特許第6042527号(P6042527)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハロザイム インコーポレイテッドの特許一覧

特許6042527抗ヒアルロナン剤と腫瘍標的タキサンの組み合わせ治療
<>
  • 特許6042527-抗ヒアルロナン剤と腫瘍標的タキサンの組み合わせ治療 図000017
  • 特許6042527-抗ヒアルロナン剤と腫瘍標的タキサンの組み合わせ治療 図000018
  • 特許6042527-抗ヒアルロナン剤と腫瘍標的タキサンの組み合わせ治療 図000019
  • 特許6042527-抗ヒアルロナン剤と腫瘍標的タキサンの組み合わせ治療 図000020
  • 特許6042527-抗ヒアルロナン剤と腫瘍標的タキサンの組み合わせ治療 図000021
  • 特許6042527-抗ヒアルロナン剤と腫瘍標的タキサンの組み合わせ治療 図000022
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042527
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】抗ヒアルロナン剤と腫瘍標的タキサンの組み合わせ治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/46 20060101AFI20161206BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 47/48 20060101ALI20161206BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20161206BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20161206BHJP
   C12N 9/26 20060101ALN20161206BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20161206BHJP
【FI】
   A61K37/54
   A61K31/337
   A61K47/48
   A61P43/00 121
   A61P35/00
   A61P43/00 111
   A61K47/22
   A61K47/02
   A61K9/127
   A61K39/395 L
   A61K31/7068
   A61K31/573
   A61K39/395 T
   A61K37/02
   !C12N9/26ZNA
   !C12N15/00 A
【請求項の数】27
【全頁数】132
(21)【出願番号】特願2015-504602(P2015-504602)
(86)(22)【出願日】2013年3月15日
(65)【公表番号】特表2015-514109(P2015-514109A)
(43)【公表日】2015年5月18日
(86)【国際出願番号】US2013032684
(87)【国際公開番号】WO2013151774
(87)【国際公開日】20131010
【審査請求日】2015年9月29日
(31)【優先権主張番号】61/714,719
(32)【優先日】2012年10月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/686,429
(32)【優先日】2012年4月4日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509136415
【氏名又は名称】ハロザイム インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・シー・マネバル
(72)【発明者】
【氏名】エイチ・マイケル・シェパード
(72)【発明者】
【氏名】カーティス・ビー・トンプソン
【審査官】 砂原 一公
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−519361(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/123393(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/153010(WO,A1)
【文献】 DESAI, Neil P. et al,Improved effectiveness of nanoparticle albumin-bound (nab) paclitaxel versus polysorbate-based docetaxel in multiple xenografts as a function of HER2 and SPARC status,Anticancer Drugs,2008年10月,Vol.19, No.9,p.899-909
【文献】 GRADISHAR, William J,Albumin-bound paclitaxel: a next-generation taxane,Expert Opinion on Pharmacotherapy,2006年,Vol.7, No.8,p.1041-1053
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の処置に使用するための組成物の組み合わせ剤であって、
ポリマーに結合したヒアルロニダーゼを含む第一組成物;および
腫瘍標的タキサンを含む第二組成物を含み;
該腫瘍標的タキサンはタキサンを腫瘍に標的化させる部分に直接的または間接的に結合したタキサンを含み;
該部分がペプチドまたはタンパク質であり;
該部分が膵臓腫瘍表面上の分子に結合し、それにより、該腫瘍標的タキサンが該部分に結合していないタキサンと比較して腫瘍への特異性の増加を示し;そして
癌が、膵臓腫瘍を含む
組み合わせ剤。
【請求項2】
癌の処置のためのポリマーと結合したヒアルロニダーゼを含む組成物であって、
対象に、ヒアルロニダーゼを腫瘍標的タキサンと同時に、逐次的にまたは間欠的に投与するために腫瘍標的タキサンと使用し;
該腫瘍標的タキサンはタキサンを腫瘍に標的化させる部分に直接的または間接的に結合したタキサンを含み;
該部分がペプチドまたはタンパク質であり;
該部分が膵臓腫瘍表面上の分子に結合し、それにより、該腫瘍標的タキサンが該部分に結合していないタキサンと比較して腫瘍への特異性の増加を示し;そして
癌が膵臓腫瘍を含む
組成物。
【請求項3】
腫瘍標的タキサンがパクリタキセルまたはドセタキセルを含む、請求項1または2に記載の組み合わせ剤または組成物。
【請求項4】
組成物が直接投与用に製剤され;
ヒアルロニダーゼの濃度が腫瘍関連ヒアルロナンを分解するのに十分であり;そして
腫瘍標的タキサンの濃度が腫瘍内送達を達成するのに十分である、
請求項1〜のいずれかに記載の組み合わせ剤または組成物。
【請求項5】
さらに化学療法剤であるヌクレオシドアナログまたはそのプロドラッグを含む組成物を含む、請求項1〜のいずれかに記載の組み合わせ剤または組成物。
【請求項6】
組成物が直接投与用に製剤され;そして
ヌクレオシドアナログの濃度が腫瘍内送達を達成するのに十分である、
請求項に記載の組み合わせ剤または組成物。
【請求項7】
ヌクレオシドアナログまたはプロドラッグがヒアルロニダーゼおよび腫瘍標的タキサンと別々に提供され;
ヒアルロニダーゼと共製剤されまたは腫瘍標的タキサンと共製剤され;または
ヒアルロニダーゼおよび腫瘍標的タキサンと共製剤される、
請求項または請求項に記載の組み合わせ剤または組成物。
【請求項8】
組成物が単回または複数回投与のために製剤される、請求項1〜のいずれかに記載の組み合わせ剤または組成物。
【請求項9】
ヒアルロニダーゼ組成物が、約または正確に50単位ヒアルロニダーゼ活性(U)/ml〜15,000U/mL、10U/mL〜500U/mL、1000U/mL〜15,000U/mL、100U/mL〜5,000U/mL、500U/mL〜5,000U/mLまたは100U/mL〜400U/mLを含む、請求項1〜のいずれかに記載の組み合わせ剤または組成物。
【請求項10】
ヒアルロニダーゼが可溶性PH20またはC末端グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)結合部位またはGPI結合部位の一部を欠くヒトPH20の切断型である、請求項1〜のいずれかに記載の組み合わせ剤または組成物。
【請求項11】
ヒアルロニダーゼが切断型PH20であり;
ヒアルロニダーゼが中性活性かつ可溶性であり;そして
切断型PH20が配列番号1のアミノ酸36〜464を含むアミノ酸の配列を含むかまたは配列番号1の少なくともアミノ酸36〜464を含むアミノ酸の配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有し、ヒアルロニダーゼ活性を保持するアミノ酸の配列を含む、請求項1〜10のいずれかに記載の組み合わせ剤または組成物。
【請求項12】
ヒアルロニダーゼが、配列番号4〜9、47、48、150〜170、183〜189のいずれかに示すアミノ酸の配列または配列番号4〜9、47、48、150〜170、183〜189に示すアミノ酸の配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を示すアミノ酸の配列を含み、ヒアルロニダーゼ活性を保持する、PH20である、請求項1〜11のいずれかに記載の組み合わせ剤または組成物。
【請求項13】
腫瘍ターゲティング部分が腫瘍表面上の分子に特異的に結合するモノクローナル抗体である、請求項1〜12のいずれかに記載の組み合わせ剤または組成物。
【請求項14】
腫瘍ターゲティング部分がセツキシマブまたはトラスツマブから選択されるモノクローナル抗体である、請求項13に記載の組み合わせ剤または組成物。
【請求項15】
腫瘍ターゲティング部分がアルブミンである、請求項1〜13のいずれかに記載の組み合わせ剤または組成物。
【請求項16】
腫瘍標的タキサンがアルブミン結合パクリタキセルまたはアルブミン結合ドセタキセルである、請求項15に記載の組み合わせ剤または組成物。
【請求項17】
腫瘍標的タキサン組成物が0.01mg/mL〜100mg/mL、例えば1mg/mL〜50mg/ml、2.5mg/mL〜25mg/mL、5mg/mL〜15mg/mLまたは10mg/mL〜100mg/mLまたは約0.01mg/mL〜100mg/mL、例えば1mg/mL〜50mg/ml、2.5mg/mL〜25mg/mL、5mg/mL〜15mg/mLまたは10mg/mL〜100mg/mLの腫瘍標的タキサンを含む、請求項1〜16のいずれかに記載の組み合わせ剤または組成物。
【請求項18】
ヌクレオシドアナログがフルオロピリミジン5−フルオロウラシル、5−フルオロ−2’−デオキシシチジン、シタラビン、ゲムシタビン、トロキサシタビン、デシタビン、アザシチジン、シュードイソシチジン、ゼブラリン、アンシタビン、ファザラビン、6−アザシチジン、カペシタビン、N−オクタデシル−シタラビン、エライジン酸シタラビン、フルダラビン、クラドリビン、クロファラビン、ネララビン、フォロデシンおよびペントスタチンまたはその誘導体から選択される、請求項17のいずれかに記載の組み合わせ剤または組成物。
【請求項19】
ヌクレオシドアナログがヌクレオシドデアミナーゼの基質であり、該ヌクレオシドデアミナーゼがアデノシンデアミナーゼまたはシチジンデアミナーゼである、請求項18のいずれかに記載の組み合わせ剤または組成物。
【請求項20】
ヌクレオシドアナログ組成物が1mg/ml〜500mg/ml、5mg/mL〜100mg/ml、10mg/mL〜50mg/mL、25mg/mL〜200mg/mLまたは20mg/mL〜100mg/mLまたは約1mg/ml〜500mg/ml、5mg/mL〜100mg/ml、10mg/mL〜50mg/mL、25mg/mL〜200mg/mLまたは20mg/mL〜100mg/mLのヌクレオシドアナログ濃度を含む、請求項19のいずれかに記載の組み合わせ剤または組成物。
【請求項21】
さらにグルココルチコステロイドを含む組成物を含む、請求項1〜20のいずれかに記載の組み合わせ剤または組成物。
【請求項22】
ポリマーがポリアルキレングリコール、デキストラン、プルランまたはセルロースである、請求項1〜21のいずれかに記載の組み合わせ剤または組成物。
【請求項23】
ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコール類(PEG)またはメトキシポリエチレングリコール類(mPEG)から選択される、請求項22に記載の組み合わせ剤または組成物。
【請求項24】
癌の処置のための医薬の製造のための請求項1〜22のいずれかに記載の組み合わせ剤または組成物の使用。
【請求項25】
キットとして包装され、所望により使用のための指示を含んでよい、請求項1〜23のいずれかに記載の組み合わせ剤または組成物。
【請求項26】
ヒアルロニダーゼおよび腫瘍標的タキサンが一組成物での投与のために共製剤される、請求項1に記載の組み合わせ剤。
【請求項27】
癌の処置用医薬の製造における、腫瘍標的タキサンと組み合わせたヒアルロニダーゼの使用であり
アルロニダーゼがポリマーと結合しており;
ヒアルロニダーゼが腫瘍標的タキサンとの処置のために製剤されており;
腫瘍標的タキサンはタキサンを腫瘍に標的化させる部分に直接的または間接的に結合したタキサンを含み;
該部分がペプチドまたはタンパク質であり;
該部分が腫瘍表面上の分子に結合し、それにより、該腫瘍標的タキサンが該部分に結合していないタキサンと比較して腫瘍への特異性の増加を示し;そして
癌が膵臓腫瘍を含む
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
優先権の利益を、2012年4月4日出願の“ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素と治療剤の組み合わせ治療”なる表題の米国仮出願番号61/686,429および2012年10月16日出願の“抗ヒアルロナン剤と治療剤の組み合わせ治療”なる表題の米国仮出願番号61/714,719に基づいて主張する。
【0002】
本出願は、同日付出願の米国仮出願番号61/686,429および米国仮出願番号61/714,719に基づく優先権を主張する“抗ヒアルロナン剤と治療剤の組み合わせ治療”なる表題の米国特許出願番号(Attorney Docket No. 33320-03108.US02)と関連する。
【0003】
本出願は、2009年4月14日に出願し、US20100003238として公開され、米国仮出願番号61/124,278、61/130,357および61/195,624に基づく優先権を主張する“修飾ヒアルロニダーゼおよびヒアルロナン関連疾患および状態の処置における使用”なる表題の米国特許出願番号12/386,222と関連する。本出願はまた2009年4月14日に出願し、WO2009/128917として公開され、また米国仮出願番号61/124,278、61/130,357および61/195,624に基づく優先権を主張する国際PCT出願番号PCT/US2009/002352にも関連する。
【0004】
本出願は、2011年7月15日に出願し、US20120020951として公開され、米国仮出願番号61/399,993および61/455,260に基づく優先権を主張する“抗ヒアルロナン剤の投与に付随する有害副作用および該副作用を改善または予防する方法”なる表題の米国特許出願番号13/135,817に関する。本出願はまた、2011年7月15日に出願し、WO2012/012300として公開され、また米国仮出願番号61/399,993および61/455,260に基づく優先権を主張する国際PCT出願番号PCT/US2011/044281にも関連する。
【0005】
上記出願の対象の各々を、その全体を引用により本明細書に包含させる。
【0006】
電子的に提出された配列を引用することによる取り込み
本出願と共に電子版の配列表が提出され、その内容をその全体を引用により本明細書に包含させる。電子ファイルは2013年3月15日に作成し、891キロバイトサイズであり、3108SEQPC1.txtなる表題である。
【0007】
発明の分野
ここで提供されるのは、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤および腫瘍標的タキサンおよび所望によりヌクレオシドアナログのようなさらなる化学療法剤を含む組み合わせ治療である。本組み合わせ治療は癌および特に固形腫瘍癌(solid tumor cancers)を処置する方法において使用できる。
【背景技術】
【0008】
背景
ヒアルロナン分解酵素、例えば、PH20のような抗ヒアルロナン剤は、癌、特にヒアルロナン関連癌または腫瘍を含むヒアルロナン関連疾患または状態の処置方法で使用される。ヒアルロナン(ヒアルロン酸;HA)は、主に哺乳動物の結合組織、皮膚、軟骨および滑液に存在するグリコサミノグリカンである。結合組織において、ヒアルロナンと関連する水和の水が、組織間に水和されたマトリクスを形成する。HAは、特に軟結合組織における多くの細胞の細胞外マトリクスに見られる。固形腫瘍を含むある種の疾患は、ヒアルロナンの発現および/または産生と関連する。抗ヒアルロナン剤は、HA合成または分解を修飾し、それにより組織または細胞におけるHAレベルを変更する薬剤である。特に、ヒアルロニダーゼは、ヒアルロナンを分解する酵素である。HA分解の触媒により、ヒアルロニダーゼは、癌および腫瘍を含む、HAまたは他のグリコサミノグリカン類の蓄積と関連する疾患または障害の処置に使用できる。癌、特に固形癌の処置のためには、改善されたまたは代替的治療処置の必要性がある。
【発明の概要】
【0009】
要約
ここに提供されるのは、抗ヒアルロナン剤を含む組成物と腫瘍標的タキサンを含む組成物を含む組み合わせ剤である。またここに提供されるのは、抗ヒアルロナン剤を含む組成物、腫瘍標的タキサンを含む組成物およびヌクレオシドアナログを含む組成物を含む組み合わせ剤である。ここに提供される組み合わせ剤は、いずれもさらにコルチコステロイドを含む組成物を含み得る。ここに提供される癌の処置方法では、抗ヒアルロナン剤を含む組成物および腫瘍標的タキサン製剤を含む組成物が投与される。いくつかの例において、本方法はさらにヌクレオシドアナログを含む組成物の投与を含む。いくつかの例において、本方法はさらにコルチコステロイドの投与を含む。さらに他の例において、本方法はさらに癌処置剤の投与を含む。このような組み合わせ剤および方法において、薬剤はここに記載する治療有効量で提供される。
【0010】
またここに提供されるのは、本組み合わせ治療の医学的使用である。例えば、ここに提供されるのは、抗ヒアルロナン剤および腫瘍標的タキサンが個別にまたは一括して製剤される、癌の処置のための抗ヒアルロナン剤および腫瘍標的タキサンの使用である。またここに提供されるのは、癌の処置のための抗ヒアルロナン剤の使用であり、ここで、該処置は、対象に腫瘍標的タキサンを同時に、個別にまたは逐次的に投与することを含む。またここに提供されるのは、癌の処置に使用するための抗ヒアルロナン剤を含む組成物であって、ここで、該処置は、対象に腫瘍標的タキサンを同時に、個別にまたは逐次的に投与することを含む。ここでの医学的使用の例において、本処置はまたヌクレオシドアナログを抗ヒアルロナン剤または腫瘍標的タキサンと同時に、個別にまたは逐次的に投与することを含み得る。他のまたは付加的例において、本処置は、コルチコステロイドを抗ヒアルロナン剤と同時に、個別にまたは逐次的に投与することを含み得る。
【0011】
ここで提供される組み合わせ剤、組成物、方法および使用において、抗ヒアルロナン剤はヒアルロナン分解酵素またはヒアルロナン合成を阻害する薬剤である。いくつかの例において、抗ヒアルロナン剤はヒアルロニダーゼであるヒアルロナン分解酵素である。他の例において、抗ヒアルロナン剤は、ポリマーと結合するヒアルロナン分解酵素である。いくつかの例において、抗ヒアルロナン剤は、HAシンターゼに対するセンスまたはアンチセンス核酸分子から選択され、または小分子薬物であるヒアルロナン合成を阻害する薬剤である。いくつかの例において、抗ヒアルロナン剤は、4−メチルウンベリフェロン(MU)またはその誘導体またはレフルノミドまたはその誘導体から選択される小分子薬物である。他の例において、抗ヒアルロナン剤は、6,7−ジヒドロキシ−4−メチルクマリンまたは5,7−ジヒドロキシ−4−メチルクマリンから選択される4−メチルウンベリフェロン(MU)の誘導体である小分子薬物である。
【0012】
ここに提供されるのは、ポリマーと結合するヒアルロナン分解酵素を含む組成物および腫瘍標的タキサンを含む組成物を含む組み合わせ剤である。またここに提供されるのは、ポリマーと結合するヒアルロナン分解酵素を含む組成物、腫瘍標的タキサンを含む組成物およびヌクレオシドアナログを含む組成物を含む組み合わせ剤である。ここに提供される組み合わせ剤のいずれもコルチコステロイドを含む組成物をさらに含み得る。ここに提供されるのは、ポリマーと結合するヒアルロナン分解酵素を含む組成物および腫瘍標的タキサン製剤を含む組成物を投与する癌の処置方法である。いくつかの例において、本方法はさらにヌクレオシドアナログを含む組成物の投与を含む。いくつかの例において、本方法はさらにコルチコステロイドの投与を含む。さらに他の例において、本方法はさらに癌処置剤の投与を含む。
【0013】
ここに提供されるのは、ヒアルロナン分解酵素を含み、該ヒアルロナン分解酵素がポリマーと結合している組成物;および腫瘍標的タキサンを含む組成物を含む、組み合わせ剤、方法および使用である。組み合わせ剤のいくつかの例において、組成物を直接投与のために製剤し、ヒアルロナン分解酵素の濃度は腫瘍関連ヒアルロナンを分解するのに十分であり、腫瘍標的タキサンの濃度は腫瘍内送達を達成するのに十分である。いくつかの例において、腫瘍標的タキサン製剤の濃度は、腫瘍内タキサン製剤の非存在下と比較して、腫瘍内ヌクレオシドデアミナーゼタンパク質レベルまたはタンパク質活性を低下させるのに十分である。組み合わせ剤のいくつかの例において、ヒアルロナン分解酵素および腫瘍標的タキサンを共製剤する。組み合わせ剤の他の例において、ヒアルロナン分解酵素および腫瘍標的タキサンを個別に提供する。
【0014】
例のいずれにおいても、提供される組み合わせ剤はさらにヌクレオシドアナログを含む組成物を含む。具体例において、組成物を直接投与用に製剤し、ヌクレオシドアナログの濃度は腫瘍内送達を達成するのに十分である。組み合わせ剤のいくつかの例において、ヌクレオシドアナログを、ヒアルロナン分解酵素および腫瘍標的タキサンと別に提供する。組み合わせ剤の他の例において、ヌクレオシドアナログをヒアルロナン分解酵素と共製剤し、または腫瘍標的タキサンと共製剤する。さらに組み合わせ剤の他の例において、ヌクレオシドアナログをヒアルロナン分解酵素および腫瘍標的タキサンと共製剤する。
【0015】
ここに提供する組み合わせ剤、方法および使用の例のいずれにおいても、ヒアルロナン分解酵素を含む組成物、腫瘍標的タキサンを含む組成物および/またはヌクレオシドアナログを含む組成物を複数投与用に製剤する。ここに提供する組み合わせ剤の他の例において、ヒアルロナン分解酵素を含む組成物、腫瘍標的タキサンを含む組成物および/またはヌクレオシドアナログを含む組成物を一回投与用に製剤する。
【0016】
ここに提供する組み合わせ剤、方法および使用の例のいずれにおいても、ヒアルロナン分解酵素組成物は、0.5μg〜50mg、100μg〜1mg、1mg〜20mg、100μg〜5mg、0.5μg〜1450μg、1μg〜1000μg、5μg〜1250μg、10μg〜750μg、50μg〜500μg、0.5μg〜500μg、500μg〜1450μg(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)のポリマーと結合したヒアルロナン分解酵素を含むか、これを含むように製剤する。ここに提供する組み合わせ剤の他の例において、ポリマーと結合したヒアルロナン分解酵素は、少なくとも20,000U/mg、25,000U/mg、30,000U/mg、31,000U/mg、32,000U/mg、33,000U/mg、34,000U/mg、35,000U/mg、36,000U/mg、37,000U/mg、38、000U/mg、39,000U/mg、40,000U/mg、45,000U/mg、50,000U/mg、55,000U/mg、60,000U/mg(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)またはそれ以上の比活性を有する。ここに提供する組み合わせ剤のさらなる例において、ヒアルロナン分解酵素組成物は、150単位(U)〜60,000U、300U〜30,000U、500U〜25,000U、500U〜10,000U、150U〜15,000U、150U〜5000U、500U〜1000U、5000U〜45,000U、10,000U〜50,000Uまたは20,000U〜60,000U(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)のポリマー結合ヒアルロナン分解酵素を含む。ヒアルロナン分解酵素を含む組成物の体積は0.5mL〜100mL、0.5mL〜50mL、0.5mL〜10mL、1mL〜40mL、1mL〜20mL、1mL〜10mLまたは3mL〜10mL(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)であり得る。ここに提供する組み合わせ剤のいくつかの例において、ヒアルロナン分解を含む組成物はヒスチジンおよび/またはNaClを含む。他の例において、ヒアルロナン分解酵素を含む組成物は6.0〜7.4(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)のpHを有する。
【0017】
ここに提供する組み合わせ剤、方法および使用の例のいずれにおいても、ヒアルロナン分解酵素はヒアルロニダーゼである。例えば、ヒアルロニダーゼはPH20またはC末端グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)結合部位またはGPI結合部位の一部を欠くその切断型であり得る。いくつかの例において、ヒアルロニダーゼはヒトまたは非ヒトPH20であるPH20である。具体例において、ヒアルロナン分解酵素は切断型PH20であり、切断型PH20は配列番号1のアミノ酸36〜464を含むアミノ酸の配列を含むかまたは配列番号1の少なくともアミノ酸36〜464を含むアミノ酸の配列と少なくとも85%配列同一性を有するアミノ酸の配列を含み、ヒアルロニダーゼ活性を保持する。いくつかの例において、ヒアルロニダーゼは、配列番号1の少なくともアミノ酸36〜464を含むアミノ酸の配列と少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有するアミノ酸の配列を含み、ヒアルロニダーゼ活性を保持するPH20である。
【0018】
ここに提供する組み合わせ剤、方法および使用の例のいずれにおいても、PH20は、配列番号1に示すアミノ酸の配列の465位、466位、467位、468位、469位、470位、471位、472位、473位、474位、475位、476位、477位、478位、479位、480位、481位、482位、483位、484位、485位、486位、487位、488位、489位、490位、491位、492位、493位、494位、495位、496位、497位、498位、499位または500位のアミノ酸の後にC末端短縮化を含むアミノ酸の配列であるかまたは配列番号1に示すアミノ酸の配列の465位、466位、467位、468位、469位、470位、471位、472位、473位、474位、475位、476位、477位、478位、479位、480位、481位、482位、483位、484位、485位、486位、487位、488位、489位、490位、491位、492位、493位、494位、495位、496位、497位、498位、499位または500位のアミノ酸の後にC末端短縮化を含むアミノ酸の配列と少なくとも85%配列同一性を示し、ヒアルロニダーゼ活性を保持するその変異体である。例えば、PH20は、配列番号1に示すアミノ酸の配列の465位、466位、467位、468位、469位、470位、471位、472位、473位、474位、475位、476位、477位、478位、479位、480位、481位、482位、483位、484位、485位、486位、487位、488位、489位、490位、491位、492位、493位、494位、495位、496位、497位、498位、499位または500位のアミノ酸の後にC末端短縮化を含むアミノ酸の配列と少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有し、ヒアルロニダーゼ活性を保持するアミノ酸の配列である。
【0019】
ここに提供する組み合わせ剤、方法および使用の例のいずれにおいても、腫瘍標的タキサンはパクリタキセルまたはドセタキセルまたはそのアナログ、誘導体またはプロドラッグである。腫瘍標的タキサンは腫瘍ターゲティング部分と直接的または間接的に結合できる。いくつかの例において、腫瘍標的タキサンはミセル、ナノ粒子、マイクロスフェア、リポソームまたはヒドロゲルから選択される送達媒体として製剤される。送達媒体は腫瘍ターゲティング部分と直接的または間接的に結合できる。いくつかの例において、腫瘍ターゲティング部分は高分子、タンパク質、ペプチド、モノクローナル抗体または脂肪酸脂質から選択される。他の例において、腫瘍ターゲティング部分はセツキシマブまたはトラスツマブから選択されるモノクローナル抗体である。さらに他の例において、腫瘍ターゲティング部分はアルブミンである。いくつかの例において、腫瘍標的タキサンはアルブミン結合パクリタキセルまたはアルブミン結合ドセタキセルである。
【0020】
ここに提供する組み合わせ剤、方法および使用の例のいずれにおいても、腫瘍標的タキサン組成物は、10mg〜1000mg、例えば20mg〜500mg、10mg〜250mg、75mg〜400mg、100mg〜200mg、150mg〜400mg、200mg〜800mg、50mg〜200mgまたは50mg〜150mg(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)の腫瘍標的タキサンを含むまたはこれを含むように製剤する。他の例において、腫瘍標的タキサンを含む組成物の体積は0.5mL〜100mL、1mL〜500mL、0.5mL〜50mL、0.5mL〜10mL、1mL〜40mL、1mL〜20mL、1mL〜10mLまたは3mL〜10mL(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)である。
【0021】
ここに提供する組み合わせ剤、方法および使用の例のいずれにおいても、ヌクレオシドアナログはプリンまたはピリミジンアナログまたはその誘導体である。いくつかの例において、ヌクレオシドアナログはフルオロピリミジン5−フルオロウラシル、5−フルオロ−2’−デオキシシチジン、シタラビン、ゲムシタビン、トロキサシタビン、デシタビン、アザシチジン、シュードイソシチジン、ゼブラリン、アンシタビン、ファザラビン、6−アザシチジン、カペシタビン、N−オクタデシル−シタラビン、エライジン酸シタラビン、フルダラビン、クラドリビン、クロファラビン、ネララビン、フォロデシンおよびペントスタチンまたはその誘導体から選択される。一例において、ヌクレオシドアナログは、アデノシンデアミナーゼまたはシチジンデアミナーゼであるヌクレオシドデアミナーゼのための基質である。いくつかの例において、ヌクレオシドアナログはフルダラビン、シタラビン、ゲムシタビン、デシタビンおよびアザシチジンまたはその誘導体から選択される。
【0022】
ここに提供する組み合わせ剤、方法および使用の例のいずれにおいても、ヌクレオシドアナログ組成物は、100mg〜5000mg、500mg〜5000mg、500mg〜2500mg、1000mg〜2500mg、1500mg〜2500mgまたは2000mg〜5000mgのヌクレオシドアナログを含むかまたはこれを含むように製剤する。他の例において、ヌクレオシドアナログを含む組成物の体積は0.5mL〜1000mL、例えば0.5mL〜100mL、0.5mL〜10mL、1mL〜500mL、1mL〜10mL(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)である。
【0023】
ここに提供する組み合わせ剤、方法および使用のいずれも、さらにコルチコステロイドを含む組成物を含み得る。いくつかの例において、コルチコステロイドは、コルチゾン類、デキサメサゾン類、ヒドロコルチゾン類、メチルプレドニゾロン類、プレドニゾロン類およびプレドニゾン類から選択されるグルココルチコイドである。いくつかの例において、コルチコステロイド組成物は0.1〜20mg、0.1〜15mg、0.1〜10mg、0.1〜5mg、0.2〜20mg、0.2〜15mg、0.2〜10mg、0.2〜5mg、0.4〜20mg、0.4〜15mg、0.4〜10mg、0.4〜5mg、0.4〜4mg、1〜20mg、1〜15mgまたは1〜10mg(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)のコルチコステロイドを含むまたはこれを含むように製剤する。
【0024】
ここに提供する組み合わせ剤、方法および使用の例のいずれにおいても、組成物を、経口、静脈内(IV)、皮下、筋肉内、腫瘍内、皮内、局所的、経皮、直腸、髄腔内または上皮下への投与用に製剤する。例えば、組成物を静脈内投与または皮下投与用に製剤する。
【0025】
ここに提供する組み合わせ剤、方法および使用の例のいずれにおいても、ポリマーはポリアルキレングリコール、デキストラン、プルランまたはセルロースである。一例において、ポリマーはポリエチレングリコール類(PEG)またはメトキシポリエチレングリコール類(mPEG)から選択されるポリアルキレングリコールである。具体例において、ポリマーはPEGであり、PEGは分枝鎖または直鎖PEGである。いくつかの例において、ポリマーはメトキシ−ポリ(エチレングリコール)−スクシンイミジルブタノエート(mPEG−SBA)(5kDa);メトキシ−ポリ(エチレングリコール)−スクシンイミジルブタノエート(mPEG−SBA)(20kDa);メトキシ−ポリ(エチレングリコール)−スクシンイミジルブタノエート(mPEG−SBA)(30kDa);メトキシ−ポリ(エチレングリコール)−スクシンイミジルα−メチルブタノエート(mPEG−SMB)(20kDa);メトキシ−ポリ(エチレングリコール)−スクシンイミジルα−メチルブタノエート(mPEG−SMB)(30kDa);メトキシ−ポリ(エチレングリコール)−ブチルアルデヒド(mPEG−ブチルアルデヒド)(30kDa)、メトキシ−ポリ(エチレングリコール)−スクシンイミジルプロピオネート(mPEG−SPA)(20kDa);メトキシ−ポリ(エチレングリコール)−スクシンイミジルプロピオネート(mPEG−SPA)(30kDa);(メトキシ−ポリ(エチレングリコール))−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(mPEG−NHS)(10kDa分枝);(メトキシ−ポリ(エチレングリコール))−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(mPEG−NHS)(20kDa分枝);(メトキシ−ポリ(エチレングリコール))−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(mPEG−NHS)(40kDa分枝);(メトキシ−ポリ(エチレングリコール))−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(mPEG−NHS)(60kDa分枝);ビオチン−ポリ(エチレングリコール)−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(ビオチン−PEG−NHS)(5kDaビオチニル化);ポリ(エチレングリコール)−p−ニトロフェニルカーボネート(PEG−p−ニトロフェニル−カーボネート)(30kDa);またはポリ(エチレングリコール)−プロピオンアルデヒド(PEG−プロピオンアルデヒド)(30kDa)との反応により製造する。具体例において、ポリマーは正確に30または約30キロダルトンの分子量を有するPEGである。
【0026】
ここに提供される組み合わせ剤のいずれもキットとして包装してよく、所望により使用のための指示書を含む。
【0027】
またここに提供されるのは、ヒアルロナン分解酵素を含み、該ヒアルロナン分解酵素がポリマーと結合している組成物を投与し、腫瘍標的タキサン製剤を含む組成物を投与する、癌の処置のための方法または使用である。方法の例のいずれにおいても、ヌクレオシドアナログを含む組成物も投与する。
【0028】
ここに提供する方法または使用の例のいずれにおいても、癌は腫瘍である。一例において、腫瘍は固形腫瘍である。ここでの方法または使用の例のいずれにおいても、腫瘍は、同じ組織タイプの非癌性組織と比較してまたは同じ腫瘍タイプの非転移腫瘍と比較して、ヒアルロナンの高い細胞および/または間質発現を有する。ここに提供する方法または使用の例のいずれにおいても、癌は膵癌、卵巣癌、肺癌、結腸癌、前立腺癌、子宮頸癌、頭頸部癌および乳癌から選択される。具体例において、癌は膵癌である。
【0029】
ここに提供する方法または使用の例のいずれにおいても、ヒアルロナン分解酵素はヒアルロニダーゼである。例えば、ヒアルロニダーゼは、PH20またはC末端グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)結合部位またはGPI結合部位の一部を欠くその切断型である。具体例において、ヒアルロニダーゼはヒトまたは非ヒトPH20であるPH20である。具体例において、ヒアルロナン分解酵素は切断型PH20および切断型PH20は配列番号1のアミノ酸36〜464を含むアミノ酸の配列を含むまたは配列番号1の少なくともアミノ酸36〜464を含むアミノ酸の配列と少なくとも85%配列同一性を有するアミノ酸の配列を含み、ヒアルロニダーゼ活性を保持する。いくつかの例において、PH20は、配列番号1の少なくともアミノ酸36〜464を含むアミノ酸の配列と少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有するアミノ酸の配列を含み、ヒアルロニダーゼ活性を保持する。他の例において、PH20は配列番号1に示すアミノ酸の配列の465位、466位、467位、468位、469位、470位、471位、472位、473位、474位、475位、476位、477位、478位、479位、480位、481位、482位、483位、484位、485位、486位、487位、488位、489位、490位、491位、492位、493位、494位、495位、496位、497位、498位、499位または500位のアミノ酸の後にC末端短縮化を含むアミノ酸の配列または配列番号1に示すアミノ酸の配列の465位、466位、467位、468位、469位、470位、471位、472位、473位、474位、475位、476位、477位、478位、479位、480位、481位、482位、483位、484位、485位、486位、487位、488位、489位、490位、491位、492位、493位、494位、495位、496位、497位、498位、499位または500位のアミノ酸の後にC末端短縮化を含むアミノ酸の配列と少なくとも85%配列同一性を示し、ヒアルロニダーゼ活性を保持するその変異体である。さらに他の例において、PH20は、配列番号1に示すアミノ酸の配列の465位、466位、467位、468位、469位、470位、471位、472位、473位、474位、475位、476位、477位、478位、479位、480位、481位、482位、483位、484位、485位、486位、487位、488位、489位、490位、491位、492位、493位、494位、495位、496位、497位、498位、499位または500位のアミノ酸の後にC末端短縮化を含むアミノ酸の配列と少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有するアミノ酸の配列を含み、ヒアルロニダーゼ活性を保持する。
【0030】
ここに提供する方法または使用の例のいずれにおいても、ポリマーはポリアルキレングリコール、デキストラン、プルランまたはセルロースである。一例において、ポリマーはポリエチレングリコール類(PEG)またはメトキシポリエチレングリコール類(mPEG)から選択されるポリアルキレングリコールである。具体例において、ポリマーはPEGであり、PEGは分枝鎖または直鎖PEGである。ここに提供する方法または使用の例のいずれにおいても、ポリマーはメトキシ−ポリ(エチレングリコール)−スクシンイミジルブタノエート(mPEG−SBA)(5kDa);メトキシ−ポリ(エチレングリコール)−スクシンイミジルブタノエート(mPEG−SBA)(20kDa);メトキシ−ポリ(エチレングリコール)−スクシンイミジルブタノエート(mPEG−SBA)(30kDa);メトキシ−ポリ(エチレングリコール)−スクシンイミジルα−メチルブタノエート(mPEG−SMB)(20kDa);メトキシ−ポリ(エチレングリコール)−スクシンイミジルα−メチルブタノエート(mPEG−SMB)(30kDa);メトキシ−ポリ(エチレングリコール)−ブチルアルデヒド(mPEG−ブチルアルデヒド)(30kDa)、メトキシ−ポリ(エチレングリコール)−スクシンイミジルプロピオネート(mPEG−SPA)(20kDa);メトキシ−ポリ(エチレングリコール)−スクシンイミジルプロピオネート(mPEG−SPA)(30kDa);(メトキシ−ポリ(エチレングリコール))−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(mPEG−NHS)(10kDa分枝);(メトキシ−ポリ(エチレングリコール))−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(mPEG−NHS)(20kDa分枝);(メトキシ−ポリ(エチレングリコール))−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(mPEG−NHS)(40kDa分枝);(メトキシ−ポリ(エチレングリコール))−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(mPEG−NHS)(60kDa分枝);ビオチン−ポリ(エチレングリコール)−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(ビオチン−PEG−NHS)(5kDaビオチニル化);ポリ(エチレングリコール)−p−ニトロフェニルカーボネート(PEG−p−ニトロフェニル−カーボネート)(30kDa);またはポリ(エチレングリコール)−プロピオンアルデヒド(PEG−プロピオンアルデヒド)(30kDa)との反応により提供する。具体例において、ポリマーは正確に30または約30キロダルトンの分子量を有するPEGである。
【0031】
ここに提供する方法または使用の例のいずれにおいても、ヒアルロナン分解酵素を0.01μg/kg〜25mg/kg(対象の)、0.5μg/kg〜25mg/kg、0.5μg/kg〜10mg/kg、0.02mg/kg〜1.5mg/kg、0.01μg/kg〜15μg/kg、0.05μg/kg〜10μg/kg、0.75μg/kg〜7.5μg/kgまたは1.0μg/kg〜3.0μg/kg(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)の範囲の投与量で投与するかこの範囲の投与量での投与のために製剤する。ここに提供する方法または使用の例のいずれにおいても、ヒアルロナン分解酵素を1単位/kg〜800,000単位/kg(対象の)、例えば10〜800,000単位/kg、10〜750,000単位/kg、10〜700,000単位/kg、10〜650,000単位/kg、10〜600,000単位/kg、10〜550,000単位/kg、10〜500,000単位/kg、10〜450,000単位/kg、10〜400,000単位/kg、10〜350,000単位/kg、10〜320,000単位/kg、10〜300,000単位/kg、10〜280,000単位/kg、10〜260,000単位/kg、10〜240,000単位/kg、10〜220,000単位/kg、10〜200,000単位/kg、10〜180,000単位/kg、10〜160,000単位/kg、10〜140,000単位/kg、10〜120,000単位/kg、10〜100,000単位/kg、10〜80,000単位/kg、10〜70,000単位/kg、10〜60,000単位/kg、10〜50,000単位/kg、10〜40,000単位/kg、10〜30,000単位/kg、10〜20,000単位/kg、10〜15,000単位/kg、10〜12,800単位/kg、10〜10,000単位/kg、10〜9,000単位/kg、10〜8,000単位/kg、10〜7,000単位/kg、10〜6,000単位/kg、10〜5,000単位/kg、10〜4,000単位/kg、10〜3,000単位/kg、10〜2,000単位/kg、10〜1,000単位/kg、10〜900単位/kg、10〜800単位/kg、10〜700単位/kg、10〜500単位/kg、10〜400単位/kg、10〜300単位/kg、10〜200単位/kg、10〜100単位/kg、16〜600,000単位/kg、16〜500,000単位/kg、16〜400,000単位/kg、16〜350,000単位/kg、16〜320,000単位/kg、16〜160,000単位/kg、16〜80,000単位/kg、16〜40,000単位/kg、16〜20,000単位/kg、16〜16,000単位/kg、16〜12,800単位/kg、16〜10,000単位/kg、16〜5,000単位/kg、16〜4,000単位/kg、16〜3,000単位/kg、16〜2,000単位/kg、16〜1,000単位/kg、16〜900単位/kg、16〜800単位/kg、16〜700単位/kg、16〜500単位/kg、16〜400単位/kg、16〜300単位/kg、16〜200単位/kg、16〜100単位/kg、160〜12,800単位/kg、160〜8,000単位/kg、160〜6,000単位/kg、160〜4,000単位/kg、160〜2,000単位/kg、160〜1,000単位/kg、160〜500単位/kg、500〜5000単位/kg、1000〜100,000単位/kgまたは1000〜10,000単位/kg(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)の範囲の投与量で投与するかこの範囲の投与量での投与のために製剤する。
【0032】
ここに提供する方法または使用の例のいずれにおいても、腫瘍標的タキサンはパクリタキセルまたはドセタキセルまたはそのアナログ、誘導体またはプロドラッグである。腫瘍標的タキサンは腫瘍ターゲティング部分と直接的または間接的に結合できる。いくつかの例において、腫瘍標的タキサンはミセル、ナノ粒子、マイクロスフェア、リポソームまたはヒドロゲルから選択される送達媒体として製剤される。送達媒体は腫瘍ターゲティング部分と直接的または間接的に結合できる。いくつかの例において、腫瘍ターゲティング部分は高分子、タンパク質、ペプチド、モノクローナル抗体または脂肪酸脂質から選択される。他の例において、腫瘍ターゲティング部分はセツキシマブまたはトラスツマブから選択されるモノクローナル抗体である。さらに別の例において、腫瘍ターゲティング部分はアルブミンである。具体例において、腫瘍標的タキサンはアルブミン結合パクリタキセルまたはアルブミン結合ドセタキセルである。ここに提供する方法または使用の例のいずれにおいても、腫瘍標的タキサンを1mg/m〜1000mg/m(対象の体表面積)、10mg/m〜500mg/m、50mg/m〜400mg/mまたは25mg/m〜300mg/m(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)の範囲の投与量で投与するかこの範囲の投与量での投与のために製剤する。
【0033】
ここに提供する方法または使用の例のいずれにおいても、ヌクレオシドアナログはプリンまたはピリミジンアナログまたはその誘導体である。例のいずれにおいても、ヌクレオシドアナログはフルオロピリミジン5−フルオロウラシル、5−フルオロ−2’−デオキシシチジン、シタラビン、ゲムシタビン、トロキサシタビン、デシタビン、アザシチジン、シュードイソシチジン、ゼブラリン、アンシタビン、ファザラビン、6−アザシチジン、カペシタビン、N−オクタデシル−シタラビン、エライジン酸シタラビン、フルダラビン、クラドリビン、クロファラビン、ネララビン、フォロデシンおよびペントスタチンまたはその誘導体から選択される。具体例において、ヌクレオシドアナログはヌクレオシドデアミナーゼのための基質であり、ヌクレオシドデアミナーゼはアデノシンデアミナーゼまたはシチジンデアミナーゼである。例において、ヌクレオシドアナログはフルダラビン、シタラビン、ゲムシタビン、デシタビンおよびアザシチジンまたはその誘導体から選択される。さらに他の例において、ヌクレオシドアナログはゲムシタビンまたはその誘導体である。ここに提供する方法または使用の例のいずれにおいても、ヌクレオシドアナログを100mg/m〜2500mg/m、500mg/m〜2000mg/m、750mg/m〜1500mg/m、1000mg/m〜1500mg/mまたは500mg/m〜1500mg/m(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)の範囲の投与量で投与するかこの範囲の投与量での投与のために製剤する。ここに提供する方法または使用の他の例において、ヌクレオシドアナログを、少なくともまたは少なくとも約200mg/mまたは500mg/mであるが、1000mg/mまたはmg/m未満である量で投与するかまたはこの量で投与するために製剤する。
【0034】
ここに提供する方法または使用の例のいずれにおいても、組成物を経口、静脈内(IV)、皮下、筋肉内、腫瘍内、皮内、局所的、経皮、直腸、髄腔内または上皮下投与するかまたはこれらの投与のために製剤する。具体例において、組成物を静脈内または皮下投与する。ここでの方法または使用のいずれにおいても、ヒアルロナン分解酵素を腫瘍標的タキサンの前に、同時にまたはほぼ同時に、逐次的にまたは間欠的に投与するかまたは使用する。
【0035】
ここに提供する方法の例において、ヒアルロナン分解酵素を腫瘍標的タキサンの投与前に投与する。一例において、ヒアルロナン分解酵素を腫瘍標的タキサン投与の少なくとも正確にまたは少なくとも5分、15分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、20時間、22時間、24時間、30時間、36時間、40時間または48時間前(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)に投与する。ここに提供する方法の他の例において、ヒアルロナン分解酵素および腫瘍標的タキサンを同時またはほぼ同時に投与する。
【0036】
ここに提供する方法の例のいずれにおいても、ヒアルロナン分解酵素の投与頻度は週に2回、週に1回、14日に1回、21日に1回または月に1回である。他の例において、腫瘍標的タキサンの投与頻度は週に2回、週に1回、14日に1回、21日に1回または月に1回である。ここに提供する方法または使用の例のいずれにおいても、ヒアルロナン分解酵素および/または腫瘍標的タキサンをヌクレオシドアナログの前に、同時にまたはほぼ同時に、逐次的にまたは間欠的に投与するかまたは投与するために製剤する。
【0037】
ここに提供する方法または使用の例のいずれにおいても、ヒアルロナン分解酵素および腫瘍標的タキサンを予定した週数の投与サイクルで投与する。一例において、予定した週数は少なくとも2週間、少なくとも3週間または少なくとも4週間であり得る。いくつかの例において、ヒアルロナン分解酵素をヌクレオシドアナログ投与の少なくとも5分、15分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、20時間、22時間、24時間、30時間、36時間、40時間または48時間(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)前に投与する。いくつかの例において、腫瘍標的タキサンをヌクレオシドアナログ投与の少なくとも1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、20時間、22時間または24時間(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)前に投与する。具体例において、腫瘍標的タキサンをヌクレオシドアナログと同時にまたはほぼ同時に投与する。提供する方法において、ヌクレオシドアナログの投与頻度は週に2回、週に1回、14日に1回、21日に1回または月に1回であり得る。いくつかの例において、ヌクレオシドアナログを予定した週数の投与サイクルで投与する。例えば、予定した週数は少なくとも2週間、少なくとも3週間または少なくとも4週間であり得る。ここに提供する方法の他の例において、ヌクレオシドアナログの予定した週数の投与後、最初の予定期間投与を中止し、その後少なくとも1週間投与を再開する。
【0038】
ここに提供する方法または使用の具体例において、ヒアルロナン分解酵素および腫瘍標的タキサンをヌクレオシドアナログの投与前に投与し、同時にまたはほぼ同時に投与し、予定した週数、週に2回または週に1回の投与頻度で投与する。いくつかの例において、予定した週数は4週間である。このような例において、ヌクレオシドアナログをヒアルロナン分解酵素および腫瘍標的タキサンの投与5分、15分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、20時間、22時間、24時間、30時間、36時間、40時間または48時間(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)後に投与する。
【0039】
ここに提供する方法または使用の例のいずれにおいても、ヌクレオシドアナログを予定した週数、週に1回投与する。一例において、予定した週数は3週間である。このような例において、少なくとも1週間投与を中止し得る。
【0040】
ここに提供する方法または使用のいずれにおいても、投与サイクルおよび/または投与の中止を複数回繰り返し得る。いくつかの例において、第一投与サイクルの投与頻度は、その後の投与サイクルにおける投与頻度と同一であるか、または異なる。例えば、投与頻度は第一投与サイクルでは週に2回であり、その後の投与サイクルでは週に1回である。
【0041】
ここに提供する方法または使用のいずれもさらにコルチコステロイドを投与する段階またはコルチコステロイドの投与を含む処置を含み得る。このような例のいずれにおいても、コルチコステロイドはコルチゾン類、デキサメサゾン類、ヒドロコルチゾン類、メチルプレドニゾロン類、プレドニゾロン類およびプレドニゾン類から選択され得るグルココルチコイドである。本方法のいくつかの例において、コルチコステロイドをヒアルロナン分解酵素の投与の前に、同時に、間欠的に、またはその後に投与する。一例において、コルチコステロイドをヒアルロナン分解酵素と共投与する。他の例において、コルチコステロイドをヒアルロナン分解酵素の投与の少なくとも1時間前に、または少なくとも約1時間前に投与する。提供する方法の他の例において、コルチコステロイドをヒアルロナン分解酵素の投与少なくとも8時間〜12時間後に投与する。いくつかの例において、投与するまたは投与のために製剤するコルチコステロイドの量は0.1〜20mg、0.1〜15mg、0.1〜10mg、0.1〜5mg、0.2〜20mg、0.2〜15mg、0.2〜10mg、0.2〜5mg、0.4〜20mg、0.4〜15mg、0.4〜10mg、0.4〜5mg、0.4〜4mg、1〜20mg、1〜15mgまたは1〜10mg(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)である。コルチコステロイドは経口投与できる。
【0042】
ここに提供する方法または使用のいずれもさらなる癌処置を受けることを含み得る。いくつかの例において、癌処置は、手術、放射線、化学療法剤、生物学的製剤、ポリペチド、抗体、ペプチド、小分子、遺伝子治療ベクター、ウイルスおよびDNAから選択される。ここに提供する方法のいずれもヒトである対象の処置に使用できる。
【0043】
またここに提供されるのは、癌の処置用であり得る組成物の組み合わせ剤の使用である。ここに提供する組成物の組み合わせ剤はいずれも癌の処置に使用できる。いくつかの例において、癌は腫瘍である。例えば、癌は固形腫瘍である。いくつかの例において、腫瘍は、同じ組織タイプの非癌性組織と比較してまたは同じ腫瘍タイプの非転移腫瘍と比較して、ヒアルロナンの上昇した細胞内および/または間質内発現を有する。いくつかの例において、癌は膵癌、卵巣癌、肺癌、結腸癌、前立腺癌、子宮頸癌、頭頸部癌および乳癌から選択される。具体例において、癌は膵癌である。またここに提供されるのは、ヌクレオシドアナログの腫瘍内活性を増加させるための、ポリマーと結合したヒアルロナン分解酵素および腫瘍標的タキサンを含む組成物を含む組み合わせ剤の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】マウスBxPC−3 PDA腫瘍異種移植モデルにおける腫瘍増殖に対するPEGPH20(P)および/またはnab−パクリタキセル(NAB、N)の効果を描記する。
図2】マウスBxPC−3 PDA腫瘍異種移植モデルにおける腫瘍増殖に対する種々の投与量のゲムシタビン(GEM)投与の効果を描記する。
図3】マウスBxPC−3 PDA腫瘍異種移植モデルにおける腫瘍増殖に対するPEGPH20(P)、ゲムシタビン(GEM、G)および/またはnab−パクリタキセル(NAB、N)の効果を描記する。
図4】マウスBxPC−3 PDA腫瘍異種移植モデルにおけるPEGPH20(P)、ゲムシタビン(GEM、G)および/またはnab−パクリタキセル(NAB、N)で処置したマウスの中央生存期間を描記する。
図5】マウスBxPC−3 PDA腫瘍異種移植モデルにおけるPEGPH20(P)、ゲムシタビン(GEM、G)および/またはnab−パクリタキセル(NAB、N)で処置したマウスの血清のCA19−9(図5A)およびCEAマーカー(図5B)レベルを描記する。
図6】異種移植モデルにおけるPEGPH20およびアルブミン結合パクリタキセル(Ab−pac)の腫瘍増殖阻害を記載する。図6Aは、MDA−MB−468/HAS3腫瘍モデルにおける媒体、アルブミン結合パクリタキセル(Ab−pac)、PEGPH20またはAb−pacおよびPEGPH20で処置したマウスにおける腫瘍増殖阻害を描記する。図6Bは、MDA−MB−468/HAS3腫瘍モデルにおける媒体、1mg/kgのアルブミン結合パクリタキセル(Ab−pac)、3mg/kgのAb−pac、1mg/kgのAb−pacとPEGPH20または10mg/kgのAb−pacで処置したマウスにおける腫瘍増殖阻害を描記する。
【発明を実施するための形態】
【0045】
詳細な記載
概要
A. 定義
B. 抗ヒアルロナン剤組み合わせ治療
1. 固形腫瘍および腫瘍標的治療
a. 腫瘍標的タキサン
b. 抗ヒアルロナン剤
2. 抗ヒアルロナン剤および腫瘍標的タキサン組み合わせ治療
C. 組み合わせ治療剤
1. 抗ヒアルロナン剤
a. ヒアルロナン合成を阻害する薬剤
b. ヒアルロナン分解酵素およびポリマー結合ヒアルロナン分解酵素
i. ヒアルロニダーゼ
(a)哺乳動物型ヒアルロニダーゼ
PH20
(b)細菌ヒアルロニダーゼ
(c)ヒル、他の寄生虫および甲殻類からのヒアルロニダーゼ
ii. 他のヒアルロナン分解酵素
iii. 可溶性ヒアルロナン分解酵素
(a)可溶性ヒトPH20
(b)rHuPH20
iv. ヒアルロナン分解酵素のグリコシル化
v. 修飾(ポリマー結合)ヒアルロナン分解酵素
ペグ化可溶性ヒアルロナン分解酵素
2. タキサンおよびその製剤
a. タキサン
b. 腫瘍または間質標的タキサン
アルブミン結合タキサン
3. さらなる化学療法剤(例えばヌクレオシドアナログ)
例示的ヌクレオシドアナログ
i. ゲムシタビン
ii. シタラビン
ii. デシタビン
iv. アザシチジン
D. ヒアルロナン分解酵素の核酸およびコード化ポリペチドの製造方法
1. ベクターおよび細胞
2. 発現
a. 原核生物細胞
b. 酵母細胞
c. 昆虫細胞
d. 哺乳動物細胞
e. 植物
3. 精製技術
4. ヒアルロナン分解酵素ポリペチドのペグ化
E. 医薬組成物および製剤
1. 製剤
a. 注射剤、溶液およびエマルジョン
b. 凍結乾燥粉末
c. 局所投与
d. 他の投与経路用の組成物
2. 製剤量
3. 包装および製品
F. 活性、バイオアベイラビリティおよび薬物動態の評価方法
1. インビトロアッセイ
a. ヒアルロナン分解酵素のヒアルロニダーゼ活性
b. タキサン活性
c. 抗癌活性
2. インビボ動物モデル
3. 薬物動態および耐容性
G. 組み合わせ治療の方法および使用
1. 癌
処置のための対象の選択
2. 用法・用量
3. 投与レジメン:頻度および投与サイクル
4. 付加的組み合わせ治療
a. コルチコステロイド
b. 抗癌剤および他の処置
H. 実施例
【0046】
A. 定義
他に定義しない限り、ここで使用する全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者に共通して理解されているものと同じ意味を有する。ここでの開示の全体をとおして引用する全ての特許、特許出願、公開特許および刊行物、Genbank配列、データベース、ウェブサイトおよび他の刊行物は、特に断らない限り、引用によりその全体を本明細書に包含させる。ここでの用語に複数の定義が存在する場合、この章のものが優先する。URLまたは他のそのような識別子またはアドレスが引用されているとき、このような識別子は変化することがあり、インターネット上の特定の情報は消去または挿入されるが、同等な情報は知られており、例えばインターネットおよび/または適当なデータベースの検索により容易に入手できると解釈すべきである。それらの引用は当該情報が入手可能であることおよび公衆に頒布されていることを証明する。
【0047】
ここで使用する“組み合わせ治療”は、一疾患の処置のために、対象が2種またはそれ以上の治療剤、例えば少なくとも2種または少なくとも3種の治療剤を投与されている、処置を意味する。この目的のために、組み合わせ治療は、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素および腫瘍標的タキサンおよび所望によりヌクレオシドアナログのようなさらなる抗癌剤または化学療法剤での治療を含む。
【0048】
ここで使用するタキサンは、微小管重合の妨害により有糸分裂および細胞分裂を停止させることにより細胞増殖を阻害する、抗有糸分裂剤または微小管阻害剤のファミリーをいう。タキサンは、イチイ属植物(イチイ)から産生される、自然に生産されたジテルペン類である。タキサンはまた、抗有糸分裂または抗微小管活性を示す合成されたタキサンも含む。典型的に、タキサンは、4個の環(6員AおよびC環、8員B環および4員D環)を含む共通の基本構造を有する。タキサンの例はパクリタキセル、タキサンまたはその誘導体またはアナログである。
【0049】
ここで使用する抗有糸分裂活性は、有糸分裂の阻害、低減または阻止をいう。このような活性により、細胞増殖は阻害され、低下し、または阻止される。例えば、細胞増殖が、薬剤非存在下の細胞増殖と比較して少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)またはそれ以上阻害されるならば、該薬剤は抗有糸分裂活性を示す。
【0050】
ここで使用する抗微小管活性は、微小管重合の抑制、低下または阻止などにより、微小管を阻害する薬剤の活性をいう。それゆえに、抗微小管活性は、元々不安定であり、動的脱重合(短縮化)および重合(伸長)過程を受ける微小管を安定化する活性をいうこともできる。例えば、抗微小管活性は、微小管の末端と相互作用し、それにより解体または集合を凍結または阻止するタキサンのような薬剤により発揮される。微小管重合を評価するためのアッセイは当分野で知られ、アッセイの例をここに記載した。薬剤が、該薬剤の非存在下の重合と比較して少なくとも正20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%(いずれ数値も概数(約)である場合を含む)またはそれ以上の微小管重合を阻害するならば、抗微小管活性が存在する。
【0051】
ここで使用する“腫瘍標的タキサン”は、直接的または間接的に、標的腫瘍の部分に結合し、標的腫瘍部分と結合していないタキサンと比較して腫瘍表面上の1個以上の分子に対する特異性が増進している、タキサンである。例えば、該部分は、腫瘍表面上に存在する糖、脂質、グリコサミノグリカンまたはタンパク質のような、腫瘍表面上に存在する分子と相互作用または結合(例えば特異的に結合)する、高分子、ペプチド、タンパク質、抗体(例えばモノクローナル抗体)または脂質であり得る。一般に、腫瘍表面上に存在する分子は、異常であるかまたは非腫瘍組織または正常組織もしくは細胞と区別できるレベルまたはそのような程度で存在する。
【0052】
