特許第6042528号(P6042528)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6042528非粘着性コーティング用のプライマー組成物およびその製造のための方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042528
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】非粘着性コーティング用のプライマー組成物およびその製造のための方法。
(51)【国際特許分類】
   C09D 177/00 20060101AFI20161206BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20161206BHJP
   C09D 127/12 20060101ALI20161206BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20161206BHJP
   C09D 179/08 20060101ALI20161206BHJP
   C09D 127/18 20060101ALI20161206BHJP
   C09D 127/20 20060101ALI20161206BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20161206BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20161206BHJP
   B32B 15/088 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   C09D177/00
   C09D5/00 D
   C09D127/12
   C09D7/12
   C09D179/08 B
   C09D127/18
   C09D127/20
   C09D5/02
   B32B15/082 B
   B32B15/088
【請求項の数】21
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-505008(P2015-505008)
(86)(22)【出願日】2013年4月11日
(65)【公表番号】特表2015-518507(P2015-518507A)
(43)【公表日】2015年7月2日
(86)【国際出願番号】FR2013050793
(87)【国際公開番号】WO2013153337
(87)【国際公開日】20131017
【審査請求日】2015年1月8日
(31)【優先権主張番号】1253325
(32)【優先日】2012年4月11日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】594034072
【氏名又は名称】セブ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バーバラ ギャンチョン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−リュック ペリロン
(72)【発明者】
【氏名】オーレリアン デュバンシェ
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−184694(JP,A)
【文献】 特開2000−238205(JP,A)
【文献】 特表2002−538278(JP,A)
【文献】 特開2010−111844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 177/00
B32B 15/082
B32B 15/088
C09D 5/00
C09D 5/02
C09D 7/12
C09D 127/12
C09D 127/18
C09D 127/20
C09D 179/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともフルオロカーボン樹脂と、50から200mgのKOH/gの酸価を有するポリアミド−アミド酸と、ルイス塩基と、水と、組成物の全重量に対して5wt%未満の極性非プロトン性溶媒とを含む非粘着性コーティング用のプライマー組成物であって、
前記組成物中のポリアミド−アミド酸の量と、前記組成物中の極性非プロトン性溶媒の量との間の重量比は、少なくとも1.5であり、
前記ルイス塩基は、2−ブチルアミノエタノール、イソプロピルアミノエタノール、およびアミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールから選択されることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記組成物中のポリアミド−アミド酸の量と、前記組成物中の極性非プロトン性溶媒の量との間の重量比は、5から9の間に含まれることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物の全重量に対して1wt%未満の極性非プロトン性溶媒を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物の全重量に対して45wt%未満のプロピレングリコール、プロピレングリコールアセテート、アルコール、およびキシレンから成る群から選択される有機溶媒を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリアミド−アミド酸は、構造式[1]
【化1】
[式中、Rは、二価アリーレン基を表す]
のアミド−アミド酸単位と、構造式[2]
【化2】
のアミド−イミド単位とを含み、
前記アミド−イミド単位に対する前記アミド−アミド酸単位のモル比は、18:1から5:1であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記フルオロカーボン樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロプロピルビニルエーテルコポリマー(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロペンコポリマー(FEP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、MVA(TFE/PMVEコポリマー)、TFE/PMVE/FAVEターポリマー、ETFE、およびそれらの混合物を含む群から選択されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記フルオロカーボン樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびテトラフルオロエチレン−パーフルオロプロピルビニルエーテルコポリマー(PFA)の混合物(PTFE/PFA)、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロペンコポリマー(FEP)の混合物(PTFE/FEP)であることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記フルオロカーボン樹脂は、前記プライマー組成物の全乾燥重量の20wt%から98wt%に相当することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記フルオロカーボン樹脂は、前記プライマー組成物の全乾燥重量の50wt%から80wt%に相当することを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも1種の充填剤をさらに含むことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記充填剤は、前記プライマー組成物の全重量の40wt%未満に相当することを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記充填剤は、シリカまたはアルミナナノ粒子の形態であることを特徴とする請求項10または11に記載の組成物。
