(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記開口は、前記第2筒状部から前記第2板状部に亘って形成されており、当該開口を介して、前記キャップにおける前記筒状部と前記板状部との交差部を手指で把持可能である請求項2又は3に記載のシリンジ装置。
液剤が充填されているとともに内部にガスケットが配置されているプレフィルドシリンジと、前記プレフィルドシリンジが内部に装着されるシリンジシールドと、硬質樹脂により構成され前記シリンジシールドの基端部に装着される筒状部と前記筒状部の基端部に設けられた板状部と前記板状部を貫通している挿通孔とを有するキャップと、前記キャップの挿通孔を通して前記プレフィルドシリンジ内に挿入されて先端部が前記ガスケットに連結されるプランジャーロッドと、を備えるシリンジ装置の前記キャップに対して着脱可能に装着されるキャップカバーであって、
当該キャップカバーは硬質樹脂により構成され、
前記キャップの前記筒状部に着脱可能に外嵌される第2筒状部と、
前記第2筒状部の基端部に設けられた第2板状部と、
当該キャップカバーが前記キャップに装着された状態で、前記第2板状部から基端側に延びるとともに、前記プランジャーロッドをガイドするスリーブと、
を有するキャップカバー。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0015】
図1は実施形態に係るシリンジ装置100を示す図であり、中心線Cを境界とする左半部は側面形状を示し、右半部は側断面形状を示している。
本実施形態に係るシリンジ装置100は、液剤(例えば放射性医薬品10)が充填されているとともに内部にガスケット11が配置されているプレフィルドシリンジ12と、プレフィルドシリンジ12が内部に装着されるシリンジシールド13と、キャップ20と、を備えている。
キャップ20は、シリンジシールド13の基端部に装着される筒状部21と、筒状部21の基端部に設けられた板状部22と、板状部22を貫通している挿通孔23と、を有する。
シリンジ装置100は、更に、キャップ20の挿通孔23を通してプレフィルドシリンジ12内に挿入されて先端部42がガスケット11に連結されるプランジャーロッド40と、キャップ20に対して着脱可能に装着されるキャップカバー30と、を備えている。
キャップカバー30は、キャップ20よりも基端側に延びているとともにプランジャーロッド40をガイドするスリーブ33を有する。
そして、キャップ20及びキャップカバー30の双方が硬質樹脂により構成されている。
【0016】
よって、プランジャーロッド40をスリーブ33によってガイドすることができるため、プランジャーロッド40の傾きを抑制することができる。
さらに、キャップ20及びキャップカバー30の双方が硬質樹脂により構成されているため、キャップ20に対してキャップカバー30が装着された状態で、キャップ20に対するキャップカバー30の傾きを抑制することができる。このため、キャップカバー30のスリーブ33によって、プランジャーロッド40をより安定的にガイドすることができる。
したがって、プランジャーロッド40の傾きを抑制しつつ、プランジャーロッド40をプレフィルドシリンジ12内に挿入して、プランジャーロッド40をガスケット11に対して適切に装着することが一層容易となる。
【0017】
以下、シリンジ装置100の構成についてより詳細に説明する。
【0018】
シリンジシールド13は、鉛合金、タングステン合金、又はタンタル合金などの放射線遮蔽材を含んで構成された筒状の容器であり、当該シリンジシールド13の内部にプレフィルドシリンジ12が挿入されることによって、当該プレフィルドシリンジ12を覆う。すなわち、シリンジシールド13は、放射線遮蔽材を含んで構成されているとともにプレフィルドシリンジ12を覆う筒状に形成されている。
シリンジシールド13の先端には開口14が形成されており、後端部(基端部)には翼状部15が形成されている。翼状部15は、シリンジ装置100を使用する術者が人差し指と中指を係止する係止部となる。翼状部15よりもさらに後端側(基端側)には、キャップ20の雌ネジ24と螺合する雄ネジ16が形成されている。シリンジシールド13の側面には窓17が形成されている。窓17には放射線遮蔽材である鉛ガラスにより構成された窓ガラス18が嵌め込まれ、さらに窓ガラス18の表側にはポリカーボネート等の樹脂により構成されたガラスカバー19が設けられ、窓ガラス18を保護している。
