(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基地局装置を有する基地局が配置された移動通信システムの概略構成を示す説明図である。
図1において、本実施形態の移動通信システムは、LTEの仕様に準拠した通信システムであり、マクロセル基地局10,11,12と、その一つのマクロセル基地局10の無線通信エリアであるマクロセル10A内に位置するスモールセル基地局20とを備える。スモールセル基地局20の無線通信エリアであるスモールセル20Aは、マクロセル10Aの内側に含まれている。図示の例では、移動局であるユーザ装置(UE)30はスモールセル20Aに在圏しており、スモールセル基地局20と間で電話やデータ通信などのための無線通信が可能な状態にある。また、ユーザ装置30は、マクロセル10Aの内部であってスモールセル20Aの外縁部(マクロセル10Aとの境界部)に位置しているため、ユーザ装置30から発した無線信号がマクロセル基地局10に到達したりマクロセル基地局10から発した無線信号がユーザ装置30に到達したりする状況にある。また、スモールセル基地局20の周辺に位置する基地局としては、マクロセル基地局10のほかマクロセル基地局11,12がある。
【0015】
なお、
図1では、3つのマクロセル基地局10,11,12と1つのスモールセル基地局20と1つのユーザ装置30とを図示しているが、マクロセル基地局は2以下又は4以上であってもよく、スモールセル基地局及びユーザ装置はそれぞれ複数であってもよい。また、以下の実施形態では、後述の処理や制御をスモールセル基地局20が行う場合について説明するが、同様な処理や制御はマクロセル基地局10などの他の基地局が行ってもよい。また、3つのマクロセル基地局10,11,12に共通する部分については、マクロセル基地局10として説明する。
【0016】
マクロセル基地局10は、移動体通信網において屋外に設置されている通常の半径数百m乃至数km程度の広域エリアであるマクロセルをカバーする広域の基地局であり、「マクロセル基地局」、「Macro e−Node B」、「MeNB」等と呼ばれる場合もある。マクロセル基地局10は、他の基地局と例えば有線の通信回線で接続され、所定の通信インターフェースで通信可能になっている。また、マクロセル基地局10は、回線終端装置及び専用回線を介して移動体通信網のコアネットワークに接続され、移動体通信網内の各種ノードとの間で所定の通信インターフェースにより通信可能になっている。
【0017】
スモールセル基地局20は、広域のマクロセル基地局とは異なり、無線通信可能距離が数m乃至数百m程度であり、一般家庭、店舗、オフィス等の屋内にも設置することができる移動設置可能な基地局である。スモールセル基地局20は、移動体通信網における広域のマクロセル基地局がカバーするエリアよりも小さなエリアをカバーするように設けられるため「フェムト基地局」と呼ばれたり、「Home e−Node B」や「Home eNB」と呼ばれたりする場合もある。スモールセル基地局20についても、回線終端装置及びADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)回線や光回線等のブロードバンド公衆通信回線を介して移動体通信網のコアネットワークに接続され、コアネットワーク上の各種ノードとの間で所定の通信インターフェースにより通信可能になっている。
【0018】
ユーザが使用する移動局としてのユーザ装置(UE)30は、マクロセル10Aやスモールセル20Aに在圏するときに、その在圏するセルに対応するマクロセル基地局10やスモールセル基地局20と間で所定の通信方式及びリソースを用いて無線通信することができる。
【0019】
図2(a)は本実施形態の移動通信システムで通信可能なユーザ装置30の要部の概略構成の一例を示す機能ブロック図である。また、
図2(b)は本実施形態のスモールセル基地局20を構成する基地局装置200の要部の概略構成の一例を示す機能ブロック図である。なお、スモールセル基地局20の周辺に位置するマクロセル基地局10の基地局装置はスモールセル基地局20と同様に構成することができるため、説明を省略する。