ここで使用する用語“腫瘍内送達を達成するのに十分”は、タキサンが非腫瘍細胞よりも腫瘍細胞に増加したまたはより大きなターゲティングを示し、それにより、増加したまたはより大きな細胞内局在化を示すことを意味する。腫瘍内送達を評価するためのアッセイは、タキサンのような薬物の結合したまたは細胞内のレベルまたは量を、正常細胞と腫瘍細胞で比較する、結合アッセイまたは細胞内局在化アッセイのようなインビトロまたはインビボアッセイを含み得る。このようなアッセイは、放射免疫アッセイまたはELISAを含む免疫アッセイ(例えばライセート利用ELISAおよび赤外ELISA;Svojanovsky et al. (1999) Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis, 20:549-555も参照);チューブリンベースのバイオアッセイ(例えばSuye et al. (1997) Anal. Chem., 69:3633-3635参照);組織化学または免疫組織化学(Hong et al. (2007) Mol. Cancer. Ther., 6: 3239);HPLC;フローサイトメトリーおよび他の方法を含む蛍光を利用するアッセイ(例えばSheikh et al. (2001) Biosensors & Bioelectronics, 16:647-652参照)および当業者に知られる他の類似のアッセイを含むが、これらに限定されない。このような方法において使用するタキサンに対する抗体は利用可能である(例えばGrothaus et al. (1995) J Nat. Prod., 58:1003-14; Leu et al. (1993) Cancer Res., 53:1388-1391; Catalog No. ab26953, Abcam参照)。バイオセンサーテクノロジーも使用できる(例えばBraunhut et al. (2005) Assay and Drug Dev. Tech., 3: 77-88参照)。アッセイはまた間接的アッセイを含み得るし、それにより腫瘍細胞アポトーシスおよび腫瘍サイズまたは体積を含む腫瘍増殖に対する効果を含めて、タキサンの細胞機構に対する活性を評価する。
【0053】
ここで使用する抗ヒアルロナン剤は、ヒアルロナン(HA)合成または分解を調節し、それにより組織または細胞におけるヒアルロナンレベルを修飾する薬剤をいう。ここでの目的のために、抗ヒアルロナン剤は、該薬剤非存在下と比較して、組織または細胞におけるヒアルロナンレベルを低下させる。このような薬剤は、HAシンターゼ(HAS)およびヒアルロナン代謝に関与する他の酵素または受容体をコードする遺伝物質の発現を調節し、またはHAS機能または活性を含むヒアルロナンを合成または分解するタンパク質を調節する化合物を含む。本薬剤は、小分子、核酸、ペプチド、タンパク質または他の化合物を含む。例えば、抗ヒアルロナン剤は、アンチセンスまたはセンス分子、抗体、酵素、小分子阻害剤およびHAS基質アナログを含むが、これらに限定されない。
【0054】
ここで使用する“コンジュゲート”は、1個以上の他のポリペチドまたは化合物部分に直接的または間接的に結合したポリペチドをいう。このようなコンジュゲートは、化学結合により製造し、または任意の他の方法で製造した融合タンパク質を含む。例えば、コンジュゲートは、1個以上の他のポリペチドまたは化合物部分に直接的または間接的に結合したヒアルロニダーゼまたは可溶性PH20ポリペチドのようなヒアルロナン分解酵素をいい、それにより、コンジュゲートがヒアルロニダーゼ活性を保持する限り、少なくとも1個の可溶性PH20ポリペチドが、他のポリペチドまたは化合物部分に直接的または間接的に結合する。
【0055】
ここで使用する“ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素”は、ポリマーに直接的または間接的に結合したヒアルロナン分解酵素をいう。結合は、イオン性および共有結合的結合および任意の他の十分に安定な関連相互作用を含むが、これらに限定されない任意のタイプの結合であり得る。ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素と称するとき、該コンジュゲートがヒアルロニダーゼ活性を示すことを意味する。典型的に、ポリマーコンジュゲートは、ポリマーと結合していないヒアルロナン分解酵素と比較して、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上のヒアルロニダーゼ活性を示す。
【0056】
ここで使用するヒアルロナン分解酵素は、ヒアルロナンポリマー(ヒアルロン酸またはHAとも呼ぶ)の小分子量フラグメントへの開裂を触媒する酵素をいう。ヒアルロナン分解酵素の例は、ヒアルロニダーゼおよびヒアルロナンを脱重合する能力を有する特定のコンドロイチナーゼおよびリアーゼである。ヒアルロナン分解酵素であるコンドロイチナーゼの例は、コンドロイチンABCリアーゼ(コンドロイチナーゼABCとしても知られる)、コンドロイチンACリアーゼ(コンドロイチン硫酸リアーゼまたはコンドロイチン硫酸エリミナーゼとしても知られる)およびコンドロイチンCリアーゼを含むが、これらに限定されない。コンドロイチンABCリアーゼは、コンドロイチン硫酸ABCエンドリアーゼ(EC 4.2.2.20)およびコンドロイチン硫酸ABCエキソリアーゼ(EC 4.2.2.21)の2種の酵素を含む。コンドロイチン硫酸ABCエンドリアーゼおよびコンドロイチン硫酸ABCエキソリアーゼの例は、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)およびフラボバクテリウム・ヘパリナム(Flavobacterium heparinum)由来のものを含むが、これらに限定されない(プロテウス・ブルガリスのコンドロイチン硫酸ABCエンドリアーゼは配列番号98に示す;Sato et al. (1994) Appl. Microbiol. Biotechnol. 41(1):39-46)。細菌由来のコンドロイチナーゼAC酵素の例は、配列番号99に示すフラボバクテリウム・ヘパリナム、配列番号100に示すウィクティウァルリス・バデンシス(Victivallis vadensis)およびアルスロバクター・アウレッセンス(Arthrobacter aurescens)由来のものを含むが、これらに限定されない(Tkalec et al. (2000) Applied and Environmental Microbiology 66(1):29-35; Ernst et al. (1995) Critical Reviews in Biochemistry and Molecular Biology 30(5):387-444)。細菌由来のコンドロイチナーゼC酵素の例は、ストレプトコッカスおよびフラボバクテリウム由来のものを含むが、これらに限定されない(Hibi et al. (1989) FEMS-Microbiol-Lett. 48(2):121-4; Michelacci et al. (1976) J. Biol. Chem. 251:1154-8; Tsuda et al. (1999) Eur. J. Biochem. 262:127-133)。
【0057】
ここで使用するヒアルロニダーゼは、ヒアルロナン分解酵素のクラスをいう。ヒアルロニダーゼは、細菌ヒアルロニダーゼ(EC 4.2.2.1またはEC 4.2.99.1)、ヒル、他の寄生虫および甲殻類からのヒアルロニダーゼ(EC 3.2.1.36)および哺乳動物型ヒアルロニダーゼ(EC 3.2.1.35)を含む。ヒアルロニダーゼは、マウス、イヌ、ネコ、ウサギ、トリ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、サカナ、カエル、細菌を含むが、これらに限定されない非ヒト起源のいずれかおよびヒル、他の寄生虫および甲殻類由来のいずれかを含む。非ヒトヒアルロニダーゼの例は、ウシ(配列番号10、11、64およびBH55(米国特許番号5,747,027および5,827,721))、スズメバチ(配列番号12および13)、ミツバチ(配列番号14)、北米産スズメバチ(配列番号15)、アシナガバチ(配列番号16)、マウス(配列番号17〜19、32)、ブタ(配列番号20〜21)、ラット(配列番号22〜24、31)、ウサギ(配列番号25)、ヒツジ(配列番号26、27、63および65)、チンパンジー(配列番号101)、アカゲザル(配列番号102)、オランウータン(配列番号28)、カニクイザル(配列番号29)、モルモット(配列番号30)、アルスロバクター属(株FB24)(配列番号67)、ブデロビブリオ・バクテリオヴォルス(Bdellovibrio bacteriovorus)(配列番号68)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)(配列番号69)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)((配列番号70);18RS21(配列番号71);血清型Ia(配列番号72);および血清型III(配列番号73))、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(株COL(配列番号74);株MRSA252(配列番号75および76);株MSSA476(配列番号77);株NCTC 8325(配列番号78);株ウシRF122(配列番号79および80);および株USA300(配列番号81))、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)((配列番号82);株ATCC BAA−255/R6(配列番号83);および血清型2、株D39/NCTC 7466(配列番号84))、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)(血清型M1(配列番号85);血清型M2、株MGAS10270(配列番号86);血清型M4、株MGAS10750(配列番号87);血清型M6(配列番号88);血清型M12、株MGAS2096(配列番号89および90);血清型M12、株MGAS9429(配列番号91);および血清型M28(配列番号92));豚レンサ球菌(Streptococcus suis)(配列番号93〜95);ビブリオ・フィッシェリ(Vibrio fischeri)(株ATCC 700601/ES114(配列番号96))およびヒアルロン酸に特異的であり、コンドロイチンまたはコンドロイチン硫酸を開裂しないストレプトマイセス・ヒアルロノリチクスのヒアルロニダーゼ酵素を含む (Ohya, T. and Kaneko, Y. (1970) Biochim. Biophys. Acta 198:607)。ヒアルロニダーゼはヒト起源のものも含む。例示的ヒトヒアルロニダーゼは、HYAL1(配列番号36)、HYAL2(配列番号37)、HYAL3(配列番号38)、HYAL4(配列番号39)およびPH20(配列番号1)を含む。またヒアルロニダーゼに含まれるのは、ヒツジおよびウシPH20、可溶性ヒトPH20および可溶性rHuPH20を含む、可溶性ヒアルロニダーゼである。市販のウシまたはヒツジ可溶性ヒアルロニダーゼの例は、Vitrase(登録商標)(ヒツジヒアルロニダーゼ)、Amphadase(登録商標)(ウシヒアルロニダーゼ)およびHydaseTM(ウシヒアルロニダーゼ)を含む。
【0058】
ここで使用する“精製ウシ精巣ヒアルロニダーゼ”は、ウシ精巣抽出物から精製したウシヒアルロニダーゼをいう(米国特許番号2,488,564、2,488,565、2,806,815、2,808,362、2,676,139、2,795,529、5,747,027および5,827,721参照)。市販の精製ウシ精巣ヒアルロニダーゼの例はAmphadase(登録商標)およびHydaseTMおよび、Sigma Aldrich、Abnova、EMD Chemicals、GenWay Biotech, Inc.、Raybiotech, Inc.およびCalzymeから入手可能なものを含むが、これらに限定されないウシヒアルロニダーゼを含む。また包含されるのは、配列番号190〜192のいずれかに示す核酸分子の発現により産生されるものを含むが、これらに限定されないもののような、組み換えにより製造したウシヒアルロニダーゼである。
【0059】
ここで使用する“精製ヒツジ精巣ヒアルロニダーゼ”は、ヒツジ精巣抽出物から精製したヒツジヒアルロニダーゼを含む(米国特許番号2,488,564、2,488,565および2,806,815および国際PCT公開番号WO2005/118799参照)。市販の精製ヒツジ精巣抽出物の例は、Vitrase(登録商標)およびSigma Aldrich、Cell Sciences、EMD Chemicals、GenWay Biotech, Inc.、Mybiosource.comおよびRaybiotech, Inc.から入手可能なものを含むが、これらに限定されないヒツジヒアルロニダーゼを含む。また含まれるのは、配列番号66および193〜194のいずれかに示す核酸分子の発現により産生されるものを含むが、これらに限定されない、組み換えにより製造したヒツジヒアルロニダーゼである。
【0060】
ここで使用する“PH20”は、精子で発生し、中性で活性なヒアルロニダーゼをいう。PH−20は精子表面および内部アクロソーム膜に結合するリソソーム由来アクロソームで生成する。PH20は、ヒト、チンパンジー、カニクイザル、アカゲザル、マウス、ウシ、ヒツジ、モルモット、ウサギおよびラット起源を含むが、これらに限定されない任意の起源のものを含む。例示的PH20ポリペチドはヒト(配列番号1)、チンパンジー(配列番号101)、アカゲザル(配列番号102)、カニクイザル(配列番号29)、ウシ(例えば、配列番号11および64)、マウス(配列番号32)、ラット(配列番号31)、ウサギ(配列番号25)、ヒツジ(配列番号27、63および65)およびモルモット(配列番号30)由来のものを含む。
【0061】
ヒアルロナン分解酵素なる用語は、前駆体ヒアルロナン分解酵素ポリペチドおよび成熟ヒアルロナン分解酵素ポリペチド(例えばシグナル配列が除去されているもの)、活性を有するその切断型を含み、アレル変異型および種変異型、スプライスバリアントによりコードされる変異型および配列番号1および10〜48、63〜65、67〜102に示す前駆体ポリペチドまたはその成熟形態と少なくとも40%、45%、50%、55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するポリペチドを含む他の変異型を含む。例えば、ヒアルロナン分解酵素なる用語はまた配列番号50〜51に示すヒトPH20前駆体ポリペチド変異型も含む。ヒアルロナン分解酵素はまた、化学的または翻訳後修飾を含むものおよび化学的または翻訳後修飾を含まないものも含む。このような修飾は、ペグ化、アルブミン化、グリコシル化、ファルネシル化、カルボキシル化、ヒドロキシル化、リン酸化および当業者に知られる他のポリペチド修飾を含むが、これらに限定されない。切断型PH20ヒアルロニダーゼは、そのC末端短縮形態のいずれか、特にN−グリコシル化されたとき、切断され、中性活性である形態である。
【0062】
ここで使用する“可溶性PH20”は、生理的条件下で可溶性であるPH20の任意の形態をいう。可溶性PH20は、例えば、37℃でのTriton(登録商標)X-114溶液の水相へのその分配により同定できる(Bordier et al., (1981) J. Biol. Chem., 256:1604-7)。GPIアンカー型PH20を含む脂質アンカー型PH20のような膜アンカー型PH20は、界面活性剤富相に分配されるが、ホスホリパーゼ−Cでの処理後界面活性剤貧または水相に分配される。可溶性PH20に包含されるのは、PH20の膜への固定に関与する1箇所以上の領域が除去または修飾されている膜アンカー型PH20であり、ここで、該可溶性形態はヒアルロニダーゼ活性を保持する。可溶性PH20はまた組み換え可溶性PH20および、例えば、ヒツジまたはウシからの精巣抽出物のような、天然源に存在するまたはそこから精製されたものも含む。このような可溶性PH20の例は、可溶性ヒトPH20である。
【0063】
ここで使用する可溶性ヒトPH20またはsHuPH20は、発現により、生理的条件下でポリペチドが可溶性となるように、C末端でグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー配列の全てまたは一部を欠くPH20ポリペチドを含む。溶解度は、生理的条件下での溶解度を証明する適切な方法のいずれかにより評価できる。このような方法の例は、水相への分配を評価するものであり、上におよび実施例に記載する、Triton(登録商標)X-114アッセイである。さらに、可溶性ヒトPH20ポリペチドは、CHO−S細胞のようなCHO細胞で産生されたら、発現され、細胞培養培地に分泌されるポリペチドである。しかしながら、可溶性ヒトPH20ポリペチドは、CHO細胞により産生されるものに限定されず、任意の細胞でまたは組み換え発現およびポリペチド合成を含む任意の方法で産生されるものでもあり得る。CHO細胞による分泌は定義的である。それゆえに、ポリペチドがCHO細胞により発現かつ分泌され、可溶性であるならば、すなわちTriton(登録商標)X-114で抽出したとき水相に分配されるならば、このように製造されていてもいなくても、可溶性PH20ポリペチドである。sHuPH20ポリペチドの前駆体ポリペチドは、異種または非異種(すなわち天然)シグナル配列のようなシグナル配列を含み得る。前駆体の例は、アミノ酸位置1〜35(例えば、配列番号1のアミノ酸1〜35参照)の天然35アミノ酸シグナル配列のようなシグナル配列である。
【0064】
ここで使用する“拡張可溶性PH20”または“esPH20”は、esPH20が生理的条件で可溶性となるように、GPIアンカー付着シグナル配列までの残基およびGPIアンカー付着シグナル配列からの1個以上の連続残基を含む、可溶性PH20ポリペチドを含む。生理的条件下での溶解度は、当業者に知られる方法のいずれかにより決定できる。例えば、上におよび実施例に記載する、Triton(登録商標)X-114アッセイにより評価できる。さらに、上記のとおり、可溶性PH20は、CHO−S細胞のようなCHO細胞で産生されたら、発現され、細胞培養培地に分泌されるポリペチドである。しかしながら、可溶性ヒトPH20ポリペチドは、CHO細胞により産生されるものに限定されず、任意の細胞でまたは組み換え発現およびポリペチド合成を含む任意の方法で産生されるものでもあり得る。CHO細胞による分泌は定義的である。それゆえに、ポリペチドがCHO細胞により発現かつ分泌され、可溶性であるならば、すなわちTriton(登録商標)X-114で抽出したとき水相に分配されるならば、そのように製造されていてもいなくても、可溶性PH20ポリペチドである。ヒト可溶性esPH20ポリペチドは、残基36〜490に加えて、得られたポリペチドが可溶性であるように、配列番号1の491位(包含する)からのアミノ酸残基の1個以上の連続アミノ酸を含む。ヒトesPH20可溶性ポリペチドの例は、配列番号1のアミノ酸36〜491、36〜492、36〜493、36〜494、36〜495、36〜496および36〜497に対応するアミノ酸残基を有するものである。これらの例は、配列番号151〜154および185〜187のいずれかに示すアミノ酸配列を有するものである。また包含されるのは、中性活性を保持し、可溶性である、配列番号151〜154および185〜187の対応するポリペチドと40%、45%、50%、55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するいずれかのような、アレル変異型および他の変異型である。配列同一性は、アミノ酸置換を有する変異型についていう。
【0065】
ここで使用する“esPH20”なる用語は、前駆体esPH20ポリペチドおよび成熟esPH20ポリペチド(例えばシグナル配列が除去されているもの)、酵素活性(完全長形態の少なくとも1%、10%、20%、30%、40%、50%またはそれ以上を保持する)を有するその切断型を含み、可溶性であり、アレル変異型および種変異型、スプライスバリアントによりコードされる変異型および配列番号1および3に示す前駆体ポリペチドに少なくとも40%、45%、50%、55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するポリペチドまたはその成熟形態を含む他の変異型を含む。
【0066】
ここで使用する“esPH20”なる用語はまた、化学的または翻訳後修飾を含むものおよび化学的または翻訳後修飾を含まないものを含む。このような修飾は、ペグ化、アルブミン化、グリコシル化、ファルネシル化、カルボキシル化、ヒドロキシル化、リン酸化および当業者に知られる他のポリペチド修飾を含むが、これらに限定されない。
【0067】
ここで使用する“可溶性組み換えヒトPH20(rHuPH20)”は、組み換えにより発現し、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に分泌されるヒトPH20の可溶性形態を含む組成物をいう。可溶性rHuPH20は、シグナル配列を含み、配列番号49に示す核酸分子によりコードされる。可溶性rHuPH20をコードする核酸は、成熟ポリペチドを分泌するCHO細胞に発現される。培養培地中で産生されるため、生成物が、種々の量で配列番号4〜配列番号9のいずれか1種以上を含み得る、種の混合物を含むように、C末端が不均一である。
【0068】
同様に、組み換えにより発現したポリペチドであるesPH20のようなPH20の他の形態およびその組成物は、C末端が不均一である複数の種を含み得る。例えば、アミノ酸36〜497を有するesPH20をコードする配列番号151のポリペチドの発現により産生した組み換えにより発現したesPH20の組成物は、36〜496または36〜495のような少ないアミノ酸を含み得る。
【0069】
ここで使用する“N結合部分”は、ポリペチドの翻訳後修飾によりグリコシル化され得るポリペチドのアスパラギン(N)アミノ酸残基をいう。ヒトPH20のN結合部分の例は、配列番号1に示すヒトPH20のアミノ酸N82、N166、N235、N254、N368およびN393を含む。
【0070】
ここで使用する“N−グリコシル化ポリペチド”は、少なくとも3個のN結合アミノ酸残基、例えば、配列番号1のアミノ酸残基N235、N368およびN393に対応するN結合部分のオリゴ糖結合を含むPH20ポリペチドまたはその切断型を含む。N−グリコシル化ポリペチドは、N結合部分の3個、4個、5個および最大全てがオリゴ糖に結合しているポリペチドを含み得る。N結合オリゴ糖は、オリゴマンノース、複合体、ハイブリッドまたは硫酸化オリゴ糖または他のオリゴ糖および単糖を含み得る。
【0071】
ここで使用する“N部分的グリコシル化ポリペチド”は、最小限少なくとも3個のN結合部分に結合したN−アセチルグルコサミングリカンを含むポリペチドをいう。部分的グリコシル化ポリペチドは、ポリペチドのEndoH、EndoF1、EndoF2および/またはEndoF3での処理により形成されたものを含む、単糖、オリゴ糖および分枝糖形態を含む、種々のグリカン形態を含み得る。
【0072】
ここで使用する“脱グリコシル化PH20ポリペチド”は、全ての可能なグリコシル化部位より少なくグリコシル化されている、PH20ポリペチドをいう。脱グリコシル化は、例えば、グリコシル化の除去、その阻止またはポリペチドからグリコシル化部位を排除する修飾によりなし得る。特定のN−グリコシル化部位は活性に必要でなく、他のものは必要である。
【0073】
ここで使用する“ポリマー”は、反復単位から成る任意の高分子量天然または合成部分をいう。ポリマーは、ポリエチレングリコール部分、デキストラン、セルロースおよびシアル酸を含むが、これらに限定されない。これらおよび他の例示的ポリマーをここに記載するが、その多くが当分野で知られる。ここでの目的のために、ポリマーを直接的またはリンカーを介して間接的に、ポリペチドにコンジュゲート、すなわち安定に結合できる。このようなポリマーコンジュゲートは、典型的に血清半減期が延びており、シアル部分、ペグ化部分、デキストランおよび糖およびグリコシル化のような他の部分を含むが、これらに限定されない。例えば、可溶性PH20またはrHuPH20のようなヒアルロニダーゼをポリマーとコンジュゲートできる。
【0074】
ここで使用する“ペグ化“は、典型的に、ヒアルロナン分解酵素の半減期を延長するための、ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素を含むタンパク質への、ポリエチレングリコール(ペグ化部分PEG)のような重合体分子の共有結合または他の安定な方法による結合をいう。
【0075】
ここで使用する抗癌剤または化学療法剤は、癌細胞のような急速に分裂する細胞を死滅させ得る薬剤をいう。当業者は、化学療法剤を含む抗癌剤を熟知している。薬剤の例をここに記載する。
【0076】
ここで使用するヌクレオシドアナログ(または類似体)は、DNA複製中にプリンまたはピリミジンヌクレオシドのような核酸の構成要素の一つに置き換わるまたは模倣する薬剤をいう。この過程は、さらなるヌクレオシドが結合できないため、腫瘍増殖を停止できる。ヌクレオシドアナログの例はゲムシタビンであり、これはデオキシシチジンアナログであり、代謝活性化により、ヌクレオシドシチジンを模倣し、置き換わってDNAに取り込まれ、DNA合成を競合的に阻害する三リン酸化物を形成する。
【0077】
ここで使用するヌクレオシドデアミナーゼは、ヌクレオシドの脱アミノ化を行う酵素をいう。例えば、シチジンデアミナーゼ(CDA)は、シチジンおよびデオキシシチジンをそれぞれウリジンおよびデオキシウリジンに脱アミノ化する。アデノシンデアミナーゼ(ADA)はアデノシンを脱アミノ化し、それをアミノ基のヒドロキシル基への置換により関連するヌクレオシドイノシンに変換する。
【0078】
ここで使用するヌクレオシドデアミナーゼの基質は、ヌクレオシドデアミナーゼ存在下で不活性代謝物に脱アミノ化され、それゆえに、不活性化され得る分子である。脱アミノ化を評価するためのアッセイは当業者に知られ、代謝物および脱アミノ化代謝物の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)またはマススペクトロメトリー、過剰ウラシル−DNAグリコシラーゼを使用するUDGベースのデアミナーゼアッセイのような脱アミノ化アッセイ(例えばMorgan et al. (2004) J. Biol. Chem., 279:52353-52360参照)またはヌクレオシドデアミナーゼを発現することが知られる細胞における細胞毒性の評価によるものを含むが、これらに限定されない。
【0079】
ここで使用する用語“ヌクレオシドデアミナーゼタンパク質レベルまたはタンパク質活性を低下させるのに十分”は、ヌクレオシドデアミナーゼの活性を阻害するために必要なタキサンの量をいう。例えば、阻害を、上記の脱アミノ化についてのアッセイを使用する、デアミナーゼ(例えばシチジンデアミナーゼ)の脱アミノ化活性のアッセイによっても評価できる。阻害はまた細胞内デアミナーゼタンパク質レベルのアッセイによっても評価できる。細胞内タンパク質を評価するアッセイは当業者に周知であり、例えば、細胞ベースのELISA、フローサイトメトリーまたはウェスタンブロットのようなタンパク質検出方法を含むが、これらに限定されない。一般に、このようなアッセイは、細胞ライセートまたは透過性細胞で実施できる。例えば、シチジンデアミナーゼのウェスタンブロットは、全細胞ライセートを可溶化し、タンパク質を分離し、CDAに対する抗体(例えばCat. No. ab82346, Abcam)を使用してデアミナーゼに対して免疫ブロットし、二次ホースラディッシュペルオキシダーゼ抗体とインキュベートし、検出することにより実施できる。一般に、タンパク質レベルまたは活性が少なくともまたは少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上低下したならば、量はヌクレオシドデアミナーゼタンパク質レベルまたはタンパク質活性を低下させるのに十分である。
【0080】
ここで使用するプロドラッグは、生体内変換後薬理活性を示す化合物である。例えば、ゲムシタビンのようなヌクレオシドアナログはプロドラッグであり、デオキシシチジンキナーゼによる細胞内変換により2種の活性代謝物、ゲムシタビン二リン酸およびゲムシタビン三リン酸への変換結果として活性が生じる。三リン酸(ジフルオロデオキシシチジン三リン酸)は、DNAへの取り込みについて内在性デオキシヌクレオシド三リン酸と競合する。
【0081】
ここで使用する誘導体は、対照薬物または薬剤から変換または修飾を受けているが、該対照薬物または薬剤と比較して、なお活性を保持する(例えば高いまたは低い活性を示す)薬物の形態をいう。典型的に、化合物の誘導体形態は、化合物の側鎖が修飾または変更されていることを意味する。
【0082】
ここで使用する、薬物または薬剤の類似体またはアナログは、対照薬物と関連するが、化学および生物活性は異なり得る、薬物または薬剤である。典型的に、アナログは、対照薬物または薬剤と同等の活性を示すが、活性は増加していても、低下していても、または他に改善されていてもよい。典型的に、化合物または薬物の類似体形態は、構造の主鎖コアが対照薬物と比較して修飾または変換されていることを意味する。
【0083】
ここで使用する“活性”は、完全長(完全)タンパク質と関連する、ポリペチドまたはその一部の機能的活性をいう。例えば、ポリペチドの活性フラグメントは、完全長タンパク質の活性を示し得る。機能的活性は、生物活性、触媒または酵素活性、抗原性(ポリペチドと結合するまたは抗ポリペチド抗体と結合について競合する能力)、免疫原性、多量体を形成する能力およびポリペチドの受容体またはリガンドと特異的に結合する能力を含むが、これらに限定されない。
【0084】
ここで使用する“ヒアルロニダーゼ活性”は、ヒアルロン酸の開裂を酵素的に触媒する能力をいう。米国薬局方(USP)XXIIヒアルロニダーゼのアッセイは、ヒアルロニダーゼ活性を、酵素を30分、37℃でヒアルロン酸(HA)と反応させた後に残存している高分子量ヒアルロン酸またはヒアルロナン基質の量の測定により間接的に決定する(USP XXII-NF XVII (1990) 644-645 United States Pharmacopeia Convention, Inc, Rockville, MD)。対照標準溶液をアッセイで使用して、可溶性PH20およびesPH20を含むPH20のようなヒアルロニダーゼのヒアルロニダーゼ活性を任意のヒアルロニダーゼに対する相対的活性(単位)で確定できる。それを決定するためのインビトロアッセイは当分野で知られ、ここに記載する。アッセイの例は、未開裂ヒアルロン酸が血清アルブミンと結合したときに形成される不溶性沈殿を検出することにより間接的にヒアルロニダーゼによるヒアルロン酸の開裂を測定する微小濁度アッセイおよびマイクロタイタープレートウェルに非共有結合により結合した残存ビオチニル化ヒアルロン酸をストレプトアビジン−ホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲートおよび発色性基質により検出することにより間接的にヒアルロン酸の開裂を測定するビオチニル化ヒアルロン酸アッセイを含む。対照標準を使用し、例えば、試験したヒアルロニダーゼの活性(単位)を決定するための標準曲線を作成できる。
【0085】
ここで使用する比活性は、タンパク質mgあたりの活性の単位をいう。ヒアルロニダーゼのmgは、M−1cm−1の単位でモル吸光係数約1.7と仮定して280nmでの溶液の吸収により定義する。
【0086】
ここで使用する“中性活性”は、中性pH(例えば正確にまたは約pH7.0)でヒアルロン酸開裂を酵素的に触媒するPH20ポリペチドの能力をいう。
【0087】
ここで使用する“GPIアンカー付着シグナル配列”は、ERの管腔内で、予め形成されたGPIアンカーのポリペチドへの付着を指向するアミノ酸のC末端配列である。GPIアンカー付着シグナル配列は、GPIアンカー型PH20ポリペチドのようなGPIアンカーポリペチドの前駆体ポリペチドに存在する。C末端GPIアンカー付着シグナル配列は、典型的に優勢に8〜20アミノ酸の疎水性領域を含み、その前に8〜12アミノ酸の親水性スペーサー領域があり、ω部位またはGPIアンカー付着部位の直ぐ下流である。GPIアンカー付着シグナル配列は当分野で周知の方法を使用して同定できる。これらは、ExPASy Proteomics tools site(例えばthe World Wide Web site expasy.ch/tools/)のような生物情報学ウェブサイト上で容易に入手可能なものを含む、インシリコ方法およびアルゴリズム(例えばUdenfriend et al. (1995) Methods Enzymol. 250:571-582, Eisenhaber et al., (1999) J. Biol. Chem. 292: 741-758, Fankhauser et al., (2005) Bioinformatics 21:1846-1852, Omaetxebarria et al., (2007) Proteomics 7:1951-1960, Pierleoni et al., (2008) BMC Bioinformatics 9:392参照)を含むが、これらに限定されない。
【0088】
ここで使用する“核酸”は、ペプチド核酸(PNA)およびその混合物を含む、DNA、RNAおよびそのアナログを含む。核酸は一本鎖でも二本鎖でもよい。所望により蛍光または放射標識のような検出可能標識で標識されていてよい、プローブまたはプライマーについて述べるとき、一本鎖分子が意図される。このような分子は、典型的にライブラリーのプロービングまたはプライミングのために標的が統計学的に特有であるかまたは低コピー数(典型的に5未満、一般に3未満)であるような長さである。一般にプローブまたはプライマーは、目的の遺伝子と相補性のまたは同一の少なくとも14、16または30連続ヌクレオチドの配列を含む。プローブおよびプライマーは10、20、30、50、100またはそれ以上の核酸長であり得る。
【0089】
ここで使用するペプチドは、2アミノ酸長以上であり、かつ40アミノ酸長以下であるポリペチドをいう。
【0090】
ここで使用する、ここに提供するアミノ酸の種々の配列で見られるアミノ酸は、既知の三文字または一文字略語(表1)によって区別される。種々の核酸フラグメントに見られるヌクレオチドは、当分野で慣用的に使用さえる標準的一文字表記で指定する。
【0091】
ここで使用する“アミノ酸”は、アミノ基およびカルボン酸基を含む有機化合物である。ポリペチドは2個以上のアミノ酸を含む。ここでの目的のために、アミノ酸は20種の天然に存在するアミノ酸、非天然アミノ酸およびアミノ酸アナログ(すなわち、α−炭素が側鎖を有するアミノ酸)を含む。
【0092】
ここで使用する“アミノ酸残基”は、ポリペチドのペプチド結合における化学消化(加水分解)により形成されるアミノ酸をいう。ここに記載するアミノ酸残基は、“L”異性体であると仮定される。“D”型の残基は、そのように指定されるが、得られるポリペチドが所望の機能的特性を維持する限り、任意のL−アミノ酸残基に代わり得る。NHは、ポリペチドのアミノ末端に存在する遊離アミノ基を示す。COOHは、ポリペチドのカルボキシル末端に存在する遊離カルボキシ基を示す。J. Biol. Chem., 243: 3557-3559 (1968)に記載され、37 C.F.R. §§ 1.821-1.822で採用された標準的ポリペプチド命名法に従って、アミノ酸残基の省略表記法を表1に示す。
【表1】
【0093】
ここで使用する式で表されるアミノ酸残基配列は、全て、左から右に、アミノ末端からカルボキシル末端に向かう通常の向きで表されている。また、“アミノ酸残基”という表現は、対応表(表1)に挙げたアミノ酸ならびに37C.F.R.§§1.821〜1.822に記載されている修飾アミノ酸および異型アミノ酸は、同文献を引用することにより本明細書に組み込まれ、包括的に定義される。さらにまた、アミノ酸残基配列の最初または最後にあるハイフン記号は、1つ以上のアミノ酸残基のさらなる配列へのペプチド結合、アミノ末端基(例えばNH)またはカルボキシル末端基(例えばCOOH)へのペプチド結合を示す。
【0094】
ここで使用する“天然に存在するα−アミノ酸”は、ヒトにおけるその同族mRNAコドンによる荷電tRNA分子の特異的認識によりタンパク質に取り込まれる、自然に見られる20種のα−アミノ酸の残基である。天然に存在しないアミノ酸は、それゆえに、例えば、20種の天然に存在するアミノ酸以外のアミノ酸またはアミノ酸アナログを含み、アミノ酸のD−立体異性体を含むが、これらに限定されない。非天然アミノ酸の例はここに記載し、当業者に知られる。
【0095】
ここで使用するDNA構築物は、自然では見られない方法で組み合わさり、並置されたDNAのセグメントを含む、一本鎖または二本鎖の、直鎖状または環状DNA分子である。DNA構築物は人為的操作の結果として存在し、クローンおよび操作された分子の他のコピーを含む。
【0096】
ここで使用するDNAセグメントは、指定された属性を有する大きなDNA分子の一部である。例えば、特定のポリペチドをコードするDNAセグメントは、プラスミドまたはプラスミドフラグメントのような長いDNA分子の一部であり、これは、5’から3’方向に読んだとき、特定のポリペチドのアミノ酸の配列をコードする。
【0097】
ここで使用する用語ポリヌクレオチドは、5’から3’末端に読むデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド塩基の一本鎖または二本鎖ポリマーを意味する。ポリヌクレオチドはRNAおよびDNAを含み、天然源から単離しても、インビトロで合成しても、天然分子と合成分子の組み合わせから製造してもよい。ポリヌクレオチド分子の長さは、ここではヌクレオチド(“nt”と略す)または塩基対(“bp”と略す)に基づいて示す。用語ヌクレオチドは、文脈が許容するならば、一本鎖および二本鎖分子について使用する。本用語を二本鎖分子に適用するとき、それは全長を示すために使用し、用語塩基対と等しいと理解される。二本鎖ポリヌクレオチドの2本の鎖の長さはわずかに違ってよく、その末端はずれていてよく、それゆえに、二本鎖ポリヌクレオチド分子内の全てのヌクレオチドは対形成し得ないことは当業者に理解される。このような不対末端は、一般に、20ヌクレオチド長を超えない。
【0098】
ここで使用する2つのタンパク質または核酸間の“類似性”とは、タンパク質のアミノ酸配列間または核酸のヌクレオチド配列間の類縁性をいう。類似性は、残基の配列およびそこに含まれる残基の同一性および/または相同性の度合いに基づくことができる。タンパク質間または核酸間の類似性の度合いを評価するための方法は、当業者には知られている。例えば、配列類似性を評価する一方法では、2つのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を、それら配列間の同一性が最大レベルになるように整列させる。“同一性”とは、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列が不変である程度をいう。アミノ酸配列の整列では(また、ある程度はヌクレオチド配列の整列でも)、アミノ酸(またはヌクレオチド)の保存的相違および/または頻繁な置換も考慮することができる。保存的相違とは、関与する残基の物理化学的性質が維持されるような相違である。整列はグローバル(配列の全長にわたり、全ての残基を含む、比較配列の整列)またはローカル(配列のうち、最も類似する1または複数の領域だけを含む部分の整列)であることができる。
【0099】
“同一性”そのものは、当技術分野で認められている意味を持ち、公表された技法を使って算出することができる(例えばComputational Molecular Biology, Lesk, A.M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D.W., ed., Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.M., and Griffin, H.G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; and Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991参照)。2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド間の同一性を測定するための方法はいくつか存在するが、“同一性”という用語は当業者にはよく知られている(Carrillo, H. & Lipman, D., SIAM J Applied Math 48:1073 (1988))。
【0100】
ここで使用する相同(核酸および/またはアミノ酸配列に関して)は、約25%以上の配列相同性、典型的には、25%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上または95%以上の配列相同性を意味し、必要であれば正確なパーセンテージを指定することができる。ここでの目的のために用語“相同性”および“同一性”という用語は、別段の指示がない限り、しばしば互換的に使用される。一般に、相同率または同一率を決定するには、最も高度な一致が得られるように配列が整列される(例えば:Computational Molecular Biology, Lesk, A.M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D.W., ed., Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.M., and Griffin, H.G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; and Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991; Carrillo et al. (1988) SIAM J Applied Math 48:1073参照)。配列相同性により、保存されているアミノ酸の数は、標準的なアラインメントアルゴリズムプログラムで決定され、各供給者によって設定されたデフォルトギャップペナルティを用いて使用することができる。実質的に相同な核酸分子は、典型的には、中ストリンジェンシーまたは高ストリンジェンシーで、目的とする対象の核酸の全長にわたってハイブリダイズする。ハイブリダイズする核酸分子中のコドンの代わりに縮重したコドンを含有する核酸分子も意図される。
【0101】
任意の2分子が、少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%“同一”または“相同”なヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を持つかどうかは、“FASTA”プログラムなどの公知コンピュータアルゴリズムを使用し、例えばPearson et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444に記載されているデフォルトパラメータを使って決定することができる(他のプログラムとしては、GCGプログラムパッケージ((Devereux, J., et al., Nucleic Acids Research 12(I):387 (1984)))、BLASTP、BLASTN、FASTA(Altschul, S.F., et al., J Mol Biol 215:403 (1990)); Guide to Huge Computers, Martin J. Bishop, ed., Academic Press, San Diego, 1994, and Carrillo et al. (1988) SIAM J Applied Math 48:1073がある)。例えば、米国国立バイオテクノロジー情報センターデータベースのBLAST機能を使って同一性を決定することができる。他の市販プログラムまたは公に利用可能なプログラムには、DNAStar “MegAlign” program (Madison, WI)およびUniversity of Wisconsin Genetics Computer Group (UWG) “Gap” program (Madison WI)などがある。タンパク質分子および/または核酸分子の相同率または同一率は、例えば、GAPコンピュータプログラム(例えばNeedleman et al. (1970) J. Mol. Biol. 48:443, as revised by Smith and Waterman (1981) Adv. Appl. Math. 2:482)を使って配列情報を比較することによって決定することができる。概説すれば、GAPプログラムは、類似性を、整列させた記号(すなわちヌクレオチドまたはアミノ酸)のうち、類似しているものの数を、それら2つの配列の短い方の配列中の記号の総数で割ったものと定義している。GAPプログラムのデフォルトパラメータは、(1)Schwartz and Dayhoff, eds., ATLAS OF PROTEIN SEQUENCE AND STRUCTURE, National Biomedical Research Foundation, pp. 353 358 (1979)に記載されている単項比較マトリックス(unary comparison matrix)(一致に対して1の値を、不一致に対して0の値を含む)およびGribskov et al. (1986) Nucl. Acids Res. 14:6745の加重比較マトリックス(weighed comparison matix);(2)各ギャップに対して3.0のペナルティおよび各ギャップ中の各記号に対して0.10の追加ペナルティ;ならびに(3)エンドギャップ(end gap)ペナルティなしが含まれる。
【0102】
したがって、ここで使用する“同一性”または“相同性”という用語は、試験ポリペプチドまたは試験ポリヌクレオチドと対照ポリペプチドまたは対照ポリヌクレオチドとの比較をである。本明細書で使用する“少なくとも90%同一”という用語は、そのポリペプチドの基準対照核酸配列または対照アミノ酸配列に対する90〜99.99%の%同一性
をいう。90%以上のレベルの同一性とは、例えば、比較される試験ポリペプチドと対照ポリペプチドの長さが100アミノ酸であるとするとき、対照ポリペプチド中のアミノ酸と異なる試験ポリペプチド中のアミノ酸が10%(すなわち100個中10個)を上回らないことを示す。同様の比較を、試験ポリヌクレオチドと対照ポリヌクレオチドの間でも行うことができる。そのような相違は、ポリペプチドの全長にわたってランダムに分布する点突然変異として現れるか、種々の長さを持つ1つ以上の位置に塊(Cluster)を形成し、許容される最大値までの、例えば100個中10個のアミノ酸相違(約90%の同一性)までであり得る。相違は、核酸またはアミノ酸の置換、挿入または欠失と定義される。約85〜90%を上回る相同性または同一性のレベルでは、結果が、プログラムにも、設定されたギャップパラメータにも依存せず、かかる高レベルの同一性は、多くの場合、ソフトウェアに頼ることなく手動整列によっても、容易に評価することができる。
【0103】
ここで使用する、整列された配列とは、相同性(類似性および/または同一性)を使った、ヌクレオチド配列中またはアミノ酸配列中の対応する位置の整列をいう。典型的には、50%以上が同一である関係する2つ以上の配列が整列される。整列された一組の配列とは、対応する位置で整列させた2つ以上の配列を指し、RNAに由来する配列、例えばESTおよび他のcDNAを、ゲノムDNA配列と整列させたものを含み得る。
【0104】
ここで使用する“プライマー”は、適当な緩衝液および適切な温度で、適当な条件下(例えば、4種のヌクレオシド三リン酸および重合剤、例えばDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼまたは逆転写酵素存在下)、鋳型指示DNA合成の開始点として作用できる核酸分子をいう。いうまでもなく、ある種の核酸分子は“プローブ”および“プライマー”として作用し得る。しかしながら、プライマーは伸張のために3’ヒドロキシル基を有する。プライマーは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素(RT)−PCR、RNA PCR、LCR、マルチプレックスPCR、パンハンドルPCR、キャプチャーPCR、発現PCR、3’および5’RACE、インサイチュPCR、ライゲーション介在PCRおよび他の増幅プロトコルを含む、多様な方法に使用できる。
【0105】
ここで使用する“プライマー対”は、増幅する(例えばPCRによる)配列の5’末端とハイブリダイズする5’(上流)プライマーおよび増幅する配列の3’末端の相補体とハイブリダイズする3’(下流)プライマーを含む、一組のプライマーをいう。
【0106】
ここで使用する“特異的にハイブリダイズする”は、標的核酸分子への核酸分子(例えばオリゴヌクレオチド)の、相補的塩基対形成によるアニーリングをいう。当業者は、特定の分子の長さおよび構成のような、特異的ハイブリダイゼーションに影響するインビトロおよびインビボパラメータを熟知する。インビトロハイブリダイゼーションに特に関連するパラメータは、さらにアニーリングおよび洗浄温度、緩衝液組成および塩濃度を含む。高ストリンジェンシーで非特異的に結合した核酸分子を除去する洗浄条件の例は、0.1×SSPE、0.1%SDS、65℃および中ストリンジェンシーでは0.2×SSPE、0.1%SDS、50℃である。相当するストリンジェンシー条件は当分野で知られる。当業者は、特定の適用に適する標的核酸分子への核酸分子の特異的ハイブリダイゼーションを達成するために、これらのパラメータを容易に調節できる。相補性は、2個のヌクレオチド配列をいうとき、ヌクレオチドの2個の配列が、典型的に反対のヌクレオチドの間で25%未満、15%未満または5%未満のミスマッチでハイブリダイズできることを意味する。必要性あれば、相補性のパーセントは特定される。典型的に2個の分子を、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするように選択する。
【0107】
ここで使用する、生成物と実質的に同一とは、該生成物と実質的に同一の生成物を、該生成物の代わりに使用できる程度に、目的の特性が十分に変化せずに維持されているように類似していることを意味する。
【0108】
ここで使用する限り、用語“実質的に同一”または“類似”は、関連分野の当業者により理解されるとおり、状況により変化することも理解すべきである。
【0109】
ここで使用するアレル変異型またはアレル変異は、遺伝子のいずれかの2種以上の変異形態が同一染色体座を占拠することをいう。アレル変異は、変異により自然に生じ、集団内の表現型多型をもたらし得る。遺伝子変異はサイレント(コード化ポリペチドに変化なし)でも、別のアミノ酸配列を有するポリペチドをコードしてもよい。用語“アレル変異型”は、ここではまた、遺伝子のアレル変異型によりコードされるタンパク質を指すためにも使用する。典型的に、遺伝子の対照形態は集団または種の一対照メンバーからのポリペチドの野生型および/または優勢型をコードする。典型的に、種間の変異型を含むアレル変異型は、典型的に同一種の野生型および/または優勢型と少なくとも80%、90%以上のアミノ酸同一性を有し、同一性の程度は、遺伝子および比較が種間であるか種内であるかによる。一般に、種内アレル変異型は、野生型および/または優勢型のポリペチドと96%、97%、98%、99%以上の同一性を含む、野生型および/または優勢型と少なくとも約80%、85%、90%、95%以上の同一性を有する。ここでのアレル変異型への言及は、一般に同一種のメンバー間のタンパク質の多様性をいう。
【0110】
ここで使用する“アレル”は、ここで“アレル変異型”と交換可能に使用され、遺伝子またはその一部の代替形態をいう。アレルは相同染色体上の同一座または位置を占拠する。対象が遺伝子の2個の同一アレルを有するとき、対象は、その遺伝子またはアレルに対してホモ接合という。対象が遺伝子の2種のアレルを有するとき、対象はその遺伝子についてヘテロ接合という。特定の遺伝子のアレルは、一ヌクレオチドまたは数ヌクレオチドが互いに異なることがあり、ヌクレオチドの置換、欠失および挿入のような修飾を含み得る。遺伝子のアレルはまた変異を含む遺伝子の形態でもあり得る。
【0111】
ここで使用する種変異型は、マウスとヒトのような異なる哺乳動物種を含む、異なる種間のポリペチドにおける変異型をいう。例えばPH20について、ここに提供される種変異型の例は、ヒト、チンパンジー、マカクおよびカニクイザルを含むが、これらに限定されない霊長類PH20である。一般に、種変異型は、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%またはそれ以上の配列同一性を有する。種変異型間の対応する残基は、例えば、配列間の同一性が95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上となるように、ヌクレオチドまたは残基のマッチング数を最大にするために配列を比較および整列することにより決定できる。次いで、目的の位置に、対照核酸分子で割り当てられた番号を与える。アラインメントは、特に、配列同一性が80%より大きいとき、手動または目視により行い得る。
【0112】
ここで使用するヒトタンパク質は、全アレル変異型およびその保存的変異型を含む、ヒトのゲノムに存在する、DNAのような核酸分子によりコードされるものである。タンパク質の変異形または修飾は、該修飾がヒトタンパク質の野生型または目立った配列に基づくならば、ヒトタンパク質である。
【0113】
ここで使用するスプライスバリアントは、1タイプを超えるmRNAをもたらす、ゲノムDNAの一次転写産物の異なる処理により生じる変異形である。
【0114】
ここで使用する修飾は、ポリペチドのアミノ酸の配列または核酸分子のヌクレオチドの配列の修飾をいい、それぞれアミノ酸およびヌクレオチドの欠失、挿入および交換(例えば置換)を含む。修飾の例は、アミノ酸置換である。アミノ酸置換ポリペチドは、アミノ酸置換を含まないポリペチドと65%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%またはそれ以上の配列同一性を示し得る。アミノ酸置換は保存的でも非保存的でもよい。一般に、ポリペチドへの何らかの修飾は、ポリペチドの活性を保持する。ポリペチドの修飾方法は当業者に日常的であり、例えば、組み換えDNA方法をしようすることによる。
【0115】
ここで使用するアミノ酸の適切な保存的置換は当業者に知られ、一般に得られた分子の生物活性を変えることなく成し得る。当業者は、一般に、ポリペチドの非必須領域の一アミノ酸置換が実質的に生物活性を変えないことを認識する(例えば、Watson et al. Molecular Biology of the Gene, 4th Edition, 1987, The Benjamin/Cummings Pub. co., p.224参照)。このような置換は、次の表2に示すところによってなし得る。
【表2】
【0116】
他の置換も可能であり、経験的にまたは既知保存的置換に従い決定できる。
【0117】
ここで使用する用語プロモーターは、RNAポリメラーゼに結合し、転写を開始するDNA配列を含む遺伝子の一部を意味する。プロモーター配列は一般に遺伝子の5’非コーディング領域に見られるが、そうでない場合もある。
【0118】
ここで使用する単離または精製ポリペチドまたはタンパク質またはその生物活性部分は、タンパク質が由来する細胞または組織からの細胞性物質または他の汚染タンパク質を実質的に含まず、また化学合成されたとき化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない。当業者がこのような純度を評価するために使用する、薄層クロマトグラフィー(TLC)、ゲル電気泳動および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のような標準的分析方法により分析して、容易に検出可能な不純物を含まないことが明らかであるか、またはさらなる精製が、物質の酵素活性および生物活性のような物理的および化学的特性を検出可能な程度に変えないように十分に純粋であるならば、調製物は実質的に不純物を含まないと決定される。実質的に化学的に純粋な化合物を製造するための化合物の精製方法は当業者に知られている。しかしながら、実質的に化学的に純粋な化合物は、立体異性体の混合物であり得る。このような場合、さらなる精製が化合物の比活性を高める。
【0119】
それゆえに、実質的に精製した可溶性PH20のような実質的に精製したポリペチドは、タンパク質がその単離源または組換え生産源となった細胞の細胞成分から分離されているタンパク質の調製物をいう。ある態様において、細胞性物質を実質的に含まないという用語は、約30%未満(乾燥重量で)の非酵素タンパク質(ここでは夾雑タンパク質ともいう)、一般には約20%未満の非酵素タンパク質または約10%未満の非酵素タンパク質または約5%未満の非酵素タンパク質を含む酵素タンパク質の調製物を包含する。酵素タンパク質が組換え生産される場合、それは培養培地も実質的に含まない。すなわち培養培地は、酵素タンパク質調製物の体積の20%、10%もしくは5%(各数値はその概数(約)を含む)未満に相当する。
【0120】
ここで使用する化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まないという用語は、タンパク質がそのタンパク質の合成に関与した化学的前駆体または他の化学物質から分離されている酵素タンパク質の調製物を包含する。この用語は、含まれる化学的前駆体または非酵素化学物質もしくは構成要素が約30%(乾燥重量で)、20%、10%、5%またはそれ以下より少ない酵素タンパク質の調製物を包含する。
【0121】
ここで使用する例えば合成核酸分子または合成遺伝子または合成ペプチドなどに関していう合成とは、組換え法および/または化学合成法によって製造される核酸分子またはポリペプチド分子をいう。
【0122】
ここで使用する組換えDNA法を使った組み換え手段による産生とは、クローン化されたDNAによってコードされるタンパク質を発現させるために、分子生物学の周知の方法を使用することを意味する。
【0123】
ここで使用するベクター(またはプラスミド)は、異種核酸をその発現またはその複製を目的として細胞中に導入するために使用される不連続な要素をいう。ベクターは一般に、エピソームであり続けるが、ゲノムの染色体への遺伝子またはその一部の組込みが達成されるように設計することもできる。酵母人工染色体および哺乳類人工染色体などの人工染色体であるベクターも考えられる。そのような運搬体の選択と使用は当業者にはよく知られている。
【0124】
ここで使用する発現ベクターは、当該DNAフラグメントの発現を達成する能力を持つプロモーター領域などの調節配列に作動的に結合されたDNAを発現させる能力を持つベクターを包含する。そのような追加セグメントはプロモーター配列およびターミネーター配列を含むことができ、場合によっては、1つ以上の複製起点、1つ以上の選択可能マーカー、エンハンサー、ポリアデニル化シグナルなども含むことができる。発現ベクターは一般にプラスミドまたはウイルスDNAから誘導されるか、または両方の要素を含有することができる。したがって、発現ベクターとは、適当な宿主細胞に導入された時にクローン化されたDNAの発現をもたらす、プラスミド、ファージ、組換えウイルスまたは他のベクターなどの組換えDNAまたはRNAコンストラクトをいう。適当な発現ベクターは当業者にはよく知られており、真核細胞および/または原核細胞中で複製可能なものや、エピソームであり続けるもの、または宿主細胞ゲノムに組み込まれるものがある。
【0125】
ここで使用するベクターは、“ウイルスベクター”または“ウイルス様ベクター”も包含する。ウイルス様ベクターは、(運搬体またはシャトルとして)細胞中に外来遺伝子を導入するためにそれら外来遺伝子に作動的に結合された改変ウイルスである。
【0126】
ここで使用するDNAセグメントに関して“作動可能に結合”または“作動的に結合”とは、複数のセグメントが、その意図された目的のために、それらが協力して機能するように、例えば転写がプロモーターの下流かつ任意の転写配列の上流で開始するように、配置されることを意味する。プロモーターとは、通常、転写装置がそこに結合して転写を開始するドメインであり、その転写装置はコードセグメントを通ってターミネーターまで進行する。
【0127】
ここで使用する用語“評価”は、試料中に存在するプロテアーゼまたはそのドメインの活性について絶対値を得るという意味での、そしてまた活性のレベルを示す指数、比、パーセンテージ、視覚的または他の値を得るという意味での、定量的および定性的決定を包含するものとする。評価は直接的でも間接的でもよい。例えば、化学種は、当然、酵素開裂された生成物自体でなくてよく、例えばその誘導体またはある他の物質であり得る。例えば、開裂生成物の検出は、蛍光部分のような検出可能部分であり得る。
【0128】
ここで使用する生物学的活性とは、化合物のインビボ活性、または化合物、組成物もしくは他の混合物をインビボ投与した時に起こる生理学的応答をいう。したがって生物学的活性は、そのような化合物、組成物および混合物の治療効果および薬理活性を包含する。生物学的活性は、そのような活性を試験または使用するために設計されたインビトロ系で観察することができる。したがって、ここでの目的のために、ヒアルロニダーゼ酵素の生物活性は、そのヒアルロン酸の分解である。
【0129】
2つの核酸配列に関してここで使用する等価とは、問題の2つの配列が同じアミノ酸配列または等価なタンパク質をコードすることを意味する。2つのタンパク質またはペプチドに関して等価という場合、それは、それら2つのタンパク質またはペプチドが実質的に同じアミノ酸配列を持ち、アミノ酸置換はそのタンパク質またはペプチドの活性または機能を実質的に変化させないものだけであることを意味する。等価が性質を指す場合、その性質は同程度に存在する必要はないが(例えば2つのペプチドは同じタイプの酵素活性を異なる比率で示すことができる)、それらの活性は通常、実質的に同じである。
【0130】
ここで使用する“調節する”および“調節”または“変更”は、タンパク質のような分子の活性の変化をいう。活性の例は、シグナル伝達のような生物活性を含むが、これに限定されない。調節は活性の上昇(すなわち、上方制御またはアゴニスト活性)、活性の減少(すなわち、下方制御または阻害)または活性の他の何らかの変更(例えば周期性、頻度、持続時間、動態または他のパラメータの変更)を含み得る。調節は状況に依存的でありえて、典型的に調節は、指定状態、例えば、野生型タンパク質、構成的状態のタンパク質または指定細胞型または状態で発現されるタンパク質と比較する。
【0131】
ここで使用する直接投与は、希釈せずに投与する組成物をいう。
【0132】
ここで使用する単回投与製剤は、1回だけ使用する製剤をいう。典型的に、単回投与製剤は直接投与用である。
【0133】
ここで使用する反復投与製剤は、反復投与において使用する製剤をいう。
【0134】
ここで使用する組成物は、任意の混合物をいう。溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水性、非水性またはこれらの任意の組み合わせであり得る。
【0135】
ここで使用する組み合わせは、2種以上の物質の何らかの組み合わせをいう。組み合わせは2種以上の個別の物質、例えば2種の組成物または2種のコレクションであってよく、その混合物、例えば、2種以上の物質の一混合物またはこの任意の異型であり得る。組み合わせの要素は一般に機能的に結合しているかまたは関連する。
【0136】
ここで使用する“疾患または障害”は、感染、後天的状態、遺伝的状態などを含むが、これらに限定されない原因または状態に起因し、同定可能な症状を特徴とする、ある生物における病理学的状態をいう。ここで目的とする疾患および障害はヒアルロナン関連疾患および障害である。
【0137】
ここで使用する“静脈内投与”は、静脈への治療剤の直接的な送達をいう。
【0138】
ここで使用する“ヒアルロナン関連癌”または“ヒアルロナン富癌”は、ヒアルロナンレベルが疾患または状態の原因として、結果として上昇しているかまたはその他の態様で観察される癌をいう。ヒアルロナン関連癌または腫瘍は、組織または細胞のヒアルロナンレベルの上昇、間質性流圧の上昇、血管容積の減少および/または組織の水分含量の増加と関係する。このような癌は、例えば、後期癌、転移癌、未分化癌、卵巣癌、上皮内癌(ISC)、扁平上皮細胞癌(SCC)、前立腺癌、膵癌、非小細胞性肺癌、乳癌、結腸癌および他の癌のような固形腫瘍を含む腫瘍を含む。
【0139】
ここで使用するヒアルロナンレベル上昇は、疾患または状態によって、疾患の結果としてまたはその他の態様で観察される特定の組織、体液または細胞におけるヒアルロナン量をいう。例えば、ヒアルロナン富腫瘍の存在の結果として、ヒアルロナン(HA)レベルは、血液、尿、唾液および血清のような体液および/または腫瘍性組織または細胞で上昇し得る。該レベルを、標準またはHA関連疾患を有しない対象からの同等なサンプルのような適切な対照と比較できる。
【0140】