【0019】
プレフィルドシリンジ12は、例えばガラス製であり、当該プレフィルドシリンジ12の内部には予め放射性医薬品10が充填されている。さらに、プレフィルドシリンジ12の内部には、ガスケット11が収容されている。
プレフィルドシリンジ12の先端部51は、シリンジシールド13の先端の開口14から外部に露出している。プレフィルドシリンジ12の先端部51には注射針(不図示)が取り付けられる。
プレフィルドシリンジ12の後端(基端)には、シリンジシールド13の後端部に係止される拡径部52が形成されている。
【0020】
プランジャーロッド40は、直線状の棒状の本体部41と、本体部41の先端部に設けられた雄ネジ形状の先端部42と、を有している。プランジャーロッド40は、先端部42側からプレフィルドシリンジ12に挿通され、先端部42がガスケット11と螺合することによって、ガスケット11に連結される。本体部41の後端には、フランジ状のプランジャーフランジ43が形成されている。術者が親指でプランジャーフランジ43を押圧することで、ガスケット11により放射性医薬品10をプレフィルドシリンジ12の先端から押し出すことができるようになっている。
【0021】
ガスケット11は、フッ素ゴム等のエラストマーにより構成されている。ガスケット11は、その外径が、プレフィルドシリンジ12の内径と同等とされており、プレフィルドシリンジ12の内部に挿入(圧入)されている。ガスケット11の外周面は、全周に亘り、プレフィルドシリンジ12の内周面に対して密着している。
ガスケット11は、基端側に開口する雌ネジ形状に形成されており、ガスケット11に対してプランジャーロッド40の先端部42を螺合させることによって、ガスケット11に対してプランジャーロッド40が連結されるようになっている。
図1には、プランジャーロッド40がガスケット11に連結された状態を示している。
ガスケット11が先端部42に連結されたプランジャーロッド40をプレフィルドシリンジ12に対して相対的に移動させることにより、ガスケット11の外周面がプレフィルドシリンジ12の内周面に対して密着したまま、ガスケット11がピストンとしてプレフィルドシリンジ12に対して相対的に移動し、放射性医薬品10をプレフィルドシリンジ12から押し出すことができるようになっている。
【0022】
図2(a)〜
図2(c)に示すように、キャップ20は、円筒状の筒状部21と、筒状部21の軸心に対して直交する板状に形成されているとともに筒状部21の基端部に設けられた板状部22と、を有している。キャップ20は、例えば、当該キャップ20の全体が硬質樹脂材料により一体成形されている。
板状部22には、当該板状部22の中央を貫通する挿通孔23が形成されている。筒状部21の内周には雌ネジ24が形成されている。
筒状部21の外周面には、筒状部21の軸方向に対して平行に延在する複数のリブが一定間隔で形成されることにより構成された凹凸形状部26が形成されている。筒状部21の先端側の外周面には、筒状部21において凹凸形状部26が形成されている部分よりも僅かに大径のフランジ部27が形成されている。なお、フランジ部27は、キャップカバー30の筒状部31の内径よりも僅かに大径に形成されており、筒状部31をキャップ20に外嵌した際に、筒状部31の端部がフランジ部27に突き当たるようになっている。
また、凹凸形状部26を構成するリブは、断面山型のように、キャップ20を筒状部31に圧入するのに適した形状であることが好ましい。
図2(c)に示すように、板状部22の内面側には、リング状の凹部28が形成されている。この凹部28には、
図1に示すように、ドーナツ状の板状に形成された遮蔽体25が保持されていても良い。遮蔽体25は、鉛合金、タングステン合金、又はタンタル合金などの放射線遮蔽材により構成されている。遮蔽体25は、凹部28に嵌め込み固定されていても良いし、インサート成形によりキャップ20と一体成形されていてもよい。
【0023】