【0020】
ユーザ装置30は、例えばCPUやメモリ等を有するコンピュータ装置、コアネットワークに対する外部通信インターフェース部、無線通信部などのハードウェアを用いて構成され、所定のプログラムが実行されることにより基地局10,20等との間の無線通信等を行うことができる。また、基地局装置200は、例えばCPUやメモリ等を有するコンピュータ装置、コアネットワークに対する外部通信インターフェース部、無線通信部などのハードウェアを用いて構成され、所定のプログラムが実行されることにより、後述するスモールセル基地局20に隣接する周辺基地局のリストの記憶及び更新、下りリンクの送信電力の制御、周辺のセルからの干渉レベルの測定、干渉の抑制処理などの各種処理及び制御を実行したり、ユーザ装置30との間の無線通信を行ったりすることができる。
【0021】
図2(a)において、ユーザ装置30は、制御部301と送受共用器(DUP:Duplexer)302と無線受信部303とOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)復調部304と受信品質測定部305と報知情報抽出部306とを備える。更に、ユーザ装置30は、P−CQI(Periodic-Channel Quality Indicator)生成部307とSC−FDMA(Single-Carrier Frequency-Division Multiple Access)変調部308と無線送信部309とを備える。
【0022】
制御部301は、例えばコンピュータ装置で構成され、報知情報抽出部306で抽出された報知情報に基づいて各部を制御するとともに、受信品質測定部305で測定された下り信号受信品質の情報をP−CQI生成部307に渡す手段として機能する。
【0023】
無線受信部303は、LTEに規定されているダウンリンク用のOFDM方式で変調された無線信号を、アンテナ及び送受共用器302を介して、基地局10,20から受信する。
OFDM復調部304は、OFDM方式で変調されている無線信号を復調して受信信号を得る。
受信品質測定部305は、OFDM復調部304で復調された受信信号から、下りの無線信号を受信するときの下り受信品質(例えば、電界強度、受信レベルなど)を測定し、測定した下り受信品質の情報(CQI:Channel Quality Indicator)を制御部301に渡す。
報知情報抽出部306は、OFDM復調部304で復調された受信信号から、基地局10,20が送信した報知情報(例えば、CGIやセルIDなどのセル識別情報、TACなどの位置登録エリア情報、制御チャネル情報、ネットワークバージョン情報など)を抽出し、抽出した報知情報を制御部301に渡す。
P−CQI生成部307は、制御部301から受け取った下り受信品質の情報(CQI)及び報知情報に基づいて、ユーザ装置30から周期的に送信する測定報告(Measurement Report)としてのP−CQIの送信信号を生成する。
SC−FDMA変調部308は、LTEに規定されているアップリンク用のSC−FDMA(単一キャリア周波数分割多重アクセス)方式を用いて、ベースバンドの各種送信信号を変調する。特に、本例では、SC−FDMA変調部308により、P−CQI生成部307で生成されたP−CQIの送信信号がSC−FDMA方式で変調される。
無線送信部309は、SC−FDMA変調部308で変調されたP−CQIなどの送信信号を、送受共用器302及びアンテナを介して、基地局10,20に送信する。
【0024】
ここで、上記P−CQIは、ユーザ装置30が基地局10,20に対して周期的に報告する下り受信品質情報(CQI)及びCGIやセルID等のセル識別情報を含む送信信号である。また、ユーザ装置30は、P−CQIのほか、基地局10,20での上り受信品質の測定に用いられる参照信号(SRS)も周期的に送信してもよい。P−CQIの送信用の物理チャネルとしては、例えば、LTEで規定されているアップリンク用制御チャネルであるPUCCH(Uplink Control Channel) format2が用いられる。また、P−CQI及びSRSの送信に使用される無線リソース(時間、周波数)は基地局10,20から指定される。
