(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被検眼眼底の断層像を撮影する断層像撮影装置において対象物の略同一位置を複数回走査して得られた複数組のAスキャンデータ群を処理して読影用断層画像を生成する画像処理装置であって、
前記複数組のAスキャンデータ群から複数枚のBスキャン画像を生成するとともにそれらを単純加算して単純加算Bスキャン画像を生成し、前記複数枚のBスキャン画像のうち前記単純加算Bスキャン画像と最も相関の高いBスキャン画像を特定し、前記最も相関の高いBスキャン画像に対応するAスキャンデータ群を基準Aスキャンデータ群として選定する基準データ選定手段と、
前記基準Aスキャンデータ群以外の前記複数組のAスキャンデータ群から生成されるBスキャン画像から、前記基準Aスキャンデータ群から生成されるBスキャン画像と相関が高い所定の枚数のBスキャン画像を特定し、特定された所定の枚数のBスキャン画像に対応する所定の組数のAスキャンデータ群を対象Aスキャンデータ群として選定する対象データ選定手段と、
前記基準Aスキャンデータ群から基準Bスキャン画像を生成し、前記対象Aスキャンデータ群に含まれるAスキャンデータを、前記基準Bスキャン画像に対してそれぞれAスキャンデータ毎に位置ずれ補正をしながら加算平均して読影用断層画像を生成する加算平均手段と、を備える画像処理装置。
前記基準データ選定手段及び前記対象データ選定手段が、Aスキャンデータ群の一部のAスキャンデータを用いてBスキャン画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
前記加算平均手段が、前記対象Aスキャンデータ群に含まれている前記所定の組数のAスキャンデータ群のそれぞれにおいて対応する位置にあるAスキャンデータを連続して処理することを特徴とする、請求項1又は2に記載の画像処理装置。
被検眼眼底の断層像を撮影する断層像撮影装置において対象物の略同一位置を複数回走査して得られた複数組のAスキャンデータ群を処理して読影用断層画像を生成する画像処理方法であって、
前記複数組のAスキャンデータ群から複数枚のBスキャン画像を生成するとともにそれらを単純加算して単純加算Bスキャン画像を生成し、前記複数枚のBスキャン画像のうち前記単純加算Bスキャン画像と最も相関の高いBスキャン画像を特定し、前記最も相関の高いBスキャン画像に対応するAスキャンデータ群を基準Aスキャンデータ群として選定する基準データ選定工程と、
前記基準Aスキャンデータ群以外の前記複数組のAスキャンデータ群から生成されるBスキャン画像から、前記基準Aスキャンデータ群から生成されるBスキャン画像と相関が高い所定の枚数のBスキャン画像を特定し、特定された所定の枚数のBスキャン画像に対応する所定の組数のAスキャンデータ群を対象Aスキャンデータ群として選定する対象データ選定工程と、
前記基準Aスキャンデータ群から基準Bスキャン画像を生成し、前記対象Aスキャンデータ群に含まれるAスキャンデータを、前記基準Bスキャン画像に対してそれぞれAスキャンデータ毎に位置ずれ補正をしながら加算平均して読影用断層画像を生成する加算平均工程と、を備える画像処理方法。
前記基準データ選定工程及び前記対象データ選定工程において、Aスキャンデータ群の一部のAスキャンデータを用いてBスキャン画像を生成することを特徴とする請求項4に記載の画像処理方法。
前記加算平均工程において、前記対象Aスキャンデータ群に含まれている前記所定の組数のAスキャンデータ群のそれぞれにおいて対応する位置にあるAスキャンデータを連続して処理することを特徴とする、請求項4又は5に記載の画像処理方法。
コンピュータを請求項1から3のいずれか1項に記載の画像処理装置として機能させるための、あるいはコンピュータに請求項4から6のいずれか1項に記載の画像処理方法を実行させるための画像処理プログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、得られた断層画像群から類似度が上位の所定枚数を選択して加算平均処理に使用したり、撮影中に生じる局所的な位置ずれを補正しながら加算平均処理したりすることにより、読影に適した高品質の加算平均断層画像を生成することが可能になる。しかしながら、そのためのデータ処理量はかなりのものになり、診断用画像に適した画像を生成するのに時間がかかるという問題がある。