キャップ20には、印刷等の文字記載により、製品名・製品種別・放射能量等の情報が付されていてもよい。すなわち、放射性医薬品10の製造者が、予め製品名・製品種別・放射能量等の情報をキャップ20に記載して出荷することができる。また、放射性医薬品10の使用者が使用する際、プランジャーロッド40を取り付ける前に、投与のための患者情報をキャップ20に記載して使用することができる。患者情報とは、例えば、患者名、患者の性別、患者の年齢、ID番号、病室番号、病名、症状などであり、これらを単独で、あるいは組み合わせて表示することができる。
また、キャップ20は、例えば、予め定められた複数色の中から選択された色(青色等)に着色されており、キャップ20の色に応じて、プレフィルドシリンジ12内の放射性医薬品10の種類や用量などを判別できるようになっていても良い。
【0024】
図3(a)〜
図3(d)に示すように、キャップカバー30は、円筒状の筒状部31(第2筒状部)と、筒状部31の軸心に対して直交する板状に形成されているとともに筒状部31の基端部に設けられた板状部32(第2板状部)と、円管状のスリーブ33と、を有している。スリーブ33は、筒状部31と同軸に配置され、板状部32から基端側に延びている。
板状部32の中央には、スリーブ33の内径と同等の内径を有する開口が形成されており、スリーブ33の内部空間は、板状部32の開口を介して、筒状部31の内部空間と連通している。
キャップカバー30の筒状部31の内径は、キャップ20の筒状部21の外径と同等に設定されており、筒状部31をキャップ20に外嵌することによって、キャップカバー30をキャップ20に対して着脱可能に装着されるようになっている。
このように、キャップカバー30は、キャップ20に着脱可能に外嵌される第2筒状部(筒状部31)と、第2筒状部の基端部に設けられた第2板状部(板状部32)と、を備え、スリーブ33は、第2板状部から基端側に延びている。
【0025】
キャップカバー30には、当該キャップカバー30の内外を貫通する開口34が設けられている。これにより、
図1に示すようにキャップカバー30がキャップ20に装着された状態において、キャップ20の一部分が開口34を介して外部に臨んだ状態となるため、開口34を介してキャップ20の一部分を手指で把持可能である。
【0026】
このように、本実施形態に係るキャップカバー30は、液剤が充填されているとともに内部にガスケット11が配置されているプレフィルドシリンジ12と、プレフィルドシリンジ12が内部に装着されるシリンジシールド13と、硬質樹脂により構成されシリンジシールド13の基端部に装着される筒状部21と筒状部21の基端部に設けられた板状部22と板状部22を貫通している挿通孔23とを有するキャップ20と、キャップ20の挿通孔23を通してプレフィルドシリンジ12内に挿入されて先端部42がガスケット11に連結されるプランジャーロッド40と、を備えるシリンジ装置のキャップ20に対して着脱可能に装着されるキャップカバー30であって、当該キャップカバー30は硬質樹脂により構成されているとともに、プランジャーロッド40をガイドするスリーブ33と、当該キャップカバー30がキャップ20に装着された状態でキャップ20を手指で把持可能にするための開口34と、を有する。
【0027】
開口34の数および形状は特に限定されないが、キャップカバー30には、筒状部31(第2筒状部)の軸心を挟んで対向配置されている一対の開口34が形成されていることが好ましい。これにより、2本の指の各々によって直にキャップ20の一部分を把持することが可能である。
【0028】
開口34は、例えば、筒状部31(第2筒状部)から板状部32(第2板状部)に亘って形成されている。これにより、キャップ20における筒状部31と板状部32との交差部が、開口34を介して外部に臨んだ状態となるため、開口34を介して、キャップ20における筒状部31と板状部32との交差部を手指で把持可能である。つまり、キャップ20における角の部分を指で把持することができるため、キャップ20を把持する指からキャップ20が滑り落ちてしまうことをより好適に抑制できる。
【0029】