【0025】
また、
図2(b)において、基地局装置200は、無線信号経路切り換え部201と送受共用器(DUP)202と下り無線受信部203とOFDM復調部204と報知情報抽出部205と上り無線受信部206とSC−FDMA復調部207と受信電力測定部208とを備える。更に、基地局装置200は、送信電力などの制御を行う制御部209と下り信号生成部210とOFDM変調部211と下り無線送信部212とを備える。なお、基地局装置200にはアンテナを含めてもよい。
【0026】
下り無線受信部203は、LTEに規定されているダウンリンク用のOFDM方式で変調された報知情報を含む無線信号を、アンテナ、無線信号経路切り換え部201及び送受共用器202を介して、マクロセル基地局10から受信する。
OFDM復調部204は、OFDM方式で変調されている無線信号を復調して受信信号を得る。
報知情報抽出部205は、OFDM復調部204で復調された受信信号から、マクロセル基地局10が送信した報知情報(例えば、SIB2:System Information Block type 2の情報)を抽出し、抽出した報知情報を制御部209に渡す。
これらの下り無線受信部203、OFDM復調部204及び報知情報抽出部205は、自局の周辺に位置するマクロセル基地局10から送信されている送信信号の電界強度の情報を取得する情報取得手段や、自局の周辺に位置するマクロセル10Aからの干渉レベルを測定する測定手段としても機能する。
【0027】
上り無線受信部206は、基地局200と通信しているユーザ装置30が送信する上り無線信号を、無線信号経路切り換え部201及び送受共用器202を介して受信する。この無線信号は、上り無線受信部206等で発生した白色雑音などの雑音信号や、前述のP−CQI及びSRSの送信用に設定されている所定の無線リソース及び物理チャネルにおける無線信号を含む。また、この無線信号は、スモールセル基地局20に隣接しているマクロセル基地局10と通信しているユーザ装置(MUE)が存在している場合は、そのユーザ装置(MUE)から送信された上り信号を含む。
SC−FDMA復調部207は、上り無線受信部206で受信した受信信号に対してSC−FDMA方式の復調処理を実行する。
【0028】
受信電力測定部208は、報知情報抽出部205で抽出した周辺のマクロセル基地局10からの報知情報に基づいて、SC−FDMA復調部207での復調処理で得られた上記所定の無線リソース及び物理チャネルにおける受信信号の電力を、単一又は複数のサブフレーム毎に測定する。この受信電力測定部208は、自局の周辺に位置するマクロセル基地局10に対して上記ユーザ装置(MUE)から定期的に送信される信号(P−CQI又はSRS)に割り当てられた所定の周波数帯域における電力を測定する測定手段として機能する。
【0029】
また、制御部209は、RAMやROMなどのメモリを有し、自局の周辺に位置する周辺基地局のリストである前述の表1や表2に例示したような隣接基地局リストを記憶する記憶手段として機能する。更に、制御部209は、新たな周辺基地局が見つかった場合に当該周辺基地局を隣接基地局リストに追加するリスト更新手段や、隣接基地局リストに登録されている周辺基地局の数が予め設定されている所定の最大数に達している場合は、隣接基地局リスト中の登録タイミングが古い少なくとも一つの周辺基地局を削除する削除手段としても機能する。
【0030】
また、制御部209は、予め設定した最大電力(Pcell(Max))と最小電力(Pcell(Min))との間で下りリンクの送信電力を制御する送信電力制御手段や、マクロセル10Aからの干渉レベルの測定結果に基づいて下りリンクの送信電力を制御する送信電力制御手段としても機能する。
【0031】
下り信号生成部210は、自局のセル20Aに在圏しているユーザ装置30に向けて送信する下り信号を生成する。
OFDM変調部211は、下り信号生成部210で生成した下り信号を、制御部209で決定した送信電力で送信されるように、OFDM方式で変調する。