【0010】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、対象物の略同一位置を複数回走査して得られたAスキャンデータ群から、データ処理量を抑えつつ読影に適した高品質の断層画像を生成することができる画像処理装置、画像処理方法及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、第一に本発明は、被検眼眼底の断層像を撮影する断層像撮影装置において対象物の略同一位置を複数回走査して得られた複数組のAスキャンデータ群を処理して読影用断層画像を生成する画像処理装置であって、前記複数組のAスキャンデータ群から複数枚のBスキャン画像を生成するとともにそれらを単純加算して単純加算Bスキャン画像を生成し、前記複数枚のBスキャン画像のうち前記単純加算Bスキャン画像と最も相関の高いBスキャン画像を特定し、前記最も相関の高いBスキャン画像に対応するAスキャンデータ群を基準Aスキャンデータ群として選定する基準データ選定手段と、前記基準Aスキャンデータ群以外の前記複数組のAスキャンデータ群から生成されるBスキャン画像から、前記基準Aスキャンデータ群から生成されるBスキャン画像と相関が高い所定の枚数のBスキャン画像を特定し、特定された所定の枚数のBスキャン画像に対応する所定の組数のAスキャンデータ群を対象Aスキャンデータ群として選定する対象データ選定手段と、前記基準Aスキャンデータ群から基準Bスキャン画像を生成し、前記対象Aスキャンデータ群に含まれるAスキャンデータを、前記基準Bスキャン画像に対してそれぞれ加算平均して読影用断層画像を生成する加算平均手段と、を備える画像処理装置を提供する(発明1)。
【0012】
上記発明(発明1)によれば、対象物の略同一位置を複数回走査して得られた複数組のAスキャンデータ群を直接後続の加算平均処理の対象データとして用い、その一方で、基準Aスキャンデータ群から生成されるBスキャン画像と相関が高い所定の枚数のBスキャン画像を特定し、特定された所定の枚数のBスキャン画像に対応する所定の組数のAスキャンデータ群だけを対象Aスキャンデータ群として加算平均処理の対象とすることにより、固視微動の影響によって歪みや位置ずれが生じたAスキャンデータ群を外して加算平均処理することができるため、読影に適した高品質の加算平均断層画像を生成することが可能になる。
【0013】
上記発明(発明1)においては、前記基準データ選定手段及び前記対象データ選定手段が、Aスキャンデータ群の一部のAスキャンデータを用いてBスキャン画像を生成することが好ましい(発明2)。
【0014】
対象物の略同一位置を複数回走査して得られた複数組のAスキャンデータ群から加算平均処理の対象とする対象Aスキャンデータ群を選定する過程において使用される各Bスキャン画像は、対応するAスキャンデータ群に含まれるAスキャンデータを単に並べたものであり、それぞれのBスキャン画像は類似度判定等により相関をみることができさえすれば足りる。上記発明(発明2)によれば、Aスキャンデータ群の一部のAスキャンデータを用いてBスキャン画像を生成するため、生成されたBスキャン画像は一部が間引きされた画像になるものの、Aスキャンデータ群の全てのAスキャンデータを用いるよりもデータ処理量を抑えることができる。一部が間引きされたBスキャン画像であっても、類似度判定等により相関をみるためにはほとんどの場合で問題なく使うことができるため、最終的に得られる加算平均断層画像の画質には実質的な影響を与えずにデータ処理量を抑えることができる。
【0015】
上記発明(1,2)においては、前記加算平均手段が、前記対象Aスキャンデータ群に含まれている前記所定の組数のAスキャンデータ群のそれぞれにおいて対応する位置にあるAスキャンデータを連続して処理することが好ましい(発明3)。
【0016】
上記発明(発明3)によれば、異なる走査回数のAスキャンデータであっても、対応する位置にあるAスキャンデータは似たようなAスキャンデータである可能性が高いため、対応する位置にあるAスキャンデータを連続して処理することによりデータ処理量を減らすことができる。
【0017】