【請求項13】
非粘着性コーティング用のプライマー組成物を調製するための方法であって、
− 50から200mgのKOH/gの間に含まれる酸価を有するポリアミド−アミド酸と、
− 水性混合物中に、前記ポリアミド−アミド酸の酸性基を中和するために必要な化学量論的量の95%から250%に相当する量で存在する、ルイス塩基と、
− 水と、
− 前記組成物の全重量に対し5wt%未満の極性非プロトン性溶媒と
を含有する水性混合物を調製するステップと、
大気圧下、少なくとも40℃の温度で加熱することにより、前記水性混合物をエマルジョン化するステップと、
次いで、前記エマルジョンを、粉末の形態または水性分散液としてのフルオロカーボン樹脂と混合するステップと
を含み、
ポリアミド−アミド酸は、前記組成物中のポリアミド−アミド酸の量と、前記組成物中の極性非プロトン性溶媒の量との間の重量比が少なくとも1.5であるような量で存在し、
前記ルイス塩基は、2−ブチルアミノエタノール、イソプロピルアミノエタノール、およびアミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールから選択されることを特徴とする方法。
【請求項14】
前記組成物中のポリアミド−アミド酸の量と、前記組成物中の極性非プロトン性溶媒の量との間の重量比は、5から9の間に含まれることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記エマルジョンは、前記組成物の全重量に対して1wt%未満の極性非プロトン性溶媒を含むことを特徴とする、請求項13または請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記エマルジョン化するステップは、50から85℃の間に含まれる温度で行われることを特徴とする、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記エマルジョンの分散媒は、水であり、分散相は、5μm以下の平均直径を有する液滴の形態であることを特徴とする請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記液滴の前記平均直径は、20から500nmの間に含まれることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記液滴の前記平均直径は、300nm以下であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記エマルジョンは、前記組成物の全重量に対して45wt%未満のプロピレングリコール、プロピレングリコールアセテート、アルコール、およびキシレンから成る群から選択される有機溶媒を含むことを特徴とする請求項13から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
用品を製造するための方法であって、
2つの対向する面を有する金属基板を提供するステップと、
請求項1から12のいずれか一項に記載のプライマー組成物の少なくとも1つの層を、前記基板の面の一方に塗布するステップと、
少なくともフルオロカーボン樹脂を含む最終組成物の少なくとも1つの層を、プライマー組成物の前記層上に塗布するステップと、次いで
370℃から430℃の間に含まれる温度で全体を焼成するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、非粘着性コーティング用のフルオロカーボン樹脂系プライマー組成物に関する。本発明はまた、そのような組成物を調製するための方法、および、そのような組成物がその上に塗布される金属基板を備える用品を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非粘着性コーティング用のプライマー組成物は、一般に、結合樹脂として溶媒型ポリアミド−イミド(PAI)を含有する。重質(heavy)極性非プロトン性溶媒が、PAI系組成物中の溶媒として標準的に使用される。
【0003】
本出願の意味では、極性非プロトン性溶媒は、ゼロではない双極子モーメントを有し、水素結合を形成し得る水素を失った溶媒を意味するように理解される。そのような極性非プロトン性溶媒の例として、特に、NEP(N−エチルピロリドン)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等を挙げることができる。
【0004】
調理用品のための非粘着性コーティング用のプライマー組成物中の結合樹脂として、特に、VOCを生成する溶媒であり、潜在的に有毒で有害であるとみなされるN−エチルピロリドン(NEP)またはN−メチルピロリドン(NMP)中の30%乾燥抽出物を有する、溶媒型ポリアミド−イミド(PAI)樹脂が頻繁に使用される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】REGULATION (EC) No. 1272/2008 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 16 December 2008、
【非特許文献2】DIRECTIVE 2009/2/EC of the European Commission of 15 January 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主目的は、重質極性非プロトン性溶媒をほとんど、またはさらに全く含有せず、また好ましくは有機溶媒を含まない、非粘着性コーティング用のフルオロカーボン樹脂系およびPAI系プライマー組成物を製造することである。
【0007】
この技術的課題を解決するために、本出願者は、ポリアミド−アミド酸およびルイス塩基の混合物が水性媒体中で乳化される、水性プライマー組成物を調製するための方法を開発した。これによって、PAI結合樹脂を可溶化するための任意の極性非プロトン性溶媒および/または有機溶媒の使用を大きく制限またはさらに排除する一方で、配合物中に高含量のPA1樹脂を維持することができる。
【0008】
したがって、PAI結合樹脂が本質的に水中に乳化されている水性プライマー組成物が得られる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、より具体的には、本発明の目的は、フルオロカーボン樹脂と、50から200mgのKOH/gの間に含まれる酸価を有するポリアミド−アミド酸と、ルイス塩基と、水と、前記組成物の全重量に対して5wt%未満の極性非プロトン性溶媒とを含む非粘着性コーティング用のプライマー組成物であって、前記組成物中のポリアミド−アミド酸の量と、前記組成物中の極性非プロトン性溶媒の量との間の重量比(またはPAI/極性非プロトン性溶媒重量比)は、少なくとも1.5であり、好ましくは5から9の間に含まれ、より好ましくは約7であることを特徴とする方法である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
