特許第6042551号(P6042551)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6042551燃焼機関からの排ガスにおけるSOX及びNOXの削減のための、複合洗浄システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042551
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】燃焼機関からの排ガスにおけるSOX及びNOXの削減のための、複合洗浄システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/78 20060101AFI20161206BHJP
   B01D 53/50 20060101ALI20161206BHJP
   B01D 53/92 20060101ALI20161206BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20161206BHJP
   F01N 3/04 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B01D53/78ZAB
   B01D53/50 230
   B01D53/92 215
   B01D53/92 331
   B01D53/14 200
   F01N3/04 A
【請求項の数】17
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-532369(P2015-532369)
(86)(22)【出願日】2013年9月10日
(65)【公表番号】特表2015-530241(P2015-530241A)
(43)【公表日】2015年10月15日
(86)【国際出願番号】EP2013068702
(87)【国際公開番号】WO2014048723
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2015年5月21日
(31)【優先権主張番号】12185840.1
(32)【優先日】2012年9月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509005513
【氏名又は名称】アルファ−ラヴァル・コーポレート・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スタッファン・ケーニッヒソン
【審査官】 小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−081933(JP,A)
【文献】 特開2011−110480(JP,A)
【文献】 特開2011−194286(JP,A)
【文献】 特開昭59−029023(JP,A)
【文献】 特開2009−115086(JP,A)
【文献】 特開2003−343272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14−53/18
B01D 53/34−53/96
F01N 3/00
F01N 3/02
F01N 3/04− 3/38
F01N 9/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼機関(2)からの排ガスにおけるSO及びNOの削減のためのウェットスクラバープロセスにおいて用いられることになる複合洗浄システムであって、排ガス洗浄(EGC)スクラバー(1)及び排ガス再循環(EGR)スクラバー(11)を含み、
複合洗浄システムが、スクラバー水循環タンク(15)とEGCスクラバー(1)との間のEGCスクラバープロセスループ(13)において、及び、スクラバー水循環タンク(15)とEGRスクラバー(11)との間のEGRスクラバープロセスループ(14)において、スクラバー水を循環するように配されたスクラバー水循環タンク(15)をさらに含み、EGRスクラバープロセスループ(14)が、スクラバー水の流れへ第1のアルカリ剤を供給するための配置(39)、及び、循環したスクラバー水から粒子状物質を分離することを目的とする第1の分離器ユニット(29)を含み、
複合洗浄システムが、ターボチャージャー(70)を含み、
EGCスクラバー(1)が、ターボチャージャー(70)の低圧側上に配され、
EGRスクラバー(11)が、ターボチャージャー(70)の高圧側上に配されることを特徴とする、複合洗浄システム。
【請求項2】
スクラバー水の流れへ第1のアルカリ剤を供給するための配置(39)が、スクラバー水循環タンク(15)の出口(20)と、EGRスクラバー(11)の入口(22)との間に位置する、請求項1に記載の複合洗浄システム。
【請求項3】
第1の分離器ユニット(29)が、スクラバー水循環タンク(15)の出口(20)と、EGRスクラバー(11)の入口(22)との間の位置に配される、請求項1又は2に記載の複合洗浄システム。
【請求項4】
第1の分離器ユニット(29)が、高速分離器、部分的放出の高速分離器又は全放出の高速分離器である、請求項3に記載の複合洗浄システム。
【請求項5】
第1の分離器ユニット(29)の出口(30)と、EGRスクラバー(11)の入口(22)との間の位置に配される浄水バッファタンク(32)をさらに含む、請求項1から3の何れか一項に記載の複合洗浄システム。
【請求項6】
EGCスクラバープロセスループ(13)が、スクラバー水循環タンク(15)の出口(20)とEGCスクラバー(1)の入口(21)との間の位置において、スクラバー水の流れへ第2のアルカリ剤を供給するための配置(26)を含む、請求項1に記載の複合洗浄システム。
【請求項7】
抜き取りプロセスループ(16)をさらに含み、抜き取りプロセスループが、第2の分離器ユニット(48)及びスラッジタンク(40)を含み、抜き取りプロセスループ(16)が、EGCスクラバープロセスループ(13)に、及び/又はEGRスクラバープロセスループ(14)に接続される、請求項1から6の何れか一項に記載の複合洗浄システム。
【請求項8】
抜き取りプロセスループ(16)が、抜き取りタンク(24)の出口(43)の後の、且つ第2の分離器ユニット(48)の入口(47)の前の位置において、凝固剤の供給のための配置(54)をさらに含む、請求項7に記載の複合洗浄システム。
【請求項9】
保持タンク(45)をさらに含み、保持タンクが、凝固剤の供給のための配置(54)と、第2の分離器ユニット(48)の入口(47)との間の位置において配される、請求項8に記載の複合洗浄システム。