ここで使用する、ある疾患または状態を持つ対象を“処置する”とは、処置後に、その対象の症状が部分的にまたは完全に治癒すること、または静的状態を保つことを意味する。したがって、処置は、予防、治療および/または治癒を包含する。予防とは、可能性のある疾患の防止および/または症状の悪化もしくは疾患の進行の防止をいう。
【0141】
ここで使用する薬学的有効剤は、例えば、化学療法剤、麻酔剤、血管収縮剤、分散剤、小分子薬物および治療タンパク質を含む既存の治療剤を含むが、これらに限定されない、あらゆる治療剤または生理活性剤を含む。
【0142】
ここで使用する処置は、ある状態、障害もしくは疾患または他の適応症の症状を回復するか他の有益な形で変化させる、何らかの方法を意味する。
【0143】
ここで使用する治療効果は、疾患または状態の症状を変化(一般に、改善または回復)させるか、疾患または状態を治癒させる、対象の処置に起因する効果を意味する。治療有効量とは、対象への投与後に治療効果をもたらす、組成物、分子または化合物の量をいう。
【0144】
ここで使用する用語“対象”は、ヒトなどの哺乳動物を含む動物をいう。
ここで使用する患者は、疾患または障害の症状を示すヒト対象をいう。
【0145】
ここで使用するほぼ同じは、当業者が同一と見なすまたは許容される誤差範囲内の量を意味する。例えば、典型的に、医薬組成物について、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%または10%以内をほぼ同じと見なす。このような量は、対象による特定の組成物における耐容性に依存して変わり得る。
【0146】
ここで使用する投与レジメは、薬剤、例えば、抗ヒアルロナン剤、例えば可溶性ヒアルロニダーゼまたは他の薬剤を含む組成物の投与量および投与頻度をいう。投与レジメは処置する疾患または状態の関数であり、これに従って変わり得る。
【0147】
ここで使用する投与頻度は、処置剤の連続する投与の間隔をいう。例えば、頻度は数日、数週間または数ヶ月であり得る。例えば、頻度は1週間の1回を超え、例えば、週に2回、週に3回、週に4回、週に5回、週に6回または毎日であり得る。頻度はまた1週間、2週間、3週間または4週間でもあり得る。特定の頻度は処置する特定の疾患または状態の関数である。一般に、頻度は週に1回を超え、一般に週に2回である。
【0148】
ここで使用する“投与サイクル”は、連続投与で繰り返す、酵素および/または第二剤投与の投与レジメの反復スケジュールをいう。例えば、投与サイクルの例は、投与を週に2回3週間、その後1週間の休薬する28日サイクルであり得る。
【0149】
mg/kg対象に基づく投与用量について述べるとき、ここで使用する平均的ヒト対象は、約70kg〜75kg、例えば70kgの体重および体表面積(BSA)1.73を有すると見なす。
【0150】
ここで使用する、医薬組成物または他の治療剤の投与によるような処置による特定の疾患または障害の症状改善は、その組成物または治療薬の投与により、永続的であるか一時的であるか、持続的であるか一過性であるかを問わず、症状の減弱をまたは状態の有害作用の低下、例えば、ペグ化ヒアルロニダーゼのような抗ヒアルロナン剤の投与に起因すると考えることができる、または関連づけることができる、有害作用の低減をいう。
【0151】
ここで使用する防止または予防は、疾患または状態が発生するリスクを低下させる方法をいう。
【0152】
ここで使用する“治療有効量”または“治療有効用量”は、少なくとも、治療効果をもたらすのに十分な、薬剤、化合物、物質、または化合物を含有する組成物の量をいう。したがって、これは、疾患または障害を防止し、治癒させ、寛解させ、抑止し、または部分的に抑止するのに必要な量である。
【0153】
ここで使用する単位投与形態は、当技術分野で知られているように、ヒトおよび動物対象に適し、個別に包装された、物理的に不連続な単位をいう。
【0154】
ここで使用する単回投与製剤は、1回だけ使用する製剤をいう。典型的に、単回投与製剤は直接投与用である。
ここで使用する直接投与は、希釈せずに投与する組成物をいう。
【0155】
ここで使用する“製品”は、製造され販売される物品である。本願の全体にわたって使用されるこの用語は、包装物に含まれているヒアルロナン剤、例えばヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素および第二剤組成物を包含することを意図する。例えば、第二剤はコルチコステロイド、腫瘍標的タキサンまたは化学療法剤である。
【0156】
ここで使用する流体は、流動し得る任意の組成物をいう。したがって流体は、半固形、ペースト、溶液、水性混合物、ゲル、ローション、クリームおよび他のそれに類する組成物の形態を取る組成物を包含する。
【0157】
ここで使用する、ここで提供する組成物の組み合わせ剤のような組み合わせは、組み合わせの要素の結合をいう。
【0158】
ここで使用する“キット”は、本明細書に記載する組成物と、もう一つの品目、例えば再構成、活性化などを目的とするもの、送達、投与、診断および生物学的活性または性質の評価を行うためであるが、これらに限定されない機器/器具などとの組合せをいう。キットは、所望により、使用に関する指示書を含んでよい。
【0159】
ここで使用する細胞抽出物またはライセートは、細胞の溶解または破壊により製造した調製物またはフラクションをいう。
【0160】
ここで使用する動物には、任意の動物、例えば限定するわけではないが、ヒト、ゴリラおよびサルを含む霊長類;マウスおよびラットなどの齧歯類;ニワトリなどの家禽;ヤギ、ウシ、シカ、ヒツジなどの反芻動物;ブタおよび他の動物が含まれる。非ヒト動物として想定される動物にヒトは含まれない。ここに提供されるヒアルロニダーゼは、任意の起源、動物、植物、原核生物および真菌由来である。ほとんどのヒアルロニダーゼが、哺乳動物起源を含む動物起源である。一般にヒアルロニダーゼはヒト起源である。
【0161】
ここで使用する抗癌処置は、癌処置のための薬物および他の薬剤の投与およびまた手術および放射線のような他のプロトコルも含む。抗癌処置は抗癌剤投与を含む。
【0162】
ここで使用する抗癌剤は、抗癌処置に使用するあらゆる薬剤または化合物をいう。これらは、単独でまたは他の化合物と組み合わせで使用したとき、腫瘍および癌と関連する臨床的症状または診断マーカーを軽減、減少、回復、予防または寛解状態の形成または維持を可能にし、ここに提供する組み合わせ剤および組成物で使用できる、あらゆる薬剤を含む。例示的抗癌剤は、単独でまたは化学療法剤、ポリペチド、抗体、ペプチド、小分子または遺伝子治療ベクター、ウイルスまたはDNAのような他の抗癌剤と組み合わせで使用する、ここに提供するペグ化ヒアルロナン分解酵素のようなヒアルロナン分解酵素を含む。
【0163】
ここで使用する対照は、それが試験パラメータで処置されない点以外は、またはそれが血漿試料である場合は、目的とする対象の状態を有さない健常ボランティアから得られたものである点以外は、試験試料と実質的に同一な試料をいう。対照は内部対照であることもある。
【0164】
ここで使用する使用する単数表現は、文脈上そうでないことが明らかでない限り、複数の指示物を包含する。したがって、例えば“細胞外ドメイン”を持つ化合物という記載は、1つまたは複数の細胞外ドメインを持つ化合物を包含する。
【0165】
ここで使用する範囲および量に関しては、特定の数値または範囲に“約”を付する場合がある。この“約”には、まさにその数値も包含される。したがって“約5塩基”は“約5塩基”を意味すると共に“5塩基”も意味する。
【0166】
ここで使用する“任意”または“所望により”は、それに続けて述べられる事象または状況が起こることまたは起こらないこと、およびその説明が、該事象または状況が起こる場合と起こらない場合を包含することを意味する。例えば、場合により置換されている基とは、その基が無置換であるか、または置換されていることを意味する。
【0167】
ここで使用する、任意の保護基、アミノ酸および他の化合物の略号は、別段の表示がない限り、その一般的使用法、広く認識されている略号、またはIUPAC−IUB生化学命名委員会((1972) Biochemistry 11:1726参照)に従う。
【0168】
B. 抗ヒアルロナン剤組み合わせ治療
ここに提供されるのは、癌処置に使用するための、ヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤およびアルブミン結合パクリタキセルのような腫瘍標的タキサンの組み合わせ治療である。例えば、ここに提供されるのは、癌処置に使用するためのポリマー結合ヒアルロナン分解酵素、例えばPEGPH20のようなヒアルロニダーゼおよびアルブミン結合パクリタキセルのような腫瘍標的タキサンの組み合わせ治療である。特に、ここに提供する組み合わせ治療は間質層により浸透不可能である固形腫瘍により特徴付けられるあらゆる癌の処置に使用される。このような癌の例は、膵癌、乳癌、前立腺癌、胃癌、結腸癌、卵巣癌、頭頸部癌およびその他を含むが、これらに限定されない固形癌である。本組み合わせ治療は、さらなる細胞毒性化学療法剤、例えば抗ヒアルロナン剤、例えば、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素および/または腫瘍標的タキサンの一方または両者により活性が増加する(例えば送達増加および/または半減期延長により)なんらかをさらに含み得る。例えば、さらなる化学療法剤は、直接抗腫瘍活性を示すゲムシタビンまたはその誘導体のようなヌクレオシドアナログであり得る。
【0169】
1. 固形腫瘍および腫瘍標的治療
固形腫瘍は、細胞外マトリクスおよび血管網に囲まれた癌細胞および間質細胞(例えば線維芽細胞および炎症性細胞)から成る。間質細胞、細胞外マトリクス成分および/または脈管構造は、一般に正常組織に存在するものと比較して異常である。例えば、多くの固形腫瘍は、正常組織と比較して線維芽細胞の数が増える。また、固形腫瘍の脈管構造は、正常脈管構造と比較して分枝が多く、複雑な構造であり、血管拡張、内皮表層減少および/または血管圧縮により特徴付けられる構造異常を示す。さらに、腫瘍および間質細胞は、例えばコラーゲン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン(例えばヒアルロナン)および高密度塊を形成する他の分子などの細胞外マトリクス成分の複雑なネットワークを形成し、集積して高い腫瘍間質圧に寄与する。末端細動脈および毛細血管における血管内圧を超える高い間質流体圧は、流体および溶質の間質への灌流を阻害する。それゆえに、高間質圧は治療剤の腫瘍組織への取り込みを妨害し、また腫瘍細胞増殖を支持するための腫瘍細胞の増殖特性に影響し得る。
【0170】
腫瘍治療が有効であるために、薬物は効率的に腫瘍血管に存在し、癌細胞に到達するために腫瘍組織を浸透しなければならない。高間質流体圧ならびに細胞外マトリクスおよび関連細胞の高密度組成および組織化が薬物浸透に影響する。その結果、間質バリアはしばしば腫瘍への抗腫瘍剤の浸透を阻止し、これにより、多くの既存癌処置を無効とする。
【0171】
例えば、膵癌は全固形癌の中で最も浸透困難なものの一つである。その結果、膵管腺癌を含む膵癌は、5年生存率は5%未満であるように既存化学療法剤に生来抵抗性であることにより特徴付けられる。膵癌の標準的治療はゲムシタビンでの処置である。ゲムシタビンは患者生存の増加に限定的効果しか有さない。例えば、ゲムシタビン単剤で処置した患者の約1/4しか臨床的有用性を示さず、中央生存期間は5ヶ月を丁度超えるのみであり、これは化学療法剤フルオロウラシル(5−FU)での処置より1ヶ月長いだけであった(Burris et al. (1997) J Clin Oncol, 15:2403-2413)。処置が膵癌手術または他の非化学療法的併行治療を伴う治療設定において、ゲムシタビンは、手術のみを受けた患者と比較して生存を2ヶ月伸ばしたと報告されている(Neuhaus et al. (2008) J. Clin. Oncol. 26:May 20 suppl; abst.)。
【0172】
最近、間質層および関連脈管構造に浸透できる治療剤を含む治療が開発されている。間質を減らし、穿孔し、または他の機作で浸透する薬剤が浸透不可能間質層を特徴とする多くの癌の有望な治療剤と考えられる。このような薬剤は、例えば、アルブミン結合タキサン(Von Hoff et al. (2011) J. Clin. Oncol., 29:4548-54; Frese et al. (2012) Cancer Discovery, 2:260-269)、ヘッジホッグ阻害剤(Olive et al. (2009) Science, 324:1457-61)およびポリマー結合ヒアルロニダーゼ(Provenzano et al. (2012) Cancer Cell, 21:418-429)を含む。これらの処置剤はいずれも、非間質標的化学療法剤による送達増加と関係し、化学療法剤(例えばゲムシタビン)の単剤処置と比較して、抗腫瘍効果の増強および二倍の生存期間をもたらす。
【0173】
a. 腫瘍標的タキサン
パクリタキセル(例えばタキソール(登録商標))およびドセタキセル(例えばタキソテール(登録商標))のようなタキサンは、複数の腫瘍タイプの処置に使用する強力な化学療法剤である。タキサンは、高親和性で微小管と結合することにより有糸分裂阻害剤として作用し、それにより細胞分裂を妨害する。その結果、タキサンは、腫瘍細胞増殖および転移を阻止し、細胞死を起こし得る。治療におけるタキサンの使用は、溶解度および関連毒性、長期全身的利用性および腫瘍間質への到達不能の問題により限定されている。
【0174】
タキサンの治療的使用に関連する問題を克服するために、タキサンのアルブミン結合粒子形態から成るgp60受容体標的ナノ粒子製剤が開発されている。これらは、例えば、ナノ粒子アルブミン結合(nab)−パクリタキセル(ABI-007、例えばアブラキサン(登録商標))およびナノ粒子アルブミン結合ドセタキセル(ABI-008)を含む。Gp60は、血管内皮上のアルブミン受容体である。gp60を介するアルブミン受容体介在取り込みは、細胞内カベオリン1との結合をもたらし、細胞膜の陥入を起こし、カベオラ内容物の細胞外間隙、経細胞輸送および血管外沈着からの結合血漿成分を含む経細胞輸送性小胞(カベオラと命名)を形成する。さらに、アルブミンはまたSPARC(システインに富む酸性分泌タンパク質)に結合し、これは、多様な癌で過発現され、予後不良と関連する細胞外マトリクス糖タンパク質である。その結果、薬物送達のための間質バリアが回避され、薬物の高腫瘍内濃度が達成される。Nab−パクリタキセルは既知溶媒ベースのパクリタキセルと比較して、高腫瘍内濃度を達成でき、バイオアベイラビリティを増加できる(Foote (2007) Biotechnology Annual Review, 13:345)。
【0175】
アルブミン結合タキサンのような腫瘍標的タキサンが間質に浸透し、間質を削減しまたは崩壊させるため、これらの薬剤を、腫瘍への他の薬剤の送達を増強するために他の非間質標的化学療法剤と組み合わせて使用できる。送達を増強する機構は間質構造の崩壊および反応性血管形成の誘発により、これは化学療法剤の灌流および送達の増加に至る(例えば、Frese et al. (2012) Cancer Discovery, 2:260-269参照)。例えばゲムシタビンと組み合わせたアルブミン結合タキサンであるnab−パクリタキセルが、ゲムシタビン単独での処置と比較して、腫瘍内ゲムシタビン量を約2.8倍増加させることが示されている(Von Hoff et al. (2011) J. Clin. Oncol., 29:4548-4554)。組み合わせ治療が、膵癌患者の生存期間を2倍にすることも示された(Von Hoff et al. (2011))。
【0176】
nab−パクリタキセル治療と組み合わせたゲムシタビンの腫瘍内量増加は、より最近、nab−パクリタキセル処置群におけるシチジンデアミナーゼ(Cda)減少と関連する別の機構によると考えられている(Frese et al. (2012) Cancer Discovery 2:260-269)。Cdaは、細胞で遍在的に発現され、ゲムシタビンを代謝物ジフルオロデオキシウリジン(dFdU)への脱アミノ化により不活性化できる。nab−パクリタキセル処置は、mRNAレベルの如何なる調節も伴わず、活性酸素種(ROS)を増加させ、Cdaの分解に至った。それゆえに、nab−パクリタキセルとの共処置は、ゲムシタビン脱アミノ化の減少をもたらし、それゆえに、ゲムシタビンを安定化し、腫瘍内ゲムシタビンレベルを増加させる。
【0177】
b. 抗ヒアルロナン剤
抗ヒアルロナン剤は、合成の阻害または分解の増加によりヒアルロン酸(HA;ここではヒアルロナンとも呼ぶ)レベルを低下させる。例えば、ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素は、ヒアルロン酸を阻害し、分解する酵素である。ヒアルロナンは、固形腫瘍の細胞外マトリクスの主構成成分である。HAは、反復二糖単位、β−1,3−N−アセチル−D−グルコサミン結合β−1,4−D−グルクロン酸を含む直鎖状高分子グリコサミノグリカンである。HAは、体内に自然に生じ、膵癌細胞を含むある種の癌細胞で極めて高レベルに分泌される。HA代謝の局所異常が、乳、胃、結腸直腸、卵巣、前立腺および肺癌のような多くの固形腫瘍悪性腫瘍で報告されており、高レベルのHAはしばしば予後不良と相関する。
【0178】
HAは腫瘍のような疾患組織における水取り込みおよび間質流体圧(IFP)と関連し、圧縮腫瘍脈管構造をもたらす。例えば、炎症部位または腫瘍病巣において、ヒアルロナン、他のマトリクス成分および水の急速な蓄積が起こる。この急速な蓄積により、疾患部位はその環境と平衡となり得ず、それゆえに正常組織より高い間質性流体圧を有する。上記のとおり、ほとんどの固形腫瘍およびHA蓄積と関連する他の疾患組織のIFPは上昇しており、効率的薬物送達に対するバリアとして作用する(Heldin et al. (2004) Nat Rev Cancer 4(10):806-813)。HA蓄積はまた腫瘍細胞間の接触阻害も減少させる(例えば、Itano et al. (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 99:3609-3614参照)。
【0179】
ヒアルロナン分解酵素、例えば、ヒアルロニダーゼ(例えばPH20)のようなHA合成を阻害し、またはヒアルロナンを分解する抗ヒアルロナン剤は、組織を収縮させ、血管を拡張させ、より多くの血液がその部位を流れるようにヒアルロナンを減少させ得る。これは、組織部位の間質性流体圧の低下および対応する血管灌流の増加をもたらす。例えば、ヒアルロニダーゼは、腫瘍からHAを除去して、腫瘍体積縮小、腫瘍内間質圧低下、腫瘍細胞の増殖遅延および併用化学療法剤および生物学的製剤の腫瘍への浸透増加を可能にすることによって効果増強をもたらすことが示されている(例えば米国公開出願番号20100003238および国際公開PCT出願番号WO2009/128917参照)。
【0180】
全身処置のためのPH20酵素のようなヒアルロニダーゼの使用は、酵素の短い半減期に伴う問題がある。例えば、非修飾ヒアルロニダーゼは、典型的に分単位、一般に5分未満の短い血中酵素活性半減期を有する。これは、このような酵素が一般に、作用の持続時間が短い静脈内投与および他の投与に不適であることを意味する。これは、分解後、HA基質が約5時間の半減期で置き換わるためである。対照的に、送達を増加し、および/またはヒアルロニダーゼと細胞関連ヒアルロナン(例えば腫瘍関連細胞周囲ヒアルロナン)の結合を延長する方法は、HAに富む腫瘍の処置を可能にする。このような方法は、酵素のポリマーへの結合、グリコシル化されたまたはグリコシル化が減るように修飾された酵素の使用、酵素の連続点滴および/または酵素の局在化送達を含むが、これらに限定されない。例えば、ペグ化によるようなヒアルロニダーゼのポリマー修飾は、酵素半減期を約48〜72時間に延長し、HAに富む腫瘍の全身処置を可能にする(例えば米国公開出願番号20100003238および国際公開PCT出願番号WO2009/128917参照)。非修飾ヒアルロニダーゼと比較して延長した半減期はHAの連続的除去を可能にし、それにより腫瘍のような疾患組織内のHAの再生の程度を減少させる。それゆえに、ポリマーコンジュゲーションによる血漿酵素レベル維持は、腫瘍HAのようなHAを除去し、またHA再合成も低下できる。
【0181】
さらに、ポリマー結合ヒアルロニダーゼまたはPH20、例えばPEGPH20のようなポリマー結合ヒアルロナン分解酵素は、HA分解により癌細胞を囲む間質を激減できる。このような薬物は、腫瘍処置のための単剤治療またはゲムシタビンのような非間質標的化学療法剤の送達を増強するための組み合わせ治療で使用できる。膵癌患者の臨床試験結果も、ゲムシタビンと組み合わせたPEGPH20処置がゲムシタビン単独での処置と比較して、全体的生存をほぼ2倍にすることを示す(Provenzano et al. (2012) Cancer Cell, 21:418-429)。
【0182】
2. 抗ヒアルロナン剤および腫瘍標的タキサン組み合わせ治療
本発明により、少なくとも2種の異なる間質または腫瘍標的治療を含む組み合わせ治療が、単一間質ターゲティング剤よりはるかに高い効果を示すことが判明した。例えば、本発明により、腫瘍標的タキサンと抗ヒアルロナン剤、特に抗ヒアルロナン剤での組み合わせ治療は、HAレベルを減少させるのに十分な時間腫瘍上の細胞周囲HAに到達し、いずれかの薬剤の単剤処置と比較して、高い効果を示すことが判明した。例えば、腫瘍標的タキサンとポリマー結合ヒアルロニダーゼでの組み合わせ治療は、単剤処置と比較して、効果が25%を超えて増加した。さらなる非間質標的化学療法剤ゲムシタビンとの組み合わせにおいて、例示的癌の中央生存は、ゲムシタビンのみの処置を比較して膵癌のマウスモデルで79%増加し、間質ターゲティング剤のみを含む現存の治療と比較して30%を超えて増加した。この効果の増加は、現存する処置と比較して、膵癌および浸透不可能間質により特徴付けられる他の癌を有する患者の生存の実質的増加に反映され得る。
【0183】
それゆえに、ここに提供されるのは、固形腫瘍間質癌処置のための、ヒアルロナン分解酵素またはポリマー結合ヒアルロナン分解酵素(例えばヒアルロニダーゼまたはPH20のような抗ヒアルロナン剤およびアルブミン結合タキサンのような腫瘍標的タキサンを含む組み合わせ治療の使用方法である。例えば、本組み合わせ治療は膵癌、乳癌、前立腺癌、胃癌、結腸癌、結腸直腸癌、肺癌、卵巣癌およびその他の処置に使用できる。ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素(例えばヒアルロニダーゼまたはPH20)のような抗ヒアルロナン剤および腫瘍標的タキサン(例えばアルブミン結合タキサン)を含む組み合わせを個別に組み合わせてまたは一組成物中に提供できる。個別に提供され、投与されるならば、これらの薬剤は任意の順序で同時にまたはほぼ同時に、逐次的にまたは間欠的に投与できる。例えば、抗ヒアルロナン剤、例えば、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素(例えばヒアルロニダーゼまたはPH20)および腫瘍標的タキサン(例えばアルブミン結合タキサン)を個別に投与でき、それにより、これらは、ほぼ同時に投与し、または数時間または数日間離れて投与する。注射部位は同一でも異なってもよい。異なるならば、注射部位は最初に投与した薬剤の注射部位に近くてよい。
【0184】
腫瘍標的剤の組み合わせは、一体となって固形腫瘍間質癌の処置に使用できまたは他の化学療法剤または処置とのさらなる組み合わせで使用できる。具体例において、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロニダーゼまたはPH20)および腫瘍標的タキサン(例えばアルブミン結合タキサン)の組み合わせを化学療法剤とのさらなる組み合わせで使用する。他の薬剤は間質または非間質ターゲティング剤であり得る。典型的に、他の薬剤は、直接抗腫瘍活性を示す非間質細胞毒性剤である。例えば、さらなる化学療法剤は、白金(シスプラチンまたはカルボプラチン)、パクリタキセル、ゲムシタビン、ドセタキセル、ビノレルビン、イリノテカンおよびペメトレキセドのような細胞毒性剤であり得る。典型的に、さらなる化学療法剤は、ゲムシタビンのようなヌクレオシドアナログである。さらなる処置または薬剤を個別に投与できまたはポリマー結合ヒアルロナン分解酵素(例えばヒアルロニダーゼ)のような抗ヒアルロナン剤および/または腫瘍標的タキサン(例えばアルブミン結合タキサン)組み合わせ治療と共に投与できる。さらなる薬剤を組み合わせで個別に投与できまたは一組成物に提供する。個別に提供され、投与されるならば、さらなる薬剤は、抗ヒアルロナン剤および/またはアルブミン結合タキサン組み合わせ治療と任意の順序で同時にまたはほぼ同時に、逐次的にまたは間欠的に投与できる。典型的に、さらなる薬剤の送達を増強するために、さらなる薬剤を、抗ヒアルロナン剤および/またはアルブミン結合タキサン組み合わせ治療の投与後に投与する。さらなる化学療法剤の送達および半減期増強のため、さらなる薬剤の投与量は、現存する投与レジメと比較して、減少できおよび/または投与頻度を減少できる。その結果、ここに提供する組み合わせ治療は、共投与されたさらなる治療剤(例えばゲムシタビンのようなヌクレオシドアナログ)の副作用を、その単独投与と比較してまたはその抗ヒアルロナン剤、例えば、ヒアルロナン分解酵素または腫瘍標的タキサン単独との併用と比較して減少できる。
【0185】
次のセクションは、ここに提供する組み合わせ治療で使用するポリマー結合ヒアルロナン分解酵素、腫瘍標的タキサンを含む抗ヒアルロナン剤の例および他の例示的非限定的化学療法剤を記載する。例示的投与レジメおよび間質固形癌の処置方法も記載する。
【0186】
C. 組み合わせ治療剤
ここに提供されるのは、癌処置に使用するための、ヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤およびアルブミン結合パクリタキセルのような腫瘍標的タキサンの組み合わせ治療である。特に、ここに提供されるのは、癌処置に使用するための、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素、例えばPEGPH20のようなヒアルロニダーゼおよびアルブミン結合パクリタキセルのような腫瘍標的タキサンの組み合わせ治療である。特に、ここに提供する組み合わせ治療は細胞外マトリクスにおけるHAにより浸透不可能である固形腫瘍により特徴付けられるあらゆる癌の処置に使用する。このような癌の例は膵癌、乳癌、前立腺癌、胃癌、結腸癌、卵巣癌、頭頸部癌およびその他を含むが、これらに限定されない固形癌である。本組み合わせ治療はさらなる細胞毒性化学療法剤、例えばポリマー結合ヒアルロナン分解酵素を含む抗ヒアルロナン剤および/または腫瘍標的タキサンの一方または両者により活性が増加する(例えば送達増加および/または半減期延長により)なんらかをさらに含み得る。例えば、さらなる化学療法剤は、直接抗腫瘍活性を示すゲムシタビンのようなヌクレオシドアナログまたはその誘導体であり得る。
【0187】
1. 抗ヒアルロナン剤
ここに提供される組み合わせ剤および方法およびその使用を含む組み合わせ治療は、ヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤、例えば、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素を含む。抗ヒアルロナン剤は、標的に送達する、特に高い細胞周囲HAを含む腫瘍細胞に送達するように投与できるものである。例えば、ヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤を連続点滴または局所注射により投与でき、ポリマーで修飾できまたはグリコシル化されたものまたはグリコシル化されまたはグリコシル化が減少するように修飾されたものである。一例において、提供される組成物および組み合わせ剤は、典型的に、例えば、対象における延長した/持続した処置効果を促進するために、ヒアルロナン分解酵素の半減期を延長するために1種以上の重合体分子(ポリマー)とのコンジュゲーションにより修飾されているヒアルロナン分解酵素、特に可溶性ヒアルロニダーゼ(例えばPH20または切断型PH20)のようなヒアルロニダーゼである。
【0188】
ヒアルロナンは細胞外マトリクスの成分であり、間質バリアの主構成成分である。ヒアルロナンの加水分解触媒により、ヒアルロナン分解酵素はヒアルロナンの粘性を下げ、それにより組織透過性を高め、非経腸的に投与した流体の吸収速度を上げる。そのようなものとして、ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素を含む抗ヒアルロナン剤は、例えば、他の薬剤、薬物およびタンパク質と関連して、その分散および送達を増加するために拡散剤または分散剤として使用されている。
【0189】
抗ヒアルロナン剤は合成の阻害または分解増加によりヒアルロン酸(HA;ここではヒアルロナンとも呼ぶ)レベルレベルを減少させる。例えば、ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素は、ヒアルロン酸(HA)を阻害し、分解する酵素である。ヒアルロナン分解酵素のようなヒアルロナンを分解しまたは合成を阻害する薬剤での処置は、組織が収縮し、血管が拡張し、より多くの血液がその部位を流れるようにヒアルロナンを減少できる。このような抗ヒアルロナン剤の例は、ヒアルロナン合成を阻害するまたはヒアルロナンを分解する薬剤である。
【0190】
a. ヒアルロナン合成を阻害する薬剤
抗ヒアルロナン剤は、HAシンターゼ、HA合成阻害剤およびチロシンキナーゼ阻害剤の発現を阻害、減少または下方制御する薬剤のようなヒアルロナン合成を阻害する薬剤である。
【0191】
HAは、has−1、has−2およびhas−3と命名されたHAシンターゼとして同定される3種の関連哺乳動物遺伝子の生成物である3種の酵素により合成され得る。異なる細胞型は異なるHAS酵素を発現し、HAS mRNA発現はHA生合成と相関する。腫瘍細胞におけるHAS遺伝子のサイレンシングが腫瘍増殖および転移を阻害することが知られる。抗ヒアルロナン剤は、HAシンターゼの発現またはレベルを阻害、減少または下方制御する任意の薬剤を含む。このような薬剤は当業者に知しられまたは同定できる。
【0192】
例えば、HASの下方制御は、HASをコードする核酸分子の1個以上と特異的にハイブリダイズするまたは他に相互作用するオリゴヌクレオチドの提供により達成できる。例えば、ヒアルロナン合成を阻害する抗ヒアルロナン剤は、has遺伝子に対するアンチセンスまたはセンス分子を含む。このようなアンチセンスまたはセンス阻害は、典型的に少なくとも1個の鎖またはセグメントが開裂、分解または他に作動不可能であるように、オリゴヌクレオチド鎖またはセグメントの水素結合ハイブリダイゼーションに基づく。他の例において、転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)、RNAi、リボザイムおよびDNAザイムを用いることができる。HAS1(配列番号195に示す)、HAS2(配列番号196に示す)またはHAS3(配列番号197または198に示す)の配列に基づきこのような構築物を作製するのは、当業者のレベルの範囲内である。アンチセンスまたはセンス化合物の配列は、特異的にハイブリダイズし得るために、その標的核酸と100%相補的である必要がないことは当分野で理解される。さらに、オリゴヌクレオチドは、介在または隣接セグメントがハイブリダイゼーション事象に含まれないように、1個以上のセグメントにわたりハイブリダイズし得る(例えばループ構造またはヘアピン構造)。一般に、アンチセンスまたはセンス化合物は、標的核酸内の標的領域と少なくとも70%配列相補性、例えば、75%〜100%相補性、例えば75%、80%、85%、90%、95%または100%相補性を有する。センスまたはアンチセンス分子の例は当分野で知られる(例えばChao et al. (2005) J. Biol. Chem., 280:27513-27522; Simpson et al. (2002) J. Biol. Chem., 277:10050-10057; Simpson et al. (2002) Am. J Path., 161:849; Nishida et al. (1999) J. Biol. Chem., 274:21893-21899; Edward et al. (2010) British J Dermatology, 162:1224-1232; Udabage et al. (2005) Cancer Res., 65:6139;および公開米国特許出願番号US20070286856参照)。
【0193】
HA合成阻害剤である抗ヒアルロナン剤の他の例は4−メチルウンベリフェロン(4−MU;7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン)またはその誘導体である。4−MUは、HA合成に必要なUDP−GlcUA前駆体プールの減少により働く。例えば、哺乳動物細胞において、HAは、UDP−グルクロン酸(UGA)およびUDP−N−アセチル−D−グルコサミン前駆体を使用して、HASにより合成される。4−MUは、UGAが産生される過程を妨害し、それによりUGA細胞内プールを枯渇させ、HA合成の阻害に至る。4−MUは抗腫瘍活性を有することが知られている(例えばLokeshwar et al. (2010) Cancer Res., 70:2613-23; Nakazawa et al. (2006) Cancer Chemother. Pharmacol., 57:165-170; Morohashi et al. (2006) Biochem. Biophys. Res. Comm., 345-1454-1459参照)。600mg/kg/日での4−MUの経口投与は、B16黒色腫モデルで転移を64%阻害した(Yoshihara et al. (2005) FEBS Lett., 579:2722-6)。4−MUの構造を下に示す、また、4−MUの誘導体、特に6,7−ジヒドロキシ−4−メチルクマリンおよび5,7−ジヒドロキシ−4−メチルクマリンは抗癌活性を示す(例えばMorohashi et al. (2006) Biochem. Biophys. Res. Comm., 345-1454-1459参照)。
4−メチルウンベリフェロン(4−MU;C10)
【化1】
【0194】
抗ヒアルロナン剤のさらなる例は、レフルノミド(アラバ)、ゲニステインまたはエルブスタチンのようなチロシンキナーゼ阻害剤である。レフルノミドもピリミジン合成阻害剤である。レフルノミドはリウマチ性関節炎(RA)の処置剤として知られ、また同種移植片ならびに異種移植片拒絶の処置にも有効である。HAは、RAに直接的または間接的に寄与することが知られる(例えばStuhlmeier (2005) J Immunol., 174:7376-7382参照)。チロシンキナーゼ阻害剤はHAS1遺伝子発現を阻害する(Stuhlmeier 2005)。
【0195】
b. ヒアルロナン分解酵素およびポリマー結合ヒアルロナン分解酵素
抗ヒアルロナン剤はヒアルロナン分解酵素を含む。ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素は、細胞外マトリクスの必須成分であり、間質バリアの主構成成分であるヒアルロナンを分解する酵素のファミリーである。ヒアルロナン分解酵素は、交互のβ−1→4およびβ−1→3グリコシド結合を介して互いに結合している二糖類単位であるD−グルクロン酸(GlcA)およびN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)の反復からなるヒアルロナンポリマー類を開裂することにより、ヒアルロナンを分解するように働く。ヒアルロナン鎖は約25,000二糖反復以上の長さに達し、ヒアルロナンのポリマー類のサイズはインビボで約5,000〜20,000,000Daの範囲であり得る。間質バリアの主成分であるヒアルロナンの加水分解の触媒により、ヒアルロナン分解酵素はヒアルロナンの粘性を下げ、それにより組織透過性を高める。
【0196】
したがって、提供する組み合わせ剤、使用および方法のためのヒアルロナン分解酵素は、ヒアルロナン二糖鎖またはポリマーの開裂を触媒する能力を有するいずれかの酵素を含む。いくつかの例において、ヒアルロナン分解酵素は、ヒアルロナン鎖またはポリマーのβ−1→4グリコシド結合の開裂を触媒する。他の例において、ヒアルロナン分解酵素は、ヒアルロナン鎖またはポリマーにおけるβ−1→3グリコシド結合の開裂を触媒する。
【0197】
ヒアルロナン分解酵素はヒアルロニダーゼ、ならびに、ヒアルロナンを開裂する能力を有するコンドロイチナーゼおよびリアーゼのような他の酵素を含む。さらに、ヒアルロナン分解酵素は、細胞から発現および分泌され得るその可溶性形態も含む。下記のとおり、ヒアルロナン分解酵素は、細胞から分泌される膜結合形態または可溶性形態で存在する。ここでの目的のために、可溶性ヒアルロナン分解酵素は、ここでの組み合わせ、方法および使用における使用のために提供される。それゆえに、ヒアルロナン分解酵素がグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーおよび/または他の膜アンカーまたは不溶性であるとき、このようなヒアルロナン分解酵素は、酵素を分泌および可溶性とするための短縮化またはGPIアンカーの欠失により可溶性形態で提供できる。それゆえに、ヒアルロナン分解酵素は、例えばGPIアンカーの全てまたは一部を除去するために切断した、切断変異型型を含む。このような可溶性ヒアルロニダーゼの例は、米国特許番号7,767,429;米国公開番号US20040268425またはUS20100143457のいずれかに示されるような可溶性PH20ヒアルロニダーゼである。
【0198】
ここに提供するヒアルロナン分解酵素はまた当業者に知られまたはここに記載する任意のヒアルロニダーゼまたは可溶性ヒアルロニダーゼ、例えばPH20のような任意のヒアルロナン分解酵素の変異型を含む。例えば、ヒアルロナン分解酵素は、一次配列にアミノ酸置換、付加および/または欠失のような1個以上の多様性を含み得る。ヒアルロナン分解酵素の変異形は、一般に多様性を含まないヒアルロナン分解酵素と比較して、少なくとも60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)またはそれ以上の配列同一性を示す。酵素がヒアルロニダーゼ活性を、変異を含まないヒアルロナン分解酵素の活性の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)またはそれ以上のように維持する限り、何らかの変異がヒアルロナン分解酵素に包含され得る(当分野で周知であり、ここに記載するインビトロおよび/またはインビボアッセイで測定して)。例えば、ポリマーに結合できるものを含むヒアルロナン分解酵素の例は、配列番号2、4〜9、47、48、150〜170、183〜189および199〜210のいずれかに示すいずれかまたは配列番号2、4〜9、47、48、150〜170、183〜189および199〜210のいずれかと少なくとも60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)またはそれ以上の配列同一性を示すいずれかである。
【0199】
ヒアルロニダーゼを含む種々の形態のヒアルロナン分解酵素が製造され、ヒトを含む対象における治療的使用が承認されている。例えば、動物由来ヒアルロニダーゼ製剤はVitrase(登録商標)(ISTA Pharmaceuticals)、精製ヒツジ精巣ヒアルロニダーゼ、Amphadase(登録商標)(Amphastar Pharmaceuticals)、ウシ精巣ヒアルロニダーゼおよびHydaseTM(Prima Pharm Inc.)、ウシ精巣ヒアルロニダーゼを含む。Hylenex(登録商標)(Halozyme Therapeutics)は、PH20の可溶性形態(rHuPH20と命名)をコードする核酸を含む遺伝子操作されたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞により産生されたヒト組み換えヒアルロニダーゼである(例えば、米国公開番号US20040268425;米国特許番号7,767,429参照)。任意のヒアルロニダーゼ製剤をここで提供する組み合わせ、方法および使用に使用できることは理解される(例えば、米国特許番号2,488,564、2,488,565、2,676,139、2,795,529、2,806,815、2,808,362、5,747,027および5,827,721および国際PCT公開番号WO2005/118799;米国公開番号US20040268425;米国特許番号7,767,429;またはここに提供されるいずれか参照)。
【0200】
ここに提供される組み合わせ剤および方法で使用するためのヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素または可溶性ヒアルロニダーゼ酵素、例えばPH20の例の非限定的記載を下に示す。一般に、このようなヒアルロナン分解酵素は、ポリマーに結合したものを含む。
【0201】
i. ヒアルロニダーゼ
ヒアルロニダーゼは、ヒアルロナン分解酵素の大きなファミリーのメンバーである。哺乳動物型ヒアルロニダーゼ、細菌ヒアルロニダーゼおよびヒル、他の寄生虫および甲殻類からのヒアルロニダーゼの一般的3群がある。スズメバチ(配列番号12および13)、ミツバチ(配列番号14)、北米産スズメバチ(配列番号15)およびアシナガバチ(配列番号16)のような他のヒアルロニダーゼが知られる。このようないずれかの酵素をここに提供する組成物、組み合わせ剤および方法に使用できる。
【0202】
(a)哺乳動物型ヒアルロニダーゼ
哺乳動物型ヒアルロニダーゼ(EC 3.2.1.35)は、ヒアルロナンのβ−1→4グリコシド結合を四糖類および六糖類のような種々のオリゴ糖長に加水分解するendo−β−N−アセチル−ヘキソサミニダーゼ類である。これらの酵素は加水分解性およびトランスグリコシダーゼ活性の両者を有し、ヒアルロナンおよびコンドロイチン硫酸(CS)、一般にC4−SおよびC6−Sを分解できる。このタイプのヒアルロニダーゼは、ウシ(ウシ属)(配列番号10、11、64、203および204および配列番号190〜192に示す核酸分子)、ヒツジ(Ovis aries)(配列番号26、27、63および65、配列番号66および193〜194に示す核酸分子)、ブタ(配列番号20〜21)、マウス(配列番号17〜19、32、205)、ラット(配列番号22〜24、31、206)、ウサギ(配列番号25、207)、オランウータン(配列番号28)、カニクイザル(配列番号29、202)、モルモット(配列番号30、208)、チンパンジー(配列番号101、199、200)、アカゲザル(配列番号102、201)、キツネ(配列番号209および210)およびヒトヒアルロニダーゼ(配列番号1〜2、36〜39)を含むが、これらに限定されない。上記ヒアルロニダーゼは、PH20ヒアルロニダーゼを含む。また、BH55ヒアルロニダーゼは、米国特許番号5,747,027および5,827,721に記載のとおりこのタイプである。ここに提供する組成物、組み合わせ剤および方法におけるヒアルロニダーゼの例は、可溶性ヒアルロニダーゼである。
【0203】
哺乳動物ヒアルロニダーゼは、さらに、主に精巣抽出物で見られる中性活性のもの、および主に肝臓のような臓器で見られる酸活性のものにさらに細分できる。例示的な中性活性ヒアルロニダーゼは、ヒツジ(配列番号27、63および65)、ウシ(配列番号11および64)およびヒト(配列番号1)のような種由来のPH20を含むが、これらに限定されないPH20を含む。ヒトPH20(SPAM1または精子表面タンパク質PH20としても既知)は、一般にグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを介して原形質膜に結合している。これは天然の精子−卵接着に関与し、ヒアルロン酸を消化することにより卵丘細胞層への精子の侵入を助ける。
【0204】
ヒトPH20(SPAM1とも呼ぶ)以外に、5種のヒアルロニダーゼ様遺伝子、HYAL1、HYAL2、HYAL3、HYAL4およびHYALP1がヒトゲノムで同定されている。HYALP1は偽遺伝子であり、HYAL3(配列番号38)はあらゆる既知の基質に対して酵素活性を示さない。HYAL4(配列番号39に示す前駆体ポリペプチド)はコンドロイチナーゼであり、ヒアルロナンに対してわずかに活性を示す。HYAL1(配列番号36に示す前駆体ポリペプチド)はプロトタイプ酸活性酵素であり、PH20(配列番号1に示す前駆体ポリペプチド)はプロトタイプ中性活性酵素である。酸活性ヒアルロニダーゼ、例えばHYAL1およびHYAL2(配列番号37に示す前駆体ポリペプチド)は、一般に中性pH(すなわちpH7)で触媒活性を欠く。例えば、HYAL1は、インビトロでpH4.5を超えるとほとんど触媒活性を有しない(Frost et al. (1997) Anal. Biochem. 251:263-269)。HYAL2は、インビトロで極めて低比活性の酸−活性酵素である。ヒアルロニダーゼ様酵素はまた一般にヒトHYAL2およびヒトPH20のようなグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを介して原形質膜に結合するもの(Danilkovitch-Miagkova et al. (2003) Proc Natl Acad Sci USA 100(8):4580-4585)およびヒトHYAL1のように一般に可溶性であるもの(Frost et al. (1997) Biochem Biophys Res Commun. 236(1):10-15)により特徴付けもできる。
【0205】
PH20
PH20は、他の哺乳動物ヒアルロニダーゼと同様、ヒアルロン酸のβ1→4グリコシド結合を四糖類および六糖類のような種々のオリゴ糖長に加水分解するendo−β−N−アセチル−ヘキソサミニダーゼである。これらは加水分解性およびトランスグリコシダーゼ活性の両方を有し、ヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸、例えばC4−SおよびC6−Sを分解できる。これは天然で精子−卵接着に関与し、ヒアルロン酸を消化することにより卵丘細胞層への精子の侵入を助ける。PH−20は精子表面に存在し、そしてリソソーム由来のアクロソームにおいて内部アクロソーム膜に結合する。原形質膜PH20は、中性pHでのみヒアルロニダーゼ活性を有するのに対し、内部アクロソーム膜PH20は、中性および酸pHのいずれでも活性を有する。ヒアルロニダーゼであることに加えて、PH20はまたHA誘発細胞シグナリングの受容体であり、そして卵母細胞を囲む透明帯の受容体であるようにも思われる。
【0206】
PH20タンパク質の例は、ヒト(配列番号1に示す前駆体ポリペプチド、配列番号2に示す成熟ポリペプチド)、チンパンジー(配列番号101、199、200)、アカゲザル(配列番号102、201)、ウシ(配列番号11および64、203、204)、ウサギ(配列番号25、207)、ヒツジPH20(配列番号27、63および65)、カニクイザル(配列番号29、202)、モルモット(配列番号30、208)、ラット(配列番号31、206)、マウス(配列番号32、205)およびキツネ(配列番号209および210)PH20ポリペチドを含むが、これらに限定されない。
【0207】
ウシPH20は553アミノ酸前駆体ポリペプチド(配列番号11)である。ウシPH20とヒトPH20のアラインメントはわずかな相同性しか示さず、ウシポリペプチドにおけるGPIアンカーの不存在により、アミノ酸470から各カルボキシ末端まで複数ギャップが存在する(例えば、Frost (2007) Expert Opin. Drug. Deliv. 4:427-440参照)。実際、明らかなGPIアンカーはヒト以外の多くの他のPH20種で想定されていない。それ故に、ヒツジおよびウシで産生されたPH20ポリペプチドは、天然では可溶性形態で存在する。ウシPH20は原形質膜へ極めて緩く結合して存在するが、ホスホリパーゼ感受性アンカーを介して固定されてはいない(Lalancette et al. (2001) Biol Reprod. 65(2):628-636)。ウシヒアルロニダーゼのこの独特な特徴は、臨床使用のための抽出物として可溶性ウシ精巣ヒアルロニダーゼ酵素の使用を可能にする(Wydase(登録商標)、Hyalase(登録商標))。
【0208】
ヒトPH20mRNA転写物は通常翻訳されて、N末端に35アミノ酸シグナル配列(アミノ酸残基1〜35位)およびC末端に19アミノ酸グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー付着シグナル配列(アミノ酸残基491〜509位)を含む509アミノ酸前駆体ポリペプチド(配列番号1)を生じる。成熟PH20は、それ故に、配列番号2に示す474アミノ酸ポリペプチドである。ERの前駆体ポリペプチドへの輸送およびシグナルペプチドの除去に続き、C末端GPI付着シグナルペプチドは開裂され、GPIアンカーの配列番号1に示す前駆体ポリペプチドの490位に対応するアミノ酸位置に新たに形成されたC末端アミノ酸との共有結合が促進される。それ故に、配列番号2に示すアミノ酸配列を有する474アミノ酸GPIアンカー型成熟ポリペプチドが産生される。
【0209】
ヒトPH20は、中性および酸性pHでヒアルロニダーゼ活性を示す。一面では、ヒトPH20は、一般にGPIアンカーを介して原形質膜に固定されたときプロトタイプ中性活性ヒアルロニダーゼである。他の面では、PH20は、内部アクロソーム膜上に発現されたとき中性および酸性pHのいずれでも活性を示す。PH20は、ポリペプチドのペプチド1およびペプチド3領域の2カ所の領域に二つの触媒部位を有すると思われる(Cherr et al., (2001) Matrix Biology 20:515-525)。配列番号2に示す成熟ポリペプチドのアミノ酸107〜137位に対応するPH20のペプチド1領域および配列番号1に示す前駆体ポリペプチドの142〜172位が、中性pHでの酵素活性に必要であることを示す証拠がある。この領域内の111位および113位のアミノ酸(配列番号2に示す成熟PH20ポリペプチドに対応)が、アミノ酸置換による変異原性が、それぞれ野生型PH20と比較してPH20ポリペプチドの3%ヒアルロニダーゼ活性および検出不能なヒアルロニダーゼ活性を生じるために、活性に必須であると思われる(Arming et al., (1997) Eur. J. Biochem. 247:810-814)。
【0210】
配列番号2に示す成熟ポリペプチドのアミノ酸242〜263位に対応するペプチド3領域および配列番号1に示す前駆体ポリペプチドの277〜297位が、中性pHでの酵素活性に重要であると思われる。この領域内で、成熟PH20ポリペプチドの249位および252位のアミノ酸は活性に必須であり、このいずれかの変異原性は、本質的に活性を欠くポリペプチドとなる(Arming et al., (1997) Eur. J. Biochem. 247:810-814)。
【0211】
触媒部位に加えて、PH20はまたヒアルロナン結合部位を含む。実験的証拠は、この部位が配列番号1に示す前駆体ポリペプチドのアミノ酸205〜235位および配列番号2に示す成熟ポリペプチドの170〜200位に対応するペプチド2領域に位置することを示す。この領域はヒアルロニダーゼで高度に保存され、ヘパリン結合モチーフと類似する。アルギニン残基176位(配列番号2に示す成熟PH20ポリペプチドに対応)のグリシンへの変異は、野生型ポリペプチドのヒアルロニダーゼ活性の約1%しか活性がないポリペプチドとなる(Arming et al., (1997) Eur. J. Biochem. 247:810-814)。
【0212】
ヒトPH20において、配列番号1に例示する該ポリペプチドのN82、N166、N235、N254、N368、N393、N490に7カ所の潜在的N架橋グリコシル化部位がある。配列番号1のアミノ酸36〜464が活性が最小のヒトPH20ヒアルロニダーゼドメインを含むように思われるため、N架橋グリコシル化部位N−490は適切なヒアルロニダーゼ活性に必須ではない。ヒトPH20において6個のジスルフィド結合がある。配列番号1に例示するポリペプチドのシステイン残基C60とC351およびC224とC238の間の2個のジスルフィド結合(それぞれ配列番号2に示す成熟ポリペプチドの残基C25とC316、およびC189とC203に対応)がある。さらに4カ所のジスルフィド結合が配列番号1に例示するポリペプチドのシステイン残基C376とC387;C381とC435;C437とC443;C458とC464(それぞれ配列番号2に示す成熟ポリペプチドの残基C341とC352;C346とC400;C402とC408;およびC423とC429に対応)に形成される。
【0213】
(b)細菌ヒアルロニダーゼ
細菌ヒアルロニダーゼ(EC 4.2.2.1またはEC 4.2.99.1)はヒアルロナン、および種々の程度で、コンドロイチン硫酸およびデルマタン硫酸を分解する。細菌から単離されたヒアルロナンリアーゼは、作用機序がヒアルロニダーゼと異なる(他の源由来、例えば、ヒアルロノグルコサミニダーゼ、EC 3.2.1.35)。ヒアルロナンのN−アセチル−ベータ−D−グルコサミンとD−グルクロン酸残基の間のβ1→4−グリコシド結合の加水分解ではなく、脱離反応を触媒するendo−β−N−アセチルヘキソサミニダーゼ類であり、3−(4−デオキシ−β−D−グルコ−4−エヌロノシル)−N−アセチル−D−グルコサミンテトラ−および六糖類、および二糖最終産物を生じる。反応は、非還元末端に不飽和ヘキスロン酸残基を伴うオリゴ糖類の形成を生じる。
【0214】
ここに提供する配合剤のための例示的な細菌由来ヒアルロニダーゼは、アルスロバクター属、デロビブリオ属、クロストリジウム属、ミクロコッカス属、レンサ球菌属、ペプトコッカス属、プロピオニバクテリウム属、バクテロイデス属、およびストレプトマイセス属の株を含む微生物におけるヒアルロナン分解酵素を含むが、これらに限定されない。このような酵素の具体例は、アルスロバクター属(株FB24)(配列番号67)、ブデロビブリオ・バクテリオヴォルス(配列番号68)、プロピオニバクテリウム・アクネス(配列番号69)、ストレプトコッカス・アガラクチア((配列番号70);18RS21(配列番号71);血清型Ia(配列番号72);および血清型III(配列番号73))、黄色ブドウ球菌(株COL(配列番号74);株MRSA252(配列番号75および76);株MSSA476(配列番号77);株NCTC 8325(配列番号78);株ウシRF122(配列番号79および80);および株USA300(配列番号81))、肺炎レンサ球菌((配列番号82);株ATCC BAA−255/R6(配列番号83);および血清型2、株D39/NCTC 7466(配列番号84))、化膿性連鎖球菌(血清型M1(配列番号85);血清型M2、株MGAS10270(配列番号86);血清型M4、株MGAS10750(配列番号87);血清型M6(配列番号88);血清型M12、株MGAS2096(配列番号89および90);血清型M12、株MGAS9429(配列番号91);および血清型M28(配列番号92));豚レンサ球菌(配列番号93〜95);ビブリオ・フィッシェリ(株ATCC 700601/ES114(配列番号96))、およびヒアルロン酸に特異的であり、コンドロイチンまたはコンドロイチン硫酸を開裂しないストレプトマイセス・ヒアルロノリチクスヒアルロニダーゼ酵素を含むが、これらに限定されない(Ohya, T. およびKaneko, Y. (1970) Biochim. Biophys. Acta 198:607)。
【0215】
(c)ヒル、他の寄生虫および甲殻類からのヒアルロニダーゼ
ヒル類、他の寄生虫、および甲殻類由来のヒアルロニダーゼ(EC 3.2.1.36)は、四糖類および六糖類最終産物を生じるendo−β−グルクロニダーゼである。これらの酵素は、ヒアルロナートのβ−D−グルクロネートとN−アセチル−D−グルコサミン残基の間の1→3−架橋の加水分解を触媒する。ヒル類由来の例示的なヒアルロニダーゼは、Hirudinidae(例えば, ドイツ蛭)、イシビル科(例えば、Nephelopsis obscuraおよびErpobdella punctata)、Glossiphoniidae(例えば, Desserobdella picta, Helobdella stagnalis, Glossiphonia complanata, Placobdella ornataおよびTheromyzon sp.)およびヘモピ科(Haemopis marmorata)を含むが、これらに限定されない(Hovingh et al. (1999) Comp Biochem Physiol B Biochem Mol Biol. 124(3):319-26)。ヒルヒアルロニダーゼと同じ作用機序を有する細菌由来のヒアルロニダーゼ例は、シアノバクテリア、シネココックス属(株RCC307、配列番号97)由来のものである。
【0216】
ii. 他のヒアルロナン分解酵素
ヒアルロニダーゼファミリーに加えて、他のヒアルロナン分解酵素が、ここに提供する組成物、組み合わせ剤および方法において使用できる。例えば、ヒアルロナンを開裂する能力を有する特定のコンドロイチナーゼおよびリアーゼを含む酵素を用いることができる。ヒアルロナンを分解できる例示的なコンドロイチナーゼは、コンドロイチンABCリアーゼ(コンドロイチナーゼABCとしても知られる)、コンドロイチンACリアーゼ(コンドロイチン硫酸リアーゼまたはコンドロイチン硫酸エリミナーゼとしても知られる)およびコンドロイチンCリアーゼを含むが、これらに限定されない。このような酵素のここに提供する組成物、組み合わせ剤および方法において使用するための産生および精製方法は知られている(例えば、米国特許番号6,054,569;Yamagata, et al. (1968) J. Biol. Chem. 243(7):1523-1535; Yang et al. (1985) J. Biol. Chem. 160(30):1849-1857)。
【0217】
コンドロイチンABCリアーゼは、2種の酵素、コンドロイチン−硫酸−ABCエンドリアーゼ(EC 4.2.2.20)およびコンドロイチン−硫酸−ABCエキソリアーゼ(EC 4.2.2.21)(Hamai et al. (1997) J Biol Chem. 272(14):9123-30)を含み、コンドロイチン−硫酸−およびデルマタン−硫酸タイプの種々のグリコサミノグリカン類を分解する。コンドロイチン硫酸、コンドロイチン−硫酸プロテオグリカンおよびデルマタン硫酸はコンドロイチン−硫酸−ABCエンドリアーゼの好ましい基質であるが、本酵素はまたヒアルロナン上で低速で作用する。コンドロイチン−硫酸−ABCエンドリアーゼはコンドロイチン−硫酸−およびデルマタン−硫酸型の種々のグリコサミノグリカン類を分解し、種々のサイズのΔ4−不飽和オリゴ糖類の混合物を生じ、それは最終的にΔ4−不飽和四糖類および二糖類に分解される。コンドロイチン−硫酸−ABCエキソリアーゼは、類似の基質特異性を有するが、重合体コンドロイチン硫酸およびコンドロイチン−硫酸−ABCエンドリアーゼにより産生されるそのオリゴ糖フラグメントの両方の非還元末端から二糖残基を除去する(Hamai, A. et al. (1997) J. Biol. Chem. 272:9123-9130)。コンドロイチン硫酸ABCエンドリアーゼおよびコンドロイチン硫酸ABCエキソリアーゼの例は、プロテウス・ブルガリスおよびフラボバクテリウム・ヘパリナム由来のものを含むが、これらに限定されない(プロテウス・ブルガリスコンドロイチン硫酸ABCエンドリアーゼは配列番号98に示す(Sato et al. (1994) Appl. Microbiol. Biotechnol. 41(1):39-46))。
【0218】
コンドロイチンACリアーゼ(EC 4.2.2.5)は、コンドロイチン硫酸AおよびC、コンドロイチンおよびヒアルロン酸に活性であるが、デルマタン硫酸(コンドロイチン硫酸B)に活性ではない。細菌由来のコンドロイチナーゼAC酵素の例は、それぞれ配列番号99および100に示すフラボバクテリウム・ヘパリナムおよびウィクティウァルリス・バデンシスおよびアルスロバクター・アウレッセンス由来のものを含むが、これらに限定されない(Tkalec et al. (2000) Applied and Environmental Microbiology 66(1):29-35; Ernst et al. (1995) Critical Reviews in Biochemistry and Molecular Biology 30(5):387-444)。
【0219】
コンドロイチナーゼCはコンドロイチン硫酸Cを分解し、四糖と不飽和6−硫酸化二糖(デルタジ−6S)を産生する。それはまたヒアルロン酸を開裂し、不飽和非硫酸化二糖(デルタジ−OS)を産生する。細菌由来の例示的なコンドロイチナーゼC酵素は、レンサ球菌およびフラボバクテリウム由来のものを含むが、これらに限定されない(Hibi et al. (1989) FEMS-Microbiol-Lett. 48(2):121-4; Michelacci et al. (1976) J. Biol. Chem. 251:1154-8; Tsuda et al. (1999) Eur. J. Biochem. 262:127-133)。
【0220】
iii. 可溶性ヒアルロナン分解酵素
ここでの組成物、組み合わせ剤、使用および方法において提供されるのは、可溶性ヒアルロニダーゼを含む可溶性ヒアルロナン分解酵素である。可溶性ヒアルロナン分解酵素は、細胞(例えばCHO細胞)から発現により分泌され、可溶性形態で存在するあらゆるヒアルロナン分解酵素を含む。このような酵素は、非ヒト動物可溶性ヒアルロニダーゼ、細菌可溶性ヒアルロニダーゼおよびヒトヒアルロニダーゼ、Hyal1、ウシPH20およびヒツジPH20、そのアレル変異型およびその他の変異型を含む、非ヒト可溶性ヒアルロニダーゼを含む、可溶性ヒアルロニダーゼを含むが、これらに限定されない。例えば、可溶性ヒアルロナン分解酵素に含まれるのは、可溶性に修飾されているあらゆるヒアルロナン分解酵素である。例えば、GPIアンカーを含むヒアルロナン分解酵素を、GPIアンカーの全てまたは一部の短縮化および除去により可溶性に変化させ得る。一例において、通常GPIアンカーを介して膜に固定されているヒトヒアルロニダーゼPH20C末端でのGPIアンカーの全てまたは一部の短縮化および除去により可溶性にできる。
【0221】
可溶性ヒアルロナン分解酵素はまた中性活性および酸活性ヒアルロニダーゼも含む。投与後投与および/または投与部位での酵素の所望の活性レベルを含むが、これらに限定されない因子によって、中性活性および酸活性ヒアルロニダーゼを選択できる。具体例において、ここでの組成物、組み合わせ剤および方法におおいて使用するためのヒアルロナン分解酵素は可溶性中性活性ヒアルロニダーゼである。
【0222】
ヒアルロニダーゼの例は、配列番号1、2、11、25、27、29〜32、63〜65、101〜102および199〜210のいずれかのPH20の可溶性形態のようなあらゆる種由来のPH20の可溶性形態である。このような可溶性形態は、ヒアルロニダーゼが可溶性(発現により分泌)であり、ヒアルロニダーゼ活性を保持する限り、C末端GPIアンカーの全てまたは一部を欠くその切断型であり得る。このような形態はまた典型的に、細胞で発現されたとき、シグナルペプチドを欠く、成熟形態である。また可溶性ヒアルロニダーゼに包含されるのは、ヒアルロニダーゼ活性を示す、配列番号1、2、11、25、27、29〜32、63〜65、101〜102および199〜210のいずれかに示す主由来のPH20のあらゆる変異型の可溶性形態またはその切断型である。変異型は、配列番号1、2、11、25、27、29〜32、63〜65、101〜102および199〜210のいずれかと60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するポリペチド、成熟(例えばシグナル配列を欠く)またはその切断型を含む。アミノ酸変異型は保存的および非保存的変異を含む。上記のまたは当分野で知られるいずれかのヒアルロニダーゼの活性に重要であるまたは他に必要である残基は、一般に不変であり、変更できない。これらは、例えば、活性部位残基を含む。それゆえに、例えば、ヒトPH20ポリペチドまたはその可溶性形態のアミノ酸残基111、113および176(配列番号2に示す成熟PH20ポリペチドの残基に対応)は一般に不変であり、変更されない。適切な折りたたみに必要なグリコシル化およびジスルフィド結合形成に寄与する他の残基も不変であり得る。
【0223】
ある例において、可溶性ヒアルロナン分解酵素は通常GPIアンカー型(例えば、ヒトPH20)であり、C末端での短縮化により可溶性とされる。このような短縮化はGPIアンカー付着シグナル配列の全ての除去でも、GPIアンカー付着シグナル配列の一部の除去でもよい。得られたポリペチドは、しかしながら、可溶性である。可溶性ヒアルロナン分解酵素がGPIアンカー付着シグナル配列の一部を残すとき、ポリペプチドが可溶性であり(すなわち細胞で発現されたとき分泌され)、かつ活性である限り、GPIアンカー付着シグナル配列の1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個以上アミノ酸残基を維持する。当業者は、当分野で知られた方法を使用してポリペプチドがGPIアンカー型であるか否かを決定できる。このような方法は、GPIアンカー付着シグナル配列およびω部位の存在および位置を予測するための既知アルゴリズムの使用、およびホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼC(PI−PLC)またはD(PI−PLD)での消化前後の可溶性分析実施を含むが、これらに限定されない。
