヘキサンジビニルエーテル、及びオキサノルボナンジビニルエーテル等を挙げることができる。
【0024】
オキセタン基を有するカチオン重合性化合物の具体例としては、(3−エチル−オキセタン−3−イル)−メタノール、3−(3−エチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−プロパン−1−オール、4−(3−エチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−ブタン−1−オール、3−(3−エチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−プロパン−1,2−ジオール、1−(3−エチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−プロパン−2−オール、1−[2−(3−エチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−1−メチル−エトキシ−エタノール、2−[2−(3−エチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−エトキシ]−エタノールキシリレンビスオキセタン、3−エチル−3[([3−エチルオキセタン−3−イル]メトキシ]メチル]オキセタン、2−エチルヘキシルオキセタン、1,4−ベンゼンジカルボン酸ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メチル]エステル、(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチルメタクリレート、4,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル)ビフェニル、及び3−エチル−3−(ビニルオキシメチル)オキセタン等が挙げられる。
【0025】
エポキシ基、ビニルエーテル基又はオキセタン基を有するカチオン重合性化合物は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
エポキシ基、ビニルエーテル基又はオキセタン基を有するカチオン重合性化合物は、市販のものを用いることができる。例えば、日本カーバイド工業株式会社製クロスマー、株式会社ダイセル製セロキサイド、エポリード、ナガセケムテック株式会社製デナコールシリーズ、丸善石油化学株式会社製ビニルエーテル、住友化学株式会社製スミエポキシ、阪本薬品化学工業株式会社製ポリエポキシ、共栄社化学株式会社製エポライト、新日鉄住金化学株式会社製YDシリーズ、YDFシリーズ、STシリーズ、YH−300シリーズ、三菱化学株式製基本液状タイプ、ビスF液状タイプ、多官能液状タイプ、可塑性液状タイプ、特殊機能液状タイプ等を挙げることができる。
【0027】
成分(A)のカチオン重合性化合物に加えてさらに含有してもよい、エポキシ基、ビニルエーテル基又はオキセタン基を有する、カチオン重合性化合物の含有量は、成分(A)のカチオン重合性化合物の含有量よりも少ないことが好ましく、光学的立体造形用組成物の総量中に、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%である。エポキシ基、ビニルエーテル基又はオキセタン基を有するカチオン重合性化合物を1〜30質量%の範囲で含有させることにより、引張強度、反り変形、曲げ強度等の硬化物性を調整することができる。また、オキセタン基を有するカチオン重合性化合物には、カチオン重合性化合物の硬化速度を高める効果がある。よって、光学的立体造形用組成物を用いた立体造形物の製造を迅速化し、高い造形速度で生産性良く製造することを可能とする。
【0028】
成分(A)のカチオン重合性化合物に加えてさらに含有してもよい、エポキシ基、ビニルエーテル基又はオキセタン基を有する、カチオン重合性化合物のうち、ノボラック型エポキシ樹脂(成分(E))が好ましい。成分(E)のカチオン重合性化合物であるノボラック型エポキシ樹脂は、非イオン性である油溶性のものが好ましい。成分(E)のカチオン重合性化合物であるノボラック型エポキシ樹脂は、例えばノボラックの水酸基をエポキシ化して得られる多官能エポキシ樹脂であり、一般的に耐熱性に優れている。ノボラック型エポキシ樹脂は、常温において液状であることが好ましい。ノボラック型エポキシ樹脂は、例えば、液状のフェノールノボラック型エポキシ樹脂であってもよい。ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは170〜190g/当量である。ノボラック型エポキシ樹脂は、市販のものを用いてもよい。ノボラック型エポキシ樹脂の具体例としては、DICコーポレーション株式会社製のエピクロンN-730A(エポキシ当量172〜179g/当量)、エピクロンN-770(エポキシ当量183〜187g/当量)、三菱化学株式会社製のJER152(エポキシ当量176〜178g/当量)、JER154(エポキシ当量176〜180g/当量)、新日鉄住金化学株式会社製のYDPN-638(エポキシ当量175〜176g/当量)、YDCN−700−3(エポキシ当量195〜205g/当量)YDCN−700−5(エポキシ当量196〜206g/当量)、日本化薬株式会社製のEOCN-1025(エポキシ当量205〜217g/当量)等が挙げられる。
