(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042550
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】EUV放射線発生装置および該EUV放射線発生装置のための運転法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20161206BHJP
H05G 2/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 521
H05G2/00 K
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-532331(P2015-532331)
(86)(22)【出願日】2013年9月19日
(65)【公表番号】特表2015-530617(P2015-530617A)
(43)【公表日】2015年10月15日
(86)【国際出願番号】EP2013002817
(87)【国際公開番号】WO2014044392
(87)【国際公開日】20140327
【審査請求日】2015年6月5日
(31)【優先権主張番号】102012217120.7
(32)【優先日】2012年9月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515041332
【氏名又は名称】トルンプフ レーザーシステムズ フォー セミコンダクター マニュファクチャリング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Lasersystems for Semiconductor Manufacturing GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ランベアト
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス エンツマン
【審査官】
佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−532232(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/075346(WO,A1)
【文献】
特開2000−182958(JP,A)
【文献】
特開2012−069907(JP,A)
【文献】
特表2003−529781(JP,A)
【文献】
特表2012−523694(JP,A)
【文献】
特開2012−119099(JP,A)
【文献】
特開2010−186735(JP,A)
【文献】
特表2010−506425(JP,A)
【文献】
特表2015−502665(JP,A)
【文献】
特開2010−123942(JP,A)
【文献】
特開平10−213544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20 − 7/24 、 9/00 − 9/02 、
H01L21/027、21/30 、
H05G 1/00 − 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EUV放射線発生装置(1)であって、
EUV放射線(14)を発生させるために、ターゲット材料(13)がターゲット位置(Z)に配置可能である真空チャンバ(4)と、
レーザビーム(5)を駆動レーザ装置(2)からターゲット位置(Z)に向かってガイドするためのビームガイドチャンバ(3)と
を有しているEUV放射線発生装置において、
該EUV放射線発生装置(1)が、
真空チャンバ(4)とビームガイドチャンバ(3)との間に設けられた中間チャンバ(18)と、
レーザビーム(5)をビームガイドチャンバ(3)から入射させるための、中間チャンバ(18)をガス密に閉鎖する第1の窓(19)と、
レーザビーム(5)を真空チャンバ(4)内に出射させるための、中間チャンバ(18)をガス密に閉鎖する第2の窓(20)と、
中間チャンバ(18)のリークを監視するためのリーク監視装置(29)とを有していることを特徴とする、EUV放射線発生装置。
【請求項2】