下り無線送信部212は、OFDM変調部211で変調した送信信号を、送受共用器202、無線信号経路切り換え部201及びアンテナを介して送信する。
【0032】
図3は、本実施形態のスモールセル基地局20の基地局装置200における隣接セルリストの更新処理の一例を示すフローチャートである。
本実施形態のスモールセル基地局20では、「Sniffer」と呼ばれている周辺基地局サーチ方法及び「CGI Report」、「UEMR」等と呼ばれている受信報告利用方法の少なくとも一方の方法により、隣接セルリストを構築することができる。周辺基地局サーチ方法では、スモールセル基地局20の起動時や予め設定した所定の第1の周期(1時間)及び/又は第2の周期(1週間)で特定の周波数(例えば2.1GHz)で周辺基地局(セル)の情報をサーチし、新たな周辺基地局(セル)がサーチされた場合にその周辺基地局(セル)の情報を隣接セルリストに登録する。また、上記受信報告利用方法では、特定の周波数に制限されず、自セルに在圏するユーザ装置30が隣接するセルにハンドオーバーするときに、周辺基地局(セル)の情報をユーザ装置30から受信した測定報告(MR)に含まれるセルグローバル識別情報(CGI)により収集し、隣接セルリストに登録する。この隣接セルリストは登録可能な隣接セルの最大値(例えば64)が設定されている。
【0033】
図3の例は、上記第2の周期(1週間)による周辺基地局サーチ方法(Sniffer)で隣接セルリストの更新処理を行うときの例である。
図3において、スモールセル基地局20は、上記第2の周期(1週間)による周辺基地局サーチ方法(Sniffer)による隣接セルリストの更新処理を開始し、自セルの周辺に位置する隣接セルをサーチし、新たな隣接セルの情報を取得すると、隣接セルリストが満杯か否か(隣接セルリストに追加登録可能な空きがあるか否か)を判断する。
ここで、隣接セルリストが満杯でない場合は、上記取得した新たな隣接セルの情報を隣接セルリストに追加する。
一方、隣接セルリストが満杯の場合は、隣接セルリスト中の登録タイミングが古い少なくとも一つの隣接セル(周辺基地局)の情報を削除する。例えば、隣接セルリスト中の隣接セルのうち、ユーザ装置からの測定報告の数が少ない隣接セルから順番に、少なくとも一つの隣接セル(周辺基地局)の情報を削除する。その後、上記取得した新たな隣接セルの情報を隣接セルリストに追加する。
以上、
図3の例によれば、隣接セルリストに登録できる隣接セル(周辺基地局)の最大数が設定されている場合でも、上記第2の周期(1週間)による周辺基地局サーチ方法(Sniffer)で隣接セルリストの更新処理を行うときに新たな隣接セル(周辺基地局)の情報を隣接セルリストに確実に追加できる。
【0034】
図4は、本実施形態のスモールセル基地局20の基地局装置200における隣接セルリストの更新処理の他の一例を示すフローチャートである。
図4の例は、上記ハンドオーバー時の受信報告利用方法で隣接セルリストの更新処理を実施するときの例である。また、
図4の例では、隣接セルリスト中の項目として、隣接セル(周辺基地局)それぞれについてセル識別情報(CGI)の時間情報や周辺基地局の情報の取得時間等の時間情報の項目を設けられている。
【0035】
図4において、スモールセル基地局20は、自セルに在圏するユーザ装置30のハンドオーバー処理を発動すると、自セルに在圏するユーザ装置30からハンドオーバー時に受信した測定報告(MR)に含まれるセル識別情報(CGI)に基づいて隣接セル(周辺基地局)の情報を収集し、その情報収集によって隣接セル(周辺基地局)の情報を取得すると、その取得した隣接セル(周辺基地局)が隣接セルリストに存在するか否かを判断する。ここで、隣接セル(周辺基地局)が隣接セルリストに存在する場合は、その隣接セルについてセル識別情報(CGI)の時間情報(CGIレポートの時間)が更新される。
次に、スモールセル基地局20は、隣接セルリストが満杯か否か(隣接セルリストに追加登録可能な空きがあるか否か)を判断する。
ここで、隣接セルリストが満杯でない場合は、上記取得した新たな隣接セルの情報を隣接セルリストに追加する。
