(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フィレット作成部が、2つのフィレットの合流地点から所定の距離だけ離れた範囲まで該2つのフィレットを作成し、該2つのフィレットの端点で接線連続となるような滑らかな曲線で繋いでコーナーフィレットを作成することを特徴とする請求項1に記載のプレス金型形状作成システム。
前記フィレット作成部が、該滑らかな曲線に対して垂直な方向の勾配ベクトルを2つのフィレット端点の接線ベクトルから補間して与えて曲面を形成することを特徴とする請求項2に記載のプレス金型形状作成システム。
前記フィレット作成部が、母面の上側と下側に設けられたそれぞれのフィレットについて、上側のコーナーフィレット及び下側のコーナーフィレットを作成し、2つのフィレットの合流地点から所定の距離の地点における母面上の点を、該地点におけるそれぞれの接線ベクトルを補間した勾配ベクトルを有する曲線で繋いで、上側コーナーフィレット及び下側コーナーフィレットの間の母面を修正することを特徴とする請求項2または3に記載のプレス金型形状作成システム。
前記フィレット作成部が、2つのフィレットの合流地点から所定の距離だけ離れた範囲まで該2つのフィレットを作成し、更に、該合流地点から所定の距離だけ離れた範囲まで該2つのフィレットと交差する更なるフィレットを作成し、
該2つのフィレットの端点を、端点におけるそれぞれの接線ベクトルを補間した勾配ベクトルを有する曲線であって、かつ更なるフィレットの端部の曲線と連続する滑らかな曲線で繋いでコーナーフィレットを作成することを特徴とする請求項1に記載のプレス金型形状作成システム。
前記フィレット作成部が、半径Rを有する円弧でフィレットを構成し、母面と接するフィレットの両端において、母面と接するようにフィレットの円弧を配置することを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載のプレス金型形状作成システム。
前記母面作成部が、所定の押し出し方向のベクトル及びエッジ部におけるプレス方向のベクトルの外積ベクトルの方向を回転軸として、プレス方向に対して所定の角度θをなすように壁面の母面を作成することを特徴とする請求項7に記載のプレス金型形状作成システム。
前記母面作成部が、予め規定された母面として、エッジ部の開口端部を結ぶ線を含む底面の母面を作成することを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載のプレス金型形状作成システム。
前記稜線作成部が、選択されたエッジ部のフィレット断面の両端部における接線ベクトルの延長線の交点を稜線の位置として抽出することを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載のプレス金型形状作成システム。
前記稜線作成部が、選択されたエッジ部を含む3次元のプレス製品の外形データに基づいて、抽出した稜線を延長する方向を定めることを特徴とする請求項1から10の何れか1項に記載のプレス金型形状作成システム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の実施態様1に係るプレス金型形状作成システムは、
プレス金型の開口部形状を作成するシステムであって、
開口を有するプレス製品の外形データを記憶する製品形状記憶部と、
記憶された外形データに基づき、選択されたエッジ部のフィレット断面または開口端部から稜線を抽出し延長して、延長稜線を作成する稜線作成部と、
隣り合う延長稜線を平面または曲面で繋いで母面を作成し、必要と判断された場合に予め規定された母面を作成する母面作成部と、
作成された母面が交差する箇所の少なくとも一部にフィレットを作成し、複数のフィレットが合流するコーナー部に該フィレットどうしを繋ぐコーナーフィレットを作成するフィレット作成部と、
必要と判断された場合にプレス製品の外形、フィレット及び母面の形状が互いに沿うように形状を整えて、プレス金型の開口部形状を決定する開口形状作成部と、
を備える。
【0011】
本実施態様によれば、プレス製品の外形データに基づき、選択されたエッジ部のフィレット断面等から稜線を抽出して延長稜線を作成し、予め規定された母面または隣り合う延長稜線を繋いで母面を作成し、作成された母面が交差する箇所にフィレットを作成し、複数のフィレットが合流するコーナー部にフィレットどうしを繋ぐコーナーフィレットを作成し、フィレット及び母面の形状に沿ってプレス金型の開口部形状を作成する。
【0012】
よって、シンプルで合理的な手順で、コーナー部を含むプレス金型の開口部形状を作成するので、形状の修正にも容易に対応可能であり、設計者の意図を反映させたコーナー部を含むプレス金型の開口部形状を、少ない演算時間及びコストで作成することができる。
【0013】
本発明の実施態様2に係るシステムでは、上記の実施態様1において、
前記フィレット作成部が、2つのフィレットの合流地点から所定の距離だけ離れた範囲まで該2つのフィレットを作成し、該2つのフィレットの端点で接線連続となるような滑らかな曲線で繋いでコーナーフィレットを作成する。
【0014】
本実施態様では、2つのフィレットの端点で接線連続となるような滑らかな曲線で繋いでコーナーフィレットを作成するので、少ない演算時間及びコストで、母面に沿った滑らかな曲面で構成されたコーナーフィレットを作成できる。
【0015】
本発明の実施態様3に係るシステムでは、上記の実施態様2において、 前記フィレット作成部が、該滑らかな曲線に対して垂直な方向の勾配ベクトルを2つのフィレット端点の接線ベクトルから補間して与え曲面を形成する。
【0016】
本実施態様では、滑らかな曲線に対して垂直な方向の勾配ベクトルを端点の接線ベクトルから補間して与えてコーナーフィレット(曲面)を作成するので、少ない演算時間及びコストで、母面に沿った滑らかな曲面で構成されたコーナーフィレットを作成できる。
【0017】
本発明の実施態様4に係るシステムでは、上記の実施態様2または3において、
前記フィレット作成部が、母面の上側と下側に設けられたそれぞれのフィレットについて、上側のコーナーフィレット及び下側のコーナーフィレットを作成し、2つのフィレットの合流地点から所定の距離の地点における母面上の点を、該地点におけるそれぞれの接線ベクトルを補間した勾配ベクトルを有する曲線で繋いで、上側コーナーフィレット及び下側コーナーフィレットの間の母面を修正する。
【0018】
本実施態様では、上側のコーナーフィレット及び下側のコーナーフィレットを作成し、2つのフィレットの合流地点から所定の距離の地点における母面上の点を、上記に示した曲線で繋いで、上側コーナーフィレット及び下側コーナーフィレットの間の母面を修正する。
これにより、上側及び下側のコーナーフィレットの間を、少ない演算時間及びコストで、各々のコーナーフィレットに沿った滑らかな曲線で繋ぐことができる。
【0019】
本発明の実施態様5に係るシステムでは、上記の実施態様1において、
前記フィレット作成部が、2つのフィレットの合流地点から所定の距離だけ離れた範囲まで該2つのフィレットを作成し、更に、該合流地点から所定の距離だけ離れた範囲まで該2つのフィレットと交差する更なるフィレットを作成し、
該2つのフィレットの端点を、端点におけるそれぞれの接線ベクトルを補間した勾配ベクトルを有する曲線であって、かつ更なるフィレットの端部の曲線と連続する滑らかな曲線で繋いでコーナーフィレットを作成する。
【0020】
本実施態様では、互いに合流する2つのフィレットと、2つのフィレットと交差する更なるフィレットを作成し、2つのフィレットの端点を、上記に示した曲線で、更なるフィレットの端部の曲線と連続するように滑らかに繋いでコーナーフィレットを作成する。これにより、3つのフィレットが合流するコーナー部において、少ない演算時間及びコストで、各フィレットに沿った滑らかな曲面で構成されたコーナーフィレットを作成することができる。
なお、互いに合流する2つのフィレットを上側と下側に作成し、上側と下側を更なるフィレットで繋いで、上下のコーナーフィレットを作成すれば、実質的に実施態様4と同様の滑らかなプレス金型の開口部形状を得ることができる。
【0021】
本発明の実施態様6に係るシステムでは、上記の実施態様1から5の何れかにおいて、
前記フィレット作成部が、半径Rを有する円弧でフィレットを構成し、母面と接するフィレットの両端において、母面と接するようにフィレットの円弧を配置する。