【0029】
成分(E)のノボラック型エポキシ樹脂の含有量は、光学的立体造形用組成物の総量中に1〜30質量%であり、好ましくは10〜30質量%である。成分(E)のノボラック型エポキシ樹脂の含有量が30質量%を超えると、光学的立体造形用組成物とした際に水溶性となりにくく、また、洗浄水への分散性も悪くなることがある。成分(A)と組み合わせて成分(E)を含むことにより、得られた立体造形物の引張り強度、伸度、曲げ強度、及び曲げ弾性率等の機械的特性をより向上させることができ、さらに耐熱性をも向上させることができる。成分(E)のノボラック型エポキシ樹脂は、とりわけ界面活性剤を用いなくても、水溶性の成分(A)中にモーター撹拌のみで均一に分散させることが可能である。
【0030】
成分(B)は、メタクリル基及び/又はアクリル基を有する水溶性のラジカル重合性化合物である。成分(B)は、未硬化の状態で、常温の水で洗い流せる程度に水溶性であれば十分であり、例えば、常温(25℃)での水への溶解度が5g/100ml以上、好ましくは40g/100ml以上、より好ましくは50g/100ml以上である。成分(B)の水溶性のラジカル重合性化合物は、好ましくは常温で液体である。以下において、メタクリル基又はアクリル基を「(メタ)アクリロイル基」、メタクリレート又はアクリレートを「(メタ)アクリレート」とも称する。
【0031】
成分(B)のメタクリル基及び/又はアクリル基を有する水溶性のラジカル重合性化合物は、単官能、2官能、及び3官能以上のいずれであってもよく、成分(A)の水溶性のカチオン重合性化合物と溶け合うものがよく、各々の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
単官能基の化合物としては、(メタ)アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)クリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと無水リン酸の反応生成物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのヘキサリド付加重合物と無水リン酸の反応生成物等が挙げられる。
2官能の化合物としては、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(4)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(10)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(30)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(4)水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(30)水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性(10)水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3官能以上の化合物としては、エトキシ化(9)グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化(20)グリセリントリ(メタ)アクリレート、ポリエーテル系ウレタン3官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
成分(B)のメタクリル基及び/又はアクリル基を有する水溶性のラジカル重合性化合物は、公知の方法で合成できるほか、市販のものを用いることができる。例えば、東亜合成株式会社製アロニックスシリーズ、日油株式会社製ブレンマーシリーズ、共栄社化学株式会社製ライトエステルシリーズ、ライトアクリレートシリーズ、エポキシエステルシリーズ、ウレタンアクリレートシリーズ、新中村化学株式会社製NKエステルシリーズ、NKオリゴシリーズ、日本化薬株式会社製KAYARADシリーズ、大阪有機化学株式会社製ビスコートシリーズ等がある。
【0033】