プライマーおよび中間体は依然としてラベル表示(labeling)義務の対象外であるため、1.5を超えるPAI/極性非プロトン性溶媒重量比は、塗布時の良好な安全性を確実にすることができる。
【0011】
本特許出願の意味では、ラベル表示は、溶媒および溶媒混合物がラベル表示義務の対象となる条件を意味するように理解される。これらの条件は、文書により定義されている(例えば、非特許文献1、および技術的進歩への適合を目的としたその改訂、例えば非特許文献2を参照されたい)。
【0012】
人間の健康のため、例えば、生殖に対して有毒なある特定の溶媒をある特定の限界値(現在の場合では組成物中約5%の極性非プロトン性溶媒)未満に維持することが好ましい。これらの限界値が順守されれば、規定およびその改訂により、問題の溶媒をいかなる実際の人間の健康問題も呈しないものとみなすことができ、したがって混合物は規定による分類の対象ではなく、よって、より厳しくない安全要件での使用および混合物に対する無ラベル表示が許容される。したがって、無ラベル表示またはラベル表示の免除は、問題の溶媒の非常に制約的な分類が混合物全体に拡張されないように、含量が十分に低いことを示すものとして解釈される。
【0013】
本発明によるプライマー組成物は、ラベル表示を必要としない。
【0014】
高いPAI/極性非プロトン性溶媒重量比(7付近)により、塗布における最大の安全性を確実にすることができる。
【0015】
水の蒸発を促進することにより乾燥を推進することが必要な工業的条件下では、むしろ1.5を若干超えるPAI/極性非プロトン性溶媒重量比を有するプライマーを使用したほうがよい。
【0016】
9を超える値も可能であり、さらに最大の安全性を提供するため望ましいが、現在の技術を考慮すると、費用を要する樹脂の精製(すなわち合成溶媒の排除)を必要とするため、コスト効率的ではない。
【0017】
少なくとも1.5のPAI/極性非プロトン性溶媒重量比はまた、非極性非プロトン性溶媒の割合を増加させることによっても得ることができるが、乾燥抽出物の若干の損失および揮発性有機化合物の含量の相対的増加と引き換えに行われる。
【0018】
全ての場合において、ラベル表示を必要としない本発明によるプライマー組成物は、高い乾燥抽出物を有し、したがって、所与の厚さのための層の数を低減することを可能にする。
【0019】
有利には、本発明によるプライマー組成物は、前記組成物の全重量に対して1wt%未満、好ましくは0.3wt%未満の極性非プロトン性溶媒を含む。
【0020】
そのようなプライマー組成物は、周囲温度であるか、またはさらに40℃であるかに関わらず、はるかに良好な経時的安定性を示し、経時的に変化しない粘度特性を有する。さらに、そのような組成物は、(溶媒系プライマー組成物と比較して)無臭であり、溶媒型配合物の15%超に対して、約1wt%から12wt%の低いVOC(揮発性有機化合物)レベル、好ましくは1wt%から5wt%の非常に低いレベルを特徴とする。
【0021】
基板、特に金属基板上への塗布、次いで約420℃の温度での焼成後、基板への優れた接着性を示すプライマー層が得られる。
【0022】
最後に、標準的には1または複数のフルオロカーボン樹脂系の仕上げ層で被覆される、本発明によるプライマー組成物を含む非粘着性コーティングは、1または複数のプライマー層が極性非プロトン性溶媒のみ、または少なくとも33%のそのような溶媒を含有する混合物中に溶解したPAIから得られた非粘着性コーティングと同等の耐腐食および耐磨耗特性を示す。
【0023】
本発明の範囲内において(低濃度で)使用可能な極性非プロトン性溶媒として、特に、NEP(N−エチルピロリドン)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等を含む群から選択される溶媒を挙げることができる。
【0024】
有利には、本発明によるプライマー組成物は、組成物の全重量に対して45wt%未満、好ましくは20wt%未満、より好ましくは10wt%未満の非極性非プロトン性溶媒をさらに含んでもよい。
【0025】
本発明の範囲内において使用可能な非極性非プロトン性有機溶媒として、特に、プロピレングリコール、プロピレングリコールアセテート、アルコール、キシレン等の芳香族化合物等を挙げることができる。
【0026】
本発明によるプライマー組成物中に使用可能なルイス塩基として、特に、ヒドロキシル化または非ヒドロキシル化第2級脂肪族アミン、ヒドロキシル化第1級アミン、イミダゾール、イミダゾリン、および第2級ヘテロ環式アミンを挙げることができる。
【0027】
本発明の範囲内において、ルイス塩基として、2−ブチルアミノエタノール、イソプロピルアミノエタノール、およびアミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールを使用することが好ましい。
【0028】
有利には、ポリアミド−アミド酸は、構造式[1]
【0029】
【化1】
【0030】
[式中、Rは、二価アリーレン基を表す]
のアミド−アミド酸単位であって、アミド−アミド酸単位と、構造式[2]
【0031】
【化2】
【0032】
のアミド−イミド単位とを含むことができ、前記アミド−イミド単位に対する前記アミド−アミド酸単位のモル比は、18:1から5:1の間に含まれる。
【0033】
本発明によるプライマー組成物のフルオロカーボン樹脂は、有利には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロプロピルビニルエーテルコポリマー(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロペンコポリマー(FEP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、MVA(TFE/PMVEコポリマー)、TFE/PMVE/FAVEターポリマー、ETFE、およびそれらの混合物を含む群から選択され得る。
【0034】
フルオロカーボン樹脂として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびテトラフルオロエチレン−パーフルオロプロピルビニルエーテルコポリマー(PFA)の混合物(PTFE/PFA)、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロペンコポリマー(FEP)の混合物(PTFE/FEP)を使用することが好ましい。
【0035】
有利には、フルオロカーボン樹脂は、プライマー組成物の全乾燥重量の20wt%から98wt%、好ましくは50wt%から80wt%に相当し得る。
【0036】
有利には、本発明によるプライマー組成物は、プライマー組成物の全乾燥重量の40wt%未満、好ましくは5wt%から20wt%に相当し得る少なくとも1種の充填剤をさらに含んでもよい。
【0037】
本発明の範囲内において、充填剤としてシリカまたはアルミナナノ粒子を使用することが好ましい。
【0038】
本発明のさらなる目的は、プライマー組成物を調製するための方法であって、
