【氏名又は名称】ヘレーウス クヴァルツグラース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記組立体の周囲にガラスジャケットを提供して第2の界面間隙を形成するステップと、前記組立体およびガラスジャケットを加熱して前記ガラスジャケットを前記組立体上で崩壊させてそこに接着させるステップと、をさらに含む、
請求項1に記載の方法。
前記組立体の周囲にガラスジャケットを提供して第2の界面間隙を形成するステップと、前記組立体およびガラスジャケットを加熱して前記ガラスジャケットを前記組立体上で崩壊させてそこに接着させるステップと、をさらに含む、
請求項14に記載の方法。
【背景技術】
【0001】
光ファイバは、光を透過するファイバである。光ファイバは、典型的には、炉内で光ファイバ母材を加熱して軟化させ、次いで、その光ファイバ母材を所望のファイバの太さに線引きすることによって作製される。光ファイバ母材は、典型的には、外側クラッド体によって囲まれたコアロッドを含む。現在、そのような光ファイバ母材および母材の個々の部品を製造するために、いくつかの従来のシステムおよび方法が存在する。
【0002】
コアロッドを形成するための従来の方法は、気相軸蒸着法(VAD)、外部蒸着法(OVD)、改良された化学気相蒸着法(MCVD)、およびプラズマ化学気相蒸着法(PCVD)を含む。次いで、外側クラッド体を、OVD等によってコアロッドの外表面上に直接形成してもよいか、または独立して形成してもよい。
【0003】
外側クラッド体を形成するための従来の方法は以下の通りである:出発材料、典型的には、四塩化ケイ素および/または二酸化ケイ素粒子等のシリコン化合物を、OVDによりマンドレルまたは基板上に蒸着してスート堆積体を形成する。所望の堆積体のサイズに達するまで堆積を続ける。堆積が完了した後、マンドレルまたは基板を除去する。次いで、スート堆積体を脱水し、その後、加熱炉内でガラス化し、貫通孔が延在する石英ガラスシリンダを形成する。最終的に、石英ガラスシリンダを、シリンダの内表面および外表面の研磨等の何らかの様式の機械加工に供してもよい。そのような石英ガラスシリンダは、典型的には、約200mmの外径および約3メートルの長さを有する。
【0004】
次いで、石英ガラスシリンダを、光ファイバ母材を形成するためのコアロッドと一体化された外側クラッド体として使用してもよい。光ファイバ母材を形成する従来の方法は、ロッドインチューブ(RIT)法およびロッドインシリンダ(RIC)法を含む。RIT法では、前述のように形成された石英ガラスシリンダを、典型的には、直径約60〜90mmおよび長さ約1〜2メートルの複数の外側クラッド管に線引きし、その後コアロッドと一体化する。RIC法では、石英ガラスシリンダを、コアロッドと一体化される外側クラッドシリンダとして使用する。どちらの方法も、石英ガラスシリンダまたは管にコアロッドを挿入することを含むため、これらは技術的観点からは同一である。これらの方法の主な違いは、外側クラッドシリンダのサイズに対する外側クラッド管のサイズの違いのみである。
【0005】
RIT法およびオフラインRIC法では、コアロッドを外側クラッド管またはシリンダに挿入し、十分に高い温度までアセンブリを加熱して外側クラッド管またはシリンダをコアロッド上で崩壊させてそこに接着させ、それによって光ファイバ母材を得る。オフラインRIC法では、光ファイバ母材を形成するために、外側クラッドシリンダがコアロッド上で崩壊する間にアセンブリも延伸する。次いで、光ファイバの形成のために、得られた母材を線引きタワーに送る。オンラインRIC法では、コアロッドを外側クラッドシリンダに挿入し、十分に高い温度までアセンブリを加熱して外側クラッドシリンダをコアロッド上で崩壊させてそこに接着させることで光母材を得、得られた母材を線引きタワーで直ちに線引きして光ファイバを得る。
【0006】
典型的には、これらの方法で製造される光ファイバ母材は、約50〜210mmの外径および約1,000〜3,000mmの平均長さを有する。典型的には、これらの方法で製造される光ファイバは、約90〜125μmの外径および約1,000〜10,000kmの平均長さを有する。
【0007】
しかしながら、従来のRITおよびRIC法では、ボイド、エアラインおよび気泡等の不整、ならびに種々の異物等の汚染物質を含まない母材またはファイバを製造することは困難である。典型的には、そのような不整および汚染物質は、コアロッドと外側クラッド管/シリンダとの間の界面に存在する。そのような不整および汚染物質は、最終的には、得られた光ファイバの種々の特性に、例えば、減衰および光散乱損失の増加等の悪影響を及ぼす。したがって、汚染物質、不純物、および原子欠陥を含まない光ファイバ母材および光ファイバを製造するための改善されたRITおよびRICシステムおよび方法を提供することが有益である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の好ましい一実施形態は、(a)ガラス管およびガラスコアロッドを提供するステップと、(b)ガラスコアロッドをガラス管に挿入して組立体を形成するステップと、(c)組立体を加熱して、ガラス管をガラスコアロッド上で崩壊させてそこに接着させるステップと、(d)組立体の少なくとも一部の加熱中に、ガラスコアロッドとガラス管との間の界面間隙を処理するステップとを含む、光ファイバ母材または光ファイバを製造する方法を対象とする。界面間隙の処理は、(i)界面間隙内に真空圧を確立することと、(ii)界面間隙を通して酸素富化空気を所定時間流すことによって界面間隙の圧力を上昇させることと、(iii)所定時間が経過した後、界面間隙内に真空圧を再確立することとを含む。
【0009】
本発明の別の好ましい実施形態は、(a)ガラス管およびガラスコアロッドを提供するステップと、(b)ガラスコアロッドをガラス管に挿入して組立体を形成するステップとを含む、光ファイバ母材または光ファイバを製造する方法に関する。組立体は、第1の前端部および反対側の第2の後端部を有する。方法は、(c)組立体の第1の前端部で始まる組立体の長さを加熱することによって、ガラス管をガラスコアロッド上で崩壊させることと、(d)ガラス管がガラスコアロッド上で崩壊する間に、ガラスコアロッドとガラス管との間の界面間隙を処理することをさらに含む。界面間隙の処理は、(i)ガラス管が組立体の第2の後端部近傍のガラスコアロッド上で崩壊する間に、界面間隙内に真空圧を確立することと、(ii)ガラス管が組立体の第2の後端部近傍のガラスコアロッド上で崩壊する間に、界面間隙を通して処理ガスを所定時間流すことによって界面間隙の圧力を上昇させることと、(iii)ガラス管が組立体の第2の後端部近傍のガラスコアロッド上で崩壊する間に、界面間隙内に真空圧を再確立することとを含む。