成分(B)の水溶性のラジカル重合性化合物の含有量は、光学的立体造形用組成物の総量中に1〜30質量%であり、好ましくは5〜20質量%である。成分(B)の水溶性のラジカル重合性化合物を含有させることにより、光学的立体造形用組成物の水に対する混和性を高めることができる。また、成分(B)のラジカル重合性化合物の含有量が1質量%未満であると、感度が不十分である。30質量%を越える場合には、硬化物が強靭性でなくなる。
【0034】
成分(B)のラジカル重合性化合物の含有量は、成分(A)のカチオン重合性化合物の含有量よりも好ましくは少ない。成分(B)のラジカル重合性化合物の含有量が成分(A)のカチオン重合性化合物の含有量よりも少ないことにより、硬化物の硬度を高めることができる。
【0035】
また、光学的立体造形用組成物は、成分(B)の水溶性ラジカル重合性化合物に加え、発明の趣旨を逸脱しない程度に、他の非水溶性又は低水溶性のラジカル重合性化合物をさらに含有することができる。他のラジカル重合性化合物の含有量は、光学的立体造形用樹脂組成物の水溶性を損なわない程度であり、例えば、光学的立体造形用組成物の総量中に1〜30質量%とすることが好ましい。
【0036】
他のラジカル重合性化合物の単官能モノマーの具体例としては、例えばアクリルアミド、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタクロロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0037】
他のラジカル重合性化合物の2官能モノマーの具体例としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの両末端(メタ)アクリル酸付加物、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエステル系ウレタン2官能(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0038】
他のラジカル重合性化合物の3官能以上の多官能モノマーの具体例としては、例えば、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ポリエーテル系ウレタン3官能(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0039】
成分(C)は、スルホニウム化合物又はビス(アルキルフェニル)ヨードニウム化合物であるアンチモン非含有カチオン重合開始剤である。成分(C)のカチオン重合開始剤は、劇物であるアンチモン(Sb)を含まないため、人体及び環境に対して安全性が高い。また、立体造形物の製造過程で生じる廃液の処理の負担を低減することができる。
【0040】
成分(C)のアンチモン非含有カチオン重合開始剤の具体例としては、ビス[4−n−アルキル(C10〜13)フェニル]ヨードニウム=ヘキサフルオロホスフェート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムビス(パーフルオロブタンスルホニル)イミド、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム=ヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−n−アルキル(c10〜13)フェニル]ヨードニウム=テトラキスペンタフルオロフェニルボレート、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム=ヘキサフルオロホスフェート、及び4,4−ビス(ジフェニルスルホニル)フェニルスルフィド−bis−ヘキサフルオロホスフェート等を挙げることができる。
【0041】
成分(C)のアンチモン非含有カチオン重合開始剤は、市販のものを用いることができる。例えば、三新化学工業株式製のサンエイドSIシリーズ、和光純薬工業株式会社製のWPIシリーズ、株式会社アデカ製のSPシリーズ、サンアプロ株式会社製のCPIシリーズ等を挙げることができる。
【0042】
成分(C)のアンチモン非含有カチオン重合開始剤の含有量は、光学的立体造形用組成物の総量中に、0.1〜20質量%の範囲であり、好ましくは0.5〜10質量%の範囲である。0.1質量%未満の場合は、カチオン重合反応速度が遅くなる。含有量が20質量%を超える場合は、光学的立体造形用組成物の硬化特性を低下させる。
【0043】