【0224】
拡張可溶性ヒアルロナン分解酵素は、得られたポリペチドが可溶性であり、GPIアンカー付着シグナル配列からの1個以上のアミノ酸残基を含むように、任意の天然GPIアンカーヒアルロナン分解酵素のC末端短縮化により製造できる(例えば、米国公開特許出願番号US20100143457参照)。C末端切断型であるが、GPIアンカー付着シグナル配列の一部を保持する例示的拡張可溶性ヒアルロナン分解酵素は、例えば、ヒトおよびチンパンジーesPH20ポリペチドのような霊長類起源の拡張可溶性PH20(esPH20)ポリペチドを含むが、これらに限定されない。例えば、esPH20ポリペチドは、得られたポリペチドが可溶性であり、GPIアンカー付着シグナル配列からの1個以上のアミノ酸残基を保持する、配列番号1、2、50、51または101に示す成熟または前駆体ポリペチドまたはその活性フラグメントを含むその他の変異型のいずれかのC末端短縮化により製造できる。変異型は、ヒアルロニダーゼ活性を保持する配列番号1、2、50、51または101のいずれかと60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%またはそれ以上の配列同一性を有するポリペチドを含む。ここで提供するesPH20ポリペチドは、配列番号1、2、50、51または101に示す配列を有するポリペプチドのような野生型ポリペチドと比較して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれ以上のアミノ酸がC末端切断されているが、得られたesPH20ポリペチドは可溶性であり、GPIアンカー付着シグナル配列からの1個以上のアミノ酸残基を保持する。
【0225】
典型的に、ここでの組成物、組み合わせ剤および方法における使用のために、可溶性ヒトPH20のような可溶性ヒトヒアルロナン分解酵素を使用する。他の動物からのPH20のようなヒアルロナン分解酵素を使用できるが、動物タンパク質であるために、このような製剤は免疫原性である可能性がある。例えば、患者の相当な割合で、食物摂取に二次的な事前感作が示され、そして、これらが動物タンパク質類であるために、全患者にその後の感作のリスクがある。それ故に、非ヒト製剤は慢性使用には適していない可能性がある。非ヒト製剤が望ましいならば、免疫原性を低下させるように製造できる。このような修飾は当業者の技術の範囲であり、例えば、分子上の1個以上の抗原性エピトープの除去および/または置換を含み得る。
【0226】
ここでの方法で使用するヒアルロニダーゼ(例えば、PH20を含むヒアルロナン分解酵素)は、組み換えにより製造しても、例えば、精巣抽出物のような天然源から精製または一部精製してもよい。組み換えヒアルロナン分解酵素を含む組み換えタンパク質の産生方法は本明細書の他の場所にするが、当分野で周知である。
【0227】
(a)可溶性ヒトPH20
可溶性ヒアルロニダーゼの例は、可溶性ヒトPH20である。組み換えヒトPH20の可溶性形態は製造されており、ここに記載する組成物、組み合わせ剤および方法において使用できる。このようなPH20の可溶性形態産生は、米国公開特許出願番号US20040268425;US20050260186、US20060104968、US20100143457および国際PCT公開番号WO2009111066に記載されている。例えば、配列番号1または2のアミノ酸または配列番号1または2に含まれるアミノ酸の配列と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%配列同一性を有する配列を含むC末端切断変異型ポリペチドを含む可溶性PH20ポリペチドはヒアルロニダーゼ活性を保持し、可溶性である。これらのポリペチドに包含されるのは、GPIアンカー付着シグナル配列の全てまたは一部を完全に欠く可溶性PH20ポリペチドである。
【0228】
また包含されるのは、GPIアンカーの少なくとも1個のアミノ酸を含む拡張可溶性PH20(esPH20)ポリペチドである。それゆえに、ERでタンパク質のC末端に共有結合したGPIアンカーを有し、原形質膜の細胞外小葉に固着されている代わりに、これらのポリペチドは分泌され、可溶性である。C末端切断型PH20ポリペチドは、配列番号1または2に示す配列を有する完全長野生型ポリペチドまたは対立形質または種変異型またはその他の変異型のような、完全長野生型ポリペチドと比較して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個またはそれ以上のアミノ酸がC末端切断されている。
【0229】
例えば、可溶性形態は、配列番号1に示すアミノ酸の配列のC末端アミノ酸残基467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482および483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499または500を有する配列番号1に示すヒトPH20のC末端切断型ポリペチドまたはそれと少なくとも85%同一性を示すポリペチドを含む。ヒトPH20の可溶性形態は、一般に配列番号1に示すアミノ酸36〜464を含むものを含む。例えば、哺乳動物細胞で発現されたとき、35アミノ酸N末端シグナル配列は処理中に開裂され、タンパク質の成熟形態が分泌される。それゆえに、成熟可溶性ポリペチドは、配列番号1のアミノ酸36〜467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482および483を含む。表3は、例示的C末端切断型可溶性PH20ポリペチドを含むC末端切断型PH20ポリペチドの非限定的例を示す。下記表3において、前駆体および成熟ポリペチドの長さ(アミノ酸)およびC末端切断型PH20タンパク質の前駆体および成熟ポリペチドの例示的アミノ酸配列を示す配列識別子(配列番号)を提供する。野生型PH20ポリペチドも比較のために表3に包含させる。特に、可溶性ヒアルロニダーゼの例は、配列番号4〜9のいずれかに示すような442、443、444、445、446または447アミノ酸長である可溶性ヒトPH20ポリペチドまたは対立形質または種変異型またはその他の変異型である。
【0230】
【表3】
【0231】
例えば、PH20の可溶性形態は、例えば、配列番号4〜9、47、48、150〜170、183〜189のいずれかに示すアミノ酸の配列または配列番号4〜9、47、48、150〜170、183〜189のいずれかに示すアミノ酸の配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を示すアミノ酸の配列を有し、ヒアルロニダーゼ活性を保持するポリペチドである。
【0232】
一般にPH20の可溶性形態は、グリコシル化がヒアルロニダーゼの触媒活性および安定性に重要であるために、ポリペチドが活性を保持することを確実にするために正確なN−グリコシル化を促進するタンパク質発現系を使用して産生する。このような細胞は、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(例えばDG44 CHO細胞)を含む。
【0233】
(b)rHuPH20
組み換えヒトPH20の可溶性形態は産生されており、ここに提供する組成物、組み合わせ剤および方法に使用できる。このような組み換えヒトPH20の可溶性形態の産生は、例えば、米国公開特許出願番号US20040268425;US20050260186;US20060104968;US20100143457;および国際PCT出願番号WO2009111066に記載されている。このようなポリペプチドの例は、アミノ酸1〜482(配列番号3に示す)をコードする核酸分子の発現により産生するものである。このような例示的核酸分子は配列番号49に示す。翻訳後処理は35アミノ酸シグナル配列を除去し、447アミノ酸可溶性組み換えヒトPH20(配列番号4)を残す。培養培地で製造されるため、rHuPH20と命名された生成物が種々の量で配列番号4〜9のいずれか1種以上を含み得る種の混合物を含むように、C末端に不均一性がある。典型的に、rHuPH20は、CHO細胞(例えばDG44 CHO細胞)のような活性を保持するための正確なN−グリコシル化を促進する細胞で産生される。
【0234】
iv. ヒアルロナン分解酵素のグリコシル化
ヒアルロニダーゼを含むいくつかのヒアルロナン分解酵素の、N−およびO架橋グリコシル化を含むグリコシル化は、その触媒活性および安定性に重要である。糖タンパク質を修飾するグリカンのタイプの変更はタンパク質の抗原性、構造的折りたたみ、可溶性、および安定性に大きな影響を与え得るが、ほとんどの酵素は、最適酵素活性のためにグリコシル化は不要であると考えられている。あるヒアルロニダーゼについて、N架橋グリコシル化の除去は、ヒアルロニダーゼ活性をほぼ完全に不活化する。それゆえに、このようなヒアルロニダーゼにとって、N架橋グリカンの存在は活性酵素産生に重要である。
【0235】
N架橋オリゴ糖類は大きく数種(オリゴマンノース、複合体、ハイブリッド、硫酸化)に分けられ、その全てが、−Asn−Xaa−Thr/Ser−配列(ここで、XaaはProではない)に入るAsn残基のアミド窒素を介して結合した(Man)3−GlcNAc−GlcNAc−コアを有する。−Asn−Xaa−Cys−部位でのグリコシル化は、凝固タンパク質Cについて報告されている。ある例において、ヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼはN−グリコシド架橋およびO−グリコシド架橋の両者を含み得る。例えば、PH20はO架橋オリゴ糖類ならびにN架橋オリゴ糖類を含む。配列番号1に例示するヒトPH20のN82、N166、N235、N254、N368、N393に6カ所の潜在的N架橋グリコシル化部位がある。アミノ酸残基N82、N166およびN254は、複合体型グリカンで占拠され、アミノ酸残基N368およびN393は高マンノース型グリカンで占拠されている。アミノ酸残基N235は約80%高マンノース型グリカンおよび20%複合体型グリカンで占拠されている。上記のとおり、S490でのO架橋グリコシル化はヒアルロニダーゼ活性に必須ではない。
【0236】
いくつかの例において、提供される組成物、組み合わせおよび/または方法で使用するためのヒアルロナン分解酵素は、グリコシル化部位の1カ所または全てでグリコシル化されている。例えば、ヒトPH20、またはその可溶性形態について、配列番号1のアミノ酸類N82、N166、N235、N254、N368、およびN393に対応する2箇所、3箇所、4箇所、5箇所、または6箇所のN−グリコシル化部位がグリコシル化される。数例において、ヒアルロナン分解酵素は、1箇所以上の天然グリコシル化部位でグリコシル化される。他の例において、ヒアルロナン分解酵素は、1箇所以上のさらなる部位でポリペプチドのグリコシル化を付与するために1箇所以上の非天然グリコシル化部位で修飾される。このような例において、さらなる糖分子の付加は、分子の薬物動態学的特性を亢進でき、例えば半減期を改善しおよび/または活性を改善する。
【0237】
他の例において、ここに提供される組成物、組み合わせおよび/または方法において使用するためのヒアルロナン分解酵素は、一部脱グリコシル化(またはN部分的グリコシル化ポリペチド)されている。例えば、完全グリコシル化ヒアルロニダーゼのヒアルロニダーゼ活性の全てまたは一部を保持する一部脱グリコシル化可溶性PH20ポリペチドを、ここに提供する組成物、組み合わせ剤および/または方法で使用できる。例示的一部脱グリコシル化ヒアルロニダーゼは、配列番号1、2、11、25、27、29〜32、63、65、101〜102および199〜210のいずれかに示すようないずれかのような、あらゆる種由来の部分的脱グリコシル化PH20ポリペチド可溶性形態またはアレル変異型、切断型変異型またはその他の変異型を含む。このような変異型は当業者に知られ、配列番号1、2、11、25、27、29〜32、63、65、101〜102および199〜210のいずれかと60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%またはそれ以上の配列同一性を有するポリペチドまたはその切断型を含む。ここに提供する一部脱グリコシル化ヒアルロニダーゼはまたハイブリッド、融合およびキメラ一部脱グリコシル化ヒアルロニダーゼおよび一部脱グリコシル化ヒアルロニダーゼコンジュゲートを含む。
【0238】
グリコシダーゼ、またはグリコシドヒドロラーゼは、2個の小さな糖類を産生するためにグリコシド結合の加水分解を触媒する酵素である。N−グリカン類の主なタイプは高マンノースグリカン、ハイブリッドグリカンおよび複合体グリカンを含む。部分的タンパク質脱グリコシル化しか生じない数種のグリコシダーゼは以下のものを含む。高マンノースおよびハイブリッド型グリカンを開裂するEndoF1;二分岐複合体型グリカンを開裂するEndoF2;二分岐およびさらに分岐した複合体グリカンを開裂するEndoF3;および高マンノースおよびハイブリッド型グリカンを開裂するEndoH。例えば、PH20(例えばrHuPH20と命名された組み換えPH20)の上記グリコシダーゼの一つまたは全て(例えばEndoF1、EndoF2、EndoF3および/またはEndoH)での処理は、部分的脱グリコシル化をもたらす。これらの部分的脱グリコシル化PH20ポリペプチドは、完全グリコシル化ポリペプチドと同等なヒアルロニダーゼ酵素活性を示し得る。対照的に、PH20を、全てのN−グリカンを開裂するグリコシダーゼであるPNGaseFまたはGlcNAcホスホトランスフェラーゼ(GPT)阻害剤ツニカマイシンで処理すると、全N−グリカンの完全脱グリコシル化をもたらし、それ故に、PH20を酵素的に不活性とする。それ故に、全てのN架橋グリコシル化部位(例えば、配列番号1に例示するヒトPH20のアミノ酸類N82、N166、N235、N254、N368、およびN393)をグリコシル化できるが、1種以上のグリコシダーゼでの処理は、1種以上のグリコシダーゼで消化されていないヒアルロニダーゼと比較して、グリコシル化の程度を低下させ得る。
【0239】
一部脱グリコシル化可溶性ヒアルロニダーゼのような一部脱グリコシル化ヒアルロナン分解酵素を、1種以上のグリコシダーゼ、一般に全てのN−グリカンを除去せず、タンパク質を部分的脱グリコシル化するグリコシダーゼで消化させることにより製造できる。例えば、PH20(例えばrHuPH20と命名した組み換えPH20)の上記グリコシダーゼ(例えばEndoF1、EndoF2および/またはEndoF3)の1種以上での処理は、脱グリコシル化をもたらす。これら一部脱グリコシル化PH20ポリペチドは、完全グリコシル化ポリペチドと同等なヒアルロニダーゼ酵素活性を示す。対照的に、PH20の全N−グリカンを開裂するグリコシダーゼであるPNGaseFでの処理は、全N−グリカンの完全な除去となり、それによりPH20が酵素的に不活性となる。それゆえに、全N結合グリコシル化部位(例えば、配列番号1に例示するヒトPH20のアミノ酸N82、N166、N235、N254、N368およびN393)をグリコシル化でき、1種以上のグリコシダーゼでの処理は、1種以上のグリコシダーゼで消化していないヒアルロニダーゼと比較して、グリコシル化の程度を減少できる。
【0240】
部分的脱グリコシル化可溶性PH20ポリペプチドを含む部分的脱グリコシル化ヒアルロナン分解酵素は、完全グリコシル化ポリペプチドのグリコシル化レベルの10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%または80%を有し得る。一例において、配列番号1のアミノ酸類N82、N166、N235、N254、N368、およびN393に対応する1箇所、2箇所、3箇所、4箇所、5箇所または6箇所のN−グリコシル化部位は、高マンノースまたは複合体型グリカンをもはや含まないが、少なくとも1個のN−アセチルグルコサミン部分を含むように、部分的脱グリコシル化される。数例において、配列番号1のアミノ酸類N82、N166およびN254に対応するN−グリコシル化部位の1箇所、2箇所または3箇所が脱グリコシル化され、すなわち、それは糖部分を含まない。他の例において、配列番号1のアミノ酸類N82、N166、N235、N254、N368、およびN393に対応する3箇所、4箇所、5箇所、または6箇所のN−グリコシル化部位がグリコシル化される。グリコシル化アミノ酸残基はN−アセチルグルコサミン部分を最小限含む。典型的に、部分的脱グリコシル化可溶性PH20ポリペプチドを含む部分的脱グリコシル化ヒアルロナン分解酵素は、完全グリコシル化ポリペプチドのヒアルロニダーゼ活性の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、200%、300%、400%、500%、1000%またはそれ以上であるヒアルロニダーゼ活性を示す。
【0241】
v. 修飾(ポリマー結合)ヒアルロナン分解酵素
ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素へのポリエチレングリコール(ペグ化部分(PEG))のような重合体分子の共有結合または他の安定な結合(コンジュゲーション)は、得られたヒアルロナン分解酵素−ポリマー組成物に有益な特性を与える。このような特性は生体適合性改善、対象、細胞および/または他の組織中の血中タンパク質(および酵素活性)半減期延長、プロテアーゼおよび加水分解からのタンパク質の有効な遮蔽、体内分布改善、薬物動態学および/または薬力学改善、および水可溶性増加を含む。
【0242】
ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素と結合できるポリマーの例は、天然および合成ホモポリマー、例えばポリオール(すなわちポリ−OH)、ポリアミン(すなわちポリ−NH)およびポリカルボキシル酸(すなわちポリ−COOH)、およびさらなるヘテロポリマー、すなわち1種以上の種々のカップリング基、例えばヒドロキシル基およびアミン基を含むポリマーを含む。適当な重合体分子の例は、ポリアルキレンオキシド(PAO)、例えばポリエチレングリコール(PEG)、メトキシポリエチレングリコール(mPEG)およびポリプロピレングリコールを含むポリアルキレングリコール(PAG)、PEG−グリシジルエーテル(Epox−PEG)、PEG−オキシカルボニルイミダゾール(CDI−PEG)分枝ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(エチレンイミン)(PEI)、直鎖ポリアミドアミン、ポリアクリルアミド(PAAm)、ポリジメチルアクリルアミド(PDAAm)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボキシレート、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ−D,L−アミノ酸、ポリエチレン−コ−マレイン酸無水物、ポリスチレン−コ−マレイン酸無水物、カルボキシメチル−キトサンを含むデキストラン、デキストリン、デキストラン、ヘパリン、相同アルブミン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースカルボキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースを含むセルロース、キトサンの加水分解物、デンプン、例えばヒドロキシエチル−デンプンおよびヒドロキシプロピル−デンプン、グリコーゲン、アガロースおよびその誘導体、グアーガム、プルラン、イヌリン、キサンタンガム、カラゲナン、ペクチン、アルギン酸加水分解物およびバイオポリマーから選択される重合体分子である。
【0243】
典型的に、ポリマーは、デキストランおよびプルランのような多糖と比較して、架橋できる活性基が少ない、PEG、典型的にmPEGのようなポリエチレンオキシドのようなポリアルキレンオキシド(PAO)である。典型的に、ポリマーは、例えば相対的に単純な化学反応を使用して、ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素と共有結合できる(例えばタンパク質表面上の結合基)(m)ポリエチレングリコール(mPEG)のような非毒性重合体分子である。
【0244】
治療剤のペグ化はタンパク質分解への抵抗性を高め、血漿半減期を延長し、抗原性および免疫原性を減少させることが報告されている。ペグ化法の例は当分野で知られる(例えば、Lu and Felix, Int. J. Peptide Protein Res., 43:127-138, 1994; Lu and Felix, Peptide Res., 6:140-6, 1993; Felix et al., Int. J. Peptide Res., 46:253-64, 1995; Benhar et al., J. Biol. Chem., 269: 13398-404, 1994; Brumeanu et al., J Immunol., 154:3088-95, 1995; see also, Caliceti et al. (2003) Adv. Drug Deliv. Rev. 55(10):1261-77 and Molineux (2003) Pharmacotherapy 23 (8 Pt 2):3S-8S). PEGylation also can be used in the delivery of nucleic acid molecules in vivo. For example, PEGylation of adenovirus can increase stability and gene transfer (see, e.g., Cheng et al. (2003) Pharm. Res. 20(9):1444-51参照)。
【0245】
ヒアルロニダーゼを含むヒアルロナン分解酵素に結合するための適切な重合体分子は、ポリエチレングリコール(PEG)およびPEG誘導体、例えばメトキシ−ポリエチレングリコール類(mPEG)、PEG−グリシジルエーテル(Epox−PEG)、PEG−オキシカルボニルイミダゾール(CDI−PEG)、分枝PEGおよびポリエチレンオキシド(PEO)を含むが、これらに限定されない(例えばRoberts et al., Advanced Drug Delivery Review (2002) 54: 459-476; Harris and Zalipsky, S (eds.) "Poly(ethy1ene glycol), Chemistry and Biological Applications" ACS Symposium Series 680, 1997; Mehvar et al., J. Pharm. Pharmaceut. Sci., 3(1):125-136, 2000; Harris, (2003) Nature Reviews Drug Discovery 2:214-221; and Tsubery, (2004) J Biol. Chem 279(37):38118-24参照)。重合体分子は、典型的に約3kDa〜約60kDaの範囲の分子量のものである。ある態様において、ヒアルロニダーゼ、例えばPH20のようなタンパク質と結合する重合体分子は、5〜60kDa(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)、例えば少なくとも5kDa、10kDa、15kDa、20kDa、25kDa、30kDa、35kDa、40kDa、45kDa、50kDa、55kDa、60または60kDa(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)以上の分子量を有する。
【0246】
ペグ化可溶性ヒアルロナン分解酵素
ここでの組み合わせ剤および方法で使用するヒアルロナン分解酵素は、ペグ化可溶性ヒアルロナン分解酵素のようなペグ化ヒアルロナン分解酵素であり得る。一例において、ペグ化可溶性ヒアルロニダーゼ、例えばペグ化PH20である。ポリペチドをPEGまたはPEG誘導体と共有結合(コンジュゲートさせる)により修飾する方法(すなわち“ペグ化”)は当分野で知られる(例えば、U.S.2006/0104968;U.S.5,672,662;U.S.6,737,505;およびU.S.2004/0235734参照)。ペグ化の方法は、特定化リンカーおよびカップリング化学(例えば、Roberts et al., Adv. Drug Deliv. Rev. 54:459-476, 2002参照)、単一コンジュゲーション部位への複数PEG分子の付着(例えば、分枝PEGの使用を介する;例えば、Guiotto et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 12:177-180, 2002参照)、部位特異的ペグ化および/またはモノ−ペグ化(例えば、Chapman et al., Nature Biotech. 17:780-783, 1999参照)および部位特異的酵素ペグ化(例えば、Sato, Adv. Drug Deliv. Rev., 54:487-504, 2002)を含むが、これらに限定されない。文献に記載された方法および技術により、一タンパク質分子に結合した1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個または10個を超えるPEGまたはPEG誘導体を有するタンパク質類が産生される(例えば、U.S.2006/0104968参照)。
【0247】
ペグ化のための多くの反応材が文献に記載されている。このような反応材は、N−ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)活性化PEG、スクシンイミジルmPEG、mPEG2−N−ヒドロキシスクシンイミド、mPEGスクシンイミジルアルファ−メチルブタノエート、mPEGスクシンイミジルプロピオネート、mPEGスクシンイミジルブタノエート、mPEGカルボキシメチル3−ヒドロキシブタノイック酸スクシンイミジルエステル、ホモ二官能的PEG−スクシンイミジルプロピオネート、ホモ二官能的PEGプロピオンアルデヒド、ホモ二官能的PEGブチルアルデヒド、PEGマレイミド、PEGヒドラジド、p−ニトロフェニル−カーボネートPEG、mPEG−ベンゾトリアゾールカーボネート、プロピオンアルデヒドPEG、mPEGブチルアルデヒド、分枝mPEG2ブチルアルデヒド、mPEGアセチル、mPEGピペリドン、mPEGメチルケトン、mPEG“リンカーレス”マレイミド、mPEGビニルスルホン、mPEGチオール、mPEGオルトピリジルチオエステル、mPEGオルトピリジルジスルフィド、Fmoc−PEG−NHS、Boc−PEG−NHS、ビニルスルホンPEG−NHS、アクリレートPEG−NHS、フルオレッセインPEG−NHS、およびビオチンPEG−NHSを含むが、これらに限定されない(例えば、Monfardini et al., Bioconjugate Chem. 6:62-69, 1995; Veronese et al., J. Bioactive Compatible Polymers 12:197-207;U.S.5,672,662;U.S.5,932,462;U.S.6,495,659;U.S.6,737,505;U.S.4,002,531;U.S.4,179,337;U.S.5,122,614;U.S.5,324、844;U.S.5,446,090;U.S.5,612,460;U.S.5,643,575;U.S.5,766,581;U.S.5,795、569;U.S.5,808,096;U.S.5,900,461;U.S.5,919,455;U.S.5,985,263;U.S.5,990、237;U.S.6,113,906;U.S.6,214,966;U.S.6,258,351;U.S.6,340,742;U.S.6,413,507;U.S.6,420,339;U.S.6,437,025;U.S.6,448,369;U.S.6,461,802;U.S.6,828,401;U.S.6,858,736;U.S.2001/0021763;U.S.2001/0044526;U.S.2001/0046481;U.S.2002/0052430;U.S.2002/0072573;U.S.2002/0156047;U.S.2003/0114647;U.S.2003/0143596;U.S.2003/0158333;U.S.2003/0220447;U.S.2004/0013637;US2004/0235734;WO0500360;U.S.2005/0114037;U.S.2005/0171328;U.S.2005/0209416;EP1064951;EP0822199;WO01076640;WO0002017;WO0249673;WO9428024;およびWO0187925参照)。
【0248】
2. タキサンおよびその製剤
ここに提供する組成物、組み合わせ剤およびその方法および使用を含む組み合わせ治療はタキサンを含む。タキサンは一般に水に難溶性であり、その治療的使用が制限されている。ここで提供する組成物および組み合わせ剤において、タキサンは、水溶性を示す製剤として提供される。ここに提供する具体例において、タキサンは、腫瘍の間質または細胞を標的とするおよび/または浸透する製剤として提供される。このようなタキサン製剤の例はアルブミン結合タキサンである。
【0249】
a. タキサン
タキサンは、イチイ属(イチイ)植物から産生されるジテルペン類である。タキサンは、チューブリンと結合し、微小管重合を安定化するように作用する抗有糸分裂剤であり、それにより微小管集合および脱構築に関与する正常平衡を妨害し、微小管機能を遅延させる。タキサンは微小管形成を促進するが、紡錘体の微小管を形成するチューブリンの脱重合を阻止する。微小管は細胞分裂に必須であり、タキサンに曝された細胞は、減数分裂前G2期で停止し、分裂できない。これら薬剤は、こうして、これらの薬物で処理された細胞が有糸分裂で保持されるように細胞分裂過程を妨害する。これは、最終的に有糸分裂不能による細胞死となる。
【0250】
タキサンはまた、処置細胞でOおよびHを含む活性酸素種(ROS)蓄積を生じる。ROS蓄積は、パクリタキセルを含むタキサンの直接細胞毒性活性ならびに隣接細胞へのバイスタンダー効果と関連する(例えばAlexandre et al. (2007) Cancer Res., 67:3512参照)。
【0251】
ここに提供する組成物、組み合わせ剤および方法で使用するタキサンは、チューブリン脱重合を阻害するジテルペン化合物のいずれかを含む。特に、このようなタキサンはまた処置細胞にROS蓄積をもたらすいずれかも含む。タキサンは、天然に生じるジテルペンから産生されたものまたは人工的に合成されたものを含む。タキサンは非結晶および/または非晶質であるものも含む。タキサンはまた無水形態のタキサンを含む。
【0252】
パクリタキセル(タキソール)は天然に存在するジテルペノイドである。それは化学名5β,20−エポキシ−1,2α,4,7β,10β,13α−ヘキサヒドロキシタクス−11−エン−9−オン4,10−ジアセテート2−ベンゾエートを有する。タキソールは、西洋イチイ(Taxus brevifolia)ならびにT. baccataおよびT. cuspidataの幹の皮に見られる。最初に、タイヘイヨウイチイ(Taxus brevifolia)の皮から単離された(Wani et al. (1971) J. Am. Chem. Soc., 93:2325)。パクリタキセルのコア構造は4環(6員AおよびC環、8員B環および4員D環)を含む。パクリタキセルの構造を下に示し、示す番号付けは、このクラスの薬物に慣用的番号付けを使用する。
【化2】
【0253】
パクリタキセルは、ヒマラヤイチイまたはヒマラヤイチイの針葉および支脈に由来するバッカチンと呼ばれる前駆体化合物からの半合成方法により製造される。例えば、パクリタキセルは、パクリタキセルのヒドロキシル基となるバッカチンのヒドロキシル基に保護基を付加し、前駆体バッカチンをパクリタキセルに変化し、次いでヒドロキシル基から保護基を除去してパクリタキセルを得ることによりバッカチンから製造できる。さらに、パクリタキセルは、最近簡単な前駆体から合成されている(例えば、国際PCT公開番号WO93/10076、WO93/16059;米国特許番号5,200,534米国特許番号5,015,744;米国特許番号4,960,790;Nicolaou (1993) Nature 364:464-466; Nicolaou, K. C. et al. (1994) Nature, 367:630-634; およびHolton et al. (1994) J. Am. Chem. Soc., 116:1597-1600参照)。
【0254】
ドセタキセル(タキソテール)は、ここに提供する組み合わせ剤および組成物で使用するタキサンの他の例である。ドセタキセルは、化学名1,7β,10β−トリヒドロキシ−9−オキソ−5β,20−エポキシタクス−11−エン−2α,4,13α−トリイル4−アセテート2−ベンゾエート13−{(2R,3S)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−ヒドロキシ−3−フェニルプロパノエートを有し、下に示す構造を有し、示す番号付けは、このクラスの薬物に慣用的番号付けを使用する。
【化3】
【0255】
ドセタキセルは、ヨーロッパイチイ(Taxus baccata)で見られる化合物に由来する半合成、第二世代タキサンである。ドセタキセルは、ヨーロッパイチイから抽出される10−デアセチルバッカチンIIIのエステル化生成物である。パクリタキセルと、化学構造で2箇所異なり、パクリタキセルにおけるベンジルアミドの変わりに、酢酸エステルおよびtert−ブチルカルバメートエステルがフェニルプロピオネート側鎖に存在する。パクリタキセルのアナログであるドセタキセルは、Taxus baccataの針葉から抽出された非細胞毒性前駆体10−デアセチルバッカチンIIIから半合成的に製造され、化学合成された側鎖でエステル化される(Cortes and Pazdur, 1995, J. Clin. Oncol. 13(10):2643-55)。
【0256】
ここに提供する組成物、組み合わせ剤および方法で使用するタキサンは、パクリタキセルまたはドセタキセルのアナログ、誘導体およびプロドラッグ形態を含む。このようなタキサン誘導体は、パクリタキセルまたはドセタキセルと比較して水性可溶性が改善されたものを含む。例えば、タキサン誘導体、アナログおよびプロドラッグ形態は、環位置が修飾または誘導体化された、特に2’および7または10位が適当な基で誘導体化されたものを含む(例えばFu et al. (2009) Current Medicinal Chemistry, 16:1-13参照)。
【0257】
例えば、タキサン誘導体、アナログまたはプロドラッグ形態は、2’−O位に種々の置換アシル基を有する水可溶性タキソール(例えば米国特許番号4,942,184参照);2’および/または7’ヒドロキシが選択アミノ酸またはアミノ酸模倣化合物で誘導体化された水可溶性タキソール(例えば米国特許番号4,960,790参照);スルホン化2’−アクリロイル、スルホン化2’−O−アシル酸タキソールおよび置換2’−ベンゾイルおよび2’7−ジベンゾイルタキソール(例えば米国特許番号5、352,805および5,411,984参照);タキソールの2’および/または7−O−エステルおよび2’−および/または7−O−カーボネート誘導体(例えば米国特許番号5,817,840参照);ポリエチレングリコール、ポリ(L−グルタミン酸)、ポリ(L−アスパラギン酸)のようなポリマーとのコンジュゲーションにより形成したタキサン誘導体(例えば米国特許番号5,977,163参照);タキサン側鎖のC−7、C−10および/または2’位にホスホノオキシ基を有するタキサンのプロドラッグ形態(例えばWO9414787);2’−スクシニルパクリタキセルおよび2’グルタリルパクリタキセルの塩(Deutch et al. (1989) J. Med. Chem., 32:788-792);パクリタキセルの2’および7−アミノ酸誘導体およびそれらの塩(Matthew et al. (1992) J. Med. Chem., 35:145-151);スルホネート誘導体(Zhao et al. (1991) J. Nat. Prod., 54:1607-1611);7−ホスフェートパクリタキセル類似体(Vyas et al. (1993) Bioorg. Med. Chem., Lett., 3:1357-1360);パクリタキセルの2’および7−ポリエチレングリコールエステル(Greenwald et al. (1995) J. Org. Chem., 60:331-336; Greenwald et al. (1996) J. Med. Chem., 39:424-431);2’および7−ホスホノオキシフェニル−プロピオネートパクリタキセル(Ueda et al. (1993) Bioorg. Med. Chem. Lett., 3:1761-1766);パクリタキセルの2’および7−メチルピリジニウムアセテート類似体(Nicolaou et al. (1994) Angew Chemie, 106:1672-1675); Paloma et al. (1994) Chem. Biol., 1:107-112);2’位にリンゴ酸を有するパクリタキセルのプロドラッグ(Damen et al. (2000) Bioorg. Med. Chem. Lett., 8:427-432);タキサンおよび特にタキソールのスルホン酸塩(米国特許番号5,059,699);タキサンの脂質可溶性を高めるためにアシル鎖が結合した誘導体(例えば米国特許番号6,482,850参照);無水生成物より高い安定性を示すドセタキセルの三水和物形態(例えば米国特許番号6,022,985および6,838,569参照);C−10位にカルバメート部分を含むものを含むC−10タキサン誘導体(米国特許番号8,138,361);疎水性タキサン誘導体(米国特許公開番号US20090263483);およびタキサンのヒドラジド含有カルボキシレート誘導体(例えば米国特許番号8,133,888参照)を含むが、これらに限定されない。
【0258】
b. 腫瘍または間質標的タキサン
ここでの組成物および組み合わせ剤で提供されるタキサン化合物は、一般に腫瘍または腫瘍を囲む間質を標的とするよう製造する。ここに提供される組成物および組み合わせ剤におけるタキサンは、また可溶性が改善した可溶化またはナノ分散製剤として提供される。
【0259】
天然または半合成的に製造したパクリタキセル(タキソール)は、低水溶性および非特異的ターゲティングまたは局在化のような問題がある。例えば、パクリタキセルおよびドセタキセルを含むタキサンは極めて水に難溶性であり(10μg/mL未満)、その結果、静脈内投与用水性媒体に実際上製剤できない。水溶性問題を克服するために、現在のパクリタキセル製剤は、一次溶媒/界面活性剤としてポリオキシエチル化ヒマシ油(Polyoxyl 35またはCremophor(登録商標))の溶液で共溶媒として高濃度のエタノールを用いて癌患者への静脈内投与用に製剤されている。パクリタキセル同様、ドセタキセルは水にほとんど溶けない。現在、ドセタキセルの溶解に使用されている溶媒/界面活性剤はポリソルベート80(Tween 80)である(Bissery et al. 1991 Cancer Res. 51(18):4845-52; Tomiak et al. 1992)。現在の製剤に存在するエタノール、Cremophorおよび/またはTweenは、重篤な皮膚発疹、蕁麻疹、紅潮、呼吸困難、頻脈およびその他を含み得る過敏症反応の発生と関係している。
【0260】
さらに、癌組織への特異性の増大により、タキサン分子は、全身的作用または暴露の減少により毒性が低減されている。典型的に、腫瘍標的タキサンは、腫瘍認識部分に直接的または間接的にリンカーを介してコンジュゲートまたは結合したタキサン、その誘導体、アナログまたはプロドラッグである。腫瘍認識部分は腫瘍特異的マーカーまたは正常細胞と比較して癌細胞で特異的に発現される部分を認識するモノクローナル抗体、タンパク質、ペプチド、脂質または高分子複合体であり得る。癌細胞は多くの腫瘍特異的マーカーまたは受容体を過剰発現し、これはタキサン送達の標的となり得る。
【0261】
腫瘍標的タキサンはミセル、ナノ粒子、マイクロスフェア、リポソームまたはヒドロゲル製剤として提供できる。このような製剤は、水性媒体に低溶解度を示すタキサンのような活性成分を封入するために使用できる。このような製剤は当業者に周知である。いくつかの例において、送達媒体を、高分子複合体、モノクローナル抗体、タンパク質、ペプチドまたは脂質のような腫瘍ターゲティング部分で被覆またはコンジュゲートする。それゆえに、いくつかの例において、薬物送達プラットホームはタキサンを封入し、それ自体、腫瘍ターゲティングを起こすために表面上にターゲティングリガンドまたは他の重合体コーティングを示す。
【0262】
腫瘍標的タキサンおよびその製剤の例はポリ−L−グルタメートのような高分子(PGA−TXL、Xyotax;Li et al. (1998) Cancer Res., 58:2404-2409);p140 TrkAまたはp75受容体のような腫瘍マーカーに特異的なモノクローナル抗体(Guillemard and Saragovi (2001) Cancer Res., 61:694)または抗上皮細胞増殖因子受容体(すなわち抗EGFRモノクローナル抗体、例えばセツキシマブ;Safavy et al. (2003) Bioconjug., 14:302-10; Ojima et al. (2002) J. Med. Chem., 45:5620-3)、抗HER2(ハーセプチン、トラスツマブ、Cirstoiu-Hapca et al. (2010) J. Control Release, 144:324-31);ドコサヘキサエン酸(DHA;Bradley et al. (2001) Clin. Cancer Research, 7:3229-38)、リノレン酸またはリノール酸(Kuznetsova et al. (2006) Bioorg. Med. Chem. Lett., 15:974-7)のようなポリ不飽和脂肪酸;細胞表面ボンベシン/ガストリン放出ペプチド(BBN/GRP)に結合するBBN[7−13]と名づけられた7−アミノ酸合成ペプチドのようなペプチド(Safavy et al. (1999) J. Med. Chem., 42:4919-4924)、LRP−1標的19アミノ酸ペプチドangiopep-2(Wen et al. (2011) Molecular Cancer Therapeutics, 10 (11 Suppl):Abstract B49)、マトリックスメタロプロテアーゼ2により開裂されるオクタペプチド(MMP2;Yamada et al. (2010) Cancer Biology and Therapy, 9:192-203)、RGDペプチド(例えばZhao et al. (2009) J. Drug Target, 17:10-8参照);ビオチン(ビタミンHまたはB−7)、フォレートまたは葉酸、ビタミンB12またはリボフラビンを含むビタミン受容体のような腫瘍特異的受容体を標的とするタンパク質(例えばChen et al. (2010) Biconjug. Chem., 21:979-987, Li et al. (2011) International Journal of Nanomedicine, 6:1167-1184);ヒアルロン酸(HA)(Auzenne et al. (2007) Neoplasia, 9:479-486);トランスフェリン(Sahoo et al. (2004) Int. J. Cancer, 112:335-40);およびアルブミンである、腫瘍ターゲティング部分を含む。
【0263】
アルブミン結合タキサン
可溶性ポリマー−薬物複合体は、アルブミン結合タキサンである。アルブミンは、ビタミンまたはホルモンのような内在性疎水性分子の天然担体である。担体としての作用以外に、アルブミンはまた、カベオラ介在経細胞輸送を起こす内皮細胞表面上のgp60への結合によりタンパク質結合血漿成分の経内皮細胞輸送を増強する。アルブミンはまた多くの腫瘍細胞に存在するシステインに富む酸性分泌タンパク質(SPARC、オステオネクチンとしても知られる)と結合できる。それゆえに、アルブミンは、アルブミン結合薬物の腫瘍細胞内蓄積を促進する。
【0264】
アルブミンはヒト血清アルブミン(HSA)ならびにウシ血清アルブミン(BSA)のような非ヒトアルブミンを含む。HSAは、M 65Kの高度に可溶性の球状タンパク質であり、585アミノ酸(配列番号211)を含む。HSAは血漿で最も豊富なタンパク質であり、ヒト血漿のコロイド浸透圧の70〜80%を構成する。HSAのアミノ酸配列は計17個のジスルフィド架橋、1個の遊離チオール(Cys 34)および一トリプトファン(Trp 214)を含む。
【0265】
ヒト血清アルブミン(HSA)は多疎水性結合部位(HSAの内在性リガンドである脂肪酸について計8個)を有し、多様な薬剤、特に中性および負荷電疎水性化合物への結合が示されている(Goodman et al., The Pharmacological Basis of Therapeutics, 9th ed., McGraw-Hill New York (1996))。2個の高親和性結合部位が、極性リガンド特性の結合点として機能する表面近くの荷電リシンおよびアルギニン残基を有する高度に伸張された疎水性ポケットであるHSAのサブドメインIIAおよびIIIAに提案されている(例えば、Fehske et al., Biochem. Pharmcol., 30, 687-92 (1981), Vorum, Dan. Med. Bull., 46, 379-99 (1999), Kragh-Hansen, Dan. Med. Bull., 37:57-84 (1990), Curry et al., Nat. Struct. Biol., 5, 827-35 (1998), Sugio et al., Protein. Eng., 12, 439-46 (1999), He et al., Nature, 358, 209-15 (1992), and Carter et al., Adv. Protein. Chem., 45, 153-203 (1994)). Paclitaxel and docetaxel have been shown to bind HSA (see, e.g., Paal et al., Eur. J. Biochem., 268(7), 2187-91 (2001), Purcell et al., Biochim. Biophys. Acta, 1478(1), 61-8 (2000), Altmayer et al., Arzneimittelforschung, 45, 1053-6 (1995), Garrido et al., Rev. Esp. Anestestiol. Reanim., 41, 308-12 (1994); and Urien et al., Invyvest. New Drugs, 14(2), 147-51 (1996)参照)。
【0266】
組成物中のアルブミン対タキサンの重量比は凡そまたは多くて20:1またはそれ未満、例えば19:1、18:1、17:1、16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1またはそれ未満および一般に少なくとも9:1または凡そ9:1である。得られた生成物は、溶媒および/または界面活性剤を含まないように製造できる。タキサンをアルブミンで被覆する。タキサン/アルブミンナノ粒子は、一般に200nmを超えない平均直径を有し、一般に100nm〜200nm、例えば平均直径130nmである。
【0267】
例えば、アルブミン結合タキサンは、アルブミン結合(nab−)パクリタキセル(例えばアブラキサン、American Bioscience, Inc. (Santa Monica, CA);米国特許番号5,439,686および6,749,868にも記載)またはアルブミン結合ドセタキセル(例えば、米国特許出願公開番号20080161382、20070117744および20070082838に記載)を含む。ヒトアルブミンは、凝集を阻止するためにパクリタキセルナノ粒子に荷電および立体的安定化を提供する表面活性ポリマーとして機能する。安定化は、アルブミンがパクリタキセルナノ粒子表面に吸着し、そうしてパクリタキセル粒子の凝集を阻止する表面−活性ポリマーとして機能するシートを形成するとの事実により達成される。パクリタキセルとヒトアルブミンの相互作用は弱く、両物質は再構成後自由に解離する。それゆえに、再構成され、血流に注射されたとき、パクリタキセル濃度は急速に低下し、アルブミン粒子は個々のアルブミン分子へと解離し、次いでパクリタキセルがなお結合したまま循環すると考えられる。特に、アルブミン結合パクリタキセル(例えばnab−パクリタキセルまたはアブラキサン)は、食塩水溶液(0.9%NaCl)で希釈したパクリタキセルおよびヒト血清アルブミンの凍結乾燥製剤に由来するコロイド懸濁液として使用できる。得られた薬物粒子複合体は、平均サイズ130nmで安定である。上記のいずれかのような他のタキサンを含むナノ粒子も製造および塩油でき、上記と同様の特徴を含み得る。
【0268】
3. さらなる化学療法剤(例えばヌクレオシドアナログ)
所望により、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素および/またはタキサン製剤の一方または両者との共投与により活性が改善または増加するさらなる化学療法剤を、ここに提供する組み合わせ治療に包含し得る。例えば、1種以上のヌクレオシドアナログ、特に代謝拮抗剤をここに提供する組み合わせ治療に包含できる。細胞に侵入後、ヌクレオシドアナログは、ヌクレオシド5’一リン酸、二リン酸および三リン酸へのリン酸化に成功する。例えば、一般に、ヌクレオシドアナログは、ヌクレオシドのその三リン酸へのリン酸化(例えばジホスフェートキナーゼによる)により活性化合物に変換され、これが、次いでDNAへの取り込みのための基質として生理的ヌクレオシド(例えばdCTP)と競合する。それゆえに、ヌクレオシドアナログは生理的ヌクレオシドを模倣する。取り込まれたら、アナログは非効率的基質であり、それにより複製を失速させおよび/または鎖終止を起こす。ヌクレオシドアナログの概説についてSampath et al. (2003), Oncogene, 22:9063-9074参照。ヌクレオシドアナログは、活性形態への変換を必要とするため、一般に活性形態へとリン酸化されるべきプロドラッグである。
【0269】
ここでの組成物および組み合わせ剤で使用するためのヌクレオシドアナログはプリンおよびピリミジンヌクレオシドアナログ、ならびにその誘導体およびプロドラッグ形態を含む。ピリミジンヌクレオシドアナログは、フルオロピリミジン5−フルオロウラシル(5−FU;フルオロウラシル)、5−フルオロ−2’−デオキシシチジン(FCdR)、アラビノシルシトシン(ara−C;別名シトシンアラビノシドまたはシタラビン)、ゲムシタビン(2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジン)、トロキサシタビン(ベータ−L−ジオキソランシチジン、BCH−4556)、デシタビン(5−アザ−2’−デオキシシチジン)、アザシチジン(4−アミノ−1−β−D−リボフラノシル−1,3,5−トリアジン−2(1H)−オン)、シュードイソシチジン(psi ICR)、5−アザ−2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジン;5−アザ−2’−デオキシ−2’−フルオロシチジン;1−β−D−リボフラノシル−2(1H)−ピリミジノン(ゼブラリン);2’,3’−ジデオキシ−5−フルオロ−3’−チアシチジン(エムトリバ);2’−シクロシチジン(アンシタビン);1−β−D−アラビノフラノシル−5−アザシトシン(ファザラビンまたはara−AC);6−アザシチジン(6−アザ−CR);5,6−ジヒドロ−5−アザシチジン(dH−アザ−CR);N−ペンチルオキシカルボニル−5’−デオキシ−5−フルオロシチジン(カペシタビン);N−オクタデシル−シタラビン;およびエライジン酸シタラビンおよびその誘導体およびプロドラッグ形態を含むが、これらに限定されない。プリンヌクレオシドアナログは、例えば、フルダラビン、クラドリビン、クロファラビン、ネララビン、フォロデシン、ペントスタチンおよびテザシタビンおよび誘導体およびプロドラッグ形態を含む。
【0270】
ヌクレオシドアナログの他のプロドラッグ形態は知られ、または製造できる。例えば、他のプロドラッグ形態は、細胞取り込みの特性および/またはデアミナーゼによる不活性化(下記)に対する耐性を変更するために修飾されたものを含む。例えば、このようなプロドラッグ形態は経口吸収の改善および/または高いまたは特異的組織ターゲティングを可能にする(Li et al. (2008) Journal Pharm. Science, 97:1109-1134)。
【0271】
あるヌクレオシドアナログの抗腫瘍活性は、達成できる低細胞毒性レベルにより制限されている。これは、多くの組織で生じ得る酵素の不活性化が大きな理由である。例えば、あるヌクレオシドアナログの代謝不活性化は脱アミノ化が原因であり得る。脱アミノ化はアデノシンデアミナーゼまたはシチジンデアミナーゼ(cdA)のようなヌクレオチド特異的デアミナーゼにより触媒される。それゆえに、ある癌薬物はアデノシンデアミナーゼ(ADA、EC 3.5.4.4)およびシチジンデアミナーゼ(CDA、別称シトシンヌクレオシドデアミナーゼ、シチジンアミノヒドロラーゼまたはEC 3.5.4.5)のような生物に天然に存在する酵素により代謝される。これら酵素は、ヒトおよび他の生物においてそれぞれ天然アミノプリンおよびアミノピリミジンヌクレオシドを脱アミノ化するために機能する。これら酵素はまた活性ヌクレオシドベースの癌薬物を不活性代謝物に変換する。例えば、CDAはピリミジンサルベージ経路の成分である。これはシチジンおよびデオキシシチジンを、加水分解性脱アミノ化によりそれぞれウリジンおよびデオキシウリジンに変換する(Cacciamani et al. (1991) Arch. Biochem. Biophys. 290:285-292; Wentworth and Wolfenden (1978) Methods Enzymol. 57:401-407; Wisdom and Orsi (1967) Biochem. J. 104:7P)。これはまた、ara−Cおよび下記のようなその他のような臨床上有用な薬物である多くの合成シトシンアナログも脱アミノ化する(Eliopoulos et al. (1998) Cancer Chemother. Pharmacol. 42:373-378; Kees et al. (1989) Cancer Res. 49:3015-3019; Antiviral Chem. Chemother. (1990) 1:255-262)。例えば、ゲムシタビンの血漿半減期は、内在性酵素デオキシシチジンデアミナーゼの対応するウラシル誘導体(dFdU)への急速な脱アミノ化により約10分である(P. G. Johnston et al., Cancer Chromatography and Biological Response Modifiers, Annual 16, 1996, Chap. 1, ed. Pinedo H. M. et al.)。
【0272】
例えば、プリンヌクレオシド薬物アラビノシルアデニン(フルダラビン、ara−A)は、ADAにより脱アミノ化され、親アミノ基がヒドロキシルに置換された得られた化合物は、親化合物と比較して抗腫瘍剤として不活性である。同様に、薬物アラビノシルシトシン(別称シタラビンAra−C(またはAraC);4−アミノ−l−(β−D−アラビノフラノシル)−2(lH)−ピリミジノン;シトシンアラビノシド;またはl−(β−D−アラビノフラノシル)シトシン)は、不活性アラビノシルウラシルにCDAにより代謝分解される。ゲムシタビン、デシタビン、アザシチジンおよびその他も同様に不活性化される。シトシンヌクレオシドおよびそのアナログのようなヌクレオシドアナログ(例えばシタラビンおよびゲムシタビン)の脱アミノ化は、活性代謝物として作用する毒性細胞内三リン酸誘導体の蓄積を阻止する。
【0273】
シトシン化合物からウリジン誘導体への変換は、通常治療活性喪失または副作用の付加に寄与する。シトシンアナログ薬物に対する耐性を獲得した癌はしばしばCDAを発現することが示されている(Leuk. Res. 1990, 14, 751-754)。高レベルのCDAを発現する白血病細胞および固形腫瘍はシトシン代謝拮抗剤に対する耐性を発現でき、それによりこのような治療剤の抗新生物活性が限定される(Biochem. Pharmacol. 1993, 45:1857-1861)。ヌクレオシドアナログへの耐性は、投与量増加、連続点滴または反復投与を必要とし得る。これらの効果は、特に骨髄抑制および免疫抑制に関連する重篤な有害作用に至り得る。
【0274】
活性酸素種(ROS)は、ヌクレオシドデアミナーゼを含む酵素の不活性化と関連する。タキサンは腫瘍内ROSを誘発することが知られ、ゆえにヌクレオシドデアミナーゼの活性を不活性化できる(例えばFrese et al. (2012) Cancer Discovery, 2:260-269参照)。
【0275】
それゆえに、ここでの目的のために、ここに提供する組み合わせ剤および組成物で使用するためのヌクレオシドアナログの例は、デアミナーゼの基質であり、それにより不活性化されているものである。例えば、デアミナーゼはシチジンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼであり得る。このようなアナログの腫瘍内レベルおよび活性は、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素とタキサン製剤の組み合わせ治療で高度に増加し得る。このようなヌクレオシドアナログの例は、フルダラビン、シタラビン、ゲムシタビン、デシタビンおよびアザシチジンまたはその誘導体を含むが、これらに限定されない。具体例において、ヌクレオシドアナログは、膀胱癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、膵癌および他の癌のような固形腫瘍を処置できるものである。
【0276】
ここに提供するヌクレオシドアナログのいずれも、リポソーム、微粒子、ナノ粒子またはポリマーコンジュゲートとして製剤できる。例えば、送達を制御するおよび/または投与薬物の半減期を延長するために製剤を製造できる。例えば、リポソーム製剤の例は知られる(例えば米国特許番号5,736,155および8,022,279参照)。
【0277】
例示的ヌクレオシドアナログ
i)ゲムシタビン
ゲムシタビン(2’,2’−ジフルオロデオキシシチジン、dFdC)は、デオキシシチジンの二フッ素化アナログであり、ゆえにヌクレオシドアナログまたは代謝拮抗剤である。細胞に侵入後、ヌクレオシド一リン酸およびジホスフェートキナーゼによる細胞内リン酸化により、それぞれ5’−ジホスフェート(dFdCDP)および5’−三リン酸(dFdCTP)誘導体が生じる。ゲムシタビン三リン酸は不正塩基として作用し、DNAへの取り込みにdCTPと拮抗する。DNAに取り込まれたら、さらに1個のヌクレオチドしかDNA鎖伸長が停止する前に取り込むことができない。DNAポリメラーゼイプシロンは、その後ゲムシタビンヌクレオチドを除去し、成長中のDNA鎖を修復できない(マスクされた鎖終止)。
【0278】
ゲムシタビンはジェムザール(登録商標)として市販され、これは凍結乾燥粉末製剤である。USPの注射用ゲムシタビンであるジェムザール(登録商標)は、2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジン一塩酸塩(β−異性体)であるゲムシタビンHClを含む。ジェムザール(登録商標)は、無菌凍結乾燥粉末として、マンニトール(それぞれ200mgまたは1g)および酢酸ナトリウム(それぞれ12.5mgまたは62.5mg)と共に製剤された200mgまたは1gのゲムシタビンHCl(遊離塩基に換算)を含む静脈内製剤である。製剤のpHは塩酸および/または水酸化ナトリウム添加により調節できる。ジェムザール(登録商標)、その製造方法および使用方法は米国特許番号5,464,826および米国特許番号4,808,614に記載されている。ジェムザール(登録商標)は現在膵癌、乳癌および非小細胞性肺癌(NSCLC)の処置に承認されており、卵巣癌について評価中である。さらにお、さらに、ジェムザール(登録商標)はHCVの処置にならびに免疫機能のモジュレーターとして使用できる(米国特許番号6,555,518参照)。ジェムザール(登録商標)は、30分にわたる約1000〜1250mg/mの静脈内点滴として、週に1回、7週間、その後1週間の休薬で投与され得る。
【0279】
数種のプロドラッグ形態を含むゲムシタビンの合成誘導体は知られる(例えば、Ishitsuka et al、国際公開番号WO03/043631;Alexander et al. (2003) J. Med. Chem., 46:4205-4208;米国特許番号6,303,569;Guo et al. (2001) Cancer Chemother. Pharmacol., 48:169-176;国際公開番号WO01/21135;Di Stefano et al. (1999) Biochem. Pharmacol., 57:793-799; Guo et al. (1999) J. Org. Chem., 64:8319-8322;国際公開番号WO99/33483;国際公開番号WO98/32762;国際公開番号WO98/00173;米国特許番号5,606,048;米国特許番号5,594,124;欧州特許出願番号EP712860;米国特許番号5,521,294;米国特許番号5,426,183;米国特許番号5,401,838;欧州特許番号EP0376518;欧州特許出願番号EP577303;欧州特許出願番号EP576230; Chou et al. (1992) Synthesis, 565-570; Richardson et al. (1992) Nucleic Acid Res., 20: 1763-1768; Baker et al. (1991) J. Med. Chem., 34: 1879-1884; ;国際公開番号WO91/15498;欧州特許出願番号EP329348;欧州特許出願番号EP272891参照)。
【0280】
改善されたプロドラッグの例は、エライジン酸ゲムシタビン(別称9(E)−オクタデセン酸2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジン−5’−イルエステル;2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロ−5’−O−[9(E)−オクタデセノイル]シチジン;CP−4126;またはCAS Registry no. 210829-30-4);アゼライン酸ゲムシタビンエステルメグルミン塩(別称l−[5−O−(9−カルボキシノナノイル)−β−D−アラビノフラノシル]シトシンメグルミン塩);アゼライン酸ゲムシタビンエステルの他の塩;およびl−[4−(2−プロピルペンタnアミド)−2−オキソ−1H−ピリミジン−l−イル]−2−デオキシ−2,2−ジフルオロ−β−D−リボフラノース(別称LY−2334737)を含むが、これらに限定されない。例えば、CP−4126は、ゲムシタビンの親油性、不飽和脂肪酸エステル誘導体である。その親油性のために、細胞取り込みおよび蓄積が増加し、それにより活性代謝物への変換が増加する。
【0281】
他のヌクレオシドアナログと比較して、ゲムシタビンおよびその誘導体またはプロドラッグは、特に固形腫瘍に対して、大きな抗腫瘍活性を示す。ゲムシタビンの抗腫瘍活性は、膵臓、小細胞および非小細胞性肺癌および膀胱癌の癌に対して証明されている。
【0282】
相対的に親水性の化合物であるゲムシタビンは、受動的拡散を介して原形質膜を通過する能力が限定的である。それゆえに、高投与量または点滴が必要である。ゲムシタビン投与はある副作用と関連している。細胞毒性レベルを維持するために投与する投与量または長い点滴時間が、骨髄毒性および肝トランスアミナーゼ酵素上昇、悪心および嘔吐および皮膚発疹のような他の有害作用と関連する。
【0283】
ii)シタラビン
シタラビンは、元々海綿Cryptotethya cryptaから単離されたヌクレオシドアナログである。シタラビンは、ara−CTPにリン酸化され、これがdCTPと競合できる。ara−CTPはまたDNAに取り込まれることができ、鎖重合およびDNA修復を妨害する。シタラビンはシチジンデアミナーゼにより不活性化され得る。
【0284】
シタラビンは、主として血液癌の処置に使用されている。シタラビンの合成誘導体が開発されており、固形腫瘍に対する効果を示すことが示されている。これらは、例えば、ゲムシタビン(上記参照)を含む。例えば、シタラビンのエステル誘導体が知られる。このような誘導体の例は、シタラビンの5’−エライジン酸エステルであるCP−4055である(例えばBreistol et al. (1999) Cancer Res., 59:2944参照)。