ビームガイドチャンバ(3)が、EUV放射線発生装置(1)の外側周辺に比べて高い圧力(p1)を有している、請求項1記載のEUV放射線発生装置。
【請求項3】
EUV放射線発生装置(1)が、さらに、中間チャンバ(18)にテストガス(24)を供給するための供給装置(23)を有し、前記リーク監視装置(29)が、供給されたテストガス(24)に基づき中間チャンバ(18)のリークを監視する、請求項1または2記載のEUV放射線発生装置。
【請求項4】
供給装置(23)が、ビームガイドチャンバ(3)内の圧力(p1)および真空チャンバ(4)内の運転圧(p2)よりも高いテストガス圧(p)を中間チャンバ(4)内に発生させるために形成されている、請求項3記載のEUV放射線発生装置。
【請求項5】
供給装置(23)が、供給圧(p0)を有するテストガス(24)を提供するための提供装置(25)と、提供装置(25)と中間チャンバ(18)との間に配置された絞り(26)とを有している、請求項3または4記載のEUV放射線発生装置。
【請求項6】
供給装置(23)が、中間チャンバ(18)に供給されるテストガス流量(dv/dt)を測定するためのガス流量センサ(30)を有している、請求項5記載のEUV放射線発生装置。
【請求項7】
EUV放射線発生装置(1)が、さらに、中間チャンバ(18)内のテストガス圧(p)を測定するための少なくとも1つの圧力センサ(28)を有している、請求項2から6までのいずれか1項記載のEUV放射線発生装置。
【請求項8】
EUV放射線発生装置(1)が、さらに、真空チャンバ(4)内に運転圧(p2)を発生させるための真空発生装置(21)を有している、請求項1から7までのいずれか1項記載のEUV放射線発生装置。
【請求項9】
EUV放射線発生装置(1)が、さらに、レーザビーム(5)をターゲット位置(Z)に集束させるための集束装置(6)を有している、請求項1から8までのいずれか1項記載のEUV放射線発生装置。
【請求項10】
集束装置(6)が、真空チャンバ(4)内に配置されている、請求項9記載のEUV放射線発生装置。
【請求項11】
両窓(19,20)のうちの少なくとも一方の窓が、平行平面板として形成されている、請求項1から10までのいずれか1項記載のEUV放射線発生装置。
【請求項12】
両窓(19,20)のうちの少なくとも一方の窓が、ダイヤモンドから形成されている、請求項1から11までのいずれか1項記載のEUV放射線発生装置。
【請求項13】
ビームガイドチャンバ(3)が、レーザビーム(5)を拡大するための装置(15)を有している、請求項1から12までのいずれか1項記載のEUV放射線発生装置。
【請求項14】
ターゲット位置(Z)に配置されたターゲット材料(13)にレーザビーム(5)をガイドすることによってEUV放射線(14)を発生させて、請求項1から13までのいずれか1項記載のEUV放射線発生装置を運転する方法において、
中間チャンバ(18)のリークを中間チャンバ(18)内のテストガス圧(p)および/または中間チャンバ(18)に供給されるテストガス(24)のテストガス流量(dv/dt)に基づき監視することを特徴とする、EUV放射線発生装置を運転する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EUV放射線発生装置であって、EUV放射線を発生させるために、ターゲット材料がターゲット位置に配置可能である真空チャンバと、レーザビームを駆動レーザ装置からターゲット位置に向かってガイドするためのビームガイドチャンバとを有しているEUV放射線発生装置に関する。本発明は、ターゲット位置に配置されたターゲット材料にレーザビームをガイドすることによってEUV放射線を発生させて、前述したようなEUV放射線発生装置を運転する方法にも関する。
【0002】
レーザビームをターゲット位置にガイドするためのビームガイド装置を備えたEUV放射線発生装置が、米国特許出願公開第2011/0140008号明細書に基づき公知である。同明細書に記載されているビームガイド装置は、駆動レーザシステム内で発生かつ増幅させられたレーザ放射線をガイドするために用いられる。駆動レーザとして、一般的にCO
2レーザが使用される。なぜならば、このCO