【0010】
単独でまたは組み合わせて実施され得る本発明の有利な改善点は、従属請求項に記載される。光ファイバ母材または光ファイバの文脈に記載される特徴および詳細は、方法に関しても適用され、また逆の場合も同様である。
【0011】
要約すると、以下の実施形態は、本発明の範囲において特に好ましいものとして提案される:
【0012】
実施形態1:光ファイバ母材または光ファイバを製造する方法であって、(a)ガラス管およびガラスコアロッドを提供するステップと、(b)ガラスコアロッドをガラス管に挿入して組立体を形成するステップと、(c)組立体を加熱して、ガラス管をガラスコアロッド上で崩壊させてそこに接着させるステップと、(d)(i)第1の界面間隙内に真空圧を確立することと、(ii)界面間隙を通して酸素富化空気を所定時間流すことによって第1の界面間隙の圧力を上昇させることと、(iii)所定時間が経過した後、第1の界面間隙内に真空圧を再確立することと、によって、組立体の少なくとも一部の加熱中に、ガラスコアロッドとガラス管との間の第1の界面間隙を処理するステップと、を含む、方法。
【0013】
実施形態2:酸素富化空気は、約30%〜約50%の酸素を含むことを特徴とする、上記実施形態による方法。
【0014】
実施形態3:酸素富化空気は、約40%の酸素を含むことを特徴とする、上記2つの実施形態のいずれか1つによる方法。
【0015】
実施形態4:組立体の全長がゾーンごとに加熱され、加熱は、組立体の第1の前端部で開始され、組立体の反対側の第2の後端部で終了することを特徴とする、上記3つの実施形態のいずれか1つによる方法。
【0016】
実施形態5:方法は、組立体の加熱前に、組立体の前端部を密封することと、第1の界面間隙内に真空圧を確立することと、をさらに含むことを特徴とする、上記4つの実施形態のいずれか1つによる方法。
【0017】
実施形態6:第1の界面間隙の処理は、組立体の第1の前端部近傍の組立体の一部の加熱中に行われることを特徴とする、上記5つの実施形態のいずれか1つによる方法。
【0018】
実施形態7:第1の界面間隙の処理は、組立体の第2の後端部近傍の組立体の一部の加熱中に行われることを特徴とする、上記6つの実施形態のいずれか1つによる方法。
【0019】
実施形態8:方法は、第1の界面間隙を処理するステップを繰り返すことをさらに含むことを特徴とする、上記7つの実施形態のいずれか1つによる方法。
【0020】
実施形態9:酸素富化空気は、第1の界面間隙の圧力が約0ミリバールゲージに達した後、第1の界面間隙を通して約10秒〜約5分間流されることを特徴とする、上記8つの実施形態のいずれか1つによる方法。
【0021】
実施形態10:酸素富化空気は、第1の界面間隙の圧力が約0ミリバールゲージに達した後、第1の界面間隙を通して約30秒〜約3分間流されることを特徴とする、上記9つの実施形態のいずれか1つによる方法。
【0022】
実施形態11:酸素富化空気は、第1の界面間隙の圧力が約0ミリバールゲージに達した後、第1の界面間隙を通して約3分間流されることを特徴とする、上記10個の実施形態のいずれか1つによる方法。
【0023】
実施形態12:方法は、組立体の周囲にガラスジャケットを提供して第2の界面間隙を形成することと、組立体およびガラスジャケットを加熱してガラスジャケットを組立体上で崩壊させてそこに接着させることと、をさらに含むことを特徴とする、上記11個の実施形態のいずれか1つによる方法。
【0024】
実施形態13:方法は、(i)第2の界面間隙内に真空圧を確立することと、(ii)界面間隙を通して酸素富化空気を所定時間流すことによって第2の界面間隙の圧力を上昇させることと、(iii)所定時間が経過した後、第2の界面間隙内に真空圧を再確立することと、によって、加熱中に第2の界面間隙を処理することをさらに含むことを特徴とする、上記12個の実施形態のいずれか1つによる方法。
【0025】
実施形態14:光ファイバ母材または光ファイバを製造する方法であって、(a)ガラス管およびガラスコアロッドを提供するステップと、(b)ガラスコアロッドをガラス管に挿入して組立体を形成するステップであって、組立体は、第1の前端部および反対側の第2の後端部を有する、ステップと、(c)組立体の第1の前端部で始まる組立体の長さを加熱することによって、ガラス管をガラスコアロッド上で崩壊させるステップと、(d)(i)ガラス管が組立体の第2の後端部近傍のガラスコアロッド上で崩壊する間に、第1の界面間隙内に真空圧を確立することと、(ii)ガラス管が組立体の第2の後端部近傍のガラスコアロッド上で崩壊する間に、界面間隙を通して処理ガスを所定時間流すことによって第1の界面間隙の圧力を上昇させることと、(iii)ガラス管が組立体の第2の後端部近傍のガラスコアロッド上で崩壊する間に、第1の界面間隙内に真空圧を再確立することと、によって、ガラス管がガラスコアロッド上で崩壊する間に、ガラスコアロッドとガラス管との間の第1の界面間隙を処理するステップと、を含む、方法。
【0026】
実施形態15:方法は、組立体の長さの加熱前に、組立体の第1の前端部を密封することと、第1の界面間隙内に真空圧を確立することと、をさらに含むことを特徴とする、上記実施形態による方法。
【0027】
実施形態16:第1の界面間隙内に真空圧が確立されると、界面間隙内に存在するガスが除去されることを特徴とする、上記2つの実施形態のいずれか1つによる方法。
【0028】
実施形態17:処理ガスは、空気、乾燥空気、酸素富化空気、純粋な窒素と酸素の混合物、純粋な酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、メタン、アンモニア、ならびに硫化水素のうちの少なくとも1つであることを特徴とする、上記3つの実施形態のいずれか1つによる方法。
【0029】
実施形態18:方法は、第1の界面間隙を処理するステップを繰り返すことをさらに含むことを特徴とする、上記4つの実施形態のいずれか1つによる方法。
【0030】
実施形態19:処理ガスは、界面間隙の圧力が約0ミリバールゲージに達した後、第1の界面間隙を通して約10秒〜約3分間流されることを特徴とする、上記5つの実施形態のいずれか1つによる方法。
【0031】
実施形態20:処理ガスは、界面間隙の圧力が約0ミリバールゲージに達した後、第1の界面間隙を通して約30秒〜約2分間流されることを特徴とする、上記6つの実施形態のいずれか1つによる方法。