【0022】
本実施態様によれば、半径Rを定めるだけで、容易に母面に沿った滑らかな曲面で構成されたフィレットを形成することができ、修正も容易である。
【0023】
本発明の実施態様7に係るシステムでは、上記の実施態様1から6の何れかにおいて、
前記母面作成部が、予め規定された母面として、エッジ部上の基準点から所定の押し出し方向に距離Dだけ離れた延長基準点を含む壁面の母面を作成し、
前記稜線作成部が、抽出した稜線を該壁面の母面上まで延長する。
【0024】
本実施態様によれば、押し出し量Dを定めるだけで壁面の母面を作成でき、稜線をこの壁面の母面上まで延長することにより、容易に開口部形状を規定することができ、修正も容易である。
【0025】
本発明の実施態様8に係るシステムでは、上記の実施態様1から7の何れかにおいて、
前記母面作成部が、所定の押し出し方向のベクトル及びエッジ部におけるプレス方向のベクトルの外積ベクトルの方向を回転軸として、プレス方向に対して所定の角度θをなすように壁面の母面を作成する。
【0026】
本実施態様によれば、角度θを定めるだけで、容易にプレス方向に対して角度θをなす母面を作成することができ、修正も容易である。
【0027】
本発明の実施態様9に係るシステムでは、上記の実施態様1から8の何れかにおいて、
前記母面作成部が、予め規定された母面として、エッジ部の開口端部を結ぶ線を含む底面の母面を作成する。
【0028】
本実施態様によれば、予め規定された母面として、エッジ部の開口端部を結ぶ線を含む底面の母面を作成するので、シンプルな手順でプレス金型の開口部形状を作成することができる。
【0029】
本発明の実施態様10に係るシステムでは、上記の実施態様1から9の何れかにおいて、
前記稜線作成部が、選択されたエッジ部のフィレット断面の両端部における接線ベクトルの延長線の交点を稜線の位置として抽出する。
【0030】
本実施態様によれば、シンプルな手順で稜線の位置を容易に確実に定めることができ、修正も容易である。
【0031】
本発明の実施態様11に係るシステムでは、上記の実施態様1から10の何れかにおいて、
前記稜線作成部が、選択されたエッジ部を含む3次元のプレス製品の外形データに基づいて、抽出した稜線を延長する方向を定める。
【0032】
本実施態様によれば、3次元のプレス製品の外形データに基づいて、抽出した稜線を延長する方向を定めるので、プレス製品の外形データに滑らかに繋がった開口形状を容易に確実に作成することができる。
【0033】
上記の目的を達成するため、本発明の実施態様12に係るプログラムは、
プレス金型の開口部形状を作成するためのプログラムであって、
コンピュータを、
開口を有するプレス製品の外形データを記憶する製品形状記憶部、
記憶された外形データに基づき、選択されたエッジ部のフィレット断面または開口端部から稜線を抽出し延長して、延長稜線を作成する稜線作成部、
隣り合う延長稜線を平面または曲面で繋いで母面を作成し、必要と判断された場合に予め規定された母面を作成する母面作成部、
作成された母面が交差する箇所の少なくとも一部にフィレットを作成し、複数のフィレットが合流するコーナー部に該フィレットどうしを繋ぐコーナーフィレットを作成するフィレット作成部、及び
必要と判断された場合にプレス製品の外形、フィレット及び母面の形状が互いに沿うように形状を整えて、プレス金型の開口部形状を決定する開口形状作成部、
として機能させる。
【0034】
本実施態様においても、上記の実施態様1と同様な作用効果を有する。
【0035】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。
はじめに、
図1及び
図2を参照しながら、本発明の1つの実施形態に係るシステムの概要を説明する。
図1は、本発明の1つの実施形態に係るCAD装置のハードウエアの構成を示すブロックダイアグラムであり、
図2は、本発明の1つの実施形態に係るプレス金型形状作成システムの制御の基本構成を示すブロックダイアグラムである。
【0036】
図1に示すように、本実施形態に係るCAD装置のハードウエア構成は、中央演算装置と、中央演算装置に電気的に接続された入力装置、表示装置、出力装置及び記憶装置を備える。
図1の矢印は、信号の流れを示す。
【0037】
図2に示すように、本実施形態に係るプレス金型形状作成システムの制御部100は、プレス金型の開口部形状を作成するシステムであって、開口を有するプレス製品の外形データを記憶する製品形状記憶部110と、記憶された外形データに基づき、選択されたエッジ部のフィレット断面または開口端部から稜線を抽出し延長して、延長稜線を作成する稜線作成部120と、隣り合う延長稜線を平面または曲面で繋いで母面を作成し、必要と判断された場合に予め規定された母面を作成する母面作成部130と、作成された母面が交差する箇所の少なくとも一部にフィレットを作成し、複数のフィレットが合流するコーナー部にフィレットどうしを繋ぐコーナーフィレットを作成するフィレット作成部140と、必要と判断された場合にプレス製品の外形、フィレット及び母面の形状が互いに沿うように形状を整えて、プレス金型の開口部形状を決定する開口形状作成部150と、を備える。
【0038】
作成するプレス金型形状は、コーナーフィレットが形成されるコーナー部の数に応じて、
図9A〜9Cに示すようなタイプに分類することができる。
図9Aは、1つの上下コーナー部を有する開口部形状の一例を示す図であり、
図9Bは、2つの上下コーナー部を有する開口部形状の一例を示す図であり、
図9Cは、3つの上下コーナー部を有する開口部形状の一例を示す図である。
以下においては、
図9Aに示すような1つの上下コーナー部を有する場合をタイプ1と称し、
図9Bに示すような2つの上下コーナー部を有する場合をタイプ2と称し、
図9Cに一例を示すような3つ以上の上下コーナー部を有する場合をタイプ3と称する。
【0039】
(タイプ2の場合の説明)
図2に示すようなプレス金型形状作成システムの制御部100で実施される制御処理について、
図3から
図8に示すフローチャートに基づき、更に詳細な内容を示す図(
図10Aから
図32)参照しながら説明する。ここでは、特に、2つの上下コーナー部を有する場合であるタイプ2を例にとって説明する。
【0040】
<プレス金型形状作成メインルーチン>
はじめに、
図3を参照しながら、プレス金型形状作成システムの制御部100で実施されるプレス金型形状作成メインルーチンの説明を行う。
図3は、本発明の1つの実施形態に係るプレス金型形状作成システムで実施されるプレス金型形状作成メインルーチンを示すフローチャートである。
【0041】
図3のフローチャートにおいて、まず、作成するプレス金型形状の開始地点となる開口のエッジ部を選択する(ステップS2)。具体的には、製品形状記憶部110に保管された開口を有するプレス製品の外形データから、所定の開口部のエッジ部を選択してそのデータを読み出す。選択方法は、操作者が入力装置を操作して行うこともできるし、予め設定されたプログラムによって自動的に行うこともできる。
ここで、
図10Aは、開口部形状を作成する一例の概要を示す図であって、プレス製品の外形データからエッジ部を選択することを示す図である。ここでは、下方が開口し、4つのフィレットを有する略コの字形のエッジ部が選択されたところを示す。
【0042】
また、
図11A〜11Dには、選択したエッジ部の詳細を示す。
図11Aは、選択されたエッジ部(2つの上下フィレット断面を有する場合)の一例を示す図であり、
図11Bは、
図11Aの枠で囲まれた部分における接線ベクトルを示す図であり、
図11Cは、
図11Aの枠で囲まれた部分における法線ベクトルを示す図であり、
図11Dは、
図11Aの枠で囲まれた部分における延長方向ベクトルを示す図である。
【0043】
図11Aには、図面左下のエッジ始端部から図面左下のフィレット断面を経て上方へ進み、左上のフィレット断面を経て水平方向に進み、右上のフィレット断面を経て下方へ進み、右下のフィレット断面を経てエッジ終端部へ達するエッジ部が示されている。なお、フィレット断面とは、エッジ部の断面上のフィレットを表す曲線を意味する。また、
図11Aに示す矢印Nzは、押し出し元のエッジ部の代表法線ベクトルを示し、デフォルトとしてプレス方向が設定されている。矢印で示すベクトルNzの方向を、ローカルZ軸方向と称することもできる。