成分(D)は、ラジカル重合開始剤である。ラジカル重合開始剤は、活性エネルギー線の照射によってラジカル種を発生させ、ラジカル重合性化合物のラジカル反応を開始できる化合物であれば特に限定されない。ラジカル重合開始剤の具体例としては、2,2―ジメトキシ−1,2―ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシーシクロヘキシル=フェニル=ケトン、2―ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2―ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチループロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシドメチルエステル、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジルージメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]―1―(O−アセチルオキシム)、カンファーキノン、ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、エチル=4−(ジメチルアミノ)−ベンゾエート、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]−フェニルメタン、エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート、メチル=o−ベンゾイルベンゾエート、4−メチルベンゾフェノン、カンファーキノン、テトラブチルアンモニウム=ブチルトリフェニルボラート、テトラブチルアンモニウムブチルトリナフチルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレイト、1,5−ディアザビシクロ[4.3.0]ノンエン−5−テトラフェニルボレイト等を挙げることができる。ラジカル重合開始剤は、1種単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
成分(D)のラジカル重合開始剤は、市販のものを用いることができる。例えば、BASF製IRGACUREシリーズ、DAROCURシリーズ、LUCIRINシリーズ、株式会社ソートのSB―PIシリーズ、株式会社ADEKA製アデカオプトマーシリーズ、昭和電工株式会社製有機ホウ素化合物シリーズ、北興化学工業株式会社製有機ホウ素化合物シリーズ等がある。
【0045】
成分(D)のラジカル重合開始剤の含有量は、光学的立体造形用組成物の総量中に、0.1〜20質量%の範囲であり、好ましくは0.5〜10質量%の範囲である。0.1質量%未満の場合は、光学的立体造形用組成物のラジカル重合反応速度が遅くなる。含有量が20質量%を超える場合は、光学的立体造形用組成物の硬化特性を低下させる。
【0046】
成分(F)は、増感剤である。増感剤は、光学的立体造形用組成物の光感度を増大させることができる化合物(好ましくは300〜500nmの波長を吸収すると解するもの)であれば、特に限定されないが、多官能チオール化合物が好ましい。多官能チオール化合物の具体例として、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチリルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)等が挙げられる。成分(E)の増感剤の多官能チオール化合物は、市販のものを用いることができ、例えば、三菱化学株式会社製のQX40、株式会社アデカ製のアデカハードナーEH−317、SC有機化学株式会社製のPEMP、TBMPIC、TMPMP、昭和電工株式会社製のカレンズMTシリーズ等が挙げられる。
【0047】
多官能チオール化合物以外の増感剤の具体例としては、ベンゾフェノン、アクリジン系として、9−フェニルアクリジン、9−(p−メチルフェニル)アクリジン、9−(o−メチルフェニル)アクリジン、9−(o−クロロフェニル)アクリジン、9−(o−フロロフェニル)アクリジン、クマリン系として、7,7−(ジエチルアミノ)(3,3−カルボニルビスクマリン)、3−ベンゾイルー7−ジエチルアミノクマリン、7,7−ビス(メトキシ)(3,3−カルボニルビスクマリン)、アントラセン系として、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−エトキシアントラセン、9,10−ブトキシアントラセン等が挙げられる。
【0048】
成分(F)の増感剤の含有量は、光学的立体造形用組成物の総量中に、0.05〜5.0質量%の範囲であり、好ましくは3〜5質量%の範囲である。含有量が5.0質量%を超える場合は、局所的に感度が低下したり、表面の部分でしか硬化しなかったりする。光学的立体造形用組成物に成分(F)を加えることで、光硬化の反応をより促進し、組成物中の全ての重合成分を硬化(結合)させて、立体造形物とした際に十分な機械的強度及び耐熱性を得ることが可能となる。