− 50から200mgのKOH/gの間に含まれる酸価を有するポリアミド−アミド酸と、
− 前記水性混合物中に、前記ポリアミド−アミド酸の酸性基を中和するために必要な化学量論的量の95%から250%に相当する量で存在する、ルイス塩基と、
− 水と、
− 前記組成物の全重量に対し5wt%未満の極性非プロトン性溶媒と
を含有する水性混合物を調製するステップと、
大気圧下、少なくとも40℃の温度、好ましくは50から85℃の間に含まれる温度で加熱することにより、前記水性混合物を乳化するステップと、
−次いで、前記エマルジョンを、粉末形態または水性分散液としてのフルオロカーボン樹脂と混合するステップと
を含み、ポリアミド−アミド酸は、前記組成物中の極性非プロトン性溶媒の量に対する前記組成物中のポリアミド−アミド酸の量の重量比が少なくとも1.5、好ましくは5から9、より好ましくは約7であるような量で存在することを特徴とする方法である。

【0039】
組成物の全重量に対して1wt%未満、好ましくは0.3wt%未満の極性非プロトン性溶媒を含むプライマー組成物が好ましい。
【0040】
組成物中の非常に低い含量の極性非プロトン性溶媒により、揮発性有機化合物(VOC)の放出を極めて大幅に制限するだけでなく、特に健康的で安全な配合物を得ることができる。実際に、5%未満、またはさらに0.3%未満の含量では、配合物は生殖に有毒である、またはさらに刺激性であるとはもはやみなされない。したがって、払われなければならない注意が簡素化されるため、配合物の取扱いが容易化される。
【0041】
ルイス塩基、ポリアミド−アミド酸、および極性非プロトン性溶媒は、前に定義された通りである。
【0042】
非極性非プロトン性有機溶媒も同様に、上で定義された通りである。これは、揮発性有機化合物の排出に寄与するものの、揮発性物質の蒸発を調整するため、および密着したフィルムの形成を促進するために結局は組成物中に必要となり得る。
【0043】
有利には、本発明によるプライマー組成物は、組成物の全重量に対して45wt%未満、好ましくは20wt%未満、より好ましくは10wt%未満の非極性非プロトン性有機溶媒を含んでもよい。
【0044】
本発明の方法に従い調製されたプライマー組成物は、分散媒が水であり、分散相が、有利には、5μm以下、好ましくは20から500nmの間に含まれる、より好ましくは20から300nmに含まれる平均直径を有する液滴の形態であるエマルジョンである。
【0045】
本発明のさらなる目的は、用品を製造するための方法であって、
2つの対向する面を有する金属基板を提供するステップと、
前に定義されたようなプライマー組成物の少なくとも1つの層を、前記基板の面の一方に塗布するステップと、
少なくとも1種のフルオロカーボン樹脂を含む最終組成物の少なくとも1つの層を、プライマー組成物の前記層上に塗布するステップと、次いで
370℃から430℃の間に含まれる温度で全体を焼成するステップと
を含む方法である。
【0046】
最後に、本発明のさらに別の目的は、本発明による用品を製造する方法により得られる用品である。
【0047】
異なる形状を有し、異なる材料で作製された異なる種類の本発明による用品が考えられる。
【0048】
したがって、そのような用品は、金属、ガラス、セラミック、およびプラスチックから選択される材料で作製された支持体を有するものであってもよい。
【0049】
有利には、本発明の方法において使用可能な金属支持体として、陽極酸化もしくは非陽極酸化アルミニウムもしくはアルミニウム合金、研磨、艶消し、ビーズブラスト、サンドブラスト、もしくは化学処理されたアルミニウム、または研磨、艶消し、もしくはビーズブラストされたステンレススチールもしくは鋳鉄、またはアルミニウム、チタン、または鍛造もしくは研磨された銅支持体を挙げることができる。
【0050】
本発明による用品は、特に調理用品であってもよく、特に支持体を備えてもよく、その面の一方は、前記用品内に配置された食品に接触するように意図される内側面を構成し、その他方の面は、熱源に接触するように意図される凸状外側面である。
【0051】
本発明による調理用品の非限定的な例として、特に、キャセロール鍋およびソテーパン、中華鍋およびソースパン、ダッチオーブンおよびスキレット、圧力鍋、クレープメーカー、グリル、ベーキング缶およびシート、ラクレットカップ(raclette cup)、バーベキューグリルおよびシート、調理用ボウル、フライ鍋用バットならびに炊飯器等の調理用品を挙げることができる。
【0052】
料理の分野だけに限定されない他の種類の支持体もまた考えられる。したがって、衣服用アイロン、ヘアカーラーおよびストレートアイロン等、および断熱ポット(例えばコーヒーメーカー用)、またはミキシングボウル等の家庭用電化製品が、本発明による用品として考えられる。
【0053】
以下の例において、本発明をより詳細に説明する。
【0054】
別段に指定されない限り、これらの例におけるパーセンテージおよび割合は全て、重量パーセントとして表現される。
【0055】
[実施例]
(生成物)
(支持体)
− 主要な2つの面がサンドブラストされたアルミニウム支持体(4から6μmの間に含まれる測定された算術平均表面粗度Raを有する);
− 平滑で簡単に脱脂されたアルミニウム支持体。
【0056】
(水性中間混合物)
アミン:
− TAMINCO社からAdvantex(登録商標)の商品名で販売されている2−ブチル−アミノエタノール
特性:
CAS番号:111−75−1;
分子量Mw:117.2g/mol;
B.P.=199℃(沸点);
引火点=96℃、pKa=10、密度:0.891;
ごく僅かな臭気。
− ARKEMA社からAlpamine(登録商標)N41の商品名で販売されているイソプロピルアミノエタノール(IPAE)
特性:
アミンのCAS番号:35265−04−4;
B.P.=186℃(沸点);
引火点=85℃、pKa=9.9。
− Angus−DOW CHEMICAL社からAEPD(商標)VOX1000の商品名で販売されているアミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール(AEPD)
特性:
アミンのCAS番号:115−70−8;
分子量Mw:119g/mol;
B.P.=259℃(沸点);
引火点=119℃、pKa=8.8。
− トリエチルアミン
CAS番号:121−44−8;
B.P.=89℃、pKa=10.8;
非常に強いアミン臭。
【0057】
35%の乾燥抽出物および5wt%未満のNMPを有する粉末ポリアミド−アミド酸;
NEP(n−エチルピロリドン)中の29%乾燥抽出物を有するポリアミド−イミド樹脂(PAI)
【0058】
(水性プライマー組成物)
充填剤:約220m/gの比表面積を有し、30%乾燥抽出物を有する水性分散液の形態の非表面修飾コロイド状シリカ;
25%乾燥抽出物を有するカーボンブラック分散液;
60%乾燥抽出物を有するPTFE分散液;
13%乾燥抽出物を有するエトキシル化アルキルフェノール系非イオン性界面活性剤系;
プロピレングリコール(有機溶媒)。
【0059】
試験
(水性中間混合物中の乾燥抽出物の決定)
(原理)
生成物の乾燥抽出物は、それが含有する揮発性物質の蒸発後に残留した固体残渣部分である。高沸点を有する溶媒、モノマー画分、反応性希釈剤、および反応副生成物(その保持率に依存する)は、フィルムを非常にゆっくりと形成させるため、乾燥温度および期間が重要な役割を担う。したがって、非常に従来的な様式での実践に可能な限り近い標準化された乾燥条件を定義することが、非常に重要である。