【0044】
図11Bに示す矢印により、エッジ部の直線、曲線形状に沿った接線ベクトルVtを示す。
図11Cに示す矢印により、エッジ部の直線、曲線形状に対して直交した法線ベクトルNsを示す。
図11Dに示す矢印により、延長方向ベクトルVgを示す。この延長方向ベクトルVgは、後述するように、4角形領域に対応する母面を作成する際の、辺上の勾配として用いる(
図21B、
図24参照)。
【0045】
延長方向ベクトルVgは、接線ベクトルVt及び法線ベクトルNsの外積として定めることができる。この場合、延長方向ベクトルVgは、エッジ部の接線ベクトルVt及び法線ベクトルNsと直交するベクトルである。ただし、これに限られるものではなく、特定の位置の延長方向ベクトルVgを任意に与えることもできる。
【0046】
次に、
図12A〜12Cを参照しながら、エッジ部で表現できる形状のバリエーションについて説明する。
図12Aは、エッジ部で表現できる形状の例を示す図のうち、Case1を示す図であり、
図12Bは、Case2を示す図であり、
図12Cは、Case3を示す図である。
【0047】
図12Aに示すCase1は、
図11A〜11Dに示す場合と同様に、4つのフィレット断面を有する基本形を示す。具体的には、図面で下側に開口があり、図面左下のエッジ始端部からフィレット断面1、左上のフィレット断面2、右上のフィレット断面3及び右下のフィレット断面4を有する。そして、隣接するフィレット断面の間を直線または曲線で結ばれてエッジ部が形成されている。
図12Aに示すCase1では、隣接するフィレット断面1及びフィレット断面2が曲線で繋がれ、隣接するフィレット断面2及びフィレット断面3が直線で繋がれ、隣接するフィレット断面3及びフィレット断面4が曲線で繋がれている。
【0048】
図12Bに示すCase2では、
図12Aに示すCase1に比べて、図面左下のエッジ始端部及び図面右下のエッジ終端部(つまり下側の両開口端)のフィレット断面がない例を示す。言い換えれば、Case2では、エッジ始端部及びエッジ終端部のフィレット断面の長さが0になっている。
【0049】
図12Cに示すCase3では、
図12Aに示すCase1に比べて、隣接するフィレットの間を繋ぐ辺(直線または曲線)の一部が無い場合を示す。
図12Cの上側の図では、両側部の辺(フィレット断面1及びフィレット断面2の間を繋ぐ辺、及びフィレット断面3及びフィレット断面4の間を繋ぐ辺)が無い場合を示す。
図12Cの下側の図では、上部の辺(フィレット断面2及びフィレット断面3の間を繋ぐ辺)が無い場合を示す。
以上のように、
図12Aに示すCase1が、エッジ部の基本形状であるが、
図12Bに示すCase2や
図12Cに示すCase3のようなエッジ部の形状もあり得る。
【0050】
図3のフローチャートに戻り、ステップS2のエッジ部の選択に引き続いて、入力データをインプットする(ステップS4)。制御部100にインプットする入力データとしては、後述するように、エッジ部上の基準点から押し出す距離(押し出し量)Dや、フィレットを円弧で構成する場合の半径Rや、プレス方向に対して壁面の母面がなす角度θを例示することができる。また、上記のように、所定の位置における延長方向ベクトルVg(方向)をインプットする場合もあり得る。インプット方法は、操作者が入力装置を操作して行うこともできるし、予め設定されたプログラムによって自動的に行うこともできる。
【0051】
以下に、入力データが、どのように用いられるかについて簡潔に説明する。なお、これらの入力データを用いた制御処理の説明において、更に詳細な説明を行う。
図13Aは、入力データの例を示す図であって、押し出し量D、押し出し方向ベクトルVswp及び壁面の傾斜角θを示す図である。これらの入力データは、母面作成部130により、エッジ部に対向する位置に形成される壁面の母面を作成するためのパラメータである。エッジ部上の押し出し基準点PBから、押し出し方向ベクトルVswpの方向に、押し出し量Dだけ押し出された位置に壁面の母面が作成される。
【0052】
壁面の母面は、押し出し方向ベクトルVswpに対して垂直な方向に作成されるのが基準である。しかしそれに限られるものではなく、押し出し方向ベクトルVswp及びエッジ部におけるプレス方向(エッジ部の代表法線ベクトル)Nzの外積ベクトルの方向を回転軸として、プレス方向Nzに対して所定の角度θをなすように壁面の母面を作成することができる。つまり、壁面の母面が、押し出し方向ベクトルVswpに対して垂直な方向に作成されるのは、角度θ=0である場合を意味する。
【0053】
入力データの押し出し量D、押し出し方向ベクトルVswp及び壁面の傾斜角θに基づいて、壁面の母面が作成されると、稜線作成部120により、抽出した稜線を稜線ベクトルVr(
図17C参照)の方向に、壁面の母面まで延長する。
【0054】
図13Bは、壁面の母面と同様に予め規定された母面である底面の母面を示す図である。母面作成部130により、エッジ部の開口端部を結ぶ線を、押し出し方向ベクトルVswpに十分な長さ延長した辺を作って、底面の母面を作成する。そして、
図13Aに示すように、エッジ部から抽出された稜線が壁面の母面上まで延長され、両側面及び上面に相当する母面が作成される。
【0055】
図14Aは、入力データの例を示す図であって、断面方向のフィレットの半径Rsec1〜Rsec4を示す図であり、
図14Bは、水平方向のフィレットの半径Rb1、Rb2、Rh1、Rh2を示す図である。入力されたフィレットの半径Rに基づいて、ワイヤフレームの辺部にフィレットが形成される。
【0056】
図3のフローチャートに戻り、ステップS4のデータ入力に引き続いて、母面作成部130により、必要と判断された場合に,予め規定された基準の母面(例えば、壁面の母面、底面の母面)を作成する基準母面作成サブルーチンを行う(ステップS6)。
次に、稜線作成部120により、記憶された外形データに基づき、ステップS2で選択されたエッジ部のフィレット断面または開口端部から稜線を抽出し延長して、延長稜線を作成する延長稜線作成サブルーチンを行う(ステップS10)。
【0057】
次に、母面作成部130により、隣り合う延長稜線を平面または曲面で繋いで残りの母面を作成する残り母面作成サブルーチンを行う(ステップS20)。ここで、
図10Bには、開口部形状を作成する一例の概要を示す図であって、主に延長稜線を作成し(ステップS10)、延長稜線に基づいて母面を作成する(ステップ20)ことの概要を示す。
基準母面作成サブルーチン(ステップS6)、延長稜線作成サブルーチン(ステップS10)及び残り母面作成サブルーチン(ステップS20)の更に詳細な説明は、
図4から
図6のフローチャート及び
図15Aから
図21Cを参照しながら後述する。
【0058】
次に、フィレット作成部140により、ステッップ20で作成された母面が交差する箇所の少なくとも一部にフィレットを作成し、複数のフィレットが合流するコーナー部にフィレットどうしを繋ぐコーナーフィレットを作成するフィレット作成サブルーチンを行う(ステップS30)。ここで、
図10Cは、開口部形状を作成する一例の概要を示す図であって、母面にフィレットを作成することを示す図である。
フィレット作成サブルーチン(ステップS30)の更に詳細な説明は、
図7Aまたは
図7Bのフローチャート及び
図22Aから
図31を参照しながら後述する。
【0059】
次に、開口形状作成部150により、必要と判断された場合にプレス製品の外形、フィレット及び母面の形状が互いに沿うように形状を整え、そしてプレス金型の開口部形状を決定する形状調整サブルーチンを行う(ステップS40)。ここで、
図10Dは、開口部形状を作成する一例の概要を示す図であって、フィレット及び母面をトリムして、開口部形状を決定することを示す。
形状調整サブルーチン(ステップS40)の更に詳細な説明は、
図8のフローチャート及び
図32を参照しながら後述する。
図3のメインルーチンに示す以上のような制御処理により、プレス金型の開口部形状を作成することができる。
【0060】
(基準母面作成サブルーチン)
次に、
図4のフローチャート、
図15及び
図16を参照しながら、メインルーチンのステップS8で示される基準母面作成サブルーチンについて詳細に説明する。
図4において、母面作成部130により、壁面の母面及び底面の母面を作成し(ステップS8)、本サブルーチンを終了する。