【請求項10】
回収タンク(80)をさらに含み、回収タンクが、第2の分離器ユニット(48)によって分離された水を集めるように配され、それによって回収タンク(80)が、スクラバー水循環タンク(15)の出口と、EGCスクラバー(1)の入口(21)との間の位置におけるEGCスクラバープロセスループ(13)に接続される、請求項7から9の何れか一項に記載の複合洗浄システム。
【請求項11】
複合ウェットスクラバー洗浄システムを用いることによって燃焼機関(2)からの排ガスにおけるSO及びNOを削減するための方法であって、
前記システムが、排ガス洗浄(EGC)スクラバー(1)、排ガス再循環(EGR)スクラバー(11)及びスクラバー水循環タンク(15)を含み、
スクラバー水循環タンク(15)とEGCスクラバー(1)との間のEGCスクラバープロセスループ(13)において、及び、スクラバー水循環タンク(15)とEGRスクラバー(11)との間のEGRスクラバープロセスループ(14)において、スクラバー水を循環する段階と、
第1の分離器ユニット(29)を通ってスクラバー水を供給することによってEGRスクラバープロセスループ(14)において粒子状物質を除去する段階と、
EGRスクラバープロセスループ(14)においてスクラバー水へ第1のアルカリ剤を供給する段階とを含み、
複合ウェットスクラバー洗浄システムが、ターボチャージャー(70)を含み、
EGCスクラバー(1)が、ターボチャージャー(70)の低圧側上に配され、
EGRスクラバー(11)が、ターボチャージャー(70)の高圧側上に配される、方法。
【請求項12】
スクラバー水循環タンク(15)の出口(20)と、EGRスクラバー(11)の入口(22)との間の位置において第1の分離器ユニット(29)を提供する段階を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
スクラバー水循環タンク(15)の出口(20)と、EGCスクラバー(1)の入口(21)との間の位置におけるEGCスクラバープロセスループ(13)においてスクラバー水へ第2のアルカリ剤を、及び/又は、スクラバー水循環タンク(15)の出口(20)と、EGRスクラバーの入口(22)との間の位置におけるEGRスクラバープロセスループ(14)においてスクラバー水へ第1のアルカリ剤を、供給する段階を含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
スクラバー水循環タンク(15)からの過剰のスクラバー水を、抜き取りプロセスループ(16)内へ抜き取る段階をさらに含み、抜き取りがEGCスクラバープロセスループ(13)から為される、請求項11から13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
抜き取りプロセスループ(16)が、このようにして洗浄されたスクラバー水を船外へ放出する前に、抜き取られたスクラバー水から粒子状物質を除去する段階を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
抜き取りプロセスループ(16)が、抜き取られたスクラバー水から粒子状物質を除去する段階と、このようにして洗浄されたスクラバー水の品質を制御して承認する段階と、承認された洗浄スクラバー水を集める段階と、EGCスクラバー(1)を洗浄する及び/又は洗い流すことを目的としてそれをEGCスクラバープロセスループ(13)内へ循環し戻す段階とを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
燃焼機関(2)からの排ガスにおけるSO及びNOの削減を目的とした、船内での、請求項1から10の何れか一項に記載の複合洗浄システムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼機関からの排ガスにおけるSO及びNOの削減のためにウェットスクラバープロセスにおいて用いられることになる複合洗浄システムに関する。また、本発明は、複合ウェットスクラバー洗浄システムを用いることによって燃焼機関からの排ガスにおけるSO及びNOの削減のための方法に関する。さらに、本発明は、燃焼機関からの排ガスにおけるSO及びNOの削減を目的とする、船内での複合洗浄システムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の燃焼の間に、燃料における硫黄が硫黄酸化物(SO)の形態で放出される。他の汚染物質は、一次の粒子状物質、及び窒素酸化物(NO)である。大気汚染が人々の健康、及び環境に重大な影響を与えることはよく知られている。また、二酸化硫黄及び窒素酸化物が酸性雨の主要な前駆体であることもよく知られている。
【0003】
これまで、国際船舶に関する排出制御の環境基準設定及び法律制定は、地上基準の排出規制に遅れをとってきた。現在の規制は、SO排出を制御するための方法として燃料油の硫黄含有量に上限を盛り込んでいてる。特別な燃料品質規制が、排出制御領域におけるSOに関して存在し、近い将来において予期されることになる、許可された燃料硫黄限度における実質的な削減が存在する。いくつかの欧州連合指令からの仕様の後に2005年の5月に施行された、MARPOL Annex VI法は、環境への船舶用ディーゼルの影響を抑制してきた。2015年までに、法律は、例えば燃料硫黄限度、及びNOx上限に関してさらに厳しくなるであろう。
【0004】
単独の又は組み合わされる、異なる排出削減の可能性が存在する。一つの可能性は、留出燃料、又は低硫黄燃料等の新しい燃料を用いることである。他の一つの可能性は、NaOH溶液等のアルカリ剤を用いるウェットスクラバー技術、又は粒状の石灰岩(Ca(OH))を用いるドライスクラバー技術等の、SOの排出を制御するための方法をさらに発展させることである。
【0005】
現在の海洋産業において船舶からの排気におけるSO及びNOガスを削減することを目的として、SO削減のための排ガス洗浄(EGC)、並びに、SO及びNO削減のための排ガス再循環(EGR)を適用することがよく知られている。EGC及びEGRプロセスの両方は、SOの除去のためのNaOH溶液等のアルカリ剤を用いて、ウェットスクラバー技術を適用し得る。しかしながら、EGCプロセスは排気源の低圧側上で適用され、EGRプロセスは高圧側上で適用されるので、それらに関して同一のウェットスクラバーを共有することは不可能である。
【0006】