【0032】
実施形態21:処理ガスは、界面間隙の圧力が約0ミリバールゲージに達した後、第1の界面間隙を通して約1分間流されることを特徴とする、上記7つの実施形態のいずれか1つによる方法。
【0033】
実施形態22:第1の界面間隙を処理するステップは、組立体の第2の後端部近傍の組立体の長さの半分の加熱中に行われることを特徴とする、上記8つの実施形態のいずれか1つによる方法。
【0034】
実施形態23:第1の界面間隙を処理するステップは、組立体の第2の後端部近傍の組立体の長さの4分の1の加熱中に行われることを特徴とする、上記9つの実施形態のいずれか1つによる方法。
【0035】
実施形態24:第1の界面間隙を処理するステップは、組立体の第2の後端部近傍の組立体の長さの3分の1の加熱中に行われることを特徴とする、上記10個の実施形態のいずれか1つによる方法。
【0036】
実施形態25:方法は、組立体の周囲にガラスジャケットを提供して第2の界面間隙を形成することと、組立体およびガラスジャケットを加熱してガラスジャケットを組立体上で崩壊させてそこに接着させることと、をさらに含むことを特徴とする、上記11個の実施形態のいずれか1つによる方法。
【0037】
実施形態26:方法は、(i)第2の界面間隙内に真空圧を確立することと、(ii)界面間隙を通して酸素富化空気を所定時間流すことによって第2の界面間隙の圧力を上昇させることと、(iii)所定時間が経過した後、第2の界面間隙内に真空圧を再確立することと、によって、加熱中に第2の界面間隙を処理することをさらに含むことを特徴とする、上記12個の実施形態のいずれか1つによる方法。
【0038】
上記概要、および以下の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明は、添付の図面と一緒に読むことによってよりよく理解されるであろう。例示の目的で、現在好ましい実施形態を図面で示す。しかしながら、デバイスおよび方法は、図示される正確な配置および手段に限定されないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、光ファイバ母材または光ファイバを製造するためのシステムおよび方法に関する。当業者は、以下に記載するシステムおよび方法から製造される母材が、光ファイバの製造以外の種々の他の目的のために利用され得ることを理解するであろう。より具体的には、本発明は、望ましくない不整、視覚的欠陥、汚染物質、金属不純物、原子欠陥等を実質的に含まない光ファイバ母材または光ファイバを製造する方法に関する。本発明はまた、母材から線引きされる光ファイバの減衰の低減ももたらす。
【0041】
本出願の文脈において、「約」または「およそ」という用語は、記載または請求される値の
+5%の変動、より好ましくは記載または請求される値の
+2%の変動、最も好ましくは正確に記載または請求される値を意味することを理解されたい。
【0042】
本発明の処理プロセスは、従来の光ファイバ母材または光ファイバ製造方法に適用され得るため、典型的な母材/ファイバの製造について
図1および2を参照して記載する。しかしながら、当業者は、本発明の処理プロセスが他の母材/ファイバ製造方法にも適合し得ることを理解するであろう。
【0043】
図1を参照すると、光ファイバ母材を製造するため、または代替として光ファイバを直接製造するためのシステム10が示される。システム10は、約1,500℃〜約2,300℃の温度まで加熱することができる垂直に配置された線引きタワー20、加熱要素32、およびガス供給システム40を含む(
図3を参照)。
図2を参照すると、線引きプロセスにおいて、コアロッド12が外側クラッド体14に挿入される。コアロッド12は、略円筒状構成の中実ロッドであることが好ましい。外側クラッド体14は、外側クラッド体14の中心を通って形成される孔16を有する外側クラッドシリンダ(RIC法の場合)または外側クラッド管(RIT法の場合)であることが好ましい。
【0044】
前述のように、RIC法およびRIT法は、本質的に、技術的観点からは同一である。したがって、本システムおよび方法の説明における利便性および簡便性のために、外側クラッド体14は、オフラインRICシステムおよび方法において光ファイバ母材28を作製するために、もしくはオンラインRICシステムおよび方法において光ファイバ28’を作製するために使用されるシリンダであってもよいか、またはRITシステムおよび方法において光ファイバ母材28を作製するために使用される管であってもよいという理解の下に、外側クラッド体14は、これ以降外側クラッド管14と称される。
【0045】
外側クラッド管14は、好ましくはガラス管であり、より好ましくは石英ガラス管である。ガラス管14は、純粋な石英ガラスまたは石英ガラス複合材でできていてもよい。好ましくは、ガラス管14は、純粋な石英ガラスでできている。コアロッド12は、好ましくはガラスロッドであり、より好ましくは、均一なまたは複雑な半径方向の屈折率プロファイルを有する純粋な石英ガラスである。
【0046】
図1〜2を参照すると、コアガラスロッド12が石英ガラス管14の孔16内に挿入されて組立体18が形成され、光ファイバ母材28または光ファイバ28’を形成するために加熱に供される。組立体18は、略円筒状構成または略管状構成であり、組立体の第1の端部または上端部18aから組立体の第2の端部または下端部18bまで延在する長さLを有する。また、非常に小さな第1の間隙30が、コアロッド12と外側クラッド管14との間、より具体的には、コアガラスロッド12の外面と外側クラッドガラス管14の内面との間の界面に残存している(
図2を参照)。第1の界面間隙30のサイズは、コアロッド12および外側クラッド管14の相対的なサイズに依存して変化し得るが、典型的には最大約6mmである。好ましくは、第1の界面間隙30は、間隙の圧力を連続的または断続的に監視するための圧力センサ(図示せず)を装備する。
【0047】
一実施形態において、外側クラッドガラス管14の外面とジャケット62の内面との間に第2の界面間隙64が形成されるように、組立体18を囲うための薄壁ジャケット62が提供される。ジャケットは、好ましくはガラス管であり、より好ましくは石英ガラス管である。ジャケットは、純粋な石英ガラスまたは石英ガラス複合材でできていてもよい。好ましくは、ジャケットは、純粋な石英ガラスでできている。
【0048】