ここで
図15は、エッジ部の押出基準位置Pbから押し出し量D及び押し出し方向ベクトルVswpの一例を示す図である。本実施形態では、押し出し方向ベクトルVswpの方向と押し出し基準位置における延長方向ベクトルVgの方向は一致している。選択したエッジ部の形状によっては、位置によって延長ベクトルVgの方向が異なる場合も有り得る。そのときには、デフォルトとして、押し出し方向ベクトルVswpを、任意の区間の延長ベクトルVgの平均ベクトルとすることができる。
【0061】
図15では、エッジ部の押し出し基準位置Pbから、押し出し方向ベクトルVswpの方向に押し出し量Dだけ押し出した位置に壁面の母面を作成する。
図16では、傾斜角θ=0の場合であって、押し出し方向ベクトルVswpに対して直交するように壁面の母面が作成されている。
以上のように、押し出し量Dを定めるだけで壁面の母面を作成でき、後述するように稜線をこの壁面の母面上まで延長することにより、容易に開口部形状を規定することができ、修正も容易である。
【0062】
ただし、これに限られるものではなく、傾斜角θは、0度〜90度の間の任意の角度をとることができる。
図16は、
図15に示す面から所定の傾斜角度θだけ傾斜させた壁面の母面を規定する一例を示す図である。
図16から明らかなように、母面作成部130により、押し出し方向ベクトルVswp及びエッジ部におけるプレス方向のベクトルNzの外積ベクトルの方向を回転軸として、プレス方向に対して所定の傾斜角度θをなすように壁面の母面を作成することができる。
【0063】
これにより、角度θを定めるだけで、容易にプレス方向に対して角度θをなす母面を作成することができ、修正も容易である。
なお、壁面の母面を傾ける回転軸は、上記のような押し出し方向ベクトルVswp及びプレス方向のベクトルNzの外積ベクトルの方向に限られるものではなく、その他の任意の方向をとることもできる。
【0064】
同様に、母面作成部130により、予め規定された母面として、エッジ部の開口端部を結ぶ線を含む底面の母面を作成する。具体的には、エッジ部の開口端部を結ぶ線を、押し出し方向ベクトルVswpに十分な長さ延長した辺を作って、底面の母面を作成する。以上のように、予め規定された母面として、エッジ部の開口端部を結ぶ線を含む底面の母面を作成するので、シンプルな手順でプレス金型の開口部形状を作成することができる。
【0065】
<延長稜線作成サブルーチン>
次に、
図5のフローチャート及び
図17A〜17Cを参照しながら、メインルーチンのステップS10で示される延長稜線作成サブルーチンについて詳細に説明する。
図5において、まず、稜線を抽出する(ステップS12)。ここで、
図17Aは、エッジ部のフィレット断面(断面上のフィレットを表す曲線)からフィレットの角点(稜線の位置)を定める一例を示す図である。
【0066】
図17Aでは、
図11Aの左上及び左下のフィレット断面において、稜線の位置を定める場合を示す。左上のフィレット断面の場合を例にとって説明すれば、フィレット断面始端部(図面で下側の端部)から接線ベクトルに沿って伸ばした直線(上向きに伸びる直線)と、フィレット断面終端部(図面で上側の端部)から接線ベクトルに沿って伸ばした直線(左下向きに伸びる直線)とが交わるフィレット角点Pcが稜線の位置となる。
【0067】
左下のフィレット断面においても、フィレット断面始端部(図面で下側の端部)から接線ベクトルに沿って伸ばした直線(右上向きに伸びる直線)と、フィレット断面終端部(図面で上側の端部)から接線ベクトルに沿って伸ばした直線(下向きに伸びる直線)とが交わるフィレット角点が稜線の位置となる。
【0068】
以上のように、稜線作成部120により、選択されたエッジ部のフィレット断面の両端部における接線ベクトルの延長線の交点を稜線の位置として抽出するので、シンプルな手順で稜線の位置を容易に確実に定めることができ、修正も容易である。
なお、
図12Bに示すような、開口端部にフィレット断面を有さない場合には、稜線作成部120により、選択されたエッジ部の開口端部を角点として稜線を抽出し、それを延長して延長稜線を作成することができる。
【0069】
ここで、
図17Bは、エッジ部のフィレット断面、フィレット断面を結ぶ曲線(または直線)、及び定められたフィレットの角点を示す図である。
図17Bには、
図17Aに示すようにして定められたエッジ部の4つのフィレット断面1〜4の角点Pc1〜4が示されている。
【0070】
図5のフローチャートに戻り、次に、上記のようにして抽出した角点Pc1〜4のそれぞれについて、角点Pc1〜4から稜線ベクトルVrの方向へ、先に定義した壁面の母面に到達するまで延長する制御処理を行って(ステップS14)、本サブルーチンを終了する。ここで、
図17Cは、エッジ部のフィレット断面から稜線ベクトルの方向を定める一例を示す図である。フィレット断面のアウトライン(両端部)と接する2つの面を接線方向に沿って延長したとき、延長した2つの面が交差してできる線が稜線となる。この稜線の方向を、稜線ベクトルVrの方向とすることができる。
【0071】
本実施形態では、壁面の母面を作成するための押し出し方向ベクトルVswpの方向と、接線ベクトルVt及び法線ベクトルNsの外積で求められる延長方向ベクトルVgの方向と、稜線ベクトルVrの方向とが一致しているが、これに限られるものではない。
例えば、製品外形が稜線の延長方向において、徐々に広がるまたは狭まる形状の場合、エッジ部の接線ベクトルVt及び法線ベクトルNsの外積ベクトルの方向と稜線ベクトルVrの方向とが一致しない場合もあり得る。その場合、延長方向ベクトルVgを任意に与えることもできるので、延長方向ベクトルVgの方向を稜線ベクトルVrの方向に応じて調整することもできる。
【0072】
また、エッジ部の形状によっては、位置によって延長ベクトルVgの方向が異なる場合がある。その場合には、例えばデフォルトとして、各々の位置の延長方向ベクトルVgのなす角度が所定の範囲内であれば、これらの延長方向ベクトルVgの平均ベクトルを押し出し方向ベクトルVswpとして規定することができる。なお、
図41を参照しながら後述するように、各々の位置の延長方向ベクトルVgのなす角が一定角度以上開いている場合には、複数の押し出し方向ベクトル(
図41では、Vswp1及びVswp2)を規定することもできる。
【0073】
何れの場合においても、選択されたエッジ部を含む3次元のプレス製品の外形データに基づいて、抽出した稜線を延長する方向を定めることができるため、プレス製品の外形データに滑らかに繋がった開口形状を容易に確実に作成することができる。
なお、稜線ベクトルVrの方向に稜線を延長して、母面やフィレットを作成した後、
図3のステップS40で示す形状調整サブルーチンにおいて、最終的に製品外形と滑らかに繋がるように調整することもできる。
【0074】
<残り母面作成サブルーチン>
次に、
図6のフローチャート及び
図18から
図21Cを参照しながら、メインルーチンのステップS20で示される残り母面作成サブルーチンについて詳細に説明する。
ここで
図18は、延長稜線が壁面の母面に交わる位置に角点を配置してワイヤフレームを構成する一例を示す図である。
図6の残り母面作成サブルーチンにおいて、まず、エッジ部のフィレット断面に基づいて抽出した角点Pcから、稜線を稜線ベクトルVrの方向に延長し、作成された壁面の母面と交差する位置に角点Pc’を配置する(ステップS22)。
【0075】
次に、壁面の母面上の角点Pc’どうしを接続して辺を作成し、ワイヤフレームを構成する(ステップS24)。
図18では、壁面の母面上に4つの角点を配置してワイヤフレームを構成している。
【0076】
次に、
図19を参照しながら、角点Pc’の間を繋ぐ辺を作成する方法を説明する。
図19は、角点の間を繋ぐ辺を作成する方法の一例を示す図であり、図面左側に補間元となる辺(本実施形態ではエッジ部に相当)を示し、図面右側に押し出し面上の辺(本実施形態では壁面の母面上の辺に相当)を示す。
【0077】
図面左側の補間元となる辺R上の位置をRoriginalとし、これに対応する図面右側の押し出し面状の辺R’上の位置をRsweepとする。補間元となる辺のフィレットの角点Pc1,Pc2は、
図17Bのフィレットの角点Pc1、Pc2(またはPc4、Pc3)に対応する。
両端の角点Pc1及びPc2の座標間の距離に対する端部Pc1の座標から辺R上の点Roriginal