2レーザによって、規定のターゲット材料、たとえばスズにおいて、駆動レーザの入射出力と、発生させられるEUV放射線の出射出力との間で高い変換効率が可能となるからである。ビームガイド装置は、レーザビームをターゲット位置に集束させるために役立つ集束素子もしくは集束装置にレーザビームをガイドする。ターゲット位置には、レーザビームの照射時にプラズマ状態へと移行して、その際にEUV放射線を発するターゲット材料が提供される。
【0003】
典型的に、レーザビームの照射時には、ターゲット材料(スズ)の、ターゲット位置の近くに配置された光学素子の光学表面に堆積し得る部分が蒸発させられる。レーザビームは、たとえば約10.6μm(CO
2レーザの使用時)の高い波長に基づき、スズ堆積物により生じるような比較的粗い光学表面を有する光学素子によっても反射させられる。ターゲット位置において発生させられたEUV放射線を反射させるために働く光学素子の場合には、通常、このことが当てはまらなくなってしまう。すなわち、典型的には、この光学素子に対する汚染物質の堆積が、利用されるEUV放射線に対する反射率の著しい低下を招いてしまうので、真空チャンバ内もしくは真空チャンバに後置された構成群内、たとえば照明システムおよび投影システムに配置される光学素子は、汚染物質、たとえばターゲット材料の堆積物に対して防護されることが望ましい。
【0004】
発明の課題
本発明の課題は、冒頭で述べたEUV放射線発生装置および放射線発生装置を運転する方法を改良して、EUV放射線発生装置の運転安全性が高められるようにすることである。
【0005】
発明の対象
この課題は、本発明によれば、EUV放射線発生装置において、真空チャンバとビームガイドチャンバとの間に中間チャンバが設けられており、レーザビームをビームガイドチャンバから入射させるための、中間チャンバをガス密に閉鎖する第1の窓と、レーザビームを真空チャンバ内に出射させるための、中間チャンバをガス密に閉鎖する第2の窓とが設けられていることによって解決される。
【0006】
真空チャンバは第2の窓によって周辺から密に分離される。第2の窓が破壊されるかまたは第2の窓のシール手段に欠陥があると、ガスが周辺から真空チャンバ内に流入してしまう。なぜならば、真空チャンバ内には、周辺、たとえばビームガイドチャンバ内よりも低い圧力が形成されているからである。したがって、窓もしくは窓の密封手段は潜在的なリーク源を成している。僅かなリークは、単なる欠陥として真空チャンバ内の環境に影響を与えるにすぎない。大きなリークを伴う窓の急激な故障は、真空環境へのより大きなガス量の流入を招いてしまう。このことは、そこに、場合によっては真空環境全体を通過し得るガス流を発生させる。密でない1つの窓に基づき、ガスだけでなく、場合によっては、液状の物質、たとえば窓の冷却のために使用される冷却水も真空チャンバ内もしくはビームガイドチャンバ内に達してしまう。
【0007】
窓は、ターゲット材料を有するターゲット位置の近くに位置している。窓には、ターゲット材料の一部が気相で位置している。この部分は、窓の急激な故障時にガス流によって連れ去られる。したがって、このことは、特に問題となる。なぜならば、ターゲット材料または、場合によっては、連れ去られる別の汚染物質が、EUV放射線発生装置から、EUV放射線のビーム路において後続する、典型的に極めてクリーンな環境を有している照明システムもしくは投影システムに運ばれてしまうからである。ターゲット材料によるこの環境の汚染は、最悪の場合、EUVリソグラフィ装置全体の故障に繋がってしまう。なぜならば、ターゲット材料が、そこに配置された光学素子に堆積して、この光学素子を、場合により、もはや十分に清浄化することができなくなってしまうからである。
【0008】
第1の窓の急激な故障時に、真空チャンバ内へのより多くのガス量の流入を阻止するために、本発明によれば、第2の窓に直列に接続された別の(第1の)窓を使用することが提案される。第2の窓が耐えられなくなった場合には、中間室内に存在する(小さな)ガス体積しか真空チャンバ内に達しないようになっている。このことは、真空チャンバの著しく大きな容積に基づき、EUVリソグラフィ装置の比較的僅かな損傷にしか繋がらない。両窓の同時の故障が起こる確率は極端に低いので、中間チャンバによって、EUV放射線発生装置の運転安全性を大幅に高めることができる。
【0009】