光ファイバ母材28または光ファイバ28’を製造するための方法(すなわち、RICまたはRITプロセス)は、組立体18を線引きタワー20に連続的に供給することと、その中で組立体をゾーンごとに加熱することとを含む。製造方法のために、より具体的には線引きタワー20を通る組立体の進行のために、組立体が線引きタワーを通って下方向に進行するように、組立体の下端部18bが前端部であり、組立体の上端部18aが後端部である。しかしながら、反対の構成および進行もまた可能であることを理解されたい。すなわち、代替の実施形態では、組立体が線引きタワーを通って上方向に進行するように、組立体の上端部18aが前端部であり、下端部18bが後端部である。
【0049】
一実施形態において、母材28または光ファイバ28’を製造するために、組立体18は、垂直に配向された旋盤等の垂直に配向された線引きタワー20に供給される(
図1を参照)。当業者は、装置が後に記載するような加熱要素を装備している限り、いずれの従来の垂直に配向された線引き装置が光ファイバ母材または光ファイバの形成のために使用されてもよいことを理解するであろう。
【0050】
図1〜2Bを参照すると、組立体18は、好ましくは、線引きタワー20の上方開口端部22に進入し、結果として得られる母材28または光ファイバ28’は、線引きタワー20の反対側の下方開口端部24から排出する。より具体的には、組立体18の下端部18bは、RIT、オフラインRICまたはオンラインRIC母材/ファイバ製造プロセスの開始時に、線引きタワー20の上方開口端部22に安定な様式で位置することが好ましく、母材28またはファイバ28’は、溶融変形により下方開口端部24から連続的に線引きされ、任意選択的に、線引きプロセスの間に重力によって引っ張られる。製造方法は、組立体18の上端部18aが母材28またはファイバ28’として線引きタワー20から排出された時に完了する。線引きタワー20は、好ましくは、母材/ファイバの動きを抑制するための複数の制御輪27を含む(
図1を参照)。
【0051】
組立体18が、線引きタワー20の上方開口端部22から下方開口端部24に向かって進行すると、コアロッド12および外側クラッド管14が、加熱要素32によって該2つの構成要素を軟化および融合させてモノリシック体を形成するのに十分な所定の温度まで加熱される。加熱要素32は、好ましくは、略管状構成であり、線引きタワーの加熱ゾーン26を形成するために線引きタワーの中または周囲に位置する。
【0052】
線引きプロセスまたは工程の開始時に、組立体18が線引きタワー20を通って降下して加熱ゾーン26に接近すると、組立体の下端部(すなわち、前端部)18bが加熱され始める。組立体18の下端部18bが加熱ゾーン26に接近して第1の温度に達すると、外側クラッドガラス管14およびコアロッド12が軟化し始め、軟化した外側クラッドガラス管14がコアロッド12上で崩壊し始めるため、第1の界面間隙30のサイズが縮小される(
図1を参照)。薄壁ジャケット62が存在する場合、第2の界面間隙64のサイズも同様に縮小される(
図2Bを参照)。好ましくは、コアロッド12上での外側クラッド管14の軟化および崩壊は、約1,600℃〜2,200℃の温度で起こる。より好ましくは、コアロッド12上での外側クラッド管14の軟化および崩壊は、約1,600℃〜1,700℃の温度で起こる。しかしながら、当業者は、実行時間および処理能力等の他の要因も、いつ外側クラッド管14がコアロッド12上で崩壊し始めるかに影響を及ぼすことを理解するであろう。
【0053】
一実施形態において、線引きプロセス/工程の初期段階で、組立体18の下端部18bの軟化した領域の一部が開始片または落下片(図示せず)を形成し始めることが好ましい。後に、組立体18の下端部18bを密封するために、開始片または落下片をつまんで閉じる。
【0054】
組立体18が線引きタワー20を通って進行し続けると、組立体の下端部18bが続いて加熱ゾーン26に進入する。加熱ゾーン26において、下端部18bが第1の温度よりも高い第2の温度まで加熱され、その時点で、崩壊した外側クラッドガラス管14の軟化したガラスがコアロッド12の軟化したガラスに接着し始める。そのため、線引きタワー20の加熱ゾーン26内で、コアロッド12および外側クラッドガラス管14が一緒に融合して母材28またはファイバ28’を形成し始める。好ましくは、軟化して崩壊した外側クラッド管14の軟化したコアロッド12への接着は、約1,600℃〜2,200℃で起こる。より好ましくは、軟化して崩壊した外側クラッド管14の軟化したコアロッド12への接着は、約1,800℃〜2,200℃で起こる。しかしながら、当業者は、実行時間および処理能力等の他の要因も、崩壊した外側クラッド管がコアロッドに接着し始める段階に影響することを理解するであろう。
【0055】
組立体18の全長Lが線引きタワー20を通って進行するにつれて、組立体のあらゆる部分が、このゾーンごとの様式で加熱される。具体的には、線引きプロセス/工程の間に、外側クラッドガラス管14の連続する部分が加熱ゾーン26に接近して第1の温度まで加熱されると、これらの部分が連続的に加熱され、コアガラスロッド12の対応する部分上で崩壊する。続いて、外側クラッドガラス管14およびコアロッド12のこれらの連続する部分が加熱ゾーン26に進入し、第2のより高い温度まで加熱されると、軟化して崩壊した外側クラッドガラス管および軟化したガラスコアロッドが互いに接着して一緒に融合し、母材28を連続的に形成する。
【0056】
本発明の実施形態によれば、外側クラッド管14の一部がコアガラスロッド12上で崩壊すると、コアロッド12と外側クラッド管14との間の界面間隙30(または外側クラッド管14と薄壁ジャケット62との間の界面間隙64)に存在する界面の気泡およびエアライン等の有機および無機汚染物質ならびに欠陥の存在を排除または低減するために、組立体18が処理プロセスに供されることが好ましい。処理プロセスは、線引きプロセス/工程を通して連続的に、または線引きプロセス/工程の選択された段階にのみ、界面間隙30、64の一方または両方の圧力を循環させることを含む。より具体的には、以下により詳細に記載されるように、界面間隙30、64の一方または両方からガスを排出させるために断続的に真空を引く(すなわち、圧力を低下させる)こと、および1種以上のガスを界面間隙に提供する(すなわち、圧力を上昇させる)ことによって、外側クラッド管14がコアロッド12上で崩壊する間、線引きプロセスを通して何回も繰り返してまたは連続的に界面間隙の圧力を循環させる。
【0057】