【0060】
(手順)
この乾燥抽出物は、以下のように測定される。
アルミニウムカップを秤量する:m=カップの重量;
0.5から3gの分析される生成物を入れる;
充填されたカップを秤量する:m=充填されたカップの重量;
−m=乾燥前の試料の重量;
カップを210℃に設定された炉内に2時間設置する;
乾燥後、および冷却後、カップを秤量する:重量m
−m=乾燥後の試料の重量;
乾燥抽出物は、以下の式(1)により得られる。
乾燥抽出物=100×(m−m)/(m−m)(1)
【0061】
(水性中間混合物または水性プライマー組成物の粘度安定性の評価)
噴霧により塗布される水性中間体(PTFEを含まない)またはプライマー(PTFEおよび充填剤を含む)混合物からなる組成物の粘度安定性は、DIN EN ISO 2433/ASTM D5125標準に従い、2.5カップまたは4カップを用いて流動時間を測定することにより評価される。
− 粘度は、較正されたオリフィスを通した、カップの体積の秒で表現される連続流動時間に対応する。カップの選択は、生成物の推定粘度に基づいてなされる;
− 組成物の調製直後の周囲温度における標準化された体積の連続流動時間を測定し、周囲温度におけるこの粘度の経時的な変化を監視することにより、粘度の変化を監視する;
− 配合されたら、組成物を40℃の炉内に設置し、次いで経時的な流動時間の変化、ひいては粘度の変化を監視する(40℃でのエージング後のエマルジョンの安定性の評価)。
【0062】
(光回折による粒径および粒径分布の測定)
PTFEを含まない水性中間混合物中に含有される粒子のサイズは、可変速度流体モジュールを備えたBeckman Coulter LS230レーザ粒度分布計を使用した光回折により決定される。測定の原理は以下の通りである。
− 試料を大容積の水に希釈する。
− 平均粒径値を得るために、6回測定を行う。
− 粒度分布計は、体積および数粒径分布を測定し、数平均が保持される。
【0063】
(非粘着性コーティングの耐摩耗性の評価)
非粘着性コーティングの耐摩耗性は、サンドブラストされたアルミニウム基板上で評価される。これは、以下のように行われる。
− 接着プライマー組成物(実施例6から9において定義される)を基板上に塗布し、接着プライマーの湿った層を形成し、次いで
− 組成物100g当たりの組成が以下に示される最終組成物F(実施例6から9のプライマー組成物のそれぞれについて行われた各試験に対して同一)を、このプライマー層に塗布する。
【0064】
最終組成物F
PTFE分散液(60%乾燥抽出物): 80.6g
PFA分散液(50%乾燥抽出物): 0.5g
ランプブラック(25%乾燥抽出物): 0.02g
展着剤(界面活性剤): 2.23g
水: 8.02g
キシレン: 6.50g
アクリルコポリマー>95%: 0.6g
トリエタノールアミン: 0.22g
金属グリッター: 0.2g
プロピレングリコール: 1.11g
合計: 100.00g
【0065】
AFNOR NF D21−511 $ 3.3.7標準に従い行われるこの試験は、以下からなる。
一方で、SCOTCH BRITE(登録商標)緑研磨パッドの作用下に供することによる非粘着性コーティング(プライマー層および仕上げ層を備える)の引っかき抵抗性の評価(引っかき抵抗性は、最初の引っかき(支持体の構成金属の出現に対応する)を形成するのに必要なパッドの通過回数により定量的に推定される)、および
他方で、試験中のコーティングの非粘着性の喪失の評価(これは、コーティングの非粘着性の喪失までに完了したサイクル数により定量的に推定される(NFD 21−511標準に従う炭化牛乳試験(carbonized milk test)):後者は、炭化した牛乳の洗浄の容易さまたは困難さに対して測定される)。格付けは以下の通りである。
− 100:炭化した牛乳の膜が、台所の蛇口からの水の噴流を単純に適用することにより完全に除去されることを示す;
− 50:炭化膜を完全に除去するために、水の噴流下で物体の円形の動きを追加する必要があることを示す;
− 25:膜を完全に除去するために、10分間浸漬すること、および恐らくは湿ったスポンジで拭き取ることが必要であることを示す;
− 0:上記プロセス後、炭化膜の全てまたは一部が粘着したままであることを示す。
【0066】
(平滑アルミニウム基板上のプライマー層の接着性の評価)
ISO 2409標準に従うクロスハッチ試験を行い、続いて用品の18時間の含浸(沸騰水中で3時間の3サイクルと、200℃の油中で3時間の3サイクルとを交互に行うことからなる)を行う。次いで、非粘着性コーティングを検査し、剥離しているか、またはしていないかを決定する。
【0067】
格付けは以下の通りである。
100の格付けを得るためには、四角形が剥離し得ない(優れた接着性);
剥離した場合、記録される値は100−剥離した四角形の数に等しい。
【0068】
平滑アルミニウム基板上の非粘着性コーティングの耐腐食性の評価
平滑アルミニウム基板上の非粘着性コーティングの耐腐食性は、腐食する金属基板への塩の拡散に対するその抵抗性を評価することにより評価される。
【0069】
これは、以下のように行われる。
− 接着プライマー組成物(実施例6から13において定義される)を基板上に塗布し、接着プライマーの湿った層を形成し;次いで
− 最終組成物F(実施例6から13のプライマー組成物のそれぞれについて行われた各試験に対して同一)を、このプライマー層に塗布する;
− このようにしてコーティングされた基板を、沸点に達した生理食塩水中に20時間含浸する。この生理食塩水は、10wt%の塩化ナトリウムを含む。この試験のプロトコルは、AFNOR NF D21−511 $3.3.5.標準に定義されている;
− 各含浸後、コーティングの最終的外観を目視検査し、腐食の痕跡の存在または非存在が確認される(肉眼または双眼顕微鏡での目視観察により)。実際には、これは、ゾーンの拡張を伴う気泡、コーティングの下の白いマーク等の任意のマークの可能性のある存在の検出を含む;
− この観察後、ISO 2409標準に従いクロスハッチ試験を行う。
【0070】
(実施例1)
2−ブチルアミノエタノール系水性中間混合物SF1(1wt%未満の極性非プロトン性溶媒を含む)の調製
それぞれの量がgで示される以下の化合物を含む水性中間混合物SF1を調製する。
− 2−ブチルアミノエタノール :26g
− ポリアミド−アミド酸
(35%の乾燥抽出物および5%未満のNMPを含む) :149g
− 蒸留水 :580g
合計 :755g
【0071】
混合物SF1中、水/アミン重量比は、ポリアミド−アミド酸の末端カルボキシル基に対して大過剰のアミンが存在するように、約94/6である。混合物中のアミンの重量パーセントは、5%である。混合物SF1中の極性非プロトン性溶媒の含量は、混合物の全重量に対して1wt%未満である。
【0072】
水性中間混合物SF1は、以下のように調製される。
水およびアミンを反応器内に導入する;
得られた混合物を撹拌し、次いで65℃+/−5℃の温度に加熱する;
次いで、ポリアミド−アミド酸粉末を、撹拌しながら混合物に添加する;
このようにして得られた混合物を、撹拌しながら、少なくとも2時間30分、および最長5時間まで65℃に維持する。
【0073】
このようにして得られた水性混合物SF1は、以下の特性を有する。