さらに、煤煙、油又は重金属等の粒子状物質の除去のための要求に関して異なる要件が存在する。EGRプロセスは、液体がウェットスクラバー内に導入される前に全ての液体の完全な流れの洗浄を要求し、それによって、そうしなければエンジンに入り、その中での堆積を引き起こす粒子状物質の量を最小化する。逆に、EGCプロセスは、スクラブプロセスにおいて粒子状物質に特に神経質ではないが、スクラブプロセスにおいて用いられる水における粒子状物質の量が高くなりすぎる場合、デッキ上で煤煙の降下が生じ得る。そのため、各プロセスは、遠心分離器等の分離器を備えることが推奨される。
【0007】
両方のプロセスにおいてSOを補足する際、溶解した亜硫酸塩及び硫酸塩の含有量は増加し、スクラバー水の密度を増加させる。固体塩の析出が生じ得るので、水において許容される溶解塩の最大量が存在する。また、遠心分離器が最適に動作するには、水の密度が高くなりすぎることがあり得る。
【0008】
従って、たとえEGCプロセス及びEGRプロセスの両方がウェットスクラバー技術を用いるとしても、それらは部分的に異なる要件を有し、それによってそれらは容易には組み合わせることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、船内での空間を節約するために、また、必要とされる淡水の量の削減を可能にするために、EGCプロセスをEGRプロセスと組み合わせることを可能にするシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これは、燃焼機関からの排ガスにおけるSO及びNOの削減のためのウェットスクラバープロセスにおいて用いられることになる複合洗浄システムによって達成される。上記システムは、排ガス洗浄(EGC)スクラバー及び排ガス再循環(EGR)スクラバーを含み、複合洗浄システムは、スクラバー水循環タンクとEGCスクラバーとの間のEGCスクラバープロセスループにおいて、及び、スクラバー水循環タンクとEGRスクラバーとの間のEGRスクラバープロセスループにおいて、スクラバー水を循環するように配されたスクラバ−水循環タンクをさらに含むことを特徴とする。EGRスクラバープロセスループは、スクラバー水の流れへ第1のアルカリ剤を供給するための配置、及び、循環したスクラバー水から粒子状物質を分離することを目的とした第1の分離器ユニットを含む。
【0011】
そのため、複合洗浄システムは、EGCスクラバープロセス及びEGRスクラバープロセスを、一つの且つ同一のスクラバー水循環タンクと組み合わせる。これは、必要とされる設置領域を実質的に減少させることが可能であり、船内での完全に新規の設置を設計する際に高い関連性があり、改良において、つまり、既存の排ガス洗浄システムが、利用可能な空間が制限されている船内でアップグレードされる際に、絶対的に最重要である。
【0012】
複合洗浄システムによって、EGRプロセスにおいて用いられることが可能にされる利用可能な水の容積は、EGCプロセス及びEGRプロセスが独立したスクラバー水循環タンクと共に動作する従来技術のシステムと比較して大幅に増加する。一般的に、EGRプロセスによって処理されることになる排ガスの量がEGCプロセスによって処理されることになるものよりも通常は実質的に少ないので、EGRプロセスにおいて必要とされる水の供給は、EGCプロセスにおけるものよりも実質的に少ない。典型的であるが非拘束の例として、排ガスの約40%は、EGRプロセスによって処理される。本発明のシステムによって、EGRプロセスは、必要とされる水の容積を考慮することなく、現在のエンジン負荷を考慮して必要でないことがたとえあったとしても、最大生産能力で動作され得る。それによって、スクラバー水循環タンクを介して循環される水における、従ってまた、EGCプロセスにおける、粒子状物質のレベルが低減され得る、という有利な効果が達成される。これは、デッキ上の煤煙の降下を最小化することを可能にする。これは少なくとも、より低い負荷であるがエンジンが駆動している港での停泊でない間に有利である。
【0013】
複合洗浄システムによるさらに他の一つの優位点は、そこに含まれる二つのスクラバーが、粒子状物質を分離するための装置、及び、廃棄されるスクラバー水及び粒子状物質を放出するために用いられる装置等の、船外処理に関して同一の装置を共有し得ることである。
【0014】
上述のように、EGRスクラバープロセスループは、スクラバー水の流れへ第1のアルカリ剤を供給するための配置を含む。この配置は、スクラバ−水循環タンクの出口と、EGRスクラバーの入口との間に位置し得る。投与を制御することによって、EGRスクラバーへ供給されるスクラバー水のアルカリ度が最適化され得る。一般的にEGRプロセスは、EGCプロセスと比較して、より高いpHで動作する。第1のアルカリ剤を供給するための配置が、EGCスクラバープロセスループへ第1のアルカリ剤を供給するために用いられ得ることが同様に理解されるべきである。
【0015】
上述のように、EGRスクラバープロセスループは、循環したスクラバー水から粒子状物質を分離するための第1の分離器ユニットを含む。この第1の分離器ユニットは、スクラバー水循環タンクの出口と、EGRスクラバーの入口との間の位置において配され得る。一般的に、このような粒子状物質が、エンジンの燃焼システム内に再導入されることになる洗浄された排ガスの一部と一緒に導入され得、そこで堆積及び損傷を引き起こすというリスクが存在するので、EGRスクラバー内へと循環される粒子状物質のレベルは、最低限に維持されるべきである。さらに、第1の分離器ユニットによって洗浄された水はまた、スクラバー水循環タンク内に、さらにEGCスクラバープロセスループ内に再循環されるので、EGRスクラバープロセスループにおいて配される第1の分離器ユニットは、EGCスクラバープロセスループからの粒子状物質を処理することによってもまた、循環するスクラバー水の全体の洗浄に寄与し得る。
【0016】
第1の分離器ユニットは、高速分離器、部分的放出の高速分離器又は全放出の高速分離器であり得る。これらのタイプの分離器ユニットは、粒子状物質の分離に関するEGCスクラバープロセス及びEGRスクラバープロセスにおける使用に関して当業者によってよく知られているので、さらなる説明は与えられない。
【0017】
複合洗浄システムは、第1の分離器ユニットの出口と、EGRスクラバーの入口との間の位置において配される浄水バッファタンクをさらに含み得る。場合によって加圧される、浄水バッファタンクは、第1の分離器ユニットが分離モードである通常の動作モードから、水及び粒子状物質の形態で、分離されたスラッジをスラッジタンクへ放出することを目的とした放出モードへと切り替わるときでさえ、EGRスクラバープロセスへの連続的な水の供給を可能にし得る。