次に、処理プロセスの特定のステップおよびこれらのステップを行うために使用される機器について詳細に記載する。単純にするために、以下の説明は、コアロッド12と外側クラッド管14との間の第1の界面間隙30の処理のみに言及する。しかしながら、当業者は、組立体18を囲むために薄壁ジャケット62が提供される状況において、同じ処理プロセスが、外側クラッド管14と薄壁ジャケット62との間の第2の界面間隙64の処理にも用いられ得ることを理解するであろう。
【0058】
図1を参照すると、組立体18の上端部18aは、ハンドル34に固定されるかまたは取り付けられることが好ましい。ハンドル34は、組立体18の上端部18aを完全に覆うために十分なサイズであることが好ましい。一実施形態において、ハンドル34は、好ましくは、環状断面形状、および組立体18の直径以上の直径を有する。より具体的には、使用において、組立体18の上端部18aは、ハンドル34によって完全に閉鎖されているかまたは覆われている。当業者は、例示のためにこれ以降はハンドルという用語が使用されるが、蓋、カバープラグ、カラー、エンドキャップ等の任意の適切な記述用語が、ハンドル様構成要素を特定する目的で用いられてもよいことを理解するであろう。
【0059】
ハンドル34は、ハンドルの本体を通って延在する開口部または孔36を含む。好ましくは、孔36は、ハンドル34の幾何学的中心に概ね位置する。しかしながら、当業者は、孔36が、ハンドル34の本体内のいずれの位置(界面間隙30と略整列する位置等)に位置してもよいことを理解するであろう。孔が組立体18からのガスの供給および排出のためのポートとしての役割を果たすように、ガスアダプター38は、ハンドル34の孔36に固定されることが好ましい。
【0060】
ガスアダプター38は、好ましくは、ハンドル34の孔36にまたはその中に密封係合される。一実施形態において、アダプターとハンドルとの間の十分な密封性を確保するために、ガスアダプター38の外周とハンドル34の孔36の内周との間にガスケット(図示せず)が配置されることが好ましい。ガスケットの使用もまた、不要なガスが孔36を通って界面間隙30に進入できないこと、および望ましくないガスが孔を通って界面間隙から排出できないことを確実にする。ガスケットは、高温耐熱材料Teflon等の、高温に耐えられるように構成されるゴムでできていることが好ましい。
【0061】
ガスアダプター38は、好ましくは、1種以上のガスを組立体18に供給するのを促進するように、また組立体における真空の印加を促進するように構成される。より具体的には、線引きプロセス/工程を通じてある特定の期間に、ガスアダプター38は、組立体18のコアロッド12と外側クラッド管14との間の界面間隙30に1種以上のガスが供給されることを可能にする一方で、プロセスを通じて他の期間には、ガスアダプターは、界面間隙への真空の印加、およびその中に存在するあらゆるガスの排出を可能にする。
【0062】
図3を参照すると、ガスアダプター38は、ガス供給システム40の一部である。より具体的には、一実施形態において、ガス供給システム40は、ガスアダプター38に接続された主要ガスライン42を含む。好ましくは、主要ガスライン42は、複数の接続および装着された可撓性または剛性のホース、チューブ、またはパイプを備える。主要ガスライン42のホース、チューブ、および/またはパイプは、各々、耐食性材料でできていることが好ましい。好ましい実施形態において、主要ガスライン42は、複数の相互接続および装着されたシリコーンゴムホースおよびステンレススチールパイプを備える。しかし、当業者は、主要ガスライン42が単一の一体形成型パイプラインを備えてもよいことを理解するであろう。好ましくは、主要ガスライン42の一端は、ガスアダプター38に密封接続される。
【0063】
図3を参照すると、主要ガスライン42は、好ましくは少なくとも2つの異なるガス源に接続され、それによって供給される。一実施形態において、主要ガスライン42は、パージガスの第1の源44および処理ガスの第2の源46によって供給される。好ましくは、パージガスは、窒素、ヘリウム、アルゴン、またはそれらの混合物等の、少なくとも1種の実質的に不活性なガスである。パージガスは、一方の端はパージガス源に接続され、他方の端は主要ガスラインに接続されたパージガスライン52を介して、第1の源44から主要ガスライン42に供給されることが好ましい。
【0064】
処理ガスは、本明細書により完全に記載されるように、酸化ガスまたは還元ガスであることが好ましい。処理ガスは、一方の端は処理ガス源に接続され、他方の端は主要ガスラインに接続された処理ガスライン54を介して、第2の源46から主要ガスライン42に供給されることが好ましい。主要ガスライン42と同様に、パージガスライン52および処理ガスライン54は、各々、複数の相互接続および装着された可撓性および剛性のホース、チューブ、またはパイプを備えることが好ましいが、各ラインが単一の一体形成型パイプラインを備えてもよいことを理解されたい。
【0065】
ガス供給システム40は、好ましくは、一方の端が真空ポンプ等の真空源50に接続され、他方の端が主要ガスライン42に接続された排出ライン48も備える。真空源50は、主要ガスライン42および排出ライン48を介して、組立体18の界面間隙30に存在するあらゆるガスの排出を促進する。
【0066】
一実施形態において、単一ポート、より具体的にはハンドル34に形成された孔36を介して、組立体18にガスを供給することができ、かつそこから排出することができるように、パージガス供給ライン52、処理ガス供給ライン54、および排出ライン48は、ガスマニホールドシステムを介して主要ガスライン42に接続されることが好ましい。
【0067】
別の実施形態において、主要ガス/排出パイプラインの一方の端が真空源50に接続され、主要ガス/排出パイプラインの反対側の端がガスアダプター38に接続されるように、主要ガスライン42および排出ライン48は、同じパイプラインである。そのような構成において、パージガス供給ライン52および処理ガス供給ライン54は、ガスマニホールドシステムを介して主要ガス/排出ラインに接続され、ハンドル34に形成された孔36を介して組立体18にガスを供給することができ、またそこから排出することができる。
【0068】
好ましくは、排出ライン48、パージガス供給ライン52、および処理ガス供給ライン54に、各々、流量調節弁56が設けられる。より好ましくは、ライン48、52、54の各々に、流量調節のためのソレノイド弁56が設けられる。圧力ゲージ58は、好ましくは、主要ガスライン42上に設けられ、界面間隙30の圧力を監視する圧力センサと動作可能に連通している。そのため、界面間隙30に設けられた圧力センサを使用してガス圧の変動を測定し、次いで、測定値に基づいてガスを供給することによってガス供給が得られることが好ましい。また少なくともパージガス供給ライン52および処理ガス供給ライン54は、各々、ガスの流量を測定および調節するために、フィルタ膜60と、マスフローコントローラまたは単にニードル弁等の流量計とを備えることが好ましい。