第二に本発明は、被検眼眼底の断層像を撮影する断層像撮影装置において対象物の略同一位置を複数回走査して得られた複数組のAスキャンデータ群を処理して読影用断層画像を生成する画像処理方法であって、前記複数組のAスキャンデータ群から複数枚のBスキャン画像を生成するとともにそれらを単純加算して単純加算Bスキャン画像を生成し、前記複数枚のBスキャン画像のうち前記単純加算Bスキャン画像と最も相関の高いBスキャン画像を特定し、前記最も相関の高いBスキャン画像に対応するAスキャンデータ群を基準Aスキャンデータ群として選定する基準データ選定工程と、前記基準Aスキャンデータ群以外の前記複数組のAスキャンデータ群から生成されるBスキャン画像から、前記基準Aスキャンデータ群から生成されるBスキャン画像と相関が高い所定の枚数のBスキャン画像を特定し、特定された所定の枚数のBスキャン画像に対応する所定の組数のAスキャンデータ群を対象Aスキャンデータ群として選定する対象データ選定工程と、前記基準Aスキャンデータ群から基準Bスキャン画像を生成し、前記対象Aスキャンデータ群に含まれるAスキャンデータを、前記基準Bスキャン画像に対してそれぞれ加算平均して読影用断層画像を生成する加算平均工程と、を備える画像処理方法を提供する(発明4)。
【0018】
上記発明(発明4)によれば、対象物の略同一位置を複数回走査して得られた複数組のAスキャンデータ群を後続の各処理の基準データとして用いるため、得られたAスキャンデータ群から一旦Bスキャン画像を生成して後続の各処理の基準データとして用いる場合よりもデータ処理量を抑えることができる。その一方で、基準Aスキャンデータ群から生成されるBスキャン画像と相関が高い所定の枚数のBスキャン画像を特定し、特定された所定の枚数のBスキャン画像に対応する所定の組数のAスキャンデータ群だけを対象Aスキャンデータ群として加算平均処理の対象とすることにより、固視微動の影響によって歪みや位置ずれが生じたAスキャンデータ群を外して加算平均処理することができるため、読影に適した高品質の加算平均断層画像を生成することが可能になる。
【0019】
上記発明(発明4)においては、前記基準データ選定工程及び前記対象データ選定工程において、Aスキャンデータ群の一部のAスキャンデータを用いてBスキャン画像を生成することが好ましい(発明5)。
【0020】
対象物の略同一位置を複数回走査して得られた複数組のAスキャンデータ群から加算平均処理の対象とする対象Aスキャンデータ群を選定する過程において使用される各Bスキャン画像は、対応するAスキャンデータ群に含まれるAスキャンデータを単に並べたものであり、それぞれのBスキャン画像は類似度判定等により相関をみることができさえすれば足りる。上記発明(発明5)によれば、Aスキャンデータ群の一部のAスキャンデータを用いてBスキャン画像を生成するため、生成されたBスキャン画像は一部が間引きされた画像になるものの、Aスキャンデータ群の全てのAスキャンデータを用いるよりもデータ処理量を抑えることができる。一部が間引きされたBスキャン画像であっても、類似度判定等により相関をみるためにはほとんどの場合で問題なく使うことができるため、最終的に得られる加算平均断層画像の画質には実質的な影響を与えずにデータ処理量を抑えることができる。
【0021】
上記発明(4,5)においては、前記加算平均工程において、前記対象Aスキャンデータ群に含まれている前記所定の組数のAスキャンデータ群のそれぞれにおいて対応する位置にあるAスキャンデータを連続して処理することが好ましい(発明6)。
【0022】
上記発明(発明6)によれば、異なる走査回数のAスキャンデータであっても、対応する位置にあるAスキャンデータは似たようなAスキャンデータである可能性が高いため、対応する位置にあるAスキャンデータを連続して処理することによりデータ処理量を減らすことができる。
【0023】
第三に本発明は、コンピュータを発明1から3のいずれか1つに係る画像処理装置として機能させるための、あるいはコンピュータに発明4から6のいずれか1つに係る画像処理方法を実行させるための画像処理プログラムを提供する(発明7)。
【発明の効果】
【0024】
本発明の画像処理装置、画像処理方法及び画像処理プログラムによれば、同一箇所を複数回走査して得られたAスキャンデータ群から、データ処理量を抑えつつ読影に適した高品質の断層画像を生成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように本実施形態に係る断層像撮影装置は被検眼Eの眼底を撮影対象物体とし、当該眼底の所望の領域の断層像を撮影するものである。符号10で示す部分は分波/合波光学系で、この光学系には、波長が700nm〜1100nmで数μm〜数十μm程度の時間的コヒーレンス長の光を発光する例えばスーパールミネッセントダイオード(SLD)からなる広帯域な低コヒーレンス光源11が設けられる。