一方、隣接セルリストが満杯の場合は、隣接セルリスト中の登録タイミングが古い少なくとも一つの隣接セル(周辺基地局)の情報を削除する。例えば、隣接セルリスト中の隣接セルのうち、セル識別情報(CGI)の時間情報(CGIレポートの時間)が古いものから順番に、少なくとも一つの隣接セル(周辺基地局)の情報を削除する。その後、上記取得した新たな隣接セルの情報を隣接セルリストに追加する。
以上、
図4の例によれば、隣接セルリストに登録できる隣接セル(周辺基地局)の最大数が設定されている場合でも、上記ハンドオーバー時の受信報告利用方法で隣接セルリストの更新処理を行うときに新たな隣接セル(基地局)の情報を隣接セルリストに確実に追加できる。
【0036】
なお、上記
図3及び
図4の例において、隣接セルリストから隣接セル(周辺基地局)の情報を削除するとき、一の隣接セル(周辺基地局)を削除してもよいし、複数の隣接セル(周辺基地局)を一度に削除してもよい。
また、上記
図3及び
図4の例は、スモールセル基地局20に設けられた基地局装置200が隣接セルリストの更新処理を行う場合について説明したが、マクロセル基地局10に設けられた基地局装置200についても同様な隣接セルリストの更新処理を適用できる。
【0037】
図5(a)〜(c)はそれぞれ、本実施形態のスモールセル基地局20においてスモールセル20Aからマクロセル10Aへの干渉が大きい場合に選択的に実行可能な互いに異なる下り送信電力制御(DPC)のアルゴリズムの例を示すグラフである。
図5中の横軸は、周辺のマクロセル10Aからの下り固有基準信号(CRS)の干渉レベル(CRS_Ec)であり、縦軸は、スモールセル基地局20の基地局装置200の下り送信電力(Pout)[dB]である。また、図中のPcell(Max)及びPcell(Min)はそれぞれ、スモールセル基地局20の基地局装置200における下り送信電力制御(DPC)で設定可能な最大電力及び最小電力である。
【0038】
図5(a)〜(c)の下り送信電力制御(DPC)のアルゴリズムは、下り固有基準信号(CRS)の干渉レベル(CRS_Ec)が図中の0[dB]から所定の干渉レベルA[dB]に至るまでは同じであり、干渉レベルAになったときの下り送信電力の変更が互いに異なる。
図5(a)の下り送信電力制御(DPC)のアルゴリズムでは、下り固有基準信号(CRS)の干渉レベル(CRS_Ec)が所定の干渉レベルAになったとき、下り送信電力Poutを最小電力Pcell(Min)に変更する。
図5(b)の下り送信電力制御(DPC)のアルゴリズムでは、下り固有基準信号(CRS)の干渉レベル(CRS_Ec)が所定の干渉レベルAになったとき、下り送信信号を停波するように下り送信電力Poutを0[W]に変更する。
図5(c)の下り送信電力制御(DPC)のアルゴリズムでは、下り固有基準信号(CRS)の干渉レベル(CRS_Ec)が所定の干渉レベルAになったとき、下り送信信号の総電力を最大電力Pcell(Max)に維持しつつCRSの電力を高めるととも他の物理チャネルの信号の電力を低減する後述のCRS増大(CRS Boosting)制御に変更する。
【0039】
図6は、本実施形態のスモールセル基地局20の基地局装置200における下り送信電力制御(DPC)の一例を示すフローチャートである。
図6において、スモールセル基地局20は、自局の周辺に位置するマクロセル基地局10から送信されている送信信号の電界強度(以下「マクロセル電界」という。)の情報を測定などによって取得すると、そのマクロセル電界が予め設定したマクロセル電界上限閾値(以下「電界上限閾値」という。)を超えているか否かを判断する。
上記マクロセル電界が電界上限閾値を超えている場合は、所定の時間内において上記マクロセル電界の情報取得及び判断を所定回数(N回)繰り返し実行する。そして、そのN回の判断のうちマクロセル電界が電界上限閾値を超えた回数をCountとしたとき、Count/Nの値が予め設定した閾値を超えたか否かを判断する。
上記Count/Nの値が予め設定した閾値を超えたときは、下り送信電力制御(DPC)のアルゴリズムを、通常のアルゴリズム(前述の
図5(c)でCRS増大(CRS Boosting)制御がないアルゴリズム)から、前述
