【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明はその結果、部分的に黒鉛化された活性炭及び少なくとも1つの強磁性金属の金属粒子を含む強磁性炭素体に向けられており、本体は、200から1000m
2/gのBET表面積、0.1から1ml/gの孔の全体積、及び2から10nmの平均孔直径を有している。
【0036】
驚くべきことに、本発明による強磁性炭素体は、改善された孔径の分布を有していることが見出された。強磁性炭素体の改善された多孔質構造は、その内部表面への輸送が修飾されていない活性炭よりもずっと速く進行することを可能にしている。これは、汚染物質の吸着容量及び除去の速度の相当な増加を有利的に提供している。
【0037】
炭素による金属前駆体の還元に由来する金属粒子、特に鉄の粒子は一般的に、黒鉛炭素によってカプセル化されていないか、部分的にカプセル化されているだけであることも驚くべきことである。金属粒子の表面のその部分は、炭素の再結晶の後でもむき出しのままであり、これは金属粒子のほとんど(例えば、90重量%より上)が、酸、例えば、塩酸、硝酸または硫酸との処置によって結果として生じた炭素体から除去され得るという事実から明らかである。
【0038】
活性炭の開始材料を通して含浸された金属化合物の分散は制御されることが望ましい。
【0039】
非特許文献8(Zhuang et al. (Applied Catalysis A: General 301(2006)138−142))は、はっきりとした境界を有する卵殻、卵白、及び卵黄の種類の担持金属触媒を調製する方法を開示している。Zhuangらの技術において、触媒担体の中心における孔体積が、疎水性有機溶剤で満たされるので、含浸溶液または浸出溶液が触媒担体の中心部に入るのを防ぐ。また、Zhuangらはまた、触媒担体における有機溶剤の量は、蒸発によって制御され得ることを開示している。さらに、Zhuangらは、これは、含浸溶液が触媒担体の中心部に入ることを妨げることによる卵殻型触媒、浸出溶液が還元された触媒担体の中心部に入ることを妨げることによる卵黄型触媒、または、浸出溶液が還元された卵殻型触媒の中心部に入ることを妨げることによる卵白型触媒をもたらす。
【0040】
特許文献7(米国特許第3,259,589号明細書)は、無機酸化物の担体を触媒活性金属成分及び有機酸に含浸させ、含浸した担体を乾燥し、及びそれから水素の存在下で加熱して金属成分を還元することによる触媒の調整方法を開示している。特許文献7はまた、この方法は、担体の含浸の間に有機酸を使用しないことにより修正されてもよく、これは、表面上またはその近くに実際上全ての触媒活性金属成分を有する(すなわち卵殻型触媒)触媒粒子をもたらす。さらに、特許文献7は、過剰な量の有機酸の使用は、実質的に全ての金属成分が触媒粒子の中心に押し込まれること(すなわち卵黄型触媒)を開示している。この方法の別の変種において、特許文献7は、粒子内部に1つの層として完全に組み込まれた金属成分を有する触媒粒子が、担体の重量に基づき0.1から1.5重量%の量にある、カルボキシル基に隣接した水酸基を有する有機酸を使用することにより製造され得ることを開示している。特許文献7で開示された方法の他の変種は、アンモニアまたは他のアルカリ性作用(alkalinous−acting)の材料の存在下で、担体の重量に基づき0.1から1.5重量%の量の有機酸を用いることで、担体を通して均一に分布した金属成分を有することで調整され得ることを開示している。
【0041】
特許文献8(米国特許第3,388,077号明細書)は、アルカリ土類金属成分が同様に、担体に含浸されることを除いて、特許文献7と類似の触媒を調製する方法を開示している。
【0042】