【0027】
低コヒーレンス光源11で発生した低コヒーレンス光は、光量調整機構12を介して光量が調整され、光ファイバ13aにより光カプラ13に入射し、続いて光ファイバ13b、コリメートレンズ14を介して分割光学素子としてのビームスプリッタ15に導かれる。なお、光カプラ13の代わりに光サーキュレータを用いて分波、合波するようにしてもよい。
【0028】
ビームスプリッタ15に入射した光は参照光と測定光に分割される。測定光はフォーカスレンズ31に入射し、測定光が被検眼Eの眼底に合焦される。眼底にピントの合った測定光はミラー32で反射されてレンズ33を通過し、x軸走査ミラー(ガルバノミラー)34、y軸走査ミラー(ガルバノミラー)35で任意の方向に走査される。x軸、y軸走査ミラー34、35で走査された測定光は、スキャンレンズ36を通過し、ダイクロイックミラー37で反射された後、対物レンズ38を通過して眼底に入射し、眼底が測定光でx、y方向に走査される。眼底で反射された測定光は上記の経路を逆にたどってビームスプリッタ15に戻ってくる。
【0029】
このような光学系で、ビームスプリッタ15から後のフォーカスレンズ31、ミラー32、レンズ33、x軸走査ミラー34、y軸走査ミラー35、スキャンレンズ36、ダイクロイックミラー37及び対物レンズ38は、断層像撮影装置の測定光学系30を構成している。この測定光学系には、図示した光学部品以外にも適宜ミラー、レンズなどの光学部品が設けられているが、煩雑さを避けるために省略されている。
【0030】
一方、ビームスプリッタ15で分割された参照光は、ミラー41で反射された後、対物レンズ用分散補償ガラス42、レンズ43、44を通過する。その後、ミラー45で反射されて、対象物体である被検眼Eの屈折率分散を補償する被検眼分散補償ガラス50を通過した後、ダイクロイックミラー46で反射され、集光レンズ47、光量を調整する可変アパーチャ48を通過し、参照ミラー49に到達する。光路長を合わせるために集光レンズ47、可変アパーチャ48と参照ミラー49は、
図1において2重矢印で図示したように、一体で光軸方向に移動する。参照ミラー49で反射された参照光は上記の光路を逆にたどってビームスプリッタ15に戻ってくる。
【0031】
このような光学系で、ミラー41、対物レンズ用分散補償ガラス42、レンズ43、44、ミラー45、被検眼分散補償ガラス50、ダイクロイックミラー46、集光レンズ47、参照物体としての参照ミラー49は断層像撮影装置の参照光学系40を構成している。この参照光学系には、図示した光学部品以外にも適宜ミラー、レンズなどの光学部品が設けられているが、煩雑さを避けるために省略されている。
【0032】
ビームスプリッタ15に戻ってきた測定光と参照光は重畳されて干渉光となり、コリメートレンズ14、光ファイバ13b、光カプラ13を通り、光ファイバ13cを介して分光器16に入射する。分光器16は回折格子16a、結像レンズ16b、ラインセンサ16cなどを有しており、干渉光は、回折格子16aで低コヒーレンス光の波長に応じたスペクトルに分光されて結像レンズ16bによりラインセンサ16cに結像される。
【0033】
ラインセンサ16cからの信号は、コンピュータ17のCPUなどで実現される信号処理手段18でフーリエ変換を含む信号処理が行われ、眼底の深度方向(z方向)の情報を示す深さ信号が生成される。眼底の走査の各サンプリング時点での干渉光によりそのサンプリング時点での深さ信号(Aスキャンデータ)が得られる。したがって、1走査が終了すると、その走査方向に沿った複数の位置に対応する複数のAスキャンデータが取得でき、これらから二次元の断層画像(Bスキャン画像)を生成することができる。
【0034】
以下、本実施形態の説明においては、サンプリング回数がN回の走査をM回行うものとする。この場合、M回の走査は固視微動の影響を考えなければ実質的に同一の位置で行われるものである。またその走査方向は本実施形態では毎回同一方向としているが、偶数回目の走査は逆方向に走査するなどしてもよく、サンプリングの順番(走査方向)は特に限定されない。また1走査におけるサンプリング回数がN回であれば、1走査が終了するとN個のAスキャンデータが取得でき、このN個のAスキャンデータから