1つの態様では、ビームガイドチャンバが、EUV放射線発生装置の周辺よりも高い圧力を有している。このEUV放射線発生装置の周辺には、典型的に大気圧(1013mbar)が形成されている。たとえば5mbarまたは10mbarの比較的僅かな圧力超過によって、ビームガイドチャンバ内に配置された構成部材、たとえば光学系を汚物に対して有効に防護することができる。さもないと、この汚物がEUV放射線発生装置の周辺からビームガイドチャンバ内に達してしまう。
【0010】
1つの態様では、EUV放射線発生装置が、中間チャンバにテストガスを供給するための供給装置と、供給されたテストガスに基づき中間チャンバのリークを監視するためのリーク監視装置とを有している。中間チャンバへのテストガス、特に不活性のガス、たとえば窒素またはアルゴンの供給は、中間チャンバのリークひいてはビームガイドチャンバと真空チャンバとの間の不十分な密封を検知するために有利である。さらに、適切な不活性のテストガスの使用によって、僅かなリークが真空環境内の光学素子に与える影響を減じることができる。リークの検知もしくは監視は、たとえば中間チャンバ内のテストガス圧の監視および/または中間チャンバに単位時間あたりに供給されるテストガス量の検知によって行うことができる。
【0011】
1つの改良態様では、供給装置が、ビームガイドチャンバ内の圧力および真空チャンバ内の運転圧よりも高いテストガス圧を中間チャンバ内に発生させるために形成されている。ビームガイドチャンバ内の圧力および真空チャンバ内の著しく小さな運転圧に対する過圧の発生は有利であると判った。なぜならば、こうして、特にビームガイドチャンバから中間チャンバ内への異物の侵入を阻止することができるからである。
【0012】
1つの改良態様では、供給装置が、テストガスに供給圧を加えるための圧力発生装置と、この圧力発生装置と中間チャンバとの間に配置された絞りとを有している。圧力発生装置は、一定の(調整された)供給圧を有するテストガスを提供するために働く。このテストガスは、絞りを介して中間チャンバ内に達する。リークなしの運転中の中間チャンバ内のテストガス圧は、圧力発生装置の供給圧に相当しているので、リークなしの運転中には、テストガスが絞りを介して中間チャンバ内に達することはない。リークがある場合には、絞りを介して中間チャンバ内に僅かなガス量が流れ込むにすぎないので、そこには、供給圧よりも小さいテストガス圧が生じる。圧力差もしくは圧力差により発生させられる、絞りを通るガス流れが、中間チャンバのリークに対する尺度を成している。
【0013】
絞りとして、典型的には、一定の直径を有する絞り孔を備えた固定絞りが使用される。絞り孔の直径がリーク監視の感度を決定する。監視の感応性は、絞り孔の直径の減少に伴い増大する。絞り孔の典型的な直径は、本使用態様では、約0.1mmのオーダ内にある。
【0014】
1つの改良態様では、供給装置が、中間チャンバに供給されるテストガス流量を測定するためのガス流量センサを有している。詳しく上述したように、単位時間あたりに絞りを通流するガス量(すなわちテストガス流量)に基づき、中間チャンバにおけるリークの量を推測することができる。
【0015】
供給装置は、典型的には、テストガスのための供給管路を有している。この供給管路には、意図的に1つまたは場合によっては複数の(小さな)開口が設けられていてよい。この開口によって、テストガスの温度変化により生じる圧力変化を補償することが可能となる。さもないと、この圧力変化によって、実際にリークがなくても、場合により、中間チャンバのリークが報知される恐れがある。
【0016】
1つの別の改良態様では、EUV放射線発生装置が、中間チャンバ内のテストガス圧を測定するための少なくとも1つの圧力センサを有している。中間チャンバ内のテストガス圧、より正確に言うならば、テストガス圧の減少に基づき、同じく中間チャンバのリークを推測することができる。リークは、第1の窓、第2の窓および/または相応のシール手段の故障によって生じてしまう。
【0017】
1つの改良態様では、EUV放射線発生装置が、真空チャンバ内に運転圧を発生させるための真空発生装置を有している。真空発生装置として、典型的には、真空ポンプが用いられる。ターゲット材料が配置されている真空チャンバ内の運転圧は、典型的には、1.0mbar未満のオーダ内にある。真空チャンバ内には、ターゲット位置に交差する設定された経路に沿ってターゲット材料を案内する、このターゲット材料のための提供装置が設けられている。