非特許文献9(Van den Berg (“Zirconia−supported iron−based Fischer−Tropsch catalysts”,PhD Thesis (2001) Utrecht University, The Netherlands))は、インシピエントウェットネス含浸(incipient wetness impregnation)を使用して、高度に分散した酸化ジルコニウム担持鉄ベースの触媒を製造する方法を開示している。この方法において、焼成温度は、触媒内部での触媒活性材料の分散に影響することが見出された。
【0043】
特許文献9(米国特許第4,783,434号明細書)は、担体本体の内部表面及び外部表面にわたって触媒活性要素の均一な分布を提供する工程を開示している。この工程において、担体本体は、触媒活性要素の複合溶液で含浸され、その溶液の粘度は、加熱、及び/または溶媒の蒸発、及びその後の溶媒の蒸発及び加熱による複合体の分解において減少しない。特許文献9は、この工程の主な利点は、触媒内の狭い孔の存在を導く活性要素の小さな粒子の凝集の形成なく、大きな特定の面積を有する活性要素に対して、幅の広い孔を有する担体本体に適用でき、及びそれ故、十分に到達可能な表面を可能にしていることであることを開示している。
【0044】
材料中の金属化合物粒子の分布は、電子顕微鏡法(例えばTEMとSEM)によって評価することができる。
【0045】
一般的に、本発明による強磁性炭素体は、非特許文献10(N.V.Y.Scarlett, I.C.Madsen, Powder Diffraction 21(2006)278−284)によって説明されるような、PONKCS(「Partial or no known crystal structures」)法と組み合わせたX線回折(XRD)により好ましくは決定された、約10から90重量%の黒鉛状炭素、好ましくは20から80重量%の黒鉛状炭素、より好ましくは25から70重量%の黒鉛状炭素、さらにより好ましくは30から60重量%の黒鉛状炭素を含む。強磁性炭素体のBET表面積は、一般的に200から1000m
2/g、好ましくは250から950m
2/g、及びより好ましくは300から900m
2/gである。ここで用いられるBET表面積は、Micromeritics社のASAP2420において、180℃で試料を脱気した後で、窒素断面積を16.2Å
2と仮定して、77K及び約0.3のP/Poで吸着される窒素の量を決定することにより測定されることのできる値である。
【0046】
好ましくは、強磁性炭素体の孔の全体積は、0.15から0.8ml/gの間であり、より好ましくは0.2から0.6ml/gの間である。ここで用いられる孔の全体積は、Micromeritics社のASAP2420を用いて、約1のP/Poで吸着される液体窒素の体積を決定することにより測定される値である。
【0047】
本発明の強磁性炭素体の平均の孔直径は、好ましくは3から9nmの間であり、より好ましくは4から8nmの間である。ここで用いられる平均の孔直径は、孔が円筒形であると仮定して、全体の孔体積をBET表面積で割ることにより決定される値である。BJH法は、孔充填のケルビンモデルを用いる、実験的等温処理から孔径の分布を計算するために用いられ得る。微小孔の存在は、t−プロット分析から立証された。
【0048】
驚くべきことに、本発明の強磁性炭素体は、活性炭開始材料よりも実質的に低い微小孔体積を示している。これは、再結晶化工程の間に、微小孔を犠牲にしてメソ孔が導入されるからである。この長所は、本体の多孔質構造を通る液体の輸送の改善された速度を導くことである。IUPAC 1994によって分類される、微小孔とメソ孔は、それぞれ2nm未満の孔直径及び2から50nmの孔直径を有している。
【0049】
できるだけ高い側面破砕強さ(SCS)を有する本体を有することが望ましい。SCSは、球、押出成形物、またはタブレットなどのような規則形状またはほぼ規則形状を有する本体に対して決定され得る。本発明の本体のSCSは、Chatillon DFE 力ゲージを用いて測定された。しかしながら、いかなる適切な力ゲージが、SCSを測定するのに用いられてもよい。本体が熱分解温度で保たれる期間は、SCSに影響を与え得ることが見出された。
【0050】