キャップカバー30は可視光透過性の透過部を含んで構成されており、キャップカバー30がキャップ20に装着された状態において、透過部を介してキャップ20を透視可能であることが好ましい。本実施形態の場合、キャップカバー30は、その全体が、半透明又は透明の樹脂により一体成形されている。これにより、キャップ20にキャップカバー30が装着された状態で、キャップカバー30を介してキャップ20を視認することができるので、キャップ20に付された情報を判読したり、キャップ20の色を識別したりすることが可能となる。
【0030】
上述のように、キャップ20及びキャップカバー30の双方は、硬質樹脂により構成されている。ここで、硬質樹脂とは、特許文献3にキャップの材料として記載されているようなエラストマーよりも高硬度の樹脂材料である。
キャップ20の材料とキャップカバー30の材料とは、互いに同種であってもよいし、異種であってもよい。
本実施形態の場合、キャップ20は、所定の色に着色されているのに対し、キャップカバー30は半透明又は透明の樹脂により構成されている。
キャップ20及びキャップカバー30を構成する硬質樹脂材料は、特に限定されないが、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。好ましい一例として、キャップ20をABS樹脂により構成し、キャップカバー30をポリカーボネートにより構成することができる。
キャップ20及びキャップカバー30を構成する硬質樹脂材料の硬度は、互いに同等であってもよいし、キャップ20の硬度の方が高くても良いし、キャップカバー30の硬度の方が高くても良い。
なお、キャップ20の硬度がキャップカバー30の硬度よりも大きいことが好ましい一例であり、このようにすることにより、キャップカバー30が装着される土台となるキャップ20の形状安定性が高まるため、キャップ20の弾性変形に起因するスリーブ33の変位量を抑制できる。よって、キャップカバー30のスリーブ33によりガイドされるプランジャーロッド40の傾斜をさらに好適に抑制することが可能となる。
キャップ20及びキャップカバー30を構成する硬質樹脂材料の硬度は、特に限定されないが、スケールRでのロックウェル硬さを30以上125以下とすることができ、キャップカバー30については、好ましくは、スケールMでのロックウェル硬さを70以上とすることもできる。
また、キャップ20及びキャップカバー30を構成する硬質樹脂材料のヤング率は、500MPa以上10000MPa以下とすることができ、好ましくは1000MPa以上とすることができる。
【0031】
ここで、シリンジ装置100の各部の寸法は、特に限定されないが、例えば、以下のように設定することができる。
キャップ20の挿通孔23の内径は、プランジャーロッド40の本体部41の外径(最大外径)よりも若干大きい寸法、または本体部41の外径と同等の寸法とすることができる。
キャップカバー30のスリーブ33の内径は、プランジャーロッド40の本体部41の外径(最大外径)よりも若干大きい寸法、または本体部41の外径と同等の寸法とすることができる。
なお、スリーブ33の内径は、挿通孔23の内径よりも若干小さくすることができ、このようにすることにより、スリーブ33によってプランジャーロッド40をより安定的にガイドし、プランジャーロッド40の傾斜をより好適に抑制することが可能となる。
また、開口34の幅(筒状部31の軸方向に対して直交する方向における寸法)は、例えば、10mm以上20mm以下とすることができる。また、開口34の長さ(筒状部31の軸方向における寸法)は、例えば、5mm以上15mm以下とすることができる。
また、キャップカバー30の筒状部31の内腔は、円柱形状であってもよいし、板状部32から遠ざかるにつれて僅かに拡がるテーパー形状(つまり円錐台形状)に形成されていても良い。後者の場合、筒状部31に対してキャップ20をより深く圧入するほど、筒状部31の内周面に対してキャップ20の外周面を強く密着させることが可能となる。
【0032】
次に、
図4を用いて、シリンジ装置100の搬送時にシリンジ装置100を収容する搬送容器60の例について説明する。
【0033】
搬送容器60は、例えば、有底筒状の本体部61と、本体部61の上端部に装着されて本体部61の上端開口を閉塞する蓋部62と、を備えて構成されている。搬送容器60は、本体部61の底面が水平な載置面上に載置されることによって自立可能となっている。