【0018】
1つの別の態様では、EUV放射線発生装置が、レーザビームをターゲット位置に集束させるための集束装置を有している。この集束装置はレンズ素子を有していてよい。このレンズ素子はレーザ放射線を透過させ、たとえばセレン化亜鉛から形成されている。透過性の光学素子に対して付加的または択一的には、ターゲット位置へのレーザビームの集束のために、反射性の光学素子が使用されてもよい。
【0019】
1つの改良態様では、集束装置が、真空チャンバ内に配置されている。この態様では、ビームガイドチャンバが真空チャンバに、視準されたレーザビームを供給することができる。このレーザビームは真空チャンバ内で初めて集束させられる。当然ながら、集束が、場合によっては、完全にまたは部分的にビームガイドチャンバ内で行われてもよい。
【0020】
1つの別の態様では、両窓のうちの少なくとも一方の窓が、平行平面板として形成されている。好適には、両窓が、平行平面板として形成されている。平行平面板としての構成によって、実際、窓が、板平面に対して典型的には垂直に衝突するレーザビームに光学的に作用することはない。また、平行平面板の使用時には、レーザビームを透過させる材料の材料要求も僅かである。なぜならば、使用される板もしくはディスクの直径が、レーザビームのビーム直径よりも僅かに大きく選択されさえすればよいからである。その際には、板の厚さも比較的薄く選択されてよい。
【0021】
1つの改良態様では、両窓のうちの少なくとも一方の窓が、ダイヤモンドから形成されている。好適には、両窓が、ダイヤモンドから形成されている。(人工的に製造された)ダイヤモンドから成る窓の使用は有利であると判った。なぜならば、レーザビームの高いレーザ出力(>1kW)により導入された熱をダイヤモンド材料の高い熱伝導率に基づき効果的に導出することができるからである。しかし、ダイヤモンド材料に対する製造コストは比較的高いので、窓の厚さは過度に大きく選択されないことが望ましい。さらに、比較的大きな厚さを有する窓を使用すると、たとえば不十分な冷却の結果、ダイヤモンド材料の熱的な破壊(焼損)も生じてしまう。
【0022】
1つの別の態様では、ビームガイドチャンバが、レーザビームを拡大するための装置を有している。EUV放射線を発生させるために使用されるCO
2レーザ放射線は、(たとえば1kWよりも大きい)高い放射出力を有しているので、透過性の光学素子の通過時にレーザ放射線の強度を過度に大きくさせないようにするために、比較的大きなビーム直径を使用することが有利である。レーザ放射線のビームを拡大して大きなビーム直径を得るためには、たとえば米国特許出願公開第2011/0140008号明細書に記載されているような軸外し放物面鏡の使用が有利であると判った。
【0023】
本発明は、さらに、冒頭に記載したEUV放射線発生装置を運転する方法に関する。本発明によれば、中間チャンバのリークが、中間チャンバ内のテストガス圧および/または中間チャンバに供給されるテストガスのテストガス流量に基づき監視される。
【0024】
詳しく上述したように、テストガス圧もしくはテストガス流量を各欠陥閾値と比較することによって、両窓のうちの一方の窓の破壊を示唆する中間チャンバ内の圧力低下を検知することができる。欠陥閾値への到達時には、EUVリソグラフィ装置のスイッチを即座にオフにすることができる。その際には、EUVリソグラフィ装置の、たとえば照明システムまたは投影システムが配置された種々異なる構成群の間の弁もしくは開口が閉鎖される。択一的または付加的には、対策として、真空環境への不活性のガスの充填もしくは供給が行われてもよい。
【0025】
中間チャンバをテストガスを用いてリーク監視することによって、窓における緩慢な変化に気づくことも可能となり、これによって、窓の破損もしくは破壊が生じる前に対策を講じることができるかまたは警告を予め発することができる。中間チャンバのリークの増大は、窓と、この窓に対する枠もしくは保持体、特に枠の、シール手段として働く載着面もしくは当付け面との間の接触不良によって発生してしまう。このような不十分な機械的な接触は、当付け面の変化ひいては窓から枠もしくは保持体の、窓に対するヒートシンクとして働く材料への熱輸送の妨害を示唆することができる。たとえばダイヤモンドから成る十分に冷却されない窓は、吸収に基づき比較的迅速に加熱され、過熱によって破壊されてしまう。