【0285】
細胞毒性効果に十分なレベルを維持する問題のために、投与量または長い点滴時間が、骨髄抑制および他の特異的組織傷害のような副作用を生じ得る。
【0286】
iii)デシタビン
デシタビン(5−アザ−2’−デオキシシチジン、5−アザ−CdR)は、シチジンのピリミジンヌクレオシドアナログである。デシタビンは、最初に、ペルアシルグリコシルイソシアネートの環化により製造された(Pliml and Sorm (1964) Collect. Czech. Chem. Commun. 29:2576-2577)。デシタビンの2異性体を区別できる。β−アノマーが活性形態である。デシタビンは、注射用無菌凍結乾燥粉末の形態で市販されているダコゲンTM製品の活性成分である。
【0287】
細胞内で、デシタビンは最初に、主に細胞周期のS期中に合成されるデオキシシチジンキナーゼによりその活性形態、リン酸化5−アザ−デオキシシチジンに変換される。デオキシシチジンキナーゼの触媒部位へのデシタビンの親和性は天然基質であるデオキシシチジンと同等である(Momparler et al. (1985) Pharmacol Ther 30:287-299)。デオキシシチジンキナーゼにより三リン酸形態に変換後、デシタビンは、天然基質であるdCTPに匹敵する速度で複製中のDNAに取り込まれる(BouchardおよびMomparler (1983) Mol. Pharmacol. 24:109-114)。
【0288】
デシタビンの機能の一つは、特異的かつ強力にDNAメチル化を阻害する能力である。シトシンから5−メチルシトシンへのメチル化はDNAレベルで起こる。デシタビンのDNA鎖への取り込みは、低メチル化効果を有する。各クラスの分化細胞がそれ自体の異なるメチル化パターンを有する。染色体重複後、このメチル化パターンを保存するために、親鎖上の5−メチルシトシンは、相補的娘DNA鎖上の直接メチル化に働く。シトシンの5位の炭素の窒素への置換は、このDNAメチル化の正常過程を妨害する。メチル化の特異的部位での5−メチルシトシンのデシタビンでの置換は、おそらく、酵素とデシタビンの間の共有結合の形成により、DNAメチルトランスフェラーゼの不可逆性不活性化を生じる(Juttermann et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11797-11801)。メチル化に必要な酵素であるDNAメチルトランスフェラーゼの特異的阻害により、腫瘍サプレッサー遺伝子の異常メチル化を阻止できる。
【0289】
デシタビンおよび特にβ−アノマーの製造方法は当分野で知られる(例えば米国特許番号3,350,388;米国特許番号3,817,980;米国特許番号4,209,613;米国公開出願番号US20120046457;国際出願公開番号WO2008/101448;Winkley et al. (1970) J Org Chem, 35:491-495; Piskala et al. (1978) Nucleic Acids Research, 1:s109-s114; Ben-Hattar et al. (1986) J Org Chem, 51:3211-3213参照)。デシタビンは当分野で知られる標準法により製剤できる。製剤は液体または凍結乾燥製剤であり得る。例えば、デシタビンは、一般に、リン酸二水素カリウムのような緩衝性塩および水酸化ナトリウムのようなpHモディファイヤーと共に注射用無菌凍結乾燥粉末として提供される。例えば、デシタビンは、50mgのデシタビン、リン酸二水素カリウムおよび水酸化ナトリウムを含む、20mLガラスバイアルに包装された凍結乾燥粉末として、SuperGen, Inc.から販売される。10mLの無菌注射用水で再構成したとき、1mLあたりに5mgのデシタビン、6.8mgのKHPOおよび約1.1mg NaOHが含まれる。得られた溶液のpHは6.5〜7.5である。再構成溶液を、冷点滴流体、すなわち、0.9%塩化ナトリウム;または5%デキストロース;または5%グルコース;または乳酸リンゲル液中1.0または0.1mg/mL濃度にさらに希釈してよい。未開封バイアルは、典型的に冷蔵(2〜8℃;36−46°F)で、元の包装中保存される。液体製剤も知られる(例えば米国特許番号6,982,253参照)。
【0290】
デシタビンは、シチジンデアミナーゼにより触媒されるデシタビンから5−アザ−2’−デオキシウリジンへの脱アミノ化のためにインビボで短半減期を有する(Chabot et al. (1983) Biochemical Pharmacology 22:1327-1328)。デシタビンの推定Kは、天然基質、デオキシシチジンの12μMのKと比較して、ヒト肝臓からの酵素精製で250μMである。デオキシシチジンの脱アミノ化速度は、等濃度でシチジンデアミナーゼによるデシタビンより約6倍速い。短半減期にために、デシタビンは、ほとんど典型的に患者にボーラスI.V.注射、連続I.V.点滴またはI.V.点滴のような注射により投与される。
【0291】
I.V.点滴の長さは、水溶液中のデシタビンの分解により制限される。、水溶液中でより安定であるデシタビン誘導体が存在する(例えば米国特許番号7,250,416参照)。
【0292】
iv)アザシチジン
5−アザシチジン(National Service Center designation NSC-102816; CAS Registry Number 320-67-2)はアザシチジン、AZAまたは4−アミノ−1−β−D−リボフラノシル−1,3,5−トリアジン−2(1H)−オンとしても知られ、デシタビンのアナログである(例えばHanna et al. (1998) Collect. Czech. Chem. Commun., 63:222-230参照)。現在、医薬品ビダーザ(登録商標)として市販されている。アザシチジンは、ヌクレオシドアナログ、さらに具体的にはシチジンアナログである。これは、その天然ヌクレオシドのアンタゴニストである。例えば、アザシトシンとシトシンの唯一の構造的差異は、アザシトシンにおけるシトシン環の5位に窒素原子が存在するのに対し、シトシンの同位置は炭素であることである。
【0293】
アザシチジンの製造方法、特に水の使用を避ける製造方法は当分野で知られる(米国特許番号3,350,388;米国特許番号8,058,424;Winkley and Robins (1970) J. Org. Chem., 35:491; Piskala and Sorm (1978) Nucl. Acid. Chem., 1:435; and Vorbrueggen et al. (1981) Chemische Berichte, 114:1234-1255)。
【0294】
アザシチジンはシチジンデアミナーゼの基質である(例えばVoytek et al. (1977) Cancer Res., 37:1956-61参照)。インビボで細胞毒性効果を発揮するために、高濃度または連続点滴が必要であるが必要である。副作用は、とりわけ白血球および赤血球および血小板数減少、悪心、嘔吐、疲労、下痢を含む。
【0295】
D. ヒアルロナン分解酵素の核酸およびコード化ポリペチドの製造方法
ここに示す可溶性ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素のポリペチドは、タンパク質精製および組み換えタンパク質発現について当分野で周知の方法により得ることができる。ポリペプチドを組換え手段によって製造する場合は、所望の遺伝子をコードする核酸を同定するための当業者に知られる任意の方法を使用することができる。当技術分野で利用できる任意の方法を使って、例えば細胞または組織供給源から、ヒアルロニダーゼをコードする完全長(すなわち全コード領域を包含する)cDNAまたはゲノムDNAクローンを得ることができる。修飾または変異型可溶性ヒアルロニダーゼは、野生型ポリペプチドから、部位特異的突然変異誘発法などによって工学的に作製することができる。
【0296】
ポリペプチドは、核酸分子をクローン化または単離するための当技術分野で知られる任意の利用可能な方法を使って、クローン化または単離することができる。そのような方法には、核酸のPCR増幅およびライブラリーのスクリーニング、例えば核酸ハイブリダイゼーションスクリーニング、抗体に基づくスクリーニング、および活性に基づくスクリーニングが含まれる。
【0297】
例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を含む核酸増幅法を使って、所望のポリペプチドをコードする核酸分子を単離することができる。核酸含有材料を出発物質として使用して、そこから所望のポリペプチドコード核酸分子を単離することができる。増幅方法では、例えばDNAおよびmRNA調製物、細胞抽出物、組織抽出物、体液試料(例えば血液、精子、唾液)、健常被験者および/または罹患被験者から得た試料を使用することができる。核酸ライブラリーも出発物質の供給源として使用することができる。所望のポリペプチドが増幅されるようにプライマーを設計することができる。例えば、所望のポリペプチドがそこから産生される発現された配列に基づいて、プライマーを設計することができる。プライマーは、逆翻訳(back-translation)に基づいて設計することができる。増幅によって産生した核酸分子を配列決定し、所望のポリペプチドがコードされていることを確認することができる。
【0298】
追加ヌクレオチド配列、例えば合成遺伝子をベクター(例えばタンパク質発現ベクターまたはコアタンパク質コードDNA配列を増幅するために設計されたベクター)中にクローニングするための制限エンドヌクレアーゼ部位を含有するリンカー配列などを、ポリペプチドコード核酸分子につなぐことができる。さらにまた、機能的DNA要素を指定する追加ヌクレオチド配列をポリペプチドコード核酸分子に作動的に連結することもできる。そのような配列の例には、細胞内タンパク質発現が容易になるように設計されたプロモーター配列、およびタンパク質分泌が容易になるように設計された分泌配列、例えば異種シグナル配列などがあるが、これらに限定されない。そのような配列は当業者には知られている。タンパク質結合領域を指定する塩基配列などの追加ヌクレオチド残基配列も酵素コード核酸分子に連結することができる。そのような領域には、特異的標的細胞への酵素の取り込みを容易にするか、合成遺伝子の産物の薬物動態を他の形で変化させる残基の配列、または特異的標的細胞への酵素の取り込みを容易にするか、合成遺伝子の産物の薬物動態を他の形で変化させるタンパク質をコードする残基の配列などがあるが、これらに限定されない。例えば酵素をPEG部分に連結することができる。
【0299】
さらに、例えばポリペプチドの検出またはアフィニティ精製を助けるためなどの目的で、タグまたは他の部分を付加することもできる。例えば、エピトープタグまたは他の検出可能マーカーを指定する塩基配列などの追加ヌクレオチド残基配列も、酵素コード核酸分子に連結することができる。そのような配列の典型例には、Hisタグ(例えば6×His、HHHHHH;配列番号54)またはFlagタグ(DYKDDDDK;配列番号55)などがある。
【0300】
次に、同定され単離された核酸を適当なクローニングベクターに挿入することができる。当技術分野で知られる多数のベクター−宿主系を使用することができる。考えられるベクターには、プラスミドまたは改変ウイルスなどがあり、これらに限定されないが、ベクター系は使用する宿主細胞と適合しなければならない。そのようなベクターには、ラムダ誘導体などのバクテリオファージ、またはpCMV4、pBR322もしくはpUCプラスミド誘導体などのプラスミド、またはBluescriptベクター(Stratagene, La Jolla, CA)などがあるが、これらに限定されない。他の発現ベクターには、本明細書に例示するHZ24発現ベクターがある。クローニングベクターへの挿入は、例えば、相補的付着末端を持つクローニングベクター中に、DNAフラグメントをライゲートすることによって達成することができる。挿入はTOPOクローニングベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA)を使って達成することができる。DNAをフラグメント化するために使用される相補的制限部位がクローニングベクター中に存在しない場合は、DNA分子の末端を酵素的に修飾することができる。あるいは、ヌクレオチド配列(リンカー)をDNA末端にライゲートすることによって所望する任意の部位を作り出すこともでき、これらのライゲートされたリンカーは、制限エンドヌクレアーゼ認識配列をコードする特異的な化学合成オリゴヌクレオチドを含有することができる。これに代わる方法として、切断されたベクターおよびタンパク質遺伝子を、ホモポリマーテーリング(homopolymer tailing)によって修飾することもできる。組換え分子は、例えば形質転換、トランスフェクション、感染、エレクトロポレーションおよびソノポレーションなどによって、その遺伝子配列のコピーが数多く産生するように、宿主細胞中に導入することができる。
【0301】
特別な態様では、宿主細胞を、単離されたタンパク質遺伝子、cDNA、または合成DNA配列を組み込んだ組換えDNA分子で形質転換することにより、その遺伝子のコピーを多数産生させることができる。こうして、形質転換体を成長させ、形質転換体から組換えDNA分子を単離し、必要であれば、単離した組換えDNAから挿入された遺伝子を回収することにより、遺伝子を大量に得ることができる。
【0302】
1. ベクターおよび細胞
ここに記載するヒアルロナン分解酵素ポリペチドのいずれかのような所望のタンパク質の1つ以上を組換え発現させるために、タンパク質をコードするヌクレオチド配列の全部または一部を含有する核酸を、適当な発現ベクター中に、すなわち挿入されたタンパク質コード配列の転写および翻訳に必要な要素を含有するベクター中に、挿入することができる。必要な転写および翻訳シグナルは、酵素遺伝子の天然プロモーターおよび/またはそれらの隣接領域によって供給され得る。
【0303】
酵素をコードする核酸を含有するベクターも提供する。ベクターを含有する細胞も提供する。細胞には真核細胞および原核細胞が含まれ、ベクターはそこでの使用に適したいずれかである。
【0304】
ベクターを含有する原核細胞および真核細胞(内皮細胞を含む)を提供する。そのような細胞には、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、古細菌、植物細胞、昆虫細胞および動物細胞などがある。細胞は、コードされているタンパク質が細胞によって発現されるような条件下で上述の細胞を成長させ、発現されたタンパク質を回収することにより、そのタンパク質を生産するために使用される。本発明では、例えば酵素を、培地中に分泌させることができる。
【0305】
天然のまたは異種のシグナル配列に結合されたヒアルロナン分解酵素ポリペチド、いくつかの例において可溶性ヒアルロニダーゼポリペチドをコードするヌクレオチド配列ならびにその複数コピーを含有するベクターを提供する。ベクターは酵素タンパク質が細胞中で発現されるように選択するか、酵素タンパク質が分泌タンパク質として発現されるように選択することができる。
【0306】
種々の宿主−ベクター系を使って、タンパク質コード配列を発現させることができる。これらには、ウイルス(例えばワクシニアウイルス、アデノウイルスおよび他のウイルス)に感染した哺乳動物細胞系;ウイルス(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞;酵母ベクターを含有する酵母などの微生物;またはバクテリオファージ、DNA、プラスミドDNA、またはコスミドDNAで形質転換された細菌などがあるが、これらに限定されない。ベクターの発現要素はその強さおよび特異性がさまざまである。使用する宿主−ベクター系に依存して、数ある適切な転写および翻訳要素のどれでも1つを使用することができる。
【0307】
ベクター中にDNAフラグメントを挿入するための当業者に知られる任意の方法を使用して、適当な転写/翻訳制御シグナルとタンパク質コード配列とを含むキメラ遺伝子を含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、インビトロ組換えDNAおよび合成技法、ならびにインビボ組換え体(遺伝子組換え)を含めることができる。タンパク質またはそのドメイン、誘導体、フラグメントもしくはホモログをコードする核酸配列の発現は、遺伝子またはそのフラグメントが組換えDNA分子で形質転換された宿主中で発現されるように、第2の核酸配列によって調節することができる。例えば、タンパク質の発現は、当技術分野で知られる任意のプロモーター/エンハンサーで制御することができる。具体的一態様では、プロモーターが、所望するタンパク質の遺伝子にとって天然のプロモーターではない。使用することができるプロモーターには、SV40初期プロモーター(Bernoist and Chambon, Nature 290:304-310 (1981))、ラウス肉腫ウイルスの3’末端反復配列(long terminal repeat)に含まれるプロモーター(Yamamoto et al. Cell 22:787-797 (1980))、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1441-1445 (1981))、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinster et al., Nature 296:39-42 (1982)); 原核発現ベクター、例えばβ−ラクタマーゼプロモーター(Jay et al., (1981) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:5543)またはtacプロモーター(DeBoer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:21-25 (1983); “Useful Proteins from Recombinant Bacteria”: in Scientific American 242:79-94 (1980)も参照;ノパリンシンテターゼプロモーター(Herrera-Estrella et al., Nature 303:209-213 (1983))またはカリフラワーモザイクウイルス35S RNAプロモーター(Gardner et al., Nucleic Acids Res. 9:2871 (1981))および光合成酵素リブロースビスリン酸カルボキシラーゼのプロモーター(Herrera-Estrella et al., Nature 310:115-120 (1984))を含有する植物発現ベクター;酵母および他の真菌由来のプロモーター要素、例えばGal4プロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼプロモーター、アルカリホスファターゼプロモーター、および組織特異性を示し、トランスジェニック動物で使用されてきた、以下の動物転写制御領域:膵腺房細胞中で活性なエラスターゼI遺伝子制御領域(Swift et al., Cell 38:639-646 (1984); Ornitz et al., Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 50:399-409 (1986); MacDonald, Hepatology 7:425-515 (1987)); 膵β細胞中で活性なインスリン遺伝子制御領域(Hanahan et al., Nature 315:115-122 (1985))、リンパ球様細胞中で活性な免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedl et al., Cell 38:647-658 (1984); Adams et al., Nature 318:533-538 (1985); Alexander et al., Mol. Cell Biol. 7:1436-1444 (1987))、精巣、乳房、リンパ球様細胞およびマスト細胞中で活性であるマウス乳房腫瘍ウイルス制御領域(Leder et al., Cell 45:485-495 (1986))、肝臓中で活性なアルブミン遺伝子制御領域(Pinkert et al., Genes and Devel. 1:268-276 (1987))、肝臓中で活性なα−フェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlauf et al., Mol. Cell. Biol. 5:1639-1648 (1985); Hammer et al., Science 235:53-58 1987))、肝臓中で活性なα−1アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelsey et al., Genes and Devel. 1:161-171 (1987))、骨髄性細胞中で活性なβグロビン遺伝子制御領域(Magram et al., Nature 315:338-340 (1985); Kollias et al., Cell 46:89-94 (1986))、脳の希突起膠細胞中で活性なミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readhead et al., Cell 48:703-712 (1987))、骨格筋中で活性なミオシン軽鎖−2遺伝子制御領域(Shani, Nature 314:283-286 (1985))、および視床下部の性腺刺激細胞中で活性な性腺刺激ホルモン放出ホルモン放出ホルモン遺伝子制御領域(Mason et al., Science 234:1372-1378 (1986)))を含むが、これらに限定されない。
【0308】
具体的態様において、所望のタンパク質またはそのドメイン、フラグメント、誘導体もしくはホモログをコードする核酸に作動的に連結されたプロモーター、1つ以上の複製起点、および場合によっては、1つ以上の選択可能マーカー(例えば抗生物質耐性遺伝子)を含有するベクターを使用する。大腸菌(E. coli)細胞を形質転換するための典型的プラスミドベクターには、例えばpQE発現ベクター(Qiagen, Valencia, CA)から入手可能;Qiagenが発行したこの系に関する文献も参照されたい)がある。pQEベクターは、ファージT5プロモーター(大腸菌RNAポリメラーゼによって認識される)と、大腸菌における組換えタンパク質の緻密に調節された高レベル発現をもたらすための二重lacオペレーター抑制モジュール(double lac operator repression module)、効率のよい翻訳のための合成リボソーム結合部位(RBS II)、6×Hisタグコード配列、t0およびT1転写ターミネーター、ColE1複製起点、およびアンピシリン耐性を付与するためのβ−ラクタマーゼ遺伝子を持つ。pQEベクターは6×Hisタグを組換えタンパク質のN末端またはC末端に置くことを可能にする。そのようなプラスミドには、3つの読み枠全てにマルチクローニング部位を与え、N末端が6×Hisタグで標識されたタンパク質の発現をもたらす、pQE32、pQE30、およびpQE31がある。大腸菌細胞を形質転換するための他の典型的プラスミドベクターには、例えばpET発現ベクター(米国特許第4,952,496号;NOVAGEN(Madison, WI)から入手可能;NOVAGENが発行したこの系に関する文献も参照されたい)などがある。そのようなプラスミドには、pET11a(これは、T7 lacプロモーター、T7ターミネーター、誘導性大腸菌lacオペレーター、およびlacリプレッサー遺伝子を含有する);pET12a-c(これは、T7プロモーター、T7ターミネーター、および大腸菌ompT分泌シグナルを含有する);ならびにpET15bおよびpET19b(NOVAGEN, MADISON, WI)(これらは、Hisカラムによる精製に使用するためのHis−Tag(商標)リーダー配列、およびカラムでの精製後に行われる切断を可能にするトロンビン切断部位、T7−lacプロモーター領域およびT7ターミネーターを含有する)などがある。
【0309】
哺乳動物細胞発現用ベクターの例は、HZ24発現ベクターである。HZ24発現ベクターはpCIベクターバックボーン(Promega)から誘導された。これは、β−ラクタマーゼ耐性遺伝子(AmpR)をコードするDNA、F1複製起点、サイトメガロウイルス前初期エンハンサー/プロモーター領域(CMV)、およびSV40後期ポリアデニル化シグナル(SV40)を含有する。この発現ベクターは、ECMVウイルス(Clontech)由来の配列内リボソーム進入部位(IRES)およびマウスジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子も持つ。
【0310】
2. 発現
可溶性ヒアルロニダーゼポリペチドを含むヒアルロナン分解酵素ポリペチドは、インビボ法およびインビトロ法を含む、当業者に知られる任意の方法によって製造することができる。所望のタンパク質は、要求される量および形態(例えば投与および処置に必要とされる量および形態)でそのタンパク質を生産するのに適した任意の生物中で発現させることができる。発現宿主には、原核生物および真核生物、例えば大腸菌、酵母、植物、昆虫細胞、哺乳動物細胞(ヒト細胞株およびトランスジェニック動物を含む)が含まれる。発現宿主は、そのタンパク質産生レベルが異なり得ると共に、発現されたタンパク質上に存在する翻訳後修飾のタイプも異なり得る。発現宿主の選択は、これらの因子および他の因子、例えば調節および安全性の問題、生産コスト、ならびに精製の必要性および精製の方法などに基づいて行うことができる。
【0311】
多くの発現ベクターが利用可能であり、当業者に知られており、それらをタンパク質の発現に使用することができる。発現ベクターの選択は、宿主発現系の選択によって左右されるだろう。一般に発現ベクターは、転写プロモーターを含み、場合によってはエンハンサー、翻訳シグナル、ならびに転写および翻訳終結シグナルを含み得る。安定形質転換に使用される発現ベクターは、一般に、形質転換細胞の選択と維持を可能にする選択可能マーカーを持つ。複製起点を使用してベクターのコピー数を増幅することができる場合もある。
【0312】
可溶性ヒアルロニダーゼポリペチドのようなヒアルロナン分解酵素ポリペチドは、タンパク質融合物として利用し、または発現させることもできる。例えば、酵素に付加的機能を加えるために、酵素融合物を作製することができる。酵素融合タンパク質の例には、シグナル配列、タグ、例えば位置確認(localization)用のタグ、例えばhisタグもしくはmycタグ、または精製用タグ、例えばGST融合物、ならびにタンパク質分泌および/または膜会合を指示するための配列の融合物などがあるが、これらに限定されない。
【0313】
a. 原核生物細胞
原核生物、特に大腸菌は、大量のタンパク質を生産するための系になる。大腸菌の形質転換は当業者に周知の簡便で迅速な技法である。大腸菌用の発現ベクターは誘導性プロモーターを含有することができ、そのようなプロモーターは、高レベルのタンパク質発現を誘導するのに有用であり、宿主細胞に対して何らかの毒性を示すタンパク質を発現させるのにも有用であるものを含む。誘導性プロモーターの例には、lacプロモーター、trpプロモーター、ハイブリッドtacプロモーター、T7およびSP6 RNAプロモーター、ならびに温度感受性λPLプロモーターなどがある。
【0314】
タンパク質(例えば本明細書に記載する任意のタンパク質)は、大腸菌の細胞質環境中で発現させることができる。細胞質は還元的環境であり、一部の分子にとって、これは不溶性封入体の形成をもたらし得る。タンパク質を再可溶化するにはジチオスレイトールやβ−メルカプトエタノールなどの還元剤およびグアニジン−HClや尿素などの変性剤を使用することができる。代替的アプローチは、周辺腔におけるタンパク質の発現である。代替的アプローチは、酸化的環境ならびにシャペロニン様イソメラーゼおよびジスルフィドイソメラーゼを含み、可溶性タンパク質の産生をもたらすことができる周辺腔におけるタンパク質の発現である。一般に、タンパク質をペリプラズムに向かわせるリーダー配列が、発現されるべきタンパク質に融合される。その場合、リーダーは、ペリプラズム内で、シグナルペプチダーゼによって除去される。ペリプラズムを標的とする(periplasmic-targeting)リーダー配列には、ペクチン酸リアーゼ遺伝子由来のpelBリーダー、およびアルカリホスファターゼ遺伝子由来のリーダーなどがある。ペリプラズム発現により、発現されたタンパク質の培養培地への漏出が可能になる場合もある。タンパク質の分泌は培養上清からの迅速かつ簡便な精製を可能にする。分泌されないタンパク質は浸透圧溶解によってペリプラズムから得ることができる。細胞質発現と同様に、時には、タンパク質が不溶性になることもあり、可溶化および再フォールディングが容易になるように、変性剤および還元剤を使用することができる。誘導温度および成長温度も、発現レベルおよび可溶性に影響を及ぼすことがあり、一般に、25℃〜37℃の温度が使用される。一般に、細菌は非グリコシル化タンパク質を産生する。タンパク質が機能するためにグリコシル化を要求する場合は、宿主細胞から精製した後に、インビトロでグリコシル化を追加することができる。
【0315】
b. 酵母細胞
サッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ヤロウイア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)およびピキア・パストリス(Pichia pastoris)などの酵母は、タンパク質(例えば本明細書に記載する任意のタンパク質)の生産に使用することができる周知の酵母発現宿主である。酵母は、エピソーム複製ベクターで形質転換させるか、相同組換えによる安定染色体組込みで形質転換させることができる。一般に、遺伝子発現を調節するために、誘導性プロモーターが使用される。そのようなプロモーターの例には、GAL1、GAL7およびGAL5、ならびにメタロチオネインプロモーター、例えばCUP1、AOX1、または他のピキア(Pichia)プロモーターもしくは他の酵母プロモーターがある。発現ベクターは、多くの場合、形質転換されたDNAを選択し維持するために、LEU2、TRP1、HIS3およびURA3などの選択可能マーカーを含む。酵母中で発現されたタンパク質は可溶性であることが多い。Bipなどのシャペロニン類およびタンパク質ジスルフィドイソメラーゼとの共発現により、発現レベルおよび可溶性が改善され得る。また、酵母中で発現されるタンパク質は、例えばサッカロミセス・セレビシェに由来する酵母接合型α因子分泌シグナルなどの分泌シグナルペプチド融合物、およびAga2p接合付着受容体(mating adhesion receptor)またはアークスラ・アデニニボランス(Arxula adeninivorans)グルコアミラーゼなどの酵母細胞表面タンパク質との融合物を使って、分泌するように指示することもできる。発現されたポリペプチドが分泌経路を出た時に、融合された配列を発現されたポリペプチドから除去するために、プロテアーゼ切断部位、例えばKex−2プロテアーゼの切断部位を、工学的に作ることができる。酵母はAsn−X−Ser/Thrモチーフでグリコシル化を行う能力も持つ。
【0316】
c. 昆虫細胞
昆虫細胞、特にバキュロウイルス発現を用いるものは、ヒアルロニダーゼポリペプチドなどのポリペプチドを発現させるのに有用である。昆虫細胞は高レベルのタンパク質を発現し、高等真核生物が使用する翻訳後修飾の大半を行う能力を持つ。バキュロウイルスは宿主域が制限されており、それが安全性を向上させ、真核細胞発現に関する規制上の懸念を減少させる。典型的な発現ベクターは、高レベル発現用のプロモーター、例えばバキュロウイルスのポリヘドリンプロモーターを使用する。よく使用されるバキュロウイルス系は、例えばオートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多核体病ウイルス(AcNPV)およびカイコ(Bombyx mori)核多核体病ウイルス(BmNPV)などのバキュロウイルスと、例えばツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)に由来するSf9、シューダレチア・ユニパンクタ(Pseudaletia unipuncta)(A7S)およびオオカバマダラ(Danaus plexippus)(DpN1)などの昆虫細胞株を含む。高レベル発現には、発現されるべき分子のヌクレオチド配列を、ウイルスのポリヘドリン開始コドンのすぐ下流に融合する。哺乳類分泌シグナルは昆虫細胞では正確にプロセシングされ、発現されたタンパク質を培養培地中に分泌させるには、これらのシグナルを使用することができる。加えて、細胞株シューダレチア・ユニパンクタ(A7S)およびオオカバマダラ(DpN1)は、哺乳動物細胞系と類似するグリコシル化パターンを持つタンパク質を産生する。
【0317】
昆虫細胞におけるもう一つの発現系は安定形質転換細胞の使用である。発現には、シュナイダー(Schneider)2(S2)細胞およびKc細胞(キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster))およびC7細胞(ヒトスジシマカ(Aedes albopictus))などの細胞株を使用することができる。カドミウムまたは銅による重金属誘導の存在下で高レベル発現を誘導するために、ショウジョウバエ(Drosophila)メタロチオネインプロモーターを使用することができる。発現ベクターは、典型的には、ネオマイシンやハイグロマイシンなどの選択可能マーカーの使用によって維持される。
【0318】
d. 哺乳動物細胞
哺乳動物発現系は、可溶性ヒアルロニダーゼポリペチドのようなヒアルロナン分解酵素ポリペチドを含むタンパク質の発現に使用できる。発現コンストラクトは、アデノウイルスなどのウイルス感染によって、またはリポソーム、リン酸カルシウム、DEAE−デキストランなどの直接的DNA導入によって、また、エレクトロポレーションやマイクロインジェクションなどの物理的手段によって、哺乳動物細胞に導入することができる。哺乳動物細胞用の発現ベクターは、一般に、mRNAキャップ部位、TATAボックス、翻訳開始配列(コザック(Kozak)コンセンサス配列)およびポリアデニル化要素を含む。選択可能マーカーなどのもう一つの遺伝子との2シストロン性発現が可能になるように、IRES要素も加えることができる。そのようなベクターは、多くの場合、高レベル発現のための転写プロモーター−エンハンサー、例えばSV40プロモーター−エンハンサー、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターおよびラウス肉腫ウイルス(RSV)の末端反復配列などを含む。これらのプロモーター−エンハンサーは多くの細胞タイプにおいて活性である。発現には、組織型および細胞型のプロモーターおよびエンハンサー領域も使用することができる。典型的なプロモーター/エンハンサー領域には、エラスターゼI、インスリン、免疫グロブリン、マウス乳房腫瘍ウイルス、アルブミン、αフェトプロテイン、α1アンチトリプシン、βグロビン、ミエリン塩基性タンパク質、ミオシン軽鎖2、および性腺刺激ホルモン放出ホルモン遺伝子制御領域(gonadotropic releasing hormone gene control)などの遺伝子に由来するものがあるが、これらに限定されない。発現コンストラクトを持つ細胞を選択し、維持するために、選択可能マーカーを使用することができる。選択可能マーカー遺伝子の例には、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ、アデノシンデアミナーゼ、キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)およびチミジンキナーゼなどがあるが、これらに限定されない。例えば、DHFR遺伝子を発現させる細胞だけを選択するために、メトトレキサートの存在下で発現を行うことができる。TCR−ζやFcεRI−γなどの細胞表面シグナリング分子との融合により、細胞表面上で活性な状態にあるタンパク質の発現を指示することができる。
【0319】
哺乳類発現には、マウス細胞、ラット細胞、ヒト細胞、サル細胞、ニワトリ細胞およびハムスター細胞など、多くの細胞株を利用することができる。典型的細胞株には、CHO、Balb/3T3、HeLa、MT2、マウスNS0(非分泌性)および他の骨髄腫細胞株、ハイブリドーマおよびヘテロハイブリドーマ細胞株、リンパ球、線維芽細胞、Sp2/0、COS、NIH3T3、HEK293、293S、2B8、およびHKB細胞などがあるが、これらに限定されない。細胞培養培地からの分泌タンパク質の精製を容易にする無血清培地に適応した細胞株も利用できる。例として、CHO−S細胞(Invitrogen, Carlsbad, CA, cat # 11619-012)および無血清EBNA−1細胞株(Pham et al., (2003) Biotechnol. Bioeng. 84:332-342)が挙げられる。発現量が最大になるように最適化された特別な培地での成長に適応した細胞株も利用できる。例えばDG44 CHO細胞は、動物性産物を含まない合成培地における懸濁培養での成長に適応している。
【0320】
e. 植物
タンパク質(例えば本明細書に記載する任意のタンパク質)を発現させるために、トランスジェニック植物細胞およびトランスジェニック植物を使用することができる。発現コンストラクトは、一般に、微粒子銃(microprojectile bombardment)やプロトプラストへのPEGによる導入などといった直接的DNA導入を使って、またアグロバクテリウムによる形質転換を使って、植物に導入される。発現ベクターは、プロモーターおよびエンハンサー配列、転写終結要素および翻訳制御要素を含むことができる。発現ベクターおよび形質転換技法は、通常は、アラビドプシス(Arabidopsis)やタバコなどの双子葉植物宿主用と、トウモロコシやイネなどの単子葉植物宿主用とに分けられる。発現に使用される植物プロモーターの例には、カリフラワーモザイクウイルスプロモーター、ノパリンシンセターゼプロモーター、リボース二リン酸カルボキシラーゼプロモーター、ならびにユビキチンプロモーターおよびUBQ3プロモーターなどがある。形質転換細胞の選択と維持が容易になるように、ハイグロマイシン、ホスホマンノースイソメラーゼおよびネオマイシンホスホトランスフェラーゼなどの選択可能マーカーが、多くの場合、使用される。形質転換植物細胞は、細胞、凝集体(カルス組織)として培養維持するか、全植物体に再生させることができる。トランスジェニック植物細胞には、ヒアルロニダーゼポリペプチドを産生するように工学的に操作された藻類も含めることができる。植物は哺乳動物細胞とは異なるグリコシル化パターンを持つので、これは、これらの宿主中で生産されたタンパク質の選択に影響を及ぼし得る。
【0321】
3. 精製技術
ヒアルロナン分解酵素ポリペチド(例えば可溶性ヒアルロニダーゼポリペチド)または他のタンパク質を含むポリペプチドを宿主細胞から精製するための方法は、選択した宿主細胞と発現系に依存する。分泌される分子について、タンパク質は一般に、細胞を除去した後に、培養培地から精製される。細胞内発現の場合は、細胞を溶解し、タンパク質を抽出物から精製することができる。トランスジェニック植物やトランスジェニック動物などのトランスジェニック生物を発現に使用する場合は、組織または臓器を、溶解細胞抽出物を作るための出発物質として使用することができる。また、トランスジェニック動物生産には、乳または卵におけるポリペプチドの生産を含めることができ、それらは、収集し、必要であれば、当技術分野における標準的方法を使って、タンパク質を抽出し、さらに精製することができる。
【0322】
可溶性ヒアルロニダーゼポリペチドのようなタンパク質は、当技術分野において知られる標準的なタンパク質精製技法、例えば限定するわけではないが、SDS−PAGE、サイズ分画およびサイズ排除クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム沈殿、およびアニオン交換クロマトグラフィーなどのイオン交換クロマトグラフィーなどを使って精製することができる。効率および調製物の純度を改善するためにアフィニティ精製技法を利用することもできる。アフィニティ精製では、例えばヒアルロニダーゼ酵素を結合する抗体、受容体および他の分子を使用することができる。発現コンストラクトを工学的に操作して、mycエピトープ、GST融合物またはHisなどのアフィニティタグをタンパク質に付加し、それぞれmyc抗体、グルタチオン樹脂およびNi樹脂を使ってアフィニティ精製することもできる。純度は、ゲル電気泳動および染色および分光光度法を含む当技術分野で知られる任意の方法により評価できる。ここで提供される精製rHuPH20組成物は、典型的に少なくとも70,000〜100,000単位/mg、例えば、約120,000単位/mgの比活性を有する。比活性はポリマーでのような修飾により変わり得る。
【0323】
4. ヒアルロナン分解酵素ポリペチドのペグ化
ポリエチレングリコール(PEG)は、主にPEGが典型的に非免疫原性である生体適合性、非毒性、水可溶性ポリマーであるために、生体材料、バイオテクノロジーおよび医薬で広く使用されている(Zhao and Harris, ACS Symposium Series 680: 458-72, 1997)。薬物送達分野では、PEG誘導体は、免疫原性、タンパク質分解および腎クリアランスを減少し、溶解度を上げるために、タンパク質への共有結合的結合(すなわち“ペグ化”)に使用されている(Zalipsky, Adv. Drug Del. Rev. 16:157-82, 1995)。同様に、PEGは低分子量の、相対的に疎水性の薬物に、溶解度を上げ、毒性を減らし、体内分布を変更するために結合されている。典型的に、ペグ化薬物は溶液として注射される。
【0324】
密接に関連する適用は、分解可能、可溶性薬物担体の設計に使用されるのとほぼ同じ化学が、分解可能ゲルの設計に使用されるために、薬物送達において使用するための、架橋分解可能PEGネットワークまたは製剤の製造である(Sawhney et al., Macromolecules 26: 581-87, 1993)。高分子間複合体が、2種の相補的なポリマー溶液混合により形成できることも知られる。このような複合体は、一般に関与するポリマー間の静電相互作用(ポリアニオン−ポリカチオン)および/または水素結合(多酸−多塩基)および/または水性周囲のポリマー間の疎水性相互作用により安定化される(Krupers et al., Eur. Polym J. 32:785-790, 1996)。例えば、ポリアクリル酸(PAAc)およびポリエチレンオキシド(PEO)の溶液の適切な条件下での混合は、ほとんど水素結合に基づく複合体の形成に至る。これらの複合体の生理的条件での解離が、遊離薬物の送達に使用されている(すなわち、非ペグ化)。さらに、相補的なポリマーの複合体はホモポリマーおよびコポリマーの両者から形成されている。
【0325】
ペグ化のための多くの試薬が当分野で記載されている。このような試薬は、N−ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)活性化PEG、スクシンイミジルmPEG、mPEG−N−ヒドロキシスクシンイミド、mPEGスクシンイミジルアルファ−メチルブタノエート、mPEGスクシンイミジルプロピオネート、mPEGスクシンイミジルブタノエート、mPEGカルボキシメチル3−ヒドロキシブタン酸スクシンイミジルエステル、ホモ二機能性PEG−スクシンイミジルプロピオネート、ホモ二機能性PEGプロピオンアルデヒド、ホモ二機能性PEGブチルアルデヒド、PEGマレイミド、PEGヒドラジド、p−ニトロフェニル−カーボネートPEG、mPEG−ベンゾトリアゾールカーボネート、プロピオンアルデヒドPEG、mPEGブチルアルデヒド、分枝mPEGブチルアルデヒド、mPEGアセチル、mPEGピペリドン、mPEGメチルケトン、mPEG“リンカーレス”マレイミド、mPEGビニルスルホン、mPEGチオール、mPEGオルトピリジルチオエステル、mPEGオルトピリジルジスルフィド、Fmoc−PEG−NHS、Boc−PEG−NHS、ビニルスルホンPEG−NHS、アクリレートPEG−NHS、フルオレセインPEG−NHSおよびビオチンPEG−NHSを含むが、これらに限定されない(例えば、Monfardini et al., Bioconjugate Chem. 6:62-69, 1995; Veronese et al., J. Bioactive Compatible Polymers 12:197-207, 1997;U.S.5,672,662;U.S.5,932,462;U.S.6,495,659;U.S.6,737,505;U.S.4,002,531;U.S.4,179,337;U.S.5,122,614;U.S.5,324、844;U.S.5,446,090;U.S.5,612,460;U.S.5,643,575;U.S.5,766,581;U.S.5,795、569;U.S.5,808,096;U.S.5,900,461;U.S.5,919,455;U.S.5,985,263;U.S.5,990、237;U.S.6,113,906;U.S.6,214,966;U.S.6,258,351;U.S.6,340,742;U.S.6,413,507;U.S.6,420,339;U.S.6,437,025;U.S.6,448,369;U.S.6,461,802;U.S.6,828,401;U.S.6,858,736;U.S.2001/0021763;U.S.2001/0044526;U.S.2001/0046481;U.S.2002/0052430;U.S.2002/0072573;U.S.2002/0156047;U.S.2003/0114647;U.S.2003/0143596;U.S.2003/0158333;U.S.2003/0220447;U.S.2004/0013637;US2004/0235734;WO0500360;U.S.2005/0114037;U.S.2005/0171328;U.S.2005/0209416;EP1064951;EP0822199;WO01076640;WO0002017;WO0249673;WO9428024;およびWO0187925参照)。
【0326】
一例において、ポリエチレングリコールは、約3kD〜約50kD、典型的に約5kD〜約30kDの範囲の分子量を有する。PEGの薬物への共有結合(“ペグ化”として知られる)は、既知化学合成技術により達成できる。例えば、タンパク質のペグ化は、NHS−活性化PEGとタンパク質を適当な反応条件下で反応させることにより達成できる。
【0327】
多くの反応がペグ化について記載されているが、ほとんどのものが一般に方向性を付与し、穏やかな条件を使用し、毒性触媒または副産物除去のために広範な下流処理を必要としない。例えば、モノメトキシPEG(mPEG)は、1個の反応性末端ヒドロキシルしか有さず、その使用は得られたPEG−タンパク質生成物混合物の不均一性を幾分制限する。末端メトキシ基と逆のポリマーの末端のヒドロキシル基の活性化が、一般に誘導体化PEGを求核性攻撃により感受性とする目的で、効率的タンパク質ペグ化の達成に必要である。求核試薬攻撃は、通常リシル残基のイプシロン−アミノ基であるが、局所条件が好適であるならば、他のアミンも反応できる(例えばヒスチジンのN末端アルファ−アミンまたは環アミン)。一リシンまたはシステインを含むタンパク質でより直接的結合が可能である。後者の残基は、チオール特異的修飾のためにPEG−マレイミドに標的化され得る。あるいは、PEGヒドラジドを、過ヨウ素酸酸化ヒアルロナン分解酵素と反応させ、NaCNBH存在下還元できる。より具体的に、ペグ化CMP糖を、適当なグリコシル−トランスフェラーゼ存在下でヒアルロナン分解酵素と反応できる。一つの技術は、多くの重合体分子が問題のポリペプチドと結合する“ペグ化”技術である。この技術を使用したとき、免疫系は、抗体形成を担うポリペチド表面上のエピトープを認識することが困難であり、それにより免疫応答を低減させる。特定の生理学的効果を達成するため人体の循環系に直接導入されたポリペチド(すなわち医薬)について、典型的潜在的免疫応答はIgGおよび/またはIgM応答であり、呼吸系を介して吸入されたポリペチド(すなわち産業的ポリペチド)はおそらくIgE応答(すなわちアレルギー性応答)を起こし得る。免疫応答低減を説明する一つの理論は、重合体分子が、抗体形成に至る免疫応答を担うポリペチド表面上のエピトープを遮蔽することである。他の理論または少なくとも部分的因子は、コンジュゲートが重ければ重いほど、大きな免疫応答の低減が得られることである。
【0328】
典型的に、ここに提供するペグ化ヒアルロニダーゼを含むヒアルロナン分解酵素をペグ化するために、PEG部分を、共有結合を介して、ポリペチドにコンジュゲートする。ペグ化のための技術は、特定化リンカーおよびカップリング化学(例えば、Roberts et al., Adv. Drug Deliv. Rev. 54:459-476, 2002参照)、単一コンジュゲーション部位への複数PEG分子の付着(例えば、分枝PEGの使用を介する;例えば、Guiotto et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 12:177-180, 2002参照)、部位特異的ペグ化および/またはモノ−ペグ化(例えば、Chapman et al., Nature Biotech. 17:780-783, 1999参照)および部位特異的酵素ペグ化(例えば、Sato, Adv. Drug Deliv. Rev., 54:487-504, 2002)を含むが、これらに限定されない。文献に記載された方法および技術により、一タンパク質分子に結合した1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個または10個を超えるPEGまたはPEG誘導体を有するタンパク質類が産生される(例えば、U.S.2006/0104968参照)。
【0329】
ペグ化ヒアルロニダーゼのようなペグ化ヒアルロナン分解酵素を製造する説明的方法のペグ化の説明的例として、PEGアルデヒド、スクシンイミドおよびカーボネートがPEG部分、典型的にスクシンイミジルPEGをrHuPH20にコンジュゲートするために適用されている。例えば、rHuPH20は、mPEG−スクシンイミジルプロピオネート(mPEG−SPA)、mPEG−スクシンイミジルブタノエート(mPEG−SBA)および(“分枝”PEG結合のために)mPEG2−N−ヒドロキシルスクシンイミドを含む例示的スクシンイミジルモノPEG(mPEG)試薬とコンジュゲートされている。これらペグ化スクシンイミジルエステルは、PEG基と活性化クロスリンカーの間に種々の長さの炭素主鎖を有し、単または分枝PEG基である。これらの差異を、例えば、種々の反応動態を提供し、おそらく、コンジュゲーション過程中PEGがrHuPH20に結合するために利用可能な部位を制限するために使用できる。
【0330】
直鎖または分枝鎖PEGを含むスクシンイミジルPEG(上記)をrHuPH20とコンジュゲートできる。PEGを、ヒアルロニダーゼあたり、平均、約3〜6または正確に3〜6PEG分子を有する分子を含むrHuPH20を再現性よく製造するために使用できる。このようなペグ化rHuPH20組成物は容易に精製でき、約25,000または30,000単位/mgタンパク質ヒアルロニダーゼ活性の比活性を有し、実質的に非ペグ化rHuPH20を含まない(5%未満非ペグ化)組成物を得る。
【0331】
種々のPEG試薬を使用してヒアルロナン分解酵素、特に可溶性ヒト組み換えヒアルロニダーゼ(例えばrHuPH20)の例示的バージョンを、例えば、mPEG−SBA(30kD)、mPEG−SMB(30kD)およびmPEG2−NHS(40kD)およびmPEG2−NHS(60kD)に基づく分枝バージョンを製造できる。rHuPH20のペグ化バージョンは、NHS化学、ならびにカーボネートおよびアルデヒドを使用して製造され、以下の試薬のいずれかを使用する:mPEG2−NHS−40K分枝、mPEG−NHS−10K分枝、mPEG−NHS−20K分枝、mPEG2−NHS−60K分枝;mPEG−SBA−5K、mPEG−SBA−20K、mPEG−SBA−30K;mPEG−SMB−20K、mPEG−SMB−30K;mPEG−ブチルアルデヒド;mPEG−SPA−20K、mPEG−SPA−30K;およびPEG−NHS−5K−ビオチン。ペグ化ヒアルロニダーゼも、Dow Chemical Corporationの一部門であるDowpharmaから入手可能なPEG試薬を使用して製造されており、Dowpharmaのp−ニトロフェニル−カーボネートPEG(30kDa)およびプロピオンアルデヒドPEG(30kDa)でペグ化されたヒアルロニダーゼを含む。
【0332】
一例において、ペグ化は、mPEG−SBA、例えば、mPEG−SBA−30K(分子量約30kDaを有する)またはPEGブタン酸誘導体の他のスクシンイミジルエステルの可溶性ヒアルロニダーゼへのコンジュゲーションを含む。mPEG−SBA−30KのようなPEGブタン酸誘導体のスクシンイミジルエステルは、タンパク質のアミノ基に容易に結合する。例えば、m−PEG−SBA−30KとrHuPH20(約60KDaサイズである)の共有結合コンジュゲーションは、下記スキーム1に示す、rHuPH20とmPEGの間の安定なアミド結合を提供する。
【化4】
【0333】
典型的に、mPEG−SBA−30Kまたは他のPEGを、ヒアルロナン分解酵素、ある例においてヒアルロニダーゼに、PEG:ポリペチドモル濃度比10:1で、適切な緩衝液、例えば130mM NaCl/10mM HEPES、pH6.8または70mM リン酸緩衝液、pH7に添加し、滅菌、例えば無菌濾過し、コンジュゲーションを、例えば、撹拌しながら、一夜、4℃のコールドルームで続ける。一例において、コンジュゲートPEG−ヒアルロナン分解酵素を濃縮し、緩衝液交換する。
【0334】
mPEG−SBA−30KのようなPEGブタン酸誘導体のスクシンイミジルエステルのカップリングの他の方法は当分野で知られる(例えば、U.S.5,672,662;U.S.6,737,505;およびU.S.2004/0235734参照)。例えば、ヒアルロナン分解酵素(例えばヒアルロニダーゼ)のようなポリペプチドは、ホウ酸緩衝液(0.1M、pH8.0)中、1時間、4℃で反応させることによりNHS活性化PEG誘導体とカップリングできる。得られたペグ化タンパク質を限外濾過により精製できる。あるいは、ウシアルカリホスファターゼのペグ化を、ホスファターゼとmPEG−SBAを、0.2M リン酸ナトリウムおよび0.5M NaClを含む緩衝液(pH7.5)中、4℃で30分混合することにより達成できる。未反応PEGを限外濾過により除去できる。他の方法は、ポリペチドとmPEG−SBAを、pHを7.2から9に上げるためにトリエチルアミンを添加した脱イオン化水中で反応させる。得られた混合物を室温で数時間撹拌し、ペグ化を完了させる。
【0335】
例えば、動物由来ヒアルロニダーゼおよび細菌ヒアルロナン分解酵素を含むヒアルロナン分解ポリペチドのペグ化方法は当業者に知られる。例えば、ウシ精巣ヒアルロニダーゼおよびコンドロイチンABCリアーゼのペグ化を記載する欧州特許番号EP0400472参照。また、米国公開番号2006014968は、ヒトPH20由来ヒトヒアルロニダーゼのペグ化を記載する。例えば、ペグ化ヒアルロナン分解酵素は、一般に1分子あたり少なくとも3PEG部分を含む。例えば、ヒアルロナン分解酵素は、5:1〜9:1、例えば、7:1のPEG対タンパク質モル濃度比を有し得る。
【0336】
E. 医薬組成物および製剤
ここに提供されるのは、抗ヒアルロナン剤および腫瘍標的タキサン製剤の組成物または組み合わせである。例えば、ここに提供されるのは、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素および腫瘍標的タキサン製剤の組成物または組み合わせである。タキサン製剤はヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤を含む組成物と共製剤または共投与できる。例えば、このような組み合わせ剤および組成物は、ここに記載する固形腫瘍のような癌の処置に使用できる。いくつかの例において、ヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤を個別に投与する個別の組成物の組み合わせ剤として提供できる。他の例において、抗ヒアルロナン剤、例えば、ヒアルロナン分解酵素およびタキサンを同じ組成物で提供し、一括して投与できる。組成物または組成物の組み合わせ剤を非経腸送達(すなわち全身送達)のために製剤する。例えば、組成物または組成物の組み合わせ剤は皮下送達または静脈内送達のために製剤する。
【0337】
またここに提供されるのは、ヌクレオシドアナログまたは他の代謝拮抗剤(例えばゲムシタビンまたは誘導体または他のヌクレオシドアナログ)のような癌を処置するためのさらなる化学療法剤を含む組み合わせ剤および組成物である。このような薬剤の例は、本明細書の上におよび他の場所に記載する。さらなる化学療法剤、例えばヌクレオシドアナログを、ヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤を含む組成物および/または腫瘍標的タキサンを含む組成物と共製剤または共投与できる。例えば、さらなる化学療法剤、例えばヌクレオシドアナログは、抗ヒアルロナン剤、例えば、ヒアルロナン分解酵素およびタキサンの組み合わせ剤または組成物と個別の組成物として提供できる。他の例において、ヌクレオシドアナログは、抗ヒアルロナン剤、例えば、ヒアルロナン分解酵素およびタキサンの一方または両方と共製剤する。例えば、ヌクレオシドアナログをヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤と共製剤し、腫瘍標的タキサンを別の組成物として提供する。他の例において、ヌクレオシドアナログを腫瘍標的タキサンと共製剤し、抗ヒアルロナン剤、例えば、ヒアルロナン分解酵素を別の組成物として提供する。さらなる例として、ヌクレオシドアナログ、抗ヒアルロナン剤および腫瘍標的タキサンを同じ組成物に一括して共製剤する。組成物または組成物の組み合わせ剤を非経腸送達(すなわち全身送達)用に製剤できる。例えば、組成物または組成物の組み合わせ剤を皮下送達または静脈内送達用に製剤する。
【0338】
組成物を一回投与量投与または複数回投与量投与用に製剤できる。薬剤を直接投与用に製剤できる。組成物を液体または凍結乾燥製剤として提供できる。
【0339】
本化合物を、経口投与用の溶液剤、懸濁液剤、錠剤、分散性錠剤、丸剤、カプセル剤、粉末剤、持続放出製剤またはエリキシルのような適切な医薬製剤ならびに経皮パッチ製剤および乾燥粉末吸入器に製剤できる。典型的に、本化合物を、当分野で周知の技術および方法を使用して医薬組成物に製剤する(例えば、Ansel Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms, Fourth Edition, 1985, 126参照)。一般に、製剤の方式は投与経路の機能である。組成物は共製剤でも、個別の組成物として提供してもよい。
【0340】
一般に、組成物を凍結乾燥または液体形態として提供する。組成物を凍結乾燥形態として提供するとき、適当な緩衝液、例えば、無菌食塩水溶液により使用直前に再構成できる。組成物を一括してまたは個別に提供できる。ここでの目的のために、このような組成物を、典型的に個別に提供する。抗ヒアルロナン剤、例えば、可溶性ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素、腫瘍標的タキサンおよび/またはさらなる化学療法剤を、一括して、逐次的にまたは間欠的に投与するための個別の組成物として包装してよい。組み合わせをキットとして包装できる。
【0341】
組成物を、筋肉内、静脈内、皮内、病巣内、腹腔内注射、皮下、腫瘍内、硬膜外、経鼻、経口、膣、直腸、外用、局所、耳、吸入、バッカル(例えば、舌下)および経皮投与を含む当業者に知られる任意の経路または任意の経路により投与するために製剤できる。他の投与方法も意図される。投与は、処置の場所によって、外用、局所または全身であり得る。処置を必要とする領域への局所投与は、例えば、手術中の局所点滴、例えば、手術後の創傷包帯と組み合わせた局所適用、注射、カテーテルの手段、坐薬の手段またはインプラントの手段により、しかし、これらに限定されずに、達成できる。組成物をまた他の生物活性剤と、個別に、間欠的にまたは同じ組成物で投与できる。投与はまた放出制御製剤およびポンプの手段によるようなデバイス放出制御を含む放出制御系も含み得る。
【0342】
ある場合のほとんどの適切な経路は、疾患の性質、疾患の進行、疾患の重症度および使用する特定の組成物のような多様な因子による。ここでの目的のために、抗ヒアルロナン剤、典型的に可溶性ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素、腫瘍標的タキサンおよび/またはさらなる化学療法剤を、薬学的に有用な量またはレベルが血漿に存在するように投与するのが望ましい。例えば、組成物を全身性に、例えば、静脈内投与を介して投与する。皮下方法も用いることができるが、静脈内方法と比較して長い吸収時間が同等なバイオアベイラビリティを確実にするために必要となり得る。ヒアルロナン分解酵素、腫瘍標的タキサンおよび/またはさらなる化学療法剤(例えばヌクレオシドアナログ)のような薬剤を異なる投与経路で投与できる。医薬組成物を、各投与経路に適する投与形態で製剤できる。
【0343】
投与方法を、抗原性および免疫原性応答を介する、タンパク分解性分解および免疫学的介入のような分解性過程へのヒアルロナン分解酵素、例えば可溶性ヒアルロニダーゼおよび他の分子の暴露を減少させるために用いることができる。このような方法の例は、抗ヒアルロン剤の処置部位への局所投与または連続点滴を含む。
【0344】
1. 製剤
薬学的に許容される組成物を、動物およびヒトへの使用のために一般に認識される薬局方に従い、規制当局または他の機関の承認取得を意図して製剤する。組成物は溶液剤、懸濁液剤、エマルジョン剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉末剤および持続放出製剤の形を取り得る。組成物を、トリグリセリドのような伝統的結合剤および担体を用いて坐薬として製剤できる。経口製剤は、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムおよび他のこのような薬剤のような標準的担体を含み得る。製剤は投与方法に適するべきである。
【0345】
医薬組成物は、酵素またはアクティベーターと共に投与する希釈剤、アジュバント、添加物または媒体のような担体を含み得る。適切な製薬担体の例は、“Remington's Pharmaceutical Sciences” by E. W. Martinに記載されている。このような組成物は、患者への適切な投与のための形態を提供するために、治療有効量の化合物を、一般に精製形態で、適切な量の担体と共に含む。このような製剤担体は、水およびピーナツ油、ダイズ油、鉱油およびゴマ油のような石油、動物、植物または合成起源のものを含む油のような無菌液体であり得る。水は、医薬組成物を静脈内投与するとき典型的担体である。食塩水溶液およびデキストロースおよびグリセロール水溶液も液体担体、特に注射溶液として用いることができる。組成物は、活性成分と共に、ラクトース、スクロース、リン酸二カルシウムまたはカルボキシメチルセルロースのような希釈剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムおよびタルクのような滑沢剤;およびデンプン、アカシアガムのような天然ガム、ゼラチン、グルコース、糖液、ポリビニルピロリジン、セルロースおよびその誘導体、ポビドン、クロスポビドンおよび当業者に知られる他のこのような結合剤のような結合剤を含む。適切な製剤添加物は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水およびエタノールを含む。組成物は、所望により、微量の湿潤剤または乳化剤またはpH緩衝剤、例えば、アセテート、クエン酸ナトリウム、シクロデキストリン誘導体、ラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミンナトリウムアセテート、オレイン酸トリエタノールアミンおよび他のこのような添加物を含み得る。
【0346】
一例において、医薬製剤は液体形態、例えば、溶液、シロップまたは懸濁液であり得る。このような液体製剤は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用脂);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性媒体(例えば、アーモンド油、油性エステルまたは分画植物油);および防腐剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチルまたはプロピルまたはソルビン酸)のような薬学的に許容される添加剤と慣用的手段により製剤できる。他の例において、医薬製剤は、使用前に水または他の適切な媒体で再構成する凍結乾燥形態で提供できる。
【0347】