図2に示すようなBスキャン画像を生成することができる。このように眼底の所望の領域を走査することをM回繰り返せばN個のAスキャンデータからなるAスキャンデータ群が全部でM組生成される。それぞれのAスキャンデータ群から1枚のBスキャン画像を生成することができるので、M組のAスキャンデータ群からはM枚のBスキャン画像を生成することができる。このN×M個のAスキャンデータ群は順次コンピュータ17内のデータ記憶部19に保存される。
【0035】
図3はデータ記憶部19のデータ格納領域RへとAスキャンデータ群が保存されていく様子を示す説明図である。データ格納領域Rは縦N行、横M列のマス目状に区分されており、一つのマス目が一つのAスキャンデータを保存可能なデータ格納領域R
ij(i=1〜N,j=1〜M)に対応する。最初の走査が始まるとサンプリング毎にAスキャンデータが生成され、j回の走査(1走査あたりi回のサンプリング)により得られる各AスキャンデータをA
ij(i=1〜N,j=1〜M)と表せば、左上のデータ格納領域R
11から順にR
21、R
31、・・・R
N1へとAスキャンデータA
11、A
21、A
31、・・・A
N1がそれぞれ保存されていく。続いて2回目の走査が始まると今度は左から2番目の列一番上のデータ格納領域R
12から順にR
22、R
32、・・・R
N2へとAスキャンデータA
12、A
22、A
32、・・・A
N2がそれぞれ保存されていき、以降3回目、4回目、・・・M−1回目、と走査が順次行われ、M回目の走査では、右上のデータ格納領域R
1Mから順にR
2M、R
3M、・・・R
NMへとAスキャンデータA
1M、A
2M、A
3M、・・・A
NMがそれぞれ保存されていく。なお、本実施形態においては、j回目(j=1〜M)の走査で得られたN個のAスキャンデータA
ijからなる各Aスキャンデータ群をAG
j(j=1〜M)と表し、例えば1回目の走査で得られたAスキャンデータ群は、
図3に示すように、Aスキャンデータ群AG
1となる。
【0036】
コンピュータ17は、上述のように信号処理手段18でAスキャンデータ(群)を生成してデータ記憶部19に保存するほか、保存されたAスキャンデータ(群)を用いて読影に適した高品質の断層画像を生成する断層画像生成手段20としての機能も有する。すなわち本実施形態においてはコンピュータ17が本願発明における画像処理装置に相当する。断層画像生成手段20は、基準となるAスキャンデータ群(基準Aスキャンデータ群)を選定する基準データ選定工程と、加算平均対象となるAスキャンデータ群(対象Aスキャンデータ群)を選定する対象データ選定工程と、対象Aスキャンデータ群と基準Aスキャンデータ群とに基づいて加算平均処理を行って読影用断層画像を生成する加算平均工程とを経て、読影用断層画像を生成する。断層画像生成手段20による処理の流れを以下に説明する。
【0037】
図4は断層画像生成手段20による処理の流れを示すフロー図であり、当該処理は基準データ選定工程(S101〜105)、対象データ選定工程(S201〜203)及び加算平均工程(S301〜305)から構成される。
【0038】
まず、M回の走査を行った結果得られたM組のAスキャンデータ群AG
j(j=1〜M)からM枚のBスキャン画像B
j(j=1〜M)が生成される(S101)。このとき生成されるBスキャン画像B
jは、各組のAスキャンデータ群AG
jを構成するN個のAスキャンデータA
ij全てを用いるのではなく、2本に1本の割合で等間隔に間引いたN/2個のAスキャンデータを走査方向に並べることにより生成する。このようにAスキャンデータを間引きしてBスキャン画像生成に使用することによりデータ処理量を抑えることができる。
【0039】
Bスキャン画像を生成するためにAスキャンデータを間引きして使用する場合、必ずしも2本に1本の割合で等間隔に間引く必要はなく、例えば3本に2本の割合で等間隔に間引いてN/3個のAスキャンデータを用いることとしてもよいし、それ以外の割合で等間隔に間引いて使用してもよい。また、Bスキャン画像を生成した際に当該Bスキャン画像のどの辺りを構成するAスキャンデータであるのかを考慮して使用するAスキャンデータを決定してもよい。Bスキャン画像で最も注目したい場所は中央付近であることが多いため、例えばBスキャン画像の中央付近を構成するAスキャンデータにおいては2本に1本の割合で使用し、それ以外の場所を構成するAスキャンデータにおいては3本に1本の割合で使用する等、使用するAスキャンデータの個数を中央付近とそれ以外とで変えてもよい。あるいは、固視ずれの影響をみる場合には撮影の開始時と終了時とに注目したいため、例えばBスキャン画像の両端部及び中央付近を構成するAスキャンデータにおいては2本に1本の割合で使用し、それ以外の場所を構成するAスキャンデータにおいては3本に1本の割合で使用するようにしてもよい。