【0034】
図4及び
図5に示すように、本体部61は、樹脂製の外筐体63及び内筐体64と、外筐体63と内筐体64との間に介装された鉛製部材65と、を備えて構成されている。なお、
図4においては内筐体64についてハッチングを省略している。
内筐体64の内部空間は、シリンジ装置100が差し込まれることにより該シリンジ装置100を収容する収容空間66を構成している。
図5に示すように、収容空間66の形状は、シリンジ装置100におけるシリンジシールド13、窓ガラス18及びガラスカバー19を含む外殻部分の形状と対応する形状となっており、収容空間66にシリンジ装置100が差し込まれた状態において、本体部61に対するシリンジ装置100の回転が規制されるようになっている。すなわち、収容空間66の平断面形状は、シリンジ装置100におけるシリンジシールド13、窓ガラス18及びガラスカバー19を含む外殻部分の平断面形状と対応する非円形形状(例えば、
図5に示すような鍵穴状の形状)となっている。
【0035】
図4に示すように、蓋部62は、外筐体67と、外筐体67内に収容されている鉛製部材68と、を備えて構成されている。
本体部61の外筐体63の上端部は雄ネジ形状に形成されており、蓋部62の外筐体67は本体部61の上端部と螺合する雌ネジ形状に形成されている。本体部61の外筐体63の上端部に対して蓋部62の外筐体67を螺合させて装着することによって、搬送容器60を密閉し、搬送容器60内の外部に放射線が漏洩することが鉛製部材65、68によって抑制される。
【0036】
シリンジ装置100の搬送時には、
図4に示すように、シリンジ装置100においてプランジャーロッド40とキャップカバー30とを除く部分が相互に組み付けられた状態で、搬送容器60内に収容される。
なお、シリンジ装置100においてプランジャーロッド40とキャップカバー30とを除く部分の組み付けは、以下のようにして行うことができる。
先ず、予め内部に放射性医薬品10が充填され且つガスケット11が内部に配置されているプレフィルドシリンジ12を、シリンジシールド13の基端側から当該シリンジシールド13内に挿入する。
次に、シリンジシールド13の基端部の雄ネジ16に対して、キャップ20の筒状部21を螺合させることにより、シリンジシールド13に対してキャップ20を装着する。この際に、プレフィルドシリンジ12の拡径部52は、キャップ20の板状部22によって先端側に押圧されて、キャップ20とシリンジシールド13の基端とにより挟持される。より詳細には、拡径部52は、例えば、遮蔽体25を介して、キャップ20とシリンジシールド13の基端とにより挟持される。これにより、シリンジシールド13に対してプレフィルドシリンジ12が軸周りに回転することが規制される。
こうして、シリンジ装置100においてプランジャーロッド40とキャップカバー30とを除く部分が相互に組み付けられた状態とすることができる。
シリンジ装置100においてプランジャーロッド40とキャップカバー30とを除く部分が本体部61の収容空間66に挿入された状態では、プレフィルドシリンジ12及びシリンジシールド13の先端側が下方側(収容空間66の奥側)に位置し、キャップ20が上方に位置する。そして、キャップ20の挿通孔23が本体部61の外部に臨んだ状態となっている。
なお、シリンジ装置100の使用前の段階では、
図4に示すように、プレフィルドシリンジ12の先端部51には、フッ素樹脂等のエラストマーにより構成された先端キャップ71が装着されている。
【0037】
また、シリンジ装置100におけるプランジャーロッド40、キャップカバー30及び注射針(不図示)は、別添えの包装袋等に収容されて搬送される。
【0038】
次に、シリンジ装置100を使用するためにキャップカバー30及びプランジャーロッド40を装着する作業について説明する。
【0039】
先ず、搬送容器60の本体部61から蓋部62を取り外し、別添えの包装袋から取り出したキャップカバー30をキャップ20に対して装着する。この状態で、キャップカバー30のスリーブ33とキャップ20の挿通孔23とが同軸上に配置される。