【0069】
ガス供給システム40の各構成要素は、好ましくは中央コントローラ(図示せず)によって動作可能に制御される。より具体的には、パージガス供給ライン52、処理ガス供給ライン54、および排出ライン48の動作は、コントローラによって制御される。しかしながら、当業者は、界面間隙30の圧力測定値を監視している操作者によってガス供給システム40が手動で制御されてもよいことを理解するであろう。
【0070】
処理プロセスの一実施形態において、組立体18が線引きタワー20を通って進行し始める前に、組立体18の下端部18bの一部が密封される。次いで、スプーンまたはカバー(図示せず)がハンドル34上に提供され、組立体が線引きタワーに導入される前に組立体に真空が印加される。
【0071】
別の実施形態において、加熱前にそのような密封された部分は形成されない。代わりに、タワー20内での加熱中に下方前端部18bを密封するために、組立体18の開始片または落下片をつまんで閉じる。しかしながら、下方前端部18bを密封するために組立体18の開始片または落下片をつまんで閉じる前に、パージガスの正の流れが、パージガス源44からパージガス供給ライン52および主要ガスライン42を通って界面間隙30に任意選択的に供給される。線引きプロセス/工程の初期段階におけるこの任意選択的なステップにおいて、排出ライン48および処理ガス供給ライン54の調節弁は閉鎖位置にあり、パージガス供給ライン52の調節弁は開放位置にある。
【0072】
パージガスは、所定の流量および所定の圧力で界面間隙30に供給されることが好ましい。好ましくは、パージガスは、組立体18によって発生される最大約20ミリバールのシステム背圧または上部圧力で、1分当たり最大約10リットルの流量で供給される。より好ましくは、パージガスは、最大約10ミリバールのシステム背圧で1分当たり約1〜5リットルの流量で供給される。最も好ましくは、パージガスは、約3ミリバールのシステム背圧で1分間約1.5リットルの流量で供給される。好ましい実施形態において、パージガスは窒素である。
【0073】
開始片/落下片をつまみ取った後、組立体18の下方前端部18bが密封され、パージガスが界面間隙30を通って流れ、界面間隙の圧力が上昇し始める。一旦、界面間隙の圧力が第1の圧力設定点に達すると、コントローラが、パージ流調節モードから真空調節モードに切り替わる。より具体的には、一旦、間隙30内の圧力が約20〜40ミリバール、より好ましくは約25ミリバールに達すると、コントローラは、パージガスの供給が停止されるように、パージガス供給ライン52の調節バルブに開放位置から閉鎖位置に切り替わるよう指示する。
【0074】
略同時に、コントローラは、主要ガスライン42の調節弁に開放位置に切り替わるよう指示し、また真空源50には動作を開始するよう指示し、それによって真空を引き、
図4および5でP
2として示される第2の圧力設定点に達するまで界面間隙30内の圧力を低下させる。第2の圧力設定点は、所定の負の(真空)圧力である。
【0075】
この初期真空が、界面間隙30内に存在する全てのガス、およびハンドル34のヘッドスペース内に存在するあらゆるガスを、主要ガスライン42および排出ライン48を介して間隙から排出させるかまたは吸い出させる。線引きプロセスのこの段階で界面間隙30内に初期真空圧を確立することも、特に、加熱要素32に接近している組立体の領域において、組立体18のコアロッド12上での外側クラッド管14の崩壊を促進する。
【0076】
したがって、最初に界面間隙を通してパージガスを流し、それによって界面間隙の圧力を上昇させ、その後、界面間隙上で真空を引き、それによって界面間隙の圧力を低下させ、パージガスおよびあらゆる反応産物を界面間隙から排出または放出することによって、処理プロセスが開始する。しかしながら、当業者は、界面間隙30にパージガスを供給するステップは任意選択的であることを理解するであろう。
【0077】
したがって、一実施形態において、組立体18の下方前端部18bが一旦密封されてから初期真空を引き、それによって界面間隙30の圧力を所定の公称真空圧(すなわち、第2の圧力設定点P
2)まで低下させ、その中に存在するあらゆるガスを排出または放出させることによって、処理プロセスが開始する。
図4〜6を参照すると、第2の圧力設定点P
2は、好ましくは約−800〜−950ミリバール、より好ましくは約−900〜−930ミリバール、最も好ましくは約−930ミリバール(絶対値で約80〜90ミリバール)またはそれ以下の公称真空圧である。
【0078】
所望の真空圧に達すると、コントローラが真空調節モードから処理流調節モードに切り替わり、間隙内の圧力を上昇させるために処理ガスが界面間隙30を通って流され、その中に存在する汚染物質と反応する(
図4〜6)。処理流調節モードでは、排出ライン48の調節弁が閉鎖位置に切り替わり、真空源50は好ましくは動作を停止し、パージガス供給ライン52の調節弁は閉鎖位置に留まり、処理ガス供給ライン54の調節弁が開放位置に切り替わる。
【0079】
一実施形態において、処理ガスは、標準空気、乾燥空気、酸素富化空気、純粋な窒素と酸素の混合物、純粋な酸素、またはそれらの混合物等の酸化ガスである。別の実施形態において、処理ガスは、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、水素富化ガス(メタン、アンモニア、および硫化水素等)、またはそれらの組み合わせ等の還元ガスである。
【0080】
酸化ガスは、有機汚染物質と反応してその燃焼を引き起こすため、酸化ガスは、界面間隙30内に望ましくない有機汚染物質が存在する場合に、処理ガスとして使用するのに特に有用である。酸化ガスおよび還元ガスのどちらも、Fe
2+、Cu
2+、およびNi
2+等々の望ましくない酸化状態で界面間隙30内に存在する金属不純物または原子種の酸化状態に変化をもたらすために処理ガスとして使用するのに特に有用である。
【0081】
一実施形態において、処理ガスは、標準空気または酸素であることが好ましい。別の実施形態において、処理ガスは、約30%〜50%、より好ましくは約40%の酸素含有量の酸素富化空気であることが好ましい。別の実施形態において、処理ガスは、一酸化炭素であることが好ましい。
【0082】