12の座標までの距離の比をtとし、角点Pc1の座標及び角点Pc1’の座標間の距離をd1とし、角点Pc2の座標及び角点Pc2’の座標間の距離をd2とする。
【0078】
図19に示すように、2点間で補間元となる辺(図面左側の辺)があり、補間元の辺の2つの端点Pc1、Pc2で、それぞれ延長する長さd1、d2と延長する方向(稜線ベクトル)Vr1、Vr2が既知である場合、辺R上の点の位置をRoriginal
12、これに対応する辺R’上の点の位置をRsweep
12とすると、辺R’上の点の位置は、以下の数式1で求められる。
【0080】
本実施形態では、補間元の辺の2つの端点Pc1、Pc2において、延長する長さが一致し(d1=d2)、延長する方向が一致する(Vr1=Vr2)ので、補間元となる辺Rを壁面の母面上に投影することができ、よって、壁面の母面上の角点Pc1’及びPc2’を繋ぐ辺を作成することができる。同様に、壁面の母面上の角点Pc2’及びPc3’を繋ぐ辺や角点Pc3’及びPc4’を繋ぐ辺を作成することができる。
なお、補間元となる辺が曲線である場合、例えば、補間元となる辺が延長する方向に対して前後にうねっているような形状の場合には、補間した辺は、壁面の母面上に位置しない。その場合には、補間した辺を壁面の母面上に投影する処理を更に行うことにより、壁面の母面上に辺を作成することができる。
【0081】
なお、
図17Bに示す下側の開口位置の角点Pc1及びPc4の間には、補間元となる辺が存在しないが、ここは直線で繋いで辺とすることができる。また、母面作成部130により作成された底面の母面が壁面の母面と交わる辺によって、角点Pc1及びPc4の間を繋ぐ辺を作成することもできる。
【0082】
図6のフローチャートに戻り、次に、ワイヤフレームの下辺を底面の母面上に投影する(ステップS26)。ここで、
図20Aは、ワイヤフレームの下辺を平面状の底面に投影する一例を示す図である。
図20Aに示す底面は、平面形状を有している。
【0083】
投影する方向は、デフォルトとして、ローカルZ軸方向(プレス方向)Nzとする。これにより、底面の母面上に辺を作成することができる。なお、ローカルZ軸方向(プレス方向)Nzは、プラス(上向き)の場合も、マイナス(下向き)の場合もあり得る。
ただし、投影する底面が平面の場合に限られるものではなく、
図20Bに示すように、ワイヤフレームの下辺を曲面状の底面に投影することもできる。
【0084】
図6のフローチャートに戻り、次に、残りの母面(両側面及び上面)を作成する制御処理を行って(ステップS28)、本サブルーチンを終了する。
図21Aは、残りの母面(両側面及び上面)を作成する一例を示す図である。母面作成部130により、隣り合う延長稜線を平面または曲面で繋いで母面を作成する。具体的には、
図21Aにおいて、隣り合う延長稜線Pc1−Pc1’及びPc2−Pc2’を繋いで、手前側の側面を作成し、隣り合う延長稜線Pc2−Pc2’及びPc3−Pc3’を繋いで上面を作成し、隣り合う延長稜線Pc3−Pc3’及びPc4−Pc4’を繋いで、後ろ側の側面を作成する。
【0085】
次に、
図21Bを参照しながら、母面を作成する具体的な方法を説明する。
図21Bは、残りの母面を作成するに当たり、両端点の接線ベクトルを補間したベクトルを用いて曲面を作成する一例を示す図である。Aで示す矢印は、面の境界線上の接線から算出した勾配ベクトルを示す。Bで示す矢印は、両端点の勾配ベクトルから補間した勾配ベクトルを示す。Cで示す矢印は、辺(直線)Cs上に定義された延長方向ベクトル(
図11D参照)を示す。
【0086】
このように、辺上に両端点の勾配ベクトルから補間した勾配ベクトルを定義し、この勾配ベクトルに沿って、辺上で滑らかに接続されるようにCoons等の自由曲面を作成することにより、辺の間を繋ぐ母面を作成することができる。
【0087】
以上のように、予め規定された母面(ここでは壁面の母面、底面の母面)を作成し、記憶された外形データに基づいて、選択されたエッジ部のフィレット断面(または開口端部)から稜線を抽出して延長し、底面に下辺を投影してワイヤフレームを作成し、隣り合う延長稜線を平面または曲面で繋いで母面を作成する。
なお、辺Csは、
図21Bに示すような直線の場合だけでなく、
図21Cに示すような曲線の場合にも、同様に辺の間を繋ぐ母面を作成することができる。
【0088】
<フィレット作成サブルーチンの1つの例>
次に、
図7Aのフローチャート及び
図22〜
図30を参照しながら、メインルーチンのステップS30で示されるフィレット作成サブルーチンの1つの例について詳細に説明する。
図7Aにおいて、はじめに、上面側の上側フィレットを作成する(ステップS32)。ここで、
図22Aは、上側のフィレットを作成する一例を示す図である。また、
図22Bは、上側のフィレットを作成する範囲を定める方法を示す上方から上面の母面を見た平面図である。
【0089】
図22Bに示すように、角点Pc2’を挟んで、上面の2辺Pc2−Pc2’、Pc2’−Pc3’に接するように、入力データに基づく水平方向のフィレット半径Rh1の円弧を形成する。同様に、角点Pc3’を挟んで、上面の2辺Pc2’−Pc3’、Pc3’−Pc3に接するように、入力データに基づく水平方向のフィレット半径Rh2の円弧を形成する。これらの円弧が上面の2辺と接する計4個の位置を接点X1〜X4とする。
【0090】
図22Aに示すように、辺Pc2−Pc2’に対してエッジ部から接点X1までフィレット断面を作成し、辺Pc2’−Pc3’に対して接点X2から接点X3までフィレット断面を作成し、辺Pc3’−Pc3に対して、エッジ部から接点X4までフィレット断面を形成する。別の表現をすれば、2つのフィレットの合流地点から水平方向半径(Rh1、Rh2)に対応した所定の距離だけ離れた範囲まで2つのフィレットを作成する。
【0091】
次に、
図23〜
図25を参照しながら、フィレット断面を作成する方法を更に詳細に説明する。
図23は、母面にフィレットを作成する場合に、フィレットを構成する各フィレット断面を作成する一例を示す図であり、
図24は、作成された各フィレット断面の間を滑らかに繋いでフィレットを形成する一例を示す図であり、
図25は、作成された各フィレット断面の間を滑らかに繋いで上側及び下側のフィレットを形成する一例を示す図である。
【0092】
図23の上図に示すように、フィレット断面を作成する始端位置から終端位置までに稜線が与えられているとき(つまり、面1及び面2が交わる辺)、所定の分割数で等間隔になるように、稜線上に分割点Pdを配置する。作成したそれぞれの分割点Pdに接線方向ベクトルVrを与えておく。
そして、作成したそれぞれの分割位置の接線方向ベクトルVrが法線ベクトルとなる平面を配置したとき、
図23の下図に示すように、この平面の面1の交差部を辺1とし、この平面の面2の交差部を辺2とする。そして、分割点Pd挟んで、辺1及び辺2に接するようにフィレット半径Rの円弧を形成する。同様に、全ての分割点でフィレット半径Rの円弧を形成する。
【0093】
次に、
図24に示すように、隣接する分割点Pdの円弧をCoons等の自由曲面で繋ぐことにより、フィレット形状を作成することができる。このとき、分割点Pdに与えた接線方向ベクトルVrを円弧の始端部及び終端部(つまり各分割点Pdの前後方向)に与えることで、作成した自由曲面を滑らかに接続することができる。なお、フィレットの始端位置(例えば、エッジ部)及び終端位置(例えば、接点X1)におけるフィレット断面の形状は任意の形状をとることができる。また、このとき、任意の断面形状が開口部エッジの一部である場合、任意の断面形状に対応する、断面の始端部と終端部の方向を延長方向ベクトルVg(
図11D参照)で置き換えることもできる。
以上のような制御処理により、
図25に示すように、作成された各フィレット断面の間を滑らかに繋いで上側及び下側のフィレットを形成することができる。
【0094】
図7Aのフローチャートに戻り、次に、底面側の下側フィレットを作成する(ステップS34)。ここで
図25は、上側に加えて下側のフィレットを作成する一例を示す図である。下側のフィレットについても、上記の同様な方法でフィレットを作成することができる。なお、更なる説明は省略する。
【0095】