薬学的におよび治療的活性化合物およびその誘導体は、典型的に単位投与形態または複数投与形態で製剤および投与される。各単位投与量は、必要な製薬担体、媒体または希釈剤と共に所望の治療効果をもたらすのに十分な予定した量の治療的活性化合物を含む。単位投与形態は、適切な量の化合物または薬学的に許容されるその誘導体を含む錠剤、カプセル、丸剤、粉末、顆粒、無菌非経腸溶液または懸濁液および経口溶液または懸濁液および油水エマルジョンを含むが、これらに限定されない。単位投与量形態はアンプルおよびシリンジに含まれまたは錠剤またはカプセルに個々に包装される。単位投与量形態は、その一部または複数を投与し得る。複数投与量形態は、分離した単位投与量形態で投与する、一容器に包装された複数の同一単位投与形態である。複数投与量形態の例はバイアル、錠剤またはカプセルの瓶またはパイントまたはガロンの瓶を含む。それゆえに、複数投与量形態は、包装で分離されていない複数の単位投与量である。一般に、0.005%〜100%範囲の活性成分と、非毒性担体からなる残りを含む投与形態または組成物を製造できる。
【0348】
医薬組成物を、各投与経路に適する投与形態で製剤できる。
【0349】
a. 注射剤、溶液およびエマルジョン
一般に皮下、筋肉内、腫瘍内、静脈内または皮内の注射により特徴づけられる非経腸投与がここで意図される。注射剤は、慣用の形態で、液体溶液または懸濁液、注射前に液体で溶液または懸濁液に適する固体形態またはエマルジョンとして製造できる。適切な添加物は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロールまたはエタノールである。さらに、所望により、投与する医薬組成物はまたpH緩衝剤、金属イオン塩または他のこのような緩衝液のような溶媒の形態でアクティベーターも含み得る。医薬組成物はまた他の微量の湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、安定化剤、溶解促進剤および例えば、酢酸ナトリウム、ラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミンおよびシクロデキストリンのような他のこのような薬剤のような非毒性補助的物質も含み得る。一定レベルの投与量を維持する(例えば、米国特許番号3,710,795参照)ような遅延放出または徐放系の移植もここで意図される。このような非経腸組成物に包含される活性化合物のパーセンテージは、その具体的性質、ならびに化合物活性および対象の必要性に高度に依存する。
【0350】
例えば、ここに提供するポリマー結合可溶性ヒアルロニダーゼのようなポリマー結合ヒアルロナン分解酵素の標準的安定化製剤は、1種以上のEDTA、NaCl、CaCl、ヒスチジン、ラクトース、アルブミン、Pluronic(登録商標)F68、TWEEN(登録商標)および/または他の界面活性剤または他の類似薬剤と共に製剤する。例えば、ここに提供する組成物は、1種以上のpH緩衝液(例えば、ヒスチジン、ホスフェートまたは他の緩衝液)または酸性緩衝液(例えばアセテート、シトレート、ピルベート、Gly−HCl、スクシネート、ラクテート、マレアートまたは他の緩衝液)、張性モディファイヤー(例えば、アミノ酸、ポリアルコール、NaCl、トレハロース、他の塩および/または糖)、安定化剤、キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミンテトラアセテートまたはカルシウムEDTA、酸素スカベンジャー、例えばメチオニン、アスコルビン酸/アスコルベート、クエン酸/シトレートまたはアルブミンおよび/または防腐剤、例えば芳香環含有防腐剤(例えばフェノールまたはクレゾール)を含み得る。ヒアルロナン分解酵素を含む組成物に有用な安定化剤の例は、ポリソルベートのような界面活性剤およびヒト血清アルブミンのようなタンパク質を含む。ここでの組成物に有用な血清アルブミン濃度の例は、0.1mg/mL〜1mg/mL、例えば少なくとも0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.5mg/mL、0.6mg/mL、0.7mg/mL、0.8mg/mL、0.9mg/mLまたは1mg/mL(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)を含むが、これ以上でもこれ未満でもよい。ポリソルベートも、組成物に、例えば、0.001%〜0.1%(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)、例えば少なくとも0.001%、0.002%、0.003%、0.004%、0.005%、0.006%、00.007%、0.008%、0.009%、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%または0.1%(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)の濃度で存在し得る。カルシウムEDTA(CaEDTA)のような金属キレート剤も、例えば、約0.02mM〜20mM、例えば少なくとも0.02mM、0.04mM、0.06mM、0.08mM、0.1mM、0.2mM、0.3mM、0.4mM、0.5mM、0.6mM、0.7mM、0.8mM、0.9mM、1mM、5mM、10mM、15mM、20mM(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)またはそれ以上の濃度で存在し得る。組成物のpHおよびモル浸透圧濃度は、組成物の所望の活性および安定性のための条件を最適化するために当業者により調整できる。いくつかの例において、ここに提供する組成物は、100mOsm/kg〜500mOsm/kg、例えば少なくとも100mOsm/kg、120mOsm/kg、140mOsm/kg、160mOsm/kg、180mOsm/kg、200mOsm/kg、220mOsm/kg、240mOsm/kg、260mOsm/kg、280mOsm/kg、300mOsm/kg、320mOsm/kg、340mOsm/kg、360mOsm/kg、380mOsm/kg、400mOsm/kg、420mOsm/kg、440mOsm/kg、460mOsm/kg、500mOsm/kg(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)またはそれ以上のモル浸透圧濃度および6〜8、例えば6〜7.4、例えば正確にまたは約6、6.2、6.4、6.6、6.8、7、7.2、7.4、7.6、7.8または8(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)のpHを有する。
【0351】
一般に、NaClを、例えば、100mM〜150mM(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)またはそれ以上の量で、ここでのヒアルロナン分解酵素を含む製剤に提供する。例えば、製剤の例は、正確にまたは約10mMヒスチジンおよび/または正確にまたは約130mM NaClを含み得る。他の製剤は、これに加えてまたは別にラクトース、例えば、正確にまたは約13mg/mlを含み得る。さらに、チオメルサールを含むが、これに限定されない抗細菌剤または抗真菌剤も製剤に存在できる。製剤は、さらにアルブミン、Pluronic(登録商標)F68、TWEEN(登録商標)および/または他の界面活性剤を含み得る。製剤は、6.0〜7.4、例えば6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3または7.4(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)のpH、一般に6.5または約pH6.5で提供される。ここで使用するための修飾可溶性ヒアルロニダーゼの濃縮製剤は、一般に適当な塩濃度を維持するために投与前に食塩水溶液または他の塩緩緩衝化溶液で希釈する。
【0352】
注射剤は局所および全身投与のために設計する。ここでの目的のために、局所投与は、蓄積または過剰ヒアルロナンと関連する間質に作用するための直接投与用に望ましい。非経腸投与製剤は、注射用の調製済み無菌溶液、皮下錠剤を含む使用直前に溶媒と組み合わせる準備がされた凍結乾燥粉末のような無菌乾燥可溶性生成物、注射用の調製済み無菌懸濁液、使用直前に媒体と組み合わせる準備がされた無菌乾燥不溶性生成物および無菌エマルジョンを含む。溶液は水溶液でも非水溶液でもよい。静脈内投与するならば、適切な担体は、生理食塩水またはリン酸緩衝化食塩水(PBS)およびグルコース、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールおよびその混合物のような増粘剤および可溶化剤を含む溶液を含む。
【0353】
非経腸製剤に使用する薬学的に許容される担体は、水性媒体、非水性媒体、抗菌剤、等張剤、緩衝液、抗酸化剤、局所麻酔剤、懸濁剤および分散剤、乳化剤、封鎖剤またはキレート剤および他の薬学的に許容される物質を含む。水性媒体の例は、塩化ナトリウム注射、リンゲル注射、等張デキストロース注射、無菌水注射、デキストロースおよび乳酸加リンゲル注射を含む。非水性非経腸媒体は植物起源の固定油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油およびピーナツ油を含む。静菌または静真菌濃度の抗菌剤を、複数投与量容器に包装した非経腸製剤に添加でき、これはフェノール類またはクレゾール類、水銀類、ベンジルアルコール、クロロブタノール、p−ヒドロキシ安息香酸メチルおよびプロピルエステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウムおよび塩化ベンゼトニウムを含む。等張剤は、塩化ナトリウムおよびデキストロースを含む。緩衝液は、ホスフェートおよびシトレートを含む。抗酸化剤は、重硫酸ナトリウムを含む。局所麻酔剤は、塩酸プロカインを含む。懸濁剤および分散剤は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンを含む。乳化剤は、ポリソルベート80(TWEEN 80)を含む。金属イオンの封鎖剤またはキレート剤はEDTAを含む。製薬担体はまた水混和性媒体のためのエチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールおよびpH調節のための水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸または乳酸を含む。
【0354】
静脈内投与するとき、適切な担体は、生理食塩水またはリン酸緩衝化食塩水(PBS)およびグルコース、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールおよびその混合物のような増粘剤および可溶化剤を含む溶液を含む。
【0355】
薬学的活性化合物の濃度を、注射が所望の薬理学的効果を生じるための有効量提供するように調節する。正確な投与量は、当分野で知られるとおり、患者または動物の年齢、体重および状態による。単位投与量非経腸製剤をアンプル、バイアルまたは針付きシリンジに包装する。薬学的活性化合物を含む液体溶液または再構成粉末製剤の体積は、処置する疾患および包装に使用した特定の製品の関数である。非経腸投与用の全製剤は、当分野で知られ、実施されているとおり、無菌でなければならない。
【0356】
b. 凍結乾燥粉末
ここで興味深いのは、溶液、エマルジョンおよび他の混合物としての投与のために再構成できる凍結乾燥粉末である。それらは、固体またはゲルとしても再構成および製剤され得る。凍結乾燥粉末は上記のあらゆる溶液から製造できる。
【0357】
無菌、凍結乾燥粉末は、可溶性ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素である抗ヒアルロナン剤および/または第二剤の化合物を緩衝液に溶解することにより製造する。緩衝液は、粉末または粉末から調製する再構成溶液の安定性または他の薬理学的成分を改善する添加物を含み得る。当業者に知られる標準条件下の続く溶液の無菌濾過と、続く凍結乾燥により所望の製剤を得る。簡単にいうと、凍結乾燥粉末を、デキストロース、ソルビトール、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロースまたは他の適当な薬剤のような添加物を、シトレート、リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウムまたは当業者に知られる他のこのような緩衝液のような適切な緩衝液に溶解することにより調製する。次いで、選択した酵素を得られた混合物に添加し、溶解するまで撹拌する。得られた混合物を、粒子を除去し、無菌性を保証するために無菌濾過または処理し、凍結乾燥用バイアルに分配する。各バイアルは、化合物の一投与量(1mg〜1g、一般に1〜100mg、例えば1〜5mg)または複数投与量を含む。凍結乾燥粉末を、約4℃〜室温のような適当な条件下で保存できる。
【0358】
この凍結乾燥粉末の緩衝液での再構成により、非経腸投与に使用する製剤を得る。正確な量は処置する適応症および選択した化合物による。このような量は経験的に決定できる。
【0359】
c. 局所投与
局所混合物を局所および全身投与について記載したとおりに製造する。得られた混合物は溶液、懸濁液、エマルジョンなどであってよく、クリーム、ゲル、軟膏、エマルジョン、溶液、エリキシル、ローション、懸濁液、チンキ、ペースト、フォーム、エアロゾル、灌水、スプレー、坐薬、バンデージ、皮膚パッチまたは局所投与に適するあらゆる他の製剤として製剤する。
【0360】
化合物または薬学的に許容されるその誘導体を、吸入によるような、局所適用のためのエアロゾルとして製剤し得る(例えば、炎症性疾患、特に喘息の処置に有用なステロイドの送達用エアロゾルを記載する米国特許番号4,044,126、4,414,209および4,364,923参照)。これらの呼吸管に投与するための製剤は、単独またはラクトースのような不活性担体と組み合わせたエアロゾルまたはネブライザー用溶液または吹き入れ(insufflation)のための超微粒粉末の形であり得る。このような場合、製剤の粒子は典型的に50ミクロン未満、好ましくは10ミクロン未満の直径である。
【0361】
化合物は、皮膚への局所適用および眼におけるような粘膜のような局所または局所適用のための、ゲル、クリームおよびローションの形でおよび眼への適用または嚢内または脊髄内適用のために製剤し得る。局所投与は経皮送達およびまた眼または粘膜または吸入治療のために意図される。活性化合物単独または他の薬学的に許容される添加物と組み合わせた経鼻溶液も投与できる。
【0362】
経皮投与に適する製剤を提供する。これらは、長時間レシピエントの表皮と密接に接触したままであるのに適する分離したパッチのような任意の適切な形式で提供できる。このようなパッチは、活性化合物を、所望により緩緩衝化した、例えば、活性化合物に関して0.1〜0.2M濃度の水溶液中に含む。経皮投与に適する製剤はまたイオン泳動により送達でき(例えば、Pharmaceutical Research 3(6), 318 (1986)参照)、典型的に所望により緩緩衝化されていてよい活性化合物の水溶液の形を取る。
【0363】
d. 他の投与経路用の組成物
処置する状態によって、局所適用、経皮パッチ、経口および直腸投与のような他の投与経路も意図される。例えば、直腸投与用医薬投与形態は、全身的作用のための直腸坐薬、カプセルおよび錠剤である。直腸坐薬は、体温で融解または軟化して、1種以上の薬理学的または治療的活性成分を有利する、直腸に挿入するための固形物を含む。直腸坐薬に利用する薬学的に許容される物質は、基剤または媒体および融点を上げるための薬剤である。基剤の例は、カカオバター(カカオ脂)、グリセリン−ゼラチン、カーボワックス(ポリオキシエチレングリコール)および脂肪酸モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドの適当な混合物を含む。種々の基剤の組み合わせを使用してよい。坐薬の融点を上げる薬剤は鯨蝋および蝋を含む。直腸坐薬は、圧縮方法または鋳造により製造し得る。直腸坐薬の典型的重量は約2〜3gmである。直腸投与用錠剤およびカプセルは、経口投与用製剤と同じ薬学的に許容される物質および同じ方法を使用して製造する。
【0364】
直腸投与に適する製剤は、単位投与量坐薬として提供できる。これらは、活性化合物と1種以上の慣用的固体担体、例えば、カカオバターを混合し、得られた混合物を成形することにより製造できる。
【0365】
経口投与のために、医薬組成物は、例えば、結合剤(例えば、アルファ化メイズデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロースまたはリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)のような薬学的に許容される添加物と慣用的に製造した錠剤またはカプセルの形をとり得る。錠剤は当分野で周知の方法によりコーティングできる。
【0366】
バッカル(舌下)投与に適する製剤は、例えば、風味付けした基剤、通常スクロースおよびアカシアまたはトラガカントに活性化合物を含むロゼンジ;およびゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアのような不活性基剤中に化合物を含む芳香錠を含む。
【0367】
医薬組成物は、放出制御製剤および/または送達デバイスによっても投与され得る(例えば、米国特許番号3,536,809;3,598,123;3,630,200;3,845,770;3,847,770;3,916,899;4,008,719;4,687,660;4,769,027;5,059,595;5,073,543;5,120,548;5,354,556;5,591,767;5,639,476;5,674,533および5,733,566参照)。
【0368】
リポソームへの封入、微粒子、マイクロカプセル、化合物を発現できる組み換え細胞、受容体介在エンドサイトーシスおよび可溶性ヒアルロニダーゼをコードする核酸分子の送達またはレトロウイルス送達系のような他の薬剤を含むが、これらに限定されない種々の送達系が知られ、選択した組成物の投与に使用できる。
【0369】
それゆえに、ある態様において、リポソームおよび/またはナノ粒子もここでの組成物の投与に使用できる。リポソームは、水性媒体および自然に形成される多層状同心性二層リポソーム(別称多重層リポソーム(MLV))に分散されるリン脂質である。MLVは、一般に直径25nm〜4μmを有する。MLVの超音波処理は、コアに水溶液を含む直径200〜500オングストローム範囲の小単層リポソーム(SUV)の形成をもたらす。
【0370】
リン脂質は、脂質対水のモル濃度比によって、水に分散したときリポソーム以外の多様な構造を形成し得る。比が低いとき、リポソームが形成される。リポソームの物理的特徴はpH、イオン性強度および二価カチオンの存在による。リポソームはイオン性および極性物質に低透過性を示し得るが、高温で相転移を受け、これは顕著に透過性を変更される。相転移は、ゲル状態として知られる密接に包装された、秩序立った構造から、流動状態として知られるゆるく包装され、あまり秩序立てられていない構造への変化を含む。これは、特徴的相転移温度で起き、イオン、糖および薬物に対する不透過性を増加させる。
【0371】
リポソームは、種々の機構を介して細胞と相互作用する:マクロファージおよび好中球のような網内系の食作用性細胞によるエンドサイトーシス;非特異的な弱い疎水性または静電力または細胞−表面成分との特異的相互作用による細胞表面への吸着;リポソームの脂質二層の原形質膜による血漿細胞膜との融合と同時のリポソーム内容物の細胞質への有利;およびリポソーム内容物の結合がないリポソーム脂質の細胞または細胞内膜への伝達またはその逆。リポソーム製剤の変動は、どの機構が操作的であるかを変更できるが、1種以上が同時に操作的であり得る。ナノカプセルは、一般に化合物を安定なおよび再現性ある方法で封入する。細胞内重合体過負荷による副作用を避けるため、このような超微細粒子(約0.1μmサイズ)を、インビボで分解できるポリマーを使用して設計すべきである。この要求を満たす生分解性ポリアルキル−シアノアクリレートナノ粒子がここでの使用に意図され、このような粒子は用意に製造できる。
【0372】
2. 製剤量
本組成物を一回投与量投与または複数回投与量投与のために製剤できる。本薬剤を直接投与用に製剤できる。
【0373】
抗ヒアルロナン剤がポリマー結合ヒアルロナン分解酵素のようなヒアルロナン分解酵素であるここに提供する組成物または組成物の組み合わせ剤において、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素を、0.5μg〜50mg、例えば100μg〜1mg、1mg〜20mg、100μg〜5mg、0.5μg〜1450μg、1μg〜1000μg、5μg〜1250μg、10μg〜750μg、50μg〜500μg、0.5μg〜500μgまたは500μg〜1450μg(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)の範囲の直接投与のための量で製剤する。例えば、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素は、投与量あたり15単位(U)または150単位(U)〜60,000単位、300U〜30,0000U、500U〜25,000U、500U〜10,000U、150U〜15,000U、150U〜5000U、500U〜1000U、5000U〜45,000U、10,000U〜50,000Uまたは20,000U〜60,000U(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)の範囲、例えば少なくとも15U、50U、100U、200U、300U;400U;500U;600U;700U;800U;900U;1,000U;1250U;1500U;2000U;3000U;4000U;5,000U;6,000U;7,000U;8,000U;9,000U;10,000U;20,000U;30,000U;40,000U;または50,000U(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)の直接投与のための量で製剤する。ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素は、50U/mL〜15,000U/mL、例えば10U/mL〜500U/mL、1000U/mL〜15,000U/mL、100U/mL〜5,000U/mL、500U/mL〜5,000U/mLまたは100U/mL〜400U/mL(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)、例えば少なくとも50U/mL、100U/mL、150U/mL、200U/mL、400U/mL、500U/mL、1000U/mL、2000単位/mL、3000U/mL、4000U/mL、5000U/mL、6000U/mL、7000U/mL、8000U/mL、9000U/mL、10,000U/mL、11,000U/mL、12,000U/mLまたは12,800U/mL(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)の原液として提供できる。組成物の体積は、0.5mL〜1000mL、例えば0.5mL〜100mL、0.5mL〜10mL、1mL〜500mL、1mL〜10mL、例えば少なくとも0.5mL、1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、15mL、20mL、30mL、40mL、50mL(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)またはそれ以上であり得る。組成物は、一般にポリマー結合ヒアルロナン分解酵素が約50mLより多い体積で投与されないように、典型的に5〜30mLの体積で、一般に約10mLより多くない体積で投与されるように製剤する。体積が大きいと、点滴時間を、大きな体積の送達を容易にするように調節できる。例えば、点滴時間は少なくとも1分、5分、10分、20分、30分、40分、50分、1時間またはそれ以上であり得る。
【0374】
ここで提供する組成物または組成物の組み合わせ剤において、アルブミン結合タキサンのような腫瘍標的タキサン、例えばアルブミン結合パクリタキセルを、10mg〜1000mg(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)、例えば20mg〜500mg、10mg〜250mg、75mg〜400mg、100mg〜200mg、150mg〜400mg、200mg〜800mg、50mg〜200mgまたは50mg〜150mgの範囲のタキサンの直接投与のための量で製剤する。組成物は、後に再構成する凍結乾燥形態としてまたは液体製剤として提供できる。例えば、液体製剤の再構成は水または0.9%塩化ナトリウムまたは他の生理溶液を用い得る。液体製剤として再構成または提供したとき、0.01mg/mL〜100mg/mL、例えば1mg/mL〜50mg/ml、2.5mg/mL〜25mg/mL、5mg/mL〜15mg/mLまたは10mg/mL〜100mg/mL(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)、例えば少なくとも5mg/mLまたは約5mg/mLの原液として腫瘍標的タキサン製剤でタキサンを含む組成物を提供できる。組成物の体積は0.5mL〜1000mL、例えば0.5mL〜100mL、0.5mL〜10mL、1mL〜500mL、1mL〜10mL、例えば少なくとも0.5mL、1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、15mL、20mL、30mL、40mL、50mL、100mL、200mL(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)またはそれ以上であり得る。全バイアル内容物を投与に吸引してよくまたは複数回投与のための複数投与量に分けてよい。体積が大きいと、点滴時間を、大きな体積の送達を容易にするように調節できる。例えば、点滴時間は少なくとも1分、5分、10分、20分、30分、40分、50分、1時間またはそれ以上であり得る。タキサンの製剤は、担体、ポリマー、脂質および他の添加物を含む他の成分を含み得ることは理解される。上で提供される投与量は、活性成分であるタキサン成分に関する。
【0375】
例えば、アルブミン結合パクリタキセルであるアブラキサン(登録商標)を、パクリタキセルが約130nmサイズの安定な粒子を形成するためにアルブミンとのみ複合体しているパクリタキセルの無溶媒製剤として製剤する。アブラキサン(登録商標)の50mLバイアル各々は、100mgのパクリタキセルおよび約900mgのヒトアルブミンを無菌、凍結乾燥ケーキとして含む。各バイアルは、5mg/mLのパクリタキセルを含む懸濁液を産生するために20mLの0.9%塩化ナトリウム注射、USPで再構成するために提供される。再構成されたアブラキサン懸濁液を、30分かけて260mg/mの推奨投与量で静脈内点滴する。
【0376】
ここで提供する組成物または組成物の組み合わせ剤において、ゲムシタビンまたはその誘導体のようなヌクレオシドアナログを、100mg〜5000mg、例えば500mg〜5000mg、500mg〜2500mg、1000mg〜2500mg、2000mg〜5000mgまたは1500mg〜2500mg(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)の範囲、一般に少なくとも100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mgまたは1000mg(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)の直接投与のための量で製剤する。組成物は、後に再構成する凍結乾燥形態としてまたは液体製剤として提供できる。例えば、液体製剤の再構成は水または0.9%塩化ナトリウムまたは他の生理溶液を用い得る。液体製剤として再構成または提供したとき、組成物は、1mg/mL〜500mg/mL、例えば5mg/mL〜100mg/ml、10mg/mL〜50mg/mL、25mg/mL〜200mg/mLまたは20mg/mL〜100mg/mL(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)、例えば少なくとも5mg/mL、10mg/mL、20mg/mL、30mg/mLまたは40mg/mL(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)のヌクレオシドアナログを含む原液として提供でき、一般に不完全な溶解を最小化するために40mg/mLを超えない。組成物の体積は0.5mL〜1000mL、例えば0.5mL〜100mL、0.5mL〜10mL、1mL〜500mL、1mL〜10mL、例えば少なくとも0.5mL、1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、15mL、20mL、30mL、40mL、50mL、100mL、200mL(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)またはそれ以上であり得る。全バイアル内容物を投与に吸引してよくまたは複数回投与のための複数投与量に分けてよい。体積が大きいと、点滴時間を、大きな体積の送達を容易にするように調節できる。例えば、点滴時間は少なくとも1分、5分、10分、20分、30分、40分、50分、1時間またはそれ以上であり得る。投与のための一定量の薬物の吸引により、製剤を水、食塩水(例えば0.9%)または他の生理溶液での希釈のように、所望によりさらに希釈し得る。ヌクレオシドアナログ(例えばゲムシタビンまたは誘導体)の製剤は、担体、ポリマー、脂質および他の添加物を含む他の成分を含み得ることは理解される。上で提供される投与量は、活性成分であるヌクレオシドアナログ成分に関する。
【0377】
例えば、注射用ゲムシタビンであるジェムザール(登録商標)を、バイアルあたり200mgまたは1000mg活性剤を含む凍結乾燥製剤として提供できる。各バイアルは、40mg/mLのゲムシタビンを含む懸濁液を産生するために、それぞれ5mLまたは25mLの0.9%塩化ナトリウム注射、USPで再構成するために提供される(凍結乾燥粉末の置換体積の説明として、再構成された濃度は約または正確に38mg/mLであり得る)。投与前に、適当な量の薬物を0.9%塩化ナトリウムまたは他の生理溶液でさらに希釈してよい。
【0378】
3. 包装および製品
また提供されるのは、包装材料、ここに提供する医薬組成物または組み合わせのいずれかおよび組成物および組み合わせ剤が間質腫瘍または固形癌のような癌の処置に使用されることを示すラベルを含む製品である。製品の例は、単腔および二腔容器を含む容器である。容器は、チューブ、ビンおよびシリンジを含むが、これらに限定されない。容器はさらに皮下投与用針を含み得る。
【0379】
一例において、製品は、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤および腫瘍標的タキサンを含む医薬組成物を含み、さらなる薬剤または処置剤を含まない。他の例において、製品は、抗ヒアルロナン剤、例えば、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素、腫瘍標的タキサンおよびさらなる化学療法剤(例えばヌクレオシドアナログ)を含む医薬組成物を含む。この例において、各薬剤を、製品として包装するために一括してまたは個別に提供できる。
【0380】
ここで提供する製品は包装材料を含む。医薬製品の包装に使用するための包装材料は当業者に周知である。例えば、各々その全体を引用により本明細書に包含させる米国特許番号5,323,907、5,052,558および5,033,252参照。医薬包装材料の例は、ブリスターパック、ビン、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、シリンジ、ビンおよび選択した製剤および意図する投与方法および処置に適する何らかの包装材料を含むが、これらに限定されない。
【0381】
包装の選択は、薬剤およびこのような組成物が一括してまたは個別に包装されるかによる。一般に、包装は、含まれる組成物と非反応性である。他の例において、成分のいくつかを混合物として包装できる。他の例において、全成分を個別に包装する。それゆえに、例えば、複数成分を個別の組成物として包装でき、これは、投与直前の混合により、一括して直接投与できる。あるいは、複数成分を、個別に投与する個別の組成物として包装できる。
【0382】
成分を容器に包装できる。複数成分を同じ容器に個別に包装する。一般に、このような容器の例は、続く領域が容易に除去できる膜により分けられ、これは、除去により、複数成分が混合することを可能にするまたは複数成分を個別に投与することを可能にするように、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素を含む封入された、規定された間隙および他の1種または複数の成分を含む別の封入された、規定された間隙を有するものである。投与前に薬剤が他の成分と離れている限り、任意の容器または他の製品が意図される。適切な態様について、例えば、米国特許番号3,539,794および5,171,081に記載の容器を参照のこと。
【0383】
選択した組成物は、その製品を含み、キットとしても提供できる。キットは、ここに記載する医薬組成物および製品として提供される投与用アイテムを含み得る。キットは、所望により、投与量、投与レジメンおよび投与方法の指示を含む、適用のための指示を含み得る。キットはまたここに記載する医薬組成物および診断用アイテムも含み得る。
【0384】
F. 活性、バイオアベイラビリティおよび薬物動態の評価方法
ここでの組成物中の薬剤は、特性および活性について評価できる。特性および活性は、生物活性および/または腫瘍原性活性に関連し得る。アッセイはインビトロまたはインビボで実施できる。このようなアッセイは、組織または腫瘍組織診におけるヒアルロナンまたは血漿における可溶性ヒアルロナンの量の測定、血中または尿中のヒアルロナン異化産物の測定、血漿におけるヒアルロニダーゼ活性の測定または腫瘍における間質性流圧、血管体積または含水率の測定を含み得るが、これらに限定されない。アッセイは、投与量および投与経路の効果を含む、薬剤の効果を評価するために使用できる。
【0385】
1. インビトロアッセイ
a. ヒアルロナン分解酵素のヒアルロニダーゼ活性
ヒアルロナン分解酵素の活性は、当分野で周知の方法を使用して評価できる。例えば、ヒアルロニダーゼに関するUSP XXIIアッセイは、酵素をHAと37℃で30分間反応させた後に残存する未分解ヒアルロン酸またはヒアルロナン(HA)基質の量を測定することにより、活性が間接的に決定される(USP XXII-NF XVII (1990) 644-645 United States Pharmacopeia Convention, Inc, Rockville, MD)。ヒアルロニダーゼ対照標準(USP)または国民医薬品集(NF)標準ヒアルロニダーゼ溶液を、任意のヒアルロニダーゼの活性(単位)を確認するためのアッセイにおいて使用できる。一例において、活性を微小濁度アッセイを使用して測定する。これは、ヒアルロン酸が血清アルブミンときに不溶性沈殿の形成に基づく。ヒアルロニダーゼとヒアルロン酸ナトリウム(ヒアルロン酸)を、一定時間(例えば、10分)インキュベートし、次いで未消化ヒアルロン酸ナトリウムを酸性化血清アルブミン添加により沈殿させることにより、活性を測定する。得られたサンプルの濁度を、さらなる展開時間後に640nmで測定する。ヒアルロン酸ナトリウム基質上のヒアルロニダーゼ活性に由来する濁度の減少が、ヒアルロニダーゼ酵素活性の指標である。他の例において、ヒアルロニダーゼ活性を、残存ビオチニル化ヒアルロン酸を、ヒアルロニダーゼとのインキュベーション後に測定するマイクロタイターアッセイを使用して測定する(例えばFrost and Stern (1997) Anal. Biochem. 251:263-269、米国特許公開番号20050260186参照)。ヒアルロン酸のグルクロン酸残基上の遊離カルボキシル基がビオチニル化され、該ビオチニル化ヒアルロン酸基質がマイクロタイタープレートと共有結合的に結合する。ヒアルロニダーゼとのインキュベーション後、残存ビオチニル化ヒアルロン酸基質を、アビジン−ペルオキシダーゼ反応を使用して検出し、既知活性のヒアルロニダーゼ標準との反応後に得られたものと比較する。ヒアルロニダーゼ活性を測定するための他のアッセイも当分野で知られ、ここでの方法に使用できる(例えばDelpech et al., (1995) Anal. Biochem. 229:35-41; Takahashi et al., (2003) Anal. Biochem. 322:257-263参照)。
【0386】
修飾可溶性ヒアルロニダーゼ(例えばペグ化rHuPH20)のようなヒアルロナン分解酵素が展着剤または拡散剤として作用する能力も評価できる。例えば、トリパンブルー色素を、ヌードマウスの側方皮膚の各側にヒアルロナン分解酵素と共にまたは伴わずに皮下または皮内にように注射し得る。次いで、染色面積を、マイクロキャリパーを用いてのように測定し、ヒアルロナン分解酵素が展着剤として作用する能力を決定する(例えば米国公開特許番号20060104968参照)。ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素と化学療法剤のような他の薬剤の共投与における、この薬剤の薬物動態および薬力学的特性に対する効果も、上記のとおりおよび下記実施例1で証明される、臨床試験の設定におけるような、動物モデルおよび/またはヒト対象を使用するインビボでも評価できる。ヒアルロニダーゼではないヒアルロナン分解酵素の機能的活性を、これらのアッセイのいずれかを使用してヒアルロニダーゼと比較できる。これは、ヒアルロナン分解酵素の機能的等価量が何であるかの決定のために実施できる。例えば、ヒアルロナン分解酵素が展着剤または拡散剤として作用する能力を、トリパンブルーと共にマウスの側方皮膚にそれを注射し(例えば皮下または皮内)、例えば、100単位のヒアルロニダーゼ対照標準と同じ量の拡散を達成するのに必要な量を決定できる。それゆえに、必要なヒアルロナン分解酵素の量が、100ヒアルロニダーゼ単位と機能的等価である。修飾ヒアルロニダーゼのような修飾ヒアルロナン分解酵素での処置前後の腫瘍におけるような透水係数(K)も、修飾ヒアルロナン分解酵素製剤の活性を評価するために測定できる。
【0387】
ペグ化ヒアルロニダーゼを含む修飾ヒアルロニダーゼのような修飾ヒアルロナン分解酵素が、上記ヒアルロナン関連疾患および障害と関連するマーカーのいずれか1種以上またはあらゆる他の関連マーカーまたは表現型に影響する能力を、上記アッセイの任意の1個以上を使用して評価できる。例えば、修飾ヒアルロニダーゼのような修飾ヒアルロナン分解酵素がヒアルロナンレベルまたは含有量、ハローの形成またはサイズ、間質性流圧、含水率および/または血管体積を減少させる能力を、上記インビトロ、エクスビボおよび/またはインビボのアッセイのいずれか1個以上を使用して評価できる。一例において、修飾ヒアルロニダーゼを、腫瘍を有する対象または適当な動物モデルに投与し、ヒアルロナンレベル、ハローの形成またはサイズ、間質性流圧、含水率および/または血管体積に対する効果を、修飾ヒアルロニダーゼを投与していない対象または動物モデルと比較できる。いくつかの例において、修飾ヒアルロニダーゼを化学療法剤のような他の薬剤と投与できる。
【0388】
ここに記載するまたは当分野で知られるいずれか、例えば、ヒアルロナン分解を測定するインビトロアッセイ(例えば、Frost and Stern (1997) Anal. Biochem. 251:263-269参照)、HA結合タンパク質または他の抗HA試薬を使用するようなHAについての組織または他のサンプル染色(例えば、Nishida et al. (1999) J. Biol. Chem., 274:21893-21899参照)、粒子排除アッセイ(Nishida et al. 1999; Morohashi et al. (2006) Biochem Biophys. Res. Comm., 345:1454-1459)、has遺伝子についてのHAS mRNA発現の測定または評価(Nishida et al. 1999)を含むが、これらに限定されないHA合成または分解に対する効果を含むヒアルロニダーゼ活性を評価するための他の種々のアッセイは当業者に知られる。
【0389】
b. タキサン活性
標準生理学的、薬理学的および生化学的方法が、チューブリン結合を阻害する所望の生物活性を有するものの同定のために化合物を試験するために利用可能である。インビトロおよびインビボアッセイを細胞毒性およびチューブリン重合のような生物活性の評価に使用できる(例えば、Hidaka et al. (2012) Biosci. Biotechnol. Biochem., 76:349-352参照)。
【0390】
例えば、ここに提供するタキサン化合物を、微小管安定化アッセイで試験できる(Barron et al., (2003) Anal. Biochem., 315:49-56)。チューブリン集合またはその阻害を、吸光度または蛍光形式のチューブリン重合アッセイでモニターできる。例えば、微小管ポリマーの濃度が、微小管により散乱される光の程度に比例しているために、光学密度に基づくチューブリン重合アッセイを使用できる。このようなアッセイの例は、チューブリン重合HTSアッセイ(Catalog No. BK004PまたはBK006P; Cytoskeleton, Denver, CO)である。蛍光ベースのアッセイも使用でき、それにより、重合を、微小管への蛍光レポーターの取り込みによる蛍光増強により追跡する(Catalog No. BK011P, Cytoskeleton, Denver)。このようなアッセイにおいて、チューブリンをパクリタキセル、ビンブラスチンまたはドセタキセルのようなタキサン化合物とインキュベートでき、重合を経時的に測定できる。例えば蛍光アッセイにおいて、重合を、360nmでの励起および420nmでの発光での蛍光の変化のモニタリングにより測定できる。チューブリン集合はまた350nmでの見かけの吸収により近似される光散乱によってもモニターできる。本アッセイにおいて、ウシ血清アルブミン(BSA)を一般に用いて凝集を阻止する。また、チューブリン重合エンハンサーであるグリセロールをシグナル対ノイズ比を増加させるために除外する。対照として、チューブリンを安定化し、脱重合を起こさない微小管不安定化剤であるビンブラスチンを使用できる。
【0391】
c. 抗癌活性
ヒアルロナン分解酵素、腫瘍タキサン標的および/または他の化学療法剤(例えばヌクレオシドアナログ)およびその製剤を含むここに記載する化合物および薬剤の抗癌活性を、インビトロで、例えば、癌細胞培養と本誘導体をインキュベートし、次いで培養における細胞増殖阻害を評価することにより試験できる。このような試験のための適切な細胞は、マウスP388白血病、B16黒色腫およびルイス肺癌細胞、ならびにヒト乳房MCF7、卵巣OVCAR−3、A549肺癌細胞、MX−1(ヒト乳腫瘍細胞)、HT29(結腸癌細胞株)、HepG2(肝癌細胞株)およびHCT116(結腸癌細胞株)を含む。
【0392】
2. インビボ動物モデル
動物モデルを、ヒアルロナンレベルまたは含有量、間質性流圧、含水率、血管体積および腫瘍サイズ、体積または増殖に対するここに提供する組成物または組み合わせの効果の評価のために使用できる。さらに、動物モデルを、組成物または組み合わせの薬物動態または耐容性の評価に使用できる。
【0393】
動物モデルは、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、モルモットおよびカニクイザルまたはアカゲザルのような非ヒト霊長類モデルを含み得るが、これらに限定されない。動物モデルは、遺伝モデルならびに異種移植モデルを含む。例えば、異種移植モデルは、薬剤試験前に、腫瘍を適切な試験動物、例えば、ヌードマウスで確立できるものを含む。いくつかの例において、ヌードマウスまたはSCIDマウスのような免疫欠損マウスに、ヒアルロナン関連癌由来のような腫瘍細胞株を移植し、その癌の動物モデルを確立する。ヒアルロナン関連癌由来のものを含む細胞株の例は、PC3前立腺癌細胞、BxPC−3膵臓腺癌細胞、MDA−MB−231乳癌細胞、MCF−7乳腫瘍細胞、BT474乳腫瘍細胞、Tramp C2前立腺腫瘍細胞およびMat−LyLu前立腺癌細胞およびヒアルロナン関連である、例えば、高レベルのヒアルロナンを含むここに記載する他の細胞株を含むが、これらに限定されない。膵癌の動物腫瘍モデルの例は、BxPC−3膵臓腺癌細胞を使用する動物における腫瘍の産生を含む(例えばVon Hoff et al. (2011) J. Clin. Oncol., 29:4548-54参照)。
【0394】
動物が腫瘍産生または形成に至る1個以上の遺伝子を欠損させている、遺伝モデルも使用できる。このような遺伝子操作されたマウスモデル(GEMM)は、疾患の分子および臨床的特性を復元できる。例えば、膵癌遺伝モデルの例は、欠損表現型を示す変異体マウスをもたらす、内在性変異体KrasおよびTrp53アレルの膵臓特異的発現を含む(KPCマウスと命名;LSL−KrasG12D、LSL−Trp53R172H、Pdx−1−Cre)。KPCマウスは、ヌクレオシドアナログゲムシタビンに対する耐性を含む、ヒト疾患と類似した特性を示す一次膵腫瘍を発症する(例えばFrese et al. (2012) Cancer Discovery, 2:260-269参照)。
【0395】
ここに提供する組成物または組み合わせを、疾患に対する効果を評価するためにマウスに投与できる。例えば、ヒアルロナンレベルを評価または測定できる。他の例において、腫瘍増殖または腫瘍細胞阻害に対する効果を評価できる。例えば、動物における腫瘍増殖の50%阻害の達成に必要な薬剤の量であるED50値を決定できる。生存率も決定できる。
【0396】
3. 薬物動態および耐容性
薬物動態および耐容性試験を動物モデルを使用して実施できまたは患者での臨床試験中に実施でき、ここに提供する組み合わせ剤および組成物の効果を評価する。動物モデルは、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、モルモットおよびカニクイザルまたはアカゲザルのような非ヒト霊長類モデルを含むが、これらに限定されない。ある例において、薬物動態および耐容性試験は健常動物を使用して実施する。他の例において、試験を、癌の動物モデルのような、ここでの組み合わせ剤または組成物による治療が意図される疾患の動物モデルを使用して実施する。
【0397】
ここに提供する組み合わせ剤または組成物の薬物動態特性は、投与後の最大(ピーク)化学療法剤濃度(Cmax)、ピーク時間(すなわちいつ最大化学療法剤濃度が起こるか;Tmax)、最小化学療法剤濃度(すなわち化学療法剤投与間の最小濃度;Cmin)、排出半減期(T1/2)および曲線下面積(すなわち時間対濃度のプロットにより作成した曲線下面積;AUC)のようなパラメータの測定により評価できる。化学療法剤を皮下投与する場合、本薬剤の絶対バイオアベイラビリティを、皮下送達後の化学療法剤の曲線下面積(AUCsc)と静脈内送達後の化学療法剤のAUC(AUCiv)の比較により決定する。絶対バイオアベイラビリティ(F)を、式:F=([AUC]sc×投与量sc)/([AUC]iv×投与量iv)を使用して計算できる。皮下投与後の血漿中の化学療法剤の濃度は、血液サンプル中の化学療法剤の濃度の評価に適切な、当分野で知られる方法のいずれかを使用して測定できる。
【0398】
一定範囲の投与量および異なる投与頻度の投与を、併用剤(例えばヌクレオシドアナログ)の濃度の増加または減少の効果を評価するために、薬物動態試験において投与できる。バイオアベイラビリティのような皮下投与した化学療法剤の薬物動態特性も、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素および/または腫瘍標的タキサンの共投与有りまたは無しで評価できる。例えば、ビーグルのようなイヌに、化学療法剤(例えばゲムシタビンのようなヌクレオシドアナログ)を、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素および/または腫瘍標的タキサンと組み合わせてまたは単独で、1種以上の投与経路を使用して投与できる。このような試験を、ヒアルロニダーゼのような抗ヒアルロナン剤の共投与の、化学療法剤のバイオアベイラビリティのような薬物動態特性に対する効果を評価するために実施できる。
【0399】
安全性および耐容性を評価するための試験も当分野で知られ、ここで使用できる。ここでの組み合わせ剤および組成物の投与後、あらゆる有害反応の発症をモニターできる。有害反応は、浮腫または腫脹のような注射部位反応、頭痛、発熱、疲労、悪寒、紅潮、めまい、蕁麻疹、喘鳴または胸部絞扼感、悪心、嘔吐、硬直、背痛、胸痛、筋痙攣、発作または痙攣、血圧変動およびアナフィラキシーまたは重症過敏性応答を含み得るが、これらに限定されない。典型的に、一定範囲の投与量および異なる投与頻度を、投与におけるポリマー結合ヒアルロナン分解酵素および/または腫瘍標的タキサンのような化学療法剤および/または抗ヒアルロナン剤の濃度の増加または減少の効果を評価するために、安全性および耐容性試験で投与する。
【0400】
G. 組み合わせ治療の方法および使用
ここに提供する組み合わせ剤および組成物を癌、特に固形癌の処置のための治療方法において使用できる。本方法において、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤(例えばPH20、例えばPEGPH20のようなヒアルロニダーゼ)およびタキサン製剤(例えばアルブミン結合タキサン製剤)の組み合わせ治療を、固形腫瘍を有する対象に投与する。いくつかの例において、さらにヌクレオシドアナログ剤、特に固形腫瘍の処置剤であるおよび/または脱アミノ化による阻害に感受性であるヌクレオシドアナログ剤(例えばゲムシタビンまたはその誘導体)も投与する。ここで見られるとおり、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素およびタキサン製剤の組み合わせレジメンにおける、腫瘍内量のヌクレオシドアナログおよびゆえにその細胞毒性効果は、ヌクレオシドアナログをいずれか一方のみの薬剤(すなわちポリマー結合ヒアルロナン分解酵素またはタキサン製剤)と投与したときの効果を遥かに超える。例えば、効果は相乗的であり得る。ここに提供する組み合わせ治療で見られるヌクレオシドアナログ腫瘍内活性の程度およびレベルは、現存する処置レジメを超える増加した効果および生存を含む、以前に現存する治療で達成されていない結果を達成する。
【0401】
1. 癌
抗ヒアルロナン剤、例えばポリマー結合ヒアルロナン分解酵素、タキサン製剤および/またはヌクレオシドアナログの組み合わせ治療は、癌細胞、新生物、腫瘍および転移の処置に使用できる。ここに提供する組み合わせ治療は、抗腫瘍効果を示し、腫瘍増殖の減速または減少、腫瘍体積減少およびある例においては腫瘍の消失または根絶をもたらす。本組み合わせ治療は、単剤または二剤組み合わせ治療として同じ薬剤で処置された対象と比較して、対象の生存を増加させる。処置が困難な膵癌のような癌に対して、本組み合わせ治療は、現存する方法と比較して顕著な利益を提供する。
【0402】
例えば、本組み合わせ治療は、肺および気管支、乳房、結腸および直腸、腎臓、胃、食道、肝臓および肝内胆管、膀胱、脳および他の神経系、頭頸部、口腔および咽頭、頸、子宮体部、甲状腺、卵巣、精巣、前立腺、悪性黒色腫、胆管癌、胸腺腫、非黒色腫皮膚癌のもののような固形腫瘍ならびに小児白血病およびリンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキン病、リンパおよび皮膚起源のリンパ腫、急性リンパ芽球性、急性骨髄球性または慢性骨髄球性白血病のような急性および慢性白血病、血漿細胞新生物、リンパ系新生物およびAIDSと関連する癌のような血液学的腫瘍および/または悪性腫瘍の処置に使用できる。典型的に、本組み合わせ治療は、固形腫瘍、例えば、固形間質癌の処置に使用する。腫瘍の例は、例えば、膵腫瘍、卵巣腫瘍、肺腫瘍、結腸腫瘍、前立腺腫瘍、子宮頸腫瘍および乳腫瘍を含む。
【0403】
特に、癌は、ヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤によるターゲティングに適するヒアルロナン富癌であり得る。数種のヒアルロナン富癌が同定されている。ヒアルロナン富腫瘍は、前立腺、乳房、結腸、卵巣、胃、頭頸部および他の腫瘍および癌を含むが、これらに限定されない。ある場合、ヒアルロナンレベルは予後不良、例えば、生存率および/または無再発生存率、転移、血管形成、他の組織/領域への癌細胞侵襲および他の予後不良の指標の減少と相関する。このような相関は、例えば、卵巣癌、SCC、ISC、前立腺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)を含む肺癌、乳癌、結腸癌および膵癌を含むヒアルロナン富腫瘍で観察されている(例えば、Anttila et al., (2000) Cancer Research, 60:150-155; Karvinen et al., (2003) British Journal of Dermatology, 148:86-94; Lipponen et al., (2001) Eur. Journal of Cancer, 849-856; Pirinen et al., (2001)Int. J. Cancer: 95: 12-17; Auvinen et al., (2000) American Journal of Pathology, 156(2):529-536; Ropponen et al., (1998) Cancer Research, 58: 342-347参照)。それゆえに、ヒアルロナン富癌は、癌の1種以上の症状を処置するための、ヒアルロニダーゼのような抗ヒアルロナン剤の投与により処置できる。
【0404】
ヒアルロナン富癌の処置の例において、ヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤は、それ自体治療剤として作用できおよび/または他の共投与したまたは組み合わせた治療剤の活性を増強できる。例えば、ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素は、腫瘍に注射したとき直接抗腫瘍形成効果を有する。ヒアルロニダーゼは、マウスに移植した腫瘍の増殖を阻止し(De Maeyer et al., (1992) Int. J. Cancer 51:657-660)、発癌物質に暴露したときの腫瘍形成を阻害する(Pawlowski et al. (1979) Int. J. Cancer 23:105-109)。ヒアルロニダーゼは、脳の癌(神経膠腫)の処置において唯一の治療剤として有用である(国際特許公開番号WO198802261参照)。
【0405】
ヒアルロニダーゼを含むヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤はまた、腫瘍への化学療法剤の送達を増加させるためにも使用できる。ヒアルロナン分解酵素を、1種以上の他の化学療法剤または他の抗癌剤または処置(例えばタキサン製剤での処置および/またはヌクレオシドアナログでの処置)と組み合わせて、例えば同時にまたは前に投与できる。ある場合、本酵素は、慣用的化学療法に耐性である腫瘍の感受性を高め得る。例えば、rHuPH20のようなヒアルロニダーゼを含むヒアルロナン分解酵素を、腫瘍部位周囲の拡散を高める(例えば、腫瘍部位中または周囲の化学療法剤の循環および/または濃度を促進するため)、ヒアルロン酸分解によるような腫瘍細胞運動性を阻害するおよび/または腫瘍細胞アポトーシス閾値の低下に有効な量で患者に投与できる。これは、腫瘍細胞をアノイキス状態にし、これにより腫瘍細胞が化学療法剤の作用により感受性となる。ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素の投与は、先に化学療法耐性であった膵臓、胃、結腸、卵巣および乳房の腫瘍の反応性を誘発できる(Baumgartner et al. (1988) Reg. Cancer Treat. 1:55-58; Zanker et al. (1986) Proc. Amer. Assoc. Cancer Res. 27:390)。ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素は、典型的に化学療法剤または他の抗癌剤の固形腫瘍への浸透を増強し、それにより本疾患を処置する。
【0406】
処置のための対象の選択
本方法は、ヒアルロナン関連腫瘍または癌を有する、処置のための対象を選択する段階を含む。このような方法は、対象がヒアルロナン関連疾患を有する、対象がヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤での処置に応答する可能性があるおよび/または組織、細胞または体液のような対象からのサンプルが高ヒアルロナン発現を含む何らかの指標を含む、ヒアルロナン関連疾患マーカーの検出方法を含む。マーカーを検出するためのアッセイの例は下に記載し、対象からのサンプルにおけるHAレベルおよび/または関連HAレベルを測定するアッセイ、対象からのサンプルに対するヒアルロナン分解酵素の効果を分析するアッセイおよび低ヒアルロニダーゼ発現または活性、高間質性流圧、血管体積および含水率のようなあるヒアルロナン関連疾患/状態と典型的に関連する読み取りを測定するためのアッセイを含む。一般に、対象からのサンプルにおけるタンパク質または核酸を検出するまたはインビトロで細胞/組織に対する処置効果を評価するための任意の既知アッセイを使用できる。
【0407】
ここに提供する方法において処置するために選択した対象は、疾患または状態を有しない対象と比較してまたはHAの高い、異常または蓄積発現を有しない正常組織またはサンプルと比較して、ヒアルロナンの高い、異常または蓄積レベルを有する対象を含む。対照からの任意のサンプルまたは組織を試験し、正常サンプルまたは組織と比較し得る。ヒアルロナンレベルは、組織(例えば生検による)、腫瘍、細胞または血液、血清、尿または他の体液からのような任意の源由来のものから測定できる。例えば、本明細書のどこかに記載するとおり、固形腫瘍におけるHA沈着のプロファイルは、一般に細胞周囲または間質として分類されている。高血漿レベルのHAが、ウィルムス腫瘍、中皮腫および肝転移の患者で最も顕著に観察されている。それゆえに、疾患または状態によって、種々のサンプルをヒアルロナンレベルについて測定できる。サンプルの選択は当業者のレベルの範囲内である。
【0408】
ヒアルロニダーゼ基質レベルの測定に使用するアッセイは疾患または状態の関数であり、特定の疾患または状態により選択できる。当業者は、免疫組織化学方法またはELISA方法を含むが、これらに限定されない、ヒアルロナンを検出する方法を熟知する。
【0409】
一例において、マーカーを検出する段階を、例えば、該対象がヒアルロナン分解酵素での処置に感受性であるヒアルロナン関連状態または疾を有するか否かを決定するための、対象の処置前に実施する。この例において、マーカーが検出されたら(例えば患者からの細胞、組織または体液のヒアルロナン発現が高いまたはヒアルロナン分解酵素に応答性であると決定されたら)、処置段階を行い、ここで、ヒアルロナン分解酵素を対象に投与する。一例において、マーカーが検出されなければ(例えば患者からの細胞、組織または体液のヒアルロナン発現が正常または高くないまたはヒアルロナン分解酵素に応答性ではないと決定されたら)、他の処置選択肢を選択し得る。
【0410】
他の例において、マーカーを検出する段階を、対象の処置後または対象の処置の経過中(例えばヒアルロナン分解酵素(例えば可溶性修飾ヒアルロニダーゼ)のような抗ヒアルロナン剤での処置(併用剤有りまたは無し))に実施し、例えば、抗ヒアルロナン剤での処置が疾患または状態の処置に効果を有するか否かを決定する。このような例の一つにおいて、マーカーを検出しないまたは処置前の量/レベルと比較して減少した量または相対レベルで検出し、処置を継続する他のラウンドの処置を行うまたは組み合わせ治療のような他の処置を開始する。他のこのような例において、マーカーが処置前または他のサンプルと同じレベルで検出されるならば、他の処置選択肢を選択し得る。
【0411】
ヒアルロナン関連疾患および状態のマーカーを検出するためのアッセイは、対象の組織、細胞および/または体液、例えば、腫瘍におけるヒアルロナンおよび/またはヒアルロニダーゼ発現の量(例えば相対量)を測定するためのアッセイを含む。このようなアッセイに含まれるのは、例えば、対象からのサンプルにおける、HA発現、ヒアルロナンシンターゼ1(HAS1)発現、ヒアルロナンシンターゼ2(HAS2)発現、ヒアルロナンシンターゼ3(HAS3)発現、ハロー(ヒアルロナンを含むプロテオグリカンに富む細胞周囲マトリクス領域)の存在およびヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素の存在を検出できるものである。
【0412】
タンパク質および核酸レベルを検出するためのアッセイは当分野で周知であり、ヒアルロナン、ヒアルロナンシンターゼまたは他のタンパク質および/または核酸発現を測定するためにここでの方法に使用できる。このようなアッセイは、ELISA、SDS−PAGE、ウェスタンブロット、PCR、RT−PCR、免疫組織化学、組織学およびフローサイトメトリーを含むが、これらに限定されない。例えば、組織サンプル(例えば患者または動物モデルからの腫瘍の生検材料、間質サンプル)、体液(例えば血液、尿、血漿、唾液または他のサンプル)、細胞または細胞サンプルまたは抽出物または他のサンプルのような対象からのサンプルを抗HA抗体またはHA結合タンパク質で、例えば、固定または凍結組織切片の免疫組織化学(IHC)のような組織学的染色を使用して染色し、組織またはサンプル中のヒアルロナンの存在または程度を決定できまたは免疫蛍光細胞染色、プルダウンアッセイおよびフローサイトメトリーである。他の例において、サンプル、例えば生検材料HA mRNAの量を評価するためにRT−PCRによりアッセイできる。
【0413】
癌におけるヒアルロナン発現を検出するための既知方法は、膀胱癌を有する対象の尿または膀胱組織抽出物におけるHAレベルを測定するためのLokeshwar et al., (1997) Cancer Res. 57: 773-777により記載されたELISA様アッセイを含むが、これに限定されない。本アッセイのために、尿または抽出物でマイクロウェルプレートをコーティングし(標準として使用する臍帯HAもコーティングする)、続いてここに記載するもののような標識(例えばビオチニル化)HA結合タンパク質とインキュベートし(例えば16時間、室温)、洗浄し、ウェルに結合したHA結合タンパク質をアビジン−ビオチン検出剤基質を使用して定量する。このような方法は当分野で周知である。一例において、HA関連膀胱癌を有する対象からの尿は、正常患者(健常対象または他の胃泌尿器疾患または状態を有する対象)からの/抽出物と比較して、HAレベルが2〜9倍増加しており、それゆえに、本マーカーを、尿中のHAレベルが正常対象と比較して増加しているか否か、例えば、正常対象と比較して正確にまたは約2倍および正確にまたは約9倍、例えば正確にまたは約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍または9倍増加しているならば、検出する。
【0414】
さらなる例において、インビトロでの腫瘍細胞におけるヒアルロナン発現および産生を、上記方法のいずれか一つを使用して評価できる。同様に、インビトロ、エクスビボまたはインビボでの細胞によるヒアルロナンシンターゼ産生(例えばHAS1、HAS2またはHAS3)および/または発現も、例えば、ELISA、SDS−PAGE、ウェスタンブロット、PCR、RT−PCR、免疫組織化学、組織学またはフローサイトメトリーによりアッセイできる。
【0415】
他の例において、対象からのサンプルにおけるヒアルロニダーゼ活性の量を決定し、例えば濁度アッセイでのような血液または血漿におけるようなものである。
【0416】
他の例において、患者からの細胞または他の組織、例えば腫瘍細胞を単離し、例えば、処置に応答した腫瘍細胞のような細胞または組織の増殖、成長および/または生存を測定するためのクローン原性アッセイまたは任意の他のアッセイを使用する、細胞または組織がインビトロでのヒアルロナン分解酵素での処置に応答するか否かを決定するための試験に使用する。例えば、対象からの癌細胞を、細胞外マトリクスのような表面または商品名Matrigel(登録商標)(BD Biosciences)で販売されている混合物のようなタンパク質混合物に播種する。この例において、ヒアルロナン関連マーカーは、ヒアルロナン分解酵素の投与に対する細胞または組織の感度である。この例において、細胞の増殖、成長または生存のような何らかの特性がヒアルロナン分解酵素の添加により阻害または遮断されたならば、対象は、ヒアルロナン分解酵素含有組成物での処置に感受性であり得ると決定される。
【0417】