次に、別添えの包装袋から取り出したプランジャーロッド40を、キャップカバー30のスリーブ33及びキャップ20の挿通孔23を通してプレフィルドシリンジ12内に挿入し、当該プランジャーロッド40の先端部42をプレフィルドシリンジ12内のガスケット11に対して螺合させて装着する。すなわち、プランジャーロッド40をプレフィルドシリンジ12に差し込んで軸周りに回転させることによって、先端部42をガスケット11に螺合させる。
【0040】
ここで、プランジャーロッド40をプレフィルドシリンジ12に差し込む際には、プランジャーロッド40の棒状の本体部41を、キャップカバー30のスリーブ33によりガイドしつつ、プレフィルドシリンジ12に対して安定的にまっすぐ挿入することができる。よって、プランジャーロッド40の傾きを抑制しつつ、プランジャーロッド40をプレフィルドシリンジ12内のガスケット11に対して適切に装着することが容易となる。
より詳細には、本体部41をスリーブ33とキャップ20の挿通孔23とによってそれぞれガイドすることができる。なお、プランジャーロッド40の本体部41のうち、当該本体部41の軸方向において互いに位置が異なる2箇所をそれぞれスリーブ33とキャップ20の挿通孔23とによってガイドすることができるため、プランジャーロッド40の安定性をさらに向上することができる。
また、上述のように、キャップ20及びキャップカバー30の双方が硬質樹脂により構成されているため、キャップ20及びキャップカバー30の変形が抑制される。よって、スリーブ33及び挿通孔23によってプランジャーロッド40を高精度にガイドすることが可能となる。特に、キャップカバー30が装着される土台となるキャップ20の形状安定性を確保できるため、キャップ20の弾性変形に起因するスリーブ33の変位量を抑制でき、スリーブ33によりガイドされるプランジャーロッド40の傾斜を好適に抑制できる。
なお、キャップカバー30をキャップ20に対して後付けで装着できるため、既存のシリンジ装置100におけるキャップカバー30以外の部分(キャップ20等)の設計を変更することなく、本実施形態のようにキャップ20にキャップカバー30を装着してプランジャーロッド40の差し込み安定性を向上させることが可能となる。
【0041】
また、上述のように、プレフィルドシリンジ12の拡径部52がキャップ20とシリンジシールド13の基端とにより挟持されて、シリンジシールド13に対するプレフィルドシリンジ12の軸回転が規制されている。また、エラストマーにより構成されたガスケット11がプレフィルドシリンジ12の内周面に対して密着している。このため、プランジャーロッド40を軸回転させて先端部42をガスケット11に螺合させる際に、ガスケット11がプレフィルドシリンジ12に対して回転すること、並びに、プレフィルドシリンジ12がシリンジシールド13に対して回転することが規制される。
また、上述のように、収容空間66の形状は、シリンジ装置100におけるシリンジシールド13、窓ガラス18及びガラスカバー19を含む外殻部分の形状となっており、本体部61に対するシリンジ装置100の回転が規制される。
このため、プランジャーロッド40のみを手で保持して該プランジャーロッド40を軸回転させることによって、容易に、先端部42をガスケット11に対して螺合させることができる。
【0042】
次に、プレフィルドシリンジ12の先端部51に注射針(不図示)を装着するために、シリンジ装置100を本体部61から取り出す。この際には、キャップカバー30の開口34を介してキャップ20を把持してシリンジ装置100を持ち上げることができる。すなわち、キャップ20に対して単に嵌合しているだけのキャップカバー30ではなく、シリンジシールド13に対して螺合により一体化しているキャップ20を引っ張り上げることによって、シリンジ装置100の全体を持ち上げることができる。シリンジ装置100のシリンジシールド13は鉛等の高比重の材料に構成されているためある程度の重量を有しているが、このようにキャップ20を引っ張り上げてシリンジ装置100の全体を持ち上げることによって、より確実に、シリンジ装置100の全体を持ち上げることができる。
そして、シリンジ装置100の全体を持ち上げた状態で、プレフィルドシリンジ12の先端部51から先端キャップ71を取り外し、先端部51に対して注射針を挿入固定する。