− 理論乾燥抽出物:6.9%、
− 溶液中で測定された乾燥抽出物:8%、
− 混合物は、乳白色の非常に流動性のエマルジョンである、
− 粘度(DIN EN ISO 2433/ASTM D5125標準に従う2.5カップにおいて):50秒、
− 40℃でのエージング後、エマルジョンSF1は、60日間の保存後まだ安定であり、粘度の変化は20%未満である。
【0074】
レーザ粒度分布計を使用した光回折による粒径の測定は、135nmの平均直径に集中した主要ピークが得られ、4μmを超える粗大粒子は存在しないことを示した。4μmを超える粒子が存在しないことは、粉末の全てが乳化されたことを確証するものである。
【0075】
(実施例2)
イソプロピルアミノエタノール系水性中間混合物SF2(1wt%未満の極性非プロトン性溶媒を含む)の調製
それぞれの量がgで示される以下の化合物を含む水性中間混合物SF2を調製する。
− イソプロピルアミノエタノール(IPAE) :26g
− ポリアミド−アミド酸
(35%の乾燥抽出物および5%未満のNMPを含む) :149g
− 蒸留水 :355g
合計 :530g
【0076】
混合物SF2中、水/アミン重量比は、ポリアミド−アミド酸の末端カルボキシル基に対して大過剰のアミンが存在するように、約94/6である。混合物中のアミンの重量パーセントは、5%である。ポリアミド−アミド酸/アミン重量比は、67/33である。混合物SF2中の極性非プロトン性溶媒の含量は、混合物の全重量に対して1wt%未満である。
【0077】
水性中間混合物SF2は、実施例1と同様の様式で作製される。
【0078】
このようにして得られた水性混合物SF2は、以下の特性を有する。
− 理論乾燥抽出物:9.8%、
− 溶液中で測定された乾燥抽出物:11%、
− 混合物は、乳白色の非常に流動性のエマルジョンである、
− 粘度(DIN EN ISO 2433/ASTM D5125標準に従う2.5カップにおいて):70秒、
− 40℃でのエージング後、エマルジョンSF2は、50日間の保存後安定であり、粘度の変化は20%未満である。
【0079】
(実施例3)
アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール系水性中間混合物SF3(1wt%未満の極性非プロトン性溶媒を含む)の調製
それぞれの量がgで示される以下の化合物を含む水性中間混合物SF3を調製する。
− ポリアミド−アミド酸
(35%の乾燥抽出物および5%未満のNMPを含む) :149g
− アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール :26g
− 蒸留水 :265g
合計 :440g
【0080】
混合物SF3中、水/アミン重量比は、ポリアミド−アミド酸の末端カルボキシル基に対して大過剰のアミンが存在するように、約94/6である。混合物中のアミンの重量パーセントは、5%である。ポリアミド−アミド酸/アミン重量比は、68/32である。混合物SF3中の極性非プロトン性溶媒の含量は、混合物の全重量に対して1wt%未満である。
【0081】
水性中間混合物SF3は、実施例1と同様の様式で作製される。
【0082】
このようにして得られた水性混合物SF2は、以下の特性を有する。
− 理論乾燥抽出物:12%、
− 溶液中で測定された乾燥抽出物:13%、
− 混合物は、乳白色の非常に流動性のエマルジョンである、
− 粘度(DIN EN ISO 2433/ASTM D5125標準に従う2.5カップにおいて):250秒、
− 40℃でのエージング後、エマルジョンSF3は、60日間の保存後まだ安定であり、粘度の変化は20%未満である。
【0083】
(比較例4)
約71wt%の極性非プロトン性溶媒を含むポリアミド−イミド樹脂系PAI水性中間混合物SFC4の調製
それぞれの量が組成物1000g当たりのgで示される以下の化合物を含む中間体の水性混合物SFC4を調製する。
− NEP中の29%乾燥抽出物を含むPAI樹脂 :327.9g
− N−エチルピロリドン極性非プロトン性溶媒 :117.7g
− トリエチルアミン :32.8g
− 蒸留水 :521.6g
合計 :1000g
【0084】
PAIの溶解は、PAIを粉砕するステップを含み、上述の化合物の粉砕は、Discontimill(登録商標)ボールミル内で、周囲温度で2から5時間の範囲の期間行われる。
【0085】
混合物SFC4中、水/アミン重量比は、約94/6である。混合物中のアミンの重量パーセントは、3.3%である。ポリアミド−アミド酸/アミン重量比は、74/26である。混合物SFC4中の極性非プロトン性溶媒の含量は、混合物の全重量に対して35wt%である。
【0086】
このようにして得られた水性混合物SFC4は、以下の特性を有する。
− 理論乾燥抽出物:9.5%、
− 溶液中で測定された乾燥抽出物:9.3%、
− 混合物は、非常に粘稠性の半透明黄色溶液である、
− 粘度(DIN EN ISO 2433/ASTM D5125標準に従う4カップにおいて):130秒、
− 40℃でのエージング後、エマルジョンSFC4は、10日間の保存後にもはや安定ではなく、分離して、底の部分が著しく高粘度化していた。
【0087】
(実施例5)
トリエチルアミン系水性中間混合物SF5(5wt%未満の極性非プロトン性溶媒を含む)の調製
それぞれの量がgで示される以下の化合物を含む水性中間混合物SF5を調製する。
− ポリアミド−アミド酸
(35%の乾燥抽出物および5%未満のNMPを含む) :103g
− トリエチルアミン :21.4g
− 蒸留水 :485g
合計 :609.4g
【0088】
水性中間混合物SF5は、以下のように調製される。
水およびトリエチルアミンの混合物を反応器内に導入する;
得られた混合物を撹拌し、次いで65℃+/−5℃の温度に加熱する;
次いで、粉末化ポリアミド−アミド酸を、撹拌しながら混合物に添加する;
このようにして得られた混合物を、撹拌しながら、少なくとも5時間、および最長10時間まで65℃に維持する。
【0089】
このようにして得られた水性混合物SF5は、以下の特性を有する。
− 理論乾燥抽出物:6%、
− 溶液中で測定された乾燥抽出物:6.3%、
− 混合物は、粘稠性の蜂蜜色の半透明生成物である、
− 粘度(DIN EN ISO 2433/ASTM D5125標準に従う4カップにおいて):50秒、
− 40℃でエージング後、生成物は、たった10日間の保存後にゲルを形成する(流動せず、粘度は測定不可能)。
【0090】
(実施例6)
実施例1の中間体SF1からの水性プライマー組成物P1の調製
それぞれの量が組成物100g当たりのgで示される以下の化合物を含む接着プライマー組成物P1を調製する。
− PTFE分散液(60%乾燥抽出物) :34.36g
− カーボンブラック分散液(25%乾燥抽出物) :3.95g
− 中間体SF1(6.9%乾燥抽出物) :41.89g
− エトキシル化アルキルフェノール系非イオン性界面活性剤系(13%):5.81g
− コロイド状シリカ(30%乾燥抽出物) :12.37g
− 蒸留水 :1.62g
合計 :100g
【0091】
プライマー中のアミンの含量は、2%未満である。プライマー組成物中の極性非プロトン性溶媒の含量は、0.3%未満である。有機溶媒の含量は、5%未満である。プライマー配合物中の水の含量は、65%から68%の間に含まれる。
【0092】