【0018】
EGCスクラバープロセスループは、スクラバー水循環タンクの出口と、EGCスクラバーの入口との間の位置において、スクラバー水の流れへ第2のアルカリ剤を供給するための配置を含み得る。一般的に、EGCプロセスは、EGRプロセスよりも低いpHで動作する。投与を制御することによって、EGCスクラバーへ供給されるスクラバー水のアルカリ度は最適化され得る。第2のアルカリ剤を供給するための配置は、EGRスクラバープロセスループに関しても同様に用いられ得ることが理解されるべきである。そのため、第1のアルカリ剤及び第2のアルカリ剤の供給の配置は一つの且つ同一の配置であり得、ここで、第1のアルカリ剤及び第2のアルカリ剤は一つの且つ同一の化学物質であり得る。
【0019】
複合洗浄システムは、抜き取りプロセスループをさらに含み得、抜き取りプロセスループは、第2の分離器ユニット及びスラッジタンクを含み、抜き取りプロセスループはEGCスクラバープロセスループ及び/又はEGRスクラバープロセスループに接続される。
【0020】
抜き取りプロセスループは、例えば、EGCプロセスループ及びEGRプロセスループにおいて処理される熱い排ガスから凝縮される水によって、及び、塩濃度を飽和レベル以下に維持するための循環スクラバー水を希釈することを目的として供給され得る淡水によって、複合洗浄システムへ不可避に導入される過剰の水を抜き取ることを可能にする。また、抜き取りプロセスループは、スラッジ及び粒子状物質の形態で分離された廃棄物の排出を可能にする。
【0021】
一般的に、EGRプロセスは、EGCプロセスよりも高いpHで動作する。水がEGCプロセスループからスクラバーシステムを離れることを可能にすることのみによって、EGRプロセスに供給され、そこで消費されない任意の過剰のアルカリ剤は、EGCプロセス内に循環され、代わりにそこで消費されることになる。これは、アルカリ剤の全体の供給を低減することを可能にする。
【0022】
抜き取りプロセスループは、抜き取りタンクの出口の後の、且つ第2の分離器ユニットの入口の前の位置において凝固剤の供給のための配置をさらに含み得る。典型的にはアルミニウム又は鉄等の三価の金属イオンの形態である凝固剤は、粒子状物質が金属塩に接続される化学的化合物を形成する凝固剤によって、第2の分離器のユニットの性能を向上するために用いられ得る。このような化学的化合物はより重く、第2の分離器ユニットによって容易に分離される。
【0023】
複合洗浄システムは、保持タンクをさらに含み得、保持タンクは、凝固剤の供給のための配置と、第2の分離器ユニットの入口との間の位置において配される。保持タンクは、第2の分離器ユニットに供給される前に、スクラバー水における粒子状物質の沈殿/凝集のための十分な滞留時間を凝固剤に与える。
【0024】
複合洗浄システムは、回収タンクをさらに含み得、回収タンクは、第2の分離器ユニットによって分離された水を集めるように配され、それによって、回収タンクは、スクラバー水循環タンクの出口と、EGCスクラバーの入口との間の位置においてEGCスクラバープロセスループに接続される。
【0025】
そのため、回収タンクにおいて集められた水は、海水モードから淡水モードへの変更時にEGCスクラバーを洗浄する又は洗い流すために用いられ得、それによって、腐食関連の問題を低減し得、また、海水がEGRスクラバー内に導入されることを回避し得る。より正確には、複合システムを有する場合、淡水及び海水は、入口配管、ポンプ、スクラバー及び出口配管等の多数の構成要素を共有しなくてはならない。従って、海水モードから淡水モードへ単純に変更する場合、多量の海水が、共通のタンクに、それゆえEGRシステム内に行くことになるであろう。これは、海水を受ける可能性がある部品が、腐食しにくい材料で設計されるべきであることを必要とする。しかしながら、塩を含まない水によってEGCスクラバーを洗浄する/洗い流すことによって、塩化物をスクラバー水循環タンク内に得ることが回避され得、そのため、上述の腐食による問題が解決され得る。第2の分離器ユニットによって分離された水の品質は、品質検査を受け得、回収タンクにおいて集められることになる水の塩濃度が許容可能なレベル内であることを確保し得る。
【0026】
他の一つの態様によると、本方法は、排ガス洗浄(EGC)スクラバー、排ガス再循環(EGR)スクラバー及びスクラバー水循環タンクを含む複合ウェットスクラバー洗浄システムを用いることによって燃焼機関からの排ガスにおけるSO及びNOの削減を提供する。本方法は、スクラバー水循環タンクとEGCスクラバーとの間のEGCスクラバープロセスループにおいて、及び、スクラバー水循環タンクとEGRスクラバーとの間のEGRスクラバープロセスループにおいて、スクラバー水を循環させる段階を含む。本方法は、第1の分離器ユニットを通ってスクラバー水を供給することによってEGRスクラバープロセスループにおける粒子状物質を除去する段階、及びEGRスクラバープロセスループにおいてスクラバー水に第1のアルカリ剤を供給する段階をさらに含む。本方法は、前述の複合洗浄システムと同様の優位点を与え、それによって、不必要な反復を避けるために上記記載へと参照される。
【0027】
本方法は、スクラバー水循環タンクの出口と、EGRスクラバーの入口との間の位置における第1の分離器ユニットを提供する段階をさらに含み得る。
【0028】
本方法は、スクラバー水循環タンクの出口とEGCスクラバーの入口との間の位置におけるEGCスクラバープロセスループにおいてスクラバー水へ第2のアルカリ剤を、及び/又は、スクラバー水循環タンクの出口とEGRスクラバーの入口との間の位置におけるEGRスクラバープロセスループにおいてスクラバー水へ第1のアルカリ剤を供給する段階をさらに含み得る。
【0029】
本方法は、スクラバー水循環タンクからの過剰なスクラバー水を、抜き取りプロセスループ内へ抜き取る段階であって、抜き取りがEGCスクラバープロセスループから為される段階をさらに含み得る。
【0030】
本方法によると、抜き取りプロセスループは、このようにして洗浄されたスクラバー水を船外に排出する前に、抜き取られたスクラバー水から粒子状物質を除去する段階を含み得る。
【0031】
本方法によると、抜き取りプロセスループは、抜き取られたスクラバー水から粒子状物質を除去する段階と、このようにして洗浄されたスクラバー水の品質を制御して承認する段階と、承認された洗浄されたスクラバー水を集める段階と、EGCスクラバーを洗浄する及び/又は洗い流すことを目的としてそれをEGCスクラバープロセスループ内に循環し戻す段階をさらに含み得る。