本発明の強磁性炭素体は、粉末、粒子、顆粒、及び球、押出成形物またはタブレットなどの成形体であり得る。
【0051】
一般的に、強磁性炭素体の強磁性金属は、鉄、ニッケル、及びコバルトの金属及び/または合金、並びにそれらの組合せからなる群から選択され得る。好ましくは、強磁性金属は、鉄または鉄の合金である。
【0052】
加えて、本発明の強磁性炭素体の金属粒子は、黒鉛状炭素層によって完全に(例えば、金属粒子の99重量%より上)カプセル化され得る。これは、高い温度で水素及び炭素含有分子の流れにおいて、強磁性炭素体を処理することにより達成され得る。
【0053】
黒鉛層内の金属粒子、特に鉄粒子の完全なカプセル化の利点は、いろいろな液体で使用されるとき、金属粒子の酸化及び溶解が防がれることである。完全なカプセル化はまた、濾過または遠心分離によって取り除くことが非常に難しい、細かく分離した水和鉄(III)種の形成を防ぐ。
【0054】
本発明による強磁性炭素体はさらに、好ましくは前記炭素体の表面上に存在する、ポリマーを含み得る。使用され得る適切なポリマーは、例えば、ホモポリマー、並びにブロック共重合体、ランダム共重合体、及びグラフト共重合体などの共重合体を含む。そのようなポリマーの長所は、それらが水溶液において解離する化学基で官能化され得ることであり、水溶液中の懸濁強磁性炭素体を安定させる。ポリマーはまた、汚染物質、または荷電及び非荷電種、親水性/疎水性化合物、薬剤、及び代謝産物などの関心のある化合物の的を絞った除去のために使用され得る。
【0055】
本発明の強磁性炭素体はまた、好ましくは本体の(内部)表面上で、金属及び/または金属酸化物の追加の粒子を含み得る。より好ましくは、前記強磁性炭素体が、黒鉛炭素層により完全にカプセル化された強磁性金属粒子を含む。一般的に、追加の粒子の金属及び/または金属酸化物は、鉄、ニッケル、コバルト、触媒活性金属及び/または酸化物、及びそれらの組合せを含み得る。適切な触媒活性金属は、亜鉛、銅、マンガン、モリブデン、バナジウム、タングステン、及び貴金属を含み得る。そのような強磁性炭素体は、例えば、吸着剤または不均一触媒として適切に使用され得る。
【0056】
本発明の強磁性炭素体は、加えて、カーボンナノチューブ及び/またはカーボンナノファイバを備え得る。そのような強磁性炭素体は、輸送が十分に高いレベルで選択性を維持することが重要である、液相反応における触媒担体として、適切に使用され得る。
【0057】
カーボンナノファイバ及び/またはカーボンナノチューブの緻密層を有する強磁性炭素体はまた、優れた電気的接触を提供し、それ故、電気化学的応用において使用するのに非常に適切である。好ましくは、そのような強磁性炭素体は、磁気的に安定な流動床電極において使用される。
【0058】
本発明の強磁性炭素体は、目的とする応用に応じて、一般的に約100nmから20mmの大きさの範囲を有している。スラリーでの応用において、強磁性炭素体の一般的な大きさは、0.5μmと150μmの間であり、固定床での応用において、1と10mmの間である。フミン酸及びフルボ酸の除去に対して、1μm未満の大きさを有する強磁性炭素体を使用することが好ましい。
【0059】
本発明の追加の実施形態は、一酸化炭素を水素化することによってオレフィンを製造するのに適した触媒としての強磁性炭素本体の使用に向けられる。好ましくは、本体の強磁性金属は鉄または鉄の合金である。より好ましくは、本体の金属粒子は、黒鉛状炭素にカプセル化されないか、または部分的にだけカプセル化される。一般的に、本体は1から5mmの間の大きさを有しており、固定床における使用に対して適切にさせる。
【0060】
本発明の更なる目的は、本発明の強磁性炭素体の調整のための工程を提供することである。
【0061】
それ故、本発明はまた、強磁性炭素体の製造のための方法に向けられており、前記工程は、活性炭を金属化合物の水溶液に含浸させる段階と、含浸された活性炭を乾燥させる段階と、不活性雰囲気の下で乾燥させた含浸活性炭を熱分解する段階と、それによって金属化合物を対応する金属に還元する段階と、を含む。
【0062】