全組成物中のPAI樹脂の含量は、2.89%である。
【0093】
全組成物中の極性非プロトン性溶媒(NMP)の含量は、0.41%である。
【0094】
プライマー組成物P1中のポリアミド−アミド酸の量と、プライマー組成物P1中の極性非プロトン性溶媒(NMP)の量との間の重量比(PAI/PAS比、PASは極性非プロトン性溶媒を指す)は、7.05である。
【0095】
プライマー組成物P1を調製するために、上述の他の化合物の全てを、水性中間体SF1に添加する。
【0096】
このようにして得られたプライマー組成物P1は、以下の特性を有する。
− プライマーの測定された乾燥抽出物:29.5%、
− 粘度(DIN EN ISO 2433/ASTM D5125標準に従う2.5カップにおいて):50秒、
− 揮発性有機化合物の含量は、1.86%である。
【0097】
(実施例7)
実施例2の中間体SF2からの水性プライマー組成物P2の調製
それぞれの量が組成物100g当たりのgで示される以下の化合物を含む接着プライマー組成物P2を調製する。
− PTFE分散液(60%乾燥抽出物) :31.52g
− カーボンブラック分散液(25%乾燥抽出物) :3.62g
− 中間体SF2(9.8%乾燥抽出物) :38.43g
− エトキシル化アルキルフェノール系非イオン性界面活性剤系(13%):5.33g
− コロイド状シリカ(30%乾燥抽出物) :11.35g
− プロピレングリコール :8.26g
− 蒸留水 :1.49g
合計 :100g

【0098】
プライマー中のアミンの含量は、2%未満である。組成物中の極性非プロトン性溶媒の含量は、0.3%未満である。有機溶媒の含量は、8%から10%の間に含まれる。プライマー配合物中の水の含量は、60%から63%の間に含まれる。
【0099】
全組成物中のPAI樹脂の含量は、3.78%である。
【0100】
全組成物中の極性非プロトン性溶媒(NMP)の含量は、0.54%である、
プライマー組成物P2中のポリアミド−アミド酸の量と、プライマー組成物P2中の極性非プロトン性溶媒(NMP)の量との間の重量比(PAI/PAS比)は、7である。
【0101】
プライマー組成物P2を調製するために、上述の他の化合物の全てを、水性中間体SF2に添加する。
【0102】
このようにして得られたプライマー組成物P2は、以下の特性を有する。
− プライマーの測定された乾燥抽出物:26.5%、
− 粘度(DIN EN ISO 2433/ASTM D5125標準に従う2.5カップにおいて):49秒、
− 揮発性有機化合物の含量は、11.38%である。
− 大量の非極性非プロトン性溶媒(プロピレングリコール)の存在は、工業的条件下でのプライマーの乾燥を促進する。
【0103】
(比較例8)
実施例4の中間体SFC4からの水性プライマー組成物P3の調製
それぞれの量が組成物1000g当たりのgで示される以下の化合物を含む接着プライマー組成物P3を調製する。
− PTFE分散液(60%乾燥抽出物) :318g
− カーボンブラック分散液(25%乾燥抽出物) :41g
− 中間体SFC4(9.5%乾燥抽出物) :434g
− エトキシル化アルキルフェノール系非イオン性界面活性剤系(13%):21g
− コロイド状シリカ(30%乾燥抽出物) :62g
− NH4OH(d=0.9) :2g
− 蒸留水 :122g
合計 :1000g
【0104】
プライマー中のアミンの含量は、1から2%の間に含まれる。組成物中の極性非プロトン性溶媒の含量は、16から18%の間に含まれる。有機溶媒の含量は、5%未満である。プライマー配合物中の水の含量は、50から55%の間に含まれる。
【0105】
全組成物中のPAI樹脂の含量は、4.13%である。
【0106】
全組成物中の極性非プロトン性溶媒(NEP)の含量は、0.54%である。
【0107】
プライマー組成物PC3中のポリアミド−アミド酸の量と、プライマー組成物PC3中の極性非プロトン性溶媒(NEP)の量との間の重量比(PAI/PAS比)は、15.21%である。
【0108】
プライマー組成物PC3を調製するために、上述の他の化合物の全てを、水性中間体SFC4に添加する。
【0109】
このようにして得られたプライマー組成物PC3は、以下の特性を有する。
− プライマーの測定された乾燥抽出物:26.5%、
− 粘度(DIN EN ISO 2433/ASTM D5125標準に従う2.5カップにおいて):50秒、
− 揮発性有機化合物の含量は、16.9%である。
【0110】
(実施例9)
実施例5の中間体SF5からの水性プライマー組成物P4の調製
それぞれの量が組成物100g当たりのgで示される以下の化合物を含む接着プライマー組成物P4を調製する。
− PTFE分散液(60%乾燥抽出物) :34.36g
− カーボンブラック分散液(25%乾燥抽出物) :3.95g
− 中間体SF5(6.3%乾燥抽出物) :41.89g
− エトキシル化アルキルフェノール系非イオン性界面活性剤系(13%):5.81g
− コロイド状シリカ(30%乾燥抽出物) :12.37g
− 蒸留水 :1.62g
合計 :100g
【0111】
プライマー中のアミンの含量は、2%未満である。プライマー組成物中の極性非プロトン性溶媒の含量は、0.3%未満である。有機溶媒の含量は、5%未満である。プライマー配合物中の水の含量は、65%から68%の間に含まれる。
【0112】
全組成物中のPAI樹脂の含量は、2.48%である。
【0113】
全組成物中の極性非プロトン性溶媒(NMP)の含量は、0.35%である。
【0114】
プライマー組成物P4中のポリアミド−アミド酸の量と、プライマー組成物P4中の極性非プロトン性溶媒(NMP)の量との間の重量比(PAI/PAS比)は、7.08である。
【0115】
プライマー組成物P4を調製するために、上述の他の化合物の全てを、水性中間体SF5に添加する。
【0116】
このようにして得られたプライマー組成物P4は、以下の特性を有する。
− プライマーの測定された乾燥抽出物:29.1%、
− 粘度(DIN EN ISO 2433/ASTM D5125標準に従う2.5カップにおいて):49秒、
− 揮発性有機化合物の含量は、2.58%である。
【0117】
(実施例10)
実施例1の中間体SF1からの水性プライマー組成物P5の調製
それぞれの量がgで示される以下の化合物を含む接着プライマー組成物P5を調製する。
− PTFE分散液(60%乾燥抽出物) :34.36g
− カーボンブラック分散液(25%乾燥抽出物) :3.95g
− 中間体SF1(6.9%乾燥抽出物) :41.89g
− エトキシル化アルキルフェノール系非イオン性界面活性剤系(13%):5.81g
− コロイド状シリカ(30%乾燥抽出物) :12.37g
− NMP :1.52g
− 蒸留水 :1.62g
合計 :101.52g
【0118】
プライマー中のアミンの含量は、2%未満である。有機溶媒の含量は、5%未満である。プライマー配合物中の水の含量は、64%から68%の間に含まれる。
【0119】
全組成物中のPAI樹脂の含量は、2.89%である。
【0120】
全組成物中の極性非プロトン性溶媒(NMP)の含量は、1.9%である。
【0121】
プライマー組成物P5中のポリアミド−アミド酸の量と、プライマー組成物P5中の極性非プロトン性溶媒(NMP)の量との間の重量比(PAI/PAS比)は、1.52である。
【0122】