【0032】
さらに他の一つの態様によると、本発明は、燃焼機関からの排ガスにおけるSO及びNOの削減を目的として、船内での請求項1から10の何れか一項に記載の複合洗浄システムの使用に関する。
【0033】
さらなる目的及び特徴は、詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0034】
本発明の一実施形態は、例として、添付の図面を参照することによってより詳細に、これから説明されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】EGCウェットスクラバーの一般的操作を開示する概略図である。
図2】EGRウェットスクラバーの一般的操作を開示する概略図である。
図3】本発明のシステムの概略図である。
図4】本発明のシステムの第2実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の詳細に入る前に、EGCスクラバープロセス及びEGRスクラバープロセスの一般的な原理が説明されることになる。
【0037】
船内で使用されることになる典型的なEGCスクラバーは、いわゆるウェットスクラバーである。ウェットEGCスクラバープロセスそれ自体は、先行技術においてよく知られており、一般的な考え方は、船内のディーゼルエンジン等のエンジンからの排ガスにおける煤煙等の粒子状物質、油及び重金属を除去すること、且つ同時に、水の流れによって排ガスからのSO等の酸性ガスを洗い流すことである。SOは、燃料における硫黄が酸素と組み合わさる際、燃焼プロセスの間に形成される。水を用いてスクラブプロセスにおけるSOを溶解する際の基本的な原理は、SOがEGCスクラバーにおいて用いられるアルカリ水と反応する際に硫酸塩に酸化されるというものである。港や河川では、アルカリ度は変動し、スクラバープロセスが淡水モードで動作する場合に化学反応を常に十分に促進するものではない。従って、水のアルカリ度を維持する必要がある。これは、水にNaOH等のアルカリ剤を加えることによって為され得る。
【0038】
ウェットスクラバータイプのEGCスクラバー1の典型的な実施例が図1に開示され、これから参照される。燃焼機関2からの排ガスは、大流量の水Wによって洗い流されつつ、その入口4を介してその出口5へ、第1のチャンバー3を通り抜けて、約180℃〜250℃から約45℃〜55℃へと温度を急激に低下させる。洗い流しは、複数のノズル6によって為され得る。排ガスを冷却することによって、その容積は減少され得、EGCスクラバー1の第2のチャンバー7、つまり吸収チャンバーをより小さな寸法にすることを可能にする。それによって、船内で必要とされる空間は削減され得、EGCスクラバー1を改良する場合以外に少なくとも有利である。第2のチャンバー7において、予め洗浄された排ガスは、通常は底部入口が第1のチャンバー3の出口5と連通している、その入口9から導入され、通常は上部出口である、その出口10へと導かれつつ、ノズル8からの対向流の水Wを受ける。第2のチャンバー7を通る移動の間、排ガスはEGCスクラバー1の前に水Wへ供給される(記載されない)アルカリ剤と反応し得る。アルカリ剤との反応の間に、排ガスに含まれるSOは、SOが硫酸塩へ酸化することによって、水に溶解し得る。排ガスに含まれる粒子状物質は、第1のチャンバー3及び第2のチャンバー7に配される底部出口19を介して水と共に洗い流され得る。
【0039】
EGCスクラバー1の除去効率をさらに改善するために、第2のチャンバー7における排ガスの滞留時間が増加され得る。代わりに、第2のチャンバー7内部の有効表面積が、排ガスとより大きな接触面を与えることによって増加され得る。この目的のために既知の技術は、噴霧ノズル、充填塔又は吸引器の使用である(記載されない)。
【0040】
このようにして洗浄された排ガスは、それが法制化された排出レベルを満たすことを確実にする品質制御(記載されない)の後で、出口10を介して周囲空気へと放出され得る。
【0041】
EGCスクラバー1は、一般的に、海水若しくは淡水、又はそれらの混合物さえ用い得る。
【0042】
以下において、EGRスクラバープロセスの一般的な原理が図2を参照して説明されることになる。EGRスクラバープロセスそれ自体は、先行技術においてよく知られており、一般的な考え方は、船内でのディーゼルエンジン等のエンジンから放出されることになる排ガスにおける窒素酸化物(NO)の量を減少させることである。
【0043】
EGRスクラバー11それ自体は、EGCスクラバーと同様の原理に基づくいわゆるウェットスクラバーであり、それによって、不必要な反復を避けるために上記記載へと参照される。
【0044】
EGCスクラバーに対する主な違いとして、洗浄された排ガスの一部が、NOのレベルを低減する目的のために、燃焼機関2の燃焼チャンバー内へ再循環されることである。排ガスのおよそ40%までが、エンジン2内へ再循環され得る。再循環された排ガスは、結果として得られる予燃焼混合物における過剰の酸素のいくらかを置換する。このように低下された酸素レベルは、二酸化炭素(CO)のレベルを増加させる。NOは、窒素及び酸素の混合物が高温にさらされる際に主に形成される。しかしながら、増加したCOのレベルは、燃焼温度が低下するという効果を有する。その結果として、排ガスにおいて形成されるNOのレベルは低減され得る。
【0045】
EGCスクラバー1のように、EGRスクラバー11は、一般的に、海水若しくは淡水、又はそれらの組み合わせさえ用い得る。
【0046】
ここで図3を参照すると、本発明のシステムの概略図が開示されている。本発明のシステムは、共通のスクラバー水循環タンク15からの水の再循環のために、二つのループ、EGCスクラバープロセスループ13及びEGRスクラバープロセスループ14を含む。また、本発明のシステムは、スクラバ−水循環タンク15が、以下で抜き取りループ16として特定される第3のプロセスループの一部を形成することを可能にする。
【0047】
より正確には、本発明のシステムは、第1の入口17及び第2の入口18を有するスクラバー水循環タンク15を含む。第1の入口17は、EGCスクラバー1の出口19と連通して配されて、EGCスクラバープロセスループ13の一部を形成し、第2の入口18は、EGRスクラバー11の出口34と連通して配されて、EGRスクラバープロセスループ14の一部を形成する。さらに、スクラバー水循環タンク15は、EGCスクラバー1の入口21と、EGRスクラバー11の入口22と連通して配される出口20を有する。EGCスクラバー1及びEGRスクラバー11の入口21及び22は、図1及び2において見られるような、EGC/EGRウェットスクラバー1、11の第1のチャンバーの入口4に相当する。