活性炭は、インシピエントウェットネス含浸を利用して、1回以上金属化合物の水溶液に含浸してもよく、使用される前記水溶液の体積は、活性炭の孔の体積と等しいかそれより低い。あるいは、活性炭は、不揮発性金属化合物の均一な分布のために必要とされるものより少ない期間で、活性炭の前記溶液への含浸により、金属化合物の水溶液に含浸され得る。この期間は、含浸溶液の粘度、炭素体の温度及び種類のような要因に依存している。この期間は、分単位のオーダーであり得、一般的に60分以下、好ましくは30分以下、より好ましくは10分以下である。
【0063】
使用される熱分解温度は、望ましいSCSまたは望ましい孔構造に依存して、広い範囲内で選択される。より高い温度では、より多くの活性炭が、黒鉛状炭素に再結晶することができる。乾燥させた含浸活性炭を熱分解するために、本発明の工程で使用される温度は、一般的に700℃より上であり、好ましくは、800℃より上である。
【0064】
含浸された金属化合物における金属、特に鉄化合物における鉄は、700℃より上の温度で炭素によって金属に還元され得る。低い温度では、鉄化合物の還元は、磁鉄鉱、Fe
3O
4のみまで進行する。理論により限定されるものではないが、活性炭内のアモルファス炭素の再結晶は、還元された金属、特に金属鉄が、アモルファス炭素から炭素を取り上げることができ、且つ不安定な金属炭化物を形成するように反応することができるという事実に起因していると考えられる。その後、金属炭化物からの炭素は、黒鉛状炭素として分離される。黒鉛状炭素への活性炭の再結晶は、BET表面積の低下、並びに平均孔直径及び孔の全体積の増加をもたらす。
【0065】
本発明の工程における開始材料として使用される活性炭は、粉末、粒子、顆粒、及び球、押出成形物、またはタブレットなどの成形体の形であり得る。
【0066】
更なる実施形態において、本発明は、強磁性炭素体の製造のための工程に向けられており、その工程は、活性炭の粉末を金属化合物の粉末と混合する段階と、得られた混合粉末を本体に成形する段階と、成形された本体を不活性雰囲気の下で熱分解する段階と、それにより、金属化合物を対応する金属に還元する段階と、を含む。
【0067】
この工程の長所は、活性炭の黒鉛状炭素への低い転換を可能にしていることである。これは、活性炭の粉末内に金属化合物の粉末を分散させるための混合の制限に起因すると考えられる。
【0068】
一般的に、本発明の上述した工程における成形された本体を熱分解するのに用いられる温度はまた、700℃より上であるか、好ましくは、800℃より上である。
【0069】
混合粉末は一般的に、押し出し、タブレット成形、または粒状化などの当技術分野において周知の方法を用いて成形される。
【0070】
本発明の工程における開始材料として使用される活性炭は、ほぼ基本的にアモルファス炭素から成る(例えば、99重量%より上)、堅果の殻、泥炭または木などのような炭素質の原材料から、従来の手段によって製造され得る。
【0071】
本発明の工程において適切に使用され得る金属化合物は、強磁性金属及び/または合金の前駆体である不揮発性金属化合物である。ここで定義されるように、不揮発性金属化合物は、本発明の工程において活性炭上へ含浸されるとき、熱分解工程の段階の間に揮発しない金属化合物である。好ましくは、金属化合物は、鉄、ニッケル、及びコバルト化合物、並びにその組合せからなる群から選択され得る。より好ましくは、使用される金属化合物は、鉄化合物である。さらにより好ましくは、金属化合物は、鉄(III)硝酸塩またはクエン酸鉄(III)アンモニウムである。
【0072】
驚くべきことに、本発明の工程において不揮発性金属化合物の使用は、活性炭を通して金属化合物の制御された分布により、活性炭の黒鉛状炭素への転換の制御を可能にすることが見出された。理論により限定されるものではないが、これは、そのような金属化合物が、熱分解の段階の間に、活性炭を通して再分散せず、その代わりに、それらが活性炭内に含浸する位置に留まっているからであると考えられる。
【0073】