【0040】
本実施形態に係る断層画像生成手段20は、上述のように必要に応じてAスキャンデータ群を構成するN個のAスキャンデータから一部のAスキャンデータだけを採用することも、N個のAスキャンデータ全てを使用することも選択可能になっている。また、一部のAスキャンデータだけを採用する場合、どれだけのAスキャンデータを採用するのか(どれだけのAスキャンデータを間引くのか)、どのように採用するのか(どのように間引くのか)も自由に設定可能になっている。
【0041】
M枚のBスキャン画像B
j(j=1〜M)が生成されたあと、これらM枚のBスキャン画像B
jを単純加算して1枚の単純加算Bスキャン画像B
Aが生成される(S102)。続いて、この単純加算Bスキャン画像B
Aに対するM枚のBスキャン画像B
jそれぞれの類似度を算出し、どのBスキャン画像B
jの類似度が高いか比較する(S103)。この類似度を示す評価関数として、例えば数1に示した相関係数を用いることができる。
【0043】
ここで、B(k)は画素値の集合(画素数n)、B(上に横線)は画素値の平均である。なお、各画像B
jとの類似度は各画像を平行移動、回転、拡大縮小して単純加算Bスキャン画像B
Aとの位置合わせを行って相関関数を求めることにより行われるが、位置合わせを行わず相関関数を求めるようにしてもよい。また、類似度は相関係数ではなく、各画像B
jと単純加算Bスキャン画像B
Aとの対応する画素値の差(位置ずれ量)を用いて算出することもできる。また、相関係数あるいは位置ずれ量は画像全体で求めてもよいし、その一部領域(例えば病変部、特徴部のある領域)で求めるようにしてもよい。
【0044】
各Bスキャン画像B
jについて求められた単純加算Bスキャン画像B
Aに対する類似度を比較し、類似度が最も高いBスキャン画像が選定Bスキャン画像B
Sとして特定される(S104)。さらに、選定Bスキャン画像B
Sに対応するAスキャンデータ群、すなわち選定Bスキャン画像B
Sの生成元であるAスキャンデータ群が基準Aスキャンデータ群AG
Sとして選定される(S105)。
【0045】
続いて、選定Bスキャン画像B
Sに対する、選定Bスキャン画像B
S以外のM−1枚のBスキャン画像の類似度を算出し、どのBスキャン画像の類似度が高いか比較する(S201)。この類似度の算出は上述の選定Bスキャン画像B
Sを特定する工程S103及びS104と同様に行うことができる。
【0046】
比較の結果、選定Bスキャン画像B
Sに対する類似度が高い順にm枚(m<M)のBスキャン画像を特定し(S202)、このm枚のBスキャン画像に対応するAスキャンデータ群、すなわちこれらm枚のBスキャン画像の生成元であるm組のAスキャンデータ群が対象Aスキャンデータ群AG
Tk(k=1〜m)として選定される(S203)。対象Aスキャンデータ群AG
Tk(k=1〜m)とは後続の加算平均工程で加算対象とされるAスキャンデータ群である。例えばサンプリング回数:N=1,800、走査回数:M=100、加算対象組数:m=30であるとすると、データ記憶部19に保存された1,800×100=180,000個のAスキャンデータからなるデータ集合体を、1,800×30=54,000個のAスキャンデータからなるデータ集合体にまで減縮し、この54,000個のAスキャンデータを加算平均処理の対象とすることになる。
【0047】
なお、対象Aスキャンデータ群AG
Tkの選定においては、単に類似度の高い順にBスキャン画像を特定するのではなく、事前に所定の類似度閾値を設けておき、その閾値を超える類似度を有するBスキャン画像を全て抽出し、抽出したBスキャン画像の生成元であるAスキャンデータ群を全て対象Aスキャンデータ群AG
Tkとして選定する方法を採用してもよい。
【0048】
ここまでの基準データ選定工程(S101〜105)及び対象データ選定工程(S201〜203)においては、M回の走査によって得られたM組のAスキャンデータ群AG