【0048】
以下の説明は、スクラバー水循環タンク15の一つの且つ同一の出口20と連通して配されているEGCスクラバー1及びEGRスクラバー11に基づいているが、スクラバー水循環タンク15は、それぞれEGCスクラバー1及びEGRスクラバー11と連通して配される二つの個別の出口を備え得ることが理解されるべきである。
【0049】
スクラバー水循環タンク15の出口20はさらに、抜き取りタンク24の入口23と連通して配されて、抜き取りループ16の一部を形成する。
【0050】
本発明のシステム、及びそこに含まれる個別の構成要素は、以下で詳細に説明されることになる。
【0051】
EGCスクラバープロセスループ13から始めると、スクラバー水循環タンク15は、その出口20を介して、EGCスクラバー1の入口21に接続され、それによって、EGCスクラバー1は、スクラバー水循環タンク15からの大流量の水が供給され得る。より良い理解のために、且つ非限定的な実施例として、淡水用途の場合、量はおよそ30m/MWhであり得る。水は、ポンプ25によってEGCスクラバー1内へと送り込まれる。
【0052】
EGCスクラバー1の前に、スクラバー水循環タンク15からの水のpHは、NaOH又は同等のもの等の第2のアルカリ剤の供給のための配置26によって増加され得る。第2のアルカリ剤の供給は、EGCスクラバー1内に水を送り込むように配されるポンプ25の前に行われるように開示されるが、第2のアルカリ剤は、スクラバー水循環タンク15の出口20とEGCスクラバー1の入口21との間の任意の位置で供給され得ることが理解されるべきである。第2のアルカリ剤の供給は、コントローラーによって制御され得る(記載されない)。EGCスクラバーの入口に供給される水は、スクラバーセクションにおいてできる限り低い温度を維持する目的で冷却器27を介して通り得る。冷却は、効率的な凝縮を促進し、それによって、蒸発による水の損失を回避する。
【0053】
EGCスクラバー1において、図1及び3を参照すると、水は、燃焼機関2からの排ガスの流れに出会う。EGCスクラバー1は、ターボチャージャー70の低圧側上に配される。燃焼機関2からの排ガスは、水によって洗い流されて約180℃〜250℃から約45℃〜55℃へ温度が急激に低下しつつ、EGCスクラバー1の第1のチャンバー3を通り抜ける。また、排ガスに含まれる粒子状物質の一部は洗い流され得る。このようにして予め洗浄され、冷却されたガスは、吸収チャンバーであるEGCスクラバー1の第2のチャンバー7内に供給され、その入口9からその出口10へと導かれつつ対向流の水を受ける。第2のチャンバー7を通る移動の間、排ガスは水におけるアルカリ剤と反応し、それによって、排ガスに含まれるSOは、SOが硫酸塩へと酸化することによって水に溶解される。さらに、任意の残りの粒子状物質が、水と一緒に洗い流され得る。
【0054】
EGCスクラバー1において用いられる水は、EGCスクラバー1の出口19を介して、スクラバー水循環タンク15の第1の入口17へと、洗い流された粒子状物質と一緒に戻される(図3を参照)。洗浄された排ガスは、出口10を介して周囲空気へと放出され得る。図1の二つの出口19は、図3において一つの出口19として示される。
【0055】
EGCスクラバープロセスループ13を受けない燃焼機関2からの排ガスの他の部分は、代わりにEGRスクラバープロセスループ14を受けることになる。EGRスクラバープロセスループ14は、ターボチャージャー70の高圧側上で行われるように配される。
【0056】
開示されるEGRスクラバープロセスループ14では、スクラバー水循環タンク15は、その出口20を介して、第1の分離器ユニット29の入口28に接続される。第1の分離器ユニット29の出口30は、任意の浄水バッファタンク32の入口31に接続される。浄水バッファタンク32の第1の出口33は、EGRスクラバー11の入口22に接続される。さらに、図2の出口19に相当する、EGRスクラバー11の出口34は、任意の回収タンク36の入口35に接続され、回収タンク36の出口37は、スクラバー水循環タンク15の第2の入口18に接続される。開示されるEGRスクラバープロセスループ14では、熱交換器71が、第1の分離器ユニット29の出口30と、任意の浄水バッファタンク32の入口31との間に配される。
【0057】
浄水バッファタンク32の第2の出口38は、スクラバー水循環タンク15の第2の入口18に接続される。
【0058】
EGRスクラバー11の前に、スクラバー水循環タンク15からの水のpHは、NaOH又は同等のもの等の第1のアルカリ剤の供給のための配置によって増加され得る。第1のアルカリ剤の供給は、第1の分離器ユニット29の前に行われるように開示されるが、第1のアルカリ剤はスクラバー水循環タンク15の出口20とEGRスクラバー11の入口22との間の任意の位置で供給され得ることが理解されるべきである。一般的に、EGRプロセスはEGCプロセスと比較して高いpHで動作する。それによって、供給に必要とされるアルカリ剤の量は、EGCスクラバーのそれよりも高いことがある。アルカリ剤の供給はコントローラーによって制御され得る(記載されない)。
【0059】
EGRスクラバープロセスループ14の動作の間、スクラバー水循環タンク15からの水は、第1の分離器ユニット29へ供給され、EGRスクラバー11へ移される粒子状物質の量を最小化する。第1の分離器ユニット29は、高速分離器であり得る。第1の分離器ユニット29によって集められた粒子状物質は、第1の分離器ユニット29から直接放出され得る、又は以下で説明されることになるスラッジタンク40内に送り込まれて集められ得る。第1の分離器ユニット29はスクラバー水循環タンク15から水が供給されるので、第1の分離器ユニット29は、EGCスクラバープロセスループ13及びEGRスクラバープロセスループ14の両方から洗い流された粒子状物質を分離する。しかしながら、EGRスクラバー11が燃焼機関2内への排ガスの再循環と連動するので、且つ燃焼機関2それ自体が典型的には粒子状物質に敏感であるので、EGCスクラバープロセスループ13よりも、EGRスクラバー11の下流のEGRスクラバープロセスループ14に第1の分離器ユニット29を配することが有利である。
【0060】