図5(a)〜(c)の下り送信電力制御(DPC)のアルゴリズムのいずれかに変更する。
以上、
図6の例によれば、スモールセル基地局20のスモールセル20Aに隣接してマクロセル基地局10が設置された場合に、スモールセル基地局20からの下り信号の電力を必要以上に低下させることなく、マクロセル10Aの下り信号におけるスモールセル20Aからの干渉を抑制することができる。
【0040】
図6の例では、マクロセル電界が電界上限閾値を超えているか否かを判断しているが、その判断に代えて、マクロセル電界が電界上限閾値以上であるか否かを判断してもよい。また、
図6の例では、Count/Nの値が閾値を超えたか否かを判断しているが、その判断に代えて、Count/Nの値が閾値以上か否かを判断してもよい。
【0041】
図7は、本実施形態のスモールセル基地局20の基地局装置200における下り送信電力制御(DPC)の他の一例を示すフローチャートである。
図7において、前述の
図6の下り送信電力制御(DPC)のアルゴリズムの変更を実施した後、スモールセル基地局20は、マクロセル電界の情報を測定などによって取得すると、そのマクロセル電界が予め設定したマクロセル電界下限閾値(以下「電界下限閾値」という。)を超えているか否かすなわち電界下限閾値よりも小さいか否かを判断する。
上記マクロセル電界が電界下限閾値を超えている場合は、所定の時間内において上記マクロセル電界の情報取得及び判断を所定回数(N回)繰り返し実行する。そして、そのN回の判断のうちマクロセル電界が電界下限閾値を超えた回数をCountとしたとき、Count/Nの値が予め設定した閾値を超えたか否かを判断する。
上記Count/Nの値が予め設定した閾値を超えたときは、下り送信電力制御(DPC)のアルゴリズムを、前述の
図6の変更後の
図5(a),(b)又は(c)の下り送信電力制御(DPC)のアルゴリズムから、通常のアルゴリズム(前述の
図5(c)でCRS増大(CRS Boosting)制御がないアルゴリズム)に戻すように変更する。
以上、
図7の例によれば、スモールセル20Aの周辺における無線伝送環境など何らかの原因でマクロセル10Aの下り信号におけるスモールセル20Aからの干渉が小さくなった場合に、スモールセル基地局20からの下り信号の電力を最大電力に戻すことができる。
【0042】
図7の例では、マクロセル電界が電界下限閾値を超えているか否かを判断しているが、その判断に代えて、マクロセル電界が電界下限閾値以下であるか否かを判断してもよい。また、
図7の例では、Count/Nの値が閾値を超えたか否かを判断しているが、その判断に代えて、Count/Nの値が閾値以上か否かを判断してもよい。
【0043】
図8は、本実施形態のスモールセル基地局20の基地局装置200における下り送信電力制御(DPC)のアルゴリズムの更に他の一例を示すグラフである。
図8のポイントA,B及びCは、周辺のマクロセル10Aからの下り固有基準信号(CRS)の干渉レベル(CRS_Ec)の増大に応じてスモールセル20Aにおける下り固有基準信号(CRS)の送信電力を選択的に増大させるCRS Boostingの様子を示している。また、
図9(a)、(b)及び(c)はそれぞれ、
図8のポイントA,B及びCにおける周波数に対する下り送信信号の電力の制御パターンを示すグラフである。
【0044】
図8において、周辺のマクロセル10Aからの下り固有基準信号(CRS)の干渉レベル(CRS_Ec)が図中の0[dB]からポイントAの干渉レベル[dB]に至るまでは、従来の下り送信電力制御(DPC)と同様に、標準の送信電力レベルPnに対する下り固有基準信号(CRS)の送信電力のオフセット(P_A)及び他の物理チャネルの信号の送信電力のオフセット(P_B)はいずれも設定されない(
図9(a)参照)。
【0045】
周辺のマクロセル10Aからの下り固有基準信号(CRS)の干渉レベル(CRS_Ec)が、
図8のポイントAに示す所定の干渉レベルに達すると、スモールセル20Aにおける下り送信信号の総電力を所定の最大電力に維持しつつ、下り固有基準信号(CRS)の送信電力を高めるとともに他の物理チャネルの信号の送信電力を低めるように上記オフセットP_A及びP_Bを設定する(