本発明の強磁性炭素体は、黒鉛状炭素によりカプセル化されていないか、または部分的にのみカプセル化された金属粒子を一般的に含むので、これらの粒子の露出する金属表面は、大気への露出により酸化することができる。酸化を望まないときは、本体の強磁性金属粒子は、高い温度で水素及び炭素含有分子の流れにおける処理により黒鉛状炭素層へのカプセル化により保護され得る。使用することのできる適切な炭素含有分子は、ベンゼン、トルエン、CO、低級アルカン、アルケン、アルコール類、アルキン類、及びそれらの組合せを含む。一般的に使用される温度は800℃より上である。そのような処理は一般的に、金属粒子の完全なカプセル化をもたらす(例えば、99重量%より上)。強磁性炭素体は不均一な磁場によって急速に分離され得るので、スラリー内のそのような本体の分離は、すぐに達成され得る。
【0074】
本発明の強磁性炭素体は、本体の黒鉛表面上にポリマーを吸着させることにより、さらに修飾され得る。本体の黒鉛状炭素の表面は、本体上へのポリマーの吸着を可能にする魅力的な特性を示している。
【0075】
加えて、本発明の強磁性炭素体は、本体に金属及び/または金属酸化物を積載させることにより修飾され得る。好ましくは、修飾される強磁性炭素体は、黒鉛状炭素層によって完全にカプセル化された強磁性金属粒子を含む。使用され得るそのような積載方法は、金属化合物の水溶液への強磁性炭素体の含浸と、後続の本体の表面上への金属化合物の加熱または堆積を含む。使用され得る金属化合物は、鉄、ニッケル、及びコバルトの化合物、触媒活性金属の化合物、及びその組合せを含む。
【0076】
強磁性炭素体の表面への含浸を制限することを望む場合、特許文献9(米国特許第4,783,434号明細書)で開示されているような、溶媒の揮発に基づき粘性を増大させるように、追加の化合物が水溶液に加えられ得る。使用され得るそのような追加の化合物の例は、ヒドロキシエチルセルロース(ethylhydroxycellulose)である。含浸した強磁性炭素体はそれから、一般的に乾燥され、及び熱的に加熱される。この方法の利点は、本体の表面上に金属及び/または金属酸化物の粒子をもたらすことである。
【0077】
さらに、本発明の強磁性炭素体は、参照によってここに組み込まれる特許文献10(国際公開第2010/098669号)で開示されたような工程に従い、カーボンナノチューブ及び/またはカーボンナノファイバを備え得る。
【0078】
前述のように、活性炭に存在するアモルファス炭素は、炭化物形成金属との相互作用からもたらされる黒鉛状炭素より、酸化しやすい。本発明の別の態様は、わずかなアモルファス炭素を黒鉛状炭素に転換することにより、活性炭本体の多孔性を増大させ、残りのアモルファス炭素を二酸化炭素と一酸化炭素に選択的に酸化することに向けられる。酸化は、制御された方法でそれを酸素に接触させることにより実行されてもよく、例えば、これは高度に希釈された酸素雰囲気(例えば、不活性雰囲気(例えば、アルゴン、窒素)において0.1vol.%未満の酸素)の下で炭素体を加熱することにより、または、強磁性炭素体を一つ以上の酸、例えば、高い温度で液相の硫酸及び硝酸の混合物に接触させることにより、実行され得る。
【0079】
強磁性炭素体が望まれないとき、むき出しの強磁性金属粒子は、本体を酸に接触させ、それからすすぐことによって除去され得る。金属粒子を溶解するのに使用され得る適当な酸は、硝酸、塩酸、硫酸、及びそれらの組合せを含む。液体、好ましくは水ですすいだ後、溶解された金属粒子はこのようにして除去され、基本的に純粋な(例えば、99重量%より上)炭素体が残る。
【0080】
それ故、本発明の更なる目的は、部分的に黒鉛化された活性炭を含む炭素体の製造に向けられており、その工程は、本発明の強磁性炭素体を酸に接触させ、それにより、金属粒子を溶解させる段階と、酸処理された強磁性炭素体を液体ですすぎ、それにより、溶解した金属粒子を除去する段階と、を含む。
【0081】
一般的に、強磁性炭素体に存在する金属粒子の90重量%より上、好ましくは95重量%より上、さらにより好ましくは98重量%より上は、この酸処理工程により除去され得る。