第1の分離器ユニット29によって洗浄された水は、浄水バッファタンク32内へ移される。EGRスクラバー11を動作するのに必要とされる量の水が、浄水バッファタンク32からEGRスクラバー11へ供給される。必要とされる量は、EGRスクラバー11によって洗浄されることになる排ガスを生成する燃焼機関2のエンジン負荷に依存する。EGRスクラバー11内に送り込まれる水の量は、一例として、およそ2〜3m/MWhの速度であり得る。
【0061】
浄水バッファタンク32における過剰の水、つまりEGRスクラバー11において必要とされない水は、スクラバー水循環タンク15内に戻される。第1の分離器ユニット29に起因して、スクラバー水循環タンク29へ戻される水は、低減された粒子状物質のレベルを有する。
【0062】
EGRスクラバー11では(図2を参照)、クリーンバッファタンク32からの水は、燃焼機関2からの排ガスの流れに出会う。燃焼機関2からの排ガスは、水の流れによって洗い流されて約180℃〜250℃の温度から海水温度プラス約10℃〜20℃に相当する温度へ急激に低下されつつ、EGRスクラバー11の第1のチャンバー3を通って流れる。これは、粗い、単に非限定的な実施例として見なされるべきである。このようにして冷却されたガスは、吸収チャンバーであるEGRスクラバー11の第2のチャンバー7内へ供給され、ここで、予め洗浄され、冷却された排ガスは、入口9から出口10へ導入されつつ、対向流の水を受ける。第2のチャンバー7を通る移動の間、排ガスは水におけるアルカリ剤と反応し、それによって、排ガスに含まれるSOは、SOが硫酸塩へ酸化することによって水に溶解され得る。さらに、そこに含まれる粒子状物質は、水と一緒に洗い流され得る。
【0063】
非拘束の実施例として、典型的には40%の排ガスがEGRスクラバー11によって洗浄され得、一方で残りの60%の排ガスがEGCスクラバーへ供給される。EGRスクラバー11は、周囲空気へガスを放出しない閉回路として見なされることになることが理解されるべきである。
【0064】
EGRスクラバー11において用いられる水は、その第2の入口18を介してスクラバー水循環タンク15へ戻される。これは、直接、又は任意の回収タンクを介して為され得る。回収タンク36は、EGRスクラバー11とスクラバー水循環タンク15との間の距離が大きい場合に有用であり得る。回収タンク36の出口37と、スクラバー水循環タンク15の第2の入口18との間に任意のポンプ41を配することがさらに可能である。
【0065】
浄水バッファタンク32は、加圧され得る。加圧は、高速分離器ユニットの場合、例えばそこに含まれるディスクを削減(paring)することによって、第1の分離器ユニット29によって達成され得る。第1の分離器ユニット29が、分離モードである通常の動作モードから、分離された粒子状物質がスラッジタンク40へと放出される放出モードへと切り替えられるときでさえ、加圧は、EGRプロセスループ14への連続的な水の供給を可能にする。このような切り替えの間、圧力低下が生じ、EGRスクラバー11への水の供給に影響を及ぼし得る。しかしながら、加圧された浄水バッファタンク32を用いることによって、このような圧力低下は相殺され得る。
【0066】
浄水バッファタンク32からのEGRスクラバー11への連続的な水の供給は、浄水バッファタンク32の出口33と、EGRスクラバー11の入口22との間に配されるポンプ42によって準備され得ることが理解されるべきである。
【0067】
また、浄水バッファタンク32が省略され得ることが理解されるべきである。これは、第1の分離器ユニット29が密封した入口及び出口を備える、いわゆる部分的放出の(partial discharge)高速分離器である場合に可能とされ得る。その場合、第1の分離器ユニット29へ水を供給するポンプ60は、EGRスクラバー11へと直接水を送り込むため、及びスクラバー水循環タンク15へ過剰の水を送り戻すための両方に用いられ得る。EGRスクラバー11及びスクラバー水循環タンク15への第1の分離器ユニット29からの水の流れの区域は、バルブによって制御され得る(記載されない)。
【0068】
一実施形態では、第1の分離器ユニット29は、密封した入口及び出口を備える、いわゆる全放出の(total discharge)高速分離器であり得る。その場合、第1の分離器ユニット29へ水を供給するポンプ60は、スクラバー水循環タンク15内へ過剰の水を送り戻すために用いられ得る。このような実施形態では、加圧された浄水バッファタンク32は、第1の分離器ユニット29が、分離された廃棄物をスラッジタンク40へと放出することを目的に、分離モードである通常の動作モードから放出モードへ切り替えられるときでさえ、EGRスクラバー11への水の流れを維持するために用いられる。
【0069】
たとえそれがEGCスクラバープロセスループ13又はEGRスクラバープロセスループ14であるとしても、排ガスに含まれる任意の水は、スクラバー水循環タンク15からのより冷たい水が燃焼機関2からの熱い排ガスと出会うときに凝縮するであろうことが理解されるであろう。洗浄システムにおける水の量は、結果として徐々に増加することになる。また、その塩分を希釈するために、洗浄システムへ淡水を加えることが可能である。さもなければその塩分は徐々に増加することになる。再循環水の量及び塩濃度を制御下に維持するために、過剰の水は、以下で説明されることになる抜き取りループ16内へ排水され得る。
【0070】
開示される実施形態では、抜き取りループ16内への排水は、ポンプ25とEGCスクラバー1の入口21との間のEGCスクラバ−プロセスループ13において行われるように示される。排水がこの位置に限定されるべきでないことが理解されるべきである。また、排水はEGRスクラバープロセスループ14から為され得る。
【0071】
抜き取りループ16は抜き取りタンク24を含む。抜き取りタンク24の出口43は、任意の保持タンク45の入口44に接続される。保持タンク45の出口46は、第2の分離器ユニット48の入口47に接続される。保持タンク45が省略される場合、抜き取りタンク24の出口43は、第2の分離器ユニット48の入口47に接続される。第2の分離器ユニット48の第1の出口49は、スラッジンタンク40の入口59に接続される。第2の分離器ユニット48の第2の出口51は、バルブ配置52に接続され、バルブ配置52は抜き取りタンク24の入口23に、又は船外の排出管53へ接続される。そのため、抜き取りループ16は、法制化された船外排出基準を満たす水質へと抜き取りスクラバー水を処理することを目的に提供される。
【0072】
保持タンク45が省略される一実施形態では、抜き取りタンク24において受けられる水は、第2の分離器ユニット48内へ送り込まれ、粒子状物質が分離されてスラッジタンク40に集められる。