以上のように、フィレット半径Rの値をインプットすることにより、フィレット作成部140が、半径Rを有する円弧でフィレットを構成し、母面と接するフィレットの両端において、母面と接するようにフィレットの円弧を配置する。これにより、半径Rを定めるだけで、容易に母面に沿った滑らかな曲面で構成されたフィレットを形成することができ、修正も容易である。
【0096】
ステップS34に引き続いて、上側フィレット及び下側フィレットそれぞれに、コーナーフィレトを作成する(ステップS36)。ここで、
図26及び
図27は、コーナーフィレットを作成する一例を示す図である。
上記のように、フィレット作成部140により、上側及び下側の稜線のそれぞれについて、2つのフィレットの合流地点から所定の距離だけ離れた範囲まで2つのフィレットを作成する(
図26参照)。次に、
図27に示すように、2つのフィレットの端点で接線連続となるような滑らかな曲線で繋いでコーナーフィレットを作成する。このとき、コーナーフィレットの端部において、上面の母面、底面の母面、壁面の母面及び側面の母面と連続するので、
図27に示すように、コーナーフィレットの端部の直線及び曲線は、それぞれの面上に載るように投影する。
【0097】
以上のように、フィレット作成部140により、2つのフィレットの合流地点から所定の距離だけ離れた範囲までこの2つのフィレットを作成し、この2つのフィレットの端点で接線連続となるような滑らかな曲線で繋いでコーナーフィレットを作成するので、少ない演算時間及びコストで、母面に沿った滑らかな曲面で構成されたコーナーフィレットを作成できる。
【0098】
次に、
図28A、28B及び
図29を参照しながら、コーナーフィレットを作成する具体的な方法の1つの例を説明する。ここでは、フィレット作成部140により、2つのフィレットの端点を、2つのフィレット端点で接線連続となるような滑らかな曲線で互いに繋いでコーナーフィレットを作成する。
図28A及び
図28Bは、2つのフィレット端点で接線連続となるような滑らかな曲線であって、線に垂直な方向の勾配ベクトルを補間して与えて、コーナーフィレットを作成するところを示す。
図28Aは、上側のフィレット断面を接続してコーナーフィレットを作成するところを示し、
図28Bは、下側のフィレット断面を接続してコーナーフィレットを作成するところを示す。
一方、
図29に示すように、3次のベジエ曲線で2点間を繋ぐことにより、フィレット断面を接続してコーナーフィレットを作成することもできる。3次のベジエ曲線とは、始点及び終点からそれぞれ接線ベクトルの方向に、所定の距離だけオフセットさせた2つの制御点を設け、これら4つの点から作成できる曲線である。
【0099】
図28Aに示す上側のフィレットも
図28Bに示す下側のフィレットも同様に、フィレット断面の両端部の勾配ベクトルVeとしてフィレット端部における稜線ベクトルVr(具体的には、側面側のフィレット1(2)の端部における稜線ベクトルVr、及び壁面側のフィレットB(T)の稜線ベクトルVr)を用いて、フィレット1(2)及びフィレットB(T)の端部を、2つのフィレット端点で接線連続となるような滑らかな曲線で互いに繋いで接続する。このとき、フィレット1(2)及びフィレットB(T)の端部の勾配ベクトルVt(フィレット断面に沿った接線ベクトル)から、曲線に垂直な方向の勾配ベクトルを、所定の補間方法(例えば、線形補間)で与えることができる。これにより、フィレット1(2)及びフィレットB(T)の間を滑らかに繋ぐ曲面を形成することができる。
【0100】
次に、2つフィレットの端部を3次のベジエ曲線で接続する具体的な方法を、
図29を参照しながら説明する。始点a(フィレット1(2)の端部の点)、終点b(フィレットB(T)の端部の点)の座標から、2点間の距離Hを算出する(
図29の上図参照)。次に、点a及び点bからそれぞれ接線ベクトルの方向に、距離c’Hだけオフセットさせた2つの制御点を設ける(
図29の中図参照)。それぞれの制御点と、点a及び点bとにより、3次のベジエ曲線を与えることができる。
【0101】
以上のように、2つのフィレット端点で接線連続となるような3次のベジエ曲線で互いに繋いでコーナーフィレットを作成するので、少ない演算時間及びコストで、母面に沿った滑らかな曲面で構成されたコーナーフィレットを作成できる。
なお、ベジエ曲線を用いてコーナーフィレットを作成する方法を、
図28A、28Bを参照しながら説明すれば、2つのフィレット1(2)、B(T)の端点を、2つのフィレット端点で接線連続となるような3次のベジエ曲線で、かつ線に対して垂直な方向の勾配ベクトルを端点の勾配ベクトルVtから補間(例えば、線形補間)して与えた線で互いに繋ぐことにより、コーナーフィレットを作成することができる。
【0102】
図7Aのフローチャートに戻り、ステップS36に引き続いて、上側のコーナーフィレット及び下側のコーナーフィレットの間の曲面を作成する(ステップS38)。ここで、
図30は、上下のコーナーフィレットを繋ぐ曲面を作成する一例を示す図である。上記のように、フィレット作成部140により、母面(具体的には、側面の母面及び壁面の母面)の上側と下側に設けられたそれぞれのフィレットについて、上側のコーナーフィレット及び下側のコーナーフィレットを作成する。
【0103】
そして、
図30に示すように、2つのフィレットの合流地点から所定の距離の地点(つまり、コーナフィレットの端部)における母面上の点を、この地点におけるそれぞれの接線ベクトルを補間した勾配ベクトルを有する曲線で繋いで、上側コーナーフィレット及び下側コーナーフィレットの間の母面を修正する。
図30では、直線状のワイヤフレームで構成された側面の母面及び壁面の母面の交差領域について、母面を修正して滑らかな自由曲面で上下のコーナーフィレットどうしを繋いだところを示す。ここでも、上記と同様に、3次のベジエ曲線を用いてcoons等の自由曲面を作成することができる。
【0104】
これにより、上側及び下側のコーナーフィレットの間を、少ない演算時間及びコストで、各々のコーナーフィレットに沿った滑らかな曲線で繋ぐことができる。
【0105】
(フィレット作成サブルーチンのその他の例)
次に、
図7Bのフローチャート及び
図31を参照しながら、メインルーチンのステップS30で示されるフィレット作成サブルーチンのその他の例について説明する。ここで、
図31は、3つのフィレットの交差位置にコーナーフィレットを作成する一例を示す図である。
【0106】
図7Aに示すフィレット作成サブルーチンの1つの例では、フィレット作成部140により、母面の上側と下側に設けられたそれぞれのフィレットについて、上側のコーナーフィレット及び下側のコーナーフィレットを作成し(ステップS36参照)、2つのフィレットの合流地点から所定の距離の地点における母面上の点を、この地点におけるそれぞれの接線ベクトルを補間した勾配ベクトルを有する曲線で繋いで、上側コーナーフィレット及び下側コーナーフィレットの間の母面を修正している(ステップS38参照)。
【0107】
図7Bに示すフィレット作成サブルーチンのその他の例では、フィレット作成部140により、2つのフィレットの合流地点から所定の距離だけ離れた範囲まで2つのフィレットを作成するまでは、
図6に示す1つの例と同様である。フィレット作成サブルーチンのその他の例では、更に、この合流地点から所定の距離だけ離れた範囲までこの2つのフィレットと交差する更なるフィレットを作成し、この2つのフィレットの端点を、端点におけるそれぞれの接線ベクトルを補間した勾配ベクトルを有する曲線であって、かつ更なるフィレットの端部の曲線と連続する滑らかな曲線で繋いでコーナーフィレットを作成する点で異なる。
【0108】
図7Bにおいて、上側のフィレット及び下側のフィレットを作成するステップS32A,34Aの制御処理は、
図7AのステップS32、S34の制御処理と基本的に同様であり、更なる説明は省略する。これにより、
図31に示すように、下側のフィレット1及びフィレットB、並びに上側のフィレット2及びフィレットBが作成される。次に、
図31に示すように、側面の母面及び壁面の母面の交線により構成される稜線Eに沿った上下を繋ぐ方向の側方フィレット3を作成する(ステップS36A)。詳細に述べれば、側面側の下側のフィレット1及び壁面側の下側のフィレットBの間、及び側面側の上側のフィレット2及び壁面側の上側のフィレットTの間を上下に繋ぐ側方フィレット3を作成する。
【0109】