図9(b)参照)。
【0046】
更に、
図8のポイントB,Cに示すように周辺のマクロセル10Aからの下り固有基準信号(CRS)の干渉レベル(CRS_Ec)が高くなったときには、それに応じて、スモールセル20Aにおける下り送信信号の総電力を所定の最大電力に維持しつつ下り固有基準信号(CRS)の送信電力を更に高めるとともに他の物理チャネルの信号の送信電力を更に低めるように上記オフセットP_A及びP_Bを設定する(
図9(b),(c)参照)。
【0047】
図10は、本実施形態のスモールセル基地局20の基地局装置200における下り送信電力制御(DPC)の更に他の一例を示すフローチャートである。
図10において、「*_tmp」は暫定値、「*_limit」は規定値、「*_final」は最終値を示している。また、「Pmax」は最大出力、「CRS」は参照信号である下り固有基準信号(CRS)の出力あたりのリソースエレメントの電力、「P_A」は標準の送信電力レベルPnに対する下り固有基準信号(CRS)の送信電力のオフセットを示している。ここで、3GPP上の標準規格では、P_Aの出力値としてとれる値は8つと規定されている(非特許文献3参照)。CRSの電力値が高い場合は{−6dB,−4.77dB,−3dB,−1.77dB}の値のみ使用可能である。それ以外の場合は下り送信信号の総送信電力の最大値が許容最大電力の規定値を超えてしまうため使用できない。また、CRS以外の他の物理チャネルの信号の送信電力のオフセット(P_B)の値は、上記
図9に示したようにP_Aと同じ値に設定される。
【0048】
図10において、まず、周辺のマクロセル10Aからの下り固有基準信号(CRS)の干渉レベル(CRS_Ec)の値に基づき、下り送信電力制御(DPC)の所定の算出式を用いて、最大電力の暫定値Pmax_tmpを算出する。また、この最大電力の暫定値Pmax_tmpに基づいて、CRSの暫定値CRS_tmpを算出する。そして、最大電力の暫定値Pmax_tmpが最大電力の規定値Pmax_limit以下か否かを判断する。
【0049】
ここで、最大電力の暫定値Pmax_tmpが最大電力の規定値Pmax_limit以下の場合は、最大電力の暫定値Pmax_tmpを最大電力Pmax_finalに設定し、CRSの暫定値CRS_tmpをCRSの最終値CRS_finalに設定し、他の物理チャネルの電力オフセットP_A_finalを0dBに設定し、終了する。
【0050】
一方、最大電力の暫定値Pmax_tmpが最大電力の規定値Pmax_limitよりも大きい場合は、CRS増大(CRS Boosting)制御の設定に移行する。
【0051】
CRS増大(CRS Boosting)制御の設定では、まず、電力を減少させる他の物理チャネルの他の物理チャネルの電力オフセットの暫定値P_A_tmpを算出し、その電力オフセットの暫定値P_A_tmpが−6dBよりも小さいか否かを判断する。
ここで、他の物理チャネルの電力オフセットの暫定値P_A_tmpが−6dBよりも小さい場合は、電力オフセットの最終値P_A_finalに−6dBを設定してCRSの最終値CRS_finalを算出し、電力オフセットの最終値P_A_finalとCRSの最終値CRS_finalとに基づいて最大電力Pmax_finalを算出する。
一方、電力オフセットの暫定値P_A_tmpが−6dB以上の場合は、他の物理チャネルの電力オフセットの暫定値P_A_tmpより小さい値を{−6dB,−4.77dB,−3dB,−1.77dB}の中から選択し、その選択した値の中の最大値を、他の物理チャネルの電力オフセットの最終値P_A_finalとする。そして、CRSの暫定値CRS_tmpをCRSの最終値CRS_finalに設定し、電力オフセットの最終値P_A_finalとCRSの最終値CRS_finalとに基づいて最大電力Pmax_finalを算出する。
【0052】
以上、
図8〜
図10の例によれば、スモールセル基地局20からの下り信号の電力を許容最大電力以下に抑えつつ、スモールセル20Aの十分に大きなカバーレッジエリアを確保できる。