【0082】
本発明の更なる目的は、本発明の強磁性炭素体を酸に接触させ、それにより、金属粒子を溶解する段階と、酸処理された強磁性炭素体を液体ですすぎ、それにより、溶解した金属粒子を除去する段階と、により得ることのできる、部分的に黒鉛化された活性炭を含む炭素体に向けられる。
【0083】
大部分の金属粒子が、酸処理によって結果として生じる炭素体から除去されることができる(例えば、90重量%より上)ことが見出された。一般的に、本発明の炭素体は、炭素体の重量に基づく金属として計算された、1重量%未満の金属粒子を含む。
【0084】
酸処理が製造された炭素体の黒鉛状炭素内容物に影響を及ぼさないことをも見出された。加えて、本発明の炭素体の孔構造が、原材料、すなわち本発明の強磁性炭素体と同等であることが見出された。
【0085】
好ましくはPONKCS法と組み合わせてXRDを使用して決定されるように、本発明の強磁性炭素体のような、本発明の炭素体は、好ましくは約10から90重量%の黒鉛状炭素、好ましくは20から80重量%の黒鉛状炭素、より好ましくは25から70重量%の黒鉛状炭素、さらにより好ましくは30から60重量%の黒鉛状炭素、を含む。
【0086】
本発明の炭素体の孔の全体積はまた、一般的に0.1ml/gより大きく、好ましくは0.15ml/gより大きく、及びより好ましくは0.2ml/gより大きい。
【0087】
本発明の炭素体の平均孔直径は、一般的に2から10nmの間であり、好ましくは3nmより大きく、より好ましくは4nmより大きい。
【0088】
更なる実施形態において、本発明の炭素体と強磁性炭素体が、吸着剤として、または、触媒担体として使用され得る。加えて、本発明の本体が、水流の処理において、または、電気化学的応用において、有利的に使用され得る。
【0089】
そのような本体の(内部の)表面積が、液体の大部分から良好に到達可能であるという事実に起因して、本発明の炭素体と強磁性炭素体が、水流から、金属イオン、リン酸塩、及び有機化合物などの汚染物質の除去のために有利的に使用され得る。残りの活性炭の表面が、大気への露出の後でカルボン酸基を含み、それ故に、黒鉛状炭素の表面より反応性となるので、本発明による黒鉛状炭素体は、正に帯電した汚染種または有価種を結びつけるのに有利的に使用され得る。黒鉛状炭素へと転換される活性炭の割合が本発明により制御されることができるので、最適条件は、到達可能性と吸着剤の容量との間で達成され得る。
【0090】
金属鉄及び酸化鉄の両者は、溶液から金属イオンの回収において特定の可能性を有していることが立証された。金属鉄はより多くの銅、銀、金などのような貴金属と反応することができ、この反応においてより多くの貴金属が鉄上に堆積され、鉄は溶解する。Zhangらは、水溶液からの金属カチオンの除去において、ゼロ価鉄ナノ粒子(nZVI)と呼ばれる、担持されていない還元鉄ナノ粒子の応用を開示している(非特許文献11(Zhang et al. (J.Phys.Chem.C 111(2007)6939−6946)))。nZVIが水溶液中に導入される場合、速い腐食が起こり、液体が非常に酸性でない限り、多孔質酸化物/水酸化物のシェルを有する還元された鉄のコアからなるコアシェル構造が作られる。明らかに、酸化物/水酸化物シェルは、溶解したカチオンを反応させることにより、容易に浸透されることができる。
【0091】
酸化物/水酸化物層の厚さは、酸素との反応(不動態化)を制限することによって制御されることができる。不動態化の工程は、例えば、少量の酸素(例えば、0.5vol.%)を含む不活性ガス流への露出、または二酸化炭素を含むガス流への露出を含むことができる。若干の一酸化二窒素(N
2O)を含むガス流への露出も開示されている。不動態化された鉄を有する炭素体は続いて、浄化される水に導入される。より面倒ではあるが、より魅力的でもある手順は、製造後の炭素体を不活性ガス中に保ち、その後本体を水の中に導入し、できる限り大気への露出を避ける。
【0092】