次に、上側及び下側の2つのフィレットにおいて、2つのフィレットの端点を、端点におけるそれぞれの接線ベクトルを補間した勾配ベクトルを有する曲線であって、かつ更なるフィレット3の上側の端部の曲線と連続する滑らかな曲線で繋いでコーナーフィレットを作成して(ステップS38A)、本サブルーチンを終了する。
【0110】
更に詳細に述べれば、側面側の下側のフィレット1及び壁面側の下側のフィレットBの端点を、端点におけるそれぞれの接線ベクトルを補間した勾配ベクトルを有する曲線であって、かつ上下方向のフィレット3の下側の端部の曲線と連続する滑らかな曲線で繋いで下側のコーナーフィレットを作成する。同様に、側面側の上側のフィレット2及び壁面側の上側のフィレットTの端点を、端点におけるそれぞれの接線ベクトルを補間した勾配ベクトルを有する曲線であって、かつ上下方向のフィレット3の上側の端部の曲線と連続する滑らかな曲線で繋いで上側のコーナーフィレットを作成する。
【0111】
以上のように、フィレット作成サブルーチンのその他の例では、互いに合流する2つのフィレットと、2つのフィレットと交差する更なるフィレットを作成し、2つのフィレットの端点を、更なるフィレットの端部の曲線と連続するように滑らかに繋いでコーナーフィレットを作成する。これにより、3つのフィレットが合流するコーナー部において、少ない演算時間及びコストで、各フィレットに沿った滑らかな曲面で構成されたコーナーフィレットを作成することができる。
なお、互いに合流する2つのフィレットを上側と下側に作成し、上側と下側を更なるフィレットで繋いで、上下のコーナーフィレットを作成すれば、実質的にフィレット作成サブルーチンの1つの例と同様の滑らかなプレス金型の開口部形状を得ることができる。
【0112】
(形状調整サブルーチン)
次に、
図8のフローチャート及び
図32を参照しながら、メインルーチンのステップS40で示される形状調整サブルーチンについて詳細に説明する。ここで、
図32は、母面、フィレットをトリムして、開口部形状を定める一例を示す図である。
本サブルーチンでは、開口形状作成部150により、必要と判断した場合に、プレス製品の外形、フィレット及び母面の形状が互いに沿うように形状を整えて、プレス金型の開口部形状を決定する制御処理を行う。
【0113】
図8において、まず、作成したフィレットに合わせて母面のトリム(形状を整えること)が必要か否か判断する(ステップS42)。この判断で、もし、フィレットに合わせて母面のトリムが必要である(YES)と判別したときには、
図32に示すように、フレットのアウトラインに沿って母面をトリムして(ステップS44)、ステップS46へ進む。ステップS42の判断で、もし、フィレットに合わせて母面のトリムが必要ではない(NO)と判別したときには、そのままステップS46へ進む。
【0114】
ステップS46において、次に、エッジ部を端部とする製品外形に合わせて母面やフィレットのトリムが必要か否か判断する(ステップS46)。この判断で、もし、製品外形に合わせて母面やフィレットのトリムが必要である(YES)と判別したときには、
図32に示すように、製品外形に沿って母面やフィレットをトリムして(ステップS48)、ステップS50へ進む。ステップS46の判断で、もし、製品外形に合わせて母面やフィレットのトリムが必要ではない(NO)と判別したときには、そのままステップS50へ進む。
【0115】
ステップS50において、次に、作成した(トリムを含む)フィレット及び母面の形状に沿って金型の開口形状を決定する(ステップS50)。以上により、プレス金型の開口部形状を作成することができる。
【0116】
上記の
図3のメインルーチンに示す制御処理をまとめると以下のようになる。
プレス金型の開口部形状を作成するシステムの制御部100において、製品形状記憶部110に記憶された外形データに基づいてエッジ部が選択され、母面作成部130が、予め規定された母面(例えば、壁面の母面、底面の母面)を作成し、稜線作成部120が、選択されたエッジ部のフィレット断面または開口端部から稜線を抽出し延長して、延長稜線及び母面へ投影した線によるワイヤフレームを作成する。次に、母面作成部130により、ワイヤフレームの隣り合う延長稜線を平面または曲面で繋いで残りの母面を作成する(例えば、側面の母面、上面の母面)。そして、フィレット作成部140が、作成された母面が交差する箇所の少なくとも一部にフィレットを作成し、複数のフィレットが合流するコーナー部にフィレットどうしを繋ぐコーナーフィレットを作成する。そして、開口形状作成部150が、必要と判断された場合に、プレス製品の外形、フィレット及び母面の形状が互いに沿うように形状を整えて、プレス金型の開口部形状を決定する。これにより、プレス金型の開口部形状を作成することができる。
【0117】
これによって、シンプルで合理的な手順で、コーナー部を含むプレス金型の開口部形状を作成するので、形状の修正にも容易に対応可能であり、設計者の意図を反映させたコーナー部を含むプレス金型の開口部形状を、少ない演算時間及びコストで作成することができる。
なお、プレス金型の開口部形状を作成するための制御処理は、
図3のメインルーチンに示す順番に限られるものはなく、その他の任意の順番で制御処理を行うことができる。例えば、予め母面を作成した後、稜線を延長するだけでなく、稜線を延長した後、母面を作成する場合もあり得る。
【0118】
上記の実施形態においては、予め規定された母面として、壁面の母面や底面の母面が作成されているが、常に作成する必要はなく、必要と判断された場合にのみ作成すればよい。
その代わりに、例えば、エッジ部で抽出された4つの稜線を所定の長さだけ延長し、延長した4つ端点を繋いで辺を形成し、辺の間を平面または曲面で繋いで壁面の母面を作成することもできる。
底面の母面についても、エッジ部の下側のフィレット断面の下端または下側開口端部から稜線を抽出して、所定に長さだけ延長し、隣り合う底面側の延長稜線を平面または曲面で繋いで底面の母面を作成することもできる。
【0119】
上記の実施形態においては、入力された半径Rの値に応じた円弧を形成してフィレットを作成しているが、これに限られるものではなく、曲率が変化する曲面を有するフィレットを作成することもできる。その場合には、フィレットの端部における曲率を入力することにより、曲率が連続的に変化する滑らかな曲面から構成されるフィレットを作成することができる。
【0120】
以上のように、2つの上下コーナー部を有するタイプ2を例にとって、プレス金型の開口部形状を作成する制御処理について詳細に説明した。以下においては、1つの上下コーナー部を有する場合であるタイプ1及び3つの上下コーナー部を有する場合であるタイプ3に関して、金型の開口部形状を作成する制御処理について説明する。なお、タイプ1及び3においても、基本的な制御処理はタイプ2の場合と同様である。よって、以下においては、制御処理の基本的な流れを中心に簡潔に説明する。
【0121】
(タイプ1の場合)
はじめに、
図33から
図39を参照しながら、1つの上下コーナー部を有する場合であるタイプ1において、プレス金型の開口部形状を作成する制御処理の概要を説明する。ここで、
図33から
図39は、何れも1つの上下コーナー部を有する開口部形状の場合であって、
図33は、ワイヤフレームを構成する一例を示す図であり、
図34は、ワイヤフレームの下辺を底面上に投影する一例を示す図であり、
図35は、母面を作成する一例を示す図である。
図36は、母面に上下のフィレットを作成する一例を示す図であり、
図37は、フィレットが合流する上下の位置に、それぞれコーナーフィレットを作成する一例を示す図であり、
図38は、上下のコーナーフィレットを曲面で繋ぐ一例を示す図であり、
図39は、母面、フィレットをトリムして、開口部形状を定める一例を示す図である。
【0122】
タイプ1の場合には、選択されたエッジ部が、折れ曲がったまたは湾曲した面状を有し、角点から延長した稜線どうしが交差するようになる。よって、タイプ1では、壁面の母面は作成しない。
【0123】
はじめに、
図33に示すように、底面側において、角点Pc1から稜線ベクトルVrに沿って稜線を延長し、角点Pc4から稜線ベクトルVrに沿って稜線を延長し、稜線が互いに交差する位置に、角点Pc’avr14を配置する。上面側においても同様に、角点Pc2から稜線ベクトルVrに沿って稜線を延長し、角点Pc3から稜線ベクトルVrに沿って稜線を延長し、稜線が互いに交差する位置に、角点Pc’avr23を配置する。