【0073】
洗浄され、分離された水は、法制化された船外排出基準を水が満たすかどうかを調べるために、品質管理61を受ける。一例として、水を海の中へと抜き取る際の、有機化合物、濁度としても知られる懸濁物、及びpHレベルの最大レベルを記載する船外排出基準がある。
【0074】
品質が許容可能であると見なされる場合、水は、バルブ配置52、及び船外排出管53を介して船外に放出され得る。許容であると見なされない場合、又は、港の停泊若しくは船舶が敏感な領域にいることに起因して放出が可能とされない場合、水はその入口23を介して抜き取りタンク24内へ戻される。
【0075】
非常に汚染された水の場合、又は凝固剤の使用が必要とされない場合、抜き取りタンク24は、再循環及び更なる洗浄の可能性をさらに提供する。
【0076】
抜き取りタンク24へのただ一つの入口23が記載されているが、抜き取りタンク24は、EGCスクラバープロセスループ13又はEGRスクラバープロセスループ14に連通する一つの入口、及び、抜き取りループ16のバルブ配置52に連通する一つの入口が提供され得ることが理解されるべきである。
【0077】
抜き取りループ16の第2の分離器ユニット48の性能、さらに良い洗浄、又はより高い処理量を有する可能性をさらに上昇するために、凝固剤の供給のための配置54によって、抜き取りループ16の第2の分離器ユニット48へ供給されることになる水の中に、凝固剤が導入され得る。凝固剤の性能を向上させるために、上述の保持タンク45は、凝固剤の供給のための配置54と第2の分離器ユニット48との間の位置において配され得る。保持タンク45は、水が第2の分離器ユニット48へ供給される前に、水における粒子状物質の沈殿/凝集に関して十分な滞留時間を凝固剤に与える。凝固剤を用いる目的は、粒子状物質が金属塩に接続される化学的化合物を形成することである。このような化学的化合物は、第2の分離器ユニットによって分離することがより容易である。凝固剤は、一例として、アルミニウム又は鉄等の三価の金属イオンであり得る。
【0078】
抜き取りループ16における第2の分離器ユニット48からの放出は、EGRスクラバープロセスループ14と連携する第1の分離器ユニット29に関して用いられるような同様のスラッジタンク40内に、又は独立したスラッジタンク(記載されない)内に送り込まれ得る。開示される実施形態では、一つの且つ同一のスラッジタンク40が、分離器ユニット29、48の両方からのスラッジを受けるために用いられる。スラッジタンク40における内容物は、港の滞在の間に陸上へ送り込まれ得る、又は船内でさらに処理され得る。
【0079】
船内でさらに処理する際の一つの可能性は、スラッジタンク40の上部から集められた水を抜き取りタンク24内へと再導入し戻すことである(記載されない)。他の一つの可能性は、いわゆるドライ分離器ユニット(記載されない)を通してスラッジタンク40の内容物を供給して、それによって、スラッジタンク40における固形物を除去、及び完全に乾燥することである。毛細管結合されていない水は除去され、総スラッジ量を最小化する。このようにして除去された水は、法制化された排出基準を満たすための処理のために、スクラバー水循環タンク15内に戻って、又は抜き取りタンク24に戻って導入され得る。
【0080】
上述の抜き取りループ16は、海上ではいやというほど思い知らされている淡水消費の削減を可能にする。
【0081】
図4を参照すると、システムの第2実施形態が開示される。システムの全体の設計は、図3で参照される上述のものと同一であり、回収タンク80が品質管理61の下流の位置における抜き取りループ16において配されるという違いを有する。開示される実施形態では、回収タンク80は、バルブ配置52の出口に接続され、さらに、スクラバー水循環タンク15の出口20とポンプ25との間の位置におけるECRスクラバープロセスループ13に接続される。さらに、バルブ81は、EGCスクラバー1の出口19と、スクラバー水循環タンク15の入口17との間に配される。バルブ81は、海の中へ、又は他の場所、例えば開示されていない適切なタンク内へ、このようにして“使用された”品質管理された水の放出82を可能にし得る。そのため、制御された品質を有する回収タンク80に集められた水は、海水モードから淡水モードへの変更時にEGCスクラバー1を洗浄する又は洗い流すために用いられ得、それによって腐食に関連した問題を減少させ、また、海水がEGRスクラバー11内に導入されることを回避する。より具体的には、複合システムを有する場合、淡水及び海水は、入口配管、ポンプ、スクラバー及び出口配管等の多数の構成要素を共有しなくてはならない。従って、海水モードから淡水モードへ単純に変更するならば、多量の海水が共通のタンクに、それゆえEGRシステム内に行くことになるであろう。これは、海水を受ける可能性がある部品が、腐食しにくい材料で設計されるべきであることを必要とする。これは、かなりの材料コストの増加をもたらす。しかしながら、塩を含まない品質管理された水によってEGCスクラバー1を洗浄する/洗い流すことによって、塩化物がスクラバー水循環タンク15内に入ることが回避されるので、上述の腐食による問題は解決され得る。
【0082】
上述の説明は、それぞれ第1のチャンバー3及び第2のチャンバー7を含むEGCスクラバー1及びEGRスクラバー11の実施形態に基づくものであり、第1のチャンバー3の主な目的は、排ガスを急激に冷却することである。冷却する段階、それゆえ第1のチャンバー3もまた省略され得ることが理解されるべきである。
【0083】
また、市場には多数の利用可能なEGCスクラバー1及びEGRスクラバー11が存在すること、及び、本発明は個別のEGCスクラバー及び/又はEGRスクラバーの設計及び動作に限定されるべきでないことが理解されるべきである。一例として、それに複数のエンジンを接続することを可能にする、複数入口のスクラバーを用いることが可能である。
【0084】
さらに、液体から粒子状物質を分離することを目的とする、多数の利用可能な分離器ユニットが存在し、それによって、本発明は説明された実施形態に限定されるべきでないことが理解されるべきである。代替の分離器ユニットの例は、フィルター、デカンター及び沈殿槽であり、軟凝集剤又は凝集剤と組み合わせて用いられることもあり、用いられないこともある。
【0085】
以上のように、本発明の上述の実施形態の多数の変形が、添付の特許請求の範囲の範疇内において可能であることが認識されるであろう。
図1
図2
図3
図4