プライマー組成物P5を調製するために、上述の他の化合物の全てを、水性中間体SF1に添加する。
【0123】
このようにして得られたプライマー組成物P5は、以下の特性を有する。
− プライマーの測定された乾燥抽出物:28.5%、
− 粘度(DIN EN ISO 2433/ASTM D5125標準に従う2.5カップにおいて):55秒、
− 揮発性有機化合物の含量は、4.07%である。
− ラベル表示限界未満の少量の極性非プロトン性溶媒の存在は、工業的条件下でのプライマーの乾燥を促進する。
【0124】
(実施例11)
実施例1の中間体SF1からの水性プライマー組成物P6の調製
それぞれの量がgで示される以下の化合物を含む接着プライマー組成物P6を調製する。
− PTFE分散液(60%乾燥抽出物) :34.36g
− カーボンブラック分散液(25%乾燥抽出物) :3.95g
− 中間体SF1(6.9%乾燥抽出物) :41.89g
− エトキシル化アルキルフェノール系非イオン性界面活性剤系(13%):5.81g
− コロイド状シリカ(30%乾燥抽出物) :12.37g
− NMP :1.01g
− 蒸留水 :1.62g
合計 :101.01g
【0125】
プライマー中のアミンの含量は、2%未満である。有機溶媒の含量は、5%未満である。プライマー配合物中の水の含量は、64%から68%の間に含まれる。
【0126】
全組成物中のPAI樹脂の含量は、2.90%である。
【0127】
全組成物中の極性非プロトン性溶媒(NMP)の含量は、1.41%である。
【0128】
プライマー組成物P6中のポリアミド−アミド酸の量と、プライマー組成物P6中の極性非プロトン性溶媒(NMP)の量との間の重量比(PAI/PAS比)は、2.06である。
【0129】
プライマー組成物P6を調製するために、上述の他の化合物の全てを、水性中間体SF1に添加する。
【0130】
このようにして得られたプライマー組成物P6は、以下の特性を有する。
− プライマーの測定された乾燥抽出物:28.7%、
− 粘度(DIN EN ISO 2433/ASTM D5125標準に従う2.5カップにおいて):54秒、
− 揮発性有機化合物の含量は、3.58%である、
− ラベル表示限界未満の少量の極性非プロトン性溶媒の存在は、工業的条件下でのプライマーの乾燥を促進する。
【0131】
(実施例12)
実施例1の中間体SF1からの水性プライマー組成物P7の調製
それぞれの量がgで示される以下の化合物を含む接着プライマー組成物P7を調製する。
− PTFE分散液(60%乾燥抽出物) :34.36g
− カーボンブラック分散液(25%乾燥抽出物) :3.95g
− 中間体SF1(6.9%乾燥抽出物) :41.89g
− エトキシル化アルキルフェノール系非イオン性界面活性剤系(13%):5.81g
− コロイド状シリカ(30%乾燥抽出物) :12.37g
− NMP :0.55g
− 蒸留水 :1.62g
合計 :100.55g
【0132】
プライマー中のアミンの含量は、2%未満である。有機溶媒の含量は、5%未満である。プライマー配合物中の水の含量は、64%から68%の間に含まれる。
【0133】
全組成物中のPAI樹脂の含量は、2.92%である。
【0134】
全組成物中の極性非プロトン性溶媒(NMP)の含量は、0.96%である。
【0135】
プライマー組成物P7中のポリアミド−アミド酸の量と、プライマー組成物P7中の極性非プロトン性溶媒(NMP)の量との間の重量比(PAI/PAS比)は、3.04である。
【0136】
プライマー組成物P7を調製するために、上述の他の化合物の全てを、水性中間体SF1に添加する。
【0137】
このようにして得られたプライマー組成物P7は、以下の特性を有する。
− プライマーの測定された乾燥抽出物:28.8%、
− 粘度(DIN EN ISO 2433/ASTM D5125標準に従う2.5カップにおいて):55秒、
− 揮発性有機化合物の含量は、1.86%である。
【0138】
(実施例13)
実施例1の中間体SF1からの水性プライマー組成物P8の調製
それぞれの量がgで示される以下の化合物を含む接着プライマー組成物P8を調製する。
− PTFE分散液(60%乾燥抽出物) :34.36g
− カーボンブラック分散液(25%乾燥抽出物) :4.5g
− 中間体SF1(6.9%乾燥抽出物) :95.00g
− エトキシル化アルキルフェノール系非イオン性界面活性剤系(13%):5.81g
− コロイド状シリカ(30%乾燥抽出物) :14.00g
− NMP :0.55g
合計 :154.22g
【0139】
プライマー中のアミンの含量は、3%未満である。有機溶媒の含量は、5%未満である。プライマー配合物中の水の含量は、68%から75%の間に含まれる。
【0140】
全組成物中のPAI樹脂の含量は、4.27%である。
【0141】
全組成物中の極性非プロトン性溶媒(NMP)の含量は、0.96%である。
【0142】
プライマー組成物P8中のポリアミド−アミド酸の量と、プライマー組成物P8中の極性非プロトン性溶媒(NMP)の量との間の重量比(PAI/PAS比)は、4.45である。
【0143】
プライマー組成物P8を調製するために、上述の他の化合物の全てを、水性中間体SF1に添加する。
【0144】
このようにして得られたプライマー組成物P8は、以下の特性を有する。
− プライマーの測定された乾燥抽出物:21.6%、
− 粘度(DIN EN ISO 2433/ASTM D5125標準に従う2.5カップにおいて):60秒、
− 揮発性有機化合物の含量は、3.56%である。
【0145】
(実施例14)
非粘着性用品の製造および試験
標準的な様式で、アルミニウム基板の面の一方にプライマー組成物P1、P2、PC3、P4、およびP5からP8をコーティングして、プライマー層を形成する。
【0146】
次いで、最終組成物Fをプライマー層に塗布し、5から20分の範囲を含む期間、全体を約420℃の温度で焼成する。
【0147】
非粘着性プライマー層でコーティングされた基板が得られ、次いでこれを本出願において上述した一連の試験に供する。
【0148】
これらの異なる試験から得られた値を、以下の表1および2に要約する。
【0149】
以下の表1および2に示される結果は、本発明のプライマーP1、P2、およびP4が、それらの極性非プロトン性溶媒の含量が非常に低く、これにより特別な注意を払うことなくそれらを取り扱うことができるため、非常に高い安全性レベルを示すことを示している。
【0150】
プライマーP5およびP6は、特別なラベル表示から免除されるため良好な安全性レベルを示し、工業的条件が迅速な乾燥を必要とする場合に使用され得る。
【0151】
これはまた、プライマーP2にも該当するが、PC3と比べて大幅に低減されているが、プライマーP1、P4およびP5からP8より若干高い有機化合物の含量が犠牲となる。
【0152】
プライマーP7およびP8は、中間的な挙動を有する。
【0153】
また、プライマーは全て、極性非プロトン性溶媒に富む標準(比較)配合物と類似した、またはそれ以上の接着および耐腐食性能を示す。
【0154】
さらに、プライマーP1およびP2は、優れた経時的な粘度安定性を示し、これによってそれらは取扱いおよび保存がより容易となる。
【0155】
さらに、これらの結果は、保存期間の延長により物流業務が容易化されることから、経時的に可能な限り安定な粘度を有することの価値を実証している。
【0156】
【表1】
【0157】
【表2】