酸化鉄はまた、水の浄化に対して、高度に好ましい特性を示すことは周知である。本発明の2つの実施形態は、炭素体に存在する金属鉄粒子の使用に関係している。第1は、金属鉄粒子の(制御された)酸化の後での使用を含む。第2の手順で、金属鉄粒子は黒鉛層にカプセル化され、別々に微細に分離された酸化鉄は、担持触媒の製造の当技術分野に周知の手順の1つにより、強磁性炭素体の表面上に堆積される。最後の実施形態は、飽和の後で、酸化鉄が酸に溶解されることができ、新しい酸化鉄はこのようにして再生された強磁性炭素体上に堆積されることができるという利点を有している。
【0093】
その上、強磁性炭素体における鉄粒子の反応度は、より多くの不活性元素、好ましくは銅の水溶液の追加によって、上げることができる。銅は鉄表面上に金属銅として堆積し、鉄表面上により多くの他の貴金属種の堆積を促進することができる。
【0094】
加えて、本発明の強磁性炭素体は、特に、水流から金属カチオンを除去するための流動床電極で使用され得る。適当な磁場により、強磁性炭素体は外部磁場の力線に沿って整列することができ、このようにして電極構造における導電性粒子の閉じ込めに関する問題を避けている。その結果、金属カチオンは水流から除去されることができる。本発明の好ましい実施形態において、鉄粒子は黒鉛層内にカプセル化され、その後微細に分離した銅または貴金属粒子は、固体触媒の製造の当技術分野において周知の手順により、強磁性炭素体上に堆積される。その結果、低い過電圧で金属カチオンが水流から除去されることができる。本発明の範囲を制限するものではないが、銅または貴金属粒子は、還元金属イオンが堆積することのできる、核形成部位を提供することができると考えられている。堆積の後で、強磁性炭素体は、本体が酸に接触することによって再生されてもよく、このようにして、堆積した金属を除去し、新しい銅または貴金属粒子が再生された強磁性炭素体上に堆積されることができる。
【0095】
磁気的に安定した流動床電極は、例えば、強磁性炭素体により吸着される、フミン酸及びフルボ酸などのような大きな有機化合物を酸化させ、本体を再生するように使用され得る。好ましくは、電気化学的応用で使用される強磁性炭素体は、カーボンナノファイバ及び/またはカーボンナノチューブを備えている。
【0096】
本発明による強磁性炭素体はまた、逆流法(reverse flow technique)でも使用され得る。一般的に、強磁性炭素体のスラリーは、浄化される液体流に加えられる。強磁性炭素体はそれから、液体流における制御された滞留時間の後で、不均一磁場により捕獲され得る。十分な強磁性体が磁場により収集されたとき、磁場は電源が切られ、液体流は反転される。もう一つの不均一磁場は、液体流における異なる位置で、使用済みの強磁性炭素体を捕獲する。
【0097】
炭素体及び強磁性炭素体はまた、触媒担体または触媒として使用され得る。金属鉄を含む担持触媒の製造は難しい。親水性担体で、金属鉄への還元が熱力学的に実行可能であるレベルまで水蒸気圧を減少させることはほとんど不可能である。それにもかかわらず、例えば、一酸化炭素流−水素流からのオレフィンの製造、または、アンモニアの合成に対して、担持された金属鉄触媒を製造することは非常に重要である。本発明の特別な実施形態によると、金属鉄粒子を含む強磁性炭素体はそれ故、担持金属鉄触媒として採用される。還元性ガス流における比較的低い温度での熱の前処理は、金属鉄を製造するのに十分である。アモルファス炭素および黒鉛状炭素の両者の表面は、約300℃より上の温度での熱処置において疎水性である。
【0098】
特に強磁性炭素体の磁気分離は、液相反応において採用される懸濁触媒で、非常に魅力的である。分離は例えば、触媒の大気への露出なしで実行され得る。磁石上に強磁性炭素体担体を集めることによって、一定量の水素が消費された後で、水素化処理を止めることも可能である。触媒反応を中断する能力は、相当に高い選択性を導くことができる。
【0099】
本発明は、発明の範囲を制限することを目的としていない、いくつかの実施例に基づいていま説明される。