【0043】
その後、放射性医薬品10を生体(患者等)に投与する際には、プランジャーロッド40をプレフィルドシリンジ12に対して相対的に先端側に押し込むことにより、ガスケット11を先端側に移動させ、プレフィルドシリンジ12の先端部51及び注射針を介して放射性医薬品10を注出する。
なお、上述のように、プランジャーロッド40の傾きを抑制しつつ、プランジャーロッド40をガスケット11に対して適切に装着することが容易であるため、ガスケット11とプレフィルドシリンジ12の内周面との間に隙間が生じることが抑制される。よって、放射性医薬品10の注出時において、ガスケット11から基端側への放射性医薬品10の漏洩が抑制される。
特に、プレフィルドシリンジ12における放射性医薬品10の充填量が多い場合には、ガスケット11と挿通孔23との距離が近くなるため、プレフィルドシリンジ12に対する挿入時にプランジャーロッド40の傾きが生じやすくなる。プランジャーロッド40が傾いた状態で、強制的にガスケット11を押し込むことにより、ガスケット11から放射性医薬品10が液漏れするという問題も生じうる。一方、本実施形態によれば、プレフィルドシリンジ12における放射性医薬品10の充填量が多い場合(例えば、プレフィルドシリンジ12の容量に対し、放射性医薬品10の液量が80%以上ある場合)であっても、プランジャーロッド40をプレフィルドシリンジ12に対して安定的にまっすぐに挿入することが容易となり、プランジャーロッド40の傾斜が抑制されるため、より確実に液漏れの発生を防ぐことが可能になる。つまり、キャップカバー30のスリーブ33によって、プレフィルドシリンジ12に対するプランジャーロッド40の挿入時におけるプランジャーロッド40の姿勢(挿入方向)を矯正することができ、医療従事者の使用上の安全性がより向上する。
【0044】
なお、プランジャーロッド40の基端部にはプランジャーフランジ43が形成されており、プランジャーフランジ43の外径はスリーブ33の内径よりも大径に設定されている。このため、プレフィルドシリンジ12に対するプランジャーロッド40の押し込み動作は、プランジャーフランジ43がスリーブ33の基端に当接することにより停止する。
このため、スリーブ33の長さを適切に設定することにより、シリンジ装置100を用いた放射性医薬品10の投与量を規制するとともに、プレフィルドシリンジ12内に所定量の放射性医薬品10を残留させることも可能となる。
【0045】
そこで、スリーブ33の長さが互いに異なる複数のキャップカバー30を準備しておき、投与量に応じてスリーブ33を選択的に用いることも好ましい。
すなわち、シリンジ装置100は、スリーブ33の長さが互いに異なる複数のキャップカバー30を備え、複数のキャップカバー30のうちのいずれかのキャップカバー30を選択的にキャップ20に装着可能であることも好ましい。
図7(b)に示す第2キャップカバー30bのスリーブ33の長さは、
図7(a)に示す第1キャップカバー30aのスリーブ33の長さよりも長い。このため、キャップ20に第2キャップカバー30bを装着したときには、キャップ20に第1キャップカバー30aを装着したときよりも、シリンジ装置100からの放射性医薬品10の注出量(投与量)を少なくでき、したがって、注出後(投与後)にプレフィルドシリンジ12に残留する放射性医薬品10の量を多くすることができる。
【0046】
以上、図面を参照して実施形態を説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0047】
例えば、キャップカバー30のスリーブ33は、筒状部31及び板状部32を含むキャップカバー30の本体部とは別体に形成されていてもよく、スリーブ33をキャップカバー30の本体部に対して(例えば差込構造等によって)着脱可能となっていてもよい。
【0048】
また、上記においては、キャップカバー30に一対の開口34が形成されている例を説明したが、キャップカバー30には3つ以上の開口34が形成されていてもよいし、単数(1つ)の開口34が形成されていてもよい。キャップカバー30が有する開口34の数が1つの場合、例えば、開口34がキャップカバー30の周方向(筒状部31の周方向)において180度以上の範囲に亘って存在していることにより、キャップカバー30に一対の開口34が形成されている場合と同様に、2本の指の各々によってキャップ20を把持することが可能となる。