【0124】
なお、延長した稜線どうしが、3次元的に交差しない場合があり得るが、その場合には、例えば、交差位置に対応する稜線上の2点の平均座標を用いて、角点Pc’を定めることもできる。また、2直線の距離が最短となる位置を交差位置に対応させて、角点Pc’を定めることもできる。そして、上下の角点Pc’avr23及びPc’avr14どうしを接続して辺を作成し、ワイヤフレームを構成する。
【0125】
次に、
図34に示すように、母面作成部130により、予め規定された母面として底面の母面を作成し、作成したワイヤフレームの下方の辺を底面上に投影する。なお、底面の母面は、エッジ部の下側のフィレットまたは下側の開口端部から稜線を抽出し延長し、これらの延長稜線を平面または曲面で繋いで作成することもできる。そして、
図35に示すように、ワイヤフレームの隣接する稜線を平面または曲面で繋いで、残りの母面を作成する。
【0126】
次に、
図36に示すように、上側及び下側の稜線に沿って、角点Pc’から所定の距離だけ離れた範囲までフィレットを作成する。そして、
図37に示すように、上側及び下側のそれぞれ2つのフィレットが合流する位置に、フィレットどうしを結ぶコーナーフィレットを作成する。そして、コーナーフィレットの端部に対応する地点における母面上の点を、この地点におけるそれぞれの接線ベクトルを補間した勾配ベクトルを有する曲線で繋いで、上側コーナーフィレット及び下側コーナーフィレットの間の母面を修正する。これにより、上側及び下画のコーナーフィレットを連続する滑らかな曲線で繋いだ自由曲面を作成することができる。
【0127】
なお、上記のやり方は、
図7Aに示す作成方法を用いているが、
図7Bに示すような作成方法を用いて、上側及び下側のフィレットと交差する上下方向のフィレットを作成して、同様な形状を得ることもできる。
【0128】
次に、
図39に示すように、開口形状作成部150により、プレス製品の外形、フィレット及び母面の形状が互いに沿うように形状を整えて、プレス金型の開口部形状を決定する。これにより、タイプ1においても、プレス金型の開口部形状を作成することができる。
【0129】
(タイプ3の場合)
次に、
図40から
図45を参照しながら、3つ以上の上下コーナー部を有するタイプ3において、プレス金型の開口部形状を作成する制御処理の概要を説明する。ここで、
図40から
図45は、何れも3つの上下コーナー部を有する開口部形状の場合であって、
図40は、選択されたエッジ部の一例を示す図であり、
図41は、エッジ部の2箇所の領域から異なる方向に押し出された(稜線が延長された)場合の一例を示す図であり、
図42は、それぞれ底面の母面と交わる2つの壁面の母面が規定された一例を示す図であり、
図43は、上面の母面及び壁面の母面の間で交わる線をワイヤフレームの辺とする一例を示す図であり、
図44は、ワイヤフレームを構成する一例を示す図であり、
図45は、母面、フィレットをトリムして、開口部形状を定める一例を示す図である。
【0130】
タイプ3の場合には、選択されたエッジ部から、稜線が所定の角度よりも広がった方向に延長されるので、複数の壁面の母面を作成することになる。
【0131】
図40に、選択されたエッジ部の形状が示される。エッジ部の図面左側側の端部において、下側の角点Pc1及び上側の角点Pc2が配置され、エッジ部の図面右側の端部において、上側の角点Pc3及び下側の角点Pc4が配置されている。
図41に示すように、図面左側のエッジ部において、押し出し基準位置Pb1から押し出しベクトルVswp1の方向に押し量D1だけ押し出されて、壁面の母面1が形成される。そして、角点Pc1、Pc2が稜線ベクトルVrの方向に延長されて、延長稜線と壁面の母面1が交差する位置に角点Pc1’、Pc2’が配置される。
【0132】
同様に、図面右側のエッジ部において、押し出し基準位置Pb2から押し出しベクトルVswp2の方向に押し量D2だけ押し出されて、壁面の母面2が形成される。そして、角点Pc3、Pc4が稜線ベクトルVrの方向に延長されて、延長稜線と壁面の母面2が交差する位置に角点Pc3’、Pc4’が配置される。そして、壁面の母面1及び壁面の母面2により、交差線が形成される。
【0133】
図41のように、エッジ部の位置によって延長方向ベクトルのなす角が、一定角度以上開いている場合には、複数の押し出し方向ベクトル(ここでは、Vswp1及ぶVswp2)を規定することになる。例えばデフォルトとして、延長方向ベクトルのなす角度が所定の範囲内であれば、これらの延長方向ベクトルの平均ベクトルを押し出しベクトルとして規定することができ、その後の判断処理で、必要と判別された場合には、押し出し方向を変更、追加することができる。
【0134】
図42において、予め規定された母面として、エッジ部の開口端部を結ぶ線を含む底面の母面が作成され、壁面の母面1及び壁面の母面2の交差線とこの底面とが交わる位置に、角点Pc、w12bottomが配置される。
【0135】
そして、
図43に示すように、上側の角点Pc2及びPc3を、それぞれ稜線方向に十分な長さ延長した辺を作って、上面の母面を作成する。そして、この上面の母面が、壁面の母面1及び壁面の母面2の交差線と交わる点を、Pc、w12topとする。また、上面の母面及び壁面の母面1及び2が交差してできる線を、ワイヤフレームとして割り当てる。そして、
図44に示すように、残りの角点Pc’を互いに辺で繋いで、ワイヤフレームを構成する。
【0136】
そして、上記のタイプ2の場合と同様に、母面作成部130により、隣り合う延長稜線を平面または曲面で繋いで母面を作成し、フィレット作成部140により、作成された母面が交差する箇所の少なくとも一部にフィレットを作成し、複数のフィレットが合流するコーナー部にフィレットどうしを繋ぐコーナーフィレットを作成し、開口形状作成部150により、必要と判断された場合に、プレス製品の外形、フィレット及び母面の形状が互いに沿うように形状を整えて、プレス金型の開口部形状を決定する。
これにより、
図45に示すように、タイプ3においても、プレス金型の開口部形状を作成することができる。
【0137】
本発明には、プレス金型形状作成システムの制御部(コンピュータ)100により上記のような制御処理を実施させるためのプログラムも含まれる。
つまり、コンピュータを、開口を有するプレス製品の外形データを記憶する製品形状記憶部、記憶された外形データに基づき、選択されたエッジ部のフィレット断面または開口端部から稜線を抽出し延長して、延長稜線を作成する稜線作成部、隣り合う延長稜線を平面または曲面で繋いで母面を作成し、必要と判断された場合に、予め規定された母面を作成する母面作成部、 作成された母面が交差する箇所の少なくとも一部にフィレットを作成し、複数のフィレットが合流するコーナー部に該フィレットどうしを繋ぐコーナーフィレットを作成するフィレット作成部、及び必要と判断された場合に、プレス製品の外形、フィレット及び母面の形状が互いに沿うように形状を整えて、プレス金型の開口部形状を決定する開口形状作成部、として機能させるプレス金型形状作成プログラムが本発明に含まれる。
このプログラムにより、上記の任意の作用効果を奏することができる。
【0138】
本発明の実施の形態、実施の態様を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施の形態、実施の態様における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【解決手段】 プレス金型の開口部形状を作成するシステムであって、開口を有するプレス製品の外形データを記憶する製品形状記憶部110と、記憶された外形データに基づき、選択されたエッジ部のフィレット断面または開口端部から稜線を抽出し延長して、延長稜線を作成する稜線作成部120と、隣り合う延長稜線を平面または曲面で繋いで母面を作成し、必要と判断された場合に予め規定された母面を作成する母面作成部130と、作成された母面が交差する箇所の少なくとも一部にフィレットを作成し、複数のフィレットが合流するコーナー部に該フィレットどうしを繋ぐコーナーフィレットを作成するフィレット作成部140と、必要と判断された場合にプレス製品の外形、フィレット及び母面の形状が互いに沿うように形状を整えて、プレス金型の開口部形状を決定する開口形状作成部150と、を備えるプレス金型形状作成システム及びプログラムを提供する。