外側クラッド管14が加熱されてコアロッド12上で崩壊すると、処理ガスが、組立体18、より具体的には界面間隙30に供給される。よって、処理ガスは、コアロッド12上で外側クラッド管14が崩壊する間、界面間隙30を通って流れる。
【0083】
処理ガスが界面間隙30に供給されると、界面間隙の圧力が、第2の圧力設定点P
2の真空圧(好ましくは約−930ミリバール)から第3の設定点P
3に向かって上昇し始める(
図4〜6を参照)。処理ガスは、好ましくは、第3の圧力設定点P
3に達するまで所定の流量で界面間隙を通して流される。汚染物質の酸化/還元は、典型的には、約−900ミリバールの圧力に達した時に始まる。
【0084】
好ましくは、処理ガスは、界面間隙の圧力が約−10〜5ミリバールに達するまで、1分当たり最大約20リットルの流量で供給される。より好ましくは、処理ガスは、界面間隙の圧力が約−5〜5ミリバールに達するまで、1分当たり約1〜10リットルの流量で供給される。最も好ましくは、処理ガスは、界面間隙の圧力が第3の圧力設定点P
3の約0ミリバール(ゲージ)に達するまで、1分当たり約1〜10リットルの流量で供給される。約0ミリバールまたは約0ミリバールゲージは、大気圧と等しいかまたは同等であることを理解されたい。
【0085】
一旦、界面間隙30の圧力が第3の圧力設定点P
3(好ましくは約0ミリバール)に達すると、処理ガスの流量は、界面間隙の圧力が0ミリバールで保持されるよう調節されることが好ましい。処理ガスは、所定の期間、そのような調節された流量で供給され続ける。
【0086】
一実施形態において、界面間隙の圧力が約0ミリバールに達した後、処理ガスは、約10秒〜約5分間、より好ましくは約30秒〜約3分間、最も好ましくは約3分間、調節された流量で界面間隙30に供給されることが好ましい。別の実施形態において、界面間隙の圧力が約0ミリバールに達した後、処理ガスは、比較的より短い期間、好ましくは約10秒〜約3分間、より好ましくは約30秒〜約2分間、最も好ましくは約1分間、界面間隙に供給されることが好ましい。
【0087】
処理ガスの供給のための所定の期間が経過した後(すなわち、汚染物質の望ましい酸化または還元の程度が達成されてから)、コントローラは、処理流調節モードから真空調節モードに切り替わり、処理ガスの供給が停止され、真空源50は、界面間隙30の圧力を低下させるための動作を開始し、その中で真空圧を再確立する。真空はまた、処理ガスと有機汚染物質との反応によって発生した燃焼ガス等の、界面間隙30内に存在する全てのガスを、主要ガスライン42および排出ライン48を介して間隙から排出させるかまたは吸い出させる。
【0088】
よって、処理プロセスは、界面間隙30からガスを排出させるために断続的に真空を引く(すなわち、圧力を低下させる)こと、処理ガスを界面間隙に提供する(すなわち、圧力を上昇させる)こと、真空圧を再確立して界面間隙から反応産物を排出するために真空を引く(すなわち、圧力を低下させる)こと等によって、界面間隙の圧力を循環させることを含む。一実施形態において、真空圧が最初に再確立されると、処理プロセスが完了し、組立体18から母材28またはファイバ28’への線引きが真空下で継続する。
【0089】
別の実施形態において、所望の真空圧が初めて再確立されると、界面間隙の圧力の循環が繰り返される。具体的には、コントローラが処理流調節モードに切り替わり、処理ガスが前述のパラメータで界面間隙30を通して流される。次いで、処理ガスの供給のための所定の期間が経過した後、コントローラは、再び真空調節モードに切り替わり、2回目の所望の真空圧を再確立する。次いで、コントローラは、さらなる処理のために処理流調節モードに切り替わってもよいか、または真空調節モードに留まって、処理プロセスが完了したことおよび組立体18の線引きが真空下で継続するべきであることを示してもよい。
【0090】
一実施形態において、処理プロセス(すなわち、界面間隙の圧力の循環)は、落下片が形成されてつまみ取られた後、線引きプロセス/工程の初期段階に行われる。好ましくは、線引きプロセス/工程の初期段階は、組立体18の最初の半分が線引きタワー20の加熱ゾーン26に近接してそこを通過する線引きプロセス/工程の時点に対応する。処理ガスは、組立体18の全長Lに沿って界面間隙30を通って流れるが、母材中の気泡または線引きされたファイバ中のエアライン等の視覚的欠陥は、線引きプロセス/工程の初期に多く見られる傾向があるため、線引きプロセス/工程の初期に界面間隙の圧力を循環させることによって著しく改善された光ファイバ母材または光ファイバがもたらされることが分かった。
【0091】
より具体的には、そのような実施形態において、界面間隙の圧力の循環は、下端部および前端部18b近傍の組立体の長さLの半分の加熱中に行われることが好ましい。すなわち、下端部および前端部18b近傍の組立体の長さLの半分以内のコアロッド12上で外側クラッド管14が崩壊する製造工程の段階中に界面間隙の圧力を循環させることが好ましい。より好ましくは、下端部および前端部18b近傍の組立体18の長さLの3分の1以内のコアロッド12上で外側クラッド管14が崩壊する製造工程の段階中に界面間隙の圧力を循環させる。最も好ましくは、下端部および前端部18b近傍の組立体18の長さLの4分の1以内のコアロッド12上で外側クラッド管14が崩壊する製造工程の段階中に界面間隙の圧力を循環させる。
【0092】
別の実施形態において、処理プロセス(すなわち、界面間隙の圧力の循環)は、線引きプロセス/工程の最終段階中に行われる。好ましくは、線引きプロセス/工程の最終段階は、組立体18の第2の半分が線引きタワー20の加熱ゾーン26に近接してそこを通過する線引きプロセス/工程の時点に対応する。この場合も同様に、処理ガスは、組立体18の残りの長さL全体に沿って界面間隙30を通って流れる。しかしながら、望ましくない酸化状態に存在する金属不純物または原子欠陥は、線引きプロセス/工程の最後に顕著になる傾向があるため、線引きプロセス/工程の最終段階に向けて界面間隙の圧力を循環させることも、著しく改善された光ファイバ母材または光ファイバをもたらすことが分かった。
【0093】
より具体的には、そのような実施形態において、界面間隙の圧力の循環は、上端部および前端部18a近傍の組立体18の長さLの第2の半分の加熱中に行われることが好ましい。すなわち、上端部および前端部18a近傍の組立体の長さLの半分以内のコアロッド12上で外側クラッド管14が崩壊する製造工程の段階中に界面間隙の圧力を循環させることが好ましい。より好ましくは、より好ましくは、上端部および前端部18a近傍の組立体18の長さLの3分の1以内のコアロッド12上で外側クラッド管14が崩壊する製造工程の段階中に界面間隙の圧力を循環させる。最も好ましくは、上端部および前端部18a近傍の組立体18の長さLの4分の1以内のコアロッド12上で外側クラッド管14が崩壊する製造工程の段階中に界面間隙の圧力を循環させる。