【0049】
光学的立体造形用組成物は、その他の成分として、成分(C)及び/又は成分(D)を溶解又は分散させるための溶剤、硬化促進剤、着色剤等を、光学的立体造形用組成物の特性に悪影響を与えない範囲内において含有することができる。その他の成分の含有量は、当業者が適宜調整することができる。
【0050】
光学的立体造形用組成物は、成分(A)のグリシジルエーテル構造を有するソルビトールのエーテル誘導体である水溶性のカチオン重合性化合物を10〜70質量%、成分(B)メタクリル基及び/又はアクリル基を有する水溶性のラジカル重合性化合物を1〜30質量%、成分(C)スルホニウム化合物又はビス(アルキルフェニル)ヨードニウム化合物であるアンチモン非含有カチオン重合開始剤を0.1〜20質量%、成分(D)ラジカル重合開始剤を0.1〜20質量%、成分(E)のノボラック型エポキシ樹脂を1〜30質量%、及び、成分(F)増感剤を0.05〜5.0質量%含有し、任意に他のカチオン重合性化合物、他のラジカル重合性化合物、及び/又はその他の成分をさらに含有する。成分(A)の水溶性カチオン重合性化合物及び成分(B)の水溶性ラジカル重合性化合物のうち少なくとも一方は、常温(25℃)において液状の成分であり、常温で固体状の成分は、光学的立体造形用組成物において液状成分に分散した状態で存在する。また、非水溶性の成分は、通常、攪拌機で攪拌することで、成分(A)及び成分(B)等の水溶性成分中に均一に分散している。
【0051】
光学的立体造形用組成物は、常法に従って調製することができる。例えば、光学的立体造形組成物は、成分(A)〜(F)、及び必要に応じて他のカチオン重合性化合物、他のラジカル重合性化合物、及び/又はその他の成分を、攪拌して均一な混合物を形成する工程と、該混合物を濾過して、原料中に混入した異物や製造過程で混入した異物を取り除く工程と、該混合物を脱気する工程とにより調製することができる。各々の成分の配合量は、光学的立体造形用組成物における終濃度が、上記した範囲となるようにする。成分(B)、成分(C)及び成分(D)等の成分が常温で固体状である場合は、予め溶剤に溶解又は分散させたものを使用することが好ましい。攪拌は、20〜40℃の温度で、1〜2時間行うことが好ましい。20℃未満では重合性化合物が増粘して攪拌効率が悪くなる場合があり、40℃超では粘度が低下して攪拌効率が良くなるが、光開始剤や重合性化合物の品質を悪化させる場合があるためである。このように調製された光学的立体造形用組成物は、常温(25℃)において液状である。光学的立体造形用組成物の粘性は、常温において200〜1500mPa・s程度であることが光造形の観点から好ましい。
【0052】
光学的立体造形用組成物は、水溶性の性質を示す。ここで、光学的立体造形用組成物についての「水溶性」は、例えば、常温(25℃)において、水又は水を含む水性媒体に、任意の割合で均一に分散もしくは混和することが可能であり、又は0.4ml/ml以上の溶解度で溶解可能であることを意味する。例えば、常温(25℃)において、未硬化の部分の光学的立体造形用組成物を、常温の水又は水を含む水性媒体で洗い流して容易に除去することができる。ここで、「水又は水を含む水性媒体で洗い流す」ことには、光学的立体組成物に非水溶性の成分が含まれる場合に、非水溶性成分が洗浄用の水及び/又は水溶性成分に分散された状態で、洗浄用の水及び/又は水溶性成分と共に除去されることが含まれ、光学的立体造形用組成物の粘性が高い場合などには、例えば、ある程度の水圧をかけた水又は水性媒体の噴き掛け、及びブラッシング等の洗浄操作によって、光学的立体造形用組成物の一部が水又は水性媒体と共に塊として除去され、残りの光学的立体組成物が水又は水性媒体に分散又は溶解して除去されることも含まれる。よって、光学的立体造形に使用した造形装置、及び立体造形物に付着している未硬化の光学的立体造形用組成物を除去するための洗浄に水を使用することができ、アセトンやイソプロピルアルコール等の有機溶剤を使用する必要がない。このため、立体造形物の製造工程の作業安定性を高め、環境負荷を低減させることができる。さらに、洗浄廃水の処理の負担を軽減することができる。
【0053】
本発明に係る光学的立体造形用組成物により形成された硬化層は、優れた密着性で相互に密着する。よって、本発明に係る光学的立体造形用組成物は、光造形装置を用いて硬化させる際に、硬化層が反って紫外線レーザーの操作機械等に引っかかるおそれがなく、円滑に立体造形物を製造することができる。さらに、該光学的立体造形用組成物は、反り変形の小さい寸法精度の高い立体造形物の製造を可能とする。また、該光学的立体造形用組成物の硬化により形成される立体造形物は、高い寸法精度に加え、優れた機械的特性、例えば、引張り強度、伸度、曲げ強度、及び曲げ弾性率も兼ね備えている。