【0026】
テストガス圧もしくはテストガス流量が各警告閾値と比較され、警告閾値に達すると、欠陥閾値への到達前にオペレータに警告を発することができる。こうして、たとえばEUV放射線発生装置における保守作業時に窓のシール手段もしくは枠が検査され、場合により交換または修理することができる。
【0027】
本発明の更なる利点は、明細書および図面から明らかである。また、前述した特徴および引き続きさらに記載する特徴は、当然ながら、単独で使用されてもよいし、複数を任意に組み合わせて使用されてもよい。図説する実施の形態は、最終的な列挙として解釈すべきものではなく、むしろ、本発明を説明するための特徴の一例を有するものでしかない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】ビームガイドチャンバと、真空チャンバと、監視される圧力室を備えた中間チャンバとを有するEUV放射線発生装置の概略図である。
【0029】
図1には、EUV(極端紫外光)放射線発生装置1が示してある。このEUV放射線発生装置1は、駆動レーザ装置2と、ビームガイドチャンバ3と、真空チャンバ4とを有している。この真空チャンバ4内には、CO
2レーザビーム5をターゲット位置Zに集束させるために、集束レンズ6の形態の集束装置が配置されている。
図1に示したEUV放射線発生装置1は、米国特許出願公開第2011/0140008号明細書に記載されているような構造にほぼ相当している。なお、同明細書は引用により本願の内容に含まれるものとする。また、図面を見やすくするという理由から、レーザビーム5のビーム路を監視するための測定装置の図示は省略した。
【0030】
駆動レーザ装置2は、1つのCO
2ビーム源と、高い放射出力(>1kW)を有するレーザビーム5を発生させるための複数の増幅器とを有している。駆動レーザ装置2のあり得る構成の詳細な説明については、米国特許出願公開第2011/0140008号明細書に記載されている。駆動レーザ装置2から、レーザビーム5は、ビームガイドチャンバ3の複数の変向ミラー7,8,9,10,11と、真空チャンバ4内の1つの別の変向ミラー12とを介して集束レンズ6に向かって変向させられる。この集束レンズ6はレーザビーム5をターゲット位置Zに集束させる。このターゲット位置Zには、ターゲット材料13としてのスズが配置されている。
【0031】
集束させられたレーザビーム5がターゲット材料13に命中し、その際、このターゲット材料13が、EUV放射線14を発生させるために役立つプラズマ状態へと移行される。ターゲット材料13はターゲット位置Zに提供装置(図示せず)によって供給される。この提供装置は、ターゲット位置Zに交差する設定された経路に沿ってターゲット材料13を案内する。ターゲット材料の提供の詳細についても、同じく米国特許出願公開第2011/0140008号明細書に記載されている。
【0032】
ビームガイドチャンバ3内には、レーザビーム5のビーム直径を拡径するための装置15が設けられている。この装置15は、凸面状に湾曲させられた第1の反射表面を備えた第1の軸外し放物面鏡16と、凹面状に湾曲させられた第2の反射表面を有する第2の軸外し放物面鏡17とを有している。軸外し放物面鏡16,17の反射表面は、それぞれ(楕円)放物面の軸外しセグメントによって形成されている。「軸外し」という概念は、反射表面が放物面体の回転対称軸線を含まない(ひいては放物面体の頂点も含まない)ことを意味している。
【0033】
図1に同じく認めることができるように、ビームガイドチャンバ3、より正確に言うならば、ビームガイドチャンバ3のハウジングと、真空チャンバ4との間には、中間チャンバ18が配置されている。この中間チャンバ18、より正確に言うならば、この中間チャンバ18の、ビームガイドチャンバ3の側のハウジング壁には、中間チャンバ18をガス密に閉鎖する第1の窓19が設けられている。この第1の窓19は、レーザビーム5をビームガイドチャンバ3から入射させるために役立つ。中間チャンバ18の、真空チャンバ4の側のハウジング壁には、第2の窓20が設けられていて、レーザビーム5を中間チャンバ18から真空チャンバ4内に出射させるために役立つ。