j(j=1〜M)のうち、どのデータ群を加算平均処理の基準となる基準Aスキャンデータ群AG
Sとするのか、どのデータ群を加算平均処理に使用される対象Aスキャンデータ群AG
Tk(k=1〜m)とするのかを選定している。言い換えると、加算平均処理の基準となる基準Aスキャンデータ群AG
Sや加算平均処理に使用される対象Aスキャンデータ群AG
Tkが、M回行った走査のうち何回目の走査で得られたAスキャンデータ群なのか、を決定していることになる。
【0049】
したがって、ここまでの工程で生成されたBスキャン画像は、いずれも基準Aスキャンデータ群AG
S及び対象Aスキャンデータ群AG
Tkの選定のためだけに用いられる画像であり、これ以降の加算平均工程(S301〜305)には用いられない。このような目的のために類似度判定等により相関をみるのであれば、一部が間引きされたBスキャン画像であっても問題なく使うことができ、最終的に得られる加算平均断層画像の画質には実質的な影響を与えずにデータ処理量を抑えることができる。
【0050】
続いて、基準Aスキャンデータ群AG
Sを構成するN個のAスキャンデータ全てを用いて1枚の基準Bスキャン画像T
Rが生成される(S301)。このとき生成される基準Bスキャン画像T
Rは、後続の加算平均処理の基準となる画像であり、対象Aスキャンデータ群AG
Tk(k=1〜m)に含まれる各AスキャンデータA
Tを、位置ずれ補正を行いながら基準Bスキャン画像T
Rに対して加算平均していくことにより、読影用断層画像を生成する。各Aスキャンデータ群はN個のAスキャンデータから構成されているため、加算対象となるAスキャンデータA
Tは全部でN×m個ある。以降、k組目の対象Aスキャンデータ群AG
Tk(k=1〜m)を構成するi番目にサンプリングされた加算対象AスキャンデータA
Tik(i=1〜N、k=1〜m)を位置ずれ補正しながら基準Bスキャン画像T
Rに対して加算平均していく流れを説明する。
【0051】
まず始めに
図5に示すように、加算対象AスキャンデータA
Tikを選定し、当該加算対象Aスキャンデータの中で位置合わせに使用される部分となるEを設定する(S302)。この場合、Eは、眼底の深さ方向の網膜組織が撮影されている領域のデータを含むように例えば300画素分の高さで設定される。
【0052】
一方、基準Bスキャン画像T
Rには、加算対象AスキャンデータのEの部分との相関を評価するために、前述のEを中心として、その周辺部分を含むように、例えば幅31画素×高さ400画素の探索領域Fが設定される(S303)。そして、加算対象Aスキャンデータと、基準Bスキャン画像T
Rの探索領域F内で、相関値が最大となるようにx、z方向にずらして加算対象Aスキャンデータの補正位置を基準Bスキャン画像T
Rの中から探索する。そして相関値が最大となるようなずれ量を求めることにより、加算対象AスキャンデータA
Tikの基準Bスキャン画像T
Rに対するx、z方向の位置ずれ量Δx、Δzが算出される(S304)。相関値の計算は例えば数1の式と同様の式を用いることができる。
【0053】
このように、x、z方向の位置ずれ量Δx、Δzを求めたら、基準Bスキャン画像T
Rに対して加算対象AスキャンデータA
Tikを位置ずれ量Δx、Δz分だけx、z方向にずらすことにより位置ずれを補正し、当該加算対象AスキャンデータA
Tikを基準Bスキャン画像T
Rに加算平均していく(S305)。
【0054】
以上のS302からS305までの工程を、対象Aスキャンデータ群AG
Tkを構成する全てのAスキャンデータ(N×m個)について繰り返し、全てのAスキャンデータについて加算平均処理が終了すると、読影用断層画像が完成される。
【0055】
なお、対象Aスキャンデータ群AG
Tkを構成するAスキャンデータについて位置ずれ補正及び加算平均の処理を繰り返していくとき、次のような順番で処理を繰り返すことによりデータ処理量を更に抑えることが可能となる。
【0056】
加算平均対象となるのは全部でm組のAスキャンデータ群である。ここで、k組目の対象Aスキャンデータ群AG
Tkを構成するi番目にサンプリングされた加算対象AスキャンデータA
Tikを位置ずれ補正して加算平均した後、k組目の対象AスキャンデータA
Tikの次にサンプリングされた隣に位置する加算対象AスキャンデータA