【0054】
本発明に係る光学的立体造形用組成物は、光学的立体造形に好適に使用することでき、幅広い分野に応用することができる。用途の具体例としては、特に限定されないが、精密部品、電気・電子部品、建築構造物、自動車用部品、金型、母型、ギブスなど医療用固定具、歯を固定するマウスピ−ス、歯科医療用プラスチック造形物、医療用プラスチック器具、自動車部品等を挙げることができる。
【0055】
本発明に係る光学的立体造形用組成物からの立体造形物の製造は、従来の光学的立体造形方法及び光造形装置を使用して行うことができる。立体造形物を製造する方法は、例えば、(a)3次元CADで入力された形状データを幾層もの薄い断面体にスライスして作成された等高線データに基づき、上述の光学的立体造形用組成物の表面に活性エネルギー線を選択的に照射して硬化層を形成する工程、(b)該硬化層上に光学的立体造形用組成物をさらに供給する工程、(c)工程(a)と同様に活性エネルギー線を選択的に照射して前述の硬化層と連続した硬化層を新たに形成する積層操作を行う工程、及び(d)この積層操作を繰り返し行う工程を含むことにより、目的とする立体造形物を提供することができる。単層または積層された硬化層の厚さは、例えば20〜200μmとすることができる。硬化層の厚さは、小さくするほど造形精度を高められるが、製造に必要な時間及びコストは増えるため、これらのバランスを考慮して適宜調整することができる。
【0056】
光学的立体造形用組成物からの立体造形物の製造に使用する光造形装置としては、特に限定されないが、例えば、ATOMm−4000(シーメット社製)、DigitalWaX(登録商標)020X(シーフォース社製)及びACCULAS(登録商標)BA−85S(ディーメック社製)等の三次元積層造形装置を挙げることができる。
【0057】
光学的立体造形用組成物に照射する活性エネルギー線は、例えば紫外線、可視光線、放射線、X線、又は電子線等であり、好ましくは紫外線又は可視光線である。紫外線又は可視光線の波長は、好ましくは300〜500nmである。紫外線又は可視光線の光源としては、半導体励起固体レーザー、カーボンアーク灯、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、白色LED等が挙げられるが、これらに限定されない。特に、造形精度及び硬化性等の観点からレーザーを使用することが好ましい。
【0058】
積層操作の終了後に、得られた立体造形物及び光造形装置に付着した未硬化の光学的立体造形用組成物を除去するため、立体造形物及び光造形装置を洗浄することが好ましい。洗浄には、水、又は水に界面活性剤、殺菌剤、防腐剤及び/又はアルコール等を混合したものを使用することができる。洗浄後には、必要に応じて紫外線又は可視光線等の活性エネルギー線の照射又は加熱によりポストキュアを行うことができる。
【0059】
本発明に係る立体造形物は、上述の光学的立体造形用組成物の硬化物を含む立体造形物であり、好ましくは、光学的立体造形用組成物を硬化して形成される硬化層を積層してなる立体造形物である。立体造形物は、例えば、上述の立体造形物の製造方法により製造される。本発明に係る立体造形物は、硬化層が相互に密着しているため、製造の過程において造形物の反り変形が小さく、寸法精度が向上している。さらに、立体造形物は、耐熱性、引張り強度、伸度、曲げ強度、曲げ弾性率等の機械的特性に優れている。
【実施例】
【0060】
[光学的立体造形用組成物の調製]
実施例1〜7及び参考例1〜5の光学的立体造形用組成物を、以下の手順で調製した。
表1に示す組成に従って全ての成分を、攪拌容器内に仕込み、20〜40℃の温度で2時間攪拌して液体組成物を得た。この液体組成物を、10ミクロンフィルターバッグ(PO−10−PO3A−503、Xinxiang D.King industry社製)でろ過して異物を除去し、一晩放置後に脱気して透明な液体組成物を得た。
調製した実施例1〜7及び参考例1〜5の光学的立体造形用組成物の各々を数ml取って台の上に配置し、水をかけると、いずれも容易に洗い流すことができた。
【0061】
【表1】
【0062】
デナコールEX−612: ソルビトールポリグリシジルエーテル(エポキシ当量166g/当量)(ナガセケムテック株製)
リカレジンBEO−60E: ビスフェノールAビス(トリエチレングリコールグリシジルエーテル)エーテル(n+m=6) (新日本理化社製)
NKオリゴUA−7100: ウレタンアクリレート (新中村化学工業社製)
サンエイドSI−180L: PF
6・系スルホニウム塩 (三新化学工業社製)
WPI−124: ビス[4−(アルキルC10〜C13)フェニル]ヨードニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート (和光純薬工業社製)