【0034】
(一般的に1.0mbarよりも大幅に低い)中真空範囲(Feinvakuum-Bereich)にある運転圧p
2を真空チャンバ4内に発生させるために、真空ポンプ21が用いられる。過度に高い圧力を有する残留ガス環境では、発生させられたEUV放射線14が過度に強く吸収される恐れがあるので、真空チャンバ4を真空条件下で運転することが必要となる。これに対して、ビームガイドチャンバ3もしくはビームガイドチャンバ3内に形成された内室は、たとえば大気圧(1013mbar)を約5mbar上回るオーダ内にあってよい大幅に高い圧力p
1で運転される。したがって、ビームガイドチャンバ3は、このビームガイドチャンバ3内に配置された光学素子を汚染に対して防護するために、EUV放射線発生装置1の周辺に比べて意図的に正圧下に置かれる。
【0035】
両窓19,20が同時に破壊されるという起こりそうもない事例では、ビームガイドチャンバ3と真空チャンバ4との間の圧力差によって、ガスがビームガイドチャンバ3から真空チャンバ4の内室に達し、そこで、ターゲット材料13の残分もしくは堆積物を連れ去って、この残分もしくは堆積物をEUVリソグラフィ装置の後続の構成群(図示せず)に運んでしまう。この構成群は、主として、パターンを担持したマスクを照明するための照明システムならびにマスクに設けられたパターンを感光性の基板(ウェーハ)に結像するための結像システムである。後続の構成群もしくは後続の構成群に配置された光学素子がターゲット材料13によって汚染されてしまう。これにより、場合によっては、EUVリソグラフィ装置全体が故障してしまう。ビームガイドチャンバ3からのガスに加えて、冷却水も真空チャンバ4の内室に達し、そこで、ターゲット材料13の残分もしくは堆積物を連れ去って、この残分をEUVリソグラフィ装置の後続の構成群(図示せず)に運んでしまう。
【0036】
第2の窓20の形態の一次的な密封手段と、第1の窓19の形態の二次的な密封手段とを使用することによって、このような汚染の危険を大幅に減らすことができる。なぜならば、上述したように、両窓19,20の同時の故障は極めて起こりそうもないからである。第1の窓19のみが破壊されると、確かに、ガスもしくは液体がビームガイドチャンバ3から中間チャンバ18内に流入してしまう。しかしながら、第2の窓20が、真空チャンバ4内へのガスもしくは液体の流入を阻止している。第2の窓20が、たとえば熱的な負荷に基づき破壊された場合には、中間チャンバ18内に含まれているガスもしくは液体しか真空チャンバ4内に溢流しない。この真空チャンバ4の容積は中間チャンバ18の容積に比べて(図面に示したものと異なり)極めて大きいので、真空チャンバ4内に流入するガス量もしくは液体量が引き起こしてしまう損害は比較的少ない。
【0037】
それにもかかわらず、たとえば両窓19,20のうちの一方の窓の破壊に起因する中間チャンバ18における漏れ、つまり、リークを可能な限り早期に認識することが有利であり、これによって、欠陥時に適切な対策を講じることができる。たとえば、EUVリソグラフィ装置の種々異なる構成群のチャンバ同士の間の開口もしくは弁が閉鎖され、かつ/または真空チャンバ4もしくは後続の構成群に不活性ガスが充満させられ、これによって、そこに、侵入するガスの圧力を上回っていて、このガスの侵入を阻止する圧力が発生させられる。
【0038】
中間チャンバ18をリーク監視するために、テストガス24のための供給装置23が設けられている。この供給装置23は、テストガス提供装置としてのテストガスリザーバ25を有している。テストガス提供装置は、テストガス24、たとえば窒素またはアルゴンを含んでいて、このテストガス24を一定の(場合によっては調整された)供給圧p
0で提供する。テストガス24は、中間チャンバ18に供給管路27を介して供給される。この供給管路27内には、中間チャンバ18内へのテストガス流量を制限する絞り孔を備えた固定絞り26が設けられている。
【0039】
中間チャンバ18にリークがない場合には、中間チャンバ18内の圧力pが供給圧p
0に合致しており、テストガス24は供給管路27を通って中間チャンバ18内に流入しない。したがって、この中間チャンバ18内のテストガス圧pを測定するための圧力センサ28により測定されたテストガス圧pが、供給圧p
0に合致している。この供給圧p