【0094】
別の実施形態において、界面間隙の圧力の循環は、線引きプロセス/工程の初期段階で行われ、次いで、線引きプロセス/工程の最終段階で再び行われる。別の実施形態において、ガスを排出させるために断続的に真空を引く(すなわち、圧力を低下させる)こと、処理ガスを提供する(すなわち、圧力を上昇させる)こと、反応産物を排出するために真空を引く(すなわち、圧力を低下させる)こと等によって、外側クラッド管14がコアロッド12上で崩壊する間、線引きプロセスを通して何回も繰り返してまたは連続的に界面間隙30の圧力を循環させる。
【0095】
これらの実施形態のいずれの場合も、当業者は、使用される特定の酸化/還元ガスの反応動力学、および界面間隙30内に存在する特定の種類の汚染物質に依存して、界面間隙30に処理ガスを通過させる期間が変化し得ることを理解するであろう。また、処理ガスの流量は、使用される特定の種類の処理ガス、および界面間隙30の全体的なサイズに依存することも理解されたい。処理ガス流の期間は、崩壊プロセスに干渉しないように、コアロッド12を支持するのに十分な真空を維持するように、そしてコアロッド12の形状が確実に維持されるように、十分に制限されなければならないことをさらに理解されたい。
【実施例】
【0096】
実施例1
図4にグラフで示す線引きプロセス/工程に従って、光ファイバ母材を作製した。出発組立体は、純粋な石英ガラスでできた外側クラッド管の中に挿入された、ゲルマニウムおよびフッ素をドープした純粋な石英ガラスでできたコアロッドを含んでいた。次いで、線引きタワーを通して組立体を連続的に供給し、その中でゾーンごとに加熱して、外側クラッドガラス管をガラスコアロッド上で崩壊させてそこに接着させた。
【0097】
プロセス/工程の初めに、界面間隙の圧力を約0ミリバールゲージの圧力に維持し、約13分後に、開始片/落下片をつまみ取って下方前端部18bを密封した。次いで、界面間隙の圧力が上昇し始めたため、コントローラは、真空源50に動作を開始するよう指示した。続いて、界面間隙の圧力を
図4でP
2として示される約−930ミリバールの公称真空圧まで低下させるために初期真空を引いた。−930ミリバールに達すると、コントローラが処理流調節モードに切り替わり、処理ガス、具体的には酸素含有量約40%の酸素富化空気を、界面間隙30を通して流した。処理ガスの流れが、間隙の圧力の上昇を引き起こした。一旦、界面間隙の圧力が、
図4でP
3として示される約0ミリバールゲージに達してから、この界面間隙の圧力を維持するように処理ガスの流れを調節し、調節された流量で約3分間、界面間隙を通して処理ガスを流した。3分が経過した後、処理ステップを繰り返した。
【0098】
具体的には、界面間隙の圧力を約−930ミリバールまで低下させるために再び真空を引き、次いで、再び界面間隙を通して処理ガスを流して圧力を約0ミリバールまで上昇させ、約0ミリバールの界面間隙の圧力を維持するように処理ガスの流れを調節し、調節された流量で約3分間、界面間隙30を通して処理ガスを流し、最後に、再び真空を引いて、線引きプロセス/工程の期間約−950ミリバールの真空圧を再確立した。
【0099】
実施例2
図5にグラフで示す線引きプロセス/工程に従って、光ファイバ母材を作製した。出発組立体は、実施例1で使用したものと同じであった。次いで、線引きタワーを通して組立体を連続的に供給し、その中でゾーンごとに加熱して、外側クラッドガラス管をガラスコアロッド上で崩壊させてそこに接着させた。
【0100】
線引きプロセス/工程の最終段階中、具体的には、組立体18の後端部18a近傍の組立体の一部が加熱される段階中に、処理プロセスを行った。処理プロセスの前に、組立体の形状を維持するために、約−950ミリバールの真空圧で光ファイバ母材の形成(すなわち、組立体の前端部に向かって)を行った。
【0101】
処理プロセスを開始するために、コントローラが真空調節モードから処理流調節モードに切り替わり、処理ガス、具体的には標準空気を界面間隙30を通して流し、界面間隙の圧力を約0ミリバールの設定点P
3まで上昇させた。次いで、0ミリバールの界面間隙の圧力を維持するように処理ガスの流れを調節し、調節された流量で約1分間、界面間隙を通して処理ガスを流した。1分が経過した後、真空を引いて界面間隙の圧力を約−930ミリバールの設定点P
2まで低下させた。次いで、処理ステップを繰り返した。
【0102】
具体的には、界面間隙を通して再び処理ガスを流して界面間隙の圧力を循環させて約0ミリバールまで戻し、0ミリバールの界面間隙の圧力を維持するように処理ガスの流速を再び調節し、調節された流量で約1分間、界面間隙を通して処理ガスを流し、再び真空を引いた。界面間隙を約−930ミリバールの公称真空圧で約10分間維持し、再び界面間隙を通して処理ガスを流すことにより約0ミリバールまで上昇させ、最終的に、線引きプロセス/工程の残りでは約−950ミリバールの真空圧まで低下させた。
【0103】
実施例3
図6にグラフで示す線引きプロセス/工程に従って、光ファイバ母材を作製した。線引きプロセスは、本質的に、実施例1および2に記載したプロセスの組み合わせであった。具体的には、線引きプロセス/工程の初期段階(すなわち、組立体の前端部に近接する組立体の部分が加熱されて崩壊する段階の間)に組立体の処理を行い、次いで、線引きプロセス/工程の最終段階(すなわち、組立体の後端部近傍の組立体の部分が加熱された崩壊する段階の間)に再び処理を行った。使用した処理ガスは、標準空気であった。
【0104】
処理プロセスの全ての実施形態において、望ましくない有機および無機汚染物質が除去され、界面の気泡、エアライン、異物の混入、界面部分の白濁等の視覚的欠陥および不純物、ならびに汚染物質によって引き起こされる他の欠陥が、得られた母材28において低減されるかまたは防止された。処理プロセスの全ての実施形態において、得られた光ファイバにおけるそのような欠陥および不純物によって引き起こされる減衰もまた、低減された。
【0105】
当業者は、前述の実施形態に、その広義の発明概念から逸脱することなく変更が行われ得ることを理解するであろう。したがって、本発明は、開示される特定の発明に限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の主旨および範囲内の変形例を包含することが意図されることを理解されたい。