イルガキュアー907: 2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−オン (BASF社製)
エピクロンN−730A: ノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量175g/当量) (DIC社製)
JER 152: ノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量177g/当量) (三菱化学社製)
YDPN-638: ノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量180g/当量) (新日鉄住金化学社製)
アデカハードナーEH−317: ポリメルカプタン系硬化剤 (アデカ社製)
カレンズMTNR1: 1,3,5-トリス(3−メルカプトブチリルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン (昭和電工株製)
3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン: (日興ケムテック社製)
【0063】
[評価サンプル1の作製]
光学的立体造形用組成物の硬化時間を評価するために、以下のサンプルを作製した。
実施例1の光学的立体造形用組成物を手製のポリエチレン製長方形型(幅約10mm×長さ100mm、深さ5mm)に1mm液膜になるように流し込み、3kw高圧水銀灯(波長365nm、距離1m)で、5秒間、10秒間、15秒間、20秒間、25秒間、30秒間各々照射し、評価サンプルを得た。実施例2〜7及び参考例1〜5の光学的立体造形用組成物についても、同様にして評価サンプルを得た。
【0064】
[評価サンプル2の作製]
光学的立体造形物として評価するために、以下のサンプルを作製した。
実施例1の光学的立体造形用組成物を手製のポリエチレン製長方形型(幅約10mm×長さ100mm、深さ5mm)に1mm液膜になるように流し込み、3kw高圧水銀灯(波長365nm、距離1m)で20秒間照射し、これを合計4回繰返して厚さ約4mmの平面板(幅約10mm×長さ100mm)を作製した。さらに平面板を30分間再照射し、光学的立体造形物を得た。実施例2〜7及び参考例1〜5の光学的立体造形用組成物についても、同様にして各々光学的立体造形物を得た。
【0065】
[評価方法]
1)光学的立体造形用組成物の硬化時間の評価
評価サンプル1を用いて、照射時間の短いサンプルからその表面状態を観察し、表面のタックが無いサンプルの照射時間を硬化時間とした。なお、表面のタックは、評価サンプル1をオーブンに入れて35℃で30分間処理し、室温(25℃)まで冷却した後、その表面にポリエステルフィルムを手で押し当てた。ポリエステルフィルムが簡単に剥がれなければタック有り、剥がれればタック無しと、タックの有無を判断した。
【0066】
2)光学的立体造形物の層(側面)観察
評価サンプル2を用いて、平面板の層(側面)を日本電子製JSM-5600型走査電子顕微鏡(加速電圧7kv、倍率200倍)で測定した。評価の基準は、層間の隙間がはっきり見える場合は(「×」)、層間の隙間が小さい場合は(「△」)、層間の隙間が無くてスジ状が見えるものは(「○」)、層が確認できないほど一体化して見えるものは(「◎」)とした。
【0067】
3)光学的立体造形物の反り変形観察
評価サンプル2を用いて、平面板を平台に置いて、その端部が平台から浮いた距離を測定する。判定の基準は、距離2mm以上の場合は(「×」)、距離2mm以下で浮いている場合は(「△」)、距離0mmで浮いていない場合は(「○」)とした。
【0068】
4)引張試験
評価サンプル2を用いて、平面板の引張試験を、ISO527−1に準拠して、以下の測定条件で引張り強度及び伸度を測定した。伸度は、破断時の最大の伸び率として測定した。
測定装置:インストロン社製3366型万能試験機
引張速度(クロスヘッド速度):5mm/分
測定環境:温度25℃、湿度45%RH
標点間距離:80mm
【0069】
5)3点曲げ試験
評価サンプル2を用いて、平面板の3点曲げ試験を、ISO527−1に準拠して、以下の測定条件で行い、曲げ強度及び曲げ弾性率を測定した。
測定装置:インストロン社製3366型万能試験機
試験条件:3点曲げ試験冶具 圧子半径5mm、
支点間距離64mm、
負荷速度(クロスヘッド速度)2mm/分)
測定環境:温度25℃、湿度45%RH
【0070】
6)耐熱変形性試験(荷重たわみ温度)