0(ひいてはリークがない場合のテストガス圧p)は、ビームガイドチャンバ3内の圧力p
1よりも大きく、真空チャンバ4の運転圧p
2よりも大きく、たとえば約1023mbarであってよい。
【0040】
一方の窓19;20または両方の窓19,20に隙間があることによって、場合により僅かなリークが生じると、テストガス圧pが供給圧p
0に比べて減少させられる。このことは、リーク監視装置29によって評価することができる。この目的のために、このリーク監視装置29は圧力センサ28に信号技術的に接続されている。不変に設定された供給圧p
0もしくは固定の値に調整された供給圧p
0に対する数値が格納されているメモリ装置にリーク監視装置29がアクセスする限り、供給装置23への信号技術的な接続は不要である。当然ながら、リーク監視装置29は、
図1では、一例として中間チャンバ18に取り付けられているにすぎず、EUV放射線発生装置1における別の箇所に配置されていてもよい。
【0041】
リーク監視装置29は、中間チャンバ18内の測定されたテストガス圧pが、このテストガス圧pに対する欠陥閾値と比較されることにより、中間チャンバ18内の急激な強い圧力低下に基づき、両窓19,20のうちの一方の窓の破壊を推測することができる。テストガス圧pが欠陥閾値を下回って減少すると、真空チャンバ4内もしくは真空チャンバ4に接続された別の真空チャンバ内に配置された光学素子を汚染に対して防護するために、即座に対策が講じられる(上記参照)。
【0042】
リーク監視装置29は、絞り孔の直径が適切(たとえば約0.1mm)に選択されていると、たとえば、中間チャンバ18のハウジング、より正確に言うならば、中間チャンバ18のハウジングに設けられたホルダもしくは枠に対する窓19,20の不十分な密封時に生じてしまうような中間チャンバ18の小さなリークに極めて敏感に反応する。小さなリーク量の検出によって、ビームガイドチャンバ3の構成部材に、規定されていない状態が付与されていることが示唆され得る。場合により、このような状態には、両窓19,20のうちの一方の窓の欠陥もしくは全体故障が生じる前に、測定されたテストガス圧pを警告閾値と比較することによって応対することができる。警告閾値に達した場合には、たとえば、オペレータが窓19,20の枠もしくは当付け面の保守と点検とを行うことができるようにするために、オペレータに音響的なまたは光学的な警告を発することができる。
【0043】
窓19,20の起こり得る破壊前のこのような早期の警告は、特に窓材料としてダイヤモンドが使用されている場合に有利となる。なぜならば、ダイヤモンド窓19,20の焼損もしくは破壊により必要となる交換が、莫大なコストに結び付けられるからである。窓材料としてのダイヤモンドの使用は、その高い熱伝導率に基づき有利である。
【0044】
中間チャンバ18内のテストガス圧pの測定に対して択一的または(図面に示したように)付加的には、供給管路27を通流するテストガス24のテストガス流量dv/dtの測定が、ガス流量センサ30によって行われてもよい。リークがなければ、テストガス流量dv/dtはなくなる。なぜならば、この場合には、供給圧p
0と中間チャンバ18内の圧力pとが合致しているからである。テストガス流量dv/dtは、中間チャンバ18内のテストガス圧pの減少に伴い(供給圧p
0と中間チャンバ18内のテストガス圧pとの間の圧力差の増大に相応して)増加する。また、欠陥を認識するかもしくは警告を発するために、テストガス流量dv/dtもリーク監視装置29によって欠陥閾値もしくは警告閾値と比較されてよい。
【0045】
中間チャンバ18内の圧力pの変化は、テストガス24の温度変化によっても生じてしまう。このことは、場合により、実際に中間チャンバ18にリークが生じていなくても、欠陥報知を招く恐れがある。このような温度に起因した圧力変化を補償するためには、供給管路27に意図的に漏れ口もしくは(小さな)開口が加工されてよく、この開口を介して、テストガス24が、圧力補償のために、周辺に接続される。
【0046】
以上、こうして、EUV放射線発生装置の運転安全性および確実性を大幅に向上させることができる。当然ながら、リーク監視のために、場合によっては、中間チャンバ内のガス圧が圧力センサによって直接監視されることにより、テストガスの供給が省略されてもよい。