ヒアルロナン発現レベルを決定するためのアッセイに加えて、他のアッセイを、処置に対して対象を選択するためにおよび/または処置効果および/または持続時間を評価するために使用できる。間質性流体圧(IFP)を、適当なプローブまたは装置を使用して測定できる。例えば、トランスデューサーを先端に装着したカテーテルを、癌組織または目的の他の組織におけるIFPの測定に使用できる。カテーテルを、縫合針の内空洞を通し、次いで、腫瘍の中心に挿入する。カテーテルをその位置に維持しながら、針を抜く。次いで、IFP(mmHg)を適当なデータ獲得ユニットを使用して測定できる(Ozerdem et al. (2005) Microvasc. Res. 70:116-120)。IFPを測定するための他の方法は、ウィック・イン・ニードル方法を含む(Fadnes et al. (1977) Microvasc. Res. 14:27-36)。
【0418】
血管体積を、例えば、超音波画像診断を使用して測定できる。この方法は、検出される強い超音波反射を提供するために超反響性微小気泡を使用する。微小気泡は、静脈内のような、対象または動物モデルに注射されたとき、そのサイズのために血管間隔を通って移動する。腫瘍組織含水率のような組織含水率を評価するためのアッセイも当分野で知られる。例えば、腫瘍からのサンプルを採取し、ブロットし、秤量し、急速凍結し、その後凍結乾燥し得る。次いで、水重量を、組織湿重量対乾燥(すなわち凍結乾燥)重量比として報告する。
【0419】
インビトロで腫瘍細胞が細胞周囲マトリクス(ハロー)を形成する能力を、粒子排除アッセイを使用して評価できる。小粒子(ホルマリン固定赤血球細胞)を、例えば、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンの大きな凝集であるアグリカンの存在下、腫瘍細胞の低密度培養に添加する。粒子沈降後、培養物を倍率400倍で観察して、何らかのハローが腫瘍細胞により形成されたか否かを決定できる。これは、粒子が排除された細胞周囲の領域として可視化され得る。
【0420】
検出方法のいずれかについて、マーカー(例えばHA発現、ヒアルロナン分解酵素、HA−シンターゼ発現またはヒアルロニダーゼ活性に対する反応性)を、典型的にマーカーの検出が、対照サンプルと比較して読み取りが上昇または減少しているかの決定をするように、典型的に対照サンプルを含む。
【0421】
例えば、対照サンプルは、試験するサンプルに類似するが正常である(すなわち疾患または状態を有しないまたは試験対象が有するタイプの疾患または状態を有さない)対象のような異なる対象から単離した、例えば、ヒアルロナン関連疾患または状態を有しない対象または類似の疾患または状態を有するが、その疾患がそれほど重度ではないおよび/またはヒアルロナンに関連しないまたは相対的に低いヒアルロナンを発現し、ゆえに、ヒアルロナンとの関連度が低いものである他の対象由来の類似組織である正常組織、細胞または体液、例えば、組織、細胞または体液のような他の組織、細胞または体液であり得る。例えば、試験する細胞、組織または体液が、癌を有する対象であるとき、初期段階のような重症度が低い癌、区別されるまたは他のタイプの癌を有する対象からの組織、細胞または体液と比較できる。他の例において、対照サンプルは、低レベルのHAを発現するここに記載する腫瘍細胞株例、例えば、HCT 116細胞株、HT29細胞株、NCI H460細胞株、DU145細胞株、Capan−1細胞株およびこのような細胞株を使用して産生した腫瘍モデル由来の腫瘍のような、相対的に低レベルのHAを発現することが知られているサンプル、例えば腫瘍細胞株のような既知量または相対量のHAを有する体液、組織、抽出物(例えば細胞または核抽出物)、核酸またはペプチド調製物、細胞株、生検材料、標準または他のサンプルである。
【0422】
特定の変化、例えばHAの増加または減少は、使用するアッセイによることは理解される。例えば、ELISAにおいて、特定の波長での吸光度またはタンパク質の量の増加または減少倍率(例えば標準曲線を使用して測定)は、対照に対して表し得る。RT−PCRのようなPCRアッセイは、標準の使用のような、当業者に知られる方法を使用して対照発現レベル(例えば変化倍率として表す)と比較できる。
【0423】
例えば、対象からのサンプルにおけるヒアルロナンの量を試験するとき、マーカーの検出は、対象からのサンプル(例えば癌細胞、組織または体液)中のHAの量が先の段落に記載したような対照サンプルと比較して上昇していることを決定できる。一例において、組織、細胞または体液中のHAの量が、低レベルのHAを発現するここに記載する腫瘍細胞株例、例えば、HCT 116細胞株、HT29細胞株、NCI H460細胞株、DU145細胞株、Capan−1細胞株およびこのような細胞株を使用して産生した腫瘍モデル由来の腫瘍のような、相対的に低レベルのHAを発現することが知られるサンプル、例えば腫瘍細胞株のような既知量または相対量のHAを有する、例えば、体液、組織、抽出物(例えば細胞または核抽出物)、核酸またはペプチド調製物、細胞株、生検材料、標準または他のサンプルであり得るが、これらに限定されない対照サンプルと比較して、正確にまたは約0.5倍、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、20倍またはそれ以上増加しているならば、癌をヒアルロナン富癌と決定する。
【0424】
さらに、このような方法において、細胞関連ヒアルロナンレベルを低、中または高をスコア化できる。例えば、HA発現は、腫瘍領域の30%、35%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%またはそれ以上が永続性HAシグナルを示すならば、高または中と見なされる。典型的に、少なくとも中〜高HAの対象の処置がここで意図される。
【0425】
2. 用法・用量
ここに提供するヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤および腫瘍標的タキサンを含む組み合わせ治療および所望によりヌクレオシドアナログとのさらに組み合わせを、治療的に有用な効果を発揮する十分な量で投与する。典型的に、活性剤を、処置する患者の望ましくない副作用をもたらさないまたは上記薬剤の単剤処置に必要な投与量および量と比較して、観察される副作用を最小化するまたは減少する量で投与する。例えば、本明細書のどこかに記載するとおり、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素と腫瘍標的タキサンの組み合わせ治療は、共投与ヌクレオシドアナログ、例えばゲムシタビンの腫瘍内送達増加および腫瘍内半減期延長をもたらすことが判明した。それゆえに、ここに提供する組み合わせ治療で投与できるヌクレオシドアナログ(例えばゲムシタビン)の量は、実質的に同じまたは改善した治療効果を達成しながら、先行技術方法(例えばゲムシタビン単剤または1種の他の薬剤と関連した二剤治療)を使用して投与されるヌクレオシドアナログの量と比較して減少する。投与される投与量の減少により、免疫抑制または骨髄抑制のようなヌクレオシドアナログ(例えばゲムシタビン)投与と関連する副作用は減少し、最小化されまたは回避される。
【0426】
対象に投与する抗ヒアルロナン剤、例えば、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素、腫瘍標的タキサンおよび所望によりヌクレオシドアナログを含む活性剤の正確な量を決定するのは当業者のレベルの範囲内である。例えば、このような薬剤および癌および固形腫瘍のような疾患および状態の処置のための使用は当分野で周知である。それゆえに、組成物または組み合わせ治療におけるこのような薬剤の投与量を、ある投与経路下のその薬剤の標準投与レジメに基づき選択できる。
【0427】
正確な投与量および処置の持続時間は、処置する組織または腫瘍の関数であり、既知試験プロトコルまたはインビボまたはインビトロ試験データの外挿を使用して経験的に決定できおよび/または特定の薬剤の既知投与レジメから決定できる。濃度および投与量値は、処置する個体の年齢、個体の体重、投与経路および/または疾患の程度または重症度および医療従事者が考慮するレベル内である他の因子により変わり得ることは注意する。一般に、投与レジメンは毒性を制限するために選択する。担当医は、毒性または骨髄、肝臓または腎臓または他の組織機能不全により、どのようにおよびいつ治療を終了するか、中断するかまたは低投与量に調節するかを知っていることは注意する。逆に、担当医はまた臨床的応答が不適であるならば(毒性副作用を防止しながら)、どのようにおよびいつ処置を高いレベルに調節するかも知っている。さらにある特定の対象について、特異的投与レジメンを、個々の要求および製剤を投与するまたは投与を監督する者の専門的判断に従い、経時的に調節すべきであり、ここに示す濃度範囲は単なる例であり、その範囲を限定することを意図しないことも理解される。
【0428】
例えば、ポリマー結合ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素例えばPH20(例えばPEGPH20)を、腫瘍関連ヒアルロナンを分解または開裂するための治療有効量で投与する。疾患または状態、例えばHA富腫瘍のような癌または固形腫瘍の処置のために投与する可溶性ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素の量は、標準的臨床技術により決定できる。さらに、インビトロアッセイおよび動物モデルを、最適投与量範囲の同定を容易にするために用い得る。経験的に決定できる正確な投与量は、特定の酵素、投与経路、処置する疾患のタイプおよび疾患の重症度による。投与量範囲の例は正確にまたは約50単位〜50,000,000単位のポリマーと結合したヒアルロナン分解酵素または機能的等価量の他のポリマーと結合したヒアルロナン分解酵素である。活性の単位は、標準活性、例えば、ヒアルロニダーゼ活性をアッセイする微小濁度アッセイで測定した活性に対して規準化されていることは理解される。
【0429】
それゆえに、例えば、ポリマー、例えば、PEGとコンジュゲートした、ヒアルロニダーゼ、例えばPH20のようなヒアルロナン分解酵素を10〜50,000,000単位、10〜40,000,000単位、10〜36,000,000単位、10〜12,000,000単位、10〜1,200,000単位、10〜1,000,000単位、10〜500,000単位、100〜100,000単位、500〜50,000単位、1000〜10,000単位、5000〜7500単位、5000単位〜50,000単位または1,000〜10,000単位(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)で投与できる。一般に、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素を、対象に0.01μg/kg〜25mg/kg、例えば0.0005mg/kg(0.5μg/kg)〜25mg/kg、0.5μg/kg〜10mg/kg、0.02mg/kg〜1.5mg/kg、0.01μg/kg〜15μg/kg、0.05μg/kg〜10μg/kg、0.75μg/kg〜7.5μg/kgまたは1.0μg/kg〜3.0μg/kg(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)の量で投与する。ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素を、例えば、少なく0.0005mg/kg(対象の)、0.0006mg/kg、0.0007mg/kg、0.0008mg/kg、0.0009mg/kg、0.001mg/kg、0.0016mg/kg、0.002mg/kg、0.003mg/kg、0.004mg/kg、0.005mg/kg、0.006mg/kg、0.007mg/kg、0.008mg/kg、0.009mg/kg、0.01mg/kg、0.016mg/kg、0.02mg/kg、0.03mg/kg、0.04mg/kg、0.05mg/kg、0.06mg/kg、0.07mg/kg、0.08mg/kg、0.09mg/kg、0.1mg/kg、0.15mg/kg、0.2mg/kg、0.25mg/kg、0.30mg/kg、0.35mg/kg、0.40mg/kg、0.45mg/kg、0.5mg/kg、0.55mg.kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1.0mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2mg/kg、2.5mg/kg、3mg/kg、3.5mg/kg、4mg/kg、4.5mg/kg、5mg/kg、5.5mg/kg、6mg/kg、6.5mg/kg、7mg/kg、7.5mg/kg、8mg/kg、8.5mg/kg、9mg/kg、9.5mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kg、21mg/kg、22mg/kg、23mg/kg、24mg/kg、25mg/kg(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)またはそれ以上の量で、典型的に約70kg〜75kgの平均成人対象に投与できる。
【0430】
ここに提供するペグ化ヒアルロニダーゼ(例えばPEGPH20)のようなポリマー結合ヒアルロナン分解酵素を、投与する対象の質量で1単位/kg〜800,000単位/kg、例えば10〜800,000単位/kg、10〜750,000単位/kg、10〜700,000単位/kg、10〜650,000単位/kg、10〜600,000単位/kg、10〜550,000単位/kg、10〜500,000単位/kg、10〜450,000単位/kg、10〜400,000単位/kg、10〜350,000単位/kg、10〜320,000単位/kg、10〜300,000単位/kg、10〜280,000単位/kg、10〜260,000単位/kg、10〜240,000単位/kg、10〜220,000単位/kg、10〜200,000単位/kg、10〜180,000単位/kg、10〜160,000単位/kg、10〜140,000単位/kg、10〜120,000単位/kg、10〜100,000単位/kg、10〜80,000単位/kg、10〜70,000単位/kg、10〜60,000単位/kg、10〜50,000単位/kg、10〜40,000単位/kg、10〜30,000単位/kg、10〜20,000単位/kg、10〜15,000単位/kg、10〜12,800単位/kg、10〜10,000単位/kg、10〜9,000単位/kg、10〜8,000単位/kg、10〜7,000単位/kg、10〜6,000単位/kg、10〜5,000単位/kg、10〜4,000単位/kg、10〜3,000単位/kg、10〜2,000単位/kg、10〜1,000単位/kg、10〜900単位/kg、10〜800単位/kg、10〜700単位/kg、10〜500単位/kg、10〜400単位/kg、10〜300単位/kg、10〜200単位/kg、10〜100単位/kg、16〜600,000単位/kg、16〜500,000単位/kg、16〜400,000単位/kg、16〜350,000単位/kg、16〜320,000単位/kg、16〜160,000単位/kg、16〜80,000単位/kg、16〜40,000単位/kg、16〜20,000単位/kg、16〜16,000単位/kg、16〜12,800単位/kg、16〜10,000単位/kg、16〜5,000単位/kg、16〜4,000単位/kg、16〜3,000単位/kg、16〜2,000単位/kg、16〜1,000単位/kg、16〜900単位/kg、16〜800単位/kg、16〜700単位/kg、16〜500単位/kg、16〜400単位/kg、16〜300単位/kg、16〜200単位/kg、16〜100単位/kg、160〜12,800単位/kg、160〜8,000単位/kg、160〜6,000単位/kg、160〜4,000単位/kg、160〜2,000単位/kg、160〜1,000単位/kg、160〜500単位/kg、500〜5000単位/kg、1000〜100,000単位/kgまたは1000〜10,000単位/kg(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)で投与できる。いくつかの例において、ペグ化ヒアルロニダーゼ(例えばPEGPH20)のようなポリマー結合ヒアルロナン分解酵素のようなヒアルロナン分解酵素を1単位/kg〜1000単位/kg、1単位/kg〜500単位/kgまたは10単位/kg〜50単位/kg(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)で投与できる。
【0431】
一般に、10,000U/mg〜80,000U/mg、例えば20,000U/mg〜60,000U/mgまたは18,000U/mg〜45,000U/mg(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)のペグ化ヒアルロニダーゼの比活性であるとき、一般に対象の質量あたり1単位/kg(U/kg)、2U/kg、3U/kg、4U/kg、5U/kg、6U/kg、7U/kg、8U/kg、8U/kg、10U/kg、16U/kg、32U/kg、64U/kg、100U/kg、200U/kg、300U/kg、400U/kg、500U/kg、600U/kg、700U/kg、800U/kg、900U/kg、1,000U/kg、2,000U/kg、3,000U/kg、4,000U/kg、5,000U/kg、6,000U/kg、7,000U/kg、8,000U/kg、9,000U/kg、10,000U/kg、12,800U/kg、20,000U/kg、32,000U/kg、40,000U/kg、50,000U/kg、60,000U/kg、70,000U/kg、80,000U/kg、90,000U/kg、100,000U/kg、120,000U/kg、140,000U/kg、160,000U/kg、180,000U/kg、200,000U/kg、220,000U/kg、240,000U/kg、260,000U/kg、280,000U/kg、300,000U/kg、320,000U/kg、350,000U/kg、400,000U/kg、450,000U/kg、500,000U/kg、550,000U/kg、600,000U/kg、650,000U/kg、700,000U/kg、750,000U/kg、800,000U/kgまたはそれ以上を投与する。例えば、60,000U;70,000U;80,000U;90,000U;100,000U;200,000U;300,000U;400,000U;500,000U;600,000U;700,000U;800,000U;900,000U;1,000,000U;1,500,000U;2,000,000U;2,500,000U;3,000,000U;3,500,000U;4,000,000U(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)またはそれ以上を投与する。
【0432】
ここでの例において、アルブミン結合タキサンのような腫瘍標的タキサン(例えばアルブミン結合パクリタキセルを腫瘍内送達を達成するのに十分な治療有効量で投与する。いくつかの例において、アルブミン結合タキサンのような腫瘍標的タキサン(例えばアルブミン結合パクリタキセル)を、腫瘍内デアミナーゼ(例えばシチジンデアミナーゼ)タンパク質レベルを、処置非存在下と比較して、該レベルを少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)またはそれ以上減少または低下させるような減少させる治療有効で投与する。具体例において、アルブミン結合タキサンのような腫瘍標的タキサン(例えばアルブミン結合パクリタキセル)を、処置非存在下と比較して、共投与するヌクレオシドアナログ(例えばゲムシタビンまたは誘導体)の腫瘍内レベルを増加させる治療有効量で投与する。例えば、腫瘍内ゲムシタビンは、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)またはそれ以上増加する。疾患または状態、例えばHA富腫瘍のような癌または固形腫瘍の処置に投与するアルブミン結合タキサンのような腫瘍標的タキサン(例えばアルブミン結合パクリタキセル)の量は、標準的臨床技術により決定できる。さらに、インビトロアッセイおよび動物モデルを、最適投与量範囲の同定を容易にするために用い得る。経験的に決定できる正確な投与量は、特定のタキサン、特定の製剤(例えばナノ粒子またはリポソーム製剤)、投与経路、処置する疾患のタイプおよび疾患の重症度により得る。
【0433】
典型的に、アルブミン結合タキサンのような腫瘍標的タキサン(例えばアルブミン結合パクリタキセル)を、対象に対象の体表面積(BSA;m)に対して1mg/m〜1000mg/m、例えば10mg/m〜500mg/m、50mg/m〜400mg/m、25mg/m〜300mg/mおよび一般に少なくとも正確にまたは少なくとも約または正確に約または20mg/m、30mg/m、40mg/m、50mg/m、60mg/m、70mg/m、80mg/m、90mg/m、100mg/m、150mg/m、200mg/m、250mg/m、300mg/m(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)で投与する。ある場合、現存する製剤または投与レジメと比較して、低投与量のアルブミン結合タキサンのような腫瘍標的タキサン(例えばアルブミン結合パクリタキセル)を対象に投与できる。例えば、アルブミン結合タキサンのような腫瘍標的タキサン(例えばアルブミン結合パクリタキセル)を、対象に、少なくとも50mg/mまたは100mg/mで、しかし260mg/m、200mg/mまたは150mg/m(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)未満の量で投与する。他の例において、投与あたりに投与する量は現存する投与量および投与レジメンと同等であるが、投与サイクルあたり低量のヌクレオシドアナログが投与されるように、投与スケジュールが減少する。他の例においては、現存する製剤または投与レジメと比較して、高投与量のアルブミン結合タキサンのような腫瘍標的タキサン(例えばアルブミン結合パクリタキセル)を対象に投与できる。例えば、アルブミン結合タキサンのような腫瘍標的タキサン(例えばアルブミン結合パクリタキセル)を、対象に少なくとも300mg/m、例えば300mg/m〜1000mg/m(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)の量で投与できる。対象の身長および体重に基づきmg/kgの対応する投与量を変換または決定するのは当業者のレベルの範囲内である。例えば、BSAは式(身長(cm)×体重(kg)/3600)1/2により決定する。平均成人のBSAは1.73mである。
【0434】
ここでの例において、本組み合わせ治療は、所望によりさらにヌクレオシドアナログ(例えばゲムシタビンまたは誘導体または他のアナログ)の投与を含む。ゲムシタビンを、腫瘍内送達を達成するのに十分な治療有効量で投与する。具体例において、ヌクレオシドアナログ(例えばゲムシタビンまたは誘導体または他のアナログ)を、ここでの組み合わせ治療と、単独で投与したときの腫瘍内レベルと比較して、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍またはそれ以上増加した腫瘍内レベルを達成する量で共投与する。疾患または状態、例えばHA富腫瘍のような癌または固形腫瘍の処置のために投与するヌクレオシドアナログ(例えばゲムシタビン、その誘導体またはここに記載する他のアナログ)の量は、標準的臨床技術により決定できる。さらに、インビトロアッセイおよび動物モデルを、最適投与量範囲の同定を容易にするために用い得る。経験的に決定できる正確な投与量は、特定のヌクレオシドアナログ、特定の製剤、投与経路、処置する疾患のタイプおよび疾患の重症度により得る。
【0435】
典型的に、ヌクレオシドアナログ(例えばゲムシタビンまたはその誘導体または他のアナログ)は、対象の体表面積(BSA;m)に対して、対象に100mg/m〜2500mg/m、例えば500mg/m〜2000mg/m、750mg/m〜1500mg/m、1000mg/m〜1500mg/mまたは500mg/m〜1500mg/mおよび一般に少なくとも500mg/m、600mg/m、700mg/m、800mg/m、900mg/m、1000mg/m、1250mg/m、1500mg/m、1750mg/m、2000mg/m(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)またはそれ以上の量で投与する。ある場合、現存する製剤または投与レジメと比較して、低投与量のヌクレオシドアナログ(例えばゲムシタビンまたはその誘導体または他のタキサン)を対象に投与できる。例えば、ヌクレオシドアナログ(例えばゲムシタビンまたはその誘導体または他のタキサン)を、少なくとも200mg/mまたは500mg/mであるが、1000mg/mまたは1250mg/m(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)未満である量で対象に投与する。他の例においては、投与あたりに投与する量は現存する投与量および投与レジメンと同等であるが、投与サイクルあたり低量のヌクレオシドアナログが投与されるように、投与スケジュールが減少する。mg/kgで対応する投与量を決定するのは当業者のレベルの範囲内である。
【0436】
ここに提供する薬剤は、静脈内、皮下、腫瘍内、皮内、経口または他の投与経路により投与できる。特定の経路は、投与する薬剤毎に異なっても、同一でもよい。例えば、1種以上または全薬剤を皮下投与できる。具体例において、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素が皮下投与できることがここで意図される。このような例において、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素を、同時の静脈内投与レジメンと同等な腫瘍活性を得るために、血流において、生物が利用可能な酵素を達成するために1〜8時間、例えば1〜2時間の吸収を可能にする投与レジメンで投与する。ここでの例において、腫瘍標的タキサンおよび/またはヌクレオシドアナログも皮下投与できる。特定の皮下製剤または1種以上の薬剤の共製剤を、薬剤の十分なバイオアベイラビリティを達成し、注射部位反応を最小化するために提供する。
【0437】
他の例において、1種以上または全薬剤を静脈内投与できる。このような例において、1種以上または全薬剤をひと押しまたは点滴で投与する。ひと押しまたは点滴時間は1分〜60分、一般に約10分〜40分であり、60分を超えない。複数薬剤を、同時点滴または後続点滴により投与できる。一例において、ここに提供する組み合わせ治療における投与する薬剤の2種または全三種は、同時に点滴する。このような例において、投与する薬剤を、同じバッグに一括して点滴するための同じ組成物に提供する。他の例においては、投与する薬剤を、個別の組成物で提供するが、点滴直前に一つの注入液として一バッグに併せる。さらなる例において、投与する薬剤を、同時にまたはほぼ同時に点滴するかまたはその後に点滴し、個別の点滴用の個別のバッグに吊るす。
【0438】
3. 投与レジメン:頻度および投与サイクル
ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤を、腫瘍標的タキサンの前に、同時に、ほぼ同時に、逐次的にまたは間欠的に投与できる。例えば、抗ヒアルロナン剤、例えば、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素および腫瘍標的タキサンは一括してまたは個別に共投与できる。個別に投与するならば、これらの薬剤を互いに短時間離して投与でき、例えば、互いに30秒〜15分以内に、例えば、15分未満、14分未満、12分未満、10分未満、5分未満、2分未満、1分未満または30秒未満互いに離れて投与する。他の例においては、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤および腫瘍標的タキサンを逐次的におよび/または間欠的に投与する。このような例において、抗ヒアルロナン剤、例えば、ヒアルロナン分解酵素を最初に投与できまたは腫瘍標的タキサンを最初に投与できる。一般に、ヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤を腫瘍標的タキサンの前に投与する。例えば、抗ヒアルロナン剤またはヒアルロナン分解酵素、を腫瘍標的タキサン投与の少なくとも5分、15分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、20時間、22時間、24時間、30時間、36時間、40時間または48時間前(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)に投与する。
【0439】
ここでの組み合わせ治療の例において、ヌクレオシドアナログを抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)および/または腫瘍標的タキサンの前に、同時に、ほぼ同時に、逐次的にまたは間欠的に投与できる。ヌクレオシドアナログは抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)および/または腫瘍標的タキサンの一方または両者と一括してまたは個別に共投与できる。個別に投与するならば、ヌクレオシドアナログをヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤および/または腫瘍標的タキサンの投与の直前または直後に投与でき、例えば、互いに30秒〜15分以内に、例えば、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)および/または腫瘍標的タキサンから15分未満、14分未満、12分未満、10分未満、5分未満、2分未満、1分未満または30秒未満離れて投与する。一般に、ヌクレオシドアナログをヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤の後に投与する。ある場合、ヌクレオシドアナログをヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤および腫瘍標的タキサンの後に投与する。例えば、ヌクレオシドアナログを、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)および/または腫瘍標的タキサン投与後少なくとも5分、15分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、20時間、22時間、24時間、30時間、36時間、40時間または48時間(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)に投与する。
【0440】
ここでの一例において、ヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤を、他の薬剤と個別に投与し、腫瘍標的タキサンの直前または直後に投与する。例えば、ヒアルロナン分解酵素を、腫瘍標的タキサンの前または後15分未満、14分未満、12分未満、10分未満、5分未満、2分未満、1分未満または30秒未満。このような例において、ヌクレオシドアナログを抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)および腫瘍標的タキサンの後に投与する。例えば、ヌクレオシドアナログをヒアルロナン分解酵素および腫瘍標的タキサンの投与少なくとも5分、15分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、20時間、22時間、24時間、30時間、36時間、40時間または48時間(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)後に投与する。
【0441】
他の例において、ヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤を腫瘍標的タキサンの前に投与し、腫瘍標的タキサンをヌクレオシドアナログの前に投与する。例えば、抗ヒアルロナン剤(例えば、ヒアルロナン分解酵素)を、腫瘍標的タキサンの投与少なくとも5分、15分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、20時間、22時間、24時間、30時間、36時間、40時間または48時間(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)前に投与する。このような例において、ヌクレオシドアナログを、腫瘍標的タキサンの投与少なくとも正確にまたは少なくとも5分、15分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、20時間、22時間、24時間、30時間、36時間、40時間または48時間(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)後に投与する。
【0442】
投与頻度および時期ならびに投与量は、所望の長さの期間、活性剤の連続的および/または長期効果を維持するために投与サイクルにわたり周期的に投与できる。組み合わせ剤または組成物を毎時、毎日、毎週、毎月、毎年または1回投与できる。投与サイクルの時間の長さは経験的に決定でき、処置する疾患、疾患の重症度、特定の患者および処置医の技術の範囲内である他の考慮による。ここに提供する組み合わせ治療での処置の時間の長さは1週間、2週間、1ヶ月、数ヶ月、1年、数年またはそれ以上であり得る。投与量は、処置過程中複数の投与サイクルに分割できる。例えば、修飾ヒアルロニダーゼ酵素を、1年またはそれ以上にわたり週に2回投与できる。疾患症状から処置中断ができないならば、処置をさらに長期間続けることができる。処置過程をとおして、疾患および/または処置関連毒性または副作用の証拠をモニターできる。
【0443】
さらに、投与サイクルは、薬剤への暴露から休む期間を提供するために、処置中断の期間を付加するために調製できる。処置中断の期間の長さは予定期間であってよくまたはどのように患者が応答するかまたは観察される副作用により経験的に決定できる。例えば、処置は1週間、2週間、1ヶ月または数ヶ月中断できる。一般に、処置中断の期間は、患者の投与レジメのサイクルに組み込まれている。
【0444】
例えば、例示的投与レジメは28日間の処置サイクルまたは投与サイクルである。抗ヒアルロナン剤、例えば、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素、腫瘍標的タキサンおよび/またはヌクレオシドアナログのような薬剤を週に1回または週に2回投与できる。例えば、薬剤を最初に3週間、週に1回または週に2回投与し、その後1週間休薬し得る。それゆえに、例えば、28日サイクルにわたって患者に薬剤を週に2回、1日目、4日目、8日目、11日目、15日目および18日目(または0日目、3日目、6日目、9日目、12日目および15日目)に投与し、その後1週間処置を中断する。他の例において、28日サイクルにわたって患者に薬剤を週に1回、1日目、8日目および16日目に投与し、その後1週間処置を中断する。他の例において、薬剤を、28日間全てにおいて週に1回または週に2回投与できる。それゆえに、例えば、全28日サイクルについて患者に薬剤を週に2回、1日目、4日目、8日目、11日目、15日目、18日目、21日目および24日目(または0日目、4日目、7日目、11日目、14日目、18日目、21日目または25日目)投与できる。他の例において、全28日サイクルについて患者に薬剤を週に1回、1日目、8日目、16日目または24日目に投与できる。上の記載は単なる例示を目的とするものであり、上記の変形を用いることができるは理解される。さらに、類似の投与サイクルを全ての投与する薬剤に適用できまたは各投与する薬剤をここに提供する組み合わせ治療においてそれ自体の投与レジメンで用いることができる。
【0445】
正確な投与サイクルおよび投与スケジュールの決定は、当業者のレベルの範囲内である。上記のとおり、投与サイクルは任意の所望の長さの期間であり得る。それゆえに、28日投与サイクルを、任意の長さの期間繰り返してよい。処置する患者および疾患に特異的な個人的考慮によって、患者の必要性に合う投与サイクルおよび投与レジメを適合させるのは処置医の技術のレベル内である。
【0446】
一般に、ヌクレオシドアナログ、例えばゲムシタビンまたは誘導体の投与の時期は、典型的に、抗ヒアルロナン剤、例えば、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素および/または腫瘍標的タキサンの投与サイクルの関数である。例えば、ヌクレオシドアナログを、投与サイクルにおけるヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤および/または腫瘍標的タキサンの最初の投与後および/またはサイクルにおけるその後の任意の1回以上の投与後に投与してよい。他の例において、ヌクレオシドアナログを、サイクルにおける抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)および/または腫瘍標的タキサンの各その後の投与後、サイクルにおけるヒアルロナン分解酵素および/または腫瘍標的タキサンのその後の投与の1回おきに投与してよくまたは抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素および/または腫瘍標的タキサンの投与サイクルの間、週に1回、2週に1回、3週に1回または月に1回である。いくつかの例において、ヌクレオシドアナログを、抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素および/または腫瘍標的タキサンの投与サイクルあたり1回しか投与しない。さらなる例において、ヌクレオシドアナログを投与サイクルの間に間欠的に投与する。例えば、ヌクレオシドアナログを第一投与サイクルの間は投与せず、第二サイクルの間に投与し、その後第三サイクルは投与せず再び第四サイクルの間に投与する等またはこれらの何らかの変形である。
【0447】
ここでの組み合わせ治療の具体例において、方法は、抗ヒアルロナン剤および腫瘍標的タキサンの同時またはほぼ同時、例えば一緒の投与を含む。抗ヒアルロナン剤および腫瘍標的タキサンは予定した週数、週に2回または週に1回の投与頻度で投与できる。特に、抗ヒアルロナン剤を週に2回投与し、腫瘍標的タキサンを週に1回投与する。所望により、ヌクレオシドアナログも本組み合わせ治療で投与できる。例えば、ヌクレオシドアナログを予定した週数、週に1回投与し、典型的にヌクレオシドアナログを抗ヒアルロナン剤および腫瘍標的タキサンの投与1週間後に投与する。本方法はまた抗ヒアルロナン剤投与の前、同時、間欠的または後のコルチコステロイドの投与も含み得る。投与サイクルは、任意の期間であってよく、処置医または臨床医のレベルの範囲内である。典型的に、予定した週数は3週間または4週間であるが、長くてよい。投与サイクルを疾患状態および対象の応答によって複数回繰り返し得る。
【0448】
4. 付加的組み合わせ処置
ここに提供する組み合わせ治療は単独でもまたはさらに他の治療または処置と組み合わせてもよい。ここに提供する組み合わせ剤または組成物は、他の治療剤または薬剤または処置、例えば手術と一括して、前に完結的にまたは後にさらに共製剤または共投与してよい。例えば、このような薬剤は、他の生物製剤、抗癌剤、小分子化合物、分散剤、麻酔剤、血管収縮剤および手術およびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。このような薬剤はまた副作用を回復、減少または予防するために1種以上の薬剤も含み得る。ある場合、組み合わせ治療は、一次腫瘍を摘出するまたは処置前に対象を免疫抑制する1種以上の癌処置と組み合わせて使用できる。例えば、さらなる化学療法または放射線治療を、ここに提供する組み合わせ治療に加えて使用できる。このような付加的治療は、対象の免疫系の弱化に効果を有し得る。他の例において、外科的除去および/または免疫系弱化治療は必要ではないかもしれない。ここで組み合わせることができる他の方法の例は、免疫系を弱化することなく腫瘍または新生物細胞の増殖率を減少させる化合物の投与(例えば、腫瘍サプレッサー化合物の投与または腫瘍細胞特異的化合物の投与による)または血管形成阻害化合物の投与を含む。
【0449】
1種以上の第二剤または処置剤の製剤を1回で投与してよくまたは一定間隔で投与する小投与量に分けてよい。選択した薬剤/処置製剤を1回またはそれ以上の投与で、例えば数時間、数日間、数週間または数ヶ月の、処置過程中に投与できる。ある場合、連続投与が有用である。正確な投与量および投与の経過は適応症および患者の耐容性による。一般に、ここでの第二剤/処置剤の投与レジメは当業者に知られる。
【0450】
a. コルチコステロイド
ここに提供する組み合わせ治療は、単独でまたは1種以上のコルチコステロイドとさらに組み合わせて投与できる。コルチコステロイドを、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素または他の薬剤の投与による1種以上の有害作用、特に、有害筋骨格効果の回復または減少に治療的に有効な量で投与する。治療有効量は、1種以上の症状または有害作用の回復、予防、除去または減少に十分な量である。前処置の改善または成功の指標は、CTCAEスケールでの関連するスコアの顕在化がないまたはCTCAEスケールでのグレードまたは重症度の変化により決定する。
【0451】
コルチコステロイドは、副腎皮質で産生される一群のステロイドホルモンである。コルチコステロイドは、ストレス応答、免疫応答および炎症制御、炭水化物代謝、タンパク質異化反応、血中電解質レベルおよび行動のような広範囲の生理的系に関与する。これらは、抗炎症剤であり多数の他の機能を伴うグルココルチコイドおよび主に腎臓への作用を介して塩および水バランスを制御するミネラルコルチコイドを含む。
【0452】
グルココルチコイド受容体に結合するグルココルチコイドはステロイドホルモン、例えば、コルチコステロイドの類である。グルココルチコイドは、グルココルチコイド受容体への結合によりその作用を発揮する。活性の中で、活性化グルココルチコイド複合体は、次に、核内の抗炎症性タンパク質の発現を上方制御し、炎症誘発性タンパク質のサイトゾルへの発現を、サイトゾルから核への他の転写因子の転座を阻止することにより抑制する。
【0453】
一般に、コルチコステロイドのいずれか、例えば、グルココルチコイドをここに提供する方法においてまたは組み合わせにおいて使用できる。グルココルチコイドは合成および非合成グルココルチコイドを含む。グルココルチコイドの例は、アルクロメタゾン類、アルゲストン類、ベクロメタゾン類(例えば二プロピオン酸ベクロメタゾン)、ベタメタゾン類(例えばベタメタゾン17−バレラート、ベタメタゾン酢酸エステルナトリウム、ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム、吉草酸ベタメタゾン)、ブデソニド類、クロベタゾール類(例えばプロピオン酸クロベタゾール)、クロベタゾン類、クロコルトロン類(例えばピバル酸クロコルトロン)、クロプレンドノール類、コルチコステロン類、コルチゾン類およびヒドロコルチゾン類(例えば酢酸ヒドロコルチゾン)、コルチバゾール類、デフラザコート類、デソニド類、デスオキシメタゾン類、デキサメサゾン類(例えばデキサメサゾン21−ホスフェート、酢酸デキサメサゾン、デキサメサゾンリン酸エステルナトリウム)、ジフロラゾン類(例えば二酢酸ジフロラゾン)、ジフルコルトロン類、ジフルプレドナート類、エノキソロン類、フルアザコート類、フルクロロニド類、フルドロコルチゾン類(例えば、酢酸フルドロコルチゾン)、フルメタゾン類(例えばピバル酸フルメタゾン)、フルニソリド類、フルオシノロン類(例えばフルオシノロンアセトニド)、フルオシノニド類、フルオコルチン類、フルオコルトロン類、フルオロメトロン(例えば酢酸フルオロメトロン)、フルペロロン類(例えば、酢酸フルペロロン)、フルプレドニデン類、フルプレドニゾロン類、フルランドレノリド類、フルチカゾン類(例えばプロピオン酸フルチカゾン)、ホルモコータル類、ハルシノニド類、ハロベタゾール類、ハロメタゾン類、ハロプレドン類、ヒドロコルタメート類、ヒドロコルチゾン類(例えばヒドロコルチゾン21−ブチレート、アセポン酸ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル、酪酸ヒドロコルチゾン、シピオン酸ヒドロコルチゾン、ヘミコハク酸ヒドロコルチゾン、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンリン酸エステルナトリウム、ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム、吉草酸ヒドロコルチゾン)、エタボン酸、ロテプレドノール、マジプレドン類、メドリソン類、メプレドニゾン類、メチルプレドニゾロン類(アセポン酸メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、ヘミコハク酸メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム)、モメタゾン類(例えば、フロ酸モメタゾン)、パラメタゾン類(例えば、酢酸パラメタゾン)、プレドニカルベート類、プレドニゾロン類(例えばプレドニゾロン2,5−ジエチルアミノアセテート、プレドニゾロンリン酸エステルナトリウム、プレドニゾロン21−ヘミスクシネート、酢酸プレドニゾロン;ファルネシル酸プレドニゾロン、ヘミコハク酸プレドニゾロン、プレドニゾロン−21(ベータ−D−グルクロニド)、メタスルホ安息香酸プレドニゾロン、プレドニゾロンステアグラート、プレドニゾロンテブテート、テトラヒドロフタル酸プレドニゾロン)、プレドニゾン類、プレドニバール類、プレドニリデン類、リメキソロン類、チキソコルトール類、トリアムシノロン類(例えばトリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド、トリアムシノロンヘキサセトニド、トリアムシノロンアセトニド21−パリミテート、二酢酸トリアムシノロン)を含むが、これらに限定されない。これらグルココルチコイドおよびその塩は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, A. Osol, ed., Mack Pub. Co., Easton, Pa. (16th ed. 1980)に詳述されている。
【0454】
いくつかの例において、グルココルチコイドをコルチゾン類、デキサメサゾン類、ヒドロコルチゾン類、メチルプレドニゾロン類、プレドニゾロン類およびプレドニゾン類から選択する。具体例において、グルココルチコイドはデキサメサゾンである。
【0455】
コルチコステロイドを治療有効量で提供する。治療有効濃度は、既知インビトロまたはインビボ(例えば動物モデル)系での試験により経験的に決定できる。例えば、有害作用を回復させるために投与する選択したコルチコステロイドの量は、標準的臨床技術により決定できる。さらに、動物モデルを、最適投与量範囲の同定を容易にするために用い得る。経験的に決定できる正確な投与量は、特定の治療調製物、レジメおよび投与スケジュール、投与経路および疾患の重症度に依存し得る。
【0456】
組成物中の選択した治療剤の濃度は、吸収、不活性化および排泄速度、物理化学的特徴、投与スケジュールおよび投与量ならびに当業者に知られる他の因子による。例えば、正確な投与量および処置の持続時間は、疾患または状態、処置する組織、患者または対象および量および投与レジメを含む抗ヒアルロナン剤の関数であることは理解される。コルチコステロイドの量はまた患者の年齢および健康、ポリマー結合ヒアルロナン分解酵素投与(例えばペグ化ヒアルロナン分解酵素投与)、コルチコステロイドの効力および投与経路によっても変化し得る。例えば、濃度および投与量値は、ヒアルロナン分解酵素の治療投与量および投与レジメによってもかわることは注意すべきである。さらに、コルチコステロイドは、所望の結果を達成するために、毎日、毎週または毎月または長期間にわたり投与できる。特定の投与体積は変わり得て、投与レジメ、投与頻度および所望の投与速度による。濃度および投与量値は処置個体の年齢によっても変わり得ることは注意すべきである。
【0457】
正確な投与量および処置の持続時間は、既知試験プロトコルまたはインビボまたはインビトロ試験データの外挿を使用して経験的に決定できる。さらにある特定の対象について、特異的投与レジメンをその個体の必要性および製剤を投与するまたは投与を監督する者の専門的判断により調節すべきであり、ここに示す濃度範囲は単なる例示であり、その範囲を限定することを意図しないことは理解されるべきである。一般に、投与レジメンは、毒性を制限するために選択し、ここでは、有害副作用を回復させるために選択される。担当医は、毒性または骨髄、肝臓または腎臓または他の組織機能不全のためにどのようにおよびいつ治療を停止し、中断しまたは低投与量に調節すべきかを知っていることに注意すべきである。逆に、担当医はまた臨床的応答が不適であるならば(毒性副作用を防止しながら)、どのようにおよびいつ処置を高いレベルに調節するかも知っている。治療剤の投与は、United States Food and Drug Administrationにより確立されたまたはPhysician's Desk Referenceに記載された最大投与量レベルを超えてはならない。
【0458】
一般に、投与するコルチコステロイドの投与量は、コルチコステロイド毎に効果が異なるため、具体的コルチコステロイドによる(下記表4参照)。コルチコステロイドまたはグルココルチコイド、例えばデキサメサゾンは経口(錠剤、液体または液体濃縮物)(PO)、静脈内(IV)または筋肉内で投与できる。コルチコステロイドは、典型的にボーラスとして投与するが、投与が抗ヒアルロナン剤、例えば、ペグ化ヒアルロニダーゼ投与と関連する1種以上の副作用の回復に有効である限り、一定期間にわたり投与してよい。
【表4】
【0459】
コルチコステロイドを、ヒアルロナン分解酵素の投与と関連する1種以上の副作用を回復させるのに有効である任意の量で投与できる。それゆえに、コルチコステロイド、例えば、グルココルチコイドは、例えば、0.1および100mg、0.1〜80mg、0.1〜60mg、0.1〜40mg、0.1〜30mg、0.1〜20mg、0.1〜15mg、0.1〜10mg、0.1〜5mg、0.2〜40mg、0.2〜30mg、0.2〜20mg、0.2〜15mg、0.2〜10mg、0.2〜5mg、0.4〜40mg、0.4〜30mg、0.4〜20mg、0.4〜15mg、0.4〜10mg、0.4〜5mg、0.4〜4mg、1〜20mg、1〜15mgまたは1〜10mg(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)の量で、70kg成人対象に投与できる。典型的に、グルココルチコイドのようなコルチコステロイドを、投与あたり0.4および20mg、例えば、正確にまたは約0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.75mg、0.8mg、0.9mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19mgまたは20mg(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)の量で平均的成人対象に投与する。
【0460】
コルチコステロイドは、例えば、0.001mg/kg(対象の)、0.002mg/kg、0.003mg/kg、0.004mg/kg、0.005mg/kg、0.006mg/kg、0.007mg/kg、0.008mg/kg、0.009mg/kg、0.01mg/kg、0.015mg/kg、0.02mg/kg、0.025mg/kg、0.03mg/kg、0.035mg/kg、0.04mg/kg、0.045mg/kg、0.05mg/kg、0.055mg/kg、0.06mg/kg、0.065mg/kg、0.07mg/kg、0.075mg/kg、0.08mg/kg、0.085mg/kg、0.09mg/kg、0.095mg/kg、0.1mg/kg、0.15mg/kg、0.2mg/kg、0.25mg/kg、0.30mg/kg、0.35mg/kg、0.40mg/kg、0.45mg/kg、0.50mg/kg、0.55mg/kg、0.60mg/kg、0.65mg/kg、0.70mg/kg、0.75mg/kg、0.80mg/kg、0.85mg/kg、0.90mg/kg、0.95mg/kg、1mg/kg、1.05mg/kg、1.1mg/kg、1.15mg/kg、1.20mg/kg、1.25mg/kg、1.3mg/kg、1.35mg/kgまたは1.4mg/kg(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)の量で、典型的に体重約70kg〜75kgの平均的成人対象に投与できる。
【0461】
投与量は、コルチコステロイドの投与がヒアルロナン分解酵素の投与と関連する1種以上の有害副作用を回復させる限り、変わり得る。一例において、グルココルチコイド、例えば、デキサメサゾンの投与量は、処置サイクルあたり連続的に低投与量で投与される。それゆえに、このような処置レジメにおいて、コルチコステロイドの投与量を漸減する。例えば、デキサメサゾンを、ヒアルロナン分解酵素投与前に、4mgの初期投与量で投与し、ヒアルロナン分解酵素の各連続的投与に際し、デキサメサゾン投与量を、ヒアルロナン分解酵素、例えばペグ化ヒアルロニダーゼの次の投与で3mg、抗ヒアルロナン剤、例えばペグ化ヒアルロニダーゼの投与あたり2mg次いで、抗ヒアルロナン剤、例えばペグ化ヒアルロニダーゼの投与あたり1mgとなるように減らす。コルチコステロイドがヒアルロナン分解酵素、例えばペグ化ヒアルロニダーゼの投与と関連する1種以上の副作用の軽減に有効である限り、任意の投与量が意図される。
【0462】
投与の時間は、コルチコステロイド投与がペグ化ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素の投与と関連する1種以上の有害副作用を回復させる限り、変わり得る。コルチコステロイドは、逐次的に、間欠的に、同時にまたはヒアルロナン分解酵素、例えばペグ化ヒアルロナン分解酵素と同じ組成物で投与できる。例えば、コルチコステロイドを、ヒアルロナン分解酵素、例えばペグ化ヒアルロニダーゼの投与前、投与中、同時または後に投与できる。他の例において、コルチコステロイドおよびヒアルロナン分解酵素、例えばペグ化ヒアルロニダーゼを間欠的に投与する。一般に、コルチコステロイドを、ヒアルロナン分解酵素、例えばペグ化ヒアルロニダーゼの投与前に投与する。例えば、コルチコステロイド、例えば、デキサメサゾンのようなグルココルチコイドを抗ヒアルロナン剤、例えばペグ化ヒアルロナン分解酵素投与の0.5分、1分、2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分、10分、15分、20分、25分、30分、45分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、36時間(いずれの数値も概数(約)である場合を含む)またはそれ以上前に投与できる。
【0463】
いくつかの例において、コルチコステロイドを、ヒアルロナン分解酵素、例えばペグ化ヒアルロナン分解酵素の投与と同時に投与する。この例において、コルチコステロイドを、ヒアルロナン分解酵素、例えばペグ化ヒアルロニダーゼと一括してまたは個別に投与できる。典型的に、コルチコステロイドをヒアルロナン分解酵素、例えばペグ化ヒアルロナン分解酵素と個別に投与する。他の例において、コルチコステロイドを、ヒアルロナン分解酵素、例えばペグ化ヒアルロナン分解酵素の投与後0.5分、1分、2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分、10分、15分、20分、25分、30分、45分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、36時間またはそれ以上で投与する。
【0464】
一例において、コルチコステロイドをヒアルロナン分解酵素、例えばペグ化ヒアルロニダーゼ投与前に投与する。例えば、コルチコステロイド、例えば、グルココルチコイド、例えば、デキサメサゾンを、ヒアルロナン分解酵素、例えばペグ化ヒアルロニダーゼ投与1時間前に投与する。他の例において、コルチコステロイドを、ヒアルロナン分解酵素、例えばペグ化ヒアルロナン分解酵素投与5分前に投与する。他の例において、コルチコステロイドを、ヒアルロナン分解酵素、例えばペグ化ヒアルロニダーゼ投与前後のいずれにも投与する。この例において、デキサメサゾンのようなコルチコステロイドを、ヒアルロナン分解酵素、例えばペグ化ヒアルロナン分解酵素投与のわずか1〜5分前および抗ヒアルロナン剤、例えばペグ化ヒアルロナン分解酵素投与8時間後に投与する。他の例において、デキサメサゾンのようなコルチコステロイドを、ヒアルロナン分解酵素、例えばペグ化ヒアルロナン分解酵素の投与1時間前および抗ヒアルロナン剤、例えばペグ化ヒアルロナン分解酵素の投与8〜12時間後に投与する。
【0465】
コルチコステロイドの投与の時間がヒアルロナン分解酵素、例えばペグ化ヒアルロニダーゼの投与と関連する1種以上の副作用を回復させる限り、任意の投与レジメが意図される。さらに、コルチコステロイドの投与または投与レジメは、癌または固形腫瘍の処置を含む、ここに記載する組成物および組み合わせ剤におけるヒアルロナン分解酵素または他の薬剤の治療効果を妨害または減少させないものである。
【0466】
b. 抗癌剤および他の処置
ここに提供する組み合わせ治療は単独でまたはさらに他の抗癌剤と組み合わせて使用できる。抗癌剤または処置は手術、放射線、薬物、化学療法剤、ポリペチド、抗体、ペプチド、小分子または遺伝子治療ベクター、ウイルスまたはDNAであり得る。
【0467】
ここでの組み合わせ治療の投与後、同時または前に投与できる抗癌剤は、アシビシン類;アビシン;アクラルビシン;アコダゾール類;アクロニン類;アドゼレシン類;アルデスロイキン類;アレムツズマブ類;アリトレチノイン類(9−Cis−レチノイン酸);アロプリノール類;アルトレタミン類;アルボシジブ類;アンバゾン類;アンボマイシン類;アメタントロン類;アミホスチン類;アミノグルテチミド類;アムサクリン類;アナストロゾール類;アナキシロン類;アンシタビン類;アントラマイシン類;アパジコン類;アルギメスナ類;三酸化ヒ素類;アスパラギナーゼ類;アスペルリン類;アトリムスチン類;アザシチジン類;アゼテパ類;アゾトマイシン類;バノキサントロン類;バタブリン類;バチマスタット類;BCG Live;ベナキシビン類;ベンダムスチン類;ベンゾデパ類;ベキサロテン類;ベバシズマブ類;ビカルタミド類;ビエタセルピン類;ビリコダル類;ビスアントレン類;ビスナフィドジメシレート類;ビゼレシン類;ブレオマイシン類;ボルテゾミブ類;ブレキナール類;ブロピリミン類;ブドチタン類;ブスルファン類;カクチノマイシン類;カルステロン類;カネルチニブ類;カペシタビン類;カラセミド類;カルベチマー類;カルボプラチン類;カルボコン類;カルモフール類;カルムスチン類とポリフェプロザン類;カルムスチン類;カルビシン類;カルゼルシン類;セデフィンゴール類;セレコキシブ類;セマドチン類;クロラムブシル類;シオテロネル類;シロレマイシン類;シスプラチン類;クラドリビン類;クランフェヌル類;クロファラビン類;クリスナトール類;シクロホスファミド類;シタラビンリポソーム類;シタラビン類;ダカルバジン類;ダクチノマイシン類;ダルベポエチンアルファ類;ダウノルビシンリポソーム類;ダウノルビシン類/ダウノマイシン類;ダウノルビシン類;デシタビン類;デニロイキンジフチトクス類;デキシニグルジピン類;デキソンナプラチン類;デキスラゾキサン類;デザグアニン類;ジアジクオン類;ジブロスピジウム類;ジエノゲスト類;ジナリン類;ジセルモリド類;ドセタキセル類;ドフェキダル類;ドキシフルリジン類;ドキソルビシンリポソーム類;ドキソルビシンHCL類;ドキソルビシンHCLリポソーム注射類;ドキソルビシン類;ドロロキシフェン類;ドロモスタノロンプロピオネート類;デュアゾマイシン類;エコムスチン類;エダトレキサート類;エドテカリン類;エフロルニチン類;エラクリダール類;エリナフィド類;エリオットのB溶液類;エルサミトルシン類;エミテフール類;エンロプラチン類;エンプロマート類;エンザスタウリン類;エピプロピジン類;エピルビシン類;エポエチンアルファ類;エプタロプロスト類;エルブロゾール類;エソルビシン類;エストラムスチン類;エタニダゾール類;エトグルシド類;エトポシドホスフェート類;エトポシドVP−16類;エトポシド類;エトプリン類;エキセメスタン類;エクシスリンド類;ファドロゾール類;ファザラビン類;フェンレチニド類;フィルグラスチム類;フロクスウリジン類;フルダラビン類;フルオロウラシル類;5−フルオロウラシル類;フルオキシメステロン類;フルロシタビン類;ホスキドン類;ホストリエシン類;ホストリエシン類;ホトレタミン類;フルベストラント類;ガラルビシン類;ガロシタビン類;ゲムシタビン類;ゲムツズマブ類/オゾガマイシン類;ゲロキノール類;ギマテカン類;ギメラシル類;グロキサゾン類;グルホスファミド類;ゴセレリンアセテート類;ヒドロキシウレア類;イブリツモマブ類/チウキセタン類;イダルビシン類;イホスファミド類;イルモホシン類;イロマスタット類;イマチニブメシレート類;イメキソン類;インプロスルファン類;インジスラム類;インプロクオン類;インターフェロンアルファ−2a類;インターフェロンアルファ−2b類;インターフェロンアルファ類;インターフェロンベータ類;インターフェロンガンマ類;インターフェロン類;インターロイキン−2類および他のインターロイキン類(組み換えインターロイキンを含む);イントプリシン類;ヨーベングアン類[131−I];イプロプラチン類;イリノテカン類;イルソグラジン類;イクサベピロン類;ケトトレキサート類;L−アラノシン類;ランレオチド類;ラパチニブ類;レドキサントロン類;レトロゾール類;ロイコボリン類;リュープロリド類;ロイプロレリン類(ロイプロリド類);レバミソール類;レキサカルシトール類;リアロゾール類;ロバプラチン類;ロメテレキソール類;ロムスチン類/CCNU類;ロムスチン類;ロナファルニブ類;ロソキサントロン類;ルルトテカン類;マホスファミド類;マンノスルファン類;マリマスタット類;マソプロコール類;メイタンシン類;メクロレタミン類;メクロレタミン類/窒素マスタード類;メゲストロールアセテート類;メゲストロール類;メレンゲストロール類;メルファラン類;メルファランlL−PAM類;メノガリル類;メピチオスタン類;メルカプトプリン類;6−メルカプトプリン類;メスナ類;メテシンド類;メトトレキサート類;メトキサレン類;メトミデート類;メトプリン類;メツレデパ類;ミボプラチン類;ミプロキシフェン類;ミソニダゾール類;ミチンドミド類;ミトカルシン類;ミトクロミン類;マイトフラキソン類;ミトギリン類;ミトグアゾン類;ミトマルシン類;マイトマイシンC類;マイトマイシン類;メトナフィド類;ミトキドン類;ミトスペル類;ミトタン類;ミトキサントロン類;ミトゾロミド類;ミボブリン類;ミゾルビン類;モファロテン類;モピダモール類;ムブリチニブ類;ミコフェノール酸類;ナンドロロンフェンプロピオネート類;ネダプラチン類;ネルザラビン類;ネモルビシン類;ニトラクリン類;ノコダゾール類;ノフェツモマブ類;ノガラマイシン類;ノラトレキシド類;ノルトピキサントロン類;オクトレオチド類;オプレルベキン類;オルマプラチン類;オルタタキセル類;オテラシル類;オキサリプラチン類;オキシスラン類;オキソフェナルシン類;パクリタキセル類;パミドロネート類;パツビロン類;ペガデマーゼ類;ペガスパルガーゼ類;ペグフィルグラスチム類;ペルデシン類;ペプロマイシン類;ペリトレキソール類;ペメトレキセド類;ペンタムスチン類;ペントスタチン類;ペプロマイシン類;ペルホスファミド類;ペリホシン類;ピコプラチン類;ピナフィド類;ピポブロマン類;ピポスルファン類;ピルフェニドン類;ピキサントロン類;ピクサントロン類;プレビトレキセド類;プリカマイシンミトラマイシン類;プリカマイシン類;プロメスタン類;プロメスタン類;ポルフィマーナトリウム類;ポルフィマー類;ポルフィロマイシン類;プレドニムスチン類;プロカルバジン類;プロパミジン類;プロスピジウム類;プミテパ類;ピューロマイシン類;ピラゾフリン類;キナクリン類;ラニムスチン類;ラスブリカーゼ類;リボプリン類;リトロスルファン類;リツキシマブ類;ログレチミド類;ロキニメックス類;ルフォクロモミシン類;サバルビシン類;サフィンゴール類;サルグラモスチム類;サトラプラチン類;セブリプラチン類;セムスチン類;シムトラゼン類;シゾフィラン類;ソブゾキサン類;ソラフェニブ類;スパルホサート類;スパルホス酸類;スパルソマイシン類;スピロゲルマニウム類;スピロムスチン類;スピロプラチン類;スピロプラチン類;スクアラミン類;ストレプトニグリン類;ストレプトバリシン類;ストレプトゾシン類;スホスファミド類;スルフェヌア類;スニチニブマレート類;6−チオグアニン(6−TG);タセジナリン類;タルク類;タリソマイシン類;タリムスチン類;タモキシフェン類;タリキダル類;タウロムスチン類;テコガラン類;テガフール類;テロキサントロン類;テモポルフィン類;テモゾロミド類;テニポシド類/VM−26類;テニポシド類;テロキシロン類;テストラクトン類;チアミプリン類;チオグアニン類;チオテパ類;チアミプリン類;チアゾフリン類;チロミソール類;チロロン類;チムコダル類;チモナシク類;チラパザミン類;トピクサントロン類;トポテカン類;トレミフェン類;トシツモマブ類;トラベクテジン類(エクチナサイジン743);トラスツマブ類;トレストロン類;トレチノイン類/ATRA;トリシリビン類;トリロスタン類;トリメトレキサート類;トリプラチンテトラニトレート類;トリプトレリン類;トロホスファミド類;ツブロゾール類;ウベニメクス類;ウラシルマスタード類;ウレデパ類;バルルビシン類;バルスポダール類;バプレオチド類;ベルテポルフィン類;ビンブラスチン類;ビンクリスチン類;ビンデシン類;ビネピジン類;ビンフルニン類;ビンホルミド類;ビングリシナート類;ビンロイシノール類;ビンロイロシン類;ビノレルビン類;ビンロシジン類;ビントリプトール類;ビンゾリジン類;ボロゾール類;キサントマイシンA類(グアメシクリン類);ゼニプラチン類;ジラスコルブ類[2−H];ジノスタチン類;ゾレドロネート類;ゾルビシン類;およびゾスキダル類、例えば:
【0468】
アルデスロイキン類(例えばPROLEUKIN(登録商標));アレムツズマブ類(例えばキャンパス(登録商標));アリトレチノイン類(例えばパンレチン(登録商標));アロプリノール類(例えばザイロプリム(登録商標));アルトレタミン類(例えばHEXALEN(登録商標));アミホスチン類(例えばETHYOL(登録商標));アナストロゾール類(例えばアリミデックス(登録商標));三酸化ヒ素類(例えばトリセノックス(登録商標));アスパラギナーゼ類(例えばエルスパー(登録商標));BCG Live類(例えばタイス(登録商標)BCG);ベキサロテン類(例えばタルグレチン(登録商標));ベバシズマブ類(アバスチン(登録商標));ブレオマイシン類(例えばBLENOXANE(登録商標));ブスルファン静注類(例えばブスルフェクス(登録商標));ブスルファン経口類(例えばマイレラン(登録商標));カルステロン類(例えばメトサーブ(登録商標));カペシタビン類(例えばゼローダ(登録商標));カルボプラチン類(例えばパラプラチン(登録商標));カルムスチン類(例えばBCNU(登録商標)、BiCNU(登録商標));カルムスチン類とポリフェプロザン類(例えばグリアデル(登録商標)ウェーハ);セレコキシブ類(例えばCELEBREX(登録商標));クロラムブシル類(例えばリューケラン(登録商標));シスプラチン類(例えばPLATINOL(登録商標));クラドリビン類(例えばロイスタチン(登録商標)、2-CdA(登録商標));シクロホスファミド類(例えばCYTOXAN(登録商標)、NEOSAR(登録商標));シタラビン類(例えばCYTOSAR-U(登録商標));シタラビンリポソーム類(例えばDepoCyt(登録商標));ダカルバジン類(例えばDTIC-Dome):ダクチノマイシン類(例えばコスメゲン(登録商標));ダルベポエチンアルファ類(例えばARANESP(登録商標));ダウノルビシンリポソーム類(例えばDANUOXOME(登録商標));ダウノルビシン類/ダウノマイシン類(例えばCERUBIDINE(登録商標));デニロイキンジフチトクス類(例えばONTAK(登録商標));デキスラゾキサン類(例えばZINECARD(登録商標));ドセタキセル類(例えばタキソテール(登録商標));ドキソルビシン類(例えばアドリアマイシン(登録商標)、RUBEX(登録商標));ドキソルビシンHCLリポソーム注射類を含むドキソルビシンリポソーム類(例えばドキシル(登録商標));ドロモスタノロンプロピオネート類(例えばドロモスタノロン(登録商標)およびMASTERONE(登録商標)注射);エリオットのB溶液類(例えばエリオットのB溶液(登録商標));エピルビシン類(例えばELLENCE(登録商標));エポエチンアルファ類(例えばEPOGEN(登録商標));エストラムスチン類(例えばEMCYT(登録商標));エトポシドホスフェート類(例えばETOPOPHO(登録商標));エトポシドVP−16類(例えばVEPESID(登録商標));エキセメスタン類(例えばアロマシン(登録商標));フィルグラスチム類(例えばニューポジェン(登録商標));フロクスウリジン類(例えばFUDR(登録商標));フルダラビン類(例えばFLUDARA(登録商標));5−FU類を含むフルオロウラシル(例えばアドルシル(登録商標));フルベストラント類(例えばFASLODEX(登録商標));ゲムシタビン類(例えばジェムザール(登録商標));ゲムツズマブ類/オゾガマイシン類(例えばマイロターグ(登録商標));ゴセレリンアセテート類(例えばゾラデックス(登録商標));ヒドロキシウレア類(例えばハイドレア(登録商標));イブリツモマブ類/チウキセタン類(例えばZEVALIN(登録商標));イダルビシン類(例えばイダマイシン(登録商標));イホスファミド類(例えばIFEX(登録商標));イマチニブメシレート類(例えばグリベック(登録商標));インターフェロンアルファ−2a類(例えばROFERON-A(登録商標));インターフェロンアルファ−2b類(例えばINTRON A(登録商標));イリノテカン類(例えばCAMPTOSAR(登録商標));レトロゾール類(例えばフェマーラ(登録商標));ロイコボリン類(例えばWELLCOVORIN(登録商標)、ロイコボリン(登録商標));レバミソール類(例えばERGAMISOL(登録商標));ロムスチン/CCNU類(例えばCeeBU(登録商標));メクロレタミン/窒素マスタード類(例えばMUSTARGEN(登録商標));メゲストロールアセテート類(例えばMEGACE(登録商標));メルファラン/L−PAM類(例えばアルケラン(登録商標));6−メルカプトプリン類を含むメルカプトプリン(6−MP類;例えばピュリネソール(登録商標));メスナ類(例えばMESNEX(登録商標));メトトレキサート;メトキサレン類(例えばUVADEX(登録商標));マイトマイシンC類(例えばMUTAMYCIN(登録商標)、マイトザイトレックス(登録商標));ミトタン類(例えばLYSODREN(登録商標));ミトキサントロン類(例えばノバントロン(登録商標));ナンドロロンフェンプロピオネート類(例えばドラボリン-50(登録商標));ノフェツモマブ類(例えばVERLUMA(登録商標));オプレルベキン類(例えばNEUMEGA(登録商標));オキサリプラチン類(例えばエロキサチン(登録商標));パクリタキセル類(例えばPAXENE(登録商標)、タキソール(登録商標));パミドロネート類(例えばアレディア(登録商標));ペガデマーゼ類(例えばADAGEN(登録商標));ペガスパルガーゼ類(例えばONCASPAR(登録商標));ペグフィルグラスチム類(例えばNEULASTA(登録商標));ペントスタチン類(例えばNIPENT(登録商標));ピポブロマン類(例えばVERCYTE(登録商標));プリカマイシン/ミトラマイシン類(例えばミトラシン(登録商標));ポルフィマーナトリウム類(例えばフォトフリン(登録商標));プロカルバジン類(例えばMATULANE(登録商標));キナクリン類(例えばアタブリン(登録商標));ラスブリカーゼ類(例えばELITEK(登録商標));リツキシマブ類(例えばリツキサン(登録商標));サルグラモスチム類(例えばPROKINE(登録商標));ストレプトゾシン類(例えばZANOSAR(登録商標));スニチニブマレート類(例えばスーテント(登録商標));タルク類(例えばSCLEROSOL(登録商標));タモキシフェン類(例えばノルバデックス(登録商標));テモゾロミド類(例えばテモダール(登録商標));テニポシド類/VM−26類(例えばVUMON(登録商標));テストラクトン類(例えばTESLAC(登録商標));6−チオグアニン類(6−TG)を含むチオグアニン;チオテパ類(例えばTHIOPLEX(登録商標));トポテカン類(例えばハイカムチン(登録商標));トレミフェン類(例えばフェアストン(登録商標));トシツモマブ類(例えばベキサール(登録商標));トラスツマブ類(例えばハーセプチン(登録商標));トレチノイン/ATRA類(例えばベサノイド(登録商標));ウラシルマスタード類;バルルビシン類(例えばVALSTAR(登録商標));ビンブラスチン類(例えばVELBAN(登録商標));ビンクリスチン類(例えばオンコビン(登録商標));ビノレルビン類(例えばナベルビン(登録商標));およびゾレドロネート類(例えばゾメタ(登録商標))を含むが、これらに限定されない。
【0469】
H. 実施例
以下に掲載する実施例は例示を目的とし、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【実施例】
【0470】
実施例1
ヒト膵腫瘍異種移植モデルにおけるPEGPH20およびNab−パクリタキセル組み合わせ処置の抗腫瘍効果
ヒト膵癌異種移植モデルを、ナノ粒子アルブミン結合(nab)−パクリタキセルと組み合わせたPEGPH20の抗腫瘍効果について評価した。
【0471】
BxPC3膵癌細胞株(American Tissue Culture Collection(ATCC) CRL-1687)からの腫瘍細胞を、約80%コンフルエンシーまで増殖させ、トリプシン処理し、回収し、HBSS(ハンクス平衡塩溶液、Mediatech Inc.)で1回洗浄した。接種前に、細胞を無菌HBSSで2回洗浄し、Nexcelom Cellometer(Nexcelom Bioscience; Lawrence, MA)自動化計数デバイスを使用して計数し、これはトリパンブルー排除を介して細胞濃度および生存能を決定し、動物に接種する前に氷上で1×10細胞/mL濃度にHBSSで希釈した。約6週齢の雄ヌードマウス(無胸腺NCr nu/nuマウス、Taconic Laboratories, Inc.)に、0.05mLの細胞懸濁液を左後肢に脛骨周囲(脛骨骨膜に隣接)に筋肉内(IM)接種した。動物の腫瘍を週に2回評価し、平均腫瘍体積約350〜400mmまで増殖させた。実際の腫瘍体積をVisualSonics Vevo 770高分解能超音波(VisulaSonics Inc.; Toronto, Ontario, Canada)を使用して決定した。
【0472】
腫瘍担持動物を、群あたり8匹の動物の8処置群に分け、1)媒体(API緩衝液;2)PEGPH20(4.5mg/kg);3)nab−パクリタキセル(3mg/kg;低投与量);4)nab−パクリタキセル(10mg/kg;中投与量);5)nab−パクリタキセル(30mg/kg;高投与量);6)PEGPH20(4.5mg/kg)+nab−パクリタキセル(3mg/kg);7)PEGPH20(4.5mg/kg)+nab−パクリタキセル(10mg/kg);または8)PEGPH20(4.5mg/kg)+nab−パクリタキセル(30mg/kg)で静脈内処置した。PEGPH20およびnab−パクリタキセルを個別に投与した。PEGPH20を最初に投与し、その直後nab−パクリタキセルを投与した。処置の投与量および頻度は、3日毎に、計6回の注射で、0日目に0.1mL/25gマウスまたは4.0mL/kgの投与体積で開始した(すなわち0日目、3日目、6日目、9日目、12日目、15日目)。
【0473】
全マウスの腫瘍体積を、VisualSonics超音波系を週に2回使用して画像を捕捉することにより測定した。腫瘍体積を3Dモード画像処理ソフトウェアプログラム(VisualSonics(登録商標)Vevo 770(登録商標), v 3.0.0)を使用して計算した。腫瘍増殖阻害パーセント(%TGI)を次の式を使用して計算した:
[1−(T−T)/(C−C)]×100%
上記式中、Tは、処置後の示す時点である各“n”日目の処置群の平均腫瘍体積であり;Tは処置前の0日目の処置群の平均腫瘍体積であり;Cは、媒体で処置後の示す時点である各“n”日目の対照群の平均腫瘍体積であり;Cは処置前の0日目の対照群の平均腫瘍体積である。
【0474】
結果を図1に記載する。結果は、nab−パクリタキセルが高および中投与量で腫瘍増殖を阻害し、これはPEGPH20存在下で増強されたことを示す。例えば、腫瘍体積を測定した最終時点で、中〜高投与量のnab−パクリタキセル(10mg/kgおよび30mg/kg)は媒体対照と比較して、腫瘍増殖をそれぞれ62%(p<0.01)および74%(p<0.01)阻害した。PEGPH20存在下、nab−パクリタキセルの10mg/kg投与量処置群の腫瘍増殖阻害は72%(p<0.01)に増加し、nab−パクリタキセル30mg/kg投与量処置群は91%(p<0.01)に増加した。中nab−パクリタキセル投与量で19%および高nab−パクリタキセル投与量で26%の効果のPEGPH20介在増加である。4.5mg/mg PEGPH20で処置した群または3mg/kg 低投与量nab−パクリタキセルでPEGPH20存在下または非存在下に処置した群では、実質的な腫瘍増殖阻害は見られなかった。
【0475】
実施例2
ヒト膵腫瘍異種移植モデルにおけるPEGPH20、Nab−パクリタキセルおよびゲムシタビン組み合わせ処置の抗腫瘍効果
A. 腫瘍増殖阻害
実施例1に記載したヒト膵癌異種移植モデルを、ゲムシタビン処置とさらに組み合わせたPEGPH20およびnab−パクリタキセル組み合わせ治療の抗腫瘍効果の評価に使用した。実験実施前に、ゲムシタビンの経路および投与量レベルを選択した。これを行うために、腫瘍担持マウスを種々の投与量のゲムシタビン(60mg/kg、120mg/kg、180mg/kgおよび240mg/kg)で週に1回、21日間(0日目、7日目、14日目および21日目)処置し、腫瘍体積を上記のとおりモニターした。結果を図2に示す。結果は、ゲムシタビンが、媒体単独と比較して、試験した全投与量で腫瘍増殖を阻害することを示した。180mg/kgの最適以下の投与量を、続くPEGPH20組み合わせ化学療法試験で使用するために選択した。ゲムシタビンおよびnab−パクリタキセルの両者の最適以下の投与量を、PEGPH20、ゲムシタビンおよびnab−パクリタキセルの3抗癌剤組み合わせによる利益の可能性を評価するために選択した。
【0476】
腫瘍担持マウスを、群あたり12匹の動物の8処置群にグループ分けし、1)媒体(API緩衝液);2)PEGPH20(4.5mg/kg);3)nab−パクリタキセル(10mg/kg);4)ゲムシタビン(180mg/kg);5)PEGPH20(4.5mg/kg)+nab−パクリタキセル(10mg/kg);6)PEGPH20(4.5mg/kg)+ゲムシタビン(180mg/kg);7)nab−パクリタキセル(10mg/kg)+ゲムシタビン(180mg/kg);または8)PEGPH20(4.5mg/kg)+nab−パクリタキセル(10mg/kg)+ゲムシタビン(180mg/kg)で処置した。PEGPH20およびnab−パクリタキセルを静脈内投与し、投与量および処置頻度は、4週間投与サイクルで週に2回(2x/wk)であった。ゲムシタビンを3週間の投与サイクルで7日間毎にPEGPH20および/またはnab−パクリタキセル24時間後に腹腔内投与した。試験群によって、4週間サイクルでの各薬剤投与のための投与スケジュールを表5に示す。
【表5】
【0477】
腫瘍体積および腫瘍増殖阻害を実施例1に記載のとおり決定した。結果を図3に記載する。結果は、ゲムシタビン単独、PEGPH20単独およびPEGPH20+ゲムシタビンは幾分抗腫瘍活性を示すが、抗腫瘍効果は、nab−パクリタキセルを含む治療ではるかに大きく、最大抗腫瘍効果が、PEGPH20、nab−パクリタキセルおよびゲムシタビンで処置した動物で示された。表6は、26日目の腫瘍体積測定から決定した、媒体に対する増殖阻害パーセンテージとして結果を記載する。結果は、nab−パクリタキセルおよびゲムシタビンでの処置に加えてPEGPH20で処置した動物が、媒体に対して81%腫瘍増殖阻害が見られたが、一方PEGPH20を含まないnab−パクリタキセルおよびゲムシタビン処置は66%腫瘍増殖阻害のみであったことを示す。それゆえに、結果は、nab−パクリタキセルおよびゲムシタビン組み合わせ治療に加えたPEGPH20が、効果の23%増加をもたらすことを示す。
【表6】
【0478】
B. 中央生存期間
パートAに示した最初の4週間投与サイクルの後、投与サイクルを2回繰り返し、生存時間エンドポイントを経時的に追跡した。簡単にいうと、各投与サイクルで、動物を媒体またはPEGPH20(4.5mg/mL)で、nab−パクリタキセル(10mg/kg)を伴いまたは伴わずに、週に2回、4週間静脈内処置した。各投与サイクルで、ゲムシタビン投与群は、ゲムシタビン(180mg/kg)を3週間の投与サイクルについて7日毎にPEGPH20および/またはnab−パクリタキセル24時間後に投与した。動物生存の代替である生存時間エンドポイントは、(a)2000mmを超える腫瘍体積までの時間、(b)20%を超える体重減少までの時間または(c)動物が拘束または死に至るまでの時間として規定する。
【0479】
結果を図4および表7に示す。結果は、ゲムシタビンのみで処置した動物のエンドポイントまでの中央生存期間は38日であり、nab−パクリタキセルおよびゲムシタビンで処置した動物では52日であり、PEGPH20、nab−パクリタキセルおよびゲムシタビンで処置した動物では68日であったことを示す。それゆえに、結果は、nab−パクリタキセルおよびゲムシタビンでの処置へのPEGPH20付加は、他のいずれかの処置と比較して中央生存期間を延長し、PEGPH20を伴わないnab−パクリタキセルおよびゲムシタビンと比較して31%の効果増加であり、ゲムシタビン単独での処置と比較して79%の効果増加であったことを示す。
【表7】
媒体に対して(p<0.0001)
nab−パクリタキセル+ゲムシタビンに対して(p=0.0008)
【0480】
C. 腫瘍バイオマーカーの測定
膵癌と関連するバイオマーカー炭水化物抗原19−9(CA19−9)および癌胎児性抗原(CEA)を治療応答を測定するために試験した。動物をパートAに記載したとおり処置した。血清を、最初の投与サイクルの0日目、6日目、13日目および20日目に各群のサテライト動物(n≦3)から回収した。ヒトCA19−9を、CA19−9 ELISAキット(Catalog No. CA199T, Calbiotech, Spring Valley, CA)を使用して測定し、CEA腫瘍抗原をCEA ELISAキット(Catalog No. CE062T, Calbiotech, Spring Valley, CA)を使用して測定した。
【0481】
結果を図5に示す。結果は、PEGPH20処置の存在が、全処置群で測定したマーカーを減少させたことを示す。例えば、20日目で、PEGPH20で処置した全群のCA19−9マーカーは、約40〜60U/mLの範囲で同等であった。対照的に、nab−パクリタキセルまたはnab−パクリタキセル+ゲムシタビンで処置した動物のCA19−9マーカーのレベルは、PEGPH20でも処置した動物のほぼ倍であり、約110U/mLであった。ゲムシタビンのみで処置した動物は、媒体のみの対照とほぼ同等なCA19−9レベルを示した。それゆえに、結果は、PEGPH20+nab−パクリタキセルで処置した動物が、nab−パクリタキセルのみで処置した動物と比較してCA19−9レベルが低く;PEGPH20+ゲムシタビンで処置した動物がゲムシタビンのみで処置した動物と比較してCA19−9レベルが低く;そしてPEGPH20+nab−パクリタキセル+ゲムシタビンで処置した動物が、nab−パクリタキセル+ゲムシタビンのみで処置した動物と比較してCA19−9レベルが低かったことを示す。PEGPH20+nab−パクリタキセル+ゲムシタビンで処置した動物について、CA19−9は、PEGPH20非存在下nab−パクリタキセル+ゲムシタビンで処置した動物と比較して49%減少した。
【0482】
CEAマーカーを測定したとき、結果は同等であった。このマーカーを使用して、結果は、CEAのレベルは、媒体対照と比較してnab−パクリタキセルのみで処置した動物で20日目に、これらの群でCEAは約20〜25ng/mLと測定され、実質的に変化しなかったことを示す。ゲムシタビンまたはnab−パクリタキセル+ゲムシタビンで処置した動物において、CEAマーカーは20日目に約15ng/mLへと幾分減少した。PEGPH20存在下、測定した本マーカーのレベルは、PEGPH20を伴わない処置群と比較して、顕著に減少した。例えば、PEGPH20のみで処置した動物において、20日目のCEA測定値は約7〜8ng/mLであった。PEGPH20+ゲムシタビン、PEGPH20+nab−パクリタキセルまたはPEGPH20+nab−パクリタキセル+ゲムシタビンで処置した動物において、20日目のCEAのレベルはELISAで定量するには低すぎた。
【0483】
実施例3
rHuPH20発現細胞株
A. 最初の可溶性rHuPH20発現細胞株の産生
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞をHZ24プラスミド(配列番号52に示す)でトランスフェクトした。可溶性rHuPH20を発現させるためのHZ24プラスミドベクターは、pCIベクターバックボーン(Promega)、ヒトPH20ヒアルロニダーゼのアミノ酸1〜482をコードするDNA(配列番号49)、ECMVウイルス由来の配列内リボソーム進入部位(IRES)(Clontech)、およびマウスジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子を含む。pCIベクターバックボーンは、ベータ−ラクタマーゼ耐性遺伝子(AmpR)をコードするDNA、f1複製起点、サイトメガロウイルス前初期エンハンサー/プロモーター領域(CMV)、キメライントロン、およびSV40後期ポリアデニル化シグナル(SV40)も含む。可溶性rHuPH20コンストラクトをコードするDNAは、ヒトPH20のネイティブ35アミノ酸シグナル配列のアミノ酸位置1のメチオニンをコードするDNAの前にNheI部位とコザックコンセンサス配列とを含有し、配列番号1に記載のヒトPH20ヒアルロニダーゼのアミノ酸位置482に対応するチロシンをコードするDNAの後に停止コドンを含有し、その後に、BamHI制限部位が続いている。したがって、コンストラクトpCI−PH20−IRES−DHFR−SV40pa(HZ24)は、CMVプロモーターによって駆動される単一のmRNA種であって、配列内リボソーム進入部位(IRES)によって分離された、ヒトPH20のアミノ酸1〜482(配列番号3に記載)とマウスジヒドロ葉酸レダクターゼのアミノ酸1〜186(配列番号53に記載)とをコードするものをもたらす。
【0484】
トランスフェクションの準備として、4mMのグルタミンおよび18ml/L Plurionic F68/L(Gibco)を補足したDHFR(−)細胞用のGIBCO変法CD−CHO培地で成長させた非トランスフェクトCHO細胞を、0.5×10細胞/mlの密度でシェーカーフラスコに接種した。細胞を湿潤インキュベータ中、5%CO下、37℃において、120rpmで振とうしながら成長させた。トランスフェクションに先立ち、対数増殖期の非トランスフェクトCHO細胞を、生存能について調べた。
【0485】
非トランスフェクトCHO細胞培養の生細胞6千万個をペレット化し、2×トランスフェクションバッファー(2×HeBS:40mMのHEPES、pH7.0、274mMのNaCl、10mMのKCl、1.4mMのNaHPO、12mMのデキストロース)0.7mLに、2×10細胞の密度で再懸濁した。再懸濁した細胞の各アリコートに、0.09mL(250μg)の線状HZ24プラスミド(ClaI(New England Biolabs)で終夜消化することによって線状化したもの)を加え、その細胞/DNA溶液を、室温で、間隙0.4cmのBTX(Gentronics)エレクトロポレーションキュベットに移した。陰性対照エレクトロポレーションは、プラスミドDNAを細胞と混合せずに行った。細胞/プラスミド混合物を、330Vおよび960μFまたは350Vおよび960μFのコンデンサ放電でエレクトポレートした。
【0486】
細胞をエレクトロポレーション後のキュベットから取り出して、4mMのグルタミンおよび18ml/L Plurionic F68/L(Gibco)を補足した5mLのDHFR(−)細胞用変法CD−CHO培地に移し、湿潤インキュベータ中、5%CO下、37℃において、選択圧を加えずに、6穴組織培養プレートのウェルで2日間成長させた。
【0487】
エレクトロポレーション2日後、0.5mLの組織培養媒体を各ウェルから除去し、実施例6に記載する微小濁度アッセイを使用してヒアルロニダーゼ活性の存在を試験した。最高レベルのヒアルロニダーゼ活性を示す細胞を組織培養ウェルから回収し、計数し、1×10〜2×10生存可能細胞/mLに希釈した。5枚の96穴丸底組織培養プレートの各ウェルに、細胞懸濁液を0.1mLずつ移した。4mM GlutaMAXTM−1補助剤(GIBCOTM、Invitrogen Corporation)を含有しヒポキサンチンおよびチミジン補助剤を含有しないCD−CHO培地(GIBCO)100マイクロリットルを、細胞を含むウェルに加えた(最終体積0.2mL)。
【0488】
メトトレキサートなしで成長させた5枚のプレートから10個のクローンを同定した。これらのHZ24クローンの6個を拡大培養し、単一細胞懸濁液としてシェーカーフラスコに移した。クローン3D3、3E5、2G8、2D9、1E11および4D10を、左上のウェルの5000細胞から開始して、細胞をプレートの縦方向に1:2希釈し、プレートの横方向に1:3希釈する二次元無限希釈法を使って、96穴丸底組織培養プレートにプレーティングした。培養の初期に必要な成長因子を供給するために1ウェルあたり500個の非トランスフェクトDG44 CHO細胞のバックグラウンドで、希釈クローンを成長させた。50nMメトトレキサートを含有する5枚とメトトレキサートを含有しない5枚で、1サブクローンあたり10枚のプレートを作製した。
【0489】
クローン3D3は、24個の可視サブクローンを産生した(メトトレキサート処理なしから13個、および50nMメトトレキサート処理から11個)。それら24個のサブクローンのうち8個から得られる上清に、顕著なヒアルロニダーゼ活性(>50単位/mL)が測定され、それら8個のサブクローンをT−25組織培養フラスコに拡大培養した。メトトレキサート処理プロトコルから単離されたクローンは、50nMメトトレキサートの存在下で拡大培養した。クローン3D35Mを500nMメトトレキサートで、シェーカーフラスコ中さらに拡張し、過剰の1,000単位/mlヒアルロニダーゼ活性を産生するクローンを得た(クローン3D35M;またはGen1 3D35M)。次いで3D35M細胞のマスター細胞バンク(MCB)を製造した。
【0490】
B. 可溶性rHuPH20を発現する第二産生細胞株の産生
実施例3Aに記載の第1世代3D35M細胞株を、さらに高いメトトレキサートレベルに適応させて、第2世代(Gen2)クローンを作出した。樹立メトトレキサート含有培養物から、4mM GlutaMAX-1TMおよび1.0μMメトトレキサートを含有するCD CHO培地に、3D35M細胞を接種した。37℃、7%CO湿潤インキュベータ中で、46日間にわたって、細胞を成長させ、それらを9回継代することにより、細胞を、より高いメトトレキサートレベルに適応させた。2.0μMメトトレキサートを含む培地が入っている96穴組織培養プレートでの限界希釈法により、増幅された細胞集団をクローンアウト(clone out)した。約4週間後に、クローンを同定し、クローン3E10Bを拡大培養のために選択した。4mM GlutaMAX-1TMおよび2.0μMメトトレキサートを含有するCD CHO培地中で、継代20代にわたって、3E10B細胞を成長させた。3E10B細胞株のマスター細胞バンク(MCB)を作製し、凍結し、以後の実験に使用した。
【0491】
4mM GlutaMAX-1TMおよび4.0μMメトトレキサートを含有するCD CHO培地中で3E10B細胞を培養することによって、この細胞株の増幅を続けた。12回目の継代後に、細胞を研究用細胞バンク(research cell bank)(RCB)としてバイアル中で凍結した。RCBのバイアルを1本融解し、8.0μMメトトレキサートを含有する培地で培養した。5日後に、培地中のメトトレキサート濃度を16.0μMに増加させ、次いで18日後に20.0μMに増加させた。20.0μMメトトレキサートを含有する培地における8回目の継代培養から得た細胞を、4mM GlutaMAX-1TMおよび20.0μMメトトレキサートを含有するCD CHO培地が入っている96穴組織培養プレートでの限界希釈法によってクローンアウトした。5〜6週間後にクローンを同定し、クローン2B2を20.0μMメトトレキサートを含有する培地での拡大培養のために選択した。11回目の継代後に、2B2細胞を研究用細胞バンク(RCB)としてバイアル中で凍結した。
【0492】
得られた2B2細胞は、可溶性組換えヒトPH20(rHuPH20)を発現させるジヒドロ葉酸レダクターゼ欠損性(dhfr−)DG44 CHO細胞である。可溶性PH20は2B2細胞中に、約206コピー/細胞のコピー数で存在する。SpeI、XbaIおよびBamHI/HindIIIで消化したゲノム2B2細胞DNAを、rHuPH20特異的プローブを使ってサザンブロット解析したところ、以下の制限消化プロファイルが明らかになった:SpeIで消化したDNAでは1本の主要ハイブリダイズバンド約7.7kbと4本の副ハイブリダイズバンド(〜13.9、〜6.6、〜5.7および〜4.6kb);XbaIで消化したDNAでは、1本の主要ハイブリダイズバンド〜5.0kbと2本の副ハイブリダイズバンド(〜13.9および〜6.5kb);BamHI/HindIIIで消化した2B2 DNAを使うと、〜1.4kbの単一ハイブリダイズバンドが観察された。mRNA転写物の配列解析により、得られたcDNA(配列番号56)は、位置1131における1塩基対の相違(これは予想されるシトシン(C)の代わりにチミジン(T)であることがわかった)を除いて、対照配列(配列番号49)と同一であることが示された。これはサイレント突然変異であり、アミノ酸配列には影響しない。
【0493】
実施例4
rHuPH20の産生および精製
A. 300Lバイオリアクター細胞培養におけるGen2可溶性rHuPH20の産生
HZ24−2B2細胞(実施例3B)のバイアルを融解し、シェーカーフラスコから36Lスピナーフラスコを通して20μMのメトトレキサートおよびGlutaMAX-1TM(Invitrogen)添加CD−CHO培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)に拡大した。簡単にいうと、細胞のバイアルを37℃の水浴で融解し、培地を加え、細胞を遠心分離した。細胞を、20mLの新鮮培地が入っている125mL振盪フラスコに再懸濁し、37℃、7%COのインキュベータに入れた。細胞を125mL振とうフラスコ中で40mLまで拡大培養した。細胞密度が1.5×10細胞/mLを上回る密度に達したら、培養物を125mLスピナーフラスコに100mLの培養体積で拡大した。フラスコを37℃、7%COでインキュベートした。細胞密度が1.5×10細胞/mLを上回る密度に達したら、培養物を250mLスピナーフラスコに200mLの培養体積で拡大し、フラスコを37℃、7%COでインキュベートした。細胞密度が1.5×10細胞/mLを上回る密度に達したら、培養物を1Lスピナーフラスコに800mLの培養体積で拡大し、37℃、7%COでインキュベートした。細胞密度が1.5×10細胞/mLを上回る密度に達したら、培養物を6Lスピナーフラスコに5000mLの培養体積で拡大し、37℃、7%COでインキュベートした。細胞密度が1.5×10細胞/mLを上回る密度に達したら、培養物を36Lスピナーフラスコに32mLの培養体積で拡大し、37℃、7%COでインキュベートした。
【0494】
400Lリアクターを滅菌し、230mLのCD CHO培地を加えた。使用前に、リアクターを汚染についてチェックした。約30Lの細胞を36Lスピナーフラスコから400Lバイオリアクター(Braun)に、1mlあたり4.0×10個の生細胞という接種密度および260Lの総体積で移した。パラメータは温度設定値:37℃;インペラー速度40〜55RPM;容器圧:3psi;空気散布量0.5〜1.5L/分;空気オーバーレイ:3L/分とした。細胞数、pH確認、培地分析、タンパク質の生産および貯留を調べるために、リアクターから毎日試料を採取した。また、運転中に栄養フィードを加えた。120時間(5日目)の時点で、10.4Lの第1フィード培地(4×CD−CHO+33g/Lグルコース+160mL/L GlutaMAX-1TM+83mL/Lイーストレート(Yeastolate)+33mg/L rHuインスリン)を加えた。168時間(7日目)の時点で、10.8Lの第2フィード(2×CD−CHO+33g/Lグルコース+80mL/L GlutaMAX-1TM+167mL/Lイーストレート+0.92g/L酪酸ナトリウム)を加え、培養温度を36.5℃に変えた。216時間(9日目)の時点で、10.8Lの第3フィード(1×CD−CHO+50g/Lグルコース+50mL/L GlutaMAX-1TM+250mL/Lイーストレート+1.80g/L酪酸ナトリウム)を加え、培養温度を36℃に変えた。264時間(11日目)の時点で、10.8Lの第4フィード(1×CD−CHO+33g/Lグルコース+33mL/L GlutaMAX-1TM+250mL/Lイーストレート+0.92g/L酪酸ナトリウム)を加え、培養温度を35.5℃に変えた。フィード培地の添加は生産の最終段階における可溶性rHuPH20の生産を劇的に強化することが観察された。14日時点もしくは15日時点で、または細胞の生存能が40%未満に低下した時に、リアクターを収集した。このプロセスにより、1200万細胞/mLの最大細胞密度で17,000単位/mlの最終生産能力が得られた。インビトロおよびインビボでのマイコプラズマ、生物汚染度、エンドトキシン、透過電子顕微鏡法(TEM)ならびに酵素活性について、収集時に、培養物を試料採取した。
【0495】
それぞれが4〜8μmに分級された珪藻土の層と1.4〜1.1μmに分級された珪藻土の層とを含有し、その後にセルロースメンブレンが設けられている、並列した4つのMillistak濾過系モジュール(Millipore)に、培養物を蠕動ポンプで通し、次に、0.4〜0.11μmに分級された珪藻土の層と、<0.1μmに分級された珪藻土の層とを含有し、その後にセルロースメンブレンが設けられている、第2の単一Millistak濾過系(Millipore)に通し、次に0.22μm最終フィルターを通して、350Lの容量を持つ滅菌使い捨てフレキシブルバッグ中に入れた。その収集細胞培養液に10mMのEDTAおよび10mMのTrisをpHが7.5になるように補足した。培養物を、4つのSartoslice TFF 30kDa分子量分画(MWCO)ポリエーテルスルホン(PES)フィルタ(Sartorius)を使用するタンジェンシャルフロー濾過(TFF)装置で10倍濃縮した後、10mMのTris、20mMのNaSO、pH7.5で10回のバッファー交換を行い、0.22μm最終フィルターを通して、50L滅菌保存バッグに濾過した。
【0496】
濃縮し、ダイアフィルトレーションに付した収集物を、ウイルスに関して不活化した。ウイルス不活化に先だって、10%Triton X-100、3%リン酸トリ(n−ブチル)(TNBP)の溶液を調製した。濃縮しダイアフィルトレーションに付した収集物を、Qカラムで精製する直前に、36Lガラス反応容器中で、1%Triton X-100、0.3%TNBPに1時間曝露した。
【0497】
B. Gen2可溶性rHuPH20の精製
Qセファロース(Pharmacia)イオン交換カラム(樹脂9L、H=29cm、D=20cm)を調製した。pHおよび伝導度の決定ならびにエンドトキシン(LAL)アッセイのために洗浄液試料を集めた。カラムを5カラム体積の10mMのTris、20mMのNaSO、pH7.5で平衡化した。濃縮しダイアフィルトレーションに付した(実施例4A)を、ウイルス不活化後に、100cm/時間の流速でQカラムに負荷した。カラムを、5カラム体積の10mMのTris、20mMのNaSO、pH7.5および10mMのHEPES、50mMのNaCl、pH7.0で洗浄した。タンパク質を10mMのHEPES、400mMのNaCl、pH7.0で溶出させ、0.22μm最終フィルターを通して滅菌バッグに濾過した。溶出液試料を生物汚染度、タンパク質濃度および酵素活性について調べた。この交換の最初と最後にA280吸光度を読み取った。
【0498】
次にフェニル−セファロース(Pharmacia)疎水相互作用クロマトグラフィーを行った。フェニル−セファロース(PS)カラム(樹脂19〜21L、H=29cm、D=30cm)を調製した。洗浄液を集め、pH、伝導度およびエンドトキシン(LALアッセイ)用の試料を採取した。カラムを5カラム体積の5mMのリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウム、0.1mMのCaCl、pH7.0で平衡化した。Qセファロースカラムから得たタンパク質溶出液に2M硫酸アンモニウム、1Mのリン酸カリウムおよび1MのCaCl保存液を補足して、最終濃度をそれぞれ5mM、0.5Mおよび0.1mMにした。タンパク質を100cm/時間の流速でPSカラムに負荷し、素通り画分を集めた。100cm/時間の5mMのリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウムおよび0.1mMのCaCl pH7.0でカラムを洗浄し、その洗浄液を、集めた素通り画分に加えた。カラム洗浄液と合わせた素通り画分を0.22μm最終フィルターを通して滅菌バッグに入れた。生物汚染度、タンパク質濃度および酵素活性を調べるために素通り画分の試料を採取した。
【0499】
アミノフェニルボロネートカラム(ProMedics)を調製した。洗浄液を集め、pH、伝導度およびエンドトキシン(LALアッセイ)用の試料を採取した。カラムを5カラム体積の5mMのリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウムで平衡化した。精製タンパク質を含有するPS素通り画分を100cm/時間の流速でアミノフェニルボロネートカラムに負荷した。カラムを5mMのリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウム、pH7.0で洗浄した。カラムを20mMビシン、0.5M硫酸アンモニウム、pH9.0で洗浄した。カラムを20mMビシン、100mM塩化ナトリウム、pH9.0で洗浄した。タンパク質を50mMのHEPES、100mMのNaCl、pH6.9で溶出させ、滅菌フィルターを通して滅菌バッグに入れた。溶出した試料を生物汚染度、タンパク質濃度および酵素活性について調べた。
【0500】
ヒドロキシアパタイト(HAP)カラム(BioRad)を調製した。洗浄液を集めて、pH、伝導度およびエンドトキシン(LALアッセイ)について調べた。カラムを5mMのリン酸カリウム、100mMのNaCl、0.1mMのCaCl、pH7.0で平衡化した。アミノフェニルボロネートで精製したタンパク質を、最終濃度が5mMのリン酸カリウムおよび0.1mMのCaClになるように補い、100cm/時間の流速でHAPカラムに負荷した。カラムを5mMのリン酸カリウム、pH7、100mMのNaCl、0.1mMのCaClで洗浄した。次にカラムを10mMのリン酸カリウム、pH7、100mMのNaCl、0.1mMのCaClで洗浄した。タンパク質を70mMのリン酸カリウム、pH7.0で溶出させ、0.22μm滅菌フィルターを通して滅菌バッグに入れた。溶出した試料を生物汚染度、タンパク質濃度および酵素活性について調べた。
【0501】
次に、HAPで精製したタンパク質をウイルス除去フィルターに通した。滅菌したVirosartフィルタ(Sartorius)を、まず、2Lの70mMのリン酸カリウム、pH7.0で洗浄することによって調製した。使用前に、pHおよび伝導度を調べるために、濾過されたバッファーを試料採取した。HAPで精製したタンパク質を蠕動ポンプで20nMウイルス除去フィルターに通した。70mMのリン酸カリウム、pH7.0中の濾過されたタンパク質を0.22μm最終フィルターを通して滅菌バッグに入れた。ウイルス濾過された試料をタンパク質濃度、酵素活性、オリゴ糖、単糖およびシアル酸プロファイリングについて調べた。試料をプロセス関連不純物についても試験した。試料をプロセス関連不純物についても試験した。
【0502】
実施例5
ペグ化rHuPH20の製造
この実施例において、rHuPH20を、本酵素と直鎖状メトキシポリ(エチレングリコール)ブタン酸のN−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(mPEG−SBA−30K)の反応によりペグ化した。
【0503】
A. mPEG−SBA−30Kの製造
PEGPH20を製造するために、rHuPH20(これは約60KDaサイズである)を、約30kDaの分子量を有する直鎖状メトキシポリ(エチレングリコール)ブタン酸のN−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(mPEG−SBA−30K)に共有結合的にコンジュゲートした。mPEG−SBAの構造を下に示し、ここで、n≒681である。
【化5】
【0504】
rHuPH20ペグ化に使用したmPEG−SBA−30Kの製造に使用した方法は、例えば、米国特許番号5,672,662に記載されている。簡単にいうと、mPEG−SBA−30Kを次の方法に従い製造する:
ジオキサンに溶解したマロン酸エチル(2当量)を、窒素雰囲気下水素化ナトリウム(2当量)およびトルエンに滴下する。mPEGメタンスルホネート(1当量、MW 30kDa、Shearwater)をトルエンに溶解し、上記混合物に添加する。得られた混合物を約18時間還流する。反応混合物を元の体積の半分に濃縮し、10%NaCl水溶液で抽出し、1%塩酸水溶液で抽出し、水性抽出物を併せる。回収した水層をジクロロメタン(3×)で抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、蒸発乾固する。得られた残基を、塩化ナトリウム含有1N 水酸化ナトリウムに溶解し、混合物を1時間撹拌する。6N 塩酸添加により混合物のpHを、約3に調節する。混合物をジクロロメタン(2×)で抽出する。
【0505】
有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、冷ジエチルエーテルに注加する。沈殿を濾過により回収し、減圧下乾燥する。得られた化合物をジオキサンに溶解し、8時間還流し、濃縮乾固する。得られた残渣を水に溶解し、ジクロロメタン(2×)で抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶液を回転蒸発により濃縮し、冷ジエチルエーテルに注加する。沈殿を濾過により回収し、減圧下乾燥する。得られた化合物(1当量)をジクロロメタンに溶解し、N−ヒドロキシスクシンイミド(2.1当量)を添加する。溶液を0℃に冷却し、ジシクロヘキシルカルボジイミド(2.1当量)のジクロロメタン溶液を滴下する。溶液を室温で約18時間撹拌する。反応混合物を濾過し、濃縮し、ジエチルエーテルで沈殿させる。沈殿を濾過により回収し、減圧下乾燥して、粉末mPEG−SBA−30Kを得て、それを次いで≦−15℃で凍結させる。
【0506】
B. mPEG−SBA−30KのrHuPH20へのコンジュゲーション
PEGPH20を製造するために、mPEG−SBA−30Kを、下記のとおり、rHuPH20とmPEGの間に安定なアミド結合を提供する、共有結合コンジュゲーションによりrHuPH20のアミノ基に結合させ、ここで、n≒681である。
【化6】
【0507】
コンジュゲーション前に、実施例4Bで製造したrHuPH20精製バルクタンパク質を、0.2m濾過面積の10kDaポリエーテルスルホン(PES)接線流フィルター(TFF)カセット(Sartorius)を使用して10mg/mLに濃縮し、緩衝液を70mM リン酸カリウム、pH7.2に交換した。濃縮タンパク質を使用するまで2〜8℃で保存した。
【0508】
rHuPH20を結合するために、mPEG−SBA−30K(Nektar)を室温で暗所で2時間を越えずに融解した。バッチサイズによって、無菌3”撹拌棒を1または3リットルエレンマイヤーフラスコに入れ、緩衝液交換rHuPH20タンパク質を添加した。rHuPH20 1gあたり5gの乾燥mPEG−SBA−30K粉末(mPEG−SBA−30K:rHuPH20の10:1モル濃度比)をドラフトチャンバー下にフラスコに添加し、混合物を10分またはmPEG−SBA−30Kが完全に溶解するまで撹拌した。撹拌速度をあわ立たずに渦が起こるように設定した。
【0509】
溶液を、クラス100フード下に蠕動ポンプを介して、0.22μmポリスチレン、酢酸セルロースフィルターカプセル(Corning 50mLチューブトップフィルター)を介して、無菌3号撹拌棒を含む新しい1または3リットルエレンマイヤーフラスコに溶液をポンプ輸送した。PEGPH20反応混合物の体積を質量(1g/mL密度)により決定し、濾過に使用した0.22μmフィルターを、使用後完全性試験で試験した。
【0510】
混合物を、2〜8℃で攪拌プレートに置き、20±1時間、暗所で混合した。撹拌速度を再びあわ立たずに渦が起こるように設定した。エレンマイヤー容器全体を、溶液を遮光するためにホイルで包んだ。混合後、最終濃度25mMまでの1M グリシン添加により反応停止させた。サンプルをpHおよび伝導率を試験するために容器から取った。pHおよび伝導率を、Qセファロース精製を行うために5mM Tris塩基5.65L/L)および5mM Tris、10mM NaCl、pH8.0(13.35L/L)溶液の添加により調節した。
【0511】
QFFセファロース(GE Healthcare)イオン交換カラム(高さ=21.5〜24.0cm、直径=20cm)を、5カラム体積(36L)の5mM Tris、10mM NaCl、pH8.0での平衡化により調節した。コンジュゲートした生成物を、95cm/時間の流速でQFFカラムに充填した。次いで、カラムを11Lの平衡緩衝液(5mM Tris、10mM NaCl、pH8.0)で、95cm/時間の流速で洗浄し、続いて25Lの平衡緩衝液で、268cm/時間の流速で洗浄した。次いでタンパク質生成物を5mM Tris、130mM NaCl、pH8.0で、268cm/時間の流速で溶出した。得られた精製PEGPH20を、0.2m濾過面積の30kDaポリエーテルスルホン(PES)接線流フィルター(TFF)カセット(Sartorius)を使用して3.5mg/mLに濃縮し、10mMヒスチジン、130mM NaCl、pH6.5に対して緩衝液交換した。得られた物質を、下記実施例6のとおりに酵素活性を試験した。3.5mg/mL濃度(最終酵素活性140,000U/mL)のペグ化rHuPH20物質を、3mL体積で、シリコン処理ブロモブチルゴム栓およびアルミニウムフリップオフシールを備えた5mLガラスバイアルに充填し、凍結した(一夜、−80℃冷凍庫で凍結させ、その後長時間保存のために−20℃冷凍庫に移した)。ペグ化rHuHP20は、rHuPH20 1モルあたりPEG約4.5モル含んだ。
【0512】
実施例6
可溶性rHuPH20のヒアルロニダーゼ活性の決定
細胞培養物、血漿、精製フラクションおよび精製溶液のようなサンプルの可溶性rHuPH20のヒアルロニダーゼ活性を、ヒアルロン酸が血清アルブミンと結合したときの不溶性沈殿の形成を利用する比濁法アッセイまたはプラスチック多ウェルマイクロタイタープレートに非共有結合的に結合したビオチニル化ヒアルロン酸(b−HA)基質の消化により酵素活性rHuPH20またはPEGPH20の量を測定するビオチニル化ヒアルロン酸基質アッセイを使用して決定した。
【0513】
A. 微小濁度アッセイ
可溶性rHuPH20のヒアルロニダーゼ活性を、可溶性rHuPH20とヒアルロン酸ナトリウム(ヒアルロン酸)を一定時間(10分間)インキュベートし、次いで未消化ヒアルロン酸ナトリウムを酸性化血清アルブミン添加により沈殿させることにより測定する。得られたサンプルの濁度を、640nmで30分間展開時間後に測定する。ヒアルロン酸ナトリウム基質上の酵素活性由来の濁度の減少は可溶性rHuPH20ヒアルロニダーゼ活性の指標である。本方法を、可溶性rHuPH20アッセイ作業標準品の希釈により作成した検量線を使用して行い、サンプル活性測定をこの検量線に対して行う。
【0514】
サンプル希釈を酵素希釈剤溶液で調製した。酵素希釈剤溶液を、33.0±0.05mgの加水分解ゼラチンを25.0mLの50mMのPIPES反応緩衝剤(140mMのNaCl、50mMのPIPES、pH5.5)および25.0mLの注射用滅菌水(SWFI)に溶解し、0.2mLの25%ブミネート溶液で混合物を希釈し、30秒間ボルテックス処理することにより調製した。これを使用前2時間以内に行い、必要となるまで氷上で保存した。サンプルを概算1〜2U/mLまで希釈した。一般に、工程あたりの最大希釈は1:100を超えず、最初の希釈用の初期サンプルサイズは少なくとも20μLであった。アッセイを実施するのに必要な最少サンプル容積は、工程内サンプル、FPLCフラクション:80μL;組織培養上清:1mL;濃縮物質80μL;精製または最終工程物質:80μLであった。希釈を低タンパク質結合96ウェルプレートで3連で行い、各希釈物の30μLをOptilux黒色/透明底プレート(BD BioSciences)に移した。
【0515】
濃度2.5U/mLの既知可溶性rHuPH20を、標準曲線作成のために酵素希釈剤溶液で作製し、Optiluxプレートに3連で添加した。希釈は0U/mL、0.25U/mL、0.5U/mL、1.0U/mL、1.5U/mL、2.0U/mL、および2.5U/mLを含んだ。60μLの酵素希釈剤溶液を含む“無試薬”ウェルを、プレートにネガティブコントロールとして包含させた。次いで、プレートを覆い、ヒートブロックで5分間、37℃で加温した。覆いを取り、プレートを10秒間振盪させた。振盪後、プレートをヒートブロックに戻し、MULTIDROP 384 Liquid Handlingデバイスを温かい0.25mg/mLのヒアルロン酸ナトリウム溶液(100mgのヒアルロン酸ナトリウム(LifeCore Biomedical)を20.0mLのSWFIに溶解することにより作製した。これを2〜8℃で2〜4時間または完全に溶解するまで穏やかな回転および/または振盪により混合した)で開始させた。反応プレートをMULTIDROP 384に移し、30μLのヒアルロン酸ナトリウムを各ウェルに分配させるためにスタートキーを押して、反応を開始させた。次いでプレートをMULTIDROP 384から除き、10秒間振盪させ、プレートカバーを置き換えたヒートブロックに移した。プレートを37℃で10分間インキュベートした。
【0516】
MULTIDROP 384を、血清作業溶液で機械をプライミングし、容積設定を240μLに変えることにより反応を停止させる準備をした。(25mLの血清ストック溶液[1容積のウマ血清(Sigma)を9容積の500mM酢酸緩衝液で希釈し、塩酸でpHを3.1に調節した]の75mLの500mM酢酸緩衝液)。プレートをヒートブロックから除き、MULTIDROP 384に置き、240μLの血清作業溶液をウェルに分配した。プレートを除き、プレートリーダー上で10秒間振盪させた。さらに15分間後、サンプルの濁度を640nmで測定し、各サンプルのヒアルロニダーゼ活性(U/mL)を標準曲線に適合させることにより決定した。
【0517】
比活性(単位/mg)を、ヒアルロニダーゼ活性(U/ml)をタンパク質濃度(mg/mL)で割ることにより計算した。
【0518】
B. ビオチニル化ヒアルロナンアッセイ
ビオチニル化ヒアルロン酸アッセイは、プラスチック多ウェルマイクロタイタープレートに非共有結合的に結合した高分子量(〜1.2メガダルトン)ビオチニル化ヒアルロン酸(b−HA)基質の消化により、生物学的サンプル中の酵素活性rHuPH20またはPEGPH20の量を測定する。対照およびサンプル中のrHuPH20またはPEGPH20を、b−HA被覆プレート上で37℃でインキュベートする。一連の洗浄後、残った未開裂/結合b−HAをストレプトアビジンホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート(SA−HRP)で処理する。固定化SA−HRPと発色性基質である3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)の間の反応により青色溶液が生じる。反応を酸で停止後、可溶性黄色反応生成物の形成を、マイクロタイタープレート分光光度計を使用する450nmでの吸光度の読み取りにより決定する。ビオチニル化ヒアルロン酸(b−HA)基質上の酵素活性による450nmでの吸光度の減少が、可溶性rHuPH20ヒアルロニダーゼ活性の指標である。本方法を、可溶性rHuPH20またはPEGPH20対照標準の希釈により作成した検量線を使用して行い、サンプル活性測定をこの検量線に対して行う。
【0519】
サンプルおよび検量用試料の希釈物をアッセイ希釈剤で調製した。アッセイ希釈剤を、1%v/v貯留血漿(適当な種から)を、0.1%(w/v)BSAのHEPES溶液、pH7.4に添加することにより調製した。これを毎日調製し、2〜8℃で保存した。種タイプならびに予測ヒアルロニダーゼレベルにより、1個または複数希釈物を調製して、少なくとも1個のサンプル希釈が検量線の範囲に入ることを隔日とした。試験サンプル希釈選択の指針として、投与したヒアルロニダーゼの投与量、投与経路、種の凡その血漿体積および時点に関する情報を、ヒアルロニダーゼ活性レベルに概算に使用した。各サンプル希釈物を、短い拍動渦巻きにより調製されるように混合し、各希釈の間にピペットチップを交換した。一般に、希釈を、最初50または100倍希釈で開始し、その後さらに希釈した。rHuPH20またはPEGPH20(投与した処置による)の7点検量線は、rHuPH20で0.004〜3.0U/mLおよびPEGPH20で0.037〜27U/mLの濃度範囲であった。100μLの各試験サンプル希釈および検量線点を、予め100μL/ウェルのb−HAで0.1mg/mL被覆し、250μLの1.0%(w/v)ウシ血清アルブミンのPBS溶液で遮断した96ウェルマイクロタイタープレート(Immulon 4HBX, Thermo)の3個のウェルに適用した。プレートを接着プレートシールで覆い、37℃で約90分インキュベートした。インキュベーション時間の最後に、接着シールをプレートから取り、サンプルを吸引し、プレートを300μL/ウェルの洗浄緩衝液(10mMリン酸緩衝液、2.7mM塩化カリウム、137mM塩化ナトリウム、pH7.4、0.05%(v/v) Tween 20、PBST含有)で、自動化プレート洗浄機(BioTek ELx405 Select CW, Program ‘4HBX1')を使用して5回洗浄した。100μLのストレプトアビジン−HRPコンジュゲート作業溶液[20mM Tris−HCl、137mM塩化ナトリウム、0.025%(v/v) Tween 20、0.1%(w/v)ウシ血清アルブミン中ストレプトアビジン−HRPコンジュゲート(1:5,000v/v)]をウェルあたりに添加した。プレートをシールし、環境温度で約60分、振盪せずに、遮光してインキュベートした。インキュベーション時間の最後に、接着シールをプレートから取り、サンプルを吸引し、プレートを、上記のとおり300μL/ウェル洗浄緩衝液で5回洗浄した。TMB溶液(環境温度で)を各ウェルに添加し、遮光して、約5分、室温でインキュベートした。次いでTMB停止溶液(KPL、Catalog # 50-85-06)を、100μL/ウェルで添加した。450nmでの各ウェルの吸光度を、マイクロタイタープレート分光光度計を使用して決定した。各プレート上の検量線の応答を、4パラメータロジスティックカーブフィットを使用してモデル化した。各未知のヒアルロニダーゼ活性を、検量線からの内挿により計算し、サンプル希釈計数で補正し、U/mLで表した。
【0520】
実施例7
高腫瘍周囲ヒアルロナン(HA)腫瘍モデルにおけるPEGPH20処置の効果
高レベルの腫瘍周囲HAに対するPEGPH20の効果を評価するために、BXPC3−Has3腫瘍細胞株を、HAマウス異種移植腫瘍モデルを確立するために作製した。BxPC3細胞(ATCC Cat. No. CRL-1687)を、標準培養条件下、完全RPMI培地で培養した。レンチウイルス系を作製して、ヒトヒアルロナンシンターゼ3 cDNA転写産物(配列番号212に示す)を発現させた。産生したhHAS3 cDNA発現レンチウイルスベクターを、pLV−EF1a−hHAS3−IRES−Hygと命名し、配列番号213に示す。BX−PC3−Has3安定細胞株を、pLV−EF1a−hHAS3−IRES−Hygでのウイルス感染と、続くハイグロマイシン選択により産生した。hHAS3を過発現するように感染した細胞を全実験に使用した。
【0521】
HAレベルを確認するために、腫瘍切片の色強度をAperioスペクトルプログラムで測定した。腫瘍を、腫瘍切片の25%を超える強HA染色でHA;腫瘍切片の10〜25%の強HA染色でHA;腫瘍切片の10%未満の強HA染色でHAと類別した。
【0522】
5〜6週齢で20〜25g体重のNCr(nu/nu)マウスに、右脛骨骨膜の横にBxPC−3−Has3細胞(5×10/50μL)を接種し、高圧腫瘍を産生した。固形腫瘍塊の長さ(L)および幅(W)をノギスで測定し、腫瘍体積(TV)を(L×W)/2として計算した。腫瘍体積が約1500〜2000mmに達したら、マウスを(1)BxPC3 HA、媒体対照または(2)BxPC3 HA、PEGPH20の2処置群に分けた。
【0523】
動物に媒体(10mMヒスチジン、pH6.5、130mM NaCl)またはPEGPH20(4.5mg/kg)を0時間目およびさらに42時間目に投与した。最初のPEGPH20または媒体対照処置(屠殺48時間前、すなわちt=0時間)と共に、動物はまた240mg/kgゲムシタビン腹腔内および10mg/kgパクリタキセル(アブラキサン(登録商標))静脈内処置した。屠殺2時間前(46時間)、動物をHYPOXYPROBETM(塩酸ピモニダゾール;Chemicon International, Temecula, CA)60mg/kgおよびまた0.5mLのBrdUで腹腔内処置した。屠殺5分前(48時間)、動物を、75%DMSO 過塩素酸1,1’−ジオクタデシル−3,3,3’,3’−テトラメチルインドカルボシアニン(DiI)に溶解した75μLの0.6mg/mL蛍光カルボシアニンで静脈内処置した。
【0524】
動物を48時間目に屠殺した。全腫瘍を回収し、組織をアルミニウムブロック上で−20℃に冷却し、包埋OCT媒体(Sakura Finetek, Torrance, CA)で覆い、薄片作製まで−80℃で保存した。腫瘍低温切片を10μm切片に切り、免疫組織化学用に処理するか顕微鏡造影した。血管灌流および腫瘍低酸素症に対する効果を評価した。
【0525】
A. 血管灌流
非染色、新鮮低温切片を、蛍光顕微鏡造影系で走査した(BD CARV II Confocal Imager, Sparks, MD;Quentem 512scカメラ(Photometrics, Tucson, AZ);MIV2000電動x−yステージおよびMetaMorph System, Sunnyvale, CA)。腫瘍切片全体を、腫瘍灌流を決定するために、蛍光カルボシアニン(DiI)シグナル(励起562nm/発光624nm)について10倍で走査した。画像をImage-Pro Analyzer 7.0(Media Cybermetrics, Bethesda, MD)を使用して分析した。全腫瘍面積および染色陽性面積を決定した。各腫瘍の血管灌流を全腫瘍切片を超える、陽性パーセンテージ(シグナル)として計算した。
【0526】
結果を表8に示す。結果は、PEG−PH20処置がBxPC3−HAS3腫瘍における色素灌流を介在し、対照処置腫瘍に対してPEGPH20処置マウスからの腫瘍において血管灌流の顕著な増加があったことを示す。表8に要約するとおり、PEGPH20で処置した動物は血管灌流の増加を示し、平均面積7.24±1.78であり、対照動物に対する116.9%増加であった。
【表8】
【0527】
B. 低酸素症
処置動物からの腫瘍切片を、塩酸ピモニダゾール(HYPOXYPROBETM)の可視化により低酸素領域を比較した。具体的に、屠殺後、非特異的染色についてヤギ血清で遮断している低温切片を、1時間、室温で、1:50希釈の抗ピモニダゾール抗体(HYPOXYPROBETM−1 Mab−1、マウスIgG;Chemicon International, Temecula, CA)でプローブして、ピモニダゾール付加物を検出するかまたは1:100希釈抗CD31抗体(ラット、BD Pharmingen, San Diego, CA)でプローブして内皮細胞をプローブした。一次試薬を除去するための洗浄後、FITCヤギ抗マウス二次抗体(HYPOXYPROBETM−1 Mab−1可視化のため、1:100希釈;Vector Labs Burlingame, CA, USA)またはTexas Redヤギ抗ラット二次抗体(CD31内皮細胞可視化のため;1:100希釈;Vector Labs Burlingame, CA, USA)を、二次試薬として、30分、室温で使用した。切片をImage-Pro Analyzer 7.0(Media Cybermetrics, Bethesda, MD)造影系を使用して造影した。CD31造影について、励起波長は562nmおよび発光波長624nmであった。塩酸ピモニダゾール(HYPOXYPROBETM)造影について、励起波長は490nmおよび発光波長は520nmであった。
【0528】
結果を表9に示す。結果は、HA除去を仲介するPEGPH20が、BxPC3−Has3腫瘍における低酸素症の減少をもたらすことを示した。対照動物は、全腫瘍切片で3.98±2.70%の平均低酸素面積パーセントを有した。PEGPH20で処置した動物は、腫瘍における低酸素症面積が減少し、平均面積0.86±1.07であり、これは対照動物に対する78%減少であった。
【表9】
【0529】
実施例8
高腫瘍周囲ヒアルロナン(HA)トリプルネガティブ乳癌腫瘍モデルにおけるPEGPH20およびnab−パクリタキセル組み合わせ処置の効果
MDA−MB−468トリプルネガティブ乳癌(TNBC)細胞株を作製してhHAS3A cDNA転写産物(配列番号212)を過発現させ、それによりHATNBCモデルを確立した。完全RPMI培地を使用する標準培養条件下で培養したMDA−MB−468細胞(ATCC Cat. No. HTB-132)に、上記hHAS3 cDNA発現レンチウイルスベクターpLV−EF1a−hHAS3−IRES−Hyg(配列番号213)を発現させ、その後ハイグロマイシン選択して、安定な、hHAS3発現細胞株MDA−MB−468/HAS3を産生した。
【0530】
RPMIに懸濁したMDA−MB−468/HAS3細胞をヌードマウスに注射した。腫瘍体積を上記のとおり測定した。17日目に、腫瘍が約300mmの体積に達したとき、動物を6処置群に分け、1)媒体;2)1mg/kg nab−パクリタキセル;3)3mg/kg nab−パクリタキセル;4)10mg/kg nab−パクリタキセル;5)4.5mg/kg PEGPH20;または6)1mg/kg nab−パクリタキセルおよび4.5mg/kg PEG20を静脈内投与した。腫瘍体積を3〜4日毎に45日間測定した。
【0531】
結果を図6に示す。媒体のみを投与した処置群1の動物は、実験の間中腫瘍増殖が進行した。実験最終日(62日目)、平均腫瘍サイズは体積が丁度倍を超えた。1mg/kgまたは3mg/kgのnab−パクリタキセルを投与した処置群2および3の動物の腫瘍は、細胞移植後17〜27日間(処置後0〜10日間)最初の(約30%)腫瘍体積減少を示したが、その後腫瘍増殖は媒体対照動物と比較して遅い速度で再生を始めた。実験最終日、平均腫瘍体積は出発体積の倍近かった。
【0532】
PEGPH20処置動物(群5)で見られた腫瘍増殖パターンは群2および3と類似していたが、最終日に群5の平均腫瘍サイズは群2および3よりわずかに小さかった。10mg/kg nab−パクリタキセルを投与した群4の動物の平均腫瘍サイズは、処置後最初の10日間(実験17〜27日目)は群2、3および5と同じ傾向を示したが、さらに11日間体積が減少し続け、実験の残りの期間を通してさらに30%減少が進行し、実験最終時に平均出発腫瘍体積の1/3である平均腫瘍体積となった。
【0533】
1mg/kg nab−パクリタキセルおよびPEGPH20の組み合わせ(群6)は、平均腫瘍体積の顕著な減少となった。これら結果は、nab−パクリタキセルおよびPEGPH20の組み合わせでの処置による相乗効果があり、それが同じ投与量での個々の処置と比較して、腫瘍増殖阻害に対する効果を顕著に改善することを示す。組み合わせ治療は、単剤療法(10mg/kg nab−パクリタキセル(群5))として10倍多いnab−パクリタキセルを投与された動物で観察されるのと同等の腫瘍体積減少をもたらし、これは、平均出発腫瘍体積の約1/3である最終平均腫瘍体積ももたらした。
【0534】
修飾は当業者には明白であるため、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]