【0049】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)液剤が充填されているとともに、内部にガスケットが配置されているプレフィルドシリンジと、前記プレフィルドシリンジが内部に装着されるシリンジシールドと、前記シリンジシールドの基端部に装着される筒状部と、前記筒状部の基端部に設けられた板状部と、前記板状部を貫通している挿通孔と、を有するキャップと、前記キャップの挿通孔を通して前記プレフィルドシリンジ内に挿入されて、先端部が前記ガスケットに連結されるプランジャーロッドと、前記キャップに対して着脱可能に装着されるキャップカバーと、を備え、前記キャップカバーは、前記キャップよりも基端側に延びているとともに前記プランジャーロッドをガイドするスリーブを有し、前記キャップ及び前記キャップカバーの双方が硬質樹脂により構成されているシリンジ装置。
(2)前記キャップカバーには、開口が設けられており、前記キャップカバーが前記キャップに装着された状態で、前記開口を介して前記キャップを手指で把持可能である(1)に記載のシリンジ装置。
(3)前記キャップカバーは、前記キャップに着脱可能に外嵌される第2筒状部と、前記第2筒状部の基端部に設けられた第2板状部と、を備え、前記スリーブは、前記第2板状部から基端側に延びている(2)に記載のシリンジ装置。
(4)前記キャップカバーには、前記第2筒状部の軸心を挟んで対向配置されている一対の前記開口が形成されている(3)に記載のシリンジ装置。
(5)前記開口は、前記第2筒状部から前記第2板状部に亘って形成されており、当該開口を介して、前記キャップにおける前記筒状部と前記板状部との交差部を手指で把持可能である(3)又は(4)に記載のシリンジ装置。
(6)前記キャップカバーは可視光透過性の透過部を含んで構成され、前記透過部を介して前記キャップを透視可能である(1)から(5)のいずれか一項に記載のシリンジ装置。
(7)前記シリンジシールドは、放射線遮蔽材を含んで構成されているとともに前記プレフィルドシリンジを覆う筒状に形成されている(1)から(6)のいずれか一項に記載のシリンジ装置。
(8)前記スリーブの長さが互いに異なる複数の前記キャップカバーを備え、前記複数のキャップカバーのうちのいずれかのキャップカバーを選択的に前記キャップに装着可能である(1)から(7)のいずれか一項に記載のシリンジ装置。
(9)液剤が充填されているとともに内部にガスケットが配置されているプレフィルドシリンジと、前記プレフィルドシリンジが内部に装着されるシリンジシールドと、硬質樹脂により構成され前記シリンジシールドの基端部に装着される筒状部と前記筒状部の基端部に設けられた板状部と前記板状部を貫通している挿通孔とを有するキャップと、前記キャップの挿通孔を通して前記プレフィルドシリンジ内に挿入されて先端部が前記ガスケットに連結されるプランジャーロッドと、を備えるシリンジ装置の前記キャップに対して着脱可能に装着されるキャップカバーであって、当該キャップカバーは硬質樹脂により構成されているとともに、前記プランジャーロッドをガイドするスリーブと、当該キャップカバーが前記キャップに装着された状態で、前記キャップを手指で把持可能にするための開口と、を有するキャップカバー。
【解決手段】シリンジ装置100は、内部にガスケット11が配置されているプレフィルドシリンジ12と、プレフィルドシリンジ12が内部に装着されるシリンジシールド13と、シリンジシールド13の基端部に装着される筒状部21と筒状部21の基端に設けられた板状部22と板状部22を貫通している挿通孔23とを有するキャップ20と、挿通孔23を通してプレフィルドシリンジ12内に挿入されてガスケット11に連結されるプランジャーロッド40と、キャップ20に対して着脱可能に装着されるキャップカバー30を備え、キャップカバー30は、プランジャーロッド40をガイドするスリーブ33を有し、キャップ20及びキャップカバー30の双方が硬質樹脂により構成されている。