T(i+1)kを次の位置ずれ補正対象とするのではなく、k+1組目の対象Aスキャンデータ群AG
T(k+1)において、たったいま処理された加算対象AスキャンデータA
Tikに対応する位置にある加算対象AスキャンデータA
Ti(k+1)を次の位置ずれ補正対象とした方が、探索領域の設定を変えずに済むので、データ処理量を抑えることができる。
【0057】
図6を用いて説明すると、例えば2組の加算平均対象となるAスキャンデータ群AG及びAG´があり、それぞれ20個のAスキャンデータから構成されているとする。Aスキャンデータ群AGを構成するAスキャンデータはA1〜A20、Aスキャンデータ群AG´を構成するAスキャンデータはA1´〜A20´である。Aスキャンデータ群AG及びAG´からは対象Bスキャン画像T及びT´をそれぞれ生成することができる。
【0058】
ここで、現在位置ずれ補正及び加算平均処理しているAスキャンデータがAスキャンデータ群AGのA4であったとき、
図6(a)では、次に処理するAスキャンデータを、対象Bスキャン画像Tにおいて処理中のA4の隣に位置しているA5としている。A5の次はA6、A6の次はA7と、対象Bスキャン画像Tを構成するAスキャンデータを走査方向に順番に処理していく。一方、
図6(b)では、Aスキャンデータ群AGのA4を処理した後、次はAスキャンデータ群AG´(対象Bスキャン画像T´)においてA4に対応する位置にあるAスキャンデータであるA4´を処理し、その次に再びAスキャンデータ群AGに戻ってA5、A5の次はA5´と、Aスキャンデータ群を飛び越えて対応する位置にあるものをまとめて処理していく。このように対応する位置にあるAスキャンデータを一気に処理した方が、似たようなAスキャンデータを連続して位置合わせすることになるため、データ処理量を減らすことができる。また、処理するAスキャンデータが変わるたびに基準Bスキャン画像T
Rに探索領域を設定し直す必要がなくなることも大幅なデータ処理量の抑制につながる。
【0059】
このように、本実施形態に係る画像処理装置によれば、同一箇所を複数回走査して得られたAスキャンデータ群から、データ処理量を抑えつつ読影に適した高品質の断層画像を生成することができる。本実施形態においては、複数回の走査によって得られたAスキャンデータ群から断層画像(Bスキャン画像)を複数枚生成し、それら断層画像を元にして加算平均処理を行っていくのではなく、あくまでも複数回の走査によって得られたAスキャンデータ群をそのまま保存し、これらAスキャンデータ群を元にして加算平均処理を行っているのが大きな特徴である。これにより、得られたAスキャンデータ群から一旦Bスキャン画像を生成し、そのBスキャン画像を後続の各処理の基準データとして用いるよりもデータ処理量を抑えることができる。
【0060】
以上、本発明に係る断層像撮影装置について図面に基づいて説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、種々の変更実施が可能である。
【0061】
例えば、上記実施形態においては、基準Bスキャン画像T
Rに探索領域Fを設定し、加算対象AスキャンデータA
Tikのうちの一部であるEを探索領域Fに位置合わせすることにより加算対象Aスキャンデータの位置ずれ量を算出し、当該位置ずれ量を補正して加算平均する手法を採用しているが、位置合わせや加算平均処理の手法はこれに限られるものではない。例えば、特許文献5に開示されているように加算対象AスキャンデータA
Tikを中心にして評価領域を設定して、加算対象Aスキャンデータの位置合わせを前後のAスキャンデータと合わせて探索領域との相関値を評価して探索領域に位置合わせしてもよい。あるいは、非特許文献1に開示されているように基準Bスキャン画像T
Rに探索領域Fを設定することなく、基準Bスキャン画像T
Rを構成する各Aスキャンデータに対して直接加算対象AスキャンデータA
Tik1本1本を位置合わせしてもよい。この場合、評価領域の設定や、基準Bスキャン画像T
Rに探索領域Fを設定する工程などを省くことができるとともに、評価領域を探索領域Fに位置合わせして得られた位置ずれ量を用いて加算対象AスキャンデータA
Tikの位置ずれ補正を行う必要もなくなるため、最終的に得られる読影用断層画像の画質はやや落ちる場合はあるものの、実質的には十分な画質が得られる上に、データ処理量を大きく減少させることができ、読影用断層画像を作成する時間を大幅に短縮することができる。