評価サンプル2と同様の手法で幅80mm×長さ10mm、厚さ4mmの平板を作製し(評価サンプル3)、この平板の荷重たわみ温度試験を、ISO-75−1に準拠して、以下の規定の曲げ応力を評価サンプルに発生させた状態で、室温(25℃)から300℃(油槽を使用)まで、試験温度を一定速度で昇温し、標準たわみに達した時の温度(荷重たわみ温度)を測定した。
測定装置 : No.148−HD−PC ヒートデストーションテスター
昇温速度 : 120±10℃/hr
曲げ応力 : 1.80Mpa
【0071】
【表2】
【0072】
上述した1)〜6)の評価の結果を表2に示す。実施例の光学的立体造形用組成物は、10〜15秒の硬化時間であり、高感度であり硬化速度が速い。これは、硬化密度が高いことを示している。また、実施例の光学的立体造形用組成物の硬化層を積層して得た立体造形物は、荷重たわみ温度が115〜119℃近傍であり、耐熱温度が高いことを示している。さらに、実施例の光学的立体造形用組成物の硬化層を積層して得た立体造形物は、引張強度、伸度、曲げ強度、及び曲げ弾性率等の機械的特性についても優れていた。よって、実施例1〜7による立体造形物は、耐熱性に優れ、曲げなどの外部応力が加えられても破損しにくい耐久性の高い特性を有することが確認された。
本願の出願当初の特許請求の範囲は、以下の通りである。
[請求項1](A)グリシジルエーテル構造を有するソルビトールのエーテル誘導体である水溶性のカチオン重合性化合物と、(B)メタクリル基及び/又はアクリル基を有する水溶性のラジカル重合性化合物と、(C)スルホニウム化合物又はビス(アルキルフェニル)ヨードニウム化合物であるアンチモン非含有カチオン重合開始剤と、(D)ラジカル重合開始剤と、(E)カチオン重合性化合物であるノボラック型エポキシ樹脂と、(F)増感剤と
を含む、水溶性の光学的立体造形用組成物であって、前記(A)の水溶性のカチオン重合性化合物を10〜70質量%、前記(B)の水溶性のラジカル重合性化合物を1〜30質量%、前記(C)のアンチモン非含有カチオン重合開始剤を0.1〜20質量%、前記(D)のラジカル重合開始剤を0.1〜20質量%、前記(E)のノボラック型エポキシ樹脂を1〜30質量%、及び、前記(F)の増感剤を0.05〜5.0質量%含有する、光学的立体造形用組成物。
[請求項2]前記ソルビトールのエーテル誘導体のエポキシ当量が、155〜200g/当量の範囲内にある、請求項1に記載の光学的立体造形用組成物。
[請求項3]前記グリシジルエーテル構造が、前記ソルビトールの6個の水酸基のうちの少なくとも1個をグリシジル基で置換したエーテル構造である、請求項1又は2に記載の光学的立体造形用組成物。
[請求項4]前記グリジルエーテル構造が、前記ソルビトールの6個の水酸基のうちの少なくとも1個をグリシジルポリオキシエチレン基で置換したエーテル構造である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学的立体造形用組成物。
[請求項5]前記グリシジルエーテル構造を有するソルビトールのエーテル誘導体ではない、エポキシ基、ビニルエーテル基又はオキセタン基を有するカチオン重合性化合物を1〜20質量%さらに含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の光学的立体造形用組成物。
[請求項6]前記ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ当量が、170〜190g/当量の範囲である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学的立体造形用組成物。
[請求項7]前記増感剤が多官能チオール化合物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学的立体造形用組成物。
[請求項8]請求項1〜7のいずれかに記載の光学的立体造形用組成物に活性エネルギー線を照射して硬化させる工程を少なくとも含む、立体造形物を製造する方法。
[請求項9]請求項1〜7のいずれかに記載の光学的立体造形用組成物を硬化した物を含む立体造形物。
【課題】水溶性で環境負荷が少なく、より短い時間で光硬化する、機械的特性、靭性及び耐熱性に優れた水溶性の光学的立体造形用組成物及びこれを用いた立体造形物の製造方法を提供する。
【解決手段】(A)グリシジルエーテル構造を有するソルビトールのエーテル誘導体である水溶性のカチオン重合性化合物と、(B)メタクリル基及び/又はアクリル基を有する水溶性のラジカル重合性化合物と、(C)スルホニウム化合物又はビス(アルキルフェニル)ヨードニウム化合物であるアンチモン非含有カチオン重合開始剤と、(D)ラジカル重合開始剤と、(E)カチオン重合性化合物であるノボラック型エポキシ樹脂と、(F)増感剤とを含む、水溶性の光学的立体造形用組成物及びこれを用いた立体造形物の製造方法を提供する。